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タイトル ウレアーゼ活性による木節粘性土供試体の固化実験
著者 金田 一広・畠 俊郎・川原 孝洋・中條 邦英・畠山 正則
出版 第55回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 21-1-2-01〜 発行 2020/07/01 文書ID rp202005500009
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  • タイトル
  • ウレアーゼ活性による木節粘性土供試体の固化実験
  • 著者
  • 金田 一広・畠 俊郎・川原 孝洋・中條 邦英・畠山 正則
  • 出版
  • 第55回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 21-1-2-01〜
  • 発行
  • 2020/07/01
  • 文書ID
  • rp202005500009
  • 内容
  • 21-1-2-01第55回地盤工学研究発表会ウレアーゼ活性による木節粘性土供試体の固化実験ウレアーゼ 粘性土固化応用地質竹中工務店 国際会員 ○金田 一広広島大学国際会員畠 俊郎正会員 川原孝洋, 中條邦英, 畠山正則1.はじめに自然堆積粘土地盤上に建設された盛土など構造物の長期沈下が問題になっている。遅れ沈下は圧密降伏応力を超えた荷重が載荷された場合によく発生している。一旦粘性土地盤が沈下すると荷重を除荷するか、オーバーレイによる補修が必要となってくる。本研究ではカオリン粘土 1)や自然堆積粘土 2)で検討を行ってきたが、今回は木節粘土を用いた固化実験を行ったので報告する。2.固化メカニズム本研究では粘性土供試体の中に尿素と固化液を注入して,地盤に生息している微生物が生産する酵素(ウレアーゼ)の作用により尿素を加水分解させ、その時に発生する二酸化炭素と固化液のカルシウムイオンが反応して炭酸カルシウムを粘土の間隙に析出させる。次式が化学反応式である 3)。・ウレアーゼ活性による尿素の加水分解CO(NH2)2+2H2O→(ウレアーゼ)→2NH4++CO32-(1)・炭酸カルシウム析出Ca2++CO32- →CaCO3 ↓(2)3 実験方法実験に用いた粘土供試体は、市販の粉末木節粘土を使荷重用した。加水して、スラリー状にした後、圧密圧力100kN/m2 で事前圧密を実施して作製した。木節粘土の物粘土圧密リング理特性は,土粒子密度ρs =2.671 g/cm3, 液性限界 wL =固化液40.7 %, 塑性限界 wp = 16.0 %である。表1に試験ケースウレアーゼと注入した溶液を示す。図 1 に示す通水実験の粘土供試体は,上下の乱れを考慮して高さ 3cm としている。通水排水バルブは水位のヘッド差を用いており、圧密リングの下からの距離としている。なお、通水が進むと注入速度が遅くな平面図るため適宜ヘッド差を大きくしている。また、荷重とし側面図図 1 実験装置の概要て 5000g を載荷し、17.7 kN/m2 ほどの上載圧をかけてい表 1 実験ケースと溶液情報る。表 1 に示したように、固化液としては、尿素と塩化ケースず固化液のみの場合、Case2 はウレアーゼと固化液を、Case3 はウレアーゼと固化液の濃度を倍にしている。図2 にヘッド(cm)と注入水量の関係図を示す。通水は初め150ml ずつ行い、注入が終了してから同時に 150ml ずつ固化液ウレアーゼ液ウレアーゼ酵素尿素塩化カルシウム10mg1.2g1.66g216mg1.2g1.66g332mg2.4g3.32g精製水150mL精製水150mL追加し、全体では 2 か月半で 300ml 注入した。また注入した粘土供試体はひずみ速度 0.02%/min の定ひずみ速度純水Case1ウレアCase2ウレアCase3固化Case1載荷による圧密試験を実施した。3501204 実験結果300100250表中には通水をしていない無処理の供試体の値も示した。乾燥密度が通水前に比べて通水した供試体は若干小さくなっており、一方,間隙比は通水することで大きくなった。これは、100 kN/m2 で予備圧密された供試体に対し水量 [ml]表 2 に注入(通水)前後の粘土供試体の物性値を示す。60150実線:ヘッド5008/5ひずみ速度圧密試験を実施するときは高さ 2cm の供試体8/128/198/26日付9/29/9図 2 注入量・ヘッドの関係Kazuhiro Kaneda , Takenaka CorporationToshiro Hata,, Hiroshima UniversityTakahiro Kawahara, Kunihide Nakajyo,Masanori Hatakeyama ,Oyo Corporation- 21-1-2-01 -20点線:水量0て膨張したためである。なお、通水後の試料に対して定© 公益社団法人 地盤工学会40100て,通水過程の荷重が小さかったため,応力緩和によっSolidification experiment of Kibushi clay specimen using urease802009/16ヘッド [cm]カルシウムを入れている。Case1 はウレアーゼを注入せ 21-1-2-01第55回地盤工学研究発表会表 2 供試体諸元に成型しなおしている。また、圧縮指数Cc は無処理粘土と優位な変化が生じていなかった。一方、圧密降伏応力は無処理粘土では 141では 290kN/m2 であったがCase2~3kN/m2 以上となり2倍以上増加し通水条件供試体状況無処理Case1Case2Case3通水前/通水後(供試体成形後)通水なし土粒子の密度dg/cm32.6712.671 / 2.6712.671 / 2.671含水比wn%28.927.9 / 29.727.8 / 29.528 / 29.9乾燥密度dg/cm31.4951.528 / 1.4891.531 / 1.4941.525 / 1.4962.671 / 2.671ている。これは注入することで新たな骨間隙比e0.7860.748 / 0.7930.745 / 0.7870.751 / 0.785圧縮指数cc0.250.250.270.25格構造を形成し構造が高位化したと考え圧密降伏応力pc141160290322kN/m2られる。図 3 に圧縮ひずみ~圧密圧力関係図を示す。無処理粘土に比べて Case2, 3 は正規圧密領域で圧密応力が大きくなっており、いわゆる圧密降伏応力が増加していることから、骨格構造が生成されていることがわかる。図 4 には圧縮応力と圧縮ひずみの関係を示す。無処理粘土より Case1の方が剛性が低下しているが、これは固化させないで単に水溶液の通水を行ったため間隙比の増加を伴う膨張が生じ0ていて剛性が低下したと考えられる。圧縮ひずみ 5 %に着目するとCase1の 157 kN/m2 に対して固化を生じている Case2,3 は 216, 246試体内に析出した炭酸カルシウムによって土骨格が高位化したと考えられるでは実際に粘土供試体に炭酸カルシウムが析出しているかどうかを調べるため、圧密試験を実施した後の供試体を5分割して細かく(%)間隙比が増加したにもかかわらず、剛性が増加していることから供510圧縮ひずみ ekN/m2 と増加して剛性が上がっていることも分かる。通水によって1520砕いて炭酸ガス圧を調べた。炭酸カルシウムは酸によって、次式のように容易に炭酸ガスを発生させる。CaCO3+2HCl→CaCl2+H2O+CO2↑Case 1Case 2Case 3無処理2530(3)110め、既知濃度の炭酸カルシウムとガス圧の関係式を求めてから未知1001000圧密圧力 pこの炭酸ガスのガス圧と炭酸カルシウムの含有量には相関があるた10000(kN/m2)図 3 圧縮ひずみと圧密応力の関係試料の炭酸カルシウム量を算出している。表 3 に 5 つの分割供試体300の平均値を示す。Case1 でも 0.43mg/g 程度計測されるが、これはもCase1 に比べて含有率が高くなっている。この結果から確かに供試体内に炭酸カルシウムが析出していることが確かめられた。しかし、理論上は Case2 に比べて Case3 は 2 倍の濃度なので、炭酸カルシウムの含有量も 2 倍になると想定されるが。計測誤差などの原因があ圧密圧力 (kN/m2)一方、Case2 では 1.11 mg/g、Case3 では 1.78 mg/g と計測され、246kN/m2250ともと木節粘土に炭酸カルシウムが含有していたものと考えられる。216kN/m2200157kN/m2150100ると考えられる。簡易な炭酸カルシウムの計測ではあるが、粘土供試体に確かに炭酸カルシウムが析出して骨格構造の高位化に寄与し5.まとめCase 2Case 3無処理00246圧縮ひずみ eていることが確かめられた。今回は 300ml という通水量であったがさらに多くの通水を行うとより固化の効果があると考えている。Case 150810(%)図 4 圧縮応力と圧縮ひずみの関係表 3 酸カルシウム析出量粘性土(木節粘土)にウレアーゼと固化液を注入することで間隙に炭酸カルシウムを析出させ、剛性が増加し、圧密降伏応力も増加ケース分析値(mg/g)することが分かった。またウレアーゼと固化液の濃度を 2 倍にするCase10.43と強度や圧密降伏応力も増加することも分かった。ウレアーゼや固Case21.11化液の最適な濃度が存在することが想定され、最適な濃度を調べるCase31.78ことが必要と考えている。(参考文献)1) 金田ら:ウレアーゼ活性による粘性土供試体の固化実験, 第 52 回地盤工学研究発表会,2017. 2) 金田ら]ウレアーゼ活性による自然堆積粘性土供試体の固化実験, 第 53 回地盤工学研究発表会,2018. 3)手計ら,:酵素活性の異なる各種微生物を用いた固化処理砂の液状化特性改善効果に関する検討,地盤工学ジャーナル,Vol.11,No.1,pp.1-9,2016.© 公益社団法人 地盤工学会- 21-1-2-01 -
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