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タイトル 圧密による粘土のセメンテーション構造の破壊と力学的特性への影響
著者 渡部 大勢・近藤 慧・福田 文彦
出版 第55回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 21-1-1-07〜 発行 2020/07/01 文書ID rp202005500007
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  • タイトル
  • 圧密による粘土のセメンテーション構造の破壊と力学的特性への影響
  • 著者
  • 渡部 大勢・近藤 慧・福田 文彦
  • 出版
  • 第55回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 21-1-1-07〜
  • 発行
  • 2020/07/01
  • 文書ID
  • rp202005500007
  • 内容
  • 21-1-1-07第55回地盤工学研究発表会圧密による粘土のセメンテーション構造の破壊と力学的特性への影響セメンテーション 力学的特性一軸圧縮試験北海道大学大学院学生会員○渡部大勢北海道大学工学部北海道大学大学院近藤 慧国際会員福田文彦1.はじめに本研究では、セメンテーションを有する試料の圧密によるセメンテーションの破壊が、試料の力学的特性に与える影響について実験的に調べている.ここでセメンテーションとは土粒子同士の物理的化学的作用による結合のことである.実験では、まず粘土にセメントを添加して予圧密を行い、人工的にセメンテーションを発現させた予圧密試料を作成する.次に再び圧密(再圧密)を行って一度発現させたセメンテーションを破壊する.このようにして再圧密の圧力と養生時間を変化させた試料を作成して、一軸圧縮試験からセメンテーションの破壊のメカニズムや力学的特性への影響を評価する.このような研究は、年代効果などによってセメンテーション(構造)が発達している自然地盤の力学特性やセメント改良地盤の力学特性などのより本質的かつ詳細な理解のために必要不可欠である.2.試験概要本研究では試料として笠岡粘土を使用し、粘土の乾燥重量の 1%に当たるセメントを添加し、人工的にセメンテーションを発現させる.セメントを添加する前の笠岡粘土の物性値は液性限界 62.8%、塑性限界 28.6%、土粒子の密度2.74g/cm3 であり、添加した後の物性値は液性限界 77.3%、塑性限界 33.5%、土粒子の密度 2.66g/cm3 である.試験試料は、乾燥粘土・水・セメントを撹拌してスラリーを作成し、このスラリーを予圧密したものであり、スラリー含水比はセメント添加前の笠岡粘土の液性限界の 2 倍の値となるように笠岡粘土:蒸留水:セメントの比 100:125:1 の質量比で調整した.一度形成したセメンテーションを破壊するために、二段階予圧密法を採用した.予圧密セルにおいて、初めに 100kPa で一週間予圧密を行い、その後試料を取り出さずにセル内の圧力を変えて再圧密を更に一週間行った後で、予圧密セルを解体する.再圧密力の値は 100kPa,200kPa,300kPa とした.この再圧密過程で、最初の一週間に形成されたセメンテーションをいくらか破壊できるという仮定である.解体後、養生期間を設け、それぞれ養生期間の異なる試料で一軸圧縮試験を行う.養生期間は 15,29,56,112 日とし、養生期間の開始時点は一段階目の 100kPa の予圧密を始めた時点と定める.一軸圧縮試験に用いる試料は直径 50 ㎜、高さを 120 ㎜の円柱形にトリミングしたものであり、ひずみ速度は1%/min で軸ひずみが 15%に達した時点で試験終了とした.3.試験結果と考察一軸圧縮試験から得られた応力―ひずみ関係を図-1 に、最終含水比と養生期間および再圧密圧力の関係を図-2 に、ピーク強度と養生期間および再圧密圧力の関係を図-3 に示した.図-3 のセメント 0%の強度は、予圧密圧力 100kPa でセメント 0%の試料の一軸圧縮試験から得られた強度にもとづき、その値を 2 倍および 3 倍したものを、それぞれ圧密圧力 200kPa と 300kPa の強度として表示している.また、実験番号の意味は、-(ハイフン)の前が初期段階予圧密圧力(kPa)、後ろが再圧密圧力(kPa)、再圧密圧力の後は養生期間(日)である.(ex. 100-20029)前述したようにセメンテーションとは土粒子間にみられる結合のことで、セメンテーションの発達している粘土としていない粘土では力学的挙動が異なる.特にセメントを添加していない粘土では養生期間を変化させても強度をはじめとする力学的パラメーターは不変であるのに対し、セメントを添加した粘土ではセメンテーションが発達することで養生期間の増加に伴って変形剛性やピーク強度が増加したりする.以上の前提を踏まえ、力学的特性が受けるセメンテーションの影響を考察する.(1) セメント添加による応力―ひずみ関係の変化図-1 において、セメント無添加試料の応力ひずみ関係と、セメントを添加した試料の応力ひずみ関係を比較すると、セメント無添加試料ではピークが認められないのに対し、セメントを添加した試料では、再圧密圧力や養生日数にかかわらず、応力ひずみ関係に明瞭なピークが認められ、ピーク後の主応力差は急速に減少している.これらのことから粘土の乾燥質量に対して 1%にあたるセメント量でも十分にセメンテーションは形成されていると判断した.(2) 再圧密に伴う含水比の低下とセメンテーションの破壊図-2 の最終含水比と養生期間および再圧密圧力の関係のグラフにおいて、養生時間が同じ場合における含水比は、Destruction of the cementation of clay by consolidation and itsTaisei Watanabe, Graduate school of Eng., Hokkaido univ.influences on the mechanical characteristics.Kei Kondo, Faculty of Eng., Hokkaido univ.Fumihiko Fukuda, Graduate school of Eng., Hokkaido univ.© 公益社団法人 地盤工学会- 21-1-1-07 - 21-1-1-07第55回地盤工学研究発表会どの養生時間においても、圧密圧力が増加すれば低下している.この含水比の低下から次の二つの可能性が考えられる. 1)セメンテーションもいくらか破壊され、間隙比が低下している.また再圧密圧力が大きなほどセメンテーションの破壊の程度も大きい.2)セメンテーションは破壊されず、固着していない土粒子群だけが動いて間隙比が小さくなっている.図-3 のピーク強度のグラフにおいて、セメント 0%の強度と養生期間 15 日のセメント 1%の強度の差を比較する.再圧密圧力が 100kPa の時にこの強度差が最も大きく、再圧密圧力の増加とともに強度差は小さくなる.再圧密圧力の図-1 応力―ひずみ関係違いによるセメント水和反応の速度等に差がないとすれば、この実験結果は先に述べたセメンテーション破壊に関する二つの仮設のうち、前者の 1)である可能性が高いことを示している.(3) 再圧密圧力と強度の関係図-3 のピーク強度のグラフにおいて、養生時間が同じ場合におけるピーク強度と再圧密圧力の関係は、どの養生時間においても再圧密圧力が増加すればピーク強度も増加している.セメンテーションを有する粘土の一軸圧縮強度を支配する主たる要因は、1)間隙比(間隙比が低下すれば土粒子同士の接触点数が増えて強度は増加する)、2)セメンテーション、および 3)ダイレタンシーの三つであろう.図-2 と 3 の実験結果は、再圧密によってセメンテーションはある程度破壊されるものの、間隙比が低下するために、再圧密圧力の増加に伴い強度図―2 最終含水比と養生期間および再圧密圧力の関係が増加することを示すものと考えられる.(4) 養生期間と強度の関係図-3 のピーク強度のグラフにおいて、再圧密圧力が同じ場合におけるピーク強度と養生時間の関係は、どの再圧密圧力においても養生時間が増加すればピーク強度が増加している.(2)と(3)において再圧密によって部分的にセメンテーションが破壊されることを指摘したが、いま述べた養生時間の増加にともなって強度が増加する現象も、少なくとも初期圧密圧力の 3 倍程度の再圧密圧力では、セメンテーションが完全に破壊されることはなく、破壊されなかったセメンテーションは再圧密後の試料の強度に影響をおよぼすことを示している.(5) 養生時間に対する強度増加率におよぼす再圧密圧力の影響図―3 ピーク強度と養生期間および再圧密圧力の関係図-3 のピーク強度のグラフにおいて、再圧密圧力が同じ実験におけるピーク強度と養生時間の関係のグラフの傾き、すなわち養生時間に対する強度増加率は、再圧密圧力が大きいほど大きい.この要因として土粒子間の距離や配列が考えられる.すなわち、土粒子間の距離は再圧密圧力が大きい試料ほど近いために、単位体積当たりの土粒子同士の接触点の数が増え、セメントが固着している接触点の数も増える.結果として接着剤のような役目のセメンテーションの結合が大きく作用したり、セメンテーションが発達しやすい骨格が形成されている可能性がある.4.まとめセメントを添加した粘土を再圧密することによりセメンテーションはいくらか破壊されているが、再圧密後にも破壊されないセメンテーションがあり、破壊されないセメンテーションが再圧密後の強度特性に影響を及ぼしている.再圧密によるセメンテーション破壊についてさらに詳しく調べるために、一段階目の予圧密圧力が 200kPa および 300kPa で再圧密を行わない試料の実験を行い、今回の実験結果と比較が求められる.© 公益社団法人 地盤工学会- 21-1-1-07 -
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