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出版

タイトル 三重津海軍所ドライドックの地盤特性と構造
著者 正垣 孝晴・中野 義仁
出版 第55回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 21-1-1-05〜 発行 2020/07/01 文書ID rp202005500005
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  • タイトル
  • 三重津海軍所ドライドックの地盤特性と構造
  • 著者
  • 正垣 孝晴・中野 義仁
  • 出版
  • 第55回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 21-1-1-05〜
  • 発行
  • 2020/07/01
  • 文書ID
  • rp202005500005
  • 内容
  • 21-1-1-05第55回地盤工学研究発表会三重津海軍所ドライドックの地盤特性と構造三重津海軍所,ドライドック,地盤特性正垣技術士事務所 (国)正垣 孝晴(株)興和 (国)中野 義仁1.はじめに三重津海軍所 MNF は,筑後川の支流早津江川の右岸に佐賀藩が設立(1858 年)した海軍施設である。この施設は,2015 年に世界遺産(明治日本の産業革命遺産)に登録され,今日地中保存されている。また,MNF の維持・管理・復元のための地盤工学的調査が 2015 年から本格的に行われている。本稿は,2015 年と 2018 年の調査結果を統合して,MNF のドライドック MND 遺構の地盤と構造を考察する。●:Boreholesite (EB-1~7:Existing boring data)EB-1, 7:Japanese ground database "Kunijiban"EB-2~4:Sano Memorial museum park geotechnical survey (2001)EB-5, 6:Hayatsue area of Togari port geotechnical survey (2001)B-6, 7:Small-boat dock geotechnical survey (2016)B-8:Training ground geotechnical survey (2017)B-9~11:Ship-building/repair dock geotechnical survey (2018)2.三重津海軍所修覆場の土層構成とドックの構造MNF は,船屋地区,稽古場地区,修覆場/金属加工場地区の 3 地区から構成されている。図-1 は,これらを含む周辺の地盤調査位置を示している。MND の位置船屋地区EB-6EB-7EB-5:Trench survey (T-1~8)は,MNF の南西端の修覆場/金属加工場地区の青の破B-6:Wooden revetment remains線で示している。図-2 は,MND の T-2(2015)と T-8稽古場地区Lines A & B:Geologic section line in Fig.2(2018)のトレンチ内で行った調査結果から推定した土050B-7EB-4100 mT-4(2017)B-8EB-3層構成と MND での修理記録がある電流丸の断面を示T-5(2017)T-6(2017)T-7(2017)EB-2している。同図には,MND の敷地の外に位置する図-1Sano Memorial Museum Parkに示す EB-1 と EB-5 の結果も,それぞれ図の左右端にT-8(2018)Line BB-10B-11示している。土層は,高水敷盛土 T1,ドック埋立て土 T2,完新世の蓮池粘土層 Hc1 と有明粘土層 Ac1 が地表から堆積し,Ac1 中には同砂質土層 As1 が介在している。Line AB-9EB-1T-1(2013)Dry dock (Estimated)T-2(2015)これら土層の水平方向の連続性は良好であり,ドックはT-3(2017)修復場/金属加工場地区Hc1 層を開削して構築されている。また,MND は,船屋図-1 三重津海軍所遺構を含む周辺の地盤調査位置地区・稽古場地区と同様な土層構成であることが判る。ドックの西(図の左)側の渠壁は,貝殻(牡蠣殻)密集層 Os 下の Hc1 層まで開削して,土嚢を積んだ B 層で渠壁の下部を押えており,地盤補強が行われている 1)。一方,東(図の右)側の渠壁は,松丸太による 4 段の木組み構造が配置されている 2)。この木組み構造は,我が国に類例がなく,中国の海岸堤防の木組み構造に 3)似ている。MND の木組み構造は,ドック東隣の金属加工Line B in Fig.1Line A in Fig.1Observed cross section , Ⅳ (Fig.3)Dry dock western side wallEB-100N1010C-3①20T2 g②qc-1C-2-410104qcAqc2Bal160D0Hc1600 1200 0 600 120000 6000 600 12001--1-1-12--2-2-2Ac1-33--3-3-3As1-44--4-45--5-5Ac2(Sand)600 12000 6000021 6000006 01200Hc1-2NB-90600 120000 600B(Clay)qcqc0OsEB-500C-13C-24 C-26C-23E0-1B-10Retaining plateB-11c, d, ea, b, hqc600 1200Hc1 f 00 600E (m)?Denryu-maruBeam 7.9mC-1T1?Wooden revetment remains1st2nd4th 3rd33-417A 36As128OsAs1Ac129E (m)The ground surface level at the time(Estimated)4Dry dock eastern side wallDock center line(Estimated)Current ground surface height(E≒3.5~4.25m)-2-4-6-61272時代1086土層区分高水敷盛土ドック埋立て土埋立て盛土 (粘土・砂互層)西側渠壁材料 (粘土)渠底材料 (粘土)完新世粘性土蓮池層貝殻密集層上部粘性土有明層 上部砂質土下部粘性土4記号T1T2BalB, EA, C, DHc1OsAc1As1Ac222460Distance from Dry dock center, L(m)810121416216218B and BE:Borehole surveyC:Portable cone penetration tests (PCPT, Unit of qc:kN/m2)Circled number:Wooden Pillar number①:Average high tide level (E= 2.075m)②:Average low tide level (E= -1.755m):Soil sampling site using vinyl pipe (a~h):Trench excavation line図-2 三重津海軍所修復場の土層構成とドックの構造Soil properties and structures of the Mietsu Naval Dry Dock:Takaharu Shogaki (Shogaki Professional Engineer Office), YoshihitoNakano (Kowa Co.,Ltd.).© 公益社団法人 地盤工学会- 21-1-1-05 - 21-1-1-05第55回地盤工学研究発表会場との境界構造物である可能性もあるが,ドック左右の渠壁構造が異なっているのも例がない。B 層に加え,渠底部の3332 34A,C,D 層にも土嚢が確認されているが 1),A,C,D 層は船の10 11B-11荷重を支える地盤補強を意識した材料でなく,Hc1 層と同今後,同じ断面での渠壁や渠底部の構造の検討が必要で ②1715 16431①6 2752522122図-3 は,T-8 で行われた 45-mm サンプラーを用いた試料採取(◎:B-9,10,11)とポータブルコーン貫入試験4) (×:12342830 29Observed cross section Ⅳ at T814 13262423× :PCPT (1~36)3.修覆場と金属加工場の地盤の強度特性035363731127 892018 19等の強度である。図-2 は T-2 と T-8 の結果から作図している。ある。B-9B-10N:Borehole:Pilar (d<200mm):Wale wood② :Soil layer section line in Fig.4:Pilar (d>200mm):Connecting beam wood①:Survey line in Fig. 55m図-3 ドック渠底から東側渠壁の木組み構造間における調査位置PCPT 1~36)の位置を示している。同図には,ドックの渠底部と東側の木組み構造の領域も併示している。B-9 は金属Dock center line (Estimated)qcの変化から3層に区分2は,20kN/m2-3より小さく,ほぼ一定である。これは,図-2 と図-4 の A,C,D-4高 E が−1.7m 以浅のプロットの非排水強度 cu-2-3-1-4-2As1-54Ac1 に混入する貝殻片に当たって大きな cu 〔例えば,-4-53-1-2-2Hc1-1-1-2-2-3-3Ac121-4-3-3-3-4-4-4As1Ac2-5-1-1-2-2-1-1-2-2As1-3-3-3-3-4-4-4-401-523-5-5-54※C:PCPT(Unit of qc:kN/m2)木杭(推定)5Bottom of dry dock67-5-5-5-589101112Elevation, E (m)図-6 は,45-mm サンプラーで採取した試料の一軸圧縮試験 5)結果である。渠底部の B-11 を見ると,図-2 と図-4 のA,C,D 層に相当する E=−(1~2)m の含水比 wn は 120~130%,湿潤密度 ρt は 1.35~1.42g/cm3 であり,B-9,10 と同等である。PCPT○:1+:2×:3△:4□:5▽:6◇:27Os-1重のような大きな荷重履歴を受けていないことが判る。A, C and D-2Ac1-3-4このことは,船荷重等に対抗する渠底部の地盤補強が行わAs1れていないことを意味する。また,木組み構造内(B-10)や-5金属加工場(B-9)において,E が 0m 以浅の wn の値から,020406080100120140Undrained shear strength, cu (kN/m2)砂(wn≒20%)と粘土(wn≒100%)の互層構造が理解できる。図-5 ドック渠底部の PCPT 結果(図-3 の①測線)図-6 の cu の欄にはサクション S0 と一軸圧縮強さ qu から推定した原位置の非排水強度 cu(I) (★)もプロットしている。cu(I)×:B-9+:B-10○ :B-11△ :cu(I):In-situ value2は,cu(=qu/2)の 2 倍程度の値を示し,サンプリングから強度Elevation, E (m)10-1-2-3-4構造を検討した。ドックの機能,施工法,利用状況等を解明-5するには,T-2 と T-8 の間でドック軸を横断するトレンチで,-6討が不可欠である。-1-2Bal00るが,他のプロットと同様な値を示し,ドック中心軸上で船荷東西渠壁と渠底部の一体的構造と地盤工学的な精緻な検-1-4-5している。また,PCPT3(×)はドックの中心軸に位置していT-2 と T-8 のトレンチから MND のドックの渠壁,渠底部の00図-4 PCPT によるドック東側の土層断面(図-3 の②測線)くと,cu≒30kN/m2 の変動幅で深度が深くなるにつれて漸増4.おわりに0600Distance from Dry dock center, L (m)PCPT5(□)の E=−2m の cu=58kN/m2〕を発揮する部分を除面の安定性に及ぼす影響は,別稿 6)で検討している。-3-4As1-5乱れも反映している。Ac1 は有明粘土であり,コーン先端がとが判る。cu と cu(I)の差が西側渠壁の施工時と供用後の斜00q0As1層に相当するが,開削の作業や応力開放,試料採取による試験に至る過程で受ける撹乱で cu が過少評価されているこ0PC-20PC-19qc2(kN/m2)q (kN/m2)qc (kN/mc 0 ) qc600cc600 012001200600 0 1200600 12006001200OsCA-30E (m)-1qqc (kN/mc 2)600 12001200600E (m)D00qcE (m)-2PC-18q600 1200E (m)-1-22qc c(kN/m2)qc (kN/mc )600 1200600 1200 00600E (m)-1PC-17qqE (m)図-5 は,PCPT の 1,2,3,4,5,6,27 の結果を纏めている。標E (m)同等と判断できる。PC-16PC-1500E (m)0E (m)軸方向に 2m 程度離れているが,土層構成は深度を含めてPC-32 PC-33PC-34qcqc 22))(kN/mq2c) (kN/m0 qc 600600q c 00 qc (kN/m2)q c 02 qc600(kN/m120006000 1200600 6001200 120060002q(kN/m)c)0600 1200qqcc(kN/m60000 1200600 1200120060000 6001200PC-12PC-10 PC-11C-18C-20C-19C-17E (m)1C-16E (m)断面線Ⅳにおける土層断面であり,図-4 と図-2 はドックC-10C-12 C-32C-11C-33C-34地表線は推定C-15E (m)した土層断面である。図-2 の右半分は,図-3 の T8 の観察E (m)加工場の敷地に位置する。図-4 は,図-3 の②測線に投影0 50 100150 1wn (%)1.31.6 0ρt (g/cm3)48 12 0S0 (kPa)4080 0 0.6 1.2 1.8cu (kN/m2) E50 (MN/m2)図-6 45-mm サンプラーで採取した一軸圧縮試験結果参考文献1) 正垣・奥田・中野・鈴木:三重津海軍所ドライドック渠口西側部の渠壁構造と施工時の安定性,第 53 回地盤工学会全国大会概要集,pp.47-48,2018. 2) 正垣・本郷・岩崎・中野:三重津海軍所ドライドックの渠壁構造,第 54 回地盤工学会全国大会概要集,pp.1171-1172,2019. 3) 浙江省文物考古研究所,1985. 4) 地盤工学会基準(JGS 1431-2012),ポータブルコーン貫入試験方法,地盤調査の方法と解説(二分冊の 1),pp.337-344,2013. 5) 日本産業規格(JIS A 1217:2009),土の一軸圧縮試験方法,地盤材料試験の方法と解説(二分冊の 2),pp.541-551,2009.6) 正垣・中野:世界遺産三重津海軍所ドライドック渠壁部斜面の安定性,第 55 回地盤工学会全国大会概要集,2020.© 公益社団法人 地盤工学会- 21-1-1-05 -
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