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タイトル 運搬中の振動・衝撃が粘性土の強度に与える影響(佐賀県白石町での採取試料による検討)
著者 陳 金賢・柿原 芳彦・植村 一瑛・大島 昭彦
出版 第55回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 21-1-1-04〜 発行 2020/07/01 文書ID rp202005500004
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  • タイトル
  • 運搬中の振動・衝撃が粘性土の強度に与える影響(佐賀県白石町での採取試料による検討)
  • 著者
  • 陳 金賢・柿原 芳彦・植村 一瑛・大島 昭彦
  • 出版
  • 第55回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 21-1-1-04〜
  • 発行
  • 2020/07/01
  • 文書ID
  • rp202005500004
  • 内容
  • 21-1-1-04第55回地盤工学研究発表会運搬中の振動・衝撃が粘性土の強度に与える影響(佐賀県白石町での採取試料による検討)粘性土 三軸圧縮試験試料の乱れ応用地質株式会社正会員同上正会員植村一瑛同上正会員柿原芳彦国際会員大島昭彦大阪市立大学大学院1. はじめに乱要因が存在する。既往の研究では,サンプリング実施者が撹乱に対し特に注意を要する作業要因を定量的に抽出してい01000wp (%)wL (%)wn (%)1る 1),2)。これは,地盤調査が分業化した今日において,サンプ2リングや室内試験を経験することがない実務者にとって,設1.320021.4金賢PS検層によるVs(m/s)湿潤密度rt(g/cm3)含水比w(%)深 柱度 状(m) 図土のサンプリングから室内試験に至る過程では,様々な撹○陳1.5000225010050計品質を意識した地盤調査を行う上で継承すべき重要な情報3である。一方,試料を現場から遠方の試験室に運搬する際,4多くの場合,運送業者に運搬を委ねざるを得ない。十分な振4446665動・衝撃の抑制・緩和措置をもって運搬を委託するが,その55実状を把握した事例は無いと思われる。本報では,鋭敏な粘6土試料の運搬中の振動・衝撃が三軸圧縮強度に与える影響に7θついて,可搬式の小型三軸試験装置(以下,スマート三軸試験装置) 3)を用いた採取直後の現場強度と試験室へ運搬後のθ↑試験試料8658図-18試料採取地盤の土質特性強度を比較したので報告する。TWS採取, 試料押出2. 運搬中の振動・衝撃の影響検討(1)対象地盤試料採取現場にて三軸圧縮試験(CU)実施佐賀県杵島郡白石町において,シンウォールサンプリングにより沖積粘土層(以下,有明粘土層)の試料採取を行った。図-1 にいくつかの土質特性を示す4)。図示の通り,自然図-2現場~試験室へ運搬(振動計測)室内にて三軸圧縮試験(CU)とベンダーエレメント実施検討フローチャート含水比 wn が液性限界 wL を上回る非常に鋭敏な粘土である。今回の比較試験は,図-1 に示す深度 6~7m 間のサンプリング試料を用いて実施した。有明粘土層の下端は深さ 15m 付近にあり,用いた試料は粘土層の概ね中間深度である。(2)検討フロー図-2 に検討フローを示す。現場において,深度 6m~7m 間のサンプリング試料を押出した後,供試体を整形しスマート三軸試験装置を用いて三軸圧縮試験(CU )を実施した(図3)。現場で試験を実施した以外の供試体は,長さ 12.5cm 程度に切り分け,現場でパラフィンシールを行い,埼玉県にあ図-3る試験室に運搬した。可搬式三軸試験装置を用いた現場の三軸試験(スリック株式会社製 G-MEN DR20)をシンウォールライナー(別深度の試料が入ったもの)に固定し,クッション材を取り付けた専用の運搬箱に納め,一般的な運送業者に依頼し陸送で現場から試験室に運搬した。現場でパラフィンシールを行った残供試体もこの運搬箱に納めて試験室に運搬した。運搬中の加速度データを図-4 に示す。同図より,運搬箱の積み替えや引き渡しの際に試料に大きな衝撃(合力成分とし業者引き渡し(福岡)て最大 20691gal)が作用している。また,9/25 の 1:00 頃から9/26 の 7:00 頃にかけて X 軸方向(ライナー長手方向)で小刻Effect of Transport Vibration on Triaxial Test Results of受け取り(埼玉)75000-7500加速度センサーX軸-15000150009/24 0:00加速度(gal)試料運搬中の振動・衝撃の状態を調べるため,加速度計ZXY9/25 0:009/26 0:009/27 0:009/25 0:009/26 0:009/27 0:009/25 0:009/26 0:009/27 0:0075000-7500Y軸-15000150009/24 0:00加速度(gal)(3)運搬振動の計測加速度(gal)1500075000-7500Z軸-150009/24 0:00図-4試料運搬中の加速度データChen Chinhsien, Uemura Kazuaki (OYO Corporation)Cohesive Soil Sample.Kakihara Yoshihiko (OYO Corporation)Oshima Akihiko (Osaka City University)© 公益社団法人 地盤工学会- 21-1-1-04 - 21-1-1-04第55回地盤工学研究発表会軸差応力 σa-σr (kPa)みに振動が連続しており,ライナーを縦にした状態で長時間運搬されていたことが推測される。(4)三軸圧縮試験(CU)本検討で用いたスマート三軸試験装置は,熟練した試験者による操作を必要とせず,かつ高精度な試験結果が得られる試験装置である806040200150 03)。最大の特徴は,発電機と水があれば,インフラ246810121416軸ひずみ ε (%)が整っていない場所でも,三軸圧縮試験を実施することが可能間隙水圧 u (kPa)125な点である。100試験は「土の圧密非排水(CU )三軸圧縮試験方法(JGS 0523)」に準拠して実施した。ただし,せん断速度は現場での試験時間75現場_σ'r=35 kPa_0.1%/min室内_σ'r=35 kPa_0.1%/min50の制約上 0.1%/min とした。比較対象とした室内試験のせん断速0度も同様に 0.1%/min とした。供試体寸法は50mm,h=100mm図-5である。圧密は等方圧密とし,圧密応力は有効土被り圧相当の35kPa とした。軸差応力・間隙水圧~軸ひずみ関係およびスト246810軸ひずみ ε (%)121416試験結果の比較(応力,間隙水圧~軸ひずみ)150M=1.7'=41.5°レスパスを図-5,6 に示す。室内試験のピーク強度は 52.8kPa であり,現場試験の強度 56.7kPa に比べ約 4kPa 低下したが,破壊現場_σ'r=35 kPa_0.1%/min室内_σ'r=35 kPa_0.1%/min室内_σ'r=35 kPa_0.05%/minひずみ,初期剛性および間隙水圧の発生傾向には顕著な差は見室内_σ'r=70 kPa_0.05%/min軸差応力 σa-σr (kPa)100られなかった。なお,別途実施した圧密試験により圧密降伏応力は pc=51.1kPa であった(採取深度の OCR=1.46)。上記の比較試験に加え,図-6 には,せん断速度 0.05%/min,有効拘束圧 ’r=35,70,140kPa の室内での試験結果を示す。室内_σ'r=140 kPa_0.05%/min50’r=35kPa(過圧密領域)の供試体では,せん断速度の違いによる強度差はなかった。図-6 に示す’ =41.5°は粘性土としては00大きく,これについては,地域特性(採取場所は農業用水の取水により広域地盤沈下を生じていた履歴がある)と力学特性と50図-6の関連性等について今後は探究していきたいと考えている。100平均有効応力 (kPa)150200試験結果の比較(ストレスパス)1000(5)せん断波速度 Vs の比較室内ベンダーエレメントによるVsPS検層によるVs(=55 m/s)図-1 に示した通り,原位置においてサスペンション PS 検層せん断波速度 Vs (m/s)により Vs が得られている 4)。これと比較するために,室内において運搬後の振動・衝撃を受けた供試体でベンダーエレメントによる Vs 測定を行った。測定は三軸セル内で有効拘束圧’r を20,35(有効土被り圧相当),70,140,280,560 kPa とし Vs を計測した。図-7 に示す通り,原位置深度相当(’r=35kPa)の Vs10010は運搬後供試体 53m/s,原位置 55m/s とほぼ同等であった。3. まとめ1試料運搬中の振動・衝撃が土の力学特性に与える影響につい10100有効拘束圧 σ' r (kPa)図-7原位置 Vs と運搬後供試体 Vs の比較て,採取直後の強度と運搬後の強度を三軸試験によって比較した。結果をまとめると以下の通りである。1000・運送業者への試料の運搬委託においては,引渡しや積替え時に瞬間的に大きな衝撃が加わる。・三軸試験におけるピーク強度は,運搬後の振動・衝撃を受けた試料で約 4kPa 低下したが,破壊ひずみやストレスパスに顕著な差や特異な状況は確認されなかった。・せん断波速度 Vs は,原位置 PS 検層と運搬後供試体でほぼ等しい値であった。以上の結果を総合すると,有明粘土のように非常に鋭敏な粘土の場合でも,試料を適切に梱包したうえで運搬することで,試験結果に与える影響は少ないものと考えられる。謝辞)本論文の作成にあたり,中央大学研究開発機構 太田秀樹教授から有益なアドバイスを頂きました。ここに記し,心より感謝を申し上げます。参考文献1)地盤工学会:地盤調査の方法と解説, pp.210-212, 2008.2)松尾 稔・正垣孝晴:各種要因の qu への影響度に関する実験的研究, 土質工学会論文報告集, Vol.26, No.2, pp.121-132, 1986.3)小林一三・中山栄樹・飯塚 敦・太田秀樹:新しい三軸試験装置の紹介~SMART triaxial testing apparatus~, 第 59 回地盤工学シンポジウム発表論文集, Vol.14, No.10, pp.3-8, 2014.4)武野航大・大島昭彦他:佐賀県白石町での地盤調査結果(その1), 第 55 回地盤工学研究発表会(投稿中) 2020.© 公益社団法人 地盤工学会- 21-1-1-04 -
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