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出版

タイトル 平成28年熊本地震で生じた3つの帯状液状化とその地盤特性
著者 坂本龍太朗・村上 哲・平田涼太郎・三輪 滋
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 47〜48 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400024
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  • タイトル
  • 平成28年熊本地震で生じた3つの帯状液状化とその地盤特性
  • 著者
  • 坂本龍太朗・村上 哲・平田涼太郎・三輪 滋
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 47〜48
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400024
  • 内容
  • 0024A - 10第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月平成 28 年熊本地震で生じた 3 つの帯状液状化とその地盤特性液状化層、砂質土、帯状液状化1. はじめに平成 28 年熊本地震では熊本平野において広範囲で液状化が生じた。東北地方太平洋沖地震で生じた面的な広がりを持つ埋立地盤における液状化だけでなく、旧河道や自然堤防の一部で液状化の帯(近見・川尻地区、土河原地区、城山薬師・半田地区の 3 本の液状化帯)として現れたような限定した範囲で生じたのが特徴的である 1)。既往の研究で近見、川尻地区の液状化帯内では表層付近に液状化層である砂質土層が存在し前震後から本震後の液状化域の拡大が見られ、帯外では表層付近に粘性土層が存在し前震後、本震後ともに液状化は発生していないという知見が得られている 2)。そこで、本研究では土河原地区、城山薬師・半田地区の帯状液状化と地盤特性の関係を調査し、既往の近見・川尻地区の研究と併せて報告する。2. 調査方法本研究では、空中写真、50mメッシュによる噴砂判読3),4)と熊本平野のボーリングデータ(以下、BD と略す)を収集し道路橋示方書 5)による液状化判定を行い、3 つの帯状液状化とその地盤特性を調査した。液状化判定では熊本市の地盤の BD および中央開発株式会社の液状化判定ツールを用いて行い H1(非液状化層厚)、5m液状化層厚、10m液状化層厚(深度 5m、10m以内に存在する FL 値(液状化に対する安全率)が 1 以下の液状化層厚)を算出した。入力する物性値は中央開発株式会社リファレンスマニュアル(Version5.5)および熊本市液状化技術対策検討委員会資料を参考にした。なお、シルト質土は粘性土に分類され、近見・川尻地区から城山薬師・半田地区にかけての調査結果より、Fc(細粒分含有率)=72.6%、Ip(塑性指数)=25.3 となることから、非液状化層とした。3. 3 つの帯状液状化と地盤特性図-1~4 は近見、川尻地区、土河原地区、城山薬師・半田地区の液状化判定を行った BD をナンバリングしたもので、表-1~6 は図-1~4 の地区の地盤堆積構造と液状化判定結果、前震後と本震後のメッシュランク(ランク 1:緑、ランク 2A:黄、ランク 2B:橙、ランク 3:赤、ランク 4:濃い赤)4)についてまとめたものである。表-1 から先にも述べたように近見・川尻地区帯内では表層から深度 2m前後から液状化の可能性が高い砂質土層が堆積しており、5m液状化層厚では 3.4m程度、10m液状化層厚では 7.5m程度であり、表層の液状化層が厚いことが分かる。また、前震後と本震後のメッシュランクから表層に液状化層が堆積している地点での液状化域拡大が確認できる。表-2 から近見・川尻地区の帯外では表層付近に粘性土層が堆積していることが分かる。H1 は 8.0m前後、5m液状化層厚は 0.2m程度、10m液状化層厚は 2.5m程度と帯内と比較して液状化層は深い位置にあり、5m、10m液状化層厚も非常に薄いことが分かる。また、前震後、本震後のメッシュランクから液状化域の拡大は見られていない 2)。○福岡大学 学生会員 坂本龍太朗福岡大学 国際会員 村上 哲福岡大学 学生会員 平田涼太郎飛島建設 国際会員 三輪 滋A1-1A1+3A1-2A1+4A1-3A1+5A1+6A1-4A2+1A1+1A1+2A2-1A2-7A2-8A2+3A1-5A2-4A1-6A1+7A1-7A1+8A1-8A1-9A1+9A1-10A1+10A2+2A2-3A2-5A2-2凡例凡例:液状化帯:ボーリング地点加勢川A2-6:液状化帯:ボーリング地点図-1 近見地区液状化帯図-2 川尻地区液状化帯表-1 近見・川尻地区液状化判定結果(帯内)NoA1+1A1+2A1+3A1+4A1+5A1+6A1+7A1+8A1+9A1+10A2+1A2+2A2+3地下水位2.050.81.31.61.62.12.20.851.11.331.30.951.93H1(m)2.050.81.32.32.32.12.23.31.11.332.302.302.90前震後のランク102A0112A11101本震後のランク302A1312A12A41105m液状化層厚(m)2.954.203.703.403.102.903.153.403.903.674.202.902.8010m液状化層厚(m)5.958.407.708.407.504.558.155.058.207.428.007.607.8005(m)凡例10(m)FL値(FL≦1)砂質土粘性土15(m)埋土、盛土礫質土地下水位20(m)表-2 近見・川尻地区液状化判定結果(帯外)A1-1A1-2A1-3A1-4A1-5A1-6A1-7A1-8A1-9A1-10A2-1A2-2A2-3A2-4A2-7A2-8地下水位1.91.253.520.80.80.70.50.80.851.01.571.211.21.080.93.123.43.55H1(m)5.64.56.06.32.18.310.36.74.23.18.25-9.808.501.2010.307.906.50前震後のランク00000000000000000本震後のランク1000000000000000000.000.500.000.000.500.000.000.000.100.500.000.000.000.001.500.000.000.00-5.503.054.702.502.200.102.103.903.901.750.000.201.973.801.502.103.00No5m液状化層厚(m)10m液状化層厚(m)A2-5A2-605(m)凡例10(m)FL値(FL≦1)砂質土粘性土15(m)埋土、盛土礫質土地下水位20(m)土河原地区帯内では、表-3 より表層から深度 2m前後から液状化層である砂質土層が堆積するものの、5m液状化層厚は 2.2m程度、10m液状化層厚は 4.9m程度と近見・川尻地区帯内 2)と比較して層厚は薄く、前震後と本震後のメッシュランクから表層付近に液状化層が堆積している地点で液状化域が拡大したことが分かる。しかし、B2+3 の BDでは表層から深度 5mまで粘性土層が堆積しているが液状化域の拡大が見られた。土河原地区帯外では、表-4 から近見・川尻地区帯外と異なり、表層から深度 2.0m前後から液状化層である砂質土層が存在するが、5m液状化層厚は 1.7m程度、10m液状化層厚は 4.9m程度であり、帯内の液状化層厚と比較して薄いことが分かる。また、近見・川尻地区帯外同様、前震後と本震後のメッシュランクから噴砂は見られていない。Ground profiles in liquefaction bands occurred by the 2016Kumamoto EarthquakeR. Sakamoto, S. Murakami, R. Hirata, Fukuoka UniversityS, Miwa, Tobishima Corporation47 B1-6B1-1B1+2白川C1-2B1+1B1+4B1+5B1+6B1+7B1-3B1-5C2-4C2-3B1-4B2+6C1+1C2+1C2-2C2+3B2+2C2-1B2-1B2-4B2+7C1+2C1-1C1+3B1+8B2-3C1+3C1+4B1-2B1+3B2+1B2-5B2-2B2+3B2+8B2+5凡例B2+4凡例:液状化帯:液状化帯:ボーリング地点:ボーリング地点図-3 土河原地区液状化帯表-3 土河原地区液状化判定結果(帯内)図-4 城山薬師・半田地区液状化帯表-5 城山薬師・半田地区液状化判定結果(帯内)NoB1+1B1+2B1+3B1+4B1+5B1+6B1+7B1+8B2+1B2+2B2+3B2+4B2+5B2+6B2+7B2+8C1+2C1+3C1+4地下水位0.520.521.50.691.181.121.381.531.621.10.980.650.61.121.500.85地下水位4.01.351.52.000H1(m)1.351.319.000.691.181.121.383.101.901.505.051.702.001.121.800.85H1(m)4.51.355.82.02.684.91.530000101011032A003前震後メッシュランク00100(水中)0(水中)0(水中)本震後メッシュランク前震後のランク本震後のランクNoC1+1C2+1C2+2C2+302B1002B03033442A00100100(水中)0(水中)0(水中)5m液状化層厚(m)3.702.070.004.012.571.982.121.902.352.550.002.533.001.481.903.055m液状化層厚(m)0.502.250.002.852.320.103.2710m液状化層厚(m)7.253.671.005.614.776.084.824.105.105.052.554.334.104.306.908.0510m液状化層厚(m)3.355.154.105.856.625.104.47空洞5m5(m)凡例FL値(FL≦1)凡例FL値(FL≦1)砂質土10(m)10m粘性土砂質土埋土、盛土粘性土埋土、盛土礫質土15(m)15m地下水位礫質土地下水位20m20(m)表-6 城山薬師・半田地区液状化判定結果(帯外)表-4 土河原地区液状化判定結果(帯外)B1-2B1-3B1-4B1-5B1-6C2-2C2-3C2-4地下水位2.90.31.10.81.61.61.51.71.11.01.0地下水位0.41.80.75.325.13.3H1(m)B1-12.91.051.13.401.61.62.502.002.901.102.00H1(m)5.201.808.158.155.13.3前震後のランク00000000000前震後メッシュランク00000本震後のランク00000001000本震後メッシュランク0000005m液状化層厚(m)1.702.651.401.403.052.601.101.800.901.200.805m液状化層厚(m)0.003.203.950.000.000.8010m液状化層厚(m)1.905.653.401.406.406.803.305.301.354.904.0010m液状化層厚(m)3.605.358.353.504.305.80NoB2-1B2-2B2-3B2-4B2-5NoC1-1C1-2C2-105m5(m)凡例凡例FL値(FL≦1)FL値(FL≦1)砂質土10(m)埋土、盛土礫質土粘性土埋土、盛土10m粘性土砂質土15(m)15m地下水位礫質土地下水位20m20(m)城山薬師・半田地区の帯内では、表-5 より H1、5m、10m液状化層厚はそれぞれ 3.3m前後、1.6m程度、5.0m程度と比較的深い位置に層厚が薄い液状化層が堆積していることが分かる。噴砂判読が難しい水域の BD(C2+1,2,3)もあるが、前震後と本震後のメッシュランクから BD 地点での液状化域拡大は確認できなかった。城山薬師・半田地区帯外は、表-6 より表層付近に液状化層である砂質土層が堆積する BD も存在するが、H1 は 4.0m前後、5m液状化層厚は 1.3m程度、10m液状化層厚は5.2m程度であり、帯内と比較して液状化層は深い位置にあり 5m液状化層は薄いことが分かる。また、近見・川尻地区帯外同様、前震後と本震後のメッシュランクから噴砂は見られていない。以上より、近見・川尻地区、土河原地区、城山薬師・半田地区の 3 地区の液状化の帯内では、噴砂判読が難しく噴砂が確認できない BD 地点もあったが、噴砂が確認できたBD 地点では表層付近に砂質土層が堆積していた。この砂質土層はおおよそ深度 5mまでに層厚約 2.2m以上であれば噴砂が発生する可能性が高い傾向にあると考えらる。しかし、土河原地区帯内では B2+3 のように表層付近に粘性土層が存在する地点での液状化域拡大が見られたことから、この粘性土層が、低塑性の粘性土であれば液状化の可能性が考えられ、今後、粘性土層の物性値を調査し、液状化判定を再度実施する必要があると考えられる。一方、液状化の帯外では噴砂は確認できず、表層付近に粘性土層が堆積しており、砂質土層も確認できたがその層厚は帯内と比較して 5m液状化層厚では約 1.7m以下と薄いことが分かった。しかし、城山薬師・半田地区では帯内だが 5m液状化層厚は 1.6m程度であり、他の 2 つの地区の帯内の液状化層厚と比較して薄いことが分かる。これは城山薬師・半田地区の BD 数が少ないことが要因の一つとして考えられる。現時点で、この地区の帯内の BD 調査地点では噴砂は確認できていないが、調査地点以外では噴砂は確認されているため、今後、城山薬師・半田地区の BD 数を増やし、より詳細に調査する必要があると考える。よって、おおよそ深度 5m までの液状化層の層厚が液状化帯域での噴砂の発生状況に影響を及ぼしたことが分かり、このことについては、近見・川尻地区、土河原地区、城山薬師・半田地区にかけての帯状液状化の地盤特性の共通点であると言える。4. まとめ本研究では、メッシュランクによる噴砂判読及び、熊本市の BD を収集し、道路橋示方書による液状化判定を行った。そして、熊本地震において生じた、土河原地区、城山薬師・半田地区の帯状液状化と地盤特性について調査を行い、既往の近見、川尻地区の研究と併せて報告した。その結果、以下の知見が得られた。1)近見・川尻地区、土河原地区、城山薬師・半田地区の 3 地区の液状化の帯内では、噴砂が確認できた BD 地点で表層付近に砂質土層が堆積しており、液状化の帯外では噴砂は確認できず、表層付近に粘性土層が堆積していた。2)土河原地区帯内では B2+3 のように表層付近に粘性土層が存在する地点での液状化域拡大が見られたことから、この粘性土層が、低塑性の粘性土であれば液状化の可能性が考えられ、今後、粘性土層の物性値を調査し、液状化判定を再度実施する必要があると考えられる。3)おおよそ深度 5m までの液状化層の層厚が液状化帯域での噴砂の発生状況に影響を及ぼしたことが分かり、このことについては、近見・川尻地区、土河原地区、城山薬師・半田地区にかけての帯状液状化の地盤特性の共通点であると言える。【謝辞】本研究を進めるに当たり、国土地理院より空中写真を、熊本市役所よりボーリング柱状図および土質試験データを提供いただいた。記して謝意を表します。【参考文献】1) T.Mukunoki et al : Reconnaissance report ongeotechnical damage caused by an earthquake with JMA seismicintensity7twice in 28h,Kumamoto,Japan,Soils and Foundations58(6).pp.947-1088. 2) R. Hirata et al:Liquefaction expansioncaused by foreshocks and main of Japan’s 2016 Kumamotoearthquake,InternationalSymposiumonLowlandTechnology,No80(2018.9) . 3)田辺隼ら:平成 28 年熊本地震で現れた液状化帯上での前震・本震による液状化域拡大,土木学会西部支部研究発表会講演概要集,pp.365 (2017.3)4)坂本ら:平成 28 年熊本地震で生じた土河原、城山薬師・半田地区の帯状液状化と地盤特性,土木学会西部支部研究発表会,(2019.3 月発表予定) 5) (社)日本道路協会,道路橋示方書・同解説 V 耐震設計編,平成 24 年 3 月48
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