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出版

タイトル 試験後試料を活用した地学・防災教育の取り組み
著者 毛利貴子・柴崎達也・神野郁美・吉島由子・大野真央
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 45〜46 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400023
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  • タイトル
  • 試験後試料を活用した地学・防災教育の取り組み
  • 著者
  • 毛利貴子・柴崎達也・神野郁美・吉島由子・大野真央
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 45〜46
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400023
  • 内容
  • 0023A - 09第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月試験後試料を活用した地学・防災教育の取り組み防災教育試験後試料国土防災技術株式会社正会員○毛利貴子国土防災技術株式会社正会員柴崎達也国土防災技術株式会社非会員神野郁美国土防災技術株式会社非会員吉島由子国土防災技術株式会社非会員大野真央1.はじめに本稿では、土質試験後の試料を活用した地学・防災教育の取り組みについて紹介する。2018 年 7 月 31 日~8 月 2 日に東京都内の国立科学博物館で開催された「2018 夏休みサイエンススクエア」イベントで小学生を対象に、土砂災害に関する防災教育や、砂・粘土を活用したお絵かきの体験教室を行った(写真-1)。3 日間で合計 168 名の参加があり、日頃取り込んでいる地質調査業の知見を活かしながら、土砂災害に対する理解を深めるための地学・防災教育を行なった。2.イベントの目的「地球のカケラのひみつを知ろう!」の企画名でイベントを開催した。身近にある写真-1 イベントの様子礫・砂・粘土を“地球のカケラ”として表現し、気軽に地学を始めとする自然科学や自然災害に関する理解を深めてもらうことを目的とした。子供たちが主体的にイベントに参加し、土を礫・砂・粘土に分けることで「観察の楽しさ」「知らなかったことを知る面白さ」を体験してもらった。3.イベントの内容3.1.ふるい分け実験土は粒の大きさの違いによって分類が変わることを説明したあとに、2.00mm のふるいと 0.75mm のふるいを使って、土のふるい分け実験を行った(写真-2)。粒径ごとに分けた土を子供たちに触ってもらい、シルト粘土の細かい手触りや、礫のゴツゴツした感触を体験してもらった。ふるい分け実験を行なったあとに、岩石の種類について説明をした。岩石の種類では、マグマが冷えて固まった火成岩・山や川で砂や泥が積み重なって固まった堆積岩・地下深くで熱や圧力の作用を受けて形成された変成岩などについて説明をし写真-2 ふるい分け実験た。3.2.土砂災害について理解を深めるための学習写真を使って土砂災害について説明をした。土砂災害は、山や谷の土砂が大雨などで一気に押し流される“土石流”、急な斜面が突然崩れ落ちる現象として“がけ崩れ”、緩い斜面が広い範囲にわたりすべり落ちる現象として“地すべり”があり、災害は地質によって起きる現象が変わることを学習した。また、地震が発生したときに地盤が液体状になる現象として“液状化”の説明も行った。こうした災害に対する対策についても学習した。地すべり対策工事の事例を紹介し、抑制工の集水井工・排水トンネル工や抑止工の杭・アンカー工について説明をした。災害現場の地形・地質や自然環境に配慮しながら対策工事を行なっていることを紹介した。3.3 土質試験後試料を使ったお絵かき体験日本国内では多様な地質体で地すべりが発生しており、地域の岩盤を構成している岩石の色調は様々で風化や変質によっても多様である。地すべり地の粘土は含有する鉱物や風化の特性から多様な色調を有することが知られている 1)。地すべり地でのボーリング調査やブロックサンプリングにより採取し、土質試験を実施した試料をリサイクル活用している。粘土によるパステル作画や、粒径ごとに分けた砂よる砂絵を考案した(写真-3)。この粘土・砂を用いたお絵かき作業はとても簡単でわかりやすく、子供から大人まで誰でも参加できる。使用する粘土や砂の選び方で、作品の表情は多彩な色合いを見せ、材料があれば場所は選ばず作画できる。今回のイベントは小学生が対象であったが、子供から大人まで楽しめる内容になっている。写真-3 お絵かき体験Educational activities on earth on science and disaster prevention using tested soil materials; Mouri Takako,Shibasaki Tatsuya, IkumiKamino,Yuko Yoshijima, and Mao Ohno (Japan Conservation Engineers & Co., Ltd)45 3.3.1 粘土を使ったお絵かき地すべり地のすべり面粘土は粘土含有率が高いため、液性限界・塑性限界試験で用いる 425μm以下粒径分の粘性土を白玉くらいの大きさに丸め、ゆっくり乾燥させることでパステル調の画材が作成できる。基本的な作画の方法は、画用紙を敷いて好きな図案の型紙を置き、粘土のパステルを 1 円玉で削って粉を指につけてお絵かきをする(写真-4)。粘土を水に溶いて、水彩画のように作画することもできる。粘土のパステルの色合いはとてもやさしく、柔らかい印象の作品に仕上がる。①粘土のパステルを用意③画用紙に指で粘土を重ねる②1円玉でパステルを削る④完成写真-4 粘土を使った作画手順3.3.2 砂を使ったお絵かき地すべり地などから土質試験用に採取した試験後の試料を粗砂(0.85 ㎜~2.00 ㎜)、中砂(0.25 ㎜~0.85 ㎜)、細砂(0.75 ㎜~0.25mm)にふるい分けする。砂を粒径ごとに分けて砂絵に用いることにより、作品が立体的に仕上げられる。同じ現場の砂でも、粒径ごとに分けると、鉱物の構成が変化し色が変化する。砂絵の台紙には、模様の切り込みが入っている糊付きパネルを使用する。好きな砂を選んでシールを剥がし、模様の上に砂をのせて、払う(写真-5)。同じ作業を繰り返して砂絵を完成させる。自然の砂で作った砂絵は粘土のパステルに比べ、色が鮮明で華やかな印象の作品に仕上がる。①シールをはがす②砂をのせる④同じ作業を繰り返す③砂を払う⑤完成写真-5 砂を使った作画手順4.おわりに昨今、子供たちの理科離れのニュースを聞く機会が増え、地学への関心も低下の一途を辿っている。この企画では、土質試験後の試料を礫・砂・粘土に分け土の特性を分かり易くすることで、地学分野について理解を深める機会となることを期待している。砂や粘土を用いて絵を描くことで、五感を通した自然科学的な視点や感性を養い、自分の住む地域の地質や自然史について興味をもって頂きたいと考える。例えば、恐竜時代であるジュラ紀の地層から採取した粘土で恐竜を描いたことで、地球の歴史にも興味をもって頂くこともできた。イベントで土を扱うに当たっては、小さい子供が口にしないように注意したり、工作後に手をしっかり洗浄することはもちろんのこと、必要に応じて X 線回折試験や蛍光 X 線分析によって試料に含まれる鉱物や元素などの測定も検討していきたい。測定を行なうことによって、有害物質を含まないものであると説明すれば、参加者の安全につながり、土の起源となった地質的な背景や岩石の特性の理解につもながると考えている。環境省では、ごみを限りなく減らし、そのことでごみの焼却や埋め立て処理による環境への負担を少なくして、限りある地球の資源を有効的に活用し、くり返し使う社会(これを「循環型社会」という)を実現するため、“3R(リデュース、リユース、リサイクル)”というキーワードを提唱している2)。土質試験も土質試験試料量を適正に把握して、必要な量の土を現場から採取することで、廃棄処分する試料の量の低減させることも必要である。土質試験後の試料も再利用・再生利用し、環境にも配慮しながら防災教育にも活用していきたい。今回のイベントでは、子供たちや保護者にも興味をもって参加してもらい、土砂災害についての理解を深める機会となった。イベントを通じて家庭でも防災について考えるきっかけになれば幸いである。参考文献1) 柴崎,他:スキャナーを用いた地すべり粘土の色彩評価,第 40 回地盤工学研究発表会,2005 ,pp281-2822) 環境省:3R とは環境省 HP より(2019 年 3 月 2 日取得)46
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