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タイトル 生命の進化に繋がる、海底の地下での化学進化説における粘土鉱物の役割 ( 持続可能な開発目標(SDGs)達成を目指した学習教材の研究 その二 )
著者 水野克己・平野浩一・乾  徹
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 41〜42 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400021
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  • タイトル
  • 生命の進化に繋がる、海底の地下での化学進化説における粘土鉱物の役割 ( 持続可能な開発目標(SDGs)達成を目指した学習教材の研究 その二 )
  • 著者
  • 水野克己・平野浩一・乾  徹
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 41〜42
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400021
  • 内容
  • 0021A - 09第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月生命の進化に繋がる、海底の地下での化学進化説における粘土鉱物の役割( 持続可能な開発目標(SDGs)達成を目指した学習教材の研究 その二 )化学進化SDGsESD地域地盤環境研究所正会員○水野克己地域地盤環境研究所正会員平野浩一大阪大学大学院工学研究科国際会員乾徹1.はじめに化学進化とは、地球に有機物ができて、生物が生まれる最も初期の過程を化学進化と言う。海底の地下での化学進化においては、還元環境で有機物を濃縮し“特定の有機分子”を重合させる、細胞膜の代用となる触媒作用のような環境が必要不可欠である。J. D. Bernal1)は「粘土鉱物の触媒作用」を最初に指摘している。図-1 にモンモリロナイトの膨潤及び分散と会合構造を示すように鉱物は、水で膨潤し、集合、分散、凝結、解泥し、金属イオンをイオン交換する。そして、無機物でありながら有機化合物間の化学反応を進める触媒能(有機界と無機界を繋ぐ性質)をもっている。このため、「巨大な表面積を持つ多様性の触媒層」とも呼ばれていると図-3「海洋における生物・有機分子の自然選択説4)2)。中沢弘基氏らは図-2「海底地下での分子進化説3)」」を主張している。粘土鉱物の役割が大きい「海底の地下での化学進化説」への支持者が増えることは、粘土鉱物研究者にとって喜ばしく、地盤環境系工業材料を関連付けた実験と講座(以下、ジオ ESD と呼ぶ)にも繋がる。本論では、中沢弘基氏ら主張する海底の地下で化学進化説と粘土鉱物の関わりを、化学進化説のなかで俯瞰できるように図で示したので報告する。図-1 固体の濃度を変えたモンモリロナイトの膨潤から分散、凝集、会合までを俯瞰した図図-2「海底地下での分子進化説 3)」図-3 「海洋における生物・有機分子の自然選択説 4)」Role of clay minerals such as montmorillonite in chemicalMizuno Katsumi1 Hirano Koichi1 Geo-Research Institute1evolutionInui Toru2 Oosaka University241 図-4海底の地下で化学進化説と粘土鉱物の関わりを俯瞰した図2.粘土鉱物の物理化学的作用と化学進化の関わり化学進化の 1 段階として、メタン(CH4),アルデヒド(H2CO),アンモニア(NH3)など単純な有機化合物が重合縮合を繰り返す。第 2 段階では,生命を構成している物質の構成単位となっているアミノ酸,単糖,核酸塩基などが生成する。第 3 段階ではアミノ酸,核酸塩基,単糖が結合し高分子化合物であるタンパク質,核酸,多糖類が生成する。第4 段階として外界から仕切りができて,代謝をする複合物質系が生成し命(原始生命)が誕生したと言われている。ここで、合成された複雑な高分子有機物 (生体高分子)などを生成するための生体内の反応は、全て水溶液中で起こるため水は必要である。しかし生体高分子は、水溶液中では加水分解するため不安定である。しかも、粘土鉱物の触媒作用は重合と分解の両方に作用するので、海水など一定の条件の中にあるだけでは化学進化(高有機分子に向かう進化)に寄与できない。3.「海底地下での分子進化説」と「海洋における生物・有機分子の自然選択」中沢弘基氏は、初期地球に海が出現した後、海底地下に単純な有機物が濃集し、海底堆積物が圧密・脱水される過程でより複雑な有機物へと“進化”したとする説を支持している3)。そこで「何々(典型的には水)があれば生命が発生する」とする一般の生命起源論でなく、「低有機分子が海水、海底、地下と存在環境が変わる中で、粘土鉱物の触媒作用が働いて、低有機分子が高有機分子化に一方的に働くと主張している3)。これは、図-3 に示すように炭化水素のような疎水性分子は、相互に凝集して海面に浮上し、油膜となる。図-2 に示すようにアミノ酸などの親水性有機分子(生物・有機分子)は海水中に溶解または分散溶解・粘土鉱物粒子に吸着・凝集、重力・沈降し堆積・重合する。これが「海洋における生物・有機分子の自然選択」である。そして、堆積・重合した親水性分子(生物・有機分子)は合成された複雑な高有機分子に化学進化することが、中沢弘基氏が主張する「海底地下での分子進化説」である。4.まとめ化学進化に中沢弘基氏が主張する「海洋における生物・有機分子の自然選択」と「海底地下での分子進化説」を取り入れ、これに粘土鉱物の関わりを加えた図を図-4 に示す。簡単な実験で、分散した粘土鉱物コロイド粒子に、低分子業凝集剤と高分子凝集剤を加えると凝集沈殿する。両者の違いは、低分子と高分子の分子量だけで、水と粘土鉱物は共通する。簡単に言えば、低分子と高分子の移行がどのように行われたのかを解明するのが中沢弘基氏の研究であった。中沢弘基氏は、「化学進化では、存在環境でサバイバルした低分子がダイナミックなプロセスを至らないと生命が誕生する高分子に低分子が繋がらないと」と強く論じておられていた。この研究は、GRI ベントナイト問題研究会(会長 水野克己)によって調査したものを編集したものである。謝辞:中沢弘基氏には図-4 の作製に関して加筆指導して頂いた謝辞を述べます。5.参考文献1)橋爪秀夫:化学進化における粘土鉱物の役割,粘土科学第 40 巻第 3 号 152-168,2001.2)佐藤努:粘土鉱物の水和と吸着水の構造,鉱物学雑誌,第 25 巻第 3 号,99~110,1996.3)中沢弘基:原始地球における生物有機分子の出現と自然選択,Viva origino 37,pp52-pp60,2009.4)Otake Et al:Stability of Amino Acids and Their Oligomerization Under High-PressureConditions,Implications for Prebiotic Chemistry. ASTROBIOLOGY Volume 11, Number 8, 2011.5)胸組虎胤(むねぐみ とらたね):化学進化と生命の起源の考え方,鳴門教育大学研究紀要,第 28 巻 2013.42
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