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タイトル 砂型積層3Dプリンターで作製した地盤材料モデルの力学特性の再現性
著者 鈴木健一郎・奥澤康一・濱本昌一郎・藤井幸泰・磯部有作
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 37〜38 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400019
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  • タイトル
  • 砂型積層3Dプリンターで作製した地盤材料モデルの力学特性の再現性
  • 著者
  • 鈴木健一郎・奥澤康一・濱本昌一郎・藤井幸泰・磯部有作
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 37〜38
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400019
  • 内容
  • 0019A - 01第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月砂型積層3D プリンターで作製した地盤材料モデルの力学特性の再現性3D プリンターせん断強度圧裂引張強度東京大学㈱大林組正会員正会員 ○鈴木 健一郎濱本 昌一郎 名城大学㈱地層科学研究所正会員正会員正会員奥澤藤井磯部康一幸泰有作1. はじめに近年,3D プリンターによる造形技術の進歩により,様々な立体が複製,再現され,X 線 CT データで土や岩石の復元も試みられている。3D プリンターで地盤材料が再現されれば,数値実験と物理実験との対照も行われ,地盤の特性への評価手法に大きな進歩をもたらすものと考えられる。人工砂と樹脂バインダーを用いて複雑な形状の砂型を作製する3D プリンターがある。「3D プリンターによる岩盤の復元に関する研究委員会」では,この3D プリンターを用いて,人工砂岩を作製し,その再現性について検討を行ってきた 1),2),3)。この報告では,砂型積層3D プリンターで作製した円柱供試体の密度試験,一軸圧縮試験,一面せん断試験,圧裂試験によるクラックの成長について再現性を調べた結果について報告する。2.供試体および試験方法表‐1 物理特性の平均と標準偏差供試体は,鋳造用の鋳型を造形するた単位体積重量VpVsエコーチップめの砂型積層造形装置(砂型積層3D プリ3(m/s)(m/s)反発値)(kN/mンター)を用いて作製した。材料は,粘結⼀軸圧縮試験供試体平均15.3919921098411.72剤に水ガラスをベースにした無機バインダH100標準偏差0.11361411.83ーを用い,粒径 100μm の人工砂を結合したものである 1)。⼀⾯せん断試験供試体平均15.4920941187402.80一軸圧縮試験用供試体は,直径 50mmH50標準偏差0.12332118.89×高さ 100mm の円柱(凡例で H100 と示圧裂引張試験供試体平均15.4520431132ーす)である。試験は地盤工学会基準H25標準偏差0.175533ー(JGS2521-2009)に従って 10 供試体の試験を実施した。一面せん断試験用供試体は,直径 50mm×高さ 50mm の円柱供試体(凡例で H50 と示す)である。一面せん断試験装置は,カナダROCTEST 社製のポータブルシアーボックス(モデル PHI-10)とデータ取り込み装置とパソコンを組み合わせたものである。ポータブルシアーボックスの仕様およびせん断供試体の作製は文献 2 を参照されたい。圧裂引張試験用供試体は,幅 1mm,長さ 25mm のスリットを中心に入れた直径 50mm×高さ 25mm の円柱供試体である(凡例で H25と示す)。圧裂引張試験(ブラジリアンテスト)は,スリットと載荷軸との成す角度を 0,30,45,60,90 deg と回転させて,地盤工学会基準(JGS2551-2009)に従ってそれぞれ 4 供試体の試験を実施した。3. 試験結果および考察3.1 試料のばらつき図‐1 単位体積重量と Vp の関係砂型積層3D プリンターで作製された供試体のばらつきを把握する目的で,密度試験,弾性波速度試験,エコーチップによる局所的な反発値を計測した。結果を表‐1 に示す。それぞれ 10 個の供試体の平均と標準偏差を示した。単位体積重量は,一軸圧縮試験用供試体で,平均 15.39 kN/m3,標準偏差 0.11,せん断試験用供試体で,平均 15.49 kN/m3,標準偏差0.12,圧裂試験用供試体では,それぞれ 15.45 kN/m3 ,0.17 であった。単位体積重量に対して,弾性波速度 Vp および Vs をプロットして,図‐1 と図‐2 に示した。同一条件で作製された供試体でもこれだけのばらつきを持ち,単位体積重量と正の相関を持っている。エコーチップ反発値は,4cm 以上の厚みを有すれば厚みの影響はないという報告 4)があり,一軸圧縮試験用と一面せん断試験用の高さ 50 mm 以上の供試体を対象として計測を行った。図‐3 にエコーチップ反発値のばらつきを単位体積重量に対して示した。エコーチップ反発値から一軸圧縮強さに変換する式は様々提案されている4),5)。反発値 400 以下は軟岩に属し,低強度の軟岩を対象とした換図‐2 単位体積重量と Vs の関係算式 5)からは,4~6 MPa の一軸圧縮強さが推定された。Study on mechanical properties of geologicalmaterial model made by 3D printerSUZUKI, Kenichiro, OKUZAWA, Koichi, Obayashi Corporation.HAMAMOTO, Syouichiro, The University of Tokyo, FUJII, Yasuyuki, MeijoUniversity, ISOBE, Yusaku, Geoscience Research Laboratory37 3.2 一軸圧縮試験結果一軸圧縮強さは、10 供試体の平均 6.3 MPa,標準偏差 0.32 であった。破壊応力の 1/2 における接線弾性係数は,平均 1,741 MPa,標準偏差 131 であった。3.3 一面せん断試験結果垂直応力を 0.2MPa,0.4MPa,0.8MPa,1.6MPa の 4 種類で一定載荷の後,せん断応力を加えた一面せん断試験を行った。図‐4 に結果を示す。R2 値で 0.64 とばらつきは大きい。粘着力は,1.5MPa,内部摩擦角は 27 deg となった。昨年度実施した 3 種の垂直応力での結果も含めてある程度のばらつきは考慮する必要があると考えられる。3.4 圧裂引張試験結果圧裂引張試験では,スリットと載荷軸との成す角度を 0,30,45,60,90 deg と回転させて破壊強度と破壊形態を観察した。圧裂引張強さの算出は,以下の式に従った 4)。2ܲߪt =ߨ‫ܮܦ‬図‐3単位体積重量とエコーチップ反発値の関係ここで,σt は圧裂引張強さ,P は破壊荷重,D は供試体直径,L は供試体高さである。図‐5 に,圧裂引張強さとスリット角度の関係を示した。2 回に分けて作製したためロットの違いを記号を変えて示した。スリット角度 60 deg においてはロットの違いが現れたが他の角度ではロットの違いはない。スリットという弱部に強度特性が支配されるため,ばらつきは小さい。スリット角度が 90deg の時に最大の引張強さとなり,最小の 45 deg の平均値で 2.2 倍になっている。これらの強度の違いは,破壊形状から説明される。写真‐1 に示したクラックの進展状況を見ると,スリット角 0 deg では,圧縮軸と直線状に引張破壊している。中央の 45 deg のケースでは,スリットに沿った滑りによるスリット両端から発生したウイングクラックが供試体端部に達して破壊している。この形態は,30 deg も 60 deg も同様である。スリット角が 90 deg のものはスリットが無い状態と同じで,材料の圧図‐4 一面せん断試験結果裂引張強さとなっている。4. まとめと展望人工砂と樹脂バインダーを用いた砂型積層3D プリンターで作製した人工砂岩の円柱供試体の再現性を,密度試験,一軸圧縮試験,一面せん断試験,スリット入り圧裂引張試験により調べた。単位体積重量,弾性波速度など必ずしも完全な複製が得られているとは言えないことが認められた。透水係数などの平均的な特性については,再現性が認められているが 3),組織に敏感な強度特性に関しては,若干のばらつきがあり,それを考慮した物理模型作製を行う必要があると考えられる。参考文献1) 竹村貴人, 西本壮志,岡根利光,佐藤 稔:砂型積層3D プリンターを用いた地盤材料モデルの作製,第 53 回地盤工学研究発表会,0034, 20182) 鈴木健一郎,藤井幸泰,磯部有作,佐ノ木 哲:砂型積層3D プリンターで作製した地盤材料モデルのせん断特性,第 53 回地盤図‐5 圧裂引張強度とスリット角度の関係工学研究発表会, 0036, 20183)奥澤康一,濱本昌一郎,下茂道人,佐ノ木 哲:砂型積層 3D プリンターで作製した地盤材料モデルの透気・透水特性,第 53 回地盤工学研究発表会, 0035, 20184) 川崎 了,吉田昌登,谷本親伯,舛屋 直:簡易反発硬度試験による岩質材料の物性評価手法の開発―試験条件の影響と基本特性に関する調査―,応用地質,第 41巻,第 4 号,pp. 230-241, 20005) 例えば,津坂仁和:堆積軟岩におけ写真‐1 圧裂試験における破壊状況る立坑掘削の内空変位計測に基づく岩盤挙動分類の提案,土木学会論文集 F, Vol.66, (a)スリットを貫通する引張破壊,(b)スリット端からのウイングクラックNo.1, 181-192, 2010発生による破壊,(c)スリットに無関係な圧裂引張破壊38
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