書籍詳細ページ
出版

タイトル JIS改正に伴うアレイ架台基礎の比較事例(その2)
著者 三浦国春・三浦桂子
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 33〜34 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400017
内容 表示
ログイン
  • タイトル
  • JIS改正に伴うアレイ架台基礎の比較事例(その2)
  • 著者
  • 三浦国春・三浦桂子
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 33〜34
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400017
  • 内容
  • 0017H - 01第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月JIS 改正に伴うアレイ架台基礎の比較事例(その2)直接基礎摩擦荷重㈱大林組同正会員○三浦国春正会員三浦桂子1.はじめにアレイ架台基礎の多くは,「JISC8955:2004(2011)太陽電池アレイ用支持物設計標準」に基づきその構造仕様を決定していたが,近年の異常気象や不適切な設計に伴い架台基礎に被害が発生している.そこで 2017 年 3 月にJIS 番号はそのままで「JISC8955:2017 太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法」に改正され,設計荷重の見直しが図られた.この JIS 改正により設計用風圧荷重が大きくなり,アレイ架台および基礎の仕様に影響を及ぼす.前稿1)では,杭基礎形式のアレイ架台を対象として,JIS 改正による設計条件や設計用荷重への影響を定量的に整理した.本稿では,JIS 改正に伴って,直接基礎形式のアレイ架台にどのような影響を及ぼすかを検討した.2.JIS 改正概要JISC8955:2017 は,電気設備技術基準への反映と時間差があったため直ぐには運用とはならなかったが,2018 年10 月に電気設備技術基準に反映され現在運用されている.直接基礎の仕様には,勿論風圧荷重も影響するが,地震時慣性力や支持地盤と直接基礎の摩擦がより大きく影響する.JISC8955:2004(2011)では,陸屋根式の直接基礎(質量基礎と記載されている)に対する地震荷重については解説欄に設計用水平震度に関する記載があったが,地上設置式の基礎については設計用水平震度が明記されていない.設計用水平震度は発電施設により異なって設定され,陸屋根式の基礎への設計用水平震度を準用してkH=0.5 を採用する例や,建築系の指針類から kH=0.2 や kH=0.3 を採用している例が散見される.支持地盤の摩擦係数にしても,予め土質試験を行って内部摩擦角 Φ から算出したり,指針類からμ=0.4~0.6 を採用したりしている例が見受けられる.ただし,摩擦係数に関しては JISC8955:2017 に記載はないが,新エネルギーの技術研究開発の一翼を担う国立研究開発法人 NEDO より刊行されている「地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン 2017 年版」に,「土質試験などをしない場合μ=0.3~0.5」を採用することが推奨されている.さらに直接基礎の滑動や転倒に対する安全率も摩擦係数と同様に,JISC8955:2017 に記載はなかった.これまで安全率を長期 1.5,短期 1.2 を採用する例が多かったが,前出のガイドラインでは長期,短期区別なく安全率 1.5 を採用するよう記載されている.主な改正項目を表-1に示す.表-1改風力係数:Ca(地上設置)正前正圧:Ca=0.35+0.055θ-0.0005θ2負圧:Ca=0.71+0.016θ負圧:Ca=0.85+0.048θ-0.0005θ2θ:アレイ面の傾斜角度架台設計用基礎の滑動・転倒の安全率基礎摩擦係数:μCs=1.0 とする(積雪の滑落が保証できない場合)Ⅲ(市街地又はアレイ地上高が 13m 以下)粗度区分後正圧:Ca=0.65+0.009θCs=√cos(1.5θ)地表面正5°≦θ≦60°勾配係数:Cs:kH改15°≦θ≦45°(30°±15°)積雪荷重水平震度主な JIS 改正項目(アレイ地上高は 13m 以下より多くの建設地がⅢ)kH=1.0 以上(陸屋根式)のみ記載あり地上式:記載がなく kH=0.2~0.5 を採用記載がなくμ=0.4~0.6 を採用Ⅲ→Ⅱ(田畑などの平坦地)(アレイ地上高の記述がなくなる)架台(地上) kH=0.3 以上基礎(地上) kH=0.3 以上基礎(地中) kH=0.1 以上μ=0.3~0.5または内部摩擦角 Φ より算出(NEDO ガイドライン)記載がなく長期:1.5,短期:1.2 などを採用1.5(長期,短期とも)(NEDO ガイドライン)3.モデル概要と架台基礎仕様比較試算を行ったモデルの設計条件を表-2に示す.比較的積雪が少なく,関東以西の一般的な建設地を想定したアレイ架台基礎を対象とした.直接基礎では設計用水平震度や摩擦係数の条件設定により,その仕様が大きく異なっCase Study of Photovoltaic Cell Array FoundationMIURA Kuniharu , Obayashi Corporationaccompanying JIS Revision(Part2)MIURA Keiko , Obayashi Corporation33 てくる.例えば設計用水平震度 kH=0.5 とした場合,摩擦係数をよほど大きく設定できなければ基礎の一部を根入れさせる必要がある.本稿では基礎の仕様を単純に比較するため,基礎を根入れさせなくても成立する設計条件として比較することとした.アレイ架台基礎のイメージを図-1に示す.アレイの地盤面に対する傾斜角度は 10°とし,1架台あたりの太陽電池モジュール枚数は 16 枚(4 段×4 列)とした.アレイ前面からの風を正圧,アレイ背面からの風を負圧と称し,設定した設計条件により環境係数や風圧荷重などそれぞれ算出した.旧 JIS と新 JIS の比較を図-2,図-3に示す.新旧 JIS で風圧荷重と積雪荷重をそれぞれ算出した結果,新 JIS では積雪荷重は風圧荷重(正圧)よりも小さく,積雪荷重により架台および基礎の仕様が決定されないことが分かった.新 JIS の積雪荷重は,アレイの傾斜による積雪の落下を考慮しないことから旧 JIS の積雪荷重の 1.02 倍となった.環境係数は地表面粗度区分により変化する.表-1の記載の通り,これまでアレイの地上高さが 13m 以下の条件下では,市街地と同じ区分Ⅲと評価できた建設地が,アレイの地上高さの規定がなくなったため,そのほとんどが田畑や住宅が散在する平坦地という条件下に分類される区分Ⅱとなる.環境係数は旧 JIS より 1.49 倍大きくなり,風力係数は,アレイ傾斜角が 10°の場合,正圧で 1.08 倍,負圧で 1.35 倍大きくなる(図-2).設計用速度圧は環境係数がパラメータとなることから環境係数と同様に旧 JIS の 1.49 倍となり,風圧荷重は,設計用速度圧と風力係数の積により算出されることより,アレイに作用する風圧荷重は正圧で 1.61 倍,負圧で 2.01 倍大きくなる(図-3).このように風圧荷重は新 JIS の方が大きくなるが,今回の直接基礎の仕様は地震荷重によりその大きさが決定することとなった.直接基礎の大きさは新 JIS:幅 1.3m×長さ 4.4m×高さ 0.3m,旧 JIS:幅 1.2m×長さ 4.4m×高さ 0.3m となり,体積比で新 JISの方が 1.08 倍大きくなった.新 JIS では架台部分の設計用水平震度は k H =0.3 と旧 JIS より小さくなり,慣性力としては楽になったが,基礎安定のための許容安全率が 1.5 となっていることより,最終的には新 JIS の方が大きな基礎が必要となった.因みに摩擦係数をμ=0.4 とすると,旧 JIS では基礎を大幅に大きくすれば計算上成立するが,新JIS では基礎を一部根入れしない限り安全率 1.5 を満足することはなかった.また風圧荷重の増加により必要な架台鋼材寸法は大きくなり,架台鋼材総重量が約 20%増加した.表-2想定した設計条件34(m/s)設計用基準風速旧 JISⅢ,新 JISⅡ地表面粗度区分40(cm)地上垂直積雪量支持地盤(N 値)7(砂質土)旧 JIS 1.0,新 JIS 0.3(架台)設計用水平震度 kH新/旧 JIS 0.3 (基礎)0.5摩擦係数μ図-1アレイ架台基礎概略図旧 JIS 1.2,新 JIS 1.5旧JIS新JIS2.01倍(m3)1.08倍1.7285810481.61倍78782812331578(N/m2)1.2801.49倍65011.35倍0.9501.08倍0.785係数新JIS0.8501.49倍1.19421.778旧JIS1.58792基礎安全率(短期)0環境係数E⾵⼒係数(正圧)設計⽤速度圧⾵⼒係数 (負圧)(N/m2 )図-2JIS 比較図(1)⾵圧荷重(正圧)(N/m2 )図-3⾵圧荷重(負圧)(N/m2 )基礎体積(m3)JIS 比較図(2)4.おわりに新旧 JIS を用いて,モデル条件下における設計用荷重および基礎仕様を比較した.風圧荷重は旧 JIS での設計の約2 倍となり,鋼材重量は約 1.2 倍,基礎体積は約 1.1 倍とする必要があることがわかった.直接基礎の場合,現地実験2)等を行って実際の地盤の摩擦係数を設定しない限り,根入れなしでは基礎構造として成り立たない.今後新たに太陽光発電施設を計画する場合には,JIS 改正項目を良く理解し,その計画を進めなければ JIS 規格を満たさない発電施設となり得る.一方,新 JIS の適用により既設発電施設では既存不適格となるアレイ架台および基礎が多数出てくる.FIT 期間は原則 20 年であるが,発電施設改修時や増設時の明確なルールつくりが必要となると考えられる.参考文献:1) JIS 改正に伴うアレイ架台基礎の比較事例(第 53 回地盤工学研究発表会):2) 地上設置式太陽電池アレイ基礎の滑動抵抗に関する実験的研究(第 51 回地盤工学研究発表会)34
  • ログイン