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出版

タイトル 技能試験配付試料の均質性確保に向けての取り組み
著者 服部健太・澤 孝平・日置和昭・中山義久・渡邉健治
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 23〜24 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400012
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  • タイトル
  • 技能試験配付試料の均質性確保に向けての取り組み
  • 著者
  • 服部健太・澤 孝平・日置和昭・中山義久・渡邉健治
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 23〜24
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400012
  • 内容
  • 0012D - 00第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月技能試験配付試料の均質性確保に向けての取り組み試料の均質性 標準偏差 試料の寄与率関西地盤環境研究センター正 会 員○服部 健太関西地盤環境研究センター国際会員澤大阪工業大学国際会員日置 和昭関西地盤環境研究センター国際会員中山 義久東京大学国際会員渡邉 健治孝平1.はじめに(公社)地盤工学会の基準部に設置された技能試験実施委員会(委員長:日置和昭)は,平成 23 年度から継続的に“地盤材料試験に関する技能試験”を実施し,その技能評価を行っている。この技能試験においては,配付される試料の均質性が重要である。本稿では,改良土を対象とした湿潤密度試験と一軸圧縮試験の技能試験(平成 24 年度,平成 27年度,平成 30 年度)について,実施委員会から参加機関に配布する供試体の均質性確保に向けた取り組みと,均質性の実態について報告する。2.配付試料に用いる材料表-1 物理試験結果 1)に加筆2.1 母材について供試体作成に用いた母材の物理試験結果を表-11) に 加 筆 に,粒度試験結果を図-11) に 加 筆 に示す。それぞれ,天日干し等により乾燥され,土粒子の密度砂分シルト分粘土分液性限界塑性限界(g/cm3)(%)(%)(%)(%)(%)56kg/m3,59kg/m32.6704.156.539.445.1カタルポ(平成27年度)25kg/m3,30kg/m32.6910.159.540.4笠岡粘土(平成30年度)41kg/m3,45kg/m32.6432.832.361.6試料名(実施年度)配合量藤森粘土(平成24年度)塑性指数分類名20.125.0(CL)30.420.110.3(CL)57.819.838.0(CH)粉体状態ものである.これらの図表より,それぞれの塑性指数は異なるものの,藤森粘土とカ100タルポは,砂分とシルト分に大差はなく,低液性限界の粘土である。ま90粘土を採用した経緯は次のようである。まず,平成 24 年度の藤森粘土は,比較的手に入りやすく,平成 26 年度の物理試験に関する技能試験にも使用されている。しかし,平成 27 年度の改良土の技能試験に使用を試みたが,PH 値が低い(pH3 程度)ため安定した供試体が作成できないこと1),および藤森粘土の生産が中止されることから,代替試料としてカタルポを使用することにした。ところが,平成 27 年度のアンケ80通過質量百分率(%)た,笠岡粘土は,粘土分が多く高液性限界の粘土である。この 3 種類の7060504030藤森粘土(平成24年度)カタルポ(平成27年度)笠岡粘土(平成30年度)201000.001ート結果から,プラスチックモールドの脱型時に供試体が割れる問題や,均質性の確保が十分でないことが判明し,平成 30 年度は,これまでと0.010.1110粒径(mm)図-1 粒径加積曲線 1)に加筆異なる試料として塑性指数の高い笠岡粘土を用いることにした。2.2 配合量の検討200100kN/m2~120kN/m2,B 強度:140kN/m2~160kN/ m2 を目標強度として配合量を求める(図-2)。この強度設定は,①送付時にできるだけ乱れが生じないように100kN/m2 以上,②ワイヤーソ―での成形ができることを目指して 200kN/m2 程度以下とし,この 100~200 kN/m2 の間の 2 パターンとしている。平成 30 年度には次の 3 段階の手順により作業を進めている。【手順1】初めに供試体作成時の初期含水比を決め,次に配合時の基準となる湿潤密度を計測する。初期含水比は,配合時の流動性や気泡除去の容易さ,タッ一軸圧縮強度 (kN/m2)今回の技能試験では,あらかじめ実施委員会が準備した異なる 2 種類の試料を用いて実施する。この 2 種類の供試体が異なる強度になるように,A 強度:B強度A強度1000020A配合 40B配合6080配合量 (kg/m3)図-2 配合量の決定方法ピングによる脱気時に分離しない程度に設定する。【手順2】予備試験 1 回目で,異なる 4 種類の初期含水比(wL+5%,wL+10%,wL+15%,wL+20%)で湿潤密度を測定し,その湿潤密度で 4 配合量(40、45、50、55 kg/m3)の 16 パターンを実施している。予備試験の結果,液性限界Some Actions on the Homogeneity of Sample used for Proficiency TestingHATTORI, Kenta (Kansai Geotechnology and Environment Research Center), SAWA, Kohei (Kansai Geotechnology andEnvironment Research Center),HIOKI, Kazuaki (Osaka Institute of Technology), NAKAYAMA, Yoshihisa (Kansai Geotechnologyand Environment Research Center), WATANABE, Kenji (Tokyo University)23 wL+10%未満では配合時の流動性が悪く脱気しにくい等の問題があり,wL+15%以上では一軸圧縮試験時に脱水が見られるので,初期含水比を wL+10%とする。【手順3】目標強度の決定や再現性の確認のため,予備試験 2 回目を 4 配合量(41kg/m3 、 43kg/m3 、45kg/m3 、47kg/m3)で実施し,28 日強度の結果から 41kg/m3,45kg/m3 の配合量に決定している。2.3 均質性確保に向けた具体的取り組み技能試験の供試体作成においてその均質性を確保するために,次のような点に気を配っている。(1) まず母材を 425μm のふるいにかけ,全体を均質に撹拌する。(2) 次にミキサーで,母材とセメントの粉体同士を 1 分間撹拌する。(3) その後,一気に加水すると含水比のばらつきが生じるおそれがあるので,撹拌しながら 1 分間かけて徐々に加水する。(4) 加水後は,5 分間撹拌した後,一度ミキサーを停止し,ミキサー側面や底面の撹拌が不十分と思われる個所を,ヘラ等により人力で撹拌写真-1 試料の注入状況した後,最後に 5 分間かけてミキサーで撹拌することで均質性を高める。(5) 撹拌後,試料を厚手のビニール袋に入れ,袋の端を切り,生クリーム方式でプラスチックモールドに 3 層に分け入れる(写真-1)。(6) 1 層ごとに 5 人が順番にモールドをタッピングすることにより,個人による誤差を少なくする。3 層終了後、端面を成形し,その質量が±1.0g であれば合格とし,-1.0g未満であれば,脱気不十分とみなし再度タッピングする。(7) ラップにて乾燥を防いだ容器に試料を入れ,容器の淵を両面テープで密閉して湿度を保つ。(8) これらの容器を空調設備によって温度 22℃に設定した室内にて養生する。(9) 養生後,各配付試料を気泡入り緩衝材で梱包し,試験日の 3 日前までに到着するよう材齢 21 日の時点で発送する。3.均質性の実態JIS Z 8405 付属書 B によると,「技能試験の配付試料は,ss/ σˆ ≦0.3(ss:試料間標準偏差 σˆ :技能評価のための標準偏差)の場合均質である」とされている。これを試験結果の不確かさ要因分析により表示すると,(ss/ σˆ )2=(σH /σP)2=RSMP/10025.0となる。ここに,σH:均質性試験の標準偏差,σP:技能試験の標準偏差,RSMP:配付試料の寄与率である。すなわち,JIS の均質性基準(ss/ σˆ ≦実行委員会では,均質性が確保しにくい地盤材料の場合,JIS 基準の比 0.3 を仮に 0.5(RSMP≦25%)として,均質性判定を試行している 2)。変動係数 v1 (%)0.3)を満足する場合,配付試料の寄与率 RSMP は 9%以下となる。一軸圧縮強度20.0技能試験(参加機関数 50~55 機関)の変動係数 v1(四分位法によ15.0(平成24年度)(平成27年度)10.0(平成30年度)5.0る)を図-3 に示す。これによると,徐々に変動係数が小さくなっており,この要因一つとして考えられる配付試料の寄与率を図-4 に示す。この図より,カタルポ以外の試料の含水比,全試料の湿潤密度,藤森粘土以外の試料の一軸圧縮強度について RSMP が 25%以下を示しており,均質と0.0試料56試料59試料25試料30カタルポ藤森粘土試料41 試料45笠岡粘土図-3 試料毎の変動係数判断できる。また,どの項目についても笠岡粘土は過去 2 年より均質な試料であると言える。50.0(平成27年度)湿潤密度配付試料の寄与率 RSMP (%)含水比一軸圧縮強度40.0(平成24年度)30.0(平成24年度)(平成27年度)(平成27年度)25.020.010.09.0(平成24年度)(平成30年度)(平成30年度)(平成30年度)0.0試料56 試料59 試料25 試料30 試料41 試料45藤森粘土笠岡粘土カタルポ軸ラベル4.おわりに試料56 試料59 試料25 試料30 試料41 試料45藤森粘土笠岡粘土カタルポ試料56 試料59藤森粘土試料25試料30カタルポ試料41 試料45笠岡粘土図-4 配付試料の寄与率本報告では,均質性確保に向けた工夫について紹介するとともに,結果として均質な試料が配付できていることがわかった。得られた成果は,今後の技能試験においてより均質な供試体作成に活かしていきたい。参考文献1) 松本修司,澤孝平,中山義久,服部健太:技能試験結果に用いるセメント改良土供試体の均質性,第 12 回地盤改良シンポジウム論文集,No.4-1,日本材料学会,2016.2) 澤孝平,服部健太,城野克広,保坂守男:技能試験配布試料の均質性に関する検討,第 53 回地盤工学研究発表会,pp87-88,2018.24
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