書籍詳細ページ
出版

タイトル 近赤外線水分計によるロックフィルダムコア材料の含水比迅速測定法
著者 小原隆志・小林弘明・坂本博紀・福島雅人
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 15〜16 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400008
内容 表示
ログイン
  • タイトル
  • 近赤外線水分計によるロックフィルダムコア材料の含水比迅速測定法
  • 著者
  • 小原隆志・小林弘明・坂本博紀・福島雅人
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 15〜16
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400008
  • 内容
  • 0008D - 03第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月近赤外線水分計によるロックフィルダムコア材料の含水比迅速測定法鹿島建設 (株) 正会員 ○小原 隆志,小林 弘明,米丸 佳克含水比試験 近赤外線水分計 コア(独) 水資源機構 正会員 坂本 博紀,福島 雅人1.はじめに盛土工の締固め管理において盛土材料の含水比は基本的な管理項目であり,施工現場では土取り場や盛土ヤードにおいて盛土材の含水比が適切な範囲にあることを確認しながら施工を行う.降雨後など盛土材の状況変化があった場合にも含水比は施工判断の基準となるため,現場の含水比の測定には迅速性が求められる.また,遮水性が要求されるロックフィルダムのコア盛立工では含水比について厳しい規格が設けられており,一般に施工含水比は最適含水比 wopt を基準に概ね+3%の範囲に限定されることから,含水比の測定にはこの管理レベルに見合う測定精度も要求される.筆者らは,このような含水比測定の迅速性と精度についての現場的要求を満たす測定法として近赤外線(以後「NIR」)水分計に着目し,土質材料のための含水比測定機(写真 1)を試作し検討を進めてきた 1).本稿では,建設中の小石原川ダムにおける材料の品質管理に NIR 法を適用することを目標として,コア盛立工において一定期間試行し,測定精度や運用方法について検討した結果を述べる.近赤外線水分計2.NIR による含水比測定の原理と特徴NIR 水分計は近赤外線の水分による吸光性を利用した水分計であり,被測定物に近赤外線を当てたときの特定の波長帯における反射光の減衰量を数値化した“吸光度”を測定することで被測定物表面の水分量を推定する.含水比を求めるには,予め対象材料の吸光度と含水比の相関(検量線)を求めておく必要がある.今回用いた NIR は 2 波長タイプで、水分に対する感度が高い 2 つの波長帯の吸光度からコア材近赤外線照射回転測定範囲:φ 約 20mm次の検量線により含水比を推定する。wNIR= a0+a1X1+a2X2(1)写真 1 近赤外線水分計によるコア材のここに,wNIR:NIR 法による含水比,a0:検量線の切片,a1、a2:各吸光度に対含水比測定状況する偏回帰係数,X1、X2:各波長帯における吸光度であり,切片ならびに偏回帰係数は炉乾燥法(JIS A 1203,以後「JIS 法」)で測定した含水比と吸光度の関係から重回帰分析により較正して求める.NIR 水分計は非接触かつ連続的に測定できることから工場製品の品質管理に用いられており,製紙,食品,薬品など利用分野は多岐にわたる.これを施工現場で用いる最大の利点は,近赤外線光を試料に当てるだけで瞬時に測定結果を得ることができる迅速性にあり,ターンテーブル式の試作機 1)では試料の準備~測定~廃棄に要する作業時間は約 5 分と短時間での含水比測定が可能となる.3.コア材の吸光度測定表 1 試料の物理特性測定に使用した試料の物理特性を表 1 に示す.コア材 A~C は異なるストックパイル(細粒材と粗粒材の互層パイル)から切崩したコア材で,粒度分布や塑性指数 Ip は同程度の材料である.着岩コアは岩着部に最初に盛立する細粒分に富んだ材料で,測定結果の参考として示した.ここではコア材C着岩コア2.8172.8302.770最大粒径(mm)150150150粒度194.75 mm通過率 (%)52.948.651.389.50.075mm通過率 (%)テ コ 液性限界ンンシ シ 塑性限界ス 塑性指数ー測定した含水比 wJIS_37.5 の関係である.図 1(a)と(b)に示すように含水比のコア材B2.8873土粒子密度 ρ s (g/cm )含水比の測定粒径を 37.5mm 以下とした.図 1 は各試料の含水比を変化させて測定した 2 つの吸光度と JIS 法でコア材A試料23.723.323.559.0wL40.446.745.059.1wP24.628.927.834.4Ip15.817.817.224.7増加(減少)に伴い吸光度が増加(減少)する傾向や,図 1(c)に示すように 2 つの吸光度が概ね比例関係を示す点はいずれの材料も共通しているが,コア材 A~C と着岩コアのように土質が異なる場合は,吸光度の取り得る範囲が大きく異なる.また,粒度や Ip が同程度のコア材 A~C においても図 1(c)における吸光度の傾向に若干の違いが認められる.コア材 A~C はストックパイル造成に使用した細粒材と粗粒材の採取地が異なり,材料の色相なども吸光度に影響する可能性がある.一方で,後述するように,同じストックパイルのコア材であれば 2 つの吸光度の関係はほとんど変化しないことから,NIR 法を適用するには検量線をストックパイル毎に個別に設定する必要がある.4.NIR 法の測定精度と運用方法図 2 はコア材 A および B の搬出時含水比を NIR 法と JIS 法で測定した結果である.NIR 法による含水比 wNIR_37.5 は測定中の全データを用いて設定した検量線から求めた.NIR 法の測定誤差は概ね±1%以内であるが,礫の多い試料では誤差が 1%を超える場合も確認された.NIR 法で測定できるのは材料表面の水分量であるため,礫に付着する細粒分の含水量が測定結果に支配的となる.そのため粒度が変化し礫分が増加した場合,含水比を実際よりも過大に評価する恐れがある.A near-infrared reflectance moisture sensor for core of rockfill damKajima Corporation Obara T., Kobayashi H. Japan Water Agency Sakamoto H., Fukushima M.15 35(a)(c)3025着岩コアコア材B2015コア材A10コア材C5対象粒径37.5mm以下00.55コア材Aコア材Bコア材C着岩コアJIS法含水比wJIS_37.5 (%)JIS法含水比wJIS_37.5 (%)300.45(b)150.95コア材A105対象粒径37.5mm以下0.20.250.3吸光度X10.350.4コア材Aコア材Bコア材C着岩コア着岩コア0.35コア材B0.3コア材Aコア材Aコア材Bコア材C着岩コアコア材Bコア材C00.75着岩コア20含水比大対象粒径37.5mm以下0.425吸光度X2350.25含水比小コア材C0.20.550.450.650.75吸光度X20.850.951.05吸光度X1図 1 各試料の吸光度20対象粒径37.5mm以下19JIS法による含水比wJIS_37.5 (%)JIS法による含水比wJIS_37.5 (%)2018171615測定期間の平均wopt(コア材B)測定期間の平均wopt(コア材A)14MAE: 0.59RMSE: 0.75コア材A:w=8.3-10.2X1+57.3X2コア材B:w=9.0+0.7X1+25.2X2131212131415161718NIR法による含水比wNIR_37.5 (%)1920正するため,除礫した 19mm~37.5mm 分の JIS 法含水比 wJIS_1937.5 と乾燥質量比 Pwopt(コア材A)15MAE: 0.28RMSE: 0.3814コア材A:w=8.6+3.6X1+24.2X2コア材B:w=6.8-4.0X1+52.2X2131213141516171819NIR法による合成含水比wNIRco m_37.5 (%)2030コア材A 切崩材粒度の推移細粒分含有率Fc(%)さらに,含水比を締固め管理の試験粒径(37.5mm 以下)に補17 測定期間の平均wopt(コア材B)16 測定期間の平均図 3 含水比測定結果(コア材 A,B,19mm 通過分で検量線作成)そこで,礫分による測定誤差を取り除くため,コア材 A,B量線を作成し,19mm 通過分の NIR 法含水比 wNIR_19 を求めた.1812図 2 含水比測定結果(コア材 A,B,37.5mm 以下)の 19mm 通過試料を対象に吸光度と JIS 法の測定を行い,検粒径19mm以下で検量線作成19切崩し開始25切崩し完了20区間1区間2区間3区間4を別途測定しておき,その結果を用いて粒径 37.5mm 以下の合成含水比 wNIRcom_37.5 を次式より求めた.wNIRcom_37.5= P wJIS_19-37.5+( 1-P ) wNIR_19152018/12/10 2018/12/15 2018/12/20 2018/12/25 2018/12/30 2019/1/4(2)2019/1/92019/1/14 2019/1/19図 4 コア材 A の粒度推移19mm 通過分を対象とした検量線による測定結果を図 3 に示す.量評価指標(MAE,RMSE)からも精度が向上したといえる.式(2)のうち,コア材の礫分含有率である P の実績値は 5~20%の範囲で変動幅が大きいこと,礫分の含水比 wJIS_19-37.5 は全粒径の含水比に依らず平均 5%程度と概ね一定であり式(2)における影響度が小さいことを踏まえ,実運用では,①採取試料を篩目 19mm で分級し礫分の湿潤重量比を求め,②wJIS_19-37.5=5%と仮定して乾燥重量比 P を求める,20JIS法による含水比w JIS_37.5 (%)測定誤差は概ね 0.5%~1.0%以内となり,図中に示す回帰モデルの定181716区間115区間214測定期間のwoptの範囲13区間3区間41212その後,③19mm 通過分に対して NIR 法で wNIR_19 を測定し,④wNIRcom_37.5 を計算により求める,という手順で測定することとした.粒径19mm以下で検量線作成1913141516171819NIR法による合成含水比w NIRcom_37.5 (%)20図 5 約 1 か月間の盛立期間中のコア材 A の含水比測定結果5.試行結果コア材 A の搬出時含水比を盛立中の約 1 か月間にわたって前記の方法で測定した.この間,ストックパイルは切崩し始めから完了に至っており,図 4 に示すように粒度が推移した.図 5 に含水比測定結果を示す.粒度が変動したにもかかわらず,概ね JIS 法と整合する結果が得られた.また,検量線を図 4 中に示す 5 日間毎に更新したが,検量線は大きく変化することはなかった.このことから,NIR 法はストックパイルの切崩し初期に設定した検量線をベースに運用を開始し,途中で JIS 法との整合性の確認と検量線の更新を定期的に行うことによって,コア材の粒度変動にも対応できると考える.6.おわりにロックフィルダムコア材を対象にした NIR による含水比迅速測定法について,測定精度や運用方法の妥当性を検証した.2019 年盛立完了を目指し建設中の小石原川ダムの品質管理に本手法を適用したいと考えている.参考文献 1) 藤崎ら:近赤外線水分計を用いた盛立材料の室内迅速含水比測定装置,土木学会第 73 回年次学術講演会,Ⅵ-1051,平成 30 年 8 月.16
  • ログイン