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出版

タイトル 低平地における大規模道路開削工事に伴う沈下原因の解明
著者 今西 肇
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 9〜10 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400005
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  • タイトル
  • 低平地における大規模道路開削工事に伴う沈下原因の解明
  • 著者
  • 今西 肇
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 9〜10
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400005
  • 内容
  • 0005E - 02第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月低平地における大規模道路開削工事に伴う沈下原因の解明掘削 低平地 地盤沈下 小野組 国際会員 ○今西 肇1. はじめに 2008 年 9 月 20 日に開通した 12 キロの Kallang-Paya Lebar Expressway(KPE)は、シンガポールで 9 番目の高速道路である。図-1 に示すように、9 km の開削地下トンネルは 6 車線であり、8 つのインターチェンジと 6 つの換気ビルで構成され、高速道路の 75%が地下にある。その一部の区間において、開削工法により高速道路を建設中に、思わぬ場所に地盤沈下が発生した。 その原因を解明するために、地盤調査と数多くの地下水観測孔を設置し、地下の地盤構造と地下水位の動向を把握した結果、これらの地盤沈下が建設工事とは別の誘因により発生していたことが判明した。図-1 Kallang-Paya Lebar Expressway(KPE)現場 図-2 KPE(C-423 工区)工事中に発生した地盤沈下2. 地盤沈下の発生状況 図-2 は C-423 工区施行中に発生した地盤沈下の状況である。図中の太い実線で示している部分は、掘削に先立ち設置した地中連続壁の位置である。この地域は低平地であり、低層の工場が区画整理された土地に、規則正しく配置された場所である。これらに近接する工事は、地盤沈下を極力防止するため、剛性の高い地中連続壁を用いて掘削している。しかしながら、掘削近隣の沈下は、その原因が土留め壁の水平変形の影響および地下水の低下によるものと断定されたが、掘削箇所から数百メートル離れた箇所の原因不明の沈下が観測された。3. 地盤調査と地表面沈下観測の強化 このような地盤沈下が発生したため、地盤沈下はシンガポールに厚く堆積するマリンクレイ(MC)が素因であり、掘削に伴う地下水位の低下が誘因であると予測し、40 カ所の地盤調査と地表面沈下観測を沈下が発生している地区内で実施した。地質断面図を図-3 に示し、OA 層の上面の等高線を示したものが図-4 である。これによると、対象となる地区は南北に OA 層を深く切り込んだ形で谷部が見られ、その谷部に軟弱な粘土(F1)が堆積していることが判明した。また、マリンクレイの厚さも 10mから 18mと変化に富んでおり、地下水位の低下が原因で場所によって地盤沈下量に大きな違いを生じたことが想定された。 一方、図-5 から図-8 は、各時点で観測された地下水位を水頭で表したものである。これによると、1 月 17 日から 2 月26 日は、取り付け道路の掘削に伴う地下水位の低下が原因で、地盤沈下が進行していることがわかる。しかし、3 月 28日以降の観測では、掘削工事による沈下とは異なった地盤沈下パターンが 3 カ所観測された。図-3 地質断面図(A~A’) 図-4 Investigation of subsidence under large-scale road excavation work in lowland,9OA 層の上面の等高線Hajime IMANISHI, ONO-GUMI 4.地盤沈下原因の考察 地盤調査による地盤構造の把握と、地表面沈下観測結果について、さらに現地の状況を把握するために現地踏査を行ったところ、この地区では、高速道路工事が始まる前から発生したとされる地盤沈下の跡が確認され、さらに、高速道路工事以外の水路工事も同時期に実施されていたことが確認できた。これより、地盤沈下の原因は、高速道路取り付け道路工事に伴う地盤沈下と、水路工事、さらには、高速道路による地下水位の低下とは別の原因の地下水位低下分布が観測されており、この 3 つが複合した地盤沈下が発生したものと判断された。(図-9)5.あとがき 高速道路による地下水の低下とは別の地下水の低下が発生していることの原因を確認することはできなかったが、地下水位分布から、この地区の数カ所でなんらかの地下水位低下が発生していたことは明らかとなった。これにともない、発注者と施工者間で協議が行われ、地盤沈下の責任の所在と補償が決定された。当初、高速道路掘削工事がすべての地盤沈下の原因であるとの判断をされた結果が、地盤調査と現場における地表面沈下観測を用いることにより、それ以外の原因もあることが明らかにされることにより、地盤に関わるトラブルを説明できたことは、すべての関係者にとって早期解決を促す一助になったと考える。なお、本報告内容は、筆者が以前勤務した Samsung C&T 社において担当した事件であることを付記する。原因解明にあたっての関係各位の協力に感謝申し上げる。図-5 地下水位の水頭等高線(2004 年 1 月 17 日) 図-6 地下水位の水頭等高線(2004 年 2 月 26 日)図-7 地下水位の水頭等高線(2004 年 3 月 28 日) 図-8 地下水位の水頭等高線(2004 年 4 月 13 日)図-9 C-432 掘削による沈下とそれ以外の沈下10
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