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出版

タイトル 合理的路面下空洞対策に向けた空洞探査精度の現状と課題
著者 濱也幸樹・大野敦弘・徳永珠未・瀬良良子・桑野玲子
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 3〜4 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400002
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  • タイトル
  • 合理的路面下空洞対策に向けた空洞探査精度の現状と課題
  • 著者
  • 濱也幸樹・大野敦弘・徳永珠未・瀬良良子・桑野玲子
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 3〜4
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400002
  • 内容
  • 0002E - 12第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月合理的路面下空洞対策に向けた空洞探査精度の現状と課題空洞道路陥没ジオ・サーチ株式会社正会員○濱也幸樹同上大野敦弘同上徳永珠未同上国際会員 瀬良良子東京大学生産技術研究所 国際会員 桑野玲子1.はじめに道路ネットワークは国民の経済活動や生活に不可欠な機能であり、災害時の機能不全は緊急対応や人命救助、復旧活動を寸断させてしまうため、平常時から健全な状態に維持管理していくことが重要である。しかし近年、老朽化や高度化する地下利用とその工事等が起因の道路陥没が増加している。陥没現象は、地中に潜在する空洞のうちに対処することで未然に防止できるため、確実な診断技術による点検で空洞を探査し、その結果をもとに危険性や拡大性を評価し、効果的に補修していくことが合理的である。陥没対策の内、空洞の発見を目的として実施される路面下空洞探査は、非破壊調査であるため品質確保が重要となる。また、高い精度の探査結果を前提とし、発見された異常信号に対する直接補修の実施(スコープ調査の省略)が可能となり、道路の安全確保の迅速化や空洞調査業務の効率化が図れる。本稿では過去 3 ヵ年の調査レコードを基に現状の空洞探査精度について分析した結果を報告する。2.調査内容の説明(1)レーダ探査:電磁波地中レーダを搭載した空洞探査車でデータ取得を実施する調査。取得したデータは解析作業を行い、空洞の可能性のある異常信号を抽出する。(2)スコープ調査:空洞の可能性のある異常信号でボーリング調査を実施し、空洞の有無及び舗装構成を確認する調査。3.空洞探査の探査精度の指標空洞探査の能力を評価する場合、「空洞の可能性のある反射信号を検知する」能力と、「検知した信号が空洞であると峻別する」能力の二つの軸に着目する必要がある。それぞれの正解率を「検知率」、「的中率」とし、値の高さで能力を評価することができる。両方の能力が高い水準にあることが、探査精度の高い空洞探査の実施につながる。なお、国や一部の地方公共団体が発注する路面下空洞調査業務では、調査品質の確保を図るために、受注を希望する各調査会社が同一路線で実施する試験調査の結果を、事前に定められたこれらの指標を用いて評価し、受注業者を選定する現道コンペ方式が採用されている。図-1 は、実際の調査現場をイメージした検知率および的中率を説明したものである。・検知率:地中に存在する空洞を検知した割合検知率(%) =A∩B÷A×100= (検知信号のうち実際の空洞数)÷(実際の空洞数)×100※母数が路面下に存在する空洞数となるため、全容を把握し正確な検知率を把握することは困難である。(前述のコンペ方式では、試験調査に参加した各社の発見空洞の和を母数と定義する。)・的中率:検知した空洞信号のうち、実際に空洞だった数の割合(正解率)的中率(%) =A∩B÷B×100 =(検知信号のうち実際の空洞数)÷(検知した信号数)×100※母数は検知した空洞信号、スコープ調査等で空洞か否かを確認するA:実際の空洞数B:地中レーダ探査で抽出した異常信号数図-1 空洞の検知率、的中率の考え方Actual Survey Accuracy and Tasks for ReasonableCountermeasure on Subsurface CavityK.HAMANARI, A.OHNO, A.TOKUNAGA, R.SERA (GEOSEARCH Co., LTD), R.KUWANO (the UNIV. of Tokyo),3 4.分析内容および対象データ以下の調査結果を基に空洞探査の的中率を算出し、探査精度の分析を行った。なお、検知率については母数が路面下空洞に存在する全ての空洞数であり検証が困難であるため、今回の分析対象からは除外した。・調査実施者:ジオ・サーチ株式会社 ・対象レコード:21,145 件・案件集計期間:平成 27 年∼平成 29 年5.分析結果(1)空洞探査の的中率平成 27-29 年の 3 年間の 21,145 件の空洞調査レコードから、車載型装置による調査データを解析した異常信号のうち、スコープ調査で空洞/非空洞を確認した 4,500 箇所の異常信号を抽出した。表-1 空洞探査の的中率(全体、参考値扱い)対 象異常信号数 空洞 非空洞全体(車道部・スコープ調査を実4,5003,965535施した異常信号)的中率88.10%この中で、スコープ調査結果が空洞だったものが3,965 件で、的中率は 88.1%となった(表-1)。表-2 空洞探査の的中率(検証率 8 割以上)(2)空洞探査の的中率(検証率※8 割以上の案件)案件によっては予算の都合などで異常箇所全てにスコープ調査を行なわず、信号の検証という意図から外れるものがある。そこで、検証率が 8 割対 象異常信号数検証率8割以上の案件でスコープ調査を実施した異常670信号空洞非空洞的中率5947688.70%以上という条件で絞った案件の 670 箇所の異常信号だけで的中率を算出した。このとき空洞は 594 箇所で、的中率は 88.7%となった(表-2)。選定の意図がない箇所を対象としたこの値が現状での的中率となる。※検証率:スコープ調査箇所数/異常信号箇所数の案件(3)案件ごとの検証数と的中率案件ごとの検証数と的中率の分布を図-2 に示す。同図に示すように、案件ごとの的中率は 74%から図-2 空洞探査の的中率100%の間でばらついて分布していた。なお、検証(検証率 8 割以上の案件、異常信号数 vs 的中率)数と的中率の間に相関はなかった。(4)案件ごとの検証数と的中率案件ごとの調査延長と的中率の分布を図-3 に示す。同図に示すように、調査延長と的中率の間に相関はなかった。6.まとめデータ分析により、空洞探査の現状の的中率は 88.7%であることが把握された。高い的中率での探査は、適切な箇所での補修対応や道路パトロール等による経過観察等につながり、効率的な空洞対策が可能となる。ただし、検証率が 8 割未満の業務の中には、的中率が 50%未満の案件もあった(144 案件中、2 件)。このため、探査精度の指標として利用する際には、母集団とサンプルの特性について留図-3 空洞探査の的中率意する必要がある。また、的中率について案件ごとの異常(検証率 8 割以上の案件、調査延長 vs 的中率)信号数ならびに調査延長との相関は確認されなかった。7.今後の課題本稿では探査精度の指標として的中率に着目した。探査精度の指標にはその他にも検知率、空洞深さ測定値、広がり測定値が存在する。検知率の低さは空洞の抽出漏れに直結し、道路の安全確保に与える影響が大きい。また、空洞の深さや広がりの測定値は、発見された空洞のその後の対策優先度の決定に影響を与える。合理的な路面下空洞対策のためには、一定の精度以上の探査能力が必須であり、陥没対策に関する全ての議論の大元となる「空洞に関する情報」は高い精度であることが必要である。今後は的中率以外の指標についても分析し、現状把握を実施する。なお、本研究は、国土交通省道路局が設置する新道路技術会議における技術研究開発制度により、国土交通省国土技術政策総合研究所の委託研究「道路構造及び空洞特性に適応した陥没危険度評価と合理的路面下空洞対策についての研究開発」で行われたものである。4
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