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出版

タイトル 地盤リスクを評価・回避する地盤調査方法のあり方
著者 澤田俊一
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 1〜2 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400001
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  • タイトル
  • 地盤リスクを評価・回避する地盤調査方法のあり方
  • 著者
  • 澤田俊一
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 1〜2
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400001
  • 内容
  • 0001A - 01第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月地盤リスクを評価・回避する地盤調査計画のあり方地盤災害,地盤調査,埋立て応用地質株式会社国際会員○澤田 俊一1. はじめに地盤工学に対する社会の認識について,地盤工学に従事している者であればだれでも,地盤工学の重要性,社会貢献を認識している。しかし専門的な知識を持たない発注者や一般市民においては、地盤工学に対する認識が不正確な場合がある。例えば同じような埋立て地に於いても,地震時に液状化に起因する建物被害を生じる場所もあれば,その近傍でありながら全く被害が生じない場所も存在していることが知られている。その差異は紛れも無く地盤造成上の地盤リスクであり,地盤調査が不十分なままに施工が始まれば予期せぬ地盤災害に遭遇して困難を招いている事実は少なくない。このような状況は,地盤工学から社会に向けての情報発信の在り方に改善の余地がある。この意味から、地盤リスクを評価・回避するために必要となる地盤調査計画のあり方を紹介する。2. 人工地盤(埋立て地)我が国の都市圏での人々の生活領域の多くは,埋立て地(所謂,人工地盤)上に位置している。移動・物流システムの利便性からも,極平坦なウォータフロントに面した平野部での生産活動と共に住居領域も埋立て地造成によって広がってきている。埋立て地は元々,海(河川)水面下の土地に,他の場所から運んできた土砂を水面上まで盛り立てて陸地化して利用する。埋め立てる(盛り立てる)方法には,周囲堤防を構築して,囲った範囲内の水を排水して陸地化する干拓から,海岸の沖合の土砂を浚渫船で掘削し,運搬船・排砂管等を利用して土砂を投入して陸地化する浚渫,更には土砂運搬ダンプトラック等で陸路運搬して土砂投入して陸図-1建設中の埋立地(陸送埋立て)地する埋立て方法がある。図-1 には,陸路でのダンプトラックでの埋立て方法を採用している建設中の埋立地の空中写真である。周囲堤防建設後に土砂をダンプトラックで運搬し,陸地化している途中(建設中)である。写真からも明瞭にダンプトラックが繰り返し通行し締め固まった搬路部分と,その狭間で水中落下と緩い表層地盤部分が交互に形成されていることが判る。図-2 には,浚渫による埋立て地盤建設中の写真であり,沖合から運搬される土砂の排砂管吐き出し口の位置が読み取れれば,埋立地表層の堆積土質材料の推定も可能となる。図-3 には,排砂管吐き出し口周辺の浚渫土砂の粒形特性が推定できる。この推定は地震時の地ポンプ船盤の液状化に起因する地盤変状の原因推定にも役立つことも判っている 1)。排砂設備フローター管路海底管路海上管路 陸上管路ラダー自然堆積する地盤に於いても,過去の地盤形成履歴が判る資料が集まれば,地盤調査の方法も策定し易くなることは明らかであアンカーカッター埋立護岸スパッド図-2 埋立て工事の状況および方法3),4),5)り,過去の航空写真や地形図・地表地質図等の活用は重要な役割を果たすこととなる。図-4 に埋立て造成時の航空写真により浚渫施工時の排砂管吐出し口位置と地盤災害の相関が得られた事例 2)排砂管排砂を示す。3.地盤調査方法細粒分(粘性土)粗粒分(礫・砂)地盤調査方法はボーリング調査に代表される様に,平面的には“点”となる位置に於いて深度方向に“線”となる情報が得られていA method of soil investigation plan to evaluate andavoid the geo-risk.図-3 排砂管吐出し口周辺の堆積状況Shun-ichi SAWADA, OYO Corporation1 る。また,地盤情報として得られる解像度は標準貫入試験が実施される 1m に 1 つの貫入判例抵抗 N 値と,同時にレイモンドサンプラーで収集された攪乱試料を用いた物理試験結果が標準的な地盤情報となる。ボーリング調査は,対象構造物の重要性や【家屋被災程度】規模によっても異なるものの,平面的配置も密と言う実施は少なく,数百メートル間隔と離れている場合が多い。実施間隔を狭めることは地盤の情報をより高い解像度で評価することが出来る事になるが,当然の事ながら実施に当たるコストは増加する。必要で充分な実施間隔を合理的に提案出来れば良いが,地盤の状況はその造成過程や地形の複雑さによって大きく異なる事が図-4 排砂管吐出し口位置と地盤災害箇所の関係判っており,地盤調査技術者の技量が問われる範疇でもある。自然堆積地盤であれば三次元(3D)的に地盤情報を全てボーリング調査によって実施することは,費用と時間が許せば実施も可能となる。しかし,埋立て地や海岸線に近い地盤の堆積は複雑である場合が多く,ボーリング調査によって3D 地盤を把握することは困難となる。そこで登場するのが,補間的な地盤調査手法となるサウンディングである。3D で地盤情報を取得すること,地盤構造を3D で把握することは,今や CIM や iConstruction と言う keyword が用いられ推進されている課題 6)でもある。4.図-5地盤情報の 3 次元表示例考 察建設予定の地盤を3D で把握するには,まずは地盤の成立ちを考察することが重要となる。地盤の堆積状況が自然堆積等によるものか,埋立て造成の様に人工的に改変された地盤構成を有するのかの判断の基に,地盤の中の土層の起伏の程度を推察して探査する平面的ピッチの選定が重要になる。また,時間・費用の許す限り多くの探査を実施する事で地盤情報の解像度を向上させることが出来る。5.おわりに今後,より安価で調査実施時間の短いサウンディング手法 7)の様々なる開発により,ボーリング調査を補間して地盤情報の解像度向上を目指し,地盤リスクの評価・回避する地盤調査計画のあり方の提案を目指して行きたい。[参考文献]1)2)3)4)5)6)7)石井一郎, 平舘亮一, 東畑郁生, 中井正一, 関口徹, 澤田俊一, 濱田義弘. [2017], 2011 年東北地方太平洋沖地震で液状化被害を受けた浦安市の地盤特性. 地盤工学ジャーナル, Vol. 12, No. 1, p. 91-107.Sawada, S., Hamada, Y., Ishii, I., Hiradate, R., Nakai, S., Sekiguchi, T., Towhata, I.[2017], Liquefaction-induced damage tohouses and site characterization in Urayasu City during the 2011 Tohoku Earthquake, Japan, Proceeding of 3rd Inter -nationalConference on Performance-based Design in Earthquake Geotechnical Engineering, Vancouver.浦安市,浦安市史【生活編,まちづくり編】千葉県企業庁,千葉県企業庁事業のあゆみ,2009. 03.(社)日本埋立て浚渫協会<http://www.umeshunkyo.or.jp/kids/shunsetsu/shunsetsu.pdf>, [2016. 5. 7 閲覧].澤田俊一[2017], 動土質に求められる技術革新-次世代技術とそのロードマップ-, 応用地質技術年報 No.36, p.25-34.Sawada, S. [2009], Evaluation of differential settlement following liquefaction using. Piezo Drive Cone, Proceeding of 17thInternational Conference on Geotechnical Engineering, Alexandria, Egypt, p. 1064-1067.2
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