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出版

タイトル 高性能魚群探知機による水底の地形・地質調査(技術紹介)
著者 山崎 新太郎・田房 友典・岩崎 俊佑・平松 雅宏
出版 地盤工学会誌 Vol.66 No.2 No.721
ページ 32〜33 発行 2018/02/01 文書ID jk201807210015
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  • タイトル
  • 高性能魚群探知機による水底の地形・地質調査(技術紹介)
  • 著者
  • 山崎 新太郎・田房 友典・岩崎 俊佑・平松 雅宏
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.66 No.2 No.721
  • ページ
  • 32〜33
  • 発行
  • 2018/02/01
  • 文書ID
  • jk201807210015
  • 内容
  • 技術紹介高性能魚群探知機による水底の地形・地質調査Subaqueous topographic and geologic investigations by a highperformance ˆsh ˆnder山崎新太郎(やまさき北見工業大学岩崎俊田助教佑(いわさき弓削商船高等専門学校しんたろう)房友典(たぶさ弓削商船高等専門学校しゅんすけ)平松技術職員雅とものり)教授宏(ひらまつ北見工業大学まさひろ)技術員. は じ め に漁業やレジャーのための漁群探知機は,音響測定装置,すなわちソナーの一種であるが,近年,漁礁を発見し効率的に漁業を行いたい,又は効率的に釣りを楽しみたいというユーザーの希望を実現するために,衛星測位システムを実装し,さらにその測深性能も解像度も飛躍的に高性能化している。そして,それは水底の科学調査や簡易な水底の測量,底質調査を低価格で実現するという研究者にとっても魅力的な副産物を産んでいる。さらに,図―高性能魚探で得られるソナーイメージこの魚群探知機のデータを解析し,様々な情報を抽出できるソフトウェアも登場し,一層科学研究において利用イドスキャンイメージでは,深い場所で幅約100 m に亘されるようになってきている。って反射強度を面的に映し出している。筆者らは,最近の高性能魚群探知機を利用し,大型船以上の高性能魚群探知機では測深を面的に密に行えば,の侵入できない沿岸の浅い水域において発生する地すべ数値地形モデルの作成に必要な空間位置及び深度の情報りの調査1) や,水中に沈んだ災害遺構の調査2) に利用しが得られるため,それから水底地形図を作成することがている。これらの装置が有効な深度は,概ね数十 m 以可能である3)。一方で,水底地形図の作成方法として一下という浅い水域に限られ,精度面でも未検証な点が多般に用いられているマルチビーム測深器と異なり,魚群いが,それをもってしても水中の調査が低価格で簡易に探知機はシングルビームである。そのために,調査効率なってきたことは大きな利点があろう。本稿では,筆者はそれらと比べると格段に落ちる。しかし,総重量は数らが行っている方法について概要を述べる。.高性能魚群探知機魚群探知機をはじめソナーは音波を水中で射出し,水中の物体をイメージングし,深度を測定するものである。kg 以下と軽量であるために小型のゴムボートにも艤装でき一人での調査が可能な他,筆者らは無人でしか調査ができない危険水域の調査を実現するためにラジコンボートにも艤装を行って調査を実施している(図―)。ただし未検証な点もある。特に音速や,測深においてこの技術によって魚群を検知し,さらに船を安全に航行重要な水温や塩分などの細かな設定が大幅に簡略化されさせることができる。前述したように,近年の魚群探知ており,その算出方法は未公表である。精度については,機は衛星測位システム(GNSS)を実装しており,そし筆者らはレッド(測鉛)測深値との比較により水深 30てソナーイメージにも位置情報が付加されているようにm 以下では測深値の違いが0.5 m 以下に収まっているこなっている。さらに,ソナー音源の運用周波数は従来のとを確認したが,まだ様々な環境において十分な検証が魚群の検出に有効な周波数の利用から,より高解像度で行えているとはいえず今後の課題であろう。水中の物体や地形を精密にイメージングできる高い周波数の音源も用いられるようになってきた。そして,扇状.データの処理と表面地質の分析に音波を射出し,その反射強度をイメージングすること高性能魚群探知機によって科学調査が行われるようにで水底面の構造物を映し出すサイドスキャンソナーも実なった背景として,得られたデータを処理する安価なソ装されてきている。このような技術は,水中の物体の精フトウェアが販売されていることもある。図―はその密な観察を実現する。図―は神奈川県芦ノ湖におけるような測深データのエラーの補正と抽出と,水底表面地水没林をイメージングしたものである。従来の魚群探知質の粗さや硬さを分析するソフトウェア(英国 Reef-機の周波数帯では捉えられない水中の木々を実際の形にMaster Software 社製 ReefMaster v.2.0)の表示例であ近い形状で複数検出している(矢印は水中林)。またサる。このソフトウェアを利用することの第一の利点は,32地盤工学会誌,―() 技術紹介図―魚探データの補正・分析ソフトウェアによる表示例.おわりに近年のドローン( UAV )による地形の精密測量・図化の簡易化・低価格化と同様に,光の届かない水中においてもその地形,地質を知る方法がより手軽に低価格になってきていることを紹介してきた。今後,様々な水域の特に科学調査においてこのような方法は普及するだろう。図―高性能魚群探知機と各種船への艤装の例誌面の都合により,多くの文献を紹介することはできなかったが,参考文献に筆者らの研究を挙げた。筆者らソナーが自動取得する測深値は頻繁にエラーを含んでいの調査事例及び調査技術に関しての詳細はそれらをご覧るために,取得されたソナーイメージそのものと対比し,いただきたい。エラーの修正が効果的に行えることである。また,理論的な根拠は十分に与えられていないものの,半経験的に水底で反射した音響信号から底質の粗さ( E1 値)や硬さ( E2 値又は PeakSV 値)を定量的に分析できる機能を備えている。筆者らの研究では,水中カメラで取得した画像との対比で概ね合理的な結果を得ている4)。また,上記のようなソフトウェアを経由して,数列として経緯度,深度,粗さ値,硬さ値等の抽出が可能である。これは DEM と同様に各種 GIS ソフトウェアで扱え,等深線図の作成や三次元モデルの作成に利用できる。上記の低価格のソフトウェア以外に,近年さらに高機能な設定,分析を可能とする音響調査の専門ソフトウェアにおいても高性能魚群探知機で得られたデータファイルに対応するものが増えてきており,それらを利用すれば,さらに精密な地形・地質の解析が可能になるだろう。February, 2018参考文献1)山崎新太郎・松四雄騎・片岡香子・山口直文神奈川県・芦ノ湖の湖底調査―低価格サイドスキャンソナーによる水底調査の試み―,京都大学防災研究所年報,Vol.60(B), pp. 453~460, 2017.2) Yamasaki, S., Kamai, T.: A novel method of surveyingsubmerged landslide ruins: Case study of the Nebukawalandslide in Japan, Engineering Geology, Vol. 186, No.24, pp. 2833, 2015.3) 山崎新太郎・原口 強・伊藤陽司レジャー用魚群探知機を利用した水底地形調査(解説),応用地質,Vo. 54,No. 5, pp. 201~208, 2013.4) Yamasaki, S., Tabusa, T., Iwasaki, S., Hiramatsu, M.:Acoustic water bottom investigation with a remotelyoperated watercraft survey system, Progress in Earthand Planetary Science, Vol. 4, No. 25, pp. 19, 2017.(原稿受理2017.11.2)33
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