書籍詳細ページ
出版

タイトル 杭施工管理問題への提言(論説(投稿))
著者 岩﨑 好規
出版 地盤工学会誌 Vol.66 No.2 No.721
ページ 30〜31 発行 2018/02/01 文書ID jk201807210014
内容 表示
ログイン
  • タイトル
  • 杭施工管理問題への提言(論説(投稿))
  • 著者
  • 岩﨑 好規
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.66 No.2 No.721
  • ページ
  • 30〜31
  • 発行
  • 2018/02/01
  • 文書ID
  • jk201807210014
  • 内容
  • 杭施工管理問題への提言Proposal for Pile Construction Control Problems岩o好規(いわさき(一財)地域地盤環境研究所よしのり)専務理事. は じ め に平成 27 年 10 月 14 日に新聞報道され,社会的問題となったいわゆる“杭打ちデータ偽装問題”は,ただ単に杭長の現場確認手法の問題にとどまらず,杭基礎設計,施工に関する現行規範の問題点を浮彫りにした。国土交通省に設置された基礎ぐい工事問題に関する対策委員会は,中間とりまとめ報告書1)を発表し,施工の責任を客観的・専門的見地から審査・検証・調停する中立的な組織・機能の検討,地盤状況の知識の共有を提案している。証言取材に基づいた真相解明記事2)が文藝春秋や,ダイヤモンド online3)に掲載されており,事実関係はこれらに詳しい。筆者は,建築学会の司法支援建築会議を通して最高裁判所の委嘱を受け,大阪地方裁判所での民事調停委員を 敷地地盤経10 年間経験した。今回の事例を考察し,◯ 既存杭の引抜跡対応問題,◯学緯情報共有の必要性,◯図―横浜傾斜マンション周辺の旧地形会内に法地盤専門委員会の設立を提案するものである。.横浜傾斜マンションの敷地マンション建物が傾斜したとされる当敷地開発前の地形図を図―に示す。当該マンション施設も同時に示したが,旧地形からみると,ほぼ平坦な水田である。問題とされている 8 本の杭の場所には,改築敷地で,長さは 18 m の杭が使用されていた。新築工事の前に,18 m の杭は 8 本引き抜かれ,杭の空洞部分には,低強度のモルタルセメントが注入された。これらの経緯については,国土交通省の中間報告書には,傾斜地盤である 基盤深度14 m から18 m の傾斜ことの記載はあるが,◯ 18 m の既存杭,及び設計の杭長地盤であったこと,◯が 14 m であったという事実関係2) には触れられていない。.当該敷地地盤の特徴図―に横浜市による都築区池辺町付近の地盤データの公表地点が示されているが,当該地内のボーリング地点はないが,周縁部のデータが No. 1 ~ No. 9 まで掲載図―横浜市地盤データ地点このような地層の場所では,杭打ちの職人は,軟弱層から硬質層に達したことは容易に判断できたと述べている2)。確かに容易であったに違いない。この地域の地盤を調べていると,なんと,地盤沈下地域である。図―に横浜市によって計測されている地盤沈下監視されている。それらの多くは,基礎地盤まで達していな用の水準点 M14 (図―参照)の水準測量による沈下いが, N 値> 50 を示す地層までの調査結果が示されての状況である。この軟弱地盤は現在も地盤沈下が継続しいるのは,No. 7 及び No. 8 地点である。これらを図―続けており,マンション完成から問題になった時点までに示す。 N 値自沈の有機質土やシルトが 10 m 内外続に, 80 mm の沈下が観測されている。そのうちの約半いたあとに,泥岩や砂層に到達している。分は東日本大地震による地殻変動によるものであるが,30地盤工学会誌,―() 論図―説杭引き抜き及び注入処理が優勢で現れている。本当に,試験施工地盤は土丹層であったのか疑問が残る状態にある。図―No. 7, No. 8 地点のボーリング柱状図「杭基礎のトラブルとその対策」地盤工学会編(第 1回改訂版,2014)によれば,[今回のアンケート調査で最も注目されるトラブルは,改築敷地における地中に残置された躯体や,杭への突然の遭遇と,これら地中障害物の撤去後の埋め戻し処理方法に関するトラブルである。]と記述されているように改築敷地においては,解決しなければならない課題がある。.残された課題と地盤工学会の役割以下に示す情報公開は従来から取り組まれているが,工法,試験法などの確立は,地盤工学会が独立第三者機関として,業界と共に推進すべき課題であろう。 地盤情報及び敷地経歴情報の公開共有化◯図―マンション立地地盤付近の地盤沈下横浜市は市で実施したボーリング情報を公開し今回も役に立ったが,地盤は連続しているゆえに,すべての地盤本件の杭とマンション傾斜は一筋縄で理解できない状況情報は公開し,社会で共有しないと,有効に活用できなにある。い。こういう地盤情報の共有化システムの提供は,地盤.法地盤工学上の疑問. 杭の引き抜き後のモルタル注入による影響具体的に本件現場における杭抜きの方法は不詳である工学会が国交省などと推進する必要があろう。 改築敷地にある既存杭の引き抜き及び処理法◯ 既存杭引き抜き敷地における杭施工法◯ 杭載荷試験による現地確認手法◯が,本件現場のような超軟弱地盤であると,注入された杭偽装問題に限らず,法制度と地盤工学上とを研究すモルタルが注入時の形態のままかどうか不明で,もし,る委員会は国際地盤工学会では TC302 (Forensic Ge-GL 14 m あたりに固化したモルタル塊があれば,杭打otechnicalち技術職の証言と符合する。もし,杭打ち担当者が,杭工事における事故や紛争,裁判などの解決に資する法地打ち地盤の性状や,杭の引き抜き処理地盤であることを盤工学委員会の設立が必要である。日本における法地盤知っていたとすれば,くい打ち管理はどのようにして確委員会を地盤工学会内部に設置し,国内外における地盤認できるか工事事故例の収集,法的規制の研究などを実施し,成果簡単にはいかなかったに違いない。. 採用された杭工法Engineering)として活動している。さらに,を社会に還元する必要があろう。DYNAWING 工法と呼ばれるプレボーリング拡大根固め杭工法で,対象支持地盤は粘土層ではなくて,砂礫層が対象である工法である。砂礫層では本件の場合,試験杭で確認することとなっていた。通常このような試験は,工事前に実施し,適用性を検討するが,当該工事では,意外にも,杭載荷試験は杭工事期間中(図―)に実施されている。図―にみるように,当該地域の基礎地盤は土丹と通称される泥岩ではあるが,No. 7 地点のように,砂質土February, 2018参考文献1)国土交通省基礎ぐい工事問題に関する対策委員会中間とりまとめ報告書,2015/12/252 ) 由利俊太郎旭化成より悪いヤツがいる,文藝春秋,2016, 1 月号,pp. 158~167, 2015.3 ) ダ イ ヤ モ ン ド on line , 入 手 先 〈 http: // diamond.jp /articles//85497?page=2〉,(参照 2016.12.22)4) 横浜市環境創造局平成26年度横浜市地盤沈下調査報告書,p. 15, 2015, 8.(原稿受理2016.12.22)31
  • ログイン