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出版

タイトル 地盤掘削の安定液に用いたフェロシリコンの電磁分離による回収方法に関する検討(<特集>トンネル/地下構造物)
著者 吉田 弘
出版 地盤工学会誌 Vol.66 No.2 No.721
ページ 14〜17 発行 2018/02/01 文書ID jk201807210010
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  • タイトル
  • 地盤掘削の安定液に用いたフェロシリコンの電磁分離による回収方法に関する検討(<特集>トンネル/地下構造物)
  • 著者
  • 吉田 弘
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.66 No.2 No.721
  • ページ
  • 14〜17
  • 発行
  • 2018/02/01
  • 文書ID
  • jk201807210010
  • 内容
  • 報告地盤掘削の安定液に用いたフェロシリコンの電磁分離による回収方法に関する検討An Utility of Electromagnetic Separation Method for Collecting and Reusing Ferrosiliconas Stabilizing Material at Earth Cutting Construction.吉田弘(よしだ有吉田エンジニアリング. ま え が きひろし)代表がベントナイトの約1 500倍と高価であり,FS と比較しても約150倍と高価な材料であるため,建設用に利用す地盤を掘削する際に,掘削壁面を安定させるための地ることは困難である。FS は単価がベントナイトと比較盤安定液(以後,安定液と記述する。)にはシールド工して約 10 倍程度であるため,単位体積重量の大きい安事の安定液及び地下を掘削する際の土留め用安定液があ定液を製造するためにベントナイトを多量に投入して安る。前者は地山の土砂を利用し単位体積重量が 10.3 kN定液を作製することと比較して,経済的に対抗できる可/ m3程度の安定液を使用している。後者は,一般にベン能性がある。著者は単位体積重量が大きな安定液の材料トナイト泥液を使用し,単位体積重量13 kN/m3 程度のとして FS に着目し, FS の実用に向けた検討を行ってものを使用している。これらの特徴として前者では安定きた。その結果, FS は単位体積重量が大きい安定液液の単位体積重量が小さいため,安定液が噴発し,掘削(重安定液と記述する。)として利用できることを示した。切刃の破損防止が困難である。後者では,深度 140 m に達するもの,掘削幅5.0 m になる地中壁が施工され,ベントナイト泥液利用による安. FS 重水液から FS 粒子を回収する方法の検討定液単位体積重量増加は産業廃棄物となり,また掘削し. FS の回収方法た土砂が高含水状態になることがあり,その処理費は高FS の安定液から FS を回収できれば,高価な材料の価なものとなっている。これらの課題に対して,単位体再利用が可能であり,FS を含んだ安定液の最終的な処積重量が大きく,単価が安定でしかも,処理も容易な安分価格も安価になると考え, FS を回収する方法として定液の開発が必要となっている。安定液の処理費が,安以下の 4 つの手法について検討した。価になる場合は,産業廃棄物の量も減少し環境への影響が小さくなる。本稿では,将来の大深度地下掘削を鑑みFS の安定液よりふるい分けによる分離方法は, FSふるい分け分離法て,単位体積重量の大きい安定液を製造する方法につい粒子の粒径が 100 mm と極めて小さく,粒子が凝集して,て述べる。さらに,国連が提案した持続可能な開発目標その粒子間に水を含んでしまうため,この方法によって( Sustainable Development Goals )に準じた,安価で環分離することは困難であった。境に優しい安定液材料の利用を目指す検討として,使用した安定液から電磁分離により安定液材料を回収,再利FS の単位体積重量が 24 ~ 50 kN / m3 と水に比較して用する方法について実験した結果を述べる。.単位体積重量の大きい安定液材料の種類と特徴粘性の大きい安定液の材料として,ベントナイト,フ沈降分離方法大きいため,水中で沈降分離する現象が考えられる。しかし,水中で簡単に FS 粒子が水と分離してしまうと安定液としての利用が不可能になる。したがって実際に安定液とした FS を利用する場合には,の予備実験で記述するが,粘性を増加するためポリマーを混入している。ェロシリコン( FS )そして,ポリタングステン酸ナトこのような安定液から FS を沈降分離するには,数日間リウム( SPD と記述する)が考えられる。この中でベが必要であり,多量の安定液から FS を分離するには,ントナイト泥液は,土木建築用安定液の主流として使用大きなタンクを複数基必要となり,現実的には不可能とされている。しかし,より単位体積重量の大きい安定液考えられる。を製造するには,ベントナイトより単位体積重量の大き遠心分離法い材料を安定材料として開発する必要がある。ベントナ単位体積重量の大きい FS を水から分離するには遠心イト単位体積重量は26.9 kN/m3,FS の単位体積重量は分離法が有効であるが,これはあくまで実験室内では有24 ~ 51 kN / m3 であり, FS は約 2 倍程度の単位体積重効な手法であって実際の掘削に用いる大型遠心分離機が量の安定液を製造できる。 SPD (ポリタングステン酸多数必要となり,この手法も現実的には困難である。ナトリウム)は極めて理想的な材料であるが,その単価14地盤工学会誌,―() 報電磁分離法告回収の方法は異なる。そのために,安定液から FS を回FS は鉄分を含むため高い磁性を有する。したがって,電磁吸着分離法(以下,電離分離法)で多量の使用済み収する新しい装置の開発が必要である。. 土木関連電磁選鉱機の基本的特徴安定液から FS を回収することは可能であると考えられ磁鉄鉱を例にとれば,「磁鉄鉱の粒径による磁性は,る。実際の鉄鉱石の鉱山では,この電磁分離法で掘削し粒径 500 mm を基準とし, 100 mm まで,緩やかに減少た鉱山の岩砕から鉄鉱石を選別している。以下に鉱山でし,それからの粒径になると著しく減少する。」1)と言わのこの方法と実際に安定液からの FS の分離における課れている。題について整理した。安定液から FS を回収するためには以下の事項を検討土木安定液と鉱山の FS 粒子含有液(以下鉱山重液と称す)との相違点は,以下のとおりと考えられる。土木安定液の重液分離(以下土木重液と称す)は,粒径100する必要がある。1)電磁石の電流の強さは,磁極間隔により決まる,2)磁気モーメントは,磁性の強さ等より決まる。mm 以下(図―)で粒子に磁性があること,重液に粘磁性が強い鉱物ほど引き付け易く,距離の二乗に反比例性が多いこと,分離以前の重液は粒径100 mm~5 cm まするた平均体積重量が25 kN/m3 程度の掘削土砂を含有して3)磁性が同一の鉱物は,磁気モーメント= V ・ J にいる。FS 重水液の FS 粒子は,100 mm 以下(図―)より体積(V )が大きいと,感応し易くなるが,(J )は,が適するので,ふるいわけ分離は困難である。沈降分離磁化の強さとよばれ,単位は,G(ガウス)である。しでは,FS は重いので沈降するが,粒径が細いので沈降かし,重力の影響が効いてくると磁石に引きつけ難くなに時間がかかる。これに比べて電磁分離は, FS は鉄分る。これらを経験から 1~ 5 mm 径の鉱粒が引き付けらを含むために磁性があるので,電磁吸着分離が単時間で,れ易いということが明らかとなった。確実に分離できる可能性がある。4)磁力線の形状は,磁極配列により決まる。磁力. 鉱山電磁分離法の土木分野拡張における課題線が濃密になり,磁場勾配が急に高まる区域で選別が行鉱山では,この電磁分離法によって掘削液から FS 粒われる。子を回収している。鉄鉱石を含む液体である鉱山重液は,電磁分離条件として,重液に粘度が少ない, FS 粒子径.電磁選鉱機の従来の研究と開発が 1~ 5 mm と大きい,粘性を高めるためのポリマー,. 従来の電磁選鉱機また前処理で細かい粒径は排除されているなどの特性が電磁選鉱機は,以下の,大きく 3 つの方式がある1)。ある。1)乾式又は湿式方式2)磁力を,直流電源か,交流電源か,あるいは永一般に土木設備の場合は規模が小さく,さらに土木工事の場合人家に近く,環境水質,特に,排水,騒音等に敏感であり,それらの最適環境と,維持に関する制限の久磁石からとる方式3)鉱物種より,設備の磁束密度を低磁力にするか,ほか,諸々の環境条件を考えて,設備を計画する必要が高磁力25 000 G(ガウス)程度(1 G=10-4 T(テスラ))ある。鉱山機械で FS を使用した例は,石炭を浮鉱分離にするかを判断する必要がある。一般的には,低磁力選するために FS 重液を利用して,石炭浮鉱分離後,残渣鉱機が多く,2 000~3 000 G(ガウス)程度で,磁性が液から FS 分離を行い,残渣液から FS を電磁分離した強い鉱物回収に対するものが多い1)例がある1)。 は非磁性回転ドラムで,内側に固定式電磁図中の◯土木重液では, FS 安定液の FS 回収は,鉱石採集を(直流)があり,ドラムの下部はわずかに水に浸かり,のように,予めスクリーンによる材 から投入される。◯ は上昇水流鉱石は,重液の状態で◯料分別,砂利の破砕の必要はない。また,土木重液は, は精鉱室(磁着物質)◯ は尾鉱室(非磁着の送り口,◯主とする鉱山重液比較的高粘度が粒子沈降防止のために必要である。鉱山重液は,経験から分離に適した粒径は, 1 ~ 5 mm の粒径の粒子が,良く電磁吸着するといわれるが1)土木重液は,利用し易い粒径は 100 mm 以下の粒子が望ましいと考えられている。したがって作業条件,粒径により FS図―February, 2018FS 粒径加積曲線図― グレンダール式ドラム電磁選鉱機3)15 報告表―フェロシリコンの特性表―図―ドラム式電磁選鉱実験機3)(単位安定液の条件mm)表― 片羽室(中間磁着物質)物),◯,なお,ドラム径は 50配合試験結果~75 cm,幅43~80 cm である。. 土木用 FS 回収機これに対して土木重液の FS 回収機は,湿式磁力選鉱機である。電源は,土木重液が比較的短期で,小規模,多数などの条件から,交流電源又は,永久磁石が適する表―と考えられる。そのため,従来の機械を改良する必要が計測管理基準ある。土木工事では,工期が短期であるため,移動が多く,事業規模は小さく,設置面積が制限される等の条件から,小規模設備を数多く,立体的に組み合わせる設備などが多くなる。その他,付随する副資材, FS などの格納,給水,排水設備に関しても同様の配慮が必要であ3)る。安定液の浸潤液量,マッドケーキ厚,粘性,単図―にドラム式電磁選鉱実験機を示す。土木用安定位体積重量を表―に示す。浸潤液量は API 簡易圧力液を通過させ,磁力吸着効果の確認,機械規模の検討,計で,圧力 30 kPa , 30 分間加圧,この間の浸潤液量を から鉱石効果を確認することとし,この場合,投入口◯計測した。浸潤液排水口に形成されるマッドケーキ厚を でドラム◯ に搬送され,ドラム◯が投入され,鉱石は◯計測し,粘性は,ファンネル粘性計 s(秒)により測定 非磁着で一部吸着分離され,磁着物,非磁着物は各々◯した。 磁着物,に落下する。実験機は,物ホッパー,又は,◯4)API 簡易圧力計は, 30 kPa に調整して, 30 分間視覚により散水量,磁着物,回転速度,吸着,分離等が加圧し,下部排水口からの浸潤水液量を計側する。同時容易に改良できるよう,また,正確に材料投入量,除去に pH を計測した。管理基準は,表―に拠った。量及び給水量の関係を計測可能なように側方開放型とし粘度計は B 型回転計( mPa ・ s (ミリパスカル秒)により計測される。た。. 予 備 実 験.実験機試料投入以前に,磁着材料 3 種類の安定液の. 実験方法製作を行った。これは土木作業で使用される予定の単位土砂の分離,FS 回収実験土木現場を仮定した材料には,FS 材料の約2.5倍の豊体積重量,粘性,粒径,代表的な配合を 3 種類決め,浦砂を混合した FS 安定液を試作した。試作したドラムAPI 試験方法2)で粘性,マッドケーキ厚,浸潤液量,等式選鉱機により, FS 電磁回収量を計測した。動力は直を計側した。表―に本研究で用いたフェロシリコンの流,回収磁極は固定式,構造は湿式ドラム型とした。構造 は , 鋼 製 , 幅 員 1 680 mm , 長 さ 1 150 mm , 高 さ特性を示す。. 安定液配合1 100 mm ,径 500 mm を持つ電磁回収機であり,従来安定液の配合設計は, FS にポリマー,豊浦砂の配合の実績を考慮して,ドラム内3 800 G(ガウス)(磁鉄鉱を決めた。安定液製作の条件を表―に示し,配合試験鉱山平均約1 500 G(ガウス))の電磁回収機であり,従来の実績を考慮して,ドラム内 3 800 G (ガウス),(表結果を表―に示す。材料使用する材料は, FS ,ポリマー,砂,及び水―参照)表面磁束密度の磁石を内蔵した。図―におでポリマーは粘度 200 ~ 3 200 cP (センチポアズ)を使 上部から投入し,ドラム回転いて,試料をコンベヤー◯用した(cPセンチポアズ(1 Pa. s=10-3 cP))。 に吸着され,ドラ移動にしたがって,磁着物はドラム◯FS の粒径分布は,図―に示すように90が100 mm配合試験配合材料の試験は,API16 下部に落下する。ム背面に達し,磁化のきれた時点で,◯ ホッパーに落下させ一方非磁着物は磁着されないので◯以下の分布である。試験基準2)による。回収効率を検討した。地盤工学会誌,―() 報表―磁鉄鉱選別グレンダール式操業図―電磁分離表―試作機では,磁石 3 800 G (ガウス)と磁束密度を大きく設計し,試料供給速度を 20 cm3 / s と散水を行うなどの計画により,100 mm 以下の微粒子を 90回収できるという結果をえた。. 装置改良後の FS 回収実験の結果表―において, Test1 では,中間産物の 29.15 kN /告実績例1)実験結果結果数値表ということは,材料費が約 10 減価されたことを意味する。.おわりに単位体積重量の大きい安定液を経済的に使用し,使用後に電磁分離回収を行い,産業廃棄物を減少させ,国連m3 重量割合(1)が Test2, Test3 に比べて多いが,こ主導の持続可能な開発目標(SDGs)の一翼を達成した。れは Test1 のみ,洗い水を加えたことによる。これに執筆にあたり,岡山大学大学院名誉教授西垣誠先生の伴い電磁磁選機の清浄に生じるロスが多かった。Test1ご指導に厚く御礼申し上げます。の中間産物は T.Fe が1.22(2,図―)であり,他の試験に比べて若干高かったが,ほぼ,電磁分離が行われていることが分かった。 Test3 は,磁着物の T.Fe 重量は21.01 kN/m3(3)であり,これは Test3 磁着重量( kN / m3 )が,もっとも多く, 3 回の実験中 T.Fe 含有量()53.9(4)は最も少ない。これは磁着物に非磁着物の巻き込みが多いことを示す。これは,ポリマー量増加(5 ,表―)に伴う液の粘性増加が起因したと参考文献1)原田種臣鉱山読本,5 巻,17集,技術書院,p. 151, p.169, p. 175, 1976.2) American Petroleum Institute: Standard Procedure forTesting Drilling Fluids, p. 8, 1976.3) 吉田 弘・西垣 誠・西山 哲地盤工学会中国支部論文報告書,フェロシリコンの大深度掘削用泥水への適用に関する研究,Vol. 33, No. 1, 2015.(原稿受理2017.10.23)考えられる。回収率(6,表―磁着物 T.Fe)約90February, 201817
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