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タイトル 5. 土中の水理(X線CTから見る土質力学)
著者 肥後 陽介・椋木 俊文・菊池 喜昭
出版 地盤工学会誌 Vol.66 No.1 No.720
ページ 45〜53 発行 2018/01/01 文書ID jk201807200023
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  • タイトル
  • 5. 土中の水理(X線CTから見る土質力学)
  • 著者
  • 肥後 陽介・椋木 俊文・菊池 喜昭
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.66 No.1 No.720
  • ページ
  • 45〜53
  • 発行
  • 2018/01/01
  • 文書ID
  • jk201807200023
  • 内容
  • X 線 CT から見る土質力学.肥後陽京都大学大学院介(ひご工学研究科菊椋ようすけ)准教授池土中の水理木俊熊本大学大学院喜昭(きくち東京理科大学. は じ め に土中の水の流れは,浸透・透水現象や圧密現象を理解し解析するために重要であり,土質力学ではダルシーの理工学部文(むくのき先端科学研究部としふみ)准教授よしあき)教授む,より広範な水理現象であるとの考えから,本章のタイトルを「土中の水理」とした。. 水分保持特性法則による流速(流量)のモデル化とそれを活用した種.. 保水性試験々の解析として体系化されている。また,土と水の相互水分特性曲線の主排水曲線と主吸水曲線における,異作用をダルシーの法則でモデル化して,支配方程式を数なる水分保持状態を微視的に観察することを目的に,豊値的に解法することで,土中の水の流れ及び土の変形と浦砂を用いた保水性試験を実施した。の連成問題を解く技術は,広く用いられるに至っている。供試体は水中落下法を用いて作製し,飽和状態の供試一方で,土中の水の流れの観察は,水の流れが幾何学的体の排水過程から実験を始めた。供試体の高さは 17.74な変化をほとんど伴わないため簡単ではない。現状では,mm ,直径は 18.00 mm ,初期間隙比は 0.822,相対密度圧力や水頭の測定とダルシーの法則から流れを推定するは42.4である。第章で述べたとおり1),高分解能ののが主流であろう。CT 画像を得るには,供試体サイズは小さい方が望ましさて,X 線 CT で得られる情報は,第章で解説したいが代表体積(Representative Element Volume(REV))とおり,密度の空間分布である。飽和土中の水の流れでよりも大きい必要がある。REV については後に..では,圧力に依存して間隙水の体積が変化しているはずで議論するが,本研究の供試体サイズは,少なくとも間隙あるが,変化量はごくわずかであり,現在の X 線 CT率の REV よりも十分に大きいサイズとして選択した。技術ではその測定は極めて難しい。しかし,飽和土中に供試体上部は湿度ほぼ100の大気圧と接触させ,供おいても,間隙水中に存在する異なる密度(あるいは試体下部は空気侵入値(Air Entry Value(AEV))50X 線減衰特性)を持つ物質の拡散や移動は,X 線 CT にkN / m2 のセラミックディスクを介してビュレットに接よって測定することができる。続した。サクションは水頭型吸引法によって与えた。飽これに対して,不飽和土中の水の流れは,飽和土と同和度の低下がほぼ収束したことを確認した後に,サクシ様に水相の中で起こる流れの観察は困難であるが,非定ョンを徐々に低下させ吸水過程に移行した。試験で得ら常状態であれば,間隙への水の流入/流出によって,巨れた水分特性曲線を図―.に示す。主吸水曲線と主排視的には湿潤密度,微視的には水分量に依存して間隙内水曲線の経路は異なっており,ヒステリシスが明確に現の密度が変化するため,それらを X 線 CT で測定するれている。ことができる。つまり,異なる水分保持状態の測定には,X 線 CT が有効なのである。その他の土中の水の流れに関連した X 線 CT の活用としては,間隙構造やメニスカス形状の測定による,透水性,水分保持特性,サクションの推定が挙げられる。そこで本章では,X 線 CT を用いた,不飽和土中の水分量変化を伴う現象として,微視的な水分保持特性及び非定常浸透現象の解明,飽和土中の間隙水中の物質移動現象として,拡散現象の可視化,幾何学情報の活用として,サクション,透水係数の推定を紹介する。いわゆる土質力学の学問体系においては,土中の水の流れは「透水・浸透」などと名付けられ,水の流れそのものが取り扱われるが,X 線 CT が威力を発揮するのは,上記のような流れに関連する物質移動や幾何学情報を含January, 2018図―. 豊浦砂の水分特性曲線(a~ l の各段階で吸排水が収束した後に X 線 CT 撮影を実施)2)45 講  座図―. 不飽和土の CT 画像.. マイクロ X 線 CT による異なる水分保持状態の可視化図―.中の a~l で示される各段階で,サクションを与え吸排水が平衡に至り水分の移動が十分に収束した後に,供試体中央部の局所スキャン1)により CT 画像の取得を行った(スキャン領域は,直径 5.6 mm ,高さ 5.4mm の円筒形)。 CT 画像のスキャン領域中央部の水平断面の一例を図―.に示す。また,排水過程の c, d, e,図―. 排水過程における CT 画像の三値化吸水過程の i, j, k について,図―.(a),図―.(a)に示す。この供試体には土粒子,水,空気しか存在せず,この順に密度は低いため,濃淡値(CT 値)もこの順に低くなる。したがって,モノクロ画像では,白色に近い明るい灰色部分が土粒子,暗い灰色部分が水,最も暗く黒に近い部分が空気と識別することができる。取得した画像の voxel サイズは 5.5 × 5.5 × 7.0 mm3 である。豊浦砂の D50 は200 mm 程度であり,粒子径が30以上の voxel で表現されている。図からこの画像の解像度は粒子形状,間隙形状を明確に識別するのに十分であることが分かる。異なる水分保持状態の各段階で,間隙水の量,存在形態が異なることが見てとれる。なお,別途実施した全体スキャンで各段階の供試体高さを CT 画像から測定したところ,排水開始から吸水完了まで,高さの変化は見られなかった。相対密度が 40程度でややゆる詰め状態ではあるものの,作用したサクションは最大で10 kN/m2 程度であり,試験中の土粒子骨格の変化はほとんどなかったと考えられる。.. 三値化供試体は土粒子,水,空気から成るため,CT 画像をこれらの三相に分離( Segmentation )した。つまり,図―. 吸水過程における CT 画像の三値化画像から対象とする物質を抽出するのであるが,その方法 と し て は , CT 値 の し き い 値 を 用 い る 手 法( Threshold ) と 統 合 法 な ど の 領 域 分 割 法 ( Domain次々に類似した周辺の画素を取り込んでいく方法であり,Method)が挙げられる3)。しきい値を用抽出された対象の空間的な連続性が保たれる。この他に,Decompositionいる方法は,大津の方法4)などの自動しきい値選定法がWatershed アルゴリズム6)も CT 値の空間勾配を利用し開発され広く用いられている。しかし,入射 X 線エネた手法で,領域分割法として広く用いられている。これルギーが分布しているため,単一相であっても CT 値はらの手法は,近年では画像処理ソフトに実装されるよう分布する。したがって,各相のヒストグラムに重複するになってきた。領域が存在する場合があり,その場合は複数の相が同じ図―.( b ),図―.( b )に,それぞれ,図―.( a ),CT 値を持つことになり,しきい値による相分割は厳密図―.( a )を領域拡張法7),8) で三値化した画像9) を示す。でなくなる。これに対して,統合法の一つである領域拡薄い灰色が土粒子,黒色が水,濃い灰色が空気を示して張(Region46Growing)法5)では初期抽出点から出発して,いる。地盤工学会誌,―() 講  座CT 画像で注意しなければならないのは,部分容積効果(Partial Volume EŠect)1)である。特に,三相混合体の不飽和土の場合は,土と空気の平均値が水と近いため,水と識別した voxel が土粒子表面に存在する吸着水か部分容積効果かを物理的に識別する事は極めて困難となる。したがって,間隙水の連続性が高く土粒子と間隙空気が接する面積が少ない場合,すなわち毛管不飽和状態のような飽和度の場合では,信頼性の高い結果が得られると考えられる10) 。図―.( b ),図―.( b )の三値化画像図―. 局所値の定量化に用いた Subset と評価点配置の概念図では,領域拡張法の許容値を決定する際に,部分容積効果の影響を考慮しているが,土粒子の周囲に水相がわずか見られる。低飽和状態においても土粒子表面には吸着水が存在するものの,その量はごくわずかであり,三値化画像が部分容積効果によって誤認された水相を含んでいることを否定できない。このように,三値化には部分容積効果という課題が残るため,三値化後に間隙比や飽和度を計算し,実物で測定した値と比較して,三値化の妥当性を検証する事が有効である。参考文献 8 )で検証した結果,三値化画像から求めた飽和度と間隙比は,測定値と一致を示した。一方,図―.,図―.に三値化結果を用いて評価したスキャン領域の飽和度及び間隙比を示しているが,供試体全体の値と良い一致は示していない。これは,供試体の一部のみを評価した値であるため,供試体内での間隙と水分量の不均質な分布に依存していると考えられる。しかし,特に低飽和度領域で水分量を高く評価しており,部分容積効果の影響は否定できない。解像度が高くなるほど部分容積効果の影響は小さくなるため,CT 技術の図―. 局所値に与える Subset の大きさの影響更なる進歩を期待したい。.. 局所的な飽和度及び間隙率図―.に間隙率と飽和度を二次元ヒストグラムとしてマイクロ CT の最大の特徴は,土粒子スケールの局所表したものを示す。初期状態の c では,供試体がほぼ飽的情報を与えることである。ここでは,三値化画像を用和していることに対応して,飽和度がほぼ100の領域い,局所的な間隙率,飽和度を定量化した。三次元画像に最も集中しており,わずかに飽和度の低い箇所が見ら中に等間隔に配置した評価点の周りに,ある大きさを持れる。 d , e と排水が進むにつれて,最頻値はより低飽つ直方体領域の Subset を設定し(図―.),Subset 内和度に遷移する。ヒストグラムの分布に注目すると,間の飽和度及び間隙率を評価する。全評価点のうち代表的隙率の高い箇所の飽和度が低く,間隙率の低い箇所の飽な 4 点について, Subset の大きさを変化させたときの和度は高い傾向にある。これは,小さい間隙の方が保水局所値の変化を図―.に示す。Subset が小さいときは性が高いことを示している。評価点によって局所値が大きく異なるが,大きくなるに注意したいのは,ここでは全領域を小領域に分割しよつれて収束していくことが分かる。間隙率は n が100でうとしているのではなく,評価点周りの決まった大きさほぼ収束しており,豊浦砂の間隙率は粒子 3~4 個に相パッチを当て,平均量を評価しようとしている点である。当する 0.67 mm 程度の 1 辺の長さを持つ直方体が代表評価点の間隔は短いほど情報量が増加し,ヒストグラム体 積( REV )となるこ とが分か る。一方,飽 和度はの形状がスムースになる。重なりを持たない領域で評価Subset を大きくしてもある程度の幅を持ったままであする場合は,ボロノイ分割など物理的に意味を持つ領域り,飽和度の REV は間隙率のそれよりも大きいことが分割が有効であろう。分かる。.. メニスカスの曲率評価とサクションの推定次に,三次元的な局所値の分布を調べることを目的と不飽和土内の間隙水と間隙空気の境界は,水の表面張し,間隙率,飽和度共に局所値がある程度の幅を持つ大力と土粒子の親水性によってメニスカス形状を呈しておきさとして Subset の大きさを61(0.4 mm 程度)と決定り,大気圧条件下では間隙水圧は負となり,これをサクした。評価点の間隔は鉛直,水平方向に等しく,Subsetションと呼ぶ。土粒子を理想球と仮定した場合(図―の大きさのほぼ半分の 30とした。つまり,各 Subset が.),サクションと間隙水の曲率との間には,簡易的にそれぞれの方向に半分程度重なっていることを意味する。式( 5.1)で表されるような正の相関関係があることが知January, 201847 講  座図―. 排水過程及び吸水過程における間隙率と飽和度の局所値頻度マッピング図―. 理想球を仮定した土粒子間のメニスカス水の曲率半径2)図―. 間隙水と間隙空気の境界面と三角形要素分割のられている例えば11)。T Tua-uw= - ………………………………………(5.1)r1 r2一例2)voxel 分しか厚さを持たない水相は Dilation で元に戻らないため, 1 voxel の厚さの吸着水や部分容積効果に起ここで,ua は間隙空気圧,uw は間隙水圧,ua- uw は因する水相を除去し,メニスカス水のみを抽出することサクション, r1 と r2 は水と空気の接触面における主曲ができる。その後,水相と空気相の接触面を抽出し,図率半径,T は水の表面張力である。不飽和土では式―.のように多数の三角形面に分割する。そして,計(5.1)の左辺,つまりサクションが常に正になり,この算対象の三角形面と周囲の三角形面(本稿の計算例では,場合は r1 が r2 よりも常に小さい値を示す。理想球を仮図―.に示すルールで付された番号 6 まで2) )の最大定し,粒径を砂の代表値として 230 mm とすると, r2 は主曲率の誤差を最小化して曲率を定める。接触面を構成オ ー ダ ー ほ ど 大 き く な る 性 質 が あ り 2) , 式するすべての三角形に対して得られた曲率の平均値を計r1 よ り 2(5.1)の右辺第二項は第一項に比べて十分に小さいため,算する。ここで結果として得られる曲率は,各々のメニサクションの大きさは,ほとんど r1 によって決まる。スカスについて評価した曲率ではなく,撮影範囲内全体X 線 CT から得られるのは幾何学情報であり,圧力その間隙水と間隙空気の境界面の曲率の平均値である。図のものを測定することはできないが,メニスカスの曲率―.に示すような,いわゆる 2 つの理想球の土粒子間半径 r1 を画像解析から評価すれば,サクションを推定に描かれているような架橋構造は,実際の砂の三次元画することができる。ここでは,メニスカス水の主曲率 1像の中でほとんど見当たらない。これは,接触状態が単/r1 を定量化した事例を紹介する2)。純でないこと,及び画像の解像度に依存している。まず,水相のみを取り出し,水相の全境界を 1 voxel排水過程(図―.の点 c, d, e, f)及び吸水過程(点分除去する(Erosion)。次に,消去後の画像の全境界をi, j, k)で取得した三値化画像を用いた解析から得られ1 voxel 分追加する( Dilation )。この処理によって, 1た曲率―飽和度関係を図―.に示す。排水過程におい48地盤工学会誌,―() 講  座直径(cm)である。ツンカーの式13),17)k=(CZnh 100-n2) ・D2w……(5.4)ただし,Dw=∑1/( D ) ……………………………………(5.5)piin は間隙率(),CZ は形状係数,pi はある粒径範囲を代表する平均粒形 Di の試料が全試料に対して占める含有率である。テルツァーギの式13),15)図―. 間隙水の曲率と飽和度の関係2)n-CR 100 0.013k=h 3 1-n/100{て飽和度が低下するほど曲率が増加し,吸水過程では飽}2・D102 ……………………(5.6)和度が上昇するほど曲率が減少しており,この挙動は水CR は形状係数である。いずれの式も形状係数と呼ば分特性曲線におけるサクションの増減傾向と一致していれるパラメータが導入されている。これは,間隙内の流る。体の移動が間隙の大きさ,間隙の形状,そして間隙の接この曲率に表面張力 T を乗じるとサクションの絶対続性の影響を受けることを示唆しているが,これらを直量となる。図―.の 1/r1 に20°Cのとき表面張力0.074接求めることが困難であったため,粒子の形状に関係すN /m を乗じた値は,飽和度が最も低い点 g を除いて概るパラメータとして導入されたと言える。本講座の第ね一致する。点 g が一致しない理由については,解像章18) でも述べているように,マイクロ X 線 CT の登場度以下のメニスカスを可視化できていない可能性などがにより,間隙構造の定量化が可能になりつつあることか考えられ,今後の課題である。式( 5.1)は理想的条件でら,上記の式に導入されている形状係数も具体的に評価のサクションの評価式であるため,本解析によるサクシされることが期待される。不飽和透水係数の推定式ョンの定量評価には注意が必要であるが,排水・吸水過程に見られるヒステリシスも観察されており,本曲率解不飽和透水係数とは,対象とする領域に負圧の動水勾析は,水分保持状態の異なる間隙水の曲率を相対的には配が作用し,その差圧状態における流動挙動が定常状態評価できている。時のダルシー則から定義される透水係数である。したが.. 排水過程と吸水過程における間隙水の存在形って,各飽和度において透水係数は変化する。.で述べたように,一般に,ある負圧における飽和度の状態を態..及び..で評価した不飽和土の局所値とサクシ示した土の水分保持曲線は,吸水過程と排水過程においョンから,排水過程と吸水過程における間隙水の存在形てある負圧における飽和度が異なる。したがって,飽和態について考察した。同等の飽和度で比較すると(c と状態から排水する現象と乾燥状態に水が浸潤していく挙k, d と j, e と i),図―.に示すように,大きな間隙よ動は異なるため,対象とする問題がいずれの問題なのかりも小さな間隙に保水されやすい傾向は,排水過程も吸を把握することは重要である。不飽和透水係数の推定に水過程も同じである。つまり,図―.,.の画像をみついては,ムアレムの推定式が有名である19) 。ムアレると,排水と吸水で明らかに間隙水の空間分布は異なるムの推定式の導出は,参考文献 19 )と 20 )に譲るが,複ものの,保水されている間隙の大きさに違いは見られな雑な間隙構造をチューブに置き換え,その中部の内径をい。一方,曲率の大きさは異なることから(図―.),間隙の代表径として推定していくものである。ここでも排水過程と吸水過程では飽和度が同じでも土粒子と水の測定が困難であった間隙径の導入が不可欠であった。こ接触状態に違いがあることが分かる。れに対し,van Genuchten21)が,水分特性曲線の推定式からムアレムの推定式にまで接続する一連のモデルをバ. 透水・浸潤特性ンゲヌヒテンムアレムモデルとして発表した。.. 飽和・不飽和透水係数の評価飽和透水係数の推定式Kr は比透水係数, Se は有効飽和度, l と m は定数で土の透水係数(k)の推定式については,一般に以下の 4 つの式が有名である13),14)。D10 は有効径,t は試験温度,Ch は定数である。e3gwD2s …………(5.3)CTh1+ egw は水の単位体積重量( kN / m3 ), e は間隙比, h は,水の粘性係数( Pa ・ s), CT は形状係数, Ds は土粒子のJanuary, 2018ある。これらの推定式の適用範囲はあるが,その利便性か ら 現 在 で も 非 常 に引 用 数 が 多い 手 法 と な っ て い るヘーゼンの式13),15)k=Ch(0.7+0.03t)D10 ……(5.2)テイラーの式13),16)k=Kr=Sel[1-(1-Se1/m)m]2 …………………………(5.7)(2002~2017年で引用回数が3 402回Scopus)。このモデルの目的は,実施が容易ではない不飽和透水係数を求める実験に対し,その代替案として提案されたことにあり,その目的は十分に果たされた状態と言える。一方,X 線 CT が登場したことにより,間隙構造をミクロに分析できることから,新たな不飽和透水係数の推定式の提49 講  座案が期待される。.. 地盤材料内部の流体移動現象の可視化事例土内部の浸透現象の可視化手法X 線 CT スキャナは,被検体内部の密度の空間分布をデジタル画像として可視化するため,不飽和状態に流体が浸潤していく状態を可視化し,時系列評価をすることは可能である。しかしながら,飽和状態に水が浸透する挙動を可視化することはできない。したがって, X 線CT を用いた土中の流体挙動を可視化できる条件は,初期状態において供試体の飽和度が 80 未満に対し流体を注入すること,あるいは飽和状態に比重が少なくとも0.25以上違う流体を注入することと言える。ここで示した数値は,使用する X 線 CT のスペックに依存するため,あくまで参考値として認識いただきたい。これらの実験条件によれば,厳密には前者は非定常不飽和浸透現象の可視化,後者は,砂質系材料(透水係数が大きい)においては密度流あるいは多相流の可視化,粘土や岩盤系材料(透水係数が小さい)に対しては拡散現象の可視化する実験を対象としていることが分かる。粘性土の非定常不飽和浸透現象ここでは,不飽和状態の試料を対象として近年気泡混合処理土として知られる SGM(Super GeoMaterial)図―. SGM 浸透実験装置の浸透現象を紹介する。気泡混合処理土は,浚渫域の地盤改良のために当時の運輸省港湾技術研究所(現港湾空港技術研究所)で開発された材料である。湿潤密度1.1 t/m3 で目標強度に調整された材料であったが,海水中に施工するため密度変化の可能性が議論された。そこで,図―.に示すような実験装置を用いて SGM への浸透実験を実施し,その内部浸透現象を可視化した。この実験では,直径 50 mm ,高さ 60 mm の供試体を図―.に示すように寝かせ,一端面のみを蒸留水に接触させ,もう一つの端面を大気圧と接触させる条件を作り,図―. 蒸留水の浸透実験(拘束圧が 1 気圧)また周面はゴムスリーブで密着していることから,供試体周面の水を加圧することにより SGM 供試体端面から一次元方向に水が注入される実験である。図―.と図―.は,熊本大学が所有する産業用 X 線 CT スキャナ(東芝製 TOSCANNER RE20000 )を用いて,それぞれ注入圧及び拘束圧が 1 気圧と 3 気圧における実験開始直後から 30 分毎の CT 画像である。本画像の 1 画素は 293 mm2 × 1 mm という直方体であり,密度を表すCT 値はこの画素内の平均密度を意味する。注入面付近の灰色は,蒸留水が浸潤している様子である。一方,画図―. 蒸留水の浸透実験(拘束圧が 3 気圧)像中の黒は,気泡を多く含む領域である。加圧直後から注入面付近に水が浸入している様子が分かる。また拘束が水に置換され,その様子を CT で観察すると外側から圧が大きい図―.(a)の方が浸潤している距離が短い内側に向けて進行することが分かっている。また置換領ことが分かる。これは図―.と図―.の画像を比較域の内側への進行範囲は,時間の対数に比例する形で深すると,図―.の方が注入面付近に大きな気泡の存在くなっていく。水が浸透していく速度は,気泡の量によが確認されるように,CT 画像の解像度からは検出困難る影響が大きく,気泡量が多いほど速度が遅い傾向にあなミクロ間隙が拘束圧によって圧縮したために,水が入ることも分かった。一方,養生環境を変え,湿潤~飽和りにくい状態であることが分かった。また,その状態は砂中で養生すると水中養生した場合に比べ速度が著しく1 時間以内で明確に違いがあることが分かる。参考文献遅くなる傾向にあり,飽和度がある程度以上大きな条件22)によれば,SGM を水中で養生すると SGM 中の気泡でその速度が著しく遅いことが分かっている。50地盤工学会誌,―() 講  座図―. KI 水溶液による拡散実験粘性土中の拡散現象図―.は,大気圧条件下における 6 時間毎の拡散実験である。拡散溶媒には,水と同じ粘性に調整した比図―. 漏水実験装置の写真と概略図重が1.25のヨウ化カリウム水溶液(以下 KI 水溶液と呼ぶ)を使用した。実験開始直後は,注入面端面の局所的に白くなっているが,これは KI 水溶液単体の CT 値が700であり,蒸留水の CT 値と比較して大きいため高いコントラストが得られている。 KI 水溶液の拡散状況ははっきりとしたフロントと徐々にシェーディングしている 2 つの領域があることが観察でき,前者が定常状態の拡散領域,後者が非定常状態の拡散領域と言える。こ図―. 破損部から 5 mm 直下の断面画像の拡散実験では濃度勾配拡散現象が進行するため,粘性土のような透水係数を対象として KI 水溶液を用いた透水現象の可視化を実施する場合,その現象は移流拡散現象となる可能性があり, KI 水溶液を適用した実験結果の分析には注意が必要である。地盤内への漏水現象の可視化本項では,廃棄物処分場の漏水問題を対象として,模型実験を実施し,漏水箇所以下の模型地盤を可視化した事例を紹介する。図―.に産業用 X 線 CT 用漏水実験装置の写真と概要図を示している。図―.に示すように遮水シート中央に 3 種類の破損部を設け,形状が図―. 三次元漏水領域画像異なる破損部からの漏水現象を可視化した。図―.と図―.は,破損部から漏水現象を可視化した深さ方向に 10 mm 間隔で撮影した実験開始後 30 秒後の二次元及び三次元 X 線 CT 画像である。( a )は長方形破損,( b )は二穴破損,(c)は一穴破損である。形状の違いによる漏水現象を比較するため破損部の面積を同じにした。画像解析による破損部直下の漏水面積はそれぞれ,( a )4 209 mm2 ,( b ) 3 863 mm2 ,( c ) 2 954 mm2 という結果が得られた。図―.は,CT 画像から漏水域の体積を求めその時間変化を示している。これは,穴のタイプの破損よりも割裂型の破損形状の方が漏水量が多くなることを示唆している。このように三次元で地盤内の漏水現図―. 各破損ケースにおける漏水量の比較象を可視化できることは意義深いことである。ただし,この実験では KI 水溶液を用いているため,動水勾配にキ ャ ナ ( 東 芝 製 TOSCANNER 32300FPD , 以 下よる地盤内浸透と同時に密度流も生じており,数値解析MXCT と呼ぶ)を用いた事例を紹介する。本項で示すとの比較によりそのメカニズムの解明が不可欠であるこ画像の 1 画素寸法は 5×5×5 mm3 である。図―.(a)とから,今後の研究の進展が期待される。軽比重難水溶性流体の浸透ここでは,熊本大学が所有するマイクロ X 線 CT スJanuary, 2018は,見かけ上飽和度 100 の豊浦砂供試体を MXCT で撮影した直径 3 mm の画像である。一方,図―.(b)は,比重 1.05に調整した KI 水溶液で同じく豊浦砂を飽51 講  座. お わ り に本稿では,X 線 CT によって明らかとなる土中の水理を紹介した。不飽和土においては非定常浸透状態,飽和土においては間隙水中の物質移動を明らかにした。飽和土における水の流れは課題として残っているが,トレーサーを用いた可視化の可能性がある。ここでは紹介できなかったが,水分の可視化技術として,近年は中性子線図―. 飽和豊浦砂供試体の CT 画像を用いた断層撮影である Neutron Tomography ( NT )技術が発達してきている。中性子線は X 線とは異なり密度に依存して減衰せず,各々の物質が固有の減衰特性を持つ。特に,中性子線は水によって大きく減衰することから,土中の水分変化を X 線 CT よりも明確に可視化できる特徴がある。解像度と中性子線源の小型化に課題があるが,この技術が更に発達すると,X 線 CT で土を可視化し,NT で水を可視化すれば,部分容積効果の影響はないため,より明瞭に水分変化を可視化できる。参1)図―. LNAPL 注入前後の CT 画像2)3)4)5)図―. LNAPL の三次元ブロッブ画像和度100の CT 画像である。KI 水溶液の CT 値と土粒子の CT 値が近い値を持ったため,土粒子と間隙水の区6)7)別がつかない状態を示している。軽比重難水溶性流体(以下, LNAPL と呼ぶ)の比重は 0.85 であることから,これとの違いは明確であるが,間隙内における KI 水溶8)液の挙動が分からない。図―.(a)は,比重1.25 に調整した KI 水溶液を用いて作成した飽和豊浦砂供試体であり,図―.(b)は LNAPL を注入したのちもう一度KI 水 溶 液 を 注 入 し た 画 像 で あ る 。 疎 水 性 で あ る9)を超えるため,間隙中でもLNAPL は,濡れ角度が 90 °その形状は球体のような形状を保とうとしていることが分かる。図―.は,図―.(b)に関する LNAPL の空間分布を示している。これは,いわゆるブロッブの三次元分布であり,本講座第章で紹介した間隙構造解析手法11) を用いることによって,ブロッブの個数,形状,体積などを評価することができ,飽和砂中の油の残留空間分布を定量的に評価することが可能となりつつある。5210)考文献肥後陽介・高野大樹・椋木俊文X 線 CT 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