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タイトル 無人化施工技術を核としたi-Construction による緊急災害対応―阿蘇大橋地区斜面防災対策工事―(<特集>i-Construction)
著者 中出 剛・北原 成郎・光武 孝弘・野村 真一
出版 地盤工学会誌 Vol.66 No.1 No.720
ページ 20〜23 発行 2018/01/01 文書ID jk201807200013
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  • タイトル
  • 無人化施工技術を核としたi-Construction による緊急災害対応―阿蘇大橋地区斜面防災対策工事―(<特集>i-Construction)
  • 著者
  • 中出 剛・北原 成郎・光武 孝弘・野村 真一
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.66 No.1 No.720
  • ページ
  • 20〜23
  • 発行
  • 2018/01/01
  • 文書ID
  • jk201807200013
  • 内容
  • 報告無人化施工技術を核とした iConstruction による緊急災害対応―阿蘇大橋地区斜面防災対策工事―Urgent Disaster Countermeasure by Comprehensive iConstruction System based onAdvanced Unmanned Construction Technology―Slope Protection Construction at Aso Ohashi Bridge Area―中出 剛(なかで株 熊谷組土木事業本部土木設計部土工・開削グループ光武孝つよし)北原成郎(きたはら株 熊谷組土木事業本部部長弘(みつたけたかひろ)野国土交通省九州地方整備局水災害予報センター長村真しげお)ICT 推進室一(のむら室長しんいち)国土交通省九州地方整備局熊本復興事務所 副所長. は じ め に平成 28 年 4 月 16 日の熊本地震(本震)により阿蘇大橋地区で大規模な斜面崩壊が発生した。崩壊規模は長さ約 700 m ,幅約 200 m ,崩壊土砂量は約 50 万 m3 にも及び,斜面下部に位置する国道 57 号, JR 豊肥線と国道325 号阿蘇大橋を押し流す大災害となった(図―)。崩壊斜面の上部には,崩壊地を取り囲むように開口亀裂や段差が生じており,降雨や余震等により更なる崩壊の危険性があったことから,国土交通省では『直轄砂防災害関連緊急事業』として斜面上部に残る多量の不安定土図―砂の崩壊による二次災害を防ぐための緊急的な対策工事に平成28年 5阿蘇大橋地区の被災状況月に着手した1)。対策工事の実施にあたっては,余震や降雨による不安定土砂の挙動を把握するため,地震計・雨量計の設置に加え,崩壊斜面の周囲に伸縮計・地盤傾斜計等を設置し,計測データによる監視を行うとともに,定点カメラによる視覚的監視を行っている,また,崩壊斜面上部に残る不安定土砂の崩落による二次災害を防止するため,崩壊地内での復旧作業は全て無人化施工により実施している。このような人が立ち入ることができない急峻かつ長大な崩壊斜面での調査・計画・施工にあたっては, UAV( Unmanned aerial vehicle ) 測 量 等 に よ る 三 次 元 地 形データを基に,調査・設計・施工・管理のすべての段階図―において iConstruction を取り入れ,安全かつ迅速な緊緊急対策工事の概要急災害対応を成し遂げた。本稿では,この緊急災害対策泥濘化するためにトラフィカビリティに悪影響を及ぼす工事において実施した総合的な iConstruction の取り組黒ぼくを主体とする土砂が存在している。このため,崩みや,その基盤となるネットワーク対応型無人化施工技壊地での無人化施工にあたり,特に重機の安定性に対す術について報告する。る配慮が求められた。.被災地の特徴と緊急対策工事の概要当該地が阿蘇外輪山の内側斜面に位置していることかこのような状況の中,緊急対策工事として崩壊地内において主に以下の対策を実施した(図―)。1)土留盛土工斜面上部に残る不安定土砂の崩壊にら,斜面には阿蘇山の火山噴出物が広く分布しており,よる二次災害を防止するものであり,落石跳躍高崩壊後の斜面上には,崩落しやすい阿蘇山の火山噴出物や無人化施工機械の施工性を踏まえて,盛土高 3 m,起源の凝灰角礫岩や安山岩質溶岩のほか,含水状態では幅員 5 m のソイルセメント盛土を上下 2 段構築す20地盤工学会誌,―() 報認できないオーバーハング状の崩壊地頭部の地質や浮石る。2)告斜面頭部の不安定土砂の除去(以下,ラウンディ状況を把握することが必要である。このため,UAV 測ングという。)斜面頂部における滑落崖周辺の地量により通常の垂直方向撮影に加え,低高度・近距離か形的に凸部となる表層(黒ぼく)や土砂化した岩らの斜め方向撮影を実施し,崩壊地頭部の画像情報や三屑堆積物,浮石,転石を遠隔操作による重機で除次元地形モデルを取得した。去する。.. 設計総合的な iConstruction の取り組み土留盛土工の設計にあたっては,前述の航空レーザ計測による三次元地形モデルを用いて,現地の高低差や無大規模な斜面崩壊地での緊急対策工事として,崩壊地人化施工機械の施工性を勘案して平面配置を設計した内に人が立ち入れない状況において,迅速な対策の遂行(図―)。また,土留盛土工には 3 箇所排水構造を設が必要であることから,図―に示すように調査・設けたが,設置位置については UAV 測量によるオルソ画計・施工・管理の一連のプロセスに iConstruction を導像や三次元地形モデルから水みちとなるガリー部を確認入し,三次元地形モデルを基盤とした取り組みを実施しし,設定した。なお,崩壊地内では原位置での地質調査た。が行えないことから,無人化施工のバックホウにより崩. 調査壊地内の原位置土を複数箇所で掘削し,この撹乱試料に斜面防災対策の設計のためには,被災後の現地地形やより物理試験や締固め試験を実施した。安定検討におけ地質構造の把握が重要であるが,崩壊地内には立ち入りる崩壊地土の強度定数については,安全側として飽和状ができないことから,航空レーザ測量や UAV による写態に調整した供試体を作成し,三軸圧縮試験(UU 試験)真測量を駆使して調査を進めた。により設定した。航空レーザ測量地震による斜面崩壊後の詳細な地形情報を得るために,ラウンディングの設計では,前述した UAV 測量の斜め方向撮影により得られた崩壊地頂部のオルソ画像や三航空レーザ測量により三次元地形モデルを作成し,以降次元地形モデルにより,まず落石の発生源となるおそれの設計・施工・管理において活用した。地図情報レベルのある浮石・転石の状況を確認し(図―),これらを500の精度による地形情報からは,図―に示すように崩落する範囲でラウンディング下端位置を設定した。次崩壊地頭部に分布する多くの亀裂を認識できたことから,に,切取斜面の安定勾配(11.2)や背面亀裂の状況を地表踏査時は非常に有用な情報となった。踏まえて,三次元地形モデルにより得られる複数の横断UAV 測量ラウンディングの設計にあたっては,真上からでは確面においてラウンディング上端位置を設定し,これによりラウンディングの施工範囲を決定した(図―)。図―図―iConstruction による取り組みの概要図―崩壊斜面頭部における亀裂の分布状況January, 2018図―土留盛土工の三次元モデルラウンディング下端位置の設定21 報告図―ラウンディング範囲の設定図―ネットワーク対応型無人化施工システムの概念図. 施工土留め盛土工における無人化施工a)ネットワーク対応型無人化施工システム土留盛土工の施工においては,ネットワーク対応型無人化施工システムを導入している(図―)。 映像データや操作データ従来型の無人化施工では,◯等の無線機が個別のため台数が多く無線環境の設定に時 中継が難しく伝送も300 m 程度のため遠間を要する,◯ 無線相互の混信・干渉隔操作室の位置が限定される,◯により稼働が不安定等の課題があり,迅速性を要し,広範囲な重機稼働や多数の無人化機械の集中投入が必要な本施工には対応困難であった。このため,各種データを変換器で IP (インターネットプロトコル)化し,無線LAN で情報を集約するネットワーク対応型とすることにより,無線環境の設定が容易になるとともに,長距離図―従来型とネットワーク型の概念図無線 LAN ,光ファイバーケーブル等の使用が可能で中継が容易となるため,遠隔操作室位置の自由度が向上した。また多様な接続機器の接続や,大容量高速伝送が容易に中継可能となり,無人化機械の制御に加え,画像データや GNSS(衛星測位システム)等の情報を集中管理することで安定した操作環境を整えることができる(図―)。当工事では,無線局を最大限利用し,光ケーブルや高速無線アクセスシステム,各種無線 LAN を組み合わせることで,施工箇所より約 1 km 離れた場所に『超遠隔操作室』を設置し,安全な作業環境を整えるとともに,写真―超遠隔操作室の操作状況崩壊地内で作業する無人化施工機械が最大 14 台稼働することを可能とした(写真―,)。b)建設 ICT(情報化施工)の導入当工事では無人化施工機械に高精度 GNSS 受信機(2台)と複数のセンサを搭載し,位置情報・ICT 施工データと三次元設計データをコントロールボックス内で一元管理できるマシンガイダンスシステム及びマシンコントロール(ブルドーザ排土板制御システム)を使用した。通常は建設機械にコントローラが搭載されているが,当工事ではコントローラを超遠隔操作室に設置できるように,特殊な変換器を開発・使用することで,ガイダンス写真―崩壊地内で稼働する無人化施工機械操作,データ設定や機器設定も超遠隔操作室で可能になった。盛土の平面形状は数箇所の折れ点を有する形状で22地盤工学会誌,―() 報写真―告無人化施工機械の水平器マシンガイダンスあり,操作用カメラや車載カメラとマシンガイダンスシ図― オルソ画像による崩壊地形状況の比較ステムを併用して施工した。またマシンガイダンスは法面整形施工のガイダンスの他に,改良材撹拌作業範囲の指示や出来形の測量機としても使用した。作業現場周辺地盤は黒ぼく土が多く堆積しており,降雨時には無人化施工機械の沈み込みや滑りが発生することから,マシンガイダンスの水平器機能を使用し,無人化施工機械の傾斜を確認しながら施工を進めた(写真―)。カメラの配置によっては映像のみでは微妙な角度が認識できず,機械の傾きはオペレータの経験頼りとなる。水平器機能は複数点の位置情報により機械の重心位置を示すマシンガイダンスであり,定量的な角度を把握することにより,オペレータにとって重要な判断情報が提供され,重大なトラブル回避につながった。ラウンディングにおける遠隔操作施工図― ラウンディング施工前後の差分解析ラウンディングの施工は,崩落地周辺での作業であることから,安全を確保するために 3 台の高所法面掘削機を用いて遠隔操作にて実施した。掘削機に搭載した可動カメラと施工付近の固定カメラの映像を,操作者がカメラモニターで確認することにより視認性を向上させた。.おわりに二次災害のおそれのある大規模斜面崩壊対策工事において,UAV 測量やネットワーク対応型無人化施工シス. 管理テム等の iConstruction を総合的に活用することにより,崩壊地内は有人での測量が不可能なことから,土留盛安全にかつ迅速な復旧対策を実施することができた。大土工においては,前述のマシンガイダンスシステムによ規模斜面の対策検討においては,発注者・設計者・施工り出来形の確認を行っている。各種データをコントロー者の三者による会議を毎週実施し,逐次判明する被災状ルボックス内で一元管理できるマシンガイダンスを導入況や調査結果に応じた対応方策の議論を重ねるなど試行することにより操作性を向上させ,高精度な施工管理を錯誤しながら進めてきたが,崩壊地の状況を共有して把実現した。握し迅速に意思決定するうえでも,今回の取り組みが大また,豪雨等の気象イベント発生や対策工事の進捗にいに寄与したと考えられる。また,崩壊地内においては合わせて UAV 測量を実施し,画像による目視に加え,原位置での調査ができない状況で設計を行わざるを得な各イベント前後の差分解析により崩壊地内の土砂移動やい状況であったが,今後は無人化施工機械によるサウンガリー侵食の状況を把握した。図―は震災直後の対策ディングやサンプル採取等の調査手法の開発が望まれる。前と震災後 2 カ月が経過した 6 月の降雨後,及び主な最後に,国土交通省九州地方整備局をはじめ,本対策対策が終了した時点のオルソ画像を比較した図である。工事の実施にあたりご協力いただいた関係者の皆様に,降雨による新たな増破箇所や地形状況の変化を確認するこの場を借りて厚く御礼申し上げます。ことで,対策工の検討に反映させている。図―はラウンディング後の UAV 測量による差分解析であるが,ラウンディングによる排土状況や崩壊地内における堆積土砂状況を確認することができ,差分解析結果から除去した不安定土砂量は約17 000 m3 となっている。January, 2018参1)考文献野村真一阿蘇大橋地区大規模崩壊斜面の対応―阿蘇大橋地区斜面防災対策工事―,土木施工,Vol. 58, No. 6,pp. 18~21, 2017.(原稿受理2017.9.27)23
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