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タイトル 落石危険度評価へのレーザー振動計とドローンの応用事例(<特集>i-Construction)
著者 上半 文昭
出版 地盤工学会誌 Vol.66 No.1 No.720
ページ 16〜19 発行 2018/01/01 文書ID jk201807200012
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  • タイトル
  • 落石危険度評価へのレーザー振動計とドローンの応用事例(<特集>i-Construction)
  • 著者
  • 上半 文昭
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.66 No.1 No.720
  • ページ
  • 16〜19
  • 発行
  • 2018/01/01
  • 文書ID
  • jk201807200012
  • 内容
  • 報告落石危険度評価へのレーザー振動計とドローンの応用事例Application of Laser Doppler Vibrometer and Unmanned Aerial Vehicleto Rockfall Risk Assessment上半文昭(うえはん(公財)鉄道総合技術研究所ふみあき)室長. は じ め に地盤工学分野での ICT 活用の一例として,鉄道総合技術研究所(以下,鉄道総研)が鉄道沿線の落石被害の予防を目的として開発に取り組む,遠隔非接触測定による落石危険度評価手法1),2)を紹介する。同手法は,振動計測による落石危険度評価3)をより簡単,安全に実施するために,常時微動などの微小振動をレーザー振動計4)を用いて遠隔位置から測定可能としたものである。また,ドローン空撮で岩塊の規模や形状を把握することで,落図―落石危険度の詳細評価手法の流れ石危険度の評価精度向上を図る2)。提案手法の概要を図―に示す。遠隔位置からの非接触計測で岩塊の振動特性(固有振動数)を把握するとともに,ドローンを用いて対象岩塊を空撮してその寸法・形 状 を 測 量 す る 。 そ し て , 空 撮測 量 結 果 か ら岩 塊 のFEM 解析モデルを作成し,背面亀裂の進展に着目したパラメータ解析で岩塊の固有振動数と安定性の関係を調べ,対象岩塊の平時並びに地震時の落石危険度を定量評価する。写真―U ドップラー写真―長距離型 U ドップラー以下,まず落石危険度評価に用いる計測システム並びに解析・評価手法の流れを説明し,次に開発した計測システムの機能確認と評価手法の妥当性検証を目的として実施した,模擬岩塊の計測・解析実験結果を示す。.非接触計測システム岩盤斜面中に存在する不安定岩塊の振動及び形状を,非接触測定するための計測システムの概要を示す。. 非接触振動計測システム図―岩塊表面のレーザー反射強度分布の測定結果例遠隔位置からの振動計測には,レーザードップラー速度計(以下, LDV )に屋外での微小振動計測用の改良た普及機で,小型軽量であることから山中に持ち込んでを施した装置を用いる。 LDV は測定対象にレーザーを比較的近傍から測定を行う際に使用する。写真―に示照射することで測定対象の振動速度を検出する装置であす長距離型 U ドップラーは,赤外 LDV に自己振動補正る。鉄道総研は,風や地盤振動などの外乱の影響を受け機能を付加し,水平・鉛直 2 方向回転台に搭載したもやすい屋外環境で LDV の測定精度を確保するため,のである。測量機器レベルの測角制御性能を有する回転LDV 自身の揺れや傾きを別途センサで測定してそれら台とレーザー視準方向の同軸カメラ映像を利用して,岩の影響を補正する自己振動補正手法を提案し,同手法を盤斜面上から測定対象の岩塊を検出するとともに,岩塊適用した装置を一般の LDV と区別するために,U ドッ表面をレーザーでスキャニングして,計測に適した高プラー4)(Undisturbed laser DOPPLER velocimete)とレーザー反射強度点を自動視準することができる。図―名付けた。主として橋梁等構造物検査用に開発したものは岩塊表面のレーザー反射強度分布の測定結果例であであるが,岩盤斜面測定にも応用できる。り,色の濃さがレーザー反射強度の高さを表している。写真―に示す U ドップラーは,赤色 LDV を用い16この自動視準機能により,長距離型 U ドップラーは,地盤工学会誌,―() 報100 m 以上遠方に位置する岩盤斜面から測定対象の岩塊表―告非接触計測システムの主な仕様を検出・視準し,反射材を用いずに微小振動を測定することができる。長距離型 U ドップラーの主な仕様を表―(a)に示す。U ドップラーシステムで,岩塊の常時微動や人為加振(カケヤ打撃や音響加振)による振動を測定して卓越周波数(岩塊の固有振動数)を求め,それを主たる評価指標として落石危険度を評価する。一般に,安定岩塊の卓越周波数は高い値を示し,常時微動による検出が難しく,不安定化が進むにつれて卓越周波数が低くかつ明瞭となり,常時微動による検出が容易になる傾向がある1)。. 空撮測量システムと岩塊の FEM 解析モデル化斜面下方からの視認,測量が難しい高所や遠方に位置する岩塊の外観情報と形状の取得を目的として,図―に示す空撮測量システムを開発した。ドローンに搭載した防振化したステレオビデオカメラの撮影画像の相関分析により,岩塊の形状を三次元の座標点群として取得できる2)。主な仕様を表―(b)に示す。図―斜面から突出した岩塊を撮影する場合,1 方向からの空撮測量システム撮影画像には必ず死角が生じ,岩塊の全体形状を捉えられない。そこで,開発した空撮測量システムでは,対象岩塊を多方向から撮影し,得られた座標点群を重ね合わせて死角のない岩塊形状データを作成する。得られた形状データから岩塊の振動特性評価用の数値解析モデルを生成するプログラムも作成した。実岩塊のモデル化結果例を用いて,空撮結果から岩塊の三次元 FEM 解析モデルを作成する手法の流れを説明する(図―)。まず,多方向から対象岩塊を空撮し,得られたステレオ画像から複数の形状データを作成する。それらを座標変換して重ね合わせ,死角のない岩塊形状データを作成する(図―(a)~(c))。次に,座標点の集合である岩塊形状データに図―(d)に示す立方体要図―空撮結果からの岩塊の三次元 FEM 解析モデルの作成素を用いた形状近似・ノイズ除去手法を適用し,岩塊を立方体要素の集合で表現する。さらに,解析対象とする岩塊を直方体のフレームで切り出すとともに,複数の立方体要素をまとめて合理的な要素サイズ・要素数のモデルに変換する。最後に,岩塊を支持する基盤岩と接着部の要素を取り付け(図―(e)),岩石サンプルの室内試験結果等に基づいてモデルに材料物性を与え,落石危険度評価用の FEM 解析モデルを完成する。. FEM 解析による落石危険度の詳細評価振動測定で得られた卓越周波数から対象岩塊の落石危険度を評価できるが1),より定量的で,地震時の落石危険度も考慮できる手法とするために,評価に FEM 解析を応用することとした。実岩塊の評価事例を用いて, FEM 解析による落石危険度の詳細評価2) の流れを説明する(図―)。先の図―で作成した FEM 解析モデル(図―(a),(b))を図―FEM 解析による落石危険度の詳細評価の流れ固有振動数並びに基盤と岩塊の接着位置周辺の応力分布対象に,接着部の位置と面積,作用外力(自重及び想定を求め,想定地震動も静的震度(基盤岩直交方向 1 成地震動(図―(c))によるパラメータ解析を実施する。分)で考慮している。なお,本事例では,モデルの材料現状は簡単のため,モード解析と静的弾性解析で岩塊の物性として,弾性係数 3.2 × 104 N / mm2 ,比重 2.50 ,ポJanuary, 201817 報告アソン比0.3を用いた。表―実岩塊の崩落周波数と転倒安全率の評価結果図―(b)は岩塊背面のクラックが背面の上部から進展して接着部の面積が減少し,岩塊が転倒・剥落する落石シナリオでの接着部の設定例である。この場合,図―(d)に示すように接着部の上縁で引張応力が卓越し,その値が岩石の引張強度を上回ると落石が発生すると仮定できる。パラメータ解析の結果は,最終的に,図―(e)に示す岩塊の卓越周波数と接着部最大引張応力の関係グラフとして整理し,このグラフを用いて落石危険度を評価する。例えば,同図に対象岩塊の実測卓越周波数(68.9 Hz)を照合すると,自重による曲線と交わる点から,対象岩塊接着部の現況の最大引張応力(2.1 N/mm2)を推定できる。また,同図に対象岩塊の引張強度(本事例では 4.1 N / mm2 とした)を照合し,自重による曲線と交わる点を求めれば,自重での崩落が発生する直前の岩塊の卓越周波数(46.9 Hz)を推定できる。岩石の引張強度の適切な設定が,評価の信頼性確保に不可欠であり,現状は,現地で採集したサンプル又は同図―模擬岩塊の振動・形状計測実験状況種岩石の室内試験結果に基づくこととしている。同様な検討により,各種の地震動が作用した際の落石危険度も推定できる。表―はそれらの検討結果をまとめたものである。なお表中の転倒安全率は,次式(1)で定義したものである。転倒安全率=岩石の引張強度各作用力による接着部の最大引張応力………………………………………………………(1)図―模擬岩塊の設置方法と形状本事例で用いた対象岩塊は早晩に崩落する危険はないが,今後,背面亀裂の浸食が進み,卓越周波数が60 Hz程度まで低下すると L2 地震時の崩落の危険性が, 50Hz 以下まで低下すると L1 地震動及び自重による崩落の危険性が,それぞれ高まった状態にあると評価できる。.模擬岩塊の計測・解析実験システムの計測・解析機能の確認と評価手法の妥当性検証を目的として模擬岩塊の計測・解析実験を行った2)。. 実験方法図―に実験状況を,図―に模擬岩塊の詳細を示す。図―模擬岩塊の卓越周波数推定結果模擬岩塊 4 体を剛な反力壁上に設置し,非接触振動計測と空撮を実施した。模擬岩塊は,花崗岩ブロックに岩してステレオ撮影(基線長600 mm )し,模擬岩塊の三塊の背面亀裂を模した幅約 8 mm の切り込みを加えたも次元形状を推定した。模擬岩塊の形状は 4 体同一であので,4 体は図―の左側からそれぞれ20 mm,30 mm,るため,左端に位置する模擬岩塊を撮影対象とした。40 mm,100 mm の接着残長を有している。接着残長20. 非接触振動計測結果mm の模擬岩塊は極めて不安定な状態で,設置作業時の図―に非接触振動計測による各模擬岩塊の卓越周波破壊を防ぐための保護材・結束帯を外そうとすると自重数の推定結果を示す。接着長の減少に伴う卓越周波数ので前方に傾き始め,崩落の危険があったため,結束帯で低下が確認でき,最も安定した接着残長100 mm の模擬支持したままの状態で実験することとした。模擬岩塊から約 10 m 離れた斜め下方から, U ドップ岩塊の卓越周波数が 143 Hz で,極めて不安定な状態で結束帯を外せば崩落する危険がある接着残長 20 mm のラーセンサで各模擬岩塊の振動を測定(サンプリング周模擬岩塊の卓越周波数は31 Hz であった。過去に実施し波数 1 kHz ,測定時間 30 秒)し, FFT 解析により卓越た実験1) での同規模のブロックの崩落発生周波数は 30周波数を求めた。対象とする振動は基盤岩に見立てた反Hz 前後であり,卓越周波数の推定結果からも同模擬岩力壁の右下部をカケヤで軽打して起こした人為加振振動塊の崩落危険度が極めて高いことが推定できる。である。また,空撮測量システムで模擬岩塊周辺を飛行18地盤工学会誌,―() 報告. 空撮測量結果及び FEM 解析モデル化図―に空撮ステレオ画像から作成した模擬岩塊形状の三次元点群データを示す。図―に模擬岩塊の三次元点群データに立方体要素化を適用して作成した模擬岩塊の FEM 解析モデルを示す。一辺 10 mm の立方体でモデル化したもので,若干バリ状の誤差がみられるが,模擬岩塊の形状をほぼ正確に捉えている。三次元 FEM 解析モデルの材料物性は,サンプルの室内試験結果に基づ図―三次元点群データ図― FEM 解析モデルき,弾性係数4.78×104 N/mm3,比重2.65,ポアソン比0.27,引張強度5.64 N/mm2 と設定した。. 非接触振動計測結果図―に三次元 FEM 解析モデルによる模擬岩塊の振動モードと固有振動数,並びに自重作用時の応力分布の解析結果例を示す。岩塊が転倒方向に振動し,接着部上面付近の引張応力が卓越する状況が確認でき,剥落転倒型 の崩 落形 態を 示す もの と推 測で きる 。接 着残 長 20mm のモデルの最大引張応力は5.68 N/mm2 に達しており,想定した引張強度を若干上回っている。図―に模擬岩塊の接着残長と卓越周波数の関係を解析結果と実測結果を比較して示す。背面クラックの進展に相当する接着残長の減少による卓越周波数の低下傾向を概ね解析できている。仮に模擬岩塊の接着残長が不明図― FEM 解析モデルの振動モードと応力分布として FEM 解析結果と実測卓越周波数から接着残長を推定すると,接着残長の短い模擬岩塊から順に 16 mm,30 mm,43 mm,94 mm となる。この結果は,FEM 解析結果と実測卓越周波数から岩塊背面のクラックの進展を推定できる可能性を示唆している。図―に提案手法による各模擬岩塊の自重による落石危険度評価結果を示す。FEM 解析で求めた卓越周波数-接着部最大引張応力関係図に実測卓越周波数を照合し,各模擬岩塊の接着部の発生応力値と転倒安全率を推定し図― 接着残長と卓越周波数の関係た。接着残長100 mm の模擬岩塊が発生応力0.9 N/mm2,転倒安全率6.3であるのに対し,接着残長 20 mm の模擬岩塊は発生応力 8.2 N / mm2 で転倒安全率は 0.69 と 1 を下回る結果となった。結束帯で支持しなければ崩落する状況と対応した結果である。. お わ り にレーザー振動計測とドローン空撮により岩盤斜面中の不安定岩塊の振動・形状を計測し,振動解析と数値解析検討で対象岩塊の落石危険度を詳細評価する手法を提案し,計測システムの機能と評価手法の妥当性を検証した。今後は現地計測・評価データを蓄積し,提案手法の検証,改良に取り組みたい。なお,本研究の一部は,国土交通図― 模擬岩塊の自重による落石危険度評価結果省の鉄道技術開発費補助金を受けて実施した。参1)考文献上半文昭・斎藤秀樹・太田岳洋・石原朋和・大塚康範・馬 貴臣・沢田和秀・深田隆弘非接触振動計測による岩塊崩落危険度の定量評価システムの開発,岩の力学国内シンポジウム講演論文集,Vol. 13, pp. 43~48, 2013.2) 上半文昭・箕浦慎太郎遠隔非接触計測による落石危険度評価実験,第14回岩の力学国内シンポジウム講演集,January, 2018講演番号094,2017.緒方健治・松山裕幸・天野淨行振動特性を利用した落石危険度の判定,土木学会論文集,No. 749, pp. 123~135, 2003.4) 上半文昭鉄道橋検査を目的とした遠隔非接触測定技術の開発,鉄道総研報告, Vol. 31, No. 4, pp. 53 ~ 58,2017.3)(原稿受理2017.10.6)19
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