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出版

タイトル 路盤敷均し工におけるマシンコントロール導入効果について(<特集>i-Construction)
著者 橋本 毅・梶田 洋規・藤野 健一
出版 地盤工学会誌 Vol.66 No.1 No.720
ページ 12〜15 発行 2018/01/01 文書ID jk201807200011
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  • タイトル
  • 路盤敷均し工におけるマシンコントロール導入効果について(<特集>i-Construction)
  • 著者
  • 橋本 毅・梶田 洋規・藤野 健一
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.66 No.1 No.720
  • ページ
  • 12〜15
  • 発行
  • 2018/01/01
  • 文書ID
  • jk201807200011
  • 内容
  • 報告路盤敷均し工におけるマシンコントロール導入効果についてThe EŠect of Leveling Work on Subbase Course with MC Machine橋本毅(はしもと国立研究開発法人土木研究所藤梶たけし)主任研究員野健田洋規(かじた国立研究開発法人土木研究所一(ふじの国立研究開発法人土木研究所. は じ め にひろき)上席研究員けんいち)主席研究員表―モータグレーダの仕様国土交通省では平成 28 年 4 月より新たな施策である「 i Construction 」を開始し,その中で ICT の全面的な活用を進めることによる建設現場の生産性向上を図っている1) 。建設現場で使用される ICT の一つにマシンコントロール(以下 MC)があるが,これは TS や GNSSなどを用いて施工機械の位置を把握し,その位置における設計値(あらかじめ入力された設計データ)と作業装置(ブレードなど)との差を算出し,作業装置が設計値に添うよう自動的にリアルタイムで制御を行う技術のことであり,オペレータの負担を軽減することによる施工の効率化や高精度化などが期待されている。しかしながら,その導入効果を試験ピットなどにおける実験などにて定量的に把握した例は少なく,施工条件等を調整した基礎実験による,効果の定量的な把握が,さらなる普及を促進する上で必要とされている。筆者らは,MC 施工の優位性を定量的に明らかにすることを目的とし,施工条件を同一にした 2 つの試験場にて従来施工と MC 施工を行い,施工にかかる作業時間及び出来形のばらつきを比較する研究を実施した2)。本稿では,その研究成果の一部を示す。. 実 験 概 要写真―. 実験概要実験場実験はモータグレーダによる路盤敷均し工を対象とし,2015 年と 2016 年の 2 ヵ年に渡って行った。以下概要を述べる。幅 6 m ,全長 70 m (直線部 45 m ,曲線部 25 m )の路床を 2 レーン用意し,その路床上に厚さ30 cm になるよう路盤材料( M40 )をモータグレーダにて敷き均す実験を行った。モータグレーダは MC システムを搭載した機体を使用し,No. 1 レーンは MC を使用せずに(従来施工), No. 2 レーンは MC を使用して( MC 施工)施工を行った。モータグレーダの仕様を表―に,実験状況を写真―,に示す。MC ユニットの設定は「一般的な設定」をメーカと相談して決定した2)。写真―実験状況実験は一般的な施工と同様に,直線部 10 m ピッチ,曲線部 5 m ピッチで設定した測点における仕上がり高で終了とした。さが,設計高さ(基準高さ)± 1 cm 以内になった時点12地盤工学会誌,―() 報図―表―オペレータ図―実作業時間告出来形計測点真―)写真―心拍数計測装置. オペレータ表―に示す様々な経験を持ったオペレータにて実験を行った。なお, B, C, D, E の 4 名は 2015 年, 2016 年両方に参加したオペレータである。 A は 2015 年と 2016年では両方とも熟練者であるが別人であるため, 2015年では A' とした。同様に F も両方非熟練者であるが別人であるため,2015年では F' とした。 A, A', B は熟練者(経験15年以上),D, E, F, F' は非熟練者(経験10年未満)ということができる。なお,C は,MC 施工の社内トレーナー(社内オペレータに MC 施工を教育する)として勤務しており,通常の重機オペレータと違い,現場経験はほとんどないが MC の操縦に長けている特殊な人物である。写真―視線計測装置. データ計測.実験結果. 施工時間◯は実験結果として以下のデータを測定した。◯2015 年と 2016 年の実作業時間データ(各 6 名)の,◯は2015 年, 2016 年両方とも計測したものであり,◯熟練者(経験 15 年以上 A, A', B )の平均,非熟練者2016年のみ計測したものである。◯◯―に示す。なお,実作業時間とは後進や計測作業など施工終了後,中央・右・左の 3 測線上 1 m ピッを含まない,敷き均し作業のみの時間のことである。チの仕上がり高さ(出来形)。 TS にて計測(図◯◯(経験 10年未満 D, E, F, F')の平均,全体の平均を図施工開始から終了までにかかった時間図―によると,オペレータの熟練度によらず MC―)施工を導入することにより実作業時間が短縮され,その施工中のオペレータ心拍数。心拍数計測装置にて短縮率は熟練者では10.0,非熟練者では37.2となっ計測(EPSON 社製SF850,写真―)ており,非熟練者の方が MC 施工導入による作業時間施工中のオペレータ視線。視線計測装置にて計測短縮効果が高いことが分かる。さらに非熟練者に MC株 ナックイメージテクノロジー製EMR(9,写施工を導入した場合,ほぼ熟練者並みの実作業時間で敷January, 201813 報告図―表―心拍数(bpm)図―オペレータ視界出来形データ(熟練者)れ,非熟練者の改善効果の方が高いことが分かる。さらに非熟練者に MC 施工を導入した場合,ほぼ熟練者並みの出来形ばらつきで敷き均し作業を施工できる可能性があることも分かる。また,すべての実験は,前述の終了判定である「一般図―出来形データ(非熟練者)的な施工と同様に,直線部 10 m ピッチ,曲線部 5 m ピッチで設定した測点における仕上がり高さが,設計高さ(基準高さ)±1 cm 以内」を満足して終了したが,図―~によると,± 1 cm 以内に収まっていない点も存在している。これは,実験の測定は 1 m ピッチで行っているため,直線部 10 m ピッチ,曲線部 5 m ピッチで設定した測定点以外は基準を満たしていない点が存在することを表している。. 心拍数2016年の心拍数測定結果を表―に示す。表―によると,F を除くすべてのオペレータにて,MC 施工を導入すると心拍数が低下していることが分かる。心拍数のみで断定することはできないが,MC 施工図―出来形データ(全員)を導入することで,熟練度に依らず,オペレータ負担が低減される可能性があることが分かる。き均し作業を施工できる可能性があることも分かる。. 出来形ばらつき2015年と2016年の出来形データ(1 m ピッチで測定)F のみ MC 施工を導入しても心拍数はほぼ変化しなかったが,これは入社 1 年目の F の実験を行う際に,上司が常に見学(指導)していたため,従来施工・MCの,熟練者(経験15年以上,延べ 4 名,データ数852)施工ともに緊張が続き,高い心拍数となってしまったたの度数分布図を図―に,非熟練者(経験 10 年未満,めと考えられる。延べ 6 名,データ数 1 278 )の度数分布図を図―に,. オペレータの視線全体(延べ 12名,データ数 2 556)の度数分布図を図―オペレータの視界を,図―に示すように,ブレードに示す。なお,度数分布は設計値(目標高さ)からの近傍,前方,その他(図―の範囲外,レバー,MC 画乖離で表しており,それぞれ標準偏差も示してある。図―~によると,オペレータの熟練度によらずMC 施工を導入することにより出来形ばらつきが改善さ14面など)の 3 つに分け,仕上げ施工中の視線が 0.1秒以上停留している時間割合を整理した。なお,B,E は視線データが取得できなかった。整理結果を図―に示す。地盤工学会誌,―() 報告図―によると,従来施工の場合,A(熟練者)はブレード近傍を見ている時間割合が 70 弱であるのに対し,他の 3 名は約 90 程度あることが分かる。これは,熟練度が低い場合,材料を敷き均しているブレード近傍にばかり集中し,周辺状況の把握ができていないが,熟練者は前方にも注意を払い,走行経路の状況を予測することで,円滑で高品質な施工を行っていると考えられる。また, MC 施工を導入するとすべてのオペレータでブレード近傍を注視している時間割合が減少しており,特に D,F という非熟練者ほど大きく減少している。これは MC 施工によりブレード操作にそれほど注意を払わなくてもよくなり,周辺に注意を払う余裕が生まれたためと考えられる。このことから,MC 施工の導入は,高品質で円滑な施工を可能とするだけでなく,周辺状況に注意を払うことでより安全な施工を可能とするとも言える。. まとめモータグレーダ路盤敷均し工において,施工条件を同一にした 2 つの試験場にて従来施工と MC 施工を行った結果,MC 施工を導入することにより施工品質とオペレータ負担,安全性に以下の効果があることが判明した。すべてのオペレータにて MC 施工を導入することにより作業時間が短縮される。その短縮率は非熟練者の方が高く,非熟練者がほぼ熟練者並みの作業時間で敷き均し作業を施工できる可能性がある。すべてのオペレータにて MC 施工を導入することにより出来形ばらつきが改善される。その改善率は非熟練者の方が高く,非熟練者がほぼ熟練者並みの出来形ばらつきで敷き均し作業を施工できる可能性がある。6 名中 5 名のオペレータで,MC 施工を導入することで施工中の心拍数が低下しており,オペレータ負担を低減できる可能性がある。視線データが取得できたすべてのオペレータにて,MC 施工導入によりブレード近傍注視時間割合が減少しており,より安全な施工ができる可能性がある。本研究成果より,モータグレーダによる MC 施工は,図―視線停留時間割合熟練者の施工時間,品質などを凌駕することはできないが,非熟練者が熟練者並みの時間,品質,安全性などでなお,本実験は国立研究開発法人土木研究所と,民間施工する補助となり得ることが確認できた。我が国では企業 5 社(鹿島建設,鹿島道路,トプコンソキアポジ今後熟練オペレータの大量退職が予想され,経験が浅いショニングジャパン,西尾レントオール, NIPPO )とオペレータの生産性を向上させることが急務となっていによる共同研究にて実施したものである2)。る。MC 施工はこの問題への対策として非常に有効な技術であると思われる。また,.で述べた通り,実験では直線部10 m ピッチ,曲線部 5 m ピッチで設定した測定点以外は基準を満たしていない点が存在している。これは実施工においても同様のことが起こっていると考えられ,今後計測手法の高度化により従来よりも多点での計測が可能となった場参考文献1)iConstruction~建設現場の生産性革命~,国土交通省 iConstruction 委員会,入手先〈 http: // www.mlit.go.jp /common/001127288.pdf〉,(参照2017.8.8)2) 情報化施工導入効果検証に関する共同研究報告書,国立研究開発法人土木研究所,Vol. 493, 2017.(原稿受理2017.9.19)合,施工管理基準を見直さなくてはならないことを示している。今後この検討も行っていきたい。January, 201815
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