書籍詳細ページ
出版

タイトル 一般相対性理論が進化させる未来の測量技術(<特集>i-Construction)
著者 芥川 真一
出版 地盤工学会誌 Vol.66 No.1 No.720
ページ 8〜9 発行 2018/01/01 文書ID jk201807200009
内容 表示
ログイン
  • タイトル
  • 一般相対性理論が進化させる未来の測量技術(<特集>i-Construction)
  • 著者
  • 芥川 真一
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.66 No.1 No.720
  • ページ
  • 8〜9
  • 発行
  • 2018/01/01
  • 文書ID
  • jk201807200009
  • 内容
  • 一般相対性理論が進化させる未来の測量技術Future Monitoring Technology based on the General Theory of Relativity芥川真神戸大学大学院一(あくたがわしんいち)工学研究科市民工学専攻教授ターゲットポイントまでの距離測定を可能としたレー. は じ め にザースキャンにも応用され,様々な現場で周辺状況の地盤工学,広くは土木工学の分野全体で最先端のICT を有効利用し,調査,建設,維持管理,災害時対応などのステージにおける作業の効率化,高速化,安全化が図られようとしている。この動きを支える様々な科3D 形状情報を入手する目的で利用されている。.電波と相対性理論を利用して座標を特定する技術学技術の中でも特に最先端の測量技術が果たす役割は非複数の衛星から発信された電波を受信して自らの位置常に大きい。ここでは,宇宙という時空間を伝播する電を 特 定 す る シ ス テ ム は GPS ( Global Positioning磁波を自在に操る測量技術の進化と発展に焦点を当て,System )として定着し, 21 世紀の文明維持には不可欠特にアインシュタインの相対性理論がそれをさらなる高な技術として不動の地位を築いている。このシステムでみへと導こうとしている状況について考える機会としたは,図―に示すように地球の上空に設定された高度約い。20 200 km の 6 個の円軌道それぞれに 4 個の GPS 衛星.電波を利用して距離を測る技術光と電波は同じ電磁波であり,両者の速度 c (300 000を投入し,全体として 24 個の衛星が 12 時間周期で地球を周回し,地球上のどこにいても最低 4 個以上の衛星から電波を受信できるように設計されている。km /s)は等しいことが1864年にマクスウェルによってそれぞれの衛星には Dt が10-12 s 程度の原子時計が搭示され, 22 年後の 1888 年にヘルツが実施した実験によ載され,一般相対性理論による時間のズレを自動的に補ってそれが実証された。それから 60 年以上の時間が経正した上で制御された軌道上を秒速約 2 km の速度で飛過した1950年代にはセシウム原子時計が実用化され,1行している。もし,地球上の受信機内の時計が衛星の原秒を計測した場合の誤差 Dtが 10-11~15s という領域に子時計と完全に同期されており,かつ同レベルの精度が突入したことで,電磁波を利用した測量が地盤工学,土あれば 3 個の衛星からの電波を受信すれば自分の位置木工学を含む多くの分野にとって十分な精度で実施できを瞬時に決定できることになる。しかし,衛星搭載の原ることになった。子時計に比べて受信機側の時計の精度が数オーダー低いここで,任意地点 A に電波送信機を置き,そこからことから,地盤工学の精密な計測で要求される変位計測時刻 t1 に発信された電波が時刻 t2 に地点 B で受信されの精度(誤差数 mm 程度)で受信位置を瞬時に決定するとする。この時,仮に送信機と受信機に内蔵されている原子時計が完全に同期しており,かつ両者の時刻誤差DtA, DtB がともに± 10-11 s であるとすると, AB 間の距離 D は c{(t2± DtB)-(t1±DtA)} として計算され,その誤差は±6 mm 程度となる。ただし,この精度が保障されるためには,送信機と受信機は宇宙空間に静止しており,かつ電波の送受信は真空内で行われることが必要となる。地球上で行う実際の測量では大気や大気中の水分の影響,電波の送・受信機に内蔵できる時計の精度限界などが制約条件となるため,電波を利用した測量において必要な精度を達成するためには様々な工夫が必要となる。汎用的な光波測距儀として定着しているトータルステーションでは発信機から発射される光をプリズムで反射させて受信し,位相のズレを巧みに処理することにより,高精度の時計を使うことなく AB 間の距離を測定できるようになっている。この原理は,短時間で多数の8図―Global Positioning System地盤工学会誌,―() 論説ることはできず,最低 4 個の衛星からの電波を 1 時間程度受信し続けた上で,そのデータを環境要因(大気中の水分など)の影響も考慮して分析し,位置を割り出さなければならないという制限がある。iConstruction の推進において工事車両やドローンの位置を把握するレベルであれば問題はないが,地すべりや岩盤斜面の崩落を意識したモニタリングにおいてはこの点がひとつの課題となっている。.一般相対性理論を利用して高低差を計測する技術アインシュタインの一般相対性理論によると,宇宙空間における移動速度が光の速度に近づいたり,巨大な物体の存在によって空間のひずみが大きくなるほどに時間図―の進み方が遅くなることが知られている。ここで,地球地球の自転と場所による移動速度の違いの自転を考えてみた場合,図―に示すように,地球の中心からの距離が大きいほど自転によるスピードは速くなるため,高い場所に行けば行くほど時間の進み方が遅くなるはずである。ここで,高低差をどれほどの精度で計測できるのかという点に注目が集まるが,香取らの研究成果1)によると,時刻精度 Dt が10-18 s(GPS で使用されている原子時計と比較し100万倍の精度)の光格子時計を利用すると,図―重力ポテンシャルの変化で地盤の変形を計測するコンセプト高低差 10 mm が計測できることが分かっている。この方式は電波の送・受信とは無関係であるため水中,地中の任意の点で地盤構造物の鉛直方向の動きをモニタリンiConstruction のさらなる高度化を加速することが期待グできる時代が到来することを意味する。されるが,それにはおそらく数十年,あるいはそれ以上さらに,香取らによればこの光格子時計を使えば重力の時間が必要となるであろう。 10-12 s という精度を有ポテンシャルの変化を精密に計測できることになるといする原子時計によって成立している GPS という巨大なうことである。我々は,月の位置の変化による潮位の変システムの次には 10-18 s という精度を有する光格子時化には慣れ親しんでいるが,重力ポテンシャルの変化が計の技術を中心とした新しい測量技術が利用可能になる極端に小さい場合のことは日常的には気にしてこなかっ時代が来るかもしれない。この他にも,素粒子のひとつた。しかしながら,厳密には任意の質量を持った物体がであるミューオンを利用した地盤透視技術が開発され2),移動すれば,それに伴って空間がひずみ,重力ポテンシ既にその適用が始まっている。また,アインシュタインャルが変化するはずである。これは,地盤が動けば周辺が予言した重力波の観測が報告され始めており,空間のの重力ポテンシャルが変化するため,精密な光格子時計ひずみそのものが計測できる時代が既に到来した。それ式重力ポテンシャルセンサがあれば,その変化を計測でらに関する最先端研究の成果は,これまでに文明社会をきることになる。図―はそのコンセプトを示したもの大きく進化させてきた数々の偉大な発見・発明と同様にであるが,複数のセンサ(図中に G で示しているもの)数十年の時を経て広く社会に還元されることが期待されを適所に配置してデータを取ることによって地盤の複数る。これからも物理学の最先端研究から目が離せない。点における動きを捉えることができる時代が来るかもしれない。地盤工学や土木工学の測量の分野において一般相対性理論に基づく計測手法が開発されつつあること自体が大いなる驚きであり,今後の発展とコストダウンが大いに期待される。. お わ り に参考文献1)超高精度の「光格子時計」で標高差の測定に成功,入手先 〈 http: // www.jst.go.jp / pr / announce / 20160816 / 〉(参照 2017.10.2)2) 素粒子による透視で火山噴火のメカニズムを発見,入手先 〈 https: / / www.athome academy.jp / archive /mathematics _ physics / 0000001086 _ all.html 〉( 参 照2017.10.2)(原稿受理2017.10.4)物理学における最先端の研究成果が実用化され未来のJanuary, 20189
  • ログイン