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出版

タイトル 地盤工学会におけるダイバーシティの実現(<特集>第52回地盤工学研究発表会)
著者 田中 真弓
出版 地盤工学会誌 Vol.65 No.11/12 No.718/719
ページ HP19〜HP20 発行 2017/11/01 文書ID jk201707180028
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  • タイトル
  • 地盤工学会におけるダイバーシティの実現(<特集>第52回地盤工学研究発表会)
  • 著者
  • 田中 真弓
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.65 No.11/12 No.718/719
  • ページ
  • HP19〜HP20
  • 発行
  • 2017/11/01
  • 文書ID
  • jk201707180028
  • 内容
  • 地盤工学会におけるダイバーシティの実現Promotion of Gender Equality and Diversity Management in the Japanese Geotechnical Society田 中 真 弓(たなか まゆみ)男女共同参画・ダイバーシティに関する委員会 委員,鹿島建設(株) 課長代理った技術者紹介は大変好評であったため,2017 年 1 月か1. は じ め にらは Web 技術者・研究者紹介をスタートさせ,今後も継地盤工学研究発表会では,男女共同参画およびダイバ続する予定である。さらに,会員からのニーズに合致したーシティに関する特別セッションを 2005 年以来継続し技術向上や情報交換の新しい仕組みとして「メンター制度」て実施している。2010 年からは,“地域に根ざしたダイの試行なども検討している。バーシティ”という副題のもと,研究発表会開催地で活躍していただいている方々を中心に話題提供していただ2.2地方でゆるっとダイバーシティ長野市で自宅を事務所としてあおば技術士事務所を開いている。13 回目となる本年は,中部地方で活躍されて業した佐野理氏には,出産を機に前職を退職し,起業しいる女性・外国籍・ベテランの方に講演いただいた。本た経緯をご紹介いただいた。セッションは,地盤工学会会員以外の方も無料で参加で学生時代は実家のある名古屋での就職・結婚を漠然と考きる「一般公開」の行事として実施している。毎年,学えていた佐野氏だが,結婚前はコンサルタント会社の関東会員以外の方にもご参加いただき,活発な意見交換を行の本社に勤務していた。結婚後,自宅のある長野市の支店う貴重な場となっている。に 5 年勤務し,その後第 2 子出産前に退職された。コンサルタント会社では,主にトンネル,斜面,堰堤等の数値解2. セッションの概要析業務に携わり,起業後は,当時の仕事で培った技術を生特別セッションは,大会初日の 2017 年 7 月 12 日午後かして業務を行っている。現在は,土木設計中心のコンサに行われた。参加者総数は約 50 名である。参加者に対しルタント業務を行っており,応力変形解析などの数値解析て実施したアンケート調査によると,男女比は男性の方やデータ解析などを中心に受注されている。5 年前に長野が多く 4:1 で,20 代から 60 代以上の幅広い年齢層の方市から伊那市へ転居され,地方都市で働くデメリットとしにご参加いただいた。以下に各講演の内容と討議・意見て,地元に仕事が少ない,都市部まで行くのに時間がかか交換の様子について記す。る,ということを挙げられた。一方,メリットとしては,2.1ダイバーシティ推進のさきにあるもの保育園の確保が容易,自家用車での通勤が容易などを挙げまず,男女共同参画・ダイバーシティに関する委員会委られ,いろいろな職場でテレワーク,在宅勤務などの制度員長の片岡沙都紀氏(神戸大学)から,当委員会の活動方が整いつつあることから,地方で仕事を続ける選択肢も増針・活動内容について説明があった。地盤工学会では,性えていくのではないか,と述べられた。佐野氏が会社を辞別や国籍,年齢にかかわらず多様な人材が活躍できる魅力めた理由は,実家から遠く親族のサポートが受けられないある学会を目指して,2003 年からダイバーシティ推進に環境での子育てや,転勤で居住地が変わる可能性が今後も関する活動に取り組んでいる。多様な人材の宝庫である学大きい事情から,毎日決められた場所で決められた時間勤会が率先してダイバーシティを推進していくべきという務するという会社のルールの中で果たして仕事が続けら考えから,当委員会は,学会員同士の情報交換の場の提供れるだろうか,と不安になったことだった。仕事を長く続を積極的に行っている。具体的には,研究発表会におけるけたい,という想いがあれば,「職場を離れる」=「仕事「サロン・土・カフェ W」の開催,若手や世代間交流を目を辞める」ではない,いろいろな選的とした「座談会」の開催,択肢も視野に入れながらキャリア次世代育成のための女子中メイクをすることもありえる,と若高生夏の学校への参加,学手技術者への力強いメッセージも会のホームページを介した語っていただいた。情報発信を紹介した。また,2.3地盤工学会誌 2015 年 7 月号国人・女性として~夢への道のり ~研究者・外特集「ダイバーシティ推進河川構造物の浸透安全性やトンのさきにあるもの」1)で行ネルの力学挙動の研究をされていNovember/December, 2017写真-1片岡沙都紀氏写真-2 佐野理氏HP19 る,中国出身の横浜国立大学,崔瑛氏には,研究者を目こすきっかけになっており,それを実現するために粘り指した幼少期の想いから,外国人・強く取り組むことが,研究者・技術者に重要ということ女性ということを意識せずに過ごしがよく伝わってきた。てきたという日本での 13 年間の研2.5究生活などについてお話しいただい今回は,前回に引き続き,外国籍の方にご講演いただ討議・意見交換いた。会場には複数の外国籍の方が参加され,海外からた。崔氏は,北京まで列車で 24 時間かの研究者・技術者が日本でどのような生活をし,仕事にかるという黒龍江省に生まれ,小さ取り組んでいるかということへの関心の高さがうかがえい頃から負けず嫌いで,キュリー夫 写真-3 崔 瑛氏た。討議の時間には,地方で起業されている佐野氏から,人に憧れを抱いていた。先生→科学一人で仕事をしていると最新技術情報に触れる機会が減者→博士と夢は膨らみ,勉強すれば何とかなる,北京にいり,不安になるが,地盤工学会誌を読んで情報を得ていけば何とかなる,と努力され,北京の清華大学に入学されるというお話しがあった。また,崔氏と野口氏からは,た。卒業後は京都大学大学院に進まれ,摂南大学で教育に技術者としては技術力・熱意が男女関係なく大事で,自携わりながら博士を取得された。その後,名城大学,横浜分にしかできないことを見つけていきたい,とコメント国立大学に勤められ,現在,4 歳のお子さんを持つ。中国された。さらに村上会長からは,ご自身の経験も踏まえにいるときから,“言語を仕事の唯一の道具としない”をて,夫婦共に仕事を持っている場合は,勤務形態や仕事心掛け,研究能力を評価してもらいたいと来日。ところが,の状況に合わせて育児・家事も含めた相互協力が必要と外国人・女性としての立場が注目され,そのせいで外国語のコメントがあり,ワークだけでなくライフでも男女共関係の業務や女子学生のケアなどを任されられた。子育て働が重要であると感じた。も始まり,自分がやってきた研究の能力が発揮できないと悩んだ時期もあったが,崔氏は“世界を視野にいれたら外国人は存在しない”,女性としての“配慮に甘えない”と前向きに意識を変えることによって,乗り越えてこられた。組織のグローバル化は外国人に頼るべきでない,と日本人にとっては厳しいがもっともな感想も述べられた。最後に,自分は研究者であるので,外国人・女性ということではなく「研究」そのものの内容,インパクトで評価を受けたい,もちろん苦労もあると思うが「すべては夢に通じる道のりにある景色」と結ばれた。2.4超音波振動薬液注入工法開発の発想から完成まで写真-5質疑応答,討議の時の会場の様子3. ダイバーシティ推進に向けてダイバーシティ委員会では,昨年度は恒例となってい人材開発支援機構の野口好夫氏には,早期退職後の新るイベントに加えて,Web 技術者・研究者紹介やメンタしい薬液注入工法の開発への精力的な取り組みの様子とー制度の検討などを行い,男女共同参画メインの活動かその行動力の源について語っていただいた。ら視野を広げ,性別・年齢・国籍に関係なく,会員の活野口氏は,永らく名古屋市の道路建設に携わってこら躍を後押しするような情報提供や制度の検討を進めていれたが,55 歳の時に早期退職し,翌年には人材開発支援る。今年度は,外国籍の方を対象としたワールドカフェ機構を設立され,代表取締役に就任された。かねてからの実施や,メンター制度の試行にも取り組む予定である。やりたいと思っていた超音波振動を用いた薬液注入工法地盤工学会では,今後も,様々な立場の方の個性を生かの開発に着手され,現場で生まれたアイディアの実現にし,活躍するための情報や人と人とのつながりを築くた向けて邁進されている。特許取得,共同開発者探し,資めの場の提供を積極的に行っていきたい。最後に,ダイ金獲得,さらに実機製作までを短期間で実現できたのは,バーシティ推進活動に協力いただける委員,サポーター野口氏の熱意が求心力となった“チーム力”にあるのでは引き続き募集中である。学会への期待,不満,要望等はないだろうか。野口氏自身は,工程管理がうまくいっも委員会宛にお寄せいただければ幸いである。たことと,野口氏より高齢の注入技術者をはじめ,メンバーの協力ややる気を他のメンバーが感じられたことが成功の原因と分析して写真-4HP20野口好夫氏参考文 献1) 地盤工学会:地盤工学会誌,Vol.63,No.7 ,2015 年 7 月号特集:ダイバーシティ推進のさきにあるものいる。このように,共同研究開発<https://www.jiban.or.jp/index.php?option=com_content&;viewは核となる人物が必要,と結ばれ=article&id=1752%3A2009-01-07-08-26-28&catid=101%3A2008た。野口氏の講演では,おもしろ-09-18-06-24-51&Itemid=285>(参照2016.10.3)そう!,楽しそう!が,行動を起(原稿受理 2017.8.24)地盤工学会誌,65―11/12(718/719)
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