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出版

タイトル 廃炉地盤工学の創出と人材育成(<特集>第52回地盤工学研究発表会)
著者 東畑 郁生
出版 地盤工学会誌 Vol.65 No.11/12 No.718/719
ページ HP15〜HP16 発行 2017/11/01 文書ID jk201707180026
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  • タイトル
  • 廃炉地盤工学の創出と人材育成(<特集>第52回地盤工学研究発表会)
  • 著者
  • 東畑 郁生
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.65 No.11/12 No.718/719
  • ページ
  • HP15〜HP16
  • 発行
  • 2017/11/01
  • 文書ID
  • jk201707180026
  • 内容
  • 廃炉地盤工学の創出と人材育成Special Session on Decomissioning of Fukushima Daiichi Power Station東畑郁 生(とうはた いくお)関東学院大学 客員教授1. は じ め に委員会の活動は,「超重泥水技術の開発」および「地下水の現況測定・将来予測」という学術研究の推進を通じ地盤工学は従来からの課題の解決だけで満足していてての人材育成,そして廃炉地盤工学という学問体系を創はならない。持てる能力を使い,社会的な関心の高い重設することによって,原子炉の問題を理解できる地盤工要問題の解決に乗り出していかなければ,世の中から存学技術者を永続的に輩出できる体制の確立,である。在意義を忘れられてしまう。これが筆者の会長時代に持セッションの座長と副座長は,廃炉地盤工学委員会のっていた問題意識であった。それの具現化した成果の一委員長である東畑と座長である小峯の両名が務め,報告つが廃炉地盤工学委員会であり,文部科学省/廃止措置内容に応じて鈴木誠副委員長ほか委員会メンバーが,口研究・人材育成プログラムに 5 年間採用されている。そ頭発表を行った。して進行状況を会員に還元する機会が,この特別セッションであった。人材育成という名称が冠せられているよ2.成果概要報告(座長:小峯 秀雄)うに,この文部科学省プログラムの最大の目的は,今後廃炉地盤工学は,福島第一原発廃炉という大問題を介40 年以上を要すると目される福島原発問題解決に向けして地盤工学と原子力工学とをつなぐ切り口である。地て,継続的に人材を供給する体制の確立である。盤工学側からの貢献としてまず,早稲田大学において土原子力発電の継続の可否については,国民の間に様々質材料によって放射能を遮蔽する可能性を研究している。な意見がある。しかし福島第一原発の事故に対してきち現場で危険を帯びている放射線には,ガンマ線と中性んと対応しなければならないことについては,国民の意子線の二種類がある。前者は質量の大きい物質を透過し見は一致している。しかしどのようにしてこの問題を終にくく,後者は水(水素原子)による遮蔽が有効である。息させればよいのか,これは極めて難しく,正解がいまこれら二つの遮蔽性能を兼ね備えた材料として,超重泥だに得られていない。しかし全体をくくってみると,i)水の開発を行っている。この泥水は粘性流体である(写被災した原子炉からの汚染物質流出を止めること,ii)真-1)。そして放射能遮蔽の他に,原子炉内部に行きわた被災した原子炉から溶融した燃料を取り出すこと,iii)って漏水箇所を閉じる能力も期待されている。原子炉等を解体すること,iv) 発電所周辺地域の放射能汚染を除去すること,v) 発生した放射性廃棄物を無事に処分すること,そして vi) これらの作業を遂行できる安全な環境を確保すること,にまとめることができる。これらのテーマは,実は,伝統的な原子力工学が取り扱う事柄ではない。むしろ地盤工学のスキルの果たしうる貢献が大きい。これが,地盤工学会として福島問題への関与を決めた動機であった。廃炉地盤工学委員会の活動は文部科学省からの「業務委託」という形式を取っているので,いわゆる研究委員会ほどの活動自由度は無い。そのため会員各位からのテーマ提案には必ずしもすべて対応することはできていな写真-1開発中の超重泥水の粘性流体的挙動い。たとえば i)の地中凍土壁の問題は活動対象に入っていない。しかしそれでも当初提出した計画に基づき,地廃炉作業は今後 40 年にも及ぶと予想され,その間の現盤工学が福島第一原子力発電所の問題解決に重要な役割場の(放射能に対する)安全性を予測することは,作業を果たせることを実証し,原子力工学のエンジニアと同計画を立てる上で,極めて重要な事柄である。そこで,じテーブルで,この発電所の廃炉に向けて技術課題全般原子炉から漏洩した放射性物質の移動を中心に,現場のを議論できる資格が与えられている。このことは地盤工地下水環境を 40 年にわたって予測する試みを,千葉工業学の社会的認知を高めることに大いに効果がある。大学において行っている。これは高性能の計算機によるNovember/December, 2017HP15 数値予測が中心であるが,同時に日本大学と協力し,実地盤における地下水環境の観測を並行し,計算手法の検証と改善に役立てている。実地盤における作業は途に就いたばかりであり,予備段階として,模型土槽を使って,地下水流の計測とシミュレーションを実施している。3. 廃炉のための地盤施工学(幹事長:後藤 茂)も有用である保証はない。4.早大大学院における廃炉地盤工学人材育成の試み(幹事:渡邊 保貴)今後 40 年の廃炉作業に貢献できる人材を育成することは,文部科学省から特に要求されている重要事項である。地盤工学会は学校の壁を超えて,全国の産学の人々地盤工学会が直接担当しているのは廃炉地盤工学の体に廃炉地盤工学を学習する機会を提供できる。その準備系構築であるが,今回は,その核心と見られている廃炉として,昨年度から早稲田大学の大学院で地盤工学特論のための「地盤施工学」の構築について説明があった。Bという講義を試行している。これは外部から専門家を地盤工学が福島第一原発の廃止に何で貢献できるのか多く招聘し,土質力学の基礎知識をもとに,作業環境,を考えると,前述の超重泥水による一時的封じ込め,汚建屋基礎,廃棄物対策,建設事故などについて学ぶもの染物質の仮置き,地下水環境,最終地中処分に加え,破である。そして廃炉のプロセスにおいて起こりそうな技損した原子炉からのデブリ(溶融した燃料)の取り出し術課題を自ら発掘し,その解決方法を提案させている。という従来の地盤工学では意識されていなかった問題にこのたびも,受講生であった修士 2 年生倉持隼斗君から,おいても,図-1 のような事項がある。これら原子力工学事例の紹介があった.内容が十分な段階に高まり次第,の課題を理解している地盤工学者を継続的に育成するこ地盤工学会において講習会的な場を設ける予定である。とを,委員会は目指している。地盤工学はこれらの問題に対応できる技術を数多く持っていると考えられ,それ5.フロアディスカッションが原子力工学の人々にも理解できるよう,委員会メンバ廃炉には地盤工学に関係深いテーマが数多くある。地ー企業から技術情報の提供をうけ,技術マップを作製し盤工学の社会認知を進めるうえでも,本委員会の活動をた。これは課題別に様々な技術を分類し,内容説明を加基礎として,会員各位には,新たな研究活動資金を獲得えたものである。しかしそれだけでは不十分である。していただきたい。最近ようやく実情が見え始めたデブリの採取技術などは,その例であろう。廃炉地盤工学委員会の活動が文部科学省によって財政支援されるのは,5 年間である。他方,廃炉作業は 40 年かかるものと見込まれており,この長い期間,地盤工学分野の活動をどう維持するのか,という問題がある。フロアからは,大学に独立大学院を設ける努力をせよ,というご意見があった。海外での廃炉経験をどう生かすのか,という視点からの議論もあった。米国のスリーマイル島の事故は,原子炉の規模が福島第一よりはるかに小さいうえ,放射能が外部に漏れておらず,過酷さの度合いは低かった。しかしその経験は,溶融したデブリの現在の状態,特にその図-1 原子炉周辺における地盤工学の貢献可能性力学的性質を想像するうえで,重要なヒントになる。他方,旧ソ連のチェルノブイリ事故は福島よりはるかに過現場の特殊性として,次の事項がある。まず放射能の酷であり,しかも緊急作業で設置したコンクリート構造封じ込めである。デブリから発生する放射能の遮蔽はも(いわゆる石棺)が劣化,汚染水が漏出するなど,繰りちろんのこと,固結しているデブリ塊を切削などする(具返してはならない事象が起こってしまった。体的方法は未定)ときの,放射性粉塵の閉じ込めが極めて重要である。汚染水を漏らしている原子炉(格納容器)の補修方法も決まっていない。取り出した放射性物質を数十年にわたって安全に劣化なく保管する方法も,未知の分野である。今後 40 年間の廃炉作業中に起こりうる地震など自然災害に対する安全性も,検討が必要である。これら原子力特有の状況に対して,最適な材料・工法の選択を行い,適正な実施・管理を行える能力を養成することが,地盤施工学の重要な目標である。また,対象とする原子炉が,高さ30mを超す巨大な構造物であるこ6.その他廃炉地盤工学若手技術者の会を結成し,産業界における人材育成を推進したい。現在,そのあり方などの討論中である。参加希望あるいは意見表明などがあれば,次のメールアドレスをお使いいただきたい:decomm_wakate@jiban.or.jp。また廃炉地盤工学委員会のウェブサイトは,https://www.jiban.or.jp/hairo/である。(原稿受理2017.8.23)とも重要であり,試験管レベルで機能する技術が実際にHP16地盤工学会誌,65―11/12(718/719)
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