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出版

タイトル DS-03「遺産の地盤災害からの保全」(<特集>第52回地盤工学研究発表会)
著者 岩崎 好規
出版 地盤工学会誌 Vol.65 No.11/12 No.718/719
ページ HP8〜HP8 発行 2017/11/01 文書ID jk201707180019
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  • タイトル
  • DS-03「遺産の地盤災害からの保全」(<特集>第52回地盤工学研究発表会)
  • 著者
  • 岩崎 好規
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.65 No.11/12 No.718/719
  • ページ
  • HP8〜HP8
  • 発行
  • 2017/11/01
  • 文書ID
  • jk201707180019
  • 内容
  • DS-03「遺産の地盤災害からの保全」Safeguarding of Heritage from Geo-Disaster(一財)地域地盤環境研究所岩 崎 好 規(いわさき よしのり)専務理事/ 日本イコモス第 17 小委員会(遺産保全のための地盤および基礎)主査1. 遺産とはMonuments and sites:国際記念物遺跡会議)が設立された。構造系遺産の保全すべき特性は,立地する場所,位置,遺産とは,将来に亘って保全しておきたいという有使用材料,デザイン,工法,重要な構造物の一部として形・無形の価値あるものと言えよう。地震,地すべり,認識すべき基礎や地盤なども真正性(Authenticity)を構成落石,火山噴火,などの自然現象として地盤災害,ピサする要素である。の斜塔の傾斜などのように人為的な原因によるものからの保全は地盤工学の問題である。2. 地盤系遺産の保全1972年世界遺産条約がユネスコ総会で採択されたが,日本国政府が参加するのは20年後の1992年で,日本国政府アンコール修復事業の直前であった。1994年奈良にイコモスを中心とするユネスコ主催の会議が開催され,真遺産の保全とは,なにか?遺産のなかでも地盤遺産系正性に関する議論を行い,欧米の石文化に対して,日本に属する高松塚や仁徳陵などは,今に伝わる現在の形状のような地域には木の文化,土の文化について議論されを保全しようとしている。ボーリングによる調査を始めた。真正性に関する奈良文書(Nara Document)が採択さとして,破壊をもたらす調査は徹底的に忌避されている。れ,木の修復には新材が使用されているように,保全手しかし,そのままであれば,永年的な風化や構造的劣化法は,地域それぞれの手法に委ねることになった。が発生し,やがて崩壊に至る。遺産に対して,なにが,その遺産の特徴なのか?その遺産のなにを残すべきかを議論する必要がある。3. アナスタイローシス(Anastylosis)現在の遺産保存手法の先駆としてアナスタイローシス5. 熊本城の被災と修復2016 年 4 月の熊本地震によって熊本城は石垣を始めとして,櫓などが崩壊した。我々,地盤工学に携わるものとすると,石垣城壁は大きな関心事であろう。①石積擁壁の一般断面形状や隅角部の算木積,②裏込を挙げることができる。ギリシャの建築家バラノスめ,③基礎などの構造要素に関して真正性としての特性,(Nikolas Balanos)が,戦争による爆破などで崩壊してこれらに対する災害の特徴を地盤力学上から検討し,そいたアテネのパルテノン神殿などの修復を実施したの対策工を提示することが遺産地盤工学の使命である。(1836)。アナスタイローシスとは,もともとあった柱を,対策工は,もし,不都合が分かれば,やり直しが出来るそのままの材料で,元の位置に戻すという意味である。手 法 か (removable) ど う か ? 対 策 工 の 効 果 が 観 測この手法は,オランダが,植民地としていたインドネシ(observable)で確認でき,段階的(step by step)に効果が上ア国ボロブドール遺跡に導入(1907-1911)し,プランバナげられる手法か? 対策をすることによる真正性への影ン寺院(1911-1953), アンコール遺跡の修復を実施してい響を見極めて,真正性の保持と安全性の確保を図る必要たフランスの極東学院(EFFEO)は,オランダからこの手がある。法を受け継ぎ,アンコール遺跡では唯一赤色砂岩のバンテイ・スレイ寺院(1930s)の修復に導入されて成功した。6. 残されている土構造遺産問題しかしながら,アンコール・トムのバブーオン寺院に適地盤工学がその主要な保存原理となるべき土構造に用しようとしたところ,高角度の高盛土で 5m以上に盛ついては,文化庁の指導指針は,「寄るな,触るな」がり上げようとすると崩壊し,断念してコンクリート擁壁基本となっている。ボーリング調査などは,破壊行為そを使用した。のもので,決して許されない。土が理解できていない組4. 遺産の真正性(Authenticity)と保全遺産構造の保存に関する国際的な枠組みは,遺産構造に関心のある第1回歴史的記念物の建築家・技術者国際会議で採択されたアテネ憲章(1931),さらに第2回会議で採択されたヴェニス憲章(1964)で,基本的理念が確立され,1965年イコモス(ICOMOS; International Council ofHP8織では無理もないが,地盤工学からの提案がないこともその原因であろう。土構造遺産に関する調査手法の統一的手法の模索,提案,文化財保存関係者との議論,さらに確立が必要である。国際地盤工学会 ATC19 委員会は,土系遺産の調査・保存手法の提案に向けて活動を継続したい。(原稿受理2017.8.2)地盤工学会誌,65―11/12(718/719)
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