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タイトル 二酸化炭素を活用した自然由来重金属等含有土の環境負荷低減技術の展望―燃焼系廃棄物の溶出抑制研究の成果を起点に―(<特集>自然由来物質への対応)
著者 小峯 秀雄・江原 佳奈・井上 陽介・夛賀 都・片山 浩志・阪本 廣行
出版 地盤工学会誌 Vol.65 No.11/12 No.718/719
ページ 28〜31 発行 2017/11/01 文書ID jk201707180012
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  • タイトル
  • 二酸化炭素を活用した自然由来重金属等含有土の環境負荷低減技術の展望―燃焼系廃棄物の溶出抑制研究の成果を起点に―(<特集>自然由来物質への対応)
  • 著者
  • 小峯 秀雄・江原 佳奈・井上 陽介・夛賀 都・片山 浩志・阪本 廣行
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.65 No.11/12 No.718/719
  • ページ
  • 28〜31
  • 発行
  • 2017/11/01
  • 文書ID
  • jk201707180012
  • 内容
  • 報告二酸化炭素を活用した自然由来重金属等含有土の環境負荷低減技術の展望―燃焼系廃棄物の溶出抑制研究の成果を起点に―Perspective of Reducing Environmental Impact of Soils caused by Naturally Occurring Heavy Metals― From the Studies on Carbon dioxide gas utilization for Insolubilizing Combustion Wastes ―小峯秀雄(こみね早稲田大学理工学術院井上陽片山浩原佳奈(えはら早稲田大学大学院ようすけ)夛主任志(かたやま株日本国土開発江教授介(いのうえ株日本国土開発ひでお)賀ひろゆき)部長. は じ め に阪本株 フジタ修士課程都(たが株日本国土開発廣かな)みやこ)主任行(さかもとひろゆき)エグゼクティブコンサルタントらの有害物質の溶出抑制技術に関する研究成果の概要とポイントを,また,鉄鋼スラグの二酸化炭素固定化研究有効利用が期待されている石炭灰等の燃焼系廃棄物やの概要を紹介する。次に,上記の研究で理解した二酸化トンネル掘削に伴う発生土において,環境に負荷を与え炭素固定による溶出抑制メカニズムを自然由来重金属等ると考えられる重金属等イオンの溶出が発生する場合が含有土にも応用して,大気中の二酸化炭素を活用し,適あり,廃棄物の有効利用促進や発生土処分の弊害になる度な散水と一定期間の仮置きを行うことによる有害物質事例がある。一方,これら石炭灰等の燃焼系廃棄物やトの溶出抑制技術の開発に関する展望を論じる。ンネル掘削に伴う発生土には,重金属等とともに,カルシウムイオンなどの遊離性のある陽イオン成分を保有し.ていることがある。第一筆者は,発生直後の廃棄物や発二酸化炭素を活用した石炭灰の溶出抑制研究生土からは重金属等イオンが溶出するものの,一定の期石炭火力発電所から排出される石炭灰は,六価クロム間後において同じ材料が溶出しにくくなる事象を,実務やホウ素等の微量の有害物質を含有していることがあり,の現場において経験した。これが有効利用の妨げとなっている。筆者らは,石炭火この経験に基づき,大気中の二酸化炭素と石炭灰等の力発電所から排出される二酸化炭素の有効利用を想定し,燃焼系廃棄物やトンネル掘削に伴う発生土が保有する遊石炭灰に二酸化炭素を接触させることにより,六価クロ離性の陽イオンとの反応により炭酸塩が粒子表面上に生ムやホウ素の溶出を抑制できる可能性を室内実験により成され,溶出しにくい状態となると仮説を立て,数種類見出した1)~3)。本章では,その成果の概要を述べる。の研究を進めてきた1)~3)。この仮説の概念図を,図―. 使用した石炭灰に示す。石炭灰には,表―に示す試料を用いた。表―及び本稿では,はじめに,二酸化炭素を活用した石炭灰か表―にそれぞれ,化学組成及び各種物質の溶出濃度を示す。. 二酸化炭素による石炭灰の溶出抑制前節の石炭灰に対して,二酸化炭素供給による石炭灰表―図―使用した石炭灰二酸化炭素と土質系材料保有の遊離性陽イオンとの反応による炭酸塩生成の仮説の概念図28地盤工学会誌,―/(/) 報表―表―使用した石炭灰の化学組成()告表― 二 酸化 炭素に よ る石炭 灰の 溶出 抑制実 験条 件図―二酸化炭素による石炭灰の溶出抑制実験の結果の使用した石炭灰の六価クロム,ホウ素,砒素,セレン及び鉛の各種溶出濃度(mg/L)一例図―二酸化炭素による石炭灰の溶出抑制実験の概要図の値を大きく上回る値を呈していたことから,これらのの溶出抑制実験を行った。石炭灰試料と蒸留水を固液比溶出濃度の変化を調べた。図―(a)に六価クロム溶出1 : 2 にして,液化炭酸ガスボンベ 3.4L 型(日立酸素・濃度を,図―(b)にホウ素溶出濃度の変化を示した。現ヤマト産業製)より圧力調整器 YR200V(CO2)(日これらの図の結果より,二酸化炭素を供給することによ立酸素・現ヤマト産業製)を用いて 0.02 MPa の圧力でり六価クロム及びホウ素の溶出が抑制されることが分か二酸化炭素を蒸留水へ注入した(図―左参照)。まずる。特に,二酸化炭素供給を繰り返す度に両溶出濃度は蒸留水に対し二酸化炭素を 30 分間,事前に注入し,そ低下しており,5 回の繰り返し二酸化炭素供給により,の後,試料をその蒸留水に投入して,二酸化炭素をさらいずれも土壌環境基準値以下に低減できることが分かっに 5 分間注入した。その後, 10 ~ 30 分静置した後,検た。液を濾過し,炉乾燥させた。この手順を 5 回繰り返し次に,上記の石炭灰の溶出抑制のメカニズムを考察すた。二酸化炭素による抑制実験の条件の詳細は,表―ることを目的に,溶出抑制前後の同石炭灰の X 線回折に示す通りである。分析を実施したところ,図―の結果を得た。この図よ図―は,二酸化炭素供給による石炭灰からの六価クり,二酸化炭素供給により,石炭灰中に炭酸カルシウムロム及びホウ素の溶出濃度の変化を示す。表―からも(図中 Calcite)のピーク強度の増加が確認された。また,分かるように,使用した石炭灰は,六価クロム及びホウ先の図―の右においても,二酸化炭素供給前後におけ素の溶出が土壌の汚染に係る環境基準(土壌環境基準)る石炭灰の外観の違いを示しているが,二酸化炭素を供November/December, 201729 報告図―二酸化炭素による石炭灰の溶出抑制実験の結果の一例図―給した石炭灰粒子の表面において白濁が認められた。こ鉄鋼スラグ供試体内の含水比と CO2 固定化量の変化(参考文献 4)中の図に加筆)れらのことから,供給された二酸化炭素と石炭灰が保有するカルシウムイオンにより,石炭灰粒子の表面に炭酸カルシウムが生成されることにより,いくつかの有害物質の溶出抑制が生じたと推察できる。.鉄鋼スラグの二酸化炭素固定化研究に基づく二酸化炭素固定化における最適な含水比の存在海野らは,参考文献 4)において,石炭灰と同様に遊離 Ca を保有する鉄鋼スラグを二酸化炭素の固定化材料としての可能性を実験的に調べた。本研究によれば,鉄鋼スラグ試料に含有される遊離 Ca の濃度と適切な含水状態のときに,炭酸カルシウムの生成が活発になること図―を明らかにしている。実験装置・方法の詳細などは参考加水による CO2 固定化効果の回復文献 4)を参照されたい。参考文献 4)では,大気圧環境下における数種類の CO2 固定化実験を行い,鉄鋼スラグのうち,高炉徐冷スラグ,エージング製鋼スラグ及び未エージング製鋼スラグに高い CO2 固定の効果があることを明らかにした。一方,実施した実験を通じて,供試体の含水比の変化に伴い, CO2 の固定化の程度に変化が生じることが分かった。図―に CO2 の累積固含水比が存在することが推察される。.既往研究成果を起点とする二酸化炭素を活用した自然由来重金属等含有土の環境負荷低減技術の展望前章までに,筆者らが進めてきた二酸化炭素の粒子表定化量と供試体内部の含水比の時間変化を示す。これは,面への固定化とそれを活用した溶出抑制の可能性に関す未エージング製鋼スラグを用いた CO2 固定化実験の試る実験の概要を述べてきた。これらと同じメカニズムを,験期間を 24, 72, 96, 120, 192時間に設定し,実験終自然由来重金属等含有土にも当てはめることにより,了後に CO2 固定化量と供試体の含水比を測定したもの土・岩石に含有される遊離 Ca と大気中の二酸化炭素のである。供試体内部の含水比は,経過時間と共に減少し化学反応による炭酸塩生成を活用し,自然由来の重金属ていき,試験が終了する200時間経過後には含水比が約の溶出を抑制することも可能と考えられる。1.5 となった。供試体の含水比が 2.0 付近に達したそこで筆者らは,予備的な試験を通じて,カルシウム120時間から,固定化される CO2 の増加傾向が急激に低を含む発生土を大気曝露させて炭酸塩生成の有無を確認下していることが分かる。また,実験終了後の各供試体した。その結果,適切な含水比調整と曝露期間の長期化に加水し,含水比を増加させたところ,図―に示すよにつれて Ca2+ 溶出量の低減が認められた。うに CO2 濃度比が低下した後に3.0程度になった含水今回実施した大気曝露実験は,主に 2 種類の条件を比を10.0の含水比に調整することにより,試料の CO2設定した。1 つは発生土の含水比を変化させて,もう一固 定 化 効 果 が 回 復 す る こ と が 認め ら れ た 。 これ よ り ,◯方は期間を変えて行った。それぞれの実験を実験◯CO2 の固定化は,供試体の含水比状態の影響を大きく では,初期含水比 w0=12.14の試料と,とする。実験◯受けると考えられる。すなわち,二酸化炭素供給と粒子その試料を w=20.00,30.00を目標に含水比調整しが保有する遊離 Ca の反応による炭酸塩の生成に最適なた試料の計 3 種類を 7 日間大気曝露させた。なお,7 日30地盤工学会誌,―/(/) 報表―告大気曝露実験の条件と炭酸塩生成の結果図―散水による適切な含水比設定と現地発生土中のCa と大気中の二酸化炭素の反応に起因した自然由来重金属の溶出抑制技術のイメージCa の反応に基づく CaCO3 の生成が推察される。特にCaCO3 の生成は適切な含水比調整を行い,一定の大気曝露期間を設定することにより促進されたものと考えられる。このことから,含水比状態の適切な設定と一定の大気曝露期間を設けることにより,発生土中の Ca2+ と大気中の二酸化炭素の反応に起因し生成する炭酸塩が自然由来重金属等の溶出抑制をもたらす技術の開発が展望できる。現在までの研究成果では,適切な含水比設定や一定の大気曝露期間の定量化までには至っていないが,これらの事項を,より詳細かつ広範囲の条件を設定した試験の左Ca2+ 溶出量と含水比との関係,右Ca2+ 溶出量と大気曝露期間との関係図―Ca2+ 溶出量に及ぼす含水比及び大気曝露期間の影響結果を通じて,図―に示すような「散水による適切な含水比設定と現地発生土中の Ca と大気中の二酸化炭素の反応に起因した自然由来重金属の溶出抑制技術」の開発が可能と考えられる。間中,初日と 4 日目に加水を行い設定含水比に調整し では初期含水比 w0=5.36の試料を 7た。一方,実験◯日間と 14 日間の 2 条件で大気曝露させた。なお,実験参1) では曝露期間中,加水を実施しなかった。大気曝露後◯の 生成 物の 確認 は, 環境 庁告 示 46 号溶 出試 験に よるCa2+ 溶出量の測定と炭酸塩含有量試験5) により行った。表―に大気曝露実験の条件と炭酸塩含有量試験の結 ,実験◯ の終了後に得果を示す。また図―は,実験◯2)た Ca2+ 溶出量である。図―より,今回設定した含水比の範囲ではその増加と大気曝露期間を長くすることにより, Ca2+ 溶出量が低減することが分かる。また表―3) では含水比が増加するに伴い pH は低下より,実験◯し,炭酸塩含有量が増加していることが分かる。一方, では大気曝露期間が長くなるに伴い, pH が上昇実験◯4) の pH 低下の原因とし炭酸塩含有量も増加する。実験◯しては,二酸化炭素の溶解量の増加が考えられる。また, の pH 上昇の原因としては,加水を行わなかった実験◯ことによる間隙水の蒸発が考えられる。以上の結果より,発生土においても二酸化炭素と遊離November/December, 20175)考文献Nohno, S., Komine, H., Yasuhara, K., Murakami, S., Ito,T., Konami, T., and Kudo, Y.: Experimental study onwashing of coal ‰y ashes by water with carbon dioxide,―washing eŠect of chromium (VI) and boron―, ISSMGE's: 5th International Congress on EnvironmentalGeotechnics, pp. 245250, 2006.南野慧子・小峯秀雄・安原一哉・村上 哲・小浪岳治・工藤章光炭酸ガスの有効利用を目的とした石炭灰洗浄技術に関する基礎的実験,第40回地盤工学研究発表会発表論文集,pp. 2669~2670, 2005.南野慧子・小峯秀雄・安原一哉・村上 哲・小浪岳治・工藤章光回転振とう併用による炭酸ガスを用いた石炭灰洗浄の高度化,土木学会第60回年次学術講演会講演概要集,pp. 89~90, 2005.海野 円・小峯秀雄・村上 哲・瀬戸井健一低炭素社会形成のための鉄鋼スラグの二酸化炭素固定化量の定量評価と二酸化炭素固定化メカニズムの推察,地盤工学ジャーナル Vol. 9, No. 4, pp. 469~478, 2014.福江正治・加藤義久・中村隆昭・森山 登土の炭酸塩含有量の測定方法と結果の解釈,土と基礎, Vol. 49,No. 2, pp. 9~12, 2000.(原稿受理2017.7.20)31
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