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タイトル 地下ダムから溶出したマンガン水の分析と電気泳動法による低減化(<特集>自然由来物質への対応)
著者 佐々木 清一・宇田 毅
出版 地盤工学会誌 Vol.65 No.11/12 No.718/719
ページ 20〜23 発行 2017/11/01 文書ID jk201707180010
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  • タイトル
  • 地下ダムから溶出したマンガン水の分析と電気泳動法による低減化(<特集>自然由来物質への対応)
  • 著者
  • 佐々木 清一・宇田 毅
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.65 No.11/12 No.718/719
  • ページ
  • 20〜23
  • 発行
  • 2017/11/01
  • 文書ID
  • jk201707180010
  • 内容
  • 報告地下ダムから溶出したマンガン水の分析と電気泳動法による低減化Analysis and Remediation by Electrokinetics for Underground Water Contaminated with Manganese佐々木清一(ささき和歌山工業高等専門学校せいいち)名誉教授宇田毅(うだたけし)和歌山県土地改良事業団体連合会参事. は じ め に和歌山県田辺市上芳養地域は,梅栽培の圃場であり,県の重要基幹産業として発展し現在も多くの農家が栽培に従事している。この圃場に供給するために灌漑用水として地下ダムを建設し取水を行っている。この地域は,紀伊半島四万十帯の南帯に位置し,古第三紀の音無川付加体が分布する。この付加体は,プレート境界の沈み込み帯で形成された地質体であり,遠洋性の堆積物である暗緑色泥岩及び緑色泥岩・赤色泥岩を主とし,一部に海底火山に由来する緑色岩類(枕状熔岩を含む)を伴う瓜写真―谷層,上半部が海底扇状地の堆積物である砂岩泥岩互層,圃場整備全景砂岩及び礫岩の羽六層からなる。この堆積物には,細粒の泥に加えて, Fe や Mn などの金属の酸化物が多く含まれる特徴を有する1)。この岩石から雨水の浸透によりこれらの重金属が溶出することが予想される。この地域の地下水を揚水すると,Mn2+ が空気に接すると酸化され MnO2 の黒色のスラッジ水となり配管,ポンプの腐蝕を起し度々破損し問題となっている。さらに過剰なMn は,梅栽培への影響も懸念されるために,現時点では,消毒水以外には使用されておらず,改善できれば,栽培,洗浄などの活用を農家も期待している。そこで,図―石灰質堆積岩の化学成分分析結果数年間に渡る現地での調査データを示し,特に Mn に焦点を当て処理に薬剤を使用しない電気泳動法を活用した集積・低減に関する基礎実験について報告する。.現地調査・分析写真―に示すように約 24.0 ha の梅圃場の造成を行った。この地域は第三紀・音無川層群に属する砂岩,泥岩の堆積岩が分布し,その成分を蛍光 X 線分析した結果は図―である。これより,CaO, SiO2 を主成分とした MnO を約 4 wt.(40 g/kg)含有する岩石であるこ図―地下ダム水の Mn 濃度の推移とが分かる2) 。この岩から雨水の浸透と共に Ca+2 が多い Mn を含んだ水が溶出することが予想される。そこている。バリア材として花崗岩の砕石を詰め,地下水をで,地下ダム建設当時における Mn の分析結果を図―Ch. 1 (地盤高 197 m )に流して MnO2 スラッジ水を吸に示す2)。この値からMn 濃度は季節による変動はあるが,平均値 7.44 mg / L を超える月が多い。そこで,着させ Ch. 2 (地盤高 193 m )から貯水タンクへと導入するものである。圃場に供給する地下水に含まれる重金属(主に MnO2,採取した地下水を 0.045 mm のフィルターにてろ過しFeO2 )を吸着除去するために,図―に示す集水井戸ICP 発光分析装置で定量分析した結果が図―である。と水路(断面 0.45 m2×長さ 54 m)を建設した。地下ダこの測定データから Mn は平均 13.0 mg / L であり,他ム近傍に井戸(径1.8 m×深さ9.3 m)を設置し集積されの重金属(Cu, Fe, Cr, Zn など)の濃度を比較すると圧た地下水をサイホン管にて 54 m の浄化水路まで揚水し倒的に大きい。さらに地下ダム建設当時の図―のデー20地盤工学会誌,―/(/) 報図―図―地下ダムと地下水浄化水路のレイアウト図―54 m 水路の入口と出口における導電率の観測例(H22)図―地下水における金属元素の測定結果(H21~22)告ゼオライトの吸着特性曲線しても季節毎に大きく変化しながら挙動している。この挙動は,地下ダムが谷筋に建設されているため,図―に示した化学成分の溶出に対する降雨の影響が考えられる。.電気泳動法による基礎実験と検討福島第一原子力発電所において,放出され土壌に吸着,水中に溶解したセシウム Cs の集積・除去について,安価で取扱い易い材料であり,既に使用されているゼオラ図―地下水の導電率特性(H21~22)イト材料に注目し Mn 溶解水への応用を考えた。Mn のバッチ吸着実験においては,試料 5 g に対してタと比較すると約 1.7 倍に増加している。他の重金属初期濃度(0.002, 0.004, 0.006, 0.008, 0.01, 0.012, 0.016,Cu, Zn が 9 月から 11 月に見られるのは,梅の消毒と追0.02 g/L)を添加した溶液50 mL を作成した。振とう速肥による圃場から地下水への影響と考えられる。そこで,度200 rpm/min,6 時間後に0.045 mm のろ紙にてろ過し,この効果を分析するために,図―の Ch. 1 (流入口),Mn 濃度を分光光度計にて分析した。その結果,ゼオラCh. 2(流出口)及び貯水タンク内の地下水の導電率をイトに対する Mn の吸着特性を図―に示す。測定値測定した結果が図―である。この値から見ると,Ch.に対してフレンドリッヒモデル( 1 )及び( 2 )による計算1 及び Ch. 2 における導電率の著しい差は見られない。値を図―に示した。更に田辺市水道水の測定値110 mS/cm に基づき Ch. 1, 2S=Kf Cemf ………………………………………………(1)の値に注目すると6.4~6.5倍の値を示している。図―log S=log Kf+mf log Ce ……………………………(2)の導電率の変化は,図―に示した地下水に含まれる金ここに S吸着量(g/kg),Ce平衡濃度(g/L),Kf属元素が,導電率値に影響しているものと考えられる。分配係数=28.74,mfフレンドリッヒ係数=0.81また,詳しい導電率の時間変化を調査するために,導電これより Mn 吸着量は,平衡濃度の増加により増加率計による自動計測を試みた。ここで計測されたデータし,式( 1)による計算結果とも相関係数が 0.91であり対はセンサーからのアナログ電圧を A/D 変換し,そのデ応している。したがって,式(1)から浄化すべき Mn 濃ジタル信号を携帯電話の通信機能を利用してパソコンに度に対するゼオライト重量を推定することができる。1 時間間隔で送信した。この水路で測定した導電率の結Mn2+ = 100 mg /L ( Mn ( NO3)2・ 6H2O= 0.19 )による果を図―に示す。これより地下ダムからの Ch. 1(流汚染水( 100 mg /L )を作成し図―に示すように+極入口)よりも 54 m の水路を流れた後の Ch. 2(流出口)はステンレス棒(直径 0.01 m ×長さ 0.11 m ),-極は炭では導電率がわずかながら低下している。この低下は水素繊維の電極(幅 0.08 m ×長さ 0.03 m )を使用した。路に設置した花崗岩砕石による吸着効果を反映している+,-極の間隔は, 0.23 m である。-極のポーラススと考えられる。この観測データが示すように導電率に対トーン面にはゼオライトシート(幅 0.09 m ×長さ 0.09November/December, 201721 報告図― ゼオライトに対する Mn の吸着前後における分析結果図―ロボットによる pH と導電率自動計測装置図― +及び-極における pH 特性その含有量を蛍光 X 線分析した結果は図―である。この図においてゼオライトシートの成分は,主に Si,Na, K, Ca, Al であるが,特にイオン交換物質である Na図―Mn 溶解水に対するゼオライトの効果( DC 電流通電は30分間隔)項目の吸着前に注目すると,吸着後は減少し,反対にMn (黒色の棒グラフ)が増加する。これは, Mn2+ に着目すると,(3)式のようなイオン交換現象によるものm)を貼り,ポーラスストーンで隔離された+,-水槽である。にはイオン交換水500 mL をそれぞれ注入した。さらにMn2+2Na+-Clay+Mn2+⇔Mn2+-Clay+2Na+ ………(3)溶解液は+,-の間の溶液槽( 850 mL )に入れここで,それぞれの吸着能力はイオン価数と半径に支配た。Mn2+ 濃度及び pH は+極及び-極槽において導電され る。イオン 半径は Na+ = 0.095, Mn2+ = 0.080 nm率,pH センサーをMn2+溶液槽では,導電率のみ計測であり,クーロン力は半径の 2 乗に反比例する。つました。電圧 23 V の下で DC = 40 mA (電位差 1 V / cm)り小さいイオン半径の物質はクーロン力が大きくなり吸を流した。測定は30分間隔にて Mn2+ 濃度,pH の変化着能力が増加する。図―の分析結果から,Na は90を測定した。電流が流れると pH センサーが直流のため減少しその分 Mn について89の増加が見られた。に値が大きく変わり以前はマニュアルにより計測されて図―の電気泳動実験による+及び-極における pHいた。そこで,図―のように,DC 電流を30分ごとに特性を図―に示す。この場合,+極では 2H2O - 4e-切り移動アームロボットにより,導電率を 1 分間隔で= 4H+ +O2,-極では 2H2O+ 2e- = 2OH- + H2 の化学+極, Mn 溶解層,-極と順番に計測し,その後に pH反応が起こる。その結果,+極では酸性,-極ではアルセンサーを備えたアームを動かして pH を+,-極水槽カリ性となる。これより,+極では,DC 電流が流れるにおいて自動的に計測した。と急速に pH が低下し pH = 2 以下の強酸性になる。こ図―は,図―の実験に示すように-極の多孔質板れと反対に-極では pH=10以上の強アルカリ性を示す。の前に添付したゼオライトシートの効果を示したものでこの結果,-極では Mn(OH)2 となり沈殿するものと推ある。ここに使用したゼオライトは,モルデナイト型の定される。このために Mn2+ 汚染溶液からの移動によ天然産であり,透水係数 k = 4.9× 10-6m / s である。こり-極において平衡状態となりイオンの移動が止まる。れより,イオン交換水の場合では,電流を伝達するイオこれを改善するには-極は常に酸性状態を保持するか,ン化した金属が無いために,通電時間による導電率の変カラム吸着層により除去させる必要がある。現場での適化は見られない。ゼオライトを使用しない場合は,減少用を考えた場合には,装置そのものが大掛かりとなる。の割合も小さく,また集積時間も長時間にわたる。一方,そこでゼオライトシートに吸着させて交換する方法を検ゼオライトを使用した場合では,Mn=100 mg/L,地下討した。水とも導電率の値が減少し,その時間も少ない。したがって,このシートを吸着材として浄化水槽に導入すれば,Mn の低減化が期待できる。さらに,図―の実験で使用したゼオライトシートに吸着した22Mn2+に対して,.現場実験と現状分析現地において観測した Mn2+ 及びその他の重金属を含む地下水の電気泳動実験は,図―に示される。これ地盤工学会誌,―/(/) 報表―告地下水分析結果(H29/7)図― 現地 Mn 集積実験に最近の地下水分析結果が,表―である。集水井戸,貯水タンクから最終の圃場給水栓では,ほとんど変わらない。地下ダム建設時のデータである図―と比較する図― 地下水の現場実験結果(電圧一定18 V)と, Mn は大きく減少し調査項目に限り食品製造用水(厚生労働省告示第 370)の基準値( 0.3 mg / L )以下では図―の方法を利用したものである。+極を Mn2+を含む地下水タンク(260 L)の中に設置し,10 L タンク(-極)には水道水を,その中にステンレスの電極棒をいれ,導電率センサーにより,それぞれ測定している。ある。.まとめ水源井戸(地下ダム付設,H14)建設以来,水質調査電圧 18 V 1 A の下で実験を試み,導電率から出る出力を行い現在に至っている。Mn 濃度はかなり改善され,値を 30 分間隔で計測した。その結果が図―である。調査項目に限定した場合,食品製造用水の基準以内までこれより,地下水の導電率計の電圧は約 2~ 3 時間で低改善された。費用対効果等を考えれば既存施設(浄化水下し電流を流す期間と共に減少している。これに対して路,貯水タンク)に電気泳動装置を取り付けた複合的手-極の電圧は増加の傾向を示している。この現象は,地段の導入が望まれる。電気泳動法においても,処理水量,下水に含まれるMn2+,Fe2+ 等の重金属が+から-に移濃度,電流と処理時間に対する実証実験が必要とされる。動していることを示すものである。そこで,ファラデーによる電気化学の法則により,図―の Mn2+ を含むデータに適用して集積時間の計算を試みる。ファラデーの式は式(4)で表される。( )Q = A ・ t =F ・ n ・W…………………………………(4)M謝辞上芳養地域の地質化学情報については,和歌山大学災害科学教育研究センター後誠介客員教授からの指導を受けました。また,電極に使用した炭素繊維の材料につい株 (福井県)から提供を受けました。ては,前田工繊Q電気量(C),A電流(A),t時間(sec),Fファラデー定数(9.65×104 C/mol),n モル数, W 物質量( g ), M 原子量( g ),空気中の CO2 の溶解による HCO3- と Mn2+ の反応から地下水の Mn (HCO3)2 を仮定すると, Mn2+ = 100 mg / L = 5.61 × 10-4 mol / L である。これより Q = 108.08 C/ L となり, 1 A では, t =1.8 min/L となる。したがって,260 L タンクでは約7.8h となり Ch. 2 の値がこの値の付近から減少する。さらNovember/December, 2017参考文献1)中谷志津男他音無川付加シークエンス(音無川層群)の層序と構造 ―古第三系暁新統~下部始新統の付加体―,地団研専報,Vol. 59, pp. 61~69, 2012.2) 宇田 毅小規模地下ダムにおける簡易ろ過システムの提案,農業土木学会誌,第 73 巻, 7 号, pp. 565 ~ 568,2005.(原稿受理2017.7.25)23
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