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タイトル 汚染対策を施した掘削ずりの道路盛土内の物質移行に関する観測実験(<特集>自然由来物質への対応)
著者 田本 修一・倉橋 稔幸
出版 地盤工学会誌 Vol.65 No.11/12 No.718/719
ページ 12〜15 発行 2017/11/01 文書ID jk201707180008
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  • タイトル
  • 汚染対策を施した掘削ずりの道路盛土内の物質移行に関する観測実験(<特集>自然由来物質への対応)
  • 著者
  • 田本 修一・倉橋 稔幸
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.65 No.11/12 No.718/719
  • ページ
  • 12〜15
  • 発行
  • 2017/11/01
  • 文書ID
  • jk201707180008
  • 内容
  • 報告汚染対策を施した掘削ずりの道路盛土内の物質移行に関する観測実験Experimental Evaluation of Mass Transport Characteristics to Adsorptionlayer in Road Embankment田本修一(たもとしゅういち)国立研究開発法人土木研究所寒地土木研究所研究員倉橋稔幸(くらはしとしゆき)国立研究開発法人土木研究所寒地土木研究所上席研究員. は じ め に平成 22 年 3 月に「建設工事における自然由来重金属等含有岩石・土壌への対応マニュアル(暫定版)」1)が国土交通省より公開され,汚染への新たな対応の枠組みとして,人の健康や環境への負の影響がどの程度解消されるのかを定量化するサイト概念モデルに基づくリスク評価による設計手法が示された。国土交通省内の直轄事業では,この手法が導入されつつあり,より合理的で経済的な対応がなされてきている2)。一方,サイト概念モデルに基づくリスク評価の精度を向上させ,汚染対策工の効果の検証や汚染物質の影響評価を行うには,盛土内や地盤内の物質の移動をトレーサーにより評価することが有効である。一般的にトレーサー物質は,塩化ナトリウムや有機染料,インジウムなどの非放射性物質が用いられる3)。しかし,安全性や環図―表―観測実験の概要分析項目及び分析手法境への影響などを考慮すると,人工物質の使用を避けるほうが望ましい。筆者らは,北海道内の道路建設現場でヒ素( As )を含有する掘削ずりに対し,吸着層による汚染対策を施した道路盛土内の観測実験を実施した4),5)。当該現場では,間隙水の硫酸(SO4)やナトリウム+カリウム(Na,K)(図―)。また,地下水の水位及び水質を把握するため,が地下水のそれらに比べて極めて高い濃度を有し,かつ,盛土法尻に地下水観測孔を設置した。間隙水は土壌溶液それが掘削ずり由来であることを確認した4) 。 SO4 や採取器から負圧吸引により採取し,地下水は使い捨てのNa は,As が流下していくのを評価していくための天然ベーラーを用いて採水した。採水後,0.45 mm メンブラのトレーサーになりうると考えられた。ンフィルターを用いて固液分離を行い,表―に示す分本稿では,盛土内で溶出した SO4 と Na について,観析項目を分析した。採水月日と分析項目との関係を整理測実験の観測値と二次元移流分散解析の解析値とを比較し,SO4 及び Na の増減を比較した。し,盛土内から吸着層への As の影響予測に用いる天然. 二次元移流分散解析の方法のトレーサーとしての適用性について検討した結果を紹モニタリング実験現場における Na の二次元移流分散介する。.実験の方法と解析方法解析を実施し,盛土の浸出水中の As の分析値と比較し,Na イオンのトレーサーとしての適用性を評価した。解析には,Dtransu2D/EL6)を用いた。モデル現場の材質. 観測実験における浸出水の水質分析方法区分図及び要素分割を図―に,サイト概念モデルを構実験現場は,北海道内の市街地をバイパスする地域高築するにあたりモデル化に用いた入力パラメータ及び境規格道路の建設現場であり,工事区間の As を含有する界条件を表―にそれぞれ示す。入力パラメータ及び側トンネル掘削ずり(泥岩)を本線道路盛土材として利用方境界条件は,周辺地盤で実施した地質調査結果,アメした道路盛土である。観測期 間は, 2011 年 12 月からダス及びモデル現場周辺で観測している地下水位観測孔2014年 11月までの 2 年 11 ヶ月間である。幅約 67 m ,高から求めた想定地下水位により設定した。有効間隙率及さ約 10 m の道路盛土内及び盛土下の地盤内に,温度,び比貯留係数は文献値7)を用いた。地表部に浸透する降体積含水率,土中酸素濃度を測定するための計測機器及雨の境界条件は,国土交通省北海道開発局で設置されてび間隙水を採取するための土壌溶液採取器を埋設したいる道路テレメータの観測期間の雨量データと覆土層下12地盤工学会誌,―/(/) 報図―表―告モデル現場の材質区分図及び要素分割入力パラメータ及び境界条件部に設置された体積含水率計の観測データより式(1),( 2 )の米澤8) による方法で算定した。また,ずり層内部の Na と SO4 の濃度は,別途実施した固液比 110によるバッチ溶出試験結果の 10 倍濃度をそれぞれ固定濃度として設定した。分子拡散係数には,文献値9)を用い,吸着層の遅延係数に 1 を用いた。これは,トレーサー成分として考慮したため,吸着しないものとして設定したことを意味する。Si,t=L・ui,t ………………………………………………(1)nQ0,t=∑(Si,t+1-Si,t) …………………………………(2)i=1ここで,Si,t は地盤内水分貯留量(mm ), L は体積含水率計の埋設深度(mm),ui,t は体積含水率(),Q0,t は地表からの降雨浸透量(mm)を示す。.図―実験結果と考察. 盛土内浸出水と地下水の水質分析結果pH, As, SO4 及び採水月日との関係を示し,7.5~8.5の間で推移した。pH, As, SO4 及び Na と採水月日との関係を図―に盛土内の As は,ずり層 No. 1 ,吸着層上部 No. 2 で示す。ここで,定量下限値未満の濃度は,便宜上,各グいずれも0.011~0.089 mg/L の間で土壌溶出量基準値をラフの最低値とした。超過したが,時間の経過とともに概ね減少した。また,盛土内の pH はアルカリ性を示し, As が溶出しやす環境10) であった。ずり層No. 1 と No. 2 を比較して採水深度が深くなると, AsNo. 1 では当初 8.1 であ溶出濃度が大きくなった。一方,吸着層下部 No. 3 のったのが,変動しながら9.8まで上昇し,その後,8.2~As は, No. 3 に着目すると, 0.001 ~ 0.003 mg / L であい pH8.7 の間で推移した。また,吸着層上部 No. 2 では初期った。吸着層を挟む No. 2 と吸着層上部の No. 2 で土壌値11.3であったのが,時間の経過とともに10.1まで低下溶出量基準値を超過していた As が,吸着層下部の No.した。そのほか,吸着層下部 No. 3 の pH もアルカリ性3 では0.001~0.003 mg/L に減少した。これは,吸着層November/December, 201713 報告が As を吸着し As の溶出濃度を減少させたためと考えられる。地下水中の As は,定量下限値未満であった。. Na による汚染物質拡散の影響評価実験現場における Na の二次元移流分散解析を実施し,SO4 と Na は,ともに同様な溶出傾向を示した。ずり計算値と観測値とを比較した。吸着層の直上部と直下部層 No. 1 では初期値から増加し 2012 年 9 月に最大濃度における Na の観測値と解析結果との関係を図―に示を示し,その後時間の経過とともに増減しながら減少しす。なお,同図中の入力値には,固液比 110によるバた。No. 2 では2012年10月に最大濃度を示したが,そのッチ溶出試験結果の10倍濃度を固定値として用いた。後減少し時間の経過とともに増加した。一方,吸着層下計算の結果,Na 濃度の計算値は,2011年12月 1 日か部の No. 3 では, SO4 と Na ともに時間の経過とともにら半年程度で500 mg/L まで急増し,その後はほぼ平衡徐々に溶出濃度が増加した。また,吸着層上部 No. 2 とに達した。実測値が,一貫して緩やかに増加しているの吸着層下部 No. 3 とを比較すると, SO4 と Na ともに吸と異なる結果となったのは,入力値を固定していること着層下部の No. 3 の溶出濃度が低い値を示した。盛土内(実際の吸着層上部 No. 2 の観測値は増減を繰り返しつの水質組成は非炭酸ナトリウム型( NaSO4 ・ NaCl )でつ増加傾向にある)と,解析では吸着層が Na を吸着しあり,地下水は炭酸カルシウム型( Ca ( HCO3 )2 )であないと仮定したため,実際とは異なり遅延効果が生じなることから,異なる組成を示していた4)。かったためと考えられる。すなわち,Na の濃度分布は,. 分析結果の考察吸着層上部の初期値の設定や,吸着層での Na の吸着を吸着層内を通過する SO4 について考察すると, SO4どう評価するかなど,改善の余地はあるが,実測値と概は盛土内の高い pH 環境下においてはゲータイトや水和ね調和的に推移していると考えられる。今後は,Na の鉄酸化物にほとんど吸着されず11) ,吸着層内では Al吸着試験を実施することで,より精度の高いパラメータ(アルミニウム)や Ca(カルシウム)などの共存イオンを設定し,計算値を観測値に近づけることができると考との反応により SO4 が難溶性塩として沈殿する12) と予想される。しかし,観測当初からの SO4 濃度の一連のえられる。試験終了時( 1 095 日後)の Na の濃度分布図を図―上昇は,盛土後かなり早い段階に,SO4 が難溶性塩となに示す。Na は吸着層直下部の As1 層で相当濃度が高り吸着層内で飽和し,溶出源として豊富にある掘削ずりくなったが,その下部の透水性の小さい Ac2 では濃度から SO4 が次々と供給され,吸着層を通過し SO4 が漏が減衰していた。また, Ag1 層まで達すると下流側へ出したと考えられる。以上のことは,時期や溶出濃度のの移流がみられた。 As の解析値と Na の濃度分布とを値は異なるものの Na イオンも同様の挙動を示している。すなわち, Na の溶出濃度は, SO4 と同様,採水開始直後から一貫して上昇している。イオン化傾向の強い Naは,吸着層で交換性陽イオンとして粘土鉱物のハロイサイト12) に吸着されたと予想されるが,このような吸着は盛土後かなり早い段階に飽和し,Na は吸着層を通過したと考えられる。As については,盛土深部の pH が高いため吸着層上部 No. 2 の溶出濃度が高めに推移していることを考慮する必要があるが,吸着層において pH が低くなり,吸着図―吸着層の直上部と直下部における Na の観測値と解析結果との関係層内に含まれるハロイサイトなどの粘土鉱物や共存する水酸化鉄に吸着されたことにより吸着層下部 No. 3 のAs の溶出濃度を減少させたと考えられる13)。SO4 と Na の溶出挙動からは,盛土中心部から吸着層直上部への移行,吸着層下部への浸透と濃度の漸増,地下水へはまだ到達していないか,あるいは到達していても希釈されて観測値としては表れないレベルであることなどが読み取れる。これらの挙動から SO4 と Na は,ともに As の挙動をモニタリングする上での天然のトレーサーとして有効であると考えられる。ただし,吸着層から漏出した SO4 は,地盤内の Al や Ca などとさらに共沈する可能性がある。一方, Na は地盤中の主要な陽イオンの中ではコロイドの表面荷電との吸着力が弱い11)ため,陽イオン交換反応により放出されやすい。このため, SO4 と比較して拡散性の高い Na が, As の影響予測を検証する天然のトレーサーとして,より適していると考えられる。14図―二次元移流分散解析による試験終了時の Na 濃度分布地盤工学会誌,―/(/) 報告観測実験で得られた知見をサイト概念モデルに基づくリスク評価への対応方法を示した。本稿で得られた知見が自然由来物質に対応する際の一助になれば幸いである。今後は,より精度の高いリスク評価モデルを構築するため,盛土内環境を想定した発生源評価方法や還元環境を模した吸着試験方法の開発を目指していきたい。本実験の実施にあたり,国土交通省北海道開発局関係各位から資料の提供及び現場提供をいただいたことに謝意を表する。参1)図―サイト概念モデルに基づくリスク評価の流れと対応。文献14)より抜粋・一部修正比較すると,Na の濃度分布は As よりも高い。2)このように,Na 濃度を計測することで,As の拡散や移動を先行して評価することができると考えられ, Naは井戸等でのモニタリング観測により,対策効果の検証や As の影響の程度,範囲等を評価するのに有効な指標3)となると考えられる。. サイト概念モデルに基づくリスク評価への対応4)本実験から得られた結果を基に,リスク評価モデルの精度を向上させるため,サイト概念モデルに基づくリスク評価の流れと対応を図―に示す。サイト概念モデル5) 発生源の評価,◯ 現場とリスクによるリスク評価は,◯ リスク評価範囲の設定,◯ 現場周辺評価地点の選定,◯ リスク評価(解析・評価) リスの地盤特性評価,◯,◯6) 対策方法の決定,◯ モニク評価に基づく対策の検討,◯タリング計画の策定という流れで行う。7) 発生源の評価においリスク評価への対応としては,◯て,溶出試験で汚染物質のほか Na や K などの主要イ8)オンを分析し,ヘキサダイヤグラムで卓越するイオン当量を示す主要イオンについて解析・評価・検討を進める。9) モニタリング計画の策定において,地下水モニタリン◯ で整理しグを行う項目に対象となる汚染物質のほか,◯た主要イオンを追加してモニタリングデータをリスク評価結果の検証などに活用する。10)11). お わ り に本稿では,汚染対策が施された道路盛土内の物質移行に関する観測実験を行い,盛土内で溶出した SO4 及びNa が盛土内から吸着層への As の影響予測に用いる天12)13)然のトレーサーとしての適用性について検討した結果を紹介した。その結果, SO4 と Na は,ともに As の挙動をモニタリングする上での天然のトレーサーとして有効であることを確認した。両者の比較では,SO4 と比較し14)考文献建設工事における建設工事における自然由来重金属等含有土砂への対応マニュアル検討委員会建設工事における自然由来重金属等含有岩石・土壌への対応マニュアル( 暫 定 版 ), 2010 , 入 手 先 〈 http: // www.mlit.go.jp /sogoseisaku / region / recycle / pdf / recyclehou / manual /sizenyuraimanyu_zantei_honbun.pdf〉(参照 2017.7.3)林 貴博・掛田浩司・宮川浩幸建設工事における自然由来重金属含有岩石をもちいた盛土設計について~サイト概念モデルの構築~,平成24年度国土交通省国土技術研 究 会 , 2012 , 入 手 先 〈 http: / / www.mlit.go.jp /chosahokoku / h24giken / program / kadai / pdf / innovation/inno108.pdf〉(参照 2017.7.3)(公社)土木学会ダム建設における水理地質構造の調査と止水設計,丸善,p. 44,2002.田本修一・伊東佳彦道路建設現場におけるサイト概念モデルによるリスク評価と盛土モニタリング実験,第10回環境地盤工学シンポジウム発表論文集, pp. 117 ~124, 2013.田本修一・倉橋稔幸自然由来重金属含有掘削ずりの汚染対策を施した道路盛土内の物質移行特性に関する考察,第 11 回環境地盤工学シンポジウム発表論文集, pp. 421~424, 2015.西垣 誠ほか飽和・不飽和領域における物質移動を伴う密度依存地下水流の数値解析手法に関する研究,土木学会論文集,No. 511, 30, pp. 135~144, 1995.最上武雄ほか透水―設計へのアプローチ,鹿島出版会,p. 13,1976.米澤裕之原位置計測に基づく熱帯性豪雨に対する斜面浅層部の流出浸透特性に関する研究,京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻修士論文,pp. 37~40, 2011.日本地下水学会地下水流動解析基礎理論のとりまとめに関する研究グループ編地下水シミュレーション,技報堂出版,p. 97, 2010.鈴木哲也ほか重金属を含有する掘削土砂の処理判定と対策,土と基礎,Vol. 52, No. 9, pp. 13~15, 2004.福士圭介酸化物による無機陰イオンの吸着―吸着実験による巨視的吸着挙動とその場分光分析による微視的表面錯体構造―,粘土科学,Vol. 47, No. 3, pp. 121~158,2008.地下水ハンドブック編集委員会改訂地下水ハンドブック,建設産業調査会,pp. 212~215, 1998.島田允尭自然由来重金属と環境汚染―応用地質学・地球 科 学 的 デ ー タ バ ン ク ― , 愛 智 出 版 , pp. 77 ~ 115,2014.(一社)北海道環境保全技術協会技術委員会自然由来重金属等の対策におけるリスク評価マニュアル,道環協技術レポート,No. 5, p. 16, 2012.(原稿受理2017.8.7)て拡散性の高い Na のほうが, As の影響予測の天然のトレーサーとしてより適していると考えられた。また,November/December, 201715
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