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出版

タイトル コンシステンシー限界(技術手帳)
著者 下辺 悟
出版 地盤工学会誌 Vol.65 No.6 No.713
ページ 32〜33 発行 2017/06/01 文書ID jk201707130018
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  • タイトル
  • コンシステンシー限界(技術手帳)
  • 著者
  • 下辺 悟
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.65 No.6 No.713
  • ページ
  • 32〜33
  • 発行
  • 2017/06/01
  • 文書ID
  • jk201707130018
  • 内容
  • 技術手帳コンシステンシー限界Consistency Limits下辺 悟(しもべ日本大学理工学部.さとる)教授土のコンシステンシーコンシステンシー( Consistency ,稠度)とは,含水比の変化に伴う土の流動特性又は硬軟の程度と定義され,その状態変化や力に対する変形の抵抗性を指している。土以外の土木材料で,例えばコンクリートやアスファルトにもこれと同じ名称の用語がある。前者はフレッシュコンクリートの水量の多少による流動性,後者は温度変化によるアスファルトの硬軟の程度がこれに該当する。土の“コンシステンシー”は,土粒子の粒径分布状態を表す“粒度”と同様,その物理化学的性質や力学的性図―土の状態変化とコンシステンシー限界,液性指数質に関連する基本的かつ重要な概念であり,粘土やシルトなどの細粒土のコンシステンシー特性として工学的に利活用されている。.Atterberg の研究とコンシステンシー限界械的な試験方法へと発展させ,今日に至っている2)。図―に,含水比 w の変化に伴う土の体積 V の変化を表す,収縮曲線の模式図2)を示す。この図によれば,w の減少に伴い,土の状態変化が液状(ドロドロして流ここでは,土のコンシステンシーの概念形成に大きくれる)~塑性状(自在な形の粘土細工ができる)~半固寄与したスウェーデンの土壌科学者 Atterberg (アッ体状(パサパサして生乾き)~固体状(カチカチして叩ターベルグ, 1910 年, 1911 年)の研究を概説し,今日くと割れる)の 4 区分に変移している。前述した液性・の地盤工学において重要な一次性質(土固有の性質)の塑性両限界,並びに,もうこれ以上土の体積が収縮しな一つである“コンシステンシー限界”について言及する。い( V0 )ときの含水比である, Shrinkage Limit (収縮. Atterberg の研究限界 ws , SL )を加えた 3 つの変移含水比を総称して,Atterberg は,土粒子の粒径による土質分類に加え,“コンシステンシー限界”という。また,これらの限界その当時不十分だった粘性土の分類を補完する形として値の提唱者である Atterberg にちなんで“アッターベル土の“塑性”の尺度を新たに導入した1)。彼は,練り返グ限界”とも呼ばれる。なお,実際の土の状態変化は連した土が塑性状を有する含水比の範囲で(土に力を加え続的であり,ある含水比を境に状態が急変するものではて生じた変形が,力を取り除いても元に戻ることなく,ない。土の成形ができる状態),その度合いを表現するための簡便な土の分類試験を考案した。参考までに, JIS(日本工業規格)に規定されているJIS A 1205 「土の液性限界・塑性限界試験方法」, JIS. コンシステンシー限界A 1209 「土の収縮定数試験方法」におけるコンシステ土質力学の父といわれる Terzaghi (テルツァーギ,ンシー限界の用語や定義は,以下のようである2)。1926年)は,Atterberg の研究価値を認め,彼が提唱し◯液性限界 wL 液性限界試験によって求められる,た ス ウ ェ ー デ ン 語 の Fliessgrenze ( 塑 性 上 限 ),土が塑性状態から液状に移るときの含水比。試験Aurollgrenze(塑性下限)及び Plastizitatszahl(塑性の方法では,流動曲線(黄銅皿の落下回数の対数と度合い=塑性上・下限の差)を,それぞれ Liquid Limit含水比の関係)において落下回数 25 回に相当す(液性限界 wL , LL ), Plastic Limit (塑性限界 wp ,PL )並びに Plasticity Index (塑性指数 Ip , PI )と英る含水比と規定している。◯訳し,100種類の土の測定結果を示した1)。塑性限界 wp 塑性限界試験によって求められる,土が塑性状態から半固体状に移るときの含水比。さらに, Casagrande (キャサグランデ, 1932 年)は試験方法では,土のひもが直径 3 mm になった段Atterberg の液性限界試験方法(簡便法)をできるだけ階で,ひもが切れ切れになったときの含水比と規客観的な LL 値が得られるように,所定の黄銅皿,落下定している。装置及びゴム台からなる LL 測定器や溝切りを用いた機32◯塑性指数 Ip液性限界と塑性限界との差。地盤工学会誌,―() 技術手帳◯収縮限界 ws 収縮定数試験によって求められる,土の含水量をある量以下に減じてもその体積が減少しない状態の含水比。試験方法では,土の収縮曲線において所定の乾燥過程段階の二直線を延長した交点の含水比と規定している。なお,コンシステンシー限界を求めるための試験器具・方法の詳細については,誌面の都合上,文献 2 )に譲る。ちなみに,本試験結果に影響を及ぼす要因として,試料の調整,試験器具の状態や試験操作上の個人差などの他に,細粒土の特性(粒度組成,粘土鉱物の種類と含有量など)に起因するものがある。写真―.コンシステンシー限界と土の工学的性質拡張フォールコーン試験装置(文献 4)に一部加筆)ここでは, wL ~ Ip 関係で細粒土の土質分類を提示した Casagrande の“塑性図”を除く,近年よく土の工学準( JGS ) JGS 0142 「フォールコーンを用いた土の液的性質と関係づけられている主な指標の一つである“液性限界試験方法」として基準化された2)。さらに,2004性指数”や現行の液性限界試験(以下,キャサグランデ年には ``ISO/TS 1789212:2004: Determination of At-法と呼ぶ)に代わる推奨法として再び着目されているterberg limits'' において,「フォールコーン液性限界試“フォールコーン( Fall Cone )試験”(フォールコーン法ともいう)を取り上げる。験」が暫定的に適用する試みの国際規格(ISO)として発行され,この試験では 30 °80 g コーン又は 60 °60 g. 液性指数コーンのどちらを用いてもよいと規定している。また,コンシステンシー限界に関連した土の状態量である液同年 ``ISO/TS 178926:2004: Fall cone test'' では,「フ性指数 IL ( Liquidity Index, LI )は式( 1 )で表され,細ォールコーンを用いた土の非排水せん断強さを求めるた粒土の物理的及び工学的性質の重要な指標として,せんめの試験方法」も,上述と同様に TS(技術仕様書)と断強さなどの力学的性質の推定に利用されている2)~4)。して国際規格化された3),4)。wn-wp wn-wp=…………………………………(1)wL-wpIpIL=ここに,wn自然含水比若しくは現在の含水比()。先述したキャサグランデ法における根本的な問題(コンシステンシー限界の概念と当該試験方法との乖離)に対処すべく,同じ試験メカニズムによるフォールコーンIL は相対含水比とも呼ばれ,自然含水比における土を用いた土の液性・塑性両限界の同時測定法(拡張フの相対的な硬軟を表す指数である。wn=wp のとき IL=0,ォールコーン法と呼ぶ)が以前より提案され,研究レベwn=wL の場合では IL=1 となる(図―参照)。IL がゼルとしては着実に進歩しているようである3),4)。また,ロに近いほど土は安定しており,それが大きくなるほど中国ではこの LL ・ PL 同時測定法は既に規格化されて圧縮性は大きく,鋭敏である(練り返しによる強度低下いる4)。写真―に,筆者が開発した,電磁石式自動解の程度が大きい)ことを示す。また,近年この IL に代放・固定型拡張フォールコーン試験装置を示す。わる簡便な指標として,自然含水比を液性限界で除した正規化含水比 w(= wn / wL )が細粒分を含む土の液状化判定や軟弱地盤における建設機械のトラフィカビリティー(走行可能性)の判定に利用されている3)。. フォールコーン試験フォールコーン試験は 1916 年にスウェーデンで最初に考案され,所定の先端角と質量を有するコーンを試料の表面から自重により自由落下させ,その時のコーン貫入量と含水比の関係(貫入曲線という)から液性限界を求める方法である。この試験は英国,スウェーデン,ノルウェーなどのヨーロッパ諸国を中心に,ロシア(旧ソ連),中国,カナダ,オーストラリア,ニュージーランドなどで古くからキャサグランデ法に代わる推奨法として規格化されている。我が国でも遅ればせながら, 1997 年に地盤工学会基June, 2017参考文献1)Skempton, A. W. 地盤工学の歴史と発展土の性質の研究,1717~1927,日建設計 中瀬土質研究所 報告 特別号 1998,pp. 128~129,1998.2 ) 地盤工学会編第 5 章 液性限界・塑性限界試験,第 6章 収縮定数試験,地盤材料試験の方法と解説―二分冊の 1 ―,地盤工学会, pp. 137 ~ 152 , pp. 153 ~ 161 ,2009.3) 下辺 悟細粒土の工学的性質~既往の集積データからの視点と考察~,第57回地盤工学シンポジウム論文集,地盤工学会,pp. 11~18,2012.4) Shimobe, S. : Determination of Index Properties and Undrained Shear Strength of Soils Using the Fall ConeTest, Proceedings of the Seventh International Symposium on Lowland Technology (ISLT 2010), Institute ofLowland and Marine Research, Saga University, pp. 5159, 2010.(原稿受理2017.1.24)33
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