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出版

タイトル UNSW Australia をたずねて(寄稿)
著者 万代 俊之
出版 地盤工学会誌 Vol.65 No.5 No.712
ページ 34〜35 発行 2017/05/01 文書ID jk201707120017
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  • タイトル
  • UNSW Australia をたずねて(寄稿)
  • 著者
  • 万代 俊之
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.65 No.5 No.712
  • ページ
  • 34〜35
  • 発行
  • 2017/05/01
  • 文書ID
  • jk201707120017
  • 内容
  • UNSW Australia をたずねてStudying in UNSW Australia万代俊之(ばんだいとしゆき)学生編集委員(東京大学大学院)まれたのなら,留学を考えている人は取り敢えず顔を出. は じ め にすべきである。留学の縁はどこに転がっているのかは分本稿は私が 2016 年 9 月 29 日から 12 月 29 日までの約 3ヶ月間,オーストラリアのシドニーにある UNSW Australia (The University of New South Wales)の WaterResearch Laboratory1) (WRL)に留学した体験をもとに書いたものである。留学を予定している人や留学したいと考えている人の一助となれば幸いである。.留学のきっかけからない。. WRL (Water Research Laboratory)について留学先の WRL は UNSW Australia の School of Civiland Environmental Engineering に所属している研究室であり,海岸工学に関する研究グループと地下水に関する研究グループが併存している。 WRL は UNSW Aus-留学にはきっかけ,受け入れ先の教員との繋がりが必tralia の本キャンパス( Kensington Campus )から北に要である。代表的なものとして,指導教員からの紹介が20 km ほ ど 離 れ た Manly Vale Campus に あ る 。 WRL挙げられよう。しかし,私の場合は少し異なっていた。のそばにある Manly ダムの水を利用する大規模な水理私は所属大学院が主催する「博士課程進学促進プログラ実験(写真―)を行うことが特長である。また,ム」という,博士課程進学を希望している大学院生が著Manly ダムから南太平洋に流れ込む Manly 川の水質を名な研究者と交流することで自身の研究能力向上を目指調べるなど,研究所の近くで多くの野外試験を行っていすプログラムに参加しており,その活動を通じて留学先る。毎週月曜の午前には,WRL のメンバー全員(30人の指導教官となって頂いた Rau C. Gabriel 博士(写真程度)が集まり,研究の進捗状況やその週の予定を簡単―)と面識を得た。私が修士課程 1 年のとき,私のに報告する。また,毎週金曜日の昼食時にセミナーが行研究と類似した研究を行っていた Rau 博士を所属大学われ,担当の人は自由なテーマについて発表を行う。発に招待し,研究について講演を行って頂いた。その後,表テーマは,投稿論文に出す予定の研究や先行研究の紹Rau 博士の協力を得ながら論文執筆のための実験を行介,研究に便利なツールの紹介に至るまで幅広い。私自っていた修士課程 2 年の春に同プログラムから短期留身もこのセミナーで修士論文の研究について話す機会を学のための支援金をもらうことが決まったため, Rau与えて頂いた。博士のもとで論文を執筆することとなった。これから留この研究室で最も驚いたことは,教員の自由な勤務体学を考えている人に対して,私は面識のある教員のもと制である。ほとんどの人は午前 9 時ごろに研究室に来へ留学することを強く勧めたい。このご時世,メールやて,午後 5 時には帰宅する。午後 6 時を過ぎて研究室Skype 等で海外在住の研究者と連絡を取ることは容易に残っている人はほとんどいない。また,土日に研究室である。しかし実際に顔を合わせないと分からないことは多い。もし学会等で海外の研究者と交流する機会に恵写真―34Rau 博士(左)と筆者(右)写真―研究室内の水理実験設備の例地盤工学会誌,―() 寄稿に来る人は皆無である。金曜日の話題は専ら週末の予定であり,特に用事のない私は返答に苦労したものである。また,子供のいる教員は在宅で研究を行うなど,勤務体制は個人に委ねられている。これだけを聞くとオーストラリアの研究者はあまり研究をしていないと思われるかもしれないが,そういうわけでは決してない。非常に多くの論文を出しており,その生産性には目を見張るものがある。そのように限られた時間で多くの成果を出すことは,勤務時間は集中して仕事をこなし,決まった時間に帰るというメリハリの良い生活に起因しているのかもしれない。私自身,だらだらと研究してしまうことが多いので,見習わなければならない点は非常に多かった。写真―.研究について研究室主催のサーフィンの内容を推測することは困難を極める。パーティーなど私は「飽和多孔質体中の熱分散現象」というテーマにでお酒が入った状態ではなおさらである。そのような状ついて研究を行っている。熱分散現象とは,多孔質体の況でも対応可能な英語力というのは短期間で身につくは複雑な間隙構造に起因する間隙内の不均一な流速分布にずもなく,長期間の鍛錬が必要であると感じた。しかし,よる熱移動現象である。熱分散現象の理解は,近年導入悲観することない。留学して 1 ヶ月もすれば,英語がが進められている地中熱利用ヒートポンプの効率化・環話せない自分に自分も周囲の人も慣れるからである。境リスク評価において重要である。また,熱分散現象は英語を学習する上で効果的であるのは外国人の友人をRau 博士が研究している熱トレーサーを用いた地下水作ることである,とよく言われる。しかし,これを闇雲流速推定技術の観点からも重要である2)ため,Rauに実行することには賛同できない。というのも,実際に博士と共同で研究を行っている。現地の人から「日本人は英語を学ぶために外国人と友達留学先では主に,私がこれまでに得た実験データをもになろうとする」と苦情を受けたためである。また,英とにした投稿論文の執筆を行った。論文執筆の際に語の学習を目的に外国人と話したとしても会話は弾まなRau 博士から指導して頂いたことで重要だと感じたこいと思う。日本語であれば,会話をしながら共通点を探 少しずつでも良いので毎日とは以下の 2 点である。◯し,話題を膨らませることは可能であるが,拙い英語で論文を書くこと。毎日論文を書くことで論文を書く脳にはそうはいかない。そこで,私は趣味を通じて友人を作なっていく。この寄稿についても,毎日少しずつ書いてるということを勧めたい。インターネットを使用すれば, 論文のいればより良いものが書けたのかもしれない。◯同じ趣味を楽しむサークル等を探すことは,ある程度大ストーリーを大事にすること。特に,その研究をよく知きな都市であれば容易である。同じ趣味という共通の話らない人であっても読みやすいような序論の構成を指導題があるため,会話には困らないし,お互いに楽しく会して頂いた。そのような序論を書くためには,多くの論話ができる(写真―参照)。そうすれば自然と英語力文を正確に読む必要がある。特に英語で書かれた論文をは身につくと考えられる。留学を考えている人は海外で正確に読むことは難しい。実際,修士課程 1 年のときもできる趣味を覚えておくのは良いと思う。に読んだ論文を今読み返すと,当初の解釈が間違っていたと気づくことが非常多い。これは留学を通じて,研究.おわりにの理解が深まっただけでなく,英語力が向上したことで本稿では,私の留学経験について書かせて頂いた。留英語の読み間違いが少なくなったためであると感じた。学に際して,支援金を提供して下さった東京大学農学生命科学研究科主催の「博士進学促進プログラム」,お忙.英語という壁しい中手厚くご指導して下さった Rau 博士に心より感謝申し上げます。また,修士論文の提出 1 ヶ月前に帰留学を考えている人にとって最も気がかりであるのは国というスケジュールを容認して下さった東京大学大学言語(英語)に関するものであると思う。留学前,「 3院の西村拓教授,濱本昌一郎准教授に心より厚く御礼申ヶ月もあれば英語でそこそこ話せるようになるのではなし上げます。いか」と考えていた私の今現在の感想は,「そこそこ話せるでは全く足りない」というものである。留学前の私の英語力は褒められたものではなかったが,英語圏であるオーストラリアで生活する分に支障はなかった。日本とオーストラリアの日常の生活には大きな差はないため,生活に最低限必要な会話の内容は大体予想可能であるからである。しかし対人,特に複数人の娯楽のための会話May, 2017参考文献1)Water Research Laboratory ホームページ,入手先(参照2017.3.21)〈http://www.wrl.unsw.edu.au/〉2) Rau, G. C. et al.: Heat as a tracer to quantify water ‰owin nearsurface sediments. EarthScience Reviews, 129,pp. 4058, 2014.(原稿受理2017.1.16)35
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