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出版

タイトル 工業用内視鏡による切羽前方地山調査法の開発(報告(投稿))
著者 関根 一郎・法橋 亮・小林 由委・石垣 和明・平田 康夫
出版 地盤工学会誌 Vol.65 No.5 No.712
ページ 20〜23 発行 2017/05/01 文書ID jk201707120012
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  • タイトル
  • 工業用内視鏡による切羽前方地山調査法の開発(報告(投稿))
  • 著者
  • 関根 一郎・法橋 亮・小林 由委・石垣 和明・平田 康夫
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.65 No.5 No.712
  • ページ
  • 20〜23
  • 発行
  • 2017/05/01
  • 文書ID
  • jk201707120012
  • 内容
  • 報告工業用内視鏡による切羽前方地山調査法の開発Development of Geological Survey Method Ahead of Tunnel Face using Industrial Endoscope関根一郎(せきねいちろう)株 アーバンルネッサンス部戸田建設小林由委(こばやし株 土木技術営業部戸田建設法部長よしつぐ)田亮(ほうはしりょう)株 土木工事技術部戸田建設石技術課長平橋垣和明(いしがき株 名古屋支店戸田建設康夫(ひらた株 開発本部オリンパスかずあき)技術指導役やすお)課長代理等を調べる探り削孔や,削孔時の穿孔エネルギーや穿孔. は じ め に速度等を記録する削孔検層システムがしばしば使用され山岳トンネルでは,切羽の前方の地質状況を把握するる。 DRi スコープは,任意の削孔深度においてロッドことが,施工時の安全性の向上,経済的なトンネル掘削の切断,継ぎ足し時に,写真―のようにロッド内の削に直結する。掘削に伴う急激な地質状態の変化は,天端孔用送水孔( q10 mm 程度)に工業用内視鏡( q8 mmの崩落,異常出水などトラブルの原因となるため,極力程度)を挿入し,ビットの先端の送水孔から孔内に突出事前に把握する必要がある。そのため,先進ボーリングさせて孔壁を直接観察することができる技術である。観や,削孔検層システムが適用されるが,先進ボーリング察結果のモニター状況を写真―に示す。観察された画は作業に時間がかかり,削孔検層システムは,間接的な像は,動画又は静止画として保存する(写真―)。観察方法は,削孔検層システムで穿孔エネルギー値に情報からの推定になるなど課題があった。工業用内視鏡による切羽前方地山調査法(DRi スコー変化があった箇所をピンポイントで観察する方法,ボープ)は,切羽に通常配備されている施工機械で実施可能リングの代わりとしてロッド長毎に連続した動画を撮影な探り削孔や削孔検層システムの送水孔に工業用内視鏡する方法などがあり,用途によって使い分けることが可を挿入し,切羽前方の地質を直接観察する技術で,送水孔をケーシング代わりに利用するため,地山の劣悪な場合でも,切羽の前方地山の地質状況を動画又は静止画で得ることができる。以下に本調査方法の概要と特徴,適用例を述べる。.工業用内視鏡による切羽前方地山調査法(DRi スコープ)の概要DRi スコープの概念図を図―に示す。トンネル切羽では,発破削孔に使用される油圧ジャンボを使用して,切羽から前方へロッドを継ぎ足しながら削孔し湧水状況図―20写真―ロッドへの工業用内視鏡の挿入DRi スコープの概念図地盤工学会誌,―() 報写真―孔内観察結果のモニター状況写真―写真―告観察された孔内画像(熱水変質した花崗岩)DRi スコープのモニター画面の例写真―挿入補助装置能である。. DRi スコープの特徴DRi スコープは,次の特徴がある。◯DRi スコープの長さは 30 m あり,通常,削孔検層システムが適用される削孔長は 30 m 程なので,ほぼそれに対応した距離の削孔壁を観察できる。◯ビットは送水孔 2 孔のうち,1 孔を相対的に大きくして工業用内視鏡が通過し易くした専用ビットを用意した。これにより短時間で工業用内視鏡をビット先端部から突出し,ビット前方の岩盤を効率的に写真―観察できる。◯防水機能を強化した距離カウンターが付属しており,孔内への挿入長をモニター画面に表示させることができる(写真―)。◯内視鏡の先端部分の重力センサにより上下方向をモニター画面に表示できる(写真―)。◯◯送水ロッド内のグリース等により,内視鏡の挿入.適用ステレオ撮影による寸法測定機能例. 地質変化の把握例本事例は,玄武岩優勢の混在岩から閃緑岩に変化した部位を工業用内視鏡によって観察し,前方の地質を明らかにしたものである。抵抗が増大するとき,写真―に示す装置でロッド本事例ではトンネルが既存の水路トンネルと近接・交の送水孔内の内視鏡の周辺に送水又は送気すること差するため,その前後で長さ 15 m の削孔検層を行うとにより内視鏡の挿入を円滑にすることができる。ともに,DRi スコープを適用した。ステレオ撮影機能により,割れ目の開口幅など任図―は削孔検層システムによって得られた穿孔エネ意の 2 点間の距離を測定可能である(写真―)。ルギーの変化を示しており,10.74 m で明瞭に穿孔エネこれらの機能により,削孔検層システムのロッドの送ルギーが変化していることが分かった。この変化の原因水孔内に内視鏡を挿入し,ビットの前方の岩盤を可視化する技術を実用化した。を調べるために,工業用内視鏡による孔内観察を行った。その結果,孔口から10.74 m までは泥質岩玄武岩混在岩で,写真―に示すように孔壁は粗く所々で孔壁の肌落ちが認められた。岩の白色部分は玄武岩で,通常は暗灰May, 201721 報告色のものが炭酸塩化作用により白色に変質交代している。孔不能となった時点で,ビット前方の地山を工業用内視10.74 m から 15.47 m までは閃緑岩で(写真―)比較鏡により観察し,地山状況を確認した事例である。的細粒で孔壁は安定している。なお,これらの判読にはアルコース基質の崖錐堆積物を掘進する際,切羽から事前の地表地質踏査,削孔検層実施時に削孔水から回収削孔検層を実施した。孔内は逸水が激しく 6 m 削孔ししたくり粉の情報も参考にして判断している。た時点で孔口に削孔水が戻らず,削孔不能になった。そ図―は,掘削時に切羽で観察された地質縦断図であの時点で工業用内視鏡によるビット前方の地山観察を行る。貫入した閃緑岩が左側から天端付近に出現し,掘削い,崖錐堆積物であることを確認し,静止画(写真―)に従って右側の踏前部に連続していた。及び動画を撮影した。通常は直接観察・把握できない,図―は工業用内視鏡によって得られた切羽前方調査崩壊性の崖錐堆積物を,ロッドをケーシング代わりとす結果をまとめたもので,閃緑岩の岩脈の位置と岩質と割れ目の状況を捉えることができた。. 崖錐堆積物の把握本事例は,トンネル切羽で削孔検層時に逸水により削写真―図―閃緑岩の画像削孔検層システムによって得られた穿孔エネルギーの変化写真―泥質岩玄武岩混在岩の画像図―22図―掘削後,確認された地質分布工業用内視鏡によって得られた切羽前方調査結果地盤工学会誌,―() 報告写真― 砂岩層,泥岩層境界の画像写真―崖錐性堆積物の画像とは,安全性の向上,効率的なトンネル掘削のために重る本工法により撮影した動画により,崖錐堆積物の状況要である。本方法では削孔検層システムのロッドに工業を確認できた。用内視鏡を挿入することにより,今まで削孔時データや. 地層境界の方向の把握くり粉から推定するしかなかったビット先端の地山を直本事例は,砂岩層,泥岩層の地層境界の方向を把握し,接観察可能にした。切羽の変化を予測した事例である。当該地の地質は,新第三紀のグリーンタフ層からなり,本方法を適用した結果,削孔エネルギーの変化点前後の地質の違いを明らかにすることができたほか,崖錐堆海底地すべり(スランピング)による異常構造・堆積物積物の分布の把握,掘進に伴う地層変化の確認などに有を伴い地質が急変することが特徴である。スランプ層の効に使用することができた。今後,適用事例を充実させ,出現をいち早く特定するため,切羽前方に向けて DRi切羽前方地山の正確な把握に寄与したいと考える。スコープを実施した。工業用内視鏡による孔内観察画像を写真―に示す。今回の孔壁画像よりスランプ層出現の有無は特定できなかったが,砂岩・泥岩の層境を確認できた。写真の右下には天地を示すインジケーターがあり,工業用内視鏡先端の向きを把握することができる。これにより,砂岩と泥岩の層境が,トンネル掘進に伴って下がっていくことが確認できた。当地の一般的な地質構造と差異がないことから,正常堆積物と判断し,何事もなく当該区間のトンネル掘削を終えた。. まとめ山岳トンネルの切羽前方の地質を精度よく把握するこMay, 2017参考文献1)関根一郎・小林由委・法橋 亮・尾花敬治・石垣和明・平田康夫工業用内視鏡を利用した切羽前方可視化技術の 開 発 , 土 木 学 会 第 70 回 年 次 学 術 講 演 会 ,  131,2015.2) 関根一郎・小林由委・法橋 亮・石垣和明・平田康夫工業用内視鏡で切羽前方の地山状況を把握する ―DRiスコープの開発―,建設機械,Vol. 51, No. 7, pp. 35~38, 2015.3) 法橋 亮・関根一郎・小林由委・石垣和明工業用内視鏡を利用した新たな切羽前方地山調査手法の開発,第44回岩盤力学に関するシンポジウム,講演番号21, 2016.(原稿受理2016.10.5)23
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