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出版

タイトル 望月寒川放水路トンネル工事の紹介(寄稿)
著者 中野渡 博道
出版 地盤工学会誌 Vol.65 No.2 No.709
ページ 31〜32 発行 2017/02/01 文書ID jk201707090016
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  • タイトル
  • 望月寒川放水路トンネル工事の紹介(寄稿)
  • 著者
  • 中野渡 博道
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.65 No.2 No.709
  • ページ
  • 31〜32
  • 発行
  • 2017/02/01
  • 文書ID
  • jk201707090016
  • 内容
  • 望月寒川放水路トンネル工事の紹介Motsukisamu River ‰ood control tunnel construction by shield tunneling method中野渡博道(なかのわたりひろみち)学生編集委員(北海道大学大学院)水の取入口となる地下空間の躯体を構築する工事が行わ. は じ め にれており,吐口部ではシールドトンネルに支障となる落望月寒川は北海道札幌市豊平区の市街地を流れる一級差工の撤去工事が完了し,発進立坑構築作業が行われて河川である。普段は穏やかな流れの川に見えるが,大雨いる。シールドマシンによる掘削の発進設備は,一般にが降ると流量が大きくなり流下能力を超え,近年では平はどちらに設定しても良いが,本現場では呑口部が住宅成 12 年, 14 年, 26 年に浸水被害が発生している。周辺街にあることなどから,周辺環境や別工事との工期等をには住宅地が広がり,河道拡幅による河川改修は困難な考慮し,吐口部から発進することとしている。工期は平状況にある。このため大雨時にこの望月寒川上流部での成 26 年 12 月 23 日から 59 ヶ月間で,呑口部と吐口部の高流量を減らし浸水被害を低減することを目的として,河低差は約 4.2 m である。トンネル内径は 4.8 m で設計さ川改修工事が行われることとなった。れている。札幌市では望月寒川流域貯留浸透事業として公園や学. シールドトンネル校に貯留施設の整備を進めてきた1)が,北海道ではこれシールド工法は,シールドと呼ばれる鋼殻の内側で切と併せて望月寒川広域河川改修事業を行い,放水路トン羽の安定を保ちながら安全に掘削を行い,一次覆工であネルを整備することで治水を図っている。放水路トンネるセグメントをその後部で組み立てて,これに反力をとルの施工現場を見学する機会を頂くことが出来たため,りながらジャッキでシールドを推進し,トンネルを構築本稿はその工事について紹介する。する工法である。その後,シールドトンネル内部の平滑化の目的で二次覆工が行われる。シールド工法は大別す. 工 事 概 要ると 2 種類あり,開放型シールドと密閉型シールドであ本工事は望月寒川上流部で見込まれる増水時流量 50m3 / sのうち 45m3 / sる。前者は地山の強度に期待し地山の自立性を保ちながを,放水路トンネルを通じ精進川ら掘削を行う。後者はシールド隔壁全面に泥水や掘削土放水路を経て豊平川に放流し,下流域の氾濫や浸水被害砂を満たし加圧することで,切羽断面で掘削により解放を軽減するものである。放水路トンネルは札幌市豊平区される水圧や土圧を押え込み,安定を保つものである2)。西岡を呑口部とし,同区平岸を吐口部としてシールドマ. 泥土圧シールド工法シンによって掘削し建設するものであり,全長は 1 893本工事は市街地の地下にトンネルを構築するためシーm となる。掘削対象となる地盤は一級河川である豊平ルド工法により掘削を進めるが, 2 種類のうち密閉型川の扇状地であり,その堆積物が厚く存在する。吐口部シールドを採用しており,その中でも泥土圧シールド工から,完新世時代の砂礫層と,更新世時代の砂質シルト,法により掘削をする。泥土圧シールド工法は,掘削土砂鮮新世時代の軟岩層が主な構成となる複合土層が続く。に添加材を加えて塑性流動化したものをカッターチャンその後は呑口部まで,更新世時代の砂礫層が約 1.1 kmバー内に充満させることで泥土圧を発生させ,チャン続く(図―)。呑口部は沈砂池部,導水路部などの流バー内の圧力を制御して切羽の安定を図る工法である。図―February, 2017放水路トンネル施工箇所とそのルートに沿った掘削対象となる想定地質(地表から深さ 8~10 m 程度)31 寄稿掘削土砂はスクリューコンベアーを通りベルトコンベアー,ずりトロッコで立坑まで運搬され,坑外の土砂ピットに貯留後,バックホウでダンプトラックに積み込み運搬される。を架けるなど細心の注意がはらわれていた。.おわりに最後に本稿作成にあたり,北海道空知総合振興局の皆.の工事概要で述べた掘削対象の砂礫層には,直径様にはこのような治水の取り組みを紹介する機会や本誌800 mm 程度の大きな玉石が含まれていると想定されてへの掲載許可を頂き,また施工者の大成・岩田地崎・豊いる。このような地質に対し,施工の安全性,経済性等松吉工業特定建設工事企業体の皆様には現場見学の実施を考慮して泥土圧シールド工法が採用された。今回使用や資料の提供等,多大なるご協力を賜りました。ここにされるシールドマシンは,外径が5 390 mm であり,ス記して感謝の意を申し上げます。クリューコンベアーの直径を大きく設計してこのような大きな玉石も取り込めるように設計している(図―)。ただし,これを上回る玉石等が出現すればマシンでの掘削が不可能となり,切羽断面での除去作業が行われることとなる。.周辺地域への配慮参考文献1)札幌市ウェブサイト 望月寒川流域貯留浸透事業入手先〈 http: // www.city.sapporo.jp / kensetsu / kasen /menu03_03_03_04.html〉(参照2016年 9 月29日)2) 地盤工学会地盤工学・実務シリーズ 3 シールド工法の 調 査 ・ 設 計 か ら 施 工 ま で , pp. 35 ~ 38, 95 ~ 106,1997.(原稿受理今回見学した呑口部周辺は住宅街であるため,周辺の2016.10.14)環境に気を配って工事が進められている。沈砂池部や落差工部等の躯体の施工現場(写真―及び)ではその周囲を囲むように防音壁があり,騒音を外部に漏らさないよう,若しくは低減するような工夫がなされている。その防音壁にはここでどのようなものが造られているかを説明するイラストが書かれており,住民の理解を得られやすいような工夫がされている(図―)。現場には大型のダンプトラックや重機も頻繁に出入りするため,警備員を多数配置し住民の安全を図っていることも伺えた。更には交通を阻害し日常生活を乱さないように仮橋図―シールドの概要図(工事紹介パンフレットより)図―32写真―写真―呑口部における沈砂部の地上から見た施工状況呑口部における沈砂部地下内部の施工状況呑口部躯体施工現場を囲む防音壁(左)と躯体の完成予想イラスト(右)地盤工学会誌,―()
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