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出版

タイトル 風化現象と変形挙動の記述(寄稿)
著者 菊本 統
出版 地盤工学会誌 Vol.65 No.2 No.709
ページ 26〜27 発行 2017/02/01 文書ID jk201707090013
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  • タイトル
  • 風化現象と変形挙動の記述(寄稿)
  • 著者
  • 菊本 統
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.65 No.2 No.709
  • ページ
  • 26〜27
  • 発行
  • 2017/02/01
  • 文書ID
  • jk201707090013
  • 内容
  • 風化現象と変形挙動の記述Description of Weathering Phenomena and Deformation Behavior菊本統(きくもと横浜国立大学まもる)准教授. は じ め に風化は地表近くで岩石が風雨や太陽光にさらされたり,生物と接触したりして変質する現象である。一般に風化は長い年月をかけて非常にゆっくり進行するため,地質学や地形学ではよく扱われているものの,地盤工学や土質力学の教科書に登場する機会は少ない。しかし,切土斜面では掘削により法面が露出した瞬間から新たに風化写真―神戸泥岩層(古第三紀)の切土斜面(a)掘削直後は岩塊を確認できるが,(b)一回の降雨を経た数日後には完全に細粒化していた。(筆者撮が始まって劣化が進行する(写真―)ため,比較的短い時間スパンで斜面に変状を来す事例が報告されている。影)また,掘削により発生した岩砕を盛土材等に利用する場合には,岩砕の新鮮な表面が外気や水に接触することで堆積軟岩は間隙が大きく水が移動しやすいため風化は進急速に風化が進み,沈下等を引き起こした事例も報告さみやすく,割れ目の挙動が支配的な硬岩に比べてその力れている。これらのケースでは風化に伴う地盤の変形や学特性は風化の影響を受けやすい。環境条件としては気破壊の予測が地盤工学的にも重要な課題になる。温と降水量の影響が強く,低温の地域では物理的風化これまで風化現象に関しては,主に風化のメカニズム(特に凍結風化),高温で降水量が多い地域では化学的風(発生要因や進行速度)に関する研究と,風化前後での化が卓越する傾向にある1)。ただし,両者は必ずしも別力学特性の変化に関する研究が実施されてきた。しかし,々に起こる現象ではなく,同時に進行しながら互いに影風化現象は岩石の力学特性の刻々の変化を伴うので,風響を及ぼしあうことに注意が必要である。例えば,物理化前後の力学特性を調べてそれぞれ別個の材料パラメー的風化により細粒化が進むと間隙水との接触面積が増えタを設定するだけでは,風化に伴う地盤の変形を評価すて化学的風化が促進されたり,化学的風化により岩石がるのは難しい。ここでは風化を簡単に説明するとともに,劣化すると物理的風化を生じやすくなったりする。その一つであるスレーキング現象を考慮した構成則の開発事例を紹介する。.様々な風化現象.スレーキングはなぜ発生し,なにをもたらすか日本には堆積した泥や砂が固結した泥岩や砂岩が広く風化には様々な発生過程があるが,物理的風化と化学分布している。また,年間降水量は世界平均の約 2 倍的風化に大別できる。前者は岩石の力学的な細片化で,であり,表層地盤は繰り返して乾湿履歴にさらされやす 乾湿風化(粘土鉱物の吸水膨張と乾燥収縮)◯い環境下にある。そのため,特に第三紀から第四紀の泥 凍結風化(凍結により間隙水が約 9体積膨張)◯岩や凝灰岩,頁岩の切土斜面やその岩砕を用いた盛土で 塩類風化(塩類の結晶成長圧)◯乾湿繰返しに伴う風化現象に起因する変状の報告が多い。 熱風化(岩石自体の熱膨張と収縮)◯ 応力変化による風化(氷河移動によるせん断・除荷,◯乾燥と湿潤により岩石が急速に細粒化する風化現象はスレーキングと呼ばれる。その発生要因には諸説あるが,上部地盤の侵食による除荷,植物根の侵入等)膨潤性の粘土鉱物であるスメクタイトの膨潤と乾燥収縮がある。打込み杭先端での顕著な応力変化による人為的 )の指摘が多い2)。一方,間隙空気の圧縮にの影響(◯ に加えてよいと筆者は考えな破砕も力学現象としては◯ )3) も指摘されているが,伴う引張の影響(広義には◯る。一方,後者は化学組成の変化を伴う現象で,試験結果に基づく反例4)も示されている。また,黄鉄鉱 水との接触による風化(塩類や方解石の溶解,加水◯分解,炭酸塩化,水和,黄鉄鉱の酸化,還元) 紫外線や微生物の分解作用による風化◯などがある。卓越する風化の種類は,主に岩質と環境条件で決まる。26 )の影響の指摘5)もある。このようにスレーの酸化(◯キングのメカニズムは必ずしも明らかでないが,乾湿繰返しに伴う堆積岩の風化の進行速度や発生形態は多様(写真―)で,乾湿繰返しも複数の物理・化学現象が同時に進行すると考えられるため,多者択一に発生要因地盤工学会誌,―() 寄写真―稿泥岩の多様なスレーキング特性6) ( a )神戸泥岩は一回の湿潤で完全に泥濘化する一方,(b)高崎泥岩は徐々に層状に細粒化し,(c)秋田泥岩は殻が剥けるように表面が剥離した図―掛川泥岩の一次元圧縮条件下での乾湿繰返しに伴う圧縮挙動と状態変数として粒度指標 IG を用いた限界状態モデルによる解析の比較6),9)を決めるのではなく,岩質や水質といった条件ごとに卓越する発生要因を解明・分類することが重要である。スレーキングにより岩石の風化が進むとピーク強度がここではスレーキングを一例として説明したが,粒度特低下して切土斜面の崩壊や地すべりの要因になることが性の発展則をさらに拡張することで他の物理・化学現象ある。また,スレーキングにより岩砕が細片化すると均もある程度,記述できるのではと考えている。今後も地等係数が増加するように粒度が変化して,最大・最小間質学や地形学といった関連分野の研究動向に着目しつつ,隙比は減少して圧縮性が増す。このため圧縮応力下でス構成則の研究開発を続けていきたい。レーキングは顕著な圧縮を引き起こし(図―)6) ,岩砕盛土の不同沈下等の原因となる。また,透水性に関して,インタクトな岩石が風化する際には割れ目が卓越し参1)て透水性は増加するが,岩砕が細粒化する場合には,比表面積の増加や細粒分による間隙の充填効果により透水性は低下し,保水性は高まる傾向にある。.2)スレーキングをどのように記述するか3)地盤材料の構成則は様々な観点で研究開発が続けられているが,構造特性の消失7) や粒子破砕8) など材料特性4)の変化を表現する方法の開発も進められている。岩砕のスレーキングは発生要因こそ異なるものの,細粒化して5)圧縮性が増大するという点で粒子破砕によく似ている。これに対して,6)粒度特性を粒度のスカラー指標 IG に単純化し,粒子破砕による粒度変化を IG の発展則で表すとともに,7)粒度指標 IG の増加(細粒化)を,最大・最小間隙比と同様の参照間隙比の低下に関係付けることで粒子破砕を考慮した構成則8)をベースとして,乾湿による細粒化8)も考慮できるように粒度指標 IG の発展則を拡張したモデルでは,図―に示したような乾湿繰返しに伴う細粒化と顕著な圧縮挙動をよく再現できることが分かっている9)。9)考文献Peltier, L. C.: The geographic cycle in periglacial regionsas it is related to climatic geomorphology, Annals Assoc.American Geographers, Vol. 40, No. 3, pp. 214236,1950.例えば,Matsukura, Y. and Yatsu, E.: Wetdry slakingof tertiary shale and tuŠ, Trans. Japan GeomorphologicalUnion 3, pp. 2539, 1982.Terzaghi, K. and Peck, R. B.: Soil mech. in eng. practices, John Wiley & Sons, pp. 146147, 1967.Nakano, R.: On weathering and change of properties oftertiary mudstone related to landslide, Soils and Foundations, Vol. 7, No. 1, pp. 114, 1967千木良雅弘・大山隆弘堆積性軟岩の風化過程の工学的重要性,電力土木,Vol. 241, pp. 1~6, 1992.Kikumoto, M., Putra, A. D. and Fukuda, T.: Slaking anddeformation behavior, G áeotechnique, Vol. 66 No. 9, pp.771785, 2016.Rouainia, M. and Muir Wood, D.: A kinematic hardeningconstitutive model for natural clays with loss of structure, G áeotechnique , Vol. 50, No. 2, pp. 153164, 2000.Kikumoto, M., Muir Wood, D. & Russell, A.: Particlecrushing and deformation behaviour, Soils and Foundations, Vol. 50, No. 4, pp. 547563, 2010.福田拓海・菊本 統・松本亜里沙・京川裕之スレーキング現象と変形挙動の構成モデリング,第59回地盤工学シンポジウム論文集,pp. 599~606, 2014.(原稿受理2016.11.18). お わ り に地盤材料の風化や侵食には粒度変化を伴う現象が多い。February, 201727
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