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タイトル トンネル前方探査の概要及び探査事例(<特集>地下を見る・観る・診る−物理探査技術の最新動向)
著者 西 琢郎・若林 成樹
出版 地盤工学会誌 Vol.65 No.1 No.708
ページ 38〜41 発行 2017/01/01 文書ID jk201707080018
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  • タイトル
  • トンネル前方探査の概要及び探査事例(<特集>地下を見る・観る・診る−物理探査技術の最新動向)
  • 著者
  • 西 琢郎・若林 成樹
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.65 No.1 No.708
  • ページ
  • 38〜41
  • 発行
  • 2017/01/01
  • 文書ID
  • jk201707080018
  • 内容
  • 報告トンネル前方探査の概要及び探査事例Overview and a Case Study of the Exploration Ahead of Tunnel Face西 琢郎(にし株 技術研究所清水建設たくろう)グループ長. は じ め に若林成樹(わかばやし株 技術研究所清水建設なるき)主任研究員. 半直接法先進ボーリングによる前方探査では,できるだけ調査トンネルを施工するうえで,計画線上の地山状況を事工程を短くしてトンネル本体の施工への支障を小さくす前に把握することは,突発事象への対処を減らし工事のるため,削孔速度が速いロータリーパーカッション方式安全性や工程を確保するための重要課題である。通常は,が採用されることが多い。この方式では削孔用ロッドにトンネル施工前に地表から物理探査やボーリングを行っ回転・打撃・押し付け等の油圧が掛けられる。この油圧て地山状況の調査確認が行われるが,地表からの調査に値の変化を時刻と共に記録し,時間当たりの削孔長(ノは様々な制約があり,これだけで状況を十分に知ることミ下がり)や打撃回数等と組み合わせて岩盤単位体積当は困難なことが多い。そこで,トンネル施工中にも切羽たりの削孔エネルギー値を算出する。これを削孔中モニ近傍から前方の地山状況を知るための探査・調査(ここタリングするものが削孔検層と呼ばれる方法である。削では総称してトンネル前方探査,ないし前方探査と呼孔検層は,ボーリングマシンだけでなく,通常の施工機ぶ)が行われる。械であるドリルジャンボでも実施することが可能である近年,リニア中央新幹線をはじめとする大規模山岳トので,前方探査手法として広く定着してきている。最近ンネル工事の案件が増えており,これまで主にコンサルでは,削孔エネルギー値と地山等級との関係の整理1)や,タント会社が担ってきた事前の探査や調査に加え,施工複数の孔での結果を空間的に補間し物性の三次元分布を会社でも各種の前方探査手法を開発・実施するようにな推定する2)ことも行われるようになり,探査法としてのってきた。上述のとおり,前方探査はトンネル施工とほ適用が広がりつつある。ぼ同時に行うことが要件となるので,そこではなるべく一方,ボーリング孔を用いて岩盤の弾性波速度を求め掘削作業の妨げにならない方法が求められる。また,掘る方法は速度検層とよばれる。前方探査においては,先削作業等の進捗に合わせて繰り返し探査を行っていくこ進ボーリングに付随して行われることになる。速度検層とがキーとなる。には孔外発振/孔内受振のダウンホール式,孔内発振/孔本稿では,トンネル前方探査についての最近の技術を外受振のアップホール式,孔内発振/孔内受振のサスペ紹介し,併せて筆者らが取り組んでいるトンネル掘削用ンション式があるが,前方探査ではダウンホール式が用の機械が発する振動を利用した前方探査方法について概いられることが多いようである例えば 3) 。しかし,先進説し,今後の課題等について述べる。ボーリングが長尺になると孔外での人力による起振では.最近のトンネル前方探査手法振動エネルギーが足りないことも起こりうる。そこで,アップホール式の一種であり石油掘削技術で用いられてトンネル前方探査の方法には,大別して先進ボーリンいる掘削同時検層( Seismic While Drilling )を応用しグによって切羽前方の地山状況を直接的に確認する方法た方法4)も提案されている。これは長尺先進ボーリングと,物理探査によって間接的に確認する方法がある。先などで用いられるダウンザホール式ボーリングマシンが進ボーリングは,言うまでもなく切羽近傍からトンネル発する振動をボーリング孔口元付近で受振するもので,前方に向けて水平あるいは若干斜めにボーリングを行っ振動源は掘削ロッドの先端部分にある。掘削と共に振源て地山地質を確認するものであるが,ボーリング削孔時は前方に移動し,受振点間との距離が伸びていくので,の各種機械データを利用して地山状況を推定したり,掘所定の区間の初動到達時刻の差分を取ることにより弾性削後の孔に探査用機器を設置して地山状況を探査するこ波速度の分布を得ることができる。先進ボーリングによとも行われる。ここでは,先進ボーリング自体の説明はって前方地山の確認や水抜きを行いつつ地山弾性波分布省略するが,先進孔を利用した探査については「半直接も推定するという,調査工程全体の合理化が企図された法」として内容を概説することとする。また最近では,トンネル前方探査ならではの探査手法と言えよう。坑内(あるいは先進ボーリング孔内)の微小な変位の計. 間接法測によって前方地質の状況を予測する方法も実施されてトンネル前方探査における間接的手法=物理探査手法いる。この方法をその他として分類する。以上の全体的としては,弾性波探査が最も普及している。弾性波探査な分類を表―にまとめた。では直接波及び屈折波の初動走時から地山弾性波速度分38地盤工学会誌,―() 報表―告トンネル前方探査で用いられる手法布を求める屈折法と,反射波の走時及び波の到来方向から地山状況の変化点を推定する反射法がある。前方探査として実施される屈折法は,起振点を主に坑内,受振点を未施工部の上の地表におき,トンネル掘削用の発破を振動源としてトモグラフィー解析により速度分布を求めるものとなる5)。一方,前方探査としての反射法は,屈折法よりも早くから開発・適用されてきた6)。探査方法としては,トンることによって,地質の急変個所への接近が予測される。.ブレーカー振動を利用した前方探査の概要と探査事例ここでは,トンネル前方探査の事例として,掘削機械を利用した探査法について測定概要と探査結果例10) を報告する。. 測定原理と特徴ネル内で起振された弾性波が,地山内の音響インピーダ本手法は,反射法弾性波探査を応用したもので,弾性ンスの変化点で反射し戻ってくるものを坑壁や底盤に設波の振動源として,トンネル掘削では普通に使用される置した受振器で計測し,到達走時と波の到来方向から変油圧ブレーカーを用いている。 NATM によるトンネル化点の位置を推定するものとなる。反射法で用いられる掘削工程のうち,ずり出し作業が終了すると,通常は坑弾性波の振源は,探査用の小規模発破例えば 7),トンネル壁や切羽面の凹凸をブレーカーによって整形する「こそ掘削用の発破例えば 8),後述する通常のトンネル掘削用機く作業」が行われる。この時にブレーカーが地山を打撃械など様々なものがある。振源として掘削用発破を用いする振動をトンネル壁面に設置したセンサーで受振するる方法は,振動エネルギーが大きいことから他の方法よことにより探査を行うものである(図―)。 したがっりもより遠方まで波が到達し探査範囲が広くとれる利点て,本手法では探査のための特殊な機材や工程をほとんがある。ただし,発破に伴う飛石から受振センサーを保ど必要とせず,日常作業の中で実施できるところが特徴護するため,受振点を切羽から数 10 m 離す必要が生じであり,切羽の進行に伴ってモニタリング的に繰返し実る場合がある。また,一つの切羽で測定は一回となるの施して,反射面位置の推定精度の向上を図ることも狙いで, S / N 比向上のためのスタッキングをする場合にはとされている10)。切羽を相当距離進める必要がある。とは言え,元々の振. 測定仕様動エネルギーが大きいことと掘削作業がそのまま探査に測定に使用する機材は,通常の反射法弾性波探査で用繋がる利点は,これらを十分補いうるものと考えられる。いられるものと同様で,受振センサーの設置数は作業をまた,電磁パルス波を照射しその反射によって探査するなるべく短時間で終わらせるため 5 点とし,切羽に最電磁探査法も行われている。も近い測定点ではトンネル軸に対して直交する 3 成分. その他の方法方向の振動を計測し,残り 4 測点では主にトンネル軸ボーリングや物理探査ではない前方探査の方法として,方向 1 成分の振動を計測する(図―)。写真―に測トンネル坑壁やフォアパイリング等の先受け工のパイプ定機材とトンネル壁面へのセンサー設置状況を示す。中に変位計を設置し,トンネル掘削に伴う微小な傾斜を従来の反射法弾性波探査では,受振センサーはトンネ計測するものがある9)。掘削に伴う微小傾斜は,地山のル近傍の緩み域を避けるため壁面から 1 m 以上の深さ硬軟のコントラストが大きい個所に切羽が接近するとよに設置される場合が多い。しかし,ここではロックボルり大きく変化する。微小傾斜を継時的にモニタリングすト(長さ 4~ 6 m )を受振スパイクとして利用しており,January, 201739 報告図―図―油圧ブレーカーを用いたトンネル前方探査の概念図計測配置図図―図―データ処理の流れ結果図化例(右上下は左を水平,鉛直面で切断したもの)写真―測定機材と受振器設置状況算を行う。そして, 3 成分のデータを用い X , Y , Z 方センサーをボルト頭部に簡易に脱着できる治具を作成し向の波の振幅値を図化したリサジュー図を作成して波のている(写真―)。これにより発受振間隔をほぼ一定到来方向を確認すると共に,芦田ほか11) による反射波に保ちつつ,進行に合わせて測定を繰り返していく。の到来方向に応じた振幅値の重みづけを行って反射波の. データ処理収録されたデータは,約 0.2秒分を 1 データセットと等走時楕円体を強調処理して図化する(図―)。. 探査事例して取り出し,図―に示す手順に沿って処理を行う。ここでは施工中の探査の事例として,磐越地方に位置まず,受発振点位置等の入力データの整理・ノイズ状する Y トンネルでの探査結果について述べる。 Y トン況の分析等の前処理を行った上で,バンドパス・利得補ネルの地山は,新第三紀中新世の石英安山岩質凝灰岩,正(AGC)・デコンボリューション等の数値フィルター変質凝灰岩,流紋岩質凝灰角礫岩等からなり,事前調査処理を行ってノイズを除去し受振波形を強調する。次に,による地山弾性波速度は1.9~2.8 km/s と全体に軟質で各受振センサーでの直接波初動の読み取り・直接波初動あった。ここでの探査は,硬質な安山岩質凝灰岩と軟質の到達時刻差と受振点間距離による地山弾性波速度の計な変質凝灰岩との変化点を予測することを目的に,切羽40地盤工学会誌,―() 報図―告探査結果図(受振点の高さにおける水平面で表示。矢印反射波振幅が大きい場所)の進行に併せて計測点を前進させつつ延べ 9 回行われた。では測定の妨げとなる多くのノイズも発生している。そのような環境下でも S/ N 比をより向上させることが今図―にトンネル距離程 STA.617+82~+88 m にお後の課題となろう。また,先進ボーリングや削孔検層なける探査結果を示す。まず距離程 STA.617+82 m では,どの手法と物理探査などの間接的手法は,それぞれ単独切羽の右斜め前方と,STA.618 +00 m~10 m 付近の前で完結するものではなく,両者が相互に補間することに方左側, STA.618 + 20 m 付近の前方からの反射波が存よってより確実度の高い探査結果が得られる。今後は先在すると推定された(図―左)。次いで切羽が 3 m 進進ボーリングを利用した探査・調査と物理探査などが一んだ STA.617 + 85 m では, STA.618 + 00 m 付近左の体となったトンネル前方探査の体系が確立されることが反射はあまり明瞭ではないが,切羽の右斜め前方と課題になると考えられる。STA.618+20 m 付近での反射が認められた(図―中)。更に STA.617+88 m での測定では,切羽の右斜め前方と再び STA.618 + 0~ 10 m 付近左側と STA.618+ 20 mでの反射が顕著である(図―右)。以上 3 回の測定結果から,全体として切羽前方右側と STA.618 + 0 ~ 10m 付近左側,及び STA.618+20 m 付近に反射点があると考えられた。また, STA.618 + 30 m 以遠では顕著な反射が認められなかった。実際の掘削では,硬質な黒色凝灰岩が STA.618 + 02m 付近から切羽右側に出現するようになり, STA.618+ 13 m で切羽面の約 50を占めるようになった。そしてこれ以降,硬質な黒色凝灰岩は不規則に出現しながらSTA.618 + 20 m で切羽面の約 70を占めるようになった 。 更 に , STA.618 + 32 m か ら は 徐 々 に 減 少 し ,STA.618 + 35 m 付近で切羽全面が軟質な凝灰角礫岩へと移り変わった。探査結果との対応としては,切羽右側の反射点は STA.618+02 m 付近から切羽右側に出現した硬質な黒色凝灰岩に, STA.618 + 0 ~ 20 m 付近の反射波はこの黒色凝灰岩が不規則に分布する状況に対応しているものと考えられる。また, STA.618 + 30 m 以降で反射波の減衰が大きくなった点は,軟質な凝灰角礫岩に全面的に移り変わったことに対応するとみられる。. お わ り にトンネル前方探査についての最近の技術を概説し,筆者らが行っている反射法弾性波探査結果の事例を報告した。これまで探査と施工は分離して行われることが通例であったが,近年は施工中若しくは極力施工を止めない参考文献1)桑原 徹・畑 浩二・赤澤正彦ノンコア削孔調査による山岳トンネル切羽前方探査精度の検討,トンネル工学報告集,Vol. 23, pp. 1~9, 2013.2) 山下雅之さく孔データを用いた切羽前方探査( DRISS ),トンネル切羽前方探査講演会講演資料, pp.74~80,2014.3) 稲生道裕ほか速度検層による切羽前方探査の適用例,土木学会第57回年次学術講演会,231,2002.4) 山上順民ほか穿孔振動を用いたトンネル切羽前方探査法の開発,トンネル工学報告集,Vol. 22, pp. 157~161,2012.5) 横田康宏・山本 拓・栗原啓丞三次元トンネルトモグラフィーシステムの開発,土木学会第 67 回年講,109,2012.6) Settle, G., Frey, P. and Amberg, R.: Prediction ahead ofthe tunnel face by seismic methods pilot project in Centovali Tunnel, Locarno, Switzerland.7 ) 稲崎富士・トンネル HSP 共同研究会切羽前方地山の亀裂評価と施工管理の技術(トンネル HSP),土と基礎,Vol. 45, No. 5, pp. 13~16, 1997.8) 中谷匡志ほかトンネル掘削発破で発生する弾性波を用いた地山評価手法と切羽前方探査の検討,土木学会論文集 F1, Vol. 72, No. 2, pp. 53~66, 2016.9) 谷 卓也・工藤直矢・青木智幸坑内天端傾斜計測による切羽前方地山評価システム,大成建設技術センター報,No. 46, pp. 271~272, 2013.10) 西 琢郎・若林成樹トンネル掘削振動を利用した前方探査手法の研究開発,応用地質,Vol. 56, No. 6, pp. 343~349, 2016.11) 芦田 譲・松岡俊文・楠見晴重弾性波 3 成分受振によるトンネル切羽前方の高精度イメージング,土木学会論文集,No. 680/55, pp. 123~129, 2001.(原稿受理2016.10.7)で探査も行うことが前提となりつつある。しかし,そこJanuary, 201741
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