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タイトル 同一地域メッシュ内における高密度常時微動計測~徳島県三好市街地を例として~(<特集>地下を見る・観る・診る−物理探査技術の最新動向)
著者 大川 雄太郎・秦 吉弥・三神 厚・湊 文博・山内 政輝・常田 賢一
出版 地盤工学会誌 Vol.65 No.1 No.708
ページ 34〜37 発行 2017/01/01 文書ID jk201707080017
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  • タイトル
  • 同一地域メッシュ内における高密度常時微動計測~徳島県三好市街地を例として~(<特集>地下を見る・観る・診る−物理探査技術の最新動向)
  • 著者
  • 大川 雄太郎・秦 吉弥・三神 厚・湊 文博・山内 政輝・常田 賢一
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.65 No.1 No.708
  • ページ
  • 34〜37
  • 発行
  • 2017/01/01
  • 文書ID
  • jk201707080017
  • 内容
  • 報告同一地域メッシュ内における高密度常時微動計測~徳島県三好市街地を例として~Microtremor Measurement with High Dense Spatial Locationin a Same Grid Square, Miyoshi City centre, Tokushima Prefecture, Japan大川雄太郎(おおかわ大阪大学三神内教授政大阪大学あつし)工学部土木工学科輝(やまうち工学部秦学生厚(みかみ東海大学山工学部ゆうたろう)まさき)弥(はた助教大学院工学研究科文博(みなと大阪大学湊大阪大学常学生. は じ め に吉田大学院工学研究科賢大阪大学教授よしや)ふみひろ)博士課程前期一(ときだけんいち)大学院工学研究科く異なる事例が報告4)されていること,観測地震動の違いが当該地点間の地盤震動特性(サイト増幅特性)の差近年,内閣府による地震・津波に関する各種検討会1)異に主に起因5)していること,そのサイト増幅特性の差や国立研究開発法人防災科学技術研究所による地震ハ異が地震被災に大きな影響6),7)を及ぼすことなどを勘案ザードステーション(JSHIS)2)などでは,対象とするすると,地域メッシュに依存しない対象とする地点のサ大規模地震の震源断層(例えば,図―参照)を特定しイト増幅特性を考慮した地震動の評価8)は,非常に重要て地震動を評価する手法が採用されている。その強震動である。の評価では,一般的に,対象地点の地震動の特性が,震サイト増幅特性を評価するためには地盤調査を実施す源特性・伝播経路特性・サイト増幅特性の三つの要素かる必要があり,破壊調査と非破壊調査に大別できる。破らなると考える。この三つの要素の中で,サイト増幅特壊調査の一つとして,地震基盤(せん断波速度3 000 m/性は,大規模地震の諸量に依存せず,対象とする地点にs 相当)まで到達するようなボーリング調査が挙げられ固有の地盤特性であると考えられ,十分な調査・観測なるが,調査が広域又は大深度に及ぶ場合,ボーリング調どを行うことで,強震動評価の精度向上が期待できる要査の実施だけでは技術・コスト面などでさまざまな課題素3)である。が生じることになる。これに対し,臨時地震観測6),7)や一方で,上述した内閣府検討会や防災科研 JSHIS な常時微動計測9)などの物理探査は,非破壊で調査可能でどでは,対象とする地域メッシュごとに強震動の評価があることから非常に有効な手法である。特に,常時微動それぞれ行われている。すなわち,第三次メッシュ(約計測は広域かつ高密度に地盤震動特性(サイト増幅特性)1 km 四方)内や 4 分の 1 地域メッシュ(約250 m 四方)を比較的短時間で評価することが可能である。内などにおいて地震動の特性は均質であるという仮定がそこで本稿では,特集号のテーマ「地下を見る・観なされている。しかしながら,近年の研究成果により,る・診る―物理探査技術の最新動向―」を考える上で,近接する複数の地点で得られた観測地震動の特徴が大き南海トラフ巨大地震による強震動の作用が予測されている徳島県三好市(図―参照)の市街地が含まれる同一地域メッシュ内において,常時微動計測を広域かつ高密度に実施し,得られた計測記録に基づいてサイト増幅特性(地震基盤~地表)を評価した事例について紹介する。.三好市街地における第三次地域メッシュ検討対象とした地域は,図―に示すように,徳島県三好市街地を含む第三次地域メッシュ(コード51330634)に基づく約 1 km 四方の範囲である。まず,図―~図―は,三好市街地における新旧地形図や地質などに関する各種分類図10),11) であるが,対象とする第三次地域メッシュ内において造成を伴う土地利用の変化や地形・地質の不均質性などが見受けられることから,同図―34南海トラフ巨大地震の震源域1)に位置する三好市じ地域メッシュ内においても地盤震動特性の差異が示唆地盤工学会誌,―() 報図―現・地形図2)と既存強震観測点旧・地形図(1906年測量)図―図―告産業総合技術研究所地質図10)の分布図―図―国土交通省表層地質図11)防災科研 JSHIS 微地形区分2)図―図 ―国土交通省地形分類図11)防 災科研 J SHIS 30 m 平均 S波速度2)される。次に,図―~は,対象地域メッシュ内における防災科研JSHIS2)に基づく微地形区分,30図―国土交通省土壌図11)図― 防災科研 JSHIS 地盤増幅率2)13)を参照されたい。計測方向は水平二成分と鉛直成分m 平均の三成分であり,後述する常時微動 H/V スペクトルのS 波速度(AVS30),地盤増幅率の分布である。図―計算処理9)では水平二成分の平均を採用し,一計測点あ~に示すとおり,後背湿地に分類されている南西端のたり30分間の単点計測とした。区域において AVS30 に基づいた地盤増幅率が比較的大図―は,上述した三つの既存強震観測点( KNETきくなっているのが読み取れる。最後に,当該地域メッ池田, JMA 池田, MLIT 池田)で得られた常時微動 Hシュ内とその近傍には,三つの既存強震観測点が位置し/V スペクトルに対する対象地域メッシュ内(197地点)ており(図―及び図―参照),図―に示すように,における常時微動 H/V スペクトルの比較である。常時地震記録に基づき評価されたサイト増幅特性(地震基盤微動 H / V スペクトルの計算処理方法9) としては,まず,~地表)12)には,有意な差異が見受けられる。微動の加速度時刻歴に対して 0.1 Hz のハイ・パスフィ.高密度常時微動計測と得られた記録の整理ルターを施し,163.84秒の区間(雑振動が比較的小さい163.84 秒間)を 7 区間抽出し,フーリエスペクトルの常時微動計測は,対象地域メッシュ内における図―計算を行い,バンド幅 0.05 Hz の Parzen Window で平に示す計200地点において実施した。すなわち,約70 m滑化したのちに, H / V スペクトルを算出し, 7 区間のの間隔ごとに一つの計測点を設けた概算となり(図―平均をとった。評価振動数の範囲としては,使用した微参照),計測点の標高差は最大で50 m にも及ぶことが読動計測器の性能13) などを考慮して 0.2 ~ 10 Hz とした。み取れる。図―内の写真に常時微動計測状況の一例を図―に示すとおり,同じ地域メッシュ内においても,示す。計測期間は, 2016 年 4 月 19 ~ 22 日の 4 日間であピーク周波数やスペクトル形状などの常時微動 H/V スる。計測は主に昼間に実施し,同型の 4 台の微動計ペクトルの一般的特徴がばらついているのが確認でき,株 製の一体型微動探査兼地震計機(ともに白山工業対象地域メッシュ内における地盤震動特性が一様である器13) )を採用した。計測機器の諸元については,文献とは言い難い。さらに,既存強震観測点(3 地点)とそJanuary, 201735 報告図 ― 強 震 観 測 点 の サ イ ト 増 幅 特性12)図― ピーク周波数の分布図― サイト増幅特性の比較図― 常時微動計測点での標高値の分布図― 常時微動 H/V スペクトルの比較図― トラフ周波数の分布図― サイト増幅特性の評価手法の適図― T/R 周波数比14)の分布図― SAF 値17)の分布用性の他の地点( 197 地点)における常時微動 H / V スペクトルの比較では,両者の特徴が明らかに異なっているこ.サイト増幅特性の経験的評価とから,既存強震観測点で得られた観測記録を,対象地図―は,地震観測に基づき評価した K NET 池田域メッシュ内において作用した地震動として代表させるでのサイト増幅特性(図―参照)12)に対する常時微動ことができないことが示唆される。計測に基づき評価したサイト増幅特性(199地点)の比対象地域メッシュ内における常時微動 H/V スペクト較である。ここに,微動計測地点におけるサイト増幅特ル(図―参照)のピーク周波数(Ridge frequency),性(地震基盤~地表)は,KNET 池田と微動計測地点ト ラ フ 周 波 数 ( Trough frequency ), T / R ( Trough /における常時微動 H/V スペクトルの比較(図―参照)Ridge)周波数比14)をそれぞれ地形図上にプロットしたを 199 地点ごとに実施し, K NET 池田における既存のものを図―,図―,図―に示す。図―及び図―サイト増幅特性(図―参照)12)に対して,常時微動 Hに示すように,対象地域メッシュ内におけるピーク周/V スペクトルのピーク周波数及びピーク振幅の違いな波数及びトラフ周波数の分布は一様であるとは言い難く,どに着目した経験的補正(微修正)15),16)を加えることに地盤震動特性の有意な差異が確認できる。一方で,図―よって評価した。図―に示すとおり,対象地域メッシに示すように,対象地域メッシュ内における T/R 周ュ内における常時微動 H/V スペクトルのばらつき(図波数比の分布に着目すると,南西端のエリア付近におい―参照)に起因して,経験的に評価したサイト増幅特て T /R 周波数比が比較的大きな値を示している。この性についても対象地域メッシュ内において有意な差異がエリアは,前述した AVS30に基づく地盤増幅率が比較見受けられる。的大きい区域(図―参照)とおおむね類似しているこ図―は,地震観測と常時微動計測に基づき評価したとから, T / R 周波数比が表層地盤内における地震動のサイト増幅特性の比較を JMA 池田及び MLIT 池田に増幅度合を簡易的に評価する指標の一つとして有効であついてそれぞれ示したものである。図―に示すとおり,る可能性が示唆される。JMA 池田及び MLIT 池田ともに地震観測と常時微動計36地盤工学会誌,―() 報測に基づき評価したサイト増幅特性が比較的良い一致を示していることから,常時微動計測に基づき評価したサイト増幅特性(図―参照)の適用性が示唆される。図 ―は , サ イ ト 増 幅 特 性 の 指 標 値 の 一 つ で あ る2)3)SAF 値17)を,対象地域メッシュ内の微動計測地点(200地点)についてプロットしたものである。ここに,積分4)区間となる周波数範囲として,地震被災との関連が非常に深いやや短周期帯域18) を含むサイト増幅特性の表示区間( 0.210 Hz図―参照)を採用した。図―と図―を比較すると, SAF 値が比較的大きい地点が集5)合している南西端付近のエリアに対して,上述したAVS30 に基づく地盤増幅率が比較的大きい区域は比較的良い一致を示している。一方で,4 分の 1 地域メッシ6)ュ内では,防災科研 JSHIS に基づく地盤増幅率は一様な値を示しているものの,常時微動 H/V スペクトルの差異に基づき経験的に評価された SAF 値はおおむね一7)様であるとは言い難い。すなわちこれは,サイト増幅特性の差異に主に起因して,南海トラフ巨大地震(図―参照)などの大規模地震発生時に同じ 4 分の 1 地域メッシュ内に作用する地震動の特徴が異なってくる可能性8)9)が高いことを示唆するものである。10). まとめ本稿では,徳島県三好市街地を含む第三次地域メッシ11)ュ内(約 1 km 四方)を対象に,常時微動計測を高密度に実施し(計 200 地点),計測記録に基づいてサイト増幅特性を評価した。得られた知見について以下に示す。12)T / R 周波数比が比較的大きなエリアと, AVS30に基づく地盤増幅率が比較的大きい区域は,おおむね類似していることから, T / R 周波数比が表層地13)盤内における地震動の増幅度合を簡易的に評価する指標の一つとして有効である可能性が高い。14 )対象地域メッシュ内の JMA 池田及び MLIT 池田において,地震観測と常時微動計測に基づき評価したサイト増幅特性は,比較的良い一致を示す。15 )比較的大きな SAF 値を有する常時微動計測地点が集合しているエリアと, AVS30 に基づく地盤増幅率が比較的大きい区域は,比較的良い一致を示す。16 )南海トラフ巨大地震などの大規模地震発生時に同じ 4 分の 1 地域メッシュ(約 250 m 四方)内に作用する地震動の特徴を一様と見なすのは困難である。謝17)辞国立研究開発法人防災科学技術研究所 KNET,気象庁 JMA,国土交通省 MLIT による地震観測波形データを利用しました。常時微動計測の実施にあたっては,現地の方々などにご支援・ご協力いただいた。ここに記して謝意を表します。参1)考文献18)告モデルと震度分布について,内閣府防災情報ホームページ,2012. (最終閲覧日2016年 9 月21日)藤原広行ほか 15名「全国地震動予測地図」作成手法の検討,防災科学技術研究所研究資料,第336号,2009.例えば,後藤浩之・澤田純男地震動予測の現状と課題,地盤工学会誌,Vol. 60, No. 3, pp. 10~11, 2012.秦 吉弥・野津 厚・一井康二極近傍地点における地震動指標の変動に関する基礎的検討―平成 23 年( 2011年)東北地方太平洋沖地震とその余震の事例―,土木学会第66回年次学術講演会概要集,I485, pp. 969~970,2011.Hata, Y., Nozu, A. and Ichii, K.: Variation of earthquakeground motions within very small distance, Soil Dynamics and Earthquake Engineering, Vol. 66, pp. 429442,2014.秦 吉弥・野口竜也・古川愛子・香川敬生大規模地震を対象とした強震動評価におけるサイト増幅特性の評価の重要性,地盤工学会誌,Vol. 61, No. 1, pp. 12~15,2014.秦 吉弥・野津 厚被害地震の揺れに迫る―地震波形デジタルデータ CD 付き―,大阪大学出版会,ISBN9784872595659, 2016.社 日本港湾協会港湾の施設の技術上の基準・同解説(上巻),国土交通省港湾局監修,pp. 336~341, 2007.秦 吉弥・湊 文博・山田雅行・常田賢一・魚谷真基和歌山県串本町における高密度常時微動計測,物理探査,Vol. 68, No. 2, pp. 83~90, 2015.(国研)産業技術総合研究所地質図表示システム[地質図 Navi ],地質調査総合センターホームページ, 2013.(最終閲覧日2016年 9 月21日)国土交通省国土政策局5 万分の 1 都道府県土地分類基本調査[熊本・御船],国土政策局国土情報課ホームページ,2003.(最終閲覧日2016年 9 月21日)秦 吉弥・三神 厚・吉田 武・常田賢一地域メッシュに着目した徳島県三好市街地における地盤震動特性の評価,土木学会第 71 回年次学術講演会概要集, pp. 299~300, 2016.先名重樹・安達繁樹・安藤 浩・荒木恒彦・飯澤清典・藤原広行微動探査観測システムの開発,第 115回物理探査学会学術講演会講演論文集,pp. 227~229, 2006.例えば,後藤浩之ほか 10 名大崎市古川地区の浅層地盤構造をターゲットとした超高密度常時微動観測,日本地球惑星科学連合2015年大会梗概集,Paper No. SSS25P18, 2015.長尾 毅・山田雅行・野津 厚常時微動 H / V スペクトルを用いたサイト増幅特性の経験的補正方法に関する研究,構造工学論文集,土木学会,Vol. 56A, pp. 324~333, 2010.秦 吉弥・常田賢一・林 健二常時微動 H / V スペクトルを用いたサイト増幅特性の評価に関する試み,地盤と建設,地盤工学会,Vol. 31, No. 1, pp. 125~131,2013.Hata, Y., Ueda, Y., Minato, F., Ikeda, T., Fukushima,Y., Tokida, K. and Yoshida, T.: Evaluation of `SAFvalue' at reclaimed land in residential area based on seismic array observation with very high dense spatial location, Proc. of the 5th International Symposium on theEŠects of Surface Geology on Seismic Motion, Taipei,Taiwan, Paper No. P125A, 2016.川瀬 博震源近傍強震動の地下構造による増幅プロセスと構造物破壊能― 1995 年兵庫県南部地震での震災帯の成因に学ぶ―,第10回日本地震工学シンポジウムパネルディスカッション資料集,pp. 29~34, 1998.(原稿受理2016.9.8)例えば,南海トラフの巨大地震モデル検討会強震断層January, 201737
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