書籍詳細ページ
出版

タイトル 災害協力協定に基づく岐阜県内豪雨災害の合同調査
著者 沢田 和秀・中井 健太郎
出版 第61回地盤工学シンポジウム
ページ 169〜172 発行 2018/12/14 文書ID fs201812000028
内容 表示
ログイン
  • タイトル
  • 災害協力協定に基づく岐阜県内豪雨災害の合同調査
  • 著者
  • 沢田 和秀・中井 健太郎
  • 出版
  • 第61回地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 169〜172
  • 発行
  • 2018/12/14
  • 文書ID
  • fs201812000028
  • 内容
  • 災害協力協定に基づく岐阜県内豪雨災害の合同調査Joint investigation for Geo-disaster due to heavy rain in Gifu area basedon Cooperation agreement on Disaster沢田和秀*,中井健太郎**Kazuhide SAWADA and Kentaro NAKAI平成 30 年 6 月 26 日から 7 月 8 日にかけて,岐阜県内にも比較的強い雨が続き,広い範囲で地盤に関する変状が報告された。本報文は,国土交通省中部地方整備局と中部地方の自治体および建設系の学協会が締結した,災害時における協力に関する協定に基づいて,岐阜県内の豪雨災害の合同調査が実施された内容を報告する。合同調査では,中部地方整備局,岐阜県,地盤工学会を含 4 学会および中部地質調査業協会が連携,協力した。キーワード:豪雨災害,合同調査,協力協定Geo-disaster due to heavy rain, joint investigation, cooperation agreement1.はじめに2.災害時における協力に関する協定広域かつ長期にわたって記録的な大雨となった平成国土交通省中部地方整備局および中部地方の 4 県と 330 年 7 月豪雨は,西日本各地に甚大な被害をもたらした。政令市は,年々変化する自然環境により発生する災害に岐阜県においても,県内3地点で降り始めからの雨量が対し,学協会等と協力し,早期復旧を支援することを一1,000mm を超えたほか,広域で強い降雨が継続し,県内つの目的とした,「災害時における調査及び技術支援等の32 のアメダス観測地点のうち 16 地点で 72 時間雨量が観相互協力に関する協定」を平成 30 年 3 月に締結した。この協定では,国土交通省中部地方整備局長を甲,岐測史上 1 位を記録した。また,県内初となる大雨特別警報が 16 市町村に発表されるなど,記録的な豪雨となった。阜県知事・静岡県知事・愛知県知事・三重県知事・長野このような自然環境の中,長良川をはじめとした大河県知事・名古屋市長・静岡市長・浜松市長を乙,公益社川では辛うじて氾濫を免れるなど,岐阜県が歴史的に水団法人土木学会中部支部・公益社団法人地盤工学会中部と闘い,治山・治水事業を実行してきた効果が発揮され支部・公益社団法人砂防学会東海支部・公益社団法人砂たと言える。一方,7 月 7 日の夜遅くから8日未明にか防学会信越支部・公益社団法人日本地すべり学会中部支けて,中濃地域から飛騨南部地域で発生した,これまで部を丙と定め,災害時における調査及び技術支援等の相の想定をはるかに上回る気象現象は,津保川(関市)を互協力することとしている。はじめとした中小河川の氾濫による多大な浸水被害をも協定の目的として,条文では「本協定は,地震・大雨たらした。そうした地域にあっても,地域住民や消防団等の異常な自然現象,予期できない災害等により,大規による近隣住民への声掛けや避難誘導など,懸命な活動模な災害が発生した場合等において,甲又は乙が管理若により人的被害は最小限に食い止められた。これまでのしくは工事中の施設等において発生した被害の調査,応防災対策が功を奏したということができるが,豪雨の場急対策等の支援に関し,相互協力の方法を定め,もって所や雨量などの状況が異なっていれば甚大な被害となっ被害の拡大防止,被害施設の早期復旧及び防災技術の向1)た可能性もある 。上に資することを目的とする。」とされている。7 月の豪上記のように,治山・治水事業を実行してきた効果が雨では,広域におよぶ地盤災害が報告されたことから,発揮されたとの報告がある一方で,広い範囲で地盤に関この協定に基づいて,中部地方整備局および岐阜県の協する変状が報告された。本報文は,平成 30 年 3 月に,国力の下,前述の土木学会中部支部,地盤工学会中部支部,土交通省中部地方整備局と中部地方の4県と3政令市お砂防学会東海支部および信越支部,日本地すべり学会中よび建設系の学協会が締結した,災害時における協力に部支部に,中部地質調査業協会が加わり,合同調査団と関する協定に基づいて,今回の豪雨災害に関して学術的して調査に当たった。観点から地盤被害について合同調査を実施した内容を報また,条文では「丙は,所管施設等に災害が発生し,告する。防災技術の向上のため自らが被災状況を調査する必要があると認めるときは,幹事学会を通じて,甲に被災状況* 岐阜大学工学部 教授** 名古屋大学大学院工学研究科Prof., Faculty of Engineering, Gifu University准教授Asoc. Prof., Graduate school of Eng., Nagoya University169 の調査に関する協力を要請することができるものとす1) 協定に基づく国および県の協力により,調査チームる。」とされている。これにより,学協会を含む合同調査ごとに,岐阜県職員や国職員から災害箇所の概要説では,学術的観点から,復旧を支援することになった。明を受け,調査に当たることができた。2) チームごとに調査を実施したため,調査実施の行程このように本合同調査は,行政機関と専門分野を横断すがスムーズだった。このことは,調査参加者およびる学協会が連携した新しい取組となった。県・国職員の負担を小さくしたと考えられる。3.合同調査の準備3) 協定により,学協会の参加者を多く得られたと考え3.1 合同調査実施までの経緯られる。表-1 に示したように,のべ 64 名の調査団豪雨災害の確認および調査の支援のため,筆者は被災となった。直後から,直轄国道および県管理道で復旧に急を要する4) 一方で,他地域の現場を見ることが困難となった。いくつかの箇所について,道路管理者の現地視察に同行3.3 調査方針した。このことから,土木学会中部支部と地盤工学会中調査団員を募集する際,以下の調査方針と調査の条件部支部との協議により,合同調査団が結成され,筆者がについて,協定に関係する組織に連絡した。合同調査団の団長として推薦された。図-1 は,7 月 9 日1)調査方針に把握できていた岐阜県管理道と直轄国道の被災箇所を調査報告は,一般的な災害に関するデータを残すだけ岐阜県地図にマッピングしたものである。道路に関するでなく,今後も起こりうる降雨による地盤災害に「備え被災箇所の多くが,高山市・飛騨市・郡上市・下呂市にる」ために,どのような情報を残しておくかに主眼をお集中していた。そのため,岐阜県の古川・高山・下呂・きたい。例えば,通常の降雨では引き金になり得なかっ郡上の4つの土木事務所に協力依頼し,合同調査におけた人工改変箇所が,今回のような波状的な短時間集中豪る調査箇所を選定した。次に,合同調査団を上記 4 エリ雨の場合,有意な素因となっていることが見受けられまアに分け,それぞれのエリアで調査に臨むこととした。す。定期点検等で見逃されがちな,地盤変状のトリガーになり得るケースをまとめ,定期点検等の調査時に一考する着目点として,記録に残し,次に備える一助としたい。今回の豪雨では,強く長い時間の降雨という誘因が非常につよい崩壊のきっかけとなっています。つまり,水がどのように動いたかが非常に重要と思いました。言い換えれば,地形に素直な崩壊が多かったと思います。このことから,流木や土砂で詰まりそうな取水枡は,大きな飲み口に修正するなどの,予防につながればよいと考えます。調査団のみなさまには,上記のような観点でどのようなことに気を付けていくべきか,を残せるような報告を目指していただきたいと考えます。2)調査の条件・復旧の妨げにならないこと,図-1 国道および県管理道の主な被災箇所分布図・地元の邪魔をしないこと,・被災者等には十分配慮すること,3.2 調査の方法・メディアには勝手に発言しないこと,調査は,3.1 で示したように,4 つエリアに分けて調査・土木事務所の方に同行頂くのは各エリア 1 回とするこグループを編成し,それぞれで調査に当たった。表-1 は,と,をルールとします。みなさまにお知らせした主旨の各調査グループと調査日およびそれぞれの調査人数を示範疇で被災箇所およびその周辺が,同様の現象を起こさした。各グループの調査日は,調査団員のスケジュールないようにするために,どのような調査結果を残し,今調整のため豪雨から約一月後以降となったが,応急復旧後調査等で何に気を付けるべきかを成果として残すことを第一に考え,協定に基づいた調査を実施したため,以を目指すことを目標にしたいと思います。下のような成果が得られたと考える。また,調査実施前には,次の「調査にあたって」を団員に連絡した。表-1 調査グループと調査日(数字は調査人数)「調査にあたって」:今回の調査対象は,自治体もしくは国が所管する災害であるため,報告書にまとめる際には,自治体および国と調整を図る必要があります。しかし,調査団員としては,地盤工学の専門家としての立場を崩さず,自分の視点で現場を見,自分の視点で,感じ170 たことをまとめることを心がける。もある。自治体の所管する現場では,災害査定もしくは災害査調査報告の内容については,第 2 回平成 30 年 7 月豪雨定規模でないにしても,既に,調査業協会に属する専門による「地盤災害調査報告会(地盤工学会ホームページ)」家が調査し,概略設計を進められていると思います。そおよび「平成 30 年岐阜豪雨災害調査報告会(地盤工学会のことを十分理解したうえで,現場では発言していただ中部支部ホームページ)」で資料を公開しているので参照けるよう,お願いいたします。されたい。災害復旧において,査定後に国庫補助が受けられるこ4.2 調査結果とが決定したとしても,調査,設計段階の業務について(1) 道路防災事業と森林保全事業は,激甚災害指定がされない場合,自治体の負担行為と各チームによる調査の結果,岐阜県による「平成 30なります。したがって,災害を再現するための各種力学年7月豪雨災害検証報告書」1)にあるように,降雨量に定数等は,崩壊規模や地質に基づいた標準値が用いられ対する被害が小さかった印象があり,また流木による被ることが一般です。大学の先生方におかれましては,こ害も甚大ではなかったと報告があった。のあたりの事情をご存じない方もいらっしゃるかもしれ表-2 これまでの豪雨災害との比較 1)ませんが,現場で丁寧な土質試験,原位置試験を要求されるのも結構かと思います。しかしながら,行政がこれまで実施してきた調査,概略設計を全面否定せず,「本来はこうすべきですね」といった口調で望まれることを期待します。また,そういった助言が,一般的な災害から復旧のフローに対する行政の姿勢を変えることにもつながると信じています。行政は,慣例で動いてしまいます。それを,正常な土質力学に立脚した流れにしていくのも,私たち研究者の大切な役目のような気がします。上記の自治体等の立場等をある程度理解したうえで,公平な研究者としての立ち位置を崩さず,言いたいこと,言わなければならないこと,をきちんと伝えてほしいと思います。かといって,背景を何も知らずに,勝手なことばかり言うと,かえって反感ばかりを覚えられてしまいますので,背景をある程度わかっていただいくことも重要かと思います。全体を通じて,同じ災害を起こさない,被災箇所の周辺で同様の災害を起こさない,ことを目標に,今後も起こりうる降雨による地盤災害に「備える」ために,どのような情報を残すかべきかを考えたいと思います。この際,調査団として,土質力学・地盤工学・地質学等の専門家としての立場から,発生した現象の解釈をいただければと思います。4.調査結果4.1 調査結果の概要調査の結果は,7 月 25 日の地盤工学研究発表会および9 月 12 日の「第 2 回平成 30 年 7 月豪雨による地盤災害調査報告会」で順次その概要を報告した。調査全体を通じて,以下のことが共通事項として団員に認知された。1)2)3)4)表-2 に示した通り,平成 11 年や平成 16 年の豪雨災害比較的強い長時間の降雨が引き金となって土砂が流出した。と比較して,道路施設の被災箇所数と被災金額から,降河川,道路施設(国・県・市町村道),農林道(作業雨量に対しての被害が小さくなっていることが読み取れ道),砂防施設,治山施設の被災がある。る。このことは,道路事業として,道路整備や防災事業地形に素直な水の供給があり,普段水が来ないようを実施したことにより,雨量規制を解除した区間では,な地形であっても,水の通り道になり得る。落石や土砂流出による通行止めはほとんど発生せず,孤集水枡が詰まって水があふれるなど,排水機能が低立防止や迂回路としての効果を発揮したことが証明して下し,あふれた水が周辺に影響を及ぼしている場合いる。また,改良復旧,関連災や事業推進費等を活用し,171 継続して予防に取り組んできた成果であると考えられる。被災事例として,ハード対策だけでなく,事業の連携と流木に関する被害は,森林づくり基本計画(平成 19いう重要なソフト対策を継続して検討する必要がある。年度~)に基づく,年 200km 程度の作業道開設の実績(平成 22 年度~)から,間伐材搬出により人工林の山腹崩壊5.おわりにを防ぎ,流木災害が減少したと考えられるが,山腹の立地盤工学会中部支部では,平成 30 年岐阜豪雨災害調査木やスリットダムに引っかかった流木や河川に流出した報告会(平成 30 年 11 月 7 日)を開催した。ここでは,流木の量を考えると,対応を継続する必要がある。作業調査結果を報告するとともに,協定に基づく合同調査の道の開設は,岐阜県独自にテキストを作成し,土砂を流成果と課題から,今後の災害に備えるためのディスカッ出させない道づくりを進めてきたが,裸地となっているションを行った。そこでの意見の一部を紹介する。作業道をトリガーとする斜面崩壊が危惧される。・異なる専門性の技術者の視点と意見が新鮮だった(2) 組織を横断する連携が必要な被災事例・管理者の案内により調査がスムーズに進行できた調査団員からの声が多かった事例として,異なる管理・調査方針を事前に示すことで集中的に調査できた組織を横断する被災がある。例えば,下呂市の金子谷の一方,課題として以下の意見もあった。土石流災害(図-2)がある。・調査後には,調査内容を共通認識できる議論の場を持つことが重要である・日頃から,発注者・コンサルタント技術者・施工業者で密な情報共有できる体制が必要である・調査体制に関して,目的に応じたチームの人数,調査時期をよく検討する必要がある斜面災害を例にとると,被災箇所の管理者がどうであろうが,住民からすると1つの災害である。学協会の横断だけでなく,林政・治山・砂防・道路が連携するには,どのような課題があり,連携時にどう振る舞うのが適切かを検討するよい機会になったと考える。学会の調査結果が,復旧の効率化と高度化に貢献できるよう,今後もこのような取組みを継続することが重要である。図-2 下呂市金子谷の土石流災害謝辞:災害調査にあたり,国土交通省中部地方整備局企この土石流は,6 月 29 日 17 時 40 分に発生した。当時画部,国土交通省中部地方整備局高山国道事務所,岐阜の連続雨量は 236mm (6/29 4 時~6/30 14 時),最大 24県県土整備部道路維持課・砂防課,岐阜県林政部には,時間雨量 232mm (6/29 5 時~6/30 5 時),最大時間雨量フィールドの提供から被災状況の説明など,多大なるご53mm (6/30 17 時~6/30 18 時)であり,JR 高山本線を支援・ご協力を賜った。(公社)土木学会中部支部,(公社)埋没させ,下流の家屋内に土砂が流入した。図-2 は,岐砂防学会東海支部・信越支部,(公社)日本地すべり学会阜県保有のレーザ計測データ(平成 25 年度取得)に,被中部支部,中部地質調査業協会には合同調査団結成にご災後のオルソ画像を位置合わせして貼り付けたものであ協力頂いた。また,調査団員の皆様とは,被災分析からる。上流側(写真右)には,作業道が 2 本あり,下流のその取り纏めまで,異なる専門分野から貴重な意見交換崩壊地につながっている。この渓流は,平成 27 年 10 月を行うことができた。ここに記して謝意を表する。に降雨の影響により中腹部(写真中心辺り)から土砂流出があり,平成 28 年には治山山腹工により河床を復旧処参考文献理している。対策を検討する際,上流は治山,下流は砂1)平成 30 年7月豪雨災害検証報告書,平成 30 年 7 月豪雨災害検証委員会,岐阜県,平成 30 年 8 月 31 日防および鉄道といった事業をまたぐ連携と協力が必要なIn Gifu prefecture, heavy rain was continued from June 26 to July 8 2018, and sediment disasterswere observed in a wide area. Therefore, joint investigations were carried out based on thecooperation agreement on disaster, concluded by the Chubu regional development bureau of Ministryof Land, Infrastructure, Transport and Tourism, municipal governments of Chubu district, and severalacademic societies. In this joint survey, four academic societies including Japanese GeotechnicalSociety, Chubu regional development bureau, Gifu prefecture, and Chubu Geotechnical ConsultantsAssociation were cooperated. The outline of the joint investigation will be described in this report.172
  • ログイン