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タイトル 山間地域における住民参加型斜面監視・モニタリングシステムの構築
著者 小山 倫史・近藤 誠司・小林 泰三・芥川 真一・ 佐藤 毅・中田 勝行・下嶋 一幸
出版 第61回地盤工学シンポジウム
ページ 151〜158 発行 2018/12/14 文書ID fs201812000025
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  • タイトル
  • 山間地域における住民参加型斜面監視・モニタリングシステムの構築
  • 著者
  • 小山 倫史・近藤 誠司・小林 泰三・芥川 真一・ 佐藤 毅・中田 勝行・下嶋 一幸
  • 出版
  • 第61回地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 151〜158
  • 発行
  • 2018/12/14
  • 文書ID
  • fs201812000025
  • 内容
  • 山間地域における住民参加型斜面監視・モニタリングシステムの構築Development of citizen participation-type measurement and monitoringsystem for sediment disaster prevention in mountainous areas小山倫史*,近藤誠司*,小林泰三**,芥川真一***,佐藤毅****, 中田 勝行*****,下嶋 一幸******Tomofumi KOYAMA, Seiji KONDOH, Taizo KOBAYASHI, Shinichi AKUTAGAWA,Takeshi SATOH, Katsuyuki NAKATA and Kazuyuki SHIMOJIMA本研究では,集落全体が地すべり地にあり,集落内に急傾斜地危険個所が多数存在する山間集落である福井市高須町において,地域防災活動の日常化を図るべく,住民を対象としたヒアリング調査および専門家による現地踏査の結果に基づき,集落内の急傾斜地危険箇所に低コストで簡易かつ視覚的に優れた OSV 計測機器を設置し,住民自らが日常的に監視する仕組みの構築を試みた。キーワード:斜面計測・モニタリング,OSV,住民参加型防災活動Slope measurement/monitoring, OSV, citizen participation-type disaster prevention activities1.はじめにする仕組みの構築を試みた。近年,中山間地において,集中豪雨や台風等による土砂災害が多発している。中山間部の集落は,土砂災害の2.福井市高須町の概要および地質特性警戒区域に指定されている場所が多く,土石流や地すべ福井県福井市にある高須町を調査・計測対象とした。りなどの土砂災害のリスクも高い。さらに,住民の少子高須町は,福井市の中心部から北西に約 20km 離れた高高齢化が進み,平素から脆弱性が高まっている集落も多須山(標高 438m)の中腹に位置する農村集落である。い。65 歳以上が人口の 50%を超える限界集落は,全国で世帯数 43 戸,65 歳以上が 49 人(94 人中)と半数以上を1 万を超えるとされ,その数は年々増加の傾向にある。占める限界集落である(2010 年 11 月現在)2)。その中には,65 歳以上が人口の 70%以上を占める集落も集落内の活動は比較的盛んであり棚田オーナー事業やあり,「危機的集落」と呼ばれている。こうした集落の地小学校の農業体験等の活動を行っており福井市の中山間域防災力の向上のためには,防災訓練やハザードマップ地域モデル集落に選定されているの配布などの普及活動をすれば十分というものではなく,路は 2 本のみであり,道幅約 4m 程度の狭い市道である。各地区内の「共助」,各個人の「自助」を中心に地域防災標高 200m 程の比較的高地に位置する高須町の道路は,を「日常化」する必要がある1)。そのためには,住民が斜面に囲まれた山林道路であり斜面崩壊などの発生によ身の回りの自然災害リスクを正しく認知し,行政からのり寸断され,地区全体が孤立する可能性がある。また,情報などの「公助」に過度に依存することなく,どのよ図-1 に示すように,町全体が大きな地すべり地形の中にうに自然災害リスクと向き合っていくかについて専門家あり,急傾斜地に関する土砂災害特別警戒区域や警戒区を交えて議論し,住民が自らで検討する必要がある。域も集落のあちこちに存在し,一部は土石流危険区域にそこで,本研究では,集落全体が地すべり地にあり,3)。高須町に通じる道指定されている。実際に,集落に通じる生活道路や地区集落内に急傾斜地危険個所が多数存在する山間集落にお内の林道,田畑の崩壊が度々発生しており,近年の集中いて,地域防災活動の日常化を図るべく,住民を対象と豪雨の発生頻度の高まりを受けて,住民の一部で危機意したヒアリング調査および専門家による現地踏査の結果識が高まってきている。をもとに観測機器を設置し,住民自らが危険個所を監視* 関西大学社会安全学部** 立命館大学理工学部*** 神戸大学工学部准教授教授教授**** アサノ大成基礎エンジニアリング図-2 に福井地域及び周辺地域の地質図を示す 4)。本図Assoc. Prof., Faculty of Societal Safety Sciences, Kansai UniversityProf., College of Science and Engineering, Ritsumeikan UnivsersityProf., Graduate School of Engineering, KobeUniversityAsano Taisei Kiso Engineering***** オフィスひもろぎOffice Himorogi****** テクニカルシンクTechnical Think151 より高須町は,丹生山地の新第三系の荒谷層と国見層に属する。特に,今回の計測対象である高須町の集落付近は荒谷層が主である。荒谷層は,福井市天菅生から荒谷町,高須町を経て和布町に至る地域に分布し,その岩相は,凝灰質の砂岩,泥岩,シルト岩を主体とし,その基底と中部に安山岩火砕岩を,また,局所的に流紋岩軽石火山礫凝灰岩~凝灰岩を挟む。3.住民を対象としたヒアリング調査高須町住民の災害に対する防災意識を確かめることを目的として,2017 年 8 月 18 日~19 日および 10 月 6 日に戸別訪問によるヒアリング調査(1 軒につき,10 分~30土砂災害ハザードマップ分ほどの面接)を実施した。長期不在などの理由で家を2の組不在にしている住人を除く 36 世帯を調査対象とし,全部1の組で 26 世帯から回答を得た。半構造化インタビューで,設問は全部で 7 問準備した(表-1 参照)。なお,本稿では,紙面の都合上,土砂災害に関連する部分のみ取り上げる。急傾斜地警戒区域「あなたの家が土砂災害に見舞われる危険性について,5の組急傾斜地特別警戒地域 3の組土石流警戒区域現時点で,どのように感じていますか。自分が生きているうちに自分の家が被害を受ける確率が何パーセントく4の組らいあると思うか,教えてください」という設問によって,土砂災害に対する危機意識をたずねた。図-3 にその図-1 高須町の土砂災害ハザードマップ,上)福井市結果を示す。本図より,低い確率(33%以下)を回答しが提供しているのもの,下)集落付近を拡大したものた住民が 65%もおり,土砂災害の知識や情報があったとしても,自分が災害に見舞われる危険があるとまでは認識していない住民が多いことがわかった。ただし,住宅の裏がすぐ崖になっている箇所では,局所的に住民の土砂災害に対する危機意識は高かった。また,町内で危険だと感じる場所について尋ねたところ,雨水の通り道となっている道や,地下水が湧き出や表-1 ヒアリング調査の設問①住まいのこと,家族構成など②土砂災害に対する危機意識③取り組んでいること/備えていること④孤立したらどうするか⑤集落内で危険と思う箇所⑥台風5号(2017 年 8 月)襲来時の行動⑦自由意見高 67~100%20%中 34~66%15%低 0~33%低 0~33%65%中 34~66%高 67~100%高須町高須町集落図-3 高須町の住民の土砂災害に対する危機意識図-2 福井地域および周辺地域の地質図 4)152 住民の危険認識箇所(斜面)住民の危険認識2の組箇所(雨水流出)1の組湧水箇所1の組5の組3の組4の組図-4 町内で住民が認識している危険個所すい沢の出口,住宅のすぐ裏に急斜面があり,その上が田圃といったところなど,普段,住民自身が危険を感じている場所が点在していることがわかった(図-4 参照)。また,これらの場所は,行政が公開している土砂災害ハザードマップ(図-1 参照)で危険とされる箇所と概ね一致していることが分かった。4.OSV 計測機器を用いた危険個所の監視4.1 計測機器の種類および計測原理計測・モニタリングにあたり,高価で精緻なものでかつ専門的知識が必要とするものではなく,住民自らが日図-5 「POCKET」の概要常的に計測・モニタリングに関わり,日常とは異なる「異変」に気付くということを目的とした低コストで簡易かの計測においては,電源交換の手間を無くすとともに長つ 視 覚 的 に 優 れ た 計 測 機 器 で あ る 「 OSV ( On-Site期間計測を可能にするため,ソーラーバッテリーを利用Visualization)センサ」5), 6)を採用した。OSV センサは,する自己発電型の機構に変更した。なお,POCKET は,計測対象物に変化が生じた瞬間に変化を視認でき,任意本体内部にデータ収録機構を内蔵しており(1 時間ピッ変状をリアルタイムで可視化できる装置である。チ,データ容量約 1.5 ヶ月程度),計測結果の収集を行え本研究では,1) 筒状の装置を斜面に設置し,傾斜の変ば,発光による監視以外に傾斜データをデジタルデータ化に応じて先端の光の色が変化する傾斜計(ポケットにとして保管・管理できる。入るサイズの発光型傾斜計,Light Emitting Inclination(2) SOPSensor/POCKET,以下「POCKET」と表記する),2) 斜SOP(Single Observation Point)は,鏡(反射鏡)を利面に鏡を設置し,定点から鏡を覗き,見える景色に変化が用して形状変化を視覚的に捉える方法である。計測の方あるとその斜面に異変が起きていることを確認できる法は,変状を起こさない安定した場所に光源を設置し,「SOP(Single Observation Point)」,3) 斜面崩れの恐れがさらにその光を同じく安定した場所から計測者が視覚確ある斜面に棒を一直線に立て,定点から見ると棒が一直認する。初期段階での計測地点の鏡は,計測者が鏡に映線上に 1 本に見えるが,斜面に変化が生じると棒が数本った光を視認できるように方向を調整する。計測地点がに見える「見通し棒」の三種類を採用した。以下に個々変状を起こし鏡が回転や移動した場合,鏡の中の光源のの観測装置の詳細について述べる。画像は,初期状態から動く。そのことから、計測者は,(1) POCKET(ポケットに入るサイズの発光型傾斜計)計測地点の変状を視覚的に把握することができる(図-6「POCKET」とは,固定傾斜計と光デバイスを合体し参照)。さらに,変状が大きい場合,反射光は,鏡面からた装置であり,設定した基準に応じて頭部の色が変化すはみ出てその画像が見えなくなる場合もある。なお,理る(図-5 参照)。今回の計測では,擁壁の傾斜や斜面の論的には計測者と鏡の距離,鏡と光源の距離などから鏡傾斜を計測する位置に配置し,装置の頭部で発光する色の回転角などを計測可能であるが,鏡の角度調整や計測を観察することで計測場所の安全性を確認する方法を採点間距離などの現場調整によって,計測結果評価に技術用した。電源として,通常,乾電池を使用するが,今回を要する。そのため,一般的な計測利用としては,光が153 動くかどうか,すなわち計測点に変状が起きるかどうかで示す。個々の計測箇所の詳細について以下に示す。という観点での計測を目的としている。今回の計測にお(1) 市道沿いの谷側斜面の変形監視(①)いても,計測者が計測経験のない住民であるため,光が本計測箇所は,生活道路となっている市道であり,道動いたか動いていないのかという観点で監視・モニタリ路幅 4m 以下の舗装道路は,山側の擁壁と谷側の斜面崩ングを行ってもらうことにした。壊が懸念されている.そこで,市道谷側の路肩部にポー(3) 見通し棒ルを用いた計測装置を設置した(写真-1 参照)。路肩は,「見通し棒」は,覗き窓を取り付けた基準ポールと変谷側斜面の天端近くに位置しており,斜面の変形により位を計測する観測ポール(数本)を一直線上に並べ,基この部分が崩れ道路を寸断する可能性がある。観測ポー準ポールからの見通しで観測ポールの動き(ずれ)を確ルは路肩に設置しているガードレールの支柱に取り付け認するという方法である。 すなわち,斜面や路肩の変位た。計測位置の道路線形は直線に近いため,ポールの通が発生すると,観測ポールが倒れたりずれたりするため,りを見通すことができると考え,ポールによる通り計測基準ポールからの見通しが一直線でなくなり,住民が視方法を採用した。ただし,斜面変位の影響を受けてはな覚的に斜面や路肩の変状に気付くという仕組みであるらない基準ポールは,斜面から外れた場所でかつガード(図-7 参照)。なお,観測ポールの挙動を定量的に把握レールの支柱から離して設置した。斜面の変形計測は,する場合は,設置当初の取り付け位置を測量しておき,基準ポールに設置した覗き窓から実施し,観測ポールの変状が発生した際に再度測量を行うことで定量的に変位通りが直線を保持しているかどうかを計測する。量を確認できるようにしている。今回の計測では,観測(2) 市道沿いの谷側擁壁の変形監視(②)ポールは,ガードレールの支柱を利用し固定し,観測ポ市道のカーブ部(上記①の市道の延長)で谷側の擁壁ールが一直線上に見通せるように立ち位置を調整した。天端はすでに谷側に倒れ込むように変形しており,舗装4.2 OSV 計測機器の設置場所道路も一部ひび割れが生じていることから,計測機器を住民へのヒアリング調査および地盤工学の専門家によ設置した(写真-2 参照)。設置場所は,カーブ部であるる踏査の結果により,危険箇所と判断した箇所(高須町へのアクセス道(市道)沿いの斜面で 2 地点,農道沿い②の斜面 1 地点,小学校の裏の崖,住宅の裏の急斜面 3 地点)について,計測機器の設置を行った(図-8 参照)。今回選定した 6 地点の計測箇所の位置は図-8 中の①~⑥①④基本概念初期状態変状発生異常アリ回転・移動回転・移動鏡鏡に映る像鏡に映る像“移動する”“消える”鏡に映る像光源観測点・計測箇所に鏡を設置。・観測点から見て鏡の中心に光源が映るように、鏡の角度を調整する。光源から外れる見える箇所が移動・鏡の設置箇所に変状が発生→鏡が回転や移動し、鏡に映る像が(光源)移動する。③⑤・さらに変状が進行→観測点から光源が見えなくなり、異常が発生している事が視覚的に確認できる。⑥図-8 OSV 計測機器の設置場所①計測対象物②異常発生!設置例観測点光源観測点光源図-6「SOP」の計測原理の概略透視方向観測ポール覗き窓監視窓基準ポール写真-1 「見通し棒」を用いた変形計測の様子図-7「見通し棒」の計測原理の概略154 a)b)b)a)観測場所ミラー路面のクラック擁壁天端に設置d)c)のぞき穴c)計測方向確認線d)ミラーのぞき穴e)計測点ミラー光源70m写真-3 SOP による棚田付近の斜面の変形計測の様子,a) 民家裏の棚田斜面の様子(住宅側からみた様子),b) 同(棚田側からみた様子),c) 計のぞき穴測点とミラーの位置関係,d) SOP 計測の概念写真-2 市道における SOP を用いた変形計測の様子,(平面図)a) 擁壁の様子,b) ミラーの設置状況,c) 計測板前面, d) 計測板背面,e) のぞき穴から光源(小型の LED ライト)と計測点は小学校のプール横のミラーの監視状況に設定し,2 カ所の反射鏡に映る LED 光が計測点で確認できるように反射鏡の角度を調整した。写真-3 に初期設ことから観測ポールのような通りを見通す計測はできな定状態の計測点と反射鏡の平面的な位置関係や計測場所いため,ここでは,SOP による変状計測を行うことにしの全景を示す。計測は,光源位置に LED ライトを設置した。計測場所は,比較的広いカーブの路肩に設置し,そ反射鏡の光が視認できるかどうかを確認する。計測精度こから反射鏡(ミラー)を視認できるようにした。計測は,計測点から反射鏡までの距離が 70m 程度あるため,板の中心部には直径 5mm 程度の覗き穴を設置し,計測反射鏡の角度変化が約 0.05 度 で光源がミラーに映らな者は,この覗き穴を通し,ミラーに映る計測板の赤と黄くなる程度である。住民の計測は,①反射鏡に映る光が色の表示を確認する。設置時は,覗き穴を覗くとミラー見えるかどうか,②見えなくなった場合は,見る位置をに計測板の表示が映るように調整している。計測板の背どのくらいずらしたら反射鏡に映る光が見えるか,また,面には覗き穴を中心にして放射状に変位確認線を描いてずらした位置はどの方向(上下・左右)かを記録するこおり,擁壁に変位が発生した場合,覗き穴からどれくらとにした。い目をずらしたらミラーに映った表示板が確認できるか(3) 農道沿いのブロック積み擁壁,小学校体育館背面のブを計測する。なお,計測板背面に引いた変位確認線は,ロック積み擁壁および住宅背面斜面の変形監視(③,⑤,そのときのズレの方向と距離を計測する目安である。⑥)(3) 棚田付近の斜面変形計測(④)農道沿いのブロック積み擁壁は以前,転倒破壊した場棚田は,高さ 4~5m の高さの高台にあり,高台から急所である。転倒破壊後,擁壁天端より上の斜面は地盤改傾斜の斜面が続いている。近接する家屋は,その斜面に良により強度の増大が図られているが,過去に崩壊があ沿うように建っており,そこに居住する住民は,棚田斜った場所であること,道路奥には個人の畑や棚田があり,面の崩壊を懸念している。また,ヒアリング調査におい少ないながらも人通りがある場所であるため,計測箇所ても町内の危険箇所として認識されている(図-4 参照)。として選定した(写真-4 参照)。そこで,棚田の斜面の変形計測は,SOP を用いて実施す町内唯一の小学校は現在廃校状態にあるが,その体育ることにした。棚田下の家屋に近い畦道を選び,そこに館は住民の集会場所として使用されている。さらに,災SOP 用の鏡(反射鏡)を 2 カ所設置した。SOP に用いる害発生時などには一時的な避難場所に使われる可能性も155 ある。現在,体育館の裏にはブロック積み擁壁があり,定し,居住する住民を中心に斜面の変形を計測できるよ擁壁より上部は自然の斜面が迫っている。擁壁には常時うにした(写真-6 参照)。地下水が漏水している状況が見られ,斜面に流れる地下これらの計測箇所については,擁壁および斜面の変形水の漏出場所になっている。体育館と擁壁の離隔が 1.5mを計測するため POCKET を用いた傾斜計測を行うこと程度であるため,降雨時の出水と擁壁の崩壊などにより,とし, 3 地点の計測箇所とも太陽光パネルを利用し計測体育館が被害を受ける恐れが考えられる。そこで,体育器の電源を確保した(写真-4,5 および 6 をそれぞれ参館に沿ったブロック積み擁壁の変形を計測することにし照)。POCKET は,傾斜により計測器頭部の光の色が変た(写真-5 参照)。化するようになっているため,それぞれの擁壁や斜面に町内には,住宅の背面に高さが 2 階建ての屋根を越え変位が生じた場合,その色によって状況を視覚的に判断る斜面があり,過去の降雨により,斜面が崩れ土砂が家することができる。今回,POCKET の点灯色は,傾斜角に流入した箇所がある。そこに居住する住民は斜面崩壊の変化がない場合は緑色,傾斜角が 0.2°,0.4°変化すを懸念していることから,この斜面を計測箇所として選るとそれぞれ黄色,赤色となるように設定した。なお,設定した色と角度の閾値は,過去の斜面崩壊実験結果7)を参考に設定した。発光色に変化があった場合,別途斜面傾斜の計測や測量を行い斜面の異常を照査することにしている。なお,小学校体育館背面のブロック積み擁壁は,奥行きが長いため,POCKET を 3 カ所設置した。a)写真-4 POCKET による農道沿いのブロック積み擁壁の変形計測の様子a)b)b)c)写真-5 POCKET による小学交体育館背面のブロック擁壁の変形計測の様子,a) 斜面とブロック擁壁の全貌,b) POCKET の設置状況,c) ソーラ写真-6 POCKET による住宅背面斜面の変形計測の様ーバッテリーを使用した電源の供給子,a) 斜面の全貌,b) POCKET の設置状況156 4.3 計測結果の記録方法および計測結果の評価方法ことで,いつもと違う計測結果(常時と違う異常な変位2017 年 11 月中旬にすべての OSV 計測機器の設置が完や傾斜)を確認し,災害発生の予兆を感じ取れるように了し,11 月 26 日に町内の自主防災組織のメンバー(自した。なお,万一,平常時と異なる計測結果を得た場合,治会長,自警団長,組長)向けに計測機器の使用に関す計測精度を上げるための測量や別途専門的な計測を行うる説明・見学会を実施した(写真-7 参照)。計測の方法ことにし,本計測では,そのような状態を感覚的に把握や頻度については,最初の段階であえて専門家の要望できることを目指すものとした。(「このように計測して欲しい」など)を住民に伝えることはせず,町内の自主防災組織のメンバーによる話し合5.住民参加型計測・モニタリングにむけて~結びにかえていで決定した。その結果,各防災班(1~5 の組,図-4計測機器設置,自主防災組織のメンバーへの説明会・参照)の責任者が月に 1 度の頻度で計測し台帳に記録す見学会の後,定期的に高須町を訪問し,計測・モニタリることとした。また,年間を通じて定期的に実施されるングの状況を確認するとともに,住民からのヒアリング町内の防災活動に関連した行事(避難訓練や危険個所・もあわせて実施し,現状の計測・モニタリングの問題点・備蓄倉庫の点検など)の際は,住民全員で観測に関わり,課題の抽出を行った。危険度の確認を行うことにした。なお,計測結果は,図先述の通り,計測・モニタリングの体制(計測者や計-9 に示した計測記録台帳に計測結果を記述していくこ測頻度など)については,専門家から指示や要望はせずとで記録を蓄積し,その結果は定期的に住民に開示するに,自主防災組織のメンバーに決定していただいた。決ことにした.計測記録は可能な限り,簡素化するととも定した当初は,月に一度の計測であれば,自主防災組織に,計測者が気軽に計測ができるように工夫した.これのメンバーおよび防災班の責任者ですべての計測機器には,将来,住民の防災意識が高まり,より多くの住民が計測に関与するようになった際,住民が簡単に計測し,計測結果を記録するという行為に対する住民のストレス軽減するための準備である。計測記録は計測責任者が保管し,最終的に自治会長に集約することとし,過去の計測記録や現状の記録結果を住民が確認できるようにした。計測結果は,過去の記録と現状を比較できるようにし,計測値の異常が出ているS O P 観 測 手 簿ガードレール棒 観 測 手 簿かどうかを確認できるようにした。計測値の比較を行う観測地点 :観測開始点変化観測日時天候年月日時刻あり ○なし ×観測地点 ::観測開始点変化観測日時移動箇所(1番~5番)移動量天候備  考年月日時刻:光が見える位置(上下、左右)あり ○なし ×備  考変化があった前の天気などa)備考 : 光の見え方に変化があった日の前日の天気など。気が付いたことを記録してください。5番目4番目鏡に映った光観察記録の順番1鏡に映った光まず、棒が動いているかどうか を確認します。観察記録の順番1 まず、鏡に映った光が動いているかど上方向3番目2 動いていると思ったら、どの棒が 動いたかを記録し電燈の光うか を確認します。ます。2番目1番目3 同時にどれくらい 動いたかを記録します。右方向左方向2 光が動いていると思ったら、どちらの方向 に動いたかを記録します。3 同時にどれくらい 動いたかを記録しま下方向す。b)ポケット体育館 観 測 手 簿S O P 観 測 手 簿観測地点 :観測開始点変化観測日時天候年月日時刻あり ○なし ×移動方向(上下、左右)観測地点 ::観測開始点観測日時光移動量年月日時刻か を確認します。右方向なっているか かを記録します。奥中下方向手前に関する説明会の様子,b) 計測機器の設置状図-9 計測記録台帳157手前確認します。たかを記録します。3 同時にどれくらい 動いたかを記録します。況の確認および計測体験の様子中2 いつもと違う色になっていたら、どの色に2 中心が動いていると思ったら、どちらの方向 に動い写真-7 自主防災組織のメンバー対する a) 計測機器備  考奥観察記録の順番1 まず、それぞれの位置でのポケットの色を観察記録の順番1 まず、鏡に映った三角の中心が動いているかどう上方向左方向:ポケット位置天候備  考3 下の色見本から傾斜を確認します。 ついて無理なく,十分管理できるという見通しであった。しかし,実際は,ほとんど計測・モニタリングは実施されておらず,計測・モニタリングの体制はほとんど機能していないという状況であった。この要因として,2018年 2 月上旬に北陸地方が豪雪に見舞われ,OSV 計測機器が雪の中に埋没してしまったということも影響したと考えられるが,「決められた人間が決められたときに計測・モニタリングを行い記録する」という方法そのものに問題があったものと考える。すなわち,特定の人に計測機器の管理を任せるという方法は,任された人にとっては,防災活動の一環とはいえ,新たに余計なタスクが課され図-10 「手作り新聞・たかすいかす」の創刊号たこととなり,最初のうちは取り組んでいても徐々に負担に感じるようになり,モチベーションの低下やマンネリ化を招くことになる。今後は,より多くの住民が日常須町の魅力や地域に根付く生活の知恵といった情報もあ生活の一部として危険個所の計測・モニタリングが行えわせて掲載している。今後,手作り新聞という媒体が防るように,町内の住民の行動パターンや生活のリズムを災意識や地域防災力の向上にどのように寄与するかにつより詳細に把握することが必要である。例えば,犬の散いて研究を進めるとともに,計測機器に関する記事を掲歩や畑仕事のついでに機器のそばを通るときに観測機器載していくことで,多くの住民に認知していただき,計を見てもらえるように促すなどである。その場合,計測測・モニタリングに主体的に関与できるよう促したいと者は自主防災組織のメンバーである必要はない。考えている。観測機器に関しては,「POCKET や見通し棒は観測の方法も容易で視覚的にわかりやすいが,SOP は計測の原参考文献理は分かるものの,計測方法がわかりにくい」,「計測記1)録台帳への記載が煩雑である」といった意見も聞かれた。矢守克也(2017):増補版〈生活防災〉のすすめ―東日本大震災と日本社会,ナカニシヤ出版,2017.これらの点については,再度,住民を対象とした説明会2)および見学会・計測体験を通して,計測方法の周知に努総 務 省 統 計 局 , 政 府 統 計 の 総 合 窓 口 「 e-Stat 」,https://www.e-stat.go.jp/める必要がある。あわせて,観測結果の記録方法につい3)辻祐介・川本義海・上村祥代(2010):過疎集落におては,将来,より多くの住民が日常的に高頻度で計測・ける共助型地域輸送活動に関する研究-福井市高須監視が行えるよう大幅な簡略化を図る必要があり,IC カ町を対象として-.第 42 回土木計画学研究発表会,ードを活用した方法などを検討している。土木計画学研究・講演集,42,講演番号 42(CD-ROM).また,電気を使用する計測機器(「POCKET」)につい4)鹿野和彦・山本博文・中川登美雄・駒澤正夫(2007):ては,落雷,断線や電力供給部分の不具合などが発生す福井地域の地質,地域地質研究報告 5 万分の 1 地質るため,定期的にメンテナンスを行う必要がある。将来図幅 金沢(10),独立行政法人産業技術総合研究所,的には,メンテナンスにかかる費用や労力の観点から,地質調査総合センター,第 47 号,NJ-53-12-16,18-4.メンテナンスフリーの計測機器とすることが望ましく,5)「SOP」や「見通し棒」は電力を一切使用しないという芥川真一(2017):光源や光路に工夫して変状を可視化する方法,土木技術,第 72 巻,9 号,pp. 94-98.点で有利である。6)本研究では,危険個所の計測・モニタリングとあわせOSV 研究会 HP,http://www.osv.sakura.ne.jp/index.html(2018 年 11 月 15 日閲覧).て,住民の防災意識や地域防災力の向上を目的として,7)豊澤康男・伊藤和也・Tamarkar S. B.・有木高明・国月 1 回程度の頻度で,学生が中心となって「手作り新聞・見敬・西峰敦志・大久保智美(2007):高精度の傾斜たかすいかす」(図-10 参照)を発行し,住民に配布して計を用いた斜面放火の動態観測・崩壊余地システムいる(2018 年 10 月末時点で第 10 号まで発行)。「たかすの 開 発 , Specific Research Reports of the Nationalいかす」では,防災活動に関連する記事のみならず,高Institute of Occupational Safety and Health..In this paper, the authors proposed the citizen participation-type slope measurement and monitoringsystem to detect the premonitory symptoms of sediment disaster in the mountainous area. Somedifferent types of OSV sensors were introduced to the dangerous slopes and retaining walls selectedby the inhabitants and geotechnical experts. Further improvements of measurement and recordingmethodology are required to increase the participation of inhabitants to the slope measurement andmonitoring.158
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