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出版

タイトル 平成30年7月豪雨での広島県と岡山県のため池の被害
著者 柴田 俊文・西村 伸一
出版 第61回地盤工学シンポジウム
ページ 125〜128 発行 2018/12/14 文書ID fs201812000020
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  • タイトル
  • 平成30年7月豪雨での広島県と岡山県のため池の被害
  • 著者
  • 柴田 俊文・西村 伸一
  • 出版
  • 第61回地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 125〜128
  • 発行
  • 2018/12/14
  • 文書ID
  • fs201812000020
  • 内容
  • 平成 30 年 7 月豪雨での広島県と岡山県のため池の被害Damage of reservoirs in Hiroshima and Okayama prefecturesby the heavy rain event of July 2018柴田俊文*,西村伸一**Toshifumi Shibata and Shin-ichi Nishimura (Okayama University)平成 30 年 7 月豪雨では,西日本を中心に多くの地域で河川の氾濫や浸水,土砂災害が発生した。本文では,広島県と岡山県を対象に,土砂災害の中からため池の損傷に焦点を当て,被害状況を報告する。また,広島県と岡山県のため池の被害の特徴と傾向を示す。キーワード:平成 30 年 7 月豪雨,ため池,損傷形態the heavy rain event of July 2018, reservoir, damage pattern1.はじめに平成 30 年 7 月豪雨では,全国各地の観測地点で 24,48,72 時間降水量の値が観測史上最高値を記録し,長時粟井大池間の記録的な大雨となった。この大雨の影響で,河川の氾濫や浸水害,土砂災害が発生し,死者・行方不明者が多数となる甚大な災害となった 1)。また,全国で 30 箇所十四池を越えるため池が破堤しており,その被害は中国地方近山田上池山田古池辺に集中し,特に広島県では 20 箇所以上が決壊,90 箇所以上のため池が損壊している 2)。また,岡山県でも 220箇所を越えるため池の被害が報告されている3)。本文では,広島県と岡山県のため池を対象に,その被害状況を図-1(b) 福山市の調査ため池(2) 4)報告する。2.広島県のため池の被災状況調査対象は,福山市,東広島市,北広島町,熊野町の4 市町村のため池とした。2.1 福山市のため池図-1(a),(b)に,調査した福山市のため池の位置を示す。勝負迫上池勝負迫下池写真-1 グラウンドを勝負迫上池から望む福山市では,5 箇所のため池が決壊している。(1) 勝負迫上池・勝負迫下池(福山市駅家町)勝負迫上池は貯水量 800m3 ,勝負迫下池は総貯水量堂ノ奥池3,200m3 である。勝負迫上池の上流側に駐車場,グラウ近江谷中池ンドがあり,グラウンドの法面の崩壊が発生していた。この崩壊した土砂が勝負迫上池,勝負迫下池に順次流入し,越流による堤体の破壊が生じたものと思われる(写真-1)。ため池堤体の土質はまさ土であり,また,周囲に図-1(a) 福山市の調査ため池(1) 4)は法面に設置されていたと思われるコンクリートブロッ* 岡山大学大学院環境生命科学研究科 准教授 Assoc. prof., Graduate School of Environmental and Life Science, Okayama University** 岡山大学大学院環境生命科学研究科 教授Prof., Graduate School of Environmental and Life Science, Okayama University125 向迫田ため池寺田池神田池写真-2 下流側から近江谷中池を望む友数西池乙池,大池横池図-2 東広島市・北広島町・熊野町の調査ため池 4)写真-3 堂ノ奥池の損傷状況写真-5 破堤した大池写真-4 山田上池の破堤箇所破堤クが散乱していた。(2) 近江谷中池(福山市赤坂町)天端幅 3.9m,堤高 9.3m,堤長 55.0m,総貯水量 6,000m3の親子池で,堤体土質はまさ土を用い,堤体中央にグラウト工が施工されている。すべり破壊により堤体が損壊しており(写真-2),洪水吐からは越流した可能性もある。(3) 堂ノ奥池(福山市草戸町)天端幅 3.0m,堤高 6.7m,堤長 38.0m,総貯水量 6,000m3の均一型の谷池で,堤体中央部が決壊している。写真-3に示すように堤体中で木の根が成長しており,大風で木写真-6 上空写真(災害後)5)が揺れることにより根の周辺で水みちができた可能性もある。堤体土質はまさ土を使用している。(4) 粟井大池(福山市神辺町)れている。堤体法面で円弧滑りが生じており,練習場の堤体幅 4.2m,堤高 7.6m,堤長 73.0m,総貯水量 12,000屋根からの流水が影響した可能性もある。m3 のため池で,均一型の親子池である。上流勾配は 1:2.0,(6) 山田古池・山田上池(福山市神辺町)下流勾配 1:1.9 であり,円弧滑りが発生している。四つのため池が連なる連続池で,上流から一つ目およ(5) 十四池(福山市新市町)び二つ目のため池が破堤して土砂が堆積しており,この堤体幅 6.0m,堤高 8.2m,堤長 121.0m,総貯水量 28,000破堤は貯水容量の低下と越流によるものであると考えらm3 の均一型の防災重点ため池で,ゴルフ練習場が併設される(写真-4)。池が小規模であったため,下流域に被害126 冠光寺池南谷池江田池大田池写真-7 冠光寺池の損傷状況(左岸側より望む)(5) 友数西池(安芸郡熊野町)堤高 4.4m,堤長 19.0m,総貯水量 540m3 のため池で,左岸側が全て崩壊している。また,堤体土質はまさ土で図-3 岡山市・倉敷市・総社市・浅口市の調査ため池ある。圃場にまで土砂が流出し,一部は民家に到達して4)いる。堤体の左岸側の下流部にも山側からの越流の痕跡は広がらなかった。を確認することができ,堤体より下流側で土砂の流出が2.2 東広島市およびその周辺地域のため池確認できる。洪水吐の大きさが幅 50cm 程度,深さ 30cm(1) 乙池・大池・横池(東広島市黒瀬町)程度と非常に小さく,流下能力が低かったことが越流破上流側から順に横池,大池,乙池と位置する重ね池で堤の原因として挙げられる。あり,天端幅はそれぞれ 1.6m,2.1m,2.2m,堤高は 4.5m,3.岡山県のため池の被災状況4.6m,2.5m,堤長は 47.0m,98.0m,46.0m,総貯水量は3,440m3,5,300m3,1,730m3 である。横池に流入した土砂調査対象は,岡山市,倉敷市,総社市,浅口市,美咲により堤体が越流破壊し,越流した水が順次大池,乙池町の 5 市町村のため池とした。図-3 および図-4 にため池へと流れ込んでいる。大池でも越流破壊が発生し(写真の位置を示す。-5),下流にある乙池では越流の後が確認できたが,破堤(1) 冠光寺池(岡山市北区菅野)には至っていなかった。なお大池では,護岸の破損も認諸元が堤高 12.9m,堤長 111.0m,上流勾配 1:2.0,下流められた。災害後の航空写真を写真-6 に示す。ため池に勾配 1:1.6,天端幅 4.8m,総貯水量 337,950m3,堤体土質土石流が流入し,これが原因で越流破堤したのが特色ではまさ土(均一型)のため池で,防災重点ため池に指定あるが,土砂流入と破堤の様子を写真から確認することされている。洪水吐は堤体左岸側に,底樋は堤体中央部ができる。に設置してある。堤体には水道管,下流側には電柱など(2) 神田池(東広島市東高屋町)が設置されており,天端はアスファルトで舗装されてい諸元が天端幅 2.5m,堤高 3.8m,堤長 49.0m,総貯水量4,200m3 のため池で,堤体一部(長さる。ため池としては比較的貯水量が多いため,破堤した13m,幅 3m)が損場合は甚大な被害が予測されたが,決壊には至らなかっ壊している。被災後,ブルーシートで堤体を覆い,雨水た。降雨と浸透水による間隙水圧の上昇によりすべり破の侵入を防いでいる.すべり破壊または浸透破壊が生じ壊が発生(写真-7)した可能性が高いが,右岸側の道路たものと考えられる。から大量の雨水が流入し下流斜面に流下していたとの情(3) 寺田池(東広島市豊栄町)報もあり,侵食された可能性も否定できない。7 月上旬17,000m3には堤体部に現存していたガードレールが,10 月上旬にのため池で,幅 5m に渡り堤体が決壊している。土砂の天端幅 2.7m,堤高 3.2m,堤長 53.0m,総貯水量はすべり破壊の進行により,滑落していた。損傷後の対流入により越水が生じ破壊に至ったものと思われる。応として,破堤を防ぐため,ポンプで洪水吐から排水を(4) 向迫田ため池(山県郡北広島町)行って水位を下げていた。また,損傷箇所の一部をブル堤高 6.9m,堤長 49.0m,総貯水量6,300m3 のため池でーシートで被覆し,雨水の侵入を防いでいた。まさ土で施工されている。越流により決壊したものと思(2) 江田池(倉敷市矢部)われる。堤体土の下には黒い有機質土の堆積層が見られ,堤高 9.0m,堤長 102.0m,上流勾配 1:2.0,下流勾配 1:1.8,もともと脆弱な地盤の上に構築された池と推測される。天端幅 3.9m,総貯水量 31,660m3 のため池で,堤体土質ここのため池の下流では,6 戸の住宅で床下浸水の被害はまさ土でゾーン型,洪水吐は堤体左岸側に,底樋は堤があった。洪水吐は堤体左側に設置してあり,中央部の体左岸・右岸側に設置してある。すべり破壊が発生した斜樋は破壊されていた。洪水吐は,深さが 20cm,幅がものと思われるが,堤体から水が噴出していたとの証言30cm 程度であり,洪水の流下能力は低かったと考えられがあるため,パイピングによる浸透破壊の可能性もある。る。ため池上流の斜面が崩壊し,土砂が大量に流入していた。127 天端幅 5.1m,総貯水量 17,000m3 のため池である。洪水吐は堤体左岸側に設置で堤体右岸側に斜樋がある。堤体土質はまさ土で,上流側は張り石が施工してある。写真-8 に示す破堤箇所では基礎地盤(砂岩)が露出していた。(5) 山田池(久米郡美咲町)図-4 に山田池の位置を示す。総貯水量が約 100m3 の小規模のため池で堤体左岸側に洪水吐がある。堤体幅がやや狭い箇所で越流破壊が発生したと考えられる。4.まとめ広島県と岡山県の被害を受けたため池を比較すると,写真-8 大田池の破堤状況(上流側より望む)広島県では土石流などの流入により越流が発生し,破堤に至ったケースが数多く見られた。両県に共通した特徴として,長時間にわたる降雨によりすべり破壊・浸透破壊により堤体の下流法面が崩壊したため池が散見された。また,防災重点ため池に指定されていない小規模のため山田池池においても,被害が多数確認された。参考文献1)気象庁:平成 30 年 7 月豪雨(前線及び台風第 7 号による大雨等),https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/bosai/report/2018/20180713/jyun_sokuji20180628-0708.pdf,閲覧 2018 年 11 月.図-4 山田池の位置 4)2)広島県:平成 30 年 7 月豪雨災害による被害等について(最終報),https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/この土砂の流入による急激な水位上昇が,パイピングのattachment/323003.pdf,閲覧 2018 年 11 月.原因になったことが疑われる。損傷箇所の一部をブルー3)岡山県:平成 30 年 7 月豪雨による被害等について,シートで被覆し,雨水の侵入を防いでいた。http://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/574060_4675(3) 南谷池(総社市下倉)221_misc.pdf,閲覧 2018 年 11 月.総貯水量が約100m3 の小規模のため池である。谷川か4)らの土砂がため池に流入し,貯水量が増加することで越Google マップ:https://www.google.com/maps/,閲覧2018 年 11 月.流破壊が生じたと思われる。破堤により,下流部にある5)国土交通省国土地理院:平成 30 年 7 月豪雨に関する圃場に土砂が流出する被害が生じていた。情 報 , 空 中 写 真 ( 垂 直 写 真 ・ 正 射 画 像 ),(4) 大田池(浅口市鴨方町)https://saigai.gsi.go.jp/1/H30_07gouu/0714higashihirosh堤高 9.3m,堤長 112.0m,上流勾配 1:1.0,下流勾配 1:1.5,ima/photo/qv/1049.JPG,閲覧 2018 年 11 月.Due to the heavy rain event of July 2018, flooding of rivers, inundation, and sediment disasterswere caused mainly in western Japan. This report focuses on the damage of the reservoirs and showsthe details of damage in Hiroshima and Okayama prefectures. The tendency and characteristics in bothprefectures are also presented.128
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