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出版

タイトル 液状化対策型貯水槽の浮き上がり防止効果に関する簡易模型実験
著者 中澤 博志・濱田 貴嗣・原 忠・河上 修士
出版 第61回地盤工学シンポジウム
ページ 99〜104 発行 2018/12/14 文書ID fs201812000016
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  • タイトル
  • 液状化対策型貯水槽の浮き上がり防止効果に関する簡易模型実験
  • 著者
  • 中澤 博志・濱田 貴嗣・原 忠・河上 修士
  • 出版
  • 第61回地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 99〜104
  • 発行
  • 2018/12/14
  • 文書ID
  • fs201812000016
  • 内容
  • 液状化対策型貯水槽の浮き上がり防止効果に関する簡易模型実験A simple model test on the effectiveness of prevention for uplifting ofliquefaction countermeasure type water storage tank中澤博志*,濱田貴嗣**,原忠***,河上修士****Hiroshi NAKAZAWA, Takashi HAMADA Tadashi HARA and Shuji KAWAKAMI地震時の地盤の液状化被害の典型的な例の一つに,地下埋設物あるいは地下構造物の浮き上がりによる破損や機能消失がある。地下埋設物の液状化被害については,主としてマンホールの調査実績が多く,浮き上がりによる機能消失の事例が数多く報告されている。また,地域防災上の観点から,発災直後の供用が求められる飲料用貯水槽については,これまで耐震性を主体に検討されていたが,浮き上がり対策に関する検討はあまりなされていないのが現状である。そこで,本研究は,液状化対策型耐震性貯水槽の開発に向けた取り組みとして,排水機能付きの貯水槽を考案し,排水機能を検証するための簡易実験を実施し,その対策効果を確認した。キーワード:貯水槽,液状化,過剰間隙水圧,浮き上がり,模型実験,振動台Water storage tank, Liquefaction, Excess pore water pressure, Uplift, Model test,Shake table test1.はじめに地震時の地盤の液状化被害の典型的な例の一つに,地下埋設物あるいは地下構造物の浮き上がりによる破損や機能消失がある。地下埋設物の液状化被害については,主としてマンホールの調査実績が多く,浮き上がりによる機能消失の事例が数多く報告されている。地震時の地盤の液状化被害の典型的な例の一つに,地下埋設物あるいは地下構造物の浮き上がりによる破損や機能消失がある。地下埋設物の液状化被害事例について写真-1は,主としてマンホールの調査実績が多く,中でも,平地下タンクの浮き上がりによるコンクリートスラブの破損成 16 年 10 月に発生した新潟県中越地震では,液状化によって 1,400 ヵ所以上でマンホールが突出,平成 23 年 3躯体の耐震性にのみ焦点が当てられ,液状化による浮き月に発生した東北地方太平洋沖地震では 20,000 ヵ所以上上がり対策に関する検討がされていないのが現状である。のマンホールが被害を受け,下水管の排水機能はもとよそのため,将来大規模な被害を及ぼすとされる東南海・り,その段差によって交通機能にも障害を及ぼし救助活南海地震の被害想定地域にあたる自治体では,ライフラ動を妨げた苦い経験がある1)。以降,マンホールの浮きインの確保のため,貯水槽の液状化対策を求め始めてい上がりについては,その対策方法の検討が精力的に行わる。れてきている。そこで,本研究では,液状化対策型耐震性貯水槽の開一方,地下に設置されている防火貯水槽ならびに飲料発に向けた取り組みとして,排水機能付きの貯水槽を提用貯水槽は,2016 年熊本地震の際,写真-1 に示す様に,案し,排水機能を検証するための簡易実験を実施し,そ地盤の液状化を原因とする地下貯水槽の破損や機能喪失の効果を検証した。が見られた。特に,地域防災上の観点から,発災直後の供用が求められる飲料用貯水槽については,これまで L22.排水機能付きの貯水槽の概要地震動に対する耐震性の検討はなされてきているものの,**********図-1 に模型実験で用いた概念図を示す。図中(a)は従主幹研究員Principal Research Fellow, NIED新高知重工副部長Deputy Director, Shin Kochi Jyuko co., ltd.高知大学教授Prof., Kochi University防災科学技術研究所高知県産業振興センターManufacturing coordinator, Kochi Industry Promotion Centerものづくりコーディネーター99 (a) 従来型貯水タンク (b) 浮上防止型貯水タンク図-1 実験模型の概念図図-2写真-2模型実験用底板タービン型の集水構造底板(a)断面来型の概略図であり,耐震性を有しているものの,液状化が懸念される際には別途地盤改良等の対策が必要となる。一方(b)に示す液状化による被害抑止を目的とした浮上防止型は,構造形式は従来型とは大きく変化しないものの,底版から頂版まで貫通させた排水ベントを内部に有し,液状化時に生じる周辺地盤の過剰間隙水圧の上昇に応じ地下水を排水排出する機能を付加している。排水ベントは,鋼製タンク内部に設置しており,既存の構造を大きく変更せずコスト抑制に配慮した点に特徴がある。なお,日本消防設備安全センター認定指針2)を見ると,給排水又は給水のための配管を貫通させる開口部を設ける場合は頂版に設けるものとし,加工は製造時に実施することが求められている。配管貫通のための開口部について,以下の様な記載がある。(1)開口部の数は,1 基あたり 4 個以内(2)1 個の開口部面積は,500cm2 以内(3)1 基あたりの開口部面積の合計は 750cm2 以内(4)開口部の周囲は必要な補強を行う(5)RC,PC の場合,鉄筋のかぶりを確保図-3(b) 正面実験模型の概念図3.模型実験概要図-3 に実験模型とセンサ配置を含めた断面図をそれぞれ示す。実験ケースは,無対策である従来型(Case1)とこのうち,頂版の開口部が 4 ヶ所までとされているこ排水ベント付きの浮上防止対策型(Case2)の 2 ケースととから,本研究では,過剰間隙水圧の消散効率を高めるし,加振時の模型躯体周辺地盤の過剰間隙水圧挙動,お為,図-2 に示す様に,底版下に排水ベントへと水流を導よび写真-3 に示す加振後の浮上り量を計測し,排水機能くタービン型集水構造を提案し,排水性の検証を行った。の確認を目的とした。以下に,貯水槽模型,模型地盤,本実験では,写真-2 に示すフィルタ材を詰めた集水性の振動台実験概要をそれぞれ述べる。高い底板を用いた.3.1 貯水槽模型躯体重量が 40t 級貯水槽を対象に,模型躯体サイズは,100 従来型が外径26cm,高さ H は 19.5cm,浮上防止対策型は従来型の高さに加え,底盤 2cm を加えた 21.5cm である。なお,両模型はそれぞれの総重量が 15kg になるように水道水を満たし重量調整したが,実構造物との縮尺比 1/50 に対し,軽い状態で調整したため,浮き上がりやすい状態となっている。3.2 模型地盤模型実験には,長さ L==0.5m×幅 W=0.5m×深さ D=0.5mのアクリル製土槽内に模型地盤を作製し,地盤材写真-3残留変形の様子(Case2)料には豊浦砂を用いた。豊浦砂の物性値は,平均粒径 D50が 0.180mm,均等係数 Uc が 1.7,土粒子の密度 Gs が2.653g/cm3,および最小・最大間隙比がそれぞれ emin=0.594,emax=0.915 である。次に,模型地盤作製方法について述べる。模型地盤は,土槽内に水中落下法により豊浦砂を沈降・堆積させ,深さは 40cm で相対密度 Dr が 50%程度の模型地盤を作製した。模型地盤作製にあたり,土槽を 7 層に分け,各層あたりの間隙水を予め土槽内に満たしておいて,その上部から,写真-4 に示すペットボトルを加工した容器から,写真-4実験模型の概念図所定の乾燥豊浦砂を落下・堆積させた.最終的に作製さ表-1れた実験モデルを写真-5 に示す.作製した模型地盤の S 波速度 Vs を測定したが,起振機で微小な波を発生させることが困難なため,土槽底盤を木槌で水平に軽く叩き弾性波を発生させた.データ整模型地盤の S 波速度ケースD r (%)V s (m/s)Case1Case254.541.975.064.3理は,土槽底面の加速度計から地表中を伝播する走時波表-2形を用い,それぞれの波形の立ち上がり時間差t より Vsを算出した.表-1 に Vs をまとめ示すが,模型地盤の Vs はケース70m/s 前後であった。3.3 計測および加振概要Case1模計測機器・センサ類の設置・接続は模型地盤作製とCase2同時に行った.設置する計測機器・センサは,Case1,2ともに,加速度計 4 基,間隙水圧計 4 基,およびレーザ加振No.123123加振条件モーター加振周波数 最大加速度 加振時間回転数(Hz)(Gal)(s)(rpm)4000.6973.119.28001.38144.712.2712002.12404.313.594000.6873.020.58001.37161.912.412002.06403.27.75ー変位計 2 基であり,図-3 に示すセンサのナンバリングについては,例えば,ACC1-1 であれば,加速度計,Case1Case2 では,加振 No.2 においても加振直後からベントかの 1 番目というケースとなる.らの排水が確認されたが,躯体直下(P1-1,P2-1)と躯体脇加振実験は,予備加振にて,振動台に設置されたモー(P1-2,P1-3,P2-2,P2-3)に生じた過剰間隙水圧挙動につターの回転数を調整することで加振力を把握し調整した.いては,両ケースの傾向にそれほど顕著な差異は見られその際の目安として,振動台の応答値は 0.5Hz で 100Gal,ない.一方,加振 No.2 における鉛直変位は,Case1 に対1Hz で 200Gal および 2Hz で 400Gal であり,実際の加振し,Case2 では躯体の浮き上がりと周辺地盤の地表面沈実験では,表-2 に示す条件で実験を実施した.なお,加下が小さくなっている.加振 No.3 については,Case1 に振波モーターの回転数を手動で制御していたため,各加おいて,t=10s 付近で地表面変位の計測が液状化により振ケースともに,概ね 15 波程度の繰返し載荷とした。困難となったため,頭打ちとなっている.しかし,Case1において,地表面沈下と躯体の浮き上がりのタイミングは加振開始から同時に生じ,一方,Case2 では,そのタ4.実験結果イミングは過剰間隙水圧の発生よりも地表面変位の発生表-2 に示す加振ケースにおいて,加振 No.1 では Case1および Case2 の両ケースで優位な過剰間隙水圧,変位量がやや遅いことがわかる。がほとんど生じなかった。したがって,図-4 および図-5に加振 No.2 および No.3 における時刻歴データに絞りそ5.液状化対策効果の確認表-2 に示す加振 No.1~No.3 を対象に,加振時の液状れぞれ示す。両図より,躯体天端の応答加速度(ACC1-4,ACC2-4)化に伴う躯体浮き上がりや,過剰間隙水圧消散に伴う地を見ると,Case1 よりも Case2 でやや大きくなっている.表面沈下量に着目した考察を行った。振動台を加振する101 (a) Case1(b) Case2図-4加振 No.2図-5加振 No.3(a) Case1(b) Case2際,手動によりスタート・ストップを行ったため,Case1かる.と Case2 における加振時間がそれぞれ異なることから,図-8 に最大過剰間隙水比と地表面沈下量の関係を示加振開始から 5 波,10 波および最大過剰間隙水圧発生時す.過剰間隙水圧比が 1 以下の場合,Case1 と Case2 にの各加振回数毎にデータ整理を行った。顕著な差異は認められず 10mm 程度であるが,過剰間隙水圧比が 1 を超えて完全に液状化した場合には,Case1図-6 に振動台応答加速度と過剰間隙水圧比の関係,および図-7 に地盤内最大加速と最大過剰間隙水圧比の関で 30mm 程度,Case2 では 15mm 程度と倍半分の沈下が係をそれぞれ示す。図-6 より,今回の実験条件として,生じており,Case2 の排水ベントの効果が得られたもの200〜300Gal 程度で液状化に至ることが確認できる.まと推察される。しかし,仮に躯体が浮上しなくても段差た,躯体脇の地盤のデータである図-7 を見ると,200Galが生じる可能性も否定できないと考えられる。以上の加速度が生じると,完全に液状化に至る様子がわ次に,過剰間隙水圧比と躯体浮上量の関係について,102 振動台応答加速度と過剰間隙水圧比の関係図-9過剰間隙水圧比と躯体浮上量の関係(5 波)地盤内最大加速と最大過剰間隙水圧比の関係図-10過剰間隙水圧比と躯体浮上量の関係(10 波)図-6図-7図-8図-11最大過剰間隙水比と地表面沈下量の関係過剰間隙水圧比と躯体浮上量の関係加振時繰返し数毎にまとめ,図-9〜図-11 にそれぞれ示表面沈下が顕著になるが,沈下量は排水ベントがあるす.Case1 と Case2 を比較すると,繰返し数の増加に伴Case2 の沈下量は約半分に抑えられている.一方,躯体い,過剰間隙水圧,躯体浮上量も僅かに増加しているが,の浮上量に関しては,過剰間隙水圧比が 0.7 程度までは,両者の関係は,Case1 の方が大きく浮上している.特に,Case1 で浮上が生じるものの,Case2 の対策が効果的であ過剰間隙水圧比が 0.7 までは,Case1 は徐々に浮上が生じ,った.一方,Case2 の浮上が抑えられていることから,この範地震後の貯水槽の機能維持を考えると,躯体の浮上と囲では顕著な対策効果がみられている.また,最大値で周辺地盤の沈下によって生じる段差を把握する必要があ見ると,過剰間隙水圧比が 0.7 を超えると,躯体の周辺る。図-12 および図-13 に最大過剰間隙水圧比と相対変位摩擦がなくなることから,浮上量に差があるものの,両の関係を示す.Case1 と Case2 の両者を比較すると,過者ともに躯体の浮上が顕著になる様子がわかる.剰間隙水圧比が 0.7 程度までは,ほぼ同様な相対変位が上記をまとめると,周辺地盤については,過剰間隙水生じるようであるが,これを超えた場合に顕著な差が生圧比の増加に伴い徐々に沈下が発生し,1 に達すると地じている様子がわかる.今回の実験では,Case1 で約103 図-12最大過剰間隙水圧比と相対変位の関係(P1-1,P2-1)図-13最大過剰間隙水圧比と相対変位の関係(P1-3,P2-3)80mm,Case2 で約 30mm 程度であり,周辺の液状化層のの浮上量が小さく,排水ベントによる対策が効果的過剰間隙水圧が蓄積してからの排水ベントによる排水効であった。果は高いと判断できる.写真-3 からは,Case2 で生じたc)躯体と中編地盤との相対変位,すなわち段差の発生相対変位が機能喪失,損傷,修復可能なレベルかの判断に関し,従来型と液状化対策型の両者を比較すると,は困難であるが,一般的な地盤条件として,躯体周囲す過剰間隙水圧比が 0.7 程度までは,ほぼ同様な相対べてが液状化層であることはないと考えられることから,変位が生じ,これを超えた場合に顕著な差が生じて実際の被害程度はより小さいものと考えてよさそうであいる。る。以上より,液状化対策型の排水ベントによる高い排水効果を定性的に判断することができた。6.まとめ本研究では,液状化対策型耐震性貯水槽の開発に向け謝辞:本実験を実施するにあたり,日特建設の田所佑里た取り組みとして,排水機能付きの貯水槽における排水香氏(元高知大学大学院),高知大学大学院の中村由紀恵機能を検証するため,簡易実験を実施し,加振時の対策氏,林聖純氏および棚谷南海彦氏のご協力を得ました。効果を検証した。以下に,実験から得られた知見を示す。ここに期して謝意を表します。a)b)加振時における地表面沈下と躯体の浮き上がりのタイミングは,無対策である従来のケースでは加振開参考文献始から同時に生じ,一方,排水ベントを伴う液状化1) 松島修・目黒亨・高瀬行廣・松田恭明・中田稔・宮原対策型では,過剰間隙水圧の発生よりも地表面変位誠二:マンホール浮上防止対策技術に関する研究,日の発生がやや遅れて発生する。本下水道新技術機構,https://www.jiwet.or.jp/result/annu躯体の周辺地盤については,過剰間隙水圧の発生・al/pdf/2007/pipe/02/2007a2-2-1-6m.pdf, 2018 年 3 月 1成長に伴い徐々に沈下が発生し,1 に達すると地表日閲覧.面沈下が顕著になる。液状化対策型の沈下量は,従2) 日本消防設備安全センター:耐震性貯水槽の設計手引来型に対し,約半分に抑えられている。一方,躯体き及び管理マニュアル,www.fesc.or.jp/05/pdf/manual.の浮上量に関しては,過剰間隙水圧比が 0.7 程度まpdf,2018 年 9 月 1 日閲覧.では,従来型で浮上が生じるものの,液状化対策型One of the typical ground damages regarding to liquefaction occurred by the earthquake is breakageand loss of function due to uplifting of underground structures. Regarding to damages of undergroundstructures caused by liquefaction, there are many researches of manholes, and many cases of loss offunction due to uplifting have been reported. Regarding water storage tanks that are required to beused immediately after disaster from the viewpoint of regional earthquake disaster prevention,although considering seismic resistance as the main subject, it is thought that liquefactioncountermeasures against uplifting on water storage tanks have not been studied much at present.Therefore, in this study, the authors tried to devise a liquefaction countermeasure type water storagetank for earthquake resistant with a drainage function. A simple model test to verify the drainagefunction was carried out and confirm its effectiveness of the countermeasure.104
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