書籍詳細ページ
出版

タイトル 杭基礎擁壁の地震時残留変位算定法に関する検討
著者 藤本 達貴・中島 進・佐名川 太亮・村田 和哉・西岡 英俊
出版 第61回地盤工学シンポジウム
ページ 85〜92 発行 2018/12/14 文書ID fs201812000014
内容 表示
ログイン
  • タイトル
  • 杭基礎擁壁の地震時残留変位算定法に関する検討
  • 著者
  • 藤本 達貴・中島 進・佐名川 太亮・村田 和哉・西岡 英俊
  • 出版
  • 第61回地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 85〜92
  • 発行
  • 2018/12/14
  • 文書ID
  • fs201812000014
  • 内容
  • 杭基礎擁壁の地震時残留変位算定法に関する検討Attempts on calculation method of earthquake-induced residual displacementof retaining wall with pile foundation藤本達貴*,中島進*,佐名川太亮*,村田和哉*,西岡英俊*Tatsuki FUJIMOTO, Susumu NAKAJIMA, Taisuke SANAGAWA, Kazuya MURATA, Hidetoshi NISHIOKA大地震時は構造物の変形性能を考慮することが重要であり,土留め擁壁の地震時変位量の算定方法に関して,直接基礎形式については降伏後に剛塑性に近い挙動を示すことを反映し,ニューマーク法により残留変位を算定している。これに対して,杭基礎の荷重-変位関係は,直接基礎のような剛塑性的な挙動と異なり,設計で規定する降伏点を超えた後でも,一定程度抵抗力が増加する傾向が確認される。その上,杭基礎は壁体-背面盛土間,杭基礎-支持地盤間の複雑な動的相互作用の影響等を受けるため,変位急増のモードが複数存在する。そのため,L2 地震動に対する応答値を算定する場合,杭基礎の変形特性を考慮した方法が必要となる。そこで本稿では,杭基礎の変形特性と「鉄道構造物等設計標準・同解説」における杭基礎の性能照査の考え方を踏まえ,杭基礎擁壁の地震時残留変位を算定する方法について検討した結果を報告する。キーワード:擁壁,杭基礎,残留変位,ニューマーク法Retaining wall, Pile foundation, Residual displacement, Newmark sliding block method以上の背景のもとで,「鉄道構造物等設計標準・同解説1.はじめに鉄道施設は線状構造物であるため,一部の土木施設崩土留め構造物 5)」(以下,「土留め標準」)においては,一壊に対する影響範囲が広く,線区全体の機能不全に直結般的な設計条件において抗土圧擁壁の基礎あるいは壁体する。都市部においては,在来線の鉄道延長の約 8 割がの応答値を,図-2 に示す通り①基礎の応答,②壁体の応土構造物であり,土留め構造物は 25 万か所に及ぶため,答,③支持地盤・背面盛土の応答を別々に算定し,重ね土構造物,土留め擁壁の耐震補強は急務である。合わせる上下分離モデルにより算定する場合には,L2 地震動に対する応答値算定はニューマーク法を用いている。土留め擁壁には図-1 に示す通りもたれ壁やブロック積み壁・石積み壁などのように背面にもたれかかりながしかし,ニューマーク法は直接基礎形式の抗土圧擁壁ら安定を確保する形式から,重力式擁壁や片持ち梁式擁のように荷重-変位関係が剛塑性的と近似できる場合に壁などのように剛なコンクリート構造物で自立性の高いは適用性が高く,模型実験や実被害事例の逆解析結果でものなど,多様な構造形式が存在する。このため,既設もその適用性が確認されている 6)が,杭基礎形式の擁壁土留め擁壁の耐震性照査のためには,各構造形式におけの地震時残留変位を評価する方法について詳細に検証さる脆性的な破壊形態を把握した上での検討を実施するこれた実績は少ない。そこで,本稿では,杭基礎の変形特性と「鉄道構造物とが必要となる。大地震時は構造物の変形性能を考慮した応答値を算等設計標準・同解説」における杭基礎の性能照査の考え定することが重要であるため,極限釣り合い法に基づく方を踏まえ,杭基礎擁壁の地震時残留変位を算定する方安定解析と許容安全率の組合せによる構造物の耐震性評法について検討した結果を報告する。価法に代わり,擁壁の変位量など構造物の変形性能を評石積み・ ブ ロ ッ ク 積み壁控え壁式擁壁も たれ壁価する研究も進められてきた。Richard1)らは,ニューマーク法 2)を擁壁の変位算定に応用し,滑動変位を算定する方法を提案した。また,転倒変位を算定する方法をZeng3)らが提案している。また,Nakajima ら4)は擁壁の片持ち 梁式擁壁重力式擁壁U 型擁壁地震時挙動がニューマーク法で想定する剛塑性的な変位挙動だけでは説明できないことを模型実験により確認し,支持地盤,背面地盤の変形とひずみ軟化を考慮した擁壁の地震時変位量の評価手法を提案している。*鉄道総合技術研究所構造物技術研究部図-1 土留め壁の種類Structure Technology Division, Railway Technical Research Institute85 表-1 抗土圧擁壁の変形レベルと沈下量の目安 7)変形レベル被害程度1無被害沈下量の目安有道床軌道の場合省力化軌道の場合一般盛土部橋台・ボックスカルバート等の構造物背面盛土無被害2軽微な被害3応急処置で復旧が可能な被害沈下量5cm未満沈下量5cm以上15cm未満4復旧に長時間を要する被害沈下量15cm以上沈下量20cm以上50cm未満背面の沈下差10cm未満沈下差10cm以上20cm未満沈下量50cm以上沈下差20cm以上沈下量20cm未満2.2 抗土圧擁壁の応答値の算定「土留め標準」における抗土圧擁壁の復旧性に関する照査手順の概略を図-4 に示す。まず,静的非線形解析により壁体,基礎それぞれの荷重-変位曲線から降伏震度を算定し,得られた降伏震度を比較することで壁体先行降伏または基礎先行降伏を判定する。壁体先行降伏(図中左側)の場合,壁体の応答値を算図-2 分離型モデルによる応答値算定イメージ5)定・照査した後,壁体の最大応答震度における基礎の応答値が限界値以内であることを照査,あるいは地表面設2.抗土圧擁壁の耐震性照査計地震動に対する基礎の照査を実施する。2.1 抗土圧擁壁の要求性能一方,基礎先行降伏(図中右側)の場合は,地表面設「土留め標準」において,土留め構造物には,安全性,計地震動に対する基礎の応答値を算定・照査し,基礎が使用性および復旧性に対する要求性能が設定されており,先行降伏する場合の地盤抵抗の割り増しを考慮した上で,土留め構造物のうち擁壁については,盛土等の土構造物静的非線形解析により基礎の荷重-変位関係を求め,基の付帯構造物として用いられることが多いため,背面に礎の最大応答震度における壁体の応答値を照査する,あある土構造物との連続性を考慮し,性能ランクに応じたるいは地表面設計地震動に対して壁体の照査を実施する。要求性能の水準が定められている。ここで,直接基礎の場合,基礎あるいは壁体の応答値この内,擁壁の復旧性に対する検討は,図-3 に示すよを上下分離モデルにより算定する場合には,後述するような壁体の損傷レベル,基礎の安定レベル,背面地盤のうに直接基礎の荷重-変位関係が剛塑性なことから,ニ残留変位・変形レベルに対して,性能ランクに応じた限ューマーク法を用いて算定する。ニューマーク法はすべ界状態に対する照査を行うことになる。り土塊を剛体と仮定し,すべり面における応力・ひずみここで,背面地盤の残留変位・変形レベルについては関係が剛塑性と仮定して地震時のすべり土塊の変位量を表-1 に示す通り,軌道損傷等,鉄道構造物としての被害計算する方法であり,盛土の応答値算定において広く用程度に影響する重要な要素であり,被害程度予測のためいられている。直接基礎の転倒モードに対するニューマには,背面地盤の変形レベルを適切に算定する必要があーク法の概念図を図-5 に示す。る。また,背面地盤の残留変位は,一般的にはすべり面とSTART擁壁の間の背面盛土における擁壁の変位量に応じて発生する沈下の影響が大きいため,擁壁の残留変位量を適切降伏震度算定に算定することが被害程度予測に重要となる。壁体先行降伏の場合基礎の安定レベル背面地盤の残留変位・変形レベル基礎先行降伏の場合基礎先行降伏?壁体先行降伏?壁体の応答値算定・照査基礎の応答値算定・照査(地表面設計地震動)(地表面設計地震動)基礎の応答値算定・照査壁体の応答値算定・照査(壁体の最大応答震度)(基礎の最大応答震度)壁体の損傷レベル背面地盤の変形量の算定・照査図-4 抗土圧擁壁の照査フロー図-3 抗土圧擁壁において考慮する復旧性の性能項目例86 50載荷方向埋込み長300mm埋込み長500mm45φ20mm単杭の水平載荷試験40杭の性能曲線載荷荷重 (N)35302520151050012345678杭頭水平変位 (mm)図-5 ニューマーク法の概念図 5)図-7 模型杭の水平載荷試験結果2.3 直接基礎と杭基礎の変形特性3.杭基礎擁壁の地震時残留変位算定法図-6 に,重力式擁壁模型を使用した振動台実験におけ3.1 杭基礎の性能照査指標と限界値る擁壁直下の支持地盤のせん断変形特性 8)を示す。図に「基礎標準」では,“基礎の変位は生じるが,基礎の残示す変形特性は,擁壁直下の直応力σとせん断応力τの留変位は些少で,構造物の補修は行わずに機能を保持で比 SR と,擁壁滑動量 ds を支持層厚さ h=5cm で正規化しきる状態”を安定レベル 1,“基礎の変位が残留し,場合て得られる見かけのせん断ひずみγの関係である。このによっては補修が必要となるが,早期に機能が回復でき図より,直接基礎は,背面地盤にすべり面が発生した後る状態”を安定レベル 2 とし,杭基礎の応答値が安定レに抵抗力が一定のまま変位が増大する剛塑性的な非線形ベル 1 の限界に達した状態を初期降伏点としている。図挙動が卓越する変形モードであり,しきい値を降伏点(擁-8 に基礎の荷重変位関係と性能項目ごとの限界値およ壁の滑動モードに対しては最大水平支持力)としたニュび安定レベルの概念図を示す。ーマーク法で実務的には再現されている。また,杭基礎は壁体-背面盛土間,杭基礎-支持地盤これに対して,図-7 に模型杭の水平載荷試験結果を示間の複雑な動的相互作用の影響等を受けることや,杭基す。同試験は一定程度の荷重レベルまでの結果であり,礎に変位が生じる要因として,図-9 に示す通りフーチン杭体の破壊までの試験結果ではないものの,杭基礎の荷グの損傷,杭体・結合部損傷,鉛直支持降伏といった多重-変位関係は直接基礎とは異なり,剛塑性的な挙動が数の降伏イベントが存在するため,必ずしも変位が急増明確ではなく,一定程度抵抗力が増加する傾向にある。する荷重状態と初期降伏点が一致しない。そのため,「基礎標準」においては,一部の部材や杭近このため,杭基礎擁壁の残留変位量の評価にあたっては,直接基礎とは異なる抵抗特性を反映する必要がある。傍の地盤が非線形化した後にも抵抗力が増大する杭基礎そこで,以下では「鉄道構造物等設計標準・同解説 基について,構造物を所要の状態(安定レベル)に留める礎構造物9)ために,表-2 に示すような複数の指標により照査してい」(以下,「基礎標準」)における杭基礎の性能照査の考え方と,土留め擁壁の特性を考慮して杭基礎る。擁壁の地震時残留変位算定法について検討する。以上の「基礎標準」における設計概念を踏まえ,次節では杭基礎擁壁の残留変位算定法を提案する。なお,後述する算定法は抵抗力を可変としており,ニューマーク直接基礎の性能曲線法の概念とは異なるが,直接基礎形式の算定法との連続Failure plane formation0.6Shear stress ratio, SR ( = / v )性を考慮し,本稿では便宜的にニューマーク法と称する。0.50.40.30.20.10.0-0.10.000.050.100.150.200.250.30Shear strain, ds/ he図-6 直接基礎のせん断変形特性 8)図-8 基礎の荷重変位関係と性能項目ごとの限界値および安定レベルの概念図 9)87 を設定した。そして,ニューマーク法により得られる変位に降伏前の変位を足し合わせることで,最終的な地震時残留変位を求める。フーチング損傷HLdHLdδH水平変位⇒水平変位と部材損傷の相関kySLδH杭体・結合部損傷HLd変形特性を考慮した荷重-変位関係水平安定レベル2超過または部材損傷レベル2超過鉛直支持降伏HLd[SL2]直接基礎と同様に初期降伏点のみを考慮した場合図-9 杭基礎の変位発生要因HLd[SL1]表-2 杭基礎の性能照査指標と限界値 9)水平安定レベル1超過または部材損傷レベル1超過弾性変形δSL1 δSL2-δSL1 δSL2δH図-10 水平変位に関するしきい値の設定MLdθMLd回転変位⇒転倒変位と鉛直支持の相関kyOTθHLd回転安定レベル2超過または鉛直支持レベル2超過変形特性を考慮した荷重-変位関係MLd[OT2]MLd[OT1]直接基礎と同様に初期降伏点のみを考慮した場合3.2 杭基礎の地震時残留変位の算定法前述した杭基礎の特性と,表-2 に示す「基礎標準」の規定を併せて,ニューマーク法のしきい値の設定法を図回転安定レベル1超過または鉛直支持レベル1超過弾性変形-10,11 に示す通り提案する。θOT1 θOT2-θOT1表-2 の通り,杭基礎は,基礎の鉛直,水平,残留傾斜θOT2θ図-11 回転変位に関するしきい値の設定に加えて,基礎部材の損傷・破壊に関連した設計上の限界値が設定されている。ここでは,それぞれの相関関係から水平抵抗力および抵抗曲げモーメントのしきい値を4.杭基礎擁壁の地震時残留変位の試算設定することとした。4.1 試算モデル具体的には,水平変位の算定に対しては,水平安定お前述した算定法に基づき,杭基礎を有する片持ち梁式よび部材損傷レベル 1 超過時を第 1 しきい値,レベル 2擁壁の残留変位および背面盛土の沈下量を試算する。試超過時を第 2 しきい値とし,回転変位の算定に対しては,算対象となる擁壁の断面図および基礎平面図を図-12 に,回転安定および鉛直支持レベル 1 超過時を第 1 しきい値,構造諸元を表-3 に示す。また,地盤条件について表-4レベル 2 超過時を第 2 しきい値とすることで,初期降伏に示す。なお,本検討では基礎の残留変位量算定を目的とし,後にも一定程度抵抗力が増大する杭基礎の変形特性を考壁体およびフーチングは剛域とすることで壁体の降伏は慮することとした。考慮しないものとした。ここで,それぞれのしきい値における水平抵抗力や抵抗モーメントはプッシュ・オーバー解析により求められる。具体的な算出方法については後述する。また,第一しきい値である図中の HLd[SL1],MLd[OT1]に達するまでも構造物に変位が生じることを踏まえ,ニューマーク法での残留変位算定に用いる荷重-変位関係88 ばね定数は「基礎標準」に従い算定した。解析結果を図-14 に示す。また,解析結果から得られた各限界状態における震度および最大応答震度を表-5に示す。ここで,レベル 2 超過以前に最大応答震度を迎えているため,後述するニューマーク法に用いるしきい値の設定においては,最大応答震度を考慮することとした。図-12 試算断面および基礎平面図(単位:mm)表-3 構造諸元壁体フーチング壁頂厚450mm壁高4400mm壁勾配前面=1:0.00(垂直), 背面=1:0.05延長14000mm幅4500mm厚さ1300mm延長14000mm鉄筋かぶり前面側:70mm,背面側:75mm鉄筋軸方向鉄筋(壁面部) 前面側:D13(SD345)@250,背面側:D22(SD345)@125(壁体)配力筋D13(SD345)@250コンクリート構造諸元杭背面土細骨材の最大寸法σck=24 N/mm225mm杭種鉄筋コンクリート杭工法場所打ち杭杭径φ1000杭長13.0m設計基準強度軸方向鉄筋D32(SD390)×16本せん断補強筋D22(SD390)@125盛土(土質2)単位体積重量19 kN/m335°1.00.9盛土勾配0 kN/m21.0:1.5盛土高2.0m内部摩擦角粘着力背面盛土図-13 軸線図土質区分鉛直支持レベル1超過kh=0.661(δx=159mm)0.8【水平変位】第1しきい値杭部材損傷レベル1超過kh=0.501(δx=89mm)水平震度kh0.7表-4 地盤条件No.層厚土質区分(m)N値γCφEdVsVp(kN/m3)(kN/m2)(度)(kN/m2)(m/s)(m/s)備考埋戻し2.4砂質土─18───110─表層14.0粘性土51648.1─8223130930〃24.0砂質土2018─34337492501050〃34.0砂質土3019─35415452701130〃41.0砂質土10019─44911974001680基盤【水平・回転変位】第2しきい値最大応答震度kh=0.700(δx=252mm)0.6杭部材損傷レベル2超過kh=0.692(δx=287mm)【回転変位】第1しきい値回転安定レベル1超過kh=0.534(δx=101mm)0.50.4水平安定レベル1超過kh=0.526(δx=98mm)0.3水平安定レベル2超過kh=0.676(δx=308mm)0.20.10.00100200G3 地盤(Tg=0.334sec)300400変位量δx (mm)4.2 試算結果500※変位量の着目点:擁壁天端図-14 プッシュ・オーバー解析結果(1) 降伏震度の評価基礎の各照査項目における降伏震度を把握するため,表-5 各レベルにおける震度 kh静的非線形解析(プッシュ・オーバー解析)により水平水平変位水平安定震度-水平変位関係を求めた。解析における構造物の軸線図を図-13 に示す。設計作用として軌道荷重,列車荷レベル 1 超過重,地震時慣性力および地震時土圧を考慮する。地震時レベル 2 超過土圧の算出については「土留め標準」に従い,背面盛土のひずみ局所化およびひずみ軟化挙動を考慮した試行楔最大応答震度法(修正物部岡部法)により算定した。また,杭の地盤89回転変位部材損傷回転安定鉛直支持0.5260.5010.5340.661(δx=98mm)(δx=89mm)(δx=101mm)(δx=159mm)0.676(δx=308mm)0.692(δx=287mm)--0.700(δx=252mm) (3) 残留変位の算定(2) ニューマーク法におけるしきい値の算定設定したしきい値を用いて擁壁の残留変位を算定する。プッシュ・オーバー解析結果より得られた各震度におけるフーチング中心の断面力より,水平変位および回転残留変位算定に用いる地震動は「鉄道構造物等設計標変位に対するしきい値を算定する。ここで,水平変位に準・同解説 耐震設計 7)」に示される地表面設計地震動(土対するしきい値である水平抵抗力は,杭頭部のせん断力構造物照査波)を用いる。を合計して算定し,回転変位に対する抵抗モーメントは滑動力と水平抵抗力の時刻歴および水平方向の変位算杭頭部の軸力とアーム長を乗じたものと杭頭部のモーメ定結果を図-18,19 に,転倒モーメントと抵抗モーメンントを合計したものとした。図-15 にしきい値の算定方トの時刻歴および 回転による水平変位算定 結果を図法を,図-16,17 に算定した結果を示す。ここで,図-16,-20,21 にそれぞれ示す。17 に示したニューマーク法に用いる抵抗特性は,前述し得られた結果より,擁壁の残留変位および背面盛土のた通り,降伏前までに生じる変位を差し引いたものとな沈下量を算定する。基礎底面,擁壁天端それぞれの残留っている。変位の算定方法を図-22 に示す。また,残留変位は降伏までの変位とニューマーク法により得られた変位の合算【基礎中心の水平抵抗力】杭頭部のせん断力を合計して算定(H=H1+H2)【基礎中心の抵抗モーメント】杭頭部軸力×アーム長+モーメントを合計して算定(M=M1+M2+V1×L1 +V2×L2)MV1M1値とする。基礎底面および擁壁天端における水平方向の残留変位算定結果を表-6,7 にそれぞれ示す。なお,基礎底面での降伏までの水平変位は,プッシュ・オーバー解析結果における kh=0.501(擁壁天端でδx=89.0mm)の時点での基HH1礎中心の変位量とした。その結果,基礎底面で 99.2mm,M2擁壁天端では 148.0mm の残留変位が発生する結果となった。H2L1L2 V2また,背面盛土の沈下量は,「土留め標準」に従い,図-23 に示す通り,擁壁の変位量(体積)と背面盛土の沈下量(体積)が等しいと仮定して算定する。その結果,背面盛土の沈下量は 195mm となり,一般盛土部の場合,図-15 しきい値の設定方法変形レベル 2 に収まる結果となった。12001500最大応答震度時kh=0.700の水平抵抗力800杭部材損傷レベル1超過時kh=0.501の水平抵抗力600滑動力Fd抵抗力Fr1250滑動力Fd (kN/m)水平力 (kN/m)100040010007505002500-250-500200010203040時間 (s)図-18 滑動力と抵抗力の関係00100200300400δ (mm)図-16 水平抵抗力の設定80滑動変位704000滑動変位 (mm)60モーメント (kN・m/m)最大応答震度時kh=0.700の抵抗モーメント3000杭部材損傷レベル1超過時kh=0.534の抵抗モーメント50403020102000001020時間 (s)図-19 水平変位算定結果100000100200300400δ (mm)図-17 抵抗モーメントの設定903040 転倒モーメントMd (kN・m/m)5000擁壁の変位(体積)転倒モーメントMd抵抗モーメントMr4000擁壁天端の水平変位背面盛土の沈下(体積)148.0mm3000背面盛土の沈下量2000195mm10000すべり面-1000-2000010203040時間 (s)仮想背面図-20 転倒モーメントと抵抗モーメントの関係擁壁下端の水平変位99.2mm図-23 背面盛土の沈下量の算定方法10回転による水平変位回転による水平変位 (mm)985.おわりに76本稿では,鉄道標準における杭基礎の設計概念と,杭54基礎の抵抗特性を考慮して,杭基礎擁壁の地震時残留変3位算定法を提案した。残留変位の算定にあたっては,杭21基礎の抵抗特性を考慮した第 2 しきい値を設定すること0010203040で,初期降伏後の抵抗力増加を考慮した。また,水平変時間 (s)図-21 回転による水平変位算定結果位については水平安定と杭体の応力に影響する水平力,転倒による変位については回転安定と杭の支持力に影響する曲げモーメントに相関があると想定し,それぞれの【基礎底面における水平変位の算出】変位算定に用いるしきい値の設定法を整備した。また,提案した算定法に従い,杭基礎を有する片持ち梁式擁壁の残留変位を試算した結果,提案手法の実現可能性を示降伏までの水平変位+ニューマーク法での水平変位唆する結果となった。しかし,本検討のように上下分離モデルにて検討する【擁壁天端における水平変位の算出】場合,プッシュ・オーバー解析時に壁体の変形に伴うエネルギー吸収を反映できていないことなど,上部工と下部工が一体で挙動する杭基礎構造物全体の変形性能が考降伏までの水平変位+ニューマーク法での水平変位+ニューマーク法での回転による変位慮できていないという課題もある。図-22 残留変位の算定方法今後,上下部一体とした場合の解析や,実験による提案手法の検証など,さらなる検討を実施し,杭基礎擁壁表-6 基礎底面における水平方向の残留変位に関する最適な設計法の提案を目指し,検証を進めていきたい。水平変位量降伏までの水平変位ニューマーク法による水平変位算定値合計値46.8 mm参考文献52.4 mm1)R. Richards Jr. K.L. Fishman, R.C. Divito (1996):Threshold accelerations for rotation or sliding of bridge99.2 mmabutments, Jornal of Geotechnical engineering, Vol. 122,No. 9, pp. 752-759.表-7 擁壁天端における水平方向の残留変位2)水平変位量降伏までの水平変位ニューマーク法による水平変位算定値ニューマーク法による転倒変位算定値合計値Newmark, N.M. (1965) :Effects of earthquake on damsand89.0 mmembankments,Geotechnique,Vol.15,No.2,pp.139-159.52.4 mm3)Zeng, X. and Steedman, R.S. (2000) :Rotating blockmethod for seismic displacement of gravity walls,6.6 mmJournalofGeotechnicalandGeoenvironmentalEngineering, pp.709-717.148.0 mm4)Nakajima, S., Koseki, J., Watanabe, K., and Tateyama,M.91(2009) : A simplified procedure to evaluateearthquake-inducedresidualdisplacementsconventionalretainingwalls,typeSoilsofand Foundations, Vol. 49, No.2, pp.287-303.5)鉄道総合技術研究所(2012):鉄道構造物等設計標準・同解説6)7)鉄道総合技術研究所(2012):鉄道構造物等設計標準・同解説8)土留め構造物,丸善出版.耐震設計,丸善出版.中島進,古関潤一,佐藤剛司(2008):振動台実験西岡英俊,渡辺健治,篠田昌弘,澤田亮,神田政幸における擁壁模型支持地盤のせん断変形特性,第(2010):橋台の地震時応答特性に関する実験的検43 回地盤工学研究発表会.討 , 第 13 回 日 本 地 震 工 学 シ ン ポ ジ ウ ム ,9)pp.1330-1337.鉄道総合技術研究所(2012):鉄道構造物等設計標準・同解説基礎構造物,丸善出版.It is important to evaluate earthquake resistance of retaining wall for railway structure. Forevaluating earthquake resistance of retaining wall effectively, it is necessary to consider thedeformation characteristics of structure during large earthquake.In this study, we attempted to develop a calculation method of earthquake-induced residualdisplacement of retaining wall with pile foundation. In the proposed method, earthquake-inducedresidual displacement which considered the deformation characteristics of pile foundation wascalculated by setting the threshold value according to the damage level of pile foundation regulated bythe Japanese Railway design standard for foundation structure.92
  • ログイン