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タイトル 地震時におけるグラウンドアンカーの損傷と抑止効果について
著者 常川 善弘・酒井 俊典・近藤 益央・藤田 智弘・高梨 俊行・田口 浩史・山下 英二
出版 第61回地盤工学シンポジウム
ページ 51〜58 発行 2018/12/14 文書ID fs201812000009
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  • タイトル
  • 地震時におけるグラウンドアンカーの損傷と抑止効果について
  • 著者
  • 常川 善弘・酒井 俊典・近藤 益央・藤田 智弘・高梨 俊行・田口 浩史・山下 英二
  • 出版
  • 第61回地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 51〜58
  • 発行
  • 2018/12/14
  • 文書ID
  • fs201812000009
  • 内容
  • 地震時におけるグラウンドアンカーの損傷と抑止効果についてOn damage and deterrent effect of ground anchor during earthquake常川善弘*,酒井俊典**,近藤益央・藤田智弘***,高梨俊行****,田口浩史*****,山下英二******Yoshihiro TSUNEKAWA,Toshinori SAKAI, Masuo KONDOH・Tomohiro FUJITA, Toshiyuki TAKANASHI, KojiTAGUCHI, and Eiji YAMASHITA今後,発生が想定される南海トラフ巨大地震等に対し,土工構造物に対する防災・減災対策に向けた取り組みは重要である。著者らは,グラウンドアンカー工(以下,アンカー工)が施工されたのり面(以下,アンカーのり面)のうち,地震外力を受けた 8 箇所について健全性調査を実施し,7 箇所でアンカーが損傷するものの,このうち 4 箇所はアンカーのり面に明瞭な変状がなく,のり面に変状が見られた残り 3 箇所についてもアンカー対策されていない箇所と比べ変位が抑制されていることを確認した。今回の調査から,地震によりアンカーに損傷が発生する可能性が考えられるものの,地震時ののり面安定及び減災対策において,アンカーは有効に抑止機能を発揮している実態が明らかになった。キーワード:地震,グラウンドアンカー,損傷,抑止効果earthquake, ground anchor, damage, deterrent effect1.表-1 調査対象アンカーのり面と地震概要(気象庁)はじめに2015 年に道路土工構造物技術基準1),2017年に同点検のり面要領 2)が定められ,災害時の緊急輸送道路の機能確保等,No道路の重要性や要求性能に応じた設計や維持管理の方法発生が示されている。アンカー工を含む土工構造物の性能に対する社会的要求が高まる背景には,近年,記録的な豪のり面 A雨や地震による甚大な土砂災害が頻発しており,大規模三重県中部地震東北地方のり面 B会生活や経済活動に大きな影響を与える。また,南海トラフ巨大地震等の海溝型地震や,直下型地震等の発生確アンカーの規模り面と震央震度の距離日時タイプ2007三重県16km4/15中部M5.4直下型5強12:19な土工構造物が甚大な被害を受けると,長期間にわたって交通が遮断され、復旧等の災害対応や物流といった社深さ震央地震名2011太平洋沖4/11地震17:16福島県浜通り直下型(余震)8km6kmM7.012km6弱率も高まってきていることも加え,大規模災害への対応のり面 C1長野県2014長野県5km13kmが求められている。しかしながら,アンカー工やアンカのり面 C2神城断層11/22北部M6.714kmーのり面が,豪雨や地震等の外力の作用によってどのよのり面 C3地震22:08直下型6弱15kmうな損傷を受けるのか,その際に期待される抑止機能をのり面 D1発揮できるかという点は明らかになっていない。そこで著者らは,地震外力を受けた 4 地点のアンカーのり面 D22016熊本地震のり面について健全性調査を実施し,地震時におけるア4/161:25のり面 D3ンカーの損傷の実態や,その抑止効果について検討を行熊本県熊本地方直下型(本震)12kmM7.325km15km6強27kmった。対象とする地震は,2007 年 4 月 15 日に発生した三2.重県中部を震源とする三重県中部地震(M5.4),2011調査概要2.1 調査対象アンカーのり面と地震概要表-1 は,今回調査対象としたアンカーのり面と地震年 4 月 11 日に発生した福島県浜通りを震源とする東北の関係を示したものである。に発生した長野県北安曇郡白馬村を震源とする長野県* ㈱相愛** (国)三重大学大学院地方太平洋沖地震の余震(M7.0),2014 年 11 月 22 日Soai Co.,Ltd教授Prof., Mie University*** (国研)土木研究所Public Works Research Institute**** 日本地研㈱Nihon Chiken Co.,Ltd***** 川崎地質㈱Kawasaki Geological Engineering Co.,Ltd****** 北海道土質コンサルタント㈱Hokkaido soil consultant Co.,Ltd51 神城断層地震(M 6.7),2016 年 4 月 16 日に発生した熊9.5m∼26.5m,定着長は 5.5m である。本県熊本地方を震源とする熊本地震(M7.3)の 4 つの地震で,いずれも内陸部の直下型地震である。(3) のり面 C1これらの地点の地震に対し,三重県中部地震ではの写 真-3 に 示すり面 A の 1 箇所,東北地方太平洋沖地震はのり面 B ののり面 C1 は,地1 箇所,長野県神城断層地震はのり面 C1∼C3 の 3 箇所,すべり地に位置し,熊本地震はのり面 D1∼D3 の 3 箇所の計 8 箇所につい新生代新第三紀中て調査を実施した。栗原・他(2008)3)は,地震の震央生代の堆積岩類をから調査対象となるアンカーのり面までの距離につい基盤岩とする道路切土のり面である。施工時期は不明で,て,過去の大規模地震と斜面の大規模崩壊の記録を基直壁のアンカー付 H 杭親杭タイプの土留め擁壁に,2 段に,震央より 40km 以内で大規模な斜面崩壊が発生し×50 列の千鳥配列にて 50 本のアンカーが施工されていていることを示しており,本調査対象のアンカーのりる。施工アンカーは,ナット定着方式・摩擦引張り型タ面は,いずれも震央から約 8km∼30km の範囲に位置し,イプの PC 鋼棒アンカー(ゲビンデスターブ D26)で,この範囲内にある。頭部保護方式はアルミ製の頭部キャップとなっている。写真-3 のり面 C1 の地震後の状況施工アンカーの設計緒元は不明であるが,地震により損傷したアンカー箇所の更新対策のアンカー設計資料から,2.2 アンカーのり面概要各調査地点のアンカーのり面の概要について,以下に設計アンカー力及び定着時緊張力は 302kN,アンカー長は 24m∼25m,定着長は 7m と推定される。示す。(1) のり面 A写真-1 に示すの(4) のり面 C2り面 A は,新世紀第写 真-4 に 示す四紀完新世のシルトのり面 C 2 は,地岩を基盤岩とする道すべり地に位置し,路切土のり面である。写真-1 のり面 A の地震後の状況新生代新第三紀中供用後,豪雨によるのり面変状が発生したため,アンカ生代の堆積岩類をー工が施工された変状履歴のあるのり面である。のり面基盤岩とする道路勾配は 1:1.2 で,吹付法枠工に 8 段×7 列∼11 列の配置切土のり面である。施工時期は不明で,H 鋼杭親杭に 1写真-4 のり面 C2 の地震後の状況にて 146 本のアンカーが平成 1 年∼3 年にかけて施工さ段×101 列の配置で,101 本のアンカーが施工された直壁れている。施工アンカーは,ナット定着方式・摩擦圧縮のアンカー付き土留め擁壁の前面に,のり面勾配 1:0.4型タイプの多重 PC 鋼より線アンカー(SEEE F50TA)の重力式コンクリート擁壁が追加施工されている。施工が施工され,頭部保護方式はアルミ製の頭部キャップとアンカーは,ナット定着方式・摩擦引張り型タイプの PCなっている。設計アンカー力は 243 kN∼260kN,定着時鋼棒アンカー(ゲビンデスターブ D32 及び EGS D32)で,緊張力は不明,アンカー長は 9.6m∼27m,定着長は 5.5m頭部保護は,終点側の一部の鋼製の頭部キャップ区間をである。除き,コンクリート製の頭部キャップとなっている。アンカー区間は延長約 200m と長く,地形・地質条件により設計アンカー力は 351 kN∼471kN に区分され,定着時(2) のり面 B写 真 -2 に 示 す緊張力は中間部で設計アンカー力の 60%,その他の区間のり面 B は,新生で設計アンカー力の 100%となっており,アンカー長は代新第三紀中新世13m,定着長は 5m である。のシルト岩・砂岩互層を基盤岩とする道路切土のり面(5) のり面 C3写真-2 のり面 B の地震後の状況写 真-5 に 示すである。切土施工時にのり面に孕み出しが確認され,起のり面 C 3 は,地点側の延長約 160m 区間にアンカー工が対策された変状すべり地に位置し,履歴のあるのり面である。のり面勾配は 1:1.0∼1:1.2新生代新第三紀中で,既成の PC 独立受圧板を用いて 6 段×54 列∼63 列の生代の堆積岩類を配置にて 350 本のアンカーが平成 8 年に施工されている。基盤岩とする道路施工アンカーは,くさび定着方式・摩擦引張り型タイプ切土のり面である。アンカー施工時期は不明で,のり面の PC 鋼より線アンカー(VSL勾配は 1:0.6 で,もたれ式コンクリート擁壁に 1 段∼2E5-7)で,頭部保護方写真-5 のり面 C3 の地震後の状況式はポリエチレン製の頭部キャップとなっている。設計段×18 列の配置にて,24 本のアンカーが施工されている。アンカー力及び定着時緊張力は 696kN,アンカー長は施工アンカーは,ナット定着方式・摩擦引張り型タイプ52 の PC 鋼棒アンカー(EGS D23)で,頭部保護方式はアの火砕岩類を基ルミ製の頭部キャップとなっている。設計アンカー力は盤岩とする河川149kN,定着時緊張力は不明,アンカー長は 8.5m,定着の護岸擁壁が施長は 4.5m である。工された切土の補強土壁工り面である。平擁壁のクラック成 13 年に,のり(6) のり面 D1写 真 -6 に 示 す写真-8 のり面 D3 の地震後の状況面上部の補強土のり面 D1 は,新壁工による道路盛土施工と合わせて,護岸擁壁部にアン生代第四期中期更カー工が施工されている。のり面勾配 1:0.5 のもたれ式新世の安山岩を基コンクリート擁壁に,2 段∼3 段×10 列の配置で 28 本の盤岩とする道路盛アンカーが施工されている。施工アンカーは,ナット定土のり面に施工さ a) 起点側のアンカーのり面状況れたアンカー工で着方式・摩擦圧縮型タイプの多重 PC 鋼より線アンカーある。地形・地質リート製の頭部キャップで,それ以外はアルミ製の頭部条件により,のりキャップとなっている。設計アンカー力及び定着時緊張面勾配は,1:0.5力は 229kN,アンカー長は 12.5m∼36m,定着長は 4.5mの延長 40m の間で,軽石流堆積層を定着層としている。(SEEE F40UA)で,頭部保護方式は最下段のみコンク知ブロック擁壁区間と,のり面勾配b) 終点側のアンカーのり面状況1:1.5 の延長 200m写真-6 のり面 D 1 の地震後の状況3.調査方法地震によるアンカの盛土区間に分かれ,それぞれ現場打ち独立受圧板に,2ーの損傷と地震後の段×一部千鳥配列を含む 55 列の配列にて合計 119 本のアアンカーのり面の状ンカーが平成 21 年に施工されている。施工アンカーは,態を確認するため,くさび定着ナット調整方式・摩擦引張り型タイプの PCアンカーのり面の健鋼より線アンカーの 3 規格(KTB全性調査を実施した。写真-9 小型軽量ジャッキが施工され,頭部保護方式はアルミ製の頭部キャップと健全性調査は,現地によるリフトオフ試験状況なっている。設計アンカー力は 395kN∼789kN,定着時踏査(概査),頭部詳細調査,リフトオフ試験とした。リ緊張力は設計アンカー力の 100%,アンカー長は 16.5mフトオフ試験は,写真-9 に示す SAAM ジャッキを用い,∼38.9m,定着長は 6∼9m で,安山岩∼自破砕安山岩をアンカー緊張力の面的な分布状況 4)の確認を基本に実施定着層としている。した。また,リフトオフ試験の結果は,表-2 に示す土木K6-3,K6-5,K6-6)研究所・日本アンカー協会共編(2008)5)の残存引張り力とアンカーの健全度の目安に準じて評価した。なお,(7) のり面 D2定着時緊張力が不明な場合は,定着時緊張力を設計アン写真-7 に示すのり面 D2 は,新カー力として評価を行った。生代第四期後期更表-2 残存引張り力とアンカー健全度の目安(一部加筆)新世の火砕岩類を基盤岩とする道路の盛土のり面に施残存引張力の範囲写真-7 のり面 D 2 の地震後の状況健全度E+0. 9 Tys工されたアンカー工である。直壁のアンカー付 H 杭親杭1. 1 Taタイプの土留め擁壁で,1 段∼2 段×10 列の約 40m の区許容アンカー力 (Ta)設計アンカー力 (Td)間に 17 本のアンカーが施工されている。施工アンカーは,定着時緊張力 (Pt)ナット定着方式・摩擦圧縮型タイプの多重 PC 鋼より線0. 8 Ptアンカー(SEEE F50TA,F70TA)で,頭部保護方式は0. 5 Pt0. 1 Ptアルミ製の頭部キャップとなっている。施工アンカーのD+C+状  態 破断の恐れあり危険な状態になる恐れあり対処例 緊急対策を実施 対策を実施 許容値を超えているB+ 経過観察により対策の必要性を検討A+ 健全A- 健全B-経過観察により対策の必要性を検討C-機能が大きく低下しているD-機能していない 対策を実施引用:土木研究・日本アンカー協会共編「グラウンドアンカー維持管理マニュアル」2008(一部加筆)設計緒元が不明のため,施工アンカーの許容アンカー力の 297kN∼428kN を設計アンカー力及び定着時緊張力と4.仮定し,アンカー長は,既存の地質調査結果より,アンカー長は 8.5m∼14.5m,定着長は 4.5m と推定される。調査結果4.1 健全性調査結果(1)のり面 Aのり面 A は,地震発生の 1 ヶ月前の 3 月 15 日∼3 月(8) のり面 D317 日と地震発生の 4 日後の 4 月 19 日∼4 月 21 日に,リ写真-8 に示すのり面 D3 は,新生代第四期後期更新世53 フトオフ試験によるアンカーのり面の健全性調査を実施の斜面崩壊が発生したものの,起点側の約 120m 区間のしている。リフトオフ試験は,全数の 43%にあたる 63アンカー対策区間において,無対策区間と比べ,のり面本実施した。写真-10(a)は,頭部詳細点検にて,支圧板変状が抑制されていたことが確認された。のズレが確認されたアンカーの地震前後の状況を示したアンカー頭部詳細調査の結果,一部崩土により埋没しものである。地震の前の健全性調査にて,写真-10(a)にたアンカーの損傷状況は不明であるが,施工本数 350 本示すアンカー浮きや支圧板のズレ,小段のクラック等ののうち、58%の 202 本が破断していることが確認された。変状が確認されたが,写真-10(b)に示すように,地震に写真-12 は破断したアンカーの飛び出し状況を示したもよるアンカーの変状の進行は確認されず,現地踏査におのである。PC 鋼より線が頭部キャップを貫通し,約 2.5mいても,のり面変状は認められなかった。リフトオフ試以上飛び出したアンカーも確認された。験の結果,残存引張り力は,54kN∼312kN の範囲であった。図-1 は,地震前後の健全度区分図を示したものである。地震前後とも,全体に C-(定着時緊張力の 50%以下)の分布を示し,一部 B+∼D+(設計アンカー力∼許容アンカー力の 1.1 倍以上)の荷重増加領域が確認された。地震前後の緊張力の変化は,+5kN∼−40kN の範囲で,健全度区分の分布にほぼ変化がなく,地震によるアンカ(a) 頭部キャップの貫通ーの健全性への影響は認められなかった。(b)約 2.5m の飛びだし写真-12 アンカー破断による飛びだし状況また,アンカーの飛び出し以外に,写真-13 に示すアンカー頭部や独立受圧板の落下等が見られ,のアンカー破断による第三者被害の可能性のある 2 次的な被災事例も確認された。(a)地震前(3/16)(b)地震後(4/19)写真-10 アンカー変状箇所の地震前後の比較(変化なし)(a)アンカー頭部の落下(b)独立受圧板の落下写真-13 アンカー及び付帯構造物の落下図-2 は,アンカーの破断等の損傷個所とアンカーの健(a)地震前(3/16)(b)地震後(4/19)全度区分の分布を示したものである。リフトオフ試験は,アンカーが破断せず残っていた起点側と終点側の 2 つの図-1 アンカーの健全度区分図の地震前後の比較ブロックの合計約 133 本のアンカーのうち,23%にあたる 30 本実施した。(2) のり面 B写真-11 は,のり面 B の地震後の崩壊状況の空中写真崩土により埋没を示したものである。終点側アンカー破断ブロック崩壊ブロック L≒120m起点側×:アンカー損傷個所図-2 アンカーの損傷個所と健全度区分図リフトオフ試験の結果,残存引張り力は,0kN∼798kNの範囲であった。起点側の崩壊ブロック外側の健全度区分は,C-(設計アンカー力の 50%以下)∼C+(許容アンカー力∼供用アンカー力の 1.1 倍未満)で,崩壊ブロッ写真-11 アンカー対策のり面区間の崩壊状況ク境界付近で崩壊の影響によると考えられる荷重増加が地震により無対策区間を含む幅約 270m,長さ約 210m確認された。一方,終点側の崩壊ブロック内の健全度区54 分は, D-(設計アンカー力の 10%以下)∼A(設計ア(3) のり面 C1ンカー力以下)の分布が確認された。図中に灰色で示すのり面 C1 は,現地踏査及び頭部詳細調査の結果,5崩壊ブロック内のアンカーは,ほとんどが破断し飛び出本のアンカーに破断が確認されたものの,アンカーのりしているのに対し,終点側のアンカーは破断せず荷重低面の顕著な変状は認められなかった。写真-14 は,アン下している。終点側のアンカーは,アンカー定着部よりカーの破断等の損傷状況を示したものである。アンカー深いすべりの発生により,アンカー自体が崩壊土塊と一の破断による飛び出しと,それに伴う腹起し材の落下及体で移動した可能性が考えられる。びアルミキャップの損傷が確認された。リフトオフ試験本調査のり面の崩壊要因は,地震により当初想定を上は,アンカーの破断が確認された周辺を含め全数の 10%回る広範囲の斜面が不安定化し、アンカーに設計時に想にあたる 5 本実施した。図-4 は,アンカーの損傷個所と定していた以上の外力が作用したことが要因であると考健全度区分を示したものである。リフトオフ試験の結果,えられる。しかし,その一方で,前述の写真-11 に示す残存引張り力は,185kN∼354kN の範囲であった。地震ように,無対策区間とアンカー対策区間について,崩壊後のアンカーの健全度は,A∼D-の分布を示し,アンカ土砂の移動量が大きく異なることが確認された。図-3 は,ーの破断箇所周辺においても,許容アンカー力未満の緊写真-11 で示した無対策区間の A 測線と,アンカー対策張力分布であった。区間の B 測線の崩壊前後の状況の比較を断面図に示したものである。崩壊土砂の移動道路a)アンカーの飛びだしb)頭部キャップの損傷写真-14 アンカーの破断による損傷状況道路部は崩土で埋没×:アンカー損傷個所×××(a)無対策区間断面(A 測線)××××図-4 アンカーの損傷個所と健全度区分図道路(4) のり面 C2のり面 C2 は,現地踏査及び頭部詳細調査の結果,アンカーのり面に変状は認められないものの,道路部の隆起10 本のアンカーに破断(b)アンカー対策区間断面(B 測線)が確認された。写真-15図-3 地震による崩壊前後の断面変化はアンカーの飛び出しと頭部コンクリートの損傷写真-15 アンカーの飛び出しと頭部コンクリートの損傷図-3 の図中の緑線は崩壊前の地形形状,黄色等の塗り状況を示したものである。現地では,頭部コンクリートつぶしは崩壊後の地形形状で,赤線は推定すべり面を示の損傷によるコンクリート片の落下も確認された。リフす。図-3(a)の無対策区間は,崩壊によりのり面の頭部トオフ試験は,アンカーの破断が確認された周辺を含めが約 10m 沈下し,のり面に多数のクラックを生じながら全数の 10%にあたる 10 本実施した。図-5 は,アンカー崩壊土砂が移動して道路を覆い,この区間の崩土は,現の損傷個所と健全度区分を示したものである。地調査にて約 6m∼50m 水平移動していることが確認された。一方,図-3(b)に示すアンカー対策区間は,のり×:アンカー損傷個所面頭部が約 3m 沈下し,道路部にて最大約 5m の隆起が×××確認されたものの,移動土塊はのり面形状を残しながら約 2m∼4m の水平変位に留まり,崩土による道路の埋没×図-5 アンカーの損傷個所と健全度区分図は一部で,道路の舗装面が確認できる状態であった。リフトオフ試験の結果,残存引張り力は,86kN∼277kN55 の範囲であった。地震後のアンカーの健全度は,A∼D-とが確認された。リフトオフ試験は,起点から終点までの分布を示し,アンカーの破断箇所周辺は,許容アンカの区間で全数の 38%にあたる 45 本実施した。図-7 はアー力未満の緊張力分布であった。ンカーの変状箇所と健全度区分を示したものである。起点側終点側(5) のり面 C3のり面 C3 は,現地踏査△△△△及び頭部詳細調査の結果,アンカーのり面の顕著な変△:受圧板の損傷個所状やアンカーの破断,飛び出し等は認められないもの図-7 アンカーの変状箇所と健全度区分図の,5 本のアンカーに写真-16 に示す支圧板のズレ等写真-16 支圧板のズレリフトオフ試験の結果,残存引張り力は,203kN∼の頭部変状が確認された。リフトオフ試験は,アンカー980kN の範囲であった。地震後の健全度区分は,C-∼C+の変状が確認された周辺を含め全数の 21%にあたる 5 本(許容アンカー力の 1.1 倍未満)を示し,起点側の受圧実施した。図-6 は,アンカーの損傷個所と健全度区分を板にクラック等の外観に変状が見られたアンカーについ示したものである。リフトオフ試験の結果,残存引張りて,リフトオフ試験の結果,アンカーの破断や引抜けは力は,0kN∼248kN の範囲であった。支圧板のズレが確確認されなかった。また,これらアンカーの変状箇所周認された箇所のリフトオフ試験において,アンカーの引辺の健全度区分は,C+以下の緊張力分布であることが確抜けが確認されたため,アンカーの抜き取り調査を実施認された。したところ,アンカー自由長部で破断していることが確認された。地震後のアンカーの健全度は,D-∼B+の分布(7) のり面 D2のり面 D2 は,頭部詳細調査の結果,アンカーが 2 本を示し,アンカーの破断箇所周辺は,設計アンカー力よりやや荷重が増加した健全度 B+(許容アンカー力未満)破断し,写真-18 に示すアンカーの飛び出しやアンカーの緊張力分布であることが確認された。の支圧板の回転等の変状が確認された。×:アンカー損傷個所写真 16 支圧板のズレ×図-6 アンカーの損傷個所と健全度区分図(a)アンカーの飛び出し(b) 支圧板の回転写真-18 アンカーの破断・変状状況(6) のり面 D1のり面 D1 は,現地踏査及び頭部詳細調査の結果,ア現地踏査の結果,隣接するアンカー区間以外の道路でンカーの破断は認められないものの,隣接斜面が崩壊しは段差やクラック等の変状が生じオーバーレイが施工さた起点側のアンカー区間において,写真-17 に示す間知れているのに対し,アンカー区間では,のり面変状は認ブロック擁壁や 5 箇所の独立受圧板にクラック等の変状められず道路機能も維持されていることが確認された。が確認された。当のり面は,地震発生の 1 ヶ月後にリフトオフ試験が全数実施され,残存引張り力は,30kN∼466kN の範囲であった。図-8 はその結果を基に,アンカーの損傷個所と健全度区分を示したものである。1-2(a) 間 知 ブ ロ ッ ク 区 間の1-4××(b) 現場打ち独立受圧板×:アンカー損傷個所受圧板の損傷状況のクラック(近景)写真-17 現場打ち独立受圧板の損傷2-7図-8 アンカーの健全度区分図アンカー破断箇所周辺は,健全度区分で D+(許容アンまた,終点側のアンカー区間の外側において,道路等にクラックなどの変状が認められたが,アンカー対策区カー力の 1.1 倍以上)と荷重増加が認められるが,いず間において,変状は小さく道路機能は維持されているこれもリフトオフが確認できており,健全度区分 E+(降伏56 引張り力の 90%)未満であった。また,一年後において,や角度調整台座に顕著なズレや回転が確認されたアンカ荷重増加領域の No1-4 と,荷重低下領域の No1-2,No2-7ーにおいて,リフトオフ試験を実施した結果,アンカーのアンカーについてリフトオフ試験を実施し,いずれもの引抜けと考えられる荷重低下が確認された。また,地20kN 前後の増減と顕著な荷重変化は見られないことが震後において,アンカーの破断が 1 本確認されており,確認された。のり面が不安定な状態であることが推察された。0.9Tys 以上(8) のり面 D3アンカーの引抜け(リフトオフせず)のり面 D3 は,現地踏査及び頭部詳細調査の結果,写真-19 に示すアンカーが施工された擁壁部の損傷や,ア×ンカーの支圧板のズレや回転等の変状が確認された。×地震後に破断擁壁のクラック図-9 アンカーの健全度区分図4.2 地震によるアンカー損傷とのり面変状の関係表-3 は,地震条件と健全性調査結果を基に,地震規模,(a) 擁壁の損傷(b) 支圧板のズレと回転震央からののり面の距離,アンカーの損傷(破断・引抜写真-19 アンカーのり面とアンカーの変状け・受圧板の損傷),のり面変状(クラック等),リフトオフ試験による健全度区分について,整理したものであ擁壁の損傷状況は,擁壁クラック部から座屈したようる。今回調査を行った 8 箇所ののり面のうち,7 箇所でな形状で,擁壁がやや前方に押しだされたように傾斜しアンカーの破断や受圧板の損傷等が確認された。そのうていることが確認された。また,擁壁上部の道路盛土部ち,3 箇所ではのり面変状を伴い,特にのり面変状が顕著には,補強土壁の目地の開きや,盛土部の段差・クラッな 2 箇所においては,損傷個所周辺において健全度区分ク等の変状が確認された。現地の変状状況や変状範囲かE+(降伏引張り力の 90%)のアンカーが存在し,破断・ら,当初想定のすべり変位と考えられるが,地震により損傷の危険性が高い状態が確認された。また,D-(定着アンカーの抑止力を上回る外力がのり面に作用したこと時緊張力の 10%以下)と大きく緊張力が低下し,アンカで,不安定化したと推定された。リフトオフ試験は,全ーが機能していない可能性があるものも見られた。一方,数の 46%にあたる 13 本実施した。図-9 はアンカーの損残る 4 箇所ののり面では,明瞭なのり面の変位は見られ傷個所と健全度区分を示したものである。残存引張り力ず,地震後の健全度区分は C-(定着時緊張力の 50%)∼は,56kN∼297kN 以上の範囲であった。本地点では,降D+(許容アンカー力の 1.1 倍)の範囲であった。明瞭な伏引張り力(Tys)の 90%を載荷してもリフトオフが確認でのり面の変位や地震後の荷重増加が見られないアンカーきない E+の過緊張アンカーが確認された。また,支圧板の損傷については,地震によりのり面や受圧構造物に慣表-3 地震条件と健全性調査結果57 性力が作用することで,アンカーに大きな外力が加わり,箇所でのり面の変状や地震後の緊張力の増加を伴一部のアンカーの破断が発生したと考えられる。わない損傷が確認された。また,アンカーの破断時図-10 は,アンカー損傷とアンカーのり面の変状につに,第三者被害の可能性があるアンカーの飛び出しいて,調査地における本震の換算震度と震央距離との関や,破断に伴う頭部コンクリート片や独立受圧板,係を整理したものである。換算震度は,(1)式に示す森腹起し材等の付帯構造物の落下が確認された。川・他(2007)6) の震度の距離減衰式により求めた。本3)地震規模と震央距離の関係について,震央から約調査結果では,換算震度 5 以上で震央からの距離が 30km30km 以内のアンカーのり面において,換算震度が 5以内ののり面において,7 箇所でアンカーの損傷又はの以上の地震でアンカーの損傷やのり面変状が発生り面の変状の発生が確認された。し始める可能性が考えられた。(1)以上の結果から,地震によりアンカーに損傷が発生する可能性が考えられるものの,地震時ののり面安定及びI:換算震度X:震源距離Mw:モーメントマグニチュードMw=Mj−0.171(宇津(1982)の経験式)Mj:気象庁マグニチュード(M)減災対策において,アンカーは有効に抑止機能を発揮している実態が明らかになった。一方で,地震時のアンカーの損傷や抑止・抑制効果のメカニズムの解明や評価手法などにおいて大きな課題があり,今後も,データを蓄積しながら,様々な視点からの検討が必要と考える。謝辞:本調査の実施に当たっては,道路管理者及びアンカーアセットマネジメント研究会の方々に御協力いただきました。御協力いただいた関係各位に深く感謝いたします。参考文献1)図-10 地震とアンカー損傷・のり面変状の関係同解説,日本道路協会2)5.地震外力を受けた 8 箇所のアンカーのり面について健y_h2908.pdf,2018/8/17.3)全性調査を実施した結果,以下のことが明らかになった。栗原淳一・武澤永純・阪上最一・定村友史(2008):地震によるアンカーの破断や引抜け等の損傷は,7地震時の大規模な土砂崩壊の土量と最大加速度と箇所で確認され,このうち,2 箇所で顕著なのり面の関係に関する考察,砂防学会誌,変状や崩壊が確認された。地震時のアンカーの抑止vol.60,No.5,p54-594)効果において,想定以上のすべりによる崩壊を除き,藤原優・酒井俊典(2012):グラウンドアンカーのアンカーの損傷が見られる場合においても,地震に残存引張り力分布特性に着目したアンカーのり面より大きく崩壊に至るのり面変状は確認されなかの維持管理,土木学会論文集 C(地圏工学),Vol.68,No.2,p260-273ったことから,有効に機能していると考えられる。5)また, 想定以上のすべりが発生し,全体の約 60%のアンカーが損傷したアンカーのり面においても,土木研究所・日本アンカー協会(2008):グラウンドアンカー維持管理マニュアル,鹿島出版会.6)アンカー対策区間の崩壊ブロックは,無対策のり面2)国土交通省(2017):道路土工構造物点検要領,http://www.mlit.go.jp/road/sisaku/yobohozen/tenken/tまとめと考察1)日本道路協会(2017):道路土工構造物技術基準・森川信之・神野達夫・成田章・藤原広行・福島美と比べ,のり面形状を残しながら崩壊土砂の移動が光(2007):強振動記録に基づく計測震度の距離減抑制されていることが確認された。衰式,日本地震学会 2007 年秋季大会講演予稿集,地震によるアンカーの破断や引抜け等の損傷におB31-05いては,2 箇所で顕著なのり面変状を伴う損傷,5For huge natural disasters including Nankai Trough Earthquake, approaches for the disaster prevention andmanagement are important for earthwork structures. Authors were carried out the integrity investigation of roadslopes where ground anchors were constructed. As the result of this investigation, it is confirmed that the stabilityof the slope was maintained by anchors, in spite of the damage and breakage of the anchor head and tendoncaused by the earthquake. The anchor is the structure which is available effectively in disaster prevention andmanagement.58
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