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タイトル 2016年熊本地震で被災した補強土壁における変状要因の分析
著者 佐藤 登・澤松 俊寿・藤田 智弘・新田 武彦・宮武 裕昭
出版 第61回地盤工学シンポジウム
ページ 37〜44 発行 2018/12/14 文書ID fs201812000007
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  • タイトル
  • 2016年熊本地震で被災した補強土壁における変状要因の分析
  • 著者
  • 佐藤 登・澤松 俊寿・藤田 智弘・新田 武彦・宮武 裕昭
  • 出版
  • 第61回地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 37〜44
  • 発行
  • 2018/12/14
  • 文書ID
  • fs201812000007
  • 内容
  • 2016 年熊本地震で被災した補強土壁における変状要因の分析Analysis of the damage factor of reinforced soil walldamaged by 2016 Kumamoto earthquake.佐藤登*,澤松俊寿**,藤田智弘***,新田武彦 *,宮武裕昭 ****Noboru SATO, Toshikazu SAWAMATSU, Tomohiro FUJITA, Takehiko NITTA and Hiroaki MIYATAKE道路土工構造物は,適切に設計・施工を行えば緩やかに変形をしつつ安定を保つ構造物である。道路土工構造物の多くは,極限釣り合い法による安定計算を基本としており,変形が生じた際の性能評価が難しいのが現状である。そのため土工構造物の変形を考慮した性能評価手法を構築する必要がある。本報告では,事例の分析を通じて変状形態,変状要因及び力学的な観点から許容しうる変形の程度を明らかにしていくことを目的に,2016 年熊本地震で被害を受けた補強土壁を対象に,Newmark 法による残留変形解析を実施し,被害の状況と比較した。解析では被害の程度の異なる複数の断面を対象とし,室内試験で得た盛土材の力学特性および補強材の引抜き特性を用いた。解析の結果は実際の壁面変位量と同様の傾向を得た。キーワード:補強土壁,熊本地震,現地調査,ニューマーク法Reinforced soil wall, the 2016 Kumamoto earthquake, site investigation, Newmark method1.はじめに道路土工構造物の多くは極限平衡法に基づき設計されており,変形量は設計には考慮されていない。そのため,現状の設計法では変形した道路土工構造物の性能を評価★するのは困難である。地震や降雨による道路土工構造物の性能を評価するためには,変形を考慮した性能の評価手法が必要である。特に,道路土工構造物の中でも補強土壁は,従来型のコンクリート擁壁と比較してより柔軟であるため,変形した補強土壁の性能評価は重要である。変形を考慮した性能の評価手法を確立するにあたり,道★路土工構造物の変形に影響を与える要因を明らかにする図-1 地表面最大加速度分布 1)ことが重要である。本研究では,2016 年に発生した熊本a) 被害小地震で崩壊に至る損傷を受けた補強土壁を対象に,現地b) 被害中c) 被害大調査に基づく変状の形態に応じた試験,およびニューマーク法を用いた残留変形解析を実施して,変状メカニズム及び変状要因を推定した。図-2 道路土工構造物技術基準 4)の要求性能に関する考え方 a)健全性に問題がなく,道路としての通行機能に支障無し b)一時通行規制を行うが,簡易な復旧により通行機能を回復 c)全面通行規制を行うが,復旧工事により通行規制を回復2.熊本地震の概要2016 年 4 月 16 日に,熊本県益城町を震源にマグニチュード 7.3 の地震が発生した。最大震度は震度 7 を記録した。最大加速度は,熊本県大津町の強振観測所にて1791gal(三成分合成)を記録した。図-1 に熊本地震の地表面最大加速度分布 1)を示す。2017 年 12 月 14 日の内閣府での発表主に熊本県,大分県,宮崎県の震度 5 以上が記録された2)では,死者 249 名,負傷者 2790 名,8674 棟地域に集中していた。93 箇所の国道及び県道が通行止めの家屋が倒壊した。斜面崩壊等の道路構造物の被害は,となった。* 土木研究所交流研究員Collaborating Researcher, Public Works Research Institute** 土木研究所主任研究員Senior Researcher, Public Works Research Institute研究員Researcher, Public Works Research Institute上席研究員Team Leader, Public Works Research Institute*** 土木研究所**** 土木研究所37 3.補強土壁の調査被害中11(1.3%)3.1 補強土壁の被災の概要被害大3(0.3%)熊本地震で震度 5 強以上を観測した地域において,871件の現地調査を実施した。調査対象とした補強土壁は,道路土工-擁壁工指針3)に記載されている代表的な構造形式のものとした。補強土壁の損傷の程度は,図-2 に示すように道路土工構造物技術基準 4)を参考に,3 つのレベルに分類した。調査の結果を図-3 に示す。補強土壁の98.4%は損傷なし,または被害小と評価され,高い耐震被害無、または小857 (98.4%)調査件数: 871性を示していた。一方,3 件(0.3%)は被害大と評価され,図-3道路機能も損失する結果となった。このうち 2 件については,基礎地盤を含む全体的なすべりにより補強土壁が2016 年熊本地震における補強土壁の被災状況(871 件)崩壊後損傷を受けたものであったため,これ以外の残りの事例as崩壊前に対して詳細な調査を行った。70403.2 現地調査(1) 補強土壁の概要調査対象とした補強土壁は,延長 160m,最高壁高 8.5m,8250嵩上げ盛土 7.0m を有していた。補強土壁の壁面材の基礎部にはコンクリート製の重力式基礎が用いられており,前面側が河川となっている。壁面は重力式基礎に乗っているため,根入れはなされていなかった。布田川断層帯から 1.5km 離れた場所に位置しており,2.4km 離れた最寄りの強振観測所では,補強土壁の壁面の法線方向に最図-4 崩壊部の断面図大加速度 1253gal を観測した。1010(2) 崩壊部水抜き孔2車線道路の1車線が延長約 160m のうち約 40m にわ壁高H(m)Height(m)たり崩壊し,路面に数メートルの段差が発生していた。88高さ(m)図-4 は崩壊部の横断図である。崩壊部において,露出している部材を目視した範囲では補強材や補強材と壁面材の接続部の破断は認められなかった。また,重力式基礎の変位や傾斜等は認められなかった。664422(3) 残存部00残存部においても変状が認められる箇所があり,その変形を定量的に評価するために,様々な調査を行った。20 4040 606000 20水平変位量(cm)HorizontalDisp.(cm)水平変位D(cm)H具体的には,道路上面の高さ,壁の水平変位,滑動変位,図-6 残留部におけるはらみだし状況最下段壁面材の傾斜度を測定した。図-5 は補強土壁の壁面の方角と各調査の結果を示す。図-5(a)~(d)より,崩壊-6 に示したとおり,壁面の著しいはらみ出しが認められ部の付近で変形が著しいことは明確である。以下に,変た崩壊部近傍においては重力式基礎に水抜き孔が設置さ状の程度が著しかった範囲についてその状況を示す。れていない。一方で,はらみ出しが小さい又は変状が認a)はらみ出しめられない範囲では水抜き孔が設置されており,この範図-6 に崩壊部近傍の残存部の壁面の状況とレーザー囲では重力式基礎の天端は比較的に乾燥していた。ただ距離計で測定した壁面の水平変位分布を示す。この図でし,補強土壁撤去時の崩壊部背面切土の調査では,切土は壁面下端を DH=0 と仮定して,水平変位 DH を示していからの湧水等は認められなかったことから,崩壊における。壁面に著しいはらみ出しが生じており,水平変位量る水の影響は小さかったものと考えられる。は最大で 48.4cm(壁高と水平変位の比 DH / H=5.9%),最c)滑動下段壁面材の傾斜度は 35%であった。左右の隣り合う壁図-5(c)の滑動変位 S は,重力式基礎天端の肩部から壁面材間の目地の詰まり及び壁面材の損傷が認められた一面材までの設計値 S0 から,現在の肩部から壁面材までの方で,壁面材間がずれるような変形は卓越しておらず,離隔 S1 を差し引いて求めた。崩壊部に近づくにつれて離盛土材のこぼれ出しは認められなかった。隔 S1 が狭くなっており,崩壊範囲端部から 2m の位置でb)水の状況は 20cm であった。変状の認められない箇所の離隔が約本事例は重力式基礎の上に設置されたものである。図40cm であったことから,地震動により補強土壁が前面側38 200440Gravity type foundation100HeighHeigh3000070605040302010壁面水平変位: DH + S (mm)0Height(mm)高さ (m)8408H4重力式基礎60010000b)2000030000400000500006000070000A (mm)2004002005020000c)H+H1021f)0Remaining section壁面の方角Gravity type foundatione)10070000ESWNE106000010壁面材の0100 現在の位置5010Road top surfaced)205000002壁面材の設計時の位置20030500400重力式擁壁天端の肩部から壁面材までの離隔の設計値40200010040000A (mm)30000S (mm)12H1Height (m)a)7010000D (mm): レーザー距離計による計測箇所0400 (%)崩壊部上部道路表面600500400300200100140001200010000800060004000200000400H1/H残留部100 200 300 400 500 6000-100Height (mm)140001200010000880004600040000200000高さ (m)-100g)7012840Height (m)0Failed section06050DH SESWNE403020崩壊部からの距離(m)D :上部道路の段差量DH:壁面の水平変位量S :最下段壁面材の滑動量でS0 - S1S0 :重力式基礎天端の肩部から壁面材までの離隔の設計値S1 :現在の重力式基礎天端の肩部から壁面材までの離隔10HH1S1S0重力式基礎0:壁高:嵩上げ盛土高:最下段壁面材の壁面傾斜度図-5 補強土壁の診断図162.930試料Aに滑動したものと考えられる。0~2m の範囲は調査実施試料Bの安全を考慮して計測していないが,崩壊箇所では補強14252.88216盛土材適用範囲141.9812土壁が滑動により重力式基礎から滑り落ちた可能性も考えられる。なお,他の箇所も含め,問題となるような重1220102.868力式基礎の傾斜や滑動(根入れ地盤の変状)は認められ2.84ない。1581.9463.3 盛土材の物理的特性及び力学的特性101.96610442.82現地から採取した補強土壁の盛土材を対象に,物理的2特性試験及び力学的特性試験を実施した。採取した盛土2.8材は,崩壊部の異なる 2 箇所(試料 A,試料 B)から採rs0(g/cm3)取した。室内試験結果を図-7 に示す。1.925Wn(%)200Fc 2(%)1.9rdmax0(g/cm3)Wopt(%)図-7 土の物理的・締固め特性試験結果物理的特性試験の試験結果は,2 試料に多少のばらつきを有するものの概ね同等の値を得ている。また,細粒試料 A が細粒分混じり礫質砂,試料 B は細粒分混じり砂分含有率は 13.6%,8.8%であり,補強土壁の基準に適合質礫であった。した材料が使用されていた。土質材料の工学的分類は,39 55試料A試料B補強材エアバッグスクリュージャッキ引抜き方向20045400せん断抵抗角 fd (deg.)50レギュレータカバー(壁面との摩擦を低減させるため)施工管理基準値(建造当時)40200ロードセル80035変位計設計値30(Unit : mm)1000図-9 土中引抜き試験機の概略図2580859095100三軸圧縮試験供試体の締固め度 Dc (%)105図-8 せん断抵抗角と締固め度の関係力学的特性試験については,異なる供試体密度の三軸圧縮(CD)試験を実施した。供試体密度は,当時の補強土壁の施工管理基準値 5)である締固め度 90%以上を目安としたものを基準に,85%,90%,95%,および 100%を目標に試験を実施した。なお,現地調査においては,補強土壁の補強領域部の密度試験は実施していない。図-10 土中引抜き試験機 (補強材設置状況)三軸圧縮(CD)試験供試体の締固め度とせん断低抵抗角の関係を図-8 に示す。せん断抵抗角は締固め度 90%を20ピーク荷重目標とした試験結果で 41.7°,44.0°であり,補強土壁に引抜き荷重 (kN)適した良質な盛土材が用いられていた事が確認された。また,締固め度を施工管理基準値より低い 85%を目標とした試験においても,40.2°の結果を得ており,設計上の仮定値である 30°を上回る結果を得た。ただし,本試料においては,締固め密度の違いによるせん断抵抗への180kN/m215120kN/m2105影響は,設定した締固め度の範囲内においては明確には残留荷重: 引抜き変位が150mmの時の荷重60kN/m2sv = 30kN/m2表れず,数値の違いはばらつきによるものと考えられる。0なお,採取した試料は砂分,礫分を多く含む土質であ0り,粘着力を有しない土であった。503.4 補強材の引抜き特性100150200引抜き変位 (mm)250図-11 引抜き荷重と引抜き変位補強材の引抜き抵抗特性を把握するために,現地調査において採取した補強土壁の盛土材を用いて補強材の土4Dc = 90%中引抜き試験を実施した。f0* = 3.5113.5a)試験方法図-9 に土中引抜き試験機の概略図を示す。引抜き試験3みかけの摩擦係数 f*装置は土槽,引き抜きのための加力装置(スクリュージャッキ)から構成されており,土槽の上蓋に設置されたエアバックを用いて空気圧により上載圧を載荷することができる。土槽の内寸は横 1000mm,奥行き 600mm,高さ 400mm である。引抜き試験は次のような手順で行なった。引抜き試験装置の土槽内において,所定の締固め2.52f0* = 1.5571.5y = 41.4°1度 Dc となるように仕上がり厚さを 50mm で管理しながらタンパーで締め固めて地盤を作製した。地盤の作製中0.5y = 24.7°に,所定の位置に補強材およびカバーを設置し(図-10),0補強材と加力装置を連結した。その後,土槽に上蓋を設0置して所定の上載圧を載荷し,加力装置により補強材を246土被り厚 (m)8図-12 土被り厚と見かけの摩擦係数引抜いた。荷重計および変位計により補強材の引抜き荷重および引抜き変位を測定した。引抜きは変位制御で行4010300 (m)い載荷速さは 1mm/min とした。大変位までの引抜き特性を把握するために,約 300mm まで引き抜いた。締段差位置,崩壊後断面(現地調査)202固め度 Dc は 90%とし,上載圧は 30,60,120,180kN/mの 4 ケースとした。10b)試験結果臨界円弧(数値解析)図-11 に引抜き荷重と引抜き変位の関係を示している。引抜きの初期では,引抜き変位の増加とともに引0抜き荷重も増加し,30mm から 40mm のあたりでピーク荷重を迎えた。その後,引抜き変位の増加とともにCase L-10徐々に引抜き荷重は低下し,ほぼ一定の残留荷重に収-10010203040 (m)NW束する傾向にあった。SE図-12 は拘束圧から換算した土被り厚さと見かけの摩擦係数の関係である。ここで,見かけの摩擦係数は段差位置(現地調査)(m)引抜き荷重を拘束圧と補強材の表面積で除した値であ臨界円弧(数値解析)10り,引抜き荷重の最大値をピーク時,引抜き変位量150mm 時を残留時の値として表記した。見かけの摩擦係数は土被り厚さに対して一定ではなく,土被り厚さ0が小さいほど大きな値を示している。これは既往の試験結果設計値Case M6)と同様のものである。また黒の破腺で示した-10-206)を上回る摩擦係数を得ている。残留時につい-10NW0102030 (m)SEて見かけの摩擦係数はピーク時の約半分に低下た。(m)4.シミュレーション解析臨界円弧(数値解析)104.1 解析の方法段差位置(現地調査)これまでの地震後等の現地調査の結果に基づき補強土壁の変形形態を大きく分類すると,補強材の引抜け0等により補強領域がせん断変形し壁面が前傾する形態,Case S内部にすべりが発生して壁面がはらみ出す形態,壁面-10-20が局所的にはらみ出す形態,基礎地盤を含む全体的な-10W0すべりにより壁面が後傾する形態 7) 等がある。本事例項目入力値単位体積重量 γ tによる残留変形解析を盛土材実施した。ニューマーク法は,すべり土塊が剛体で,すべり面における応力-ひずみ関係が剛塑性と仮定して地震時のすべり土塊の滑動変位量を計算する方法である。円補強材f残留強度 fピーク強度せん断抵抗角peak(kN/m3 )(deg.)41.7, 44.0, 40.0res(deg.)33.8, 35.9, 32.9見かけの摩擦係数(z=0m)ピーク摩擦係数 f 0*peak -見かけの摩擦係数(z>6m)ピーク摩擦係数残留摩擦係数 f 0*resに基づいて修正フェレニウス法とし,補強材の引抜19.63.5111.557peak-(deg.)res(deg.)24.7幅W(mm)60厚さ T破断強度 s(mm)5400y残留摩擦係数 y弧すべりの計算式については,道路土工-盛土工指針9)E表-2 ニューマーク解析に用いたパラメータら,補強領域内部にすべりが発生し,はらみだしが発生したと推定された。そのため,本解析では円弧すべりを仮定したニューマーク法30 (m)20図-13 解析モデルでは,壁面の変位分布,および道路路面の損傷状況か8)1041.4(N/mm2 )き抵抗力は,補強土(テールアルメ)壁工法設計・施工指針15006)に基づいて考慮した。補強材の引抜き抵抗力SEは,補強材が破断するか,引抜けるまで抵抗モーメン500トに考慮した。なお,円弧すべりについては,重力式-500基礎に変状が認められなかったことから重力式基礎よ-15001500最大加速度 1253galNWEり下面でのすべりは考慮しなかった。盛土材のピーク500強度,盛土材と補強材のピーク摩擦係数を用いて臨界-500円弧を検索し,降伏震度を計算した。地震波を入力し,最大加速度 955galW-1500降伏震度に相当する加速度が入力された時に,瞬間的0に残留強度,残留摩擦係数まで低下させ,残留変位量10203040時間 t (sec.)図-14 入力加速度を計算した。415060 解析は図-13 に示すように崩壊部(CaseL,壁高 H =表-2 解析ケース8.25m),著しいはらみ出しの認められた崩壊部近傍の残盛土材の強度定数存部(CaseM,H = 7.50m)及び崩壊部から約 50m の位置被害Caseではらみ出しが軽微であった残存部(CaseM,H = 3.75m)パラメータCase L1の 3 断面を対象とした.なお,設計図書は入手できなかっ大Case L2Case L3たことから現地調査の結果及び近隣の同年代の補強土壁Case M 1の設計図書を基に復元設計を行った。設計水平震度は,中Case M 2Case M 3kh = 0.13 とし,当時の指針 5)に則り復元を行った。Case S1小Case S24.2 解析のパラメータCase S3表-1 に解析で用いた盛土材,補強材のパラメータを示す。盛土材の強度定数はピーク強度と残留強度の 2 つをピーク強度見かけの摩擦係数残留強度f peakf res(deg.)(deg.)141.733.8244.035.9340.032.9141.733.8244.035.9340.032.9141.733.8244.035.9340.032.9ピーク強度f 0*peakypeak実測水平変位残留強度yf 0*res(deg.)DH + Sres(mm)(deg.)測定不能3.51141.41.57772424.7= 240 + 48473= 0 + 73D H : 壁面のはらみだしの最大水平変位で,レーザー距離計より得たS: 壁面材の水平滑動量で,初期離隔から現在の離隔を差し引いて得た設定した。ピーク強度の強度定数(f peak, c peak)には三10Observed実測値Calculated解析値軸圧縮(CD)試験の結果を用い,残留強度(f res, c res)には既往の研究 10)を参考に設定した。8図-10 に解析で用いた見かけの摩擦係数と土被り厚の壁高 (m)6関係を示している。補強材の摩擦抵抗は,補強材の土中引抜き試験で得たピーク及び残留強度を拘束圧に対してそれぞれバイリニアでモデル化した摩擦係数を用いた。42ピーク強度から残留強度への減少は 50%程度の低減であった。010005000壁面水平変位(mm)図-12 に入力加速度を示す。入力加速度は,補強土壁から 2.4km 離れた場所に位置する最寄りの強震動観測所図-15 解析値と実測値の比較 (Case M1)動観測所の工学的基盤層から地盤までの最大速度の増幅15002.0率 12)は 1.2~1.4 程度で同程度の値であった。また,補強SEも等しかった。入力加1000速度は上記観測波の NS および EW 方向のデータを,壁5001)加速度 a (gal)土壁と強震動観測所の推定震度面法線方向に座標変換することで用いた。 CaseL,M は最大加速度 1253gal,CaseS では 955gal であり,非常に大きな地震動である。実測値1.5解析値1.0入力地震動0.50変位 (m)の観測波 11)を用いた。なお,補強土壁の設置箇所と強震0.0降伏震度-0.5-500-1.0解析ケースを表-2 に示す。本事例では,現場復旧工事-1000-1.5NWの都合上,現地調査において補強土壁の補強領域部の密-1500度試験を実施できていない。ため,条件設定においては-2.010152025時刻 t (sec.)303540当時の施工管理基準値である締固め度 90%以上を参考に,図-16 時刻歴変位の結果(Case M1)それぞれ 3 つのパラメータを設定した。パラメータ 1 として,試料 A の三軸圧縮(CD)試験供試体の締固め度 Dc=90.3%の試験結果,f peak=41.7°(tan f peak = 0.891)を設3000試験供試体の締固め度 Dc=90.3%の試験結果, f解析値の水平変位 (mm)定した。パラメータ 2 として,試料 B の三軸圧縮(CD)peak =44.0°(tan f peak = 0.966)を設定した。なお,この値は採取土の一連の三軸圧縮(CD)試験結果の中で,最も高い数値である。パラメータ 3 として,採取土の一連の三軸圧縮(CD)試験結果の中で,最も低い数値であるfpeak=40.0°(tan f peak = 0.839)を設定した。崩壊部残留部35002500Case SCase MCase Lfpeak= 44.0●●●fpeak= 41.7▲▲▲fpeak= 40.0■■■30002500Case L2000150020001500Case M10001000Case S5005000005.解析結果35002004006008001000実測値の水平変位 (mm)図-13 に臨界円弧の形状と,上部道路における段差お図-17 解析値と実測値の水平変位の比較よびクラック発生位置を示している。臨界円弧は,現地調査で得た実際の段差およびクラック発生位置と比較す果を実測の水平変位と比較して示す。ニューマーク法にると,大きく離れていない距離にあると考える。よる解析では滑り土塊は剛体を仮定していることから,図-15 に壁面の水平変位分布の例として,CaseM1 の結壁面の水平変位は壁高に対して線形の分布となる。実際42 表-3 現地調査、室内試験及びシミュレーション解析結果のまとめ項目現地調査2.4km離れた最寄りの強震動観測所で、地震の影響壁面の法線方向に最大1253gal復旧時の調査では崩壊部背面地山に水の影響湧水を認めず補強土壁周辺の基礎地盤に基礎地盤隆起などの変状を認めず周辺地形斜面の全体すべりの痕跡などは認めず壁面の変形モードはらみだしモード滑動量+残留水平変位 724mm壁面の残留部 重力式基礎上で240mm滑動、残留変形重力式基礎からの壁面の滑り落ちは無し・残留水平変位は不明滑動崩壊部 重力式基礎天端の肩部から壁面までの離隔が、崩壊部に近づくにつれて狭い壁面材残留部では明確な曲げ破壊を認めず残留部/崩壊部境界の断面において補強材補強材の破断を認めず盛土材土のこぼれ出し-残存部では認めず盛土材と補強材の摩擦重力式基礎-室内試験-[地震動として入力]---------壁つま先の残留水平変位で約 700mm (Case M1)-壁つま先の残留水平変位で約 1100mm (Case L1)----設計値以上のせん断抵抗角および盛土材適用範囲内の細粒分含有率を確認-設計値以上の摩擦係数を確認変状を認めずシミュレーション解析-[盛土材のパラメータとして入力]-[ピーク,残留の摩擦係数をバイリニアでモデル化][重力式基礎以深にすべり線を通さない][シミュレーション解析の入力条件として使用]の壁面材の下端部には重力式基礎との摩擦があり,壁面6.変状要因の分析材間はヒンジに近い構造となっていると考えらる。最下本被害事例での現地調査,室内試験,およびシミュレ段の壁面材は前傾が顕著となっているが,壁面の下端部ーション解析の結果を表-3 に示す。を除くと解析値と実測値の変位分布は調和的である。し現地調査のおよび室内試験の結果,補強土壁が崩壊すたがって,本事例においては壁面の水平変位においてする直接的な要因は確認されなかった。これより,非常にべりによる変位が卓越しているものと考えられる。これ大きな地震動の作用が補強土壁の崩壊の主な要因であるより解析により実際の挙動の傾向を再現できていると判ことが考えられる。断し,以後は補強領域のつま先の水平変位量について議補強土壁の被害状況は,残留部においてはらみだし変形モードによる最大約 500mm の水平変位が発生した。論する。図-16 に Case M1 における各断面の残留変位の時刻歴崩壊部付近の壁面では,最下段パネルの角度が  = 約を一例として示している。入力加速度は 17.3 秒付近で降50%の大変形が発生したにもかかわらず,粘り強く変形伏震度に達し,17 秒~25 秒で残留変位が累積している。に追随していた。また,壁面材およびジョイント部は,入力地震波は 17.3 秒付近で SE から NW 方向,および E盛土材のこぼれ出し防止機能を保持していた。これは,から W 方向(補強土壁の主働方向)へ 458~674gal の加速補強土壁の補強メカニズムにおいて,盛土材のこぼれ出度が作用しており,Case L ,Case S の断面においても同様しの防止は重要な要求事項であることから,有意な知見の時刻周辺で降伏震度に到達した。であったと考える。図-17 に補強土壁つま先の残留水平変位の解析値と実崩壊部の付近では,崩壊部に近づくにつれて滑動変位測値の関係を示す。解析値は,概ね実測値と大きく乖離量の増加が認められた。この事実より,崩壊部では地震のない範囲で一致しており,補強土壁の被災状況とニュ動による影響によって重力式基礎から壁面材がすべり落ーマーク法による解析結果の大小関係は概ね一致する傾ちた可能性が考えられる。また,ニューマーク法による向を示した。 Case L の断面は,実際には完全に崩壊しシミュレーション解析結果では,崩壊部において約ており,実測値が得られていないため解析値との比較は1100mm の残留水平変位量が発生し,この変位に達するできない。壁高や壁面の方角等,条件も類似しており,までに崩壊に至ったものと考えられる。この変位は,変崩壊部との距離も近かった Case M では,パラメータ 1状が認められなかった箇所の重力式擁壁天端肩部から壁で最も実測値と解析値が近い値を得た。Case L1 の結果面までの設計離隔(450mm)より大きい。前述のとおり残では,1087mm(壁高と水平変位の比 dx/H=13.2%)であっ留部では崩壊部に近づくにつれ離隔が狭くなっているこた。また,パラメータを変えた場合の残留変形量への影とからも,補強土壁が重力式基礎から滑り落ちた可能性響は,壁高の高い程影響度合いが大きく,壁高の小さいは否定できない。程影響が小さい事がわかる。これは,臨界円弧の形状,壁面がすべり落ちた場合,盛土材の漏出とともに補強すべり線の長さの影響によるものと考えられる。土壁の補強メカニズムが失われ致命的な損傷を招くと考43 えられる。そのため,このような滑動の発生を防止する参考文献対策も必要と考える。既往の研究では,擁壁の根入れに1)関する重力式擁壁を模した遠心模型実験が実施されてお地震ハザードステーションJ-SHIS Map (http://www.j-shis.bosai.go.jp):防災科学技術研り,根入れ深さが地震動による壁面変形を抑制する効果究所があることが報告 13)されている。補強土壁を含め擁壁の2)根入れによる壁面変形の抑制効果の定量的な評価と,根平成 28 年(2016 年)熊本県熊本地方を震源とする地震に係る被害状況等について(2017):内閣府入れと同等の効果が得られるような重力式基礎天端での3)滑動を抑制する対策を検討していくことも必要と考える。道路土工-擁壁工指針(2012):公益社団法人日本道路協会4)7.まとめ道路土工構造物技術基準(2015):国土交通省(http://www.mlit.go.jp/road/sign/kijyun/bunya02.html)平成 28 年熊本地震で被害を受けた補強土壁について,5)現地調査と室内試験を実施し変状要因を分析した。その補強土(テールアルメ)壁工法設計・施工マニュアル第 2 回改訂版(1999):一般社団法人土木研究センター結果,湧水による影響や,盛土材不良など明確に崩壊に6)繋がるような要因は確認されなかった。また,変形の著補強土(テールアルメ)壁工法設計・施工マニュアル第 4 回改訂版(2014):一般社団法人土木研究センターしい残留部では崩壊部に近づくにつれ重力式基礎肩部と7)壁面の離隔が狭くなっていくことが確認された。佐藤登・澤松俊寿・新田武彦・宮武裕昭(2017):壁面変位による補強土壁の健全性評価に関する一考察,第 73 回ニューマーク法によるシミュレーション解析の結果は,土木学会年次学術講演会概要集 pp.931-932実測の壁面変位量と大きく異ならない範囲で整合してい8)た。著しいはらみ出しの認められた崩壊部近傍の残存部堀井克己・舘山勝・内田吉彦・古関潤一・龍岡文夫(1997):ニューマーク法による鉄道盛土の地震時滑動変位予測,第の結果の傾向を崩壊部に単純に当てはめると,約32 回地盤工学研究発表会概要集 pp.1895-18961100mm の残留水平変位となり,この変位に至るまでに9)崩壊が発生したものと推定される。また,現地調査結果,道路土工-盛土工指針(2010):公益社団法人日本道路協会および解析結果より,重力式基礎から根入れのなされて10) 佐伯宗大・大窪克己・浜崎智洋・北村佳則・稲垣太浩・濱いない補強土壁部が滑り落ちた可能性が示唆された。野雅裕・龍岡文夫(2004):高速道路盛土の大規模地震時の耐震性検討(その 1)~盛土材のせん断強度の検討~,謝辞:本研究の遂行にあたり,熊本県県北広域本部阿蘇第 39 回地盤工学研究発表会概要集 pp.1759-1760地域振興局,日本テールアルメ協会,多数アンカー式補11) 地震情報(http://www.jma.go.jp/en/quake/):気象庁強土壁協会,ジオテキスタイル補強土工法普及委員会に12) 自然災害情報室(http://www.j-risq.bosai.go.jp/):防災科学技はデータを御提供を協力頂いた。ここに感謝の意を表し術研究所ます。13) 斉藤由紀子・岡村未対・田村敬一(2002):重力式擁壁の地震時変位量‐擁壁の根入れ深さを考慮した地震時変位計算法の検証‐,第 57 回土木学会年次学術講演会概要集pp.1171-1172This paper describes the results of site investigations and residual deformation analyses byNewmark method regarding a reinforced soil wall damaged by the 2016 Kumamoto earthquake, inorder to clarify deformation property and factors affected to the deformation. From the result of thesite investigation, it was found that the reinforced soil wall failed over the length of about 40 m, whilebreakage of the reinforcement was not observed. No leakage of the fill material occurred, although thewall bulged with horizontal displacement of about 50 cm at maximum. It was confirmed fromlaboratory tests that the fill material having sufficient quality for a reinforced soil wall was used. Fromthe results of investigations and laboratory tests, the most serious factor to the failure or deformationwas estimated to be the extremely strong seismic motion. In the analyses, the parameters of backfilland reinforcement were determined by the laboratory test. The observed horizontal displacement ofwall facing was generally within the range of the calculated displacement. The calculateddisplacement of the failed part was about 1100mm and the failure was estimated to occur by thisdisplacement.44
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