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タイトル 胆振東部地震による火山灰盛土地盤の液状化
著者 小合 克弥・ハザリカ へマンタ・國生 剛治・石橋 慎一朗・山本 茂雄・金子 広明
出版 第61回地盤工学シンポジウム
ページ 9〜12 発行 2018/12/14 文書ID fs201812000002
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  • タイトル
  • 胆振東部地震による火山灰盛土地盤の液状化
  • 著者
  • 小合 克弥・ハザリカ へマンタ・國生 剛治・石橋 慎一朗・山本 茂雄・金子 広明
  • 出版
  • 第61回地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 9〜12
  • 発行
  • 2018/12/14
  • 文書ID
  • fs201812000002
  • 内容
  • 胆振東部地震による火山灰盛土地盤の液状化A study on liquefaction of reclaimed volcanic soil during the Eastern Iburi Earthquake小合克弥*, ハザリカ へマンタ**, 國生剛治***, 石橋慎一朗****, 山本茂雄*****,金子広明******Katsuya OGO, Hemanta HAZARIKA, Takaji KOKUSHO, Shinichiro ISHIBASHI,Shigeo YAMAMOTO and Hiroaki KANEKO2018 年 9 月 6 日午前 3 時 8 分に発生した Mj 6.7 の地震により,札幌市清田区の宅地において局所的な液状化による沈下被害を生じた。当該地域は,従来は谷であったが,1970 年代後半の造成工事により,火山灰土を用いた盛土地盤が形成された。著者らは地震発生から約 1 か月後の 10 月 9 日に,同区里塚において現場試験,サンプリングを行った。回収したサンプルに加えて,不攪乱と再構成の試料では力学的特性の変化が大きい火山灰土の特性を考慮するため,参考試料として 2016 年の熊本地震でも液状化しなかった熊本県益城町の火砕流堆積物のボーリングサンプルの結果と比較しつつ,繰返し三軸試験を行った。原位置試験で得られた結果と,室内試験で得られた物理・力学特性から,里塚地区における液状化発生のメカニズムに関する検討を行った。キーワード: 液状化, 火山灰土, 繰返し三軸試験, 平成 30 年北海道胆振東部地震Liquefaction, volcanic ash soil, cyclic triaxial testing, the 2018 Hokkaido Eastern Iburi Earthquake1. はじめに2018 年 9 月 6 日午前 3 時 8 分に発生した北海道胆振東部地震により,札幌市清田区里塚(図-1)において,大規模な沈下を伴う液状化被害を生じた。里塚から約 8 km 離れた位置にある防災科学技術研究所の K-NET HKD182広島 2)では,NS,EW の成分において地表最大加速度で200 Gal 弱を観測しており,強い揺れが 20~30 秒継続して観測された。しかし,図-2(a)に赤丸で示す沈下をした地点には噴砂が発生しておらず,その北東側に砂質土が集中して堆積している箇所(黄丸のエリア)が見られた。同宅地は緩斜面になっており,液状化した地盤が地図-1 震央と里塚の位置(a) 地震直後(2018 年 9 月 13 日撮影)(b) 従来の土地利用(1974-1978 年撮影)図-2 里塚 1 丁目の航空写真比較(国土地理院の航空写真に加筆)* 九州大学大学院工学府** 九州大学大学院工学研究院*** 中央大学名誉教授**** 日本地研株式会社***** 中央開発株式会社****** 日本基礎技術株式会社Graduate Shool of Engineering, Kyushu University教授Professor, Graduate Shool of Engineering, Kyushu UniversityProfessor Emeritus, Chuo UniversityNihon Chiken Co., Ltd.Chuo Kaihatsu CorporationJapan Foundation Engineering Co., Ltd.9 (a) 道路沈下の様子図-4 ボーリングデータ(左)と簡易動的コーン貫入試験結果(右)なかったが,路肩に残っていた噴砂を回収した。図-4 に全国地質調査業協会連合会が公開するボーリングデータ内の土質,N 値,孔内水位と筆者らが行った簡易動的コーン貫入試験の結果を示す。位置は図-2 (a)内でそれぞれ,点 B がボーリング地点,点 P が簡易動的コーン貫入試験実施地点である。また,点 P の地点は周囲に比べて沈下をしていない地点である。ボーリングデー(b) 採取した砂(手前)と砂の流出地点(黄丸)タによると,深度 5 m までは火山灰によって埋め立てら図-3 清田区里塚の被災状況れた盛土であり,5 m 以深の火山灰は支笏火砕流堆積物の地盤である。盛土部分では N 値が 10 を下回っている盤内を流動し,下流側(東側)の噴出点に集中して現れ一方で,その下部の火山灰土の N 値は 30 近いことから,たと考えられる。また,地震の前日 9 月 5 日には北海道盛土と自然堆積状態の強度の違いが大きいことが考えらに台風 21 号が上陸しており,これによる多量の雨水がれる。また,簡易動的コーン貫入試験は約 4.5 m の深度地盤に流れ込み,液状化の起こりやすい状況になっていまで行っており,盛土火山灰の強度に関するデータのみたと考えられる。が得られている。なお,同試験の実施中,地下水の痕跡図-2 (b)に宅地の造成以前にとられた航空写真を示に関するデータは得られていない。ここでも換算 N 値はす。これによると同地区は支笏火砕流堆積物から成る丘ほとんどの点で 10 を下回っており,2~4 m の深度ではボ陵地帯であったが,谷の部分が埋め立てられほぼ平坦なーリングの N 値を下回っていることが分かる。簡易動的土地に造り替えられている。今回液状化したエリアは従コーン貫入試験では,貫入深さ 10 cm ごとに値をプロッ来水田であった地点にほぼ一致しており,盛土の液状化トしているが,深度 2~3 m のあたりでプロットの深度方が考えられる。ボーリングデータより,住宅地の盛土材向の間隔が大きくなっている。これは一度の打撃で 10料は火山灰土であるが,火山灰土は粒子間の固結等といcm 以上沈下した場合であり,この深さの地盤が非常に弱った年代効果が考えられるため,攪乱する前と後とで力いか,あるいは空洞になっていることが考えられる。砂学的性質が大きく変化する。本研究では,不かく乱状態が沈下地点から離れた場所から流出したメカニズムを考と再構成された状態の火山灰土の比較のため,熊本県益えると,液状化した深度における地盤が流出し空洞が残城町で採取した火砕流堆積物による力学試験の結果に言されている可能性が考えられる。地下水位は,ボーリン及し,里塚における液状化のメカニズムに関する検討結グデータの孔内水位を参考にすると盛土以深に水面があ果について報告する。るが,地震前日の台風 21 号により多量の雨水が流れ込み,換算 N 値の小さい深度まで地下水位が上昇したと考2. 被災状況えると,3 m 程度の深度において液状化があった可能性図-3 (a)は里塚の住宅地内において沈下を生じた箇所が考えられる。の写真である。沈下を生じていない箇所との相対的な標高差が約 3 m ある一方で,この周辺に噴砂は生じていな3. 里塚の火山灰土の液状化強度試験かった。図-3 (b)は砂が集中して流出していた箇所である。上記の議論から,地下水位が地表面下 2 m まで上昇し,すでに幾分か修繕がなされ,砂が流出した箇所の痕跡は3 m の深度において液状化が発生した場合を想定して条10 式を用いる。表-1 里塚の試料の物理情報相対密度%土粒子密度 g/cm3乾燥密度3g/cm40 湿潤密度 g/cm32.19含水比 38.6 % 時1.080.781.42飽和時𝐶𝑆𝑅 = 0.65𝑎𝑚𝑎𝑥 𝜎𝑣(1 − 0.015𝑧)𝑔 𝜎𝑣′(1)里塚の液状化時の地下水位が 2 m まで上昇しており,深度𝑧 = 3 mの地盤要素を仮定して式(1)の鉛直土圧𝜎𝑣 と有効鉛直土圧𝜎𝑣′ を求め,地表最大加速度𝑎𝑚𝑎𝑥 を K-NET表-2 益城の試料の物理情報相対密度70 湿潤密度 g/cm32.59含水比 48 % 時%土粒子密度 g/cm3乾燥密度3g/cmHKD182 により観測された値を用いて式(1)を計算すると,地震時に地盤に作用したせんだん力は,正弦波を用いた1.64繰返し三軸試験における応力比として𝐶𝑆𝑅 = 0.18 程度1.14の値となる(𝑔は重力加速度)。これを図-6 の結果と比較すると,里塚の火山灰盛土に対して𝐶𝑆𝑅 = 0.18は液状化を通貨質量百分率 (%)100.0起こすのに十分に大きいといえる。一方で,益城の試料は,2016 年の熊本地震を受けても80.0液状化しなかった火砕流堆積物からボーリング採取した60.0試料であるが,里塚の試料に比べて再構成でも液状化強度が高く,不攪乱試料ではより大きな強度を示している40.0益城ことが分かる。里塚20.0次に,益城の試料の不攪乱と再構成の試料の差を過剰間隙水圧比とひずみに着目して説明するが,各試験が異0.00.0010.010.11粒径 (mm)10100なる CSR 値によって行われているため,比較をしやすくするために損失エネルギーの考え方を導入する。繰返し図-5 粒径加積曲線三軸試験において任意のサイクル数までに供試体に与え件を設定し,里塚で採取した火山灰試料に対して繰り返られた累計損失エネルギー𝛴𝛥𝑊𝑘 は,供試体に作用するし三軸試験を行った。モールド内での湿潤突き固め法にせん断応力𝜏と供試体のせん断ひずみ𝛾を用いて式(2)5)のより,相対密度が 40 %になるようにして,直径 5 cm,高ように表される。さ 10 cm の円柱供試体を作成した。液状化強度の比較対∑ Δ𝑊𝑘 = ∑ (∮ 𝜏 𝑑𝛾)象として,益城町でボーリング採取した火砕流堆積物の(2)𝑘試料を用いた。益城の試料はボーリングの径と同じ直径図-7 と図-8 に過剰間隙水圧比と両振幅せん断ひずみのの 6.5 cm,高さ 13 cm,そして自然状態の密度である相対密度 70 %程度に試料を調整し,試験を行った。益城の試料はボーリング試料をトリミングしたのみの不攪乱試1過剰間隙水圧比, Du/sc'料と,モールド内の湿潤突き固め法により再構成した試料の 2 種類を比較した。これらの試料の繰返し三軸試験から得られた,繰返し載荷回数と応力振幅比の関係を図-6 に示す。里塚で採取した試料は益城の試料よりもはるかに低い応力振幅比により液状化した。また,今回の液0.8Undisturbed 20.6不攪乱0.4Undisturbed 40.2Disturbed 1再構成状化地点の情報を CSR の値に反映させるために下記のDisturbed 2000.20.40.60.81累積損失エネルギー, ΣΔW/ sc'0.8図-7益城で採取した試料の累積損失エネルギーと過0.25益城(不攪乱)0.6剰間隙水圧比の関係益城(再構成)両振幅せん断ひずみ, gDA (%)0.50.25里塚(再構成)0.40.30.20.10.2Shear Strain, gDA (%)0.7繰返し応力振幅比, sd/2s'0Undisturbed 30.150.10.05凡例は図-6と同じ000.00.11.010.00.20.40.60.81累積損失エネルギー, ΣΔW/ sc'100.0繰返し載荷回数, NC図-8 益城で採取した試料の累積損失エネルギーと両振幅せん断ひずみの関係図-6 繰返し三軸試験の結果11 変化を,供試体の初期有効拘束圧𝜎𝑐′ によって無次元化した累積損失エネルギー4)に関してまとめた。図-7土を液状化しやすい状態にしていたと考えられる。による4. 繰返し三軸試験の結果から,緩詰の火山灰土層を想定と過剰間隙水圧比の上昇の仕方は不攪乱と再構成との間した場合,地震の加速度等を考慮して計算した応力比で大きな違いはないが,図-8 に示すように,ひずみとエ𝐶𝑆𝑅 = 0.18 は液状化を発生させるのに十分な外力条ネルギーの関係には不攪乱と再構成の間に大きな違いが件であるといえる。見られる。液状化基準の一つである𝛾𝐷𝐴 = 7.5 %に着目す5. 益城の試料で示したように,不攪乱の火山灰土には強いると,不攪乱試料を液状化させるためには再構成試料を液状化抵抗が存在しているため,里塚の盛土以深に存液状化させるのに必要なエネルギーのおよそ2倍必要で在する自然堆積の火山灰層などは液状化しづらいため,あるあることが分かる。また,再構成試料は載荷に伴い盛土地盤が液状化したと考えてよいと思われる。急激にひずみが増大し,過剰間隙水圧比が 1,0 を達成するのとほとんど同時に𝛾𝐷𝐴 = 7.5 %となるが,不攪乱試料謝辞:益城町におけるボーリングサンプリングに協力してくだでは,過剰間隙水圧比が 1.0 に近づいてしばらくしてかさった中央開発株式会社の岩崎誠二様に感謝いたします。ら𝛾𝐷𝐴 = 7.5 %に達していることが分かる。このことから,不攪乱試料は過剰間隙水圧比が 1.0 まで上昇しても急激参考文献にひずみが進行しないような粒子間の結びつき(固結作1)用等)が存在していることが考えられる。このように自然2)状態の火山灰土には強い液状化抵抗が存在しているため,国土地理院: https://maps.gsi.go.jp防災科学技術研究所: http://www.kyoshin.bosai.go.jp/kyoshin/里塚の地盤においても,火山灰盛土の下の自然に堆積し3)た火山灰土が液状化した可能性は低いと考えられる。全国地質調査業協会連合会: https://geonews.zenchiren.or.jp4)國生剛治, 金子陽輔, 岡田侑子(2018): 正弦波・不規4. 結論則波繰返し載荷による砂の損失エネルギーと液状化1. 3 m ほどの大規模な沈下減少と液状化砂が別々の場所挙動, 地盤工学ジャーナル Vol. 13, No. 3, pp. 205-221で観測される現象が,清田区里塚の火山灰盛土地盤に5)石原研而(2017): 地盤の液状化, 朝倉書店おいて発生していた。6)小合克弥, ハザリカ へマンタ, 國生剛治, 山本茂雄,2. 簡易動的コーン貫入試験の結果から,液状化地点の地松本大輔, 石橋慎一朗, スマルティーニ ワ オデ盤の深度 4.5 m ほどまでは N 値(換算 N 値)が 10 に満(2018): 2016 年熊本地震における火山灰土の液状化たない層が連続しており,一部では一度の打撃で規定特性に関する基礎的研究, 第 53 回地盤工学研究発表値の 10 cm 以上の貫入が起きた場所が深度 2~3 m に集会講演原稿, pp.1871-1872中していたのが確認された。地盤内で液状化が生じ,そ7)Ogo, K., Hazarika, H., Kokusho, T., Yamamoto, S.,の地点の砂が外部へ流出したことによる空洞化が原因でIshibashi, S., Matsumoto, D. and Sumartini, W. O.(2018):あると考えられる。Liquefactionstrengthevaluationofundisturbed3. 簡易動的コーン貫入試験中に地下水の痕跡は観測されpyroclastic soil focusing on excess pore water pressureておらず,また,ボーリングデータにおいても孔内水位はand strain, The Eighth Japan-Taiwan Workshop on地下 5.7 m であったが,これは火山灰盛土層よりも下側Geotechnical Hazards from Large Earthquakes and Heavyの強固な火山灰土層内である。地震前日の台風 21 号にRainfalls, pp. 61-62より流れ込んだ雨水が地下水位を上昇させ,火山灰盛The Eastern Iburi Earthquake occurred at 03:08 JST on September 6, 2018 and registered Mj 6.7. Due to thisearthquake, large liquefaction-induced settlement took place in the residential area in Satozuka, Kiyota-ku,Sapporo-shi, Hokkaido, Japan. This residential area was constructed by filling the valley with volcanic ash soil inlater 1970s. The authors conducted a field survey for in-situ testing and sampling on October 9, 2018 at Satozuka.In addition to the sample collected in Satozuka, the borehole sample collected from Mashiki town was used in orderto investigate the difference between undisturbed specimens and reconstituted specimens of volcanic ash soil. Basedon the results obtained from in-situ testing and laboratory tests such as physical testing and mechanical testing, themechanism of the liquefaction during the earthquake was investigated.12
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