研究発表会 2014年
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第49回地盤工学研究発表会発表講演集

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タイトル 地盤材料試験の技能試験における試験結果の評価検討(その1)
著者 中山義久・藤原照幸・山内 昇・城野克広
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 1〜2 発行 2014/06/20 文書ID 67643
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タイトル 地盤材料試験の技能試験における試験結果の評価検討(その2)
著者 藤原照幸・中山義久・山内 昇・城野克広
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 3〜4 発行 2014/06/20 文書ID 67644
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タイトル 技能試験におけるアンケート調査結果(その2)-土粒子の密度試験と砂の最小・最大密度試験-
著者 沼倉桂一・稲積真哉・浜田英治・保坂守男
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 5〜6 発行 2014/06/20 文書ID 67645
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タイトル 技能試験におけるアンケート調査結果(その1) -土の粒度試験-
著者 浜田英治・稲積真哉・沼倉桂一・保坂守男
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 7〜8 発行 2014/06/20 文書ID 67646
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タイトル 地盤材料試験に関する技能試験のPDCAサイクルについて
著者 日置和昭・澤 孝平・中澤博志・渡辺健治・中川 直
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 9〜10 発行 2014/06/20 文書ID 67647
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タイトル 技能試験結果の不確かさ評価による配付試料の均質性に関する検討
著者 澤 孝平・中山義久・城野克広
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 11〜12 発行 2014/06/20 文書ID 67648
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タイトル エジェクター吐出式深層混合処理工法の改良体品質に関する一考察
著者 出野智之・村上恵洋・田中克実
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 13〜14 発行 2014/06/20 文書ID 67649
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タイトル 剛壁型透水試験および柔壁型透水試験により得られた砂・ベントナイト混合土における透水係数の比較
著者 伊藤紗由未・小峯秀雄・村上 哲・瀬戸井健一
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 15〜16 発行 2014/06/20 文書ID 67650
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タイトル 河川堤防材料の不均質性がもたらす堤体の力学的挙動の不確実性
著者 佐竹亮一郎・市川一光・若井明彦
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 17〜18 発行 2014/06/20 文書ID 67651
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タイトル ニューラルネットワークによる泉州沖洪積粘土の間隙比の空間補間
著者 横田健一・小田和広
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 19〜20 発行 2014/06/20 文書ID 67652
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タイトル 中国黄河流域の地下埋葬墓に見る古代人の浸透水対策について
著者 鬼塚克忠
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 21〜22 発行 2014/06/20 文書ID 67653
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タイトル 降雨時の墳丘斜面の安定性の評価方法に関する検討
著者 澤田茉伊・三村 衛・吉村 貢
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 23〜24 発行 2014/06/20 文書ID 67654
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タイトル 古墳墳丘における針貫入試験結果への墳丘断面の新鮮度の影響
著者 吉村 貢・三村 衛・澤田茉伊
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 25〜26 発行 2014/06/20 文書ID 67655
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タイトル アンコール遺跡バイヨン寺院の版築および周辺地盤の力学特性
著者 斉藤 徹・菊本 統・橋本涼太・小山倫史
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 27〜28 発行 2014/06/20 文書ID 67656
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タイトル NMM-DDAによるアンコール遺跡バイヨン寺院の基壇掘削時安定解析
著者 橋本涼太・小山倫史・齊藤 徹・菊本 統
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 29〜30 発行 2014/06/20 文書ID 67657
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タイトル アンコール遺跡バイヨン中央祠堂砂岩の強度評価と劣化砂岩の抽出
著者 福田光治・岩崎好規・本郷隆夫・中川 武・新谷眞人・山田俊亮・石塚充雅・下田一太
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 31〜32 発行 2014/06/20 文書ID 67658
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タイトル アンコール遺跡における基壇盛土の眞正性、タタキ技法による修復と技術移転
著者 岩崎好規・福田光治・下田一太・赤澤 泰・中澤重一・友田正彦・中川 武・・・
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 33〜34 発行 2014/06/20 文書ID 67659
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タイトル 写真測量による横須賀製鉄所第1号ドライドックの石材表面侵食量の測定
著者 藤井幸泰・正垣孝晴・宮川真国・菊地勝広
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 35〜36 発行 2014/06/20 文書ID 67660
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タイトル 横須賀製鉄(造船)所石造ドライドック裏込め土の鉱物組成
著者 正垣孝晴・宮川真国・菊地勝広・藤井幸泰・小口千明
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 37〜38 発行 2014/06/20 文書ID 67661
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タイトル 海上人工島である東京湾第二海堡の地盤構造物としての建設技術
著者 野口孝俊・浦本康二
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 39〜40 発行 2014/06/20 文書ID 67662
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タイトル 敦煌莫高窟第108窟における電気探査を用いた水分環境に関する研究
著者 伊藤三彩恵・小泉圭吾・小田和広・朴 春澤・谷本親伯・岩崎好規・楊 善龍・郭 青林
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 41〜42 発行 2014/06/20 文書ID 67663
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タイトル 敦煌莫高窟108窟西壁における塩の潮解と水蒸気移動の可能性に関する研究
著者 小田和広・小泉圭吾・伊藤三彩恵・朴 春澤・谷本親伯・岩崎好規・楊 善龍・郭 青林
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 43〜44 発行 2014/06/20 文書ID 67664
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タイトル マチュピチュ遺跡「太陽の神殿」の修復保存 -II-
著者 小野 勇・西浦忠輝・柴田英明・西形達明
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 45〜46 発行 2014/06/20 文書ID 67665
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タイトル 地盤関連 ISO の審議状況と地盤工学会におけるISO 活動-平成25年度-
著者 今村 聡・浅田素之
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 47〜48 発行 2014/06/20 文書ID 67666
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タイトル 室内土質試験方法の国際規格審議状況-平成25 年度-
著者 豊田浩史・吉嶺充俊
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 49〜50 発行 2014/06/20 文書ID 67667
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タイトル ISO/TC190(地盤環境)の審議状況-2013年度-
著者 浅田素之・中島 誠・和田信一郎
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 51〜52 発行 2014/06/20 文書ID 67668
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タイトル ISO/TC221国内専門委員会活動報告 -ジオシンセティックス関連規格に関する現状と今後の展開-
著者 椋木俊文・宮田喜壽
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 53〜54 発行 2014/06/20 文書ID 67669
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タイトル モード解析による地盤の非線形性を考慮した地盤変位分布の算定方法
著者 井澤 淳・宇佐美敦浩・上田恭平・室野剛隆
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 55〜56 発行 2014/06/20 文書ID 67670
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タイトル 地盤種別分類における地盤の非線形性の影響に関する検討
著者 宇佐美敦浩・井澤 淳・上田恭平・室野剛隆
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 57〜58 発行 2014/06/20 文書ID 67671
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タイトル 液状化抵抗率と過剰間隙水圧比の関係に関する解析的検討
著者 上田恭平・井澤 淳・室野剛隆
出版 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 59〜60 発行 2014/06/20 文書ID 67672
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  • タイトル
  • 地盤材料試験の技能試験における試験結果の評価検討(その1)
  • 著者
  • 中山義久・藤原照幸・山内 昇・城野克広
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 1〜2
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67643
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会1D - 00 (北九州)   2014 年 7 月地盤材料試験の技 能 試 験 に お け る 試 験 結 果 の 評 価 検 討 (そ の 1)技能試験、標準偏差、頻度分布○中山義久(国)関西地盤環境研究センター藤原照幸(正)地域地盤環境研究所山内 昇 (正)北海道土質試験城野克広(非会員)産業技術総合研究所1.はじめに地盤工学会技能試験準備委員会は平成24年に土質試験の技能試験として改良土の湿潤密度試験と一軸圧縮試験を行っている。試験結果の評価指標として z スコアが用いられている。この zスコアの計算に用いる標準偏差の算出方法について2つの方法で検討を行った。その結果、はずれ値を合理的に外すことのできる四分位法で算出した標準偏差を用いることが妥当な方法であることを明らかにした。さらに試験結果の分布形状の正規性についても検討を行った。本論では、平成 25 年に本学会が実施した技能試験『土粒子の密度試験、粒度試験(フルイ分け)、最小・最大密度試験』の試験結果のばらつきの実態とその分布形状について、検討した結果を報告するものである。2.技能試験の概要使用した試料は市販の5号硅砂と7号硅砂の2種類である。5号硅砂を「試料5号」、7号硅砂を「試料7号」と呼ぶ。配付用試料はミキサーで所定の撹拌後、5ロットに分けた。2つの試料について均質性確認試験を実施した。均質性確認試験後、各ロットより必要数を分取し、参加機関(55機関、その内訳は図1に示す)に各1 kgを送付した。表 1に提出された試験結果の一覧を示す。参考にH23年実施の土粒子密度試験結果を挙げる。技能試験参加機関数は土粒子の密度と粒度が54機関、最小密度と最大密度が47機関であった。3.試験結果の検討表-1年参加機関の種類四分位法標準偏差四分位法変動係数H25 年・H23 年の技能試験結果一覧試料土粒子密度3(g/cm )5号2.7012.6082.6410.0230.860.00800.302.6447号2.7222.5342.6690.0281.040.00630.242.67350%粒径(mm)5号0.620.160.520.05911.430.0285.350.527号0.490.130.180.07542.160.00744.630.165号3.11.42.00.35717.970.35218.062.07号7.81.41.80.84145.820.137.631.7最小密度3(g/cm )5号1.4171.3151.3420.0211.580.0161.221.3367号1.3161.2561.2800.0120.970.0131.041.280最大密度3(g/cm )5号1.7201.5761.6320.0241.460.0211.271.6297号1.6391.5631.6060.0191.180.0191.151.605年項目試料H23土粒子密度3(g/cm )FA均等係数最大値2.7452.781最小値最小値2.6022.624平均値平均値2.6862.713標準偏差標準偏差0.02590.0278変動係数四分位法平均値項目H25最大値図 1変動係数四分位法標準偏差1.01.00.01790.0211四分位法変動係数0.70.8四分位法平均値2.6862.715土粒子の密度試験; 試料5号、試料7号の試験値の幅、平均値は一般的な範囲と考えられる。この試験結果を平成23年技能試験結果と比較すると、従来法による標準偏差、変動係数をそれぞれ比べても、大差ないものである。また、四分位法による標準偏差、変動係数はH25年度分では従来法に比べ、かなり小さくなる。H23年では従来法と四分位法の差はそれほど小さくならない。(※従来法;全データを対象とする方法)The consideration on evaluation method in Proficiency test Results for Soil test (1); Nakayama Yoshihisa ;KansaiGeotechnology and Environment Research Center, Fujiwara Teruyuki; Geo-Research Institute, Yamauchi Noboru;Hokkaido Soil Test Co., Shirono Katsuhiro; National Institute of Advanced Industrial Science and Technology1 図-2土粒子密度試験・粒度試験結果のヒストグラム50%粒径;一般的に均等な砂と考えられる5号の最小値と、7号の最大値に異常値と考えられる値がある。7号の標準偏差について、従来法は四分位法の約10倍の大きさとなっている。均等係数;7号の最大値に異常値とみられる値がある。5号の標準偏差は従来法、四分位法とも差はない。7号の標準偏差・変動係数とも四分位法で求めると大きく低下する。最小密度・最大密度;5号、7号とも標準偏差、変動係数は参考文献 1) にある値の傾向と大差はないと考えられる。また、標準偏差、変動係数とも従来法、四分位図-3最小密度・最大密度試験結果のヒストグラム法との差異はない。4.正規性の検討図-2、図-3に実施した試験結果(全体データ)のヒストグラムを示す。ヒストグラムの形状は歪度と尖度で、また正規性をJB値で評価した。H24年度の技能試験結果においては、全体データでは正規性を示す判定とはならないが、 z <2で絞り込むことにより分布は正規性を示す結果が得られた 2)。今回の試験結果の分布の正規性判定をJB値により示すと表-2のようになる。全体データによる正規性判定では7号の最小密度、最大密度を除き、正規性を示さない。 z <2に絞り込むことにより7号D50を除き、正規性を示すことがわかる。ただし、JB=(N/6)(s 2+(K-3)2 )である。ここで、 V1NNyiy2として、SとKは SNVi 1N1yi32y3NVi 1N1(歪度)、 Kyi2y4(尖度)である。i 1JB<5.991で正規性があるとする。ただし、 z <2にのみ適用する場合、十分な試験所数としてもなお近似を含む。表 2正規性の検討試料5号全体データz <2データ参考文献試料7号土 粒子 密 度D50Uc最小密度最大密度土粒子密度D50Uc最小密度最大密度機関数54545447475454544747JB値1346489914.0863.1162.63171043261911772.1900.137判定××××××××○○機関数46505041463938474645JB値1.7682.4944.7262.7570.6851.926120.53.6261.4752.526判定○○○○○○×○○○1)地盤工学会;土質試験の方法と解説、pp.106~112、1990.価方法の検討(その1)、第48回地盤工学研究発表会、pp211~212、2013.22)中山義久他;土質試験の技能試験結果における評
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  • タイトル
  • 地盤材料試験の技能試験における試験結果の評価検討(その2)
  • 著者
  • 藤原照幸・中山義久・山内 昇・城野克広
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 3〜4
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67644
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会2D - 00 (北九州)   2014 年 7 月地盤材料試験の技能試験における試験結果の評価検討(その2)技能試験試料の均質性標準偏差地域地盤環境研究所関西地盤環境研究センター北海道土質試験産業技術総合研究所(国際)(国際)(正)○藤原 照幸中山 義久山内昇城野 克広1.はじめに 地盤工学会では、これまで「地盤材料の技能試験」を試行し,地盤材料試験の精度確認を行ってきた 1~3) 。「技能試験」は同じ試験方法で得られる試験結果の信頼性(偏り,ばらつき)を試験機関の間・あるいは試験機関内で比較して評価するものであり,その意義・目的としては自己の試験結果が全体のどの位置にあるかを確認できること,必要に応じて試験技術や試験環境の改善を図れること,的確な試験結果を維持できること,などが挙げられる。平成 25 年度からは地盤工学会に新たに「技能試験実施委員会」が設置され,継続的な技能試験実施体制の構築,試験実施機関の技能評価・判定のための検討が行われている。本報では,平成 25 年度に実施した技能試験『①土粒子の密度試験,②粒度試験(フルイ分け),③最小・最大密度試験』 4) でzスコアを用いて各試験機関の技能を評価した結果について報告する。2.用いた試料 試料は市販の 5 号珪砂, 7 号珪砂である。「技能試験実施委員会」で実施した均質性確 認 試 験 に よ る 物 性 値 ( そ れ ぞ れ 平 均 値 ) を 図 -1(粒径加積曲線),表-1(基本的性質)を示す。3.技能試験結果の評価指標と評価基準 多数の機関が参加する技能試験では,各試験機関の技能を評価する方法と して z スコ アを用いるこ とが多い。n個の機関が参加する技能試験において,ある機関 iの 試 験 結 果 を xi , 全 機 関 の 試 験 結 果 の 平 均 値 を ̅ ,標準偏差を  とすると,ある機関 i の z スコア zi は次の式で求められる。・・・・(1)図-1すなわち,z スコアは「試 験結果の偏差 (平均値との差)が標準偏差の何倍であるか」を表すものであり,z スコアが小さいと精 度が良い(試 験結果が平均値に近い)ことになる。技能試験では次の基準で精度レベルを評価している。:満足|zi | ≦22< |z i | <3 :疑わしい:不満足|zi | ≧3表-1粒径加積曲線基本的性質・・・・(2)ただし,z スコアによりこ のような評価 をするためには,試験結果の分布が正規分布である必要がある。しかし,今回の試験結果が正規分布を示していないこと 5) ,およびはずれ値による影響を最小化するために,式(3)の「四分位法により正規四分位範囲として求めた z スコア」(以下,四分位法による z スコアと称す)により z スコアを算定することとした。ここに,Q 1 :試験結果を最 小 値 か ら 最 大 値 へ の 昇 順 に 並 べ , 小 さ い ほ う か ら {(n- 1)/4+1}番 目 の 試 験 結 果 , Q 2 : 小 さ い ほ う か ら {(n-1)/2+1}番目の試験結果,Q 3 :小さいほうから{3(n-1)/4+1}番目の試験結果,n:試験機関の総数である。もし,{(n- 1)/4+1},{(n-1)/2+1},{3(n- 1)/4+1}が小 数部 分を 含む 場合 は, 該当 する デー タ間 をそ の割 合で 補間 する 。xi  Q2・・・・(3)zi (Q3  Q1 )  0.7413さらに,配布試料の均質性に問題があることから,式(3)の分母の標準偏差に“試料の均質性確認試験結果の標準偏差 s s ”を加味した式(4)により z スコアを算出した。xi  Q2zi ・・・・(4)2ss  {(Q3  Q1)  0.7413}24.zスコアの計算とその評価 代表例として各試験機関から報告された最小密度ρ dmin (5コ平均)に関して四分位法によるzスコアを用いて各試験機関の技能を評価した結果を示す。5 号珪砂の試験結果(a)および四分位法による z スコア(z5)をそれぞれ図-2,図-3 に示す。また,7 号珪砂の試験結果(b)および四分位法による z スコア(z7)をそれぞれ図-4,図-5 に示す。全機関の変動係数は,5 号,7 号とも 1%前後とよい精度の結果であった。四分位法によるzスコアの結果によると,|z|≦2 の満足な範囲に入るのThe Consideration on Evaluation Method in Proficiency Test Results for Geomaterial Testing (2)T. Fujiwara (Geo Research Institute),Y. Nakayama (Kansai Geotechnology and Environment Research Center), N. Yamauchi(Hokkaido Soil Test Co.), K. Shirono (AIST)3 は 47 機関中,5 号珪砂で 41 機関,7 号珪砂で 46 機関であった。図-6 には,5 号珪砂および 7 号珪砂の試験結果の散布図に z5 と z7 の基準値を描いた図である。図-7 は同じ散布図に和(a+b)のzスコア(試験機関間の偏りを評 価 ) と 差 (a-b)の z ス コ ア ( 試 験 機 関 内 の ば ら つ き を 評 価 ) の 基 準 値 を 描 い た 図 で あ る 。 偏 り も な く ( |zB|≦2),ばらつきもない(|zW|≦2)に入るのが 47 機関中 36 機関であった。5.おわりに 本報では,平成 25 年度に実施した技能試験の評価方法について検討した結果の一部を示した。地盤工学会では今後も技能試験を継続実施し,研究・試験機関の技能レベルの確認と向上に努めることとしており,会員各位の参加を期待したい。図-2最小密度(5 号珪砂)の試験結果図-3最小密度(5 号珪砂)のzスコア(昇順)図-4最小密度(7 号珪砂)の試験結果図-5最小密度(7 号珪砂)のzスコア(昇順)図-75 号、7 号珪砂の最小密度の散布図図-65 号、7 号珪砂の最小密度の散布図[それぞれのzスコア(Z5,Z7)による評価][和のzスコア(zB),差のzスコア(zB)による評価]参考文献1)澤孝平他;技能試験配布試料の均質性の評価方法と判定基準について,第 48 回地盤工学研究発表会,pp.209~210,2013.2)中山義久他;土質試験の技能試験結果における評価方法の検討(その 1),第 48 回地盤工学研究発表会,pp.211~212,2013.3)山内昇他;土質試験の技能試験結果における評価方法の検討(その 2),第 48 回地盤工学研究発表会,pp213~214,2013.4)地盤工学会基準部技能試験実施委員会;平成 25 年度 地盤材料試験の技能試験報告書,2014.5)中山義久他;地盤材料試験の技能試験における試験結果の評価検討(その 1),第 49 回地盤工学研究発表会(投稿中),2014.4
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  • タイトル
  • 技能試験におけるアンケート調査結果(その2)-土粒子の密度試験と砂の最小・最大密度試験-
  • 著者
  • 沼倉桂一・稲積真哉・浜田英治・保坂守男
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 5〜6
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67645
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会3D - 00 (北九州)   2014 年 7 月技能試験におけるアンケート調査結果(その2)-土粒子の密度試験と砂の最小密度・最大密度試験-技能試験アンケート調査土粒子の密度試験地盤工学会 基準部技能試験実施委員会川崎地質正 会 員 ○沼倉 桂一明石工業高等専門学校国際会員稲積 真哉基礎地盤コンサルタンツ正 会 員浜田 英治日本適合性認定協会1.保坂 守男はじめに地盤工学会では 2011 年から「地盤材料試験結果の精度の分析と表記方法についての研究委員会」,「技能試験準備委員会」において技能試験を試行してきた。2013 年は基準部に「技能試験実施委員会」を設置し,各試験実施機関の技能レベルの確認,向上を目的に,「技能試験」の継続的な実施に向けて活動を行うこととなった。今回は土粒子の密度試験,粒度試験,砂の最小密度・最大密度試験を実施し,併せて試験者や試験器具についてのアンケート調査を行った。本発表では,試験者の経験や試験状況,また今後の技能試験実施に向けての意見・改善点について,土粒子の密度試験と砂の最小密度・最大密度試験のアンケート結果をまとめ報告する。2.アンケート調査の方法と内容今回,技能試験に参加した 54 機関(土粒子の密度試験:54 機関,砂の最小密度・最大密度試験:47 機関)でアンケート調査を実施した。アンケートは技能試験試料の配布時に同封し,試験実施後に試験結果と共に回収・整理した。3.技能試験の概要表-1技能試験は,「土粒子の密度試験方法(JIS A 1202:2009)」,技能試験概要土粒子の密度試験(JIS A 1202:2009)実施試験砂の最小密度・最大密度試験(JIS A 1224:2009)実施機関 2013年8月26日~9月20日市販の5号珪砂と7号珪砂試料最大粒径:2.00㎜試験試料(1試料あたり1㎏)は委員会より一斉送付「砂の最小密度・最大密度試験(JIS A 1224:2009)」に従い,表 -1 の と お り実 施 し た 。 試 料 の 均 質 性 確 認試験 の評 価は,ISO/IEC 17043(JIS Q 17043)の指針に準じて実施された。土粒子の密度試験における均質性確認試験の変動係数は 0.04~0.06%,砂の最小密度試験における均質性確認試験の変動係数は 0.32~0.46%,砂の最大密度試験における均質性確認試験の変動係数は,1.46~1.18%であった。4.アンケート調査結果4.1試験者3 試験とも試験者の年齢に大差はなかった。図 4.1 に試験者について示す。22歳以下10.6%61歳以上6.4%年齢は,20 歳代~70 歳の範囲において,20 歳代が 34%と最も多い。51‐60歳10.6%試験の実績は,土粒子の密度試験で 1000 回以上が 4 割と最も多く,100 回23‐25歳10.6%~999 回が 3 割強で全体の 70%を占める。砂の最小密度試験と最大密度試験では同様の傾向を示し,10 回未満が 55~57%,10~99 回が 30%で 100 回未満が全体の 90%弱を占め,本試験が頻繁に行われない試験であることがわかる。46‐50歳10.6%26‐30歳12.8%41‐45歳14.9%31‐35歳10.6%36‐40歳12.8%図 4.1 年齢未回答0.0%10回未満14.8%10~99回13.0%1000回以上10.6%100~999回4.3%土粒子の密度試験未回答, 2.1%100~999回, 4.3%1000回以上40.7%10回未満55.3%10~99回29.8%100~999回31.5%(a)土粒子の密度試験(b)最小密度試験1000回以上, 8.5%10回未満, 57.4%10~99回, 29.8%(c)最大密度試験図 4.2 実績Result of Questionnaire in Proficiency Test (Part 2)–Test method for density of soil particles and Test method for minimum and maximum densities of sands–Keiichi Numakura (Kawasaki Geological Engineering Co.,Ltd.), Shinya Inazumi (Akashi National College of Technology),Hamada Eiji(Kiso-jiban Consultants Co., Ltd.),Hosaka Morio ; Japan Accreditation Board,5 4.2試験方法,試験器具4.2.1土粒子の密度試験図 4.2.1 脱気方法,図 4.2.2 にはかりについてのアンケート結果を示す。脱気方法は煮沸が 8 割弱,減圧が 1 割強となっている。はかりのひょう量は 200~400g が 6 割強,400~600g が 1 割強となり,7 割強の機関で両範囲のひょう量のはかりを使用している。減圧11.1%1000~2000以下5.6%煮沸+減圧7.4%その他9.3%煮沸79.6%振とう1.9%2,000g超3.7%未回答3.7%0.01g5.6%200g以下5.6%0.0001g13.0%800~1000以下0.0%600~800以下11.1%400~600g以下9.3%図 4.2.1 脱気方法200~400g以下61.1%0.001g77.8%(a)ひょう量(g)(b)感量(g)図 4.2.24.2.2未回答3.7%はかり砂の最小密度試験図 4.2.2 に漏斗の落下口直径と角度,図 4.2.4 に飛越防止板寸法についてのアンケート結果を示す。漏斗の角度は 29~31°が 76%と最も多い。飛越防止板の長さは 100~120mm が 55%,60~80mm が 6%,60mm 未満と140~160mm が 4%,80~100mm と 120~140mm が 2%となっている。未回答6.4%14㎜以上2.1%9~10㎜未満2.1%10゚未満2.1%未回答12.8%10~11㎜31゚以上8.5%0.0%11~12㎜6.4%13~14㎜6.4%60㎜未満4.3%10~20゚4.3%20~29゚4.3%未回答25.5%60~80㎜6.4%80~100㎜2.1%140~160㎜4.3%120~140㎜2.1%12~13㎜68.1%(a)漏斗の落下口直径(mm)(b)漏斗の角度(°)図 4.2.4 漏斗図 4.2.3 漏斗4.2.3100~120㎜55.3%29~31゚76.6%砂の最大密度試験図 4.2.5 にモールドに入れた層数,図 4.2.6 にモールドの打撃位置(横),図 4.2.7 に 1 層あたりの打撃回数についてのアンケート結果を示す。モールドに試料を入れた層数は 10 層が 91%,9~10 層が 2%となり,ほとんどの機関で試料を 10 層で詰めているといえる。モールドの横方向の打撃位置は 4~8 箇所が 72%,9 箇所以上が 21%,4 箇所未満が 4%となった。1 層あたりの打撃回数は 100 回が最も多く約 90%,次いで 25 回が 4%,10 回が 2%となっている。未回答, 6.4%その他(9~10層), 2.1%未回答2.1%4箇所未満4.3%9か所以上21.3%4~8箇所72.3%10層, 91.5%図 4.2.5 モールドに入れた層数4.3未回答4.3%100超0.0%図 4.2.6 モールド打撃位置(横)10回2.1%25回4.3%100回89.4%図 4.2.7 1 層あたりの打撃回数「その他」のコメント試験方法,試験器具以外の「その他」の項目には,「技能試験実施上の留意点・アンケート回答の補足」,「技能試験実施への要望」,「試験方法の提案」等の意見があった。5.まとめ(1) 技能試験参加機関のほとんどで良好な結果が得られた。(2) z スコアが不満足となった機関の試験実施の背景,試験方法,使用器具から明瞭な傾向は認められなかったが,砂の最小密度試験・最大密度試験では,経験不足と思われる傾向がやや認められる。(3) 砂の最小密度試験・最大密度試験は実施頻度が少ないことが確認された。(4) 本アンケート結果により,試験結果の背景など多くの有意義な情報や,今後の技能試験実施の改善点を把握することができた。6
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  • タイトル
  • 技能試験におけるアンケート調査結果(その1) -土の粒度試験-
  • 著者
  • 浜田英治・稲積真哉・沼倉桂一・保坂守男
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 7〜8
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67646
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会4D - 00 (北九州)   2014 年 7 月技能試験におけるアンケート調査結果(その1)-土の粒度試験-技能試験アンケート調査粒度試験基礎地盤コンサルタンツ正会員○浜田 英治明石工業高等専門学校正会員稲積真哉川崎地質正会員沼倉桂一日本適合性認定協会保坂守男1.はじめに地盤工学会は2011年から実務機関,研究所,大学,高専等から参加者を募集し,自己の地盤材料試験の技能レベルを確認することを目的とした技能試験を実施している。3回目となる2013年は,砂の物理的性質試験(土粒子の密度試験,土の粒度試験,土の最小密度・最大密度試験)を実施した。技能試験を実施した機関にはアンケート調査も同時に行っており,粒度試験に関しての質問内容は「試験者について」,「試験の方法」,「試験装置と器具について」,「その他」等である。本編はそれらの中から,「試験者」,「試験装置(はかり)」および「その他」ついて報告する。2.試験者について図2.1~図2.6に,試験者の身分,年齢,経験等に関するアンケート結果をそれぞれ示す。図2.1に示す身分は,正社員とその他(派遣・契約社員等)がそれぞれ39%でほぼ大半を占める。続いて学生14%,アルバイト5%,教員3%の順になっている。派遣・契約社員が,正社員と同じ割合で土質試験(粒度)を担っていることが見てとれる。図2.2に示す年齢は,31~35歳が19%と最も多く,続いて36~40歳と23~25歳がそれぞれ15%,41~45歳が13%,26~30歳が10%となっている。この図より,45歳以下では試験者の年齢構成に大きな偏りはないようである。図2.4と図2.5に示す経験年数を見ると,土質試験全般と粒度試験はほぼ同様な年齢構成となっている。3年未満が33~35%(3年以上5年未満を加えると39%),5年以上10年未満が23%,10年以上20年未満が23~25%,20年以上が13~15%となっている。これら経験年数でも,ある年齢層への大きな偏りはないようである。図2.5に示す粒度試験の頻度を見ると,ほぼ毎日が44%と最も多く,年に数回が31%,月に数回が19%,その他(年1回程度)が6%となっている。図2.6に示す粒度試験の実績を見ると,1000回以上が46%と最も多く,100~999回が23%,10回未満が23%,10~99回が8%となっている。以上試験者に関するアンケート結果から,経験豊富である程度のスキルを有する試験者が多く参加している一方で,年に数回の頻度や実績10回未満の試験者も2~3割参加していることがわかる。図2.1図2.4図2.2身分経験年数(粒度試験)図2.5年齢粒度試験の頻度Results of Questionnaire in Proficiency Test on Particle Size Distribution Test図2.3経験年数(土質試験全般)図2.6粒度試験の実績HAMADA Eiji Kiso-jiban Consultants, INAZUMI Shinya AkashiNational College of Technology, NUMAKURA Keiichi KawasakiGeological Engineering , HOSAKA Morio Japan Accreditation Board7 3.試験装置(はかり)について図3.1~図3.6に,はかりに関するアンケート結果を示す。図3.1に示すはかりのひょう量は,2000以上4000g未満が53%と過半数を占める。続いて2000g未満26%,4000以上6000g未満13%,6000g以上8%となっている。図3.2に示すはかりの感量は,0.01gが73%と大半を占める。続いて0.001gが19%,0.1gと0.0001gがそれぞれ2%,不明・その他が4%となっている。図3.3に示すはかりの使用年数は,3年以上5年未満が20%と最も多く,続いて5年以上10年未満18%,15年以上20年未満15%,3年未満が13%,10年以上15年未満が11%となっている。20年以上使っている機関は7%と少なく,不明・その他は16%であった。図3.4に示すはかりの購入時検査については,実施が58%,未実施または不明が42%であった。図3.5のはかりの使用前点検は「する」と回答した61%の内訳を示すもので,水平度34%,(校正分銅による)キャリブレーション29%,作動確認・ゼロ調整・自動校正27%,クリーニング10%%であった。図3.6ははかりの校正の結果で,年1回(社内)が最も多く26%を占め,年1回(社外)15%,年2回(社内)2%,年2回(社外)0%となっており,「しない」も39%を占めている。「その他」と回答した18%の内訳は,2年毎(社内)3機関,毎月(社内)1機関,不定期(社内・社外)各1機関,毎日(社内)1機関,不明1機関であった。図3.1図3.2はかりのひょう量図3.4図3.3図3.5はかりの感量(g)はかりの購入時検査はかりの使用年数はかりの使用前点検(「する」と回答した61%の内訳)図3.6はかりの校正4.「その他」への回答自由記載への主な回答には,「沈降分析試験についても実施して欲しかった」,「結果は技量確認や精度向上のための指標としていきたい」,「ふるいの目詰まり等によるばらつきが大きいので点検が重要」等の意見があった。5.まとめ(1)試験者に関するアンケート結果から,今回の技能試験の実施者は,経験豊富な試験者から経験年数の少ない試験者まで,幅広く参加していることがわかった。(2)試験結果に影響を及ぼす機器の一つであるはかりの使用年数は,参加機関によってばらついているものの,20年以上使用している機関は少なかった。(3)はかり点検については,購入時と使用前については過半数の機関で実施している結果となった。しかしながら校正まではしない機関も4割近くあり,試験機器校正と結果への影響については今後の課題といえる。8
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  • タイトル
  • 地盤材料試験に関する技能試験のPDCAサイクルについて
  • 著者
  • 日置和昭・澤 孝平・中澤博志・渡辺健治・中川 直
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 9〜10
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67647
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会5D - 00 (北九州)   2014 年 7 月地盤材料試験に関する技能試験の PDCA サイクルについて技能試験地盤材料試験PDCA サイクル大阪工業大学国際会員○日置和昭関西地盤環境研究センター国際会員澤孝平復建調査設計国際会員中澤博志鉄道総合技術研究所国際会員渡辺健治全国地質調査業協会連合会正会員中川直1. はじめに地盤工学会では,これまでに 3 回の技能試験を実施し(表表-1-1 参照),地盤材料試験の精度確認を行ってきた(表-21),2),3)参照)。平成 23 年度は,「地盤材料試験結果の精度分析と表記方法について研究委員会」(委員長:澤孝平)が日本適実施年( 平成 )合性認定協会と共催で粘性土の物理的性質試験を実施し,平成 24 年度には「技能試験準備委員会」(委員長:澤孝平)含水比土粒子の密度粒度 ( 沈降分析 )液性限界 /塑性限界24 年湿潤密度一軸圧縮された「技能試験実施委員会」(委員長:日置和昭)が砂質土の物理的性質試験を実施した。技能試験は,平成 26 年度25 年以降も継続実施する予定であり,平成 26 年度は粘性土の物理的性質試験を予定している。試験機関が技能試験に参加する意義としては,自己の試験試験項目23 年が改良土の湿潤密度試験と一軸圧縮試験を実施した。また,平成 25 年度には技能試験の継続的実施に向けて新たに設置技能試験の実施状況26 年27 年28 年試料参加機関数粘土45改良土51JGS技能試験準備委員会55JGS技能試験実施委員会土粒子の密度粒度 ( ふるい分析 )砂砂の最小密度 /最大密度平成 23 年と同じ粘土平成 24 年と同じ改良土平成 25 年と同じ砂主催JGS研究委員会〃〃〃結果の精度・信頼性を確認できること,必要に応じて試験技術や試験環境の改善を図れること,的確な試験結果が出せる状態を維持できること,などが挙げられよう。一方,地盤工表-2学会が技能試験を継続実施する意義としては,試験機関の質地盤材料試験の変動係数 v と「満足」と判定された測定値の範囲 1),2),3)的向上に寄与すること,地盤材料試験全体の精度・信頼性向上に寄与すること,現行試験法の改訂に反映できること,などが挙げられ,社会貢献の役割を果たせるものと考えられる。本稿では,技能試験の PDCA サイクルを紹介するとともに,平 成 26 年 度 の 実 施 に 向 け 行 っ た 平 成 23 年 度 実 施 分 の含水比土粒子の密度CHECK 事例と平成 26 年度の PLAN について述べる。2. 技能試験の PDCA サイクル技能試験の PDCA を表-3 に示す。表中には,地盤工学会粒度(沈降分析)(技能試験実施委員会)側の PDCA と参加機関側の PDCA を併記している。表中に赤字で記した,地盤工学会側の C:現行試験法の問題点や改善点の把握,A:現行試験法の改訂に寄与し得る基礎資料の作成については,現状では満足できる活動を行えておらず,PDCA サイクルが十分に機能しているとは言い難い。平成 26 年度からは,地盤工学会側の PDCAサイクルが十分に機能を発揮し,社会貢献の役割を果たせるよう,準備を進めている。細粒分含有率粘土分含有率液性限界塑性限界湿潤密度一軸圧縮土粒子の密度3. 平成 23 年度実施分の CHECK 事例と平成 26 年度の PLAN平成 26 年度の実施(粘性土の物理的性質試験)に向け行った平成 23 年度実施分の CHECK 事例を表-4~6 に示す。CHECK は変動係数 v が大きかった粒度試験(以降,沈降分析),液性限界試験,塑性限界試験について行った。表中の数値は,技能試験での評価結果と参加機関へのアンケート結果を基に求めた z スコアの絶対値の平均値であり,その値が50%粒度粒径(ふるい分析)均等係数最小密度最大密度試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 56試料 59試料 56試料 595 号珪砂7 号珪砂5 号珪砂7 号珪砂5 号珪砂7 号珪砂5 号珪砂7 号珪砂5 号珪砂7 号珪砂変動係数v (%)| z |≦ 2 の範囲1.41.71.01.01.33.728.418.57.06.510.08.51.01.216.215.90.91.011.442.218.045.81.61.01.51.233.1 ~ 34.5(%)32.5 ~ 34.5(%)2.650 ~ 2.721(g/cm 3 )2.673 ~ 2.757(g/cm 3 )93.9 ~ 96.5(%)78.9 ~ 85.6(%)32.3 ~ 55.9(%)37.0 ~ 61.7(%)42.9 ~ 51.9(%)41.9 ~ 51.1(%)15.7 ~ 23.7(%)20.6 ~ 25.7(%)1.603 ~ 1.661(g/cm 3 )1.614 ~ 1.656(g/cm 3 )75.7 ~ 144.9(kN/m 2 )106.4 ~ 188.2(kN/m 2 )2.628 ~ 2.660(g/cm 3 )2.660 ~ 2.686(g/cm 3 )0.46 ~ 0.58(mm)0.14 ~ 0.18(mm)1.3 ~ 2.71.4 ~ 2.01.302 ~ 1.370(g/cm 3 )1.251 ~ 1.309(g/cm 3 )1.568 ~ 1.690(g/cm 3 )1.564 ~ 1.646(g/cm 3 )PDCA cycle in proficiency test for geomaterial testK. Hioki (Osaka Institute of Technology), K. Sawa (Kansai Geotechnology and Environment Research Center), H. Nakazawa(Fukken Co.,Ltd.), K. Watanabe (Railway Technical Research Institute), S. Nakagawa (Japan Geotechnical Consultants Association)9 表-3地盤材料試験に関する技能試験の PDCA地盤工学会(技能試験実施委員会)参加機関P技能試験の計画 (スケジュール,試験項目,試料 etc)技能試験への参加計画 (試験者,試験技術 etc)D技能試験の実施 (均質性確認試験,試料の配付 etc)技能試験の実施 (試験実施,試験結果報告 etc)C試験結果ならびにアンケート結果の整理・分析現行試験法の問題点や改善点の把握技能試験報告書の確認A技能試験報告書の作成現行試験法の改訂に寄与し得る基礎資料の作成試験技術や試験環境の改善粒度試験(沈降分析)の CHECK 事例(| z |の平均値)表-4分散方法分取量使用した水の種類ふるい分け方法b法a法適宜目安に従う水道水水道水以外手動( 12 機関) ( 13 機関) ( 14 機関) ( 29 機関) ( 13 機関) ( 31 機関) ( 35 機関)機械( 3 機関)試料 F2.021.291.391.271.371.291.360.34試料 A1.390.961.250.801.280.810.960.45表-5天秤の秤量液性限界試験の CHECK 事例(| z |の平均値)天秤の最小読取値使用した水の種類溝が結合する判断1000g以上1000g未満0.01g以上0.01g未満水道水水道水以外目視ゲージ使用( 15 機関) ( 29 機関) ( 22 機関) ( 22 機関) ( 11 機関) ( 33 機関) ( 19 機関) ( 25 機関)試料 F1.390.791.160.841.340.881.180.86試料 A1.190.730.940.841.100.811.020.78表-6実施頻度塑性限界試験の CHECK 事例(| z |の平均値)3mm の判断方法天秤の秤量すりガラスの点検1000g未満3mm 棒使用数回未満 /週 数回以上 /週 1000g以上目視無有( 18 機関) ( 26 機関) ( 15 機関) ( 29 機関) ( 14 機関) ( 30 機関) ( 18 機関) ( 26 機関)試料 F1.060.570.910.690.930.690.900.68試料 A1.400.861.620.801.280.991.181.01小さい(ゼロに近い)ほど,測定値は付与値に近く,信頼性が高いと言える。沈降分析においては,試料の分散方法,分取量,使用した水の種類,ふるい分け方法に強い傾向が表れており,b 法により分散した機関の方(配付した試料の塑性指数 Ip は,20 以上であったと考えられる)が,試料を目安に従って分取した機関の方が,蒸留水あるいはイオン交換水を使用した機関の方が,機械によりふるい分けした機関の方が試験結果の信頼性は高かったと言える。同様に,液性限界試験では,天秤の秤量や最小読取値,使用した水の種類,溝が結合する判断に強い傾向が表れており,また塑性限界試験では,実施頻度,天秤の秤量,3mm の判断方法,すりガラスの点検に強い傾向が表れている。これらを総括すると,地盤材料試験に対する試験機関の“心構え”が重要であると言わざるを得ない。以上を踏まえて,平成 26 年度の技能試験では,天秤の秤量や最小読取値,使用する水の種類,試料の分取量(沈降分析),ゲージ(液性限界試験)や 3mm 棒(塑性限界試験)の使用に注文を付けたいと考えている。注文を付けることで,表-2 に示した変動係数 v が少しでも小さくなることを期待している。4. おわりに今後も,地盤工学会は,地盤材料試験に関する技能試験を継続実施する予定である。技能試験が参加機関の技能向上に役立ち,地盤材料試験に携わる多くの方が試験結果の品質について関心を持って頂ければ幸いである。参考文献1) 日置和昭他:土質技能試験結果の分布形状と評価方法に関する考察,地盤材料試験・地盤調査の精度とばらつきに関するシンポジウム論文集,pp.39-48,2012.2) 公益社団法人地盤工学会 調査基準部 技能試験準備委員会:平成 24 年度土質試験の技能試験報告書,2013.3) 公益社団法人地盤工学会 基準部 技能試験実施委員会:平成 25 年度地盤材料試験の技能試験報告書,2014.10
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  • タイトル
  • 技能試験結果の不確かさ評価による配付試料の均質性に関する検討
  • 著者
  • 澤 孝平・中山義久・城野克広
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 11〜12
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67648
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会6D - 00 (北九州)   2014 年 7 月技能試験結果の不確かさ評価による配付試料の均質性に関する検討試料の均質性・標準偏差・不確かさ関西地盤環境研究センター 国際会員 ○澤 孝平・中山義久産業技術総合研究所1.はじめに非会員城野克広各種の製品や環境問題などの試験を担当する試験機関の試験能力を評価し表示するために、JIS Q 17043に基づく「技能試験」が多くの分野で実施されている。地盤材料試験分野では、2007年より日本適合性認定協会と関西地盤環境研究センターが共催して実施していた。2010年からは地盤工学会内の研究委員会や技能試験準備委員会が研究的に試行しており、この成果を受けて2013年には学会の定例事業として本格的に技能試験を実施している。「技能試験」は同じ試験方法で得られる試験結果をいくつかの試験機関の間で比較して評価するものであり、公正な評価のためには技能試験に用いられる試料の均質性が重要である。とくに、工場で生産される一般の工業製品とは違い、地盤材料は自然状態から採取されるために均質性に問題があることは認識されていたが、そのばらつきを明確に把握して研究開発・設計・施工・維持管理業務に取り入れる努力は十分ではなかった。技能試験における試料の均質性評価方法はJIS Z 8405に定められているが、この評価方法で評価すると前述の技能試験に用いられた地盤材料試料の均質性には問題が多いことが判明しており、zスコアによる技能試験の評価において相応の考慮が払われている。本報告では、これまで実施されてきた地盤材料試験の技能試験における配付試料の均質性の実態を JIS Z 8405 の方法で報告する。さらに、技能試験結果から不確かさを算定することによりわが国における地盤材料試験結果の精度・ばらつきを明らかにすると共に、試料の均質性が試験結果の精度・ばらつきに与える影響を算定する方法を提案する。2.配付試料の均質性の実態試料の均質性を表すには標準偏差や変動係数が一般的であり、2008 年までの技能試験ではこの方法によっていた。一方、JIS Z 8405-2008 付属書 B において、配付前試料の均質性確認試験結果と技能試験結果とを比較する評価方法が次のように示されている。すなわち、試料間標準偏差( s s :配付前試料の均質性確認試験結果の標準偏差)を技能評価の標準偏差(  R :技能試験結果の標準偏差)と比較して、「 s s  0.3   R 」の場合にはこの配付試料を均質とみなす。この基準式の係数 0.3 の根拠は、この基準が満たされる場合、試料間標準偏差によって増分する技能評価の標準偏差が約 10 %を越えないということである。2007年以降に実施されている地盤材料分野の技能試験の内、前述のJIS Z 8405の方法で均質性が評価できるものを取り出し、均質性確認試験と技能試験の標準偏差の比( ss /  R )と均質性確認試験の変動係数( v0 )の関係を示すと図-1のようになる。これは、既報1)に2013年の技能試験と関西支部主催実技セミナー(Soil Test Contest)の結果を追加したものである。2013年の結果では粒度試験の v0が大きく、 ss /  R も基準を超えている。また、最小密度と最大密度および実技セミナー結果も ss /  R が大きい。したがって、一軸圧縮試験では v0 が8以下が望ましい。一方、湿潤密度試験以外の物理試験では v0 が1以下であれば、技図-1 s s /  R と変動係数の関係能試験試料として問題がないといえる。3.不確かさ評価による配付試料の均質性の検討技能試験結果を分散分析することにより、試験結果の不確かさ(ばらつき)の要因が試験結果に与える影響を求めることができる。ここでは、2013 年に実施した技能試験(砂の物理試験)を例にして述べる。図-2 は不確かさの算定方法を示している 2)。①の対象測定量は、土粒子の密度、最小密度、最大密度、粒度試験から求める 50 %径と均等係数の 5 つである。②の要因には、ふつう試験機器・試験者・試料・試験方法・試験環境があるが、技能試験では次の二つである。その一つは試験① 対象測定量の決定② 要因の抽出土粒子の密度・最小密度・最大密度・50%径・均等係数試験機器試験者「試験機関・ロット」③ 標準不確かさの算定試料(供試体)試験方法 「繰返し・サンプル」  不均質性  試験環境繰返し試験結果④ 合成標準不確かさの算定寄与率⑤ 拡張不確かさの算定:要因ごとの不確かさへの影響の百分率相対拡張不確かさ:変動係数の約2倍図-2 試験結果の不確かさ算定方法Consideration on the Homogeneity of Sample for Proficiency Test by Evaluation of Uncertainty from the Test ResultsK. Sawa, Y. Nakayama (Kansai Geotechnology and Environment Research Center), K. Shirono (AIST),11 機器と試験者を含む試験機関であり、これに配付試料の均質性も影響する。今回の配付試料は均一に混合した砂を約 1 kgずつに分けたもの(これをロットと呼ぶ)から 54 個を各試験機関に 1 個ずつ配付し、5 個を均質性確認試験に供した。この要因を「試験機関+ロット」と表す。もう一つの要因は試験の繰返しであり、これにも試料の均質性が関係する。各試験機関では前述のロット(約 1 kg)から土粒子の密度試験と最大密度試験では 3 個、最小密度試験では 5 個のサンプルにより繰返し試験をするので、これを「繰返し+サンプル」と表示する。粒度試験は試験機関ごとに 1 個のサンプルにより試験するので、「繰返し+サンプル」による影響は求められない。試験環境については考慮していない。③の標準不確かさはふつう標準偏差により表す。土粒子の密度、最小密度、最大密度の試験結果を分散分析すると、要因( x )ごとに標準偏差(σx)から標準不確かさ(ux)が求められる。④では各要因の標準不確かさ(ux)を二乗和の平方根として合成する(合成標準不確かさ uc)。この結果から、要因ごとの影響を寄与率( Rx  (uxuc 2 )  100 (%) )として算出できる。⑤では2合成標準不確かさ(uc)に包含係数(ふつう 2)倍して拡張不確かさ(U)を求め、試験結果の平均値( x0 )との百分率から相対拡張不確かさ( U R  (U x0 )  100 (%) )を求めると、これが変動係数の約 2 倍を表す。2種類の試料(5号と7号)表-1 土粒子の密度試験結果(7 号試料)の分散分析表と標準偏差の計算について、均質性確認試験自由度ロット変動 (g/cm3)20.0000289繰返し+サンプル0.000050010要因結果(ロット数:5)と技能試験結果(参加機関数:54)の内、7号試料の土粒均質性確認試験合計0.000078914試験機関+ロット0.1210811530.0022845σe12+3σA12技能試験 繰返し+サンプル0.00506271080.0000469σe10.1261438161子の密度試験結果の一元配置の分散分析表は表-14分散 (g/cm3)2 分散の期待値 標準偏差 (g/cm3)σA00.00000720.0008628σe02+3σA022σe00.00000500.0022361σe0のようである。分散分析で合計2σA10.0273110σe10.0068466は要因ごとの分散が求められ、それらの期待値の式により「試験機関+ロット」による標準偏差(σA0、σA1)と「繰返し+サンプル」による標準偏差(σe0、σe1)が算出できる。ただし、配付試料の均質性確認試験(5ロット×3サンプル)は同一の試験機関で実施しており、その結果から得られる標準偏差(σA0)には試験機関の影響はなく、「ロット」だけのものであるので、これをロットの標準偏差(σLOT)と考える。そして、試験機関の標準偏差をσLAB=√(σA12-σA02)として算出する。また、標準偏差σe0とσe1は本来等しいはずであるが、均質性確認試験と技能試験の試験機関の違いなどから異なっている。そこで、ここでは「繰返し+サンプル」の標準偏差σR+Sとして技能試験の結果(σe1)を採用する。さらに、土粒子の密度試験結果はふつう1試験機関あたり3個のサンプルの平均値として報告されるので、試験機関およびロットの標準不確かさuLABおよびuLOTはσLABおよびσLOTと同じであり、「繰返し+サンプル」の標準不確かさuR+Sは(σR+S/√3)から求める。2013年の技能試験の5試験項目について、上記の方法により標準不確かさを求め、さらに合成標準不確かさと拡張不確かさを計算して、寄与率と相対拡張不確かさを求めると表-2のようになる。これによると、ロットの寄与率(RLOT)が10 %以上と大きくなるのは、最小密度試験と最大密度試験である。とくに、5号試料の最大密度試験ではRLOTが極端に大きく、均質性確認試験に問題があると考えられる。それ以外の試験項目ではRLOTが10 %以下であるので、この技能試験は「繰返し+サンプル」の影響も含めて試験機関の技能を適正に評価していると判断できる。ただし、50 %径と均等係数は相対拡張不確かさ(UR)が23~92 %とかなり大きく、ロット間の均質性が確保されているというよりは、粒度試験の精度に問題が多いと考えるべきかもしれない。その他の試験ではURが最大でも3 %程度(変動係数に換算すると1.5 %程度)であり、試験結果の精度は良いと判断できる。4.おわりに技能試験に用いられている配付試料の均質性の実態を明らかにした。さらに,技能試験結果の不確かさ評価により、要因の精度への影響を寄与率として表せること、および試験精度を相対拡張不確かさにより表示できることを示した。配付試料の均質性が試験結果に与える影響を吟味する適正な方法について、さらに追究したい。参考文献:1)澤・城野ほか:技能試験配付試料の均質性の評価方法と判定基準について,第48回地盤工学研究発表会論文集,No.105,pp.209-210,2013.2)澤・中山ほか:技能試験結果によるセメント改良土の試験結果の不確かさ評価,土木学会第68回年次学術講演会,No.Ⅲ-078,pp.155-156,2013.表-2 2013 年技能試験結果による不確かさ評価と寄与率および相対拡張不確かさ試験項目試料3土粒子の密度(g/cm )5号7号33最小密度 (g/cm )5号7号最大密度 (g/cm )5号7号50%径 (mm)均等係数5号7号5号7号試験機関 (u LAB)0.02200標準不確かさロット (u LOT)0.00000(u x)繰返し+サンプル (u R+S) 0.00508合成標準不確かさ (u c)0.022580.027300.020690.010720.008900.015650.057160.075200.342880.837990.000860.003810.005830.021990.008900.014830.004470.100000.070710.003950.002730.002100.002950.005850.027600.021220.012380.023900.018930.059050.075340.357160.84097試験機関 (R LAB)94.997.995.174.913.968.493.799.692.299.3ロット (R LOT)0.00.13.222.284.622.16.30.47.80.7繰返し+サンプル (R R+S)5.12.11.72.91.59.5拡張不確かさ (U )0.0450.0550.0420.0250.0480.0380.120.150.711.68試験結果の平均値 (x 0)2.6412.6691.3421.2801.6321.6060.5170.1791.991.84相対拡張不確かさ (U R) (%)1.72.13.21.92.92.422.984.335.991.6寄与率(R x) (%)12
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  • タイトル
  • エジェクター吐出式深層混合処理工法の改良体品質に関する一考察
  • 著者
  • 出野智之・村上恵洋・田中克実
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 13〜14
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67649
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会7K - 06 (北九州)   2014 年 7 月エジェクター吐出式深層混合処理工法の改良体品質に関する一考察地盤改良1.改良土一軸圧縮強さ正会員(株)不動テトラ○出野智之国際会員村上恵洋正会員田中克実はじめに地盤改良の分野では,近年,多様なニーズに応じて様々な工法が開発・実用化されている。その中で,「固化」を改良原理とする代表的な工法として,セメント系の改良材を地盤中の原位置で攪拌混合し,化学的な結合作用を利用して軟弱土を改良する深層混合処理工法がある。本工法における分野では改良径の大径化による大量施工を行い,コスト縮減を求められるケースが増えている。しかしながら,闇雲に大径化を行うことは,攪拌効率の低下を招き,改良体の品質低下を発生させるため,大径化には攪拌効率を向上させるための技術革新を同時に実施する必要がある。攪拌効率を向上させる技術の一つにエジェクター吐出方式がある。エジェクター吐出とは,改良材と水を混合したスラリーをエアーと同時に霧状図-1エジェクター吐出機構に高速噴射させる機構であり,攪拌域全体に改良材スラリーを広く散布でセメントスラリーき,更に土の破砕効果や混合土の流動性増加が期待できる。本方式を採用した深層混合処理工法(以下,CI-CMC 工法と記す)は,大径化と同時にバラツキの少ない均質な改良体の造成が可能となっている1)。しかし,改混合室土の破砕効果流動性増加ため,データを蓄積し,性能を適正に評価することが重要である。本報は,認試験の結果を分析して,その性能評価を実施したものである。吐出口エアー良体の品質は,工法の攪拌性能および地盤条件,施工条件により変動する主に近畿地区において施工された 22 現場における CI-CMC 工法の品質確高速噴射される霧状スラリー図-2エジェクター吐出方式の模式図2. 深層混合処理工法の品質管理(1)現場強度と設計基準強度の関係「陸上工事における深層混合処理工法設計・施工マニュアル改訂版:土木研究センター」によれば,現場強度と設計基準強度の関係は以下のように記述されている。__quck =γ・quf =γ・λ・qul(1)_ここに,quck :設計基準強度quf :現場強度の平均値γ :バラツキを考慮した現場強度係数_qul :室内強度の平均値 ―_λ :現場強度の平均値qufと室内強度の平均値qulの比陸上工事の場合,設計基準強度と室内強度の平均値の比はγ・λ=1/3~1/4 とすることが多い。次に,現場強度の強度分布が正規分布に従うとしたとき,次に示す関係ここに50(2)K :係数σ :現場強度の標準偏差_V :現場強度の変動係数(V=σ/quf )係数 K は目標とする基準強度に対して幾らの不良発生率となるかの指標不良発生率(%)が成り立つ。 ___quck =quf-K・σ=quf-K・V・quf40302010となるもので,K と不良発生率の関係は図-3 に示すようになる。現場室内強度比λや変動係数 V は工法の攪拌性能や地盤条件,施工条件00.0により変動するものであり,CI-CMC 工法においても,これらの数値を蓄積することが,施工に対する性能評価に繋がるため重要である。(2)深層混合処理工法における品質管理基準0.51.01.52.02.5係数 K図-3係数 K と不良率の関係深層混合処理工法の品質管理は,一軸圧縮試験(JIS A 1216)による規格値として,「①各供試体の試験結果は改良地盤設計基準強度の 85%以上。②1 回の試験結果は改良地盤設計基準強度以上。なお,1 回の試験とは 3 個の供試体の平均値で表したもの。」が国土交通省の共通仕様書などに広く採用されている。このため、深層混合処理工法の配合計画は,上記①,②において品質不良が発生しないように適正にγ・λを設定することが重要である。Ideno, T. FUDOTETRA Co., Ltd.Murakami, S. FUDOTETRA Co., Ltd.Tanaka, K. FUDOTETRA Co., Ltd.Study of quality for the improved column of Deep mixingmethod applied by Ejector discharge mechanism13 CI-CMC 工法の品質分析50001,300mm,17 現場がφ1,600mm であり,何れも従来工法のφ1,000mmと比較して,断面積で 1.7 倍~2.6 倍と大径での施工を行っている。室内強度の平均値と現場強度の平均値の関係を各現場の土層毎に整理したものを図-4 に示す。CI-CMC 工法のλは、粘性土及び有機質土でλ=1~1/2,砂質土でλ=1~3/4 の範囲にあり,従来工法の値(粘性土でλ=1~1/3,砂質土でλ=1~1/2 程度)2)と比較して大きな値であることが判る。次に CI-CMC 工法のバラツキの程度を評価するために現場強度の変40001/1粘性土有機質土砂質土互層=現場強度の平均 q uf  (kN/㎡)CI-CMC 工法の品質分析を行った 22 現場の改良径は,5 現場がφλ3.=λ43/3000λ=1/ 220001000動係数を土層毎に求め,供試体サンプル数との関係を整理したものを00図-5 に示す。改良体強度の変動係数の信頼性を論じるためにはある程1000は,粘性土中に挟まれる薄層の砂など,土層自体の不均図-4質性の影響を受けるが,十分なサンプル数がある場合に変動係数 (%)しての精度が低く変動係数の幅は大きいが,サンプル数の増加に伴い変動係数の幅は狭まる傾向にある。十分なサンプル数がある場合の変動係数は 30%程度に収まっており,実験工事等で確認されている CI-CMC 工法の性能と同程度の性能が確認された。φ1,000mm で施工された従来工法の変動係数は 30~50%粘性土有機質土砂質土互層504030201000図-3 を用いて求め,表-1 にまとめた。ここで,σの標準偏差を持つ 3 本の供試体平均値の標準偏差はσ/3として求めることができる。γ・λ=1/3 で配合設計した CI-CMC 工法の改良体の品質が,V=30%,λ=1/2 であるならば,現場強度が設計基準10図-5小さくなっていることが判る。品質管理基準に対する不良発生率を式(2)および515202530354045供試体サンプル数CMC 工法では大径施工にも係わらず,バラツキの程度はバラツキによる不良発生率5000現場強度の平均と室内強度の関係60(平均 40%)を目標としていることを踏まえると,CI-4.400070の分析においてもサンプル数が少ない時は,統計分析とである変動係数 30%以下300080は,土層の不均質性の影響はある程度排除できる。今回3)2000室内強度の平均 qul  (kN/㎡)度以上のサンプル数が必要となる。また,現場の品質管理結果の分析で表-1供試体数と変動係数の関係改良体の諸定数と不良発生率の関係不良発生率(%)変動係数現場/室内Vλ設計/室内 現場強度係数γ・λγquf<quck50%40%40%40%30%30%30%1/21/21/21/31/23/43/41/31/31/41/41/31/31/20.670.670.500.750.670.440.6715.910.60.620.24.80.04.8quf<quck*0.85 quf(3本)<quck9.75.20.211.31.50.01.54.21.50.07.40.20.00.2強度を下回る確率は 4.8%,設計基準強度の 85%を下回る確率は 1.5%,3 個の供試体の平均値が設計基準強度を下回る確率は 0.2%となり,共通仕様書が定める管理基準値をほぼ下回らない設定ができていると判断できる。一方,砂質土に限定すればλ≧3/4 の範囲にあるため,λ≧1/2 の範囲にある粘性土や有機質土と比較して安全側の設定と判断できる。砂質土においても粘性土や有機質土と同程度の品質とする場合はγ・λ=1/2 の設定が可能となる。5.まとめ① エジェクター吐出方式を採用した CI-CMC 工法の改良体の品質は従来工法と比較して,大径施工を実現しているにも係わらず,土層種別によらず変動係数 V=30%程度の品質のよい改良体が造成されている。② 〔設計基準強度/室内配合強度〕γ・λ=1/3 の設定は、CI-CMC 工法の改良体の事後の一軸圧縮強さが,共通仕様書で定める品質基準値を下回らないよう定めたものである。③ 土質により〔現場強度の平均値/室内強度の平均値〕λが異なるため,土質毎にγ・λを設定することで,土質種別によらず同程度の品質が確保可能なバランスのよい配合設計が可能となる。CI-CMC 工法の場合、粘性土や有機質土でγ・λ=1/3,砂質土でγ・λ=1/2 と定める事ができる。【参考文献】1)新川直利(2012). "CI-CMC 工法-大径・高品質の深層混合処理工法-"地震時における地盤災害の課題と対策,2011年東日本大震災の教訓と提言(第二次),pp.270-271.2)(財)土木研究センター:陸上工事における深層混合処理工法設計・施工マニュアル改訂版,2004,pp.39.3)(財)先端建設技術センター:先端建設技術・技術審査証明報告書,CI-CMC 工法(大径・高品質の深層混合処理工法)(内容変更と更新),2012.14
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  • タイトル
  • 剛壁型透水試験および柔壁型透水試験により得られた砂・ベントナイト混合土における透水係数の比較
  • 著者
  • 伊藤紗由未・小峯秀雄・村上 哲・瀬戸井健一
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 15〜16
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67650
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会8D - 04 (北九州)   2014 年 7 月剛壁型透水試験および柔壁型透水試験により得られた砂・ベントナイト混合土における透水係数の比較ベントナイト1.透水係数透水試験茨城大学大学院学生会員茨城大学国際会員○伊藤紗由未小峯秀雄・村上哲共和技研正会員瀬戸井健一はじめに砂・ベントナイト混合土は低透水性を有するため,一般・産業廃棄物最終処分場および低レベル放射性廃棄物処分場の遮水材として利用される1), 2).遮水性能の評価には,透水係数を用いる場合が多い.遮水材に要求される透水係数は,一般産業廃棄物最終処分場では 10-9m/s,低レベル放射性廃棄物処分場においては 10-11m/s 以下とされている 3), 4).そのため,これらの透水係数を精度よく測定することが各処分施設の設計する上で重要となる.ASTM(米国材料試験協会)5)では,低透水性土質材料の透水係数を測定する場合,柔壁型透水試験が規格されている.我が国における土の透水試験方法(JIS A 1218:2009)6)によると,10-9m/s 以下の透水係数を得るためには圧密試験結果から間接的に算出する方法が示されており,直接測定する方法は規格化されていない現状にある.本研究では,供試体寸法を直径 60mm,高さ 20mm とした剛壁型透水試験装置および柔壁型透水試験装置を製作した.そして,10-9m/s 以下の透水係数を有する砂・ベントナイト混合土のベントナイト配合率 10%,20%および 30%に対して両試験を実施し,得られた透水係数を比較した.2.使用した試料および砂・ベントナイト混合土の作製方法本研究では,ベントナイト A(クニミネ工業製・クニゲル V1)を使用し,混合する砂には三河珪砂 V5 号(三河珪石製,土粒子の密度:2.66Mg/m3,粒径:0.75~2.00mm)を使用した.表 1 に,ベントナイト A の基本的性質を示す 7).砂・ベントナイト混合土の作製方法は,ベントナイト配合率 10%,20%および 30%において,最適含水比となるよう砂に加水し,均一に含水するためミキサー(株式会社愛工舎製作所・KENMIX chef)を用いて 1 分間混合した.その後,ベントナイトを添加し,再度ミキサーにて 1 分間混合した.混合後は,密閉容器に入れ 24 時間以上養生した.表 2 に,「突固めによる土の締固め試験」(JIS A 1210:2009)8)に準拠し取得したベントナイト配合率 10%,20%および 30%における最適含水比と最大乾燥密度を示す.平均土粒子密度は,ベントナイト A と三河珪砂 V5 号の土粒子密度と配合割合から算出した.なお,ベントナイト配合率とは全試料の乾燥質量に対するベントナイトの乾燥質量の百分率である.3.剛壁型透水試験および柔壁型透水試験の概要3.1 剛壁型透水試験の概要図 1 に,剛壁型透水試験装置の概略図を示す.内径 60mm,高表 1 ベントナイト A の基本性質 7)AベントナイトタイプNa 型2.79土粒子密度(Mg/m3)458.1液性限界(%)23.7塑性限界(%)434.4塑性指数57モンモリロナイト含有率(%)モンモリロナイト含有量は,純モンモリロナイトのメチレンブルー吸着量140(mmol/100g)を基準に算出された値である.表 2 最適含水比と最大乾燥密度ベントナイト平均最大最適配合率土粒子密度 乾燥密度 含水比(%)(Mg/m3)(Mg/m3)(%)102.681.6419.1202.691.7215.1302.701.7415.4さ 20mm の小型変水位透水試験容器にビュレット管(最大容量25mL,最小目盛 0.1mL)を接続し行った.供試体は直径 60mm,高ビュレット管最大容量:25mL最小目盛:0.1mLさ 20mm の円柱形である.供試体の作製方法は,内径 60mm,高さビュレット管最大容量:25mL最小目盛::0.1mL20mm の小型変水位透水試験容器に目標とする乾燥密度となるよう突棒(直径 19.98mm,質量 501.06g)を用いて,落下高さ 30mm の条件で突固めた.突固めは 1 層の厚さを 10mm とし 2 層に分けて実施した.また,供試体の飽和方法は,蒸留水で満たした浸水容器内に供試体寸法直径:60mm高さ:20mmメンブレン供試体寸法直径:60mm高さ:20mmアクリルセルペデスタルキャップポーラスストーン小型変水位透水試験容器を 24 時間浸水させた.その後,小型変水ペデスタル空気圧位透水試験容器を蒸留水で満たした越流水槽に移し,ビュレット管を接続し,試験を開始した.試験は,一定期間,繰返し流入量を測レギュレータ流入供試体ゲージ越流水槽定し,測定する毎に越流水槽内の水温を計測した.試験開始後,ビ 図 1 剛壁型透水試験装置の概略図ュレット管の単位時間当たりの水の減少量がほぼ定常化した時点を流出図 2 柔壁型透水試験装置の概略図飽和と判断し,試験を終了した.Comparison of hydraulic conductivities of sand-bentoniteIto, S., Komine, H., Murakami, S. Ibaraki Universitymixtures obtained by experiments of rigid-wall hydraulicSetoi, K.. Kyouwagikenconductivity and flexible-wall hydraulic conductivity15 3.2 柔壁型透水試験の概要図 2 に柔壁型透水試験の概略図を示す.供試体は剛壁型透水試験と同様,直径 60mm,高さ 20mm の円柱形である.供試体の作製方法は,内径 60mm,高さ 50mm のステンレス製モールド内に剛壁型透水試験と同様の条件で突固めた.供試体抜取装置を用いてモールドから供試体を抜き取り,柔壁型透水試験装置にセットし,供試体,止水グリースを塗布したペデスタルおよびペデスタルキャップをメンブレンで覆った.メンブレンの外側にはシリコングリースを塗布し,メンブレンの劣化およびセル水の供試体への浸水を防止した.その後,アクリルセル等を組み立て,蒸留水をセル内に注水し,ビュレット管(最大容量 25.0mL,最小目盛 0.1mL)を接続した.さらに,30kPa のセル圧を作用させ,メンブレンと供試体を密着させた.試験は,供試体からの単位時間当たりの流出量を測定した.また,測定する毎に室温を計測した.4.-71010%20%30%剛壁型透水試験および柔壁型透水試験より得られた透水係数の比較-8配合率 10%,20%および 30%における砂・ベントナイト混合土の透水係数と乾燥密度の関係を示す.剛壁型透水試験の場合,ベントナイト配合率 10%では透水係数は 1.68×10-11~1.08×10-11m/s の範囲に,ベントナイト配合率 20%では 1.77×10-11~3.35×10-12m/s の範囲に,そしてベントナイト配合率 30%で10透水係数 k (m/s)図 3 に,剛壁型透水試験および柔壁型透水試験より得られたベントナイト10%20%30%●■▲ : 剛壁型透水試験○□△ : 柔壁型透水試験: ベントナイト配合率 (%)-910-1010-1110は 9.47×10-12~5.26×10-12m/s の範囲であった.一方,柔壁型透水試験の場合,ベントナイト配合率 10%では透水係数は 2.97×10-11m/s,ベントナイト配合率-12101.41.5おいて,同程度の透水係数が得られていることが確認できる.この結果より,10● =10%■ =20%▲ =30%-8水の影響は少ないと考えられる.さらに,剛壁型透水試験および柔壁型透水試験から得られた透水係数の有10透水係数 k (m/s)透水試験において懸念される剛性容器と供試体との境界に生じる側壁部の流1.81.9-7ベントナイト配合率 10%,20%および 30%においては,剛壁型および柔壁型ことから,上記のベントナイト配合率と乾燥密度の範囲においては,剛壁型1.7図 3 透水係数と乾燥密度の関係であった.両試験から得られた透水係数を比較すると,同程度の乾燥密度にの透水試験方法の差異による透水係数への影響は小さいと推察される.この1.6乾燥密度 d (Mg/m3)20%では 2.74×10-11m/s,そしてベントナイト配合率 30%では 1.45×10-11m/s● =10%■ =20%▲ =30%○ =10%□ =20%△ =30%●■▲ : 剛壁型透水試験●■▲ : 柔壁型透水試験○□△ : 小峯・緒方(2001): ベントナイト配合率 (%)-910-1010-1110効性の確認のため,既往の研究との比較を行った.図 4 に,ベントナイト配合率 10%,20%および 30%における砂・ベントナイト混合土に対する本研究および小峯・緒方9)-12101.4より,本研究および小峯・緒方9)により得られた透水係数を同程度の乾燥密3度で比較すると,ベントナイト配合率 10%では乾燥密度が 1.62~1.67Mg/m1.51.61.71.81.9乾燥密度 d (Mg/m3)により得られた透水係数と乾燥密度の関係を示す.図 4図 4 本研究および小峯・緒方 9)により得られた透水係数と乾燥密度の関係の範囲の場合,透水係数は 4.49×10-11 ~1.08×10-11m/s の範囲に,ベントナイト配合率 20%では乾燥密度が 1.75~1.79Mg/m3 の範囲の場合,透水係数は 2.74×10-11~5.26×10-12m/s の範囲に,そしてベントナイト配合率 30%では乾燥密度が 1.76~1.81Mg/m3 の範囲の場合,透水係数は 1.45×10-11~5.76×10-12m/s の範囲であった.したがって,ベントナイト配合率 10%,20%および 30%と上記の乾燥密度の範囲においては,剛壁型透水試験および柔壁型透水試験により得られた透水係数は有効であると言える.今後,より広範囲の乾燥密度および含水比での調査を進め,さらなるデータ収集を行い,両試験から得られる透水係数の信頼性を高める必要がある.5.まとめ本研究では,10-9m/s 以下の透水係数を有する砂・ベントナイト混合土のベントナイト配合率 10%,20%および 30%に対して剛壁型透水試験および柔壁型透水試験を実施し,得られた透水係数を比較した.両試験により測定される透水係数の値は,ベントナイト配合率 10%では 2.97×10-11~1.08×10-11m/s の範囲に,ベントナイト配合率 20%では 2.74×10-11~1.77×10-12m/s の範囲に,そしてベントナイト配合率 30%では 1.45×10-11~5.26×10-12m/s の範囲に分布していることが認められた.この結果を既往の研究と比較した場合,同程度の乾燥密度において同程度の透水係数が得られたことが分かった.したがって,ベントナイト配合率 10%,20%および 30%の砂・ベントナイト混合土において,剛壁型および柔壁型の透水試験方法の差異が透水係数へ及ぼす影響は小さいことが明らかとなった.参考文献 1)古賀慎:廃棄物処分場と粘土科学とのかかわり,粘土科学,第 39 巻,pp. 142-150, 2000.2)小峯秀雄,緒方信英,放射性廃棄物処分のための砂・ベントナイト混合材料の膨潤特性とその評価法,電力中央研究所報告 U96029,1997.3)核燃料サイクル開発機構:わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第 2 次取りまとめ-分冊 2 地層処分の工学技術,JNC TN1400 99-022, 1999.4)総理府・厚生省:一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分に係わる技術上の基準を定める命令,1998.5)ASTM:Standard Test Methods for Measurement of Hydraulic conductivity of Saturated Porous Materials Using a Flexible WallPermeameter, D5084-10.6) 社団法人地盤工学会:地盤材料試験の方法と解説-二分冊の 1-,pp, 447-461, 2009.7) 直井優,小峯秀雄,安原一哉,村上哲,百瀬和夫,坂上武晴:各種ベントナイト系緩衝材の膨潤特性に及ぼす人工海水の 影響,土木学会論文集,No.785/III-70, pp.39-49, 2005.8) 社団法人地盤工学会:地盤材料試験の方法と解説-二分冊の 1-,pp, 373-384, 2009.9)小峯秀雄,緒方信英:高レベル放射性廃棄物処分のための緩衝材・埋戻し材の透水特性,電力中央研究所報告 U0004,2001.16
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  • タイトル
  • 河川堤防材料の不均質性がもたらす堤体の力学的挙動の不確実性
  • 著者
  • 佐竹亮一郎・市川一光・若井明彦
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 17〜18
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67651
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会9E - 13 (北九州)   2014 年 7 月河川堤防材料の不均質性がもたらす堤体の力学的挙動の不確実性空間的不均質性 有限要素法 モンテカルロ・シミュレーション群馬大学 学生会員 ○佐竹 亮一郎1. はじめに群馬大学 非会員市川 一光群馬大学 国際会員若井 明彦距離をもとに不均質な Vs 分布パターンを作成した. 図-3 に河川堤防は築堤履歴が必ずしも明白ではなく, 内部構造,解析対象の仮想横断面に, 不均質性を伴った Vs 分布を出力材料特性が詳細に把握できない場合も多い. 堤防の信頼性設したものを示す. 当該モデルでは, 有限要素解析による検討計においては, そういった不確実性を考慮することが重要とを行うことを前提に, ランダムアルゴリズムによって要素ご思われる. 本研究では, 実地盤で観測されたせん断波速度値(Vs)を元に, 一般的には均質とされている堤防材料の空間的とに Vs の値を決定している.3. 解析と検討バラツキをモデル化した. また, そのモデルを用いた有限要3. 1 解析概要素解析を各試行としたモンテカルロ・シミュレーションを行図-3 のようなランダムに発生させた分布パターンを多数作ない, 統計的に情報を整理することで材料のバラツキがもた成し, 有限要素地震応答解析を各試行としたモンテカルロ・らす力学挙動の不確実性について検討した.シミュレーションを実施した. 力学モデルは UW モデル2. 不均質パラメータのモデル化(Wakai & Ugai, 2004) 3)を使用した. 表-1 に材料定数を示す. 不2. 1 物性値の統計的把握均質ケースでは材料定数は要素ごとにVs値を材料物性値 (G,図-1 に解析対象の堤防縦断面における Vs 分布図(関東地E, φ, ψ) に変換し, 各パターンにおける値を決定した. 図-4 に方整備局 HP より引用)1)を示す. 10m 以深の基礎地盤部およ入力地震波形を示す. 入力地震波は兵庫県南部地震時の神戸び中央の樋管部の左右 20m は, 他の堤体部と物性値が異なる海洋気象台での地表面観測波形を使用した. 天端の左端, 中と判断したため, 検討から除外した. 実際の解析領域は図中央, 右端の節点における沈下量を求め, 検討を行った.の枠線内である. 著者らの既往の研究2)より,図-2 に実際にVs(m/s)60 120 180 240 300分布を示す. Vs の平均値 μ は 128.6m/s, 標準偏差 σ は 6.5m/sである. 図-2 より正規分布は精度良く実際の分布を表現して深さ(m)観測された Vs の確率密度分布と, それを元に作成した正規いるといえる. モデル化にはこの正規分布を使用した.08160100水平距離(m)2. 2 自己相関距離の設定200図-1 Vs 分布図材料内の空間的相関性をモデル化するため, Vs 分布内の任意の 2 点間における自己相関係数 ρ を求め, ρ の支配定数であ7た 2 点間の相関性が増加する. 以下に指数関数型の関係式6(1), (2)を示す.5確率(%)る自己相関距離L(m)を設定した. Lが大きいほど距離rを隔て𝑟𝜌 = exp [− ] (1)𝐿𝑟2𝑟𝑦43図-1 Vs 分布図22𝜌 = exp [−√( 𝑥 ) + ( ) ] (2)𝐿𝑥観測値正規分布1𝐿𝑦0(1)は一般形であり, これを 2 次元平面に適用する式として(2)90100110を採用した. L 設定の詳細な手順については著者らの既往の120130 140Vs(m/s)150 160170図-2 Vs 確率密度分布図研究 2)を参照されたい. L の水平方向, 鉛直方向の分布を検討した結果, ともに定性的な傾向は見られなかった. そこでモデル化の際には平均値を代表値として用いることとした. Lx108.5は8.0m, Lyは1.2mであり, 水平方向の相関が強い結果となっVs(m/s)147.5た.2. 3 不均質性のモデル化2. 1, 2. 2 で得られた材料物性値の正規分布および自己相関図-3 不均質 Vs 分布例Uncertainty of the mechanical behaviors of river dikes due toheterogeneity of their material properties.Ryoichiro SATAKE Gunma UniversityKazumitsu ICHIKAWA Gunma UniversityAkihiko WAKAI Gunma University17 3. 2 モンテカルロ・シミュレーション結果4. まとめ図-5 にモンテカルロ・シミュレーションの結果を示す. 図不均質ケースにおいては, 均質ケースより危険な解析結果中の各点線は, 要素ごとの材料定数が単一である均質ケースが多分に観測された. また, 不均質パラメータが大きくなるである. 検討ケースは, これまでの検討で得られた σ, L の値ほど結果の不確実性が大きくなり, 必要な試行回数が多くなを用いた基準ケースに加え, L1/2 倍, L2 倍, σ2 倍といった結果る可能性が示唆された. 今後も試行を継続し, 回数を増やしの不確実性に影響するパラメータ (以後不均質パラメータとた上で検討を行うことが必要である.呼称)を変化させたものの計 4 種類とし, ケースごとに天端参考文献の左端, 中央, 右端の沈下量を求めた. 試行回数は基準ケー1) 国土交通省関東地方整備局関東地方堤防復旧技術検討フスが 50 回, その他は 40 回である.ォローアップ委員会および統合物理探査検討会, 2013, 合全体的な分布の傾向を見ると, 最頻値を頂点とした対数正同委員会資料,規型の形状を示しており, 均質ケースより右側の領域 (危険http://www.ktr.mlit.go.jp/ktrcontent/content/000062123.pdf, p15.側) の占める割合が 40~70%程度となっている. また, 尖度を2) 佐竹亮一郎・若井明彦, 2013, 不均質な堤体材料におけるせ比較すると, L1/2 倍が最も大きく, 次いで基準, L2 倍, σ2 倍とん断波速度のモデル化例, 第1回地盤工学から見た堤防技なっており, 不均質パラメータが大きくなるほど結果の不確術シンポジウム委員会報告・講演概要集, pp83-84.実性が大きくなっている. この傾向は既往の研究 4)の結果と3) Akihiko Wakai and Keizo Ugai, 2004, A simple constitutive一致している. また, 不均質ケースのうち, 基準および L1/2model for the seismic analysis of slopes and its applications,倍については凹のない分布であるのに対し, L2 倍, σ2 倍につSoils and Foundations, Vol.44, No.4, pp83-97.いては最頻値の周辺以外にも凹凸が見られ, 理論曲線に照ら4) 若井明彦・倉岡千郎, 2010, 強度定数の不確実性と斜面の全して解釈することが困難な形状である. 後者の 2 種に関して体安全率との関係, 日本地すべり学会講演集, Vol49, 3-09,は試行回数が不十分であると考えられる. このことから, 不pp150-151.均質パラメータが大きくなるほど, 必要な試行回数が多くな表-1 材料定数8006004002000-200-400-600-80001020Vs(m/s)φ(deg)ψ(deg)E(kPa)c(kPa)γ(kN/m3)ν30時間(s)図-4 入力地震波形左端中央右端左端(均質)中央(均質)右端(均質)確率(%)4030100.6左端中央右端左端(均質)中央(均質)右端(均質)40200均質ケース 不均質ケース128.6要素ごとに30.1決定8193110180.3550確率(%)503020100.70.8沈下量(m)0.9010.60.7(a) 基準301左端中央右端左端(均質)中央(均質)右端(均質)40203020101000.60.950確率(%)4000.8沈下量(m)(b) L1/2 倍左端中央右端左端(均質)中央(均質)右端(均質)50確率(%)加速度(gal)る可能性が示唆された.0.70.8沈下量(m)0.910.60.70.8沈下量(m)(d) σ2 倍(c) L2 倍図-5 モンテカルロ・シミュレーション結果 (沈下量の確率密度分布)180.91
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  • タイトル
  • ニューラルネットワークによる泉州沖洪積粘土の間隙比の空間補間
  • 著者
  • 横田健一・小田和広
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 19〜20
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67652
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会10E - 13 (北九州)   2014 年 7 月ニューラルネットワークによる泉州沖洪積粘土の間隙比の空間補間ニューラルネットワーク 洪積粘土空間補間大阪大学大学院学生会員○横田健一大阪大学大学院国際会員小田和広1.はじめに任意地点の地盤情報を推定しようとする場合、既にボーリング調査が行われた地点における地盤情報を使用してそれを推定しなくてはならない。筆者らはニューラルネットワーク(以下 NN)を利用して既知の地盤情報から、任意位置における地盤情報を推定する方法を研究している1)。ところで、大阪湾の海底地盤は厚い粘土層と砂・礫層の互層によって構成されている。最上部の粘土層(Ma13)を除けば、残りはすべて洪積層である。したがって、大阪湾における開発では洪積粘土層を無視することはできない。しかし、洪積粘土層の地盤情報は限られている。本研究では、大阪湾泉州沖の上部洪積粘土層に対し、NN によって間隙比を空間補間する。そして、推定精度に関する検討を通じ、洪積粘土の地盤情報の空間補間に対する NN の適用性を検証するとともに、問題点を抽出する。2.ニューラルネットワークNN とは脳の情報処理方式を数理的に模擬しようとするものである.本研究では多層パーセプトロン(図-1)と呼ばれる構造の NN を用いた。本研究の場合、地盤情報の空間補間、即ち、地盤調査の行われていない地点の地盤情報を推定することを目的としているため、北緯・東経・深度の位置情報を入力項目とし、各種地盤情報を出力項目とした。推定の手順は既往の研究 1)図-1を参考されたい。NN 構造3.初期応力点での間隙比洪積粘土は沖積粘土に比して大きな有効土被り圧を受けている。当然、深い位置にある洪積粘土ほど受けている有効土被り圧は大きい。ところで、通常、土質試験における間隙比は供試体作製時によるものである。作用している有効応力は、当然原位置におけるものより小さい。したがって、供試体作製時における間隙比は原位置におけるそれよりも大きい。本研究ではこの点を考慮し、データベースモデル2)(以下 DB モデル)の考え方を利用することにより、原位置における間隙比を推定した。そして推定された間隙比に対して空間補間を行った。4.空間補間の対象地域本研究では、洪積粘土層のボーリングデータ等が豊富である関西国際空港島の上部洪積粘土層(Dtc 層~Ma7 層)を空間補間の対象とした。図-2 は洪積粘土層まで達するボーリング調査が行われた地点を示している。当該地域の地層構成は海底から堆積深度約 200m の間に各粘土層が砂・礫層と互層を成している 3)。また、各層は岸にほぼ平行な空港島の長手方向には、ほぼ水平に一様に堆積している。一方、沖合方向には一定の勾配で傾斜し、層厚も徐々に厚くなっている(図-3 参照)。本研究では、推定した原位置における間隙比を層別に分類し、空間補間を行った。図-2 ボーリング調査実施地点5.補間結果図-3 粘土層の堆積状態表-1 は空間補間の精度評価結果を示している。本研究にて推定精度の評価を行う上で用いる指標は、(1)相関係数、(2)精度 G、(3)絶対誤差率 r の平均であるMARE 及び(4)標準偏差 σ の 4 項目である 1)。相関係数は、二つの確率変数の間の相関性を示す指標であり、1.0 に近いほど相関性が高いことを表している。精度 G はサンプル全体の推定精度を評価するのである。0<G<100 であり、Gが大きいほど推定値に含まれる誤差が小さいことを意味している。MARE は個々の推定値の持つ誤差を評価する指標である。0<MARE であり、MARE が小さいほど推定値の誤差が小さいことを意味している。最後に、今回、誤差率の標準偏差 σ を指標に加えた。標準偏差とはばらつきを表す指標であり、大き図-3 地層構成いほどばらつきが大きいことを示している。真値を xo、NN による推定値を xpとして、精度 G、絶対誤差率 r 及び MARE の算出式を以下に説明する。RMSE 12 x p  xo  RMS n図-3 粘土層の堆積状態x p  xo1RMSE 12 100 MARE   r   100 ,  r  xo  G  1 nRMS xonSpatial interpolation of void ratio of Pleistocene clay off SenshuKenichi Yokota Osaka Universityin Osaka Bay with an artificial neural network.Kazuhiro Oda Osaka University19 表-1空間補間の精度評価結果粘土層学習用検証用相関係数精度 G(%)MARE(%)誤差率の誤差率のデータ数データ数平均標準偏差Dtc16170.66991.86.390.688.85Ma12299139.94592.76.240.298.09Ma11387180.66289.19.002.1313.3Ma10465201.81590.27.100.1810.1Ma9408178.82993.05.371.638.05Doc512356.66978.518.16.7222.2Ma812756.53687.610.30.7012.4Ma716070.56490.87.730.089.66Ma9 以浅の 5 枚の洪積粘土層については、Doc5 以深の 3 枚の粘土1グ密度は一番高い。-60精度 G と MARE から判断すれば、Dtc、Ma12、Ma10、Ma9 およびの個数が少ないにも関わらず、その精度は高い。すなわち、データの深度(m)少ない。これは層厚が薄いためである。したがって平面的なボーリン-50Ma7 における空間補間の精度が高い。特に Ma7 については、データ間隙比-40層に比してデータ個数が多い。なお、Dtc については一見データ数は1.21.41.61.82.2-70-80Ma12-90Ma11個数は空間補間の精度にあまり大きな影響を与えないことが分かる。次に、Ma11 の空間補間の精度が低い点について考察する。図-4 は2-100とあるボーリング調査地点における間隙比の深度分布を示している。図-4間隙比の深度分布Ma12 層における間隙比は深度方向に比較的単調に減少している。一方、Ma11 層では中間付近まで間隙比は単調に減少する。その後、急激に増加し、再び減少に転じている。このような深度方向の間隙比の分布の複雑さが空間補間の精度低下を引き起こしたものと考えられる。図-5 は、Ma12 層における間隙比の空間補間の結果を示している。また図-6 は切断面の位置を示している。図-5 より間隙比は深度方向に単調に減少している。また、同一の間隙比の出現深度は陸側から沖側に向かって深くなっている。これは粘土の堆積状況と対応している。また、間隙比の最大値は一期島のほうが二期島より大きい。いずれにせよ、上部における間隙比は 2.0 以上であり、高い圧縮性を有してい図-5(a)間隙比の空間分布(Ma12)ることが示唆される。6.まとめ本研究では泉州沖上部洪積層の圧密試験結果に対し、DB モデルの考え方を適用し、間隙比を求めた。そして、NN によって空間補間し、その精度評価を行った。その結果、推定精度は層ごとに差が見られた。空間補間の精度にデータの数は影響しない。また、間隙比の分布の複雑さが推定精度低下の原因のひとつである。間隙比に対する空間補間の結果は、粘土の堆積状況と対応していることから、洪積粘土の地盤情報についても NN による空間補間が十分に可能である。図 -5(b)切断面における間隙比の分布(Ma12)参考文献1) 北村将太郎, 小田和広,李玟選,神田真太郎:地盤情報データベースを用いたニューラルネットワークによる解析パラメータの推定方法. 地盤工学研究発表会,No114/E-02, pp999-1000,2012.2) 鈴木慎也,江村剛,水上純一,小野正博:関西国際空港の建設と地盤工学的諸問題.地盤工学会誌.Vol.56 No.8 Ser.No.607,pp.78-82,20083) 大阪湾地盤情報の研究協議会大阪湾地盤研究委員会:ベイエリアの地盤と建設-大阪湾を例として-,pp378-394, 2002図-6 切断面20
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  • タイトル
  • 中国黄河流域の地下埋葬墓に見る古代人の浸透水対策について
  • 著者
  • 鬼塚克忠
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 21〜22
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67653
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会11C - 00 (北九州)   2014 年 7 月中国黄河流域の地下埋葬墓に見る古代人の浸透水対策についてキーワード:地下埋葬、浸透水、古代人国際会員○鬼塚 克忠1. まえがき中国中下黄河流域の古代墳墓は長江下流域と異なり地下埋葬である.これは,半乾燥気候や深い地下水位の自然条件によると考えられる.古代人の地下水や,降雨などによる地中への浸透水に対する認識,そして埋葬物保護対策の実態,変遷などについて,現地および文献調査から考察する.2.土壙墓埋葬初め遺体は地上に放置し,その後地下に埋葬するようになる.いわゆる土壙墓である.少雨の黄河流域では,地下水位は長江流域に比べかなり深いので,地下水の上昇や雨水などの表面からの浸透など,埋葬物への水の心配はあまりなかったと考えられる.3.黄河中流域:殷墟の木槨墓商(殷)時代(B.C.1.5 千年~)に入り,掘り下げた墓底に木材を組み立てて槨(棺を囲う外棺の意味)を設置し,そのあと埋め戻す木槨墓が構築されるようになる.殷墟で知られる安陽(河南省)武官村の巨大な武官大墓の平面・断面図 1)を図-1 に示す.墓壙の中心部は南北 14m,東西 12m,深さは地表から 7.2m であり,中心部に向かって南北から傾斜面がある.木槨の寸法は南北 6.3m×東西 5.2m×高さ 2.5m である.1950 年から発掘調査が行われた.当地は半乾燥気候の黄河流域である.しかし武官村のすぐ南(1km 足ら図-1 武官大墓の平面・断面図 1)(河南省安陽)ず)から西を「洹河」が流れている.木槨墓への地下水の影響はないのか,発掘当時墓底に貯留水はなかったのか,発掘報告書 1)を見ても,これらに関するデータや記述は皆無である.現在殷墟の発掘にかかわる中国社会科学院の研究者に,最近この件について質問する機会に恵まれた.ところが地下水や浸透水の観点での木槨墓の研究はまったくなされていないようであった.彼によると,地盤の標高は 81m,大墓の頂部は 86m.地下水位は大墓のところで,1980 年代:-6m,1990 年代:-30m,2010 年:-120mと下がっており,これは地下水くみ上げであるという.周辺にはさらに深い,深さ 13m の木槨墓もあり,浸透水や地下水の影響を受けたのではと考えられるが,不明である.また後述するような,後世の埋葬物を保護するための処置は,殷墟の木槨墓にはなされていたのだろうか.4.長江中流域の木槨墓黄河中流域では商(殷),西周の王朝(B.C.1.5~B.C.0.5 千年)が栄え,地下埋葬の木槨墓が当時長江流域にも伝播したと考えられる.特に長江中流域は,黄河図-2 曾候乙墓の平面・断面図 3)(湖北省随州)中原の文化や技術の影響を大きく受けた.長江中流域の地下埋葬の木槨墓の代表が湖北省随州市の曾候乙墓(そこういつぼ)2)である.戦国時代の楚国の墓(B.C.4 百年代)。図-2 に示すように,平面形は「ト」の型をした,東西 21m×南北 17m,地下 11mまで掘り下げた巨大な墓壙に,高さ 3.5m の 4 つの墓室を有する木槨墓である.木槨の最上部は,筵(むしろ),白絹,竹網を順番に敷き,木槨墓の上部および周囲は,約 60 トンの木炭で覆う.木炭層の上には,順に青膏泥,白膏泥,黄褐色土で覆い,その上に大きな石板を載せる.それから上は墓口まで突き固めた土層が続いている.1977 年ごろからの調査・発掘時には,墓室全体が水につかっており,これが故に遺体をはじめ埋葬物は保存状態が良かったといわれる.地下水に関してはデータがないので,詳細は不明である.5.長江下流域(江南)の土墩墓長江下流域の江南では,西周時代(B.C.1.1 千年~)から戦国時代の終わり(~B.C.0.2 千年)ごろまで,地上埋葬の土墩墓が構築される.これは黄河流域,長江流域を含む広域で古来より行われてきた地下埋葬の土壙墓からの画期的な墓制の変革である.これはもちろん温暖多雨・湿潤の長江下流域で埋葬物を水から護るための古代人の知恵である.戦国時代の越王陵(B.C.5 百年ごろ)は浙江省紹興(会稽)の山頂を切り開いて設けられた巨大な土墩墓である.図-34)5)に示すように,木材を組んだ三角断面の木構墓室(長さ 40m,高さは身の丈の倍)の下に,大量の木炭を 1.8m の厚さに敷き詰めている.木構墓室の周りを樹皮で厚さ 25 ㎝を囲い,さらにこの樹皮の周りを木炭 1m で囲んでいる.その周りをまた樹皮で 10 ㎝の厚さに包み,Ancient people' seepage water control for underground burials in the Yellow River basin, China. Katsutada ONITSUKA21 さらに青膏泥で囲い,最後に黄褐色土を版築で突き固めている.山頂なので地下水侵入の恐れはないが,降雨による浸透水や湿気から埋葬物を護るための工夫が見られる.6.長江中流域の馬王堆漢墓湖南省長沙の馬王堆漢墓は前漢時代(B.C.1 百年代)の木槨墓で,「瀏22 m陽河」の南西 2km 足らずの位置にある標高 50m ほどの台地に3基構築された.河の出水時の水位は標高 15m である.1号墓からは極め保存のよい女性の遺体が見つかったことで有名である.図-4 に3号墓の垂直断面図 6)を示す.12 m図-3 越王陵の垂直断面図(浙江省紹興)4)5)台地の標高 40m より下は更新世の地盤で,1,3 号墓は深さ 15m~20mほど掘削し,木槨墓を設置している.墓底には白膏泥 30~40cm,その上に木炭を敷き,木槨(3 号墓:5.5×4.3×2.1(高さ)一号墓封土m)を設置後,周囲に木炭 25~50cm,そして白膏泥 60~120cm で囲う.その上部 7~12m を丁寧に 1 層あたり 4~5cm 突き固め,さらにその上に 6~8m 盛土する.撹乱土三号墓封土白膏泥は実質不透水性の粘土であるが,発掘時には.1 号墓には約 60cm,3 号基には 29cm の貯留水が認められた.これは 2 千年に墓わたる降雨の浸透によるもので,徐々に貯留したと考えられている.坑木炭は飽和状態にあり,墓室内の湿度は 100%であった.地下水位夯一号墓壁土は墓底の下の砂礫層(標高 28m ほど)にあり,墓室内の貯留水とは層無関係であるとされている.白膏泥層これら 3 基の木槨墓の埋葬物の保存状態が良かったのは,緩慢な棺槨雨水の浸透と墓室内の貯留水により,地下水や外気の侵入が阻止さ木炭れたこと,湿度が一定に,温度が低く保たれたこと,水浸により腐6m食が阻止されたことなどが理由としてあげられている6).図-4 馬王堆漢墓(三号墓)の垂直断面図(湖南省長沙)6)7.黄河下流域:山東墳墓前漢から後漢時代(B.C.2 百~A.D.2 百年)にかけて構築された山東省墳墓は,江南土墩墓に形状や立地条件がよく似ているが,黄河下流域に位置し,地下埋葬の木槨墓である.報告そのものが少なく,地下水の記述は皆無に近い.ただ,日照海曲墳墓 7)では,「内部は清水で満ち,棺内の骨は腐ってなく,副葬品の漆器は保存良く,・・・」,「保存はよい.一般に椁室の頂部と棺椁の周りに青膏泥を充填し,墓室の底部に部分的に木炭を敷設している」.沂南宋家哨墳墓 8)では「埋設は比較的深く,地下水は比較的浅いので,墓の中には多くの水がたまり,厳冬の時期は,調査は困難を極めた」などの記述がある.8.まとめ古代人の水対策:商(殷)時代の黄河中流域でスタートした木槨墓は墓底より地下水位が低い(深い)場所に施行されたと考える.巨大な木槨の組み立てや設置のためには墓底での湧水は極めて不都合であり,また戦国時代には墓室の周りをまず木炭で包んでいることからも言える.大量の木炭で墓室を包むのは,木炭を乾燥材として利用し,墓室内の遺体をはじめ各種埋葬物を湿気から護るためである.この木炭の周りを白膏泥や青膏泥で覆う.その上部から墓口までは現地の土を杵で丁寧に突き固める.これらの粘土被覆や現地土の突固めは,おもに雨水など表流水の墓室への浸透防止対策である.これら丁寧な浸透水対策ではあるが 2 千年の長期にわたっては浸透水を防ぐことはできなかった.しかし,結果的には埋蔵物の保存に寄与した.なぜなら,貯留水が移動せず,外気や地下水が流入せず,飽和湿度と低温が維持され,水中保存と同じ効果が発揮されたからである.長江下流域の江南では古来の地下埋葬からの大変革となる地上埋葬の土墩墓が構築される.地盤,地下水のデータ,記述:木槨墓に限らず,墳墓や城壁,基壇に関する中国の文献,また日本の文献においても,地盤の性状や含水状態,地下水に関するデータ,記述はほとんど無い.全ての調査研究の対象が埋蔵遺物であって,それらを内蔵する地盤や地中水には無関心のようである.地盤工学に携わる者が考古学関係者に,遺跡における地盤や水の重要性を強調しなければと考える.参考文献1) 中国社会科学院考古研究所:殷墟的発現与研究,科学出版社,2001. 2) 湖北省博物館(李 苓ほか):曽候乙墓文物珍賞,湖北美術出版(武漢). 3) 黄 暁芬:漢墓的研究,岳麓書社,2003. 4) 陳 元圃:二十年来浙江商周時期考古工作的主要収穫,浙江省文物考古研究所二十周年論文集,1979~1999,浙江省文物考古研究所編,西泠印社,pp. 116~122,1999.5) 陸 江:中国江南の土墩墓と日本の吉野ヶ里墳丘墓の地盤工学特性およびその構築に関する研究,学位論文,佐賀大学,2002.6) 湖南省博物館,湖南省文物考古研究所:長沙馬王堆二,三号漢墓,文物出版社,2004. 7) 日照市文化局,日照市博物館編:2002 年全国重大考古新発現, 日照海曲漢墓,2003. 8) 山東省文物考古研究所:沂南宋家哨漢代墓地に関するレポート,2008.22
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  • タイトル
  • 降雨時の墳丘斜面の安定性の評価方法に関する検討
  • 著者
  • 澤田茉伊・三村 衛・吉村 貢
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 23〜24
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67654
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会12E - 06 (北九州)   2014 年 7 月降雨時の墳丘斜面の安定性の評価方法に関する検討斜面安定1.墳丘雨水浸透京都大学大学院学生会員○澤田京都大学大学院国際会員三村茉伊衛ソイルアンドロックエンジニアリング国際会員吉村貢はじめに歴史的地盤構造物である古墳のなかには,自然作用や人為的な破壊行為によって危機的な状況にあるものが尐なくない。その損傷形態には,いくつかの種類があるが,雨水の浸透により不安定化した墳丘斜面の崩壊は,最も深刻な被害のひとつである。崩壊箇所では,墳丘内部への雨水の侵入が助長され,やがて雨水が石室内に及ぶと壁画等の文化財にまで被害が拡大する場合もある。このような被害から古墳を守るため,地盤工学に基づいて,降雨時の墳丘斜面の安定性の評価方法について検討する。検討対象とする奈良県高市郡明日香村の牽牛子塚(けんごしづか)古墳は,周辺の高松塚古墳やキトラ古墳などの終末期古墳と同様に,墳丘は真砂土を主とする堅固な版築で築かれている。しかし,表層部は著しく土壌化しており,梅雨時の多雨に曝され,一部が崩壊した。本稿では,土壌化した墳丘の構造・物理的性質を考慮し,特にすべり面の強度定数の実験的評価手法に焦点をあてる。2.墳丘の土壌化を考慮したモデル化と安定性の評価方法牽牛子塚古墳の墳丘は,弾性波探査,ポータブルコーン貫入試験,針貫入試験1),2)の一連3mの原位置試験から,表層部が以深の版築層より土壌化層ρd = 1.23 g/cm3wnat = 29 % Sr = 65 %k = 3.3×10-3 cm/sも,密度・強度の低い二層構造であることが明らかになった。表層部は,植生の繁茂による有0.8m3.7m機物の混入や根茎に沿った水分の侵入,それに層境界ものと予想される。また,局所的には盗掘後の粗雑な埋戻しや,風雨による緩慢な浸食作用も版築層ρd = 1.29 g/cm3wnat = 29 % Sr = 71 %k = 3.3×10-4 cm/s安定性評価の対象領域伴う細粒分の流出によって経年的に変質した1m10m寄与していると考えられる。8mこれを踏まえて,土壌化した表層と健全な版図1 検討断面のモデル築層を密度・透水性で区別し,また構造上の弱部となる層境界ですべりが生じると仮定して,墳丘斜面の雨水の浸透と安定性を評価する。図1に検討断面を示す。層境界の位加水プラスチックシート60mm置は,原位置試験の結果を基に決定した。土壌化層と版築層の密度は,採取した墳丘土を用いた締固め試験により,締固めエネルギーと密度の関係を調べ,エネ10mmρd=1.23 g/cm3ルギーを指標に仮定した。それぞれ締固め試験で与えるエネルギーEcJIS(=55010mmρd=1.29 g/cm3上下層ともwnat=29%kJ/m3)の 10%,20%に相当する密度とした。既往の研究2)により,人力で締固められた墳丘のエネルギーレベルは,およそこの範囲であることがわかっている。 図2 二層構造の供試体の作製方法透水性については,両層の飽和透水係数に 10 倍の差があると仮定した。雨水の浸透は,飽和-不飽和浸透流解析により評価する。そして,解析から得られ100強度定数を算定し,これらを用いて斜面の安全率を評価する。3.二層構造の供試体を用いた一面せん断試験によるすべり面の強度定数の評価一般に,土の強度定数は,各種せん断試験により,均一な土要素が破壊する条件で評価される。しかし,本検討では,すべり面の強度定数は,性質の異なる二つの土層の間のすべりを再現できる方法で評価する必要がある。その方法のひとつとして,二層構造の供試体を用いた一面せん断試験を試みる。せん断強さ (kN/m2)た墳丘断面の飽和度分布をもとに,すべりを生じる土塊の自重とすべり面の80自然含水状態60200020406080 100 120垂直応力 (kN/m2)供試体は,下層と上層がそれぞれ版築層と土壌化層に相当する密度になるよう,自然含水比に調整した墳丘土をせん断箱内に締め固めて作製した(図2)。加水時40図3 すべり面のせん断強さEvaluation of the instability of tumulus mounds induced byMai Sawada*, Mamoru Mimura*, Mitsugu Yoshimura**rain fall infiltration*: Kyoto University23**: Soil and Rock Eng. Co. Ltd 層境界には,薄いプラスチックシートを挟んで,上下層を完全に分離した。ただし,実際の墳丘の層境界は,潜在的に完全に分離した状態ではなく,脆弱な付着や噛み合わせを維持していると考えられる。そのため,本試験条件は,すべり面の強度定数を過小評価する傾向にあることに留意する必要がある。シートは試験前に取り除き,定圧条件でせん断を行った。試験は,降雨に伴う強度定数の変化を調べるため,自然含水状態と加水した供試体の両方に対して実施した。加水は,供試体作製時に上層に対して行い,シート状で透水が確認できるまで十分な分量を与えた。試験結果を図3に示す。加水により,せん断面が水で満たされ,粒子自然含水加水時40間の摩擦が低減するため,内部摩擦角が低減している。一方,粒子間に20干発揮される結果となった。これらの試験結果をもとに,すべり面の飽和度と強度定数の関係を導くが,本試験では,せん断面の飽和度を制御・測定できない。そのため,加水時のせん断面の飽和度を 100%と仮定して,353010粘着力飽和度に関わらずゼロとする25簡易的に導いたものを図4に示す。なお,工学的な判断から,斜面の安定性評価においては,飽和度に関わらず,粘着力は期待しないものとす2060る。4.15内部摩擦角7080905粘着力 (kN/m2)離している本試験条件では発揮されにくいと考えられるが,加水時に若内部摩擦角 (度)働く表面張力や噛み合わせに起因する粘着力は,せん断面が潜在的に分0100すべり面の飽和度 (%)降雨時の墳丘斜面の安定性当該古墳で崩壊が発生した 2012 年 6 月のうち,降水量の多い 7 日間(図図4 すべり面の飽和度と強度定数の関係6参照)について墳丘斜面の安定性を評価する。本稿では,雨水の浸透挙動の評価に関する詳細は省略するが,浸透流解析の結果,各日ごとに,降雨開始時図5に示すような墳丘断面の飽和度分布を得た。版築層は土壌化層より層境界6/16も透水性が低いため,土壌化層を浸透した雨水は層境界で滞留し,斜面に沿って流下する様子が観察できる。このような層境界に生じる集中的な雨水の流れが,層境界の構造を脆弱にし,さらに土壌化層の範囲を深6/22 斜面に沿う流れ6/19部に拡大すると予想できる。墳丘斜面の一定勾配(傾斜角 31°)とみなせる領域(図1参照)を対象に,斜面と平行な層境界(深さ 0.8m)ですべりが生じると仮定した場合の斜面の安全率を,日降水量と合わせて図6に示す。図中には,土塊の単位体積重量およびすべり面の内部摩擦角の推移も併記しているが,これらはそれぞれ各時間断面における対象領域の土塊とすべり面の平均的な飽和度を用いて評価した。安全率は日降水量と同調せず,単調に低下する傾向がみられる。この傾向は,すべり面の飽和度に依存する内部摩擦角と類似している。この17ことから,降雨時の斜面の不安定化は,土塊の自重の増加とすべり面の強度定数の低下に起因するが,後者(mm)40 1.2166030 0.840内部摩擦角おわりに二層構造の供試体を用いた一面せん断試験により評80単位体積重量安全率16.5 35 1.0がより大きく寄与していることがわかる。5.図5 降雨時の墳丘断面の飽和度分布(kN/m3)(度)15.5 25 0.6価したすべり面の強度定数と,数値解析から得た墳丘152020 0.40降雨 6/16開始断面の飽和度分布を用いて,墳丘斜面が降雨に伴い不安定化する現象を定性的に評価することができた。自6/176/186/196/206/216/22図6 降雨時の墳丘斜面の安定性然環境下でつくられた実際の不均一な墳丘の構造や経年変化を受けた状態を室内試験で再現するには限界があるが,すべり面の強度定数の実験的評価方法については,今後さらに検討の余地がある。供試体のせん断面の条件や加水方法等の試験条件の見直しや,すべり面の飽和度の制御・測定の実現により,より信頼性の高い安定性評価が可能になると考えられる。末筆ではありますが,原位置試験と試料採取にご協力いただいた明日香村教育委員会・西光慎治氏に謝意を表します。参考文献1)三村衛,吉村貢,金田遥:高松塚古墳墳丘の構造と原位置試験および室内試験による地盤特性評価に関する研究,土木学会論文集 C,Vol.65,No.1,pp.241-253,2009.2)三村衛,吉村貢,寺尾庸孝,豊田富士人,中井正幸:史跡討,地盤工学ジャーナル,Vol.6,No.2,pp.141-155,2011.24昼飯大塚古墳墳丘の復元と整備に関する地盤工学的検
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  • タイトル
  • 古墳墳丘における針貫入試験結果への墳丘断面の新鮮度の影響
  • 著者
  • 吉村 貢・三村 衛・澤田茉伊
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 25〜26
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67655
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会13C - 03 (北九州)   2014 年 7 月古墳墳丘における針貫入試験結果への墳丘断面の新鮮度の影響針貫入試験,強度分布,掘削面状態京都大学大学院工学研究科同上ソイルアンドロックエンジニアリング㈱国際会員三村学生会員澤田茉伊国際会員○吉村衛貢はじめに.文化遺産である古墳墳丘は考古学的な発掘調査を除いて,破壊することは許されない。一方,史跡整備としての墳丘復元には墳丘の工学的特性を把握することが求められる。一般の地盤調査ではボーリングのように削孔するか,ブロックサンプリングを行って不攪乱試料を得て室内試験に供して特性を把握する。あるいは平板載荷のように原位置試験を行って墳丘の地盤としての特性を把握する。これら一般の方法は古墳墳丘の破壊を伴うため,適用することは難しい。このような背景から,筆者らは本質非破壊検査手法である針貫入試験を発掘調査トレンチの断面に適用して,墳丘版築などの構造を調べている。試験面である発掘調査トレンチの断面は,それが暴露されたために特性変化が生じるケースがある。暴露されてから時間が経過した断面では,針貫入試験の到達範囲である表面から 10mm の深さで乾燥収縮による硬化,すなわち強度の増加が認められる1)。逆に地下水や雨水の浸透によって湿潤膨張による軟化,すなわち強度の低下が認められる場合もある。針貫入試験にこれらの影響がどのように反映されるかを検討した。1.針貫入試験機針貫入試験機は図-1 に示すような構造で,針を突出させて固定するスピンドルと,スピンドルに荷重を与えるスプリング,およびケースから成る。試験面に押し当てた針は貫入し,その抵抗はスプリングを圧縮する。スプリングの圧縮量をスピンドルの変位量で求めれば貫入抵抗が算定できる。針貫入試験機は第三紀泥岩のような軟岩の強度評価に適用するために開発されたことからスプリングは 100N の抵抗力を発揮するものが適用されている。筆者らは墳丘土など,軟岩よりは強度が小さいものを対象とするため,スプリングの強さをおよそ 30%にして適用している。針貫入試験機による発掘調査面の強度は,貫入抵抗 P を貫入長 L で除した指標値⊿=P/L を一軸圧縮強度 qu に換算している。⊿と qu の関係は予めキャリブレーションで決定している。針貫入試験の結果は個々の測定点強度の評価だけではなく該当の試験面の強度分布にも着目している。盛土層では締固め面からの距離が大きくなる,つまり深くなると締固めエネルギーの拡散伝搬のために密度は小さくなり,結果として強度が小さくなる。これは盛土断面において,強度が深さ貫入針スピンドルばね方向に増減して「縞模様」が現れることを意味する。古墳墳丘に版築工法が採られている場合には強度分布に明確な強弱パターンが認められる。このパターンから締固め一層の厚さなどを図-1検討することができる。針貫入試験機2.乾燥収縮による硬化乾燥による土の強度増加はたとえば日干し煉瓦のように,極1,000よる硬化は,含水比低下に伴うサクションの増加とこれによる粒子間隔の縮小で説明できる。この変化がどの程度の深さまで4,200端な場合には大きな圧縮強度を発現する。発掘面の乾燥収縮に及んでいるかは暴露されてからの時間と,暴露環境に依存すると考えられる。表面から 10mm までの深さを対象とする針貫入0試験にとっては,ごく浅い,表面付近の乾燥収縮であっても大1m9,000きく影響する。犬山市の東之宮古墳の例では,現場発掘面の測定値は,同所から許可を得て採取したブロックサンプルの切断1,200 1,200面の測定値のおよそ3倍であった 2)。この発掘面は図-2 に示すように板石を積上げた石槨内部の発掘調査のために,その上部の墳丘を掘り下げた大きなトレンチを形成する側壁に相当する。石槨部の調査のために3か月以上,雨天時を除いて環境に暴露5,000されたため発掘面は乾燥収縮が進行したものと考えられる。結果として,乾燥収縮がないブロックサンプルの表面に比べ強度図-2東之宮古墳発掘トレンチを過大に評価している。Influence of the freshness of trench on tumulusKyoto University: Mamoru Mimura, Mai Sawadato the needle penetration test.Soil and Rock Eng.Co.Ltd: Mitsugu Yoshimura25 乾燥収縮による硬化は針貫入試験を墳丘盛土の調査に適用した当初から想定しており,「新鮮」な発掘面で試験を行うことを条件として科している。しかし,この条件が満たされないことも多く,噴霧器を利用して発掘面に水分を付与して養生したケースもある(水分付与の程度は発掘調査員の主観による)。逆に雨水や地下水による浸潤,膨張は針貫入試験による強度を過小に評価すると想定できる。3.試験面の新鮮度の影響奈良県明日香村のキトラ古墳において,一度暴露された発掘調査面(写真-1)を切削する機会を得た。この前後に針貫入試験を行った。結果を図-3 に示す。写真-1 のようにキトラ古墳の墳丘には幾筋もの層構造が認められ,薄いものでは 1~2cm 程度である。また試験面は上位層と下位層で様子が異なり,材料が変更されたことが推察できる。針貫入試験は 5cm の格子点で行っているため 1~2cm の薄い構造は把握できていない。切削前の試験結果を示す図-3a)と切削後のそれを示す図-3b)を比較すると,以下の点が指摘できる。1)上位層と下位層で材料,あるいは締固め程度が異なるパターンが認められる。2)強度のパターンはほぼ水平の構造を持っている。3)切削前後では前の方が相対的に強度は大きい。4)強度分布パターンは前後で大きく変化していない。切削前に撮影写真-1キトラ古墳墳丘試験面00-5-5-10-10-15-15-20qu(×102kN/m2)-20層境界-25-30-30-35-35-40-40-45-45クラックa)層境界-25クラックb)切削前図-310.0-11.09.0-10.08.0-9.07.0-8.06.0-7.05.0-6.04.0-5.03.0-4.02.0-3.01.0-2.00.0-1.0窪み切削後針貫入試験による墳丘断面の強度分布4.まとめ古墳墳丘の発掘調査面で行う針貫入試験は,できるだけ暴露時間が短い「新鮮」な面に適用することが望ましい。暴露による性状変化が生じた面で行った針貫入試験で得られた換算強度の絶対値は過大に評価していると判断できる。一方,換算強度の分布パターンは,元々の墳丘構造を反映したものと考えてよい。このことから,ごく狭い範囲で切削して露出した新鮮面や加水浸潤した面で換算強度を評価して試験面の補正を行うことが有効である可能性を指摘できる。今後はこの観点から針貫入試験を行うことが必要と考えられる。参考文献:1) 三村衛,澤田茉伊,吉村貢:原位置試験および室内試験による墳丘盛土の強度評価に関する検討―東之宮古墳を例として―,第 48 回地盤工学研究発表会(2013).2) Mamoru Mimura, Mai Sawada and Mitsugu Yoshimura:Characterization of Geotechnical Properties for Reconstruction of Archaeological Excavations―Case Study of HigashinomiyaTumulus―,Workshop on Geo Engineering on Conservation of Cultural Heritage26(2013)
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  • タイトル
  • アンコール遺跡バイヨン寺院の版築および周辺地盤の力学特性
  • 著者
  • 斉藤 徹・菊本 統・橋本涼太・小山倫史
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 27〜28
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67656
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会14E - 12 (北九州)   2014 年 7 月アンコール遺跡バイヨン寺院の版築および周辺の自然地盤の力学特性石積構造物サンプリング構成モデル横浜国立大学学生会員○齊藤 徹横浜国立大学大学院国際会員菊本 統京都大学大学院学生会員橋本 涼太関西大学社会安全学部 国際会員小山 倫史1.はじめに世界中には様々な脅威にさらされた遺産構造物が存在しており,なかでも支持地盤の不同沈下に起因した倒壊・崩壊が懸念される石積構造物は特に数が多い.カンボジアのアンコール遺跡でも劣化が進み,修復が待たれる石積構造物の存在が多数確認されている.同遺跡では自然地盤を掘り込んだ後,人力で突き固めた版築盛土を構築し,その上に石材を積み上げるという建築様式がとられており(図 1),合理的な修復事業の計画・履行には,地盤の特性を適切に考慮して変状の経緯や原因,修復の効果を明らかにすることが肝要となる.特に,重要構造物では数値解析による事前予測が重要となるが,これまで現地の地盤特性については力学試験による検討事例が少なく,地盤のモデル化の妥当性も明らかになっていなかった.そこで本研究では,修復計画が進みつつあるアンコール遺跡の最重要構造物であるバイヨン寺院の近傍で自然地盤を採取し,版築地盤とともに各種室内試験を実施した.また,得られた試験結果に対して,飽和過圧密土の弾塑性構成則・下負荷面 Cam clay モデルの構成パラメータを決定し,実験値をよく再現することを示す.2.バイヨン寺院近傍での自然地盤のサンプリングと要素試験図 2 に示すようにバイヨン寺院の東側約 15m の地点を地表から人力で掘削し,1m 掘削した地点で自然地盤を採取した.採取試料は自立性が低く,再構成試料を用いて試験を行った.また,サンプルには僅かに礫分も含まれていたが,供試体の寸法を勘案して粒径 2mm 以下にふるい分けた試料(d=2.65,max=1.75,min=1.29 g/cm3)で試験を行った.礫分を除いた試料は,細粒分含有率 10%程度の砂である.なお,別途実施されたボーリング調査によると,寺院周辺には傾斜のない成層地盤が形成されており,今回採取した試料はバイヨン寺院直下の自然地盤も採取試料と同様の力学特性をもつと考えることができ図 1 バイヨン寺院中央塔・立面図る.圧密試験は,一般的な標準圧密試験と同様に 1256 kPa中央塔まで載荷重した後,9.8kPa まで除荷し,1256kPa まで再載荷した.三軸試験では,拘束圧 98,196kPa の 2 種類に対して側圧一定条件下で CD 試験を実施した.現地の地盤は寺院の自重による上載圧以外の応力履歴は認められ中央塔ないことから,緩詰めの再構成試料を作成した.図 3 にプロットで試験結果を示す.圧密試験では,載荷直後はやや過圧密な応答を呈し,その後,正規圧密土の典型的50mな圧縮挙動を示した.また,除荷・再載荷時にはほぼ可図 2 バイヨン寺院平面図と試料採取位置逆な応答を示す膨潤線が得られた.排水三軸試験では,いずれの拘束応力においても単調な硬化および体積圧縮挙動を呈しており,典型的な正規圧密土のせん断挙動が得られた.3.バイヨン寺院の版築再現地盤と要素試験寺院直下の版築の採取は難しいことから,福田ら1)が実際の版築の粒表 1 決定した構成パラメータ一覧材料定数版築地盤 自然地盤圧縮指数:0.0580.0782膨潤指数:0.00480.0023験は,版築の簡易貫入試験を参考にして含水比を調整して締固めたバイ大気圧下での正規圧密土の間隙比:eNC0.70.723ヨン基壇部版築の再現地盤から切り出した試料と試験室で作成した緩詰度分布をもとに配合を決定した試料に対して要素試験を行った.圧密試限界状態応力比:M1.371.37め試料に対して実施した.載荷条件は自然地盤と同じである.三軸試験ポアソン比:0.30.2は緩詰めおよび密詰めの試料に対して,平均有効応力 p' (=196kPa) 一定下負荷面パラメータ:a2550Mechanical characteristics of rammed earth andnatural ground of Bayon temple in AnkorSAITO, Toru / KIKUMOTO, Mamoru: YokohamaNational Univ.HASHIMOTO, Ryota: Kyoto Univ., KOYAMA, Tomofumi: Kansai Univ.27 0.60.40.21101001000Logarithm of mean stress p' [kPa]1101001000Logarithm of mean stress p' [kPa]10000Axial strain a [%]01015020598kPa (e =0.701)0196kPa (e =0.669)Stress ratio q/p-52-101-50Axial strain a [%]0510152005e =0.651010e =0.46600(b) 側圧一定 CD 試験(r' = 98, 196 kPa)(b) 平均応力一定 CD 試験(p' = 196 kPa)図 3 自然地盤の室内試験結果と解析結果図 4 版築地盤の室内試験結果と解析結果Volumetric strain v [%]1Volumetric strain v [%]-1050.4(a) 標準圧密試験200.60.210000(a) 標準圧密試験Stress ratio q/preconstitution sampleAreconstitution sampleBcompaction sample0.8Void ratio eVoid ratio e0.810条件で CD 試験を実施した.図 4 にはプロットで実験値を示す.圧密試験では,締固め試料が過圧密土の応答を呈し,緩詰め試料は概ね正規圧密土の挙動を呈した.また,せん断試験では,せん断挙動が初期密度によって異なり,緩詰め試料では単調な硬化と圧縮を伴う典型的な正規圧密土,密詰め試料では緩やかなひずみ軟化と体積膨張を伴う過圧密土の挙動を得た.4.弾塑性構成則の構成パラメータと要素試験のシミュレーション自然地盤と版築地盤の要素試験を,飽和正規圧密土のモデルである修正 Cam clay モデル 2)に,下負荷面の概念 3)を導入して密な砂や過圧密土に拡張した弾塑性モデルによりシミュレートした.表 1 に自然地盤と版築地盤の構成パラメータをまとめる.図 3, 4 に実線で解析結果を示す.自然地盤のシミュレーションでは,側圧 196kPa の CD 試験における体積圧縮挙動を精緻には捉えないものの,圧縮曲線の傾きやせん断時の初期剛性および残留強度,密度による圧密・せん断特性の違いなど自然地盤の圧密およびせん断挙動を一組の構成パラメータで概ね表現しており,現地の地盤挙動は同モデルにより概ね再現可能である.版築地盤は自然地盤よりやや高い圧縮剛性を想定した圧縮指数を設定しており,緩詰め試料および締固め試料の圧密曲線を同じ構成パラメータで捉えることができた.限界応力比には自然地盤と同じ値を設定しており,圧密と同じ構成パラメータで排水三軸試験においても緩詰め試料の硬化・圧縮挙動と密詰め試料のひずみ軟化および正負のダイレイタンシー特性を概ね再現した.5. まとめバイヨン寺院の近傍で採取した自然地盤と同寺院の版築を再現した試料に対して,圧密試験および三軸せん断試験を実施し,応力ひずみ特性を調査するとともに,数値計算による変状予測および変状対策工の検証のために弾塑性構成則・下負荷面修正 Cam clay モデルの構成パラメータを決定し,要素試験のシミュレーションを行った.自然地盤を再構成した試料は正規圧密土の典型的な応答を示し,バイヨン基壇部版築を想定して再現した締固め版築試料は過圧密土の応答を呈した.構成モデルによるシミュレーションでは,それぞれ一組のパラメータで自然地盤および版築の圧密・せん断挙動はをよく記述することができた.今回得た地盤情報を次報4)のような石積構造物の安定解析に反映させることで,地盤のモデル化の観点での解析の信頼性は確保できよう.今後はここで決定したパラメータを用いた解析により,バイヨン寺院の変状メカニズムの解明や変状対策工の効果の検証を進める予定である.参考文献 1) 福田ら: アンコール遺跡基壇の支持力と再構築, 第58回地盤工学シンポジウム発表論文集, 241-248,2013..2) Roscoe, et al.: Yielding of clays in sates wetter than critical, Geotechnique 13, 211-240, 1963. 3) Hashiguchi, K. and Ueno, M:Elasto-plasticconstitutive laws for granular materials,constitutive equations for soils, Proc. SpecialtySession 9,9th ICSMFE,Tokyo,73-82,1977.4) 橋本ら: NMM-DDAによるアンコール遺跡バイヨン寺院の基壇掘削時安定解析, 本研究発表会, 2014.28
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  • タイトル
  • NMM-DDAによるアンコール遺跡バイヨン寺院の基壇掘削時安定解析
  • 著者
  • 橋本涼太・小山倫史・齊藤 徹・菊本 統
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 29〜30
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67657
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会15E - 12 (北九州)   2014 年 7 月NMM-DDA によるアンコール遺跡バイヨン寺院の基壇掘削時安定解析数値解析 石積構造物NMM-DDA京都大学大学院学生会員○橋本 涼太関西大学社会安全学部国際会員小山 倫史横浜国立大学学生会員齋藤徹横浜国立大学大学院国際会員菊本統1. はじめにカンボジアの世界遺産,アンコール遺跡には現在崩壊の危機に瀕する石積構造物が数多く存在する.既往の調査・修復により構造物の安定性を脅かす一因として基礎である地盤の変状が挙げられており,その安定性を適切に評価するためには地盤との相互作用を考慮することが不可欠である.本研究では,それに対する数値解析的アプローチとして,新たに飽和過圧密土の弾塑性構成則を導入したマニフォールド法‐不連続変形法連成解析(NMM-DDA)を用いて,現在修復計画が進められているアンコール遺跡の実構造物,バイヨン中央塔 1)に適用した.2. マニフォールド法‐不連続変形法連成解析(NMM-DDA)2)NMM-DDA は,離散体の接触解析手法である DDA(不連続変形法)と NMM(マニフォールド法)を組み合わせた統合的な解析手法である.両手法はともに,複数の多角形ブロックからなる系の,相互接触条件を含めた運動方程式,Mu  Cu  Ku  F(1) M : 質量マトリックス, C : 減衰マトリックス, K : 剛性マトリックス  u : 変位, u : 変位速度, u : 変位加速度を解く手法であるが,その空間離散化において違いが現れる.NMM は一つのブロック内部の任意点の変位を,ブロックを覆うカバーによって形成されるメッシュの節点変位に離散化しており,有限要素法と同様に地盤の連続体的な変形挙動も表現することが可能である.一方,DDA ではブロック内部の変位をブロックの重心における剛体変位,回転,ひずみに離散化しており,石材の崩落などブロックの回転を伴う挙動の表現に適している.NMM-DDA は,これら DDAのブロックと NMM の要素の間の接触を新たに定式化することで両者を同時に扱うことを可能にした手法であり,地盤と石積構造物の相互作用問題をより適切に解くことができる. 理論の詳細は参考文献 2)に譲る.3. 下負荷面修正 Cam clay モデルの導入3)前報では,バイヨン寺院の版築および自然地盤の力学挙動が,飽和過圧密土の弾塑性構成則の一つ,下負荷面修正Cam clay モデルにより表現できることが示され,また,その構成パラメータが決定された.本報ではその力学特性を考慮した構造物の安定解析を行うため,NMM-DDA に下負荷面修正 Cam clay モデルを導入した.本モデルの降伏関数は,f 2    p             0ln  ln1       vp  01  e0  p 0  1  e0   M   1  e0(2)で表される.ここに,λ は圧縮指数,κ は膨潤指数,e0 は初期間隙比,p は平均主応力,η は応力比,Μ は限界応力比,εvp は塑性体積ひずみ,そして ρ は土の過圧密の程度を表す状態変数である.4. バイヨン寺院中央塔の基壇掘削時安定解析以上で開発した解析コードを,現在日本国政府アンコー主塔ル遺跡救済チーム(JASA)によって修復計画が進められているバイヨン寺院の中央塔(前報中央塔石積ブロック副塔3)の図 1)に適用した.約30m掘削処理部本構造物では,過去の発掘調査時に掘削された版築の埋め2m戻し土が N 値 2 以下という非常に緩い状態にあることがわかっており,今後塔体の安定性を脅かす要因の一つとし14.5mて懸念され,埋め戻し部の再掘削・補強工事が検討されているラテライト砂岩1).ここでは,その再掘削が周辺地盤・構造物に与え15m11.5m5.7m21m13m版築自然地盤る影響を事前に検討するために,NMM-DDA を用いて以下の掘削時挙動解析を実施した.100m中央塔の南北断面図(前報 3)図 1)および基壇のボーリング結果を基に作成した解析モデルを図 1 に示す.石積図 1 解析モデル(二次元平面ひずみ)ブロックは DDA で,地盤は NMM によってモデル化した.Stability analysis during ground excavation of Bayon templeHASHIMOTO, Ryota: Kyoto Univ.in Angkor with NMM-DDAKOYAMA, Tomofumi: Kansai Univ.SAITO, Toru / KIKUMOTO, Mamoru: Yokohama National Univ.29 0.2460.2300.2130.1970.1800.1640.1480.1310.1150.09840.08300.06560.04920.03280.0164表 1 使用したパラメータ構成則線形弾性単位体積重量:γ [kN/m3]ヤング率:E [kPa]ポアソン比:ν版築自然地盤下負荷面修正Cam clay22.817.22.0×107--0.250.30.317.2圧縮指数:λ-0.0580.048膨潤指数:κ-0.00480.005大気圧下での正規圧密線上の間隙比:eNC-0.70.62限界応力比:M-1.371.2下負荷面パラメータ:a-257000323636表面摩擦角[°]0.050.04670.04330.04000.03670.03330.03000.02670.02330.02000.01670.01330.01000.006670.00333要素4955要素2392変位の向き0.3000.2800.2600.2400.2200.2000.1800.1600.1400.1200.1000.08000.06000.04000.0200変位[m]変位[m](a)鉛直変位(b) 水平変位図 2 解析終了時の変位分布図1500要素2392偏差応力 q [kPa]石積ブロック/砂岩/ラテライト変位の向き要素49551000掘削500005001000平均主応力 p [kPa]ひずみ図 3 解析終了時の偏差ひずみ分布図図 4 図 3 の各要素の応力経路続いて,使用した物性値を表 1 にまとめた.石積ブロックは線形弾性体として扱い,一方,地盤に対しては先述の下負荷面 Cam clay モデルを適用した.版築の物性値は前報で決定された値を与えている.自然地盤については,前報 3)に示した値と異なるが,これは標準圧密試験の結果のみから設定しているためである.三軸試験の結果については今後,試験ケースを増やした後,再設定して解析に反映する予定である.また,初期間隙比として,版築には最適含水比で締固めた場合の値を,自然地盤には地盤部分の自重解析によってもとまった初期応力状態に対応する正規圧密状態の間隙比を与えた.その他接触に関するパラメータとして,垂直ペナルティばね剛性を 1.0×109[kN/m],せん断ペナルティばね剛性を 1.0×103[kN/m]として与えた.以上の条件下で,石積ブロックの自重を与えた後,掘削部(図 1 の赤四角部)の掘削を実行し,構造物全体の変位が収束するまで解析を行った.以下,解析結果を示す.図 2 に掘削直前を基準とした解析終了時の鉛直変位および水平変位分布図を示す.この図から掘削によって塔中央部を中心として沈下が進行していることがわかる.また,沈下によって副塔が内側へと傾斜していることが水平変位分布図から読み取れる.水平変位分布図で主塔上層部に変位量が不連続な箇所が見られるのは,内側に傾斜した南北の副塔に主塔が押された際に,鉛直荷重の小さい箇所で滑りが生じたためである.続いて地盤の状態を観察する.掘削時懸念されるのは周辺地盤の破壊であるから,解析終了時の偏差ひずみ分布図(図 3)を見ると,掘削部周辺でせん断が発生し,特に掘削壁面最下部と主塔脚部直下でひずみが集中している.図 3に示した掘削壁面の 2 要素の応力経路(図 4)を確認するといずれも破壊には達しないものの,掘削後にせん断が進んでいることがわかる.これらの掘削部へ向かうせん断現象によって上述の沈下が生じ,塔の内側への傾斜にまでつながったものと推察される.5. まとめ本研究では,新たに下負荷面修正 Cam clay モデルを導入した NMM-DDA を用いて,現地の土の構成パラメータを考慮したアンコール遺跡のバイヨン中央塔の基壇掘削時挙動解析を行った.そしてその結果から補強工事時の地盤,構造の挙動,留意すべき事項について検討した.今後は,現地の土試料の試験データの蓄積による材料物性値の精度の向上が重要である他,乾湿条件の変化が大きいアンコール地域の地盤が抱える多様な問題を考慮するため解析手法そのものの不飽和土‐水連成解析への拡張も課題となる.参考文献 1)寺院JASA ほか: “アンコール遺跡救済 ユネスコ信託基金による日本政府第 3 期事業報告書 Book II:バイヨン保存修復研究報告書”, 2011. 2) Miki ら: “Development of Coupled Discontinuous Deformation Analysis and NumericalManifold Method (NMM-DDA)”, 2010. 3)齋藤ら: “アンコール遺跡バイヨン寺院の版築および周辺の自然地盤の力学特性”, 第 49 回地盤工学研究発表会講演概要集, 2014.30
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  • タイトル
  • アンコール遺跡バイヨン中央祠堂砂岩の強度評価と劣化砂岩の抽出
  • 著者
  • 福田光治・岩崎好規・本郷隆夫・中川 武・新谷眞人・山田俊亮・石塚充雅・下田一太
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 31〜32
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67658
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会16D - 02 (北九州)   2014 年 7 月アンコール遺跡バイヨン中央祠堂砂岩の強度評価と劣化砂岩の抽出アンコール遺跡,砂岩,強度,非破壊試験、乾湿変化大成ジオテック福田光治地域地盤環境研究所岩崎好規、本郷隆夫早稲田大学中川武,新谷眞人山田俊亮、石塚充雅筑波大学下田一太1.まえがきアンコール遺跡は砂岩とラテライトの積層体を盛土基壇で支える構造である.広大なアンコールトムの中央にバイヨン寺院があり、その中央塔は高さ 43m で、写真-1 に示すように砂岩が積み重ねられている.中央祠堂は 3 段のテラスがあり、最上部には尖塔状の高い塔を支える盛土基壇がある.尖塔の下部は局部的にはクラックが発生した砂岩が散見される.安定性の評価には砂岩の強度把握は不可欠である.このため現地で写真-2 に示す Schmidt hammer と Schmidt rockhammer で砂岩一個毎の強度を調べた.非破壊試験結果の精度を確認するために室内一軸圧縮試験を実施した.この室内試験では原位置における非破壊試験評価の基礎資料とするために、コアの堆積方向による異方性、乾湿状態による強度変化及び圧裂試験を実施した.2.強度推定式Schmidthammer の読値から式(1)を使用して強度変換した.強度と読値の関係は読値 20 以上で与えられているが、本研究では読値 20 以下にも式(1)を適用した.log Y  0.0431 X  3.1147( kg / cm 2 )(1)Schmidt rock hammer による試験では、式(2)により読値から変形係数を求めた.log Y  0.0331x  3.7032( kg / cm 2 )(2)写真-1バイヨンこれらの式は近似式で、試験器に示されている関係をグラフ化して求めたものである.3.中央祠堂下段の強度特性写真-1 に示す尖塔部分の根元 9layer の表面すべての砂岩について両試験を実施し,砂岩の劣化状況を調べた.また基礎資料とするために室内供試体砂岩とラテライトを用いて補足した.図-1 は Schmidt hammer による強度と Schmidt rock hammer による変形係数の関係を示した.図にはラテライトコアの試験結果も併記している.式(1)から推定したラテライトの強度はマイナスになっているが、強度と変形係数の関係は比例的な写真-2Schmidt hammer とSchmidt rock hammer関係をしている.一方砂岩の強度はプラスである.強度がマイナスになることはないので、Schmidt hammer の読値 20以下の強度は概念的には双曲線的に急増すると推定しなければならない.図中の白抜き○はバイヨン中央祠堂尖塔部の試験結果である.一方●はその他の場所の砂岩とラテライトを対象にした結果である.主塔のデータは強度が増加すると急激に変形係数も増加する傾向を示している.一方その他のデータの両関係は線形的である.しかしバイヨン中央塔のデータとその他のデータの間には大きな乖離は見られず、整合的でさえある.4.室内試験による砂岩強度バイヨン中央祠堂のデータの精度を確認するために室内でコアを用いた一軸圧縮試験を実施した.コアの直径は 3cm、高さは 5cm を基準にした.室内試験では試験環境による試料変化特性を調べるために堆積方向とそれに直行する方向で試験を行い.異方性を調べた.また乾湿の影響、引張強度を調べた.一軸圧縮試験器を写真-3 に、水浸状況を写真-5 に、また圧裂試験を写真-5 に示した.Extraction of the weathered sand stones composed of Central tower of Bayon temple in Angkor complex, FukudaMitsuharu、Taise Geotech., Iwasaki Yoshinori、Hongo Takao、Geo-Research Institute, Nakagawa Takeshi, ArayaMasato, Yamada Shunsuke, Ishizuka Mitsumasa, Waseda31University, ShimodaIchita, TsukubaUniversity 図 -2 は 試 験 結× はSchmidthammer と Schmidtrock hammer 試験結果である.●は堆積方向、■は堆積方向に直交すDeformationmodulus(MN/m2)果である.図中のる方向、各々の白抜き○、□は飽和させたコアである.また France450004000035000300002500020000150001000050000-200図-1204060Strength(MN/m2)80写真-3一軸圧縮試験器バイヨン祠堂の強度-変形係数beam はコンクリートコア、△はラテライトコアである.試験結果からは明瞭な異方性は見られなかったが、飽和コアはやや強度低下を起こしている.試験結果からは乾期と雨期の季節変動を受けてバイヨン中央塔の砂岩強度や変形係数が変化することが予想される.また概略的には Schmidt hammer写真-4写真-5水浸コア圧列試験と Schmidt rock hammer 試験結果とsand stoneHorizontal sedimentationsaturated(horizontal)laterite(unsaturated)一軸圧縮試験結果は類似した傾向を示している.5.バイヨン中央塔砂岩の劣化状況図 -3 は バ イ ヨ ン 中 央 祠 堂 尖 塔 根 元 の Schmidtを構成する砂岩に番号をつけた.図は layer 毎の整理で、layer は 100 倍し、強度は各 layer に対応する値に強度を付加して鉛直差で表現した.各層の強度分布から 20MN/m2 以下を低強度として、低強度個所を抽出した.↓が低強度とした位置で、列番号 17-20、6000Deformationmodulus(MN/m2)hammer から推定した強度分布である.Layer とそれVertical sedimentationsaturated(vertical)France beam50004000300020001000026-28,36 に分布し、これは SW-W、NW-N、E の方位に0なる.また低強度は根元から 3layer にあり、根元の20劣化が想定される.図-26.おわりに4060Strength(MN/m2)コアを用いた一軸圧縮試験砂岩積層体であるバイヨンの遺跡保存は個々の砂岩の体の安定性は個々の砂岩の品質に依存するために、個々の砂岩の評価方法を確立する必要がある.本研究ではSchmidt hammer と Schmidt rock hammer を使用した.砂岩にアドレスを付して、根元部分の調査を行った.この結果劣化部分は根元下段に集中していることと、方向性があることが予想された.(参考文献)Number oflayer,strength(MN/m2)品質を評価する必要がある.膨大な数になるが、砂岩積層900800700600500400300200100layer 8765432layer 101) 福田光治、岩崎好規,藤原照幸,中川武,山本信102030Number of sand stone夫,下田一太:アンコール遺跡バイヨン中央塔の支持力と基壇構造,第 44 回地盤工学研究発表会発表講演集、図-3pp.113-114、2009.32バイヨン祠堂尖塔部分根元の劣化状態40
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  • タイトル
  • アンコール遺跡における基壇盛土の眞正性、タタキ技法による修復と技術移転
  • 著者
  • 岩崎好規・福田光治・下田一太・赤澤 泰・中澤重一・友田正彦・中川 武・・・
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 33〜34
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67659
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会17A - 02 (北九州)   2014 年 7 月アンコール遺跡における基壇盛土の眞正性,たたき技法による修復と技術移転地域地盤環境研究所国際会員○岩崎好規大成ジオテック国際会員福田光治東京設計事務所国際会員中澤重一筑波大学大学院文化財保存計画協会東京文化財研究所早稲田大学アンコール遺産1盛土基壇下田一太赤澤泰友田 正彦中川 武遺産の眞正性まえがき日本国政府アンコール遺跡救済チーム(JSA: Japanese Government Team for Safeguarding Angkor)は,1994 年に結成(団長中川武)され,爾来 20 年,遺跡保存活動は,遺跡調査や保存技術の研究から,現地への技術移転の段階に至っている。ここでは,遺産地盤学の分野における版築技法の修復法として,日本のたたき技法を導入し,その普及を図っていることについて報告する。2アンコール遺跡の経蔵における基礎の特徴アンコール遺跡の積石構造は,掘込み地業による地表処理とよく締め固められた砂地盤と積石擁壁から構成されている。図-1 部分解体によるトレンチ断面写真-1 バイヨン寺院北経蔵側面写真JSA が最初に修復の対象としたのは,アンコールトム遺構内バイヨン寺院の北経蔵と呼ばれる積石構造物である。高さ約 5m の基壇を基礎として,内部空間を有する組石壁構造が構築されている。写真-1 にもみられるが,基壇端部に,見られる亀裂は,一見せん断すべりが発生しているように見えるが,部分解体によるトレンチ断面においては,そのようなせん断変形は見られなかった。アンコールにおいては,基礎地盤に変状が見られる構造物とみられないものとがある。経蔵と呼ばれる構造物の基礎は,不等沈下は殆ど見られていないが,基壇端部に開口目地が見られる。この縦目地は,現場計測結果によると,雨季に開口し,乾季には閉じる特性が見られたことから,上下圧縮の載荷状態にある砂質地盤が雨季になると,粒子間に作用しているサクション力が小さくなり,鉛直圧縮に伴い水平膨脹が発生することによると推定される。長期にわたる繰り返し変形によって,このような縦目地がとなり,雨水の浸入や,雨水による砂粒子の流亡が発生して,わずかな基檀部の変状が上部構造の崩壊の重要な原因を作っているものと考えられる。3基壇基礎の修復と眞正性の保持フランスは,1930 年代から豊富な遺跡修復の経験を有しており,基壇の修復については,バプーオン寺院修復時に,盛土をするたびに崩壊が起こったことから 5mを越える盛土擁壁には,コンクリート擁壁を設置して土圧を受けることとTechnical Transfer of Rammed Ground forRestoration Work of Angkor HeritageYoshinori Iwasaki Geo Research Institute Mitsuharu Fukuda TaiseiGeotech, Jyuichi Nakagawa, Tokyo Engineering Consultants, IchitaShimoda, University of Tsukuba, Yasushi, Akazawa , Japan CulturalHeritage Consultancy, Masahiko Tomoda, , National Research Institutefor Cultural Properties, Tokyo, Takeshi Nakagawa, Waseda University33 している。JSA の基壇部の修復については,基壇の眞正性としての特徴を①砂質と細粒粘土質との2つの盛土材料,②版築および石積からなる基壇構造と考え,盛土材の改良による基壇の力学的弱点を抑制することを考えた。土質の引張り強度を増加させる添加剤とすれば,セメント混合,石灰混合,などがあるが,明治期に左官職人であった服部長七によって開発された”長七たたき”を石工棟梁で JSA 顧問であった山本勇氏の紹介で岡崎市に現存するたたきによる灌漑水路の見学に行った。すでに優に 100 年は経過している構造物であるが,一軸圧縮強度で 7-8MPa の強度を有しており,耐久性も優れている。たまたま INAX 研究所でも研究しているということで,同研究所の石田秀輝博士の協力を得て,“長七たたき”によるアンコールの版築工の改良に踏み切った。消石灰混合は,生石灰やセメント系の混合処理に比較すると,強度発現には時間がかかるが,化学的に安定している特徴がある。4締固め試験に基づくたたき工法たたきという左官技法に地盤工学的扱いを導入するために,各種の基本的な混合土の試験を実施した。アンコール遺跡盛土の材料土の粒度をみると,砂質土系と最粒土系に目視で分けられるが,粒度を調べると,図-1 のように分かれる。図-1 アンコール盛土材の粒度分布特性図-2 消石灰混合による締固め試験321.0写真-2(kN/m )Sand Fill象の足によ20.0Clayey Fillγmax=19.56 at wc=11.7%Dry Densityる締固め試験γmax=18.98 at wc=7.7%19.018.017.016.0図-30510Water Content15(%)20砂質材料と粘土質材料と混合土の締固め曲線砂だけだと図-2 に示したように明確な締固め特性がえられないが,消石灰を混合すると,明確な最適含水比が見えるようになる。混合土の含水比による締固め特性と強度や圧縮特性を求めて,要求される基礎特性を満足させるような締め固め基準を決めることとなる。アンコール遺跡保存修復においては,地盤工学は,基幹知識体系の一つであるが,アンコール保存事務所や,ユネスコにおいてはそこまでの意識は希薄であるために,いずれそうなろうが,現地チームには地盤工学を専門とする専門家が現在はいない。5結論文化遺産の保存にあたっては,その遺産の有する特質を明らかにし,未来に保存し後世に伝えるべき特徴としての”遺産の眞正性要素(Characteristic element of Authenticity)”の保全(integrity)を考慮する必要がある。アンコールにおける基壇の修復保全に日本伝統のたたきを導入し,地盤工学的検討,締固め試験施工による,現地に技術移転を進めている。いかに平易な技術マニュアルを作成するか?が成功の鍵であろうが,まだ,道は遠い。34
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  • タイトル
  • 写真測量による横須賀製鉄所第1号ドライドックの石材表面侵食量の測定
  • 著者
  • 藤井幸泰・正垣孝晴・宮川真国・菊地勝広
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 35〜36
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67660
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会18C - 07 (北九州)   2014 年 7 月写真測量による横須賀製鉄所第1号ドライドックの石材表面侵食量の測定風化侵食溶岩石材深田地質研究所正会員○藤井 幸泰防衛大学校正会員正垣 孝晴防衛大学校横須賀市自然・人文博物館宮川 真国正会員菊地 勝広1.はじめに旧横須賀製鉄所の第 1 号ドライドックは,フランス人技師の Verny と Florent の設計・管理の下,慶応 3(1867)年起工,明治 4(1871)年に我が国最初の石造ドライドックとして開渠した。この建設に関わった日本人技術者が,横浜ドライドック等の国内石造ドック建設に携わったことを考慮すれば,日本のドライドック建設の源流ともいえる貴重な石造建設物である。当該ドックは現在も米海軍と海上自衛隊によって現役使用されている.しかし開渠以降 140 余年も経過し,表面が風化して侵食されている石材が散見される.当該ドックでは渠口部付近の安定性解析を目的とした,写真測量調査や漏水量調査 1),さらにはボーリング調査 2)等が進められている。この報告では石材表面に焦点を置き,デジタル写真測量を適用し,140 余年間の侵食量推定を行った事例 3)について,その手法を含めて詳しく紹介する。2.石材の風化と浸食ドックの石材には伊豆と相模産の新小松石(安山岩)が使用されている。しかし岩質にばらつきがあり,色によって三種に分類できる。濃い青・赤褐色・灰白色である4)。このうち灰白色は凝灰質安山岩と考えられる。開渠から 140 余年経過した石材表面には,風化や侵食の跡がみられる。特徴的な風化として図-1 に示す,ハニカム構造(蜂の巣状構造)がある。これは塩類風化によって形成される特徴的な侵食構造であり5),海岸沿いに露出する天然の岩石にもみられる。石材表面が海水に浸った後,蒸発によって塩類が析出し,その際の結晶化圧力によって表面組織が破壊され,侵食されていく。なおドック全域を見渡すと,ハニカム構造は,灰白色の安山岩に多く見られる傾向がある。図-1 石材表面のハニカム構造3.写真測量の適用写真測量は写真上で対象物の計測を行う技術である6)。1枚の写真は二次元情報をもつ。同一対象物を異なる位置から撮影した2枚の写真,すなわち1組の立体写真は三次元情報を含んでいる。写真測量はレーザ計測と異なり,カメラだけでは絶対座標を計測することができない。そこで対象物に標定点と呼ばれる目印を設置し,標定点を立体写真に写し込むともに,トータルステーションなどの測量機器で標定点の測量を行う。写真に写しこんだ標定点から,カメラ位置と撮影方向を計算すれば,絶対標定を行うことが出来る。ところで標定点を設置しなくとも,立体写真にサイズのわかるものを写し込んでおけば,座標は決まらないものの,対象物のスケールは計測可能である。そこで石材の立体写真を撮影する際に,スタッフを同時に写し込んだ。さらにハニカ ム構造をもつ 石材だけでは なく,侵食をほとんど受けていない石材も同時に写し込んだ。これは侵食される前の石材の表面を推定するためであり,これによって塩類風化による侵食量の測定を試みた。侵食を受けていない石材表面には,整形時の鑿の跡が残っている。立体写真の例を図-2 に示す。四角枠がハニカム構造をもった石材,その下に侵食をほとんど受けていない石材がある。図-2 の立体写真を用いて写真測量を行った。撮影時の状況は,カメラから石材までの距離図-2 石材の立体写真の例H が約 2 m,カメラのレンズ焦点距離 c は 35Surface erosion of building stones measured byFujii, Y. (Fukada Geol. Inst.), Shogaki,T. (NDA), Miyakawa,photogrammetric survey at Yokosuka Arsenal Drydock No. 1M. (NDA), Kikuchi, K. (Yokosuka City Museum)35 mm,カメラのセンサー解像度(1 ピクセルのサイズ)δCCD は 0.0078 mm,左右カメラの間隔 B は約 0.5 m である。これらの数値を用いて,写真測量時の分解能を以下式から求めることができる。σXY = H/c×δCCD(1)σZ = B/H×σXY(2)図-2 の撮影状況において,σXY≒0.5 mm,σZ≒2 mm である。写真測量時には上下左右に写し込んだ侵食の進んでいない石材表面を判読しながら,塩類風化で侵食を受けた石材の建設当時の面を推定し,これを四角枠で図化した(図-2 中の四角枠)。そして四角枠内の侵食を受けた石材の現在の表面を三次元モデル化した(図-3).三次元表面モデルは三角形群で構成されており(図-3 左),これに写真を重ねたテクスチャーマッピングによる表現図-3も可能である(図-3 右)。三次元表面モデル(図-2 を左横から眺めた鳥瞰図)三角形群による表現と,テクスチャーマッピングによる表現4.写真測量による侵食量測定最大侵食深度図-3 の侵食を受けた石材の三次元表面モ表-1 石材表面の侵食量測定結果デルより,四角枠(青色)からの①最大侵番号食深度,②四角枠の面積,四角枠を平面とした場合の,平面から三次元表面モデルま四角枠の面積での③侵食体積を計算することが可能である(図-4)。また侵食体積を四角枠の面積で除すれば,④平均侵食深度を求めることができる。これらの値を表-1 に示す。最大深度は 3.29 cm から 10.25 cm 程度であ侵食体積る。石材の平均的なサイズは高さ 30~50cm,幅 30~50 cm,奥行約 100 cm であり,出ている面により 1000,1500,2500,5000cm2前後の面積が確認できる。侵食体積は様々であるが,面積が大きいほど体積も多く,体積を面積で割った平均深度は 1.27~①最大深度②面積③体積④平均深度(cm)(cm2)(cm3)(cm)13.291337169226.93152835141.272.335.38232957032.4546.98145336492.5157.77256468942.6965.2896126502.7678.18104934933.3386.84201668693.4197.51146252773.61106.92195171113.64116.39238191043.91際には三次元的広がりを127.224703201554.29持つ1310.25120669835.79図-4 侵食量の測定図-3 の模式断面図で,実5.79 cm 程度である。また表-1 は平均深度の順番で並べてあるが,この順序がほぼ最大深度と一致している。すなわち全体的に侵食を受けている石材ほど,最大深度も大きいことを示している。5.考察など第 1 号ドックの石材表面は,塩類風化と侵食により数~十数 cm の深さの侵食が認められる。最大の侵食深度は10.25cm であり,140 年で除すれば,0.7 mm/year の侵食量と見積もれる.石材のサイズを考慮すれば,緊急の修復や入れ替え等は必要ないと考えられるが,継続したモニタリングは必要であろう。実際に第 1 号ドックのいくつかの石材はモルタルで完全に覆われており,過去の修復跡と考えられる。この調査において米海軍横須賀基地より,入渠許可を含めて様々なサポートを頂いた。また調査の一部には,公益信託大成建設自然・歴史環境基金を利用した。紙面を借りて御礼を申し上げる。6.文献1) 正垣孝晴・渡邉邦夫・藤井幸泰・中山健二:土木史跡委員会の活動から~横須賀市の軍事遺産~,地盤工学会誌,Vol.61,No.5,pp.30~33,2013. 2) 正垣孝晴・宮川真国・小口千明・菊地勝広・藤井幸泰:横須賀製鉄所(造船所)石造ドライドック裏込め土の鉱物組成,第 49 回地盤工学研究発表会,2014.3) 藤井幸泰・正垣孝晴・宮川真国・菊地勝広:横須賀製鉄所第1号ドックの編年変化と写真測量による侵食量推定の試み,地盤工学会誌,Vol.62,No.4(印刷中),2014.4) 菊地勝広:1873 年刊行フランス海事雑誌にみる横須賀製鉄所の建築技術-横須賀製鉄所におけるフランス系技術の導入に関する研究(その 2)-,横須賀市博物館報告(人文科学),Vol.55,pp.27~65,2010.公憲:地形変化の科学-風化と侵食-,朝倉書店,pp.217-220,2008.pp.1~15,1996.365) 松倉6) 佐々波清夫・水尾藤久:増補教程写真測量,
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  • タイトル
  • 横須賀製鉄(造船)所石造ドライドック裏込め土の鉱物組成
  • 著者
  • 正垣孝晴・宮川真国・菊地勝広・藤井幸泰・小口千明
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 37〜38
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67661
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会19A - 02 (北九州)   2014 年 7 月横須賀製鉄(造船)所石造ドライドック裏込め土の鉱物組成ドライドック裏込め土改良土横須賀製鉄所防衛大学校埼玉大学正垣孝晴小口千明横須賀市自然・人文博物館深田地質研究所菊地勝広藤井幸泰1.はじめに横須賀製鉄所 1 号ドライドックは,明治 4(1871)年に,仏国人 Verny(ヴェルニー)の指導によって開渠した。その後 2 号ドック(現 3 号ドック;明治 7(1874)年開渠)に加え,3 号ドック(現 2 号ドック)が明治 17(1884)年に開渠している。1 号ドックは我が国初の石造ドックであるが,2,3 号ドックを含め,今日でも現役使用されている。そして,我が国のセメント発達史は,これらのドックの建設と重なっている。すなわち,1 号ドックの石材と原地盤である土丹層の間には“ベトン”と呼ばれていた砂利・石灰・火山灰の改良土が裏込めとして用いられている。石灰は栃木県産,火山灰は伊豆大島産が用いられたとの資料 1)があるが,このベトンはフランス語でコンクリートを意味する“Béton”の音訳と考えられ,その費用は 1 号ドックの総工費(125.518 両)の 45%(Unit:m)Port sideであった 2)。3 号ドックでは,我が国最初期の輸入セメントが使われたが,2.0ックでは,輸入と国産セメントが初めて使われた 4)。1.5No.2No.1No.3国産化を伊藤博文に建議 3)して官営セメント工場の建設に繋がり,2 号ド2.5この費用が甚大であったことから,横須賀造船所の平岡道義がセメントの本稿は,1 号ドック渠口部背面で行ったボーリングで,表層から 0.6m と1.9m のベトン層からの採取土に対して,XRD(粉末 X 線回折分析)と SEM-海浮戸EDS(分析走査型電子顕微鏡)を用いて含有鉱物と構成成分を分析し,建設#2 Dry dock当時の裏込め土について考察した。2 号ドックの裏込め土と土丹は,横須2PORT SIDE2.05賀市自然・人文博物館に保存されている同様の深度のコア試料から,同じNo.1No.21 号ドックのボーリングは,渠頭部右(port side)の浮き戸と壁面から1.27m と 1.5m の位置 5)で行った。掘進深度は,表層部の安山石(60 ㎝)をStarboard side含めて 2.2m である。2 号ドックのボーリング位置と土質断面図を図‐1 と図-12 に示す。含有鉱物種と化学組成は,図-2 の赤丸で示す深度の試料に対して行った。b,d,f,h が原地盤の土丹,他はベトンである。なお,3 章の図-32.02.調査位置・試料,分析項目と方法1.4分析を行い比較した。ボーリング位置(2 号ドック)No. 3No. 1eacbdNo. 2標高0mMansory~11 に示す m は,渠口部石材間の目地である。鉱物種および化学組成を調べるため,採取試料を粉砕して XRD と SEMEDS を行った。XRD は,株式会社リガク製(Ultima III)を用い,管電圧-1mImproved soil-2mf40 kV,管電流 40 mA,スリット 2/3˚‒10 mm‒0.3 mm‒8 mm,スキャンスピード 4.0˚/ min,ステップ 0.02˚の条件で測定した。SEM-EDS は,日本電子株Mud stone-3m式会社製 JSM-5600 と JSD-2200 を用いて粉砕試料を金蒸着した。一般の岩図-2 (a) 土質断面(port side)石等に含有される主要 10 成分(SiO2, TiO2,Al2O3,Na2O,K2O,MgO,CaO,FeO+Fe2O3,MnO,P2O5)と硫黄(S)および塩素(Cl)を分析した。標高No. 10m3. 結果と考察土丹(b, d, f, h)に対する鉱物は,石英(SiO2 )(図‐3)および長石No. 2-1mijMansorygMud stonehImproved soil(Na,K,Ca,Ba)(Si,Al) 4O8)が比較的多く,方解石(CaCO3)はそれほど多くは含まれていない。化学分析結果からも,SiO2 と K2O(図‐4)が多く,-2mCaO(図‐5)が少ない。すなわち,ドックが土丹層を開削して造成された地盤に築造されたことと符合する。なお,K2O が多いのは,堆積物中に正-3m長石(K2O に富む長石)あるいは黒雲母が多いことを示している。CaO/SiO2比(図‐6)は,これらの試料は他より値が小さい。改良土(ベトン)に図-2 (b) 土質断面(Starboard side)Mineral composition of Yokosuka dry dock back-fill soils, Shogaki,T. (NDA), Oguchi,C. (Saitama Univ.), Kikuchi,K. (YokosukaCity Museum), Fujii,Y. (Fukada Geological Institute)37 38040202101a 2b 3c 4d 5e 6f 7g 8h 9i 10j 11k 12l 13mCaOPersentage, (%)Persentage, (%)Persentage, (%)60040K2OSiO2Sample図-3 SiO2 の割合30201001a 2b 3c 4d 5e 6f 7g 8h 9i 10j 11k 12l 13mSample図-5 CaO の割合215Al2O31図-610013a1 b2 c3 d4 5e f6 g7 h8 i9 10j k11 l12mFeO+Fe2O320Persentage, (%)Persentage, (%)Persentage, (%)Ca/Si01a 2b 3c 4d 5e 6f 7g 8h 9i 10j 11k 12l 13mSample図-4 K2O の割合501a 2b 3c 4d 5e 6f 7g 8h 9i 10j 11k 12l 13mSampleCa/SiO2 の割合図-7図-8Fe/Si1a 2b 3c 4d 5e 6f 7g 8h 9i 10j 11k 12l 13m図-9SampleMnO の割合0.8Persentage, (%)Persentage, (%)Persentage, (%)00.60.40.20FeO+Fe2O3 の割合0.5Mg/SiMnO0.11a 2b 3c 4d 5e 6f 7g 8h 9i 10j 11k 12l 13mSampleSampleAl2O2 の割合10.2100.40.30.20.101a 2b 3c 4d 5e 6f 7g 8h 9i 10j 11k 12l 13m図-10SampleMg/Si の割合1a 2b 3c 4d 5e 6f 7g 8h 9i 1013j 11k 12l mSample図-11Fe/SiO2 の割合対する鉱物は,石英(SiO2)(図‐3)および長石(Na,K,Ca,Ba)(Si,Al) 4O8)が少なく,方解石(CaCO3)もしくは霰石(CaCO3)が比較的多く含まれている。また,試料 a にのみ石膏(CaSO4・2H2O)が検出された。化学分析結果からも,SiO2 は 20数%しか含まれておらず,当該土丹の一般的傾向とは明らかに異なる。一方,CaO(図‐5)は多く含まれており,Al2O3(図‐7)や,FeO(図‐8)および MgO(図‐9)などのアルカリ土類金属を多く含むが,今日のコンクリートの成分に比較的近い。これは,当時用いられたベトンが,伊豆大島産の玄武岩質火山灰と栃木県産の石灰岩(おそらく葛生ドロマイト)と,砂利の混和物であるとの資料の記述 1)と整合している。このため,CaO/SiO2 比(図‐6),MgO/SiO2 比(図‐10)および(FeO+Fe2O3)/SiO2 比(図‐11)を見ると,これらの試料は比較的高い値を示している。なお,1 号ドックと2 号ドック渠口部の左右に関係なく,同様な構成成分を有していると判断されるが,試料 i および試料 j で方解石か霰石が検出されたことを考慮すると,海水濃度との反応あるいは,貝殻の混入なども考えられる。4. おわりに土丹の鉱物学的特徴は,ドックが土丹層を開削して造成された地盤に築造された事実と符合する。また,ベトンの成分は,アルカリ土類金属を多く含むコンクリート(モルタル)に比較的近い。これは、当時用いられていたベトンが,伊豆大島産の玄武岩質火山灰と栃木県産の石灰岩(おそらく葛生ドロマイト)と,砂利の混和物である1)との記述と整合する。m を含むこれらの構成鉱物の精査が今後の課題である。本研究は,公益信託大成建設自然・歴史環境基金の助成によって,土木史跡委員会の活動の一環として行った。同基金と現地調査にご協力頂いた米海軍横須賀基地の関係各位に深甚の謝意を表する。参考文献1) 横須賀海軍工廠編:横須賀海軍工廠史, 第 1 巻, pp.83-84,1915.2)正垣・渡邉・藤井・中山:土木史跡委員会の活動から‐横須賀市の軍事遺産‐,地盤工学会誌, Vol.61, No.5, pp.30-33, 2013.3)平岡道義君の略伝,工学會誌,第 329 巻,pp.282-285, 1910.5.4) 菊地・初田:横須賀製鉄所における建設材料の収集と調査研究-煉瓦・セメント・木材, 日本建築学会計画系論文集,第 587 号, pp.191-197, 2005.5) 正垣・宮川・渡邉・中條:横須賀製鉄所1号ドライドックの壁面漏水量と潮位の関係,土木学会関東支部発表会,2014.38
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  • タイトル
  • 海上人工島である東京湾第二海堡の地盤構造物としての建設技術
  • 著者
  • 野口孝俊・浦本康二
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 39〜40
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67662
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会20A - 02 (北九州)   2014 年 7 月海上人工島である東京湾第二海堡の地盤構造物としての建設技術国土交通省関東地方整備局土木遺産,地盤構造物,建設技術正会員○国土交通省関東地方整備局野口孝俊浦本康二1.はじめに第二海堡は,軍事要塞として明治40年に人工島が竣工し,建設後100年が経過している.その間第二海堡は,1923年の関東大地震によって被害を受け,戦後には連合軍による爆破により施設が破壊されると共に,長年の風浪等により劣化・損傷・崩壊が進行している.明治期に建設された間知石の石積護岸で囲まれた人工島や軍事施設であったコンクリート砲台跡と一部の煉瓦庫が当時の状態のままの外観を残しており,わが国の歴史を実体験できる貴重な近代遺産である.近代遺産は,残された文化財と当時の記録を照らし合わせることで検証が可能となる特徴がある.本稿は,地盤工写真-1我が国最初の本格的な海上人工島学的見地から,残された建設記録を整理し,国内で初めての海上人工島築造に対する,建設技術をとりまとめ,海洋土木黎明期における構造物の建設技術を確認し,現代技術と比較検討を行った.2.第二海堡建設技術(1)第二海堡の概要東京湾には第二海堡と同様な施設として第一海堡と第三海堡があ1るが,第三海堡は既に撤去され,建設記録だけが残されている ).図-12) に示すように第二海堡は明治期に築造された軍事遺構であり,土木遺構でもある.形状は「へ」の字型で,中央の砲台を挟んで左翼長270m,右翼長190m,平均幅は約65mである.横須賀観音崎より約6km,2当時の第二海堡平面図(日本築城史巻頭 ))図-1富津岬から3.5kmの東京湾湾口部の海上に位置している.表-1に東京湾海堡築造の建設材料,数量および費用の概要笠石(+6.0 0)真土(マサ土)被覆を示す.三つの海堡それぞれの満潮面での面積は,第一海堡コンクリート砂の中詰めが23,000 m2,第二海堡がその1.8倍の41,000 m2,第三海堡は2第一海堡と同程度の26,000m である.三つの海堡建設の中で,(+2.00)硬い割栗石H.W.L.O.S.T(0.00)L.W.L.O.S.T(-2.20)風化割栗石現状の自然勾配捨石マウンド小粒割栗石もっとも大きな制約となっているのが水深である.第一海堡(-5.20)柔らかい割栗石地点の水深は-4.6m,第二海堡は-12m,第三海堡は-39mであ(-10.00)原地盤る.図-2護岸捨石の量を比べると,設置水深によりその量が大きく建設当時の第二海堡防波護岸図違っている.第一海堡が73,264 m3の捨石に対し,第二海堡はその6.6倍の485,968m3,第三海堡は38倍の2,781,864 m3の石材を投入している.石材の量だけの比較であっても,第三海堡が第一海堡に比較して大工事であったことがわかる.第二海堡は海底水深が-12mの地点に建設され,全ての工事が海上施工となる我が国最初の本格的人工島である.(2)護岸建設護岸の建設技術は「日本帝国海堡建築之方法景況説明書」の記録3)をとりまと表-1           海堡項目示す.水深が深いので,第(人工島)着工年月竣工年月一海堡のように最初から石建設期間垣を築くことはできず,ま海底の深さ(最深)       (最浅)海底の地質被覆石の基脚水深防波堤頂上の高さ3捨石材数量(m )3埋填砂数量(m )められ図-2 に護 岸断 面をず海底に割栗石を投入して海面上まで積み上げ,その上に石を積み上げて堤体を形成させている.堤体の沈下を待ち,堤体の外部を満潮面上 2.0m ま東京湾海堡の概要第一海堡第二海堡第三海堡明治14年( 1881)8月明治20年( 1887)6月9年明治22年( 1889)7月明治32年( 1899)6月25年明治25年(1 892)8月明治40年(1 907)10月29年-4m60cm-1m20cm-12m-8m-39m-39m貝殻混合の砂-2mH.W.L+6.0m73,264貝殻混合の砂-4mH.W.L+6.0m485,968砂利交り砂-3.2mH.W.L+6.0m2,781,864129,385299,243540,816Construction technology as the ground structure of Fort #2 in Tokyo Bay is the marine artificial island: Takatoshi NOGUCHI, KoujiURAMOTO(Ministry of Land, Infrastructure ,Transport and Tourism )39 で大型割栗石を積み重ねた.被覆石の積み重ねは,器械潜水夫により勾配 1:1.5,満潮面上+2m まで施工している.その上部には,45 度の勾配(1:1)とし,捨石護岸の内側には,砂の抜出し防止のため,軟石の小片や破片をそれぞれ厚さ 3m の 2 層に投入し,捨石面に存在する空隙を完全に塞いで砂の脱出を防ぐ処置をとった後,内部に砂を充填している.基礎の形状にあわせて捨て込み,満潮面下約-1m の深さまで,数カ月間,波浪の影響を受けさせ,各捨石が充分に沈下して安定してから実施している.当時の断面は,現在の海上空港建設の護岸断面にみられる断面である.現在の港湾築堤技術でも基礎マウンド造成後,冬季風浪で基礎石の安定を得た後,ブロックを設置するなどの技術は現場で実施されているが,現在の建設技術に影響を与えた事例であると推測され,港湾構造物の設計施工技術における経験的事例と言える.(3)埋立盛土(散水締固めの採用)海堡の敷地内に埋めた砂は,満潮面以上は厚さ 20cm の層毎に散水締め固めを施工している.関東大震災時では,埋立部の一部に変状を起こしているものの,第三海堡のような護岸の沈下や建物の崩壊は発生していない.当時の記録によれば,基礎の支持力実験の差は締固めの有無より 1:3 と沈下に大差が生じたとある.上部に構築する砲台堤体工事の基礎は,これらの締固めを行った砂層上に設けている. 沈下量を 1.50m 以下に減ずることは好ましくないと考えて,この厚さを 2.50m とした上で多少の沈下を許容している.現在でも防波堤築造における沈下量の計算は難しいが,柔らかい割栗石が約 8m 厚さあり,5%の圧縮率を見込むと 0.4m の沈下量,海底地盤へのめり込みを 0.5m と考えれば,約 1m 程度となり基礎地盤の沈下および基礎マウンドの圧縮量を含んで 1.5m以上の余盛量を見込む設計は妥当であると言える.これらの支持力試験と沈下量の結果は,その後の港湾築造技術に反映されたものと推測される.3.現代との施工技術比較第一海堡から第三海堡の建設費用については,第一海堡建設着工年の明治14年(1881)を1.0として作成した平成17年のデフレ-タ(3765)を乗じた金額を試算した.第一海堡は約14億円,第二海堡は約30億円,第三海堡は約95億円となる.これを現在の人工島と比較したのが表-2である.数値は比較するためにそれぞれの工事誌などから編集したもので,それぞれ完全には同一条件ではない.対象は最近施工の東京国際空港(羽田D滑走路),関西国際空港Ⅱ期および中部国際空港とした.いづれも人工島築造のみで上部構造は含んでいない.費用については現在価格に換算した金額である.規模および設置水深などの違いはあるが,造成単位面積当たり単価の比較をしたところ,水深の浅い第一海堡が一番安く,第二海堡が1.3万円/m2 となり平成に築造された大規模人工島と同程度の単価となっている.第三海堡は最も面積当たり単価が高くなっているが,水深が深い箇所に対応した施工機械がないこと,施工期間が長いこと,施工条件が厳しいことが原因と想定される.一日当たりの造成面積を試算したところ,明治期では20 m2/日以下であるが,現代の人工島築造は2000 m2/日程度と100倍以上も施工能力が向上し,着工から竣工までの施工期間が圧倒的に短縮されていることがわかる.造成される面積当たりの施工単価が現代と大きく変わらないのは,現代は大型機械を投入することで施工能力が大きくなり、施工期間を大幅に短縮することが可能であるが、その機械の設備費も比例して高くなることから施工単価的には変わらない.4.おわりに第二海堡は水深-12m の海上において,石材を用いた護岸構造により外周を築造し,内部を砂で埋立を行い,地盤の圧密沈下を図った後に構造物を建設した地盤構造物である.その技術は,護岸沈下量,地盤支持力の測定,海上建設技術など、その後の港湾建設技術に繋がる先駆的技術を採用したものであり,現在の海上構造物建設技術に影響を与えたと思われる案件である。台風などの被災や地震被害を受けながらも現在まで存在している構造物は,今後とも保存活用すべきものである.また,その技術力は尊敬すべきところであり,知見として今後の技術力向上の一助として記録保存したいと考えている.表-2 我が国の代表的な人工島の施工量第一海堡第二海堡第三海堡羽田D滑走路 関西空港Ⅱ期供用年明治20年明治32年明治40年平成22年平成18年工事期間着工~完成(人工島のみ)71ヶ月120ヶ月183ヶ月41ヶ月92ヶ月943711,55922,76490,580埋立一日あたり施工量(m3/日)1119122,0331,975埋立一日あたり施工面積(m2 /日)工事費(人工島のみ)億円1430946,000114,000造成面積2.3ha4.1ha2.6ha250ha545ha26,17412,95740,82624,00020,917面積当たり単価(円/m )埋立土(石材+土砂)20万m379万m3332万m33800万m325000万m3平均水深-3m-10m-39m-18m-19.5m中部空港平成17年51ヶ月33,9873,0726,500470ha13,8305200万m3-6m【参考文献】1)国土交通省東京湾口航路事務所,東京湾第三海堡建設史,2005.3) 浄法寺朝美:日本築城史,(株)原書房,中表紙,1971.12.3) 日本帝国海堡建築之方法及景況説明書,1906.10.3,米国公文書館( NARA)蔵40
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  • タイトル
  • 敦煌莫高窟第108窟における電気探査を用いた水分環境に関する研究
  • 著者
  • 伊藤三彩恵・小泉圭吾・小田和広・朴 春澤・谷本親伯・岩崎好規・楊 善龍・郭 青林
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 41〜42
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67663
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会21C - 02 (北九州)   2014 年 7 月敦煌莫高窟第 108 窟における電気探査を用いた水分環境に関する研究莫高窟 比抵抗水分環境大阪大学大学院学生会員○伊藤大阪大学大学院正会員小泉圭吾大阪大学大学院正会員小田和広ハイテック(株)1.三彩恵朴春澤国際高等研究所谷本親伯地域地盤環境研究所岩崎好規敦煌研究院楊善龍敦煌研究院郭青林はじめに乾燥気候に位置する世界遺産・中国敦煌莫高窟において,塩害による壁画の損傷・剥落が問題となっている.塩害とは,水分の蒸発により地盤の間隙水中に溶けていた塩類が壁面付近で固体となって析出する現象のことであり,地盤中の塩類は水分の移動によって運ばれる.つまり,塩害発生には地盤内の水分環境が密接に関係している.そこで本研究では,塩害発生メカニズムの一因を解明するため,石窟近傍における水分環境を把握することを目的とする.まず,塩害被害が顕著な第 108 窟において電気探査を実施し,比抵抗分布を得る.一方,室内実験では高湿度下における現地岩石の比抵抗特性を把握する.最後に室内実験の結果を用いて現地比抵抗分布を解釈することで,石窟近傍における水分環境を推定する.2.莫高窟の概要第 4 紀の砂礫層で構成される敦煌莫高窟は,古期扇状地堆積物を,南莫高窟崖面から流れる大泉河が浸食してできた崖面に,高さ 40m,南北 2km に渡っ5.0m植林て掘削された石窟群である.タクラマカン砂漠東部に位置し,典型的な上流側Line108sep1.3m10.4m砂漠性気候を示す.写真 1 に東正面南から見た莫高窟を示す.手前に大泉河,防砂のための植林が確認される.EntranceLine108feb大泉河写真111.3m北東正面から見た莫高窟全景図1108 窟測線位置0.0m3.108 窟内現地比抵抗測定0.4m塩害被害が顕著な 108 窟において電気探査を実施した.図10.8m1.2mに測線の位置を,表1に測線の概要を示す.崖背後地盤に面する1.6m西壁の同位置において,9 月と 2 月の二度,手動ウェンナ法を用2.4mいて測定した.また 2002 年に同位置にて測定した結果も,比較2.0m2.8m0.0m1.0m検討のため併記する.表12.0m3.0m4.0m図 2-(a)Line108sep図 2-(b)Line108feb5.0m6.0m31002900270025002300210019001700150013001100900700500300100108 窟測線概要測線名測線長高さ測定時期Line108sep6.2m1.3m2012 年 9 月Line108feb3.5m1.3m2013 年 2 月Line108-18.5m1.3m2002 年 6 月図 2 (a)~(c)に得られた比抵抗分布を示す.各測線はカラーコンターが統一されていないため,直接的に色で比較することはできないが,各測線とも壁面表層付近で比抵抗値が高く,深部程0.8m低い比抵抗値を示している.また,Line108sep では深度 0.6m 付1.4m近で,Line108-1 では深度 0.8m 付近で比抵抗値が急激に変化する境界が確認できる.Line108feb においても 2 測線ほど明確ではないが,深度 0.3m 付近において比抵抗値が変化している.既往Estimation of moisture condition using the electrical resistivity2.0m0.05m1005004.0m900図 2-(c)13006.0m1700 21008.0m2500 2900Line108-1ITO, Misae KOIZUMI, Keigo ODA, Kazuhiro Osaka Universityin Cave 108 at the Dunhuang Mogao Grottoes41 の研究 1)より,この比抵抗帯は砂礫層に含まれる塩と水分の影響によるものであると推測される.高湿度下における現地岩石の比抵抗特性4.3 章において確認された石窟近傍地盤深部の低比抵抗値は塩類と水分の存在を示唆しているが,窟内調査孔での観察などを考慮すると,水分が飽和Na2SO4溶液液水として存在することは考え難い.一方,石窟近傍地盤深部では NaClが潮解可能な高湿度を示すことが確認されている 2).そこで窟内比抵抗分布で確認された低比抵抗値が,どのような状況にあるのかを推定するため,高湿度下における現地岩石の比抵抗特性に関する室内実験を実施し現地岩石水た.岩石試料は石窟が掘削されている Q2 層砂礫岩を使用した.Na2SO4 飽和溶液で 93%以上の高湿度下に調湿した密閉容器内に,24 時間乾燥した温湿度センサー岩石試料を安置し,含水率と比抵抗を複数回測定した.写真 2 に実験の測定状況を,図 3 に含水率の測定結果を示す.岩石試料に液体としての水分は与えず,高湿度下に安置したが,日数が経過するにつれ含水率は上写真 2測定状況昇している.NaCl を含有する豊浦標準砂と含有しない豊浦標準砂を高湿度下に安置した実験では,豊浦標準砂のみの場合は質量増加が確認できなかったことから,砂礫による水分の吸湿は塩類による水分の吸湿と比較して極端に少ないことがわかっている.これらの結果より,高湿度環境において,岩石試料内の塩類が空気中の水蒸気を吸湿し,潮解が進んだことがわかった.図4に含水率と比抵抗の関係を表した測定結果を示す.岩 A・B において,同じ含水率で違う比抵抗値を示しているが,これは試料を採取した岩石ブロック内においても確認できた岩石的性質の違いによるものであると考えられる.乾燥側では極度に比抵抗値が高いためばらつきがあるが,含水率が上昇するにつれ,比抵抗値は低下している.このことから岩石試料内では潮解現象が発生していたと考えられる.以上より,液水としての水分供給が無い地盤内においても,高湿度環境下においては,含水率が上昇し,比抵抗値は低下することがわかった.このことから,現地比抵抗測定で確認された石窟近傍地盤深部の低比抵抗帯は潮解現象が発生し,水分が豊富な状態であったと推測される.180000.970000.8含水率 (%)0.60.5岩A0.4岩B0.30.2岩石比抵抗 (Ω・m)60000.750004000岩A岩B3000200010000.1000510152000.20.40.60.81含水率 (%)days(day)図 3 含水率の測定結果図4含水率と比抵抗の関係5. まとめ本研究では,石窟近傍地盤の水分環境を把握することを目的として,現地窟内比抵抗測定と室内実験を実施した.その結果,石窟近傍地盤深部は低比抵抗帯が広がっており,その範囲は地盤内の塩類が水蒸気を吸湿し液状に変化する潮解現象が発生している可能性が高いことがわかった.つまり,石窟近傍地盤の深部では,浅部と比較して豊富な水分が存在していると推定される.これは,地盤内が乾燥状態にあっても,高湿度環境下に在る奥地盤で潮解が発生することで, 潮解による液水が石窟壁面近傍に供給される可能性を示唆している.謝辞:本研究は JSPS 科研費(22254003)により行われた.ここに記して謝意を表す.参考文献1)Misae ITO, Keigo KOIZUMI, Kazuhiro ODA: Estimation of moisture condition with salinity in the ground behind theDunhuang Mogao Grottoes using the electrical resistivity method, Geotechnical Engineering for the Preservation ofMonuments and Historic Sites, 447-453, 2013, CRC Press2)谷本泰雄・谷本親伯・小泉圭吾・舛屋直:敦煌莫高窟における NaCl の潮解現象に関する研究,日本材料学会学術講演会講演論文集 55,133-134,200642
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  • タイトル
  • 敦煌莫高窟108窟西壁における塩の潮解と水蒸気移動の可能性に関する研究
  • 著者
  • 小田和広・小泉圭吾・伊藤三彩恵・朴 春澤・谷本親伯・岩崎好規・楊 善龍・郭 青林
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 43〜44
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67664
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会22D - 04 (北九州)   2014 年 7 月敦煌莫高窟 108 窟西壁における塩の潮解と水蒸気移動の可能性に関する研究莫高窟 潮解水蒸気大阪大学大学院正会員大阪大学大学院正会員大阪大学大学院学生会員○小田和広小泉圭吾伊藤ハイテック(株)1.三彩恵朴春澤国際高等研究所谷本親伯地域地盤環境研究所岩崎好規敦煌研究院楊善龍敦煌研究院郭青林はじめに中国敦煌莫高窟は崖面に掘削された石窟群内に壁画や塑像が保存されている世界遺産であり,典型的な乾燥気候に位置する.現在莫高窟では塩害による壁画の損傷・剥落が問題となっている.塩害とは,水分の蒸発により地盤の間隙水中に溶けていた塩類が壁面付近で固体となって析出する現象のことである.石窟内壁画において塩害が発生する場合は,地盤奥からの水分供給が必要であるが,窟内調査孔での観察などを考慮すると,水分が液水として存在することは考え難い.そこで本研究では,地盤内の温湿度変化や水蒸気移動により地盤内の塩類が潮解することで液水に変化する可能性を検討することを目的として,石窟内調査孔における温湿度測定や透湿計算,水蒸気移動に関する室内実験を実施した.これらの結果を合わせて解釈し,石窟周辺地盤の水分状態を推定する.2.108 窟調査孔内温湿度測定P7P7塩害被害が顕著な 108 窟西壁の調査孔において温湿度測定を実砂砾岩P2P6P3P5P4P4P5P3100010001200P6P2500700P1P1300施した.調査孔は石窟背後地盤方向に水平深度 4.7m に渡り掘削された掘削孔である.図1に調査孔内に設置した温湿度センサの位depth温湿度探头隔离物4.7m3.5m2.5m说明:图中尺寸均以毫米计置を示す.図1数据线1.5m調査孔内センサ(P1~P7)設置位置温度測定の結果,窟壁面付近においては窟内の室温に影響され1009080706050403020100て季節により変動がみられるが,水平深度が深くなるほど,その値は一定に近づく.水平深度 3.5m 以深は年間を通して 12℃~相対湿度 (%)13℃と,敦煌周辺の平均気温 11.1℃に近い値で安定している.湿度測定の結果,水平深度 1.5m 以深は年間を通して湿度 100%を示し,常に高湿度環境にあることがわかった.NaCl の潮解湿度である湿度 75%付近を詳細に見るため,図 2 に水平深度 1.5m 以浅の各月の各湿度における平均値を深度方向の分布で表したグラフを示す.深度 0m が石窟側,深度 1.5m が地盤奥側を示している.図 2数据记录仪0.8m 0.3m1月2月3月5月6月7月8月9月10月11月12月1.5 1.4 1.3 1.2 1.1 1 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0水平深度(m)より,湿度 75%を境界として湿度の値が上下するのは水平深度 0.35図 2 水平深度 1.5m 以深の孔内湿度分布m~0.8m の範囲であることが読み取れる.以上より,水平深度 0.35m 以深では地盤内の塩類が潮解発生可能な環境にあることがわかった.2.透湿計算式による水蒸気移動の検討乾燥状態にある地盤内において,潮解発生に必要である水蒸気の供給を検討するため,調査孔内温湿度測定で得られた 108 窟内と 108 窟近傍地盤内のデータを用いて,地盤奥と石窟間における水蒸気移動量を透湿計算式によって求める.(8 月)に最小値を示しており,年間を通して,石窟近傍の奥地盤Estimation of deliquescence of sodium chloride and water-vapor9/198/207/216/215/224/223/232/21f0:礫岩外側水蒸気圧 (hPa)図 3 に算出結果を示す.移動量は冬季(1 月)に最大値を,夏季1/22K’:湿気貫流率 (g/(m ・h・hPa))fi:礫岩内側水蒸気圧 (hPa)12/23211/23w=K’(fi-f0) f…式(1)w:水蒸気移動量 (g/ m2・h)9/24で得られた 22.042 を用いた.0.50.450.40.350.30.250.20.150.10.05010/24湿気貫流抵抗の和の逆数であり,本研究では過去の研究2)水蒸気移動量(g/㎡・h)式(1)に透湿計算式を示す 1).湿気貫流率 K’は複数の構成材料中の図 3 石窟壁面周辺・水平方向の水蒸気移動量ODA, Kazuhiro KOIZUMI, Keigo ITO, Misae Osaka Universitymovement from the west wall of Cave No.108 in theDunhuang Mogao Grottoes43 から窟内方向への水蒸気移動が存在することがわかる.これは石窟近傍地盤に,年間を通して奥地盤からの水蒸気の供給があることを示唆しており,石窟近傍地盤内に存在する塩類が高湿度下によって潮解している場合,水蒸気移動が塩類の吸湿を促進している可能性が考えられる.4.水蒸気圧差による水蒸気移動透湿計算式によると,温度と湿度によって決まる水蒸気圧の勾配によって水蒸気が移動する.実際に水蒸気圧差を与えた際にこの原理が再現され,潮解が発生するのかを調べるため室内実験を実施した.供試体両端を,奥地盤の気象と石窟内の気象を模擬した容器で挟み,供試体内の状況を観測することで,石窟近傍地盤における水蒸気移動とその影響を推定する.ここで意味する模擬とは,それぞれの現地気象や地盤特性を再現しているわけではなく,奥地盤と窟内の水蒸気圧の関係性を模擬することを意味する.図 4 に供試体とセンサ配置を表した模式図を示す.地盤内を模擬した円筒型の供試体は豊浦標準砂で作成し,供試体内に NaCl 層を配置した.供試体内では,温湿度と電気伝導度を測定する.電気伝導度は比抵抗の逆数で電気の流れやすさを表す値である.模擬奥地盤側の容器内は,温度は断熱材で変動を抑え,湿度は飽和 Na2SO4 溶液と水を用いて容器内の湿度が 93%以上の状態を保つようにした.模擬窟内側は,恒温槽を用いて温度は 0~2℃で設定し,湿度は 30%以下の状態を保った.図 5 に供試体内の湿度の時間変化を示す.供試体は乾燥状態の試料を充填したので低湿度から開始している.時間経過とともに徐々に上昇し,奥地盤側の 65cm 地点では開始 6 日後に NaCl の潮解湿度である 75%を超えたが,窟内地盤側の 40cm 地点では湿度 55%程度までの上昇にとどまった.電気伝導度は各 NaCl 層で測定したが,60cm 地点以外は 0(mS/cm)から値は変化せず,乾燥状態の NaCl が絶縁体であるため,深度 20cm,40cm では NaCl の吸湿が無かったことを示している.60cm 地点は実験開始 7 日後に反応し,その後段階的に 0.03(mS/cm)まで上昇した.実験開始 6 日後に深度 60cm において湿度が 75%を上回ったことと併せて考慮すると,60cm 地点で潮解が始まったことによる塩層の電気伝導率の上昇を捉えたものと推測できる.65cm(HOBO1)図 4 供試体とセンサ配置1/312/2912/2412/1912/1412/970cm(模擬奥地盤)12/4:センサ40cm(HOBO2)11/29NaCl層0cm(模擬窟内)11/2460 50 40100908070605040302010011/19模擬奥地盤0 (cm)30 20 10模擬窟内相対湿度 (%)70図 5 供試体湿度写真1に実験終了後に供試体を解体し観察したところ 60cm 地点で確認された 2.5cm 程度の塊状の塩を示す.供試体は 60cm 地点側を上にして作成したので締め固めの影響によるものではなく,60cm 地点で水蒸気の吸湿が発生していたことを表していると考えられる.以上より,高水蒸気圧側に近いほど供試体内の湿度は上昇し,水蒸気圧勾配による水蒸気移動が確認できた.また湿度上昇に伴い,高水蒸気圧側の塩層では潮解が発生していたことが電気伝導度値と供試体の解体によって示唆された.5.写真1塊状の塩の様子まとめ0.8m本研究では,地盤内の温湿度変化や水蒸気移動により地盤内の塩類が潮解することで液水に変化する可能性を検討することを目的として,石窟調査孔内温湿度測定0.3m~0.8mや透湿計算,水蒸気移動に関する室内実験を実施した.その結果,石窟近傍地盤は潮解可能な範囲が広がっており,潮解時に必要である水蒸気が年間を通して奥地盤潮解潮解せず側から供給されていることがわかった.また,水蒸気圧勾配により湿度が変化し,潮解が発生することが室内実験によって実証された.図 6 に本研究結果から考えられる石窟周辺地盤の水分状態の概略図を示す.以上より,地盤内が乾燥状態にあっても,高湿度環境にある奥地盤では潮解が発生しており,潮解による液水が石窟壁石窟壁面潮解の進行度合が変化図 6 水分状態概略図面近傍に供給される可能性が考えられる.謝辞:本研究は JSPS 科研費(22254003)により行われた.ここに記して謝意を表す参考文献1) 田中俊六・武田仁・足立哲夫・土屋喬雄:最新建築環境工学(改定版),pp.225-228,井上書院2) 谷本泰雄・谷本親伯・小泉圭吾・舛屋直:敦煌莫高窟における NaCl の潮解現象に関する研究,日本材料学会学術講演会講演論文集 55,133-134,200644
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  • タイトル
  • マチュピチュ遺跡「太陽の神殿」の修復保存 -II-
  • 著者
  • 小野 勇・西浦忠輝・柴田英明・西形達明
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 45〜46
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67665
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会23A - 02 (北九州)   2014 年 7 月マチュピチュ遺跡「太陽の神殿」の修復保存岩修復遺跡−Ⅱ−国士舘大学正会員勇国士舘大学○小野西浦忠輝国士舘大学国際会員柴田英明関西大学正会員西形達明1.まえがき本調査は、昨年からの継続であり、2 年目の結果を報告するものである。マチュピチュ遺跡は、全体が世界遺産に指定されており、修復保存には細心の注意を払って行う必要がある。石組みの修復を検討する場合、個々の石を外して隙間なく組み直すことが最善のように考えられるが、隙間があっての遺跡であるとの考え方もできる。また、欠損した部分がある石を原石から削りだして入れ替えることが許容されることなのか、判断が難しいところでもある。ハイラム・ビンガムが 1911 年に発見し、大木を伐採した直後の状況を写真 1 に示す。写真はクスコのカサ・コンチャ・マチュピチュ博物館所蔵のもので、多少の植物が付着しているが現在と概ね同様である。上部の石組は、窓の写真 1発見当初の太陽の神殿部分も欠落等がなく、目地も大きく発生している部分は見受けられない。ただし、最上部の 2 段には植物が繁茂し、石組みが見えず著しく風化が進行していることが確認できる。写真 2 に「太陽の神殿」の内側を示す。写真からも上部の石組みの風化が著しいことが確認できる。この上部 2段の石組みがそれ以下の石組みの風化を食い止めており、目地の拡張や表面の剥離はさほど認められない。岩の亀裂は、内部で伐採した樹木を焼却したときに生じたものと言われているが、それが原因だとするならば、石の表面が剥離することが考えられるが、それほどでもなく、他の要因による可能性も考えられる。2.太陽の神殿内部の露岩調査太陽の神殿内部の露岩は、マチュピチュ遺跡の中で最も神聖で重要な場所であるといわれているが、大規模な亀裂写真 2太陽の神殿の内側が入っており、下の部屋への漏水がある。写真 3 に露岩を示す。亀裂は数本入っており、幅の広いところは 5cm 程度開口している。この漏水を食い止めるために亀裂の修復を行うこととなり、亀裂に挿入されていた粘土を取り除き調査を行った。亀裂に挿入されていた粘土は、人為的に挿入されたもので、遺跡付近の粘土と石灰を練り合わせ、締め固めながら挿入したものである。この亀裂は、樹木の根が進入することにより拡大したと考えられるが、現在、植物の根らしき物質は確認できず、腐植土が亀裂の奥深くまで入り込んでいる。修復は、亀裂内の遺物を除去した後に接着剤を塗布し強固に貼り合わせることが最善の方法と考えられる。この作業を行うためには、岩を上げなければならず、大がかりな装置を必要とするため、作業は次回以降に行うこととした。Restoration of the Sun Temple in Machu Picchu ruins.写真 3太陽の神殿の内部の露岩I.Ono. T.Nishiura & H.Shibata (Kokushikan University)45 3.写真測量による神殿の変形調査太陽の神殿は、明らかに建造当初に比べ変形している。変形の要因は、地震や地滑りが考えられるが、大規模な現象ではない。遺跡全体を見ると、谷側へ変形している遺構がほとんどであり、太陽の神殿の遺構も同様である。石組みは、岩塊に載っており、この岩塊が何らかの要因により動いたと考えられる。岩塊には節理が見受けられることから、長い年月の間に移動したものと思われる。移動量と方向を推測するために、3D 写真測量により隙間を計測し、考写真 4察を行った。対象とした石組みの写真測量結果を写真 4 に示す。石組みは、太陽の神殿の北側に位置する壁で、長軸が谷側に向いている。完成当初は、石組に隙間が無かったものと考え12345られ、現在に至る間に何らかの原因で生じたものである。6石組みの隙間の合計量を計測し、壁全体がどのように変形7しているかを推測する。3D画像上の隙間に、隙間と同じ幅の線を引き、各石段の隙間幅を算出する。図 1 に隙間を写真測量結果8910抽出した結果を示す。線の幅は、隙間の幅に相当し、数値図1化した結果を表 1 に示す。隙間の位置と幅は、石組みの段毎に異なっているが、各段の隙間を加算することにより表1壁全体の変形状態を把握する。石組みの段を地盤からの石組みの隙間図石組みの隙間数値高さに換算し縦軸に、隙間の合計を横軸にグラフ化したものを図 2 に示す。図より、上段に比べ下段の隙間量が大きいことが分かる。このことは、計測した壁の変形が谷方向に傾くのではなく、引き伸ばされるように変形していることを示している。各石段の水平目地が傾斜していないことからもこの変形状態を確認することができる。前述したように、神殿は巨大な岩塊の上に構築されており、地滑りや地震により岩塊とともに移動している可能性がある。今回計測から明らかになった変位形状は、構築後約 500 年間での変形であり、変形が時間に比例している250とすれば、今後長期的にみると大規模な崩壊も懸念される。200この対策としては、数年に一度、遺跡の変形形状を追跡調4.まとめ遺跡の調査は、修復保存の方向性を検討するための資料を得ることが目的である。細部測量やスキャニング、写真測量等により現状を記録する事は十分可能であることが確高さ(cm)査することが有効と思われる。15010050認でき、計測で留意すべき事項を踏まえ、今後、より詳細な現状の記録を行う。詳細な記録を行うことにより、劣化の進行状況を把握することが可能である。特に、「太陽の神殿」を構成する石組みのひび割れ進行状況は、放置しておけば崩壊につながる可能性があり、継続観測を行う必要00246810ひび割れ幅(cm)図2石組みの高さと隙間量がある。今後の調査は、「太陽の神殿」全体の詳細なスキャニングを行い、全体模型を作成する。石組の隙間が拡大している懸念があるが、石組を外して組み直すことは不可能である。従って、現状の隙間が拡大しないように対応を検討する。石組みの劣化を進行させないようにするためには、含浸性の凝固剤を塗布することが考えられるが、現状を変化させないようにすることが重要であり、最適な修復方法を今後検討する。本研究は、科学研究費助成事業「ペルー共和国マチュピチュ遺跡建造物遺構の保存修復に関する調査研究」研究課題番号:24404001 代表者:西浦 忠輝 2012 年度の助成を受けて行ったものである。46
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  • タイトル
  • 地盤関連 ISO の審議状況と地盤工学会におけるISO 活動-平成25年度-
  • 著者
  • 今村 聡・浅田素之
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 47〜48
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67666
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会24A - 01 (北九州)   2014 年 7 月地盤関連 ISO の審議状況と地盤工学会における ISO 活動-平成 25 年度-国際規格ISO 地盤工学地盤工学会ISO 国内委員会委員長 今村 聡幹事長 浅田 素之1.ISO とはISO (International Organization for Standardization) とは,国際標準化機構と呼ばれる国際間の貿易が円滑に行われるために設立された国際組織であり,国際規格を統括している機関である.1947 年に設立された非政府組織で,中央事務局はスイスのジュネーブに置かれている.「ISO in figures」によれば,2013 年 12 月末の会員数は 164 ヶ国,ISO 規格の制定数は 19977 件で,年々増加傾向にある.そのうち 27.3%が Engineering Technologies に関する規格になっている .ISO の会員団体は,「当該国での標準化に関して最も代表的な」国家機関であり,各国あたり1団体のみしか登録できない.わが国では,経済産業省の審議会の一つであり,日本工業規格(JIS)の調査・審議を行っている日本工業標準調査会(JISC,事務局:経産省産業技術環境局基準認証政策課)が 1952 年 4 月 15 日の閣議了解を経て ISO に加入している.JISC には分野別に専門技術委員会が設置されているが,すべての規格案件を詳細にわたって審議するのは不可能であることから,ISO に設置されている TC(技術委員会,Technical Committee)に密接に関連する国内の学協会に実質的な審議および対応を委託しており,担当団体は国内審議団体として経済産業省に登録されている.したがって,国内審議団体における決定事項は直接的に日本の意見となる.土木建設分野としては、現在日本土木工業協会を始めとする約 10 学協会がその審議団体となっている.ISO や ISO 規格が,わが国において特に議論されるようになってきたのは,1995 年に我が国が WTO(世界貿易機構,World Trade Organization)の「TBT 協定」(貿易の技術的障害に関する協定,Agreement of Technical Barriers to Trade)および翌年の「政府調達に関する協定」に批准してからである.TBT 協定では,「加盟国が強制規格又は任意規格を策定するにあたり,国際規格を基礎とすること」が義務づけられている.さらに,政府調達に関する協定では,「政府機関(中央政府,都道府県,政令指定都市および政府系機関等)における技術仕様(例えば,道路橋示方書や鉄道構造物等設計標準など)については,国内規格より国際規格を優先使用すること」が義務づけられている.すなわち,政府機関の発注書や仕様書に指定された規格・基準と該当する ISO 規格との間に整合性がなければ,国際入札の際に,WTO/TBT 協定違反として提訴される可能性がある.このような背景から,1995 年以降,5000 以上の JIS(日本工業規格)について,ISO 規格との整合化が図られている.2.地盤工学における ISO地盤工学は,土や岩および流体からなる地盤の工学的諸問題を扱う学問・技術分野であり,土質・基礎工学に加えて,岩盤工学,環境地盤工学,海洋地盤工学,地盤防災工学など地盤に関連する広範囲の学問と技術を対象にしている.したがって,地盤分野に関連する ISO は,土木工学,岩盤工学,地質学,農業土木工学,資源工学,建築学,環境衛生工学,自然災害科学など広範囲の分野にまたがる学際的に取り扱われる国際標準となる.言うまでもなく,地盤工学会は,土木学会,建築学会,農業土木学会,岩の力学連合会,国際ジオシンセティックス学会,地下水学会,廃棄物学会,全国地質業連合会,土壌環境センターなどの学協会,あるいは国・地方自治体の関連機関などに所属している会員から構成されており,広範囲の分野にまたがる学際的な団体である.したがって,地盤工学会が地盤分野の ISO に関する国内審議団体となっていることは,ISO 規格案を審議する際に必要となる国内的に横断的な幅広い意見聴取および意見調整が可能となり,地盤関連 ISO 国際会議の出席者は,日本の意見として公式に提案することが可能となっている地盤工学に関連する ISO/TC としては,TC182(地盤工学,Geotechnics),TC190(地盤環境,Soil quality),TC221(ジオシンセティックス,Geosynthetics)の3つがあり,地盤工学会はこれらの国内審議団体として登録されている.なお,地盤工学会の ISO への参加地位は,新作業項目への投票及び国際規格の照会原案や最終国際規格案に対する投票の義務を負って,業務に積極的に参加し,また可能な限り,会議に参加する義務を有する「P メンバー」として登録されている.3.地盤工学会における ISO 活動の現状地盤工学会 ISO 国内委員会の構成メンバーを表-1に示す.ISO 国内委員会の作業と役割は,国際対応と国内対応に分かれる.国際対応としては,1)ISO・CEN 規格案の検討・審議の取りまとめ,2)コメント提出に対する国内意見の集約,3)ISO・CEN 会議参加者(代表者)の調整および支援,4)提案される国際規格案や日本提案の国際規格策定に関する戦略の企画・立案・実行などが挙げられる.また,国内対応としては,1)日本工業標準調査会や規格協会との協調および配布Action Report of JGS ISO CommitteeIMAMURA, Satoshi & ASADA, MotoyukiJGS ISO Committee47 される各種調査票に対する対応,2)関連学協会,関連機関との調整・情報交換,3)地盤工学会における ISO 活動の基本戦略の立案と基準部会への提案,4)地盤工学関連 JIS および JGS の英訳に対する優先付け,5)会員への迅速な情報提供(地盤工学会誌「ISO だより」の執筆など),6)活動資金となる受託事業の要請などが挙げられる.平成 25 年度の国際会議派遣状況を表-2に示す.参加会議数は 11 回で,のべ 20 名の委員を派遣した.我が国がコンビナー(議長)となっている TC190/SC3(化学的手法と土の特性)/WG10 (予備試験法)では,日本提案の理解と協力を得るために各国へのネゴシエーションとして,重点的に海外派遣を行っている.表-3は,平成 24 年 1 月~12 月に各 TC で審議された規格案数である.なお,TC182 の規格案は,CEN リードのウィーン協定適用の提案が承認され,すべての案件が CEN/TC341 で審議されていることを付記する.表-1 ISO 国内専門委員会の名簿(50 音順)委員長:今村 聡(大成建設)委 員:大谷 順(熊本大学),菊池喜昭(港湾空港技術研究所),岸田 潔(京都大学),木幡行宏(室蘭工大),坂井宏行(鉄道総合技術研究所),豊田浩史(長岡技術科学大),原 隆史(岐阜大学),牧角 修(国土交通省),松井謙二(土木研究所),松浦一樹(ダイヤコンサルタント),宮田喜壽(防大),横山幸也(応用地質)幹 事:浅田素之(清水建設)表-2平成 25 年度の国際会議派遣状況会議名年/月派遣国派遣数CEN/TC 341/WG 6 会議2013/4オランダ2ISO/TC 190/SC 3 連絡会議2013/4ドイツ1CEN/TC 292 および CEN/TC 345 年次総会2013/5イギリス1ISO/TC 190/SC 3 連絡会議2013/6スイス1油分向け比濁検出法の認証試験実施2013/7韓国1油分向け比濁検出法の認証試験実施2013/8フランス1油分向け比濁検出法の認証試験実施(再試験)2013/8韓国1第 28 回 ISO/TC190 年次総会2013/9日本(福岡)10CEN/TC 341/WG 6 会議2013/11スペイン1油分向け比濁検出法の認証試験実施(再試験)2013/11フランス・オランダ1ISO/TC221/WG2,3,4,5,6 会議と総会2013/11イタリア1国際連合食糧農業機構「土壌監視」会議2013/12イタリア2ISO/TC 190/SC 3 連絡会議2014/1ドイツ・フランス1ISO/TC 190/SC 3/WG 10-WG 11 合同会議2014/1韓国1クロム(VI)向けテスト・キッツ検出法の認証試験実施2014/1イギリス1ISO/TC 190/SC 3 連絡会議2014/1ドイツ1ISO/TC 190/AHG-Climate change 会議2014/2オランダ24.まとめ“国際化”ということばが言われてかなりの年月が経つが,ISO の活動は正に技術者に不可欠な”国際化”と言える.今後建設産業を輸出産業とし,わが国の技術力を,アジアをはじめとする全世界へ提案していくことは,関連学協会において不可欠であると考える.わが国の建設技術の品質は世界でもトップレベルにあると確信しており,そのような技術を世界に提供することこそ,本当の意味でのわが国の国際貢献ではないであろうか.そのためには技術力に加え,国際的なコミュニケーション能力も不可欠となる.今後そのような人材を産官学が連携して育成することはたいへん重要であると考える.また,ISO は技術者が主役である.今後多くの方にご参画いただくと共に,協働いただけることをお願いしたい.48表-3 平成 25 年度の検討規格案件数(2013.1~2013.12)( )は昨年の数字規格および規格TC182TC190TC221案の審議段階NWI5 (0)10 (12)0 (5)WD0 (0)0 (0)0 (0)CD0 (0)4 (11)0 (0)DIS3 (0)13 (10)4 (0)DTS0 (0)0 (0)0 (0)FDIS2 (10)7 (13)0 (2)SR1 (1)11 (8)7 (3)2 (0)3 (2)1 (2)その他13(11)48(56)12(12)合計NWIP:提案段階,WD:作業原案,CD:委員会原案,DIS:照会原案,FDIS:最終規格案,DTR:技術報告書原案,DTS:技術仕様書原案,SR:IS の見直し
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  • タイトル
  • 室内土質試験方法の国際規格審議状況-平成25 年度-
  • 著者
  • 豊田浩史・吉嶺充俊
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 49〜50
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67667
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会25A - 08 (北九州)   2014 年 7 月室内土質試験方法の国際規格審議状況-平成 25 年度-ISO 規格室内試験土質試験長岡技術科学大学国際会員○豊田浩史首都大学東京国際会員吉嶺充俊1. はじめにCEN/TC341/WG6(Laboratory tests on soils:室内土質試験)の会議が平成 21 年度からはじまり,平成 25 年度は,第 9回会議が平成 25 年 4 月 24, 25,26 日にデルフト(オランダ)にある Deltares(Geo Delft が水理関係の研究所と組織統合してできた研究所)において,第 10 回会議が平成 25 年 11 月 4, 5, 6 日にマドリッド(スペイン)にある Cedex(公共工事研究試験センター)において開催された。会議タイトルからわかるように,ここでは CEN(欧州標準化委員会)が国際規格の策定作業を行うことになっている。これは,本件が ISO/TC182/SC1 での投票で CEN リードのウィーン協定適用となったためである。メンバーは,議長国であるイギリス,ベルギー,フィンランド,フランス,ドイツ,ギリシャ,オランダ,ノルウェー,ポルトガル,スイス,スウェーデン,スペインの欧州各国と,日本である.議長国のイギリスからはオブザーバーも含め計 4 名のメンバーが登録されている。USA をはじめとする環太平洋諸国が参加していないので,日本は ISO からの正式オブザーバーという立場から積極的に意見を発して,欧州のみの考え方に偏った国際規格にならないよう努力が必要である。ここで議論する規格は,表-1 に示す 12 の ISO/TS(Technical specification)である。表には,対応する JIS 規格および JGS 基準も併せて示してある。この ISO/TS は,2004 年に策定されており,正式なISO 規格に至る前の状態である。ISO/TS の採用判断は各国に任されているため,現時点で拘束力は発生しないものの,いつ ISO 規格になっても,我が国への影響がないように対策を進めておく必要がある。2. 会議の進め方現在の ISO/TS 17892-1~12(表-1 参照)に対して,所定の様式による意見の作成が求められている。作業してみるとわかるが,我が国の規格・基準にすべて一致させることは不可能であり,我が国にとって影響が大きい,または,我が国の方法および考え方のほうが優れていると考えられることを中心に,意見書を作成する方針としている。また,どちらが優れているかは不明であっても,できるだけ我が国の記述例を紹介できるように努めている。我が国の規格・基準を紹介するに当たって,口頭で説明するだけでなく,英語版の規格・基準を配布できれば大変有効である。しかしながら,JIS および JGS の英語版のほとんどは,かなり古い時期に作られてから全く改正作業が行われていなかった。そこで室内試験規格・基準委員会においては,英語版についても最新の規格・基準と対応するよう,整備する作業に取り組んでいるところである。写真-1 に会議の様子を示す。3. 議論の内容各国の基準整備の状況によると,独自の基準を持っていない国も多いようである。日本はここで取り扱うほとんどのISO/TS について独自の基準を持っていることと,現在の案について 8 割方賛成できるものの,強く変更を望むところも数ヶ所あることを説明している(その一つは,細粒分の粒径の定義)。今年度は,投票で各国から出てきた意見の調整(土の湿潤密度の測定),投票に出すための最終確認(土粒子密度の測定,土の粒度測定),新規に検討した規格(非圧密非排水三軸試験,アッタ-ベルグ限界の測定)において検討を行ったので,その代表的なものを紹介する。3.1 投票で各国から出てきた意見の調整(1) 土の湿潤密度の測定・提出された意見より,土の密度は,bulk density と記述するようにする。・wax で土を被うとしていたが,wax 以外の材料を使うこともあるとの意見があり,コーティング材という用語を使うこととした。・測定精度を 0.02mm としていたが,厳しすぎると意見があり,0.1mm とした。・液体の温度も測定して,密度を算出することとした。また,水の温度による密度の変化表を参考につける。3.2 投票に出すための最終確認(1) 土粒子密度の測定・ここで用いる温度計の精度を,0.1°C とした。これは,土粒子密度は他の試験でも使う重要な値となるため,高い精度を求めた。・50ml のピクノメータでは粒径 4mm 以下の土を試験できるとし,それ以上の粒径は大きなピクノメータを使う。4mmを超える粒子を砕いて,50ml のピクノメータで試験を行うこともあるようである。(2) 土の粒度測定・浮ひょうの最小目盛りが,0.0005g/ml と日本の 0.001g/ml より小さくなっている。Council status for ISO Standardization of Laboratory tests onTOYOTA Hirofumi (Nagaoka University of Technology)soils -2013-YOSHIMINE Mitsutoshi (Tokyo Metropolitan University)49 ・浮ひょうの読み時間が,0.5, 1, 2 分となっていたので(日本の,1, 2, 5 分と合っていない),5 分間に 3 回読むという表記にした。3.3 新規に検討した規格(1) 非圧密非排水三軸試験・粘性土を対象とし,本試験では,間隙水圧の測定は行わない。・試験前にメンブレンに吸水させるため,一晩水につけておく。・供試体高さは直径の 1.85 倍~2.25 倍とし,試験できる最大粒径は,直径の 1/6 とした。・セル圧をどの程度まで上げるか議論となった。供試体内のサクションがなくなるまで上昇させる,せん断強さが一定となる(すなわち,φ=0)まで上昇させるなどの意見があったが,本規格には記述しないこととした。・せん断速度は,各国の規格を参考に,0.3%/min~2%/min とした。・初期飽和度も報告事項に含めることとした(日本の基準には無い)。(2) アッタ-ベルグ限界の測定・フランスの規格では,硬質ゴム台が木製であるなど,国によって違いが見られるため,キャサグランデ法 A,キャサグランデ法 B のようにして,何種類か記述することとした。・Fugro(議長(イギリス)の所属の会社)から,各国の規格 ASTM,BS,NS,DIN などのキャサグランデ法から求めた液性限界の値と BS のフォールコーン法による液性限界の値が示された。液性限界の平均値は,どの手法を用いてもほぼ同じ値になる。しかし,試験結果のばらつきが小さいのはフォールコーン法であるとの結果である。・黄銅皿の質量を規定し,また,硬質ゴム台では,硬さだけでなく,反ぱつ弾性による規定も行うこととした。日本の規格には,影響は小さいということで反ぱつ弾性の内容は記述されていない。・試料準備の段階では,試料に水を混ぜたときは 4 時間,高塑性土に関しては 24 時間待つこととした。また,高塑性土や残積土では,試験開始前に 40 分の練り混ぜが必要とした。・液性限界試験で,試料の溝が 10mm 以上接触したときの落下回数を記録するとした。なお,注記には,各国の基準は10mm~15mm の範囲で規定されているとの記述を追加した。これは,ヨーロッパ各国は 10mm であったが,日本は約1.5cm であったことよりこの記述を配慮して頂いた。今後,10mm と 15mm との結果の違いについて,詳細な調査を行う必要がありそうである。・流動曲線は,多点法(基本は 4 点)を基本とし,対象土に対してキャリブレーションなどを行った結果があれば,1点法の使用も認めることとした。・コーン先端(質量/コーン角度)は,2 種類(80g/30 度,60g/60 度)において規定する(日本は,60g/60 度を使用している)。・ヨーロッパではコーン(60g/60 度)貫入量 10mm に相当する含水比を液性限界としているが,日本の JGS 基準では,JIS 法の液性限界試験との相関がよいとの理由で,11.5mm としている。この値や JIS 法の液性限界試験が,国際的に通用するのか今後慎重に確認する必要があると思われた。・液性限界の値の他に,流動曲線を求めた個々の試験値を報告することは,これらを報告していない国が複数あったため任意とした(日本では報告している)。・溝切りゲージの寸法を入れた図を掲載する。なお,2 種類のタイプ(日本でも使われている,溝の深さをそろえる両翼があるタイプと両翼がなく溝切り部がカーブしているタイプ)を掲載する。以上が,今年度に行われた主な議論である。欠席の国の意見は,主張がよくわからないということで,軽くあしらわれるきらいがある。このような会議にはできるだけ出席して,日本にとって齟齬のない規格となるよう主張していくことの重要性を実感している。表-1CEN/TC341/WG6 で取り扱う規格写真-150議論の様子
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  • タイトル
  • ISO/TC190(地盤環境)の審議状況-2013年度-
  • 著者
  • 浅田素之・中島 誠・和田信一郎
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 51〜52
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67668
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会26A - 01 (北九州)   2014 年 7 月ISO/TC190(地盤環境)の審議状況-2013 年度-清水建設ISO国際会員○浅田素之九州大学大学院技術研究所国際会員和田信一郎国際環境ソリューションズ国際会員中島誠1. はじめにISO/TC190 委員会(Soil Quality:地盤環境)は、土壌汚染の基準および ISO/TC182 で扱われる土木工学に関するものは除く、地盤環境分野における分類、用語の定義、土のサンプリング、土の特性の測定と報告などに関する標準化を進めている。地盤工学会は ISO/TC190 の国内審議団体であり、国内専門委員会を設置し 1999 年の総会から本格的に参加している。多くの専門家の協力により、メールベースで規格案の検討・審議の取りまとめ、コメント提出に対する国内意見の集約、会議参加者の調整および支援、提案される国際規格案や日本提案の国際規格策定に関する戦略の企画・立案・実行を行っている。2013 年 9 月には、2005 年の東京大会に続く、日本がホストする 2 回目の年次総会を、九州大学で実施し、13 か国から 70 名の専門家が集まった。日本から、経済産業省、土壌環境センターの支援を受け、23 名の方に参加いただいた。SC3WG10(地盤環境のスクリーニング)については、2007 年から特別に国内委員会を設け、精力的に活動を行っている。2012 年には日本発の規格案がはじめて ISO 化され、2013 年 3 月には、第 2 弾の蛍光 X 線に関する規格も ISO 化され、テストキッツ検出法(6 価クロム対象)は技術レポートとして発効予定となっている。ここでは、2013 年度の審議状況を中心に報告する。2. 審議概要ISO/TC190 には 7 つの分科会(subcommittee; SC)が設けられ、SC6 以外の SC が活動中である。表1分科会SC1SC2SC3SC4SC5SC6(解散)SC7TC190 の SC(分科会)分科会名Evaluation of criteria, terminology and codification (評価基準、用語、コード化)Sampling(サンプリングー地盤環境調査用のサンプリング)Chemical methods and soil characteristics (化学的方法と土の特性)Biological methods (生物学的方法)Physical methods (物理学的方法)Radiological method (放射線的方法)Soil and site assessment (土および現地評価)ISO/TC190 総会は、前述の通り、2013 年 9 月に、福岡の九州大学で開催された。参加国は 13 カ国、総勢 70 名が参加した。日本から、ISO/TC190 国内専門委員会などから 23 名の委員が参加した。SC1 では、SC1/WG1(語彙)、SC1/WG3(データコード化とマネジメント)の会議が開かれた。SC2 では、SC2/WG10(サンプリングの一般的側面の詳述)の会議が開かれた。SC3 では、SC3/WG1(微量元素)、SC3/WG4(シアン)、SC3/WG6(有機汚染)、SC3/WG10(スクリーニング)、SC3/WG11(爆発物)、SC3/WG13(酸性硫酸塩土壌)の会議が開催された。SC 4 では、SC4/WG2(土壌動物)、SC4/WG3(土壌植物)、SC4/WG4(微生物)の 3 つの会議が開かれた。SC7 では、SC7/WG3(生物分解)、SC7/WG4(人への暴露)、SC7/WG6(溶出試験)、SC7/WG8(バイオアベイラビリティ)、SC7/WG10(土壌からの地下水への影響)の会議が開催された。TC 190 では現在 138 の案件を処理している。SC7WG12 (Sustainable remediation) は、今回欠席の WG コンビーナーPaulNatherail からの文書が紹介された。NWI は 11 月末の提案を目指して非公式の会議で準備中とのことであった。WD としてオープンにすべきとの意見が出されたが、基本的にコンビーナーの裁量とすることで整理された。2013report on JGS/ISO/TC190 committee;Motoyuki Asada (Institute of Technology, Shimizu Corporation)Shinichiro Wada (Kyusyu University)Makoto Nakashima (Kokusai Environmental Solutions)51 SC2 では、日本からは、ISO 18400-102 “Selection and application of sampling techniques”について、過去に、Direct push(打撃貫入法)を追記するよう要望を出していた。N189 の WD の段階で、日本の要望に沿うかたちで”Direct push”、”Openpiston sampler”、”Closed piston samplers”等が本文中の表に加えられている。適用性について、地盤工学会基準 JGS1912:2004 を引用するかたちで整理されたために、深さ 20m までと記載されていたが、他の方法も含めて表中のスペックが絶対ということではないことを明記することとなり、20m 以深に適用できる表現に変更されることとなった。土壌ガス採取やストックパイルからの土壌採取については、通常の土壌の採取と同じフレームワークで扱うには無理があるのでないかという議論があった。気候変動に関する AHG(アドホック;特定目的グループ)からの報告では、コンビーナである R. Comans から、AHGの活動に関する紹介とそれに引き続く議論があった。この AHG は,TC 190 内部における気候変動に関係する規格化活動の間の調整を図ることと、TC 190 がこの分野で活動できることを対外的に認知してもらうことを目的に設立された。グループでは主として炭素および窒素サイクルに注目して、すでに TC 190 で作成した規格の一覧や、それが気候変動にどのように関係するのかを記述した論文を作成する予定である。AHG は日本から提案されている炭素含量測定法や水分含量測定法を支持することとなった。SC3/WG10(スクリーニング)について3.SC3WG10(地盤環境のスクリーニング)については、2007 年から特別に国内検討委員会を設け、精力的に活動を行っており、2012 年には日本発の規格案がはじめて ISO 化されるなど、順調に審議が進んでいる。ケイ光 X 線検出法以降の各 ISO/TC190 で、汚染化学種のスクリーニング技術の規格化事業を創設したのは日本であるが、この技術群の一般論としてのガイドラインやここで使用される各論的な種々の技術で日本が保有するものの提案とその審議を進めている。地盤環境におけるスクリーニング方法の一つとしてケイ光 X 線検出法を提案したことに端を発しているが、スクリーニング方法自体が地盤環境分野で初めての規格群となるため、ケイ光 X 線検出法を含むスクリーニング諸法の概念を構築することも必要となった。このため、ケイ光 X 線検出法を提案する前に、スクリーニング方法一般に関するガイドライン(予備試験一般に関する指針)を日本案として提案した。なお、2014 年 3 月現在で、日本から提案した規格案は以下の通り 4 件ある。そのほか、有機炭素向け燃焼式赤外検知法、水分向けショ糖抽出/糖度検出法、爆薬の RDX 向けテスト・キッツ検出法を新規規格案として準備中である。(1)予備試験一般に関する指針(ガイドライン)ISO12404 として発効(2011/12 月)(2) ケイ光 X 線検出法(重金属対象)ISO13196 として発効(2013/3 月)(3)比濁検出法(油分対象)CD(Committee Draft;委員会原案)投票中(4)テストキッツ検出法(6 価クロム対象)TR(Technical Report;技術レポート)として発効予定4.おわりにSC3WG10(地盤環境のスクリーニング)については、2007 年から特別に国内検討委員会を設け、精力的に活動を行っており、2013 年には日本発の第二弾となるケイ光 X 線検出法規格案が ISO 化され、テストキッツ検出法(6 価クロム対象)は TR として発効予定されるなど、順調に審議が進んでいる。SC2/WG10 に代表される既存 ISO 規格をアンブレラ構造の新規格へ移行させる動きへの対応のほか、SC 7 に WG(WG12)が新設されることとなったサステイナブルレメディエーションなどのような新たなコンサルティング的なテーマへの動きも活発化する可能性があることから、日本としての対応方針をどうするかという戦略がますます重要になってくる。謝辞ISO/TC190 の内容は多岐にわたっており、地盤工学会のみで対応するには限界がある。(一社)土壌環境センターの技術委員会内に ISO/TC190 部会(部会長;鹿島建設川端淳一氏)を設け、SC2、SC7 については地盤工学会と協力して対応いただいている。また、経済産業省、土木学会、日本建設業連合会に ISO の意義をご理解いただき、支援いただいているおかげで、本活動が成り立っている。経済産業省、土壌環境センターに後援いただき、2013 年 9 月 16 日から 20日に、第 28 回 TC190 年次総会を九州大学(福岡)で開催した。13 カ国から総勢 70 名が参加し、成功裡に終了し、日本のプレゼンスを大いに示すことができた。ここに記して、関係各位に謝意を表します。52
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  • タイトル
  • ISO/TC221国内専門委員会活動報告 -ジオシンセティックス関連規格に関する現状と今後の展開-
  • 著者
  • 椋木俊文・宮田喜壽
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 53〜54
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67669
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会27M - 09 (北九州)   2014 年 7 月ISO/TC221 国内専門委員会活動報告-ジオシンセティックス関連規格に関する現状と今後の展開-国際規格ジオシンセティックスISO / TC221 国内専門委員会地盤工学会委員長 宮田 喜壽幹 事 椋木 俊文ジオシンセティックス技術に関する国際規格の現状と TC221 の現状2004 年におけるジオテキスタイルおよびその関連製品の年間貿易数値は,北米 50 億 m2(輸出 10%),欧州 40 億m2(輸出 50%),アジア 15 億 m2(輸入 30%),その他 20 億 m2(輸入 40%)となっており,全体で既に 100 億 m2 を超えている。すわなち,欧州では生産量の半分が輸出という状況にあり,アジアにおける貿易数値も急速に伸びている。また GCL を含むジオメンブレン製品については、輸出入の割合は把握できていないが、北米 6 千万 m2、欧州 4 千万m2(輸出 50%),アジア 1 千万 m2(輸入 30%),その他 1 千5百万 m2(輸入 40%)となっている。TC221 はジオシンセティック製品の標準化を制定する技術委員会であり,5つのワーキンググループがある.活動は,毎年 1 回の全体会議開催の他,個別の WG が開催されている.JGS では表1に示す委員会を設置し,これに対応している.TC221 で規格済みの試験法,現在審議中の規格をそれぞれ表2,3に示す.1表1ISO/TC221 国内専門委員会の名簿(50 音順)委員長:宮田喜壽(防大),委 員:赤井智幸(大阪府産技研),大谷 順(熊大),加納 光(坂井化学工業),熊谷浩二(八戸工大),木幡行宏(室蘭工大),志々目正高(ボルクレイ・ジャパン),篠田昌弘(鉄道総研),島岡隆行(九大),中村 努(苫小牧工専),長束 勇(島根大),鍋島康之(明石高専),平井貴雄(三井化学産資),巻内勝彦(日大),桝尾孝之(太陽工業),明嵐政司(土研),横田善弘(前田工繊),幹事:椋木俊文(熊大)表2ISO TC/221関連の規格(2014年3月現在, *は2012-2013に改訂)規格番号対象*規格名【和訳】ISO 9862:2005GSSampling and preparation of test specimens【試験供試体のサンプリングと作製】ISO 9863-1:2012*GSDetermination of thickness at specified pressures Part 1:Single layers【所定圧下の厚さの測定第1部: 単層】ISO 9863-2:1996GT&RPDetermination of thickness at specified pressures Part 2: Procedure for determination of thickness of singlelayers of multilayer products【所定圧下の厚さの測定第2部: 複層製品における単層厚さの評価法】ISO 9864:2005GT&RPTest method for the determination of mass per unit area of geotextiles and geotextile-related products【単位面積当たりの質量の測定】ISO 10318-1:2012*GSTerms and definitions【用語と定義】ISO 10318-2:2012*GSSymbols and Pictograms【記号と凡例】ISO 10319:1993*GTXWide-width tensile test【広幅引張り試験】ISO 10320:2012*GT&RPIdentification on site【現場における確認事項】ISO 10321:1992GTXTensile test for joints/seams by wide-width method【継ぎ目/縫い目に対する広幅引張り試験】ISO 10722: 2007GT&RPIndex test procedure for the evaluation of mechanical damage under repeated loading -- Damage caused bygranular material【繰り返し載荷条件下での力学的損傷の評価法に関するインデックス試験:粒状材料による損傷】ISO 10769: 2011*GCBISO 10772: 2012GTXISO 10773: 2011*GCBISO 10776: 2012GT&RPISO 11058:2010GT&RPISO 12236:2006GSStatic puncture test (CBR test)【 静的貫入試験(CBR法)】ISO 12956:2010GT&RPISO 12957-1:2005GSDetermination of the characteristic opening size【見掛けの開口径の測定】Determination of friction characteristics Part 1: Direct shear test【摩擦特性の測定第1部: 直接せん断試験】ISO 12957-2:2005*GSDetermination of friction characteristics Part 2: Inclined plane test【摩擦特性の測定第2部: 傾斜試験】ISO 12958:2010GT&RPDetermination of water flow capacity in their plane【面内方向通水性能の測定】ISO/TR 12960:1998GT&RPScreening test method for determining the resistance to liquids【液体に対する安定性評価のためのスクリーニング試験】Determination of water absorption of bentonite【ベントナイトの含水量測定法】Test method for the determination of the filtration behaviour of geotextiles under turbulent water flowconditions【乱流条件下における不織布のフィルター挙動評価のための試験法】Determination of permeability to gases【ガス透過性の評価】Determination of water permeability characteristics normal to the plane under load【拘束圧条件での垂直透水性能の評価】Determination of water permeability characteristics normal to the plane, without load【無載荷での垂直方向透水性能の測定】Action Report of JGS Technical Committee for ISO/TC221MIYATA, Yoshihisa & MUKUNOKI, ToshifumiJGS Technical Committee for ISO/TC22153 ISO 13426-1:2003GT&RPStrength of internal structural junctions Part1: Geocells【剥離強度 第1部: ジオセル】ISO 13426-2:2005GT&RPStrength of internal structural junctions Part 2: Geocomposites【剥離強度 第2部: ジオコンポジット】ISO 13427:1998*GT&RPAbrasion damage simulation (sliding block test)【磨耗シミュレーション(ブロックすべり試験)】ISO 13428:2005GSDetermination of the protection efficiency of a geosynthetic against impact damage【衝撃に対するジオシンセティックスの防護能力の測定】ISO 13431:1999GT&RPDetermination of tensile creep and creep rupture behaviour【引張りクリープ及びクリープ破壊特性の測定】ISO 13433:2006GT&RPDynamic perforation test (cone drop test)【動的貫入試験(コーン落下試験)】ISO/TS 13434:2008*GSGuidelines for the assessment of durability【耐久性評価のためのガイドライン】ISO 13437:1998GT&RPMethod for installing and extracting samples in soil, and testing specimens in laboratory【土中,室内試験の供試体中への供試体の敷設と取出し方法】ISO 13438:2004*GT&RPScreening test method for determining the resistance to oxidation【酸化抵抗性に対する予備試験方法】Procedure for simulating damage under interlocking-concrete-block pavement by the roller compactormethod【ローラコンパクタ法によるインターロッキングブロック舗装下の損傷試験】Guidelines for the determination of the long-term strength of geosynthetics for soil reinforcement【地盤補ISO/TR 20432:2007GS強材として用いられるジオシンセティックスの長期強度の評価に関するガイドライン】Determination of compression behaviour -- Part 1: Compressive creep properties【圧縮挙動の評価:第1ISO 25619-1:2008GS編 圧縮クリープ挙動の評価】Determination of compression behaviour -- Part 2: Determination of short-term compression behaviour【圧ISO 25619-2:2008*GS縮挙動の評価:第2編 短期圧縮挙動の評価】(対象:GS=Geossynthetics, GT&RP=Geosynthetics and related products, GTX=geotextiles, GCB: Geosynthetic clay barriers)ISO/TS 19708:2007GS表3現在審議中の主な規格規格番号ISO/AWI TR18228-1 to 10ISO/CD 18325対象*規格名Design using Geosynthetics【ジオシンセティックスの設計】GSISO/NPGSISO/NPGT&RPIndex test method for the determination of discharge capacity of prefabricated vertical drains【人工鉛直排水材の流出量評価のためのインデックス試験】The use of electrically conductive geosynthetics in leak detection surveys【漏水検知調査のためのジオシンセティックスの電気伝導度の使用】Selection of Techniques for Electrical Detection of Potential Leak Paths in Geomembrane Liner Systems【ジオメンブレン遮水工における潜在漏水経路の電気検地のための技術選択】2現在の審議状況WG2 では,ISO 10318-1&2,ISO 9863 の内容改定が,WG3 では,ISO 10319 と ISO 25619-2 の内容改定が議論された.WG4 では,鉛直ドレーン材を波状に変形させた状態で長期の排水性能を調べる試験法について議論がなされた.WG5 では,ISO 13438,EN 14030 & ISO TR 12960 の改定作業を始めることになった.WG6 は 2012 年 12 月のバンコク会議で承認され正式発足し,平成 25 年 5 月のロンドン会議を経て,イタリアにて 2 回目の会議が開催された.WG の目標とする成果について再議論が行われた.技術仕様書(TS)の可能性も議論したうえで,改めて TR を目指すことになり,策定のためのスケジュールが確認された.安定化(Stabilisation)と耐候性については,活発な議論がなされており、前者については,ジオシンセティックスが舗装分野で多用され,その周辺技術の標準化の必要性が高まっていること,また後者については,ジオシンセティックスの新しいマーケットが中東のように厳しい気候条件にあることが背景にある.総会は,平成 25 年 11 月 25 日~27 日にイタリア・ミラノのイタリア規格協会において開催された.そこには,仏:4,英:5,ベルギー:2 ルクセンブルグ:1,独:2,伊:5,韓国:1,米:3,南アフリカ:1,日本:2,トルコ:1,カナダ:1,議長と ISO 事務局 3 が出席した.上記の内容に関する審議以外では.ASTM(米国規格協会),IGS(国際ジオシンセティックス学会)の連絡委員を正式に委員会内に置くことについて話し合われ,各組織に意見を照会することになった.次回以降の会議は,WG2:未定,WG3:来年 4 月にイタリア・ジェノバノ,WG4~6:来年 5 月にロンドン,総会:国際ジオシンセティックス会議が開催されるベルリンで開催する方向で調整されている.3我が国と諸外国との連携状況ジオシンセティックスに関する学術的な団体として,国際ジオシンセティックス学会(International Geosynthetics Society,IGS)がある。2000 年に設立された ISO/TC221 において,議長,幹事,コンビナーは,すべて IGS の理事メンバーもしくはそのコアメンバーから構成されている.ISO/TC221 における審議は,欧州(EN)と米国(ASTM)が主導的に進めているが,対立というより協同的に作業が進められている.最近,規格化のスピードが速まっており,乗り遅れないためにも今後も積極的な活動が必要である.<参考文献>ISO/TC221(ジオシンセティックス)2013 会議,地盤工学会誌 5 月号, 2014 年(予定).54
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  • タイトル
  • モード解析による地盤の非線形性を考慮した地盤変位分布の算定方法
  • 著者
  • 井澤 淳・宇佐美敦浩・上田恭平・室野剛隆
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 55〜56
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67670
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会28D - 07 (北九州)   2014 年 7 月モード解析による地盤の非線形性を考慮した地盤変位分布の算定方法キーワード耐震設計(公財)鉄道総合技術研究所地盤種別地盤の非線形性国際会員 ○井澤淳正会員宇佐美敦浩正会員上田恭平正会員室野剛隆1.はじめに杭基礎を始めとする深い基礎や開削トンネルなどの地中構造物の地震時挙動は、周辺地盤の変形に大きく影響を受けるため、地盤変位の影響を適切に評価して設計する必要がある。このような場合、主に応答変位法を用いた設計を行うことが多く、地盤変位分布を適切に算定する必要があるが、鉄道構造物等設計標準 耐震設計1)(以降、耐震標準)ではモード解析による手法により比較的容易に地盤変位分布を算出出来るようにしている。しかしながら、L2 地震動のような強地震動を考慮するような場合、地盤は顕著な非線形性を示すため、初期せん断弾性波速度 Vs を用いたモード解析による方法では強震動作用時の地盤変位を精度よく算定できない可能性がある。したがって、逐次非線形動的解析を実施するなどして、地盤の非線形性を考慮した地盤変位分布を求める必要があるが、設計実務上は煩雑となる。そこで、本稿では簡便に地盤の非線形性を考慮した地盤変位分布の算定手法について検討を行った。2.地盤の非線形性を考慮したモード解析手法2)現在、耐震標準に示すモード解析による地盤変位の鉛直方向分布の算定では、まず地盤のせん断弾性係数 G(=Vs0を用いて、地表面最大変位量を 1 とした固有振動モードを求める。一方、地表面最大変位量は、耐震標準に示す地盤の固有周期 Tg と標準 L2 地震動に対する地表面最大変位 ag の関係式 1)により算出する。最終的に、地表面最大変位量を 1とした固有振動モードに地表面最大変位を乗じることで、地盤の水平変位の鉛直方向分布および各層のひずみ分布を求めることが可能である。ここで ag の算定式は地盤の非線形性に GHE-S モデル 2)を用いた L2 地震動に対する地盤の逐次非線形動的解析結果の統計的処理から求めたものであり、ひずみレベルに依存した地盤の非線形性を考慮したものである。それに対して、固有振動モードは初期せん断剛性 G0 を使って求めたものであり、ひずみレベルに依存した地盤の非線形性を考慮できていない。すなわち、モード解析に用いたせん断弾性係数と、モード解析の結果として得られる各層のせん断ひずみレベルに対応したせん断剛性が整合していないことにもなる。そこで、ひずみレベルに依存した地盤の非線形性を考慮した地盤の水平変位の鉛直方向分布をモード解析により算定出来るよう、以下に示す手順で地盤変位を算出する手法を検討した(図 1)。①初期せん断弾性係数 G0(=Guse:計算に用いるせん断剛性)を用いた固有振動モードと地表面最大変位量 ag から地盤変位の鉛直方向分布、および各層のせん断ひずみを算出する。(通常のモード解析と同様)②各層の地盤の非線形性、すなわち G-関係を設定しておき、せん断ひずみcal に対応するせん断弾性係数 Gcor(モード解析の結果得られる地盤のひずみに対応したせん断剛性)を求める。なお、各層の G-関係については地盤材料G0:初期せん断弾性係数NoGuse :モード解析に用いるせん断弾性係数Gcor :ひずみレベルを考慮したせん断弾性係数cal :計算から得られる各層のせん断ひずみGcorの更新GG第1層G0agGcalG0第2層calG0第3層calcalGuse第1層第2層calGcorcal第3層G0agGuseG0G第1層GcoragGcorG0第1層Yes④収束判定cal第2層GcorGuse第2層Guse第3層GGusecalG第3層calGcorcalGuse第1層Guse第2層Guse第3層GcorGuseGuse=Gcorcalcal各層のG-関係各層のG-関係①通常のモード解析 ②ひずみレベルに応じた③モード解析の再実施およびひずみレベルにせん断弾性係数Gcorの算出応じたせん断弾性係数Gcorの算出Guse=G0⑤地盤の非線形性を考慮した変位分布図 1 ひずみレベルに依存した地盤の非線形性を考慮した地盤変位分布の算定方法Evaluation for ground displacement due to earthquakes inconsideration of soil non-linearity with mode analysesJun IZAWA, Atsuhiro USAMI, Kyohei Ueda, Yoshitaka MURONO,Railway Technical Research Institute55 試験等から求めるのが望ましいが、3.で後述するように簡易に設定することも可能である。③②で求めたせん断弾性係数 Gcor を Guse としてモード解析を再度行い、得られた固有振動モードと①で求めた地面最大変位量 ag から地盤変位の鉛直方向分布と各層のせん断ひずみcal およびそれに対応するせん断剛性 Gcor を再度求める。③で用いたせん断弾性係数 Guse と結果として求まるせん断弾性係数 Gcor の比がある閾値に収束するまで、③~④④を繰り返し行う。3.試計算2.で示した手法の妥当性を評価するため、耐震標準で規定されている G2~G7 地盤に該当する 60 個の実地盤について、GHE-S モデル 2)を用いた 1 次元の逐次非線形動的解析(以降、動的解析)から得られる地表面と基盤との層間変位最大時の変位分布等と、従来から用いているモード解析(以降、通常モード解析)、本稿で検討する地盤の非線形性を考慮したモード解析(以降、詳細モード解析)の結果を比較した。動的解析と詳細モード解析で用いる G-関係は、耐震標準に示す GHE-S モデルの標準パラメータ 2)と安田・山口式 3)から推定した0.5 を用いて設定した。なお、詳細モード解析における収束判定の閾値は(Gcor/Guse)/Guse<0.01 とした。G3~G6 地盤に該当する典型的なケースの比較結果を図2(a)~(d)に示す。ここで、変位分布形状の比較を優先し、地表面最大変位量は動的解析結果と一致させた。すべてのケースにおいて、通常モード解析では、動的解析結果に見られる非線形性が顕著で地盤変位が急増するような箇所が評価できていないことがわかる。一方、詳細モード解析により、動的解析結果とかなり整合した地盤変位分布やその時生じているせん断ひずみを算定できていることが確認できた。その他の地盤についても、同様の傾向を算定できることを確認している。4. まとめ本稿では、地震時の地盤変位分布をモード解析を用いて求める際に、G-関係を設定して繰返し計算を行うことにより、簡易に地盤の非線形性を考慮する手法を提案した。本手法により、地盤の動的解析とほぼ同等の変位分布が算出可能となり、応答変位法を用いて深い基礎や地下構造物の設計などにおける地盤変位の設定に有効であると考えられる。しかしながら、本手法に必要な情報が揃えば、動的解析の実施も可能であるため、より簡便に非線形性を考慮した手法についても検討を行っている 4)。参考文献:1)(公財)鉄道総合技術研究所,鉄道構造物等設計標準・同解説 耐震設計,2012.2) 野上雄太,室野剛隆:S 字型履歴曲線を有する土の非線形モデルとその標準パラメータの設定,第 30 回土木学会地震工学研究発表会論文集, 2009. 3) 安田進,山口勇:種々の不撹乱土における動的変形特性,第 20 回土質工学研究発表会,1985. 4)宇佐美ら:地盤の非線形性を考慮した耐震設計に用いる地盤種別の分類方法、第 49 回地盤工学研究発表会、2014.基準ひずみ0,5Vs(m/s)002030400 0せん断ひずみ0.002 0.004 0水平変位 (mm)0.025 0.05 0基準ひずみ0,5Vs(m/s)20000200400 0砂質土10粘性砂質土0.04水平変位 (mm)0.08 0200モード解析 従来法詳細法動的解析初期値収束値40砂質土粘性砂質20粘性砂質30岩盤粘性岩盤モード解析 従来法詳細法動的解析初期値収束値40(a)G3 地盤(Tg=0.427)基準ひずみ0,5Vs(m/s)00せん断ひずみ0.002 0.004 0粘性深度 (m)深度 (m)10200200400 00.002 0.004 0せん断ひずみ(b)G4 地盤(Tg=0.579)水平変位 (mm)0.05 0200基準ひずみ0,5Vs(m/s)40000200400 00.002 0.004 0せん断ひずみ0.050.1水平変位 (mm)0粘性土1010砂質砂質30粘性土40砂質土5020深度 (m)深度 (m)20粘性土40岩盤50初期値収束値60砂質30モード解析 従来法詳細法動的解析粘性土砂質粘性岩盤60(c)G5 地盤(Tg=0.862)初期値収束値モード解析 従来法詳細法動的解析(d)G6 地盤(Tg=1.076)図 2 動的解析およびモード解析(従来法、詳細法)から得られる地盤変位分布56200 400 600
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  • タイトル
  • 地盤種別分類における地盤の非線形性の影響に関する検討
  • 著者
  • 宇佐美敦浩・井澤 淳・上田恭平・室野剛隆
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 57〜58
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67671
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会29E - 08 (北九州)   2014 年 7 月地盤種別分類における地盤の非線形性の影響に関する検討キーワード加速度応答スペクトル(公財)鉄道総合技術研究所耐震設計地盤種別正会員○宇佐美敦浩国際会員井澤淳正会員上田恭平正会員室野剛隆1.はじめに鉄道構造物等設計標準 耐震設計(以降、耐震標準)1)では、構造物の位置する地盤を固有周期 Tg を用いて G0~G7の 8 つの地盤種別に分類し、それに応じた地表面設計地震動の弾性加速度応答スペクトルを用意している。これはいくつかの地盤に対する逐次非線形動的解析を実施して得られる地表面での弾性加速度応答スペクトル群を包絡するように設定しているが、解析から得られるスペクトル群はある程度の幅を有している。また、L2 地震動のような大震度の地震動を想定した場合に地盤は強い非線形性を示すため、特に非線形の影響が大きい軟弱地盤などではスペクトル群の幅が大きくなり Tg のみを用いて地盤種別を分類することが困難になる。そこで、地盤の非線形性を考慮したより合理的な地盤種別の分類方法について検討を行い、軟弱地盤に該当する G5、G6 地盤について試計算を実施した。2.軟弱地盤の地盤種別分類に用いる指標の検討地盤種別の判定に用いる地盤の固有周期 Tg は、1/4 波長則によるかモード解析によって求める。本稿では、モード解析を利用して、地盤の非線形性を簡易に考慮できる地盤種別の分類方法を検討した。なお、これまでの設計標準との整合性、連続性を考慮し、Tg を用いた地盤種別分類は変更せず、G0~G7 の各種別内でさらに細分化する方針とした。(1) 地盤の非線形性を考慮したモード解析による手法軟弱地盤の地震時挙動は、軟弱層の非線形性に大きく影響を受けるため、地盤の非線形性を考慮した指標を用いて地盤種別を分類する必要がある。井澤ら 2)はモード解析を利用して地盤の非線形性を簡易に考慮出来る地盤変位分布算定手法(以降、詳細モード解析)を提案し、逐次非線形動的解析と同程度の変位分布が算定可能であることを確認している。この手法において求まる収束剛性(または収束 Vs)は地盤の非線形性を考慮して求まった値であるため、この収束剛性を用いて算出した地盤の固有周期は非線形性を考慮した地盤の固有周期(以降、Tg’)と考えることができる。そこで、約 20 個の G5 および G6 地盤について Tg’を算定し、Tg’の値毎にそれぞれ 4 つに細分類した結果を図 1 に示す。なお、地盤の非線形性を表す G-関係は耐震標準に示す GHE-S モデルの標準パラメータ 3)と安田・山口式 4)から推定した0.5 を用いて設定した。これから分かるように、地盤の初期剛性のみを考慮したこれまでの地盤種別の分類では応答スペクトルの幅が大きく見られるが、詳細モード解析を実施し、収束剛性を用いて地盤種別を分類することで詳細に細分類できる可能性があることが見て取れる。(2) 地盤の応答性状を簡易に評価する手法(1)で示した詳細モード解析から求まる Tg’による細分類方法は、地盤の非線形性を代表する G-γ 関係を設定する必要がある。耐震標準では GHE-S モデルの標準パラメータ 3)を用意しており、比較的容易に G-γ 関係を設定可能としているが、動的解析を実施出来る程度の情報を必要とする。そこで、通常のモード解析に必要となる情報と同程度の情報量で、地盤種別の細分類化が可能な手法を検討した。詳細モード解析による手法では、地盤変位分布を精度よく算定できるため、その時点での地盤剛性(収束剛性)を用いることで地盤の非線形性を考慮した地盤種別の細分類化が可能であったと考えられる。ここで、地盤の密度g/cm3とせん断弾性波速度 Vs(m/s)との積であるインピーダンスを考えた場合、インピーダンスの小さい層では地震波が透過すると変形が大きくなる。したがって、インピーダンス自体には地盤の非線形性は加味されていないが、地震時に生じる地盤変位分布には影響を与えると予想される。そこで、以下の手順で対象地盤中のインピーダンス分布を考慮して地盤の変位分布および地盤の固有周期を求めた。① 対象地盤の各層のインピーダンスを求め、インピーダンスが最大となる層とのインピーダンス比の分布を求める。② ①で求めたインピーダンス比を初期せん断弾性波速度 Vs に乗じて、インピーダンス分布を考慮したせん断弾性波速度 Vsimp の分布を求める。なお、地盤自体の剛性低下を考慮し、今回は Vsimp を更に 0.8 倍した。③ ②で求めた Vsimp 分布を用いてモード解析を行い、地盤変位分布および地盤の固有周期 Tgimp を求めるG5 および G6 地盤に該当する地盤に対して本手法を適用して得られた地盤変位分布や用いた Vs 等を、通常および詳細モード解析結果と合わせて図 2 に示す。インピーダンス分布を考慮した Vsimp 分布は、詳細モード解析から得られる収束 Vs と若干の差はあるものの、剛性低下の傾向はある程度再現出来ていることが分かる。また、その結果として得られる地盤変位分布は、詳細モード解析結果と非常に良く一致している。詳細モード解析から得られる地盤変位は動的解析結果とよく一致することが確認できているため 2)、Vsimp を用いたモード解析によって、通常のモード解析と同じパラメータのみで動的解析とほぼ同等の変位分布を算定可能であると言える。これは、インピーダンス自体には地盤のEffect of soil non-linearity on ground classificationfor seismic design of railway structuresAtsuhiro USAMI, Jun IZAWA, Kyohei Ueda, Yoshitaka MURONO,Railway Technical Research Institute57 非線形性は含まれていないものの、剛性と強度にある程度の相関があることに起因すると考えられる。一方、Vsimp を用いたモード解析から得られる地盤の固有周期 Tgimp を Tg、Tg’と共に表 1 にまとめた。また、Tgimp を用いて図 1 と同様に地盤種別を細分類化した結果を図 3 に示す。これより、Tgimp を用いた場合、Tg’による分類と比較して細分類化の精度が低いことが分かる。これは Vsimp 分布と収束 Vs 分布の微妙な差がモード解析における固有値の算出に顕著に表れたためと考えられる。ただし、地盤変位は同等に算出でき表 1 各モード解析から得られる固有周期(1)G5 地盤(Tg=0.75~1.0sec)(2)G6 地盤(Tg=1.0~1.5sec)No.34353637383940414243444546Tg0.770.800.830.860.860.870.900.910.920.930.930.980.98Tg'2.5632.9672.2992.6912.0132.0823.2152.4502.2462.8612.9824.2273.291Tgimp2.0824.8842.4252.8492.4433.1392.6491.8362.4113.0053.2104.7202.772No.47484950515253545556Tg1.031.021.081.211.221.261.281.391.461.46Tg'2.8453.1404.2815.7764.5534.6103.7653.8894.7524.752Tgimp2.6553.7704.6384.4815.3933.8843.3923.2594.5074.520青字:細分類 1 橙字:細分類 2赤字:細分類 3 緑字:細分類 4るため、インピーダンス比分布の考え方を修正することで有効な手法になると考えている。3. まとめ本稿では、表層地盤のインピーダンス分布を非常に簡易に考慮した地盤種別の判定方法について検討した。本手法では地盤変位分布を精度よく算定可能であることから、修正を行い、設計への適用を検討したいと考えている。参考文献: 1)(公財)鉄道総合技術研究所、鉄道構造物等設計標準・同解説 耐震設計、2012. 2) 井澤ら、モード解析による地盤の非線形性を考慮した地盤変位分布の算定方法、第 49 回地盤工学研究発表会、2014. 3) 野上雄太,室野剛隆:S 字型履歴曲線を有する土の非線形モデルとその標準パラメータの設定,第 30 回土木学会地震工学研究発表会論文集, 2009. 4) 安田進,山口勇:種々の不撹乱土における動的変形特性,第 20 回土質工学研究発表会,1985.5000G5-1 Tg'=~2.0secG5-2 Tg'=2.0~2.5secG5-3 Tg'=2.5~3.0secG5-4 Tg'=3.0sec~応答加速度 (gal)応答加速度 (gal)500010005001001000500G5地盤(Tg=0.75~1.0sec)500.10.51周期 (sec.)G6-1 Tg'=~3.0secG6-2 Tg'=3.0~4.0secG6-3 Tg'=4.0~5.0secG6-4 Tg'=5.0sec~100G6地盤(Tg=1.0~1.5sec)0.515周期 (sec.)500.15図 1 詳細モード解析から得られる収束剛性を用いた Tg’による細分類の例(G5 および G6 地盤)Vs(m/s)002003密度(g/cm )400 0123最大インピーダンス水平変位 (mm)との比00.51 0 200 400 600Vs(m/s)粘性土30粘性土40砂質土50密度(g/cm3)400 0123最大インピーダンス水平変位 (mm)との比00.51 0 200 400 600粘性土砂質20砂質3040粘性土砂質粘性岩盤50岩盤6060初期Vs詳細モード解析の収束VsVsimp通常モード解析結果詳細モード解析結果Vsimpを用いた通常モード解析初期Vs詳細モード解析の収束VsVsimp通常モード解析結果詳細モード解析結果Vsimpを用いた通常モード解析(1)G5 地盤の 1 例(No.39)(2)G6 地盤の 1 例(No.49)図 2 Vs_imp を用いたモード解析と通常・詳細モード解析結果との比較5000Tgimp=~2.0secTgimp=2.0~2.5secTgimp=2.5~3.0secTgimp=3.0sec~応答加速度 (gal)5000応答加速度 (gal)深度 (m)2020010砂質深度 (m)10001000500100500.10.51周期 (sec.)1000500100G5地盤(Tg=0.75~1.0sec)500.15G6-1 Tgimp=~3.0secG6-2 Tgimp=3.0~4.0secG6-3 Tgimp=4.0~5.0secG6-4 Tgimp=5.0sec~G6地盤(Tg=1.0~1.5sec)0.515周期 (sec.)図 3 Vsimp を用いて求めた地盤の固有周期 Tgimp による細分類の例(G5 および G6 地盤58
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  • タイトル
  • 液状化抵抗率と過剰間隙水圧比の関係に関する解析的検討
  • 著者
  • 上田恭平・井澤 淳・室野剛隆
  • 出版
  • 第49回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 59〜60
  • 発行
  • 2014/06/20
  • 文書ID
  • 67672
  • 内容
  • 第 49 回地盤工学研究発表会30D - 07 (北九州)   2014 年 7 月液状化抵抗率と過剰間隙水圧比の関係に関する解析的検討液状化抵抗率過剰間隙水圧比耐震設計鉄道総合技術研究所正会員○上田 恭平国際会員井澤正会員室野 剛隆淳1.はじめに鉄道・道路等の設計基準に採用されている液状化判定法として液状化抵抗率 FL による方法(FL 法)がある.鉄道構造物等設計標準・同解説 耐震設計1)(これ以降,耐震標準)によれば,液状化地盤中の構造物の設計においては,液状化判定を FL 法により行い,得られた FL に応じて設定される地盤諸数値の低減係数 DE により地盤ばね(地盤反力係数等)の低減を行っている.他方,より詳細な液状化判定法として有効応力解析による方法があり,この方法では過剰間隙水圧の上昇量を直接的に評価できるという利点がある.一般に有効応力解析はパラメータ設定等が煩雑で設計実務ではあまり用いられないが,自由地盤を模擬した 1 次元の土柱モデルに限れば,構造物を含めた 2,3 次元の有効応力解析よりは比較的容易に解析可能である.もし有効応力解析で評価された自由地盤の過剰間隙水圧比 Lu を上記の DE に反映されることができれば,液状化程度(=Lu)の時間的変化に応じて,これまでよりも精緻に液状化地盤中の構造物の設計が可能になると考えられる.耐震標準では DE は FL の関数として与えられるので,Lu を基に DE を設定するためには FLと Lu の関係が必要である.この関係は耐震標準(図 5 の紫線)や共同溝設計指針 2)に示されてはいるが,十分に検討がされているとは言い難い.本稿では,有効応力解析により繰返しせん断応力比を変化させた要素シミュレーションを多数実施し,FL 値と過剰間隙水圧比 Lu の関係を算定した.また,その関係に及ぼす密度等の影響について考察を行った.τ2.要素シミュレーションによる検討方法要素シミュレーションの模式図を図 1 に示す.1 要素の有限要素モデルに対して,室内土質試験を模擬して等方圧密を行った後,繰返しせん断力を作用させた.本検討では,相対密度が 40, 60, 80%の豊浦砂を対象にしたシミュレーションを実施することとし,図 2 に示す豊浦砂の液状化強度曲線(液状化判定基準は両振幅軸ひずみ DA=5%)を再現するよう地(a) 等方圧密盤のモデルパラメータを決定した.なお,地盤の構成モデルは,実務でも比較的よく用いられているひずみ空間多重せん断モデル を採用した.図1ここで,液状化抵抗率 FL は液状化強度比 R(本検討では,R として繰0.5返し回数が 20 回における液状化強度比 R20 を採用)と地震時最大せん断応力比 L の比として求められるので 1),図 1 で L=R となるような振幅の繰返しせん断力を 20 回作用させれば,対象としている土要素はFL=1 の状態に相当することになる.一方, FL>1(FL 法における非液状化)や FL<1(FL 法における液状化)の状態は,安田ら 4)の方法に従い,繰返し回数は 20 回に固定した上で,それぞれ L<R,L>R となるように繰返しせん断力の振幅を調整して(図 3)要素シミュレーションを繰り返し応力振幅比 τ/σc'3)(b) 繰返しせん断要素シミュレーションのイメージDr=40%Dr=60%Dr=80%0.40.30.20.10実行することで評価した.0.11101001000繰り返し載荷回数 N図23.液状化抵抗率と過剰間隙水圧比の関係要素シミュレーションの結果の一例として,相対密度 60%の豊浦砂に対する検討結果を図 4 に示す.図中の青破線は液状化判定基準としての軸ひずみ豊浦砂の液状化強度曲線τFL<1.0(L>R)DA=5%(せん断ひずみ片振幅で 3.75%)を,赤破線は繰返し回数 20 回のライFL=1.0(L=R)ンを示す.図 4(a)に示す FL>1(L<R)の条件では,繰返し回数 20 回においてFL>1.0(L<R)せん断ひずみ,過剰間隙水圧比ともにほぼ上昇せず(Lu=0.05 程度),繰返し回数が 100 回程度でひずみが DA=5%に至り Lu も 0.9 程度まで上昇している.他方 FL=1(L=R)の条件(図 4(b))では,図 2 の液状化強度曲線が示す通り,繰返し回数 20 回で DA=5%となり液状化に至っている.Lu の時刻歴を見ると,せん断ひずみが大きくなるにつれて正のダイレイタンシーが顕著になり水圧比が増減する傾向にあるが,繰返し回数 20 回までの Lu の最大値を読み取れば,20回図 3要素シミュレーションにおけるFL 値の調整方法Analytical study on the relationship between liquefaction resistanceKyohei UEDA, Jun IZAWA, Yoshitaka MURONOfactor and excess pore water pressure ratioRailway Technical Research Institute59 概ね 0.85 となっている.最後に図 4(c)に示す FL<1(L>R)の条件では,数回の繰返しで DA=5%に至るとともに,水圧比も大きく上昇している.正のダイレイタンシーの効果は図 4(b)よりも顕著であり,繰返し回数が 20 回までの Lu の最0.40.20-0.2-0.4過剰間隙水圧比 Lu せん断ひずみ (%)せん断応力比 L大値は 0.98 程度でほぼ 1.0 に至っている.105液状化判定基準(DA=5%)0-5-1010.80.6繰返し回数20回0.40.20020406080100繰返し回数 N10200繰返し回数 N(a) FL>1.0(L<R)図401020繰返し回数 N(b) FL=1.0(L=R)(c) FL<1.0(L>R)要素シミュレーションの結果の例(豊浦砂 Dr=60%の場合)上記のような要素シミュレーションを繰返しせん断力の振幅を変化させて多数実施することで,液状化抵抗率 FL=R/L(図 3 のように L が変化するので FL も変化)とそれに対する繰返し回数 20 回での過剰間隙水圧比 Lu(正のダイレイタンシーが強い場合は 20 回までの最大値)のペアが複数組求められる.これらを相対密度ごとに整理したのが図 5 である.同図には耐震標準に示す FL~Lu 関係も併せて示してある.まず,要素シミュレーション結果と耐震標準式を比較すると,FL の増大とともに Lu が小さくなる傾向は同じだが,Lu の減少具合(曲線の勾配)や FL=1 の時点での Lu の値は異なっている.この原因としては,耐震標準式は振動台実験の結果を基に整理されたもので,本検討とは土質条件が異なること,耐震標準式には種々の実験条件(入力地震動等)の影響が含まれること等が考えられる.次に,本検討での結果を詳しく見ると,相対密度に関わらず FL=1 の時点の Lu の値は概ね等しいことがわかる.また,FL>1(FL 法による非液状化領域)では Dr=40%と 60%の FL~Lu 関係はほぼ等しいのに対し,FL<1(FL 法による液状化領域)では相対密度(Dr=40,60%)による違いが見られる.一方,Dr=80%の場合の FL~Lu 関係は,液状化する・しないに関わらず Dr=40,60%の結果とは異なることがわかる(ただし,前述の通り FL=1 の時点の Lu は等しい).なお,FL<1 の領域において,Dr=80%の場合の Lu が 0.95 程度で頭打ちになるのは密地盤であることを考えれば理解できるが,FL>1 の領域で Dr=80%の Lu がDr=40,60%よりも大きくなっているのは理解し難い.この原因として,シミュレーションに用いた地盤の構成モデルやパラメータの特性に起因する液状化に至るまでの水圧の上昇傾向の違いが考えられ,水圧上昇のカーブが前者では上に凸,後者では下に凸であったため上記のような逆転現象が生じた可能性が高い.この点は今後より詳細な検討が必要だが,FL~Lu 関係を液状化設計に適用することを考えれば,FL>1 の領域の違いはそれほど重要でないと考えられる.1有効応力解析により繰返しせん断応力比を変化させた要素シミュレーションを多数実施することで,液状化抵抗率 FL と過剰間隙水圧比 Lu の関係を求めた.また,その関係に及ぼす相対密度の影響について考察した.これにより,自由地盤の Lu を有効応力解析により評価した場合に,その結果を FL を介して地盤ばねの低減係数 DE に反映させ,液状化地盤中の構造物の設計を行うことが可能になった.なお,今回検討対象としたのは豊浦砂のみであり,今後は種々の地過剰間隙水圧比Lu4.まとめ0.80.6Dr=40%Dr=60%Dr=80%耐震標準式0.40.2000.511.5液状化抵抗率FL図 5 液状化抵抗率 FL と過剰間隙水圧比 Lu の関係盤材料に対する検討を追加していきたい。参考文献:1) (公財)鉄道総合技術研究所:鉄道構造物等設計標準・同解説 耐震設計,丸善出版,2012. 2) (社)日本道路協会:共同溝設計指針,丸善出版,1986. 3) Iai,S., Tobita,T., Ozutsumi,O. and Ueda,K.: Dilatancy of Granular Materials in a Strain Space MultipleMechanism Model, International Journal for Numerical and Analytical Methods in Geomechanics, Vol. 35(3), pp. 360-392, 2011. 4) 安田進,吉田望,安達健司,規矩大義,五瀬伸吾,増田民夫:液状化に伴う流動の簡易評価法,土木学会論文集,No. 638,III-49,pp. 71-89,1999.60
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