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第54回地盤工学研究発表会発表講演集

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タイトル 硬質地盤への鋼管杭回転切削圧入工法の適用
著者 小杉 翼・小林弘元・畔上裕行
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 31〜32 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400016
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タイトル 複雑な地盤堆積環境における火山灰質地盤の液状化挙動に関する数値解析
著者 門前史孝・磯部公一・江川拓也
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 2161〜2162 発行 2019/06/20 文書ID rp201905401081
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タイトル 「ほくりく地盤情報システム(ボーリングデータベース)」を用いた、越後平野における腐植土層の等層厚線図の作成
著者 鴨井幸彦
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 59〜60 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400030
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タイトル 三次元グリッドモデルを利用した神田川沿いの谷底低地に対する二次元地震応答解析
著者 奥倉大樹・石川敬祐・安田 進・原 千明
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 57〜58 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400029
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タイトル Dynamic response evaluation and seismic zoning of western Osaka plain under Nankai Trough and Uemachi fault assumed seismic motions
著者 Naung Htun Zin・Oula Aabkari・肥後陽介・三村 衛
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 55〜56 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400028
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タイトル ボーリングデータベースからみた奈良盆地の浅層地盤の特徴
著者 伊藤浩子・北田奈緒子・松岡數充・束原 純・三村 衛
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 53〜54 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400027
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タイトル 大阪上町台地の洪積上町層を取り入れた250mメッシュ浅層地盤モデルの作成
著者 糟谷佑多・大島昭彦・末吉拳一・濱田晃之・春日井麻里
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 51〜52 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400026
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タイトル 平成28年熊本地震で生じた帯状液状化域における液状化危険度評価手法に関する検討
著者 平田涼太郎・村上 哲・坂本龍太朗・三輪 滋
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 49〜50 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400025
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タイトル 平成28年熊本地震で生じた3つの帯状液状化とその地盤特性
著者 坂本龍太朗・村上 哲・平田涼太郎・三輪 滋
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 47〜48 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400024
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タイトル 試験後試料を活用した地学・防災教育の取り組み
著者 毛利貴子・柴崎達也・神野郁美・吉島由子・大野真央
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 45〜46 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400023
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タイトル 吸水膨張する樹脂と粘土鉱物など地盤環境系工業材料を関連付けた実験と講座(ジオ ESD)事例 ( 持続可能な開発目標(SDGs)達成を目指した学習教材の研究 その一 )
著者 浜野真季・浜野廣美・水野克己・乾  徹・勝見 武・遠藤和人
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 43〜44 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400022
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タイトル 生命の進化に繋がる、海底の地下での化学進化説における粘土鉱物の役割 ( 持続可能な開発目標(SDGs)達成を目指した学習教材の研究 その二 )
著者 水野克己・平野浩一・乾  徹
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 41〜42 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400021
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タイトル 3Dプリンターの地盤材料モデルへの適用とその研究動向
著者 竹村貴人・西本壮志・下茂道人・清木隆文・佐ノ木哲
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 39〜40 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400020
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タイトル 砂型積層3Dプリンターで作製した地盤材料モデルの力学特性の再現性
著者 鈴木健一郎・奥澤康一・濱本昌一郎・藤井幸泰・磯部有作
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 37〜38 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400019
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タイトル 揚鉱実験における鉱石モデルの移動速度を計測するRFIDシステムの有効性の検討
著者 折田清隆・谷 和夫・鈴木亮彦・菅 章悟・田中肇一
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 35〜36 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400018
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タイトル JIS改正に伴うアレイ架台基礎の比較事例(その2)
著者 三浦国春・三浦桂子
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 33〜34 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400017
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タイトル 地盤リスクを評価・回避する地盤調査方法のあり方
著者 澤田俊一
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 1〜2 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400001
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タイトル アンケート調査結果から見た地盤材料試験の現状 ー土の一軸圧縮試験ー
著者 沼倉桂一・若杉 護・中澤博志・藤原照幸
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 29〜30 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400015
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タイトル アンケート調査結果から見た地盤材料試験の現状 ー精度向上に対する意識の変化ー
著者 中澤博志・若杉 護・沼倉桂一・日置和昭・中川 直
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 27〜28 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400014
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タイトル 均質性確認試験結果と技能試験結果(中央値)の関係(その2)
著者 中山義久・澤 孝平・山内 昇・城野克広・保坂守男
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 25〜26 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400013
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タイトル 技能試験配付試料の均質性確保に向けての取り組み
著者 服部健太・澤 孝平・日置和昭・中山義久・渡邉健治
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 23〜24 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400012
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タイトル 煮沸時間及び土の粒径が土粒子の密度にあたえる影響
著者 米澤友哉・中村洋丈
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 21〜22 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400011
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タイトル 粒度(沈降分析)試験の測定方法の検討
著者 藤村 亮・松川尚史・三好功季・橋本 篤・澤 孝平・中山義久
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 19〜20 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400010
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タイトル Experimental Study on Long-term Permeability Change at different temperatures
著者 宋 忱潞・安原英明・中島伸一郎・岸田 潔
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 17〜18 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400009
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タイトル 近赤外線水分計によるロックフィルダムコア材料の含水比迅速測定法
著者 小原隆志・小林弘明・坂本博紀・福島雅人
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 15〜16 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400008
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タイトル 建設プロジェクトにおける地盤調査の重要性と現況
著者 東畑郁生
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 13〜14 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400007
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タイトル 地質リスクマネジメントの効果に関する検討
著者 東野圭悟・中山健二
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 11〜12 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400006
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タイトル 低平地における大規模道路開削工事に伴う沈下原因の解明
著者 今西 肇
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 9〜10 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400005
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タイトル 海外から見た日本の建設工事安全の課題
著者 平岡伸隆・吉川直孝・大幢勝利・豊澤康男
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 7〜8 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400004
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タイトル 道路事業における地質リスク評価手法の研究
著者 中西昭友・小松慎二
出版 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 5〜6 発行 2019/06/20 文書ID rp201905400003
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  • タイトル
  • 硬質地盤への鋼管杭回転切削圧入工法の適用
  • 著者
  • 小杉 翼・小林弘元・畔上裕行
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 31〜32
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400016
  • 内容
  • 0016K - 07第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月硬質地盤への鋼管杭回転切削圧入工法の適用極限支持力鋼管杭載荷試験東日本高速道路㈱正会員同㈱フジタ○小 杉翼小 林弘 元畔 上裕 行1. はじめに当社では現在、「高速道路リニューアルプロジェクト」として、老朽化した構造物の更新・修繕や予防保全に取り組んでいる。上信越自動車道においても、図-1 のように供用開始時から微小な地すべりを継続的に起こしているのり面が高速道路の本線際に存在し、これまでにグラウンドアンカー及び抑止杭による地山の安定化を図ってきた。しかし、アンカーの老朽化が顕著な上、増打ちするスペースも殆ど無い状況となっている。そこで今回、本線への地すべりのリスクを無くす抜本的な対策として、本線上にボックスカルバートを構築し、そ図-1 現場状況の上に盛土を行うことで、押え盛土の効果による地山の安定を図る工事を実施することとした。本線に近接した箇所でカルバートの基礎を施工する必要があることから、回転切削圧入(ジャイロプレス)工法を採用することとなったが、基礎杭の支持層となる頁岩層は、路面から比較的浅い位置にあり、平均換算 N 値 1,085、最大で 1,500 と非常に硬質であることが既往の土質試験の結果から判明している。本稿では、硬質地盤条件下で回転切削圧入工法を適用するにあたって生じた課題と、それらに対する検討内容について報告する。図-2 断面図2. 支持力の評価当該箇所の断面図を図-2 に示す。地山を切り開いて片側 2 車線の道路を供用しており、地すべりを起こしている上り線側の切土は 7 段の長大のり面となっている。本工事において、下り線側ののり面を掘削してカルバート壁厚分の幅員を確保し、鋼管杭による基礎を施工、その上にカルバートを構築する。基礎杭の計画段階において複数の工法を比較・検討した結果、本線の通行止めや対面交通規制をせず、交通流への影響を最小限に抑えながら鋼管杭を打設するためには、近接施工に長けている回転切削圧入工法が最も望ましい工法とされた。新設するカルバートにおいては、側壁の基礎杭がφ1,000、中壁がφ1,500 としており、延長約 300m に対して側壁では 1 列あたり 218 本、中壁では 1 列あたり 170本打設することになる。回転切削圧入工法における杭の極限支持力は、次式のとおり杭先端における極限支持力と周面摩擦力の和で算出される。Ru=qd・A+UΣ(Li・fi)ただし、Ru:杭の極限支持力[kN]、qd:杭先端の極限支持力度[kN/m2]、A:杭先端面積[m2]、U:杭の周長[m]、Li:周面摩擦力を考慮する層の層厚[m]、fi:周面摩擦力を考慮する層の最大周面摩擦力度[kN/m2]である。回転切削圧入工法において、極限支持力の算定につい図-3 ジャイロプレス工法(提供:株式会社技研製作所)ては設計 N 値の上限を 40 としている。また、鉛直支持力の算出自体、既往の載荷試験から確認がとれているφ1,000 の鋼管杭までを対象としているため、今回の施工内容は従来の工法の適用範囲を大きく超えることになる。Application of Rotary Cutting Press-in Methodfor Tubular Piles into Hard GroundKOSUGI, Tsubasa East Nippon Expressway Company LimitedKOBAYASHI, Hiromoto East Nippon Expressway Company LimitedAZEGAMI, Hiroyuki Fujita Corporation31 そこで、以下のプロセスを経ることによって、鋼管杭の極限支持力を算出し、杭長を決定することとした。①支持層が非常に硬質なことから、設計段階においては、qd=6,000kN/m2(設計 N 値=100)、fi=200kN/m2(設計 N 値=50)に設定し、杭長を仮決定する。②道路橋示方書Ⅳ(H24)で提案されている内容に則り、岩盤に対する支持力評価を行うため、鉛直載荷試験を実施する。③本施工と同じ地質条件で鉛直載荷試験を実施するため本線脇のヤードを使用し、φ1,000・φ1,500 でそれぞれ支持層根入長を 3 種類設定し、合計 6 回行う。打込み杭に適用が可能で、今回必要となる荷重-変位量関係の関数が得られる鉛直載荷形式の試験法はいくつか存在するが、今回は非常に狭隘な土地での試験となるため、装置が最も小規模な急速載荷試験を採用する。④急速載荷試験で得られた荷重-変位量曲線等から支持力特性値を把握し、①で暫定的に決定した設計内容に対して極限支持力及び杭長の見直しを図る。①については、回転切削圧入の能力自体は換算 N 値 1,500 程度まで対応できることから、近隣地盤の N 値も考慮してこの値とした。試験杭の配置案および施工イメージを図-4・5 に示す。図-4試験杭・急速載荷試験配置図図-5急速載荷試験装置3. 今後の検討前述した内容に基づいて試験施工を実施するが、支持層が硬質であるため、必要な支持力に対して杭先端における極限支持力が非常に大きなウェイトを占めることが予想される。このことから、以下の点に注意して評価することが必要であると推察される。①圧入だけでなく回転切削を伴うため、施工中に杭先端部の土を乱すことが考えられる。これにより実際の土質特性と既往の土質調査結果に差異が生じ、結果的に杭全体の支持力が過小となるリスクがある。②周面摩擦力についても、回転切削圧入という特性上、施工時に杭の周囲に切削屑が混入する可能性が想定されることから、N 値換算ほどの摩擦力が生じない可能性がある。4. さいごに今回紹介した、硬質地盤への回転切削圧入工法の適用については、前例が少なく非常に特殊な条件下での施工となる。しかし、供用している構造物の更新・修繕といった事業が将来的に増加していくことを考えると、道路直近で鋼管杭を施工するといった場面は今後も必然的に生じると想定される。本工事における支持力の検討プロセスが、類似条件下での回転切削圧入工法の検討時に参考になれば幸いである。本工事においても鋼管杭の打設及び急速載荷試験を本線に近接した場所で実施することになるため、引き続き安全に十分留意して工事を進めてまいりたい。5. 参考文献・国際圧入学会:ジャイロプレス(回転切削圧入)工法による鋼管土留め擁壁設計・施工指針、平成 26 年 3 月・七澤利明、河野哲也、田辺昌規:岩盤を支持層とする杭の先端極限支持力度の評価、土木研究所資料第 4303 号、平成27 年 2 月・社団法人地盤工学会:杭の鉛直載荷試験方法・同解説、平成 16 年 9 月・東日本高速道路株式会社:設計要領第二集橋梁建設編、平成 28 年 8 月32
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  • タイトル
  • 複雑な地盤堆積環境における火山灰質地盤の液状化挙動に関する数値解析
  • 著者
  • 門前史孝・磯部公一・江川拓也
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 2161〜2162
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905401081
  • 内容
  • 1081E - 08第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月複雑な地盤堆積環境における火山灰質土の液状化挙動に関する数値解析火山灰質土液状化数値解析北海道大学大学院学生会員○門前史孝, 国際会員 磯部公一土木研究所寒地土木研究所1.はじめに北海道には種類・性質が多様である火山噴液状化層正 会 員 江川拓也非液状化層出物が広域に堆積している.特に火山灰質粗粒土は粒子破砕性を有する等,特異な工学的性質を示すものの,この地盤における杭基礎の設計は,一般に砂質土に準じて行われている.しかし,既往の一連の研究液状化1) から,静的支持力や液状化に伴う水平地盤反力係数の低減傾向が砂質土地盤と(単位:mm)非液状は異なること等が明らかになっている.本研究では,砂質土および火山灰質粗粒土で構成された液状化地盤中に設置液状化豊浦砂火山灰した群杭基礎に対する 50 g の動的遠心力載荷模型実験に対し数値解析を行い,地盤の堆積環境の違いが及ぼす液状化C地盤の地震時応答挙動について評価するのみならず,その図-1後の過剰間隙水圧消散および排水沈下挙動への影響まで再実験模型概要(各ケースを同一断面で比較)現することで,実際の地震において地震後しばらく時間が経った後確認される二次液状化 2)の可能性も評価する.2.遠心力模型実験先行研究で実施した遠心力載荷模型実験 1)は,図-1 に示す 1/50 縮尺模型に 50 g の遠心加速度を作用させ,砂質土および火山灰質粗粒土で構成された液状化地盤中に設置した群杭基礎に対し静的水平載荷実験を行った後に動的加振実験を行っている.入力地震動は正弦波 20 波とし,実物換算で周波数 1.5 Hz,最大 200 gal 程度の加速度とした.模型地盤には,液状化層として相対密度 Dr = 85%の火山灰質土層を,非液状化層として Dr = 95%の豊浦砂質土層を用いている.また,比較のために Dr = 85%の火山灰質土層と同じ液状化強度を有する Dr = 55%の豊浦砂質土層のみのケースも解析対象とした.地盤材料の力学特性の詳細や実験条件については参考文献 1)を参照されたい.3.数値解析本解析では,地盤の堆積環境の違いに着目し,地盤そのものの地震時応答挙動を把握するために,地盤のみを考慮した解析領域(図-2)の地震時応答特性および変形メカニズムを検証する.本解析には,土・水連成三次元弾塑性動的有限要素解析「DBLEAVES」3)を用いた.地盤の構成式は,Cam-Clay model をベースに,下負荷面および上負荷面の概念を導入することで,土の力学挙動に大きく影響を与える過圧密,構造,応力誘導異方性を統一的に表現できる弾塑性構成式 Cyclic mobility model4)を用いる.ただし,支持層である珪砂 3 号は弾性体でモデル化した.解析パラメータを表-1 に示す.また,繰返し三軸試験のシミュレーション結果を図-3 に示す.これらより,同じ液状化強度比を有する Dr = 85 %の火山灰質地盤と Dr = 55 %の豊浦砂では,p' = 98 kPa 時の間隙比 N,初期間隙比 e0 および透水係数において大きな差異が見られる一方,他のパラメータでは大きな差異は見られないことが特徴である.入力波は実験と同様とし,時間増分を 0.0067 秒,減衰タイプには剛性比例型減衰を,時間積分にはニューマーク法を用いた.図-4 に各ケースの応答加速度倍率の深度分布,表層および下部層の過剰間隙水圧比の時刻歴,Case 1 および Case 4 の過剰間隙水圧の当時曲線を示す.加振による過剰間隙水圧比の上昇に伴い,応答加速度の減衰が発生し,表層付近の応答加速度の倍率が著しく低下するが,堆積環境によりその分布状況は異なる.また,過剰間隙水圧の消散は低透水性のDrainage boundaryGroundwater level30Impervious boundary2017.0 mRoller supportCase 0Case 1Case 2Case 3Case 4Case 5Fixed conditionToyoura sand Dr 95%Toyoura sand Dr 55%Volcanic ash soil Dr 85%Silica sand #3 Dr 90%Node: 15390Element: 13464Shaking direction図-2解析メッシュおよび境界条件Deviator stress (kPa)35.0 m100-10-20-30図-3Toyoura 55%Volcanic 85%Toyoura 95%010203040Effective stress (kPa)5060繰返し三軸シミュレーション結果Numerical simulation on liquefied behavior of volcanic ash soilFumitaka Mommae, Koichi ISOBE (Hokkaido University) andin intricate deposit situationTakuya EGAWA (Civil Engineering Research Institute for ColdRegion, PWRI)2161 火山灰質地盤で長期化するが,非液状化層との互層地盤表-1では加振後に非液状化層の間隙水圧の上昇が確認され,いわゆる二次液状化の発生を確認できる.構成式図-5 に Case 0(Dr = 55 %の豊浦砂)と Case 1(Dr =地盤パラメータ火山灰 Vs豊浦砂 Ts豊浦砂 Ts(Dr 85 %)(Dr 55 %)(Dr 95 %)Cyclic MobilityCyclic MobilityCyclic Mobility圧縮指数0.060.050.05膨潤指数0.00640.00510.006485 %の火山灰質地盤)の過剰間隙水圧消散により生じる限界状態の応力比1.311.301.30各層の地盤沈下の時刻歴,表層および下部層の鉛直ひずp' = 98 kPa 時の間隙比 N1.350.870.87ポアソン比0.300.300.30みの時刻歴,各地盤条件に対する過剰間隙水圧と鉛直ひ過圧密制御パラメータ m0.0150.010.010.50ずみの関係を示す.これらより,地盤沈下量および鉛直構造制御パラメータ a0.650.50異方性制御パラメータ br1.501.501.50初期間隙比 e01.1630.7720.626初期構造比0.800.800.80ひずみの発生は Dr = 55 %の豊浦砂で相対的に大きく,最終的な鉛直ひずみは地盤条件と最大過剰間隙水圧の大弾性体0.3330.610p' = 50 kPa 時の初期過圧密比69.925.6728.65初期異方性0.00.00.02.08E-62.35E-41.72E-4きさに依存することがわかる.4.まとめ珪砂 3 号透水係数(m/s)本解析により火山灰質地盤は透水性および弾性係数 E(kPa)減衰定数 h加振後の圧縮性の低さ,高密度化に対する液状化強度向3.91E-41.927E+60.050.050.050.05上の感度の悪さにより,二次液状化や再液状化発生の可能性が高い地盤材料であることを数値解析的に表現できた.001.0Case 0Case 1Case 2Case 3Case 4Case 5EPWP ratio0.8-50.60 ' v0Case 0Case 1Case 2Case 3Case 4Case 5 ' v016.67 sec.2.8 hours16.6 hours2.3 days6.9 days0.416.67 sec.2.11 min.4.19 hours8.35 hours16.7 hours-50.2-505101520Time (sec)2500005000001.0-10Case 0Case 1Case 2Case 3Case 4Case 5EPWP ratio0.80.6G.L. (m)0.0G.L. (m)G.L. (m)Surface layerCase 1-10Case 4-100.40.2Bottom layer-1500.511.52Response acceleration magnification図-40.005101520Time (sec)-1525000050000003060 90 120 150EPWP (kPa)-1503060 90 120 150EPWP (kPa)解析結果(左:応答加速度倍率の深度分布,中:表層および下部層の過剰間隙水圧比の時刻歴,右:Case 1 および Case 4 の過剰間隙水圧の等時曲線)Bottom layer-0.2-0.4Intermediate layer-0.6-0.8Surface layer25005000Time (sec)7500Settlement (m)0-0.2Intermediate layer-0.3Surface layer100000200000 300000Time (sec)0.050.04Case 0Case 1Case 2400000 5000000100000Case 3Case 4Case 5200000 300000 400000 500000Time (sec)-0.01Bottom layer0.000.04TS 55%VAS 85%0.030.020.01TS 95%0.010.020.030.040.00Case 0Case 1Case 20.050.060Case 0Case 1Case 2Case 3Case 4Case 50.0310000Bottom layer-0.1図-50.020.05G.L. 0.0 mG.L. -5.0 mG.L. -10.0 mG.L. -15.0 mCase 10.060.010.0600.1-0.4Surface layer0.00Vertical strainSettlement (m)0-0.01Vertical strainCase 0Vertical strainG.L. 0.0 mG.L. -5.0 mG.L. -10.0 mG.L. -15.0 m0.20100000200000 300000Time (sec)Case 3Case 4Case 5400000 5000001101001000EPWP (kPa)解析結果(左:Case 0 と Case 1 の各層の沈下量時刻歴,中:表層および下部層の鉛直ひずみの時刻歴,右:各地盤条件に対する過剰間隙水圧と鉛直ひずみの関係)参考文献1) 江川他:火山灰質地盤における杭基礎の耐震補強技術に関する検討-液状化層の堆積状況の影響に関する遠心力模型実験-, 第 52 回地盤工学研究発表会発表講演集, pp.1337-1338, 2017.2) 小林他:二次液状化地盤の変形特性,日本建築学会 2007 年度大会(九州)学術講演梗概集,Vol. B1,pp. 525-526,2007.3) Ye et al.: Experiment andnumerical simulation of repeated liquefaction-consolidation of sand, Soils and Foundations, JGS, Vol.47, No.3, pp.547-558, 2007.4) Zhang et al.: Explanation of cyclic mobility of soils: Approach by stress-induced anisotropy, Soils and Foundations, JGS, Vol.47,No.4, pp.635-648, 2007.2162
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  • タイトル
  • 「ほくりく地盤情報システム(ボーリングデータベース)」を用いた、越後平野における腐植土層の等層厚線図の作成
  • 著者
  • 鴨井幸彦
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 59〜60
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400030
  • 内容
  • 0030B - 00第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月「ほくりく地盤情報システム(ボーリングデータベース)」を用いた越後平野における腐植土層の等層厚線図の作成腐植土等層厚線図ボーリングデータベース株式会社 村尾技建正会員鴨井幸彦1.研究の目的と内容越後平野の中央部に位置する信濃川下流域は,河床勾配が 1/3,700~1/15,000(国交省資料)という低平地である上,前面を砂丘にふさがれていることから排水不良の強低湿地帯を形成し,近代まで多数の“潟”が存在した。さらに,地質構造的に沈降地帯にあたることも手伝って,全国 3 位の 183 km2 という広大なゼロメートル地帯が形成されている。こうした地形条件をもつ越後平野中央部の地下には,腐植土層が広く分布していることが知られていた。しかし,その分布深度や厚さ,生成年代などの詳細は,これまでほとんど明らかにされていなかった。そこで,含水が多く,圧縮性に富むため,容易に沈下を引き起こすやっかいな地盤である腐植土層について,その分布実態を明らかにするため,「ほくりく地盤情報システム(ボーリングデータベース)」を中心とした既存のボーリングデータを用いて,腐植土層の厚さとその広がり状況を示す「腐植土層の等層厚線図(層厚分布図)」(以下,分布図と略称する)を作成した。なお,本研究の一部には,(一社)北陸地域づくり協会の平成 27 年度第 20 回及び平成 28 年度第 21 回「北陸地域の活性化」に関する研究助成事業の助成金をそれぞれ使用した。2.研究方法(作業の手順)分布図は,次の手順で作成した。1) 既存のボーリングデータ(地質柱状図)の閲覧……調査対象範囲内のボーリングデータについて,1 孔ずつ腐植土層(泥炭層)の存否を確認する。2) 2 万 5 千分の 1 地形図に,地点ごとの腐植土層の厚さを記入(データプロット図の作成)……閲覧したボーリングの位置を 2 万 5 千分の 1 地形図に落とし,その脇に腐植土層の厚さを(確認されない場合は×印をそれぞれ)記入する。腐植土層が 2~3 層に分かれて分布する場合は,それらの累計値とした。3) データプロット図から等層厚線図を作成……腐植土層の層さについて,天気図で等圧線を引く要領で 1 m ごとに等層厚線(コンターライン)を引き,等層厚線図を作成する。さらに,この図を 1/2 に縮小し,5 万分の 1 地形図に写し取って,0~1 m,1~2 m,2~3m,3~4 m,4 m 以上の 5 段階に分けて厚さごとに着色する(図-1)。4)14C 年代値をもとに約 1,000 年単位で腐植土層の堆積範囲を推定……腐植土層の 14C 年代値から,堆積年代を推定し,時代ごとの腐植土層の堆積(分布)範囲を想定し,越後平野における湿原環境の消長の過程(時代的変遷)について考察する。3.腐植土層の層厚分布傾向と堆積年代1) 腐植土層は,越後平野の形成過程で,河川の後背湿地や丘陵を刻む沢筋及び砂丘間凹地に形成されたものであり,その厚さは,中ノ口川沿いの白根郷で総じて厚く,3 m から 5 m 以上に達する。亀田郷では,おおむね 1~3 m で,1~2 m の範囲がもっとも広い。新潟市街地に接する鳥屋野潟周辺ではおおむね 2 m 弱である。2) 阿賀野川以北では,スポット的に分布し,厚さはおおむね 1 m 前後であるが,部分的に 2~3 m に達するところがある。平野南部寄りの三条・燕・加茂地域でも水平方向に連続性が乏しく,スポット状に点在し,厚さは 1 m 前後であるが,新津丘陵や西山丘陵を刻む谷筋には,局所的に数 m の厚さで分布することがある。一方,大河津分水路よりも南側の地域では,腐植土層の分布は貧弱で,欠くことが多い。3) 腐植土層の数は,阿賀野川以北や新潟市街地南部及び三条・燕・加茂地域では,1~2 層のことが多い。一方,白根地域では,3 層分布することが多く,4~5 層確認されるところもある。4) 白根郷や西蒲原などの越後平野中央部では,腐植土層は,約 6,000~5,000 年前以降,主に後背湿地で形成された。亀田郷では,主に砂丘間凹地に形成されたもので,約 3,000 年前以降とやや新しい。5) 狭い範囲では連続性に乏しいものの,広域的に見た場合,途切れながらも比較的良く連続する層準が 3 層認められる。それぞれの堆積年代は,約 6,000 年前前後,約 5,000 年~4,000 年前,約 2,000 年~数百年前であり,これらの時代に湿原がそれぞれ拡大したと考えられる。なお,同じ層準のものでは,内陸(上流)側ほど形成年代が古い。6) 越後平野中央部では,西側ほど腐植土層の分布深度が深くなっている。これは,平野の西に傾き下がる(西側への傾動)運動を反映した結果と考えられる。Kamoi Yukihiko, Muraogiken Co. Ltd.Creation of isopach map of humic soil layer in the Echigo Plainusing "Hokuriku Ground Information System(boring database)"59 日 本 海新潟市街地↑亀 田 郷鳥屋野潟信濃川← 小阿賀野川白 根 郷川西 蒲 原西信新 津 郷↑↑濃川↑中ノ口川新田上郷津丘陵図-1 越後平野における腐植土層の分布図の一部(亀田郷や中ノ口川沿いの白根郷を中心とした地域;国土地理院発行の 5 万分の 1 地形図「内野」,「新潟」,「弥彦」,「新津」に着色して加筆)4.腐植土層の層厚分布図作成の意義本図は,越後平野における軟弱地盤の調査や解析に際し,有益な参考資料(指標)になると考えられる。また,腐植土層は主に湿原で形成された地層であり,その分布域が水に浸かりやすい場所を示すことから,防災・減災対策をはじめ,都市計画策定や住民の土地利用計画など,幅広い分野での活用が期待される。今後は,腐植土層の 14C 年代をもとに、越後平野中央部における完新世の湿原環境の変遷史を明らかにしていく予定である。なお,分布図は,越後平野に*関係した 23 の疑問や話題について解説したコラムとともに冊子 の形で公表し,希望者に無料で配付している。*鴨井幸彦(2018.3)越後平野の地盤と防災.(一社)北陸地域づくり協会,43p.60
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  • タイトル
  • 三次元グリッドモデルを利用した神田川沿いの谷底低地に対する二次元地震応答解析
  • 著者
  • 奥倉大樹・石川敬祐・安田 進・原 千明
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 57〜58
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400029
  • 内容
  • 0029E - 08第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月三次元グリッドモデルを利用した神田川沿いの谷底低地に対する二次元地震応答解析谷底低地1.三次元グリッドモデル地震応答解析東京電機大学名誉会員安田 進東京電機大学国際会員石川 敬祐東京電機大学大学院学生会員原 千明東京電機大学大学院学生会員〇奥倉 大樹はじめに東京の中心部には樹枝状に谷底低地が発達し,国の重要構造物や商業施設が密集している。1923 年の関東大震災の際には,埋設管6050403020100の破損や木造構造物の倒壊といった被害が谷底低地沿いに多発した。これは,谷底低地に堆積する非常に軟弱な高有機質土や沖積粘土による地震動の増幅や,沖積層基底不整形なことによる地震応答離(m)の違いによる影響と考えられている 1)。これまで筆者らは,神田川沿いの谷底低地に対して全国電子地盤図を用いて二次元断面にモデル化し,二次元地震応答解析による地震応答特性の評価を実施してきた2)。しかし,実際の谷底低地の谷部の形状や地層構成は複雑であり,より詳細な地盤モデルを用いて0地震応答特性の評価を行う必要があると考えられた。そこで本研究では,三次元グリッドモデルを用いて谷底低地の地盤モデルを構築図1離(m)0.51解析対象断面線し,それを用いて関東大震災相当の地震動に対する二次元地震応答解析を実施し,谷底低地部の地震応答特性を考察した。2.神田川沿いの谷底低地の特徴図 1 は,江戸川橋~御茶ノ水を中心とするデジタル標高地図に,三次元グリッドモデルによるモデル化領域(青枠),検討断面位置(赤線)及び 1923 年関東大震災時の被害状況3)を併記したもので離(m)ある。これより,神田川沿いの谷底低地は,南北に約 1000m の谷底幅をもち,現在の地表面勾配はおよそ 1/4000 と緩傾斜な縦断勾配を有していることが分かる。また,江戸川橋から下流域には,氷期の基準面低下期の海退によって下刻した谷底を軟弱な沖積層が厚く埋積している。谷部の形状は,北側が急斜面で南側がなだらかな非対称谷であり,同じ谷底低地内でも地点によりその谷の形状や地層構成は大きく異なる4)。関東大震災時の被害状況は,台地と谷底低地の境界付近や南側の谷底低地部に多くの被害が集中している。3.図2C-C’断面における三次元グリッドモデル(凡例に示す数字は N 値)神田川沿いの谷底低地に対する地震応答解析3.1三次元グリッドモデルの構築と解析検討断面三次元グリッドモデルは木村ら5)の手法に倣い,次の手順に従って構築した。三次元グリッドモデルの単位グリッドを 100m 間隔とし,領域内の既往ボーリングデータ 6)から土質・N 値に対して三次元的な空間補間を行っている。空間補間方法は,ボーリングデータの参照半径を 1000m とし,分割領域は北を基準に 2 分割,補間計算は各象限から最小 2 点,最大 5 点のデータによる逆距離加重法によって行われ,その際の重み係数は 2 としている。なお三次元グリッドモデルを構築する際の境界条件として,台地部と低地部の微地形境界,沖積層基底面の境界,地表面標高境界を付与している。三次元グリッドモデルにて作成した神田川谷底を横断する C-C’断面の土質断面図を図 2 に示す。同図より,谷底低地部には軟弱な粘性土や高有機質土で埋積されていることが確認され,沖積層基底と洪積層の境界線(赤線)を境に同種の土質でも N 値の違いがよく表現できていることが確認できる。解析検討断面は,図 1 に示すように谷底低地を横断する 3 断面を選定した。これらの断面位置は,非対称谷をなし河岸段丘が発達した谷の上部に軟弱な高有機質土が埋積していること(A-A’断面),谷底低地内に高有機質土は埋積しておらず,沖積粘性土のみが堆積していること(B-B’断面),東Two dimensional seismic response analysis on the valleybottom plain along the Kanda RiverYASUDA, SusumuTokyo Denki UniversityISHIKAWA, KeisukeTokyo Denki UniversityHARA, Chiaki Tokyo Denki UniversityOKUKURA, Daiki57Tokyo Denki University 加速度(gal)日本大震災時に構造物の揺れによる被害が確認された九段下付近を通る谷底低地であること(C-C’断面)を理由にそれぞれ選定した。3.2二次元地震応答解析の条件最大加速度:310.6 gal二次元地震応答解析は、Advanced FLUSH/Win を用いた。せん断波速度 Vs,初期せん断剛性 G0 は三次元グリッドモデルから取得した N図3東京湾臨海部模擬地震波値から道路橋示方書の推定式より求めた。高有機質土については、既往の研究による動的変形特性試験結果 7)を用い、G0 は 2200kN/m2 とした。他層の動的変形特性は平均粒径 D50 を設定し,安田・山口8)の提案モデルを用いた。入力地震動は日本建築防災協会による,関東地震や想定される東海地震を考慮した地震動である東京湾臨海部模擬地震波(図 3)を解放基盤動と設定し、モデル底面に入力した。左右境界条件をエネルギー伝達境界とし、底面は弾性基盤とした。なお,解析モデルは工学的基盤までモデル化し,工学的基盤は VS を 350m/s としている。3.3二次元地震応答解析結果A-A’,B-B’における解析結果を図 3,図 4 に示す。各図(b)~(d)は,最大加速度コンター図,最大水平変位コンター図,地表面最大水平ひずみ分布図である。A-A’断面の谷底部は沖積層による埋積区間であり,非対称谷をなしている。谷の両岸には河成段丘が形成され,その上部に沖積粘土が北側で 6m,南側で 3m 堆積し,高有機質土はおよそ 2m の厚さである。図 3(b),(c)より最大加速度は,高有機質土層上で 683cm/s2,基盤が傾斜した段丘の境で約 400cm/s2,台地の法肩部では約 500cm/s2 と大きく増幅し,特に高有機質土層の上層部での加速度応答が顕著である。また,最大水平変位は高有機質土層上において 5cm 程度と他層と比べると増幅する傾向がみられた。最大水平ひずみは,高有機質土層上や基盤が傾斜した低地と台地の境界部,台地の法肩部において生じているものの,その大きさは圧縮・引張ともに約0.05%にとどまった。両断面を比較すると,最大加速度に大きな違いが見られ,高有機質土の有無や軟弱層下部の地盤形状が,応答の違いに影響を与えていると考えられ,A-A’断面における,高有機質土層上や台地の法肩部での加速度応答は,図 1 の 1923 年の関東地震の際の被害と比較的一致していると言える。また図 2 に示した C-C’断面には,谷部中央に高有機質土がわずかに埋積する谷底低地で,この断面の地震応答は,ここには示さないが A-A’断面と同程度であった。北側南側北側20151050-5-10-15250500粘性土(沖積,洪積)7501000ローム礫質土1250高有機質土(m)025050075010001250(b) 最大加速度コンター図(m)20151050-5-10-15-204.700.0650.0600.0550.0500.0450.0400.0350.0300.0250.0200.0150.0100.020151050-5-10-15(g )(a) 地盤モデル図0250500750(c) 最大変位コンター図100012500100砂質土(gal)15.014.013.012.011.010.09.08.07.06.05.04.03.02.01.0020151050-5-10-15(cm)200300400500粘性土(沖積,洪積)6007008009001000ローム礫質土1100高有機質土700.0650.0600.0550.0500.0450.0400.0350.0300.0250.0200.0150.0100.0(a) 地盤モデル図(g )0砂質土20151050-5-10-15-20南側(m)(m)20151050-5-10-15-2001002003004005006007008009001000 1100(b) 最大加速度コンター図0100200300400500600700800900(gal)1000 1100(c) 最大変位コンター図(d) 地表面最大水平ひずみ分布図(d) 地表面最大水平ひずみ分布図図4図5A-A’断面解析結果15.014.013.012.011.010.09.08.07.06.05.04.03.02.01.00(cm)B-B’断面解析結果まとめ神田川沿いの谷底低地において三次元グリッドモデルを用いて地盤モデルを作成し,二次元地震応答解析を実施した。その結果,高有機質土層上や,台地の法肩部において加速度応答の増幅が確認された。より詳細な地盤モデルを作成し地震応答解析を行った場合でも,高有機質土の有無や複雑な谷底低地の形状が,地表面の応答特性に影響を与えることが分かり,その地震応答は 1923 年関東地震時の被害箇所と比較的一致することがわかった。なお三次元グリッドモデル構築にあたり親身にご指導頂いた,防災科学技術研究所の木村克己様に深く感謝致します。【参考文献】1)安田ら:電子地盤図を用いた東京中心部の地震時の揺れに関する検討,第 13 回日本地震工学シンポジウム,pp2019-2026,2010. 2)安田ら:神田川沿いの谷底低地に対する二次元地震応答解析,第 53 回地盤工学研究発表会,pp1979-1980,2018. 3)安田ら:東京の谷底低地における地震被害と地層構成,土木学会第 48 回年次学術講演会,Ⅲ-184,422-423,1993. 4)久保純子:早稲田大学周辺の地域-武蔵野台地と神田川の非対称谷に関連して. 5)木村ら:ボーリングデータを用いた都市地盤モデルを対象とした三次元グリッドモデル構築手法とその適用性,第 51 回地盤工学研究発表会,pp287-288,2016. 6)東京土木技術支援・人材育成センター .7)安田ら:東京の谷底低地に堆積している腐植土の動的変形特性,第 45 回地盤工学研究発表会,pp737-738,2010. 8)安田ら:種々の不攪乱土における動的変形特性,第 20 回土質工学研究発表会講演集,pp539-542,1985.本文58
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  • タイトル
  • Dynamic response evaluation and seismic zoning of western Osaka plain under Nankai Trough and Uemachi fault assumed seismic motions
  • 著者
  • Naung Htun Zin・Oula Aabkari・肥後陽介・三村 衛
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 55〜56
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400028
  • 内容
  • 0028D - 07第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月Dynamic response evaluation and seismic zoning of western Osaka plain underNankai Trough and Uemachi fault assumed seismic motionsSeismic response analysis, PGA amplification, Geo-informatics京都大学大学院工学研究科学生会員○Zin Naung HtunDatabase京都大学大学院工学研究科学生会員Aabkari Oula京都大学大学院工学研究科国際会員肥後陽介京都大学大学院工学研究科国際会員三村1. INTRODUCTIONOsaka plain consists of a widespread formation of softweak subsoil in an alteration of gravel sediments (Dg) andmarine clay layers (Ma) topped by sandy sediments (As) 1).The soft soils can influence the characteristics of groundshaking and cause strong amplification. Dynamic responseanalysis based on detailed geological information of theground will help estimate the shaking intensity for futureearthquakes. In this study, a total of 894 soil profiles scatteredaround Osaka’s western plane are obtained from Kansai Geoinformatics Database. A one-dimensional seismic responseanalysis is performed using DYNEQ2). Nankai Trough(TNN) and Uemachi Fault (UMT) input motion were used 3),and a zoning map was created based on their peak groundacceleration (PGA) amplification. From the results of the map,the regional tendencies of the soil’s behavior are inspected. Inaddition to that, the effects of local site conditions; such as soilproperties and model parameters are investigated.衛(UMT) is short, but the intensity is large, contrary to the trenchtype earthquake (TNN) which has a long duration and lowerintensity. It’s however to be noted that each 500m mesh hasits own acceleration waveform. The input waves cover a widerange of amplitudes. The acceleration ranges from 1.2 m/s2to 3.5 m/s2 for (TNN) and from 2.9 m/s2 to 13.2 m/s2 for(UMT). The analysis is two dimensional, both east-west(EW) and north-south (NS) components of the seismic wavesare used.2.3 Model ParametersThe results of different dynamic deformation test data inOsaka area were analyzed 4) and the HD model with theparameters on Table 1 was found to best fit the test data amongthe three models.ℎmax ℎ1,ℎ122. METHODOLOGY OF THE ANALYSES2.1 Analysis ModelThe soil profile is shown in Fig1. The input motion isoriginally defined at the base layer (Dg4). However, in orderto conduct the seismic response analysis with a detailed soilprofile calculation is performed in 2 steps:Step1: To insert the earthquake wave in the lower model. Thelower model is a 500m mesh with 50m thickness for eachelement starting from (Dg4) at the bottom to (Dg2) at the top.Step2: To use the obtained new wave for the dynamicresponse of the ground surface. The upper model is a 250mmesh with an element thickness of 1m starting from (Ma12)at the bottom to (As) at the top. For each four adjacent 250mmesh points the lower model (500m mesh) and the inputwaves are the same.2.2 Input motionOsaka region is expected to be affected by the anticipatedNankai Trough earthquake. Therefore, the anticipated (TNN)wave was chosen. In addition to that, Osaka region itself hasseveral seismically active faults among which one of the mostserious is Uemachi Fault. Therefore the anticipated (UMT)wave was chosen. The duration of the inland earthquakeTable 1. H-D model parameters.γMa13Dg1Ma120.0020420.83.00.0011520.91.20.0031619.22.31m ℎℎAs0.0028621.63.0Fig. 1. Analysis model.55 Fig. 2. Nankai Trough and Uemachi Fault earthquakes PGA amplification zoning mapsreferential shear strain means that the soil will behavenonlinearly under high shear stresses. The individual behaviorof layers was investigated through the maximum accelerationand shear modulus distribution with depth. Marine clay(Ma13) was found to be responsible for motion attenuationdue to its low shear modulus and referential strain, and marineclay (Ma12) is responsible for motion amplification due to itshigh referential strain.3. RESULTS AND DISCUSSIONThe analysis results show that the PGA amplification(Fig.2) varies between 1.0 and 4.4 for (TNN), and 0.3 and 2.7for (UMT). The soil amplifies greatly in the case of (TNN),but only slightly or even de-amplifies in the case of (UMT).Uemachi Fault earthquake deamplifies in the majority of thepoints. As the earthquake has a very large amplitude, it can beassumed that the soil is displaying a nonlinear behavior. Inorder to confirm this, (UMT) amplitude was reduced to the10th of the original wave in ten random points and a suddenincrease in PGA amplification was noticed. It can beconcluded that the deamplification is due to the nonlinearbehavior of the soil.On the other hand, it’s observed that the two earthquakesshow the same trend. The eastern area shows a strongamplification while the northern and western areas show acomparatively lower amplification.3.1 Resonance investigationResonance behavior is investigated and the natural periodof the soil and the predominant period of the wave werecompared for each region. The eastern area adjacent to themountains has thin sedimental deposits resulting in a shortnatural period of the soil, and the wave’s strongest componenthas a short period as well. The soil’s natural period and thewave’s predominant period match causing resonance withinthe soil. The periods only coincide in the eastern area whichexplains the exceptionally strong amplification.3.2 Effect of soil properties and model parametersLayer properties imply the layer’s shear modulus 𝐺 andmodel parameters imply the referential shear strain 𝛾 .A low4. CONCLUSIONDynamic deformation analysis is performed for 894 pointsthrough western Osaka area for two waves. (UMT) waveshows less amplification than (TNN) wave due to the soil’snonlinear behavior. The eastern area shows a largeamplification in response to both waves. It’s found to be dueto the resonance behavior and also due to the geologicalformation of the area. The eastern area has an absence ofmarine clay (Ma13) which attenuates the motion and apredominance of marine clay (Ma12) which amplifies themotion making it the area most prone to motion amplificationin western Osaka plain.REFERENCES1) Kansai Geo-informatiocs Network: New Kansai soil-Osaka plain toOsaka bay, 2017.2) Yoshida, N.: DYNEQ Manual, Revised version, 1995.3) Osaka government: Osaka Prefecture General Disaster PreventionMeasures Investigation, 2007.4) Goto, H. et al.: Influence of Dynamic Deformation CharacteristicsModel on the Nonlinear Response of the Ground, Kansai GeoSymposium, 2018.56
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  • ボーリングデータベースからみた奈良盆地の浅層地盤の特徴
  • 著者
  • 伊藤浩子・北田奈緒子・松岡數充・束原 純・三村 衛
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 53〜54
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400027
  • 内容
  • 0027B - 11第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月ボーリングデータベースからみた奈良盆地の浅層地盤の特徴奈良盆地ボーリングデータベース有機質土地域地盤環境研究所正会員地域地盤環境研究所国際会員○伊藤浩子北田奈緒子長崎大学環東シナ海環境資源研究センター松岡數充中央開発国際会員束原純京都大学工学研究科国際会員三村衛1.はじめにKG-NET・関西圏地盤研究会(およびその前身の研究会)では,これまで大阪・神戸・京都・滋賀を対象に関西圏地盤情報データベースを利用した地盤研究を取り纏めてきた1)-5)。2014 年~2018 年には奈良盆地を対象として研究活動を6)行い,その成果を「新関西地盤―奈良盆地」(2018) として発刊した。先行研究である「奈良盆地地盤図・滋賀県地盤図」7) では,約 600 本のボーリングデータを用いて表層地質,基盤構造,土質特性,歴史的建造物と地質との関係などが取り纏められている。本研究会では,上記の成果をふまえ,より詳細で高精度な地盤情報を得るため,関西地質調査業協会と協力して研究を行った。関西地質調査業協会には既存の約 600 本のボーリングデータをご提供いただき,本研究会で新たに収集したボーリングデータと一元化して,奈良県域とその周辺地域を対象に約 15,000 本のボーリングデータベースを構築した。ここではその成果のうち,ボーリングデータベースを用いて検討した奈良盆地の浅層地質の特徴と,コア試料の分析から得られた地質学的な情報について報告する。2.対象地域本研究の対象地域を図-1 に示す。地形地質学的な特徴から対象地域を 4 地区に区分して,それぞれの浅層地盤の特徴について検討を行った。最も北側の「木津川地域」は,京都盆地から奈良盆地に至る約 20km の河谷であり,京都盆地からの地層の連続性を把握するため,本地域を研究対象に含めた。周辺山地は主に花崗岩からなり,風化作用によってマサ化した大量の土砂が天井川を形成するため,河川周辺の低地には氾濫原が発達している。「矢田丘陵~京阪奈地域」は,生駒断層の活動に伴って形成された丘陵地からなり,地形的に木津川が北流する要因となっている。表層付近には大阪層群が分布する。奈良盆地内は,盆地の標高が最も低くなる地域(大和川が大阪平野へと西流する地域)を境に「奈良盆地北部地域」と「奈良盆地南部地域」に区分した。「奈良盆地北部地域」は矢田丘陵東部の平坦地であり,三方を丘陵や山地に囲まれている。また「奈良盆地南部地域」は盆地内で最も平坦地が広がる地域である。南から多数の小規模な河川が北流するため,網状河川の堆積作用により自然堤防と後背湿地が形成されている。3.ボーリングデータベースによる検討図-2 は,京都盆地の南端(京都府相楽郡精華町)から,御所市大字條の秋津付近に至る奈良盆地の南北断面である。本断面図の北部は「木津川地域」に相当し,明瞭な礫層を境界として沖積層と洪積層に区分される。しかし,京阪奈丘陵から奈良盆地内では N 値と層相が大きく変化し,沖積層と洪積層の区分が難しい。近鉄奈良線~近鉄天理線付近までの地域は「奈良盆地北部地域」に相当し,礫・砂・粘性土の互層からなる。図-2 の断面図ではどちらかといえば粘性土が優勢である。なお浅部の優勢土層の平面分布図6)から,本地域の西部では粘性土層と砂層,東部では礫層が主体であることが明らかとなった。大和川(初瀬川)より南側の地域は「奈良盆地南部地域」に相当する。南北から流下した小規模な網状河川の堆積物からなり,堆積物は側方への連続性が悪い。礫・砂・粘性土の細かい互層からなるが,全体的には砂礫層が優勢である。近鉄大阪線のやや北方の地域では,深度 10m 程度に有機質土が特徴的に分布する。この有機質土は,局所的な範囲内では側方対比が可能であるが広域的な連続性は悪い。この有機質土の分布域において,後述する橿原北基準ボーリングを掘削した。Characteristics of subsurface geology in Nara Basinconsidered by utilization of the borehole database図-1 奈良盆地の地質と本研究での地区区分(地質図は文献 8)-10)を元に作成)Hiroko Ito1, Naoko Kitada1, Kazumi Matsuoka2, Jun Tsukahara3, andMamoru Mimura4 (1Geo-Research Institute, 2Nagasaki Universuty3Chuo Kaihatsu Corporation, 4Kyoto Universuty)53 図-2 奈良盆地の代表的な南北断面4.ボーリング調査から得られた地質学的特徴ボーリングデータベースに入力されたデータは,ほとんどが建設工事に係る調査ボーリングであるため,地質学的な情報や物理・力学特性の詳細情報は非常に少ない。そこで,集積したボーリングデータを質的に補間することを目的に,基準となり得るボーリング調査(橿原北基準ボーリングと呼称)を実施した。調査は細粒堆積物や有機質土が連続的に分布する,盆地中央の低地部(橿原市小槻町付近)において実施した。ボーリング柱状図と N 値・土色の測定結果を図3 に示す。深度 9m 付近までは粘土層主体で,深度5.7~7.5m,深度 2.4~4.8m に有機質土が分布する。深度 4.1~4.2m および深度 5.9~6.2m には火山灰層が挟在し,詳細分析の結果,上位が鬼界-アカホヤ火山灰(K-Ah:降灰年代約 7,300 年前)11) ,下位が姶良 Tn 火山灰(AT:降灰年代約 26,000~29,000 年前)11) であることが明らかとなった。つ図-3 橿原北基準ボーリングの地質柱状図・N 値・土色まり,本ボーリングでは深度 4.2m から深度 5.9m の間に沖積層と洪積層の境界がある。しかし,この深度区間における N 値はほぼ一定で,層相変化も乏しいため,沖積層と洪積層の境界深度を特定することは難しい。また,花粉分析を実施したところ,K-Ah 火山灰の直上では Cyclobalanopsis や Sciadopitys など温暖期を示唆する花粉,AT 火山灰の直上では冷涼な気候に由来する Picea,Lepidobalanus, Betula などの花粉が多く検出され,火山灰分析の結果と整合的であった。しかし,両火山灰層の間の堆積物では花粉化石の産出状態が悪く,沖積層と洪積層の境界深度を更に厳密に決定できる情報は得られなかった。このように,海水準変動の影響をほとんど受けていない地層分布は,これまで本研究会で検討してきた平野や盆地では認められず,奈良盆地の浅層地盤の特徴であるといえる。引用文献1)-2) 関西地盤情報活用協議会(1998; 2002) 3)-6) KG-NET・関西圏地盤研究会(2007; 2011; 2014; 2018)業協会・独立行政法人産業技術総合研究所(2009)8) 三田村(1993)田洋・新井房夫(2003)549) 宮地ほか(2001)7) 関西地質調査10) 宮地ほか(2005)11) 町
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  • タイトル
  • 大阪上町台地の洪積上町層を取り入れた250mメッシュ浅層地盤モデルの作成
  • 著者
  • 糟谷佑多・大島昭彦・末吉拳一・濱田晃之・春日井麻里
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 51〜52
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400026
  • 内容
  • 0026C - 09第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月大阪上町台地上の洪積上町層を取り入れた 250m メッシュ浅層地盤モデルの作成地盤情報データベース,洪積層,工学的基盤大阪市立大学大学院 ○学 糟谷祐多学 末吉拳一地域地盤環境研究所正 春日井麻里正 濱田晃之国 大島昭彦1. はじめに筆者らはこれまでに,「関西圏地盤情報データベース」(以下,DB)と基準地盤調査を基にして大阪・神戸地域を対象に沖積層(上部沖積砂 As_U 層から下部沖積砂 As_L 層まで),沖積粘土 Ma13 層,第 1 洪積砂礫 Dg1 層,洪積粘土 Ma12層の標高,N 値,密度,土質特性の平均的な地盤モデル(250m メッシュ浅層地盤モデル)を作成してきた。ただし,大阪地域の中心部に位置する上町台地周辺では沖積層のみで,その下の洪積層についてはモデル化ができていなかった。一方,250m メッシュ浅層地盤モデルの活用方法の 1 つとして,文献 1)では地震応答解析による揺れやすさの予測をしている。これでは,地震波の入力面となる工学的基盤を Ma12 層直下の第 2 洪積砂礫 Dg2 層と仮定していたが,上町台地周辺では沖積層以下のモデルがなかったので,沖積層の下面から地震波を入力していた。そこで,改めて DB を用いて沖積層と工学的基盤と見なされる層の間の洪積上町層(DU 層と呼ぶ)を抽出し,既存のモデルに組み入れることで,250m メッシュ浅層地盤モデルの拡張と大阪地域の地震応答解析の高精度化を図った。本稿ではそのモデル化の手法と DU 層の分布域,工学的基盤の標高分布を報告する。2. DU 層の設定方法・対象範囲図-1 は西大阪・東大阪地域の一般的な地層層序である。上から沖積層(As_U 層,Ma13 層,As_L 層から成る),Dg1 層,Ma12 層,Dg2 層の順である。一方,上町台地周辺(東大阪地域西部から千里丘陵までを含める)では,このような明快な地層層序をしておらず,工学的基盤が決まっていない。また,上町台地周辺の沖積層より下部には,Dg1 層や Ma12 層よりも古い年代の洪積層が堆積しているので,その地盤モデルは設定できていない。そこで,Ma12 層モデルを持たない上町台地周辺においては,堆積年代を問わず,以下の条件で工学的基盤となる層を仮定した。・砂礫層では N≧50,粘性土層では N≧30 となる連続した層厚 3m 以上の層そこで,DB のボーリングデータから上記による工学的基盤層図-1 西大阪・東大阪地域の一般的な地層層序図-2 洪積上町層(DU 層)の設定方法を決めて行き,沖積層または Dg1 層に挟まれる層を DU 層として抽出した。図-2 に DU 層の設定方法を示す。DU 層の上端については従来のモデルの状況によって異なる。図(a)に示すように,沖積層だけがモデル化されている場合は沖積層の下端を DU 層の上端とした。一方,図(b)に示すように沖積層と Dg1 層がモデル化されている場合は Dg1 層の下端をDU 層の上端とした。多くの断面図で確認して,DU 層の下端は周辺との連続性を考慮して適宜修正した。図-3 は従来の 250m メッシュ浅層地盤モデルでの各地層モデルの作成状況である。DU 層の設定範囲は 2 本の黒太線で挟まれた地域とし,北限を千里丘陵,南限を大和川とした。この範囲には上町台地,上町台地北端から千里丘陵周辺,東大阪地域西部が含まれる。DU 層を 250m メッシュでモデル化し,従来のモデルに組み入れた。3. DU 層の分布と工学的基盤の標高分布図-4 に 250m メッシュモデルによる DU 層の上面標高分布を示す。上町台地の中央部で標高が高く,縁辺部に向かうほど低くなっている。淀川流域周辺では T.P.-25~-30m が多く,最も低い地域となる。また,千里丘陵に向かって標高が高くなった。図-5 に DU 層の下面標高分布を示す。やはり上町台地と千里丘陵の標高が高く,淀川流域周辺の標高が低く,標高の分布傾向は図-4 と同様である。図-6 に DU 層の層厚分布を示す。天王寺周辺より北側から大阪城周辺の地域にかけて,特に層厚が大きい地域がある(地名は図-3 参照)。最も厚い場所で層厚は 20m 以上となった。同様に矢田周辺,関目周辺と豊中周辺で層厚が大きいことが分かる。一方で,淀川流域や縁辺部では層厚が小さくなった。図-7 に新たな 250m メッシュ浅層地盤モデルによる工学的基盤面の標高分布を示す。中央の黒線の内側が DU 層を設定した領域であり,図-5 の DU 層の下面標高と等しい。他の領域は Ma12 層の下面標高と等しい。工学的基盤面の標高はDU 層と Ma12 層を含めて調和的な分布となっているといえる。このモデルを用いた非線形地震応答解析による揺れやすさを予測した結果は文献 2)を参照されたい。参考文献1) 中村・他:上町断層想定地震波を用いた非線形地震応答解析による大阪地域の揺れやすさの予測,平成 30 年度土木学会全国大会。2) 末吉・他:非線形地震応答解析による大阪表層地盤の揺れやすさの予測,第 54 回地盤工学研究発表会(投稿中)。250m square mesh subsurface ground model taken in Pleistocene Uemachi layer on Osaka Uemachi Plateau : Kasutani Yuta, SueyoshiKenichi and Oshima Akihiko (Osaka City University), Hamada Teruyuki and Kasugai Mari (Geo-Research Institute)51 千里丘陵豊中神戸関目大阪城上町台地天王寺矢田大和川図-3 従来の 250m メッシュ浅層地盤モデルでの各地層モデルの作成状況図-4 DU 層の上面標高分布図-5 DU 層の下面標高分布図-6 DU 層の層厚分布図-7 新たな 250m メッシュ浅層地盤モデルによる工学的基盤面の標高分布52
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  • タイトル
  • 平成28年熊本地震で生じた帯状液状化域における液状化危険度評価手法に関する検討
  • 著者
  • 平田涼太郎・村上 哲・坂本龍太朗・三輪 滋
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 49〜50
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400025
  • 内容
  • 0025A - 10第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月平成 28 年熊本地震で生じた帯状液状化域における液状化危険度評価手法に関する検討非液状化層 PL5 液状化危険度判定結果福岡大学大学院 学生会員 ○平田 涼太郎福岡大学 国際会員村上哲福岡大学 学生会員 坂本 龍太朗飛島建設 国際会員 三輪 滋1. はじめに平成 28 年熊本地震により熊本平野部では甚大な液状化被害が生じた。これは、熊本特有の火山由来の土質の影響に加え、従来指摘されている埋立地盤だけでなく、旧河道部、自然堤防部の一部で液状化の帯として現れたように、限定的に生じているのが特徴的である。液状化の危険度を評価するためには、その地盤における液状化層の有無、層厚の情報が必要であり、戸建て住宅の被害については、液状化層が表層付近に存在するかどうかが特に重要であると考えられる。現状の宅地地盤を対象にした液状化危険度判定法では、深度 20m までの液状化可能性指数(PL 値)と地表面からの非液状化層(H1)等により評価されるが、この判定法は埋立地盤の被災が多かった東日本大震災後に提案された方法であり、帯状液状化が生じた自然堆積地盤においてそのまま適用するには課題があると思われる。本研究では、液状化発生と液状化層の関係について詳細に調査した結果に基づいて、宅地地盤を対象にした液状化被害に与える液状化層の影響評価法を提案し、その有効性について検討した。2. 液状化被害に与える液状化層の影響評価A1-1図-1 は近見から川尻地区での地盤情報(緑)、前震後液状化地点A1+1(青)、本震後液状化地点(赤)を表している。また、図-2,3 は近見からA1-3A1+2川尻地域での地盤情報をまとめた表である。液状化危険度指数を表すPL 値を算出するために液状化に対する安全率FL 値を次式により求める。FL =R/L(2.1)ここで、R は液状化強度比、L は地震時に作用するせん断応力比である。それにより、FL ≦1.0 では液状化の可能性有と、FL ≧1.0 では液状A1+3A1-4A1-5A1-6A1+7A1-7A1-8A1+8A1+9A1-9A1+10A1-10(2.2)A1+4A1+5A1+6A1-3A2-4A2-3A2+1式で求める。ZA1-2A2-2化の可能性が低いと判断できる。また、液状化危険度を表すPL 値を次PL = ∫0 L F・W(z)dz*1A2+2A2-5A2-1w(z)は w(z)=10-0.5z で定義される重み係数で深度 z(m)の関数、F はFL 値の関数であり、FL ≧1.0 のとき F=0、FL ≦1.0 のとき F=1.0-FL と定義A2+3A2-7A2-8される。計算深度はZL であり、道路橋示方書ではZL = 20𝑚である。こ化危険度が極めて高いとなる。、黄色が砂層、青が粘土層、茶色が礫質土層、白色が埋土・その他の地盤、青色の破線が地下水位、凡例近見~川尻対象地盤情報のとき、PL =0 では液状化危険度はかなり低い、0<PL ≦5 では液状化危険度は低い、5<PL ≦15 では液状化危険度が高い、15<PL では液状*2前震後液状化地点A2-6本震後液状化地点図-1 近見~川尻間の対象地点図-2 近見~川尻液状化帯内の液状化層の分布図-3 近見~川尻液状化帯外の液状化層の分布Study on liquefaction risk assessment method in the band ofR.Hirata S.Murakami R.Sakamoto Fukuoka Universityliquefaction occurred by the 2016 Kumamoto EarthquakeS.Miwa Tobishima Corporation49 赤でFL ≦1.0 と結果が出た地層を表している。さらに、国土交通省市街地液状化対策推進ガイダンス 3)により定められた手法(公共施設・宅地一体型液状化対策工法の判定基準)による液状化危険度判定では、表層の非液状化層とPL 値との関係が A、B1、B2、B3、C の 5つに区分され、液状化による宅地被害の評価を行っている。この評価法による結果を図-2、3 にも示している。図-2 の近見から川尻地区での液状化が発生した液状化帯内の地域では、地表面で噴砂が発生した。ここでは、液状化層厚が表層付近に厚く存在しており、PL 値がほとんどの地点で 15 を超えていた。一方、図-3 の液状化が発生していなかった帯外の地域では、地表面で粘土層が堆積し、非液状化層(H1)が深い位置に存在していたこと、PL 値が帯内の地域よりは低い傾向にあったことが分かっている。図-2、3 の判定結果では、A、B1 が「顕著な被害の可能性が低い」に属するものであり、それ以外は、液状化の被害が予想されるものである。表より液状化帯内のすべての地点において、顕著な液状化の可能性が予想される地点であることが分かる。一方、液状化の被害が確認されてない、あるいは、噴砂も生じていない帯外の地点では、多くは A、B1 を示し、この判定方法の有効性を示すと考えられるものの、A1-5 では B3、A2-5 では C を示す結果となっている。図-2,3 に示した該当地盤の液状化層を見てみると、表層付近に薄い液状化層が存在するために H1 が小さくなり、その結果、判定が上記のようになったと考えられる。このように、現行の判定方法では、H1 の影響を大きく受けることが分かる。本研究では、それを改善するための新たな評価法を提案する。そこで、PL 値の計算には従来 20m までの深度のFL 値の分布から計算される(これを以降 PL20 と呼ぶ)が、ZL を 10m、5m とした PL10、PL5 を新たに算出した。そ60.0050.00PL値40.0030.00前震、本震後メッシュランクの結果が図-4 である。液状化帯外値およびメッシュランクグラフ液状化帯内前震後メッシュランク54本震後メッシュランクPL53PL10PL20220.00策推 進ガイ ダンス による 液状化 危険度 判定10.000A1-1,AA1-3,AA1-4,AA1-6,AA1-7,AA1-8,AA2-1,AA2-2,AA2-3,AA2-4,AA2-6,AA2-7,AA2-8,AA1-5,B3A1-10,B1A1-2,AA1-9,B1A1+5,CA1+10,CA2+3,CA2+2,CA1+8,B2A1+7,CA2+1,CA1+1,CA2-5,CA1+9,CA1+3,CA1+6,CA1+4,CA1+2,C10.00前震、本震後メッシュランクッシュランクグラフボーリングNo.および国土交通省 市街地 液状化 対策推 進ガイ ダンス による 液状化 危険度 判定図-4 PL 値及びメッシュランクの関係を表したグラフPL20 の値を見ると、前述のとおり深度が 20m以浅のデータがあり、PL 値の大小における規則性が見られなかった。帯内では PL20 が15 以上を超える地点がほとんどであった。帯外でも半数の地点で PL20 が 15 を超える地点が存在し、液状化帯内外で規則性は見られない。また、PL10 でも同様に液状化帯内外で規則性が見られなかった。なお、計算深度ZL 以浅のデータの場合は、その深さまでの検討をしている。一方、PL5 を見てみると、液状化帯外では、0 から 2.6 までであったのに対し、帯内では PL5 が 7.5 以上で噴砂が確認された。このことから、宅地被害に与える液状化層は 5m ぐらいの深さであること、PL5 は PL5<2.6 で液状化する危険性が低いと考えられる。一方、帯内では PL5 が 7.5 以上を記録したところから PL5>7.5 で、液状化危険度が高く、地表面に影響を及ぼすものと考えられる。また2.6<PL5≦7.5 の範囲に、液状化による被害のしきい値があると思われる。今後、事例を増やして解明していくことが必要である。以上のことから、当該地域においては、PL5 を用いて判断することにより、液状化による噴砂の発生状況を統一的に評価することができ、宅地に与えた液状化の影響の評価の指標になることが期待できる。3. まとめ1) 従来の判定法では液状化帯内では統一的に評価できるものの、液状化の発生が確認できていない帯外の地域でも液状化被害の可能性があるとされる地点が存在した。2) この矛盾点を改善するために、新しく提案した PL5 を用いることによって、帯状液状化域内外を統一的に評価できることを確認した。3) この結果、液状化で宅地に影響を与えるのは 5m 以内であり、PL5 が 0<PL5<2.6 では液状化は発生しないと考えられ、現段階で7.5 以上では液状化は発生しやすくなり、地表面に影響を及ぼすことを示した。以上の結果より、当該地域においては、PL5 を用いて判断することにより、液状化による噴砂の発生状況を統一的に評価することができ、宅地に与えた液状化の影響の評価の指標になることが期待できる。【謝辞】 本研究を進めるにあたり、国土地理院より空中写真を、熊本市役所震災宅地対策課よりボーリング柱状図および土質試験データを提供いただいた。記して謝意を表します。【参考文献】 1) 平田涼太郎、村上哲、櫨原弘貴: 液状化ハザードマップに利用するメッシュサイズの検討, 土木学会西部支部研究発表会講演概要集 , pp.357-358, 2017.2) R. Hirata et al.: Liquefaction Expansion Caused By Foreshock And Main Shocks Of Japan’s 2016Kumamoto Earthquake, International Symposium on Lowland Technology 2018, No.80, 2018.3) 国土交通省都市局都市安全課、市街地液状化対策推進ガイダンス【本編】、2016.4) 平田 涼太郎、村上 哲、櫨原 弘貴、野見山 陽、三輪 滋: 平成 28 年熊本地震における帯状液状化域における地盤特性と液状化影響,土木学会西部支部研究発表会(2019 年 3 月発表予定)50前震本震5
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  • タイトル
  • 平成28年熊本地震で生じた3つの帯状液状化とその地盤特性
  • 著者
  • 坂本龍太朗・村上 哲・平田涼太郎・三輪 滋
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 47〜48
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400024
  • 内容
  • 0024A - 10第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月平成 28 年熊本地震で生じた 3 つの帯状液状化とその地盤特性液状化層、砂質土、帯状液状化1. はじめに平成 28 年熊本地震では熊本平野において広範囲で液状化が生じた。東北地方太平洋沖地震で生じた面的な広がりを持つ埋立地盤における液状化だけでなく、旧河道や自然堤防の一部で液状化の帯(近見・川尻地区、土河原地区、城山薬師・半田地区の 3 本の液状化帯)として現れたような限定した範囲で生じたのが特徴的である 1)。既往の研究で近見、川尻地区の液状化帯内では表層付近に液状化層である砂質土層が存在し前震後から本震後の液状化域の拡大が見られ、帯外では表層付近に粘性土層が存在し前震後、本震後ともに液状化は発生していないという知見が得られている 2)。そこで、本研究では土河原地区、城山薬師・半田地区の帯状液状化と地盤特性の関係を調査し、既往の近見・川尻地区の研究と併せて報告する。2. 調査方法本研究では、空中写真、50mメッシュによる噴砂判読3),4)と熊本平野のボーリングデータ(以下、BD と略す)を収集し道路橋示方書 5)による液状化判定を行い、3 つの帯状液状化とその地盤特性を調査した。液状化判定では熊本市の地盤の BD および中央開発株式会社の液状化判定ツールを用いて行い H1(非液状化層厚)、5m液状化層厚、10m液状化層厚(深度 5m、10m以内に存在する FL 値(液状化に対する安全率)が 1 以下の液状化層厚)を算出した。入力する物性値は中央開発株式会社リファレンスマニュアル(Version5.5)および熊本市液状化技術対策検討委員会資料を参考にした。なお、シルト質土は粘性土に分類され、近見・川尻地区から城山薬師・半田地区にかけての調査結果より、Fc(細粒分含有率)=72.6%、Ip(塑性指数)=25.3 となることから、非液状化層とした。3. 3 つの帯状液状化と地盤特性図-1~4 は近見、川尻地区、土河原地区、城山薬師・半田地区の液状化判定を行った BD をナンバリングしたもので、表-1~6 は図-1~4 の地区の地盤堆積構造と液状化判定結果、前震後と本震後のメッシュランク(ランク 1:緑、ランク 2A:黄、ランク 2B:橙、ランク 3:赤、ランク 4:濃い赤)4)についてまとめたものである。表-1 から先にも述べたように近見・川尻地区帯内では表層から深度 2m前後から液状化の可能性が高い砂質土層が堆積しており、5m液状化層厚では 3.4m程度、10m液状化層厚では 7.5m程度であり、表層の液状化層が厚いことが分かる。また、前震後と本震後のメッシュランクから表層に液状化層が堆積している地点での液状化域拡大が確認できる。表-2 から近見・川尻地区の帯外では表層付近に粘性土層が堆積していることが分かる。H1 は 8.0m前後、5m液状化層厚は 0.2m程度、10m液状化層厚は 2.5m程度と帯内と比較して液状化層は深い位置にあり、5m、10m液状化層厚も非常に薄いことが分かる。また、前震後、本震後のメッシュランクから液状化域の拡大は見られていない 2)。○福岡大学 学生会員 坂本龍太朗福岡大学 国際会員 村上 哲福岡大学 学生会員 平田涼太郎飛島建設 国際会員 三輪 滋A1-1A1+3A1-2A1+4A1-3A1+5A1+6A1-4A2+1A1+1A1+2A2-1A2-7A2-8A2+3A1-5A2-4A1-6A1+7A1-7A1+8A1-8A1-9A1+9A1-10A1+10A2+2A2-3A2-5A2-2凡例凡例:液状化帯:ボーリング地点加勢川A2-6:液状化帯:ボーリング地点図-1 近見地区液状化帯図-2 川尻地区液状化帯表-1 近見・川尻地区液状化判定結果(帯内)NoA1+1A1+2A1+3A1+4A1+5A1+6A1+7A1+8A1+9A1+10A2+1A2+2A2+3地下水位2.050.81.31.61.62.12.20.851.11.331.30.951.93H1(m)2.050.81.32.32.32.12.23.31.11.332.302.302.90前震後のランク102A0112A11101本震後のランク302A1312A12A41105m液状化層厚(m)2.954.203.703.403.102.903.153.403.903.674.202.902.8010m液状化層厚(m)5.958.407.708.407.504.558.155.058.207.428.007.607.8005(m)凡例10(m)FL値(FL≦1)砂質土粘性土15(m)埋土、盛土礫質土地下水位20(m)表-2 近見・川尻地区液状化判定結果(帯外)A1-1A1-2A1-3A1-4A1-5A1-6A1-7A1-8A1-9A1-10A2-1A2-2A2-3A2-4A2-7A2-8地下水位1.91.253.520.80.80.70.50.80.851.01.571.211.21.080.93.123.43.55H1(m)5.64.56.06.32.18.310.36.74.23.18.25-9.808.501.2010.307.906.50前震後のランク00000000000000000本震後のランク1000000000000000000.000.500.000.000.500.000.000.000.100.500.000.000.000.001.500.000.000.00-5.503.054.702.502.200.102.103.903.901.750.000.201.973.801.502.103.00No5m液状化層厚(m)10m液状化層厚(m)A2-5A2-605(m)凡例10(m)FL値(FL≦1)砂質土粘性土15(m)埋土、盛土礫質土地下水位20(m)土河原地区帯内では、表-3 より表層から深度 2m前後から液状化層である砂質土層が堆積するものの、5m液状化層厚は 2.2m程度、10m液状化層厚は 4.9m程度と近見・川尻地区帯内 2)と比較して層厚は薄く、前震後と本震後のメッシュランクから表層付近に液状化層が堆積している地点で液状化域が拡大したことが分かる。しかし、B2+3 の BDでは表層から深度 5mまで粘性土層が堆積しているが液状化域の拡大が見られた。土河原地区帯外では、表-4 から近見・川尻地区帯外と異なり、表層から深度 2.0m前後から液状化層である砂質土層が存在するが、5m液状化層厚は 1.7m程度、10m液状化層厚は 4.9m程度であり、帯内の液状化層厚と比較して薄いことが分かる。また、近見・川尻地区帯外同様、前震後と本震後のメッシュランクから噴砂は見られていない。Ground profiles in liquefaction bands occurred by the 2016Kumamoto EarthquakeR. Sakamoto, S. Murakami, R. Hirata, Fukuoka UniversityS, Miwa, Tobishima Corporation47 B1-6B1-1B1+2白川C1-2B1+1B1+4B1+5B1+6B1+7B1-3B1-5C2-4C2-3B1-4B2+6C1+1C2+1C2-2C2+3B2+2C2-1B2-1B2-4B2+7C1+2C1-1C1+3B1+8B2-3C1+3C1+4B1-2B1+3B2+1B2-5B2-2B2+3B2+8B2+5凡例B2+4凡例:液状化帯:液状化帯:ボーリング地点:ボーリング地点図-3 土河原地区液状化帯表-3 土河原地区液状化判定結果(帯内)図-4 城山薬師・半田地区液状化帯表-5 城山薬師・半田地区液状化判定結果(帯内)NoB1+1B1+2B1+3B1+4B1+5B1+6B1+7B1+8B2+1B2+2B2+3B2+4B2+5B2+6B2+7B2+8C1+2C1+3C1+4地下水位0.520.521.50.691.181.121.381.531.621.10.980.650.61.121.500.85地下水位4.01.351.52.000H1(m)1.351.319.000.691.181.121.383.101.901.505.051.702.001.121.800.85H1(m)4.51.355.82.02.684.91.530000101011032A003前震後メッシュランク00100(水中)0(水中)0(水中)本震後メッシュランク前震後のランク本震後のランクNoC1+1C2+1C2+2C2+302B1002B03033442A00100100(水中)0(水中)0(水中)5m液状化層厚(m)3.702.070.004.012.571.982.121.902.352.550.002.533.001.481.903.055m液状化層厚(m)0.502.250.002.852.320.103.2710m液状化層厚(m)7.253.671.005.614.776.084.824.105.105.052.554.334.104.306.908.0510m液状化層厚(m)3.355.154.105.856.625.104.47空洞5m5(m)凡例FL値(FL≦1)凡例FL値(FL≦1)砂質土10(m)10m粘性土砂質土埋土、盛土粘性土埋土、盛土礫質土15(m)15m地下水位礫質土地下水位20m20(m)表-6 城山薬師・半田地区液状化判定結果(帯外)表-4 土河原地区液状化判定結果(帯外)B1-2B1-3B1-4B1-5B1-6C2-2C2-3C2-4地下水位2.90.31.10.81.61.61.51.71.11.01.0地下水位0.41.80.75.325.13.3H1(m)B1-12.91.051.13.401.61.62.502.002.901.102.00H1(m)5.201.808.158.155.13.3前震後のランク00000000000前震後メッシュランク00000本震後のランク00000001000本震後メッシュランク0000005m液状化層厚(m)1.702.651.401.403.052.601.101.800.901.200.805m液状化層厚(m)0.003.203.950.000.000.8010m液状化層厚(m)1.905.653.401.406.406.803.305.301.354.904.0010m液状化層厚(m)3.605.358.353.504.305.80NoB2-1B2-2B2-3B2-4B2-5NoC1-1C1-2C2-105m5(m)凡例凡例FL値(FL≦1)FL値(FL≦1)砂質土10(m)埋土、盛土礫質土粘性土埋土、盛土10m粘性土砂質土15(m)15m地下水位礫質土地下水位20m20(m)城山薬師・半田地区の帯内では、表-5 より H1、5m、10m液状化層厚はそれぞれ 3.3m前後、1.6m程度、5.0m程度と比較的深い位置に層厚が薄い液状化層が堆積していることが分かる。噴砂判読が難しい水域の BD(C2+1,2,3)もあるが、前震後と本震後のメッシュランクから BD 地点での液状化域拡大は確認できなかった。城山薬師・半田地区帯外は、表-6 より表層付近に液状化層である砂質土層が堆積する BD も存在するが、H1 は 4.0m前後、5m液状化層厚は 1.3m程度、10m液状化層厚は5.2m程度であり、帯内と比較して液状化層は深い位置にあり 5m液状化層は薄いことが分かる。また、近見・川尻地区帯外同様、前震後と本震後のメッシュランクから噴砂は見られていない。以上より、近見・川尻地区、土河原地区、城山薬師・半田地区の 3 地区の液状化の帯内では、噴砂判読が難しく噴砂が確認できない BD 地点もあったが、噴砂が確認できたBD 地点では表層付近に砂質土層が堆積していた。この砂質土層はおおよそ深度 5mまでに層厚約 2.2m以上であれば噴砂が発生する可能性が高い傾向にあると考えらる。しかし、土河原地区帯内では B2+3 のように表層付近に粘性土層が存在する地点での液状化域拡大が見られたことから、この粘性土層が、低塑性の粘性土であれば液状化の可能性が考えられ、今後、粘性土層の物性値を調査し、液状化判定を再度実施する必要があると考えられる。一方、液状化の帯外では噴砂は確認できず、表層付近に粘性土層が堆積しており、砂質土層も確認できたがその層厚は帯内と比較して 5m液状化層厚では約 1.7m以下と薄いことが分かった。しかし、城山薬師・半田地区では帯内だが 5m液状化層厚は 1.6m程度であり、他の 2 つの地区の帯内の液状化層厚と比較して薄いことが分かる。これは城山薬師・半田地区の BD 数が少ないことが要因の一つとして考えられる。現時点で、この地区の帯内の BD 調査地点では噴砂は確認できていないが、調査地点以外では噴砂は確認されているため、今後、城山薬師・半田地区の BD 数を増やし、より詳細に調査する必要があると考える。よって、おおよそ深度 5m までの液状化層の層厚が液状化帯域での噴砂の発生状況に影響を及ぼしたことが分かり、このことについては、近見・川尻地区、土河原地区、城山薬師・半田地区にかけての帯状液状化の地盤特性の共通点であると言える。4. まとめ本研究では、メッシュランクによる噴砂判読及び、熊本市の BD を収集し、道路橋示方書による液状化判定を行った。そして、熊本地震において生じた、土河原地区、城山薬師・半田地区の帯状液状化と地盤特性について調査を行い、既往の近見、川尻地区の研究と併せて報告した。その結果、以下の知見が得られた。1)近見・川尻地区、土河原地区、城山薬師・半田地区の 3 地区の液状化の帯内では、噴砂が確認できた BD 地点で表層付近に砂質土層が堆積しており、液状化の帯外では噴砂は確認できず、表層付近に粘性土層が堆積していた。2)土河原地区帯内では B2+3 のように表層付近に粘性土層が存在する地点での液状化域拡大が見られたことから、この粘性土層が、低塑性の粘性土であれば液状化の可能性が考えられ、今後、粘性土層の物性値を調査し、液状化判定を再度実施する必要があると考えられる。3)おおよそ深度 5m までの液状化層の層厚が液状化帯域での噴砂の発生状況に影響を及ぼしたことが分かり、このことについては、近見・川尻地区、土河原地区、城山薬師・半田地区にかけての帯状液状化の地盤特性の共通点であると言える。【謝辞】本研究を進めるに当たり、国土地理院より空中写真を、熊本市役所よりボーリング柱状図および土質試験データを提供いただいた。記して謝意を表します。【参考文献】1) T.Mukunoki et al : Reconnaissance report ongeotechnical damage caused by an earthquake with JMA seismicintensity7twice in 28h,Kumamoto,Japan,Soils and Foundations58(6).pp.947-1088. 2) R. Hirata et al:Liquefaction expansioncaused by foreshocks and main of Japan’s 2016 Kumamotoearthquake,InternationalSymposiumonLowlandTechnology,No80(2018.9) . 3)田辺隼ら:平成 28 年熊本地震で現れた液状化帯上での前震・本震による液状化域拡大,土木学会西部支部研究発表会講演概要集,pp.365 (2017.3)4)坂本ら:平成 28 年熊本地震で生じた土河原、城山薬師・半田地区の帯状液状化と地盤特性,土木学会西部支部研究発表会,(2019.3 月発表予定) 5) (社)日本道路協会,道路橋示方書・同解説 V 耐震設計編,平成 24 年 3 月48
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  • タイトル
  • 試験後試料を活用した地学・防災教育の取り組み
  • 著者
  • 毛利貴子・柴崎達也・神野郁美・吉島由子・大野真央
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 45〜46
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400023
  • 内容
  • 0023A - 09第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月試験後試料を活用した地学・防災教育の取り組み防災教育試験後試料国土防災技術株式会社正会員○毛利貴子国土防災技術株式会社正会員柴崎達也国土防災技術株式会社非会員神野郁美国土防災技術株式会社非会員吉島由子国土防災技術株式会社非会員大野真央1.はじめに本稿では、土質試験後の試料を活用した地学・防災教育の取り組みについて紹介する。2018 年 7 月 31 日~8 月 2 日に東京都内の国立科学博物館で開催された「2018 夏休みサイエンススクエア」イベントで小学生を対象に、土砂災害に関する防災教育や、砂・粘土を活用したお絵かきの体験教室を行った(写真-1)。3 日間で合計 168 名の参加があり、日頃取り込んでいる地質調査業の知見を活かしながら、土砂災害に対する理解を深めるための地学・防災教育を行なった。2.イベントの目的「地球のカケラのひみつを知ろう!」の企画名でイベントを開催した。身近にある写真-1 イベントの様子礫・砂・粘土を“地球のカケラ”として表現し、気軽に地学を始めとする自然科学や自然災害に関する理解を深めてもらうことを目的とした。子供たちが主体的にイベントに参加し、土を礫・砂・粘土に分けることで「観察の楽しさ」「知らなかったことを知る面白さ」を体験してもらった。3.イベントの内容3.1.ふるい分け実験土は粒の大きさの違いによって分類が変わることを説明したあとに、2.00mm のふるいと 0.75mm のふるいを使って、土のふるい分け実験を行った(写真-2)。粒径ごとに分けた土を子供たちに触ってもらい、シルト粘土の細かい手触りや、礫のゴツゴツした感触を体験してもらった。ふるい分け実験を行なったあとに、岩石の種類について説明をした。岩石の種類では、マグマが冷えて固まった火成岩・山や川で砂や泥が積み重なって固まった堆積岩・地下深くで熱や圧力の作用を受けて形成された変成岩などについて説明をし写真-2 ふるい分け実験た。3.2.土砂災害について理解を深めるための学習写真を使って土砂災害について説明をした。土砂災害は、山や谷の土砂が大雨などで一気に押し流される“土石流”、急な斜面が突然崩れ落ちる現象として“がけ崩れ”、緩い斜面が広い範囲にわたりすべり落ちる現象として“地すべり”があり、災害は地質によって起きる現象が変わることを学習した。また、地震が発生したときに地盤が液体状になる現象として“液状化”の説明も行った。こうした災害に対する対策についても学習した。地すべり対策工事の事例を紹介し、抑制工の集水井工・排水トンネル工や抑止工の杭・アンカー工について説明をした。災害現場の地形・地質や自然環境に配慮しながら対策工事を行なっていることを紹介した。3.3 土質試験後試料を使ったお絵かき体験日本国内では多様な地質体で地すべりが発生しており、地域の岩盤を構成している岩石の色調は様々で風化や変質によっても多様である。地すべり地の粘土は含有する鉱物や風化の特性から多様な色調を有することが知られている 1)。地すべり地でのボーリング調査やブロックサンプリングにより採取し、土質試験を実施した試料をリサイクル活用している。粘土によるパステル作画や、粒径ごとに分けた砂よる砂絵を考案した(写真-3)。この粘土・砂を用いたお絵かき作業はとても簡単でわかりやすく、子供から大人まで誰でも参加できる。使用する粘土や砂の選び方で、作品の表情は多彩な色合いを見せ、材料があれば場所は選ばず作画できる。今回のイベントは小学生が対象であったが、子供から大人まで楽しめる内容になっている。写真-3 お絵かき体験Educational activities on earth on science and disaster prevention using tested soil materials; Mouri Takako,Shibasaki Tatsuya, IkumiKamino,Yuko Yoshijima, and Mao Ohno (Japan Conservation Engineers & Co., Ltd)45 3.3.1 粘土を使ったお絵かき地すべり地のすべり面粘土は粘土含有率が高いため、液性限界・塑性限界試験で用いる 425μm以下粒径分の粘性土を白玉くらいの大きさに丸め、ゆっくり乾燥させることでパステル調の画材が作成できる。基本的な作画の方法は、画用紙を敷いて好きな図案の型紙を置き、粘土のパステルを 1 円玉で削って粉を指につけてお絵かきをする(写真-4)。粘土を水に溶いて、水彩画のように作画することもできる。粘土のパステルの色合いはとてもやさしく、柔らかい印象の作品に仕上がる。①粘土のパステルを用意③画用紙に指で粘土を重ねる②1円玉でパステルを削る④完成写真-4 粘土を使った作画手順3.3.2 砂を使ったお絵かき地すべり地などから土質試験用に採取した試験後の試料を粗砂(0.85 ㎜~2.00 ㎜)、中砂(0.25 ㎜~0.85 ㎜)、細砂(0.75 ㎜~0.25mm)にふるい分けする。砂を粒径ごとに分けて砂絵に用いることにより、作品が立体的に仕上げられる。同じ現場の砂でも、粒径ごとに分けると、鉱物の構成が変化し色が変化する。砂絵の台紙には、模様の切り込みが入っている糊付きパネルを使用する。好きな砂を選んでシールを剥がし、模様の上に砂をのせて、払う(写真-5)。同じ作業を繰り返して砂絵を完成させる。自然の砂で作った砂絵は粘土のパステルに比べ、色が鮮明で華やかな印象の作品に仕上がる。①シールをはがす②砂をのせる④同じ作業を繰り返す③砂を払う⑤完成写真-5 砂を使った作画手順4.おわりに昨今、子供たちの理科離れのニュースを聞く機会が増え、地学への関心も低下の一途を辿っている。この企画では、土質試験後の試料を礫・砂・粘土に分け土の特性を分かり易くすることで、地学分野について理解を深める機会となることを期待している。砂や粘土を用いて絵を描くことで、五感を通した自然科学的な視点や感性を養い、自分の住む地域の地質や自然史について興味をもって頂きたいと考える。例えば、恐竜時代であるジュラ紀の地層から採取した粘土で恐竜を描いたことで、地球の歴史にも興味をもって頂くこともできた。イベントで土を扱うに当たっては、小さい子供が口にしないように注意したり、工作後に手をしっかり洗浄することはもちろんのこと、必要に応じて X 線回折試験や蛍光 X 線分析によって試料に含まれる鉱物や元素などの測定も検討していきたい。測定を行なうことによって、有害物質を含まないものであると説明すれば、参加者の安全につながり、土の起源となった地質的な背景や岩石の特性の理解につもながると考えている。環境省では、ごみを限りなく減らし、そのことでごみの焼却や埋め立て処理による環境への負担を少なくして、限りある地球の資源を有効的に活用し、くり返し使う社会(これを「循環型社会」という)を実現するため、“3R(リデュース、リユース、リサイクル)”というキーワードを提唱している2)。土質試験も土質試験試料量を適正に把握して、必要な量の土を現場から採取することで、廃棄処分する試料の量の低減させることも必要である。土質試験後の試料も再利用・再生利用し、環境にも配慮しながら防災教育にも活用していきたい。今回のイベントでは、子供たちや保護者にも興味をもって参加してもらい、土砂災害についての理解を深める機会となった。イベントを通じて家庭でも防災について考えるきっかけになれば幸いである。参考文献1) 柴崎,他:スキャナーを用いた地すべり粘土の色彩評価,第 40 回地盤工学研究発表会,2005 ,pp281-2822) 環境省:3R とは環境省 HP より(2019 年 3 月 2 日取得)46
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  • タイトル
  • 吸水膨張する樹脂と粘土鉱物など地盤環境系工業材料を関連付けた実験と講座(ジオ ESD)事例 ( 持続可能な開発目標(SDGs)達成を目指した学習教材の研究 その一 )
  • 著者
  • 浜野真季・浜野廣美・水野克己・乾  徹・勝見 武・遠藤和人
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 43〜44
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400022
  • 内容
  • 0022A - 09第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月吸水膨張する樹脂と粘土鉱物など地盤環境系工業材料を関連付けた実験と講座事例( 持続可能な開発目標(SDGs)達成を目指した学習教材の研究 その一 )SDGs, ESD, GEOESD地域地盤環境研究所正会員水野克己大幸工業正会員浜野廣美大幸工業正会員○浜野真季国立環境研究所国際会員遠藤和人大阪大学大学院国際会員乾徹京都大学大学院国際会員勝見武1. はじめに持続可能な開発目標(SDGs)とは、貧困に終止符を打ち、地球を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにすることを目指す普遍的な行動である。持続可能な社会づくりの担い手を育む教育(以下、持続発展教育(ESD)と呼ぶ)とは、グローバルに考え、ローカルに行動する身につけ、課題解決につながる価値観や行動を生み出し、持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動である1)。企業が持続可能な開発目標(SDGs)を達成するために、経営理念と、既存の企業の社会的責任(CSR)と、既存の事業活動をいかに紐づけるかは重要な課題である。まして、地盤環境系の産業界や学会などでは、持続可能な開発目標(SDGs)と直接・間接的に関わりがあるにも関わらず、持続発展教育(ESD)の取り組が不十分である。血液の循環に例えて「動脈産業」に例えられる製造業などでは、示す企業理念と事業活動(製品・サービス)のロジックモデルから持続可能な開発目標(SDGs)に紐づけできる。しかし、むりやり理念や過去の社会的責任(CSR)を持続可能な開発目標(SDGs)にあわせていないか疑念を持つ企業もいる。また、「静脈産業」と言われている廃棄物や再生処理業界では、経営理念と既存の事業活動だけで持続可能な開発目標(SDGs)に紐づけするには難がある。このため、基本的な考え方に示される①~⑧のキーワードに、地盤環境系工業材料を関連図-2 持続可能な開発目標(SDGs)17 の目標と、持続発展教育(ESD)付けた実験と講座(以下、ジオ ESD と呼ぶ)をの基本的な考え方に示されるキーワード(①~⑧)考案した。これは、持続可能な開発目標(SDGs)を達成することが目的である。図-1に持続可能な開発目標(SDGs)17 の目標と、持続発展教育(ESD)の基本的な考え方に示される①~⑧のキーワードを示す。図-2 に地盤環境系工業材料に持続発展教育(ESD)を関連付けた新たなモデルを示す。実験と講座(ジオESD)に使われる地盤環境系工業材料とは、水惑星地球だけに存在するベントナイトなどの粘土鉱物や、フミン・フルボ酸を含有する腐植土や、石油などから人類が創作した吸水性樹脂などである 2)。本論では、地盤環境系工業材料と持続発展教育(ESD)を関連付けた、外国人留学生を対象とした実験と講座事例も併せて報図-3 地盤環境系工業材料に持続発展教育(ESD)を関連付けた新たなモデル(ジオ ESD)告する。IngoalsMizuno Katsumi1 Geo-Research Institute1 Hamano Hiromi2(SDGs)Examples of courses that associate ground environmentalordertolinkwithsustainabledevelopmentHamano Maki2 Daiko CO.,LTD2 Endou Kazuto3 Nationalindustrial materials with sustainable development educationInstitute for Environmental Studies3 Inui Toru4 Oosaka(GEO ESD)University4 Katsumi Takeshi5 Kyoto University543 2. 廃棄物処理・再生処理業における課題廃棄物処理・再生処理業に従事する社員には、運転車の乗務員、重機の運転手、工場の運営・管理から営業や事務まで職種が幅広く、学歴や環境・経験も異なる。また、建設や製造業などの「動脈産業」よって、廃棄物処理・再生処理業の「静脈産業」も変化する。「動脈産業」と同じように専門的で高度な知識の押しつけは、持続可能な開発目標(SDGs)に対して理解が得られない。このため、地盤環境系工業材料を実験で観察した後に、講座を行う手法を考案した。3. 地盤環境系工業材料の実験地盤環境系工業材料の実験を説明すると、No1.は、粒状の粘土を用いた止水性と自己修復の観察である。No2.は、吸水性樹脂を用いた吸水膨張の観察である。No3.は、水と粘土量の違いで、粘りの違いの観察である。No4.は、透明な粘土(粘りの違い)で、浮力と重力の観察である。No5.は、水の中でブラウン運動する、コロイドの観察」である。No6.は、泥水に電気を流し状態の観察」である。No7.は、粘土の水量を固体から液体まで変えた観察である。No8.は、足の裏、手の平で、粘土の柔らかさと硬さを、泥だんごの観察である2)3)。これら実験は、全ておこなうものではなく、受講者にあわせて選択される。4. 外国人留学生を対象とした実験と講座事例2019 年 1 月 16 日、神戸医療福祉大学(大阪天王寺キャンパス 71 教室 7 階)において、日本在籍 2 年程度のベトナム、ネパール、中国、フィリピン、インドネシア留学生)を対象とした実験と講座を開催した。ボランテア・スタッフは、大幸工業 株式会社(代表取締役 浜野廣美)社員と関係者だけでなく、神戸医療福祉大学、地域地盤環境研究所、京都大学大学院生、平林地域活動者、住之江区まちづくりセンター、住之江区社会福祉協議会など総勢 15 名の有志による協働であった。講座のプログラムは、まず社会貢献(CSR)や、持続可能な開発目標(SDGs)の必要性を講演で教えた。講演の次ぎに、No1.粒状の粘土を用いた止水性と自己修復の観察と、No2.吸水性樹脂を用いた吸水膨張の観察」を行った。そして、No8.足の裏、手の平で、粘土の柔らかさと硬さを泥だんごで観察を行った。なお、「泥だんご」を作れと言っても、別の形を作る外国人留学生もいた。しかし、これこそ多様化を目指す意義がある。「泥だんご」の製作は一人当たり約 250g の粘土が必要で、70 人の外国人留学生だと合計 20kg 以上の粘土を用意しないといけない。また、ボランテア・スタッフ一人に対して外国人留学生五~六人の対応が限度である。講座の最後は、持続発展教育(ESD)の基本的な考え方に示されるキーワードから、持続可能な開発目標(SDGs)に関連する講座をおこなった。持続発展教育(ESD)を受講した証しとして、各自が製作した「泥だんご」共に、スタッフと留学生で笑顔の写真を撮った。講座は、J:com チャンネルデイリーニュース大阪(株式会社 ジュピターテレコム)でインターネット放送された。5. まとめ持続可能な開発目標(SDGs)は発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものである。しかし、異なる企業理念と事業活動のロジックモデルから持続可能な開発目標(SDGs)到達の可能性が少なくなる。学術の地盤環境工学においても同様に、従来の力学という基盤からの出発点だと到達の可能性は少ない。しかし、バックキャステング思考( 持続発展教育(ESD)の基本的な考え方に示される①~⑧のキーワードに、地盤環境系工業材料を関連付けた実験と講座 )だと可能性は高くなる。その理由は、水惑星地球だけに存在するベントナイトなどの粘土鉱物や、フミン・フルボ酸を含有する腐植土や、石油から人類が創作した吸水性樹脂など、地球と直接関わる地盤環境系工業材料だからである。本論では、持続可能な開発目標(SDGs)を達成するため、持続発展教育(ESD)の基本的な考え方に示される①~⑧のキーワードに、地盤環境系工業材料を関連付けた実験と講座事例を報告した。事例では、社会貢献(CSR)や、持続可能な開発目標(SDGs)の講習したことが、外国人留学生の帰国後の就労や人生に活かせることがスタッフ一同の願いである。外国人留学生を対象とした講座が、国内の「動脈産業」や「静脈産業」などに従事する社員に対して、フィードバックし、やがて持続可能な開発目標(SDGs)が達成し、それと共に、資源循環型社会も実現すると信じている。謝辞:地盤環境系工業材料と持続発展教育(ESD)を関連付けた新たなモデルと講座の原案は、GRI ベントナイト問題研究会(会長 水野克己)で企画・製作された。企画・製作にあたり、数多くの方々から資料の提供を受けた。また、外国人留学生を対象とした講座に際し、神戸医療福祉大学 大阪天王寺キャンパス 事務局長 海野昭一氏、准教授 鈴木大介氏には、多大なるご協力を頂いた。ここに謝辞を述べる。参考文献1)文部科学省国際統括官付(日本ユネスコ国内委員会事務局):ESD(持続可能な開発のための教育)とは?http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2015/05/01/1357392_08.pdf2)水野克己・近藤三二:ベントナイトの特性と環境汚染防止分への応用,土と基礎,Vol.49,No.2,pp29-32,20013)水野克己:「どろだんご」で繋がる人生経験,地盤工学会誌,Vol.63,No.7,Ser.No.690,Hp4-Hp5,2015https://www.jiban.or.jp/file/kaishi/27-7/HP4-5.pdf44
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  • タイトル
  • 生命の進化に繋がる、海底の地下での化学進化説における粘土鉱物の役割 ( 持続可能な開発目標(SDGs)達成を目指した学習教材の研究 その二 )
  • 著者
  • 水野克己・平野浩一・乾  徹
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 41〜42
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400021
  • 内容
  • 0021A - 09第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月生命の進化に繋がる、海底の地下での化学進化説における粘土鉱物の役割( 持続可能な開発目標(SDGs)達成を目指した学習教材の研究 その二 )化学進化SDGsESD地域地盤環境研究所正会員○水野克己地域地盤環境研究所正会員平野浩一大阪大学大学院工学研究科国際会員乾徹1.はじめに化学進化とは、地球に有機物ができて、生物が生まれる最も初期の過程を化学進化と言う。海底の地下での化学進化においては、還元環境で有機物を濃縮し“特定の有機分子”を重合させる、細胞膜の代用となる触媒作用のような環境が必要不可欠である。J. D. Bernal1)は「粘土鉱物の触媒作用」を最初に指摘している。図-1 にモンモリロナイトの膨潤及び分散と会合構造を示すように鉱物は、水で膨潤し、集合、分散、凝結、解泥し、金属イオンをイオン交換する。そして、無機物でありながら有機化合物間の化学反応を進める触媒能(有機界と無機界を繋ぐ性質)をもっている。このため、「巨大な表面積を持つ多様性の触媒層」とも呼ばれていると図-3「海洋における生物・有機分子の自然選択説4)2)。中沢弘基氏らは図-2「海底地下での分子進化説3)」」を主張している。粘土鉱物の役割が大きい「海底の地下での化学進化説」への支持者が増えることは、粘土鉱物研究者にとって喜ばしく、地盤環境系工業材料を関連付けた実験と講座(以下、ジオ ESD と呼ぶ)にも繋がる。本論では、中沢弘基氏ら主張する海底の地下で化学進化説と粘土鉱物の関わりを、化学進化説のなかで俯瞰できるように図で示したので報告する。図-1 固体の濃度を変えたモンモリロナイトの膨潤から分散、凝集、会合までを俯瞰した図図-2「海底地下での分子進化説 3)」図-3 「海洋における生物・有機分子の自然選択説 4)」Role of clay minerals such as montmorillonite in chemicalMizuno Katsumi1 Hirano Koichi1 Geo-Research Institute1evolutionInui Toru2 Oosaka University241 図-4海底の地下で化学進化説と粘土鉱物の関わりを俯瞰した図2.粘土鉱物の物理化学的作用と化学進化の関わり化学進化の 1 段階として、メタン(CH4),アルデヒド(H2CO),アンモニア(NH3)など単純な有機化合物が重合縮合を繰り返す。第 2 段階では,生命を構成している物質の構成単位となっているアミノ酸,単糖,核酸塩基などが生成する。第 3 段階ではアミノ酸,核酸塩基,単糖が結合し高分子化合物であるタンパク質,核酸,多糖類が生成する。第4 段階として外界から仕切りができて,代謝をする複合物質系が生成し命(原始生命)が誕生したと言われている。ここで、合成された複雑な高分子有機物 (生体高分子)などを生成するための生体内の反応は、全て水溶液中で起こるため水は必要である。しかし生体高分子は、水溶液中では加水分解するため不安定である。しかも、粘土鉱物の触媒作用は重合と分解の両方に作用するので、海水など一定の条件の中にあるだけでは化学進化(高有機分子に向かう進化)に寄与できない。3.「海底地下での分子進化説」と「海洋における生物・有機分子の自然選択」中沢弘基氏は、初期地球に海が出現した後、海底地下に単純な有機物が濃集し、海底堆積物が圧密・脱水される過程でより複雑な有機物へと“進化”したとする説を支持している3)。そこで「何々(典型的には水)があれば生命が発生する」とする一般の生命起源論でなく、「低有機分子が海水、海底、地下と存在環境が変わる中で、粘土鉱物の触媒作用が働いて、低有機分子が高有機分子化に一方的に働くと主張している3)。これは、図-3 に示すように炭化水素のような疎水性分子は、相互に凝集して海面に浮上し、油膜となる。図-2 に示すようにアミノ酸などの親水性有機分子(生物・有機分子)は海水中に溶解または分散溶解・粘土鉱物粒子に吸着・凝集、重力・沈降し堆積・重合する。これが「海洋における生物・有機分子の自然選択」である。そして、堆積・重合した親水性分子(生物・有機分子)は合成された複雑な高有機分子に化学進化することが、中沢弘基氏が主張する「海底地下での分子進化説」である。4.まとめ化学進化に中沢弘基氏が主張する「海洋における生物・有機分子の自然選択」と「海底地下での分子進化説」を取り入れ、これに粘土鉱物の関わりを加えた図を図-4 に示す。簡単な実験で、分散した粘土鉱物コロイド粒子に、低分子業凝集剤と高分子凝集剤を加えると凝集沈殿する。両者の違いは、低分子と高分子の分子量だけで、水と粘土鉱物は共通する。簡単に言えば、低分子と高分子の移行がどのように行われたのかを解明するのが中沢弘基氏の研究であった。中沢弘基氏は、「化学進化では、存在環境でサバイバルした低分子がダイナミックなプロセスを至らないと生命が誕生する高分子に低分子が繋がらないと」と強く論じておられていた。この研究は、GRI ベントナイト問題研究会(会長 水野克己)によって調査したものを編集したものである。謝辞:中沢弘基氏には図-4 の作製に関して加筆指導して頂いた謝辞を述べます。5.参考文献1)橋爪秀夫:化学進化における粘土鉱物の役割,粘土科学第 40 巻第 3 号 152-168,2001.2)佐藤努:粘土鉱物の水和と吸着水の構造,鉱物学雑誌,第 25 巻第 3 号,99~110,1996.3)中沢弘基:原始地球における生物有機分子の出現と自然選択,Viva origino 37,pp52-pp60,2009.4)Otake Et al:Stability of Amino Acids and Their Oligomerization Under High-PressureConditions,Implications for Prebiotic Chemistry. ASTROBIOLOGY Volume 11, Number 8, 2011.5)胸組虎胤(むねぐみ とらたね):化学進化と生命の起源の考え方,鳴門教育大学研究紀要,第 28 巻 2013.42
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  • タイトル
  • 3Dプリンターの地盤材料モデルへの適用とその研究動向
  • 著者
  • 竹村貴人・西本壮志・下茂道人・清木隆文・佐ノ木哲
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 39〜40
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400020
  • 内容
  • 0020A - 01第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月3D プリンターの地盤材料モデルへの適用とその研究動向3D プリンター 地盤材料モデル 日本大学文理学部 正会員 ○竹村 貴人 電中研 正会員 西本 壮志 (公財)深田地質研究所 正会員 下茂 道人 宇都宮大 正会員 清木 隆文㈱地層科学研究所 正会員 佐ノ木 哲1. はじめに 近年,3D(三次元)プリンターは急速に普及し,例えば,機械工学においては設計の補助に,医療分野においては臓器モデルの作成に積極的に利用されるようになってきた.このような 3D プリンターの利用は地盤工学に関しても例外ではなく,2010 年代に入ってから多くの事例が国内外で報告されており,その多くはデジタルロックメカニクスの延長として報告されている.ここで,デジタルロックフィジックスは多孔質媒体などの岩石の空隙構造を X 線 CT により撮影した 3D デジタル画像としてデータ化したものを用いて数値解析を行い,その力学―水理特性を評価する方法であり,主に石油・天然ガスの貯留層の多孔質岩を対象にして行われている(例えば,Knackstedt et al.1)).当初,X 線 CT により作成された 3D デジタル画像は数値解析にのみ使われていたが,2010 年代中盤からは 3D プリンターへ入力するデータとして使われはじめ,実験用の空隙を持つ試料が再現されるようになっている.今後,地盤工学に関わる研究者および技術者もより 3D プリンターに接する機会が増えるであろうことを踏まえ,本論では,3D プリンターの地盤工学への適用に関する現状をまとめることとする. 2.地盤工学への適用事例のまとめ 3D プリンターの地盤に関係する分野への適用は,Jiang et al.2)が実験試料,物理モデル,支保(Supporting body),3 次元地形と表面の型(Geo-mold)の 5 つの目的で分けられるとしている.このうち,支保(Supporting body)はロックボルト,アンカーケーブルやライニングの模型であり,3 次元地形は山岳や河川などの地形モデルであり,ダムや鉄道の設計に使用するための模型である.図 1 はこの分類を元に適用の目的を要素試験供試体,物理モデル,地形モデルとして再分類したものである.このうち,地盤工学の分野における既往の研究事例に関しては,要素試験材料としての利用が多く見られる.3D プリンターによる造形の利点を活かして要素試験材料を作成したものとしては,亀裂や空隙を含む造形物が挙げられる.ここで,造形物の形状は,要素試験の種類(一軸・三軸試験や曲げ試験,透水・拡散試験など)により円柱状(円盤を含む)や角柱状(板状を含む)となる.また,使われる素材としては,ABS 樹脂,石膏などが挙げられる.図 2 は地盤材料の土粒子,結晶質岩の亀裂,堆積岩類の空隙直径のサイズと X 線 CT と 3D プリンターの分解 D3図‐1 3D プリンタによる造形物の地盤工学分野への適用例の目的ごとの分類.分類は Jiang et al.2)を基に再分類をした.A review of application of geological materialmodel in term of 3D printerTAKEMURA, Takato, Nihon University, NISHIMOTO, Soshi, CentralResearch Institute of Electric Power Industry, SHIMO, Michito, FukadaGeological Institute, SEIKI Takafumi, Utsunomiya University, SANOKI, Satoru,Geoscience Research Laboratory39 05D0.T3CX.5126126)(図‐2 各地盤材料の亀裂・空隙のサイズと 3D データ取得のための手法(X 線 CT)および 3D プリンタの分解能との関係(3D プリンターについては,3DSystems 社の Projet3500シリーズ 3)の値を使った).能をまとめたものである.3D プリンターの分解能には積層方向である鉛直方向と水平 2 方向の分解能があるが,地盤材料の空隙を再現することを目的とすると水平方向の分解能が重要となる.プリンタ出力の方式にもよるが,水平方向の分解能は産業用の高機能版であれば,数十から数百μm であり,普及型であれば,数百μm から数 mm となる.ここで,精細な空隙構造を再現しようとすると,サポート材の使用が必要となり,出力後に除去をしなければならない.Ferro &Morari4)による空隙を含む土壌の X 線 CT データから作成した 3D プリンターによる造形物を X 線 CT で確認した結果によると,小さな空隙にはサーポート材が残っているがその量は少量で,空隙率や空隙形状に大きな影響は与えないものの連結度に影響を与えるため透水係数に違いが生じることを報告している.また,サポート材を使用する工程を考えると亀裂や空隙は必ず互いに連結し合い外側境界に繋がっている必要がある.理想的な亀裂や空隙を含む材料の造形物を作る場合には 3D-CAD により入力データを作成するため,その判定は容易にできるが,X 線 CT データを基に実試料の亀裂や空隙を再現しようとすると,その判定は困難を極める.また,複雑に入り組んだ亀裂や空隙を X 線 CT データから 3D プリンターの入力データ(例えば STL 形式)に変換するにはラスタ-ベクトル変換が必要となるため,リングアーチファクトなどがなく容易に 2 値化ができる X 線 CT データが必要となる.また,3D プリンターへの入力データは固体部分にデータの欠損がなく完全に閉じた状態でなければ出力ができないため,そのための画像処理が必要となるなど多くの手間をかける必要がある.しかしながら,最終的に出力可能な入力データが出来れば,そのデータは有限要素法等に適用できるデータとなり得る.3.まとめと今後の展望3D プリンターにより地盤材料の復元を行うにあたり,実試料に含まれる亀裂や空隙を再現しようとする場合,X 線CT によるデータの活用がもっとも有効であるが,入力データの作成には注意を払うべきであろう.また,サポート材を利用する場合には,サポート材の除去がどの程度できているかを確認する必要がある.また,近年,サポート材も様々なものが開発されているため,その動向にも気を配る必要があろう.また,X 線 CT を基にした 3D プリンターによる地盤材料の復元は,現状においては樹脂材料でしか報告されておらず,その要素試験への利用は透水・拡散などに限られる. 3D プリンターの出力のための素材は樹脂を始めとして石膏やガラス,砂など様々5)である.現状においては,地盤材料のうち砂岩を扱うのであれば砂型積層プリンターが適していると考える.また,その場合,明瞭な輪郭を持つ亀裂を出力することは困難であるが,現状では幅 1mm の不連続面としての亀裂を含ませることは可能であると考える 6).引用文献 1) Knackstedt,MA,Latham,S, Madadi,M, Sheppard,A, Varslot,T, and Arns, C: Digital rock physics: 3D imaging of core material and correlations to acoustic and flow properties. The Leading Edge, 28(1), 28-33, 2009 2) Jiang, C,Zhao,GF, Zhu,J, Zhao, YX & Shen, L: Investigation of dynamic crack coalescence using a gypsum-like 3D printing material. Rock Mechanics and Rock Engineering, 49(10): 3983-3998, 2016 3) 3Dsystems: https://ja.3dsystems.com/3d-printers/projet-mjp-3600-series, (2018 年 2 月 28 日閲覧) 4) Ferro, ND & Morari, F: From Real Soils to 3D-Printed Soils: Reproduction of Complex Pore Network at the Real Size in a Silt y-Loam Soil. Soil Physics & Hydrology. doi:10.2136/sssaj2015.03.0097, 2015 5) 例えば,竹村貴人, 西本壮志,岡根利光,佐藤 稔:砂型積層3D プリンターを用いた地盤材料モデルの作製,第 53 回地盤工学研究発表会, 0034, 2018 6) 鈴木健一郎・奥澤康一・濱本昌一郎・藤井幸泰・磯部有作:砂型積層3D プリンターで作製した地盤材料モデルの力学特性の再現性,第 54 回地盤工学研究発表会, 201940
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  • タイトル
  • 砂型積層3Dプリンターで作製した地盤材料モデルの力学特性の再現性
  • 著者
  • 鈴木健一郎・奥澤康一・濱本昌一郎・藤井幸泰・磯部有作
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 37〜38
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400019
  • 内容
  • 0019A - 01第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月砂型積層3D プリンターで作製した地盤材料モデルの力学特性の再現性3D プリンターせん断強度圧裂引張強度東京大学㈱大林組正会員正会員 ○鈴木 健一郎濱本 昌一郎 名城大学㈱地層科学研究所正会員正会員正会員奥澤藤井磯部康一幸泰有作1. はじめに近年,3D プリンターによる造形技術の進歩により,様々な立体が複製,再現され,X 線 CT データで土や岩石の復元も試みられている。3D プリンターで地盤材料が再現されれば,数値実験と物理実験との対照も行われ,地盤の特性への評価手法に大きな進歩をもたらすものと考えられる。人工砂と樹脂バインダーを用いて複雑な形状の砂型を作製する3D プリンターがある。「3D プリンターによる岩盤の復元に関する研究委員会」では,この3D プリンターを用いて,人工砂岩を作製し,その再現性について検討を行ってきた 1),2),3)。この報告では,砂型積層3D プリンターで作製した円柱供試体の密度試験,一軸圧縮試験,一面せん断試験,圧裂試験によるクラックの成長について再現性を調べた結果について報告する。2.供試体および試験方法表‐1 物理特性の平均と標準偏差供試体は,鋳造用の鋳型を造形するた単位体積重量VpVsエコーチップめの砂型積層造形装置(砂型積層3D プリ3(m/s)(m/s)反発値)(kN/mンター)を用いて作製した。材料は,粘結⼀軸圧縮試験供試体平均15.3919921098411.72剤に水ガラスをベースにした無機バインダH100標準偏差0.11361411.83ーを用い,粒径 100μm の人工砂を結合したものである 1)。⼀⾯せん断試験供試体平均15.4920941187402.80一軸圧縮試験用供試体は,直径 50mmH50標準偏差0.12332118.89×高さ 100mm の円柱(凡例で H100 と示圧裂引張試験供試体平均15.4520431132ーす)である。試験は地盤工学会基準H25標準偏差0.175533ー(JGS2521-2009)に従って 10 供試体の試験を実施した。一面せん断試験用供試体は,直径 50mm×高さ 50mm の円柱供試体(凡例で H50 と示す)である。一面せん断試験装置は,カナダROCTEST 社製のポータブルシアーボックス(モデル PHI-10)とデータ取り込み装置とパソコンを組み合わせたものである。ポータブルシアーボックスの仕様およびせん断供試体の作製は文献 2 を参照されたい。圧裂引張試験用供試体は,幅 1mm,長さ 25mm のスリットを中心に入れた直径 50mm×高さ 25mm の円柱供試体である(凡例で H25と示す)。圧裂引張試験(ブラジリアンテスト)は,スリットと載荷軸との成す角度を 0,30,45,60,90 deg と回転させて,地盤工学会基準(JGS2551-2009)に従ってそれぞれ 4 供試体の試験を実施した。3. 試験結果および考察3.1 試料のばらつき図‐1 単位体積重量と Vp の関係砂型積層3D プリンターで作製された供試体のばらつきを把握する目的で,密度試験,弾性波速度試験,エコーチップによる局所的な反発値を計測した。結果を表‐1 に示す。それぞれ 10 個の供試体の平均と標準偏差を示した。単位体積重量は,一軸圧縮試験用供試体で,平均 15.39 kN/m3,標準偏差 0.11,せん断試験用供試体で,平均 15.49 kN/m3,標準偏差0.12,圧裂試験用供試体では,それぞれ 15.45 kN/m3 ,0.17 であった。単位体積重量に対して,弾性波速度 Vp および Vs をプロットして,図‐1 と図‐2 に示した。同一条件で作製された供試体でもこれだけのばらつきを持ち,単位体積重量と正の相関を持っている。エコーチップ反発値は,4cm 以上の厚みを有すれば厚みの影響はないという報告 4)があり,一軸圧縮試験用と一面せん断試験用の高さ 50 mm 以上の供試体を対象として計測を行った。図‐3 にエコーチップ反発値のばらつきを単位体積重量に対して示した。エコーチップ反発値から一軸圧縮強さに変換する式は様々提案されている4),5)。反発値 400 以下は軟岩に属し,低強度の軟岩を対象とした換図‐2 単位体積重量と Vs の関係算式 5)からは,4~6 MPa の一軸圧縮強さが推定された。Study on mechanical properties of geologicalmaterial model made by 3D printerSUZUKI, Kenichiro, OKUZAWA, Koichi, Obayashi Corporation.HAMAMOTO, Syouichiro, The University of Tokyo, FUJII, Yasuyuki, MeijoUniversity, ISOBE, Yusaku, Geoscience Research Laboratory37 3.2 一軸圧縮試験結果一軸圧縮強さは、10 供試体の平均 6.3 MPa,標準偏差 0.32 であった。破壊応力の 1/2 における接線弾性係数は,平均 1,741 MPa,標準偏差 131 であった。3.3 一面せん断試験結果垂直応力を 0.2MPa,0.4MPa,0.8MPa,1.6MPa の 4 種類で一定載荷の後,せん断応力を加えた一面せん断試験を行った。図‐4 に結果を示す。R2 値で 0.64 とばらつきは大きい。粘着力は,1.5MPa,内部摩擦角は 27 deg となった。昨年度実施した 3 種の垂直応力での結果も含めてある程度のばらつきは考慮する必要があると考えられる。3.4 圧裂引張試験結果圧裂引張試験では,スリットと載荷軸との成す角度を 0,30,45,60,90 deg と回転させて破壊強度と破壊形態を観察した。圧裂引張強さの算出は,以下の式に従った 4)。2ܲߪt =ߨ‫ܮܦ‬図‐3単位体積重量とエコーチップ反発値の関係ここで,σt は圧裂引張強さ,P は破壊荷重,D は供試体直径,L は供試体高さである。図‐5 に,圧裂引張強さとスリット角度の関係を示した。2 回に分けて作製したためロットの違いを記号を変えて示した。スリット角度 60 deg においてはロットの違いが現れたが他の角度ではロットの違いはない。スリットという弱部に強度特性が支配されるため,ばらつきは小さい。スリット角度が 90deg の時に最大の引張強さとなり,最小の 45 deg の平均値で 2.2 倍になっている。これらの強度の違いは,破壊形状から説明される。写真‐1 に示したクラックの進展状況を見ると,スリット角 0 deg では,圧縮軸と直線状に引張破壊している。中央の 45 deg のケースでは,スリットに沿った滑りによるスリット両端から発生したウイングクラックが供試体端部に達して破壊している。この形態は,30 deg も 60 deg も同様である。スリット角が 90 deg のものはスリットが無い状態と同じで,材料の圧図‐4 一面せん断試験結果裂引張強さとなっている。4. まとめと展望人工砂と樹脂バインダーを用いた砂型積層3D プリンターで作製した人工砂岩の円柱供試体の再現性を,密度試験,一軸圧縮試験,一面せん断試験,スリット入り圧裂引張試験により調べた。単位体積重量,弾性波速度など必ずしも完全な複製が得られているとは言えないことが認められた。透水係数などの平均的な特性については,再現性が認められているが 3),組織に敏感な強度特性に関しては,若干のばらつきがあり,それを考慮した物理模型作製を行う必要があると考えられる。参考文献1) 竹村貴人, 西本壮志,岡根利光,佐藤 稔:砂型積層3D プリンターを用いた地盤材料モデルの作製,第 53 回地盤工学研究発表会,0034, 20182) 鈴木健一郎,藤井幸泰,磯部有作,佐ノ木 哲:砂型積層3D プリンターで作製した地盤材料モデルのせん断特性,第 53 回地盤図‐5 圧裂引張強度とスリット角度の関係工学研究発表会, 0036, 20183)奥澤康一,濱本昌一郎,下茂道人,佐ノ木 哲:砂型積層 3D プリンターで作製した地盤材料モデルの透気・透水特性,第 53 回地盤工学研究発表会, 0035, 20184) 川崎 了,吉田昌登,谷本親伯,舛屋 直:簡易反発硬度試験による岩質材料の物性評価手法の開発―試験条件の影響と基本特性に関する調査―,応用地質,第 41巻,第 4 号,pp. 230-241, 20005) 例えば,津坂仁和:堆積軟岩におけ写真‐1 圧裂試験における破壊状況る立坑掘削の内空変位計測に基づく岩盤挙動分類の提案,土木学会論文集 F, Vol.66, (a)スリットを貫通する引張破壊,(b)スリット端からのウイングクラックNo.1, 181-192, 2010発生による破壊,(c)スリットに無関係な圧裂引張破壊38
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  • タイトル
  • 揚鉱実験における鉱石モデルの移動速度を計測するRFIDシステムの有効性の検討
  • 著者
  • 折田清隆・谷 和夫・鈴木亮彦・菅 章悟・田中肇一
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 35〜36
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400018
  • 内容
  • 0018T - 12第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月揚鉱実験における鉱石モデルの移動速度を計測するための RFID システムの有効性の検討RFID 計測 揚鉱東京海洋大学学生会員○折田清隆東京海洋大学国際会員谷 和夫㈱不動テトラ正会員鈴木亮彦㈱不動テトラ正会員菅㈱不動テトラ1.はじめに章悟田中肇一キャリア物質粗粒・高密度の鉱石を揚鉱するために,キャリア物質(粘性流体+粒状体)を閉鎖管路内で循環させる方式がライザー管提案された 1).この方式を模擬した模型実験装置(図-1)内において,鉱石モデル(鉱石を模した球体)の揚鉱速度を計測してキャリア物質の揚鉱性能を検討する 2).そのた分離装置1).しかし,干渉が発生しないアンテナの間隔と移動速度鉱石モデル鉱石貯液 投入口タンクめに,複数の RF タグの識別と,RF タグとアンテナの間に障害物があっても交信が可能である RFID を使用するRF タグ揚鉱の計測区間ポンプの計測精度は不明確であるため,落下する RF タグの位置アンテナを計測する実験を行って検討した.2.図-1 揚鉱模型実験装置(左:全体,右:ライザー管)落下実験の方法図-2 に使用した RFID を,図-3 に落下実験装置を示す.9.9 𝑌周波数帯は水等による減衰への耐性が大きい HF 帯,RF3タグは小寸法のパッシブタイプ(戸田工業㈱製:MBT-𝑋𝑍1003N),アンテナはライザー管への取り付けが可能なル170𝑧ープ状(㈱タカヤ製:TR3-HA201A)とした 3).吊るした滑車に錘 1(質量𝑚1 = 0.10 kg)と錘2を装着したナイロン糸を通し,錘 1 側に RF タグを X 軸が鉛直方向で装着す𝑦𝑥185る.その下に立てたスタンドに,アンテナ𝐴1 と𝐴2 の yz 平𝑥面が水平となるように固定し,それらの原点を RF タグが通過する.錘 2 が地面を離れる時刻を RF タグの落下開始時刻𝑡 = 0.00 sとし,その時の RF タグの重心の位置を初期単位:mm位 置 𝑑 = 0.00 m と す る . 初 期 位 置 と 𝐴1 の 距 離 を 𝑑0,1 =図-2 使用した RFID(左上:RF タグ,下:アンテナ)0.15 m,𝐴1 と𝐴2 の距離を𝑑1,2 とする.アンテナ同士の干渉の影響の検討は,アンテナ𝐴1 と𝐴2滑車(半径:0.21 m)の距離𝑑1,2 を0.20, 0.30, 0.35, 0.40, 0.60, 0.80 1.00 mとし,錘2の質量𝑚2 を一定(= 0.088 kg)で行った.RFID の計測精度の検討は,アンテナの間隔を一定(𝑑1,2 = 0.40 m) に 保 ち , 𝑚2 を 0.008~0.088 kg の 範 囲 でRF タグ0.020 kg ずつ変えた際の,アンテナ通過時刻𝑡R を計測する ナイロン糸ことで行った. RF タグの移動をハイスピードカメラ𝑑0,1(HAS-D72:㈱ディテクト製)で撮影し,スタンドに固定した標尺を基に,𝑑 = 0.05~0.065 mの範囲で0.10 mごとの𝑑1,2通過時刻𝑡0 を計測した.3.アンテナ同士の干渉の影響の検討錘1標尺𝑡d(交信開始時刻𝑡f と交信終了時刻𝑡l の差),下段に平均交スタンド信時刻𝑡av (𝑡f と𝑡l の平均)と𝑑1,2 の関係をそれぞれ示す.上段より,𝑑1,2 < 0.40 mでは𝐴2 による交信の開始後にEffectiveness of RFID System for MeasuringOre Model Velocity on Lifting Experimentsアンテナ𝐴1アンテナ𝐴2錘2図-4 の上段に RFID の交信時刻𝑡,中段に交信継続時間ハイスピードカメラ図-3 落下実験装置ORITA Kiyotaka, TANI KazuoTokyo University of Marine Science and TechnologySUZUKI Akihiko, SUGA Shogo, TANAKA Keiichi Fudo Tetra Corporation35 𝐴1 による交信が再開し,交信時刻の重複が発生した.アンであるため 4),0.20 < 𝑑1,2 < 0.40 mの𝐴1 と𝐴2 の交信時刻の𝑡(s)テナを単独で用いた場合の交信距離の最大値は約 0.11 m重複の原因は,RF タグが発する弱い電磁波が近接するアンテナからの強い電磁波と干渉して元々の交信範囲の外で交信を行う「Reader-to-reader Collision」と推測される 5).用いた場合の 1.7 倍に,𝑡av は 1.2 倍となる.一方,十分に離隔した場合(𝑑1,2 ≥ 0.40 m)では,交信時𝑡d (s)その結果,𝑑1,2 = 0.30 mでは,𝐴1 の𝑡dはアンテナを単独で刻の重複が発生せず,𝐴1 の𝑡d と𝑡av はアンテナを単独で用reader Collision」は発生していないと推測した.以上の検討より,干渉が発生しないアンテナの最短距𝑡av (s)いた場合とほぼ一致した.よって,干渉による「Reader-to-離は𝑑1,2 = 0.40 mと判断した.4.アンテナ通過時間の計測精度の検討交信範囲はアンテナのコイル面に対して対称であるこ𝑑1,2 (m)図-4 𝑑1,2 が𝑡, 𝑡d , 𝑡av に及ぼす影響(点線右側:単独アンテナ)とから,交信範囲内で RF タグの移動速度を一定と仮定した.図-5 の上段に𝑡R 及び𝑡0 と RF タグの位置𝑑の関係を,下段には𝑡R から求めた RF タグの落下速度𝑣R 及び𝑡0 から求𝑑(m)て,RF タグのアンテナ通過時刻𝑡R は平均交信時刻𝑡av としめた落下速度𝑣0 と時間𝑡の関係をそれぞれ示す.上段より,各アンテナ(𝑑 = 0.15, 0.55 m)での𝑡0 と𝑡R は,𝑡R , 𝑡0 (s)た,図-6 に各アンテナ通過時の𝑣0 と∆𝑡の関係を示す.𝑡0 と𝑡R の差∆𝑡は𝑣0 に依存せず,最大でも 0.10 s 程度であった.速度の誤差∆𝑣⁄𝑣0 は𝑣0 = 𝑑 ⁄𝑡0 より以下の式となる.∆𝑣=𝑣0−𝑑∆𝑡𝑣0 ∆𝑡𝑡0 2=−𝑣0𝑑𝑣R , 𝑣0 (m⁄s)ほぼ一致し,下段の𝑣R と𝑣0 についても近い値を示した.ま𝑡(s)図-5 𝑚2 = 0.048 kgでの計測結果揚鉱模型実験は,𝑑 = 𝑑1,2 = 0.40 m,𝑣0 < 0.04 m⁄sの条0.15件で行うため,|∆𝑡| ≤ 0.10 sとすると∆𝑣⁄𝑣0 ≤ 1 %となる.5.まとめΔt (s)アンテナの間隔は「Reader-to-reader Collision」が発生しな平均値0.05落下実験により,干渉が発生しないようにアンテナを設置する間隔と RF タグの落下速度の計測精度を調べた.A1A20.10い,𝑑1,2 = 0.40 mが適当と判断した.また,気中で RF タ0.00-0.05グがアンテナを通過する時間を RFID とハイスピードカ-0.10メラで比較した結果,0.10 s 程度の誤差で計測が可能であ-0.15標準偏差0.00った.これらの結果から RFID による揚鉱速度の計測は0.501.001.502.002.50各アンテナ通過時のv0(m/s)1%以下の誤差で可能である.図-6 𝑣0 の∆𝑡への影響参考文献1)Tani, K, Suzuki, A., Tanaka, K. and Suga, S.: Development of experimental apparatus for model tests of lifting marine mineralresources by carrier materials,10th Asian Rock Mechanic Symposium, 4p, 2018.2)鈴木亮彦,谷和夫,田中肇一:キャリア物質循環方式による揚鉱の模型実験装置の開発,第 53 回地盤工学会研究発3)表会,pp.3-4,2018.折田清隆,谷和夫,鈴木亮彦,田中肇一,菅章悟:揚鉱・沈降実験における, 鉱石モデルの管内移動の計測に適切なRFID システムの選考,第 15 回地盤工学会関東支部発表会,pp. 330-333,2018.4)折田清隆,谷和夫,鈴木亮彦,田中肇一,菅章悟:RFID システムを用いた揚鉱・沈降実験における鉱石モデルの管5)内移動の計測方法の開発, 第 46 回岩盤力学に関するシンポジウム,pp. 268-273,2019.Joshi, G R. and Kim, S W.: Survey, nomenclature and comparison of reader anti-collision protocols in RFID, IETE TechnicalReview, pp. 234-243, 2008.36
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  • タイトル
  • JIS改正に伴うアレイ架台基礎の比較事例(その2)
  • 著者
  • 三浦国春・三浦桂子
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 33〜34
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400017
  • 内容
  • 0017H - 01第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月JIS 改正に伴うアレイ架台基礎の比較事例(その2)直接基礎摩擦荷重㈱大林組同正会員○三浦国春正会員三浦桂子1.はじめにアレイ架台基礎の多くは,「JISC8955:2004(2011)太陽電池アレイ用支持物設計標準」に基づきその構造仕様を決定していたが,近年の異常気象や不適切な設計に伴い架台基礎に被害が発生している.そこで 2017 年 3 月にJIS 番号はそのままで「JISC8955:2017 太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法」に改正され,設計荷重の見直しが図られた.この JIS 改正により設計用風圧荷重が大きくなり,アレイ架台および基礎の仕様に影響を及ぼす.前稿1)では,杭基礎形式のアレイ架台を対象として,JIS 改正による設計条件や設計用荷重への影響を定量的に整理した.本稿では,JIS 改正に伴って,直接基礎形式のアレイ架台にどのような影響を及ぼすかを検討した.2.JIS 改正概要JISC8955:2017 は,電気設備技術基準への反映と時間差があったため直ぐには運用とはならなかったが,2018 年10 月に電気設備技術基準に反映され現在運用されている.直接基礎の仕様には,勿論風圧荷重も影響するが,地震時慣性力や支持地盤と直接基礎の摩擦がより大きく影響する.JISC8955:2004(2011)では,陸屋根式の直接基礎(質量基礎と記載されている)に対する地震荷重については解説欄に設計用水平震度に関する記載があったが,地上設置式の基礎については設計用水平震度が明記されていない.設計用水平震度は発電施設により異なって設定され,陸屋根式の基礎への設計用水平震度を準用してkH=0.5 を採用する例や,建築系の指針類から kH=0.2 や kH=0.3 を採用している例が散見される.支持地盤の摩擦係数にしても,予め土質試験を行って内部摩擦角 Φ から算出したり,指針類からμ=0.4~0.6 を採用したりしている例が見受けられる.ただし,摩擦係数に関しては JISC8955:2017 に記載はないが,新エネルギーの技術研究開発の一翼を担う国立研究開発法人 NEDO より刊行されている「地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン 2017 年版」に,「土質試験などをしない場合μ=0.3~0.5」を採用することが推奨されている.さらに直接基礎の滑動や転倒に対する安全率も摩擦係数と同様に,JISC8955:2017 に記載はなかった.これまで安全率を長期 1.5,短期 1.2 を採用する例が多かったが,前出のガイドラインでは長期,短期区別なく安全率 1.5 を採用するよう記載されている.主な改正項目を表-1に示す.表-1改風力係数:Ca(地上設置)正前正圧:Ca=0.35+0.055θ-0.0005θ2負圧:Ca=0.71+0.016θ負圧:Ca=0.85+0.048θ-0.0005θ2θ:アレイ面の傾斜角度架台設計用基礎の滑動・転倒の安全率基礎摩擦係数:μCs=1.0 とする(積雪の滑落が保証できない場合)Ⅲ(市街地又はアレイ地上高が 13m 以下)粗度区分後正圧:Ca=0.65+0.009θCs=√cos(1.5θ)地表面正5°≦θ≦60°勾配係数:Cs:kH改15°≦θ≦45°(30°±15°)積雪荷重水平震度主な JIS 改正項目(アレイ地上高は 13m 以下より多くの建設地がⅢ)kH=1.0 以上(陸屋根式)のみ記載あり地上式:記載がなく kH=0.2~0.5 を採用記載がなくμ=0.4~0.6 を採用Ⅲ→Ⅱ(田畑などの平坦地)(アレイ地上高の記述がなくなる)架台(地上) kH=0.3 以上基礎(地上) kH=0.3 以上基礎(地中) kH=0.1 以上μ=0.3~0.5または内部摩擦角 Φ より算出(NEDO ガイドライン)記載がなく長期:1.5,短期:1.2 などを採用1.5(長期,短期とも)(NEDO ガイドライン)3.モデル概要と架台基礎仕様比較試算を行ったモデルの設計条件を表-2に示す.比較的積雪が少なく,関東以西の一般的な建設地を想定したアレイ架台基礎を対象とした.直接基礎では設計用水平震度や摩擦係数の条件設定により,その仕様が大きく異なっCase Study of Photovoltaic Cell Array FoundationMIURA Kuniharu , Obayashi Corporationaccompanying JIS Revision(Part2)MIURA Keiko , Obayashi Corporation33 てくる.例えば設計用水平震度 kH=0.5 とした場合,摩擦係数をよほど大きく設定できなければ基礎の一部を根入れさせる必要がある.本稿では基礎の仕様を単純に比較するため,基礎を根入れさせなくても成立する設計条件として比較することとした.アレイ架台基礎のイメージを図-1に示す.アレイの地盤面に対する傾斜角度は 10°とし,1架台あたりの太陽電池モジュール枚数は 16 枚(4 段×4 列)とした.アレイ前面からの風を正圧,アレイ背面からの風を負圧と称し,設定した設計条件により環境係数や風圧荷重などそれぞれ算出した.旧 JIS と新 JIS の比較を図-2,図-3に示す.新旧 JIS で風圧荷重と積雪荷重をそれぞれ算出した結果,新 JIS では積雪荷重は風圧荷重(正圧)よりも小さく,積雪荷重により架台および基礎の仕様が決定されないことが分かった.新 JIS の積雪荷重は,アレイの傾斜による積雪の落下を考慮しないことから旧 JIS の積雪荷重の 1.02 倍となった.環境係数は地表面粗度区分により変化する.表-1の記載の通り,これまでアレイの地上高さが 13m 以下の条件下では,市街地と同じ区分Ⅲと評価できた建設地が,アレイの地上高さの規定がなくなったため,そのほとんどが田畑や住宅が散在する平坦地という条件下に分類される区分Ⅱとなる.環境係数は旧 JIS より 1.49 倍大きくなり,風力係数は,アレイ傾斜角が 10°の場合,正圧で 1.08 倍,負圧で 1.35 倍大きくなる(図-2).設計用速度圧は環境係数がパラメータとなることから環境係数と同様に旧 JIS の 1.49 倍となり,風圧荷重は,設計用速度圧と風力係数の積により算出されることより,アレイに作用する風圧荷重は正圧で 1.61 倍,負圧で 2.01 倍大きくなる(図-3).このように風圧荷重は新 JIS の方が大きくなるが,今回の直接基礎の仕様は地震荷重によりその大きさが決定することとなった.直接基礎の大きさは新 JIS:幅 1.3m×長さ 4.4m×高さ 0.3m,旧 JIS:幅 1.2m×長さ 4.4m×高さ 0.3m となり,体積比で新 JISの方が 1.08 倍大きくなった.新 JIS では架台部分の設計用水平震度は k H =0.3 と旧 JIS より小さくなり,慣性力としては楽になったが,基礎安定のための許容安全率が 1.5 となっていることより,最終的には新 JIS の方が大きな基礎が必要となった.因みに摩擦係数をμ=0.4 とすると,旧 JIS では基礎を大幅に大きくすれば計算上成立するが,新JIS では基礎を一部根入れしない限り安全率 1.5 を満足することはなかった.また風圧荷重の増加により必要な架台鋼材寸法は大きくなり,架台鋼材総重量が約 20%増加した.表-2想定した設計条件34(m/s)設計用基準風速旧 JISⅢ,新 JISⅡ地表面粗度区分40(cm)地上垂直積雪量支持地盤(N 値)7(砂質土)旧 JIS 1.0,新 JIS 0.3(架台)設計用水平震度 kH新/旧 JIS 0.3 (基礎)0.5摩擦係数μ図-1アレイ架台基礎概略図旧 JIS 1.2,新 JIS 1.5旧JIS新JIS2.01倍(m3)1.08倍1.7285810481.61倍78782812331578(N/m2)1.2801.49倍65011.35倍0.9501.08倍0.785係数新JIS0.8501.49倍1.19421.778旧JIS1.58792基礎安全率(短期)0環境係数E⾵⼒係数(正圧)設計⽤速度圧⾵⼒係数 (負圧)(N/m2 )図-2JIS 比較図(1)⾵圧荷重(正圧)(N/m2 )図-3⾵圧荷重(負圧)(N/m2 )基礎体積(m3)JIS 比較図(2)4.おわりに新旧 JIS を用いて,モデル条件下における設計用荷重および基礎仕様を比較した.風圧荷重は旧 JIS での設計の約2 倍となり,鋼材重量は約 1.2 倍,基礎体積は約 1.1 倍とする必要があることがわかった.直接基礎の場合,現地実験2)等を行って実際の地盤の摩擦係数を設定しない限り,根入れなしでは基礎構造として成り立たない.今後新たに太陽光発電施設を計画する場合には,JIS 改正項目を良く理解し,その計画を進めなければ JIS 規格を満たさない発電施設となり得る.一方,新 JIS の適用により既設発電施設では既存不適格となるアレイ架台および基礎が多数出てくる.FIT 期間は原則 20 年であるが,発電施設改修時や増設時の明確なルールつくりが必要となると考えられる.参考文献:1) JIS 改正に伴うアレイ架台基礎の比較事例(第 53 回地盤工学研究発表会):2) 地上設置式太陽電池アレイ基礎の滑動抵抗に関する実験的研究(第 51 回地盤工学研究発表会)34
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  • タイトル
  • 地盤リスクを評価・回避する地盤調査方法のあり方
  • 著者
  • 澤田俊一
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 1〜2
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400001
  • 内容
  • 0001A - 01第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月地盤リスクを評価・回避する地盤調査計画のあり方地盤災害,地盤調査,埋立て応用地質株式会社国際会員○澤田 俊一1. はじめに地盤工学に対する社会の認識について,地盤工学に従事している者であればだれでも,地盤工学の重要性,社会貢献を認識している。しかし専門的な知識を持たない発注者や一般市民においては、地盤工学に対する認識が不正確な場合がある。例えば同じような埋立て地に於いても,地震時に液状化に起因する建物被害を生じる場所もあれば,その近傍でありながら全く被害が生じない場所も存在していることが知られている。その差異は紛れも無く地盤造成上の地盤リスクであり,地盤調査が不十分なままに施工が始まれば予期せぬ地盤災害に遭遇して困難を招いている事実は少なくない。このような状況は,地盤工学から社会に向けての情報発信の在り方に改善の余地がある。この意味から、地盤リスクを評価・回避するために必要となる地盤調査計画のあり方を紹介する。2. 人工地盤(埋立て地)我が国の都市圏での人々の生活領域の多くは,埋立て地(所謂,人工地盤)上に位置している。移動・物流システムの利便性からも,極平坦なウォータフロントに面した平野部での生産活動と共に住居領域も埋立て地造成によって広がってきている。埋立て地は元々,海(河川)水面下の土地に,他の場所から運んできた土砂を水面上まで盛り立てて陸地化して利用する。埋め立てる(盛り立てる)方法には,周囲堤防を構築して,囲った範囲内の水を排水して陸地化する干拓から,海岸の沖合の土砂を浚渫船で掘削し,運搬船・排砂管等を利用して土砂を投入して陸地化する浚渫,更には土砂運搬ダンプトラック等で陸路運搬して土砂投入して陸図-1建設中の埋立地(陸送埋立て)地する埋立て方法がある。図-1 には,陸路でのダンプトラックでの埋立て方法を採用している建設中の埋立地の空中写真である。周囲堤防建設後に土砂をダンプトラックで運搬し,陸地化している途中(建設中)である。写真からも明瞭にダンプトラックが繰り返し通行し締め固まった搬路部分と,その狭間で水中落下と緩い表層地盤部分が交互に形成されていることが判る。図-2 には,浚渫による埋立て地盤建設中の写真であり,沖合から運搬される土砂の排砂管吐き出し口の位置が読み取れれば,埋立地表層の堆積土質材料の推定も可能となる。図-3 には,排砂管吐き出し口周辺の浚渫土砂の粒形特性が推定できる。この推定は地震時の地ポンプ船盤の液状化に起因する地盤変状の原因推定にも役立つことも判っている 1)。排砂設備フローター管路海底管路海上管路 陸上管路ラダー自然堆積する地盤に於いても,過去の地盤形成履歴が判る資料が集まれば,地盤調査の方法も策定し易くなることは明らかであアンカーカッター埋立護岸スパッド図-2 埋立て工事の状況および方法3),4),5)り,過去の航空写真や地形図・地表地質図等の活用は重要な役割を果たすこととなる。図-4 に埋立て造成時の航空写真により浚渫施工時の排砂管吐出し口位置と地盤災害の相関が得られた事例 2)排砂管排砂を示す。3.地盤調査方法細粒分(粘性土)粗粒分(礫・砂)地盤調査方法はボーリング調査に代表される様に,平面的には“点”となる位置に於いて深度方向に“線”となる情報が得られていA method of soil investigation plan to evaluate andavoid the geo-risk.図-3 排砂管吐出し口周辺の堆積状況Shun-ichi SAWADA, OYO Corporation1 る。また,地盤情報として得られる解像度は標準貫入試験が実施される 1m に 1 つの貫入判例抵抗 N 値と,同時にレイモンドサンプラーで収集された攪乱試料を用いた物理試験結果が標準的な地盤情報となる。ボーリング調査は,対象構造物の重要性や【家屋被災程度】規模によっても異なるものの,平面的配置も密と言う実施は少なく,数百メートル間隔と離れている場合が多い。実施間隔を狭めることは地盤の情報をより高い解像度で評価することが出来る事になるが,当然の事ながら実施に当たるコストは増加する。必要で充分な実施間隔を合理的に提案出来れば良いが,地盤の状況はその造成過程や地形の複雑さによって大きく異なる事が図-4 排砂管吐出し口位置と地盤災害箇所の関係判っており,地盤調査技術者の技量が問われる範疇でもある。自然堆積地盤であれば三次元(3D)的に地盤情報を全てボーリング調査によって実施することは,費用と時間が許せば実施も可能となる。しかし,埋立て地や海岸線に近い地盤の堆積は複雑である場合が多く,ボーリング調査によって3D 地盤を把握することは困難となる。そこで登場するのが,補間的な地盤調査手法となるサウンディングである。3D で地盤情報を取得すること,地盤構造を3D で把握することは,今や CIM や iConstruction と言う keyword が用いられ推進されている課題 6)でもある。4.図-5地盤情報の 3 次元表示例考 察建設予定の地盤を3D で把握するには,まずは地盤の成立ちを考察することが重要となる。地盤の堆積状況が自然堆積等によるものか,埋立て造成の様に人工的に改変された地盤構成を有するのかの判断の基に,地盤の中の土層の起伏の程度を推察して探査する平面的ピッチの選定が重要になる。また,時間・費用の許す限り多くの探査を実施する事で地盤情報の解像度を向上させることが出来る。5.おわりに今後,より安価で調査実施時間の短いサウンディング手法 7)の様々なる開発により,ボーリング調査を補間して地盤情報の解像度向上を目指し,地盤リスクの評価・回避する地盤調査計画のあり方の提案を目指して行きたい。[参考文献]1)2)3)4)5)6)7)石井一郎, 平舘亮一, 東畑郁生, 中井正一, 関口徹, 澤田俊一, 濱田義弘. [2017], 2011 年東北地方太平洋沖地震で液状化被害を受けた浦安市の地盤特性. 地盤工学ジャーナル, Vol. 12, No. 1, p. 91-107.Sawada, S., Hamada, Y., Ishii, I., Hiradate, R., Nakai, S., Sekiguchi, T., Towhata, I.[2017], Liquefaction-induced damage tohouses and site characterization in Urayasu City during the 2011 Tohoku Earthquake, Japan, Proceeding of 3rd Inter -nationalConference on Performance-based Design in Earthquake Geotechnical Engineering, Vancouver.浦安市,浦安市史【生活編,まちづくり編】千葉県企業庁,千葉県企業庁事業のあゆみ,2009. 03.(社)日本埋立て浚渫協会<http://www.umeshunkyo.or.jp/kids/shunsetsu/shunsetsu.pdf>, [2016. 5. 7 閲覧].澤田俊一[2017], 動土質に求められる技術革新-次世代技術とそのロードマップ-, 応用地質技術年報 No.36, p.25-34.Sawada, S. [2009], Evaluation of differential settlement following liquefaction using. Piezo Drive Cone, Proceeding of 17thInternational Conference on Geotechnical Engineering, Alexandria, Egypt, p. 1064-1067.2
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  • タイトル
  • アンケート調査結果から見た地盤材料試験の現状 ー土の一軸圧縮試験ー
  • 著者
  • 沼倉桂一・若杉 護・中澤博志・藤原照幸
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 29〜30
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400015
  • 内容
  • 0015D - 00第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 -一軸圧縮試験-技能試験土の一軸圧縮試験アンケート川崎地質正会員基礎地盤コンサルタンツ○沼倉桂一正会員若杉 護防災科学技術研究所国際会員中澤博志地域地盤環境研究所国際会員藤原輝幸1. はじめに地盤工学会は 2011 年から実務機関,研究所,大学,高専等から参加者を募集し,試験結果の精度や技能レベルを確認することを目的に技能試験を実施し,同時に試験者・試験方法・装置などについてアンケートを行っている。2018年は,改良土の湿潤密度試験と一軸圧縮試験を実施した。本報は,一軸圧縮試験に関する試験状況や試験器具についてまとめ,特に一軸圧縮強さの z スコアが 2 以下(「疑わしい」,「不満足」)となった 8 機関について,規格の遵守に着目し報告する。2. アンケート調査内容一軸圧縮試験のアンケートの内容は,試験者(身分,経験年数,試験頻度),試験方法(載荷速度,供試体直径,供試体の直径と高さの比),試料の取り扱い(試料を受け取ってからの保管状況,トリミングで気を付けた点,感じたこと,モールドからの取外しについて気をつけた点),試験装置・器具(一軸5年未満25%圧縮試験機,荷重計,変位計)に大別される。以下に,アンケートの回答からそ10年以上38%れらの傾向を示す。3. アンケート結果の傾向3.1 試験者図-1 に試験者の「経験年数」に関する結果を示す。「試験者の経験年数」は,「10 年以上」と「5~10 年」がほぼ同じ割合で 38%と 37%,「5 年未満」が 25%であった。図には示していないが,「一軸圧縮試験の頻度」では「週に数回以上」図-1 身分が 63%,「月に数回」が 37%,「年に数回」は 0%であった。アンケートの結果から試験者の「経験年数」による明瞭な傾向は確認できなかった。しかし,「試5~10年未満37%その他0%5㎝25%験の頻度」では「年に数回」は 0%であったが,試験頻度が多いベテランで確認された。3.2 試験方法JIS A 1216-2009(以下規格)では,供試体直径は「通常 3.5 ㎝又は 5.0 ㎝」とされ,「高さは直径の 1.8 倍~2.5 倍」とするとある。載荷速度は,「毎分 1%の3.5㎝圧縮ひずみが生じる割合を標準」とある。図-2 供試体直図-2 に「供試体直径」の結果を示す。75%の機関で「3.5 ㎝」,25%の機関で2.5以上0%「5 ㎝」で試験を行っていた。アンケートの結果から,8 機関全てが規格にどおり0 75%1.8未満0%に試験を行っていたことが確認された。図-3 に「供試体の直径と高さの比」の結果を示す。全て機関が「1.8 倍~2.5 倍」の「供試体の直径と高さの比」で,規格どおりに試験を行っていたことが確認された。図-4 に載荷速度の結果を示す。50%の機関で「1.0%/min」,「1.0%/min を超え1.8~2.5未満100%る」の載荷速度で試験を行っていた。50%の期間では,規格どおりに試験を行っ図-3 供試体の直径と高さていないことが確認された。1.0%/min未満0%3.3 装置・器具装置・器具では,試験機,荷重計,変位計に関してアンケートを行った。(1)一軸圧縮試験機図-5 に最大許容載荷能力の結果を示す。全ての機関が 1Kn 以上であった。図-6 に上部載荷版タイプの結果を示す。全ての機関が半固定式であった。1.0%/min50%1.0%/minを超える50%図-4 載荷速度Results of Questionnaire in Proficiency Test for Unconfined Compression Test of Soils Numakura Keiichi; Kawasaki Geological Engineering Co., Ltd, Wakasugi Mamoru; Kiso-Jiban Consultants Co., Ltd,NakazawaHiroshi; NationalReserch Institute for Earth Science and Disaster Prevention, Fujihara Teruyuki; Geo-Research Institute29 図-7 に「使用前点検」,図-8 に「使用前点0.5kN未満0%検項目」の結果を示す。使用前点検は全ての0.5~1kN未満0%その他0%固定(剛結)0%機関で行われていた。点検項目では「載荷装置の動作・載荷速度」,「清掃」が 8 機関全て,「外観」が 6 機関,「センサ類の固定」が 5 機関,「センサの校正」と「電気系統の半固定(球座付)100%1kN以上100%チェック」がそれぞれ 4 機関で行われていた。(2)荷重計図-6 載荷方法図-5 最大許容載荷能力図-9 に「容量の結果を示す。62%の機関が「0.2~0.5kN」で,38%の機関が「1Kn 以上」9876543210しない0%であった。図-10 に感量の結果を示す。62%の機関が「0.01~0.1N 未満」,13%の機関が「0.5~1N未満」と「1N 以上」,12%の機関が「0.01 未満」の感量の荷重計を使用していた。8865440する100%図-11 に校正の結果を示す。71%の機関が「年 1 回以上」で,29%の機関が「2 年に 1 回」図-7 使用前点検であった。で,全体の 58%が 2 年に 1 回は校図-8 使用前点検の項目1N以上13%正を行っていた。「校正を行わない」という0.2kN未満0%機関は確認されなかった。0.5~1N未満13%荷重計については,明瞭な傾向は認められなかった。0.01N未満12%1kN以上38%0.1~0.5N未満0%(3)変位計規格では「変位計は,測定範囲が 20 ㎜以上0.01~0.1N未満62%0.2~0.5kN未満62%で,最小目盛が 1/100 ㎜の変位計又はこれと同等以上の性能をもつ電気式変位計とする」と図-10 感量図-9 容量ある。しない0%図-12 に「測定範囲」の結果を示す。75%の機関が規格どおり「13 ㎜以上」の変位計を使用し,,25%の機関が規格から外れた「9 ㎜未9㎜未満25%2年に1回29%満」の変位計を使用していた。図-13 に「最小目盛」の結果を示す。87%の9~13㎜未満0%年1回以上71%機関が最小目盛「0.08 ㎜未満」, 13%の機関13㎜以上75%が「0.08 ㎜」で規格どおりであった。図-14 に校正の結果を示す。626%の機関が図-11 校正(荷重計)「年 1 回以上」,25%の機関が「2 年に 1 回」,0.08㎜以上0%13%の機関が「3 年に 1 回」であった。「しない」という機関は 0%であった。0.08㎜13%アンケート結果からは,変位計について明瞭図-12 測定範囲しない0%3年に1回13%2年に1回25%な傾向は認められなかった。0.08㎜未満87%4. まとめその他0%年1回以上62%一軸圧縮試験に関するアンケート結果について,技能試験のzスコアが「疑わしい」,図-13 最小目盛図-14 校正(変位計)「不満足」となった機関について報告した。一軸圧縮強さの精度では,試験者,試験方法,装置・器具全てにおいて,明瞭な傾向は認められなかった。「その他(お気づきの点等)」では,試料に関すること,供試体や試験機・装置に関すること,試験に関すること,機関の現状や技能試験への要望など貴重なご意見を頂いた。【参考文献】1) 中山ら:均質性確認試験結果と技能試験(中央値)の関係(その 2),第 54 回地盤工学研究発表会(投稿中),2) 中澤ら:アンケート調査結果から見た地盤材料試験の現状 -精度向上に対する意識の変化-,第 54 回地盤工学研究発表会(投稿中)30
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  • タイトル
  • アンケート調査結果から見た地盤材料試験の現状 ー精度向上に対する意識の変化ー
  • 著者
  • 中澤博志・若杉 護・沼倉桂一・日置和昭・中川 直
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 27〜28
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400014
  • 内容
  • 0014第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月D - 00アンケート調査結果から見た地盤材料試験の現状 -精度向上に対する意識の変化-技能試験アンケート調査地盤材料防災科学技術研究所国際会員○中澤博志基礎地盤コンサルタンツ正会員若杉護川崎地質正会員沼倉桂一大阪工業大学国際会員日置和昭全国地質調査業協会連合会正会員中川直1.はじめに公益社団法人地盤工学会は,平成 23 年度以降,7 回の「技能試験」を実施し,主要な地盤材料試験の精度確認とアンケート調査を継続的に行ってきた。平成 30 年度は,貧配合改良土の湿潤密度試験と一軸圧縮試験を実施したが,技能試験開始から 3 回目の同一な実験にあたる。そこで,実施者側としての技能試験の継続性,試験所が技能試験へ継続的に参加する意義,あるいは試験技能の向上がどのように見られたか,z スコアのように客観的に評価できない点について把握するため,いままでの 3 回分の湿潤密度試験と一軸圧縮試験のアンケート調査結果をまとめた。本報では,主に試験装置・器具の使用前点検を始めとする実施率の変化と改善について報告する。2.技能試験概要3 回にわたる技能試験の概要1)-3)について,表-1にまとめ示す。地盤材料試験としては,「土の一軸圧縮試験 (JIS A1216:2009)」および「土の湿潤密度試験(JIS A 1225:2009)」に従い行われている。いずれの回も試料の均質性確認試験および技能試験結果の評価 4)は,ISO/IEC 17043 (JIS Q 17043)に準じて実施された。3 回の技能試験では,均質性確認試験の変動係数は技能試験の変動係数に対して小さく,ばらつきが低いサンプルを提供することができている。地盤材料は,毎回,若干異なる種類のものを用いているが,貧配合改良土として,セメント添加量と試験実施時期を明示したうえで,プラモールドに養生された状態で 1 試料あたり 4 供試体を委員会より一斉送付している。評価項目については,湿潤密度試験と一軸圧縮試験で,含水比 w,湿潤密度t,乾燥密度d,一軸圧縮強さ qu,破壊ひずみf および変形係数E50 である.本報では qu に絞って説明することとするが,H30 年度に実施した一軸圧縮試験のアンケートの詳細については,参考文献 5)を参照されたい。表-1実施試験土の一軸圧縮試験(JIS A 1216:2009)土の湿潤密度試験(JISA 1225:2009)参加機関試験実施期間試験結果報告期限技能試験概要地盤材料について供試体の品質(土の一軸圧縮強さ)zスコアについて(土の一軸圧縮強さ)51藤森粘土にポルトランド 均質性確認試験の変動係数セメントを添加し作製し は,試料56と試料59がそれぞ平成24年9月24日平成24年10月31日た安定処理土.(2種類: れ7.9%,7.7%し,技能試験に~25日33ついては,13.1%,11.2%56kg/m ,59kg/m )|z |≦2 の満足な範囲に入らない機関は,51機関中6機関(12%)55市販のシルトにポルトランド平成27年10月8日3平成27年10月30日 セメントを25kg/cm および~9日30kg/cm3を配合した試料均質性確認試験の変動係数は,試料25と試料30がそれぞれ6.6%,8.3%し,技能試験については,9.4%,10.6%|z |≦2 の満足な範囲に入らない機関は,55機関中8機関(15%)市販の粘土にポルトランド 均質性確認試験の変動係数は,試料41と試料45がそれぞセメントを41kg/cm3およびれ4.7%,4.8%し,技能試験に345kg/cm を配合した試料 ついては,16.0%,16.9%|z |≦2 の満足な範囲に入らない機関は,52機関中13機関(25%)申し込み 平成30年9月6日平成30年10月5日53,実施52 ~7日3.アンケートの方法各機関において,試験者と試験装置以外は極力同一条件で試験に臨めるよう,改良土を一斉配布しているが,同時にアンケートを配布し,試験結果と共に回収・整理してきた.アンケートの内容は,技能試験全般的な共通事項として,技能試験の認知度や参加の意義に関する設問,一軸圧縮試験については,試験者の年齢,身分,経験年数,試験の頻度・実績,試験装置・器具の種類,日常点検・定期点検の頻度などを設問としている。4.アンケート結果3 回のアンケート集計結果について,表-2 にまとめ示す。表中の茶色のハッチング部分は,元から高い水準での実施率を示すアンケート項目,水色は前回に比べ増加した項目,および黄色は 3 回の技能試験でコンスタントな増加傾向にある項目を表している。なお,H24 年度,H27 年度に引き続き今回 3 回目の技能試験では,約 7 割の機関が継続的,あるいは過去に経験していることがわかっている。4.1技能試験全般表-2 に基づき技能試験全般的な特徴を整理する。技能試験を重ねるたび,リピーターが増えたことが一因でもあるが,Results of Questionnaire in Proficiency Testfocused on Change in Consciousness on theAccuracy ImprovementHiroshi Nakazawa (NIED), Mamoru Wakasugi (Kiso-Jiban Consultants), KeiichiNumakura (Kawasaki Geological Engineering), Kazuaki Hioki (Osaka Institute ofTechnology) and Sunao Nakagawa (Japan Geotechnical Consultants Association)27 表-2技能試験の認知度は着実に増加し,H30は参加する機関の 9 割以上が技能試験を知っての参加となっている。今後,参加アンケート対象アンケート分類今後,技能試験に参始当初から増加し,最近では 9 割を超えており,参加継続への意義を認識したの実施率等(%)アンケート項目技能試験の認知度の意思を示している機関は,技能試験開加するか?試験者技能試験全般かし方参加したくないとの意思を示す機関の理今後,技能試験に参(参加52機関)知っている738796ー参加する758994ー社員・契約社員648292418565ー529ー向上・精度の確認ー技能試験に参加したく 3件の参加しないない理由理由は不明。必要(試験項目) 試験結果の評価方に応じて,参加・ 法が理解できな不参加を判断。い。1.0%/minー9442供試体直径〇3.5cmまたは5.0cmー70100供試体の高さ径比〇1.8~2.5未満ー9698載荷能力ー50kN以下7180100載荷方法ー手動・電動94100100上部載荷板タイプー半固定(球座付き)738481購入時検査ーする677385使用前点検ーする7310098タイプーロードセル887892一軸圧容量ー500N以下533549縮試験感量ー5N以下71100100購入時検査ーする757886使用前点検ーする738796校正ー年1回以上433648種類ー電気式変位計804960測定範囲〇20mm以上849184(13mm以上)最小目盛〇0.01mm以下8810092購入時検査ーする697581使用前点検ーする789396校正ー年1回以上413842試験方法試験装置られる。その他の特徴として,試験者については,社員・契約社員といったある種責任荷重計の参画が減少したことが一因と思われる。また,技能試験結果の活かし方として,H27 に比べ H30 には社内教育・試験技能29%となり,H27 の 5%に比べ大幅に増加H30(参加55機関)〇の参加の意思は,比例関係にあると考え資料・営業のために活かしたい機関がH27(参加51機関)載荷速度試験の認知度の増加と今後の技能試験への向上が著しく減少したが,一方,研究H24ーのコメントする)との意見もあった。従って,技能たが,H30 に増加したのは,大学・高専設問研究資料・営業加しないとした機関は,試験項目次第では参加しない(参加ある立場の試験者が,6~8 割程度であっ試験規格社内教育・試験技能の今後の技能試験の活ではないかと推察される。一方,今後,由は,z スコア以外の視点が無い,あるいアンケート結果のとりまとめ変位計している。技能試験に参加する目的意識元から高い水準前回に比べ増加コンスタントに増加傾向が変わりつつある兆候であると思われる。4.2一軸圧縮試験表-2 に基づき一軸圧縮試験の結果の特徴について,ますは,試験規格にある試験方法(載荷速度,供試体直径および直径と高さの比)と変位計(測定範囲および最小目盛)に着目する。試験方法に関し,H30 における載荷速度の順守率の低下については設問の仕方により厳密な回答を求めてしまい,概ね 1%/min で実施している機関が除かれた結果であるが,特に,供試体の直径に関しては,H30 には完全に規定を順守される結果を示した。変位計については,測定範囲で設問が変わったため定量的に言及はできないが,最小目盛に関しては,もともと高い水準を示している。規定以外の項目について述べる。試験装置に関して上部載荷板は半固定のものが多く,また,購入時検査については,実施率が増加傾向にあること,使用前点検の実施率は,最近 2 回の技能試験(H27 と H30)でほぼすべての機関で実施されている。荷重計については,校正の実施率は低い水準にあるが,購入時検査,使用前点検の実施率は,技能試験の実施年の後ほど増加しており,変位計についても同様な傾向を示している。試験装置,荷重計および変位計の購入については,各機関の事情がある。一方,使用前点検については,各試験機関・試験者で装置の状況を踏まえて実施すべきことであるが,その主な内容は,載荷装置の動作・載荷速度の確認,センサ類の固定,外観目視および清掃であり,センサ類の校正と電気系統のチェックも含まれている。特に,載荷装置の動作やセンサ類の固定は,試験結果に直接拘わる項目であり,表-2 に示すように殆どの機関で使用前点検を実施するようになったことは,技能試験への継続参加の意義の一端を伺うことができたと捉えている。5.まとめ本報では,アンケート結果に基づき,主に試験装置・器具の使用前点検を始めとする実施率の変化と改善と技能試験参加の意義について考察した。アンケート結果と z スコアとの関連を直接示すのもではないが,試験実施時に試験装置・器具類の使用前点検の実施率が高い水準を示すようになってきたことについては,技能試験を継続してきた意義があるものと考えられる。【参考文献】1)技能試験準備委員会:平成 24 年度土質試験の技能試験報告書 平成 25 年 1 月,地盤工学会,69p, 2013. 2)技能試験準備委員会:平成 27 年度土質試験の技能試験報告書 平成 28 年 1 月,地盤工学会,73p, 2016. 3)技能試験準備委員会:平成30 年度土質試験の技能試験報告書 平成 31 年 1 月,地盤工学会,72p, 2019. 4)澤他:技能試験配付試料の均質性の評価方法と判定基準について,第 48 回地盤工学研究発表会,pp.209-210, 2013. 5)沼倉他:アンケート調査結果から見た地盤材料試験の現状 -土の一軸圧縮試験-,第 54 回地盤工学研究発表会,投稿中.28
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  • タイトル
  • 均質性確認試験結果と技能試験結果(中央値)の関係(その2)
  • 著者
  • 中山義久・澤 孝平・山内 昇・城野克広・保坂守男
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 25〜26
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400013
  • 内容
  • 0013D - 00第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月均質性確認試験結果と技能試験結果(中央値)の関係(その2)技能試験,均質性確認試験,中央値関西地盤環境研究センター ○中山 義久(国際会員)・澤 孝平(国際会員)北海道土質試験 山内 昇(正会員)産業技術総合研究所 城野 克広(非会員)日本適合性認定協会 保坂 守男(非会員)1.はじめに昨年(H30 年)の発表では,技能試験の技能評価の妥当性を検証するために,付与値としての技能試験結果の中央値(仮の真値)と均質性確認試験結果の平均値が一致していることおよび技能試験結果の正規性について検討した 1)。その結果,過去 5 ケ年間の技能試験結果(中央値)と均質性確認試験結果(平均値)は,砂・粘土・改良土の物理的性質試験では比較的よく一致しているが,改良土の力学的性質(一軸圧縮強さ・破壊ひずみ・変形係数)では両者の差が比較的大きいことが明らかとなった。また,技能試験結果の正規性についても問題があることも指摘している。今回は,過去 2 回(H24 年,H27 年)と今年度(H30 年)の 3 回実施した改良土の湿潤密度試験と一軸圧縮試験に注目し,技能試験結果の中央値(仮の真値)と均質性確認試験結果の平均値の関係および技能試験結果の正規性について検討する。2.技能試験結果の評価方法技能試験は式(1)式で示すように z スコアによって評価することが多い。地盤工学会の技能試験実施委員会では,外れ値の影響を小さくするため,式(2)で示されるように,付与値と標準偏差を技能試験結果の四分位数によって求め,z スコアを計算している。H24 年と H27 年の技能評価では,=H30年 適用=H24,H27年 適用=・・・・ (1)()× .× .・・・・ (2)・・・・ (3)   z i:ある試験機関i のz スコア,x i :ある試験機関i の測定値,x :付与値,σ:技能評価のための標準偏差,(Q 3-Q 1)×0.7413:四分位数による標準偏差,Q 1:第1 四分位数,Q 2:第2 四分位数(=中央値),Q 3:第3 四分位数,S s:均質性確認試験の標準偏差配付試料の均質性を加味して,式(3)に示すような形で z スコアを求めている。3.評価方法の妥当性について(1)均質性確認試験結果(平均値)と技能試験結果(中央値)の関係技能試験結果(中央値 Q2)と均質性確認試験結果(平均値xH)との比 (Q2/xH (%))を図 1 に表す。物理的な性質(含水比・湿潤密度・乾燥密度)に関しては,3 年分の結果とも平均値 xH と中央値 Q2 はほぼ一致している(Q2/xH≒100%)。力学的な性質のうち,H30 年分の一軸圧縮強さの Q2/xH は,ほぼ 100%となっている。破壊ひずみについては,試料 41 がほぼ Q2/xH =100%であるが,試料 45 は Q2/xH=117%と大きくなっている。変形係数についての H30 年の結果は過去 2 年分に比べ,大きく改善され Q2/xH は 100±3%程度となっている。このように年の経過とともに品質が安定していくのは,プロバイダーにおける配付試料(供試体)の準備方法や技能試験参加機関の技術力が向上していることを表しているといえる。しかしながら,H30 年 試料 45 の破壊ひずみの Q2/xH が 100%を大図 1 均質性確認試験(平均値)と技能試験結果(中央きく外れていることもあり,供試体内部構造の微小なひびや値)の関係供試体内の密度分布の不均質など避けがたい課題が残る。表 1 試験項目と JB 値(2)技能試験結果の分布形状と中央値の位置関係z スコアを用いた技能評価は正規分布であることが前提である。表 1 は 3 年分の各試験項目の JB 値 2)(JB<5.99 の時,正規分布であると判定する)を表している。JB 値で正規分布と判定された項目は含水比(H27),破壊ひずみ(H24 試料 56),変形係数(H24,H30)である。3 年分の 6 試料×6 試験項目(総計 36 個)の内,JB 値による正規性があるのは 7 個であり,その割合は約 20%である。とく含水比湿潤密度乾燥密度一軸圧縮強さ破壊ひずみ変形係数H24年H27年H30年試料56 試料59 試料25 試料30 試料41 試料454.861.8064.41 277.0416.23 420.6220.20 241.23 179.6653.6341.3989.0253.96 4568.8135.3760.4522.8044.1456.8961.91 506.76 158.23 492.57 2681.341.508.7363.6111.52 2117.84 568.852.044.201.210.576.48 980.39に,この試験項目の内,重要な湿潤密度と一軸圧縮強さでは正規分Consideration on the median for Proficiency Test by homogeneity Test Results:Nakayama Yoshihisa, Sawa Kohei (Kansai Geotechnology andEnvironment Research Center), Yamauchi Noboru (Hokkaido Soil Research Cooperative Association), Shirono Katsuhiro (National Institute ofAdvanced Industrial Science and Technology), Hosaka Morio (Japan Accreditation Board)25 (b)(a)布と判定できる試験結果は0個である。図-2~図 4 は含水比(H27,H30),一軸圧縮強さ(H24,H27,H30),変形係数(H27,H30)のヒストグラムを示しており,図中の矢印は中正規性あり央値である。当然ながら,どの項目の図においても,中央値の位置正規性なしは分布形状の頻度のピーク付近にあることが分かる。JB 値により正規性があると判定できるのは図-2(a)と図-4(b)であり,それ以外は正規性が無いと判定されるものである。正規性があると判定される分布形状は,これらの頻度分布の中でも整然としており,JB 値の判定の妥当性を伺うことができる。図 2 含水比の分布と中央値(a)正規性なし(b)正規性なし(c)正規性なし図 3 一軸圧縮強さの分布と中央値(a)正規性なし(b)正規性あり図 4 変形係数の分布と中央値(3)技能評価結果と満足度図 5 は試験結果が z≦2 を満足する機関数と全機関数の割合を「満足度」として示したものである。図中の赤色およびピンク色の白抜き枠は H30 年の結果を式(3)(H24 年,H27 年と同じ式)で再計算したときの満足度の増分である。試験結果が正規分布を示す場合,z スコアの満足度は理論的には 95~96%になる。表-1 において正規性を示すものは,H24 年の破壊ひずみと変形係数,H27 年の含水比および H30 年の変形係数であるが,これらの満足度は 98%,100%,90%など理論的値とは一致しないことが多い。分布の正規性が不十分であるので,技能評価の満足度が理屈通りにならないのは当然である。一方,満足度の経年変化をみると,物理的な性質(含水比・湿潤密度・乾燥密度)は満足度がほぼ 85%以上であり,H24 年から H30 年に向けての経年変化は,ほぼ右上がり(増加)の傾向にある。強度的な性質(一軸圧縮強さ・破壊ひずみ・変形係数)では,経年変化はやや右下がり(低下)の傾向にある。この事が技能評価の妥当性と如何に関係しているかは今後の検討課題である。図 5 試験項目と満足度4.おわりに(1) 技能試験結果の中央値 Q2 と均質性試験結果の平均値 xH は,物理的な性質試験では一致している。力学的な性質試験でも H30年分についてはほぼ一致しており,配付試料(供試体)の準備方法の改善や参加機関の技術力向上を示している。(2) JB 値による判定の結果は技能試験結果の分布形状の整然さと関連しており,JB 値の判定の妥当性を表している。(3) 改良土の湿潤密度試験と強度試験についての 3 年分の試験結果によると,技能試験結果の分布の正規性が不十分であるので,技能評価の満足度は理論通りの 95~96%にはならない。参考文献 1)均質性確認試験結果と技能試験結果(中央値)の関係;中山,藤原,山内,渡辺,稲積,第 53 回地盤工学研究発表会講演集,pp.89~90,2017.2) 小西葉子・伊藤有希;Eviews の使い方補足 Jarque-Bera 検定, H.P. 資料,http://ykonishi.web.fc2.com/EViews_manual_JB.pdf,2012.3.1 取得26
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  • タイトル
  • 技能試験配付試料の均質性確保に向けての取り組み
  • 著者
  • 服部健太・澤 孝平・日置和昭・中山義久・渡邉健治
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 23〜24
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400012
  • 内容
  • 0012D - 00第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月技能試験配付試料の均質性確保に向けての取り組み試料の均質性 標準偏差 試料の寄与率関西地盤環境研究センター正 会 員○服部 健太関西地盤環境研究センター国際会員澤大阪工業大学国際会員日置 和昭関西地盤環境研究センター国際会員中山 義久東京大学国際会員渡邉 健治孝平1.はじめに(公社)地盤工学会の基準部に設置された技能試験実施委員会(委員長:日置和昭)は,平成 23 年度から継続的に“地盤材料試験に関する技能試験”を実施し,その技能評価を行っている。この技能試験においては,配付される試料の均質性が重要である。本稿では,改良土を対象とした湿潤密度試験と一軸圧縮試験の技能試験(平成 24 年度,平成 27年度,平成 30 年度)について,実施委員会から参加機関に配布する供試体の均質性確保に向けた取り組みと,均質性の実態について報告する。2.配付試料に用いる材料表-1 物理試験結果 1)に加筆2.1 母材について供試体作成に用いた母材の物理試験結果を表-11) に 加 筆 に,粒度試験結果を図-11) に 加 筆 に示す。それぞれ,天日干し等により乾燥され,土粒子の密度砂分シルト分粘土分液性限界塑性限界(g/cm3)(%)(%)(%)(%)(%)56kg/m3,59kg/m32.6704.156.539.445.1カタルポ(平成27年度)25kg/m3,30kg/m32.6910.159.540.4笠岡粘土(平成30年度)41kg/m3,45kg/m32.6432.832.361.6試料名(実施年度)配合量藤森粘土(平成24年度)塑性指数分類名20.125.0(CL)30.420.110.3(CL)57.819.838.0(CH)粉体状態ものである.これらの図表より,それぞれの塑性指数は異なるものの,藤森粘土とカ100タルポは,砂分とシルト分に大差はなく,低液性限界の粘土である。ま90粘土を採用した経緯は次のようである。まず,平成 24 年度の藤森粘土は,比較的手に入りやすく,平成 26 年度の物理試験に関する技能試験にも使用されている。しかし,平成 27 年度の改良土の技能試験に使用を試みたが,PH 値が低い(pH3 程度)ため安定した供試体が作成できないこと1),および藤森粘土の生産が中止されることから,代替試料としてカタルポを使用することにした。ところが,平成 27 年度のアンケ80通過質量百分率(%)た,笠岡粘土は,粘土分が多く高液性限界の粘土である。この 3 種類の7060504030藤森粘土(平成24年度)カタルポ(平成27年度)笠岡粘土(平成30年度)201000.001ート結果から,プラスチックモールドの脱型時に供試体が割れる問題や,均質性の確保が十分でないことが判明し,平成 30 年度は,これまでと0.010.1110粒径(mm)図-1 粒径加積曲線 1)に加筆異なる試料として塑性指数の高い笠岡粘土を用いることにした。2.2 配合量の検討200100kN/m2~120kN/m2,B 強度:140kN/m2~160kN/ m2 を目標強度として配合量を求める(図-2)。この強度設定は,①送付時にできるだけ乱れが生じないように100kN/m2 以上,②ワイヤーソ―での成形ができることを目指して 200kN/m2 程度以下とし,この 100~200 kN/m2 の間の 2 パターンとしている。平成 30 年度には次の 3 段階の手順により作業を進めている。【手順1】初めに供試体作成時の初期含水比を決め,次に配合時の基準となる湿潤密度を計測する。初期含水比は,配合時の流動性や気泡除去の容易さ,タッ一軸圧縮強度 (kN/m2)今回の技能試験では,あらかじめ実施委員会が準備した異なる 2 種類の試料を用いて実施する。この 2 種類の供試体が異なる強度になるように,A 強度:B強度A強度1000020A配合 40B配合6080配合量 (kg/m3)図-2 配合量の決定方法ピングによる脱気時に分離しない程度に設定する。【手順2】予備試験 1 回目で,異なる 4 種類の初期含水比(wL+5%,wL+10%,wL+15%,wL+20%)で湿潤密度を測定し,その湿潤密度で 4 配合量(40、45、50、55 kg/m3)の 16 パターンを実施している。予備試験の結果,液性限界Some Actions on the Homogeneity of Sample used for Proficiency TestingHATTORI, Kenta (Kansai Geotechnology and Environment Research Center), SAWA, Kohei (Kansai Geotechnology andEnvironment Research Center),HIOKI, Kazuaki (Osaka Institute of Technology), NAKAYAMA, Yoshihisa (Kansai Geotechnologyand Environment Research Center), WATANABE, Kenji (Tokyo University)23 wL+10%未満では配合時の流動性が悪く脱気しにくい等の問題があり,wL+15%以上では一軸圧縮試験時に脱水が見られるので,初期含水比を wL+10%とする。【手順3】目標強度の決定や再現性の確認のため,予備試験 2 回目を 4 配合量(41kg/m3 、 43kg/m3 、45kg/m3 、47kg/m3)で実施し,28 日強度の結果から 41kg/m3,45kg/m3 の配合量に決定している。2.3 均質性確保に向けた具体的取り組み技能試験の供試体作成においてその均質性を確保するために,次のような点に気を配っている。(1) まず母材を 425μm のふるいにかけ,全体を均質に撹拌する。(2) 次にミキサーで,母材とセメントの粉体同士を 1 分間撹拌する。(3) その後,一気に加水すると含水比のばらつきが生じるおそれがあるので,撹拌しながら 1 分間かけて徐々に加水する。(4) 加水後は,5 分間撹拌した後,一度ミキサーを停止し,ミキサー側面や底面の撹拌が不十分と思われる個所を,ヘラ等により人力で撹拌写真-1 試料の注入状況した後,最後に 5 分間かけてミキサーで撹拌することで均質性を高める。(5) 撹拌後,試料を厚手のビニール袋に入れ,袋の端を切り,生クリーム方式でプラスチックモールドに 3 層に分け入れる(写真-1)。(6) 1 層ごとに 5 人が順番にモールドをタッピングすることにより,個人による誤差を少なくする。3 層終了後、端面を成形し,その質量が±1.0g であれば合格とし,-1.0g未満であれば,脱気不十分とみなし再度タッピングする。(7) ラップにて乾燥を防いだ容器に試料を入れ,容器の淵を両面テープで密閉して湿度を保つ。(8) これらの容器を空調設備によって温度 22℃に設定した室内にて養生する。(9) 養生後,各配付試料を気泡入り緩衝材で梱包し,試験日の 3 日前までに到着するよう材齢 21 日の時点で発送する。3.均質性の実態JIS Z 8405 付属書 B によると,「技能試験の配付試料は,ss/ σˆ ≦0.3(ss:試料間標準偏差 σˆ :技能評価のための標準偏差)の場合均質である」とされている。これを試験結果の不確かさ要因分析により表示すると,(ss/ σˆ )2=(σH /σP)2=RSMP/10025.0となる。ここに,σH:均質性試験の標準偏差,σP:技能試験の標準偏差,RSMP:配付試料の寄与率である。すなわち,JIS の均質性基準(ss/ σˆ ≦実行委員会では,均質性が確保しにくい地盤材料の場合,JIS 基準の比 0.3 を仮に 0.5(RSMP≦25%)として,均質性判定を試行している 2)。変動係数 v1 (%)0.3)を満足する場合,配付試料の寄与率 RSMP は 9%以下となる。一軸圧縮強度20.0技能試験(参加機関数 50~55 機関)の変動係数 v1(四分位法によ15.0(平成24年度)(平成27年度)10.0(平成30年度)5.0る)を図-3 に示す。これによると,徐々に変動係数が小さくなっており,この要因一つとして考えられる配付試料の寄与率を図-4 に示す。この図より,カタルポ以外の試料の含水比,全試料の湿潤密度,藤森粘土以外の試料の一軸圧縮強度について RSMP が 25%以下を示しており,均質と0.0試料56試料59試料25試料30カタルポ藤森粘土試料41 試料45笠岡粘土図-3 試料毎の変動係数判断できる。また,どの項目についても笠岡粘土は過去 2 年より均質な試料であると言える。50.0(平成27年度)湿潤密度配付試料の寄与率 RSMP (%)含水比一軸圧縮強度40.0(平成24年度)30.0(平成24年度)(平成27年度)(平成27年度)25.020.010.09.0(平成24年度)(平成30年度)(平成30年度)(平成30年度)0.0試料56 試料59 試料25 試料30 試料41 試料45藤森粘土笠岡粘土カタルポ軸ラベル4.おわりに試料56 試料59 試料25 試料30 試料41 試料45藤森粘土笠岡粘土カタルポ試料56 試料59藤森粘土試料25試料30カタルポ試料41 試料45笠岡粘土図-4 配付試料の寄与率本報告では,均質性確保に向けた工夫について紹介するとともに,結果として均質な試料が配付できていることがわかった。得られた成果は,今後の技能試験においてより均質な供試体作成に活かしていきたい。参考文献1) 松本修司,澤孝平,中山義久,服部健太:技能試験結果に用いるセメント改良土供試体の均質性,第 12 回地盤改良シンポジウム論文集,No.4-1,日本材料学会,2016.2) 澤孝平,服部健太,城野克広,保坂守男:技能試験配布試料の均質性に関する検討,第 53 回地盤工学研究発表会,pp87-88,2018.24
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  • タイトル
  • 煮沸時間及び土の粒径が土粒子の密度にあたえる影響
  • 著者
  • 米澤友哉・中村洋丈
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 21〜22
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400011
  • 内容
  • 0011D - 03第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月煮沸時間及び土の粒径が土粒子の密度にあたえる影響土粒子の密度泥岩 粒径高速道路総合技術研究所正会員○米澤 友哉高速道路総合技術研究所国際会員中村 洋丈1. はじめに道路盛土の締固め管理は,粘性土や破砕転圧が必要な泥岩などでは空気間隙率管理や飽和度管理が行われている。これらの管理手法で求める空気間隙率(va)や飽和度(Sr)は土粒子の密度( s)が必要であり,土粒子の密度は求める値に影響を与える重要な物性値である。したがって,盛土施工では,施工前には材料試験,施工中には物性の変化を確認するため基準試験として,土粒子の密度試験が行われている。このように品質管理の基準値に影響する土粒子の密度は,試験方法に留意が記されており,例えば,関東ロームでは煮沸時間の影響が指摘されている 1)。また,JIS 試験法は 1990 年には適用範囲の粒径が 9.5mm に改定されており,土質材料によっては試験法の違いが土粒子の密度に与える影響が大きいと考えられる。そこで,本稿では,スレーキングによる細粒化や礫の密度が材料によって異なる泥岩に着目し,煮沸時間及び適用粒径の違いが土粒子の密度に与える影響について検討を行った。2. 土粒子の密度試験方法の改定変遷土粒子の密度試験方法は,「土粒子の密度試験方法(JIS A 1202)」による。表-1 に示すように JIS の試験法はこれまでに 5 回改定されており,現在の試験法は 2009 年に定められたものである。(1) 煮沸時間JIS 試験法では,煮沸時間は一般の土では 10 分以上,高有機質土では約 40 分,火山灰土では 2 時間以上とされている。文献 1)によれば,一定の値を得るためには 2∼4 時間以上の煮沸時間が必要とされている。また,空気乾燥土や炉乾燥土では,その程度の煮沸時間でも非乾燥土と同じ値にならないと報告されているため,煮沸は土の種類や試料調整方法を考慮して行う必要がある。表-1 土粒子の密度試験の煮沸時間と適用粒径の変遷試験法JIS A 1202項目1970(1975)1978199019992009∼名称土粒子の比重試験方法適用粒径規定なし9.5mmふるい通過10分以上一般の土10分以上、高有 一般の土10分以上、高機質土では約40分、しら 有機質土では約40分、すでは2時間以上火山灰土は2時間以上煮沸時間日本道路公団・NEXCO試験方法1950適用粒径煮沸時間4760 mふるい通過土粒子の密度試験方法2000 mふるい通過9.5mmふるい通過JISと同様JISと同様( )は日本道路公団試験法の改定年(2) 最大粒径JIS 試験法は 1950 年に制定され,粒度の適用範囲は定めていない。その後,1990 年に適用範囲は 9.5mmふるいを通過した土粒子に改定された。一方,高速道路の試験法は 1962 年に制定されて,4760μm(4.76mm)ふるい,2000μm(2.00mm)ふるいと変遷したが,現在は,JIS と同じく 9.5mm ふるい通過した土粒子となっている。3. 試験に用いた材料と試験方法試験には表-2 に示す各地で採取した 6 材料の泥岩と参考にローム及び C-40 砕石を用いた。泥岩の自然含水比は 6∼49%,岩石の密度は,1.13∼2.46(g/cm3),スレーキング率は高く 57∼98%であるのが特徴的である。試験方法は,JISA1202 土粒子の密度試験方法で行い,煮沸時間及び適用粒径を変化させて,その影響を確認した。(1) 試験概要 予め現場から採取してきた材料から,任意に試験に必要な量を取り出し,目開き 9.5mm ふるいでふるって試料を準備した。試料は湿潤状態のままを用いた。試料は 100mL のピクノメーターを入れて,煮沸法により気泡を除いた。煮沸後は室温で 4 時間以上冷まして重量を計測した。(2) 煮沸時間と適用粒径煮沸時間による影響を確認する試験では,1 材料あたり測定時間ごとに 3 試料用意した。煮沸時間は試験法や文献 1)の解説を参考に 1,2,3,4,6 時間とした。煮沸後は時間ごとに 3 試料計測した。適用粒径の影響を確認する試験では,1 材料あたりふるい目開きの粒径ごとに 3 試料用意した。粒径はこれまでの高速道路の試験法などを参考に,目開き 2.0mm,4.75mm,9.5mm のふるいを通過したものとした。またこの時の煮沸時間は 3 時間に統一した。煮沸後は粒径ごとに 3 試料計測した。YONEZAWA, Tomoya / NAKAMURA, HirotakeInfluence of soil particle size and boiling time on thedensity of soil particlesNippon Expressway Research Institute Co.,Ltd.21 4. 試験結果表-2 試験に用いた材料の物性(1) 煮沸時間の影響図-1 に土粒子の密度と煮沸時間の関係を示1234567試料採取場所神戸藤枝清水高崎秋田沖縄秦野泥岩泥岩泥岩泥岩泥岩泥岩ローム34.34.86.018.548.623.645.22.7662.7362.7292.6762.6032.7342.85137.5岩 種す 。 泥 岩 材 料 の 土 粒 子 の 密 度 は , 2.6 ∼ 自然含水比2.76(g/cm3)程度の範囲にある。どの材料も煮沸wn土粒子の密度時間が増えても,煮沸時間 1 時間後の密度と泥岩は煮沸時間が長くなるにつれて若干では粒度組成あるが密度があがる傾向がある。文献 2)の沸騰時間と土粒子の密度の関係の関係図にあるテコンンシシスー粘性土では,一定値を得るためには 2∼4 時間以上の煮沸時間が必要とされている。これらと比較すると,ここで用いた泥岩の煮沸時間は,短時間の試験は実施していないが,概ね 1時間程度で一定値が得られると考えられる。ただし,秋田泥岩のような材料もあるので,土めの試締験固%3g/cms最大粒径 大きく変わらない傾向である。しかし,秋田これは(2)で考察する。試 料 番 号mm37.575.0100.037.537.537.5石分 (75mm以上 )D max%008.90000礫分 (2∼75.0mm)%71.076.680.381.382.871.915.9砂分 (75 m∼2mm)%28.021.89.716.516.626.135.3細粒分 (75 m未満 )%1.01.61.12.20.62.048.8液性限界 wL%74.825.156.180.563.858.6塑性限界 wp%34.315.230.543.029.549.140.59.9NP25.637.534.39.5B-cB-cB-cB-cB-cB-cB-c1.3512.1401.9021.5521.0311.4501.121塑性指数    I p供試体作製方法 (呼び名 )3最大乾燥密度 r dmaxg/cm最適含水比 w opt%34.49.110.024.551.330.248.9岩石の密度 D g/cm39.5∼ 37.5mm1.452.462.411.751.131.62-岩石の吸水率 wa %9.5∼ 37.5mm33.54.44.919.32.625.5-スレーキング率      %98.394.457.292.377.396.8-破砕率          %59.459.038.545.445.051.4-(2) 適用粒径の影響図-2 に土粒子の密度と適用粒径の関係を示す。泥岩材料の2.800違いは見られない。参考にロームと砕石の結果を併記しているが,これらの密度も変化がない。一方,No.4 高崎,No.5 秋田では粒径によって値が変化している。No.4 高崎は粒径 2mm では密度2.744(g/cm3)であるが,粒径が大きくなる 9.5mm では 2.676(g/cm3)に減少した。また,No.5 秋田では粒径 2mm の密度 2.677(g/cm3)が 9.5mm で は 2.604(g/cm3) に 減 少 し た 。 こ れ ら の 差 は 約0.07(g/cm3)程度である。土粒子の密度 s(g/cm3)No.1 神戸,No.2 藤枝,No.3 清水,No.6 沖縄は粒径による大きな2.750No.2_藤枝2.700No.5_秋田2.6002.55002.900礫が多いと,土粒子の密度は低くなることが想定される。これは2.850ここでは,sの変化が,これらの指標に与える影響を確認した。土粒子の密度 s(g/cm3)なっている。したがって,岩石の密度が低い比較的大きな粒径の品質管理に用いる va や Sr は土粒子の密度を用いて計算する。表-3 は,No.5 秋田泥岩の結果で,粒径-9.5mm,煮沸時間 3 時間で得られたした。 s が化する。このように68※凡例の黒塗は平均、白抜は個々の値No.1_神戸No.2_藤枝2.800No.3_清水2.750No.4_高崎2.700No.5_秋田No.6_沖縄2.650No.7_ローム2.600参考_砕石2.55003s=2.603(g/cm ),最適含水比,最大乾燥密度を基準と0.1(g/cm3)大きくなった場合,va は4図-1 煮沸時間の違いによる土粒子の密度多く(82.8,81.3%),かつ岩石の密度が低く(1.13,1.75g/cm3)5. 土粒子の密度が品質管理指標に与える影響2煮沸時間(h)ここで秋田と高崎の表-2 の物性をみると,他の材料よりも礫分がきないため,今後の課題としたい。No.4_高崎2.650量や,試験時の礫分の含有量などが影響することが考えられる。試験では,試料ごとの粒度分布は試験しておらず,要因は特定でNo.3_清水※凡例の黒塗は平均、白抜は個々の値土粒子の密度は,石の状態の密度すなわち礫に内包する空気の図-1 の煮沸時間にも影響すると思われる。しかしながら,今回のNo.1_神戸24 4.7589.512ふるい通過目開き(mm)1.5%,Sr は 2.1%変図-2 最大粒径の違いによる土粒子の密度s が大きく変化する場合は管理指標に与える影響も大きいので留意が必要である。表-3 土粒子の密度が品質管理指標に与える影響6. まとめ今回使用した泥岩は,煮沸時間 1 時間程度で密度が一定になるため,煮沸時間の影響は見られなかった。また,適用粒径の違いでは,試料によって密度の値が変化することが確認でき,管理指標に用いられる va や Sr に与える影響も大きいことが分かった。参考文献2009.1) (社)地盤工学会:地盤材料試験の方法と解説,pp.97-102,2) 藤田・古賀:電子レンジを利用した土の物理試験方法に関する 2,3 の研究,土質工学会論文報告集,Vol.28,No.4,pp.197-207,1988.22s3(g/cm ) 誤 差2.7032.6772.6532.6032.5532.503+0.100+0.074+0.0500.000-0.050-0.100v a (%)誤 差sr (%)誤 差9.08.68.27.56.75.9+1.5+1.1+0.70.0-0.8-1.685.586.086.587.688.789.9-2.1-1.6-1.10.0+1.1+2.3
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  • タイトル
  • 粒度(沈降分析)試験の測定方法の検討
  • 著者
  • 藤村 亮・松川尚史・三好功季・橋本 篤・澤 孝平・中山義久
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 19〜20
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400010
  • 内容
  • 0010D - 00第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月粒度(沈降分析)試験の測定方法の検討粒度試験 沈降分析 比重浮標(協)関西地盤環境研究センター ○藤村 亮 (正会員) 松川 尚史 (正会員)三好 功季 (非会員)澤 孝平 (国際会員) 中山 義久 (国際会員)1. はじめに粒度試験方法 1)(JIS A 1204)の沈降分析では、浮ひょうの読み取り方法は『メスシリンダー静置後、1 分・2 分の読取りでは、メスシリンダーに浮ひょうを入れたままでよいが、その後は、読み取り前に浮ひょうを挿入し、読取り後には浮ひょうを必ず抜き出し、浮ひょうに付着した汚れをぬぐい取る』となっている。しかし、浮ひょうを抜き出すことで土懸濁液が撹拌され、かつ浮ひょうの上下動により読取り値に影響を及ぼすことが懸念される。そこで、本報告では同一試料を用い、2 分以降は浮ひょうを毎回抜き出す方法(「JIS 法」という)と浮ひょうを入れたままの方法(「提案法」という)との 2 パターンで沈降分析を実施し、両者の違いを比較する。また、以前の報告では、1 試料 1 回の測定により同様の検討を行った2)が、粒度試験についても含水比、土粒子の密度などのように 1 試料 3 回の試験結果の平均により試料ごとのバラツキを少なくするという提案がある3)。そこで、本論では一試料 3 回の測定による検討を行い、その平均値で比較した結果について述べる。2. 試料と実験方法本論において使用した試料は物理的性質が異なる5種類の表-1 試料の質量と物理試験結果試料名粘性土である(表-1)。炉乾燥質量で50g ずつを1L の懸濁液にしてメスシリンダーに入れ、撹拌・分散後、沈降分析を実施した。浮ひょうとメスシリンダーの組み合わせは変えずに、JIS 法(2分以降は浮ひょうを毎回抜き出す方法)と提案法(浮ひょうを入れたままの方法)で、1つの試料当たり3本乾燥質量 土粒子の密度(g)ρ s (g/cm3)液性限界w L (%)塑性限界w P (%)塑性指数IP27.4カオリン1502.76559.932.5カオリン2502.65224.217.66.6笠岡502.67257.521.735.8荒木田502.71346.524.022.5藤ノ森502.67239.819.720.1のメスシリンダーにより実施している。1003. 試験とその検討90(破線)とその平均(実線)の粒径加積曲線(粒径0.001mm~1mm の範囲)を示す。笠岡、藤ノ森、カオリン 2は 1 時間から 24 時間読み(0.01mm 以下の粒径)の間で提案法が少し下に位置する。他の 2 試料は粒径加積曲線に少し差異はあるが、JIS 法と提案法で有意な差は存在しない事が確80通過質量百分率 (%)図-1~5 に各試料の JIS 法および提案法の 3 回の試験結果カオリン170JIS法1JIS法2JIS法3提案法1提案法2提案法3JIS法平均提案法平均6050Ip=27.440302010認できる。00.001JIS 規格では、粒度試験結果の報告は粒径加積曲線の他、0.11粒径 (mm)60%粒径 D60 、50%粒径 D50 、30%粒径 D30 、10%粒径 D10 、図-1 カオリン 1 の粒径加積曲線細粒分含有率 Fc 、粘土分含有率 Cc 、均等係数 Uc 、曲率係数Uc'を報告する事になっている。本論ではこの内 D50 、Fc 、0.0110090取り、JIS 法と提案法の各 3 回の平均値をプロットすると、80図-6~8 が得られる。70JIS法160JIS法250JIS法3D50 は、カオリン 1、カオリン 2 では、JIS 法と提案法で差がなく、荒木田、笠岡、藤ノ森では少し差が見られる。Fc は、カオリン 1、カオリン 2 では JIS 法、提案法ともに Fc =100%となり、荒木田、笠岡、藤ノ森では JIS 法、提案法で少し差が見られる。通過質量百分率 (%)Cc に着目し、5 試料の粒径加積曲線からこれらの値を読みカオリン2提案法140提案法23020提案法3Ip=6.6JIS法平均10Cc は、荒木田、藤ノ森が JIS 法と提案法で少し差があり、他の 4 試料はほぼ同じ値である。00.001提案法平均0.010.1粒径 (mm)これらを総合すると D50 、Fc 、Cc の各 3 回の平均値によ図-2 カオリン 2 の粒径加積曲線Consideration of measuring method for sedimentation analysisFujimura Ryo, Matsukawa Hisashi, Miyoshi Kouki, Hashimoto Atsushi, Sawa Kohei, Nakayama Yoshihisa,(Kansai Geotechnology and Environment Research Center)191 る JIS 法と提案法との比較では、有意な差は小さいと考え100られる。しかし、D50 、Fc における荒木田、笠岡、藤ノ90笠岡80案法での差が大きくなる傾向が見られた。70JIS法160JIS法250JIS法340提案法1通過質量百分率 (%)森のように、塑性指数 Ip が 20 を超えるものは JIS 法、提4. まとめ3回平均による試験結果について、JIS 法と提案法の違いを検討したところ、両者の違いは小さいことが確認できる。また、以前の報告2)と比べ、3回平均値の方が両者の提案法2Ip=35.830提案法320JIS法平均10提案法平均差が小さくなっている。00.0010.010.11粒径 (mm)今後サンプルやデータ数を増やし、浮ひょうの出し入れを行わない場合でも沈降分析結果に影響が少ないことを確図-3 笠岡の粒径加積曲線認し、将来的には沈降分析の自動計測化に繋げていきたい。10090通過質量百分率 (%)《参考文献》1)地盤工学会編:地盤調査の方法と解説、二分冊の1、pp.115-136,2013.2)三好功季,中山義久,松川尚史:粒度試験(沈降分析)における浮ひょう測定方法の違いについて,全地連技術フォーラム2017論文集,論文 No.100, 2017.80荒木田70504030Ip=22.5203)澤孝平,服部健太,城野克広,保坂守男:技能試験配付試料JIS法1JIS法2JIS法3提案法1提案法2提案法3JIS法平均提案法平均6010の均質性に関する検討,第53回地盤工学研究発表論文集, 地00.0010.010.1粒径 (mm)盤工学会, No.44, pp.87-88, 2018.1図-4 荒木田の粒径加積曲線1000.0140.012藤ノ森800.010通過質量百分率 (%)藤ノ森IP=20.10.0080.0060.004荒木田IP=22.5笠岡IP=35.8カオリン1IP=27.40.0020.0000.000● JIS法 平均値● 提案法 平均値0.0020.0040.0060.0080.0100.01270JIS法160JIS法250JIS法340提案法130提案法2提案法320Ip=20.1JIS法平均100.014提案法 D50 平均値 (mm)提案法平均00.0010.010.11粒径 (mm)図-6 D50 の比較図-5 藤ノ森の粒径加積曲線笠岡IP=35.8藤ノ森IP=20.1120.00カオリン1IP=27.4100.00JIS法 Cc 平均値(%)JIS法 D50 平均値(mm)90カオリン2IP=6.6カオリン2IP=6.6荒木田IP=22.5カオリン1IP=27.480.00荒木田IP=22.560.00藤ノ森IP=20.140.00カオリン2IP=6.620.00● JIS法 平均値● 提案法 平均値笠岡IP=35.8● JIS法 平均値● 提案法 平均値0.000.0020.0040.0060.0080.00提案法 Cc 平均値(%)図-8 Cc の比較図-7 Fc の比較20100.00120.00
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  • タイトル
  • Experimental Study on Long-term Permeability Change at different temperatures
  • 著者
  • 宋 忱潞・安原英明・中島伸一郎・岸田 潔
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 17〜18
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400009
  • 内容
  • 0009第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月F - 00Experimental Study on Long-term Permeability Change at different temperaturesPermeability Long-term Mineral compositionKyoto UniversityEhime UniversityYamaguchi UniversityKyoto UniversityMemberMemberMemberMember○Chenlu SongHideaki YasuharaShinichiro NakashimaKiyoshi Kishida1 Introductionprocess, the temperature is gradually increased until60 ℃.(c) At 60℃, the confining pressure is also holding at 3.0MPa for 120 holding days and permeability test iscarried intermittent dates. Distilled water is utilized inthis experiment for easily grasping the mineral variation.Moreover, extracted water from the rock fracture is alsoevaluated after each permeability test.It is thought that the underground water flows around the rockmass would be altered under various conditions. The coupledTHMC(temperature-hydro-mechanical-chemical) processesmay exert a significant influence on the subsurface waterflow around the fractured rock mass. Several previous studiesfocus on the hydraulic properties of the rock fractures undercoupled conditions [1,2]. However, many of laboratoryworks do not examine the characteristic of the permeabilityevolution in the rock fractures in long-term. Moreover, theproperties of hydraulic aperture variation in long-term alsoneed to be clarified. In this study, several long-termpermeability tests on granite with a single fracture underconstant confining condition were performed. Additionally,solute mineral components generated within the fractureaperture during the permeability test were also measured.Consequently, it is discussed that the permeability of fracturewas changed for the long-term under various confining andthermal conditions.33.34 mm101.21 mmSample 1#49.28 mmLow2 Experimental conditions and methodologyA cylindrical granite specimen with a diameter of 49.3 mmand a length of 101.2 mm, was split by the Brazilian test tocreate a single fracture along the cylinder axis. Themorphology of the surface roughness was measured asshown in Fig.1. It will be utilized for checking the roughnesssurfaces evolution under different conditions at the pre- andpost-experiment. The granite specimen sealed with the heatshrinkable tube was installed into the triaxial cell as shown inFig.2 [3]. Long-term permeability tests were conducted atconstant confining stress for 120 holding days and with twodifferent temperatures, 20 and 60 ℃, as shown in Fig.3. Theexperiment process was consisted in three steps,(a) At 20 ℃, the confining pressure until 3.0 MPa isincreasing, and then the confining pressure is holding for120 holding days. Permeability test is carriedintermittent dates.(b) After 120 holding days measurement, 1 cycle ofloading-unloading was employed. After the unloading15.23 mmRoughnessHighFig.1 Cylindrical granite specimen and the morphology of the surfacesroughnessFig.2 Triaxial cell and flow measurement system utilized in this study[1]Experimental Study on Long-term Permeability Change at differenttemperatures○Chenlu Song, Kiyoshi KishidaKyoto UniversityHideaki Yasuhara, Ehime University, Shinichiro Nakashima, Yamaguchi University17 dissolution might occur on the free surface greater than thefracture contact area, which will lead to the increase of theaperture. Additionally, it will alter the permeability evolution.Long-term 20℃Long-term 60℃3.52Permeability (10-13m )4Fig.3 Procedure of the permeability tests3 Experimental resultsFig.4 shows the temporal change of the permeability undertwo different temperature conditions. At 20 oC, permeabilitydecreasing can be summarized as two stages. At the first stage,permeability decreased sharply within several days, then itdecreased again after a short stable period. It can be thoughtthat at the second reduction stage, mechanical creepcompaction leads to the permeability evolution. Moreover,the geochemical reaction such as the mineral dissolution andreprecipitation might also altered the permeability. Fig.5shows the element concentrations at 20 oC, the concentrationsof the elements of Si, Na, Ca are larger than others. From 80to 120 holding days, those elements show slight fluctuation.Mineral dissolution changing can be thought to explain thepermeability decreasing. At 60 oC, the permeability is lowerthan that at 20 oC before 60 holding days. Permeability wasaltered at a higher temperature. However, after 60 holdingdays, permeability had a tendency to increase and seemsunstable. It is different from some researchers thatpermeability decrease at a higher temperature. A highertemperature might drive the geochemical reaction, mineraldissolution of the free surfaces is larger than the dissolution atthe contact area [4]. Then, it might enlarge the aperture andincreases the permeability.32.521.510.5020406080100120Time (Day)Fig.4 The temporal change of the permeability evolution under constantconfining pressure of 3.0 MPa and temperatures of 20 and 60 oC10-3Concentration (mol/L)SiAlKFeMgNaCa10-410-510-6020406080100120Time (Day)Fig.5 Evolution of the mineral composition at 20 oCReferences[1]. Polak, A., Elsworth, D., and Liu, J. S. Spontaneous switching ofpermeability changes in a limestone fracture with net dissolution[J].4. ConclusionsThis paper reported two long-term experiment works of thepermeability tests under the constant normal stress and twodifferent temperatures. At 20℃, the permeability decreasedmonotonically. After about 30 holding days, the permeabilitydecreased should be thought to be due to mechanical creepdeformation. Pressure solution might also occur at thefracture asperities.Based on the mineral composition analysis, the permeabilityvariation depending on chemo-mechanical interaction on thefracture surface roughness can be confirmed. At 60 ℃, at theinitial phase, the permeability value is always lower than thatat 20 ℃. After about 60 holding days, the permeability hadan increasing tendency. It can be thought that the mineralWater Resources Research. 40(W03502): 1 029–1 038. 2004.[2].Min,K.B., Rutqvist,J., Elsworth, D. Chemically and mechanicallymediated influences on the transport and mechanical characteristics ofrock fractures[J]. International Journal of Rock Mechanics and MiningSciences. 46(1): 80–89. 2009.[3]. Yasuhara, H., Hasegawa, D. Nakashima, s., Yano, T. and Kishida, K.,Experimental evaluation of fracture permeability in granite undertemperature and stress controlled conditions. Japanese GeotechnicalJournal, 8(1), pp.71-79, 2013.[4].Yasuhara, H., Elsworth, D., and Liu, J. S., Halleck,P. Spontaneousswitching between permeability enhancement and degradation infractures in carbonate: Lumped parameter representation ofmechanically- and chemically-mediated dissolution. Transp. PorousMedia. 65, 385–409, doi:10.1007/s11242-006-6386-2. 2006.18
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  • タイトル
  • 近赤外線水分計によるロックフィルダムコア材料の含水比迅速測定法
  • 著者
  • 小原隆志・小林弘明・坂本博紀・福島雅人
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 15〜16
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400008
  • 内容
  • 0008D - 03第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月近赤外線水分計によるロックフィルダムコア材料の含水比迅速測定法鹿島建設 (株) 正会員 ○小原 隆志,小林 弘明,米丸 佳克含水比試験 近赤外線水分計 コア(独) 水資源機構 正会員 坂本 博紀,福島 雅人1.はじめに盛土工の締固め管理において盛土材料の含水比は基本的な管理項目であり,施工現場では土取り場や盛土ヤードにおいて盛土材の含水比が適切な範囲にあることを確認しながら施工を行う.降雨後など盛土材の状況変化があった場合にも含水比は施工判断の基準となるため,現場の含水比の測定には迅速性が求められる.また,遮水性が要求されるロックフィルダムのコア盛立工では含水比について厳しい規格が設けられており,一般に施工含水比は最適含水比 wopt を基準に概ね+3%の範囲に限定されることから,含水比の測定にはこの管理レベルに見合う測定精度も要求される.筆者らは,このような含水比測定の迅速性と精度についての現場的要求を満たす測定法として近赤外線(以後「NIR」)水分計に着目し,土質材料のための含水比測定機(写真 1)を試作し検討を進めてきた 1).本稿では,建設中の小石原川ダムにおける材料の品質管理に NIR 法を適用することを目標として,コア盛立工において一定期間試行し,測定精度や運用方法について検討した結果を述べる.近赤外線水分計2.NIR による含水比測定の原理と特徴NIR 水分計は近赤外線の水分による吸光性を利用した水分計であり,被測定物に近赤外線を当てたときの特定の波長帯における反射光の減衰量を数値化した“吸光度”を測定することで被測定物表面の水分量を推定する.含水比を求めるには,予め対象材料の吸光度と含水比の相関(検量線)を求めておく必要がある.今回用いた NIR は 2 波長タイプで、水分に対する感度が高い 2 つの波長帯の吸光度からコア材近赤外線照射回転測定範囲:φ 約 20mm次の検量線により含水比を推定する。wNIR= a0+a1X1+a2X2(1)写真 1 近赤外線水分計によるコア材のここに,wNIR:NIR 法による含水比,a0:検量線の切片,a1、a2:各吸光度に対含水比測定状況する偏回帰係数,X1、X2:各波長帯における吸光度であり,切片ならびに偏回帰係数は炉乾燥法(JIS A 1203,以後「JIS 法」)で測定した含水比と吸光度の関係から重回帰分析により較正して求める.NIR 水分計は非接触かつ連続的に測定できることから工場製品の品質管理に用いられており,製紙,食品,薬品など利用分野は多岐にわたる.これを施工現場で用いる最大の利点は,近赤外線光を試料に当てるだけで瞬時に測定結果を得ることができる迅速性にあり,ターンテーブル式の試作機 1)では試料の準備~測定~廃棄に要する作業時間は約 5 分と短時間での含水比測定が可能となる.3.コア材の吸光度測定表 1 試料の物理特性測定に使用した試料の物理特性を表 1 に示す.コア材 A~C は異なるストックパイル(細粒材と粗粒材の互層パイル)から切崩したコア材で,粒度分布や塑性指数 Ip は同程度の材料である.着岩コアは岩着部に最初に盛立する細粒分に富んだ材料で,測定結果の参考として示した.ここではコア材C着岩コア2.8172.8302.770最大粒径(mm)150150150粒度194.75 mm通過率 (%)52.948.651.389.50.075mm通過率 (%)テ コ 液性限界ンンシ シ 塑性限界ス 塑性指数ー測定した含水比 wJIS_37.5 の関係である.図 1(a)と(b)に示すように含水比のコア材B2.8873土粒子密度 ρ s (g/cm )含水比の測定粒径を 37.5mm 以下とした.図 1 は各試料の含水比を変化させて測定した 2 つの吸光度と JIS 法でコア材A試料23.723.323.559.0wL40.446.745.059.1wP24.628.927.834.4Ip15.817.817.224.7増加(減少)に伴い吸光度が増加(減少)する傾向や,図 1(c)に示すように 2 つの吸光度が概ね比例関係を示す点はいずれの材料も共通しているが,コア材 A~C と着岩コアのように土質が異なる場合は,吸光度の取り得る範囲が大きく異なる.また,粒度や Ip が同程度のコア材 A~C においても図 1(c)における吸光度の傾向に若干の違いが認められる.コア材 A~C はストックパイル造成に使用した細粒材と粗粒材の採取地が異なり,材料の色相なども吸光度に影響する可能性がある.一方で,後述するように,同じストックパイルのコア材であれば 2 つの吸光度の関係はほとんど変化しないことから,NIR 法を適用するには検量線をストックパイル毎に個別に設定する必要がある.4.NIR 法の測定精度と運用方法図 2 はコア材 A および B の搬出時含水比を NIR 法と JIS 法で測定した結果である.NIR 法による含水比 wNIR_37.5 は測定中の全データを用いて設定した検量線から求めた.NIR 法の測定誤差は概ね±1%以内であるが,礫の多い試料では誤差が 1%を超える場合も確認された.NIR 法で測定できるのは材料表面の水分量であるため,礫に付着する細粒分の含水量が測定結果に支配的となる.そのため粒度が変化し礫分が増加した場合,含水比を実際よりも過大に評価する恐れがある.A near-infrared reflectance moisture sensor for core of rockfill damKajima Corporation Obara T., Kobayashi H. Japan Water Agency Sakamoto H., Fukushima M.15 35(a)(c)3025着岩コアコア材B2015コア材A10コア材C5対象粒径37.5mm以下00.55コア材Aコア材Bコア材C着岩コアJIS法含水比wJIS_37.5 (%)JIS法含水比wJIS_37.5 (%)300.45(b)150.95コア材A105対象粒径37.5mm以下0.20.250.3吸光度X10.350.4コア材Aコア材Bコア材C着岩コア着岩コア0.35コア材B0.3コア材Aコア材Aコア材Bコア材C着岩コアコア材Bコア材C00.75着岩コア20含水比大対象粒径37.5mm以下0.425吸光度X2350.25含水比小コア材C0.20.550.450.650.75吸光度X20.850.951.05吸光度X1図 1 各試料の吸光度20対象粒径37.5mm以下19JIS法による含水比wJIS_37.5 (%)JIS法による含水比wJIS_37.5 (%)2018171615測定期間の平均wopt(コア材B)測定期間の平均wopt(コア材A)14MAE: 0.59RMSE: 0.75コア材A:w=8.3-10.2X1+57.3X2コア材B:w=9.0+0.7X1+25.2X2131212131415161718NIR法による含水比wNIR_37.5 (%)1920正するため,除礫した 19mm~37.5mm 分の JIS 法含水比 wJIS_1937.5 と乾燥質量比 Pwopt(コア材A)15MAE: 0.28RMSE: 0.3814コア材A:w=8.6+3.6X1+24.2X2コア材B:w=6.8-4.0X1+52.2X2131213141516171819NIR法による合成含水比wNIRco m_37.5 (%)2030コア材A 切崩材粒度の推移細粒分含有率Fc(%)さらに,含水比を締固め管理の試験粒径(37.5mm 以下)に補17 測定期間の平均wopt(コア材B)16 測定期間の平均図 3 含水比測定結果(コア材 A,B,19mm 通過分で検量線作成)そこで,礫分による測定誤差を取り除くため,コア材 A,B量線を作成し,19mm 通過分の NIR 法含水比 wNIR_19 を求めた.1812図 2 含水比測定結果(コア材 A,B,37.5mm 以下)の 19mm 通過試料を対象に吸光度と JIS 法の測定を行い,検粒径19mm以下で検量線作成19切崩し開始25切崩し完了20区間1区間2区間3区間4を別途測定しておき,その結果を用いて粒径 37.5mm 以下の合成含水比 wNIRcom_37.5 を次式より求めた.wNIRcom_37.5= P wJIS_19-37.5+( 1-P ) wNIR_19152018/12/10 2018/12/15 2018/12/20 2018/12/25 2018/12/30 2019/1/4(2)2019/1/92019/1/14 2019/1/19図 4 コア材 A の粒度推移19mm 通過分を対象とした検量線による測定結果を図 3 に示す.量評価指標(MAE,RMSE)からも精度が向上したといえる.式(2)のうち,コア材の礫分含有率である P の実績値は 5~20%の範囲で変動幅が大きいこと,礫分の含水比 wJIS_19-37.5 は全粒径の含水比に依らず平均 5%程度と概ね一定であり式(2)における影響度が小さいことを踏まえ,実運用では,①採取試料を篩目 19mm で分級し礫分の湿潤重量比を求め,②wJIS_19-37.5=5%と仮定して乾燥重量比 P を求める,20JIS法による含水比w JIS_37.5 (%)測定誤差は概ね 0.5%~1.0%以内となり,図中に示す回帰モデルの定181716区間115区間214測定期間のwoptの範囲13区間3区間41212その後,③19mm 通過分に対して NIR 法で wNIR_19 を測定し,④wNIRcom_37.5 を計算により求める,という手順で測定することとした.粒径19mm以下で検量線作成1913141516171819NIR法による合成含水比w NIRcom_37.5 (%)20図 5 約 1 か月間の盛立期間中のコア材 A の含水比測定結果5.試行結果コア材 A の搬出時含水比を盛立中の約 1 か月間にわたって前記の方法で測定した.この間,ストックパイルは切崩し始めから完了に至っており,図 4 に示すように粒度が推移した.図 5 に含水比測定結果を示す.粒度が変動したにもかかわらず,概ね JIS 法と整合する結果が得られた.また,検量線を図 4 中に示す 5 日間毎に更新したが,検量線は大きく変化することはなかった.このことから,NIR 法はストックパイルの切崩し初期に設定した検量線をベースに運用を開始し,途中で JIS 法との整合性の確認と検量線の更新を定期的に行うことによって,コア材の粒度変動にも対応できると考える.6.おわりにロックフィルダムコア材を対象にした NIR による含水比迅速測定法について,測定精度や運用方法の妥当性を検証した.2019 年盛立完了を目指し建設中の小石原川ダムの品質管理に本手法を適用したいと考えている.参考文献 1) 藤崎ら:近赤外線水分計を用いた盛立材料の室内迅速含水比測定装置,土木学会第 73 回年次学術講演会,Ⅵ-1051,平成 30 年 8 月.16
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  • タイトル
  • 建設プロジェクトにおける地盤調査の重要性と現況
  • 著者
  • 東畑郁生
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 13〜14
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400007
  • 内容
  • 0007A - 01第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月建設プロジェクトにおける地盤調査の重要性と現況現地調査技術者地位向上関東学院大学国際会員○東畑郁生はじめに地盤工学が社会において重要な一翼を担っていることは、会員各位にとっては当然の認識であろう。しかし世の中では必ずしもそう思っていない現実があり、海外でも多くの国で状況は同じある。そこで国際地盤工学会では ProfessionalImage Committee という組織を設立し、地盤工学の地位向上に取り組んでいる。その座長が筆者であるが、対応して国内でも「地盤工学の社会的地位向上推進委員会」を設立し、活動を行っている。本日の DS もその活動の一環である。本稿では、この国内委員会の活動内容、目的、現在までの成果などを紹介する。1.地盤工学の実績について実績を社会に向けて発信、宣伝することは、地位向上の努力においては基本である。どのような実績があるのか、少し考えただけでも、ダムや用水施設等の水資源利用、上下水道、陸海空の交通機関、防災、土木建築構造物の基礎など枚挙にいとまがない。ところが社会では、これらの施設、特に地下に埋設されている部分のことを天与の便宜としか認識していない。目に見えないものの重要性には想像が及ばないのは、人間の本質かもしれない。私見であるが、地盤工学関係機関による地位向上への努力は、あまりプラスになっていない。マイナスになるのを防いでいるのかも図 1 パリ最古の下水道(下水道博物館にて)しれないが、それだけでは当初の目的を達成したことにはならないであろう。その理由の一つに、他の分野も同様の努力をしていることがある。同じ土俵で同じ努力をしていては、ハイテク、金融、先端医療などを上回る成果を挙げることは、難しいであろう。一点強調すべきなのは、200 年前までは汚穢の極みと伝染病の巣窟であった欧州の大都市で衛生を改善し、人間の健康に大きく貢献したのが下水道の整備であったことである(図 1)。医学の進歩より下水道の方が人類の健康への貢献が大きかった、と感じている人もいる。下水道をはじめとするインフラ老朽化が問題になっている現在、この実績をもっとアピールすべきである。2.国際地盤工学会 Professional Image Committee の活動目的国際学会では、次の 7 つの目的を掲げている。①実績の宣伝、②地質リスクの抑制、③新たな可能性の発掘、④宣伝媒体の作成、⑤社会との意思直接疎通、⑥発注者との意思疎通、⑦業績表彰等。中でも①②③⑤⑥⑧を重視している。①は正統的アプローチだが、上述のように、従前型の実績宣伝だけでは思うような成果が得られないのではないか、と考えている。本年の 2 月にフランスの地盤工学会から、少し味付けの変わった宣伝 PPT が提出されたほか、街へ出て「あなたにとって地盤工学ってなあに?」というスタイルの宣伝素材も作られた。見ていて面白いものがある。②の地質リスクの抑制は、国内委員会の活動の中心である。これについては特に次章で詳述する。③は、地盤工学が従来行なってこなかった事柄である。今回の研究発表会でも、室内実験、現場調査、設計などの業績報告は数多くあるし、顧客のむずかしい要求に対応できた成功例の報告も、多いはずである。しかし地盤工学が今後どのような分野であるべきなのか、50 年後の将来像などを考えている発表は、無いはずである。これを他分野と比べて欲しい。IoT、マシンラーニング、e ビジネス、先端医療、電気飛行機など、アピールが目白押しである。顧客を満足させて事足れりではなく、人類文明が 50 年後にどうあるべきか、提案を矢継ぎ早に出しているのが、先端技術分野の実態である。そしてそれに魅力を感じた人材が、これらの分野に飛び込んでいく。ファンドもそこへ流れている。未来構想力が全く違う。3.地質リスクのコントロールと抑制公共事業であれ民間事業であれ、コスト削減の要請が高まっている。総事業コスト削減の一環として、地盤調査のコストも一律削減を受けることが少なくない。問題は、地盤調査を簡略化したことによって見落とされた問題は、施工以降の段階で初めて露出し、施工コストや期間を増加させる。調査コストの節約は簡単に規定できるが、後日の問題発現と総コスト増大は、制御できないのである。このような状況を地質リスクと呼ぶ(これだけが地質リスクではないが、本稿ではこの種のリスクを念頭に置いている)。むしろ地盤調査に予算と時間を十分配当し、地盤の性状を十分に把握してから次段階に進めば総コストをコントロールできる、あるいは削減できる可能性がある。このような視点を推進するため本稿の活動は、この分野で実績のある地質リスク学会および全地連との協働作業として推進している。地質リスク学会では、先年、国内 140 件のプロジェクトについて調査を行い、地質リスクを事前に予測して回避に成功した事例(A グループ)、全く失敗してコスト増大に及んだ事例(B)、そして中間としてプロジェクト中途でリスクの存在を認識して対応し、最悪の事態を防いだ事例(C)、に分類した。図 2 は、その分類である。多様な建設プロ4.Significance of subsoil investigation in construction projects andits current situationIkuo Towhata Kanto Gakuin University13 ジェクトから、事例が収集されている。A の中でも地質リスク学会が特に成功例として挙げているのが、北九州空港連絡橋の基礎である。当初は N 値に基づき深い基盤に支持される杭基礎として設計されていたのを、地盤調査の予算を 1億円から 3 億円に増額して詳細な地盤調査を行い、杭の長さを減らして摩擦杭として設計ですることができた。これによる工費削減は 100 億円、すなわち二億円増額により 50 倍の削減を実現したのである。このような成功例のまとめが図3 である。*が北九州空港の事例である。リスクの出現により増加しかねなかった実コストが●、それを現場の調査予算増額によって、〇まで減らすことに成功した。きわめて少額の〇は、プロジェクトそのものの根本的変更を意味する。プロジェクトの大小を問わず、地盤調査によって総コストの縮減が期待できることがわかる。逆に、リスクの管理に失敗し、コストの増大に至ったケース B を図 4 にまとめた。実コストが●で、45 度線より上方にあることが、初期予算からの増加を意味する。そして反省を込めてこのくらいの費用で収まったはずなのに、という数値が〇である。後者でもなお初期の予算から増えている場合があるが、●よりは少額である。現実には、プロジェクトの途中でリスクに気づき、現場調査を追加して実態把握し、必要な対策を実施して事態を収拾することが大半であろう。このようなケースが C であり、まとめが図 5 である。現場調査・リスク管理により、総コストを●から〇へ削減することができた、とされる。〇もなお 45 度線より上にあり、リスクが予算増大につながったものの、それをある程度以下に制御できたことが、地盤調査の成果であった。理想はAである。地盤調査の可能性を社会や発注者に理解いただき、総コストの削減と、余剰資源を新たな事業に振り向けることを訴えたい。また、優れた地盤技術者の存在価値が高まることにより、生活水準が向上することも、地盤工学の地位向上、イメージ改善に有益と考える。5. 地盤工学の将来像地盤工学の持てる能力は、従来思いもよらなかった分野に応用できるのではないか、というのが筆者の考えである。その例が、現在推進中の福島事故原発の廃炉作業であり、廃炉地盤工学という分野が現在発展中である。他にも可能性があると確信している。地球と人類との関係でいえば、気候変動以外にも人口爆発という大問題が進行していて、インドやアフリカでは増加の収まる気配が無い。生存の基盤が大地にあるのは明白であるから、地盤工学に果たすべき役割があるであろう。このような問題に取り組む場合、新しい発想が必要であることは言うを俟たないが、もう一つ、できない理由をあれこれ探すことは避けるべきである。大事なのは、どうやればできるか、ということであり、なぜできないのかを証明することなどではない。図 2 分析対象プロジェクトの内訳図 3 リスク管理成功ケース(A)の当初コスト(横軸)とリスク管理(調査)有無両ケースの総コスト(縦軸)との関係図 4 リスク管理できなかったケース(B)の増大実コストと本来少なかったはずのコスト図 5 中途でリスク管理を実施したケース(C)の、コスト削減実績(●から〇へ削減)14
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  • タイトル
  • 地質リスクマネジメントの効果に関する検討
  • 著者
  • 東野圭悟・中山健二
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 11〜12
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400006
  • 内容
  • 0006A - 07第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月地質リスクマネジメントの効果に関する検討地質リスクマネジメント地質リスク学会事例整理中央開発株式会社川崎地質株式会社正会員正会員◯東野中山圭悟健二1.概要我が国の地質構造は世界中でも稀なほど複雑で脆弱なため,毎年各地で地震や台風などの豪雨により自然災害が発生し,社会基盤に大きな被害を与えている。このような地質・地盤の脆弱性に起因するような地質リスクによる被害は,社会基盤の建設から維持管理に至るまでのライフサイクルコストにも大きな影響を与える。そのため,計画段階などのなるべく早い段階で,発生する可能性が高い地質リスクを特定し,そのリスク対応を設計や工事に盛り込んでマネジメントすることで事後対応から予防保全へと転換することができ,ライフサイクルコストを低減することが可能である1)。本論文では,平成 22 年から実施されている「地質リスクマネジメント事例研究発表会(主催:地質リスク学会)」の投稿論文(全 8 回,合計 135 論文)3)を整理し,地質リスクマネジメントの効果(コスト)について整理した結果について報告する。表 1 リスク区分 2)2.地質リスクマネジメントのリスク区分 2)リスク区分内容地質リスク学会では,地質リスクを「地質に係わる事業リスク」と定義し,地質リスク事例に対A型地質リスクを回避した事例して表 1 のように区分し,地質リスクマネジメンB型地質リスクが発現した事例トによるリスク対応について評価している。C型発現した地質リスクを最小限に回避した事例A 型とは地質リスクを回避した事例であり,工D型その他(A 型~C 型のいずれにも属さない事例)事着工前に地質リスクを適切に判断し,追加調査,設計変更等を行うことで,工費の削減に成功した事例である。B 型とは,工事着工前に地質リスクを考慮していなかったため,地質リスクが発現した事例である。そのため,B 型における地質リスクマネジメントの効果は,地質リスクマネジメントを適切に行っていれば(リスク対応費を掛けていれば)防ぐことができたと考えられる事例である。C 型とは,工事着工前に地質リスクを考慮していなかった工事の途中に地質リスクに気が付き適切に対処した結果,発現した地質リスクを最小限に回避した事例である。それぞれの地質リスクマネジメントの効果は下式により評価できる。A 型の効果=当初工事費-(変更後工事費+リスクを回避するために要した費用)(式 1)B 型の効果=(変更後工事費+リスク発現に伴う追加費用)-(理想的なリスク管理を行った場合の費用)(式 2)C 型の効果=(回避しなかった場合の工事費)-(当初工事費+リスク発現に伴う追加費用+リスクを最小限に回避するために要した費用)(式 3)3.事例収集表 2 収集した事例一覧本検討では,平成 22 年から平成 29 年分類A型B型C型D型に実施された「地質リスクマネジメント01_トンネル9103事例研究発表会(主催:地質リスク学会)」02_ダム1031の投稿論文(全 8 回,合計 135 論文) 3)を整03_河川5121理した。今回収集した事例を一覧表にし04_斜面19151914て表 2 に示す。05_基礎杭6000表 2 より,投稿論文のうち約半数が06_基礎地盤951207_根切り1102「斜面」に関する事例であり,リスク区08_土壌汚染1012分による論文数の違いが認められないこ09_住宅地紛争0000とから,地質というある意味目に見えな10_その他3016いものを評価することの難しさを表して合計54232731いるものと考えられる。また,収集した全体に占める割合(40%)(17%)(20%)(23%)事例の合計をリスク区分毎に確認すると,A 型が全体の 40%と最も多く,地盤工学を専門とする技術者自身の成功体験を記した論文が多く投稿されている傾向にあると考えられる。Evaluation of the effect of the Geo risk management全体13596761744010135AZUNO Keigo:Chuokaihatsu CorporationNAKAYAMA Kenji:Kawasaki Geological Engineering Corporation11 1.E+3トンネルダム1.E+2河川斜面1.E+1基礎杭基礎地盤根切り1.E+0土壌汚染その他当初工事費+リスク発現に伴うA型追加費用(百万円)当初工事費+リスク発現に伴う追加費用(百万円)当初工事費(百万円)1.E+4ダム基礎杭土壌汚染河川基礎地盤その他1.E+31.E+21.E+11.E+0A型不明1.E-1-0.200.20.40.60.81不明実際にかかった費用と当初工事費の比実際に掛かった費用と当初工事費の比=(変更工事費+追加費用)÷当初工事費=(変更工事費+追加費用)÷当初工事費当初工事費+リスク発現にトンネル斜面根切り伴う追加費用(百万円)当初工事費+リスク発現に伴う追加費用(百万円)当初工事費(百万円)1.E+41.E+3トンネル1.E+2河川斜面1.E+1基礎地盤1.E+0根切り1.E-1不明1.E-1不明 1.E+0 1.E+1 1.E+2 1.E+3 1.E+4 1.E+5(想定)リスクマネジメントの効果(百万円)(想定)地質リスクマネジメントの効果(百万円)=(当初工事費+追加費用)-リスク管理をした場合の想定費用=(当初工事費+リスク発現に伴う追加費用)-理想的なリスク管理をした場合の想定費用)1.E+51.E-1不明1.E-1不明 1.E+0 1.E+1 1.E+2 1.E+3 1.E+4 1.E+5リスクマネジメントの効果(百万円)地質リスクマネジメントの効果(百万円)=当初工事費-(変更工事費+追加費用)=当初工事費-(変更工事費+追加費用)1.E+5B型1.E+4トンネル河川斜面基礎地盤根切り1.E+41.E+31.E+21.E+11.E+0B型不明1.E-1-0.200.20.40.60.81不明リスクマネジメントの効果の割合理想的な費用と実際に掛かった費用の比=リスク管理をした場合の想定費用÷(当初工事費+追加費用)=理想的なリスク管理をした場合の想定費用)÷(当初工事費+リスク発現に伴う追加費用)1.E+5C型1.E+41.E+3ダム1.E+2河川斜面1.E+1基礎地盤土壌汚染1.E+0その他不明1.E-1不明 1.E+0 1.E+1 1.E+2 1.E+3 1.E+4 1.E+51.E-1リスクマネジメントの効果(百万円)地質リスクマネジメントの効果(百万円)=リスク回避しない工事費-(当初工事費+追加費用+追加費用)=リスク回避しない工事費-(当初工事費+リスク発現に伴う追加費用+リスクを最小限に回避に要した費用)1.E+5回避しなかった場合の工事費(百万円)回避しなかった場合の工事費(百万円)1.E+51.E+5回避しなかった場合の工事費(百万円)回避しなかった場合の工事費(百万円)4.地質リスクマネジメントの効果地質リスクマネジメントの効果に関する整理結果を図 1 に示す。図 1 には,上段に当初工事費と地質リスクマネジメントの効果を,下段に当初工事費と実際に掛かった費用との比を示している。また,左からリスク区分 A 型,B 型,C型の整理結果を示している。図 1 上段より,地質リスクマネジメントの効果等が一部を除いて 0 以上であることから,いずれも地質リスクマネジメントの効果が認められた事例であることが分かる。また,リスク区分によらず工事規模が大きいほど地質リスクマネジメントの効果が大きくなっており,河川や斜面といった工事分類にもよらず一定の傾向を示している。一方で,当初工事費等と地質リスクマネジメントの効果等がほぼ等しい結果となっている事例も多く認められる。これらについては追加調査等を実施した結果,大規模な対策を講じる必要がなくなった事例などが含まれているものと考えられる。図 1 下段は実際に掛かった費用と当初工事費の比であることから,横軸の数字が小さいほど地質リスクマネジメントによる効果が大きかったことを示している。そのため,図 1 上段で(地質リスクマネジメントの効果≒当初工事費)となった事例はほぼ 0 に近い数字となっている。実際に掛かった費用は当初工事費と比較していずれも小さくなっており,リスク区分によらず地質リスクマネジメントの効果があったことが確認できる。また,実際に掛かった費用と当初工事費の比は大きくバラついているが,当初工事費の違いによる影響は認められない。言い換えると,図 1 上段のように,当初工事費の大きな事業規模のものほど地質リスクマネジメントの効果が大きいと言える。なお,本文中では主に A 型の事例をもとに説明したが,B 型及び C 型についても同様の傾向であった。1.E+4ダム河川斜面基礎地盤土壌汚染その他1.E+31.E+21.E+11.E+0C型不明1.E-1-0.200.20.40.60.81不明リスクマネジメントの効果の割合リスク回避しない工事比と事後対応した場合の工事費の比=(当初工事費+追加費用+追加費用)÷リスク回避しない工事費=リスク回避しない工事費÷(当初工事費+リスク発現に伴う追加費用+リスクを最小限に回避に要した費用)図 1 地質リスクマネジメントの効果に関する整理結果(左から,リスク区分 A 型,B 型,C 型の整理結果を示す。)5.まとめ本検討では,地質リスクマネジメントによるコスト削減が,事業規模が大きいほど,また,リスク区分や工事分類によらず効果があることが明らかとなった。また,地質リスク学会が提案している「地質リスク分析のためのデータ収集様式」2)の有効性も明らかとなったものと考えられる。しかし,今回整理した地質リスクマネジメントの効果には,地質リスクの発現による事業が遅延した経済的な損失や,地質リスクに対応した時期などを考慮できていないことから,今後はこれらの事例収集を進めるとともに「時間」の概念を取り入れた評価を検討する予定である。6.謝辞本論文に記載した整理は,地質リスク学会(会長:高知工科大学経済・マネジメント学群教授 渡邊法美)から事例研究発表会の論文提供を受け,地盤工学の社会的地位向上推進委員会(委員長:東京大学名誉教授 東畑郁生)の活動の一環として実施した。特に委員会では,東畑委員長をはじめ多くの方々から貴重なご意見を頂いた。ここに感謝の意を表します。【参考文献】1) (一社)全国地質調査業協会連合会:地質リスク調査検討業務発注ガイド, P3~6,2016.102) 高知工科大学フロンティア工学教室(渡邊法美,小笠原真継,永野正展,岩松暉):地質リスク分析のためのデータ収集様式の研究報告書, (財)日本建設情報総合センター研究助成事業, pp.4~7, pp.17-24, pp58~67, 2008.83) 地質リスク学会:第 1 回~第 8 回地質リスク事例研究発表会, http://www.georisk.jp/?page_id=56112
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  • タイトル
  • 低平地における大規模道路開削工事に伴う沈下原因の解明
  • 著者
  • 今西 肇
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 9〜10
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400005
  • 内容
  • 0005E - 02第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月低平地における大規模道路開削工事に伴う沈下原因の解明掘削 低平地 地盤沈下 小野組 国際会員 ○今西 肇1. はじめに 2008 年 9 月 20 日に開通した 12 キロの Kallang-Paya Lebar Expressway(KPE)は、シンガポールで 9 番目の高速道路である。図-1 に示すように、9 km の開削地下トンネルは 6 車線であり、8 つのインターチェンジと 6 つの換気ビルで構成され、高速道路の 75%が地下にある。その一部の区間において、開削工法により高速道路を建設中に、思わぬ場所に地盤沈下が発生した。 その原因を解明するために、地盤調査と数多くの地下水観測孔を設置し、地下の地盤構造と地下水位の動向を把握した結果、これらの地盤沈下が建設工事とは別の誘因により発生していたことが判明した。図-1 Kallang-Paya Lebar Expressway(KPE)現場 図-2 KPE(C-423 工区)工事中に発生した地盤沈下2. 地盤沈下の発生状況 図-2 は C-423 工区施行中に発生した地盤沈下の状況である。図中の太い実線で示している部分は、掘削に先立ち設置した地中連続壁の位置である。この地域は低平地であり、低層の工場が区画整理された土地に、規則正しく配置された場所である。これらに近接する工事は、地盤沈下を極力防止するため、剛性の高い地中連続壁を用いて掘削している。しかしながら、掘削近隣の沈下は、その原因が土留め壁の水平変形の影響および地下水の低下によるものと断定されたが、掘削箇所から数百メートル離れた箇所の原因不明の沈下が観測された。3. 地盤調査と地表面沈下観測の強化 このような地盤沈下が発生したため、地盤沈下はシンガポールに厚く堆積するマリンクレイ(MC)が素因であり、掘削に伴う地下水位の低下が誘因であると予測し、40 カ所の地盤調査と地表面沈下観測を沈下が発生している地区内で実施した。地質断面図を図-3 に示し、OA 層の上面の等高線を示したものが図-4 である。これによると、対象となる地区は南北に OA 層を深く切り込んだ形で谷部が見られ、その谷部に軟弱な粘土(F1)が堆積していることが判明した。また、マリンクレイの厚さも 10mから 18mと変化に富んでおり、地下水位の低下が原因で場所によって地盤沈下量に大きな違いを生じたことが想定された。 一方、図-5 から図-8 は、各時点で観測された地下水位を水頭で表したものである。これによると、1 月 17 日から 2 月26 日は、取り付け道路の掘削に伴う地下水位の低下が原因で、地盤沈下が進行していることがわかる。しかし、3 月 28日以降の観測では、掘削工事による沈下とは異なった地盤沈下パターンが 3 カ所観測された。図-3 地質断面図(A~A’) 図-4 Investigation of subsidence under large-scale road excavation work in lowland,9OA 層の上面の等高線Hajime IMANISHI, ONO-GUMI 4.地盤沈下原因の考察 地盤調査による地盤構造の把握と、地表面沈下観測結果について、さらに現地の状況を把握するために現地踏査を行ったところ、この地区では、高速道路工事が始まる前から発生したとされる地盤沈下の跡が確認され、さらに、高速道路工事以外の水路工事も同時期に実施されていたことが確認できた。これより、地盤沈下の原因は、高速道路取り付け道路工事に伴う地盤沈下と、水路工事、さらには、高速道路による地下水位の低下とは別の原因の地下水位低下分布が観測されており、この 3 つが複合した地盤沈下が発生したものと判断された。(図-9)5.あとがき 高速道路による地下水の低下とは別の地下水の低下が発生していることの原因を確認することはできなかったが、地下水位分布から、この地区の数カ所でなんらかの地下水位低下が発生していたことは明らかとなった。これにともない、発注者と施工者間で協議が行われ、地盤沈下の責任の所在と補償が決定された。当初、高速道路掘削工事がすべての地盤沈下の原因であるとの判断をされた結果が、地盤調査と現場における地表面沈下観測を用いることにより、それ以外の原因もあることが明らかにされることにより、地盤に関わるトラブルを説明できたことは、すべての関係者にとって早期解決を促す一助になったと考える。なお、本報告内容は、筆者が以前勤務した Samsung C&T 社において担当した事件であることを付記する。原因解明にあたっての関係各位の協力に感謝申し上げる。図-5 地下水位の水頭等高線(2004 年 1 月 17 日) 図-6 地下水位の水頭等高線(2004 年 2 月 26 日)図-7 地下水位の水頭等高線(2004 年 3 月 28 日) 図-8 地下水位の水頭等高線(2004 年 4 月 13 日)図-9 C-432 掘削による沈下とそれ以外の沈下10
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  • タイトル
  • 海外から見た日本の建設工事安全の課題
  • 著者
  • 平岡伸隆・吉川直孝・大幢勝利・豊澤康男
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 7〜8
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400004
  • 内容
  • 0004A - 01第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月海外から見た日本の建設工事安全の課題労働安全 地盤技術者 法制度 (独)労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 国際会員 ○平岡 伸隆国際会員 吉川 直孝 非会員大幢 勝利 国際会員 豊澤 康男1.はじめに日本では建設業における労働災害による死亡者数が全産業の中で最も多く,労働安全衛生行政において大きな課題である。特に地盤に関する建設工事においては,地盤が自然物であるがゆえに現象が複雑であり,安全を確保するためには技術者として地盤工学の正しい知識と,それに基づく判断が要求される。ここで重要となるのは,地盤技術者の判断が計画・設計段階,もしくは異常が認められた場合の設計変更の提案において,適切に反映されることであり,発注者・設計者・施工者・労働者が一体となって工事安全を検討することである。そこで本稿では,設計段階からの安全衛生に関する海外の法制度について論ずる。図 1 海外と日本の 10 万人死亡率2.国際的な建設業における労働災害統計国際的な建設業における労働災害による死亡者数を比較するため,主要国の建設就業者 10 万人あたりの死亡者数(死亡率)を図 1 に示す。日本のデータは厚生労働省の職場のあんぜんサイト,英国は英国安全衛生庁(Health & SafetyExecutive, HSE),その他の国は The world's leading source of labour statistics (ILO-STAT)から得たものをまとめた。国際的な統計データは,各国がそれぞれの基準によって集計しており,労働災害発生から死亡を認める期間,建設業の範疇,交通事故の範疇,一人親方(self-employee)を含めるか否か,統計データを保険記録から集計した場合の被保険者の割合等が数値に影響する。したがって,各国間の単純な比較は困難であるが, 2001 年以降において日本の死亡率の減少傾向が緩やかなのに対し,シンガポールの減少率が非常に大きい傾向にあることや英国の死亡率が低水準であることが確認できる。これらの違いについて複合的な要因が挙げられ一義的な要因は特定できないが,本稿では英国・シンガポールの建設業に関する法制度,資格制度について着目する。3.英国の Construction (Design and Management) Regulations (CDM)英国では 1972 年に報告された「労働における安全と保健」,いわゆるローベンス報告を受けて労働安全衛生法が1974 年に制定された。これは,「リスクを発生させた者とその事業を実施する者がそのリスクを担うべきである。」という理念に基づいたものである。European Union(EU)における指令「建設現場安全衛生指令(92/57/EEC)」からの流れで,英国の建設業において Construction (Design and Management) Regulations(以下,CDM)が 1994 年に制定(CDM1994)された。その後,2000 年に CDM2000, 2007 年に CDM2007 へ改正されており,CDM2007 では「安全衛生調整」を担う CDM 調整者(CDM coordinator)を設けることが定められている。英国では発注者が専門的な知識を有していないことがあるため,CDM 調整者は発注者へのアドバイスを行うとともに設計者,施工者等と発注者との連絡調整も行っていた。ただし,CDM 調整者は,コンサルタントが主に担っていたため,担当する建設プロジェクトに共同に取り組むという意識を生まず,第 3 者的な役割に留まり,うまく機能しなかった例が多く見られた。そこで実質的に建設プロジェクトに共同で取り組むため,2015 年に CDM2015 へ改正した。CDM2015 では,CDM 調整者を廃止し,新たに主設計者(Principal Designer)という役割を設けている。主設計者は,建設プロジェクトの設計を担うだけでなく,CDM 調整者の役割であった発注者へのアドバイス,設計者や施工者間の連絡調整の役割も担うものである。CDM2015 は一部の注文住宅の工事で規制が緩和されているが,ほぼ全ての工事に適用される。CDM2015 では,発注者および設計者の安全衛生における責務は大きいものとし,施工者や労働者の責務とともに刑罰付きで規定している。また建設業就業者の職務遂行能力を担保するための資格制度があり,建設技能認証制度(The Construction SkillsCertification Scheme, CSCS)が広く普及している。CSCS は 1995 年に導入された任意の制度であり,HSE が運営するものではない。2001 年に建設業界が現場では職務遂行能力を持つ労働者のみを作業させることを公約したため,CSCS が広く採用され,急速に普及した。現在,ほとんどの建設現場は CSCS の資格を有した者しか労働を許可していない。4.シンガポールの The Workplace Safety and Health (Design for Safety) Regulations 2015 (DfS2015)シンガポールでは Factories Act 1973(工場法)で労働者の安全衛生が規定されていたが,英国の CDM1994 についての検討,2004 年に発生した Nicoll Highway 等の重大災害等を受けて,安全衛生に対する関心が高まり,2006 年にIssues on safety of construction works in Japan with the viewof overseasNobutaka HIRAOKA, Naotaka KIKKAWA,Katsutoshi OHDO, Yasuo TOYOSAWA, JNIOSH7 Workplace Safety and Health Act 2006(労働安全衛生法)が発出された。さらに 2008 年には建設業における設計段階からの安全衛生を考慮した Guideline on Design for Safety in Buildings and Structures (DfS Guideline)が制定され,2010 年には DfSCoordinator が開発・導入された。ここでの DfS は義務付けられたものではなかったが,2015 年に Workplace Safety andHealth(Design for Safety)Regulations 2015(以下,DfS2015)が制定され,2016 年 8 月から義務化された。DfS2015 では,DfS Coordinator に変わり DfS Professional(安全設計専門家)が設けられ,PE(後述)の資格又は同等の学位が必要となっている。DfS2015 は発注者・設計者・施工者・安全設計専門家の各パーティーが建設プロジェクトの安全衛生に直接的に関わるような仕組みとなっている。発注者・設計者・安全設計専門家は,基本設計および詳細設計の各段階においてデザインレビューミーティングを開催する。そのミーティングの中でデザインレビューを実施し,全てのリスクをリスク登録表に記載し,設計からリスクを除去・低減するか,または次の段階に申し送らなければならない。続く仮設設計では,施工者もミーティングに参加することとなる。なお,安全設計専門家は,発注者,設計者または外部機関からの有資格者である。DfS2015 は契約額が 1000 万シンガポールドル以上の工事に適用され,発注者・設計者・施工者の責務が規定されているが,WSH Council は契約額に関わらず DfS を適用することを推奨している。また,シンガポールでは Professional Engineer (PE)という資格制度がある。これは日本の技術士に相当するが,その性質は日本の技術士より強力である。PE は Professional Engineer Act に基づいた資格制度であり,PE(Civil),PE(Electrical),PE(Mechanical), PE(Chemical), そして PE(Geo)で構成される。土木工事においては Civil(土木全般)と Geotechnical(地盤工学)のみであり,PE(Geo)は地盤工学の実務経験を 5 年以上(そのうち PE(Civil)の資格を有してから 3 年以上)を経験して試験に合格したもの,もしくは地盤工学の実務経験 4 年以上(そのうち PE(Civil)の資格を有してから 3 年以上)を経験し,指定された大学の修士号か博士号を有したものに与えられる。このことからも,地盤技術者は高い経験と知識を有さなければならないことがわかる。設計にあたっては PE を有する設計者 Design Qualified Person (QP (Design))を指名する必要があり,高さまたは深さが 1.5 m を超える掘削工事では PE(Civil),6 m を超える掘削工事では PE(Geo)を有する者の保証(Endorse)が必要となる。また,施工が設計図どおりに進められているか監視する QP (supervision)も PE が必要となる。さらに,高さまたは深さ 4 m を超える掘削の場合は第三者の認定照査者 Accredited Checker (AC),6 m を超える場合は AC (Geo)に設計の認定を受けなければならず,AC はそれぞれ PE(Civil),PE(Geo)の資格を有してから 10 年の実務経験が必要となる。なお,設計を保証した PE は建設中の事故はもちろん,完成後も設計の瑕疵による事故について刑事責任を負い,非常に重い責任がかかっているが,その分,報酬も高額である。設計における地盤条件の不確実性は Geotechnical Baseline Report (GBR)1)を活用し,想定を超えた地質変化が分かった場合の設計変更については,発注者・設計者・施工者で協議し,工費・工期の見直しが認められている。5.日本の法制度日本においては 1947 年に制定された労働基準法から派生して 1972 年に労働安全衛生法が施行され,それまで建設業で年間 2400 名以上だった死亡者数が今日では約 300 名まで大幅に減少した。同法第 3 条の 3 では「建設工事の注文者等仕事を他人に負わせる者は、施工方法、工期等について、安全で衛生的な作業の遂行をそこなうおそれのある条件を附さないように配慮しなければならない」とある。ただし,より具体的な規定を記した労働安全衛生規則では,土木工事に関するほとんどの条文の主語が「事業者は……」であり,施工者(事業者)の責任が主である。図 1 に示したとおり,近年は死亡率の減少が横ばい状態であり,このような状況の中,土木学会安全問題研究委員会土木工事の技術的安全性確保・向上検討小委員会では,平成 28 年 12 月 1 日に発注者,設計者,施工者,労働者が一体となって工事安全の検討を行うことを提言している。さらに,平成 28 年 12 月 16 日に,「建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律」(法律第 111 号)が制定され,建設工事の請負契約において適正な請負代金の額,工期等が定められること,建設工事従事者の安全及び健康の確保に必要な措置が,設計,施工等の各段階において適切に講ぜられること等,計画・設計段階から工事安全の検討を行うことが規定されている。また,平成 29 年 3 月には,国土交通省港湾局より,施工過程の安全性を考慮した設計を行うことを示した「港湾工事おける大規模仮設工等の安全性向上に向けた設計・施工ガイドライン」が制定されている。6.まとめ10 万人死亡率の低い英国や,近年大幅に死亡率を低下させたシンガポールでは,計画・設計段階といった建設プロジェクトの上流から安全衛生に関してアプローチをしていることがわかる。また資格制度と罰則規定によって労働安全衛生の向上を実現しており,こうした背景が死亡災害低下に繋がっているものと考えられる。ただし,当然この中には歴史的背景,国土,風土,人柄,保健制度,関連法令にわたるまで「文化の違い」も大きく影響しており,英国やシンガポールの取り組みを,そのまま日本に適用できるものではない。これまで築き上げてきた「日本独自のよさ」を活かしつつ,労働安全衛生の向上が望まれる。地盤技術者においては,地盤調査方法および地盤条件の不確かさを想定した保証条件の明確化,安全な施工のために地盤工学に基づいた設計,発注者・設計者・施工者の連携等の課題が残る。参考文献1)岩崎公俊・折原敬二:Geotechnical Baseline Report (GBR)について,地盤工学会誌,Vol. 57, No. 5, pp.32-33, 2009.8
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  • タイトル
  • 道路事業における地質リスク評価手法の研究
  • 著者
  • 中西昭友・小松慎二
  • 出版
  • 第54回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 5〜6
  • 発行
  • 2019/06/20
  • 文書ID
  • rp201905400003
  • 内容
  • 0003B - 00第 54 回地盤工学研究発表会(さいたま市) 2019 年 7 月道路事業における地質リスク評価手法の研究地質リスク変状事例解析道路事業応用地質株式会社正会員○中西 昭友応用地質株式会社小松 慎二1.はじめに道路事業では,建設・維持管理時に,計画・設計段階で想定していない不具合やトラブルが発生することは少なくない.この中でも「地質・土質・地下水など地盤に関わるリスク(地質リスク)」は「事業期間の延長」「事業費の増加」への影響が大きい.紀伊半島南部は,プレートの境界付近に位置し,海洋プレートの沈み込みにより形成された付加体(牟婁層群),陸地から流れてきた砂や泥が堆積した前弧海盆堆積体(田辺層群,熊野層群),その後のマグマ活動により形成された火成岩体(熊野酸性岩類)からなる.平成 27 年に供用した紀勢自動車道では,このような複雑な地質特有の特性を素因としたトラブルが複数発生した.隣接して計画されている道路でも同様の地質リスクの発現が予想されることから,これらの事例を解析し,対策(対応)優先度を決定するための評価手法を検討した.表 1 リスクランク設定例2.リスクランクの設定道路事業では,事業期間や事業費に多大な影響を与える可能手法リスクランク想定事象と対応方針回 避AA事象が発現した場合,通常計画可能な構造物や対策工による対応が困難.通常容認される以上の事業費がかかる.⇒路線を変更する等により回避する.A事象が発現した場合,構造形式の変更が必要となる場合や,安全性が著しく低下する可能性がある.⇒詳細な調査を実施して,完全なリスク低減を講じる.B事象が発現した場合,軽微な追加対策や,対策範囲の変更により対応できる.⇒通常の地質調査を行い,調査結果に応じて対策工を検討する.C事前の低減対策等の必要性が低いため,施工段階や維持管理段階にリスクを保有する.(構造物の規模が小さいものを含む)性のある地質リスクに対しては早期にリスク対応方針を決めておき,リスクの分析による不確実性の評価と,優先度(リスクランク)を決めることが重要となる.一般的なリスクマネジメントでは,リスクへの対応として「移転」「回避」「低減」「保有」がある.このうち,「移転」は保険を掛けるなどでの低 減対応であり,PFI 事業等を除けば道路事業への対応が難しいため,「回避」「低減」「保有」について表 1 のとおり設定した.リスクランクは,できる限り客観的に定量評価するため,既往文献1)2)を参考として「影響度」×「発生確率」でマトリクス保 有表を作成して評価した(表).影響度は,「費用」「期間」表 2 リスクマトリクス表の例(法面の不安定化に関わるケース)「安全」「環境」の 4 項目について,文献 ) を例に基本方針(めやす)を設定し,各事象(落石,崩壊,土石流,支持地盤発 生 確 率の不確実性など)の閾値を決定した.発生確率は,過去の事例小中大特大BAAA大BBA中BBA小CBBでは「%」や「確率年」で評価されているが,%や確率年の設定は多くの事例が必要であり,現段階で本事業に合わせた解析は困難なため,技術指針等を参考にするとともに変状事例を解析して設定した.影響3.変状事例解析を用いた発生確率の設定方法度ローカルな地質特性を把握するために,周辺道路の地形地質,地質構造,道路構造物の緒元,地質リスク発現状況を収集整理(個数)した.切土のり面では, 全体の 17%,16 箇所で変状が記録されている.このうち 14 箇所は地質構造が流れ盤を呈する法面で発生しており,特に標準貫入試験が貫入不能となる岩盤中で発生したものが多く見られた.地質構造が流れ盤構造を呈する法面の見かけ傾斜の関係を図 1 に示す.変状箇所の見かけ傾斜は,10~20°と緩傾斜なものが 9 箇所と最も多くなっている.つづいて,図 2 に A 道路に加えて周辺道路での変状 1 箇所ずつのデータを土質工学会(1976)3)による流れ盤法面における限界勾配の関係上にプロットした.法面勾配 1:1.2 よりも急勾配の切土では,この事例と同様の結果を示すものの 1:1.2 より緩傾斜,特に見かけ傾斜 20°以下の領域では,境界域や安全側の範囲で多くのA Study on the Methodology of Evaluating Georiskin Road Project5409箇所3530データ数︓48変状あり25未変状20151050〜10〜20〜30〜40〜50流れ盤法⾯ ⾒かけ傾斜( °)60〜図 1 見かけ傾斜別変状記録(流れ盤構造)Akitomo Nakanishi,OYO corporationShinji Komatsu,OYO corporation ◆ 変状発生個変状が発生していることがわかる.つぎに,すべり面の性状と変状規模(切土段数)の関係を図 3 に整理した.すべり面に断層破砕帯や層理面沿いの破砕泥岩が挟在する箇所は全体の 18 箇所であった.特に 3 段以上の変状のケースではすべて破砕帯等の挟在が確認されている.これらのことから,切土のり面における地すべりの発生確率は,土軟硬による評価のみでは地質構造的素因によるリスクを見逃す可能性が高く,見かけ傾斜が 10~40°までの流れ盤構造を呈する法面,特に破砕した泥岩や断層破砕帯を挟在する箇所は変状の可能性が高いと判断される.不安定法境界域面傾斜安定側角β盛土のり面では,路面の沈下や変状が認められた箇所が数箇所で確認された.この地域に分布する田辺層群,熊野層群は新⾒かけ傾斜⾓α '図 2 見かけ傾斜・法面傾斜別と崩壊事例第三紀中新世(約 1400 万年前)に前弧海盆に堆積した堆積岩類でスレーキング性を有する.変状が発生した盛土区間と変状が(個数)発生していない区間において,盛土材料の掘削元となる切土の14り面から新鮮部の試料を採取し,岩の破砕率試験とスレーキン12グ率試験を実施した.変状が発生した区間の材料は,スレーキ10ング率が 80%,破砕率が 30%で「設計要領第一集土工建設編データ数︓29破砕帯あり破砕帯なし8(平成 28 年 3 月)NEXCO」による圧密沈下を考慮するスレーキング性材料の区分で「区分(3)スレーキングする可能性が高6いため対策」が必要にあたる.4このような事例解析の結果を踏まえて,地質リスクの発現事土砂・風化帯破砕帯なしは風化境界のすべりが多い2象ごとにリスクランクを設定するための発生確率を設定した.0のり面・自然斜面の不安定化に関わる事象に関わる設定例を表13 に示す.23変状規模(段数)45〜図 3 すべり面の性状と変状規模4.計画道路の地質リスク評価結果表 3 発生確率の設定例ローカルな地質リスク要因を漏れなく把握するため,計画箇(のり面・自然斜面の不安定化に関わる事象)所周辺の地形判読,地表地質踏査(L=9.2km)を行った.発地質リスク評価結果は,地質リスク管理表として,地質図,地質リスク要因,発現事象,リスクランク,リスク措置計画等を一覧表として整理した.本評価により設定したリスクランクA は 14 箇所で,このうち 8 箇所が,切土法面での流れ盤構造を素因とした地すべりリスクが高い箇所であった.切土法面では,一旦変状や崩壊が発生すると地山のせん断強度が低下するため,大規模な対策が必要となることも多い.事前に変状を予測してすべり面となる地質構造(流れ盤、クサビ崩壊)確率中大節理面等が見かけ傾斜10~40°程度の流れ盤構造断層、節理面等の組み合わせはみられない層理面等が見かけ傾斜10~40°以上の流れ盤構造断層、節理面の組み合わせがある破砕帯、粘土層等の弱面が見かけ傾斜10~40°の流れ盤構造を呈する周辺に同構造の変状履歴がある断層破砕帯、熱水変深層風化や深部まで 幅1m以内の断層破砕 質帯など周辺に比較風化帯・ゆるみ帯ゆるんだ地山が分布 帯や熱水変質帯が分 して強度の低い地山断層破砕帯する布するが広く分布する(幅1m以上)対策を行うことにより,対策費用の増加や工期の延長を防ぐことができると考えている.切土法面の不安定化リスクが懸念さ地すべり等の活動誘起段差地形等が認められる表層崩壊跡が見られるやや明瞭な地すべり地形が認められるクリープ変形の形跡がある地下水の状況集水地形がある流水跡がある断層沿いから湧水が高標高部に湧水点があるある特異な水理地質構造常時流水があるが分布するれる箇所では,法面勾配を 1:1.2 と緩く計画し,用地幅の変更による手戻りや地元負担を最小限に留めるとともに,不確実性の確認のための詳細な調査を提案した.生小スレーキング(JGS2124-2006、設計要領第一集)1(1)材22(材)明瞭な地すべり地形が認められる現地踏査により滑動性が確認される3、4(3)材5.おわりに道路事業では,一旦地質リスクが発現すると,その規模によっては事業全体の見直しや大幅な変更が必要なケースも少なくない.道路土工 切土工・斜面安定工指針(平成 21 年度版)には,すべりの可能性がある場合は「詳細な調査が必要」とされている.しかし,これまでの地質調査や設計業務のプロセスでは詳細な調査が必要な箇所の抽出や対応優先度を決定するプロセスが欠如していた.地質リスクマネジメントはこれらのプロセスを補完し,調査-設計-施工に至る道路事業の生産性を向上させ,維持管理段階の負担を軽減させることができると考える.参考文献1)土木学会:道路事業におけるリスクマネジメントマニュアル(Ver.1),2010.32)地質リスク学会・一般社団法人全国地質調査業協会連合会:地質リスクマネジメント入門,2010.43)土質工学会:土質基礎工学ライブラリー12 切土ノリ面,1998.126
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