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第51回地盤工学研究発表会発表講演集

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タイトル 技能試験配付試料の均質性の評価方法について
著者 中山義久・澤 孝平・日置和昭・稲積真哉・山内 昇・城野克広
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 31〜32 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100016
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タイトル 軟弱地盤における道路舗装状況が車両走行時の近傍地盤応答に及ぼす影響(その2)
著者 石田理永・石田栄介・岩田克司
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 2239〜2240 発行 2016/06/20 文書ID rp201605101120
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タイトル 水圧破砕法による初期地圧測定方法の基準化について
著者 伊藤高敏
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 59〜60 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100030
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タイトル 地震発生に伴う震源断層近傍の応力変化 -東北地震断層の海洋掘削による応力測定の例-
著者 伊藤高敏・林 為人
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 57〜58 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100029
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タイトル 主応力比の大きい岩盤応力下における水圧破砕試験でのき裂の再開口と閉口挙動に関する考察
著者 横山幸也・坂口清敏・伊藤高敏・林 為人
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 55〜56 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100028
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タイトル 釜石鉱山における東北地方太平洋沖地震前後の地圧の繰返し測定
著者 坂口清敏・横山幸也・林 為人
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 53〜54 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100027
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タイトル 従来式(大コンプライアンス)水圧破砕法による初期地圧測定-岩石引張り強さを適用した再解析の例-
著者 小村健太朗
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 51〜52 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100026
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タイトル ISO/TC221国内専門委員会活動報告
著者 椋木俊文・宮田喜壽
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 49〜50 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100025
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タイトル ISO/TC190(地盤環境)の審議状況 -2015年度-
著者 古川靖英・川端淳一
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 47〜48 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100024
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タイトル 室内土質試験方法の国際規格審議状況-2015年度-
著者 豊田浩史
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 45〜46 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100023
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タイトル 地盤関連 ISO の審議状況と地盤工学会におけるISO 活動-平成27年度-
著者 浅田素之・今村 聡
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 43〜44 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100022
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タイトル 地盤材料試験の技能試験ロードマップ
著者 藤原照幸・日置和昭・澤 孝平・中山義久・稲積真哉・中澤博志
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 41〜42 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100021
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タイトル アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 -軸圧縮試験-
著者 沼倉桂一・中澤博志・浜田英治・中川 直・保坂守男
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 39〜40 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100020
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タイトル アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 -湿潤密度試験-
著者 浜田英治・中澤博志・沼倉桂一・保坂守男・中川 直
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 37〜38 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100019
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タイトル アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 -試験精度向上にむけて-
著者 中澤博志・沼倉桂一・浜田英治・藤原照幸
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 35〜36 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100018
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タイトル 地盤材料試験の技能試験結果に関する検討
著者 山内 昇・澤 孝平・中山義久・日置和昭・稲積真哉・城野克広
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 33〜34 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100017
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タイトル 地盤品質判定士の業務と判定士会の役割
著者 北詰昌樹
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 1〜2 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100001
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タイトル 宅地造成地の耐震性評価とリスクコミュニケーションについて
著者 佐藤真吾・風間基樹・市川 健・山口秀平
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 29〜30 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100015
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タイトル 盛土材のスレーキング特性から見た仙台市造成宅地被害の特徴
著者 市川 健・佐藤真吾・山口秀平
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 27〜28 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100014
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タイトル 盛土造成地上の木造建物被害率に影響する要因分析の-事例
著者 山口秀平・佐藤真吾・市川 健
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 25〜26 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100013
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タイトル 住宅地盤改良工事のトラブル事例とその対策
著者 橋本光則
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 23〜24 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100012
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タイトル 東日本大震災によって被害を被った福島県内の宅地地盤の変状事例
著者 原 勝重
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 21〜22 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100011
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タイトル 大規模な宅地盛土造成地の地形改変の把握と検証
著者 藤田安秀・高山陶子・花井健太
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 19〜20 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100010
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タイトル なんだか変だなア、その考え方
著者 尾上篤生・蔡  飛
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 17〜18 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100009
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タイトル 宅地の液状化判定のための動的コーン貫入試験の開発
著者 大島昭彦
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 15〜16 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100008
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タイトル 小規模建築物の地盤評価について
著者 関谷亮三
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 13〜14 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100007
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タイトル 住宅地盤の評価に対する-考察
著者 小野日出男・中村裕昭・大久保拓郎
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 11〜12 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100006
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タイトル 戸建て住宅の基礎設計で告示1113号を引用する際の注意点
著者 大久保拓郎・中村裕昭・小野日出男
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 9〜10 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100005
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タイトル 建築地盤技術者の視点からの二つの問題提起と改善提案
著者 菱沼 登
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 7〜8 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100004
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タイトル 地盤品質判定士制度の活用に関する課題
著者 森 友宏
出版 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 5〜6 発行 2016/06/20 文書ID rp201605100003
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  • タイトル
  • 技能試験配付試料の均質性の評価方法について
  • 著者
  • 中山義久・澤 孝平・日置和昭・稲積真哉・山内 昇・城野克広
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 31〜32
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100016
  • 内容
  • 0016D - 00第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月技能試験配付試料の均質性と技能試験結果の正規性について試料の均質性 試験結果の正規性 標準偏差関西地盤環境研究センター ○(国際) 中山 義久・(国際) 澤 孝平大阪工業大学 (国際) 日置 和昭明石工業高等専門学校 (国際) 稲積 真哉北海道土質試験協同組合 (正) 山内 昇産業技術総合研究所 (非) 城野 克広1.はじめに 技能試験では試験機関iの試験結果(xi)の評価をzスコア( zi( xix) /)で行っている。ここに, x と は xi の平均値と標準偏差である。試験機関の能力を正しく評価をするためには,「(1)技能試験に配付される試料が均質であること」および「(2)試験結果の頻度分布が正規分布であること」が必要である。本稿では平成27年度に実施した技能試験(湿潤密度試験,一軸圧縮試験)結果について,配付試料の均質性および技能試験結果の頻度分布の正規性について検討する。2.技能試験の概要 平成27年度の技能試験の参加機関数は55機関で,図 1にその分類と割合を示す。技能試験に用いた母材は市販のシルト質土(ρs=2.691 g/cm3,LL=30.4 %,PL=20.1 %,粒径加積曲線:図-2)で,これに普通ポルトランドセメントを添加し,圧縮強さの異なる2種類の改良土を作製し所定期間養生した。セメント添加量25 kg/m3を「試料25」,30 kg/cm3を「試料30」と呼ぶ。各試験機関は試料25および試料30について配付された4本の供試体のうち3本の試験結果(含水比,湿潤密度,乾燥密度,一軸圧縮強さ,破壊ひずみ,変形係数)を報告する。3.配付試料の均質性確認の検討 表-1 は技能試験実施図-1 参加機関の種類・割合表 1 均質性確認結果委員会が行った配付試料の均質性確認試験の標準偏差(一般法: ss )と技能試験の標準偏差(四分位数法: 1 )を比較したものである。均質性の確認は JIS Z 8405 の基準式( ss /1 ≦ 0.3平均値均質性確標準偏差 s s認試験変動係数(%)で均質)により検討した結果,これを満足する試験項目はない。別途, 1 を一般的な標準偏差を用いて検討したが,表-1 の結果と大差は見られない。また,参考文献 1) に提案されているss / 1 ≦ 0.5 を用いると,試料 25 および試料 30 の 6 試験項目中平均値試料 技能試験標準偏差 σ 125変動係数(%)s s/σ 12項目は基準を満足するが,残りの4項目は満足しない。従って,均質性判定今回の配付試料は均質性に問題があるため,z スコアの算出に当た っ て は こ れ を 考 慮 し て JIS が 定 め て い る 標 準 偏 差(21(kN/m )(%)(MN/m )45.71.7451.1981157.4421.00.400.0050.0067.71.223.10.90.30.56.616.414.745.71.7381.1941067.1815.60.890.0070.00910.01.146.21.90.40.79.415.839.73一軸 圧縮 強さ220.700.771.070.50××××判定(0.5)〇××××〇45.41.7451.2011408.9121.60.520.0070.00911.60.684.71.10.40.88.37.621.745.31.7431.1991267.8714.80.820.0140.01113.31.448.11.80.80.910.618.354.6s s/σ 1どの頻度分布も中央部に多くが集まり,端部に向かうにつれて乾燥密度×変動係数(%)均質性判定変形係数(g/cm )30.72平均値≦2 の試験結果について頻度分布を示すと,図-3~図-6 である。破壊 ひずみ(g/cm )×試料 技能試験標準偏差 σ 130分布の正規性を検討するために,各試験項目の全試験結果と z湿潤密度(%)0.44均質性確標準偏差 s s認試験変動係数(%)ss )を用いることにしている。含水比判定(0.3)平均値24.試験結果の頻度分布と正規性の検討 技能試験結果の頻度図-2 母材の粒径加積曲線0.640.500.810.870.470.58判定(0.3)××××××判定(0.5)×〇××〇×減少していく。とくに,含水比以外では中央の集合している部分から離れて端部に試験結果が見られ,これが「外れ値」といわれるものである。|z|>2 の試験結果を除くと,この外れ値は見られない。この分布の正規性を表す指標として,統計学ではジャック-ベラ検定がある。これは次の手順で行う。①全試験結果および z ≦2の試験結果について,四分位法により中央値( x )と標準偏差( 1 )を求め,試験結果の分布の歪度(b1)と尖度(b2)を式(1)と式(2)から求める。その後,②式(3)を用いて JB 値 2)を計算すると,③JB < 5.99 のとき頻度分布に正規性があると判断できる。ここに,n:試験結果の個数, xi:試験結果である。About the Homogeneity of Sample for Proficiency Test and Normality of Distribution of Test ResultsNakayama Yoshihisa, Sawa Kohei (Kansai Geotechnology and Environment Research Center), Hioki Kazuaki (Osaka Institute of Technology),Inazumi Shinya (National Institute of Technology, Akashi College), Yamauchi Noboru (Hokkaido Soil Research Co-operation), Shirono Katsuhiro(National Institute of Advanced Industrial Science and Technology)31 図3含水比図5乾燥密度図7b11{n( xix) 3}(1)図4破壊ひずみb211{n( xix)}4JB(2)1湿潤密度図6一軸圧縮強さ図8変形係数nb126n(b 2 3)224(3)表-2 は全試験結果と|z|≦2 の試験結果について求めた JB 値である。表中のハッチ部分は JB < 5.99(正規性あり)を示している。表-2 によると,全試験結果の頻度分布は試料 30 の含水比を除いて正規性を示さない。JB 値の計算では「外れ値」の影響を小さくするために四分位法による平均値と標準偏差を用いているにもかかわらず,多くの試験項目で正規性が見られないが,|z|>2 の外れ値を除いた試験結果により JB 値を求めると,大部分の試験項目で正規性を示すことは注目すべきである。すなわち,何らかの理由で試験結果が大幅に異なるもの(外れ値)を除いた試験結果は JB 値が小さくなり,正規性を示すといえる。5.おわりに 改良土試料の均質性と試験結果の分布の正規性については,供試体の微妙な内部構造に影響されることも考えられるが,今後の検討課題である。参考文献表 2 JB 値の検討1) 澤,中山,城野;技能試験結果の不確かさ評価による配付試料の均質性に関する検討(その湿潤密度試験のJB値試験項目3),第 51 回地盤工学研究発表会論文集,(投稿中) ,2)小西葉子,伊藤有希:EViews の使い方補足一軸圧縮試験のJB値含水比湿潤密 度乾燥密 度一軸圧縮強さ破壊ひずみ変 形係 数試料259.9813285211.28200530491.6999.43試料302.3829.0680.72993735.7222206試料259.985.871.620.7312.271.73試料302.384.190.441.0310.575.38全試験結果Jarque-Bera 検 定 , HP 資 料 ,http://ykonishi.web.fc2.com/EViews_manual_JB.pdf#search='JB%E5%80%A4',(2012.3.1 取得)│z│≦2の試験結果32
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  • 軟弱地盤における道路舗装状況が車両走行時の近傍地盤応答に及ぼす影響(その2)
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  • 石田理永・石田栄介・岩田克司
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 2239〜2240
  • 発行
  • 2016/06/20
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  • rp201605101120
  • 内容
  • 1120第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月E - 08軟弱地盤における道路舗装状況が車両走行時の近傍地盤応答に及ぼす影響(その2)距離減衰動的荷重路床石田振動環境研究室正会員○石田 理永エイト日本技術開発正会員石田 栄介エイト日本技術開発岩田 克司1.はじめに前報1)3025 振20 動15 数10 (Hz)50に引き続き、軟弱地盤における道路舗装の有無や路床の剛性が車両走行時の近傍地盤の 3 方向応答に及ぼす影響について、道路直近のみでなく、やや離れた地点までの地表・地中の距離減衰性状をシミュレーション解析により考察した。(a) 車両後軸加振力の非定常スペクトルY(走行方向)X(走行直交方向)-30-10-15測線②↓-50測線④↓510車両走行30 ライン15道路1m×52.シミュレーション解析の概要(前報との相違点)前報1)5と同じ三次元 FEM 時刻歴応答解析プログラム1m1m ×2025を用いて、大型車両(総重量 20tf)の 40km/h 走行時の地盤応答シミュレーションを行った。図 1 に、三次元FEM 面対称モデルの平面図を示す。前報1)2.5m×4より拡張し35て、車両走行ラインから 25m まで(道路端から地盤 20m5m×2まで)の測線②、④での応答を取り出している。測線②上の路面に 3cm の局部段差を設けているため、走行車両5m×2による加振力は測線②通過時を中心に、ばね上・ばね2.5m×2車両走行ライン道路舗装なし3.路床改良による地盤応答への影響の考察表層向加速度最大値の変化を、測線②、④についてそれぞいてはモデル拡張前の前報1)での結果が概ね再現でZ(鉛直方向)X(走行直交方向)の厚さを thin(12.5m)と thick(25m)の 2 種類用意した。れ 3 パターンの道路舗装構成で比較する。2~10m にお45図1 三次元FEMモデルの平面図舗装構成と地盤の層分割を示す。表層地盤(Vs150m/s)図 3 に、表層厚 12.5m の場合の地表 2~25m の 3 方5m×2(b) 道路と地盤のメッシュ分割下の固有振動数帯域(3Hz と 15Hz 付近)の成分が励起されている。図 2 に、本報で検討した 3 パターンの道路2.5m×21m基盤0.05m0.15m0.75m1m1m1.55m1.6m×53.75m×25m×2舗装路盤N7路床Vs150N7路床Vs300(2m)0.05m0.15m0.75m1m (150m/s)1m1.55m1.6m×53.75m×25m×20.05m0.15m0.75m1m (300m/s)1m (300m/s)1.55m1.6m×53.75m×25m×2路床 Vs150(m/s)路床 Vs300(m/s)表層12.5mVs150(m/s)表層※ thick版 では、 25m12.5m 挿入Vs150(m/s)1.7m×11.8m×6基盤Vs300(m/s)図2 道路舗装構成のパターンと地盤の層分割きており、軟弱地盤で道路を舗装すると 5~10m(道路端から 5m まで)の直近地盤では応答が複雑に変化し、路床改良により応答増幅が低減されることが再確認できる。また、10~25m(道路端から 5m 以上)の地盤では、加速度応答は概ね距離と共に減衰している。3 方向の応答振幅・減衰性状の違いは、路面の局部段差と地盤測線との距離・方向(伝播波動の種別)によるものと推察される。図 4 に、図 3 と同一の道路舗装構成 3 パターンについて地中断面での加速度最大値の分布を、測線④の走行方向成分および測線②の走行直交・鉛直方向成分のみコンターで示す。道路を舗装しない場合、地表面を加振することで地中でも大きな加速度応答の広がりが見られるが、深さ 12.5m 位置の基盤(Vs300m/s)で反射して地表に到達している成分は無いことが読み取れる。また、舗装ランク N7(舗装と路盤で計 0.95m)を施した場合、水平方向成分では N7 の剛性により拘束されたエネルギーが地表測線上 5~10m 付近で解放されているイメージが分かる。路床を 2m 改良した場合でも同様の性状が見られるが、路床改良により地中の加速度応答分布は 3 方向とも大きく低減され、その結果として地表測線上の応答が低減している(図 3 参照)と説明できる。4.表層地盤の厚さが地盤応答に及ぼす影響の考察図 5 の上段に、道路舗装ランク N7 で路床を 2m 改良した場合について表層地盤(Vs150m/s)の厚さを 12.5m、25m に変化させ、測線②の 20m 地点の 3 方向加速度フーリエスペクトルを比較した。表層の Vs と厚さを用いた 1/4 波長則による地盤水平方向の固有振動数は、3Hz と 1.5Hz である。図より、表層を厚くしても地盤加速度のフーリエスペクトルはほとんど変化しないことが分かる。この結果は、2~25m の加速度最大値の距離減衰(図は割愛)の比較とも調和的であり、地表面加振問題における地盤応答特性は地震動の基盤入力問題とは異なる。図 5 の下段に、加振力として車両ばね上の固有振動数(3.21Hz)帯域成分のみを励起させるように 3Hz 正弦波路面凹凸を強制変位入力した結果を示す。図より、鉛直方向の 3Hz 付近では表層厚による大きな違いが見られる。これは、レイリー波基本モードのエアリー相と関係していることが推察されるが、詳細については今後の課題とする。Effect on the Response of Soft Soil Close to the VehicleRunning Road by the Road Pavement Situation (Part 2)ISHIDA, Riei (Ishida Vibration Environment Research Laboratory)ISHIDA, Eisuke (Eight-Japan Engineering Consultants)IWATA, Katsuji (Eight-Japan Engineering Consultants)2239 5.まとめ前報1)での検討範囲を拡張し、軟弱地盤上の平面道路車両走行における近傍地盤(2~25m)での地表・地中の距離減衰性状を考察した結果、路床の改良は道路近傍地盤全体に渡って 3 方向応答成分ともに効果が大きいことが分かった。今後は、道路幅と路床改良深さ、表層地盤 Vs と厚さが地盤応答に及ぼす影響について検討を進める。参考文献:1) 石田ほか:軟弱地盤における道路舗装状況が車両走行時の近傍地盤応答に及ぼす影響、第 50 回地盤工学研究最大加速度(gal)発表会(札幌)、E-08(1207)、pp.2413-2414、2015.920 N7の舗装範囲1640(走行方向)地盤12306020401020N7の舗装範囲(鉛直方向)地盤N7の舗装範囲地盤※ thin:表層厚12.5m道路舗装なしN7路床Vs150N7路床Vs300x2m8400最大加速度(gal)80(走行直交方向)N7の舗装範囲地盤20 N7の舗装範囲1620地盤1612128844040N7の舗装範囲地盤※ thin:表層厚12.5m道路舗装なしN7路床Vs150N7路床Vs300x2m3020100005101520走行線からの距離(m)00255101520走行線からの距離(m)250510152025走行線からの距離(m)※ 測線②上の路面に3cmの人工段差あり、表層厚12.5m図3 道路舗装の有無や路床の剛性による加速度最大値の距離減衰(上段:測線②、下段:測線④)走行方向 (測線④)走行直交方向 (測線②)鉛直方向 (測線②)(a) 道路舗装なし(b) N7路床Vs150(m/s)(c) N7路床Vs300(m/s)×2加速度Spec.(gal*s)加速度Spec.(gal*s)図4 XZ断面の地中最大加速度分布(測線②上の路面に3cmの人工段差あり、表層厚12.5m)(単位:gal)0.30.6(走行方向)上段:実路面凹凸+人工段差3cm0.20.10.00.3 050.2下段:正弦波路面凹凸(片振幅1cm,3Hz)10152025300.11.2(走行直交方向)0.40.80.20.40.00.6 00.4510152025※1 N7路床Vs300×2※2 Perzenウィンドウ0.6Hzで平滑化305101520振動数 (Hz)2530thick (表層厚25m)0.01.2 051015202530thin (表層厚12.5m)thick (表層厚25m)0.40.00thin (表層厚12.5m)0.80.20.0(鉛直方向)0.005101520振動数 (Hz)253005101520振動数 (Hz)図5 表層地盤Vs150(m/s)の厚さの違いによる地盤応答加速度フーリエスペクトルの比較(測線②、20m地点)22402530
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  • タイトル
  • 水圧破砕法による初期地圧測定方法の基準化について
  • 著者
  • 伊藤高敏
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 59〜60
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100030
  • 内容
  • 0030G - 05第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月水圧破砕法による初期地圧測定方法の基準化について水圧破砕原位置応力測定基準法東北大学正会員伊藤高敏水圧破砕法は ASTM で 1987 年,BS では 1999 年にそれぞれ基準化され,ISRM では 1987 年に提案法として公表されている。しかし、これらの基準あるいは提案法は従来の水圧破砕法の理論に基づいており、現在わが国で適用されつつある、新しい測定理論とコンプライアンスを考慮した測定システムによる方法とは大きな差異がある。このため、平成25 年度に「水圧破砕による初期地圧測定方法基準化 WG」を設立して基準案をとりまとめた。本報では、同基準の根幹となる、新しい測定理論とコンプライアンスを考慮した測定システムを紹介する。本基準が対象とする水圧破砕法は、孔井の一区間を水で加圧して人工的に生成したメートルサイズのき裂の負荷応答から岩盤応力を評価する方法である。鉛直な孔井で水圧破砕試験を行うと、水平面内の最大主応力 SH の方向に孔井壁面から伸びる鉛直なき裂が生成される(図 1)。このとき観測される、き裂閉口圧 Ps から水平面内の最小主応力 Sh の大きさを決定する。一方、SH の大きさは次のいずれかの要領で決定する。第一の方法では、き裂が初生する時の孔井水圧、つまり破砕圧を利用する。ただし、この場合には一般に測定困難な原位置岩盤の引張強度が必要になるという問題がある。そこで、その問題を回避する方法として考案されて広く普及しているのが、き裂再開口圧 Pr を用いる第二の方法であり、本基準もこれに従っている。ただし、Pr を正しく測定するには、コンプライアンスが適切な大きさの測定システムを用いなければならない。その理由ならびに測定システムのコンプライアンスが適切かどうかを判断する方法を以下に述べる。なお、本基準において“測定システムのコンプライアンス”とは、“試験区間を含む送水系の水圧を単位圧力上昇されるために必要な送水量のこと”であり,言い換えれば、測定システムの剛性の逆数である。まず、き裂再開口圧 Pr と初期応力の関係は次式で与えられる(Ito at al., IJRM, 1999)。Pr =1(3Sh − S H )2(1)上式からわかるように、SH が同じであれば Sh が大きい場合ほど Pr も大きくなる。よって、Sh が SH と等しいときに Pr は最大となり、Sh の大きさと等しくなる。次に、注水によって孔井および人工き裂内の水圧が上昇し、き裂が再開口する過程を考える。ここで、“き裂が開く”とは相対するき裂面同士が接触しなくなることであり、き裂全体の中で接触しなくなった部分のことを以下では単に開口部と呼ぶ(図 1)。また、人工き裂内の水圧が場所によらず孔井水圧 P に等しく一様であると仮定する。このとき、き裂の再開口前後における P と送水量の積算値 Vacc の関係は次式で与えられる(Ito et al, JGR, 2012)。dP1=dVacc C0( P ≤ Pr ),1C0 + C f( P > Pr )(2)ここで、C0 は測定システムのコンプライアンスである。Cf は人工き裂のコンプライアンスであり、き裂内の水圧を単位圧力上昇されるために必要な送水量のことである。C0 が一定とみなせるのに対して、Cf は人工き裂の開口状態で変化し、全体が閉じているときは零であり、開き始めると開口部の伸展に伴って大きくなる。このことと式(2)の関係から、P-Vacc 曲線の勾配が初期の大きさから減少し始めるときの P として Pr を測定できることがわかる。本基準における Pr の測定法は、この原理に従っている。一方、いかなる応力状態でも、上述のように Pr が Sh を越えることはない。また、P が Sh より小さい内は、開口部が孔井周囲の応力集中岩盤域を越えて伸展することができない(伊藤, 地球, 2004、Ito et al., EPS,2006)。つまり、人工き裂が開き始めても P が Sh の大きさに達するま生成したき裂孔井最大主応力 SHで、開口部の孔井半径方向長さは、大きくなっても孔井の高々直径程度に過ぎない。したがって、P-Vacc 曲線の勾配変化から式(1)に対応する Pr を正しく測定するには、開口部の長さが孔井直径よりも十分小さいときの Cf が、P-Vacc 曲線の勾配に変化を起こす程度に C0 を小最大主応力 SH開口部さくしなければならないことになる。問題となる C0 の大きさは、対象となる孔井と同じ内径を有する鋼管で加圧試験を行うことで実測することができる。つまり、き裂がない最小主応力 Shので式(2)の Cf は零であるから、その試験で得られた P-Vacc 曲線の勾配の逆数として C0 が求められる。また、き裂のコンプライアンス Cf図 1 水圧破砕き裂と岩盤応力の関係ITO, Takatoshi Tohoku Univ.Introduction of a new standard for stress measurements withhydraulic fracturing59 の大きさは、孔井半径 a、き裂の孔井軸方向高さ h、岩盤のヤング率 E およびポアソン比νの関数として次式で求めることができる(Ito et al., JGR, 2012)。()4h 1 + ν 2 1 a a 2 π−1−1+a − sin(a + L )  − sin  2 sin++E22aLaL C f (P ) = (3)(a + L )2 − a 2 ここで、L はき裂開口部の孔井半径方向長さであり、孔井水圧 P、岩盤応力 SH および Sh の関数である。したがって、Lの関数である Cf も P、SH および Sh の大きさによって変化する。その L の大きさは次式を解くことで求めることができる。f1 (s ) P − { f 2 (s ) − f1 (s )} S H + f 2 (s ) S h = 0(4)ここで s = L/(a + L)であり、f1(s)および f2(s)は次式で与えられる。{{f1 (s ) = 1 + (1 − s ) 0.5 + 0.743 (1 − s )3f 2 (s ) = 0.5 (3 − s ) 1 + 1.243 (1 − s )2}} (5)一方、式(2)を積分すると次式を得る。(P ≤ Pr )C0 (P − Pp )(6)PVacc = C0 (P − Pp ) + ∫ C f dP (P > Pr )Prしたがって、上式の Cf に式(3)を代入すれば、任意の C0、a、h、SH および Sh の条件における P と Vacc の関係、つまりP-Vacc 曲線を求めることができる。ただし、式(6)が成立するのは P が Sh より小さい範囲であることに注意を要する。なお、式(3)および式(6)の計算は、一般的な表計算ソフトを使って容易に実行することが可能である。例として C0 が 0.5、2.5 および 5 mL/MPa のそれぞれの場合について、式(3)を用いた近似計算で P-Vacc 曲線を求め、それらを並べて図 2 に示した。ここで、C0 以外のパラメータは以下のように仮定した。a =50 [mm], h =1[m], E =50 [GPa], ν =0.2, SH =20 [MPa], Sh =10 [MPa], Pp =3 [MPa]同図からわかるように C0 が大きいほど、き裂再開口前後の曲線の勾配変化が小さくなっている。この結果から、C0 を0.5 mL/MPa 程度まで小さくしなければ Pr を正しく検出することが難しいと判断できる。この例で必要な C0 が非常に小さい値となったのは E が大きいことによる.このように、C0 を含む測定条件を想定した P-Vacc 曲線を式(3)の近似式を使って予め求め、その勾配の変化から正しく Pr を検出できるかどうかを評価すれば良い。12S = 10 MPa11h10P, MPa9C0 = 0.5 mL/MPa2.5 mL/MPa5 mL/MPa87Pr= 5 MPa6Sh=10 MPa5SH=20 MPa4305101520Vacc, mL25303540図 2 測定システムのコンプライアンスによる P-Vacc 曲線の変化参考文献Ito, T., Evans, K., Kawai, K. and Hayashi, K., Hydraulic Fracture Reopening Pressure and the Estimation of Maximum HorizontalStress, Int. J. Rock Mech. Min. Sci. & Geomech. Abstr., (1999), 36 (6), 811-826.伊藤高敏, 水圧破砕地殻応力評価法の問題点とき裂開口圧の物理的意味, 月刊地球, (2004), 26 (2), 84-89.Ito, T., Igarashi, A., Kato, H., Ito, H. and Sano, O., Crucial Effect of System Compliance on the Maximum Stress Estimation in theHydrofracturing Method: Theoretical Considerations and Field Test Verification, Earth Planets and Space, (2006), 58, 963-971.Ito, T., Funato, A., Lin, W., Doan, M.-L., Boutt, D.F., Kano, Y., Ito, H., Saffer, D., McNeil, L.C., Byrne, T., Moe, K.-T.,Determination of Stress State in Deep Subsea Formation by Combination of Hydraulic Fracturing In-situ Test and Core Analysis– A Case Study in the IODP Expedition 319–, J. Geophys. Res., (2013), 118, 1203–1215, doi:10.1002/jgrb.50086.60
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  • タイトル
  • 地震発生に伴う震源断層近傍の応力変化 -東北地震断層の海洋掘削による応力測定の例-
  • 著者
  • 伊藤高敏・林 為人
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 57〜58
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100029
  • 内容
  • 0029G - 01第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月地震発生に伴う震源断層近傍の応力変化―東北地震断層の海洋掘削による応力測定の例―地震断層応力東北大学 正会員 ○伊藤 高敏JAMSTEC 非会員林 為人1.はじめに2011 年 3 月 11 日に日本列島を襲ったモーメントマグニチュード 9.0(Mw9.0)の東北地方太平洋沖地震(以下,東北地震と略称)に付随して発生した巨大津波は,北米プレートと太平洋プレートの境界断層が大きくすべったことにより発生した。なぜ,このプレート境界断層の先端部(日本海溝の近く)は 50m もすべったかを解明 す る た め に , 統 合 国 際 深 海 掘 削 計 画 ( 略称 IODP) は , 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 調 査 掘 削 ( Japan Trench FastDrilling Project,略称 JFAST)を実施した(林ほか,2014)。JFAST では,世界最大の科学掘削船である地球深部探査船「ちきゅう」を用いて,水深 6890m の日本海溝付近において,東北地震の震源断層であるプレート境界断層の掘削を行った(図-1)。地震断層近傍の応力は,地震の準備期間に徐々に蓄積して大きくなる一方,地震時には急激に降下することが概念的に示されてきた。JFAST の断層掘削により,東北地震にプレート境界断層の先端部で断層近傍の上盤内の応力状態が地震時に変化したことが判明した(Lin et al., 2013)ので,ここにその成果を紹介する。2.JFAST の概要と検層JFAST は東北地震発生の約1年後,2012 年 4 月 1 日∼5 月 24 日(IODP 第 343 次研究航海)と 2012 年 7 月 5日∼7 月 19 日(同第 343T 次研究航海)の 2 回に分けて実施され,東北地震時の断層すべり量が最も大きい海溝付近で断層掘削を行った。掘削地点 C0019(北緯 37 度 56 分,東経 143 度 55 分)は宮城県牡鹿半島東方沖約220km,東北地震本震の震央から東南東約 93 km の海域に位置する(図−1)。この地点付近では,沈み込む太平洋プレートに明瞭な地塁と地溝構造が認められる。JFAST の掘削地点 C0019 は,プレート境界断層を確実に捉えるため,日本海溝軸の西方約 6km の地塁上に選定された。この掘削地点において,水平距離約 30m の範囲内において,実施目的の異なる3孔(C0019B,C0019E と C0019D)の掘削を行った。3孔とも,水深約 6890mの海底から北米プレート前縁の付加体を掘削して厚さ約 820m の断層上盤を貫通し,さらに海底下深度 850m まで掘削して断層下盤を構成するチャート層に達している。後述するように,東日本大震災の大津波をもたらした,すべり量が約 50m にも及ぶプレート境界震源断層(海底下深度約 820m)を貫通したことになる。3孔のうち,掘削孔 C0019B では掘削同時検層(Logging-While-Drilling,略称 LWD)により海底下深度 850.5mbsf(meters below seafloor)までの掘削を行い,孔内の地質状況の把握と断層帯の深度特定を行った。今回用いた LWD ツール“GeoVISION”によって,比抵抗・自然ガンマ線・孔壁比抵抗イメージの高品質データの取得に成功した。LWD によって,地層の基本的物性プロファイルを取得したほか,東北地震震源断層の候補となる2つの断層帯を認定し,地震時に発生した摩擦熱による温度異常分布を特定する温度センサーの設置深度や重点的にコア試料を採取する深度区間を決定した。また,孔壁イメージから地層中の応力状態を反映するブレークアウト(後述)を認定した。各種検層データの特徴から,本掘削地点の地質層序は,Logging Unit I(0∼約 197 mbsf),Unit II( 約 197 ∼ 820 mbsf ) , Unit III ( 約 820 ∼ 836mbsf),Unit IV(約 836∼850 mbsf)の4ユニットに区分された。Deep Sea Drilling Program(DSDP)による過去の掘削結果等から,高い自然ガンマ線値(70∼100 gAPI)を示す厚さ約 16m の LoggingUnit III は沈み込む太平洋プレートの最上位地層の遠 洋 性 粘 土 質 岩 層 と 解 釈 さ れ , 高 比 抵 抗 ( 5 ∼ 10Ω m) の ピ ー ク を 多 数 含 む 厚 さ 約 14m の LoggingUnit IV はチャート層と解釈された。また,チャート層の下位層は海洋地殻を構成する玄武岩層である。検層データの物性・構造解釈により,720 mbsf付近と 820 mbsf 付近の2層準において断層帯の存在を推定した。700∼720 mbsf 付近には負の比抵抗図-1 JFAST の掘削調査位置(サイト C0019)と東北異常値を示す多数の薄層の存在から開口割れ目群地震の本震震央位置図.灰色矢印と数字は太平洋プが推定され,中でも 720 mbsf に発達する厚さ約1レートの運動方向と年間速度;サイト C0019 にあm の低比抵抗帯が最も顕著な構造である。820mbsfる黒実線は最大水平主応力方向,破線はそれの標準付近は遠洋性粘土岩層の最上部に相当し,孔壁画偏差である(Lin et al., 2013 より一部改変)像で認定された地層面が急傾斜(上位)から緩傾Coseismic stress change in the vicinity of an earthquake fault:A case study from Japan Trench Fast Drilling ProjectTakatoshi Ito (Tohoku University)Weiren Lin (JAMSTEC)57 斜(下位)へ変化する。なお,この掘削同時検層において,海洋科学掘削として世界最長の海面下総ドリルパイプ長 7,740m(水深 6889.5m と海底下の掘削深度 850.5m の合計)を達成した。3.応力解析の結果掘削孔 C0019B において,掘削同時検層(LWD)を実施し,良質な孔壁の比抵抗イメージを取得した。鉛直掘削孔の場合,水平面内の最大主応力と最小主応力が異なれば,掘削孔壁の周りの応力の大小は方位によって変化する。孔壁の最大応力値が孔壁岩石の耐えられる強度を超えた場合,ボアホールブレークアウト(Borehole Breakout)もしくはブレークアウトと呼ばれる局所的な圧縮破壊が発生する。掘削孔周辺の応力分布は,孔中心に対して対称になっているため,孔壁に発生するブレークアウトは対向 2 か所で認められ,かつその方位は必ず最小水平主応力の方位と一致し,最大水平主応力の方位と直交する( 90°異 な る ) 。 孔 壁 イ メ ー ジ か ら ブ レ ー ク ア ウ トを特定できれば,水平主応力の方向を比較的簡単に決めることができる。また,ブレークアウトの幅を測定し,別途のボーリングコア試料を用いて測定した岩石の圧縮強度等の物性値と組み合わせることにより,最大水平主応力値と最小水平主応力値の取り得る範囲(constraint)を決めることができる。C0019B 孔では比較的多くのブレークアウトを特定することができた。前縁付加体の浅部では,応力の方向が規則性を欠き,“ランダム”の様相を呈した。このような特徴は,既往の沈み込み帯の掘削プロジェクトでは前例がないものであった。前縁付加体の図-2 東 北 地 震 前 後 に お け る 応 力 状 態 変 化 の 模 式 図深部ではブレークアウトが北東∼南西の卓越方向性(Lin et al., 2013 より一部改変)を有することが分かった。そのことから,前縁付加体深部での水平面内の最大主応力方向は北西∼南東であることが判明した(図―1,Lin et al., 2013)。この方向 は こ の 海 域 の 太 平 洋 プ レ ー ト の 沈 み 込 み 方 向 と 概 ね 一 致 し , ま た , 地 震 前 の 掘 削 ( Ocean Drilling Program(ODP) Leg 186, 1999 年)から決定した三陸沖の最大水平主応力方向(Lin et al., 2011)とほぼ平行であることが分かった。ブレークアウトの幅等を用いて決定した掘削時点すなわち東北地震発生後の前縁付加体深部の応力状態は,鉛直方向の応力が最大主応力となり,いわゆる正断層型(伸張応力場:地層が水平方向で伸張するような応力場)であった。一方,孔壁イメージ解析やコア観察から得られる小断層の構造解析データならびに既往研究から,プレート境界断層上盤内の下部の地震前応力は逆断層型(圧縮場ともいう)であったと推定することができる。したがって,地震前後の応力状態は逆断層型から正断層型に変化したと結論できた。図―2(Lin et al. 13)より)に示すように,地震前に海洋プレートの沈み込み方向とほぼ平行であった最大主応力σ1 が地震時のひずみと応力の解放に伴って小さくなり,地震後には中間主応力σ2 となった。地震前の中間主応力σ2 も地震時のひずみと応力の解放に伴って小さくなり,地震後には最小主応力σ3 となった。一方,地震前の最小主応力σ3 であった鉛直方向の応力σv は,重力起源のため大きさが地震の前後で変化しないが,地震後は最大主応力σ1 となった。また,断層に近い前縁付加体深部での東北地震後の応力状態は,3 つの主応力値が大差を示さない結果となり,地震後における断層面上のせん断応力が小さいことが判明した。すなわち,断層面上のせん断応力は,東北地震時にほぼ完全に解放されたと考えられる。この地震に伴う応力の解放は,エネルギーの放出を意味するものでもある。応力の解放は,上盤に蓄積されたひずみの同時解放(すなわち,上盤の伸張)を招いた結果,東北地震時の断層すべり量が海溝軸に近づくにつれ,増大したことにつながったと考えられる。従来,非地震性(Aseismic)であるとされていた海溝軸付近のプレート境界断層は,東北地震の際に地震性(Seismic)すべりを起こし,前縁付加体に蓄積した応力を解放した。前縁付加体は蓄積された応力の解放と同時に伸張し,海溝軸付近の断層すべり量が震源域の断層すべり量の約 2 倍程度に増大する一因となった。前縁付加体下部のプレート境界断層は(このように)能動的にすべったと考えられる(Lin et al., 2013)。参考文献Lin, W., Saito, S., Sanada, Y., Yamamoto, Y., Hashimoto, Y. and Kanamatsu, T. (2011): Principal horizontal stressorientations prior to the 2011 Mw 9.0 Tohoku‐Oki, Japan, earthquake in its source area, Geophys. Res. Lett., Vol.38,L00G10, doi:10.1029/2011GL049097.Lin, W., Conin, M., Moore, J. C., Chester, F. M., Nakamura, Y., Mori, J. J., Anderson, L., Brodsky, E. E., Eguchi, H. andExpedition 343 Scientists. (2013): Stress state in the largest displacement area of the 2011 Tohoku-Oki Earthquake,Science, Vol.339, pp.687-690, doi:10.1126/science.1229379.林 為 人 ,斎 藤 実 篤 ,モ リ ジ ェ ーム ズ ,江 口 暢久,Sean TOCZKO, (2014). 東北地方太平洋沖地震調査 掘削( JFAST ) の 概 要 と こ れ ま で の 主 な 成 果 , 応 用 地 質 , Vol.55 , No.5 , pp.241-250,http://doi.org/10.5110/jjseg.55.24158
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  • タイトル
  • 主応力比の大きい岩盤応力下における水圧破砕試験でのき裂の再開口と閉口挙動に関する考察
  • 著者
  • 横山幸也・坂口清敏・伊藤高敏・林 為人
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 55〜56
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100028
  • 内容
  • 0028第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月G - 05主応力比の大きい岩盤応力下における水圧破砕試験でのき裂の再開口と閉口挙動に関する考察水圧破砕、初期地圧、主応力比応用地質正会員○横山 幸也東北大学国際会員坂口 清敏東北大学正会員伊藤 高敏JAMSTEC正会員林為人1.はじめに水圧破砕法と円錐孔底ひずみ法による初期地圧測定を同一の水平ボアホールを利用して行った。測定場所は釜石鉱山の地下 290m 地点で,地質は花こう岩からなる。円錐孔底ひずみ法で得られた応力状態は,最大および中間の主応力軸がほぼ水平方向で,かつボアホール軸に対しそれぞれ直交および平行となっている。最小主応力軸はほぼ鉛直方向である。また,最大・最小主応力の比は 5 倍以上の特殊な応力状態であり,水圧破砕法での適用範囲を超えていた。あえてこの条件下で水圧破砕試験を行い鉛直応力の評価を試みた結果,水圧破砕によるき裂の再開口,閉口挙動と送水圧,パッカー圧,送水レートの経時変化に興味ある現象が見られたので紹介する。2.新しい水圧破砕法初期地圧測定のための水圧破砕法は,水圧により生成した岩盤の新たSheaveData loggerPCなき裂が再開口あるいは閉口するとき,観測される水圧変化から岩盤にWinch作用する応力を算定する方法である。新しい水圧破砕法では,き裂が再開口する瞬間の水圧 Pr(き裂再開口圧)と岩盤の最大主応力 SH,最小主応力 Sh との関係を (1) 式で定義するArmoredcableInjection tubing(φ4×φ2,SUS)1)。次に,き裂が再開口した後で水の圧入を急停止したとき,き裂先端が閉じ始める瞬間の水圧 Ps(き裂閉口圧)を(2)式で定義する2)P。き裂閉口圧は最小主応力 Sh と平衡状態にあManualpumpるものと仮定する。Pr = (3Sh-SH)/2Ps = ShTubing reelfor injection(1)PHigh pressuer hose(2)以上が新しい考え方に基づいた水圧破砕法の観測方程式で,二つの観測パラメータ Pr と Ps から岩盤の最大主応力 SH,最小主応力 Sh を求めるもPress. transducer for packerPress. transducer for InjectionSyringepumpのである。また新しい水圧破砕法では,コンプライアンスを考慮した測定システムも導入されており,高精度にき裂再開口圧 Pr を求めることがPackerできる。図 1 に新しい水圧破砕法に用いる測定システムの概念図を示す。Injection hole3.主応力比の大きい応力状態水圧破砕法では,その測定原理上ボアホール軸に直交する二次元平面での最大主応力 SH が最小主応力 Sh の 3 倍以上あるような主応力比の大きい岩盤の応力は測定することができない。このような応力状態では,(1)Packer式の右辺は零または負になることからき裂再開口圧が定義できなくなり,実際には一旦開いたき裂が完全に閉じなくなる現象が生じる。今回水圧破砕測定を行った現場はまさにこのように主応力比の大きな応力状態にある図1水圧破砕測定システムの概念図地点である。測定を行った場所は釜石鉱山の 550mL と呼ばれている花崗閃緑岩の岩盤に掘削された坑道の奥まった所にある幅 5m,高さ 10m の空洞内である。この空洞壁面からほぼ水平に削孔されたφ76mm のボアホール内の深さ約 27mの箇所で水圧破砕試験を実施した。このボアホールは,円錐孔底ひずみ法による初期地圧測定のために掘削されており,水圧破砕試験の直前に行われた円錐孔底ひずみ法による測定結果3)の概要は図 2 のようである。ボアホール軸に直交する鉛直面内の応力状態は,鉛直応力 4MPa に対し,水平応力 21MPa と 5 倍以上の主応力比が得られている。ボアホール壁面の水平側面では最大 9MPa の引張り応力が生じており,これは岩盤の引張り強度に相当する大きさである。Study on re-opening and shut-in behaviors under the large ratioYOKOYAMA, Tatsuya OYO Corporationof principal stresses in hydraulic fracturing testSAKAGUCHI, Kiyotoshi Tohoku UniversityITO, Takatoshi Tohoku UniversityLin, Weiren JAMSTEC55 4.き裂の再開口と閉口挙動き裂の再開口と閉口挙動Sh =4MPaMPa水圧破砕試験で得られた水圧破砕試験で得られた送水圧,パッカー圧,送水レート送水圧,パッカー圧,送水レート送水圧,パッカー圧,送水レートの一連の一連の経時変化を図を図 3 に示す。に示す。最初に注水区間を仕切るためにダブルパッカ最初に注水区間を仕切るためにダブルパッカーの圧力を設定する。このときのパッカー圧は,必要以上に大きくすボアホールると試験区間に人工き裂を生成する可能性があるため,予測される鉛AA点SH =21MPa直応力と同等程度の約 5MPa とした。次に,加圧用のシリンジポンプ内の空気を除去するための送水を行った後,50ml/min の送水レートで内の空気を除去するための送水を行った後,50ml/min試験区間を加圧した。送水圧が 6.8MPa に達したとき,急激な低下を示したため,この圧力が破砕圧であるものと判断した。一旦,送水圧を図 2約 0.7MPa まで下げた後 1 回目の再開口試験を行った。この後,パッカ円錐孔底ひずみ法で得られたボアホール軸に直交する鉛直面内の応力状態ー圧と再開口試験時での最大水圧との関係チェックするため,パッカー圧と再開口試験時での最大水圧との関係チェックするため,パッカー圧を 8MPa8MPa,4MPa,12MPa12MPa に変化させて再開口試験を行った。開口試験を行った。この水圧破砕試験で得らこの水圧破砕試験で得られた送水圧の経時変化送水圧の経時変化から最小主応力を求めから最小主応力を求めるとともに,るとともに,き裂の生成および生成および開閉挙動に開閉挙動について以下のことが推察された以下のことが推察された以下のことが推察された。 水圧破砕試験による初水圧破砕試験による初生的な人工き裂が生生的な人工き裂が生成し,いわゆる破砕圧が得られた。し,いわゆる破砕圧が得られた。 この破砕圧は,この破砕圧は,2 回目以降の再開口試験でのピーク圧力とほぼ同様であることから,図 2の A 点は,ほぼ岩盤の引張り強度に近い応力状態にあったものと思われる。 水圧破砕で生成したき裂は除圧後も完全に閉合していていないものと思われる。ないものと思われる。 1 回目の再開口試回目の再開口試験で,験で,き裂の先端がボアホき裂の先端がボアホール周辺のール周辺の応力集中領域内応力集中領域内にあり,送水圧にあり,送水圧図 3 主応力比が 5 倍の応力状態にある岩盤に水圧破砕法を適用の上昇過程で試験を中断した可能性がある。 したときの送水圧,パッカー圧,送水レートの経時変化0 2,3,4 回目の回目の再開口試験では送水圧に小さ再開口試験では送水圧に小さなピークが見られることから,き裂先端は未-50だ応力集中域の範囲内であった可能性が高い。-100-150求められた最小主応力は 4.8MPa で,,鉛直か-2005.おわりにわりに今回紹介した試験データ今回紹介した試験データだけでは,き裂の生では,き裂の生成・開閉挙動を解析するための情報としては不足である。今後も系統的な室内試験や現場実験今後も系統的な室内試験や現場実験あるいは数値解析を行い,き裂の挙動と送水圧dt/dP (s/MPa) 図 4 に示す 4 回目の再開口試験の回目の再開口試験の閉口圧から閉口圧からら 22°傾斜している。°傾斜している。22°き裂閉口圧裂閉口圧Ps = 4.8MPaMPa水圧破砕水圧破砕で生成したき裂生成ボアホール-250-300-350Sh =4.8MPa-4002345Pressure (MPa)図 4 き裂閉口圧の判読例6図 5 最小主応力の解析結果の経時変化の関係について解明していきたい。一方,今回使用した水圧破砕試験装置の送水系のコンプライアンスは5ml/MPa 以下であり,いわゆる剛性の大きなシステムであるが,図 3 でみられるとおりでみられるとおりパッカー圧パッカー圧の変化がの変化が送水圧変化変化に影響を与えている可能性も否定できない。そのため,送水圧の変化に影響を受けないパッカー構造についても検討する必要があるる必要があるものと思われる。と思われる。参考資料1) Ito T, K. Evans, K. Kawai, and K. HayashiHay ashi (1999), Hydraulic fracture reopening pressurpressuree and the estimation of maximumhorizontal stress, Int. J. Rock Mech. Min. Sci. & Geomech. Abstr., 36, 811-826.8112) Hayashi, K., and B. C. HaHaimsonmson (1991), Characteristics of shutshut-inin curves in hydraulic fracturingfracturing stress measurements anddetermination of in situ minimum compressive stress, J. Geophys. Res., 96(B11), 18,31118,311-18, 321.3) Sakaguchi K and T. Yokoyama (2015),, In-situsitu Stress Measurement at Shallow depth in the Vicinity of the Epicenter before andafter the 2011 TohokuTohoku-okioki EarthquakeEarthquake, 13th Int. Cong. on Rock Mechanics, Montreal, (USB(USB-memory).memory).56
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  • タイトル
  • 釜石鉱山における東北地方太平洋沖地震前後の地圧の繰返し測定
  • 著者
  • 坂口清敏・横山幸也・林 為人
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 53〜54
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100027
  • 内容
  • 0027G - 05第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月釜石鉱山における東北地方太平洋沖地震前後の地圧の繰返し測定東北地方太平洋沖地震地圧測定地震前後の地圧東北大学国際会員応用地質(株)JAMSTEC正会員正会員○坂口 清敏横山 幸也林為人1.はじめに2011 年 3 月 11 日に発生した Mw 9.0 の東北地方太平洋沖地震(以下東北地震)によって,東北地方は水平方向と上下方向(沈下方向)に数メートルの地殻変動を履歴した。このような大きな地殻変動は,浅所(地表下数百 m)地殻応力場にも大きな影響を及ぼしていると考えられる。本研究では,東北地震前後の浅所地殻応力場の経年履歴を明らかにするために,岩手県釜石鉱山において地圧測定を繰り返し実施してきた。本報では,東北地震発生の 20 年前から発生後 5 年目までの地圧の経年履歴について報告する。なお,東北地震後 5 年目の結果については,本稿執筆時点では地圧測定が未実施(2016 年 3 月 14 日~3 月 18 日実施予定)であるため,当日口頭で報告する予定である。2.測定場所および測定方法測定場所の釜石鉱山は,東北地震の震央から北西に約 170 km に位置しており,東北地震によるこの地域の地殻変動は,東北東へ 3.32 m の水平移動,0.5 m の沈降と記録されている。今回の測定に選んだ場所は,図 1 に示す 550 mL 主要坑道の奥部(坑口から約 5 km)にあり,坑道等の影響を受けない場所である。測定地点一帯は栗橋花崗閃緑岩で構成されており,均質等方弾性体と見做せる岩体である。測定方法は応力解放法に分類される円錐孔底ひずみ法である1), 2), 3)。本方法は地盤工学会の基準(JGS3751-2012)3)であり,ISRM (International Society for Rock Mechanics)の Suggested Method 2)でもある。釜石鉱山では,1991 年から円錐孔底ひずみ法により今回の測定地点近傍の 5 地点において地圧測定が実施されており(図 1)2),4), 5), 6), 7),東北地震前からの地圧データの履歴と東北地震後の地圧の履歴を同一精度で検討することが可能である。3.測定地点本研究の測定地点近傍の平面図を図 2 に示す。測定地点は,幅 5.5 m,高さ約 7 m の 2 つの拡幅坑道が隣接する場所に位置しており,測定は図中に太実践で示した 3 本のボーリングで行った。SKO-1 孔では,①20.06 m~⑤28.56 m の 5か所(以下それぞれ SKO-1-OC1~SKO-1-OC5,2012 年 2 月 27 日~3 月 1 日),SKO-2 孔では,①27.10 m,②27.60 mおよび③28.03 m の 3 か所(以下それぞれ SKO-2-OC1~SKO-2-OC3,2012 年 12 月 17 日~19 日),SKO-3 孔では,①27.10 m,②27.82 m および③28.17 m の 3 か所(以下それぞれ SKO-3-OC1~SKO-3-OC3,2014 年 3 月 10 日~12 日)で行った。いずれの測定点でも良好な解放ひずみが得られた。ただし,SKO-1-OC1 および SKO-1-OC2 は,坑道の影響が及んでいる可能性もあると判断し検討対象から除外した。また,SKO-1-OC5 の測定については,測定終了後の回収コア観察から孔底形状の整形不足が判明したので,これも除外することにした。測定点の被りは約 290 m である。4.結果と考察図 3 に主応力値の経年変化を示し,図 4 に鉛直応力σv の被り圧 pv に対する比の経年変化を示す。東北地震前後の主応力値には大きな違いがみられる。東北地震後 1 年目の主応力値は,地震前に比べて 2 倍~4 倍になっており,鉛直応力は被り圧の約 2.4 倍になっている。しかしながら,地震後 2 年目になると,最大主応力は,東北地震前よりも依然として大きい値ではあるものの減少しており,中間主応力,最小主応力および鉛直応力は東北地震前とほぼ同じ値にまで戻っている。東北地震後 3 年目の主応力値および鉛直応力は,地震前とほぼ同じレベルに戻っている。図 5 は Yagi and Fukuhata (2011) 8)による東北地震における 5 m 以上のすべりの分布のコンター図に Ye et al. (2012) 9)に倣って三陸沖低地震滑活動域(Sanriku-oki low-seismicity region (SLSR))を重ねたものである。東北地震による滑りが小さな領域(5 m 未満の滑り)は釜石沖にコの字型に分布している。また,この領域は SLSR に含まれている。釜石地域は東北地震の滑り域の西側外縁に位置しているが,釜石沖のコの字型の領域で滑りが止まったと推察される。図 6 は,釜石沖で発生した地震の規模の経年変化を示している10)。同図より,東北地震前は,約 5.5 年おきに釜石沖で地震が発生しており,その規模は M = 4.7~5.1 であった。しかしながら,東北地震の後数か月間はこれらの地震の発生間隔は短くなり(地震数の増加),その規模は大きくなっている。さらに時間が経過すると,地震の発生間隔は次第に長くなり(地震数の減少),その規模も東北地震前とほぼ同規模に戻っている。これらの事実から以下のようなことが推察されよう。「東北地震後 1 年目の応力値の増大の原因は,釜石沖の滑り挙動(滑りが止まった)に依るものである。こうして地殻応力が増加した結果,釜石沖での地震が増加した。頻発して発生した地震により地殻応力が解放され,釜石鉱山Periodic measurement of in-situ stress at Kamaishi mine beforeSAKAGUCHI, Kiyotoshi Tohoku Universityand after the 2011 Tohoku-oki earthquakeYOKOYAMA, Tatsuya OYO Co.LIN, Weiren JAMSTEC53 における東北地震後 1 年目以降の応力値は減少した。結果として,地震の数が減少した。」この推察は,釜石鉱山における地圧の経年変化の理由を完全に説明している訳ではないが,巨大地震と浅所地殻応力の関係を説明できる可能性を示唆している。5.おわりに釜石鉱山における地圧の繰返し測定から,浅所地殻応力測定からも地震と応力の関係を検討できることを示した。参考文献1) 坂口清敏ら, Journal of MMIJ, 110, 331-336, 1994, 2) K. Sugawara and Y. Obara, Int. J. Rock Mech. & Min. Sci. 36, 307-322,1999, 3) 地盤工学会, 地盤工学会基準, JGS3751-2012, 2012, 4) 坂口清敏ら, Journal of MMIJ, 111, 283-288, 1995, 5) 核燃料サイクル開発機構, JNC TN7410 99-001, 1999, 6) 菅原勝彦, 尾原祐三, 資源・素材講演要旨集, 1128-1133, 1996, 7) 坂口清敏ら, Journal of MMIJ, 126, 418-424, 2010, 8) Yagi, Y. and Y. Fukahata, Geophys. Res. Lett., 38, 2011, 9) Ye, L. et al., J. Geophys.Res., 117, 2012, 10) Ariyoshi, K. et al., Geophys. Res. Lett., 2014図 3 主応力値の経年変化図 1 釜石鉱山 550 mL 主要坑道平面図と測定地点図 2 測定ボーリングの配置と測定点図 4 鉛直応力と被り圧の比の経年変化図 6 釜石沖地震の発生頻度とその規模 10)左:1955 年~2014 年,右:2011 年~2014(拡大図)図 5 東北地震によるすべり域と SLSR8), 9)54
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  • タイトル
  • 従来式(大コンプライアンス)水圧破砕法による初期地圧測定-岩石引張り強さを適用した再解析の例-
  • 著者
  • 小村健太朗
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 51〜52
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100026
  • 内容
  • 0026F - 06第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月従来式(大コンプライアンス)水圧破砕法による初期地圧測定-岩石引張り強さを適用した再解析の例-水圧破砕 引張り強さ 初期地圧防災科学技術研究所正会員 小村健太朗1. はじめに今回,地盤工学会「水圧破砕法による初期地圧測定法の基準化委員会」で策定された基準案では,水圧破砕測定システムにおいて,コンプライアンスの小さいことが必要とされている.しかし,過去の水圧破砕法による初期地圧測定には,コンプライアンスの大きいシステムによるデータが多く存在し,そのままでは初期地圧測定と基準を満たさず,あらたに信頼性に疑問が生じてしまう.そこで,それら過去のデータを生かし,信頼性を回復する試みとして,孔井の岩石引張り強さを推定し,き裂再開口圧のかわりに破砕圧を用いて初期地圧を再解析した事例を紹介する.2. 水圧破砕データ再解析の考え方今回策定された基準案で示された新たな重要な点は以下のように考えられる.(a)試験区間に送水して昇圧する際のコンプライアンス(試験区間までの部分の水圧を単位圧力上昇させるために必要な送水量(水の体積))が小さいこと.そうしないと,き裂再開口時の試験区間の圧力変化を精度よく見極めることが困難にある(Ito and Hayashi,1993; Ito et al., 1999).(b)ブレ-クダウンで生じたき裂は完全には閉じてはおらず,孔内水がき裂のすきまに進入していること.そのため,き裂再開口時には,き裂の間隙水圧は孔内水圧,つまり き裂再開口圧に等しい(Ito and Hayashi, 1994).結果,き裂再開口圧 Pr,き裂閉口圧 Ps から,孔井軸に直交する面内での水平最大主応力を SH,水平最小主応力を Sh,鉛直主応力 Svを求める式は,岩石密度をρs,重力加速度を g,深度を z とすると,以下のようになる.SH=3Ps-2Pr(1)Sh=Ps(2)Sv=ρsgz(3)しかし,過去のコンプライアンスの大きい水圧破砕データでは,き裂再開口圧の読み取りの精度が問題になりうることから,(1)式を適用することは困難になる.替わりに,ブレークダウン時には,き裂再開口時の圧力変化が急激で,コンプライアンスが大きくても,破砕圧を読み取れることを前提として,以下の破砕圧の式を適用することを考える.Pp はブレークダウンする前の岩盤の間隙圧,T は孔内岩石の引っ張り強度である.SH=3Ps-Pb + T-Pp(4)ここで,(4)式を適用するにあたっては,岩石引っ張り強度をいかに推定するかが課題となる.実際のボーリングコア試料が残っていれば岩石試験を行い,残っていなければ,地質柱状図から同等の岩石の引っ張り強度を文献等から引用してくる必要がある.もともと,水圧破砕法では,(1),(2)式で岩石引っ張り強度を用いずに,水平主応力が求まることが有効であったが,コンプライアンスの大きい場合はその限りではない.なお,(1)式は,ISRM Suggested Method とは異なり,(b)の議論に基づき,今回の基準案で新たに提起された日本独自の式で,従来はSH=3Ps-Pr-Pp(5)とされていた.3. 水圧破砕データ再解析の例今回,再解析した水圧破砕データは,和歌山県新宮市の深度 550m のボーリング孔で,陸上での原位置応力測定から,沖合の南海トラフ巨大地震の発生機構を考察するために実施されたものである.孔径 159mm から 123mm の孔井で,地表からドリルパイプを通して試験区間に送水し,地表で送水レート,水圧を計測したため,コンプライアンスは大きいものとなる.従来の,き裂再開口圧,き裂閉口圧の(5),(2),(3)式から初期地圧を求めた結果は池田他(2001)に報告されている.それらを元に掘削後のボーリングコア試料のブラジリアンテストの結果を岩石引っ張り強度とみなして,再解析を行った.このほか,別の活断層近傍の孔井でコア試料を円筒状に加工し,くりぬいた円孔でミニチュアの水圧破砕を実施して岩石引っ張り強度を測定し,適用した例が Yamashita(2010)に報告されている.コア試料はほぼ均質な泥岩砂岩互層で,ブラジリアンテストから引っ張り強度は 4.1MPa 一定とした.また,孔内計測から,間隙圧は静水圧に等しいとした.破砕圧,き裂閉口圧は池田他(2001)に準拠し,(2),(3)式を適用して水平最大主応力,水平最小主応力を求めた.鉛直主応力は,孔内検層から密度 2.5g/cm3 とし,被り圧として計算した.図 1 に水圧破砕データとして,時間-圧力曲線の例(深度 192.5m)を示した.図 2 に応力値の深さ分布を示した.鉛直応力は共通である.池田他(2001)に比べると,深度とともに応力の増加する傾向は同等に見える.一部,増加傾向からずれて,応力値の低下する地点があるが,岩石引っ張り強度の不均質が影響している可能性がある.ちなみに,水平主応力方位を求めるために実施した型取りパッカーのスケッチの例(深度 192.5m)を図 3 に示す.水平最大主応力Measurement of initial state of ground pressure by hydraulic fracturing method with large compliancemeasurement system- Case study of re-analysis by means of application of rock tensile strength -51KentaroOmura, NIED 方位は,おおよそ南-北方位となった.4. おわりに岩石引っ張り強度をもちいて,従来のコンプライアンスの大きい場合の水圧破砕データの再解析を試みた.たとえコア試料の岩石試験データがあっても,岩石引っ張り強度を精度良く見積もることは簡単ではなく,さらにコア試料がない場合は文献等から推定する他ないため,再解析には慎重な考察が必要である.それでも,貴重な水圧破砕データを評価する方法を追求ことは意義深いと考えられる.図 1 水圧破砕データの例図 2 再解析による初期地圧の深さ分布(白抜).池田他(2001)の従来の解析(黒塗)との比較.図 3 型取りパッカーのスケッチの例(192.5m).参考文献:池田隆司・小村健太朗・飯尾能久・石井紘・小林洋二・西上欽也・山内常生: 南海トラフ地震に向けた陸域での地殻応力・歪測定,地学雑誌,110-4, 544-556, 2001.Ito, T., Evans, K., Kawai, K. and Hayashi, K.: Hydraulic fracture reopening pressure and the estimation of maximum horizontal stress, Int. J. RockMech. Min. Sci. & Geomech. Abstr, Vol.36, pp.811-826, 1999.Ito, T. and Hayashi, K.: Analysis of Crack Reopening Behavior for Hydrofrac Stress Measurement, Int. J. Rock Mech. Min. Sci. & Geomech. Abstr.Vol.30, No.7, pp.1235-1240, 1993.Ito, T. and Hayashi, K.: Relation between reopening pressure and tectonic stresses for hydraulic fracturing tectonic stress measurement. Proc. 8th Int.Cong. Computer Methods and Advances in Geomech. Morgantown: pp.1591-1596, 1994.Yamashita, F., Mizoguchi, K., Fukuyama, E. and Omura, K.: Reexamination of the present stress state of the Atera fault system, central Japan, basedon the calibrated crustal stress data of hydraulic fracturing tests obtained by measuring the tensile strength of rocks, J. Geophys. Res., 115, B04409doi:10.1029/2009JB006287, 2010.52
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  • タイトル
  • ISO/TC221国内専門委員会活動報告
  • 著者
  • 椋木俊文・宮田喜壽
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 49〜50
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100025
  • 内容
  • 0025M - 09第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月ISO/TC221 国内専門委員会活動報告-ジオシンセティックス関連規格に関する現状と今後の展開-国際規格ジオシンセティックス地盤工学会ISO / TC221 国内専門委員会委員長幹 事宮田椋木喜壽俊文ジオシンセティックス技術に関する国際規格の現状と TC221 の現状2004 年におけるジオテキスタイルおよびその関連製品の年間貿易数値は,北米 50 億 m2(輸出 10%),欧州 40 億m2(輸出 50%),アジア 15 億 m2(輸入 30%),その他 20 億 m2(輸入 40%)となっており,全体で既に 100 億 m2 を超えている.すわなち,欧州では生産量の半分が輸出という状況にあり,アジアにおける貿易数値も急速に伸びている.また GCL を含むジオメンブレン製品については,輸出入の割合は把握できていないが,北米 6 千万 m2,欧州 4 千万m2(輸出 50%),アジア 1 千万 m2(輸入 30%),その他 1 千5百万 m2(輸入 40%)となっている.TC221 はジオシンセティック製品の標準化を制定する技術委員会であり,6つのワーキンググループがある.活動は,毎年 1 回の全体会議開催の他,個別の WG が開催されている.JGS では表1に示す委員会を設置し,これに対応している.TC221 で規格済みの試験法,現在改訂審議中の規格をそれぞれ表2,3に示す.JIS あるいは JGS 基準の作成・改訂に必要となる最新の技術情報を入手するため,地盤工学会 TC221 国内専門委員会(委員長:宮田喜壽)から1名が平成 27 年 11 月 18 日~19日にチェコ・プラハのチェコ規格協会で ISO/TC221(ジオシンセティックス)2015 WG4・WG6 会議に派遣された.12現在の審議状況WG4 では,鉛直ドレーン材(PVD: Prefabricated Vertical Drain)を波状に変形させた状態で通水性能を調べる最終国際規格案(FDIS 18325)とジオシンセティックスの開孔径試験の改訂について議論された.前者は,拘束圧作用条件での長表1ISO/TC221 国内専門委員会の名簿(50 音順)委員長:宮田喜壽(防大),委 員:赤井智幸(大阪府産技研),大谷 順(熊大),加納 光(坂井化学工業),熊谷浩二(八戸工大),木幡行宏(室蘭工大),志々目正高(ボルクレイ・ジャパン),篠田昌弘(防大),島岡隆行(九大),中村 努(苫小牧工専),長束 勇(島根大),鍋島康之(明石高専),平井貴雄(三井化学産資),桝尾孝之(太陽工業),明嵐政司(土研),横田善弘(前田工繊),幹事:椋木俊文(熊大)表2ISO TC/221関連の規格(2016年3月現在, *は2015-2016に改訂)規格番号対象*規格名【和訳】ISO 9862:2005GSSampling and preparation of test specimens【試験供試体のサンプリングと作製】ISO 9864:2005GT&RPTest method for the determination of mass per unit area of geotextiles and geotextile-related products【単位面積当たりの質量の測定】ISO 10321:1992GTXTensile test for joints/seams by wide-width method【継ぎ目/縫い目に対する広幅引張り試験】ISO 10769: 2011*GCBISO 10772: 2012GTXDetermination of water absorption of bentonite【ベントナイトの含水量測定法】Test method for the determination of the filtration behaviour of geotextiles under turbulent water flowconditions【乱流条件下における不織布のフィルター挙動評価のための試験法】ISO 10773: 2011*GCBDetermination of permeability to gases【ガス透過性の評価】ISO 10776: 2012GT&RPDetermination of water permeability characteristics normal to the plane under load【拘束圧条件での垂直透水性能の評価】ISO 12236:2006GSStatic puncture test (CBR test)【 静的貫入試験(CBR法)】ISO 12957-2:2005*GSDetermination of friction characteristics Part 2: Inclined plane test【摩擦特性の測定第2部: 傾斜試験】ISO 13426-2:2005GT&RPStrength of internal structural junctions Part 2: Geocomposites【剥離強度 第2部: ジオコンポジット】ISO 13428:2005GSDetermination of the protection efficiency of a geosynthetic against impact damage【衝撃に対するジオシンセティックスの防護能力の測定】ISO 13431:1999GT&RPDetermination of tensile creep and creep rupture behaviour【引張りクリープ及びクリープ破壊特性の測定】ISO 13433:2006GT&RPDynamic perforation test (cone drop test)【動的貫入試験(コーン落下試験)】Method for installing and extracting samples in soil, and testing specimens in laboratory【土中,室内試験の供試体中への供試体の敷設と取出し方法】Procedure for simulating damage under interlocking-concrete-block pavement by the roller compactorISO/TS 19708:2007GSmethod【ローラコンパクタ法によるインターロッキングブロック舗装下の損傷試験】Guidelines for the determination of the long-term strength of geosynthetics for soil reinforcement【地盤補ISO/TR 20432:2007GS強材として用いられるジオシンセティックスの長期強度の評価に関するガイドライン】Determination of compression behaviour -- Part 1: Compressive creep properties【圧縮挙動の評価:第1ISO 25619-1:2008GS編 圧縮クリープ挙動の評価】(対象:GS=Geossynthetics, GT&RP=Geosynthetics and related products, GTX=geotextiles, GCB: Geosynthetic clay barriers)ISO 13437:1998GT&RPAction Report of JGS Technical Committee for ISO/TC221MIYATA, Yoshihisa & MUKUNOKI, ToshifumiJGS Technical Committee for ISO/TC22149 表3現在改訂審議中の主な規格規格番号ISO/FDIS/FV9863-1ISO/FDIS 10318-1ISO/FDIS 10318-2対象*GS規格名Determination of thickness at specified pressures 【所定圧下の厚さの測定第1部: 単層】GSGSISO 10722: 2007GT&RPISO/FDIS 10319GSISO 11058:2010GT&RPISO 12956:2010ISO 12957-1:2005ISO 12958:2010ISO 12960: 2015ISO 13426-1:2003ISO/TS13434:2008*ISO 13438:2004*ISO/FDIS 13427ISO/NP TS 13434ISO/AWI 13438ISO/TR 18198ISO/DIS 18325ISO/TR 12956:2010ISO/TR 18228-1ISO/TR 18228-2ISO/TR 18228-3ISO/TR 18228-4ISO/TR 18228-5ISO/TR 18228-6ISO/TR 18228-7ISO/TR 18228-8ISO/TR 18228-9ISO/TR 18228-10ISO/DIS 25619-2GT&RPGSGT&RPGT&RPPart 1: Terms and definitions【用語と定義】Part 2: Symbols and Pictograms【記号と凡例】Index test procedure for the evaluation of mechanical damage under repeated loading -- Damage caused bygranular material【繰り返し載荷条件下での力学的損傷の評価法に関するインデックス試験:粒状材料による損傷】Wide-width tensile test【広幅引張り試験】Determination of water permeability characteristics normal to the plane, without load【無載荷での垂直方向透水性能の測定】Determination of the characteristic opening size【見掛けの開口径の測定】Determination of friction characteristics Part 1: Direct shear test【摩擦特性の測定第1部: 直接せん断試験】Determination of water flow capacity in their plane【面内方向通水性能の測定】Geotextiles and geotextile-related products — Screening test method for determining the resistance to liquidsStrength of internal structural junctions Part1: Geocells【剥離強度 第1部: ジオセル】GSGuidelines for the assessment of durability【耐久性評価のためのガイドライン】GT&RPGSGSGT&RPScreening test method for determining the resistance to oxidation【酸化抵抗性に対する予備試験方法】Abrasion damage simulation (sliding block test) 【磨耗シミュレーション(ブロックすべり試験)】Guidelines for the assessment of durability 【耐久性評価のためのガイドライン】Screening test method for determining the resistance to oxidation【酸化抵抗性に対する予備試験方法】Guide to the determination of long term flow of Geosynthetic drainsTest method for the determination of water discharge capacity for prefabricated vertical drainsDetermination of the characteristic opening size【見掛けの開口径の測定】Part 1: Design using geosynthetics scope, definitions and notations【定義と表記法】Part 2: Design using geosynthetics for separation【分離】Part 3: Design using geosynthetics for filtration【ろ過】Part 4: Design using geosynthetics for drainage【排水】Part 5: Design using geosynthetics for stabilization【安定化】Part 6: Design using geosynthetics for protection【保護】Part 7: Design using geosynthetics for reinforcement【補強】Part 8: Design using geosynthetics for surface erosion control【表面侵食】Part 9: Design using geosynthetics as a barrier【遮水】Part 10: Design using geosynthetics for stress relief in asphalt overlays【アスファルト舗装における応力低減】Determination of compression behaviour -- Part 2: Determination of short-term compression behaviour【圧縮挙動の評価:第2編 短期圧縮挙動の評価】GSGT&RPGSGSGSGSGSGSGSGSGSGSGS期排水性能を 2 種類の極端な動水勾配条件で調べるもので,供試体を被覆するメンブレンの厚さと,試験水の溶存酸素量を報告事項に加える件,拘束圧や動水勾配の条件設定に関する中間報告がなされた.また,後者では,製品が厚い場合,ふるいの振とう条件によって結果のばらつきが大きくなることや,ふるいを通過させる粒状材料の規定が緩すぎるという現行法の問題点について議論された.一方,WG6 では,表-3 の ISO/TR 182228 に示すように,分離,ろ過,排水,安定化,保護,補強,表面浸食保護,封じ込め,アスファルト舗装の応力低減を対象に,現行設計法の基本的考えを総括し,試験法の正しい活用法をまとめた技術報告書(TR)の出版を目指した活動が行われていた.3我が国と諸外国との連携状況WG6 の会議において,派遣者はプロジェクトグループ(PG)-3「ろ過(リーダー:Blond 氏,カナダ)」と PG-4「排水(リーダー:Rimoldi 氏,イタリア)」に参加した.PG-3 会議では,規格案をベースに,各国の基準との大きな齟齬が生じないように議論が進められた.会議中,基準が英語になっていれば,参考図書にあげ日本の立場をより明確にできるという趣旨の意見をもらった.現在,地盤工学会が進めている基準の英訳作業は大変重要な意味を持っていることを改めて感じた.一方,PG-4 では,土の透水性に応じて排水材の選定と排水層の配置を合理的に行うガイドラインづくりを目標にした活動を行っている.PG-4 の会議では,廃棄物処分場などの地盤環境工学的アプリケーションを対象に,適用ケースをどこまでカバーするか,その内容をどこまで詳細に記述するかが議論になった.結果として,最初はできるだけ広範囲かつ詳細に記述し,他の PG の成果物を参考にしつつ,内容をスリム化するという作業方針が決まった.また次回の会議以降は軟弱地盤のバーチカルドレーン工法について議論することに決まった.ジオシンセティックスの排水性能を考慮した設計ということになると,ドレーンレジスタンス(排水抵抗)を考慮した設計法を考えなければならない.我が国は,この方面で十分な研究成果と現場への適用実績をあることから,次回以降はそれらの成果を紹介し,わが国の優れた技術を国際規格に反映できるようにアピールしたいと考えている.次回は 3 月にイタリアでの総会開催が予定されており,合わせていくつかの WG 会議が開催予定である.TC221 では,設計法に関する新規規格や一斉試験に基づく規格の改訂が進められていることから、今後もその動向に注視する必要がある.<参考文献> ISO/TC221(ジオシンセティックス)2015 WG4&6 会議,地盤工学会誌(掲載予定),2016.50
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  • タイトル
  • ISO/TC190(地盤環境)の審議状況 -2015年度-
  • 著者
  • 古川靖英・川端淳一
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 47〜48
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100024
  • 内容
  • 0024A - 07第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月ISO/TC190(地盤環境)の審議状況 -2015 年度-竹中工務店鹿島建設1.技術研究所技術研究所正会員○古川靖英正会員川端淳一はじめにISO/TC190 委員会(地盤環境)では,ISO/TC182 委員会(地盤調査と試験法),ISO/TC221 委員会(ジオシンセティクス)と並行して,地盤環境分野における分類,用語の定義等に関する標準化を進めている.地盤工学会は TC190 国内審議委員会であり,国内審議委員会は約 40 名のエキスパートから構成されている.6つの各小委員会はメール審議やオンラインミーティング,Face to Face のミーティングを元に審議を進めている.本報では 2015 年度の審議状況を中心に報告する.技術委員会TC1Technical CommitteeScrew thread (ネジ)・TC190Soil quality (地盤環境)・TC293Feed machinery (給鉱機)図1小委員会TC190 Sub CommitteeSC1Terminology 評価基準,用語,コード化SC2Sampling 地盤環境調査用のサンプリングSC3Chemical methods 化学的方法SC4Biological methods 生物学的方法SC5Physical methods 物理学的方法SC7Soil and site assessment 土壌とサイトの評価ISO/190 委員会および小委員会の概要(再掲)2. ウィーン総会概要2015 年の総会は 10 月 5 日から 9 日にかけて,オーストリアのウィーンで開催された.開催場所はオーストリア標準局(Austrian Standards)であり,参加国はこれまで同様,仏,英,独,デンマーク,オランダ,フィンランド,スウェーデン,スイス,ノルウェー,チェコのヨーロッパ勢中心であり,総勢 90 名が参加した.非 EU 圏からは日本,韓国,オーストラリア,ケニアが参加し,日本からは 10 名の委員が参加した.分科会(SC)としては,SC1,2,3,4,7 の 5分 科 会 の 会 議 が 開 催 さ れ た . SC1 分 科 会 ( 基 準 の 評 価 , 用 語 , コ ー ド 化 ) で は , SC1/WG 1 Terminology やSC1/WG3Datacodification の会合が開催された.SC2 分科会(サンプリング)では,SC2/WG10 サンプリングの一般的側面の会合が開かれた.SC3 分科会(化学試験法)では,SC3/WG1 微量元素,SC3/WG4 シアン化物,SC3/WG6 有機汚染物質,SC3/WG10 スクリーニング試験法,SC3/WG 11 爆発物の会合が開催された.SC 4 分科会 (生物学的試験法)では,SC4/WG2 土壌動物,SC4/WG3 土壌植物,SC4/WG4 微生物の 3 つの会合が開かれた.SC7(土壌およびサイト評価)では, SC7/WG4 人への暴露,SC7/WG6 溶出試験,SC7/WG8 バイオアベイラビリティ,SC7/WG11 土壌機能,の会合が開催された.SC7 においては,本年はコンビナーの都合等により,WG3,WG10,WG12 が開催されなかった.また,2015 年度の TC190 の新たな動きとして,TC190 内に WG1 Climate Change に関わる小委員会が設置されたことが挙げられる.3. 日本からの提案・SC2 のアンブレラスタンダードにおいて,日本の環境省が推奨している土壌ガス調査の手法が認められるように提言している 1).・SC3WG10 の地盤環境スクリーニングにおいて,引き続き,日本がコンビナーを務めると共に,新たに開設された SC1Climate Change についても参加している.・SC7WG6 での活動として,ISO TS21268-3 カラム試験について日本がプロジェクトリーダーとなり,リングテストを行うと共にドイツなどと協同で規格化を進めている 2).4. 今後日本に影響を与える審議中の規格について・SC3:WG4 にて環境中シアン分析に関する基本情報と指導文書として,ISO 技術レポートとしてまとめている.特に各種シアンの定義,シアンの分析法及び分析への影響要因等を中心にとりまとめている.2015 report on JGS/ISO/TC190 committee;Yasuhide Furukawa (Research and Development Institute, Takenaka Corporation)Junichi Kawabata (Institute of Technology, Kajima Corporation)47 ・SC5:SC としての活動はないが,ISO11461,ISO11274,ISO11275,ISO11276,ISO16586 など,過去の規格について,SRが多数あり,SC3WG14 にて審議が開始される見込みである.・SC7:TRIAD アプローチやサステイナブルレメディエーションに関わる規格化が進められている.また,サイトコンセプトモデルについての規格化の審議が開始された.5. 国の政策に関わる規格化の動き先述の通り,TC190 で審議されている規格は,従来の SC3WG10 に代表される各物質の計測手法や土壌試料の採取手法など技術的な規格に類するものが多い.しかし,近年,リスクベースアプローチと関わりの深いサイトコンセプトモデルの審議開始やサステイナブルベースアプローチに関わる規格化等の議論が出てきている.これらの規格は汚染土壌サイトにおける対策方針の検討や戦略に関わる規格であり,各国の土壌に対する政策やその考え方に関わるものが多い.国別では,日本や韓国が従来通りの技術的な ISO 規格に対するスタンス(いわゆるスタンダード化を目的)で審議や新規 WG の設立を進めている一方で,ヨーロッパ各国は「自国の“政策や考え方”についても,他国で適用できる下地を作っておきたい」という意図が感じられる.例えば,TRIAD アプローチはオランダが積極的に進めてきた方法であり,サステイナブルレメディエーションはイギリスが主体的に取り組んできたものである.いずれも DIS ステージにあり,活発な議論が進められている.図 2 に TRIAD アプローチの概要を,図 3 にサステイナブルレメディエーションの概要を示す.・TRIAD アプローチ:生態学,生態毒性学,化学の 3 つの側面から土壌汚染に関するサイト固有の生態リスク評価を行う手法・サステイナブルレメディエーション:土壌汚染サイトのマネジメント手法であり,環境,経済,社会の指標に関して,効果と利益を最大限にし,バランスの良い意思決定を選択しようとする考え方社会生態毒性学・Lab.でのテスト統合評価・工事に伴う労災発生率・騒音や振動・コミュニティ参画化学・暴露と生物濃縮環境持続可能性・外部環境負荷(CO2、PM10等)・汚染物質の量生態学・モニタリング・フィールド調査経済・施工コストや維持費・地価上昇ガバナンス:法の支配などの広義な原則、ステークホルダー参加やモニタリング強化といった原則図 2 TRIAD アプローチの基本概念図3サステイナブルレメディエーションの概要これらの動きに対し,日本としても,各国の政策動向を注視すると共に,それぞれの規格のもつ背景情報や専門技術を保有したエキスパートの積極的な参加が望まれる.また,日本特有の課題として,海外の機関と協調して,リングテストを行う場合、テスト用土壌の輸送(特に国内への移動)が必要となるが,検疫等の必要性から,土壌を日本に持ち込んだ上で,試験を行うことが極めて難しいことが挙げられる.6. 謝辞(社)地盤工学会 TC190 国内専門委員会および(社)土壌環境センターTC190 部会の委員の皆様および(社)土木学会ISO 検討委員会,(社)地盤工学会 ISO 検討委員会,地盤工学会事務局の皆様には,積極的な参加に感謝すると同時に,引き続きご支援をいただきたく,お願い申し上げる.また,経済産業省,土木学会,日本建設業連合会にご支援いただいているおかげで,本活動が成り立っている.ここに記して,関係各位に謝意を表します.7. 参考文献1) 中島誠,保高徹生,平田桂,肴倉宏史,田本修一,ISO/TC190 部会,ISO/TC190/SC2(サンプリング)における ISO18400 シリーズの審議状況と土壌ガスサンプリング規格草案における日本としての課題,第 21 回地下水土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集,S3-11(2015)2) 保高徹生,肴倉宏史,田本修一,ISO/TC190 部会,ISO/TC190 におけるカラム試験の国際標準化への日本取り組み,第 21 回地下水土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集,S5-08(2015)48
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  • タイトル
  • 室内土質試験方法の国際規格審議状況-2015年度-
  • 著者
  • 豊田浩史
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 45〜46
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100023
  • 内容
  • 0023A - 08第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月室内土質試験方法の国際規格審議状況-2015 年度-ISO 規格室内試験 土質試験長岡技術科学大学 国際会員 ○豊田 浩史1. はじめにCEN/TC341/WG6(Laboratory tests on soils:室内土質試験)の会議が 2009 年度からはじまり,2015 年度は,第 13 回会議が 2015 年 5 月 18, 19,20 日にオスロ(ノルウェー)にある NGI(ノルウェー地盤工学研究所)において,第 14 回会議が 2015 年 10 月 21, 22, 23 日にリスボン(ポルトガル)にある LNEC(国立土木研究所)において開催された。会議タイトルからわかるように,ここでは CEN(欧州標準化委員会)が国際規格の策定作業を行うことになっている。これは,本件が ISO/TC182/SC1 での投票で CEN リードのウィーン協定適用となったためである。メンバーは,議長国であるイギリス,ベルギー,フィンランド,フランス,ドイツ,ギリシャ,オランダ,ノルウェー,ポルトガル,スイス,スウェーデン,スペインの欧州各国と,日本である.議長国のイギリスからはオブザーバーも含め計 3 名のメンバーが登録されている。USA をはじめとする環太平洋諸国が参加していないので,日本は ISO からの正式オブザーバーという立場から積極的に意見を発して,欧州のみの考え方に偏った国際規格にならないよう努力が必要である。ここで議論する規格は,表-1 に示す 12 の ISO/TS(Technical specification)である。表には,対応する JIS 規格および JGS 基準も併せて示してある。この ISO/TS は,2004 年に策定されており,正式な ISO 規格にするための作業を行っている。2016 年2 月現在で,17892-1,17892-2,17892-3 が ISO 規格となった。その他,17892-9 までの改訂作業を進めてきており,ISO規格とするための事務手続きを行っている。2. 会議の進め方現在の ISO/TS 17892-1~12(表-1 参照)に対して,所定の様式による意見の作成が求められた。作業してみるとわかるが,我が国の規格・基準にすべて一致させることは不可能であり,我が国にとって影響が大きい,または,我が国の方法および考え方のほうが優れていると考えられることを中心に,意見書を作成する方針とした。また,どちらが優れているかは不明であっても,できるだけ我が国の記述例を紹介できるように努めている。我が国の規格・基準を紹介するに当たって,口頭で説明するだけでなく,英語版の規格・基準を配布できれば大変有効である。しかしながら,JIS および JGS の英語版のほとんどは,かなり古い時期に作られてから全く改正作業が行われていなかった。そこで基準部会においては,英語版についても最新の規格・基準と対応するよう,整備する作業に取り組んでいる。写真-1 に会議の様子を示す。3. 議論の内容各国の基準整備の状況によると,独自の基準を持っていない国も多いようである。日本はここで取り扱うほとんどのISO/TS について独自の基準を持っていることと,現在の案について 8 割方賛成できるものの,強く変更を望むところも数ヶ所あることを説明している。今年度は,投票に出すために確認を行った,土の粒度の測定,段階載荷による圧密試験,圧密三軸圧縮試験,液性限界,塑性限界試験についての,代表的検討結果を紹介する。(1) 土の粒度の測定投票の結果,各国から 17 ページに及ぶ質問事項が出て,この修正の代表的なものを記述する。なお,ふるいの目開きは,多数決でどうしても CEN で使われているものになってしまうことをご容赦願いたい。・沈降分析に使う試料の最大粒径であるが,イギリスが 0.063mm,スイス,ドイツが 0.5mm,スウェーデン,フィンランド,ベルギー,日本が 2mm と大きな違いがあった.0.063mm~2mm の間で許される記述とした。・通常は 1 つの試料を準備して,それに対してふるい分析と沈降分析を行うが,ドイツから同一試料を 2 つ準備して,並行してふるい分析と沈降分析を行い,最後に結果をまとめる手法(Combined analyses と記述)の提案があった。これを記述することを認め,ドイツが最終案をまとめることとした。(2) 段階載荷による圧密試験投票の結果,各国から寄せられた意見に対して,回答および修正案のうち代表的なものを記述する。投票では反対票(フランス)が出ており,意見の数も 100 件を超えた。複雑な試験になると各国少しずつ仕様に違いがあるようである。・ドイツより圧密容器の寸法の詳細を記述するように意見が出されたが,ある程度自由度を持たせるべきとの意見が強く採用しなかった。載荷板と軸との接触部分についても図面には記さないこととした。・水を吸収して膨潤する供試体以外は,多孔板を飽和させておく作業となっていたが,不飽和土など幅広い試料に対しCouncil status for ISO Standardization of Laboratory tests onTOYOTA, Hirofumi (Nagaoka University of Technology)soils -2015-45 て適用できるように,飽和作業を削除して乾燥した多孔板で試験を行うこととした。・供試体の最大粒径について,BS(英国規格)と DIN(ドイツ規格)では供試体高さの 1/5 以下,ASTM(米国規格)では 1/10 以下である。現在,三軸試験では直径の 1/6 以下としてある。多数決をとって,1/5 以下とした。・試験方法がメインということで,Cc,Cs,cv の求め方は付録に記載することとした。二次圧密係数 Cについても記載されている。・圧密量-log t 関係では,日本の規格で使われている曲線定規法は記載されずに,他の手法(欧州では標準的)が記載されている。(3) 圧密三軸圧縮試験TC341 へ規格案を提出するための最終確認を行った。・メンブレン補正は,日本とドイツを除くすべての国が必須とする意見であった。さらに,圧密時からメンブレン補正を行うように書き換えた。同様に粘土試料に巻くフィルタペーパーの補正も行うこととしたが,こちらは BS 1377Part8 を参考に,0.19 kN/m の補正を行うことになると思われる。・圧密の終了判定を,体積ひずみ速度が 0.05%/h 以下になり,過剰間隙水圧の 95%以上が消散したときとした。一次圧密が完全に終わったという判定でないと不十分という意見もあった。・非排水試験のせん断速度は BS の規格に基づいて,2%/h 以下とする記述があったが(粘土試料に基づいていると思われる),砂の場合はもっと速い速度でせん断する場合があるということで,この記述は削除された。・規格は 1 回の試験を行う方法を規定するものである。よって,c との求め方は,付録に記載することとした。 はモール円の包絡線で求めるが,モール円のせん断応力最大点を結んだものはとする。日本ではあまりなじみがないが,ヨーロッパでは普通に使われているようであった。(4) 液性限界,塑性限界試験・液性限界試験には,キャサグランデ法よりフォールコーン法が優れているという研究成果が発表されてきている。将来を見据え,フォールコーン法に統一するという意見もあったが,日本も含めキャサグランデ法がメインで行われる国も多いことから両手法を記載することとした。・液性限界試験(キャサグランデ法)で用いる黄銅皿の大きさが各国少し違うが,基本的には ASTM(米国規格)に準じて,必要に応じて幅を持たせることとした。材質は BS(英国規格)ではステンレスも認めていたため,黄銅以外も可とする。ただし,結果に影響が出ないように,皿の質量をある程度合わせることとした。・液性限界試験(キャサグランデ法)の溝切りが 2 種類記載されていたが,1 種類(日本でも使われているもの)に統一した。・溝の合流長さについては,DIN(ドイツ規格)が 10mm,ASTM が 13mm である。13mm を採用することとした(ちなみに日本の規格では,約 1.5cm となっている)。・フォールコーンは(コーン角度 60°,質量 60g)のものと(30°,80g)のものを記載する(日本は 60°,60g)。フィンランドでは 120g というのもあるそうである。試料容器もフォールコーンの寸法により異なる大きさが記載される。以上が,2015 年度に行われた主な議論である。欠席の国の意見は,主張がよくわからないということで,軽くあしらわれるきらいがある。このような会議にはできるだけ出席して,日本にとって齟齬のない規格となるよう主張していくことの重要性を実感している。長年議論してきているが,これまで 3 つの ISO 規格を制定して,来年度もいくつか ISO規格を制定できそうである。表-1ISO/TS17892-117892-217892-317892-417892-517892-617892-717892-817892-917892-1017892-1117892-12CEN/TC341/WG6 で取り扱う規格タイトルDetermination of water contentDetermination of bulk densityDetermination of particle densityDetermination of particle size distributionIncremental loading oedometer testFall cone testUnconfined compression test on fine-grained soilsUnconsolidated undrained triaxial testConsolidated triaxial compression tests on water-saturated soilsDirect shear testsDetermination of permeability by constant and falling headDetermination of Atterberg limits関連規格・基準JIS A1203JIS A1225JIS A1202JIS A1204JIS A1217なしJIS A1216JGS 0521JGS 0523,0524JGS 0560,0561JIS A1218JIS A120546写真-1第 13 回会議の様子
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  • タイトル
  • 地盤関連 ISO の審議状況と地盤工学会におけるISO 活動-平成27年度-
  • 著者
  • 浅田素之・今村 聡
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 43〜44
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100022
  • 内容
  • 0022第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月A - 08地盤関連 ISO の審議状況と地盤工学会における ISO 活動-平成 27 年度-国際規格ISO 地盤工学地盤工学会ISO 国内委員会委員長 今村 聡幹事長 浅田 素之1.ISO とはISO(International Organization for Standardization;国際標準化機構)は、国際貿易が円滑に行われるために、1947 年に設立された非政府組織である。中央事務局はスイスのジュネーブに置かれている。「ISO in figures」によると、2014 年末の会員数は 165 ヶ国、ISO 規格の発効数は約 25,000 件で、そのうち 3 割弱が Engineering Technologies に関する規格になっている。2014 年には 1,500 件弱の規格が発効された。ISO の会員団体は、各国での標準化に関して最も代表的な国家機関であり、1 国 1 団体しか登録できない。日本では、日本工業規格(JIS)の調査・審議を行っている日本工業標準調査会(JISC)が、1952 年から ISO に加入している。JISCには分野別に専門技術委員会が設置されているが、すべての規格案件を詳細にわたって審議するのは不可能であることから、ISO に設置されている TC(Technical Committee;技術委員会)に密接に関連する国内の学協会に実質的な審議および対応を委託しており、国内審議団体として経済産業省に登録されている。国内審議団体における決定事項は直接日本の意見となる。土木・地盤分野では、地盤工学会のほかに、日本コンクリート工学協会やセメント協会などが、審議団体となっている。ISO や ISO 規格が、特に議論されるようになってきたのは、1995 年にわが国が WTO(世界貿易機構)の「TBT 協定」(貿易の技術的障害に関する協定)、および翌年の「政府調達に関する協定」に批准してからである。TBT 協定では、加盟国が強制規格又は任意規格を策定するにあたり、国際規格を基礎とすることが義務づけられている。さらに、政府調達に関する協定では、「政府機関(中央政府、都道府県、政令指定都市および政府系機関等)における技術仕様(道路橋示方書や鉄道構造物等設計標準など)については、国内規格より国際規格を優先使用すること」が義務づけられている。すなわち、政府機関の発注書や仕様書に指定された規格・基準と該当する ISO 規格に整合性がなければ、国際入札の際に、WTO/TBT 協定違反として提訴される可能性がある。このような背景から、1995 年以降、JIS について,ISO 規格との整合化が図られている。2.地盤工学会における ISO地盤工学に関連する ISO/TC として、TC182(Geotechnics;地盤工学)、TC190(Soil quality;地盤環境)、TC221(Geosynthetics;ジオシンセティックス)の 3 つがあり、地盤工学会はこれらの国内審議団体を務めている。ISO への参加地位は、新作業項目への投票及び国際規格の照会原案や最終国際規格案に対する投票の義務を負って、業務に積極的に参加し、可能な限り、会議に参加する義務を有する「P メンバー」として登録されている。ISO 活動を行うには、主に欧州に出張し、面と向かって審議を行う必要がある。現在、経済産業省、土木学会(国土交通省)、日本建設業連合会、土壌環境センターからの財政支援を頂き、活動を進めている。また、TC190 のうち、日本発の ISO 化を進めている SC3WG10(Sub Committee 3, Working Group 10, Screening;スクリーニング)では、すでに 3 件の ISO 化を実現しており、経済産業省からの受託事業として、活発に活動している。経済産業省は、会議に参加、情報収集し、日本の基準との整合性を図る「守り」の ISO 活動に対して支援せず、積極的に日本からの ISO 化を推進する「攻め」の ISO 活動に、重点的に支援する姿勢である。一方、ここ数年、地盤工学会基準部では、JGS 基準の英訳化を進めており、アジア各国に対して、地盤工学会の基準を用いやすくする基盤の整備を進めている。3.各 TC における ISO 活動地盤工学会 ISO 国内委員会の構成メンバーを表-1 に示す。ISO 国内委員会の作業と役割は、1)ISO・CEN 規格案の検討・審議の取りまとめ、2)コメント提出に対する国内意見の集約、3)ISO・CEN 会議参加者(代表者)の調整および支援、4)提案される国際規格案や日本提案の国際規格策定に関する戦略の企画・立案・実行などが挙げられる。また、国内対応としては、1)日本工業標準調査会や規格協会との協調および配布される各種調査票に対する対応、2)関連学協会,関連機関との調整・情報交換、3)地盤工学会における ISO 活動の基本戦略の立案と基準部会への提案、4)地盤工学関連 JIS および JGS の英訳に対する優先付け、5)会員への迅速な情報提供(地盤工学会誌「ISO だより」の執筆など)、6)活動資金Action Report of JGS ISO CommitteeIMAMURA, Satoshi & ASADA, MotoyukiJGS ISO Committee43 となる受託事業の要請などが挙げられる。平成 27 年度の国際会議派遣状況を表-2 に示す。参加会議数は 10 回で、のべ 20 名の委員を派遣した。日本がコンビナー(議長)となっている TC190SC3WG10 (予備試験法)では、日本提案の理解と協力を得るために、重点的に海外派遣を行っている。表-3 は,平成 27 年に各 TC で審議された規格案数である。TC182 の規格案は、CEN(European Committee for Standalization;欧州標準化委員会)リードのウィーン協定適用の提案が承認され、すべての案件が CEN/TC341 で審議されている。土の分類、室内土質試験、地盤調査に関して検討が進められている。TC190 では、SC2(サンプリング)の既存規格見直しが行われており、日本の土壌ガス調査の方法を認められるよう働きかけている。また上記で紹介した SC3WG10(スクリーニング)のほかに、SC7(土とサイトアセスメント)でも、カラム試験に関し日本主導の提案を準備している。TC221 では、ISO/WD TR 18228(Design of geosynthetics for construction applications)として、ジオシンセティックスの建設への活用について、10 の TR(Technical Report;テクニカルレポート)の審議が精力的に行われている。表-1 ISO 国内専門委員会の名簿委員長:今村 聡(大成建設)委 員:久内伸夫(国土交通省)、大谷 順(熊本大学)、菊池喜昭(東京理科大)、岸田 潔(京都大学)、木幡行宏(室蘭工大)、坂井宏行(鉄道総合技術研究所)、豊田浩史(長岡技術科学大)、原 隆史(岐阜大学)、松井謙二(土木学会)、松浦一樹(ダイヤコンサルタント)、椋木俊文(熊本大)、横山幸也(応用地質)幹 事:浅田素之(清水建設)表-2 平成 27 年度の国際会議派遣状況会議名派遣国派遣数CEN/TC 341/WG 6 会議(TC182 関連)ノルウェー、ポルトガル2TC221 会議チェコ1TC 190/SC 3 連絡会議オランダ5TC190 年次総会オーストリア5TC190/SC3/WG10 関連会議オランダ2フランス2イギリス、フランス1ドイツ、オランダ1韓国1表-3 平成 27 年度の検討規格案件数(2015.12 現在)TC182TC190規格および規格案の審議段階NWIP318CD414DIS512FDIS12ISO1804その他1458合計NWIP:提案段階、CD:委員会原案、DIS:照会原案、FDIS:最終規格案、ISO:規格TC2214001216234.まとめJGS の基準を英訳化するために、各企業・団体からの多くの寄付を頂き作業を進めた。今後建設業を輸出産業とし、わが国の技術力を、アジアをはじめとする全世界へ提案していくことは不可避であるという認識が広まっていることを感じる。わが国の建設技術の品質は、世界でもトップレベルにあり、技術とそれを支える規格を世界に発信することは、日本の使命である。ISO のような活動には、技術力に加え、国際的なコミュニケーション能力も不可欠となる。今後人材を産官学が連携して育成することは大切である。一方、学会で ISO に携わる人材が固定化している。われこそは、日本を背負って喧々諤々の議論をしたい、という方には、自ら手を挙げて活動に参加してもらいたい。44
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  • タイトル
  • 地盤材料試験の技能試験ロードマップ
  • 著者
  • 藤原照幸・日置和昭・澤 孝平・中山義久・稲積真哉・中澤博志
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 41〜42
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100021
  • 内容
  • 0021D - 01第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月地盤材料試験の技能試験ロードマップ技能試験ロードマップ地盤材料地域地盤環境研究所国際会員 ○藤原照幸大阪工業大学国際会員日置和昭関西地盤環境研究センター国際会員澤関西地盤環境研究センター国際会員中山義久孝平明石工業高等専門学校国際会員稲積真哉防災科学技術研究所国際会員中澤博志1.はじめに地盤材料試験の結果は,各種構造物の設計・施工・維持管理に影響するとともに,大学・高専をはじめ多くの研究機関で行われている研究成果にも直接的に関係しており,その正確性が求められることは衆目の一致するところであろう。しかし,地盤材料試験結果の精度・ばらつきについては,土や地盤が本来持っている不均質性の所為としてある程度は仕方ないものとされて扱われることが多く,その精度確認はあまり行われてこなかった。地盤工学会では 2011 年から実務機関,研究所,大学,高専等から参加者を募集し,試験結果の精度(不確かさ)や技能レベルを確認することを目的に技能試験を実施している。試験機関が「技能試験」に参加する意義としては,自己の試験結果が全体のどの位置にあるかを確認できること,必要に応じて試験技術や試験環境の改善を図れること,的確な試験結果が出せる状態を維持できること,などが挙げられよう。一方,地盤工学会が「技能試験」を継続実施する意義としては,試験機関の質的向上と地盤材料試験結果の信頼性向上に寄与すること,関連する JIS や JGS 等の学会制定基準類の改定に反映できること,などが挙げられ,社会貢献の役割を果たせるものと考えられる。技能試験の計画,準備およびデータの評価を行うと共に,技能試験についての検討・広報を担当する“技能試験実施委員会”では,「地盤材料試験の技能試験」に参加するインセンティブを高めるための様々な取り組みをおこなっており,今回,長期的なビジョンを議論し,学会内で共有するためのロードマップを作成したので,その詳細について報告する2.地盤材料試験の技能試験ロードマップ図1にロードマップを示す。以下,内容について説明する。項  目2013-2014201520162017201820192020(平成25,26年)(平成27年)(平成28年)(平成29年)(平成30年)(平成31年)(平成32年)Step1Step2Step3実施検討時期技能試験参加費の見直し2015年度より実施⇒試験の項目、人件費等 を考慮して参加費を算出 するよう変更試験結果のばらつき要因分析調査従来(2013年度)より実施している技能試験参加証の発行従来(2013年度)より実施している報告会の開催2015年度より実施(開催は年度明け5~6月)試験項目の拡大2016~2017年度の実施に向けて検討⇒要望の多い試験項目を  新たに追加 (2016年度より実施)優良事業所証明制度の検討2016年度より「優良事業所証明制度」        を開始予定試験員技能研修の検討2018~2020年度図 1 地盤材料試験の技能試験ロードマップRoadmap of Proficiency TestFUJIWARA Teruyuki Geo-Research Institute, HIOKI Kazuaki OsakaInstitute of Technology , SAWA Kohei Kansai Geotechnology andEnvironment Research Center, NAKAYAMA Yoshihisa KansaiGeotechnology and Environment Research Center, INAZUMI ShinyaNational Institute of Technology, Akashi College, NAKAZAWA HiroshiNational Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention41 1)技能試験参加費の見直し2011~2014 年度の技能試験参加費については,参加機関拡大のため比較的安価に設定していた。2015 年度以降については,収支バランスを考慮した事業計画立案方式への見直し(変更)を行った。したがって,試験項目と試料準備・配付に関わる諸費用等に応じて,年度毎に参加費は変動する。2)試験結果のばらつき要因分析調査技能試験参加機関へのアンケートを実施することで,試験結果のばらつき要因を分析できることから,2011 年度の開始当初から毎年実施している項目である。ばらつき要因の分析結果は,室内試験の規格・基準改正の際に有用なバックデータとなることが期待されることから今後も継続する予定である。3)技能試験参加証の発行技能試験は,試験室管理の「PDCA サイクル(Plan-Do-Check-Act cycle)」における Check(評価)に該当するものと考えられる。地盤工学会では,2011 年度の開始当初から技能試験への継続参加の証として年度毎に「参加証」を発行しており今後も継続する予定である。<技能試験に参加する主な目的と意義>①自己の試験結果と全体の試験結果とを比較することができ,自己の試験結果が全体のどの位置にあるかを確認できる。②技能試験の結果を勘案して,必要に応じて試験担当者の試験技術や試験環境などの改善を図ることにより,より的確な試験結果を出すことができる。③技能試験を継続することにより、的確な試験結果が出せる状態を維持することができる。4)報告会の開催平成 28 年度より新たに企画したものであり,前年度の「技能試験参加機関」を対象として報告会(参加費は無料)を開催する。報告会では,配付試料の均質性,試験結果の精度・ばらつき,ばらつき要因の分析例などについて報告する。開催時期は,年度末の業務多忙期を避け,年度明けの 5 月~6 月開催予定とした。5)試験項目の拡大従来は,次の3つの内容(①砂の物理試験,②粘土の物理試験,③改良土の湿潤密度・一軸圧縮試験)を順に実施することを基本としていた。試験項目の拡大については,これまでの技能試験参加機関へのアンケート結果から追加実施の要望の多い,「締固め試験」,「透水試験」,「三軸圧縮試験」を中心に検討し,順次項目を拡大する方針とした。なお,平成 28 年度は,砂の物理試験(土粒子密度試験,土の粒度試験(ふるい分析+沈降分析))に加え,突固めによる締固め試験(A-c 法)を実施予定である。6)優良事業所証明制度の検討「地盤材料試験の技能試験」に継続参加、かつ妥当な範囲にある結果が得られた事業所(試験機関・研究所・大学・高専など)に対し、新たなインセンティブとして「優良事業所証明書」(有効期限付き)を発行することを検討した。詳細は次の通りで,平成 28 年度からの実施予定で準備を進めている。①名称は、「優良事業所証明制度」とする。②証明書(「優良事業所証明書」)の発行・3 年連続して「地盤材料試験の技能試験」に参加し,全試験項目について所定の品質(zスコア|z|≦2)を維持していることを条件とする。・証明書は毎年発行し,有効期限(1年間)を記載する。・インセンティブとして「優良事業所」は地盤工学会HPにて公表する。③「優良事業所証明書」発行までの手続きについて・技能試験実施委員会でガイドライン(案)を作成し運用を行う。7)試験員技能研修の検討「技能試験」は事業所(試験機関・研究所・大学・高専など)を対象とした技能確認制度であるが、それは個々の試験員の技能が反映されたものである。そこで、個々の試験員を対象とした技能研修(募集人数 10 名程度)の実施を検討する。2018~2020 年度の実施に向けて引き続き検討中である。3.おわりに今後も,技能試験結果の有効活用のためにその重要性を多くの方に認識されるよう,また技能試験に参加するインセンティブを高めるよう,改善に努めていく所存である。技能試験が定期的な行事として定着し,さらに多くの機関が参加されることを期待して止まない。42
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  • タイトル
  • アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 -軸圧縮試験-
  • 著者
  • 沼倉桂一・中澤博志・浜田英治・中川 直・保坂守男
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 39〜40
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100020
  • 内容
  • 0020D - 01第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 -一軸圧縮試験-技能試験アンケート調査地盤材料川崎地質正会員○沼倉桂一防災科学技術研究所国際会員中澤博志基礎地盤コンサルタンツ正会員浜田英治大阪工業大学正会員中川直日本適合性認定協会非会員保坂守男1. はじめに地盤工学会は 2011 年から実務機関,研究所,大学,高専等から参加者を募集し,試験結果の精度や技能レベルを確認することを目的に技能試験を実施し,同時に試験者・試験方法・装置などについてアンケートを行っている。5 回目となる 2015 年は,改良土の湿潤密度試験と一軸圧縮試験を実施した。本報は,一軸圧縮試験に関する試験者の経験,試験状況や試験器具についてまとめ,特に一軸圧縮強さに着目し,z スコアが 2 より大きい(「疑わしい」,「不満足」)となった機関について報告する。2. アンケート調査内容一軸圧縮試験のアンケートの内容は,試験者(身分,年齢,経験年数,試験頻度),試験方法(載荷速度,供試体直径,供試体の高さ径比),試料の取り扱い(試料を受け取ってからの保管状況,トリミングで気を付けた点,感じたこと),試験装置・器具(一軸圧縮試験機,荷重計,変位計)に大別される。以下に,アンケートの回答からそれらの傾向を示す。なお,本報の図中の百分率は参加機関全体に対するものであり,分数はzスコアが 2 より大きい(「疑わしい」,「不満足」)となった 8 機関の分布を示している。3. アンケート結果の傾向3.1 試験者図-1 に試験者の身分に関する結果を示す。「試験者の身分」は,「正社員・契約社員」が最も多く 83%を占め,「アルバイト・パート・派遣社員」と「学生」が 4%と最も少ない。z スコアを満足しなかった機関は「正社員」と「教員・技術職員」であり,「正社員」の 13%,「教員・技術職員」の 40%を占めた。図には示していないが,「経験年数」では 3 年未満が精度を確保できていない傾向が認められると同時に,10~20 年のベc.教員・技術職員9%b.アルバイト・パート・派遣社員4%d.学生4%e.その他0%2/8 0/80/8a.正社員・契約社員83%6/8テランでも精度を確保できていないことが確認できた。「試験実施の頻度」では,「初めて」が精度を確保できていない傾向が強いが,「月に数回」,「週に数回」,「毎日」図-1 身分でも精度が確保できていないことが確認できた。d.4.5~5.0㎝e.5.0㎝以上未満9%4%JIS A 1216-2009(以下規格)では,供試体直径は「通常 3.5c.4.0~4.5㎝1/9 2/9㎝又は 5.0 ㎝」とされ,「高さは直径の 1.8 倍~2.5 倍」とするとa.3.5㎝未満未満26%0%ある。載荷速度は,「毎分 1%の圧縮ひずみが生じる割合を標準」1/9b.3.5~4.0㎝とある。未満図-2 に供試体直径の結果を示す。61%の機関で「3.5~4.0 ㎝」61%5/93.2 試験方法図-3 に供試体の高さ径比の結果を示す。96%の機関で「1.8 倍~2.5 倍」の高さ径比で試験を行っていた。zスコアを満足しなかった 8 機関のアンケート結果からは明瞭な傾向は認められなか図-2 供試体直径1/80/80%b.1.8~2.5未満96% 7/8で試験を行っていた。zスコアを満足しなかった 8 機関(試験者9 名)のアンケート結果からは明瞭な傾向は認められなかった。d.3.0以上2% a.1.8未満c.2.5~3.0未満2%図-3 供試体の高さ径比e.2.0%/mina.0.5%/minを超える未満d.2.0%/min 0%4%b.0.5%/min0/80%2%0/8った。図-4 に載荷速度の結果を示す。94%機関で「1.0%/min」の載荷速度で試験を行っていた。zスコアを満足しなかった 8 機関全てが「1.0%/min」の載荷速度で試験を行っていたことが確認された。c.1.0%/min94%8/8図-4 載荷速度Current Situation and Issues of Geomaterial Test based on Questionnaire Results - Unconfined Compression Test of SoilNumakura Keiichi; Kawasaki Geological Engineering Co., Ltd, Nakazawa Hiroshi; NationalReserch Institute for Earth Science andDisaster Prevention, Hamada Eiji; Kiso-Jiban Consultants Co., Ltd, Nakagawa sunao; Japan Geotechnical Consultants Association &Hosaka Morio; Japan Accreditation Board39 3.3 装置・器具装置・器具では,試験機,荷重計,変位計に関してアンケートを行った。(1)一軸圧縮試験機機関が 10~50kN 未満で,20%の機関が 50kN 以上であった。5%の機関で 0.5kN 未満であった。図-6 に上部載荷版タイプの結果を示す。84%のa.0.5kN未満5%b.0.5~1kN未満14%1/8g.50kN以上20%図-5 に最大許容載荷能力の結果を示す。24%の0/8f.10~50kN未満24%3/8b.しない0%おり,20%の機関で「外観」,「載荷装置の動f.電気系統等のチェック13%作・載荷速度」,「清掃」が行われている。zスa.する100%コアを満足しなかった 8 機関のアンケート結果かe.清掃20%8/8ら,試験機については明瞭な傾向は認められなか(2)荷重計図-7 使用前点検図-9 に容量の結果を示す。35%の機関が「0.5の 66%の機関が 1kN 未満の荷重計を使用していた。図-10 に感量の結果を示す。40%の機関が「0.01~0.1N 未満」,31%の機関が「0.1~0.5N未満」で,全体の 71%の機関が 0.01~0.5N 未満の感量の荷重計を使用していた。図-11 に校正の結果を示す。36%機関が「年 1 回以上」,22%のf.5~10kN未満4%e.2k~5kN未満16%d.1~2kN未満5%て明瞭な傾向は認められなかった。(3)変位計規格では「変位計は,測定範囲が 20 ㎜以上で,2/8 0/81/8 1/8図-13 に最小目盛の結果を示す。全ての機関が最小目盛 1/100 の変位計を使用していた。0/8であった。zスコアを満足しなかった 8 機関のア2/8a.購入時のみ11%2/8f.5N以上0%a.0.01N未満15%2/8a.10㎜未満f.75mm以上2%2%b.10~20㎜e.30~75mm未満2/81/8未満0/8 3/8 7%14%c.20~25㎜未満24%d.25~30㎜未満51%f.1mm以上 a.0.001㎜未0%満13%1/83/8b.0.001~0.005㎜未満24%1/8b.0.01~0.1N未満40%2/82/83/8ンケート結果からは,変位計について明瞭な傾向b.載荷装置の動作・載荷速度23%図-10 感量b.年1回以上36%d.0.01~0.05㎜未満47%1 回以上」であるが,20%の機関が「購入時のみ」4. まとめc.0.1~0.5N未満31%図-11 校正(荷重計)e.0.5~1㎜未満0%図-14 に校正の結果を示す。38%の機関が「年は認められなかった。2/82/8図-12 に測定範囲の結果を示す。91%の機関が20 ㎜以上の変位計を使用していた。4%e.1~5N未満d.0.5~1N未8%満0/86%b.0.2~0.5kN未満31%c.0.5~1kN未満35% 3/8c.2年に1回22%の性能をもつ電気式変位計とする」とある。6/80/8f.その他9%e.しない1/87%d.3年に1回1/815%最小目盛が 1/100 ㎜の変位計又はこれと同等以上6/83/8 4/8図-9 容量回は校正を行っていた。zスコアを満足しなかった 8 機関のアンケート結果からは,荷重計につい0/8図-8 使用前点検の項目g.10kN以上5% a.0.2kN未満1/8機関で「2 年に 1 回」で,全体の 58%が 2 年に 1g.その他0%a.外観21%1/8d.センサの校正6%c.センサ類の固定17%った。~1kN」,31%の機関が「0.2~0.5kN」で,全体図-6 上部載荷版タイプ図-5 最大許容載荷能力結果を示す。使用前点検は全ての機関で行われて6/8d.2~5kN未満13%e.5~10kN未満9%図-7 に使用前点検,図-8 に使用前点検項目のa.半固定(球座付)84%c.1~2kN未満15%1/81/8機関で半固定式であり,16%の機関が固定式であった。b.固定(剛結)16%1/81/8c.その他0%2/8c.0.005~0.01㎜未満16%図-13 最小目盛1/8図-12 測定範囲f.その他7%e.しない13%0/8d.3年に1回9%c.2年に1回13%1/80/8a.購入時のみ20%1/83/8b.年1回以上38%3/8図-14 校正(変位計)一軸圧縮試験に関するアンケート結果について,技能試験のzスコアと比較して報告した。一軸圧縮強さの精度は,試験方法,装置・器具による影響はあまり大きくないものの,試験者の試験頻度が影響する傾向が認められる。「その他(お気づきの点等)」では,試料に関すること,試験結果やデータ整理に関すること,試験装置に関しての補足等の貴重なご意見を頂いた。試料に関してのご意見では,供試体の亀裂,空隙,変色や供試体作成方法に関するご意見を頂いた。【参考文献】1) 中山ら:技能試験配付試料の均質性と技能試験の正規性について,第 51 回地盤工学研究発表会(投稿中),2) 山内ら:地盤材料試験の技能試験結果に関する検討,第 51 回地盤工学研究発表会(投稿中),3) 中澤ら:アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 ―試験精度向上に向けて―,第 51 回地盤工学研究発表会(投稿中),4) 浜田ら:アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 ―湿潤密度試験―,第 51 回地盤工学研究発表会(投稿中)40
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  • タイトル
  • アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 -湿潤密度試験-
  • 著者
  • 浜田英治・中澤博志・沼倉桂一・保坂守男・中川 直
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 37〜38
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100019
  • 内容
  • 0019第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月D - 01アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題‒ 湿潤密度試験 ‒技能試験アンケート調査地盤材料基礎地盤コンサルタンツ正会員○浜田英治防災科学技術研究所国際会員中澤博志川崎地質正会員沼倉桂一日本適合性認定協会全国地質調査業協会連合会保坂守男正会員中川直1.はじめに地盤工学会は 2011 年から実務機関,研究所,大学,高専等から参加者を募集し,試験結果の精度(不確かさ)や技能レベルを確認することを目的に技能試験を実施している。5 回目となる 2015 年は,技能試験では 2 回目となる改良土の湿潤密度試験と一軸圧縮試験を行った。本発表は技能試験と合わせて実施した試験者へのアンケート結果のうち,湿潤密度試験に関する主な項目について報告する。2.試験者について図 2.1 によると,参加者の身分は,正・契約社員が最も多く 8 割超を占め,次いで大差は無いが,教員・職員,学生,アルバイト等の順となっている。図 2.2 における年齢は,30 歳代と 40 歳代がそれぞれ 3 割程度を占め,次いで 23 歳以上 20 歳代,50 歳代,22 歳以下の順となっている。図 2.3 の湿潤密度試験の経験年数を見ると,10 年~20 年未満が37%と最も多く,次いで 3 年未満が 29%,20 年以上が 16%,3~5 年未満と 5~10 年未満がそれぞれ 9%となっている。図 2.4 の湿潤密度試験の頻度を見ると,週に数回,月に数回,年に数回がともに 26~27%とほぼ同数となっている。続いてほぼ毎日が 13%,初めてが 7%であった。以上より今回の技能試験には,幅広い年齢層と経験年数を有する方々が参加していることが分かる。図 2.1身分図 2.2 年齢図 2.3 経験年数図 2.4 頻度3.供試体寸法の測定方法について図 3.1 の直径の測定箇所数は,規格では,「供試体の上,中,下で交差する 2 方向を測定」となっているが,アンケートでは 6箇所が 65%と最も多く,次いで 3 箇所が29%となっている。図 3.2 の高さの測定箇所数は,規格通りの 2 箇所が 78%と最も多い。以上より,大半の試験機関で寸法測定の規格が守られていることがわかった。図 3.1 供試体直径の測定箇所数図 3.2 供試体高さの測定箇所数4.ワイヤーソーについて図 4.1 に示す鋼線の直径は,規格通りの 0.2~0.3mm が 47%と最も多く,続いて 0.1~0.2mm が 14%,0.3~0.4mm が13%,0.4~0.5mm が 11%等となっている。図 4.2 に示す使用年数は,2 年以上が 24%と最も多く,続いて 3 ヵ月未満22%,3~6 ヵ月未満 14%,6~12 ヵ月未満 13%,1~2 年未満 9%となっている。「不明」という回答も 18%あった。図 4.3 に示す使用前点検は,75%の大半の機関で実施されている。 以上より,大半の機関で使用前点検はするも,規格Current Situation and Issues of Geomaterial Test based onQuestionnaire Results - Test for Bulk Density of Soils -Kiso-jiban Consultants, NAKAZAWA HiroshiNational Reserch Institute for Earth Science and DisasterPrevention , NUMAKURA Keiichi Kawasaki GeologicalHAMADA EijiEngineering, HOSAKA Morio Japan Accreditation Board,NAKAGAWA Sunao Japan Geotechnical Consultants Association37 外の寸法のワイヤーソーが半数以上の機関で用いられていることがわかった。図 4.1 鋼線の直径図 4.2 使用年数図 4.3 使用前点検5.直ナイフについて図 5.1 に示す直ナイフの長さは,規格通りの 25cm 以上がほぼ半数の 49%を占める。続いて 20~25cm 未満が 25%,15~20cm 未満が 11%,10~15cm 未満が 7%と続いている。図 5.2 に示す使用年数は,6 ヵ月未満が 29%と最も多く,続いて 3 年以上が 25%,1~2 年未満と 6~12 ヵ月未満がそれぞれ 15%,2~3 年未満が 9%等となっている。「不明」という回答も 7%あった。図 5.3 に示す使用前点検は,73%の大半の機関で実施されている。以上より,直ナイフもワーヤーソーと同様に,規格外の寸法を用いる機関が半数以上占めていることがわかった。図 5.1 長さ図 5.2 使用年数図 5.3 使用前点検6.恒温乾燥炉について土の含水比試験の規格では,炉乾燥の温度は110±5℃となっている。図 6.1 に示す恒温乾燥炉の温 度 は , 95 ~ 105 ℃ が 最 も 多 く , 続 い て 105 ~115℃が 9%,115~125℃が 4%であった。以上より,規格よりやや低めの温度で使用する機関が85%と多数を占めた。図 6.2 に示す炉内空気の循環は,80%の機関で実施している。7.まとめ(1)湿潤密度試験の試験者に関するアンケートの結果から,今回の技能試験にも幅広い年齢層と経験年数を有する方々が参加していることが分かっ図 6.1 炉乾燥温度図 6.2 炉内空気の循環た。(2)供試体の寸法測定方法は,大半の機関で規格通り守られている。(3) 規格外寸法のワイヤーソーや直ナイフが多くの機関で使用されているが,自家製なのか製品なのかは不明であった。これらは試験結果に大きな影響を及ぼすとは考えられないが,規格外の製品であれば製作者への規格の周知が必要であろう。(4)炉乾燥温度は,規格よりやや低めの温度で使用する機関が多くを占めた。これについても製品機能の問題であれば,恒温乾燥炉が規格を満たしているかどうかの購入前点検が必要である。【参考文献】藤原・稲積・浜田・沼倉・日置・中川:アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 ―試験精度向上にむけて―,第 51 回地盤工学研究発表会(投稿中,2015.5)38
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  • アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 -試験精度向上にむけて-
  • 著者
  • 中澤博志・沼倉桂一・浜田英治・藤原照幸
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 35〜36
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100018
  • 内容
  • 0018D - 01第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 -試験精度向上にむけて-技能試験 アンケート調査地盤材料防災科学技術研究所国際会員〇中澤博志川崎地質正会員沼倉桂一基礎地盤コンサルタンツ正会員浜田英治国際会員藤原照幸地域地盤環境研究所1.はじめに地盤工学会は 2011 年から実務機関,研究所,大学,高専等から参加者を募集し,試験結果の精度(不確かさ)や技能レベルを確認することを目的に技能試験を実施してきた。H27 年度技能試験は全体で 5 回目となり,また,今回実施した改良土の湿潤密度試験と一軸圧縮試験に限ると H24 年度に実施して以来 2 回目となる。本報では,H27 年度の技能試験時に行ったアンケートの回答から,更なる精度向上に向けて,技能試験全般についての現状把握を行った。2.湿潤密度および一軸圧縮試験に関する技能試験の概要今回の技能試験への参加は 55 機関であった。改良土を用いた前回の H24 年度実施の技能試験 1), 2)と同様,各機関で試験者と試験装置以外は極力同一条件で試験に臨めるようスケジュールを組み,改良土を一括して準備し一斉に配付した。その際,同時にアンケートを配付し,試験一式が終了した後,試験結果と共に回収・整理した。なお,技能試験の結果や個別の試験のアンケート結果については別途報告 3)~5)しているが,その概要について簡単に述べる。配付した地盤材料は,市販のシルトにポルトランドセメントを 25kg/cm3(試料 25)および 30kg/cm3(試料 30)を配合した試料を用いた。改良土の均質性確認試験では,一軸圧縮強さに限ると,試料 25 と試料 30 の変動係数がそれぞれ6.6%,8.3%を示し,技能試験の 9.4%,10.6%を下回り均質であったものと推察される。なお,前回 H24 年度の均質性確認試験における変動係数は概ね 8%,また技能試験の変動係数は 11~13%であった。一方,技能試験結果の評価は z スコアで行われたが,評価項目は,湿潤密度試験の含水比,湿潤密度および乾燥密度,一軸圧縮試験の一軸圧縮強さ,破壊ひずみおよび変形係数で行われた。|z|≦2 を満足しない機関について,湿潤密度と一軸圧縮強さを取り上げると,湿潤密度では,前回の 51 機関中 11 機関(22%)に対し,今回は 55 機関中 5 機関(9%),一方,一軸圧縮強さは,前回の 51 機関中 6 機関(12%)に対し,今回は 55 機関中 8 機関(15%)であり,他の評価項目を含めても,傾向は特に見られなかった。3.技能試験全般に関するアンケート調査結果3.1 全機関を対象とする設問および回答参加 55 機関を対象とする技能試験全般に関するアンケートの主な設問は,①技能試験をご存知でしたか?,②今後も技能試験に参加したいと思図-1 技能試験参加の意思(回答 55 機関)いますか?,③今後,どの試験を受けてみたいですか?,④今後,今回の技能試験の結果をどのように活かしたいと思いますか?,および⑤技能試験の適切な参加費用と実施時期についてであった。②と④の今後の参加の意思と試験結果の活用に関し,図-1,2 にそれぞれ示す。図-1 より,89%にのぼる 50 機関が「今後も参加したい」と回答しているが,中には必要に応じて参加・不参加の判断を行うとのコメントがあった。また,図-2より,試験結果の活用に関しては,「試験者自身の試験精度の確認」が全体の半数,次いで,「試験技能の向上」が 4 割弱を占めている。これは,前回 H24 年度の技能試験実施時と同様な傾向であり,技能試験に参加す図-2 技能試験結果の活用(回答 55 機関)る目的意識の変化は特にないと見られる。なお,③の今後受けてみたい試験については,図-3 に示すように,締固め試験が最も多かった。3.2 技能試験経験者への設問および回答今回実施した湿潤密度試験と一軸圧縮試験は,H24 年度に引き続き 2 回目の試験であるため,前回の参加機関を対象とする設問を設け,次のように主な設問をまとめた。①技能試験結果を品質向上や測定精度向上に反映,あるいは役立ちましたか?(図-4),②どのような技能試験を受けたか差支えなければお教えください(図-5),更に H24 年度実施の湿潤密度試Results of Questionnaire inProficiency Test –for theaccuracy improvement of tests-図-3 今後希望する試験項目(回答 55 機関,回答数 225)NAKAZAWA, Hiroshi(National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention),NUMAKURA, Keiichi(Kawasaki Geological Engineering Co., Ltd.), HAMADA,Eiji(Kiso‒Jiban Consultants) and FUJIWARA, Teruyuki(Geo-Research Institute)35 験と一軸圧縮試験の技能試験に参加した機関を対象に,③試験者は前回と同じですか?(図-6),④今回の技能試験において H24 年度の技能試験結果や経験は活かされましたか?(図-7),および⑤前回より技能試験結果(z スコア等)が向上したと実感していますか?(図-8)であった。図-4 より,技能試験結果が品質向上や測定精度向上に役立ったと回答した機関は,42 機関中 33 機関 78%に上った。この 33 機関から技能試験結果をどのように活用したかのコメントを集約すると,試験精度・品質の確認,技術向上が多く,営業活動および社内教育のためとの意見もあり,前回と大きく変わる項目はあまりないが,他社との比較をしたいとのコメントも図-4 技能試験結果の意識(回答 42 機関)あった。図-5 は,過去の技能試験参加歴を伺った設問であるが,33 機関の回答中 10%以上の試験項目は湿潤密度,一軸圧縮,液性・塑性限界,粒度,土粒子密度および含水比試験であり,当委員会が実施してきた技能試験も中に含まれているものと推察される。なお,図-3 において,今後実施してみたい試験として.締固め試験が挙げられているが,既往の技能試験での実績は,非常に少ないことがわかる。図-6 は,H24 年度のアンケート結果との比較のためのもので,H24 年度に参加した機関の絞り込みのための設問である。同図に示す通り,試験者が同一であったと回答した機関が両試験ともに 12 機関(44%),違うと回答した機関は 15 機関(56%)であった。また,H24 年度参加機関のうち,H24 年図-5 過去の技能試験の経験(回答 40 機関,回答数 207)度技能試験の経験が活かされたと回答している機関は,図-7 に示す通り 20機関 80%とかなりの割合を占め,その殆どがトリミングに関することであった。試験者が異なる場合,前試験者よりトリミングのテクニックや留意事項の引継ぎなどの対処事例も確認できた。図-8 に示す今回の技能試験終了時における結果への感触に関する集計結果では,「明確に試験結果の向上が実感できた」と回答した機関は 5 機関 19%程度であり,「どちらでもない」との回答が 19 機関 70%と多数を占め,その要因の一つとして,配付した試料の品質に対するコメントが目立ち,z スコアへ影響するのではないかとの指摘があった。図-6 試験者について(回答 27 機関)4.技能試験全般から見た z スコアの傾向について今回,満足な z スコアが得られなかった機関が一軸圧縮強さで 8 機関あった。これらの機関の内訳は,「今回初めて参加」が 3 機関,「H24 年度に引き続き参加で同一試験者が実施」が 3 機関,および「H24 年度に引き続き参加で異なる試験者が実施」が 2 機関であった。これらを見ると,上記 3 つの内訳に大差は認められない。一方,これらの 8 機関のコメントを確認すると,配付試料の状態や品質を要因としていた機関が 2 機関であり,技能試験全般的なアンケート調査結果の観点から,z スコアへの影響要因を推察図-7H24 年度実施時の経験(回答 25 機関)することが困難であった.なお.湿潤密度および一軸圧縮試験の個別のアンケート結果に関しては,別途参考文献 4),5)を参照されたい。5.まとめH27 年度は,改良土の湿潤密度試験と一軸圧縮試験の技能試験を実施した。これらの試験は H24 年度に続き 2 回目であったが,技能試験を受けることで品質や精度向上に活かせること,また再度参加された機関の多数が前回の経験が活きたと実感していることがわかった。一方,今回初めて参加したか否かを問わず,z スコアが不満足であった機関については,トリミングに問題点を感じていることがわかり,精度向上に向けての大きな課題の一図-8 技能試験結果向上の実感(回答 27 機関)つであることがアンケート結果からわかった。【参考文献】1)沼倉桂一,稲積真哉,中澤博志,澤孝平,城野克広,中川直,中山義久,日置和昭,保坂守男,山内昇:技能試験におけるアンケート調査結果(その1)-湿潤密度試験-,第 48 回地盤工学研究発表会,pp.215-216, 2013. 2)中澤博志,稲積真哉,沼倉桂一,澤孝平,城野克広,中川直,中山義久,日置和昭,保坂守男,山内昇:技能試験におけるアンケート調査結果(その2)-一軸圧縮試験-,第 48 回地盤工学研究発表会,pp.217-218, 2013. 3) 山内昇,澤孝平,中山義久,日置和昭,稲積真哉,城野克広:地盤材料試験の技能試験結果における評価検討,第 51 回地盤工学研究発表会,投稿中,2015. 4)浜田英治,中澤博志,沼倉圭一,保坂守男,中川直:アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題-湿潤密度試験-,第 51 回地盤工学研究発表会,投稿中,2015. 5)沼倉圭一,中澤博志,浜田英治,中川直,保坂守男:アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題-一軸圧縮試験-,第 51 回地盤工学研究発表会,投稿中,2015.36
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  • タイトル
  • 地盤材料試験の技能試験結果に関する検討
  • 著者
  • 山内 昇・澤 孝平・中山義久・日置和昭・稲積真哉・城野克広
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 33〜34
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100017
  • 内容
  • 0017D - 00第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月地盤材料試験の技能試験結果に関する検討技能試験・試料の均質性・標準偏差北海道土質試験協同組合(正会員)○山内昇関西地盤環境研究センター(国際会員)澤関西地盤環境研究センター(国際会員)中山 義久大阪工業大学(国際会員)日置 和昭明石工業高等専門学校(国際会員)稲積 真哉(非会員)城野 克広産業技術総合研究所孝平1.はじめに地盤工学会では、これまで「地盤材料試験の技能試験」を実施し、地盤材料試験の精度確認を行ってきた。技能試験は、試験結果を参加機関の間で比較して評価するものであり、その目的は精度のよい試験結果を求める試験技術・技能を確認し、必要に応じて試験技術や試験環境の改善を図ることにある。また、地盤工学会が「技能試験」を継続実施する意義は、地盤材料試験結果の信頼性向上に寄与し社会貢献の役割を果たすことである。本報では、平成27年度に実施した技能試験『改良土の湿潤密度試験、一軸圧縮試験』でzスコアを用いて各試験機関の技能レベルを評価検討した結果について報告する。2.技能試験結果の評価指標と評価基準 1)(1)評価指標(zスコア) 技能試験結果を評価するために用いられる指標は「zスコア」である。これは、ISO/IEC17025 に基づく試験所認定制度における技能試験の際に用いられるもので、試験機関の技能レベルを容易に評価できる。ある試験機関 i の試験結果を xi ,全試験機関の試験結果の平均値を x ,標準偏差を σ とすると、ある試験機関 i のzスコア zi は式(1)で求められる。すなわち、zスコアは「試験結果の偏差(平均値との差)が標準偏差の何倍であるか」を表すもので、zスコアが小さい(試験結果が平均値に近い)と技能レベルが良いことになる。zizixix・・・・・・・・・・ (1)( xiziQ2 ){(Q3 Q1 ) 0.7413}2ss 2( xi Q2 )・・・・・・・・・・ (2)(Q3 Q1 ) 0.7413・・・・・・・・・・ (3)1) 従来法:技能試験に参加した全機関の試験結果の平均値と標準偏差から式(1)により求める。2) 四分位法:参加機関の一部の試験結果が極端に大きいあるいは小さい異常値の場合、これらの異常値による影響を最小化にするための統計的処理方法のひとつであり、式(2)により求める。ここに、 Q1 ∼ Q3 は試験結果を最小値から最大値へ昇順に並べたときの小さい方から Q1 :{( n -1)/4+1}番目の値、 Q2 :{( n -1)/2+1}番目の値、 Q3 :{3( n -1)/4+1}番目の値、 n :試験機関の総数である。3) 均質性評価法:技能試験の配付試料の均質性を考慮し、JIS Z 8405-2008 付属書 B を参考にして、式(2)の分母の標準偏差に均質性試験結果の標準偏差 ss を加味したzスコアを算出する。本報では、技能試験の配付試料の均質性確認試験より均質性に問題が含んでいることから、技能試験の配付試料の均質性を考慮した均質性評価法(3)式のzスコアを用いて検討する。(2)評価基準技能試験では次の基準で技能レベルを評価する。2<│z│<3:疑わしい・・・・・・・・・・・・・ (4)│z│≧3:不満足ここでは、2種類の試料(AとB)の技能試験結果(aとb)について次の2つの方法で評価する。1) 試料ごとのzスコア: a と b のzスコア(za と zb)について式(4)の基準により評価する。試料Bの試験結果(b)│z│≦2:満足2) 2 種類の試料の試験結果の和と差の z スコア:a+b の z スコア(zB)と a-bの z スコア(zW)を用いて、試験機関の満足状況を図-1 に示す散布図により表すことができる。すなわち、試験結果がこの図の中央の①の領域(│z│≦2)に入試料Aの試験結果(a)図-1散布図による評価っていると満足であり、その周辺の②の領域(2<│z│<3)では疑わしいことになる。さらに、図の中央から外れた③∼⑩の領域(│z│≧3)では技能レベルが不満足であることを意味する。A Study on Proficiency Test Results for Geomaterial TestingNoboru Yamauchi (Hokkaido Soil Research Co-operation), K. Sawa, Y. Nakayama (Kansai Geotechnology and Environment Research Center),K. Hioki (Osaka Institute of Technology), S. Inazumi (National Institute of Technology, Akashi College ), K. Shirono (AIST)33 3.技能試験結果の評価と現状改良土の湿潤密度試験と一軸圧縮試験結果を評価したzスコアについて検討する。改良土の試料は市販のシルトを母材として、ポルトランドセメントの配合量25㎏/m3添加した「試料25」と30㎏/m3添加した「試料30」の2試料である。(1) 試料ごとのzスコアによる評価: 試料25と試料30についての改良土の湿潤密度試験と一軸圧縮試験の評価結果を表-1に示す。この表で表-1 改良土の湿潤密度試験と一軸圧縮試験のzスコアによる評価結果は参加機関総数55機項目関の内、│z│≦2の満足な領域に入る機関の割合を満足度としている。改良土の湿潤密度試験の含水比・湿潤密度・乾燥密度の変動係数は、試料25,試料30で0.5%∼2.1%と小さく非常に良い精度である。改良土の湿潤密度試験一軸圧縮試験試料含水比(%)湿潤密度3(g/cm )乾燥密度(g/cm3)一軸圧縮強さ(kN/m2)破壊ひずみ(%)変形係数一軸圧縮試験の変動(MN/m2)試料25試料30試料25試料30試料25試料30試料25試料30試料25試料30試料25試料30zスコアーによる評価(機関数)中央値標準偏差変動係数Q2σRvR(%)|z|≦22<|z|<33≦|z|満足度(%)45.745.31.7381.7431.1941.1991061267.187.8715.614.80.970.970.0090.0160.0110.01412.617.71.671.596.929.342.12.10.50.90.91.211.914.023.220.244.463.155554853515447475452515200413047023100311141111210010087.396.492.798.285.585.598.294.592.794.5係数は、一軸圧縮強さの試料25で11.9%,試料30で14.9%とやや大きく、破棄ひずみの試料25で23.2%,試料30で20.2%と大きく,変形係数においては試料25で44.4%,試料30で63.1%とかなり大きい値になっていることから一軸圧縮試験において“変形係数”の精度に問題があることを示している。1.850zスコアによる評価では、改良土の湿潤密度試験の含水比は試は100%である。また、湿潤密度,乾燥密度ではほぼ90%以上の機関が│z│≦2の満足な範囲に入る。改良土の一軸圧縮試験における一軸圧縮強さでは満足度が85.5%と6項目の中で最も低く、│z│≦2の満足な範囲には試料25,試料30ともに47機関であり、2<│z│<3(疑わしい)と3≦│z│(不満足)の範囲には試料25,試料30ともに8機関である。また、破壊ひずみ,変形係数では90%以上の機⑩試料 30 の湿潤密度(g/cm3)料25,試料30ともに│z│≦2の満足な範囲に全55機関入り、満足度1.800⑨⑦②1.750①⑧⑤⑥1.700④関が│z│≦2の満足な範囲に入る。③(2) 二つの試料の和と差のzスコアによる評価: 図-2に湿潤密1.6501.650度の散布図を示し、図-3に一軸圧縮強さの散布図を示す。湿潤密図-2,ばらつきもない( zW ≦2))に50機関で、(偏りもなく zB ≦2)85.5%である。領域②に3機関、領域④に3機関、領域⑨(大きい)方に偏りがある( zB ≧3)が、ばらつきは小さい( zW <3)に2機関である。特に一軸圧縮強さでの領域④と⑨に入る5機関は試験精度に問題があることを示すものである。また、散布図の特試料 30 の一軸圧縮強さ(kN/m2)に2機関である。一軸圧縮強さでは領域①に47機関で、その割合はいる。これは変動係数が小さい湿潤密度試験では同心円状に分布し、変動係数が大きい一軸圧縮試験では直線状に分布すると考えられるが、明確な理由は今後の検討課題である。1.850湿潤密度の散布図による評価⑩200⑨⑦②150①⑧⑤100⑥④50徴として湿潤密度では領域④の2機関を除き,領域内①②で同心円状に分布し、一軸圧縮強さでは領域①②④⑨で直線状に分布して1.800250その割合は90.9%である。領域②(偏よりやばらつきが疑わしい)い方に偏りがある( zB ≦-3)が、ばらつきは小さい(|zW|≦3)1.750試料 25 の湿潤密度(g/cm3)度における機関間の偏りと機関内のばらつきの評価では、領域①)に3機関である。領域④(小さ(2< zB <3, 2< zW <3など)1.700③0050100150200250試料 25 の一軸圧縮強さ(kN/m2)図-3一軸圧縮強さの散布図による評価4.おわりに本報では、平成27年度に実施した技能試験について検討した結果の現状を明らかにした。今後とも技能試験を継続実施するに当たり、研究・試験実施機関の技能レベルの確認と試験精度の向上に反映されるように努める必要がある。また、多くの会員各位の技能試験への参加を期待したい。参考文献 1) 山内・澤ほか: 技能試験の技能試験結果における評価方法の検討(その2)第48回地盤工学研究発表会,pp213∼214,201334
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  • タイトル
  • 地盤品質判定士の業務と判定士会の役割
  • 著者
  • 北詰昌樹
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 1〜2
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100001
  • 内容
  • 0001A - 07第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月地盤品質判定士の業務と判定士会の役割地盤品質,地盤評価東京工業大学 国際会員北詰 昌樹1.はじめに地盤品質判定士の資格制度は,東日本大震災での大災害で顕著になった既存や新設の宅地の品質・安全性の評価・品質判定を行い,主に宅地における地盤災害の防止や軽減に貢献することを目的として 2013 年に創設された。また,判定士会は,住宅及び宅地の防災及び国民の安全に貢献するために,会員の技術の研鑽とモラルの向上,ならびに社会への啓発を図ることを目的に 2015 年に地盤品質判定士協議会の内部組織として設立された。判定士会では,本制度を着実に進め一般市民の方々に認知され定着していくための活動を着実に進めている。本稿は,2015 年度地盤品質セミナーで発表した内容 1)の一部で,地盤品質判定士の資格制度ならびに判定士会の設立の意義と目的,活動などを簡単に紹介した。2.資格制度創設の背景と意義宅地の開発では,これまでも軟弱地盤,盛土や擁壁など地盤に起因した建築のトラブルが発生し,その多くが現場において土や地盤に関する知識が不足しているためであることが指摘されてきていた。また,住宅を求める一般市民の方も,地盤に関する知識を持っていないことがほとんどで,土地・地盤について調査を依頼できる,信頼に足る技術者を必要としていた。東日本大震災では,多くの宅地で液状化被害が相次いだことは記憶に新しい。同様の被害が繰り返されないよう地盤に対する評価基準の早急な整備が求められている。東日本大震災の発生から 4 ヶ月後,地盤工学会は「地震時における地盤災害の課題と対策―2011 年東日本大震災の教訓と提言(第一次)―」2)を公表し,東日本大震災が提起したことの一つとして「公共構造物と私有財産の安全性レベルの落差」を指摘し,既存や新設の宅地の評価(品質判定)ができる「地盤品質判定士」の資格制度の創設を提案した。2012 年 6 月に公開した第二次提言3)でも「地盤工学の専門知識と倫理観を有する技術者が社会において適切に評価され,地盤の品質を確認及び説明する業務において幅広く活躍することによって,主に宅地における地盤災害の防止や軽減に貢献することを目的として,新たな技術者資格『地盤品質判定士(仮称)』の制度を設立する」と述べている。工学は社会システムの一部として活かされる時に初めてその実質的貢献が発揮され,技術者資格制度は社会からの強い要請から作り上げられるものとの提言趣旨に従い,地盤工学会・日本建築学会・全国地質調査業協会連合会を代表に住宅や宅地の関係諸団体の参画により地盤品質判定士制度を運営する地盤品質判定士協議会が 2013 年 2 月に発足した。この資格制度の目的は,宅地の造成業者,不動産業者,住宅メーカー等と住宅及び宅地取得者の間に立ち,地盤の評価(品質判定)に関わる調査・試験の立案,調査結果に基づく適切な評価と対策工の提案等を行う能力を有する技術者を社会的に明示することを通じて,国民が専門家の知識・経験を活用できる社会システムを構築することにある。本資格制度では「地盤品質判定士」と「地盤品質判定士補」を設けており,有資格者は,地盤の品質を判定できる専門的知識と経験及び技術力によって,住宅及び造成宅地の防災・減災を通じて国民の住環境の安全性向上に寄与することが期待されている。3.地盤品質判定士会の組織と役割3.1 組織2015 年 2 月 2 日の地盤品質判定士協議会理事会において,住宅及び宅地の防災及び国民の安全への貢献,会員の技術の研鑽とモラルの向上,ならびに社会への啓発を目的に,地盤品質判定士会(以下,判定士会)の設置が承認された。判定士会では,地盤品質にかかわる相談の受付と判定業務の実施,地盤品質判定業務に関する勉強会やテキストの発行などを通じて,会員サービスと社会への貢献を目指している。地盤品質判定士会には,正会員(判定士),準会員(判定士補),法人会員(判定士会正会員を有する法人),特別法人会員(判定士会正会員をTask of Professional Engineer for Geotechnical EvaluationKitazume, M. Tokyo Institute of Technology1 有しない法人)の4種別を設けている。本地盤品質判定士会の有資格者である地盤品質判定士と地盤品質判定士補は,2015 年末時点で,それぞれ 606 名と 247 名の計 853 名にのぼる。地盤品質判定士会の組織を図-1 に示した。地盤品質判定士会では,地盤品質にかかわる相談の受付と判定業務の実施,地盤品質判定業務に関する勉強会やテキストの発行,地盤品質にかかわる協会・団体,日弁連などの団体と協力して,会員サービスと一般社会への貢献を目指している。幹事長副幹事長幹事会事務局総務・企画委員会広報委員会技術委員会支部図-1 判定士会組織図3.2 判定士会の活動判定士会では,これまで毎月幹事会を開催して活動方針,運営方針を議論するとともに,一般市民向けの無料相談会(付録参考)を実施し,宅地地盤の品質評価に関する技術講習会を 2014 年には東京,仙台と札幌で,2015年には東京と大阪で開催した。地盤の品質判定を行っていく上で,本制度を着実に進め一般市民の方々に認知され定着していくためには相談窓口,相談契約書,費用,瑕疵担保などの課題が数多くある。また,講習会やセミナーの開催,また勉強会など通じて判定士のスキルアップも図っていく必要もある。判定士会としては,これらの課題を解決して判定士の皆様の支援を図っていくとともに,住宅及び造成宅地の防災・減災を通じて住環境の安全性向上に努力している。相談依頼者が希望する場合は,有料で追加の調査(現地調査,地質調査など)や地盤品質評価書を作成する事業者(法人あるいは個人)を紹介している。なお,無料相談会は当面東京で開催しているが,将来的には判定士会支部所在地などにおける開催も予定している。本年 9 月に開催される第 51 回地盤工学会研究発表会(岡山)では,ディスカションセッションを開催して,地盤に関わる諸問題について実態と判定士の業務を紹介して,地盤の品質評価における判定士の役割と期待を議論する予定となっている。さらに,研究発表会行事の一環として本年 9 月 17 日には,岡山市民会館において,一般市民の方を対象にした出張無料相談会を開催し,地盤に関する日ごろの悩みなどの相談受付を企画している。4.おわりに本稿では,2013 年に設立された地盤品質判定士の資格制度ならびに判定士会の設立の意義と目的,活動などを紹介した。判定士会では,これまで毎月幹事会を開催して活動方針,運営方針を議論するとともに,一般市民向けの無料相談会やセミナーなども開催してきている。しかし,本制度を着実に進め一般市民の方々に認知され定着していくためには,解決しなければならない課題も多くある。判定士会としては,これらの課題を解決して判定士会員の支援を図っていくとともに,住宅及び造成宅地の防災・減災を通じて住環境の安全性向上に努力していきたいと考えている。地盤品質判定士協議会をはじめ会員各位ならびに関係各位のご協力,ご支援をお願いしたい。参考文献1) 地盤品質判定士協議会、土木学会:2015 年度地盤品質セミナー「地盤紛争の解決に向けて-紛争事例から学ぶ-」講演概要集,2016.2) 地盤工学会:「地震時における地盤災害の課題と対策―2011 年東日本大震災の教訓と提言(第一次)―」,2011.3) 地盤工学会:「地震時における地盤災害の課題と対策―2011 年東日本大震災の教訓と提言(第二次)―」,2012.2
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  • タイトル
  • 宅地造成地の耐震性評価とリスクコミュニケーションについて
  • 著者
  • 佐藤真吾・風間基樹・市川 健・山口秀平
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 29〜30
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100015
  • 内容
  • 0015H - 10第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月宅地造成地の耐震性評価とリスクコミュニケーションについて宅地造成地地盤災害リスクコミュニケーション復建技術コンサルタント正会員○佐藤 真吾復建技術コンサルタント正会員市川復建技術コンサルタント正会員山口 秀平東北大学大学院工学研究科国際会員風間 基樹健1.はじめに2011 年東北地方太平洋沖地震では,台地・丘陵地を切土・盛土して造成した宅地造成地において,宅地・木造住宅・ライフライン等で甚大な被害が発生した。このような宅地造成地の地震被害は,1968 年十勝沖地震で初めて確認されてからその後の大規模地震の度に発生し,大規模地震が都市部で発生するとその被害規模が大きくなる特徴がある。我が国は地震大国であり,今後発生するおそれのある大規模地震に対して,宅地造成地の防災・減災対策の促進が求められている。また,宅地造成地の地震防災・減災対策を促進するためには,宅地造成地の耐震性評価と利害関係者間のリスクコミュニケーションが必要不可欠であるが,その役割は地盤品質判定士に期待されている。本稿は,「DS-13 地盤品質判定士の役割と期待」における話題として,宅地造成地の地盤リスクに関する研究結果を紹介するとともに,地盤品質判定士が利害関係者に対して行うリスクコミュニケーションについて考察を述べるものである。2.2011 年東北地方太平洋沖地震における宅地造成地被害から学ぶ教訓2011 年東北地方太平洋沖地震における仙台市丘陵地の宅地被害は 5,728 箇所で確認された(平成 25 年 7 月現在,仙台市調べ)。これらの宅地造成地の被害は 7 つの要因 1),すなわち,(1)谷埋め型盛土の滑動に起因するもの,(2)腹付け型盛土の滑動に起因するもの,(3)切盛境界に起因するもの,(4)のり面の安定性不足に起因するもの,(5)擁壁の安定性不足に起因するもの,(6)緩い盛土状態(揺すり込み沈下)に起因するもの,(7)地盤の液状化に起因するものに分類でき,それぞれの要因が単独あるいは複合して被害が発生した。また,これらの要因による宅地造成地の被害形態は,大きくは(1)滑動崩落・変形被害,(2)沈下(不同沈下)被害,(3)擁壁被害の 3 つに分類できる。このため,宅地造成地の地震被害は,様々な要因や被害形態があることに留意する必要がある。また,地震時に擁壁等が損壊した場合は,復旧までに多くの時間と費用を要するため,二次災害への対応も必要になる。特に,ひな壇の擁壁は民地内にあり,施工スペースが殆どないことから,家屋の解体・撤去をしてからでないと復旧工事ができない場合が多い。写真-1 は,地震時に擁壁が大きく損傷したが様々な問題から復旧ができないでいるうちに,約半年後に襲来した台風による集中豪雨で擁壁が倒壊し,下方のアパートを押しつぶす二次災害が発生した事例である。このことから,特にひな壇の擁壁の防災対策には注意が必要である。一方,仙台市内の宅地造成地では,1978 年宮城県沖地震で被災し,2011 年東北地方太平洋沖地震でも再び同じ場所が同じ被害を受けた事例が多かった。これは,宅地が被害を受けて復旧する場合には,原形復旧では再度災害を防げないことを意味している。これには,既存不適格の問題も関係している。また,擁壁の変状がない場所でも戸建住宅が不同沈下被害を受けた宅地を確認した。これは擁壁が健全でも宅盤(盛土地盤)が緩い状態では地震時に不同沈下が発生することを意味しており,宅地造成地の地震対策では盛土の滑動対策だけではなく,宅盤の締固めが不十分な場合には宅盤補強も施さないと再度災害を防げないことが同震災から明らかとなった。(a) 地震で被災した擁壁(b) 豪雨による二次災害状況(c) 復旧後写真-1 地震で損壊した擁壁の二次災害状況The Seismic Assessment and Risk Communication inSATO Shingo, ICHIKAWA Ken and YAMAGUCHIResidential Land Development AreasShuhei, Fukken Gijyutsu ConsultantKAZAMA Motoki,Tohoku University29 3.宅地造成地の耐震性評価と宅地ハザードマップ2011 年東北地方太平洋沖地震における宅地造成地の地震被害について,仙台市全域を対象に,切盛図を用いて切土・盛土・切盛境界の各地盤上における木造建物の被害率を分析した1)。図-1は,宅地造成地(切土・盛土・切盛境界)における木造建物の被害割合を示したものである。また,図-2 は,木造建物被害と計測震度の関係を統計処理して求めたものである2)。これより,宅地造成地における木造建物の被害率は,高い方から順に,盛土,切盛境界,切土であり,盛土の木造建物被害率は切土よりも 2 倍以上を示す。なお,切土よりも盛土および切盛境界の被害率が高い理由は,盛土地盤の変状や盛土地盤の地震動増幅の影響が考えられる。これらのことから,宅地造成地における切盛図は宅地ハザードマップとして活用できることがわかる。切土,8%切土, 22%切盛境界,33%盛土, 47%切盛境界,31%盛土, 59%(a) 宅地造成地の地盤区分※木造建物(全壊)被害件数:1,791 棟※木造建物(半壊以上)被害件数:19,206 棟(b) 木造建物(全壊)被害の 割合(c) 木造建物(半壊以上) 被害の割合図-1 宅地造成地(切土・盛土・切盛境界)における木造建物の被害割合(仙台市の事例)1)30%全壊被害率30%30%大規模半壊以上の被害率盛土切盛境界切土20%10%0%5.15.35.55.75.96.1計測震度盛土切盛境界切土20%半壊以上の被害率10%0%5.1盛土切盛境界切土20%10%0%5.35.55.75.96.15.1(a) 全壊被害率(b) 大規模半壊以上の被害率5.35.55.75.96.1計測震度計測震度(c) 半壊以上の被害率図-2 計測震度レベルに応じた木造建物の推定被害率曲線 2)4.宅地造成地のリスクコミュニケーションと地盤品質判定士の役割戸建住宅の分野では,宅地地盤の問題にまつわる被害が後を絶たず,地盤の専門家が介在しないまま宅地地盤の品質を適正に評価せずに住宅建設が行われたことによるトラブル(不同沈下や地震時の滑動等による建物被害)が多く発生している。一般市民(住宅および宅地の取得者)の立場で地盤品質判定士に期待する役割を考えると,端的には,『宅地地盤(周辺地盤含む)が原因の障害を発生させないこと』である。しかしながら,地盤の品質評価はコスト面の制約,地盤と外力の不確実性,評価技術の不完全性等から,宅地取得者等が期待する被害ゼロは保証できない。このため,地盤品質判定士は,リスクコミュニケーションにより中立的な立場でステークホルダー(利害関係者)間の信頼を醸成しつつ,多様性の中から宅地取得者等が自ら意思決定できるように,震災の教訓や図-1 および図-2 に示すような科学的客観的資料をもとに助言するのが役割であると考えられる。その上で,宅地取得者等がリスク回避(別の宅地を探す),リスク低減(リスクの原因を可能な限り除去する),リスク移転(保険に入る),リスク保有(何も対策をせずに覚悟を決める)のいずれかのリスク対策を自分の意思で決定し,リスク回避や低減が選択された場合には改めて地盤品質判定士が具体的な行動を支援することも役割であると考えられる。【参考文献】1)佐藤真吾,風間基樹,大野晋,森友宏,南陽介,山口秀平:2011 年東北地方太平洋沖地震における仙台市丘陵地造成宅地の被害分析,日本地震工学会論文集,第 15 巻,第 2 号,pp.97-126,2015.2)佐藤真吾:2011 年東北地方太平洋沖地震における仙台市の宅地造成地の被害分析と耐震性評価に関する研究,東北大学大学院工学研究科,博士論文,pp.87-107,2016.30
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  • タイトル
  • 盛土材のスレーキング特性から見た仙台市造成宅地被害の特徴
  • 著者
  • 市川 健・佐藤真吾・山口秀平
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 27〜28
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100014
  • 内容
  • 0014H - 10第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月盛土材のスレーキング特性から見た仙台市造成宅地被害の特徴宅地造成地地盤震害スレーキング復建技術コンサルタント正会員宅地造成地地盤震害スレーキング復建技術コンサルタント正会員〇市川佐藤 真吾健宅地造成地地盤震害スレーキング復建技術コンサルタント正会員山口 秀平1.はじめに東日本太平洋沖地震およびその後の大きな余震(平成 23 年 4 月 7 日:M7.1)により、仙台市内では丘陵地の造成宅地(盛土部)において、5700 宅地以上で擁壁の崩壊や転倒、またそれに伴う宅地(宅盤)の土砂崩壊や地割れなど、いわゆる「造成宅地被害」が発生した。これほど甚大かつ多数の宅地被災は、我が国の自然災害で他に例を見ないものであった。他方、全ての造成地が被災したわけではない。造成年代が同程度である、また、開発エリアが隣接するにも関わらず、その被害規模や被災(変形)形態が大きく異なる事例をいくつか確認した 1)。本論では、被害規模の大小や被害の有無について、「基盤岩(盛土材)のスレーキング特性」に着目し、今後の宅地地盤評価のあり方について私見を述べる。2.造成宅地被害とスレーキング区分の関係仙台市の丘陵地は、第四期更新世および新第三紀鮮新世から前期中新世の砂岩・シルト岩・礫岩(凝灰質なものも多い)・凝灰岩・亜炭などいわゆる堆積軟岩を主体に構成されている。一方、三滝層などの一部には、硬質な安山岩や玄武岩などの溶岩や貫入岩も含まれている 2)。仙台市内の造成地は、その対象岩盤が 10 層以上と多岐にわたる、また上述のような新しい時代の地層を対象としている、加えて、地質時代が第四紀更新世から新第三紀前期中新世までとある程度幅広いことなどが特徴といえる。表-1 は市川 3)による調査結果である。市川 3)は試験結果と宅地被害の関係を以下のように説明している。・新第三紀の岩盤であっても年代によりスレーキング区分は 0~4 と大きな差異がある。特に三滝層は岩相によって異なる。・緑ヶ丘 4 丁目や折立 5 丁目など大規模変形を生じた地区では、地下水位が高く(盛土内が地下水で飽和された状態)、かつ岩盤のスレーキング区分が 3 ないし 4 と大きな値を示していた。・スレーキング区分が大きくても地下水位が盛土内に存在しない場合は、地震時の変状が大規模とならない可能性がある。・スレーキング区分が 0 を示す地区では、宅地被害が生じていないケースが多い。表-1 スレーキング試験結果・地下水状況 3)時代地層第四更新世緑ヶ丘 4 丁目大規模被害地下水位*2地表付近(盛土内)GL-6.8m(岩盤内)ボーリングで確認されずGL-3.0m、4.4m(岩盤内)GL-3.5m(盛土内)地表付近(盛土内)供試体採取箇所露 頭4凝灰岩凝灰質砂岩2~4緑ヶ丘 1 丁目小規模被害凝灰質砂岩1萩ヶ丘小規模被害凝灰質砂岩4八木山香澄町中規模被害シルト岩4折立 5 丁目大規模被害シルト岩2---露 頭安山岩(溶岩)0---露 頭粗粒砂岩4折立 5 丁目西花苑大規模被害安山岩質礫岩4折立 5 丁目大規模被害綱木層凝灰質シルト岩0南ニュータウン被害なし旗立層シルト岩0羽黒台被害なし高館層安山岩0羽黒台被害なし向山層三中 期中新世前 期中新世被災の有無と規模*1凝灰質砂岩竜の口層後 期中新世試料採取箇所近傍の代表造成地青葉山層第紀スレーキング区分3大年寺層新相風化礫岩紀鮮新世岩三滝層長嶺中規模被害地表付近(盛土内)地表付近(盛土内)不 明(未調査)不 明(未調査)不 明(未調査)露 頭ボーリングコア*3露 頭露 頭露 頭露 頭露 頭露 頭露 頭露 頭*1.大規模被害:0.5~1m 程度以上の地すべり的変状、中規模被害:50cm 以下程度の地すべり的変状、小規模被害:ひな壇の小崩壊および石積み擁壁の部分的変状等、*2.地下水位:宅地復旧業務などで確認した水位、*3.ボーリングコア:室内に 1 年間保管した試料Features of Sendai Construction Residential LandDamage as seen from the Slaking Characteristics ofBanking MaterialsICHIKAWA,Ken Fukken Gijyutsu ConsultantSATO,Singo Fukken Gijyutsu ConsultantYAMAGUCHI,Shuhei Fukken Gijyutsu Consultant27 3.我が国の岩盤分布と過去の大規模地震による宅地被害日本列島の地質図 4)を図-1 に示した。日本列島の地質は、水色の第四紀層、黄色の第三紀層、赤色系統の花崗岩など、火山岩類および堆積岩類がモザイク模様をなして複雑に分布している。そして、多くの断層や活火山が存在していることも特徴的である。また、過去の地震による顕著な宅地被害事例を文献5)、6)などから整理し、表-2 に示した。我が国においては、5~10 年サイクルで大規模な地震被害が発生している。丘陵地の造成地に着目した被害は、谷埋め盛土や腹付け盛土の(地すべり的)変状に加え、液状化も発生している。地質と被害状況の関係は、現段階では一概に言えないが、盛土材となる岩盤が、地下水に対して脆弱である、またスレーキングや風化しやすいなどの特徴を有しているようにも推察される。表-2時代地震十勝沖地震札幌市1978 年宮城沖地震仙台市白石市1987 年千葉県東方沖地震千葉市1993 年釧路沖地震釧路市1995 年兵庫県南部地震西宮市2000 年鳥取県西部地震境港市米子市2004 年新潟県中越地震長岡市2011 年2011 年東北地方太平洋沖地震仙台市日本列島の地質図 4)過去の地震と造成宅地被害の概要 5)、6)代表的な宅地被災地区1968 年図-1被害状況代表的な地質(造成材料)・谷埋め盛土部のすべりや沈下、液状化により 76 戸が被災・我が国最初の大規模造成地による地震被害事例・谷埋め盛土の大規模被害、多くの住宅が大きく被災・造成盛土地の被害が注目されるようになった地震被害事例・丘陵地の造成盛土が崩壊・液状化被害、ブロック塀の倒壊等も発生第四紀、第三紀堆積軟岩・谷埋め盛土の崩壊軽石質火山灰・谷埋め盛土宅地の崩壊や変状・被災箇所数、100 箇所以上と甚大な被害・平坦地の造成地(竹内団地、安倍彦名団地、富益団地)・液状化、沈下、傾斜被害・腹付け盛土の滑動崩落被害・高町団地が代表的・5,700 宅地、160 地区と極めて甚大な被害・1978 年宮城県沖地震で被災無しの地区もこの地震で被災火山灰-風化花崗岩(マサ土)沖積層第四紀更新世砂・粘土・砂礫第四紀、第三紀堆積軟岩4.スレーキング等盛土材料の強度低下を踏まえた宅地地盤評価のあり方上述したように、宅地地盤における地震時の被害規模の大小には、盛土材料の強度特性や地下水状況などが強く影響してくると推察される。そして、宅地地盤を適切に評価するためには、スレーキング特性や風化の進行程度、加えて地下水が将来的に上昇するか否かなどを予測することがより重要になると考える。一方、通常、造成宅地における地盤調査は、スウェーデン式サウンディング試験で実施されるが、この場合、試験の特性上、盛土材料のスレーキング特性を把握することはできない。スレーキング特性を把握するためには、ボーリングコアや露頭から採取した岩塊を用いた、スレーキング試験の実施が必要となる。軟岩や風化岩起源の盛土は、造成直後は一定程度の強度を有するが、スレーキングや風化等の影響による強度低下も想定しておかなければならないと考えている。5.おわりに住宅を支える宅地地盤を適切に評価することは、我々地盤技術者が果たすべき使命の一つと考えている。今後は、スレーキング特性を踏まえた宅地地盤の評価のあり方を調査段階でどのような対応をとるのか(どこまで評価する、将来予測を行なうのか)。また、設計段階において将来発生し得るスレーキングに対し、どのような配慮をするか。また、既存宅地や新設宅地において、スレーキングに対する対策工の検討方法などについても課題となってくる。今後は、データを積み重ね、スレーキング材料と宅地地盤に関する知見を深める研究を進めていきたいと考えている。【参考文献】1)市川ら:仙台市造成宅地被害の特徴を盛土地盤中の地下水から考察する、第 49 回地盤工学研究発表会、pp.1685-1686、2014 年 7 月2)仙台地域の地質:通産省業省工業技術院 地質調査所、1986 年 3 月3)市川:仙台市造成宅地被害の特徴を岩盤のスレーキング特性と地下水から考察する、第 50 回地盤工学研究発表会、pp.1977-1978、2015 年 9 月4)http://www.zenchiren.or.jp/tikei/oubei.htm5)造成宅地における耐震調査・検討・対策の手引き-地震から既存の住宅を守るために-:社団法人地盤工学会関東支部造成宅地の耐震調査・検討・対策方法に関する検討委員会 、2007 年 2 月6)大規模盛土造成地の滑動崩落対策推進ガイドライン及び同解説:国土交通省、2015 年 5 月28
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  • タイトル
  • 盛土造成地上の木造建物被害率に影響する要因分析の-事例
  • 著者
  • 山口秀平・佐藤真吾・市川 健
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 25〜26
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100013
  • 内容
  • 0013第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月H - 10盛土造成地上の木造建物被害率に影響する要因分析の一事例宅地造成地 地盤震害 要因分析復建技術コンサルタント正会員○山口 秀平復建技術コンサルタント正会員佐藤 真吾復建技術コンサルタント正会員市川健1.はじめに大地震時における谷埋め盛土造成地の木造建物被害は,盛土地盤の品質に大きく影響を受けることがわかっている。しかし,住宅が存在する状態で盛土地盤の品質を地盤調査で把握することは,個人の費用負担を考慮すると容易ではない。このため,造成年代,現地盤勾配,旧地形勾配等の机上で得られる情報から当該宅地の地盤リスクが概ね把握できれば,宅地地盤補強の必要性の判断や地盤調査実施の意思決定に役立つものと考える。本稿は,2011 年東北地方太平洋沖地震における仙台市造成宅地の木造建物被害データを用いて,机上で得られる情報から木造建物被害への影響度合いを分析した結果の一事例を報告するものである。2.分析方法と使用データ分析には判別分析法を用いた。被害データには罹災証明を利用し,木造被害データ(被害率の分母となるデータ)には,基盤地図情報の建築物データ(国土地理院)1)を利用した。分析に用いた盛土造成地上の木造建物数,被害件数,被害率を表 2.1 に示す。なお,本表 2.2 分析に用いた独立変数の設定区分と出典独立変数計測震度稿では被害認定区分が半壊以上のデータで分析した結果を報告する。また,机上で入手可能な情報であるという理由から,建物被害造成年代への影響因子として,造成年代,現地盤勾配,旧地形勾配,盛土厚さを選定し,計測震度を加えて,各要因の影響度合いを分析した。現地盤勾配これらの独立変数の設定区分と出典を表 2.2 に示す。なお,区分の設定は既往の研究 2)等を参考としている。旧地形勾配表 2.1 盛土造成地上の建物数,被害件数および被害率半壊以上件数被害率木造建物8,37916.8%盛土厚さ49,904―設定区分出典5 強(5.0∼5.5)6 弱(5.5∼6.0)6 強(6.0∼6.5)1964 年以前1965 年∼1988 年1989 年以降6 度未満6∼10 度10 度超10 度未満10∼20 度20 度超2∼8m8∼16m16m 超計測震度推定データ 2)仙台市宅地造成履歴等情報マップ(造成年代図)3)基盤地図情報数値標高モデル(5m メッシュ)1)・旧版地形図・米軍空中写真仙台市宅地造成履歴等情報マップ(切土・盛土図)5)3.分析結果分析結果を表 3.1,図 3.1 に示す。建物被害率への影響度合いを示すレンジは,計測震度が 0.95,造成年代が 3.05,現地盤勾配が 0.50,旧地形勾配が 0.62,盛土厚さが 0.35 であり,影響度が大きい項目から順に,造成年代,計測震度,旧地形勾配,現地盤勾配,盛土厚さという結果であった。表 3.1 判別分析結果独立変数計測震度造成年代現地盤勾配旧地形勾配盛土厚さ区分5 強(5.0∼5.5)6 弱(5.5∼6.0)6 強(6.0∼6.5)1964 年以前1965 年∼1988 年1989 年以降6 度未満6∼10 度10 度超10 度未満10∼20 度20 度超2∼8m8∼16m16m 超データ数8,16341,6974411,14736,1132,64439,7037,6782,52313,93117,30018,67326,34416,5986,962カテゴリスコア00.9400.9490-1.559-3.05200.4980.40800.2870.62300.3540.047レンジ0.953.050.500.620.35図 3.1 判別分析結果(カテゴリスコア)One case of factor analysis that affect the wooden buildingYAMAGUCHI Shuhei, SATO Shingo and ICHIKAWA Kendamage rate of residential landfillsFukken Gijyutsu Consultant25 4.考察独立変数ごとの考察及び分析結果の利用例を以下に述べる。4.1 計測震度建物被害率への影響度合いを示すレンジは 0.95 であり,最も影響度合いの大きかった造成年代(レンジ 3.05)と比較すると,影響度合いは 3 分の 1 程度という結果であった。また,計測震度のカテゴリスコアは 5 強;0,6 弱;0.940,6強;0.949 であった。このことから,地震による揺れが強いほど建物被害が起きやすいという妥当な傾向が得られたものの,6 弱と 6 強ではあまり差がみられなかった。この理由は,今回得られた計測震度が 6 弱に集中しており,6 強のデータ数が全データの 0.1%未満と極めて少なかったため,6 強のカテゴリスコアは 6 弱の値とあまり変わらない結果になったものと考えられる。4.2 造成年代造成年代は,仙台市が宅地造成等規制法を適用開始した 1965 年(昭和 40 年)と,宅地防災マニュアルが制定された1989 年(平成元年)を考慮し,1964 年以前,1965 年∼1988 年,1989 年以降の 3 つに区分し分析を行った。その結果,建物被害率への影響度合いを示すレンジは 3.05 であり,選定した項目のうち最も高い結果であった。また,カテゴリスコアは 1964 年以前;0,1965 年∼1988 年;-1.559,1989 年以降;-3.052 であり,盛土地盤の造成年代が新しいほど,建物被害が起きにくいという結果が得られた。この結果より,宅地造成等規制法の適用や宅地防災マニュアル制定の影響により盛土の品質が向上し,耐震性も向上したものと考えられる。また,造成年代が 1981 年以降の盛土造成地上にある建物は,1981 年の新耐震基準の適用により,建物の耐震性が向上したことも考えられる。4.3 現地盤勾配現地盤勾配のカテゴリスコアは,6 度未満;0,6∼10 度;0.498,10 度超;0.408 であり,6 度未満と 6 度以上では大きな差がみられたが,6∼10 度と 10 度超の区分では大きな差は得られなかった。ただし,建物被害率への影響度合いを示すレンジは 0.50 であり,建物被害率への影響度合いは比較的小さい。4.4 旧地形勾配旧地形勾配のカテゴリスコアは,10 度未満;0,10∼20 度;0.287,20 度超;0.623 であり,旧地形勾配が大きい程被害が起きやすいという結果が得られた。ただし,建物被害率への影響度合いを示すレンジは 0.62 であり,建物被害率への影響度合いは比較的小さい。4.5 盛土厚さ盛土厚さのカテゴリスコアは,2∼8m;0,8∼16m;0.354,16m 超;0.047 であり,盛土厚さ 8∼16m が最も大きく被害に影響するという結果が得られた。ただし,建物被害率への影響度合いを示すレンジは 0.35 であり,建物被害率への影響度合いは最も小さい。4.6 分析結果の利用例判別分析結果は地震被害リスクの検討に活用でき,カテゴリスコアの総和が正の数であれば「被害あり」,負の数であれば「被害なし」と判定される。例えば,設定条件が,計測震度 6 弱,造成年代 1965-1988 年,現地盤勾配 6∼10 度,旧地形勾配 10 度未満,盛土厚さ 8∼16m の場合,カテゴリスコアの総和は 0.233(0.940-1.559+0.498+0+0.354)となり,正の数であるため,「被害あり」と判定される。また,造成年 1989 年以降のカテゴリスコアは-3.052 であり,他のカテゴリスコアの最大値を全て加えても 2.415 しかならないため,造成年代が 1989 年以降であれば,他の項目の条件にかかわらず「被害なし」と判定される。このことから,本判別分析結果においては,選定した項目の中で,造成年代が建物被害に及ぼす影響は極めて大きかったことがわかる。5.まとめ東北地方太平洋沖地震による仙台市の盛土地盤上の木造建物被害データ,計測震度データ,造成年代データ,現地盤勾配データ,旧地形勾配データ,盛土厚さデータを使用し,木造建物被害率への影響度合いを判別分析法により分析した。その結果,造成年代のカテゴリスコアは,他の項目と比較して 3 倍以上の影響度であった。また,カテゴリスコアに着目すると造成年代が 1989 年以降の盛土地盤の建物は被害なしと判別される結果となり,造成年代が東北地方太平洋沖地震における仙台市の盛土造成地上の建物被害に及ぼす影響は極めて大きいことが判明した。このことから,机上で得られる情報により,当該地盤の地盤リスク評価を実施する場合は,第一に,盛土の品質(耐震性)を表す指標となる造成年代を把握し,地盤調査実施の検討を行うことが重要であると考える。【参考文献】1)国土地理院:基盤地図情報サイト<http://www.gsi.go.jp/kiban/>2)佐藤真吾,風間基樹,大野晋,森友宏,南陽介,山口秀平:2011 年東北地方太平洋沖地震における仙台市丘陵地造成宅地の被害分析-盛土・切盛境界・切土における宅地被害率と木造建物,日本地震工学会論文集 第 15 巻,第 2 号,pp.97-126,2015 年.3)仙台市:仙台市宅地造成履歴等情報マップ(造成宅地地盤図),2013 年.<http://www.city.sendai.jp/kurashi/bosai/shiryo/rirekimap.html,>4)仙台市:仙台市宅地造成履歴等情報マップ(切土・盛土図),2013 年.<http://www.city.sendai.jp/kurashi/bosai/shiryo/rirekimap.html,>26
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  • タイトル
  • 住宅地盤改良工事のトラブル事例とその対策
  • 著者
  • 橋本光則
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 23〜24
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100012
  • 内容
  • 0012C - 03第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月住宅地盤改良工事のトラブル事例とその対策沈下1.地盤改良住宅地盤品質協会正会員橋本光則はじめに住宅地盤品質協会では、住宅の地盤改良の事故事例を種々取りまとめ開示している。1)、2)またそれらの反省から調査設計施工の技術基準書を作成し事故防止に努めてきた。これらは、保険法人や地盤保証会社の保証に際しても利用されたこともあり、その後の事故事例が減少したのが現状である。しかしながら横浜のマンション傾斜問題におけるデータ流用問題に端を発して住宅地盤工事に対する世間の関心が増大していることも確かである。改良工事におけるトラブルの原因は、盛土と擁壁と固化不良がキーワードである。当協会の技術委員会では、トラブル事例の中で深層混合処理における固化不良と、擁壁近接での埋土の沈下問題に重点を置いて、固化不良では 2度打ち施工の挙動と対策を提案 3)し、盛土の沈下については水浸沈下の現場試験法(案)4)を提案している。ここでは、地盤品質判定士の業務の参考として住宅地盤改良工事の不同沈下のトラブル事例とその対策について述べる。2.事例コラムの高止まりと水浸沈下によるネガティブフリクションの事案現場は氾濫平野に隣接する台地の低位面に位置し、造成されてからの経過年数はかなり長いと推定される。建築の際に計画建物(木造 2 階建て)の対角 3 箇所(測点 A-1~A-3 の 3 測点)をスウェーデン式サウンディング試験による地盤調査を実施している。図-1 図-2 に事前および建築半年後の不同沈下確認後の調査結果を示す。地盤改良工事は深層混合処理(以下柱状改良)で改良径 600mm長さ 2.5m(東側)~4.0m(西側)実施している。図-2 調査位置及び沈下状況(mm)図-1 スウェーデン式サウンディング試験結果測 点 B-1( 沈 下 後 追 加 調 査 )測 点 A-1( 事 前 調 査 )Wsw0.250.5Nsw0.7550100150Wsw2002500.25001122334455測 点 A-2( 事 前 調 査 )0.5Nsw0.7550100150200250B-2A-3A-26Wsw0.250.5Nsw0.7550100150200A-12500測 点 B-2( 沈 下 後 追 加 調 査 )Wsw10.252031425364Wsw0.5Nsw0.750.7550100150B-1200250天端基準ライン-1-35測 点 A-3( 事 前 調 査 )0.250.5Nsw501001506200250071829-4±0-9-103-184不同沈下の原因沈下発生後の追加調査 B-1,B-2 をみると、当初の 3 か所の調査により追加調査を行わず設計時に支持地盤の傾斜を見誤ったことと、施工時の打ち止め管理が十分になされていなかったことが原因である。また水浸沈下によるネガティブフリクションの発生が考えられる。切土・盛土による要注意な不均質地盤であること、造成による地層の変化が存在することなど、不同沈下を誘発する危険因子が多くあることを認識すべきであった。Measures and trouble of improvement work of the housingMitsunori Hashimoto, Residential ground Quality Associationground23 3.今後の対策3.1 設計上の留意点調査本数は最近では建物 4 隅と中央の 5 か所で実施されるので今回のような調査不足による事故は回避されることと思う。事故から学ぶ教訓として、支持力の計算がある。柱状改良では、支持力を設計すると径が大きいため周面摩擦が大きく採れ住宅を支えるには十分な支持力が出る。盛土の地盤においては施工後の年数が経過しているとはいえ、緩い盛土であれば浸水などの影響で地下水の変化があれば、水浸沈下が発生する可能性を考慮する必要がある。不安な場合は澁谷らによる「水浸沈下の住宅地盤の性能評価のための原位置試験方法ガイドライン(案)」を利用すれば容易に判定できる。盛土で水浸沈下が発生しネガティブフリクションの影響で柱状改良コラムが沈下した事例は、住宅地盤品質協会の出版図書にも種々記載がある。実務的には盛土では周面摩擦を計算しない手法をとる場合もあるが、建築基礎構造設計指針に示された負の摩擦力の検討手法を使用するのがよい。柱状改良でネガティブフリクションの計算を実施した場合コラムの耐力が不足するケースがある。柱状改良は設計基準強度 600kN/㎡程度であるが耐力が不足する場合は設計基準強度をさらに高めに設定する必要がある。新しい盛土の下部に軟弱地盤があり、盛土の沈下でネガティブフリクションが発生し、コラムが破壊した事例も報告されている。写- 1 盛土造成地盤における水浸沈下の様子(例)3.2 施工上の留意点今回のような改良深さが変動する事例の場合、施工時に設計者の意図を理解して打ち止め管理をきちんと行っておればこのようなことにはならない。そもそも柱状改良は支持力が出やすいため先端の N 値が低い場合が多い。当協会基準では N=3 以上である。当事例においても先端 N 値を低めに設定している。この場合の打ち止め管理を明確に行うのは難しい。柱状改良で打ち止め管理が厳格に必要な場合は、先端 N 値を高めに設定する必要がある。またオペレータ教育を行い、管理手法を徹底することと、今回のような現場では特に設計者にフィードバックしながら施工することが必要である。昨年、杭打ちデータ流用問題が発生したが、住宅地盤業界においても打ち止め管理を含め施工管理面の再徹底を行う必要性を感じている。4.まとめ住宅地盤のトラブル事例は本報告のように盛土に起因するケースが多い。また盛土自体の問題としては水浸沈下が絡むケースも多い。また改良工事では柱状改良が多用されることからも固化不良に次いで水浸沈下と絡んだネガティブフリクションの問題事例もみられる。今後同様な事例が発生した場合には本報告が少しでも参考になれば幸いである。土木系の地盤工学と比べると住宅の地盤工学はその荷重が低く問題となる変位量も小さい。調査および工事費が安い割には保証制度など責任は重い。地盤品質判定士が創設され実務での活動が望まれるわけであるが、住宅地盤のトラブルにおいては、地盤工学技術を駆使して業界の動向を理解し業務を遂行していただきたいと思う。参考文献1)住宅地盤品質協会編:強い住宅地盤―住宅地盤の事故例に学ぶ―、総合土木研究所、20112)住宅地盤の補強工法設計例、住宅地盤品質協会、20103)橋本光則・本多典久・深谷敏史・加藤秀明:住宅地盤の柱状改良における固化不良コラムの再混合と打ち継いだ場合の挙動について、第 51 回地盤工学研究発表会4)片岡沙都紀・岡本健太・澁谷啓・齋藤雅彦・芥川真一・橋本光則・本多典久:宅地盛土の原位置水浸沈下試験方法の開発 その 1:原位置および室内試験、第 50 回地盤工学研究発表会24
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  • タイトル
  • 東日本大震災によって被害を被った福島県内の宅地地盤の変状事例
  • 著者
  • 原 勝重
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 21〜22
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100011
  • 内容
  • 0011C - 08第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月東日本大震災によって被害を被った福島県内の宅地地盤の変状事例土砂災害,谷埋め盛土,抑止工新協地水株式会社国際会員原勝重1.はじめに東北地方太平洋沖地震の福島県内の震度は,59 市町村のうち南西会津地方を除く 47 市町村で震度5強~6強1)であった。また,会津地方を除く,中通り・浜通り地方の三成分合成加速度は,252gal~1,425gal2)であり,特に中通り中央部から南部の郡山市,白河市および西郷村においては,1,110gal~1,425gal と非常に大きい三成分合成加速度が観測された。このように非常に大きい地震動に見舞われた宅地造成地においては,地盤の変状が至るところで見られた。本報告は,東北地方太平洋沖地震によって被害を被った福島県内の中通り地方における宅地造成地盤の変状状況調査~地盤調査~対策工立案までの事例を紹介するものであり,本事例から地盤品質判定士の皆様が既存の宅地造成地盤の調査・対策工に関する知見の一助になることを望むものである。2.被害を被った宅地造成地の変状状況調査結果の概要福島県の中央部に位置する中通り地方は,阿武隈山地と奥羽山脈に挟まれた阿武隈低地帯と呼ばれる白河丘陵,郡山台地,福島盆地など比較的平坦な地域である。この中央部を阿武隈川が北流し,太平洋へと注いでいる。また,この地域には,南から白河市,須賀川市,郡山市,本宮市,二本松市,福島市などの中小都市が連なり,東北本線,東北新幹線,国道4号線,東北自動車道が通り,経済活動の軸線でもある。この地域には,昭和 40 年代から経済活動の拡大に伴って,中小規模の宅地造成が数多く行われた。これらの宅地造成地は,丘陵地を切土し,沢地形や谷地形を埋め立てることによって宅地化されたいわゆる谷埋め盛土からなるものが多い。地震によって被害を被った宅地造成地と変状状況を表-1に示した。また,図-13)にはその概略位置を示した。この表に示した郡山市の No.3 地区を除いた宅地造成地が,谷埋め盛土箇所である。また,表-1に示す被害を被った宅地造成地は,福島市の No.1 地区4)を除いて,地震後に変状状況調査を行った箇所であり,図-1に示すように福島県中通り地方の中央部に当たる県中地域を主に行った。調査後には対策工を視野に入れた地盤調査の提案を行った。3.調査結果と対策工の事例表-2には変状状況調査後に調査提案を行って実施した本宮市 No.2 地区 2 箇所,郡山市 No.4 地区 2 箇所箇所および須賀川市 No.6 地区 1 箇所の計 5 箇所の調査・試験・計測の結果と対策工立案結果を示した(福島市 No.1 地区4)は参考)。本宮市の No.2-1 箇所は,住宅が不同沈下を生じた箇所であり,機械ボーリング調査の結果,地下水は見られないものの,盛土厚さが建物の東南側で 11.35m であるのに対し,北西側では 18.0m と約 7m の盛土厚の違いが見られた。対策工としてはアンダー(サイド)ピニングによる建物の沈下修正の提案を行った。No.2-2 箇所は,盛土のり面ののり肩近傍の宅地地盤の南側庭に開口段差亀裂が多数見られたために,機械ボーリング後にパイプ歪計を設置して観測した結果,変動の進行が見られなかったため,亀裂充填と庭の沈下修正盛土の提案を行った。郡山市の No.4 地区(No.4-1 箇所,No.4-2 箇所),須賀川市の No.6 地区は,開口段差亀裂が幅 30cm 程度,段差 10~20cm程度見られ,宅地地盤の滑動(地すべり的)が懸念されるとともに,余震時や降雨後に変状が進行するとの聞き取り結果から,機械ボーリング後にパイプ歪計を設置して歪変動を観測した。その結果,余震時や降雨後に歪変動が現れ,「準確定変動」を示すことから,すべり解析を実施して,抑止工として抑止杭工(くさび杭,抑え杭)の提案を行った。表-1宅地造成地の変状状況調査箇所宅 地 造 成 地No.1 4 )福島市伏拝地区(あさひ台団地)変 状 状 況宅地地盤の滑動(地すべり的)地 盤 状 況No.2本宮市岩根地区(みずきが丘団地)不同沈下,宅地地盤の谷埋め盛土段差,開口亀裂No.3郡山市安積町荒井地区宅地地盤に亀裂,噴砂盛土痕跡No.4郡山市安積町笹川地区(あさか台団地)宅地地盤の滑動(地すべり的)谷埋め盛土谷埋め盛土No.5須賀川市向陽町地区宅地地盤の滑動田圃斜面に盛土No.6須賀川市大久保地区(北田団地)宅地地盤の滑動(地すべり的)谷埋め盛土No.7須賀川市木ノ崎地区宅地地盤の崩壊谷埋め盛土No.8須賀川市南上町地区宅地地盤の滑動田圃斜面に盛土No.9須賀川市前田川地区宅地地盤に亀裂,段差 田圃斜面に盛土No.10 鏡石町岡ノ内地区道路,宅地地盤の崩壊 畑地に盛土No.11 古殿町三株地区盛土のり面の崩壊,後谷埋め盛土退性すべり図-1福島県3)中通り地方の被害調査箇所Case of debris housing sites in Fukushima prefecture by the 2011 off the Pacific coast of Tohoku EarthquakeKatsushige21HARA (Sinkyo-tisui corporation) 須賀川市 No.6 地区の宅地造成地盤は,杭状地盤補強を行っていたが,旧谷方向へ滑動した。このことから,谷埋め盛土地盤においては,建物を支持表-2市町村名福島市宅地造成地区 No.No.1宅地Kik-net福島354gal土地利用形態付近の三成分合成加速度させるだけでは不充分であることがわかる。この対策工立案のためには,谷変状状況埋め盛土斜面のすべり解析を行う必要調査実施箇所の調査結果と対策工郡山市本宮市4)宅地,道路,公園が崩壊し,崩壊土砂がのり尻の国道4号に流出No.2-1No.2-2No.4-1宅地宅地本宮市庁舎(水平加速度500.2gal)住宅の不同沈下 宅地敷地に開口(0.65°),道路に 段差亀裂および沈下段差亀裂No.4-2宅地宅地K-net郡山1,110gal宅地地盤に開口段差亀裂多数発生し,水路壁が谷埋め盛土の押し出しにより変形宅地地盤に開口段差亀裂多数発生し,水路壁が谷埋め盛土の押し出しにより倒壊があった。このことは,郡山市の No.4地区においても同様であった。宅地地盤の滑動やすべりが懸念された地区は,No.4 地区,No.6 地区の他にも表―1に示した No.1,No.5,No.8,No.11 の各地区である。谷埋め盛土からなる宅地造成地盤は,地震時に滑動5)しやすいといわれている 。No.4 地区,造成年代盛土勾配および段数谷埋め盛土厚(m)盛土材料また,本事例の特徴として,地下水平成の初め1:1.8(3段?29m)D=12.7(崩壊後の盛土厚)火砕流堆積物(ローム質)盛土層の最小N値 (回)地下水位GL- (m)パイプ歪計観測による変動種別No.6 地区においても地山と盛土の境界付近ですべりが発生している。昭和40年代1:1.8須賀川市No.6宅地K-net須賀川684gal宅地地盤に開口段差亀裂および沈下が多数発生し,盛土のり面・のり尻擁壁に押し出し変形。余震により変形する平成の初め1:1.8昭和50年代1:1.5昭和50年代1:2.0昭和50年代1:2.5(6段)(5段)(1段+水路)(1段+水路)(1段+擁壁)D=11.35~18.0D=15.15D=3.81D=4.4D=5.85シルト・砂互層シルト・砂互層砂質シルト流紋岩の岩塊他流紋岩の岩塊他2571以下1以下0(モンケン自沈)2.55-13.651.071.54.04確定変動(測定無し)潜在変動以下準確定変動準確定変動準確定変動保全対象国道,市道,住宅,宅地,公園など住宅,宅地,道路など住宅,宅地,農道など河川,住宅,宅地,市道など河川,住宅,宅地,市道など住宅,宅地,擁壁,農道,田圃など対 策 工地表水・地下水排除工,排土工,アンカー工アンダー(サイド)ピニング亀裂充填,沈下修正盛土抑止杭工(くさび杭),水路再設置抑止杭工(抑え杭),水路再設置抑止杭工(くさび杭)位が高いこと,盛土材料がローム質土,シルト・砂互層,砂質シルトなど粘性土主体であること,さらに,盛土層内の最小N値が,No.1 地区で N=2,No.4 地区で N=1 以下,No.6 地区で N=0 と非常に小さい値であることなどが挙げられる。なお,流紋岩の岩塊を用いて盛土を行った No.2 地区(No.2-1 箇所,No.2-2 箇所)の地下水位は低く,N値は,N=5~7であり,No.1 地区,No.4 地区,No.6 地区の変状に比べて軽微な変状であった。4.宅地地盤の調査・対策工に係わる問題点について東北地方太平洋沖地震によって被害を被った宅地造成地盤について,変状状況調査を実施し,その結果をもとに調査提案を行って地盤調査を実施した。さらに,調査結果をもとに対策工の立案も行った。宅地造成地盤の地震動による変状状況調査を実施した結果,福島県中通り地方中央部の県中地域においては,谷埋め盛土された宅地造成地盤の被害が顕著であった。このような谷埋め盛土の被害については,1978 年の宮城県沖地震においても報告6)されており,東北地方太平洋沖地震においても仙台市内の多くの宅地造成地においても報告7)されている。①変状状況調査の実施に際しての問題としては,造成時の資料がほとんど無いことである。昭和 50 年代の造成地でも造成前の平面図と造成計画平面図があれば良い方であった。このため,昔の空中写真や地形図と現在のものを比べることにより,盛土箇所の特定を行った。このように,人工的な地形の変遷や災害履歴を含めた資料調査は重要であり,「仙台市宅地造成履歴情報マップ」8)や「東京都大規模盛土造成マップ」9)などの情報公開は非常に有用である。②谷埋め盛土造成地盤の地震時安定の問題としては,杭状地盤補強を行っていても旧谷方向へ滑動することである。このため,豪雨時や地震時の宅地造成地盤の安定性を考慮する場合には,建物を支持させるための検討だけでは不充分である。また,滑動すると抑止工を行わざるを得なくなることから,抑止工検討のための地盤情報が必要となる。したがって,造成地の地盤構造や地盤状況の把握,盛土材料の材質・締め固めの程度,地盤の強度定数を含めた物性値の把握などの情報を得る必要がある。本事例においては,機械ボーリング,標準貫入試験,スウェーデン式サウンディング試験,簡易動的コーン貫入試験,サンプリング,室内土質試験,パイプ歪計・自記水位計の設置・計測などを実施した。これらの調査項目は,地震被害後の対策ではなくても必要となるため,十分な地盤情報の取得に努める必要がある。《 引用・参考文献 》1) 福島県災害対策本部:本県の震度と地域,平成 23 年 7 月 6 日2) (独)防災科学研究所防災地震 Web(http://bosai.go.jp):2011 年 3 月 11 日 14:46 最大加速度リスト,2011.4.28 から福島県中通り・浜通りの加速度を抜粋3) 福島県の市町村地図:http://expo.minnade.jp/fukushima.htm に中通り県北,県中,県南を加筆4) 仙頭,中村,佐々木,長谷川:福島市伏拝の造成盛土の崩壊とその復旧,地盤工学会誌,vol.61,No.4,pp.18~21,2013.4.5) 国土交通省:大規模盛土造成地の変動予測調査ガイドラインの解説,平成 20 年 2 月6) 例えば原,大塚,森:白石市寿山第四団地の常時微動特性,第 6 回地震工学シンポジウム,pp.2001~2008,1982 年 12 月7) 佐藤慎吾:宅地・建物・ライフライン被害と分析,(公社)地盤工学会土構造物耐震化研究委員会第 2 回ワークショップ,平成 25 年8) 仙台市都市整備局:仙台市宅地造成履歴等情報マップ,仙台市ホームページ(http://www.city.sendai.jp)より9) 東京都都市整備局:大規模盛土造成地マップ,東京都ホームページ(http://www.metro.tokyo.jp)より22
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  • タイトル
  • 大規模な宅地盛土造成地の地形改変の把握と検証
  • 著者
  • 藤田安秀・高山陶子・花井健太
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 19〜20
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100010
  • 内容
  • 0010B - 09第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月大規模な宅地盛土造成地の地形改変の把握と検証大規模造成地谷埋め盛土赤色立体地図アジア航測株式会社アジア航測株式会社アジア航測株式会社正会員○藤田安秀高山陶子花井健太1.はじめに近年、中越沖地震、東日本大震災等の大地震で、丘陵地の谷地形を大規模に盛土造成した宅地において地滑り的変動(滑動崩落)が発生した。これに対して、国土交通省は平成18年度以降、宅地耐震化推進事業を促進させ、地方自治体は、大規模盛土造成地の抽出、変動予測調査等を実施するとともに、大規模盛土造成地マップの作成、公開をはじめている。なお、大都市に近接する地域においては、昭和30年以降の人口増加に伴って住宅地が順次整備されてきたことから、造成地は相当数有しており、特に丘陵地周辺には大規模な宅地造成地が多数存在している。本稿では、都市部の丘陵地域における造成に伴う地形改変の状況を効果的に把握し、精度の高い大規模盛土造成地を抽出した手法と、抽出結果について、現地調査結果を用いて検証した事例を報告する。2.大規模盛土造成地マップの作成概要大規模盛土造成地とは、盛土面積が 3,000 ㎡以上ある谷地形を埋めた盛土(谷埋め盛土)または、盛土する前の地盤面が水平面に対して 20 度以上で、かつ盛土の高さが 5m以上のもの(腹付け盛土)をいう。この条件に該当する盛土部を抽出したものが、「大規模盛土造成地マップ」である。大規模盛土造成地の抽出方法については、各自治体が保有する既往資料により様々な手法が考えられるが、大都市域近郊においては、航空レーザ計測による数値標高モデル(DEM:表-1 使用した主な基礎資料・基礎データ目的主な基礎資料・基礎データ造成前の資料(旧地形データ)ってきたことから、現地形情報としては、この DEM データを用タ)を用いて、差分解析を行うことにより地形改変について把握を行った。ただし、差分解析の結果については、旧地形データの精度の低さによって、多くのエラー抽出が生じるため、多様な手法により精査することが必要であった。現地形 赤色立体地図・等高線図主に現況状況を把握に使用・デジタルオルソ空中写真(20cm解像度)現地状況の把握(場合によりGoogleマップやGoogle Earthも有効)・都市計画基本図(DMデータ)・地質図(1/50,000程度)大規模盛土造成地マップ基図に使用盛土材料の推定に使用・旧版都市計画図(昭和36年前後)開発年代資料造成年代の分類に使用(昭和37年前後に分類)・旧版地形図(昭和36年前後)・宅地開発許可申請資料・宅地造成等規制法許可区域データ・旧事業法認可区域範囲データ・土砂災害警戒区域データ・急傾斜地崩壊危険区域データ・都市計画基礎調査データ造成後標高データ(昭和37年に宅地造成等規制法 施行)【基礎データの整理】宅地造成等規制区域、旧事業法認可区域土砂災害警戒、急傾斜地崩壊危険区域主要公共施設(緊急輸送路、河川、避難所等)その他社会的要因データを整理・平成18年度計測の航空レーザデータを使用造成前標高データ・昭和22年撮影の空中写真(米軍写真等)より写真測量技術で作成造成前後の標高差分算出、差分≧1mのメッシュを抽出スクリーニング作業No面積≧25㎡対象外Yes地形判読により盛土形状を分割・赤色立体地図等を用いて一団の盛土に分割宅地盛土でない宅地盛土かどうか対象外・オルソ空中写真等を用いて現状の利用形態を判定宅地盛土地形判読により谷埋め/腹付けを分類3. 地形改変の把握に赤色立体地図を利用大規模盛土造成地の抽出(スクリーニング作業)にあたっては、新旧の DEM データを用いて地形を立体的に表現する「赤色立体地図」(図-2)を作成した。これにより、地形の改変履歴がわかりやすく表現することが出来たとともに、精査する上でも効果的な資料となった。なお、造成前後の地形の変化を赤色立体地図で可視化することは、一般市民に対して説明する上でも、非常にわかりやすい基礎資料となる。現地形 DEMデータ(2.5mメッシュ)(造成後地形の把握に有効)い、造成前の旧地形情報については、旧版地形図のほか、旧空中写真から写真測量技術により作成した地形データ(DEM デー(盛土種類(谷埋め・腹付け)の判別に有効)造成後の資料 ・航空レーザ測量データ(平成18年計測)(現地形データ) (2.5mまたは5.0mメッシュが作成可能なデータ)その他Digital Elevation Model)データが整備、公開されるようにな作成資料・備考旧地形 DEMデータ(2.5mメッシュ)旧地形 赤色立体地図・等高線図・撮影 米軍写真(昭和20年代撮影)(1/10,000、1/40,000写真)腹付け・赤色立体地図等を利用して判読谷埋め谷埋めの判定腹付けの判定No造成前の地盤傾斜角≧20°No造成後の盛土高≧5mNo面積≧3000㎡YesYes対象外Yes盛土の造成時期を昭和37年以前/以後で区分、主測線の設定・旧版都市計画図、宅地造成等規制法許可区域、旧事業法認可区域範囲データ等を使用腹付け大規模盛土造成地谷埋め型大規模盛土造成地図-1 大規模盛土造成地抽出の作業フロー造成前造成後図-2 赤色立体地図判読による谷埋め盛土・腹付け盛土の区分イメージGrasp and Verify the correctness of Artificially Land from Transformed Area19FUJITA Yasuhide, Asia Air Survey CoTAKAYAMA touko , HANAI kenta 4. スクリーニング結果の検証4.1 現地踏査による確認抽出された大規模盛土造成地について、現地踏査を行うと現地でしかわからない特異な情報は多く存在する。なお、大規模盛土造成地として抽出された箇所は、大規模な造成が行なわれた履歴を持つものの、決して大地震時に滑動崩落が発生しやすい危険な場所であるものではない。現地踏査時に地形を確認する中で、造成前の地形の名残が確認できる場所もあれば、完全に過去の地形が現地では到底判断できない場所もあった。現地踏査での着目点は以下に示す。【盛土造成地における現地踏査の主な着目点】□□□□□□(その他、確認事項)□ 滑動崩落の主側線の設定は妥当であるか。□ 盛土範囲は適切であるか。□ 断面図は適切であるか。□ 評価に用いた緒元値は適切であるか。□ 大規模盛土造成地滑動崩落防止事業の適用条件にあたるか(盛土上の家屋数等)□ 他の事業で補強対策が行なわれた状況はあるか。□ 盛土末端部周辺を含めて社会的影響が大きい盛土末端部付近に亀裂や孕み等の変状はないか。盛土造成地内に湧水や湿潤した土地がないか。宅地基礎(ひな壇擁壁等)に変状はないか。盛土境界部付近の側溝にズレはないか。盛土造成地内の道路等に不同沈下はないか。排水機能は適切に機能しているか。4.2 地質調査による検証抽出された大規模盛土造成地のうち、宅地造成等規制法の施行前(昭和 37 年以前)に造成された箇所については、宅地造成に関する規制が不十分であった時代であったことから、新しい造成地に比べて脆弱な状態になっている可能性がある。ここでは、造成後 50年以上が経過している谷埋め盛土において、測量や地質調査を行う図-4 旧空中写真より作成した赤色立体地図図-5 航空レーザ計測から作成した赤色立体地図とともに、スクリーニング作業で設定した盛土規模と実際の盛土状況について検証を試みた。検証の結果は、概ね同様の範囲、厚さで盛土が確認され、机上調査の有効性が確認された(図-3 参照)。ただし、この精度は旧地形の精度に依存するため、すべての場所で同様であるとは限らない。また、地質調査の結果をみると、盛土材料は、概ね地域の地質と同じもので構成されるものの、盛土内部の地下水位は谷埋め盛土部で、高い位置にまで達している傾向があることが分かった。航空レーザデータより作成した赤色立体地図現地盤高(平成18年 航空レーザ)旧地盤高(昭和22年 空中写真)グリンボーNo.1 グリンボーNo.2 85.0(H18 航空レーザ)家家家70.0家道路道路駐車場道路家道路176.29153.8097.91102.7666.2562.0530.0623.414.490.00DL=60.0138.98旧地盤高(S22 空中写真)1:1追加距離道路道路134.5965.0家家図-6 旧版地形図(旧版都市計画図),S36 年(S36 年には既に造成されていたことが確認できる)家80.075.0家現地盤高グリンボーNo.390.0現地測量(縦断線)地下水位線図-3 大規模盛土造成地の主測線上の断面図5.まとめ都市近郊における盛土造成地は、大小様々な開発が行なわれていることから、その抽出を精度よく行うことは非常に難しい。造成履歴や新旧の地形データ等、多くのデータと現地踏査による確認が必要である。なお、スクリーニング作業の中で抽出した造成地区における盛土範囲や盛土の規模等の緒元データは、大規模盛土造成地カ図-7 現在の状況(空中写真)ルテとして整理することにより、今後の詳細調査や、維持管理におけるモニタリング資料として有効な活用が期待できるものである。また、地形の凹凸を可視化した赤色立体地図は、これまで都市域の有効性は、山間部に比べて低いものであったが、新旧の地形を赤色立体地図により可視化することで、大規模盛土造成地の抽出、精査を行う上で有効な手段として活用が期待できるものと考える。なお、地盤品質判定士等の宅地地盤の品質判定や地盤リスクに対する評価を行う技術者は、地質調査結果を判定する能力とともに、既存の地形地質に関する情報収集能力も重要である。特に宅地造成地においては過去の地形が全く不明となっているケースがある。現在、各地で整備されつつある様々な情報をもとに考察する技術力が必要である。図-8 大規模盛土造成地の緒元図<参考資料>国土交通省 宅地防災 HP(http://www.mlit.go.jp/crd/web/)20
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  • タイトル
  • なんだか変だなア、その考え方
  • 著者
  • 尾上篤生・蔡  飛
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 17〜18
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100009
  • 内容
  • 0009E - 00第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月なんか変だなぁ,その考え方パイルドラフト 液状化対策 圧密沈下○興亜開発㈱ 国際会員 尾上篤生群馬大学1.はじめに地盤品質判定士には,科学的な物の見方や考え方が求められる。地盤や基礎にDwAA’関する議論や設計指針・マニュアルなどに,なんか変だなアと感じる事柄が散見されるが,それらを鵜呑みにすると品質不良や過大設計になる可能性がある。そH時刻t0のような数例を紹介し,地盤や基礎の品質判定上の疑義について述べた。2.圧密沈下速度は圧密層厚に比例するか?図 1 は,砂層 1 の液状化対策や根切り工事に際して,地下水位をΔDw だけ低て,(a)の地表面経時沈下量 S(t)が曲線 1 で示されるとき, (b)のそれは曲線 1AA’粘土層BH時刻t0砂層1粘土層BHC砂層2(b) 厚さ2Hの粘土層内の水圧の等時線t00の 2 倍(すなわち曲線 3)であると誤解される場合がある。しかし両ケースの水圧等時線は,水圧低下が点Bに達する時刻 t 0 までは差異がないので S(t)は等し砂層1(a) 厚さHの粘土層内の水圧の等時線地表面の経時沈下量, S(t)線形であるなら,(b)の最終沈下量 Sf は (a)のそれの 2 倍である。図 1(c)においDw砂層2下したときの粘土層内の水圧等時線を示している。(a)は粘土層厚が H,(b)は2H のケースで,粘土層内の最終的水圧分布は破線で示される。粘土層が均質で国際会員 蔡 飛経過時間,t(c) 地表面経時沈下量曲線図 1 地下水位低下による圧密沈下曲線の考察い。その後は, (b)の等時線のみ点Cに向かって動き出すので両ケースで形が異なり,S(t)は 図 1(c)の曲線 2 のように 2 倍の S f に向かって進む。さてケース(a)の場合,時間係数 Tv(=Cv・t/(H/2) 2 )≦0.3 の範囲でテルツァギーの圧密解は𝑈 = 2 𝑇v 𝜋で近似されるから,S f=εf H (ここにεf は粘土層の最終的ひずみ)とすれば,S(t)は,図2ベタ基礎(左)とフーチング基礎(右)S(t)=U・S f =4εf 𝐶v・𝑡 𝜋 ・・・(I) (結果は(b)も同じ)となり,層厚 H に無関係であることからもこのことは自明である。の破壊面の相違1)3. ベタ基礎が布基礎より危ないことがあるか?図 2 は,建築基礎構造設計指針 1988 年版1)に載っている図である。この図に基づいて,「ベタ基礎の場合の地盤の破壊面はフーチング基礎の場合よりはるかに深層に達するから,基礎底面より基礎幅の 2 倍程度の深さの範囲に軟弱(a)複合地盤としての支持力機構な層があると,ベタ基礎に対する許容支持力度はフーチングの場合よりもむし(b)改良体が独立して支持するとした場合の支持力機構ろ低くなることがある」と解説されている。これを引用したある会社のホーム・・・式(1)ページ2)に,「同じ上部構造なら・・(中略)・・(ベタ基礎は)地盤に対・・・式(2)・・・式(3)する影響は(布(連続フーチング)基礎よりも)むしろ大きく,検討すべき点は多い。」と問題が有るかのように書かれている。しかし布基礎の底版(フー図 3 柱状改良地盤の鉛直支持力機構3)チング)を支える底版直下の地盤はさらにその下の深い地盤で支えられている訳で,ベタ基礎では持たないが布基礎なら持つという理屈は首肯し難い。4. 絶対安全だからとは言え,いくら過大設計でも良いのか?4.1 柱状改良した地盤上のベタ基礎の支持力はゼロか?図 3 は,ベタ基礎の下の地盤を柱状改良したときの許容鉛直支持力に関する設計指針の例3)である。式(1)はケース(a)に対応し,改良体と改良体間原地盤から成るブロック体(斜線)下部地盤の鉛直極限支持力度 q d と周面の極限摩擦応力τd から求めた許容支持力度 q a1 を示す。式(2)はケース(b)に対応し,柱状改良体の先端支持力と周面摩擦力の和を本数倍して求めた許容支持力度 q a2 である。図 4 ベタ基礎の支持力を考慮した杭状地盤補強工法の支持力機構5)That way of thinking is somewhat strangeONOUE Atsuo (Koa Kaihatsu co. LTD.)CAI Fei (Gunma University)17 そして式(3)によって,改良地盤の長期許容鉛直支持力 q a はこの二つのうちの小さい方とすると規定されている。ケース(a)はベタ基礎の根入れを深く・・・・・式(4)したことになるから,ベタ基礎よりも大きな支持力となるが,ケース(b)はベタ基礎の支持力をゼロと見做すので改良体の必要長は長くなり,支持力は多くの場合 q a2 で決まる。改良体が支持層に達していればベタ基礎の接地面は歪まず,その支持力がフルモビライズされることはないからその支持力を見込まないのは妥当である。しかし戸建住宅のベタ基礎は必ず接地しており,改良体が摩擦杭であるならばその径と長さに応じてベタ基礎の支持力が寄与する4)にも拘わらず,柱状改良の多くはこの指針に則って設計されている。・・・・・式(5)4.2 ベタ基礎の支持力を考慮した設計法例 1 と,その計算書の疑問点図 4 は,柱状地盤補強を一種のパイルドラフト基礎と見做した支持力機構の概念図5)で,軟弱地盤の層厚に比べて改良体長が短い場合は 4.1 の設計図 5 ベタ基礎の支持力を考慮した設計法例 16)法よりも現実的である。図 5 はその一例6)で,ベタ基礎と改良体の極限支持力を共通の安全率 Fs で割った式(4)から許容支持力を求めている。ところで図 6 はある現場の計算書7)のコピーであるが、ベタ基礎の許容支持力度(=61.875/3kN/㎡)が建物の設計荷重度(20kN/㎡)を超えているにも拘わらず,長さ 4.4mの改良体ならば 27.73 kN/㎡あるから安全とされている。,4.3 ベタ基礎の支持力を考慮した設計法例 2 と,その計算書の疑問点図 7 の式(6)は,いわゆる単管による柱状地盤補強工法で用いられている図 6 設計法例 1 による設計計算書例7)のコピー設計法8)で,ベタ基礎と単管の極限支持力をそれぞれ 5 と 2 で割ったものを加えて許容支持力とするものである。上記 4.2 と同じ現場に対する図 8 の式(6)設計書9)でも、ベタ基礎の許容支持力度(=0.2x108.7kN/㎡)が設計荷重度以上であるにも拘わらず,長さ 8mのパイプ長ならば OK とされている。このように柱状地盤補強は,その設計法が過大設計である場合や,設計法に照らしてもかなり長めの改良体長が提案される例があるが、筆者の一人がチ平板載荷試験により直接求める。式(7)図 7 ベタ基礎の支持力を考慮した設計法例 28)ェックした設計書にはその理由が記載されていなかった。もちろん地盤は複雑であるから安全率 3 程度では心もとないと考えるならば,安全率を増やした設計式に変更しないと、地盤品質判定士も判断に困ることがあろう。5. 研究段階か絵にかいた餅か,あるいは確立されたものか?図 9 は,ある専門書に記載の液状化対策例10)である。上段の新設対策のうち①②は液状化を防ぐことはできないが,家屋の被害は防げる。③は設計図 8 設計法例 2 による設計計算書例9)のコピー法も確立されているが一軒だけの戸建て住宅への適用はコスト的に無理である。既設対策の①は,施工例は多いが設計法もなく出来型のチェックも不可能なので問題が多い。②は止水壁構築のコストは極めて高く,壁の下端以深も砂層であれば揚水し続ける必要があるが,できない対策では①浅層改良工法②杭基礎工法③グラベルドレーン工法(a)新設対策ない。③は,研究段階である。このように液状化対策のメニューは多いが,専門書に絶大な信頼を寄せる一般市民に誤解を与えないよう,地盤品質判定士は効果のみならず実現性のレベルも評価する必要がある。6. おわりに指針や基準は,フールプルーフの観点から間違いを生まないように定①注入固化工法(斜め注入)②地下水位低下工法(ウェルポイント)③地盤不飽和工法(マイクロバブル)(b)既設対策図 9 新設あるいは既設住宅下地盤の液状化対策例10)められるが,地盤品質判定士は必ずしもこれらに捉われず,地盤情報を精査してその地盤の品質に相応しい科学的判定をすることが期待される。参考文献1) 日本建築学会:建築基礎構造設計指針, p.194, 1988.(旧版)2)住宅地盤 Jiban Nabi, https:// www.jiban.co.jp/docs/tips/kihon/navi/jibannavi/jn007_matfoundation.pdf3)日本建築センター:改訂版 建築物のための改良地盤の設計及び品質管理指針, p.56, 20024)沈水龍,三浦哲彦:ソイルセメントコラムと周辺粘土の応力分担比について,第35回地盤工学研究発表会,pp.1387-1388, 20005)日本建築学会:小規模建築物基礎設計指針, 第7章地盤補強の設計, p.180, 2008年6)日本建築総合試験所:建築技術性能証明評価概要報告書, GBRC 性能証明 第10-02号改, タイガーラフト工法, 20127)私信:㈱T 社(地盤改良会社)→建設会社→筆者のうち一人(尾上),2015年12月25日8)日本建築総合試験所:建築技術性能証明評価概要報告書, GBRC 性能証明 第04-02号改6, RES-P 工法, 20159)私信:㈱S(地盤関係設計会社)→地盤改良会社→建設会社→筆者のうち一人(尾上),2015年11月10日10)関東地質調査業協会液状化研究会編:地震による液状化とその対策,p189,2012年,オーム社18
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  • タイトル
  • 宅地の液状化判定のための動的コーン貫入試験の開発
  • 著者
  • 大島昭彦
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 15〜16
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100008
  • 内容
  • 0008C - 03#第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月+-$ 05497/¯¢ƃŒġHhfşƒŗſƃčʍ«ų»ij«®«®ŶŸ «·ïÆ  øìô«ŻēvŴƃ¯¢*čʍˆ±*2*zHLR$ƀļÀ'¢ĢśúêĊ*ŰĠŚž%'#8«£go£ŒġHhfşƒŗſ+ƃL?@hQfÂI?fQ=fFŗſƁSWSƂ$+şƒ‹lš8¢Ģöw$3ũĜ”ń$ƃĂĒşƒŗſƁSPTƂ*Őű4â׶ĪŘ*2(¯¢śú$Ĝ69#8*ŗſêĊ 2014 ¿(¢Ģº®x$¤Ē9 1)6(ƃ¢kĈyб% Šˆ±;Ō,zHLR*00$čʍˆ±”ń%'8ôį$+ƃ«£go£ŒġHhfşƒŗſ(58čʍˆ±*2*ÑĊ%ˆ±~;ľr8"!0549 Nd  N 8«£ŒġHhfşƒŗſƁSwedish Ram Soundingƃvk SRSƂ+ƃŸŸŒû ISO 22476-2:2005 (Dynamic probing) * DPSH(super heavy-A)(„#*sā–Ň#8Wf]hŠŬ m = 63.5 kgƃŊkƀ H = 0.5 mƃHhfèżİ A = 15.9 cm2ƃHhfyżİÅ7*AVcDhEn = 196 kJ/m2 $ƃşƒŬ 0.2m %*бÒߜä Ndm %RcE Mv (NƊm);бƃąÂ$ŐĆÒߜä Nd ;ĉ28ë(„ņŒŗſ㻪9# 7ƃьà|+ePS*ŀñ*1$8  Nd = Ndm  0.040 Mv(1)SRS + SPT (³#ÝĶÒßAVcDh—('85 (ŖŔgŰĠ9*$ƃiň( NdƆN Îij8%:9#8$+ƃìô•¢$Ō¢Ģśú*ćŤŗſ(5# N %*³ËŲ;ýŕĿù;Ĭ' ƃvk* SRS *Ŀù+„ņŒ*í£ăƁePS(|Ĝ8ÒßŏŁŠŬ 177.5kgƅŗſ¤Ē(ĄûƂ;ãʼn#ŠŬ;zďé£ăƁ— 80.5kgƅŗſ¤Ē(ũûƂ*1(58í£ă%é£ă*ćŤĿù+æę 2);ĕ9 (1)ƃ(2)( 9 ¢Ĕ*99ĨŠ ƃĻÌ * SRS * Nd % SPT * N *Ų;Ĭ 3)žo(+œ½Â3ĬƃĨŠ $+ Nd!N %'8ƃĻÌ $+ NdƇN %'8 Š(5 # Nd % N *Ųğ'8*+ƃo²Hhf* SRS %oIJIf[ah* SPT $+şƒ_BUM^Ɓ Š(58şƒĘÍ%‚ĴèżİƂğ'82$8 4)!05492(&*'3ŏŁĀÎ$ En ; 1/2 %#µ£ţŬ40DPM (medium)(³Ë#8ƃÒß30sā+³Ëƃm = 30 kgƃH = 0.35 mƃA = 10.52 cm2 $ƃSRS %—ā(şƒŬ0.2m %*бÒߜä Ndm %RcEMv ;бƃąÂ*&6 $ŐĆÒߜä Nd’;ĉ28 É÷ŐĆƅNd’=Ndm /20.16Mv30Nd = 0.95 N + 3.1(R = 0.771)$%20 &)#!'"*& (100 ěŜŐĆƅNd’=(Ndm0.138Mv)/2 (3)01020SRS * Nd *Ų;Ĭ 5)nŃ%3,6!+8ƃěŜŐĆ* Nd’+ Nd %å–ƃÉ÷ŐĆ$+µ2* Nd’;m89+ƃÂ(2)ƃ(3) 6: 85 (É÷ŐĆ* Mv (58šżÞá*ŐĆŬŨ«ƁěŜŐĆ* 2.3 €Ƃ%'82%ł698' ƃž+ĥƃMRS ěŜŐĆ*Nd’ SRS * Nd %å–8% 6ƃĨŠ $+ N (3å–8 5)40% &)$!"'#*& !(1005001020N3040SRS * Nd % N *Ų 3)605060(1) MRSNd' = 1.01Nd + 0.7(R = 0.860)504030302020      1000(2) MRSNd' = 0.88Nd ! 0.9(R = 0.844)40MRS_NdMRS ěŜŐĆƃÉ÷ŐĆ* Nd’%30N$+Ƅ!*ŐĆêĊ*¬ÅÌ; (1)ƃ(2)( 8 ¢Ĕ*99Nd = 1.62 N + 3.5(R = 0.513)20(2)ýŕĿù;Ĭ(2) %MRS_Nd3*$8En = 98 kJ/m2 + ISO *40(1) $%SRS_Nd50SRS_Ndo£ŒġHhfşƒŗſƁMini RamSoundingƃvk MRSƂ+ƃSRS %—10203040SRS_Nd50      10600010203040SRS_Nd5060MRS * Nd’% SRS * Nd *Ų 5)Development of Dynamic Cone Penetration Test for Liquefaction Judgment of Residential Land: Oshima Akihiko (Osaka CityUniversity)15 ),$ 6$¢kĈy+ƃŗſÈ(ÃÕePS8+бü*šżŪ(uħĈ*yŁ;LGhc$ŔĐ8Ĺî'êĊ$3б”ń$8ƃŗſ­(Ŧź£ĈyŔ;ك#б8êĊ²Ĝ9# 7ƃ›ž'ļÀ$Ĉyб”ń$8ƃ­…¸©(5#бlń%'8¦–38*¦–(+ƃoIJePS;ŗſ­(ك#ƃePS…Ĉy;<TeF_hNÂ*qċÂćÖÔĈyŔ$ĆĪ(б8ŏŁë(²Ĝ9#8 6) Šˆ±+ƃб*ĎÀ*ŗç;Ī²(If[bfFƃ*ĖěėÌƁĺÀƃčÌg§ÌŵĞƂ 6Ō *ģÛġ'êĊ$8 (1)ƃ(2)( SRS ĜĹîIf[ah;ĬƉž(1)*é£ŰůœŢ 7)+ƃªķ*o(J`YR;ƒ9#ړĎÀ0$ÒßşƒÈƁťo* +ƒ6'ƂƃJ`YR;Ãj#oIJ(#œŢƃړ†š* ;Ü“7ړ8ž(2)*ÒßşƒÂĹîIf[ah8)+ƃSPT If[ah%—ā*L[bPRXhdcÂ*Āŧ$ƃ‚Ĵ;Hhf$ů¨ĘÍ$(1) é£ŰůœŢ   (2) ÒßşƒÂÒßşƒƃړĎÀ$HhfŪ;Ãj#SRS ĜĹîIf[ah  ьÂX>ZeIf[ahoIJ(#Òߑ+¡ƒşƒ#ړ8MRS ´Ĝ*ĹîIf[ah+ė(ŰĠ9#'ƃ(ĬьÂX>ZeIf[ah;}Ĝ8%Ō:9#8 9)‚Ĵ(H<C`PO`h;“uƃÃÕð(ړŗçŅŊ'Āŧ%'#8+-$ (ŽŋĦČ°»đ* SPT ’- SRS ƃMRS (58čʍˆ±Ŀù;Ĭ 10)ł*2ƃSWS (58Ŀù3}#ĬÝĶ N ƁSRSƅNd  = N ƃMRSƅNd’ = N ƃSWSƅĮĝÂƂ%•ĭĹîIf[ah$ړŗç$бĽĺ‡˜òĚ Fc ;Ĝ#ƃĎÀ 10 m 0$*čʍˆ±;Áĸ¤īĀŧŖŔØŮ(¤"ƃ !max = 200ƃ350 galƁM=7.5Ƃ*öw$ FLƃPL ;ĉ2ž(1)*•ÝĶ N + N (./iŇ#8ž(2)* SRS é£%ь VibroƁĎÀ1.36.3m +óړƂ* Fc + SPT ŗç(./iŇ#8ƃSWS ŰůÂ+449#8ž(3)ƃ(4)57ƃ•ŗſ* FL *ĎÀ‡¼’- PL + SPT (ÿ)iŇ#8ƁSWS +ŗçړ 7m 0$$*$ƃPL +44µƂvj 6ƃSRSƃMRS (58ÝĶ N %ĹîIf[ah$ړŗç$б Fc ;Ĝ9,ƃzHLR*00$čʍˆ±+”ń%8ƃčʍˆ±*2(+ĎÀ 10m 0$ 1m űŷ$ړ8%Êő%ł690012 (GL � m)34NN102030(1) NNSPTSRSMRSSWS-N4000Fc (%)40 602080100(2)  12FL00.510(3) FL1 (!max=200gal) 0.92FL00.510(4) FL1 (!max=350gal)223 Ip1533444 55566677889101.5ê[ìx(m)SPTê[ìx(m)SRS ê[ìx(m)Vibroê[ìx(m)SWS7PLSPT: 7.9SRS: 9.8MRS: 7.8SWS: 6.0PLSPT: 24.6SRS: 27.0MRS: 28.1SWS: 19.16789991010101%. 0.9258Č°»đ( 8čʍˆ±Ŀù 10)1.51) ¢Ģº®xƅ錊±¢Ģº®x¤Ēg—œřƅŒġHhfşƒŗſêĊƁJGS 1437-2014Ƃƃ2016.2) ¾ĝƊtƅ«£ŒġHhfşƒŗſ( 8ÒßŏŁņū*ÇŽƃĵ 49 œ¢Ģº®ĩıĠŎxƃNo.37ƃpp.73-74ƃ2014.3) ¾ĝƊtƅ«£ŒġHhfşƒŗſ(58¢ĢÄÀ% Šˆ±*śú~ƃĵ 50 œ¢Ģº®ĩıĠŎxƃNo.44ƃpp.87-88ƃ2015.4) «·Ɗtƅ«£ŒġHhfşƒŗſ% N Ɗqu %*ĤŲÌ*ýŕĵ 2 ¥ƃĵ 49 œ¢Ģº®ĩıĠŎxƃNo.99ƃpp.197-198ƃ2014.5) ĎpƊtƅo£ŒġHhfşƒŗſ(58¢ĢÄÀ% Šˆ±*śú~ƃĵ 50 œ¢Ģº®ĩıĠŎxƃNo.45ƃpp.89-90ƃ2015.6) ŭƊtƅÏÁ{¯;³ŝ%¢kĈyбĊ% Šˆ‰Ċ(Ų8ĩıƃìôÁĸ®xÓō¥™ŹƃVol.19ƃNo.41ƃpp.89-94ƃ2013.7) þĝƊtƅŒġHhfşƒŗſĜ*ĹîIf[ah*ũĜÌƃĵ 49 œ¢Ģº®ĩıĠŎxƃNo.44ƃpp.87-88ƃ2014.8) Yamamoto, et al: Geotechnical Investigation for Housing Construction by Swedish Ram SoundingƃProc. of 17th ISOPEƃpp.1248-1253ƃ2007.9) µ¹Ɗtƅ¯¢śúĜX>ZeIf[ah*ũĜÌƃĵ 49 œ¢Ģº®ĩıĠŎxƃpp.91ƈ92ƃ2014.10) «·Ɗtƅ¯¢*•ĭ¢ĢśúĊ;Ĝčʍˆ±*ćŤ, ìôõç®xĵ 11 œ¢ĢãʼnJf\K?^ƃpp.195-202ƃ2014.16
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  • タイトル
  • 小規模建築物の地盤評価について
  • 著者
  • 関谷亮三
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 13〜14
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100007
  • 内容
  • 0007C - 03第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月小規模建築物の地盤評価についてSWS調査許容応力度 沈下(変形)ジャパンホームシールド株式会社 正会員○ 関谷亮三1.はじめにスウェーデン式サウンディング試験(以下、SWS 試験)は、1917 年頃にスウェーデン国有鉄道において不良路盤の試験方法として採用された試験方法である。日本では 1954 年頃に建設省(現国土交通省)が河川堤防の地盤調査法として導入し、1976 年に JIS 規格となった。その後、2000 年に「住宅の品質確保に関する法律」が施行され、続いて 2001 年には国交省告示 1113 号で SWS 試験結果を用いた長期許容応力度の評価式が示されたことで、広範囲に普及した。したがって、宅地において SWS 試験による地盤調査が本格的に実施されたのは、ここ 20 年ということになる。日本における地盤の評価は、良くも悪くもN値偏重主義的なところが多分にあり、SWS 試験も例外ではない。事実、SWS 試験の結果から告示 1113 号に記載されている(三)式(qa=30+0.64Nsw)により許容応力度を算出できることに加え、稲田式1)を用いて換算 N 値を算出できるようになっている。さらに最近では、調査機が自動化されることで一人調査も可能になり、簡便さや省力化という面からも利用度が高まってきている。それまで宅地地盤の調査はあまり実施されないのが一般的であったが、こうした法整備や調査機の改良が進むことでより SWS 試験で宅地地盤を評価することが一般化した。それに伴い、不同沈下事故は減少傾向にあるはずであるが、不同沈下事故が完全になくなっていないのも現実である。2.宅地調査の実態では、調査件数や調査精度が向上しながらなぜ不同沈下はなくならないのか?まず、宅地化する土地の質が落ちていることが考えられる。以前は良い地盤が宅地化されてきたが、建てる場所が限られてくると沼地やため池だった場所の開発や谷埋造成地など、元来宅地に向かない場所が宅地化されている背景がある。また、これまでの経験からすると、不同沈下事故を起こした宅地の8∼9割近くが新規盛土や新規擁壁の埋戻し部分が存在しており、何かしらの「人工地盤」が不同沈下に深く関与していると考えられる。こうした状況から本当に SWS試験で「自然地盤」と「人工地盤」を適切に評価できているのかという疑問が生じてくる。そもそも SWS 試験は簡易的な調査であり、ボーリング調査(標準貫入試験含む)の補足的な位置づけにある調査方法である。しかし、住宅業界では宅地の地盤調査と言えば SWS 試験という図式が成立しており、土木業界で見る SWS 試験の立ち位置と若干異っている。土木業界出身である筆者としては次の 3 点について違和感がある。① 土を見ない「土質の判別」SWS 試験での土質判別は、推定土質として扱われており調査員判断のもと「砂質土」か「粘性土」に大別されている。しかし、その判別根拠は調査員の経験値と推定により決定されているのが現状で、「ジャリジャリ」と聞こえれば砂だ、音がしないから粘土だという判断もあれば、自沈する層は粘性土、回転層は砂質土だと判断するケースもある。このような調査員の主観により決定された土質判別であるが、地盤改良の必要判断や地盤改良設計時の先端支持地盤や周面摩擦力の評価などの重要なところで使われている。本来の土質判別は、調査ボーリングを行い、サンプリング試料にて土質試験を実施して、分類するのが理想である。また、ボーリングを伴わない土質判別方法として三成分コーン貫入試験が挙げられるが、両者とも戸建住宅時にとっては高額な費用と所要時間が弊害となり、実施されるケースは皆無といってよい。さらに、簡易な方法として SWS 試験孔でサンプリングする方法も提唱されているが、採取深度の精度や孔壁崩壊などによる採取の確実性に問題を抱えている。近年、こうした SWS 試験による「土質判別」問題の解決策としてスクリュードライバーサウンディング(SDS)試験2)が開発されている。この試験は、SWS 試験機のデータ集録装置を交換することにより、「回転トルク」、「鉛直荷重」、「沈下速度」を計測し、土質の判別を図ったものである。砂のようなφ材では、鉛直荷重の増加につれて回転トルクは大きくなり、粘土やシルトのような C 材では鉛直荷重が増えても回転トルクは大きくならないという特性を利用して、土質を判別する。費用的にも所要時間的にも SWS 試験と大差なく実施できる上に、地層境界や土質判別を客観的に判別できるという点で効果が期待でき、今後は利用率が高まると考えられている。② 「許容応力度」の評価地盤の許容応力度は告示 1113 号第二において(一)∼(三)項に評価式が記載されており、SWS 試験を用いた場合には前述した(三)式から算出される値にて評価されている。しかし、解説に「基礎の底部から下方 2m以内の∼(省略)∼有害な損傷、変形及び沈下が生じないことを確かめなければならない。」と書かれている部分が軽視されているJapan Home Sield Co.,Ltd Ryouzou SekiyaThe ground evaluation of the small building13 様相がある。SWS 試験で自沈層が確認されてもこの式にて評価し、それなりの数値が出ているから良好な地盤との見解を述べられる事例もある。一方、小規模建築物基礎設計指針(以下、小規模指針)には推奨式(qa=30Wsw+0.64Nsw)が挙げられており、自沈層にも適用範囲が広がっている。ただし、許容応力度は基礎下 2.0mの平均値をとることからNsw の上限値 150 として 1 層(25cm)でも極端に固い層が存在すると許容応力度の数字上問題ない地盤と評価されることがある。SWS試験結果による許容応力度30kN/㎡の評価で大丈夫?このことは、「造る側」(建設会社や造成会社)と「管理・運用していく側」(事業者や施主)の評価基準のズレとして問題となることがあL型擁壁高h=1.5mる。特に「造る側」のスタンスは、30kN/㎡以上の地盤を造ることに注力住宅し、本来懸念すべき盛土本体の圧縮沈下や盛土下部地盤の圧密沈下の検住宅改良地盤旧耕作土地盤(軟弱な自然地盤)討や管理がされていないケースがある。また、管理できていない(して改良地盤の圧縮度は?自然地盤の圧密度は?支持層地盤いない)場合以上にひどい事例として、図-1 に示すような表層改良で地図-1 表層だけ改良した宅地表面部のみ固くした見かけ的に“良い地盤”を造っている分譲地も存在している。そのような場合は、SWS 試験では浅い位置で貫入不能となり、良好な地盤と見間違うことがある。そのような宅地は建物建築 3∼5 年後には不具合が表面化してくるケースがあり、結果として不同沈下事故の温床となっているのではないかと考える。③ 「沈下量」の評価小規模指針の第 12 章「造成宅地地盤」3)には SWS 試験値 Nsw や Wsw、N 値を用いた宅地地盤の評価基準4)(図-2)が掲載されている。この数値を用いての管理は新規盛土の厚みや新規擁壁高さが低い場合はある程度有効活用できると考えられる。しかし、2.5m以上の新規擁壁や新規盛土を造成する場合、N 値が出ているから問題ないとは言い切れないケースが多々存在している。特に山切谷埋盛土により造成された分譲地などでは、一宅地内において盛土の層厚差が 4.0∼5.0mあることも珍しくない。しかし、一部の建設会社や造成会社では造りっぱなしという現状があるのもまた事実である。ただ、このことは、建設会社や造成会社だ図-2 宅地地盤の評価基準(小規模指針)けが悪いという訳ではなく、30kN/㎡の地盤を造れば問題なしとしている契約上の問題や盛土地盤の適切な管理基準がやはり N 値偏重主義になっていることに問題があるのではないかと考える。また、宅地地盤では SWS 試験結果から推定の推定で圧密沈下量を計算することが一般的に行われている。SWS 試験以外に情報がないためやむ得ないことかも知れないが、大きな誤差を含んでいることには気を掛けず mm 単位の動きを云々するのは疑問である。3.施工管理のあるべき姿盛土厚の厚い宅地を定量的に評価する方法としては、現状地盤面に沈下板を設置し、ある一定量厚の盛土が行われる毎に測量を行い、盛土本体の圧縮や盛土下部にある原地盤の圧密沈下が発生していないかを盛土沈下量変動図(図-3)などで把握しながら施工することが最も有効な方法であると考えられる。この管理方法であれば、測量による実測値であることから誰の目からも沈下の終息・未終息が判断でき、「管理・運用していく側」にとっても Nsw 値や N 値以上に評価できるものになると考えられる。図-3 盛土沈下量管理のイメージ4.まとめ「造る側」の目的は 30kN/㎡の地盤を造ることではなく、不同沈下しない地盤を造る事にある。工期が存在する中でプレロードや養生期間を取るなどの時間的猶予が困難な現状があるが、絶対に「不同沈下させない」という目標に向かって最善の管理基準を採用していくことを期待する。また、「管理・運用していく側」も経済的な部分だけ注視するのではなく、沈下させない管理基準を「造る側」へ要求することが重要である。そのためにアドバイザー的な役目として地盤品質判定士を活用していくことが今後活躍の場の一つとなることを期待する。参考文献1)稲田倍穂:スウェーデン式サウンディング試験結果の使用について、土と基礎、Vol.8,No.1,pp.13∼ 18,19602)ジャパンホームシールド株式会社:SDS 試験による地盤調査結果の活用技術、一般財団法人ベターリビング建築技術審査証明事業(住宅等関連技術)報告書、2013.123)日本建築学会:小規模建築物基礎設計指針、12.5 節4)工藤賢二・浜口雄二:宅地地盤の性能評価例、基礎工、pp.47∼50、2003.11宅地地盤の評価、p.286、2014.0914
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  • タイトル
  • 住宅地盤の評価に対する-考察
  • 著者
  • 小野日出男・中村裕昭・大久保拓郎
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 11〜12
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100006
  • 内容
  • 0006H - 00第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月住宅地盤の評価に対する一考察スウェーデン式サウンディング試験地盤のトラブル住宅地盤の評価服部地質調査国際会員地域環境研究所正会員環境地質サービス 正会員○小野 日出男中村 裕昭大久保 拓郎1.はじめに戸建住宅を建築する際,宅地の地盤調査としてスウェーデン式サウンディング試験(以下,SWS という)が多用されている。これは,平成 12(2000)年 4 月施行の「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」において地盤の状況を適切に評価する地盤調査を行うことが必須になったことが一つの契機である。また,地盤保証制度の拡充に合せて,保証条件に地盤調査の実施が組み込まれたことや,平成 19(2007)年 5 月施行の「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)」において,保険引受け法人が住宅の設計施工に関する技術的な基準を定めたことによって,地盤調査が義務付けられたことも影響している。これらの取り組みによって,住宅地盤の安心・安全を確保するシステムが構築されたようにみえるが,地盤に起因する住宅の不同沈下(地盤トラブル)は,盛土造成地や擁壁の裏込め部で多く発生している。その原因として,調査時における土質の判断ミスや調査不足,設計時では基礎工法や対策工法の選定ミス,施工時では盛土・裏込め土の転圧不足や地盤対策の施工ミスなどが挙げられる。本文では,SWS の特性や住宅基礎・地盤の調査・設計の基本的基準,および盛土地盤の一般的な特性などから,盛土造成地における地盤トラブルを防止するための,住宅地盤の評価方法について考察する。2.SWS の特性SWS(JIS A 1221)の試験装置には,載荷装置と回転装置から,全自動,半自動,手動の3種類がある1)。SWS は目視による土質観察ができず,1kN以下の荷重時における段階載荷貫入時の状況や 1kN荷重時における回転貫入時の感触(振動や音)から,土質名を粘性土・砂質土・礫質土などとして推定している。図‐1 は SWS による砂層と粘土層の判定例を示したものである。SWS は砂層を厚く,粘土層を薄く判定する傾向がある。ここで得られたWsw やNsw は土の静的貫入抵抗と呼ばれる相対指標で,物理定数ではない。そのため,土質によって値の解釈が図‐1 SWS による砂層と粘土層の判定例 2)異なるので,注意が必要である。3.戸建住宅の基礎・地盤を調査・設計する際の基本的基準戸建住宅の基礎・地盤を調査・設計する際,以下に示す3つの告示が前提となる。①建設省告示第 1347 号(平成 12 年 5 月 23 日):建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件(告示1347 号)②建設省告示第 1653 号(平成 12 年 7 月 19 日):住宅紛争処理の参考となるべき技術基準(告示 1653 号)③国土交通省告示第 1113 号(平成 13 年 7 月 2 日):地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を求めるための地盤調査の方法並びにその結果に基づき地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を定める方法等を定める件(告示 1113 号)告示 1347 号は建築基準法施行令第 38 条を受け,戸建住宅の基礎の構造を規定している。告示 1653 号は住宅品質確保促進法第 70 条に基づき,不同沈下の程度から瑕疵の存在可能性をそれぞれ定めたものである。告示 1113 号は建築基準法施行令第 93 条を受け,地盤の許容応力度を求めるための地盤調査と算定式を定めている。この3つの告示は,不同沈下させない住宅基礎・地盤の調査・設計の基本的な基準である。告示 1113 号では,SWS の結果を利用する地盤の許容応力度の算定式を規定している。この場合,基礎の底部下 2mまでの間に SWS の荷重が 1kN以下で自沈する層が存在する場合や,基礎の底部下 2~5mの間に SWS の荷重が 500N以下でConsideration to the evaluation of the ground for housing foundationOno, HideoNakamura, HiroakiHattori Geological Survey Co., LtdArea-Environmental Laboratory Corp.Ohkubo, Takurou11Kankyo Chishitsu Service 自沈する層が存在する場合は,告示 1347 号に定める構造計算を行うように規定している(自重による沈下その他の地盤の変形等を考慮して建築物又は建築物の部分に有害な損傷,変形及び沈下が生じないことを確かめる)。この許容応力度は,「建築基礎構造設計指針」で定めている地盤の長期許容支持力度を求める算定式3)と同じであるが,実用上,「この荷重強度を採用すれば,地盤は破壊しないし,沈下量も許容値以内に収まる」という認識で利用されている。本来なら,地盤から求まる支持力を算定し,合せて沈下(基礎の底部下 5m以深も含めた地盤の即時沈下・圧密沈下など)を検討することによって,不同沈下が発生しないことを確認しなければならない。4.盛土地盤の一般的な特性盛土地盤では,盛土材の転圧・締固め不良,盛土材の劣化,盛土材の流出などに起因する盛土自体の沈下(主に即沈下)と,盛土の荷重によって盛土下位の地盤の沈下(圧密沈下・二次圧密)の 2 つの沈下現象が予想される。「盛土の挙動予測と実際」では,「粘性土の圧縮沈下量は盛土高さの 4~5%程度であり,適切な締固めを行えば施工時に 4~5%程度の沈下は終了し,完成後は 1%程度の沈下が残る」4)とある。これは,適切な締固めを行った盛土でも残留沈下が発生することを示唆している。また,「2015 年版 建築物の構造関係技術基準解説書」では,「表層の盛土層などで試験結果にバラツキが見られる場合があること,正確な土質や地層を判断することができない点などに注意して,敷地の地盤状況を把握すること」「告示 1113 号の第 2 項以降に示した算定式は,地盤が概ね均一で平坦な半無限地盤を前提にしている」「盛土は土性が地域により大きく異なるので,地域ごとの実績に基づく検討が重要である。」5)などと記載している。なお,「小規模建築物基礎設計指針」では,SWS の結果から,不同沈下が発生しやすい盛土地盤を「Wsw が 1kN程度以下の地盤.擁壁などの埋戻し土(一部盛土)などで,SWS において平均Nsw が 40 程度以下の地盤」6)としている。これらの文書から,盛土地盤は不均一であり,SWS から盛土地盤の支持力度(応力度)や沈下を論じるには,盛土前の地形,土層構成,盛土造成時期,盛土の施工法などの情報を十分に検討したうえで SWS の結果を評価しなければならないことがわかる。5.地盤トラブルの防止に向けてSWS は,鉛直方向の地盤の硬軟の状況を連続的に推定することができるものの,土質を直接判断することができない欠点がある。近年,測定の自動化が進み,瞬時に解析結果を打ち出すシステムも構築されている。ただし,測定時に動力源の音に遮られて,ロッドに伝わる振動や貫入時の音を記録できないことがあるほか,一定荷重載荷時で自沈した際,250mmで自沈を止めて荷重を1ランク下げて計測せず,そのまま落ち込むのを放置している場合もある。これらは,測定結果の精度を低下させることになるため,規格に沿った基本に忠実な試験の実施が望まれる。盛土地盤において SWS を実施した場合,盛土も地山のローム・粘土・砂も,同じNsw 値であれば同じ許容応力度が得られることについて,慎重な検討が必要である。また,許容応力度の値のみで,沈下を予測するのではなく,ほかの方法での検討も必要である。地山も盛土も同列に扱うことに慎重さが求められる。不同沈下に代表される地盤トラブルの防止に向け,住宅地盤の評価方法について次のような提案をしたい。①試験対象地が盛土地盤か否かの確認,②盛土造成時期の確認,③盛土層の厚さの確認,④盛土の施工法の確認,⑤造成後の盛土の変位,⑥盛土を構成する土質の確認(必要な場合,試料を採取して確認),⑦粘性土ならば含水比の測定(必要な場合),⑧盛土内の地下水の確認,⑨試験対象地の地形・微地形の確認,⑩周辺地区の地盤情報(土質柱状図,土質試験結果など)を確認し,盛土下の地盤構成の推定,⑪調査地点の増加,⑫他の調査手法の採用,⑬調査ボーリングの実施,⑭粘性土を採取して力学・圧密特性の確認(必要な場合),⑮盛土部分における SWS の結果はそのまま採用せず,低減した値による地盤の許容応力度の算定,⑯沈下対象層を基礎の底部下 5mまでではなく,さらに深い深度までを対象として検討,⑰住宅建設時における地盤変位の観測,⑱失敗事例・成功事例の情報共有,など。これらは一部,チェックリストなどの書式を用いて実施されているものもあるが,盛土地盤に真摯に対応することで,SWS の結果の信頼性が高まり,地盤トラブルの防止に有効となる。なお,自動化による省力化も進んでいるが,地形の判断や地盤情報の見極めなどは技術者の力量に依存するので,技術者は不断の能力開発が要求される。【参考引用文献】1)地盤工学会編:地盤調査の方法と解説,2013.3,pp.325~3352)中村裕昭:戸建て住宅の地盤調査におけるスウェーデン式サウンディング試験の本質(地盤品質判定士通信№2,2014.6.27),p.153)日本建築学会編:建築基礎構造設計指針,2001.10, pp.105~1214)地盤工学会編:盛土の挙動予測と実際,1996, pp.192~1935)国土交通省国土技術政策総合研究所・国立研究開発法人建築研究所監修:2015 年版 建築物の構造関係技術基準解説書,2015.6, pp.552~5636)日本建築学会編:小規模建築物基礎設計指針,2008.2, p.8512
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  • タイトル
  • 戸建て住宅の基礎設計で告示1113号を引用する際の注意点
  • 著者
  • 大久保拓郎・中村裕昭・小野日出男
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 9〜10
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100005
  • 内容
  • 0005A - 08第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月戸建て住宅の基礎設計で告示 1113 号を引用する際の注意点地盤品質判定士 地盤調査スウェーデン式サウンディング環境地質サービス地域環境研究所服部地質調査正会員○大久保拓郎正会員中村裕昭国際会員小野日出男1.はじめに地盤品質判定士の活動の対象として考えられているのが,いわゆる四号建築物といわれる小規模建物の基礎地盤であずに運用されていることも多い.ことに,戸建て住宅の基礎設計に際して引用されることが多い「告示 1113 号」は,本る.ここでは,関係する法規を踏まえたうえでの技術的な判断が求められるが,実際には関連する法規を正しく理解せ来の位置づけが誤解されたまま利用されているケースが目立つ.本稿では,誤解が多い「告示 1113 号」の位置づけと適用に当たっての注意点を示す.2.地盤と基礎に関する建築基準法の構造法令は国会での可決を経た法律(○○○法),内閣が定める命令である政令(○○○法施行令),国務大臣(各省庁)が定める命令である省令(○○○法施行規則・××省令)などからなる.立法府が定める法律が最上位の規定であり,政令や省令は法律を逸脱しない範囲でより具体的な事柄を定めている.図1には地盤と基礎に関わる建築基準法の主な構造を示している.建築基準法第 19 条敷地の衛生及び安全第 20 条告示建築基準法施行令第三章第 36 条構造強度構造方法に関する技術的基準構造耐力第二節構造部材等第 1347 号第 38 条(基礎)建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件第八節第 1113 号構造計算施行令の構造計算地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支の条文では小規模建物は対象外第 93 条持力を求めるための地整調査の方法並び地盤及び基礎ぐいに その結果に基づき地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を定める方法等を定める件図 1 地盤と基礎に関する建築基準法の構造法律である「建築基準法」では,第 19 条に「敷地の衛生及び安全」について,第 20 条で「構造耐力」について示されている.この法第 20 条では主に建築物の規模と材質によって区分が行われており,これを受けて政令である「建築基準法施行令」の第三章「構造強度」で個別の規定が示される事になる.「施行令」第三章の最初の条文である第 36 条では法第 20 条で示されたた建築物の区分毎の適用範囲が書かれており,四号建築物に代表される小規模建物は,施行令第八節にまとめられている「構造計算」が適用されない旨が記されている.これは当然のことながら,小規模建築物ではしかし,施行令第八節に属する第 93 条「地盤及び基礎ぐい」と,第 93 条から移管されて詳細を定める「告示第 1113構造計算が不要であることを示す訳ではなく,構造計算を行うにあたって法的な制約がないというだけのことである.号」は多くの戸建て住宅の基礎設計にとって法的に要求される条文ではない点は重要である.The point to be noted when I quote MLIT notification No.1113Ohkubo,Takurou Kankyo Chishitsu Serviceby foundations of house designNakamura,Hiroaki Area-Environmental Laboratory CorporationOno,Hideo Hattori Geological Survey9 3.施行令第 38 条と告示 1347 号一方で,小規模建築物が制約を受ける条文として施行令の第 38 条「基礎」がある.施行令第 38 条の第一項は第三十八条建築物の基礎は、建築物に作用する荷重及び外力を安全に地盤に伝え、かつ、地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものとしなければならない。となっており,基礎設計に際しては地盤の沈下と変形を考慮する必要が示されている.次に同条第 3 項では3建築物の基礎の構造は、建築物の構造、形態及び地盤の状況を考慮して国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならない。(後略)とされており,下線部に示した「国土交通大臣が定めた構造方法」を具体的に示したのが国土交通省告示第 1347 号「建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件」である。同告示では,地盤の長期許容応力度に応じた具体的な基礎構造が定められているほか,各基礎種別の具体的なスペックや,異種基礎を含む「国土交通大臣が定めた構造方法」以外の基礎を用いる場合の検討方法が示されている.なお,ここで示される検討方法な中で『自重による沈下その他の地盤の変形等を考慮して建築物又は建築物の部分に有害な損傷、 変形及び沈下が生じないことを確かめること。』との表現があることから,建物の構造設計に当たっては地盤の沈下や変形について考慮する必要がある点が確認できる.4.施行令第 93 条と告示 1113 号先に述べたように,告示 1113 号は小規模建築物を設計するうえで参照する必要のない条文だが,戸建て住宅の地盤調査では最も頻繁に引用されている条文でもある.これは,法として明記されているため引用が容易であるためと思われには,告示 1113 号が法的に要求された条文ではない以上,告示 1113 号を引用・参照すること自体が技術者としての一るが,一方では「法律に従っているのだからこれで良い」といった,安易な思考が存在するのではないだろうか.実際うことは,告示の上位の条文である施行令第 93 条や告示全体を順守する必要がある.まれに,告示の中の一つの式を採つの判断となり,法的には免責の対象とはならない点は認識しておくべきである.さらには,この告示を採用するとい施行令 93 条では用していながら,前提条件を無視しているようなケースも存在するが,これでは告示を採用したことにはならない.第九十三条地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力は、国土交通大臣が定める方法によつて、地盤調査を行い、その結果に基づいて定めなければならない。(後略)とあり,告示 1113 号は「地盤調査の方法と地盤(及び杭)の許容応力度を定める方法」がセットで示されている.地盤調査の方法はもちろん許容応力度を求める際にも,各々の本来の特性や適用範囲を考慮する必要がある.昨年発行された技術基準書1)にも,それぞれの地盤調査法の土質や深度などの適用範囲内でしか精度は保証されていない旨が記され最後に確認しておきたい点は,施行令第 93 条や告示 1113 号はあくまで「許容応力度」の検討方法を示しているだけており,告示を引用する場合にも内容の精査が必要である.検討方法は示されていないが,施行令第 38 条にも触れられているとおり,宅地地盤の品質として許容応力度とともに重で,圧密沈下などの地盤沈下に関しては一切記載がないことである.圧密沈下に関しては建築基準法の中には具体的な要な要素である.したがって,設計者は独自に地盤の沈下の検討を行う必要がある.5.おわりに以上のように建築基準法は宅地地盤の品質を確保するための要素がすべて揃うわけではなく,実際のところは小規模建築物の基礎設計はすべて設計者に委ねられている.それゆえ,地盤調査担当者や地盤品質判定士といった,地盤の専門家が建築設計者のサポートを行うことが必要となる.1)国土交通省国土技術政策総合研究所・国立研究開発法人建築研究所監修:2015 年版 建築物の構造関係技術基準解説書,【参考文献】2015.6,pp55510
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  • タイトル
  • 建築地盤技術者の視点からの二つの問題提起と改善提案
  • 著者
  • 菱沼 登
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 7〜8
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100004
  • 内容
  • 0004A - 07第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月建築地盤技術者の視点建築地盤技術者の視点からのの視点からの二つのからの二つの問題提起と改善提案二つの問題提起と改善提案地盤品質判定士柱状改良共回り防止翼(社)地盤安心住宅整備支援機構正菱沼登1.はじめに最近関わりを持った二つの課題、「建築地盤技術者に対する地盤品質判定士の関わり方」と「戸建住宅業界の柱状改良工事に関する施工品質の問題」について、建築地盤技術者の視点から問題を提起し改善提案を行うことにした。前者については、判定士に占める建築地盤技術者の割合が1割に満たないことが分かり、関わり方を検討した。また、後者については、戸建住宅業界の柱状改良工法において施工原理の軽視が散見されており、改良体の出来上がり品質の低下が懸念されるため、注意喚起を行うことにした。2.建築地盤技術者に対する判定士の関わり方地盤品質判定士協議会では、資格登録者の名簿をホームページ上に公開しているが、判定士の所属分野別割合等の情報は非公開として開示していない。このため、平成13,14 年度の登録者名簿に会社名を公開している判定士について、所属分野を分類してみたのが図1である。この所属分野別の割合をみると、地盤の品質判定分野の専門家が揃う建設コンサルタントと地質調査会社とで全体の 5 割を占め、戸建住宅の地盤関連で直接仕事に関与する地盤調査・地盤補強工事会社が 3 割弱であり、建築関係の地盤技術者については、ハウスメーカーと建築(構造)設計事務所との合計で漸く 1割弱を占めている状況であることが分かった。判定士資格を保有する大半が地盤の専門家集団や戸建住宅地盤関連会社の所属者で図1判定士の所属占められていることは、当資格の性格上、当然のことといえる。しかし、我々が扱う地盤の品質評価は、地盤に限定した話ではなく地盤上に立つ建物を対象として行われるため、一方の当事者である1割に満たない建築関係の地盤技術者についても目を向ける必要がある。彼らは、建築物の地盤に関わるトラブルの実態を現場の第一線で把握しており、しかも、一般の建築関係者が地盤の専門家に対して何を求めているのかを一番熟知している存在でもある。建築関係の地盤技術者の中には、当資格を土木系コンサルタント集団の資格とか戸建住宅業界特有の資格というような解釈をしており、資格取得に関心を示さない関係者も少なくない。建築地盤技術者の判定士と同様、これらの地盤技術者に対しても各種相談の持ちかけや参画意識の醸成を図ることが必要である。判定士会が発足して1年になる。横浜市のマンション問題等、杭や宅地の品質トラブルは後を絶たない。このような中、今後、判定士が宅地の品質評価を取り扱うあらゆる場面においては、資格取得の有無を問わず建築地盤技術者のキーマンに必ず参画してもらい、問題意識や情報の共有を図ることが何より重要である。関係者間での相互交流が活発になって初めて判定士が実効性の高い資格として認知・活用されていくものと考える。図2攪拌ヘッド3.戸建住宅業界の柱状改良工事に対する注意喚起3.1 柱状改良工法における共回り防止翼の重要性について判定士の 3 割が関与している戸建住宅の地盤補強工事分野では、現在、柱状改良工法が主流工法の一つになっている。この工法は当初、一般中層建築物の基礎工法として開発されたもので、戸建住宅業界では、この特許が消滅した 2000 年を境に急速に普及し始めた。図2に柱状改良を施工する際に使用する攪拌ヘッドを示すが、この攪拌ヘッドに装着する“共回り防止翼”が消滅した特許である。共回り防止翼は、共回り現象による固化不良を回避すると共に混合攪拌性を飛躍的に向上させた画期的な装置で、この考案があって初めて当該工法が図3共回り防止翼高品質な基礎工法として普及してきたと言っても過言ではない。共回り現象とは、粘着性の高い地盤を混合攪拌する場合に発生するもので、固化対象土が攪拌ヘッド(掘削翼と攪拌翼)全体に付着して団子状になり、対象土と攪拌ヘッドが共に回転して、混合攪拌(羽根切り)が阻害される現象をいう。この装置が開発される以前の柱状改良は共回り現象による固化不良トラブルが多発しており、改良体の出来上がり品質が不安視され信頼性に欠けていた。考案された共回り防止翼は、掘削翼と攪拌翼の間に装着され、回転ロッドとは固定されておらず二重管の外側にとりつけられていて、かつ掘削翼や攪拌翼の長さよりも片側 5~10cm 程度(一般建築物では片側 10cm 程度以上)長くした構造としている。このような防止翼を取り付けることによって、防止翼が固化対象土の外側の土にかみ込まれ回転しない状態となるため、Two of raising the issue and this improvement suggestion fromNoboru hishinumathe angle of the construction foundation engineerfor Foundation Relieved Housing)7(Maintenance Support Organization 回転する掘削翼と攪拌翼の間に存在する対象土の共回りを防止しかつ確実な混合攪拌(羽根切り)が可能となった。3.2 共回り防止翼の有無による改良体の出来上がり品質の違いについて柱状改良工法を開発した会社では、実際に施工した改良体から全長コアを採取して共回り防止翼の有無による改良体の出来上がり品質の違いを確認しており、技術審査証明報告書1)にこの結果が掲載されている。図4は、3地区(①、②、③)の土質の異なる地盤で築造した改良体についての採取コアの観察結果である。この図から分かるように共回り防止翼を付けていない場合は、3種類の土質(粘性土、関東ローム、砂質土)共、連続したコアが採取困難であり品質の不均一さが顕著に表れている。また、図5は、上記の地盤の土質においての改良体の一軸圧縮強度試験の結果である。3種類の土質共、共回り防止翼を付けていない場合、強度が著しく低下しており、この有無の差は歴然である。3.3 戸建住宅業界の実態について表12)は、戸建住宅地盤の技術基準書と位置付けられる資料からの抜粋である。「共回り防止翼」について、有無が記載され選択が可能になっている。実際の施工においても、表層地盤が硬い場合に共回り防止翼を外したり、あるいは日常的にこの長さを短くしたりする状況が散見されている。本来取り付けておくべき装置が有無を選択できるように曲解されおり、これまで培われてきた技術が風化してきている。共回り防止翼の機能は、地盤に食い込み抵抗要素になるからこそ効果を発揮するが、コスト競争の激化により施工効率を優先させざるを得ない業界の現状が反映されているとも言える。杭の品質トラブル問題等により施工品質の確保が厳しく問われる図4共回り防止翼の有無による採取コアの観察結果昨今、施工データの記録、提出義務もまた重要である。狭隘地施工では時折、建柱車が使用されるが、「管理装置」無しの施工も容認されている。表1でも管理装置の有無が選択可能になっており、施工データ等の提出は義務付けられていない。改善を求めるものである。4.まとめ宅地地盤の品質評価には、建築関係者との連携がかかせない。判定士の活動も同様で建築地盤技術者との問題意識や情報の共有を図ることが何より重要である。戸建住宅業界の柱状改良工法は、共回り防止翼の取り扱い等に見るように施工効率が重要視され品質確保が軽視されているように見受けられる。業界挙げての施工品質の改善を期待する。4.まとめ<試験 NO.② 関東ローム>図5<試験 NO.①><試験 NO.③ 砂質土>共回り防止翼の有無による採取コアの一軸圧縮強度試験結果表1「柱状改良設計計画・施工管理報告書記入例」の抜粋 2)【参考文献】1) 一般財団法人 先端建設技術センター「テノコラム工法 先端建設技術・技術審査証明報告書」p.20,222) NPO 住宅地盤品質協会「住宅地盤の調査・施工に関わる技術基準書 2016 年第 3 版」p.1198
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  • タイトル
  • 地盤品質判定士制度の活用に関する課題
  • 著者
  • 森 友宏
  • 出版
  • 第51回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 5〜6
  • 発行
  • 2016/06/20
  • 文書ID
  • rp201605100003
  • 内容
  • 0003A - 08第51回地盤工学研究発表会(岡山)    2016 年 9 月地盤品質判定士制度の活用に関する課題地盤品質判定士前橋工科大学正会員○森 友宏1. はじめに地盤品質判定士制度が創設されてから 3 年が経過したが,民間の宅地に対する地盤品質判定士の関わり方をどのようにすべきかは未だ定まっておらず,実質的な活動に結びついていないのが現状である。このような現状を打破し,地盤品質判定士制度を有効に利活用するためには,民間宅地市場および関係団体が地盤品質判定士にどのような事を望んでいるのかを知り,またどのように貢献できるかを模索する必要がある。本報告では,実際に民間宅地市場に関わる建築士,不動産鑑定士の方々へのヒアリングを行った結果をまとめ,地盤品質判定士の利活用にあたっての喫緊の課題を示す。2. 建築士へのヒアリング結果現状では,地盤品質判定士の多くは土木関係者で構成されており,一般住宅の扱いや一般市民とのやり取りに慣れていない技術者が多いと考えられる。そこでまず,日常的に一般住宅を扱い,一般市民と接している建築士の方々に意見を伺い,近年の住宅地盤に関する問題点,疑問点,日頃の心境,地盤品質判定士に期待されている事などをまとめた。(a) 建築士および不動産取扱者で,地盤に関する専門知識を持った人材は極めて稀である。また,消費者や設計者に対して地盤に関する正しいリスク情報を供給・教育する役割として,地盤品質判定士は大いに期待される。(b) 現在の品確法の枠組みでは瑕疵の責任が設計者に課せられるため,地盤調査を行って地盤変状のリスクがゼロでないならば,保険として地盤補強を行うのが常となった。しかし,対策が過大ではないか,消費者に過大な負担を強いているのではないかとの疑念を持ち続けている。現状では,最高品質の対策工を施すか,もしくは取引が破談になるか(対策工事を払えないため不調となる)の二択になっている。この原因は,対策工の種類と被害の発生確率と程度が定量的に説明できないためである。(c) 同じ宅地内で,築 100 年の古民家が束基礎で何事も無く存在しているのに,新築家屋は多数の鋼管杭が必要になる事例などもあり,消費者の納得が得られておらず,品確法による規定と実際の市場意思との乖離が大きい。消費者が地盤情報や基礎構造に応じたリスクを正しく理解し,消費者の望むレベルの安全を購入できるようにするべきである。品確法による義務の捉え方を再整理し,消費者の責任による安全レベルの設定が可能にならないか。(d) 建築基準法でいう,いわゆる「地盤に変状を生じないこと」とは,どのレベルの地盤の安定性を示したものなのか,表現が曖昧でわからない。全てが設計者の判断やモラルに任せられるのであれば,最高級の対策工を提示せざるを得ない。上屋建物の等級 1~3 のように,明確化していないので判断に迷う(地盤は土質条件,境界条件が様々なので,一概に等級分け出来ないのは理解できるけれども)。(e) 現在,地盤調査と対策工に関するセカンドオピニオンを行う業者が現れている。地盤改良工事を勧めないかわりに保険に加入させるものである。市場原理に沿った選択なのかもしれないが,逆を返せば品確法の硬直性,裏をついたビジネスであり,品確法の意義を再定義する必要性を現に示しているともいえる。技術的指針の意義を損なうものであり疑問を感じている。(f) 地盤品質判定士の独立性,第三者性が担保されなければ,地盤品質判定士と地盤改良会社とが結託して,割高な対策工事を勧めているのではないかと,一般消費者は懐疑的になる。地盤品質判定士は真の第三者として国家的権威により地位が保障され,正しい地盤品質の判断を行うことが強く望まれる。任意団体の資格では消費者は納得しないため,国家資格とすることが必要。(g) 地盤品質判定士が,消費者や設計者が相談を持ちかけることの出来るシンクタンク役として存在してくれると,建築業界としても非常に助かる。しかし,地盤品質判定士の透明性,独立性を守りながら,地盤品質判定士単体で生業として成立できるのかどうかは,現状では判断できない。収益性を重視すれば地盤改良業者等との連携が強くなる一方,独立性を強調しすぎると生業として成り立たなくなる。(h) 消費者や住宅設計者の相談窓口としての支部や事務局の開設は必要であろう。社団法人などの法人格が必要となるだろう。3. 不動産鑑定士へのヒアリング結果地盤品質判定士の活動により地盤品質の優劣が社会に流通していくと,当然,既存不動産の価値に影響を与えることになると考えられる。そこで,地盤品質を社会的に公表していった場合に不動産価値に与える影響や,地盤品質判定士に期待される点について,不動産鑑定士の方々に意見を伺った結果をまとめた。不動産鑑定士とは,公示地価や相続税の評価,固定資産税の評価,不動産売買に関わる不動産価格の算定などを行う国家資格で,不動産の売主,買主の間に立ち,公平な立場で不動産価値を判断する第三者的な立場となる。この立場は,取り扱うものが不動産の価値か地盤の品質かが異なるだけで,地盤品質判定士にも通じるものがある。Some issues about utilization of Professional Engineer for Geotechnical EvaluationTomohiro MORI, Maebashi Institute of Technology5 不動産鑑定評価の手順は複雑であるため,ここでは,不動産鑑定評価の基本的部分についてのみ言及する。なお以下の記述は,不動産鑑定士の方々へのヒアリング結果を著者が再構成したもの表 1 不動産鑑定評価の方式(参考文献 1)より抜粋)評価方式適用対象比較方式全般に適用。基本的な査定方法。であり,細部の記述に間違いがある可能性もあることをはじめに申し添えておく。(a) 不動産鑑定評価の方式は表 1 に示す通りである。造成宅地の原価方式地盤性能の良し悪しによる不動産価格の評価は,比較方式と原価方式の双方を考慮して算定される。また,不動産の価格を形成する要因は表 2 に示す通りで,様々な要因が挙げられ収益方式ており,土地比準表などにより不動産価格が算定される。地概 要地域の不動産の標準的な相場価格に対象不動産の個別的要因を考慮。対象不動産の再調達原価から減価建物,造成・ 埋立地:適 修正分を差し引く。建物,造成地,既成市街地:難埋立地に適するが,規制市街地への適用は難しい。投資不動産対象不動産が将来生み出すと予測される純利益と現在価値を総合する。盤品質や災害危険性に関わる項目として,現状でも地質・地盤,土壌,地勢,土壌汚染,地すべりなどの要因を考慮することとなっており,現状でも宅地としての価値が低いと判断表 2 不動産の価格を形成する要因(参考文献 1)より抜粋)される湿地や土壌汚染区域,洪水危険区域などに関しては,大項目小項目既に不動産価値は低く評価されている。しかし,評価基準のはっきりしない地震時や豪雨時における地盤の安全性に関する検討・考慮はほとんど行われていない。(b) 今後,地盤性能を加味した不動産評価を行うと仮定した場合,一般的要因地盤性能が極端に低い宅地の価値は,その宅地を「一般的な自然的要因地質・地盤,土壌・土層,地勢,地理的位置関係,気象社会的要因人口,家族構成,都市形成および公共施設,教育,社会福祉,建築様式,他経済的要因貯蓄・消費・投資の状態,税負担,他行政的要因土地利用計画・規制,土地や建物の構造や防災に関する規制,宅地や住宅に関する施策,他地盤性能の宅地」と同等まで性能を高めるために必要となる工事費分だけ減価修正されるのが妥当であると考えられる。その他,心証による減価修正(対象不動産周辺の土地は悪い土地,いわく付きの土地である)も考えられる。住宅地域日照,街路幅員,都心からの距離,インフラ施設,眺望・景観,騒音,土壌汚染,洪水・地すべり災害の危険性,他商業地域商業施設の規模・集積度,顧客の質と量,交通手段,駐車場,行政上の助成・規制,他工業地域幹線道路・鉄道・港湾・空港等設備,労働力確保の難易,公害対策,行政上の助成・規制,他農地地域気象,起伏・高低,地勢,土壌,水利,道路・輸送設備,洪水・地すべり災害の危険性,他林地地域気象,標高・地勢,土壌,林道の整備状況,労働力確保の難易,他住宅~林地地域上記の地域要因と同様の項目を,個別の不動産毎に更に詳細にあてはめる。(c) 一般宅地に地盤性能を加味した不動産評価を行おうとした際に最も重要であるのは,地盤調査の結果から判断される災害発生の規模の大小,災害発生確率,対策工事にかかる費用(対地域要因策工の標準単価)が明示されていることである。また,前述の「一般的な地盤性能の宅地」とは,どのような地盤性能を持つ宅地であるのかの定義(宅地の標準性能)が必要である。(d) 証券化対象不動産(投機不動産)に関しては,不動産価値を詳細に確認するために,専門技術者に調査を依頼してエンジ個別的要因ニアリングレポートを作成する。今後,地盤性能を考慮する要 因必要性が生じた場合には地盤品質判定士に調査・判断を依頼する可能性がある。(e) 地盤品質判定士は顧客から提示された地盤情報を基に技術的判断を行うとあるが,提供された地盤情報の精度が常に判断材料として十分な精度を有しているかには疑問がある。特に潜在的に問題がある宅地ほど正確な情報は開示されにくいからである。地盤品質判定士が第三者的立場を維持するつもりであれば,提供された資料の精度に疑義がある場合には,独自に地盤調査を行う機関・システムを保有するべきであろう。(f) 都市計画法が適用されるような大規模造成地にあっては,自治体の許可制の形をとっているのであるから,竣工時には宅地地盤の品質が保証されているべきである。地盤品質の良否の判断を末端の消費者に委ねることは,宅地の供給者の責任を放棄しているとしか考えられない。この品質の保証とは一般的な使用において不具合の無い性能を有しているということであり,指針やガイドライン,マニュアルの仕様を満たしていれば良いという性質のものではないと考えられる。4. まとめヒアリング結果より,地盤に関する専門的判断を下すことのできる地盤品質判定士は,住宅・不動産業界に必要とされていること,第三者性を維持し中立の立場から正しい判断を行う国家資格者として期待されていることが示された。但し,住宅地盤品質の重要性を社会に示し,地盤品質判定士制度の活用をすすめていくためには,住宅地盤の被害メカニズムおよび対策工の効果・費用を定量的に示すことが喫緊の課題となる。また,品確法と住宅瑕疵担保履行法の解釈や取り扱いについても一考の余地があるかもしれない。参考文献:1) 国土交通省 不動産鑑定評価基準(平成 26 年 5 月 1 日改定)6
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