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第50回地盤工学研究発表会発表講演集

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タイトル 技能試験にみられる地盤材料試験の変動係数
著者 日置和昭・澤 孝平・中澤博志・渡辺健治・中川 直
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 1〜2 発行 2015/06/20 文書ID 69597
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タイトル 地盤材料試験の技能試験における配付試料の均質性評価
著者 山内 昇・澤 孝平・中山義久・城野克広・藤原照幸
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 3〜4 発行 2015/06/20 文書ID 69598
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タイトル 地盤材料試験の精度・ばらつきの実態-地盤材料試験の正規性評価-
著者 中山義久・城野克広・澤 孝平・藤原照幸・山内 昇
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 5〜6 発行 2015/06/20 文書ID 69599
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タイトル 技能試験結果の不確かさ評価による配付試料の均質性に関する検討(その2)
著者 澤 孝平・中山義久・城野克広
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 7〜8 発行 2015/06/20 文書ID 69600
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タイトル アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 -技能試験全般-
著者 藤原照幸・稲積真哉・浜田英治・沼倉桂一・日置和昭・中川 直
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 9〜10 発行 2015/06/20 文書ID 69601
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タイトル アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 -含水比・土粒子の密度試験-
著者 中澤博志・稲積真哉・浜田英治・沼倉桂一・日置和昭・保坂守男
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 11〜12 発行 2015/06/20 文書ID 69602
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タイトル アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題-土の粒度試験-
著者 沼倉桂一・稲積真哉・浜田英治・日置和昭・保坂守男
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 13〜14 発行 2015/06/20 文書ID 69603
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タイトル アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題ー土の液性限界・塑性限界試験ー
著者 浜田英治・稲積真哉・沼倉桂一・日置和昭・保坂守男
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 15〜16 発行 2015/06/20 文書ID 69604
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タイトル 土の粒度試験結果がばらつく要因の分析例
著者 服部健太・日置和昭
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 17〜18 発行 2015/06/20 文書ID 69605
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タイトル 地盤材料の空間的不均質性が系の力学挙動の不確実性へ与える影響(河川堤体を例として)
著者 佐竹亮一郎・若井明彦
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 19〜20 発行 2015/06/20 文書ID 69606
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タイトル 墳丘盛土の修復・保存のためのキャピラリーバリアの室内模型実験
著者 澤田茉伊・三村 衛・吉村 貢
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 21〜22 発行 2015/06/20 文書ID 69607
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タイトル 古墳墳丘の締固めエネルギーに関する一考察
著者 吉村 貢・三村 衛・澤田茉伊・松浦良信
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 23〜24 発行 2015/06/20 文書ID 69608
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タイトル 国史跡名越切通「大切岸」の保存対策
著者 小林 恵・橋本直樹・澤田正昭・橋口 稔・高松 誠
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 25〜26 発行 2015/06/20 文書ID 69609
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タイトル カッパドキア岩窟教会の風化メカニズムに関する調査研究 -初回調査報告-
著者 小泉圭吾・朴 春澤・渡辺晋生・伊庭千恵美・谷口陽子・佐野勝彦
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 27〜28 発行 2015/06/20 文書ID 69610
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タイトル タイ王国アユタヤ遺跡の仏塔の傾斜と地盤との関係についての一考察
著者 藤井幸泰・渡邉邦夫・Uruya Weesakul・Nakhorn Poovarodom・Bhakapong Bhadrakom
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 29〜30 発行 2015/06/20 文書ID 69611
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タイトル 富岡製糸場西置繭所の基礎と建物の変形
著者 正垣孝晴・中川原雄太・藤井幸泰
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 31〜32 発行 2015/06/20 文書ID 69612
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タイトル 国指定史跡名越切通における崖面の保存対策工事の効果検証
著者 橋口 稔・小林 恵・橋本直樹・澤田正昭
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 33〜34 発行 2015/06/20 文書ID 69613
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タイトル アンコール遺跡基壇盛土材料の選定と締固め特性
著者 福田光治・岩崎好規・本郷隆夫・中川 武・新谷眞人・山田俊亮・石塚充雅・下田一太
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 35〜36 発行 2015/06/20 文書ID 69614
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タイトル アンコール遺跡バイヨン中央塔における精密写真測量を用いた塔体・基壇の石積み変状の計測
著者 中西由起・小山倫史・橋本涼太・岩崎好規
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 37〜38 発行 2015/06/20 文書ID 69615
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タイトル アンコール・バイヨン寺院中央塔重量積石構造物の直接基礎としての砂質盛土地盤特性
著者 岩崎好規・福田光治・原口 強・下田一太・北村篤実・井出善明・徳永朋祥・茂木勝郎・中川 武
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 39〜40 発行 2015/06/20 文書ID 69616
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タイトル 「三国志」魏志東夷伝に見る古代東アジアの地盤構造物
著者 鬼塚克忠
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 41〜42 発行 2015/06/20 文書ID 69617
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タイトル 地盤関連 ISO の審議状況と地盤工学会におけるISO 活動-平成26年度-
著者 浅田素之・今村 聡
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 43〜44 発行 2015/06/20 文書ID 69618
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タイトル 室内土質試験方法の国際規格審議状況-2014年度-
著者 豊田浩史
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 45〜46 発行 2015/06/20 文書ID 69619
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タイトル ISO/TC190(地盤環境)の審議状況-2014年度-
著者 川端淳一・古川靖英・浅田素之
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 47〜48 発行 2015/06/20 文書ID 69620
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タイトル ISO/TC221国内専門委員会活動報告-ジオシンセティックス関連規格に関する現状と今後の展開-
著者 椋木俊文・宮田喜壽
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 49〜50 発行 2015/06/20 文書ID 69621
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タイトル 樋門の耐震対策詳細設計におけるCIMの試行
著者 水長 徹・高尾 浩・飯田 誠
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 51〜52 発行 2015/06/20 文書ID 69622
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タイトル 斜面防災に関わる社会インフラ維持管理教育
著者 廣田清治・竹田正彦・矢田部龍一
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 53〜54 発行 2015/06/20 文書ID 69623
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タイトル 水系フルボ酸の機能を解りやすく可視化する試み(生化学的な鉄イオンとフルボ酸のキレート作用)
著者 奈良崎浩美・吉見 昭・肴倉宏史・乾  徹・勝見 武
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 55〜56 発行 2015/06/20 文書ID 69624
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タイトル 名神高速道路多賀地区盛土のり面災害復旧に関する報告
著者 後藤健二
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 57〜58 発行 2015/06/20 文書ID 69625
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タイトル 硬質地盤対応型ラディッシュアンカー工法の開発
著者 蓮香朋宏・高橋 徳・館山 勝・田村幸彦
出版 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
ページ 59〜60 発行 2015/06/20 文書ID 69626
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  • タイトル
  • 技能試験にみられる地盤材料試験の変動係数
  • 著者
  • 日置和昭・澤 孝平・中澤博志・渡辺健治・中川 直
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 1〜2
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69597
  • 内容
  • 1D - 00第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月技能試験にみられる地盤材料試験の変動係数技能試験地盤材料試験変動係数大阪工業大学国際会員○日置和昭関西地盤環境研究センター国際会員澤孝平復建調査設計国際会員中澤博志鉄道総合技術研究所国際会員渡辺健治全国地質調査業協会連合会正 会 員中川直1.はじめに地盤工学会では,これまでに 4 回の技能試験を実施し(表-1 参照),地盤材料試験の精度確認を行ってきた1),2),3),4)。本稿では,平成 23~26 年度の技能試験にみられる地盤材料試験の変動係数を整理するとともに,技能試験で「満足」と判定された測定値の範囲を求めることで,地盤材料試験の精度・ばらつきの実態と技能評価の課題を浮き彫りにする。2.変動係数の算定方法変動係数 v は,標準偏差 σ を平均値 m で除した値であり,単位に依存しないため,単位が異なる測定値間でばらつきの程度を比較できる。技能試験では,試験者の技能不足(試験データの読み間違い,計算ミス,記載ミスなどを含む)に起因して,付与値から大きく外れた測定値(外評価では,外れ値の影響を極力抑える目的で四分位法を用いており,変動係数 v1 も式(1)より算定し実施年( 平成 )ている。また,技能試験では,配付試料の均質性に試験項目土粒子の密度問題を含んでいることがあるため,変動係数 vR は含水比式(2)より算定することがある。Q  Q1   0.7413  100 (%)σv1  1  100  3Q2Q2vR σR 100 Q22s s  σ1Q2(1)23 年粒度(沈降分析)細粒分含有率粘土分含有率液性限界2 100 (%)(2)塑性限界ここに,v1:四分位法による標準偏差 σ1 から求まる変動係数,vR:四分位法による標準偏差 σ1 に均湿潤密度24 年一軸圧縮質性確認試験結果の標準偏差 ss を加味した標準偏差 σR から求まる変動係数,Q1 :第 1 四分位数,土粒子の密度Q2:第 2 四分位数(中央値),Q3:第 3 四分位数50%である。25 年表-1地盤材料試験の変動係数と|z|≦2 の範囲 1),2),3),4)表-2れ値)がしばしば見受けられる。そのため,技能粒度粒径(ふるい分析)均等係数技能試験の実施状況最小密度実施年( 平成 )試験項目23 年含水比土粒子の密度粒度 ( 沈降分析 )液性限界 /塑性限界24 年湿潤密度一軸圧縮25 年土粒子の密度粒度 ( ふるい分析 )最小密度 /最大密度砂55JGS技能試験実施委員会26 年含水比土粒子の密度粒度 ( 沈降分析 )液性限界 /塑性限界粘土66〃試料参加機関数粘土45改良土51主催最大密度JGS土粒子の密度研究委員会含水比JGS技能試験準備委員会26 年粒度(沈降分析)細粒分含有率粘土分含有率液性限界塑性限界試料試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F試料 56試料 59試料 56試料 595 号珪砂7 号珪砂5 号珪砂7 号珪砂5 号珪砂7 号珪砂5 号珪砂7 号珪砂5 号珪砂7 号珪砂試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F変動係数v (%) v 1 (%) v R (%)1.01.01.71.43.71.318.528.46.57.08.510.01.01.216.215.90.91.011.442.218.045.81.61.01.51.21.61.31.61.73.93.825.640.65.45.912.014.20.80.71.61.12.00.712.513.44.94.85.610.10.70.613.111.20.30.25.44.618.17.61.21.01.31.21.00.91.71.71.91.210.236.13.54.611.012.6――――――――――――0.90.715.713.90.30.26.15.418.38.71.31.11.91.31.00.91.81.71.91.210.236.43.75.211.614.1|z|≦ 2 の範囲2.673 ~ 2.757(g/cm 3 )2.650 ~ 2.721(g/cm 3 )32.5 ~ 34.5(%)33.1 ~ 34.5(%)78.9 ~ 85.6(%)93.9 ~ 96.5(%)37.0~ 61.7(%)32.3~ 55.9(%)41.9~ 51.1(%)42.9~ 51.9(%)20.6~ 25.7(%)15.7~ 23.7(%)1.603 ~ 1.661(g/cm 3 )1.614 ~ 1.656(g/cm 3 )75.7~ 144.9(kN/m2)106.4~ 188.2(kN/m2)2.628 ~ 2.660(g/cm 3 )2.660 ~ 2.686(g/cm 3 )0.46 ~ 0.58(mm)0.14 ~ 0.18(mm)1.3 ~ 2.71.4 ~ 2.01.302 ~ 1.370(g/cm 3 )1.251 ~ 1.309(g/cm 3 )1.568 ~ 1.690(g/cm 3 )1.564 ~ 1.646(g/cm 3 )2.657 ~2.767(g/cm 3 )2.638 ~2.734(g/cm 3 )33.6 ~36.0(%)23.1 ~24.7(%)81.9 ~88.3(%)93.3 ~97.7(%)36.6~55.4(%)10.3~65.5(%)42.7~49.7(%)41.3~50.9(%)18.7~30.1(%)14.7~26.1(%)Coefficient of variation of geomaterial test in proficiency testingK. Hioki (Osaka Institute of Technology), K. Sawa (Kansai Geotechnology and Environment Research Center), H. Nakazawa(Fukken Co.,Ltd.), K. Watanabe (Railway Technical Research Institute), S. Nakagawa (Japan Geotechnical Consultants Association)1 3.地盤材料試験の変動係数と|z|≦2 の範囲大学・高専を除く 42 機関の変動係数と|z|≦2 の範囲表-3平成 23~26 年度の技能試験結果から算定した地盤材料試験の変動係数(v,v1,vR)を表-2 に示実施年( 平成 )す。技能試験では,式 (3) あるいは式 (4) により算定試験項目土粒子の密度される z スコアを技能評価指標として用いており,含水比z スコアの絶対値が 2 以下であれば,その測定値は「満足」と判定している。zi xi  Q2 xi  Q2Q3  Q1   0.7413σ126 年粒度(沈降分析)(3)細粒分含有率粘土分含有率液性限界zi xi  Q2σR x i  Q2 2s s  σ12塑性限界(4)試料試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F変動係数v (%) v 1 (%) v R (%)1.20.91.31.52.41.515.630.05.76.011.514.11.00.81.01.71.30.87.927.54.64.711.011.01.00.81.21.71.30.88.027.84.85.311.712.7|z|≦ 2 の範囲2.656 ~2.764(g/cm 3 )2.642 ~2.730(g/cm 3 )34.0 ~35.6(%)23.2 ~24.8(%)82.9 ~87.3(%)94.0 ~97.2(%)38.7~53.5(%)18.1~63.5(%)41.6~50.4(%)40.9~50.5(%)18.3~29.3(%)14.9~25.1(%)ここに,zi:ある試験者 i の z スコア,xi:ある試験者 i の測定値である。平成 23 年度は式(3),平成 24~26 年度は式(4)により,z スコアを算定し参加機関の技能を評価した表-4比較的経験豊富な試験者のみの変動係数と|z|≦2 の範囲実施年( 平成 )が,表-2 には技能試験において「満足」と判定さ試験項目土粒子の密度れた測定値の範囲,すなわち|z|≦2 の範囲も併せて含水比示している。これによると,粘土分含有率,一軸圧縮強さ,塑性限界の変動係数(v1,vR)は,平成 26年度における試料 F の粘土分含有率を除けば,10~26 年粒度(沈降分析)15%となっており(|z|≦2 の範囲もかなり広い),これらの試験は,ばらつきが大きい試験であること細粒分含有率粘土分含有率液性限界を確認できる。次いで,液性限界の変動係数(v1,塑性限界vR)も概ね 5%前後を示しており(|z|≦2 の範囲も比試料試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F試料 A試料 F変動係数v (%) v 1 (%) v R (%)1.00.91.21.22.20.916.325.65.75.213.516.90.90.81.00.91.10.88.617.54.22.512.012.40.90.81.11.01.50.88.718.04.43.412.614.2|z|≦ 2 の範囲2.657 ~2.755(g/cm 3 )2.639 ~2.723(g/cm 3 )34.0 ~35.6(%)23.5 ~24.5(%)82.6 ~87.8(%)94.0 ~97.2(%)38.1~54.3(%)26.4~56.2(%)41.9~50.0(%)42.2~48.4(%)17.7~29.7(%)13.3~23.7(%)較的広い),比較的ばらつきが大きい試験と言えよう。なお,砂質土の 50%粒径や均等係数の変動係数(v1,vR)もかなり大きい値となっているが,|z|≦2 の範囲が比較的狭いことから,実務上,特に問題視する必要はないと考えている。さて,平成 26 年度の技能試験には多くの大学・高専が参加しており(23 機関),試験者の経験不足(これは宿命的と言えよう)は否めない。そこで,大学・高専を除く 42 機関の測定値のみを対象に変動係数(v,v1,vR)を算定したのが表-3 である。表-2 と比較し,概ね変動係数(v,v1,vR)は小さくなる傾向にあることを確認できる。また,技能試験と併行して実施したアンケート結果によると,技能試験の活用方法の一つに社内教育が挙げられており,42 機関の中には経験不足の試験者も多く含まれている。42 機関のうち,比較的経験豊富な試験者(経験年数:5 年以上,かつ実施頻度:数回以上/週)が行った測定値のみを対象に変動係数(v,v1,vR)を算定したのが表-4 である。表-3 と比較すると,一部を除いて変動係数(v,v1,vR)はさほど変わっておらず,粘土分含有率や塑性限界の変動係数(v1,vR)は,試料 F の粘土分含有率を除けば,概ね 10%前後となっていることから,これらの試験では,現状この程度のばらつきを潜在的に有するものと考えられる。また,液性限界の変動係数(v1,vR)も概ね 3%前後となっており,同様に考える必要がある。4.おわりに本稿では,過去の技能試験の変動係数(v,v1,vR)から,地盤材料試験の精度・ばらつきの実態を浮き彫りにし,試験機関・試験者のさらなるスキルアップ,設計や品質管理等への反映,場合によっては試験方法の改訂・見直しが必要と思われる試験がいくつかあることを確認した。また,変動係数(v1,vR)が大きい地盤材料試験では,「満足」と判定される測定値の範囲と地盤材料試験に要求される精度の整合性が取れておらず,今後,技能評価指標に関する検討が必要であることを確認した。例えば,ISO 13528 では,要求される精度などがあれば,技能評価の標準偏差として,それを使ってもよいとしており,今後の検討課題としたい。引用・参考文献1) 日置和昭他:土質技能試験結果の分布形状と評価方法に関する考察,地盤材料試験・地盤調査の精度とばらつきに関するシンポジウム論文集,pp.39-48,2012.2) 公益社団法人地盤工学会 調査基準部 技能試験準備委員会:平成 24 年度土質試験の技能試験報告書,2013.3) 公益社団法人地盤工学会 基準部 技能試験実施委員会:平成 25 年度地盤材料試験の技能試験報告書,2014.4) 公益社団法人地盤工学会 基準部 技能試験実施委員会:平成 26 年度地盤材料試験の技能試験報告書,2015.2
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  • タイトル
  • 地盤材料試験の技能試験における配付試料の均質性評価
  • 著者
  • 山内 昇・澤 孝平・中山義久・城野克広・藤原照幸
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 3〜4
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69598
  • 内容
  • 2D - 00第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月地盤材料試験の技能試験における配付試料の均質性評価技能試験・試料の均質性・標準偏差地盤工学会北海道土質試験協同組合技能試験実施委員会(正会員)○山内昇関西地盤環境研究センター(国際会員)澤孝平関西地盤環境研究センター(国際会員)中山 義久産業技術総合研究所(非会員)城野 克広地域地盤環境研究所(国際会員)藤原 照幸1.はじめに地盤材料試験結果は、インフラ建設の基礎データとなり設計・施工・維持管理に影響し、構造物の安全性を通じて社会生活の安全・安心に関するものであり、その調査・試験技術や技能の確認と向上は常に必要なものである。地盤材料試験に係る技能試験は、2007年度より8回実施されている。その内、粘性土を対象としたものは、2009年・2011年・2014年度の3回実施されている。技能試験では、試験結果を参加機関の間で比較して評価するものであり、公正な評価を行うために試験に用いる試料の均質性が重要である。とくに、地盤材料は工場で生産される工業製品とは違い自然状態から採取することから均質性に問題があり、標準偏差や変動係数などで評価されている。一方、技能試験における試料の均質性評価方法がJIS Z 8405-2008 付属書 Bに定められている。本報では、地盤工学会技能試験実施委員会が2014年度に実施した技能試験における配付試料の均質性評価の実態を、過去の技能試験(2009・2011年度)を踏まえて比較検討した結果を報告する。2.試料土の物性値技能試験の配付試料は市販の粘性土(a 試料、b 試料)であり、配付前に当委員会が実施した均質性確認試験(以降、均質性試験という)によると、試料土の物性値は図-1(粒径加積曲線)と表-1(基本的性質)のようである。表-1年度200920112014図-1粒径加積曲線(2014 年)基本的性質(2009 年・2011 年・2014 年)土粒子の密度液性限界塑性限界F c(%)C c(%)w L(%)w P (%)28.586.344.140.417.738.395.365.960.121.434.181.450.046.321.9ρ s(g/cm )含水比w (%)a試料2.681b試料2.659a試料2.721試料名3細粒分含有率 粘土分含有率b試料2.68234.294.947.146.719.6a試料2.68935.285.745.644.522.3b試料2.66624.395.139.044.018.93.配付試料の均質性の評価方法配付試料の均質性を表すには標準偏差や変動係数が一般的であり、2008 年までの技能試験ではこの方法によっていた。一方、JIS Z 8405-2008 付属書 B において、技能試験結果と比較する評価方法が示されている。(1) 標準偏差と変動係数:配付試料を調整準備するロットごとに 1 試料を抽出した均質性試験の結果から、配付試料の標準偏差(ss)や変動係数(ν0 )を求め、一般的な値以下であれば均質な試料が準備できていると判断する。とくに、これらが技能試験結果の標準偏差(σR)や変動係数より小さければ、配付試料の均質性が確保されていると追認できる。n標準偏差: s si(xi1x)2変動係数: v 0(1)n 1ss100 (%)x(2)ここに、xi:均質性試験の試験結果、 x :xi の平均値、n:ロットの数(均質性試験の試料数)である。xi を技能試験の試験結果、n をその参加機関数とすると、技能試験結果の標準偏差と変動係数が求められる。(2) JIS Z 8405-2008 付属書 B:試料間標準偏差 ss を技能評価のための標準偏差σR と比較して、次の場合はこの試料を均質とみなす。判定基準:ss≦0.3×σR(3)この式における ss には均質性試験の繰返しの影響を除いた標準偏差を用いるべきであるが、繰返しの影響が小さいものとして式(1)をそのまま用いる。一方,試験の繰返しも試験所の技能の一部であるので,σR は式(1)を用いる。なお、技能試験の平均値、標準偏差と変動係数は、技能試験結果の四分位数法により求めている。また,この式の係数 0.3 の根拠は,この基準が満たされる場合,試料間標準偏差によって生じる技能試験の標準偏差が約 10%を越えないということである。Evaluation of the Homogeneity of Sample in Proficiency Testing for Geomaterial TestingNoboru Yamauchi (Hokkaido Soil Research Co-operation)3 4.試料の均質性の実態・2011年(45機関:3ロット)・2014年(66機関:粘性土2種類を用いて技能試験を実施した2009年(26機関:2ロット)5ロット)の配付試料の均質性試験を評価した実態を表-2に示す。表-2実施年均質性試験と技能試験における試験結果の平均値・標準偏差・変動係数(2009 年・2011 年・2014 年)均 質 性試 験(2ロット )2009年技能試験(26機 関 )均 質 性試 験(3ロット )2011年技能試験(45機 関 )均 質 性試 験(5ロット )2014年技能試験(66機 関 )含水比w (% )a28 .50.260.9127 .80.5371.93b38.30.240.6238.01.0192.68土粒 子 密 度ρ s  (g/cm 3 )ab2 .6812.6590 .0010.0030 .050.102 .6862.6830 .0310.0361 .151.35s s /σ R0.480.230 .050.070.230.060.0 30.360.050 .350.30判定×○○○○○○×○×○○34 .00.110.3233 .50.5191.5534.20.090.2733.80.3711.102 .7210 .0030 .132 .7150 .0210 .782.6820.00010.002.6860.0180.6681.40.090.1182.31.672.0394.90.080.0895.20.670.7050.01.1 62.3 149.46.1 912.5 447 .10.220.4644 .15.8913.3646.30.390.8546.52.284.904 6.70 .701 .514 7.42 .264 .7721.90.190.8623.21.305.601 9.60 .090 .471 9.71 .981 0.07s s /σ R0.210.240 .140.010.050.120.1 90.040.170 .310.150 .05判定○○○○○○○○○×○○35 .20.220.6234 .80.5751.6524.30.0550.2323.90.4081.712 .6890 .0030 .132 .7120 .0271 .002.6660.0040.152.6860.0240.8885.70.190.2385.11.591.8795.10.120.1395.51.111.1645.60.6 11.3 446.04.6 710.239 .01.794.5837 .913 .736 .144.50.621.3946.21.613.494 4.01 .072 .434 6.12 .134 .6322.30.924.1124.42.6911.01 8.91.36 .662 0.42 .581 2.6s s /σ R0.380.130 .130.170.120.110.1 30.130.390 .500.340 .49判定×○○○○○○○××××測定量種別試料名平均値標 準 偏 差 s s変 動 係数 v 0 (% )平均値標 準 偏 差 σ R変 動 係 数( %)平均値標 準 偏 差 s s変 動 係数 v 0 (% )平均値標 準 偏 差 σ R変 動 係 数( %)平均値標 準 偏 差 s s変 動 係数 v 0 (% )平均値標 準 偏 差 σ R変 動 係 数( %)細 粒 分含有 率F c (% )ab86.495.30.210.140.250.1587.098.00.932.3911.072.44粘 土 分 含 有率C c (% )ab44.165 .90.1 42.900.3 24.4041.269 .24.52 28.06210.9 811.66a40.40.070.1842.91.543.59b6 0.10 .641 .065 9.61.8163 .05a17.70.352.0018.01.1686.50b2 1.40 .522 .422 0.52 .3721 1.570 .22液性限界w L (% )塑性限界w p  ( %)(1) 標準偏差と変動係数による判定:表-2によると、均質性試験の標準偏差は技能試験結果よりも小さい。含水比試験、土粒子の密度試験、粒度試験(細粒分含有率)の均質性試験結果の変動係数は1%未満である。粒度(粘土分含有率)試験、液性限界・塑性限界試験の均質性試験結果の変動係数は0.18%∼6.66%であり、技能試験結果の変動係数では3.49%∼36.1%となっている。技能試験結果の変動係数が大きい原因としては、粒度試験の技能試験において粒径の読み違いやデータの計算ミスと考えられる試験結果があったこと、沈降分析における分散の程度の違い、浮ひょうの読みのばらつきなどが考えられる。また、液性限界・塑性限界の変動係数が大きい原因としては、試験者の目による観察結果(LLの溝閉塞程度、PLのひも直径など)のばらつきが原因と考えられる。このように、変動係数の大きさから判断すると配付試料のばらつきは技能試験結果より小さく、均質な試料が配付されていると判断される。(2)JIS Z 8405-2008 付属書Bに基づく判定:配付試料の均質性を判定するために、式(3)に基づき均質性試験と技能試験の標準偏差の比( s s / R )と均質性試験の変動係数( v0 )の関係を示したものが図-2である。2009年・2011年・2014年の技能試験は、2種類の粘性土をそれぞれ2∼5ロットずつできるだけ均質に作成したので、一部の試験項目を除き大部分はs s / R 0.3 を満足している。とくに、この基準を満足できない試験項目は粒度・液性限界・塑性限ss /σR界試験であり、これらは前述のように技能試験の変動係数が大きい試験項目でもある。図-2によると、過去3回の技能試験に用いた粘性土試料では、均質性試験の変動係数を1未満にできれば、配付試料の均質性が確保できることが分かる。2009-含水比1.000.900.800.700.600.500.400.300.200.100.000.0012011-含水比2014-含水比2009-土粒子密度2011-土粒子密度2014-土粒子密度2009-細粒分含有率2011-細粒分含有率2014-細粒分含有率2009-粘土分含有率2011-粘土分含有率2014-粘土分含有率2009-液性限界2011-液性限界2014-液性限界2009-塑性限界0.010.11均質性確認試験の変動係数 ⅴ0 (%)5.おわりに図-2本報告では、技能試験に用いられている配付試ss /102011-塑性限界2014-塑性限界基準線:Ss/σR=0.3R と変動係数の関係料の均質性の実態を明らかにした。3.(2)で述べているように,これまでは均質性試験の繰返しのばらつきを分離していない標準偏差を用いているため,均質性が厳しめの評価となっているが,参加試験機関にとって不利益な評価を与えるものではない。今後とも技能試験を継続実施するに当たり、配付試料の均質性を適正に評価することも検討し,試験実施機関の技能レベルの確認と試験精度の向上に反映されるように努める必要がある。参考文献 1) 澤・城野ほか: 技能試験配付試料の均質性の評価方法と判定基準について、第48回地盤工学研究発表会論文集,No、105、pp.209-210,2013.4
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  • タイトル
  • 地盤材料試験の精度・ばらつきの実態-地盤材料試験の正規性評価-
  • 著者
  • 中山義久・城野克広・澤 孝平・藤原照幸・山内 昇
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 5〜6
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69599
  • 内容
  • 3D - 00第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月地盤材料試験の精度・ばらつきの実態-地盤材料試験の正規性評価技能試験・正規性・頻度分布関西地盤環境研究センター ○(国) 中山 義久・(国) 澤 孝平産業技術総合研究所 (非) 城野 克広地域地盤環境研究所 (正) 藤原 照幸北海道土質試験協同組合 (正) 山内 昇1.はじめに地盤工学会 技能試験実施委員会が実施している技能試験結果の評価指標としてzスコア(zスコアの算出に用いる標準偏差は試験値の分布が正規分布であることが前提である)が用いられている。平成25年の技能試験準備委員会の報告として,このzスコアの計算に用いる標準偏差の算出方法について2つの方法で検討を行った。その結果,はずれ値を合理的に外すことのできる四分位法で算出した標準偏差を用いることが妥当な方法であることを明らかにした1)。さらに試験結果の分布形状の正規性についても検討を行った。本論では,平成26年に本学会が実施した技能試験{土粒子の密度試験,含水比試験,粒度試験,液性限界・塑性限界試験}の試験結果のばらつきの実態とその分布形状について,検討した結果を報告するものである。2.技能試験の概要と結果参加機関数は 66 機関(粒度試験は 64 機関,その内訳は図 1)であった。技能試験の用土は市販の荒木田粘土(試料 A)と藤森粘土(試料 F)の 2 種類で,それらの粒径加積曲線を図 2 に示す。試験値の最大・最小の範囲,平均値,標準偏差,変動係数は表 1 に示す通りである。粒度試験の 50%粒径と粘土分含有率の変動係数が試料 A,試料 F ともに非常に大き図-1 参加機関の種類・割合図-2 用土の粒径加積曲線いことがわかる。その原因のとして複数機表-1 試験結果の一覧関で沈降分析の計算を間違えている可能性が考えられる。3.試験結果の頻度分布と正規性の検討試料Aで表した。粒度試験(50%粒径と細粒分含有率)を除く試験結果については,全データ表示および z* <2 のデータ表示とも,視覚的には正含水比(%)50%粒径(mm)細粒分含有率(%)粘土分含有率(%)2.7822.4822.7060.0431.592.7672.5332.6800.0341.2635.733.334.70.571.6424.923.023.90.401.690.0650.00290.00900.010111.970.0620.00250.0130.01181.2393.870.185.53.293.8598.969.395.03.643.8359.50.043.011.0025.5858.30.033.213.4740.56最大最小平均標準偏差変動係数(%)最大最小平均標準偏差変動係数(%)各試験値の頻度分布(全データと z* <2のデータ)を図 3~図-8 にヒストグラム土粒子の密度3(g/cm )試料F規分布形状に近い形となっている。液性限界(%) 塑性限界(%)52.938.746.22.515.4352.438.346.02.745.9430.115.724.02.8912.0229.513.120.42.8814.15粒度試験(50%粒径)では,全データ表示すると試料 A,試料 F とも外れ値の影響で分布が偏っている。 z* < 2 のデータで表示すると試料 F は正規分布に近い形状に見える。細粒分含有率については,全データ表示および z* < 2 のデータ表示においても,得られたデータの範囲が狭いことから視覚的には上に凸な形状となっている。{※正規四分位範囲分布の正規性を検討する。極端な値を除いた正規性の議論のため,z* = |xi-メジアン|/(正規四分位範囲 NIQR)NIQR は標準偏差と同等である。}を算出し,その3つの範囲を規定する。全てのデータを使用するものは JB 値 2)と呼ばれる統計量である。本報告における,|z*|< 2 あるいは|z*|< 3 のものは,それぞれの範囲で試験所数 64 から 66 の場合に,JB 値に相当する統計量を,数値シミュレーションにより決定した。いずれも 5.99 より小さいとき,正規性があると評価できる。1={=)(+(} ・)1n・・(1),・・(3) ,(2={)1} ・ ・・(2)(< 2) =n.+(..)・・(4),(< 3) =.+(..)・・ (5)b1:歪度,b2:尖度,n : データの個数,sp: |z*|< 2 または |z*|< 3 の数量についての標準偏差,xi:個々のデータ,x:メジアンThe consideration on normal distribution in Proficiency testing Results for Soil test ; Nakayama Yoshihisa,Sawa Kohei ; Kansai Geotechnology andEnvironment Research Center, Shirono Katsuhiro; National Institute of Advanced Industrial Science andGeo-Research Institute, Yamauchi Noboru ; Hokkaido Soil Test Co.5Technology , Fujihara Teruyuki; 図3土粒子の密度図4含水比50%粒径図6細粒分含有率図8塑性限界図5図7液性限界表-2 は JB 値をデータの範囲ごと,全データ, z < 2,|z |< 3 に分けてそれぞれ式(3),(4),(5)を用い計算した結果である。表**中のハッチで示した部分は JB>5.99 を示している。土粒子の密度・液性限界・塑性限界については, z* < 2,|z*|< 3 のようにデータを絞り込むことにより,分布が正規性を示すことがわかる。一方,粒度試験(50%粒径・細粒分含有率・粘土分含有率)については, z* < 2,|z*|< 3 のデータの絞り込みを行っても,分布が正規性を示さないことがわかる。原因の 1 つとして,表-1 に示されているように,50%粒径・粘土分含有率の変動係数が異常に大きくなっていることも影響していると考えられる。参考文献1) 中山,藤原,山内,城野;地盤材料試験の技能試験における試験結果の評価検討(その 1),第 49 回地盤工学研究発表会論文集,No.1,pp.1~pp.2,2014.2) 小西葉子ら;Eviews の使い方補足Jarque-Bera 検定,H.P.資料 http://ykonishi.web.fc2.com/EViews_manual_JB.pdf,2012.3.1 取得表2土粒子の密度含水比50%粒径細粒分含有率粘土分含有率試料A271.173.99980.98148.80149.166.022.79試料F71.200.48174.393793.235.352.1010.44JB値|z*|<3試料A0.053.2412.5216.1225.390.870.27試料F1.832.2734.823.169.225.1214.00JB値|z*|<2試料A5.365.2439.731 3 .7 71 3 .1 82.213.19試料F2.210.5741.601 2 .3 21 0 .0 61.911.50H26年JB値全データJB 値の比較6液性限界塑性限界
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  • タイトル
  • 技能試験結果の不確かさ評価による配付試料の均質性に関する検討(その2)
  • 著者
  • 澤 孝平・中山義久・城野克広
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 7〜8
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69600
  • 内容
  • 4D - 00第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月技能試験結果の不確かさ評価による配付試料の均質性に関する検討 (その2)試料の均質性・標準偏差・不確かさ関西地盤環境研究センター 国際会員 ○澤 孝平・中山義久産業技術総合研究所1.はじめに非会員城野克広技能試験は同じ試験方法で得られる試験結果をいくつかの試験機関の間で比較して評価するものであり,公正な評価のためには各試験機関に配付される試料の均質性が重要である。技能試験における試料の均質性評価方法はJIS Z 8405に定められているが,この方法で評価すると地盤材料試料の均質性には問題があることが示されている1)。一方,試験結果の不確かさ(ばらつき)の評価方法が国際的に統一され,多くの分野で実施されている。この方法によると,試験者・試験機器・試験方法・試料などの不確かさ要因が影響する程度(寄与率)を求めることができる。本報告では,技能試験結果の不確かさ(ばらつき)に与える要因の影響を算定し,これまで実施されてきた地盤材料試験の技能試験における配付試料の均質性評価と技能試験結果の不確かさ寄与率との関係を検討し,配付試料の準備段階で均質性を確認する方法を提案する。さらに,技能試験結果の不確かさの程度を明らかにする。2.技能試験の試験項目と配付試料参加試験機関が 20 機関以上の地盤材料試験の技能試験の実績は表 1 の様である。これらの技能試験では,参加試験機関に 2 種類の試料が配付される。改良土の試料は,養生後の供試体が 5 本ずつ配布され,試験機関はその内 3 本の試験結果を平均して報表 1 地盤材料試験の技能試験実施状況告する。粘土と珪砂では,試験機関は配付された試料から年度参加数試験項目ごとに決められた数(粒度と液性限界は 1 個,最200729湿潤密度・一軸圧縮小密度は 5 個,それ以外は 3 個)のサンプルを採取して試200926土粒子の密度・含水比・粒度・液性限界・塑性限界201145土粒子の密度・含水比・粒度・液性限界・塑性限界201251湿潤密度・一軸圧縮201355土粒子の密度・粒度・最小密度・最大密度珪砂201466土粒子の密度・含水比・粒度・液性限界・塑性限界粘土験し,その平均値を報告する。なお,試料を配付する前に,技能試験と同じ試験項目と供試体・サンプル数で均質性確認試験を実施している。試験項目配付試料改良土粘土粘土改良土3.不確かさ評価による配付試料の均質性の検討方法試験結果の不確かさ(ばらつき)を評価するには,ばらつきの要因(x)ごとの標準偏差(σx)を標準不確かさ(ux)として算出し,それらを合成(二乗和)した合成標準不確かさ(uc)を包含係数(ふつう 2)倍して拡張不確かさ(U)を求める。ここでは,2014 年の技能試験の含水比試験を例にして述べる。(1) 試験結果の不確かさに影響する要因:一般に試験結果に影響するものは試験機器・試験者・試料・試験方法・試験環境であるが,技能試験と均質性確認試験では次の二つとなる。①「試験機関と配付試料」:第 1 の要因は試験機器・試験者・試験環境を含む試験機関の違いであり,これに配付試料の違い(均質性)が交絡する。2014 年の配付試料は均一に混合した粘土を約 1 kg ずつに分けたものから 66 個を各試験機関に 1 個ずつ配付し,5 個を均質性確認試験に供した。均質性確認試験は同一の試験機関で行うので,この要因は「配付試料」のみである。試験機関は記号「Lab」で,配付試料は記号「SGiv」で表す。②「繰返し+サンプル」:第 2 の要因は試験の繰返しである。各試験機関では前述の配付試料から2.で述べた個数のサンプルを採取して繰返し試験をするので,繰返し試験にはこのサンプリングの違い(選び方)が交絡する。これを記号「Rep」で表す。粒度試験と液性限界は 1 個のサンプルだけで試験するので,「繰返し+サンプル」による影響は求められない。(2) 標準不確かさの算出:3 つのサンプルの平均値として試験結果を求める土粒子の密度,含水比,塑性限界などでは,試験結果を一元配置分散分析すると,表 2のような分散分析表が得られ,第 1 及び表 2 含水比の試験結果(A 試料)の分散分析表と標準偏差の計算第 2 の要因を添字記号「A」及び「e」で表す。また,均質性確認試験は添字「0」,技能試験は添字「1」で表している。 こ均質性確認試験のようにして求めた標準偏差 σA1 は,試験機関の違いによるもの(σLab)と配付試料の違いによるもの(σSGiv)の合成されたも技能試験要因変動 (%)2配付試料0.486340自由度 分散 (%)240.121585繰返し+サンプル0.120176100.012018合計0.60651614試験機関+配付試料 62.181131650.9566330.091179繰返し+サンプル12.035600132合計74.216731197分散の期待値2σe0 +3σA0σe022σe12+3σA12σe12標準偏差 (%)σA0σe00.191108σA1σe10.5371080.1096250.301958のであり,σA0 は σSGiv である。従って,σLab2=σA12-σA02,σSGiv2=σA02 である。また,  e0 と  e1 は本来等しいはずであるが,均質性確認試験と技能試験の試験機関や試料の違いなどから異なっている。ここでは,「繰返し+サンプル」の標準偏差 Rep は技能試験の結果(  e1 )を採用する。要因ごとに標準偏差(σLab,σSGiv,σRep)から標準不確かさ(uLab,uSGiv,uRep)が求められる。一般に,試験結果は 3 回の繰返し試験結果の平均値で表されるので,「繰返し+サンプル」の標準不確かさはuRep=σRep/√3 として求める(表 3)。(3) 合成標準不確かさと寄与率:各要因の標準不確かさ(ux)の二乗和の平方根として合成すると,合成標準不確かさ(uc)が求められる。この結果から,要因ごとの影響を寄与率( Rx  (ux uc ) 100 (%) )として算出する。22Consideration on the Homogeneity of Sample for Proficiency Test by Evaluation of Uncertainty from the Test ResultsK. Sawa, Y. Nakayama (Kansai Geotechnology and Environment Research Center), K. Shirono (AIST),7 (4) 拡張不確かさと相対拡張不確かさ:合成標準不確かさ(uc)を包含係数(ふ表 3 2014 年技能試験(含水比)の結果つう 2)倍して拡張不確かさ(U)を求め,試験結果の平均値( x )に対する百分率から相対拡張不確かさ( U R  (U / x )  100 (%) )を求める。以上の計算を 2014 年技能試験の試料 A の含水比について実施したものが表 3である。この表には配付試料の変動係数と JIS による均質性の確認結果を,一般項目標準不確かさ(u x) (%)的な標準偏差と四分位法による標準偏差から求めている。0.501958配付試料 (u SGiv)0.191108繰返し+サンプル (u Rep)0.174336合成標準不確かさ (u c) (%)4.不確かさ評価結果から分かる試料の均質性と試験結果のばらつき(1) 配付試料の均質性の検討:技能試験の標準偏差σは合成標準不確かさ uc であり,  2  uc 2  uLab 2  uSGiv 2  uRe p 2 である。ここで, uSGiv は均質性試験から得ら寄与率(R x) (%)れ るも ので ,配 付試 料の 標準 偏 差 ss と 同じ であ ると 考え ると ,先 の式 はu Labuc2RLab,100u Reuc2p2R Rep100より,(ss)2  1 RLab  RRe p100(1)表 1 の 6 年間の地盤材料についての技能試験結果を四分位法で整理すると,図0.56469試験機関 (R Lab)79.0配付試料 (R SGiv)11.5繰返し+サンプル (R rep)9.5R Lab+R Rep88.5拡張不確かさ (U ) (%)1.129試験結果の平均値x (x )34.73相対拡張不確かさ (U R) (%)3.25配付試料の変動係数(v 0) (%)0.57uc 2  uLab 2  ss 2  uRe p 2 となり,これを uc 2   2 で割ると,次のようである。2値試験機関 (u Lab)JISによる均質性確認一般法(s s/σ)0.34四分位法(ss/σ1)0.341 のように改良土以外の結果は式(1)に近い関係を示している。配付試料の均質性が良い(ss/σが小さい)技能試験は試験機関の高い能力を表示することとなり,2.52013年:珪砂式(1)からも ss/σが JIS 基準の 0.3 の場合,試験機関の寄与率が約 90%以上とな2009年:粘土2.0る。改良土が式(1)に合致しないのは,改良土の繰返し試験にも配付試料が使われ2014年:粘土2007年:改良土るため,σe1,σRep,uRep に試験の繰返しと共に配付試料の違い(ばらつき)要因(2) 配付試料の均質性と変動係数:図 2 は配付試料の変動係数 v0 と JIS 基準の2012年:改良土1.5(ss/σ1)2=1-((RLab+RRep)/100)s s /σ1が影響するためであり,これらを分離する方法を検討する必要がある。2011年:粘土JIS基準 ss/σ1=0.31.0関係を示す。粘土では約 8 割以上の試験結果が JIS 基準(ss/σ<0.3)を満足しているが,珪砂や改良土では多くが基準を満足しない。改良土は配付試料の変動係数 v0 が大きく,とくに強度試験において顕著である。一方,珪砂はもともと均質0.50.0な材料として知られており,技能試験での試験結果にばらつきが小さく,均質性020406080100試験機関の寄与率 RLab+RRep (%)試験と技能試験の標準偏差に差がないことが原因と考えられえる。図 1 配付試料の均質性と寄与率従って,試料を配付する前の均質性確認試験において,粘土では変動係数 v0<5%,珪砂では v0<2~3%,改良土では v0<10%を目標にして準備することが望ま1.6しい。1.4(3) 地盤材料試験結果のばらつきの範囲:毎年 30~60 機関の技能試験参加機果の一般的な精度を表している。図 3 は 6 年間の技能試験結果の相対拡張不確か1ss /σ1関が試験する地盤材料の試験結果のばらつきは,わが国における地盤材料試験結1.2さ UR(変動係数の約 2 倍を示す)と配付試料の変動係数 v0 を示している。試験0.8項目別に v0 と UR とは正の相関が見られる。v0 は強度・破壊ひずみ以外は大部分0.6が 5%より小さく,配付試料は均質なものと考えられる。UR は,含水比・土粒子0.4の密度・湿潤密度・最大/最小密度などでは 10%以下と小さいが,液性限界で 100.2~15%,塑性限界で 15~30%と増えていき,粒度(50%径・粘土分含有量)で 2002013年:珪砂2009年:粘土2011年:粘土2014年:粘土2007年:改良土2012年改良土JIS基準 ss/σ1=0.30~100%とかなり大きい値を示す。粒度試験(特に沈降分析)の精度に問題がある510152025配付試料の変動係数 v0 (%)と考えられる。一軸圧縮強度・破壊ひずみ・変形係数では v0 が 5%より大きく 25%図 2 配付試料の均質性と変動係数にも達するものもあり,均質な供試体作成のむつかしさを示している。v0 の増加験の精度向上への対策を考えるとともに,試験結果の利用にあたっての配慮を検討する必要があると考える。5.おわりに技能試験結果の不確かさ評価により,配付試料の均質性基準が不確かさ要因の寄与率と関係すること,及び配付試料の均質性の実態と技能試験の相対拡張不確かさの程度を明らかにした。配付試料の均質性の適正な確認方法を追及し,技能試験の正しい評価に貢献することにより,普及を図りたい。謝辞:2011年~2014年の技能試験結果を提供して頂いた地盤工学会の研究委員会,技能試験準備委員会及び技能試験実施委員会に感謝します。参考文献:1)澤・中山・城野:技能試験結果の不確かさ評価による配付試料の均質性に関する研究,第49回地盤工学研究発表会論文集,No.6,pp.11-12,2014.8100相対拡張不確かさ UR (%)とともに UR が増えて,UR>20%が普通で,80%に達するものもある。一軸圧縮試8060含水比・各種密度粒度(D50・Cc・Fc)40強度・ひずみ等液性限界20塑性限界00510152025配付試料の変動係数 v0 (%)図 3 試験結果別の相対拡張不確かさの範囲
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  • タイトル
  • アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 -技能試験全般-
  • 著者
  • 藤原照幸・稲積真哉・浜田英治・沼倉桂一・日置和昭・中川 直
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 9〜10
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69601
  • 内容
  • 5D - 01第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題‒ 技能試験全般 ‒技能試験アンケート調査地盤材料地域地盤環境研究所国際会員 ○藤原照幸明石工業高等専門学校国際会員稲積真哉基礎地盤コンサルタンツ正 会 員浜田英治川崎地質正 会 員沼倉桂一大阪工業大学国際会員日置和昭全国地質調査業協会連合会 正 会 員中川直1.はじめに地盤材料試験の結果は,各種構造物の設計・施工・維持管理に影響するとともに,大学・高専をはじめ多くの研究機関で行われている研究成果にも直接的に関係しており,その正確性が求められることは衆目の一致するところであろう。しかし,地盤材料試験結果の精度・ばらつきについては,土や地盤が本来持っている不均質性の所為としてある程度は仕方ないものとされて扱われることが多く,その精度確認はあまり行われてこなかった。地盤工学会では 2011 年から実務機関,研究所,大学,高専等から参加者を募集し,試験結果の精度(不確かさ)や技能レベルを確認することを目的に技能試験を実施している。試験機関が「技能試験」に参加する意義としては,自己の試験結果が全体のどの位置にあるかを確認できること,必要に応じて試験技術や試験環境の改善を図れること,的確な試験結果が出せる状態を維持できること,などが挙げられよう。一方,地盤工学会が「技能試験」を継続実施する意義としては,試験機関の質的向上と地盤材料試験結果の信頼性向上に寄与すること,関連する JIS や JGS 等の学会制定基準類の改定に反映できること,などが挙げられ,社会貢献の役割を果たせるものと考えられる。4 回目となる 2014 年は,粘性土の物理的性質試験(土粒子の密度試験,土の含水比試験,土の粒度試験,土の液性限界・塑性限界試験)を実施した。本発表は、技能試験とあわせて実施したアンケート調査の回答から,技能試験全般についてまとめて報告する。2.技能試験全般に関するアンケートの内容(1)技能試験をご存知でしたか?(2)今回の技能試験に参加した理由を教えて下さい(3)今後どの試験を受けてみたいですか?(複数回答可)・含水比・土粒子密度・湿潤密度・一軸・その他()・粒度・三軸・液性限界/塑性限界・CBR(4)過去に技能試験を受けられた機関の方々へ:・締固め・最大密度/最小密度・締固め+コーン指数・透水技能試験結果を貴機関の品質向上や測定精度向上に反映できましたか?(5)過去に技能試験を受けられた機関の方々へ: 技能試験結果をどのように活用しましたか?a.役立ったb.取扱い方が分からなかった(6)初めて技能試験を受けられた機関の方々へ:c.受けただけであった技能試験結果をどのように活用したいですか?3.アンケートの結果(1)技能試験をご存知でしたか?知らなかった8(13%)回答集計結果を図 1 に示す(回答総数 63 機関)。「知っていた」が 55 機関(87%),「知らなかった」が 8 機関(13%)であった。「知っていた」との回答者の大部分は,以前から参加していたことを理由に挙げている。一方,「知らなかった」との回答者は,地盤工学会誌の当該募集案内や関連シンポジウムで知ったことになる。知っていた55(87%)(2)今回の技能試験に参加した理由を教えて下さい(記入式回答)個々の回答内容については割愛するが,今回の技能試験に参加した理由として,「各機関(自社)の試験精度を確認するため」が大部分を占めていた。その他の理由として「今後の試験技術の研鑽や精度向上に役立てるため」「社内教育の一環として」「将来的に ISO 取得をResult of QuestionnaireGeneral items ‒inProficiencyTest‒図1技能試験をご存知でしたか?FUJIWARA Teruyuki Geo-Research Institute, INAZUMI ShinyaAkashi National College of Technology, HAMADA Eiji Kiso-jibanConsultants, NUMAKURA Keiichi Kawasaki GeologicalEngineering , HIOKI Kazuaki; Osaka Institute of Technology ,NAKAGAWA Sunao Japan Geotechnical Consultants Association9 目指すため」等,技能試験の趣旨が正確に参加機関に浸透していることが分かった。(3)今後どの試験を受けてみたいですか?(複数回答可)含水比12土粒子密度湿潤密度1314LL/PL14今後受けてみたい技能試験項目についての回答集計結果を図 2 に示す。多い順に,「締固め試験」37,「透水試験」31,「一軸圧縮試験」27,「三軸圧縮試験」25,「 CBR 試験」25,「締固め+コーン指数試験」18,「粒度試験」13,「LL/PL 試験」14,「湿潤密度試験」14,「土粒子密度試験」13,「含水比試験」12,「最大粒度14密度/最小密度試験」9,「その他」:4(安定処理土供試体作製,圧密試験,物理試験以外等)であった。締固め試験,透水試験,せん断試験(一軸・三軸)に関わる締固め+コーン18技能試験実施の要望が多いことから次年度以降での実施を検討したい。(4)過去に技能試験を受けられた機関の方々へ:技能試験その他4最大密度/最小密度9締固め37透水31三軸CBR 圧縮2525一軸圧縮27図 2 今後どの試験を受けてみたいですか?結果を貴機関の品質向上や測定精度向上に反映できましたか?回答集計結果を図 3 に示す(回答総数 47 機関)。「役受けただけであった立った」が 35 機関(74%),「取扱い方が分からなかっ6た」が 6 機関(13%),「受けただけであった」が 6 機関取扱い方(13%)が分からなかった(13%)であった。過去に技能試験を受けたことがある機関の大部分は,「役立った」という回答である。また,6「取扱い方が分からなかった」ならびに「受けただけで(13%)あった」と回答した機関は,アンケートの記入者が今回役立ったの技能試験から携わったことにも原因があるものと考え35られる。(74%)(5)過去に技能試験を受けられた機関の方々へ:技能試験結果をどのように活用しましたか?(記入式回答)技能試験に参加した全 66 機関の内,過去にも技能試験を受けられた機関を含む 35 機関から回答が寄せられた。図 3 技能試験結果を貴機関の品質向上や機関毎に表現が若干異なってはいるものの,回答数の多測定精度向上に反映できましたか?い項目を列挙すると「試験方法の再確認」「測定精度の向上」「他機関との精度比較」「PR」にまとめられる。(6)初めて技能試験を受けられた機関の方々へ:技能試験結果をどのように活用したいですか?(記入式回答)技能試験に参加した全 66 機関の内,今回初めて技能試験を受けられた機関を含む 20 機関からから回答が寄せられた。機関毎に表現が若干異なってはいるものの,回答数の多い項目は「測定精度の確認/向上」「試験技能の向上」にまとめられる。4.まとめ毎回の技能試験において参加機関から頂くアンケートの回答は示唆に富むものである。学会としては,試験基準の見直しや改訂作業の参考にさせて頂ける内容も多い。技能試験結果の活用については,社内教育・学生指導,試験精度の確認,ISO17025 の認定や維持,営業への反映など,多くの機関が有効に活用されておられる反面,利用できないと考えられている機関もある。地盤工学会としては,技能試験結果の有効活用のためにその重要性を多くの方に認識されるよう,また技能試験に参加するインセンティブを高めるよう,努めていく所存である。【参考文献】中澤ら:アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題-含水比・土粒子の密度試験-,第 50 回地盤工学研究発表会浜田ら:アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 -土の液性限界・塑性限界試験-,第 50 回地盤工学研究発表会,沼倉ら:アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 -土の粒度試験-,第 50 回地盤工学研究発表会謝辞:地盤材料試験の技能評価に興味を示し,「平成 26 年度地盤材料試験の技能試験」にご参加頂いた機関と技術者・研究者に感謝します。10
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  • タイトル
  • アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 -含水比・土粒子の密度試験-
  • 著者
  • 中澤博志・稲積真哉・浜田英治・沼倉桂一・日置和昭・保坂守男
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 11〜12
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69602
  • 内容
  • 6第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月D - 01アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 −含水比・土粒子の密度試験−技能試験含水比試験 土粒子の密度試験復建調査設計国際会員○中澤博志明石工業高等専門学校国際会員基礎地盤コンサルタンツ川崎地質正会員大阪工業大学稲積真哉正会員浜田英治沼倉桂一国際会員日本適合性認定協会日置和昭非会員保坂守男1.はじめにこれまで地盤工学会では,粘性土・砂質土の物理的性質試験や改良土の一軸圧縮試験等に関する技能試験を実施し地盤材料試験の精度確認を行ってきた。今回,再び粘性土の物理的性質試験を実施し,参加した 66 機関の試験結果を評価するとともに,同時に実施したアンケート結果もまとめた。本報では,土粒子の密度および含水比試験に関し,試験者の経験や試験の実施状況等に関するアンケート結果をまとめ報告する。表-1 技能試験の概要2.技能試験の概要今 回 実 施 し た 技 能 試 験 の う ち , 「 土 粒 子 の 密 度 試 験 (JIS A1202:2009)」および「土の含水比試験(JIS A 1203:2009) 」(以下,規定と称す)は,表-1 のとおり実施された。表中には,事前に行った均質土粒子の密度試験 (JIS A 1202:2009)土の含水比試験(JIS A 1203:2009)試験実施試験試験実施期間:平成26年8月25日∼9月19日実施期間試験結果報告期限:平成26年9月19日土粒子密度 含水比 s (g/cm3) w (%)試料名50%粒径D 50(mm)細粒分含 粘土分含 液性限界有率 F c (%) 有率 C c (%) w L (%)塑性限界w P (%)性確認試験の平均値を併記した。事前に,土粒子の密度試験実施時の留試料A2.68935.20.006585.745.644.522.3意点として,a)試料は非乾燥土,炉乾燥土のいずれを用いても良い,b)試料F2.66624.30.01095.139.044.018.9煮沸時間はほぼ一定の値を得るためには 2 時間以上必要である,および評価項目 s ,wc)ピクノメータ検定時と土粒子密度測定時の水温の差は小さい方が良い,との事前情報を試験者に伝えた。各機関における試験者と試験装置以外は極力同一条件で試験に臨めるようスケジュールを組み,市販の荒木田粘土(試料 A)と藤森粘土(試料 F)を一斉配付した。配付試料の均質性確認試験および技能試験の評価は,ISO/IEC 17043(JIS Q 17043)における土粒子密度s のばらつきが技能の指針に準じて実施された。配付試料の均質性については,均質性確認試験1)試験結果よりも配付試料の方が小さかった。試料配付時に,アンケート設問2)も配付し,試験一式が終了した後,試験結果と共に回収・整理した。なお,技能試験結果は z スコアにより評価されたが,|z|>2 と評価され,試験結果の精度レベルが”疑わしい”か”不満足”であった機関は,土粒子の密度試験で 11 機関,含水比試験では 5 機関であった。3.アンケート調査結果土粒子の密度試験のアンケート調査内容は,試験者(身分,年齢,経験年数,試験頻度),試験方法(方法,使用した水,使用水の脱気方法,湯せん時間等),試験装置・器具(はかり,容器,温度計)に大別される。一方,含水比試験の項目で,土粒子の密度試験と重複しない項目として,試験方法(試料の保管方法,試料の量,炉乾燥時間等)である。以下に,特徴的であったアンケート結果を示す。3.1 試験者(土粒子の密度試験)図-1 に試験者の身分に関する結果を示す。図中の分数は,各項目に対する z スコアを満足しなかった機関を示している。試験者の身分は,正社員・契約社員が最も多く 52%を占め,学生が 13%と最も少ない。z スコアを満足しなかった比率では学生で高く,図示はしていないが,年齢は 20 代以下,経験年数は 2 年未満および頻度では年に数回以下で同様に比率が高い結果となった。なお,含水比試験も同様な傾向であった。3.2 試験方法(土粒子の密度試験)規定では,「試料は湿ったもの,空気乾燥したもの又は炉乾燥したものでも良い(事前情報 a))」とされている。また,「蒸留水は煮沸又は減圧によって十分に脱気したもの」を用い,湯せん時間は,「一般の土で 10 分以上,高有機質土で約 40分,火山灰土で 2 時間以上(事前情報 b))」が求められる。図-2 を見ると,試験方法は湿潤法が 63%,乾燥法が 37%であった。使用した水は蒸留水が 66%,水道水が21%,イオン交換水が 11%であり,規定されている蒸留水を使用した機関は 2/3 程度であった。水の脱気方法は,事前情報 b)を伝えたこともあり,湯せんが 75%を占めている。また,10 分未満と明らかに規定を意識していない機関は 1 機関であった。その他0%学生13%教員・技術職員20%.アルバイト・パート・派遣社員15%正社員・契約社員52%3/83/125/320/9図-1 試験者(身分)inNakazawa Hiroshi(Fukken Co., Ltd), Inazumi Shinya(Akashi National College of Technology),waterHamada Eiji(Kiso-Jiban Consultants Co., Ltd), Numakura Keiichi(Kawasaki Geologicalcontent tests and density tests ofEngineering Co., Ltd), Hioki Kazuaki(Osaka Institute of Technology) & Hosaka Morio(Japansoil particleAccreditation Board)ResultsofProficiencyQuestionnaireTestingon11 その他2%7/234/39水道水乾燥法 21%37%イオン交換水11%湿潤法63%(a) 試験方法0.01g6%0.1g0%1/12/133/140/1減圧15%10∼40分7%40∼120分1/425%1/12/91/157/411/710分未満2%その他2%0/57/409/4710∼30分7%30∼60分1/610%1/11/4120分以上53%3/324/1760∼120分28%(c) 水の脱気方法(d) 湯せん時間図-2 土粒子の密度試験の試験方法0/110分未満2%120分以上湯せん75% 66%蒸留水66%(b) 使用した水1g以上しない0%0.0001g 26%23%2/4湯せん+減圧8%200ml2%その他2%0/1(e) mb を測定するまでの時間25ml5%しない50ml 29%29%1/35/161℃25%4/155/181/188/396/465/386/446/440.001g71%する100ml74%62%(a) はかりの感量(b) はかりの使用前点検2/80.1℃する 62%0.5℃13%71%(c) 容器の容量(d) 容器の使用前点検(e) 温度計の目量図-3 土粒子の密度試験の装置・器具その他3%0/20/22含水比変化防止処置を行って保管36%100g以上13%5/37搬入状態のまま保管61%5g未満2%0/81/231/50/125時間以上10%10∼30g40%(b) 試料の量図-42/612時間未満2%0/1018∼24時間72%その他13%12∼18時間16%室内31%2/2530∼100g37%(a) 試料の保管1/15∼10g8%0/81/12デシケータ19%3/191/233/45(c) 炉乾燥時間デシケータ+吸湿剤37%(d) 室温になるまでの保管方法含水比試験の試験方法一方,事前情報 c)に対しては,湯せん後の全質量 mb を測定するまでの時間は 120 分以上が 53%となった。z スコアを満足しなかった機関については,乾燥法が湿潤法よりも比率が高いことから土粒子の団粒化等の影響が推察される。また,湯せん後の mb 測定までの時間を 120 分以上確保した多くの機関で,良好な z スコアを得ているようである。3.3 装置・器具(土粒子の密度試験)装置・器具に関する規定は,「はかりは 0.001g まで計ることができるもの」,「ピクノメーターは 50mL 以上のゲーリュサック型の比重瓶,若しくは 100mL 以上の全量フラスコ」および「温度計は最小目盛 0.5℃又は 0.1℃のもの」である。これらに対応する結果と使用前点検について図-3 に示す。77%の機関が 500g 未満のひょう量のはかり使用しており,感量は 0.001g が 71%,0.0001g が 23%と 94%の大部分の機関で規定通りのはかりを用いている。容器の種類は使用率 97%と殆どの機関でピクノメーターを使用しており,かつ 50ml もしくは 100ml の容量の容器を使用している機関は 92%を占めている。z スコアを見ると,規定通りの器具・装置を使用しない少数の機関の中には確実に z スコアを満足しない機関が存在し,はかりと容器の仕様前点検をしないことで z スコアを満足しない機関が増えている。3.4 試験方法(含水比試験)デシケータについては「シリカゲル,塩化カルシウムなどの吸湿剤を入れたもの」と規定されている。試料の量については目安であり,今回使用した試料 A,F ともに,試料の最小質量は 5∼10g が該当する。また,炉乾燥時間に関しては 18∼24 時間程度と示されている。図-4 を見ると,規定には記述が無い試料の保管方法については,保管方法は搬入状態のままが 61%であり,z スコアを満足しない 5 機関すべてがこの中に含まれる。1 試料あたりの試料は,10∼30gが 40%と最も多く,次いで 30∼100g,一方 5g 未満が最も少ないが,殆どの機関で試料を多めに使用した形跡が伺える。炉乾燥時間については,18∼24 時間確保した機関が 72%を超えている一方で,10%の機関が 25 時間以上の時間を要しており,この 10%に中に z スコアを満足しない機関が 2 機関含まれている。事前情報 c)に関連する室温になるまでの保管方法は,デシケータ+吸湿剤が 37%に留まり,z スコアを満足しない機関が比較的多くなっていることがわかる。4.まとめ今回のアンケート結果から,規定に対しては,土粒子の密度試験で蒸留水の使用率,および含水比試験ではデシケータの吸湿剤の使用率が低く,規定に外れた項目のある機関で試験精度が確保できていないケースが比較的多いことがわかった。また,規定外であっても,仕様前点検等が試験精度に拘わる可能性があることを把握することができた。【参考文献】1) 中山ら:地盤材料試験の精度・ばらつきの実態-地盤材料試験の正規性評価-,第 50 回地盤工学研究発表会(投稿中),2) 藤原ら:アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題技能試験全般 ,第 50 回地盤工学研究発表会(投稿中)12
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  • タイトル
  • アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題-土の粒度試験-
  • 著者
  • 沼倉桂一・稲積真哉・浜田英治・日置和昭・保坂守男
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 13〜14
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69603
  • 内容
  • 7第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月D - 01アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 -土の粒度試験-技能試験アンケート調査土の粒度試験川崎地質正会員○沼倉桂一明石工業高等専門学校国際会員稲積真哉基礎地盤コンサルタンツ正会員大阪工業大学日置和昭国際会員日本適合性認定協会非会員浜田英治保坂守男1. はじめに地盤工学会は 2011 年から実務機関,研究所,大学,高専等から参加者を募集し,試験結果の精度や技能レベルを確認することを目的に技能試験を実施し,同時に試験者・試験方法・装置などについてアンケートを行っている。4 回目となる 2014 年は,粘性土の物理的性質試験(土粒子の密度試験,土の含水比試験,土の粒度試験,土の液性限界・塑性限界試験)を実施した。本報は,土の粒度試験に関して参加者から提出されたアンケートの回答について報告する。2. アンケート調査内容土の粒度試験のアンケートの内容は,試験者(身分,年齢,経験年数,試験頻度),試験方法(方法,試料の量,試験場所等),試験装置・器具(はかり,浮ひょう,温度計)に大別される。以下に,アンケートの回答からそれらの傾向を示す。なお,本報の図中の百分率は参加機関全体に対するものであり,分数は粒度試験結果の内細粒分含有率のzスコアが 2 以上(「疑わしい」,「不満足」)となった 7 機関の状況を示している。3. アンケート結果の傾向3.1 試験者図-1 に試験者の身分に関する結果を示す。「試験者の身分」は,「正社員・契約社その他0%員」が最も多く 58%を占め,「学生」が 10%と最も少ない。z スコアを満足しなかっ学生10%た機関は「教員・技術職員」と「学生」に多い。図には示していないが,「経験年教員・技術職員20%数」では 2 年未満が精度を確保できていない傾向が認められると同時に,10~30 年のベテランでも精度を確保できていないことが確認できた。「試験実施の頻度」では,「初めて」や「年に数回」が精度を確保できていない傾向が強く,「月に数回」,「週に数回」,「毎日」でも精度が確保できていないことが確認できた。正社員・契約社員58%2/73/72/7.アルバイト・パート・派遣社員12%0/7図-1 身分3.2 試験方法JIS A 1204:2009(以下規格)では,ふるい分けは「連続した 1 分間のふるい分けで通過分が残留分の 1%以下になるまで」とされている。図-2にふるいの振とう時間の結果を示しており,21%の機関で「1 分」である。図-3 に振とう終了の目5分以上12%1/73~5分20%1/71/71~3分37%率」は 22%で,57%の機関が「目分量・感覚」である。zスコアを満足しなかった 7 機関の内,振目分量・感覚57%図-2 振とう時間関全てが「目分量・感覚」である。すなわち,ふるい分けの「振とう時間」が規格より長いと精度100g以上3%80~100g1/712%1/7が確保できていない機関が多い。また,「振とう終了の目安」では「目分量・感覚」で行う機関で精度が確保できていないことが多い。40g未満0%0/70/70/77/740~60g37%20~30ml0%10~20ml10%0/75/7沈降分析の規格では,「2mm ふるい通過分の炉図-4 試料の量通過分の残留分に対する比率22%30ml以上0%10ml未満8%1/76/760~80g48%乾燥質量が少なくとも,粘性土系の土では 65g 程度確保で時間で規定16%図-3 振とう終了の目安とう時間について 1 機関が「1 分未満」,5 機関「1 分以上」であり,振とう終了の目安では 7 機0/71分21%3/7安を示しており,「通過分の残留分に対する比その他5%1分未満10%1/710ml82%図-5 分散剤の量きるように」とされ,さらに「分散剤 10ml を加え,内容物を分散装置で約 1 分間かくはんする」こと及び「メスシリンダーを恒温水槽の中又は恒温室内に置き,メスシリンダーの内容物の温度が恒温水槽の水温,又は恒温室の室温とほResultsofProficiencyinNumakura Keiichi; Kawasaki Geological Engineering Co., Ltd, Inazumi Shinya; AkashiwaterNational College of Technology, Hamada Eiji; Kiso-Jiban Consultants Co., Ltd, Hioki Kazuaki;QuestionnaireTestingoncontent tests and density tests ofOsaka Institute of Technology & Hosaka Morio; Japan Accreditation Boardsoil particle13 ぼ同じになるまで放置する」とされている。図-4 の試料の量によると,48%の機関で「60~80g」であり,37%の機関で「60g未満」である。zスコアを満足しなかった 7 機関の内 1 機関が「40~60g」と規格より少ない。すなわち,規格より少ないと精度が確保できない傾向が認められるものの,通常の部屋42%その他1%0/74/7恒温室42%2/7今回は明瞭には確認されていない。図-5 の分散剤の量では 82%の機関で「10ml」で,「10ml 未満」と「10~20ml」が1/7それぞれ 8%と 10%である。zスコアを満足しなかった 7 機関の内 1 機関で「10ml 未図-6 試験場所満」であり,かくはん時間は 4 機関で 1 分を超えている。恒温水槽15%図-6 の試験場所によると,57%の機関で「恒温室」もしくは「恒温水槽」であるが,42%の機関で「通常の部屋」試験を行っている。zスコアを満足しなかった 7 機関の内 4 機関が「通常の部屋」で試験を実施しているが,「通常の部屋」でも精度が確保している機関が多い。3.3 装置・器具はかりの規格では「ひょう量 100g 未満の場合には0.01g,ひょう量 100g 以上 1kg 未満の場合には 0.1g,ひょう量 1kg 以上の場合には 1g まではかることができる3,000g以上20%0/7質量測定に用いるはかりの最小読取値」には「試料質量10g 以上 100g 未満のとき,0.01g」となっている。今回1,000~3,000g36%る。感量は「0.01g」が最も多く 72%の機関で使用し,「0.1g」のはかりを使用している機関は 2%である。浮ひょうの規格では「密度 0.995~1.050g/cm3 までの間500~1,000g12%0.001g23%4/70.01g72%図-8 感量(はかり)0/71.000~1.200g/㎤ 0/70%1.000~1.060g/㎤1/711%に 0.001 g/cm3 ごとにメモリ線を付けたもの」とされていその他7%0.01g/㎤1/75%0.005g/㎤7%1/7その他0%0.002g/㎤3%0/75/76/70.001g/㎤85%0.995~1.050g/㎤82%る。図-9 に浮ひょうの測定範囲,図-10 に浮ひょうの最小目盛の結果を示しており,浮ひょうの「測定範囲」は「0.995~1.050g/cm3」が最も多く 82%の機関で使用して1/70.0001g1/73%2/7図-7 ひょう量(はかり)0.01g が適用されると考えられる。図-7 にはかりのひょうは「1,000~3,000g」が最も多く 36%の機関で使用してい1/71g0%300~500g20%4/7は必要試料量が 65g 程度であるので,はかりの感量は量,図-8 にはかりの感量の結果を示しており,ひょう量300g未満12%1/7もの」とされている。また,含水比試験では,「試料の0/70.1g2%図-9 測定範囲(浮ひょう)図-10 最小目量(浮ひょう)3いる。最小目盛は「0.001 g/cm 」が最も多く 85%の機関で使用し,15%の機関で「0.002 g/cm3」以上の浮ひょうを使用している。すなわち,「測定範囲」の規格と異なる浮ひょうでは精度を確保できないが,「最小目量」の規格に合1℃42%0.1℃50%3/74/7わなくても精度を確保している場合がある。温度計の規格では,「最小目盛 0.5℃又は 1℃のもの」とされている。図-11 に温度計の目量・感量の結果を示しており,「0.1℃」が最も多く 50%の機関で使用している。また全ての機関で「1℃」以下の感量のものを使用している。0.5℃8%0/7図-11 目量・感量(温度計)4. まとめ粒度試験に関するアンケート結果について,技能試験のzスコアと比較して報告した。粒度試験結果の精度は,試験方法,装置・器具による影響はあまり大きくないものの,試験者の経験年数や頻度が影響する傾向が認められる。【参考文献】1) 中山ら:地盤材料試験の精度・ばらつきの実態-地盤材料試験の正規性評価-,第 50 回地盤工学研究発表会(投稿中),2) 藤原ら:アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 ―技能試験全般―,第 50 回地盤工学研究発表会(投稿中)3) 中澤ら:アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 ―含水比・土粒子の密度試験―,第 50 回地盤工学研究発表会(投稿中)4) 浜田ら:アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 ―土の液性限界・塑性限界試験―,第 50 回地盤工学研究発表会(投稿中)14
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  • アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題ー土の液性限界・塑性限界試験ー
  • 著者
  • 浜田英治・稲積真哉・沼倉桂一・日置和昭・保坂守男
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 15〜16
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69604
  • 内容
  • 8D - 01第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題‒ 土の液性限界・塑性限界試験 ‒技能試験アンケート調査土の液性限界・塑性限界試験基礎地盤コンサルタンツ正会員明石工業高等専門学校国際会員稲積真哉川崎地質正会員沼倉桂一大阪工業大学国際会員日置和昭日本適合性認定協会○浜田 英治保坂守男1.はじめに地盤工学会は 2011 年から実務機関,研究所,大学,高専等から参加者を募集し,試験結果の精度(不確かさ)や技能レベルを確認することを目的に技能試験を実施している。4 回目となる 2014 年は,粘性土の物理的性質試験(土粒子の密度試験,土の含水比試験,土の粒度試験,土の液性限界・塑性限界試験)を実施した。本発表では試験者へのアンケート結果のうち,土の液性限界・塑性限界試験に関する主な項目について報告する。2.試験者について図 2.1 に示す試験者の身分は,正社員・派遣社員が 52%でほぼ半数を占める。続いて教員・職員 22%,アルバイト・パート・派遣 14%,学生 12%の順になっている。これより今回の試験には,実務機関からほぼ 2/3,教育機関から残り1/3 の試験者が参加していることが読み取れる。図 2.2 に示す年齢は,30 歳代が 28%と最も多く,続いて 20 歳代以下と40 歳代がそれぞれ 25%,50 歳代が 14%,60 歳代以上が 8%となっている。これより,40 歳代以下では試験者の年齢構成に大きな偏りはないようである。また 60 歳代以上の再雇用者と思われるベテランも参加されている。図 2.3 に示す経験年数を見ると,10~30 年が 34%と最も多く,続いて 2 年未満が 24%,5~10 年が 23%,2~5 年が 11%,30 年以上が8%となっている。これより,中堅~ベテランの参加者が多い半面,経験 2 年未満の学生や新入社員と思われる試験者も,1/4 程度参加していることがわかる。図 2.4 に示す液性・塑性限界試験の頻度を見ると,年に数回が 38%と最も多く,週に数回が 31%,月に数回が 11%,ほぼ毎日が 14%,初めてが 6%となっている。以上試験者に関するアンケート結果から,経験豊富である程度のスキルを有する試験者が多く参加している一方で,経験年数 2 年未満や初めて実施する試験者など,幅広く参加していることがわかる。図 2.1身分図 2.2 年齢図 2.3 経験年数図 2.4 頻度3.試験方法についてa)使用する水の種類液性・塑性限界試験の基準では、使用する水は蒸留水となっている。図 3.1 に示すように過半数の 59%が基準通りの蒸留水を使用している。他は水道水が 27%,続いてイオン交換水が 11%,その他が 3%であった。b)試料図 3.2 は液性限界試験での,試料の厚さのアンケート結果を示す。試験基準で最大厚さ約 1cm としているため,1cmとの回答が 70%と最も多い。また 1cm より厚いものが 14%,1cm より薄いものが 16%と,ほぼ同数の回答があった。図 3.3 は皿に盛る試料の広さに関する結果で,半数以上の 59%が「半分よりも広い」と回答し,40%が「半分程度」と回答している。また「半分よりも狭い」も,1%の回答があった。c)判断方法液性限界試験の基準では,「溝切り試料の接合長さを約 1.5cm」としている。図 3.4 に示すアンケート結果では,回答者の過半数の 56%が「ゲージを用いて判断する」としている。残りの 44%は「目視で判断する」と回答し,ゲージを用いる試験者が過半数を占める。また塑性限界試験の基準では,「土のひもの太さを直径 3mm の丸棒に合わせる」としCurrent situation and issues of Grand Material Test fromquestionnaire results-Test for liquid limit and plastic limit ofsoils-HAMADA Eiji Kiso-jiban Consultants, INAZUMI Shinya AkashiNational College of Technology, NUMAKURA Keiichi KawasakiGeological Engineering , HIOKI Kazuaki; Osaka Institute ofTechnology , HOSAKA Morio Japan Accreditation Board15 ている。図 3.5 に示すアンケート結果では,大多数の 67%が「3mm 棒と比較する」としているが,「目視で判断する」も 28%の回答があった。図 3.1 使用する水の種類図 3.5 塑性限界の判断基準図 3.2 試料の厚さ図 3.3 試料の広さ図 4.1 試験機図 4.2 使用年数図 3.4 溝接合の判断方法図 4.3 購入時検査4.液性限界試験機について図 4.1 は使用した液性限界試験機の種類を示し,「手動」が 75%,「自動」が 25%であった。これより液性限界試験機は手動のものが 3/4 を占めていることが分かる。図 4.2 は試験機の使用年数で,10~20 年が 29%と最も多く,続いて5~10 年 28%,2~5 年 16%となった。他は不明 13%,2 年未満 8%,20 年以上 6%であった。これより,幅広い使用年数の試験機が使用されていることが分かる。図 4.3 は試験機の購入時検査についての結果で,60%が「実施している」と回答している。しかし 40%の回答者が,「未実施または不明」としている。図 4.4 の台の使用前点検は,「実施」が 62%,「未実施」が 38%となっており,回答者の大半が実施している結果となった。図 4.5 の皿の落下高点検は,「する」と回答したものが 89%,「しない」が11%となった。落下高は試験結果に直接影響するので,試験者の約 9 割が実施している。図 4.6 は試験機の校正に関する結果で,「しない」が 30%で最も多く,続いて年 1 回が 27%,購入時のみ 25%,その他 13%,年 2 回が 5%となっている。これより,年 1~2 回の校正を実施していると回答した試験者は,約 30%に留まっている。図 4.4 台の点検図 4.5 皿の落下高の点検図 4.6 試験機の校正5.まとめ(1)試験者に関するアンケートの結果から,今回の技能試験の実施者は,経験豊富な試験者から経験年数の少ない試験者まで,幅広く参加していることがわかった。 (2) 試験方法では,試験に使用する水,液性試験の試料の厚さや広さ,液性・塑性の判断基準等で,基準通りに実施されていないものも少なからず見受けられた。これらについては試験結果への影響を検証するとともに,その結果次第では試験方法の見直しも今後の課題といえる。(3)液性限界試験機については,皿の落下高の点検は大半で実施されている。しかし台の点検や試験機の校正が実施されていない機関も多く,点検や校正の有無が試験結果のばらつきに与える影響も検討課題である。【参考文献】藤原・稲積・浜田・沼倉・日置・中川:アンケート結果にみられる地盤材料試験の現状と課題 ―技能試験全般―,第 50 回地盤工学研究発表会(投稿中)16
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  • タイトル
  • 土の粒度試験結果がばらつく要因の分析例
  • 著者
  • 服部健太・日置和昭
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 17〜18
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69605
  • 内容
  • 9D - 02第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月土の粒度試験結果がばらつく要因の分析例技能試験z スコア粒度試験大阪工業大学大学院学生会員○服部健太大阪工業大学国際会員日置和昭1.はじめに(公社)地盤工学会は,これまでに 4 回の“地盤材料試験に関する技能試験”を実施し,その精度確認を行っている。過去の技能試験によると,土の粒度試験結果(粘土分含有率)の変動係数は 10~40%程度となっており,土の粒度試験は,ばらつきが大きい試験であると認識されている 1)。本稿では,平成 26 年度の技能試験(粘性土の物理的性質試験)と並行して実施されたアンケート結果をもとに,土の粒度試験結果(粘土分含有率)がばらつく要因について分析を行った。2.分析方法土の粒度試験結果がばらつく要因を分析するための指標として,z スコアを用いた 2)。平成 26 年度の技能試験における機関 i の z スコア zi は,式(1)によって算出されている 3)。zi ss2xi  Q2 2 Q3  Q1   0.7413(1)ここに,xi:ある試験機関 i の試験結果,Q1:小さい方から{(n-1)/4+1}番目の試験結果,Q2:中央値,Q3:小さい方から{3(n-1)/4+1}番目の試験結果,n:参加試験機関の総数,ss:均質性確認試験結果の標準偏差である。z スコアは,ある機関の試験結果の偏差が標準偏差の何倍であるかを表したものである。すなわち,z スコアの絶対値が小さいほど偏差は小さく,試験結果は中央値に近い(ばらつきが小さい)ことになる。ここで,土の粒度試験結果に影響する要因(表-1 参照)について,参加試験機関のアンケート結果から回答グループ毎に平均 z スコアを算出すると,平均 z スコアが小さいグループは,試験結果のばらつきが小さいと判断でき,逆に,平均 z スコアが大きいグループは,試験結果のばらつきが大きいと判断できる。3.分析結果および考察本稿では,回答グループ毎の平均 z スコアに差が現れたものを土の粒度試験結果がばらつく影響因子として取り上げ,表-2~5 に示した。まず,試験者に着目すると,経験年数が長い,また実施頻度が多い試験者の方が試験結果のばらつきは小さいことを確認できる。次に,試験環境に関しては,恒温室あるいは恒温水槽で実施した試験者の方が試験結果のばらつきは小さくなっており,規格に順守することの重要性を確認できる。一方で,温度計に関しては,規格では最小目盛 0.5℃または 1℃のものを用いるよう記載されているが,最小目盛 0.1℃のものを用いた試験者の方が試験結果のばらつきは小さくなっており,より丁寧に試験を行うことの必要性が示唆される。また,はかり,浮ひょうに関しては,購入時検査,使用前点検,校正を実施している試験者(機関)の方が試験結果のばらつきは小さく,温度計に関しても,表-1試験者経験年数,実施頻度沈降分析はかり分取量,分散方法(過酸化水素水),分散時間,分散剤の種類,分散剤の量,試験場所,水温の測定秤量,感量,使用年数,購入時検査,使用前点検,校正浮ひょう温度計測定範囲,最小目盛,使用年数,購入時検査,使用前点検,校正タイプ,適用範囲,目盛(感量),使用年数,購入時検査,使用前点検,校正表-2試験者・前処理・試験環境に関するアンケート分析結果(|z|の平均値)経験年数(試験者)試料 A試料 F土の粒度試験結果に影響する要因実施頻度(試験者)分散方法【過酸化水素】(前処理)5 年未満( 21 機関)5 年以上( 40 機関)数回未満 /週( 30 機関)数回以上 /週( 31 機関)1.771.061.581.031.931.270.920.721.040.551.050.78未実施( 3 機関)実施( 58 機関)試験場所(試験環境)恒温室通常の部屋恒温水槽( 26 機関)( 34 機関)1.531.140.850.70Analysis example of dispersion factors of particle size distribution test resultsKenta Hattori(Osaka Institute of Technology Graduate School of Engineering),Kazuaki Hioki(Osaka Institute of Technology)17 はかりに関するアンケート分析結果(|z|の平均値)表-3購入時検査未実施( 15 機関)試料 A試料 F実施( 46 機関)使用前点検未実施( 14 機関)実施( 41 機関)1.941.101.581.223.141.020.661.020.721.470.66浮ひょうに関するアンケート分析結果(|z|の平均値)購入時検査未実施( 17 機関)実施( 44 機関)使用前点検未実施( 20 機関)実施( 41 機関)校正未実施( 18 機関)実施( 36 機関)1.921.061.451.232.141.040.940.730.850.761.100.69表-5温度計に関するアンケート分析結果(|z|の平均値)目盛(感量)0.5 ℃または1℃( 31 機関)試料 A試料 F未実施( 11 機関)1.19表-4試料 A試料 F実施( 47 機関)校正0.1 ℃( 30 機関)使用前点検未実施( 25 機関)実施( 36 機関)校正未実施( 24 機関)実施( 32 機関)1.451.151.421.221.361.291.000.570.870.730.830.82使用前点検,校正を実施している試験者(機関)の方が試験結果のばらつきは小さいと言える。なお,前処理に関しては,今回は 58 機関で実施されていたが,これは技能試験実施委員会から技能試験実施時の留意点の一つとして,前処理を実施するよう,挙げられていたためである。また,土の粒度試験結果に影響を与える要因の一つに使用水も考えられるが 4),今回のアンケートでは使用水に関する設問が無く,その影響については確認できていない。4.おわりに土の粒度試験結果には,経験年数や実施頻度など試験者の“経験”や“試験環境”,また,はかり・浮ひょう・温度計の購入時検査,使用前点検,校正など試験に対する試験機関や試験者の“心構え”が影響を与えている可能性が示唆された。特に,経験年数:5 年以上,かつ実施頻度:数回以上/週の試験者(25 人)に限れば,平均 z スコアの絶対値は,試料 A に対して 0.87,試料 F に対して 0.53 となっており,土の粒度試験においては,何よりも“経験”がものをいう可能性が示唆された。また,筆者ら5)は,土の液性限界・塑性限界試験結果がばらつく要因についても同様の検討を行っており,その結果については,参考文献を参照されたい。謝辞:本研究の遂行に当たっては,(公社)地盤工学会基準部技能試験実施委員会(委員長:日置和昭)が平成 26年度に実施した粘性土の物理的性質試験に関する技能試験のデータを一部使用させて頂きました。関係各位に深く感謝の意を表します。引用・参考文献1) 日置和昭・澤孝平・中澤博志・渡辺健治・中川直:技能試験にみられる地盤材料試験の変動係数,第 50 回地盤工学研究発表会平成 27 年度発表講演集,2015.(投稿中)2) 日置和昭・服部健太・澤孝平・村上恵洋・菅沼優巳:深層混合遮水壁の間接的性能評価に向けた一アプローチ,第11 回地盤改良シンポジウム論文集,pp.271-276,2014.3) 公益社団法人地盤工学会 基準部 技能試験実施委員会:平成 26 年度地盤材料の技能試験報告書,2015.4) 日置和昭・澤孝平・中澤博志・渡辺健治・中川直:地盤材料試験に関する技能試験の PDCA サイクルについて,第49 回地盤工学研究発表会平成 26 年度発表講演集,pp.9-10,2014.5) 服部健太・日置和昭:土の液性限界・塑性限界試験結果がばらつく要因の分析例,平成 27 年度土木学会関西支部年次学術講演会講演概要集,2015.(投稿中)18
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  • タイトル
  • 地盤材料の空間的不均質性が系の力学挙動の不確実性へ与える影響(河川堤体を例として)
  • 著者
  • 佐竹亮一郎・若井明彦
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 19〜20
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69606
  • 内容
  • 10第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月E - 13地盤材料の空間的不均質性が系の力学挙動の不確実性へ与える影響(河川堤体を例として)空間的不均質性 FEM モンテカルロシミュレーション群馬大学 学生会員 ○佐竹 亮一郎群馬大学 国際会員若井 明彦𝑟1. はじめに𝜌 = exp [− ](1)𝐿土構造物の設計に,確率論的に破壊確率を求め,そ𝑟2𝑟𝑦2𝜌 = exp [−√( 𝑥 ) + ( ) ]れによって照査を行う信頼性設計を導入しようという𝐿𝑥動きがある.その前段として著者らはこれまで河川堤(2)𝐿𝑦体を例に,材料の空間的不均質性を反映した有限要素r は 2 点間の距離,L は自己相関距離である.自己相解析を実施し、力学挙動のバラつきを統計的に検討し関距離は相関性を支配する定数であり,L 増加に伴い距てきた 1) 2).これまでの検討では解析回数が少なかった離が離れても相関性が低下しにくくなる.(1)は一般形ために,評価が困難な場合があった.本報告はその継であり,これを 2 次元平面に適用する式として(2)を採続研究として,試行回数を増やし改めて考察を行った.用した.(2)の添字はそれぞれ水平,鉛直方向を示す.実際の検討方法としては観測値内の自己相関係数の2. 不均質パラメータのモデル化分布を定義式によって求め,近似式を用いてフィッテ2. 1 解析対象解析対象は利根川下流飯島地域の堤体地盤である.ィングを行うことで自己相関距離 L を決定した.詳細10m 以深が基礎地盤であり,堤体中央には樋管開削工な手順については著者らの研究 1)と同様である. L の事が実施されている.水平方向,鉛直方向の分布を検討した結果,ともに定解析に入力する物性値の元データとして,本検討では性的な傾向は見られなかった. そこでモデル化の際に現地で実施された表面波探査試験によって得られた Vsは平均値を代表値として用いることとした. Lx は 8.0m,分布を採用した.図-1 に堤体縦断面における Vs 分布図Ly は 1.2m であり,水平方向の相関が強い結果となった.3))を示す.本研究では得られた分布特性および空間的相関性を合わせて不明白に材料特性が違う場合は別材料として扱い,それ均質モデルとし,以下の解析ではこの不均質モデルをぞれに対し不均質性を検討すべきという方針の下,堤体地盤と明らかに Vs が異なる基礎地盤部および樋管部用いた.3. 解析と検討の左右 20m は検討から除外した.実際の解析領域は図3. 1 解析概要(関東地方整備局 HP より引用不均質性を反映した FEM による地震応答解析と,そ中の左右 10×70m の 2 領域である.2. 2 不均質モデルれを各試行としたモンテカルロ・シミュレーションを数値のばらつきを検討する方法としては,物性値の分布特性を把握するのが一般的である.本検討ではそれVs(m/s)60 120 180 240 300理モデルを作成した.まず,分布特性を把握する.著者らの研究 2)より,図-2 に実際に観測された Vs の分布を示す. 割合の分布を深さ(m)に加え,物性値の空間的な相関性を考慮することで数08160100水平距離(m)単位幅 10m/s で除すことで確率密度の分布とした.Vs図-1の平均値 μ は 128.6m/s,標準偏差 σ は 6.5m/s であった.それを元に作成した正規分布を図-2 に示す.モデル化7にはこの μ および σ から得られる正規分布を使用する.6次に,材料内の空間的相関性をモデル化するため,相関の強さは共分散と分散の比である自己相関係数として求められる.物理的には,相関性は空間的な距離Vs 分布図観測値正規分布5確率(%)Vs 分布内の任意の 2 点間における相関性を検討した.20043が離れるほど低下する.そこで,空間的な相関性を表2す近似式を以下のように仮定した.1090100110図-2Uncertainty of the mechanical behavior of the system given byeffects of spatial heterogeneity in geomaterials e.g. materials ofriver dike.120130 140Vs(m/s)150 160170Vs 確率密度分布図Ryoichiro SATAKE Gunma UniversityAkihiko WAKAI Gunma University19 実施した.解析断面は検討対象である堤体の仮想横断4. まとめ面とした有限要素分割図に,不均質モデルを反映させ材料の不均質性を反映した解析では,確率密度分布た Vs 分布を出力したものを示す(図-3).力学モデルは対数正規的な分布形状を示すこと,不均質パラメーは UW モデル (Wakai & Ugai,2004) 4)を使用した.検タが大きくなるほど結果の不確実性が大きくなること,討ケースは実際に観測された Vs から得られた μ,σ,L外力や弱面の存在により局所的に変形が大きい地点での値を用いた基本ケース,不均質性を支配するパラメは,不確実性が大きくなる可能性があること等の知見ータ (以後不均質パラメータと呼称)を変化させたもが得られた.のの計 4 種類とした.また,比較用に物性値が一様で参考文献ある均質ケースについても解析を行った.表-1 に各ケ1) 佐竹亮一郎・若井明彦,2013,不均質な堤体材料にースの材料定数および不均質ケースの詳細を示す.不おけるせん断波速度のモデル化例,第 1 回地盤工学均質ケースでは材料定数は要素ごとに Vs を材料物性から見た堤防技術シンポジウム委員会報告・講演概に換算し,各パターンにおける値を決定した. 入力地要集,pp83-84.震波は兵庫県南部地震時の神戸海洋気象台での地表面2) 佐竹亮一郎・若井明彦,2014,堤体材料の不均質性観測波形を使用した(図-4).とそれがもたらす力学挙動の不確実性に関する数値3. 2 モンテカルロシミュレーション解析,第 49 回地盤工学研究発表会講演集 DVD-ROM,モンテカルロシミュレーションを実施した.試行回数は各ケースともに 250 回である.図-5 にモンテカルpp17-18.3) 国土交通省関東地方整備局関東地方堤防復旧技術ロシミュレーションによって得られた天端の平均沈下検討フォローアップ委員会および統合物理探査検討量の確率密度分布を示す.分布の形状を見ると,対数会,2013,合同委員会資料,正規的な分布である.また,尖度は L:1/2 倍が最も大http://www.ktr.mlit.go.jp/ktrcontent/content/000062123.pきく,次いで基本,L:2 倍,σ:2 倍となっており,不均質パラメータが大きくなるほど結果の不確実性がdf,p15.4) Akihiko Wakai and Keizo Ugai , 2004 , A simple大きくなっている.constitutive model for the seismic analysis of slopes and次に,図-6 に基本ケースにおける天端各点の分布とits applications,Soils and Foundations,Vol.44,No.4,平均値の分布を合わせて示す.右端部の分布は平均値pp83-97.が高く,分布幅も大きい.局所的に変形が大きいと予測される地点では,結果の不確実性が大きくなると考0.6えられる.基本L:1/2倍0.4Vs(m/s)φ (deg)ψ (deg)E(kPa)c(kPa)γ (kg/m3)ν均質ケース 不均質ケース128.6要素ごとに30決定8200010180.35μ (m/s)基本ケースL:1/2倍128.6L:2倍σ :2倍L:2倍確率表-1 材料定数および不均質ケース詳細L(m)σ (m/s)Lx = 8.0Ly = 1.2Lx = 4.06.5Ly = 0.6Lx = 16.0Ly = 2.4Lx = 8.013Ly = 1.2σ:2倍0.2均質00.7図-5(天端平均沈下量の確率密度分布)Vs(m/s)147.5108.50.80.9沈下量(m)モンテカルロ・シミュレーション結果0.6確率中央部図-3 不均質 Vs 分布例平均右端部0.4加速度(gal)左端部0.28006004002000-200-400-600-80000.60.70.80.9沈下量(m)010図-420時間(s)入力地震波形30図-6 モンテカルロ・シミュレーション結果(基本ケース,各点の沈下量の確率密度分布)201
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  • タイトル
  • 墳丘盛土の修復・保存のためのキャピラリーバリアの室内模型実験
  • 著者
  • 澤田茉伊・三村 衛・吉村 貢
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 21〜22
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69607
  • 内容
  • 11第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月D - 04古墳墳丘の修復・保存のためのキャピラリーバリアの室内模型実験キャピラリーバリア 古墳墳丘1.保水性京都大学大学院学生会員○澤田 茉伊京都大学大学院国際会員三村 衛ソイルアンドロック国際会員吉村 貢はじめにキャピラリーバリアは、細粒土層と粗粒土層からなる二層地盤で、降雨領域 4mm/h両者の不飽和浸透特性の違いによって層境界に発現する遮水層である。近年、主に廃棄物処理場のキャッピング技術のひとつとして研究が進められている。本稿では、これを墳丘の修復・保存に利用することを細粒土土壌水分計(計12点)目的に、室内模型実験を行いバリアのメカニズムを検討する。損傷を受けた石槨や墳丘を半永久的に雨水から守るためには、耐久性に優れCた修復技術が必要であるが、キャピラリーバリアは地盤材料を用いて粗粒土Bいる点で、人工の遮水シートに比べて優れている。実際に、大分県日A田市のガランドヤ古墳では、露出した石槨を覆うためのドーム状の保護施設上に、キャピラリーバリアが発現しうる二層構造の墳丘が採用傾斜角 5 or 10°単位:cmされた。バリアの性能は、材料の透水性・保水性、斜面の傾斜角、層図 1 試験土槽厚、降雨強度に依存するが、各パラメータの影響度の把握はバリアを100通過質量百分率 (%)効果的に利用する上で欠かせない。本稿では、土槽の傾斜角を変えた 2ケースの土槽実験を行い、キャピラリーバリアの発現メカニズムについて考察する。キャピラリーバリアの室内模型実験模型実験に用いた土槽を図 1 に示す。土槽は、幅 110cm、高さ 50cm、奥行 12cm で、20cm 厚の粗粒土層の上に 30cm 厚の細粒土層を締固め60細粒土(上層)4000.001る。直上には降雨装置があり、4.0mm/h の降雨を 45 時間与え続けた。0.01実験中は、各層からの排水量と飽和度を測定する。下流端は壁面を伝う流れを防止するため上下層を分ける幅 10cm の仕切り板が設けられており、仕切り板の下は空洞になっている。土槽の中には計 12100試料は、図 2 に粒径加積曲線を示す二種類を用いた。二種の試料は、ガランドヤ古墳近くの原石山で採取された火山灰を含む土で、実際に保護施設の建設にも利用された。図 3 はこれらの吸水過程における水分特性曲線と透水係数であるが、室内試験と van Genuchten モデル 1)により評価した。3.傾斜角がキャピラリーバリアに与える影響1001.E+00P1.E-030m60402000.0001傾斜角の異なる二つの実験では浸透流の挙動に明確な差が見10実線:水分特性曲線点線:透水係数80飽和度 (%)類とした。0.11粒径 (mm)図 2 粗粒土と細粒土の粒度分布点に土壌水分計が埋め込まれ、飽和度の分布および浸潤面の移動を捉えることができる。土槽の傾斜角は、5°と 10°の二種粗粒土(下層)20上流中流下流初期粗粒土(下層)1.E-06細粒土(上層)1.E-091.E-121.E-150.011圧力水頭 (-m)100図 3 粗粒土と細粒土の水分特性曲線と透水係数られた。5°の場合は全流入量が下層の排水口から排水されたが、10°の場合はすべて上層から排水された。排水開始直後(図 5 参照)における浸潤面を図 4 に示す。また図 5 に降雨開始か破過点らの排水量の時刻歴を示す。5°の場合は、下流端付近の浸潤面が土槽底面に到達して層境界浸潤面いる。一方、10°の場合は層境界付近にとどまっており、その後徐々に下降するが、45 時間経過しても底面に到達しなかった。傾斜角5°傾斜角10°図 4 排水開始直後の浸潤面の比較Experimental study on the application of capillary barriers toMai Sawada*, Mamoru Mimura*, Mitsugu Yoshimura**reconstruction of tumulus mounds*Kyoto university, **Soil and Rock Engineering. Co. Ltd21透水係数 (cm/s)2.80 図 6 に下流に設置された A~C(図 1 参照)の三つの土壌水分計の0.2測定結果を示す。上層では傾斜角による差はほとんど見られないが、排水量 (cc/s)下層では 5°の場合は A まで浸潤面が到達しているのに対し、10°の場合は B で留まっており、土槽側面の目視観察と調和的な結果が得られた。傾斜角5°下層から排水0.080.04バリアの性能を表す指標のひとつである。下層から排水が始まった00時点で浸潤面が下層側に急拡大している点を破過点とすると(図 4参照)、限界長は 5°の場合は、89.7cm、破過しなかった 10°では5101520 25時間 (h)30傾斜角10°上層から排水354045図 5 土槽からの排水量の時刻歴108.3cm 以上となる。傾斜角が大きいほど限界長が長くなる傾向は、同様の模型実験を行った既往の研究 例えば 2)でも確認されてい浸透量(4mm/h相当)0.12上流端からバリアが破過するまでの水平距離は、限界長とよばれ85飽和度 (%)る。4.図40.16層境界付近の全水頭分布と破過のメカニズムバリアの破過は層境界の全水頭の大小関係で説明できると7565浸潤面の到達55る。すなわち、下層のほうが上層よりも全水頭が高い箇所で30飽和度 (%)考えられる。全水頭の勾配は流れの方向を規定する因子であは下層に浸透せず、バリアが機能している状態にあり、この全水頭の大小関係が逆転した箇所でバリアが破過すると考えられる。浸透した雨水が上層中を斜面に沿って流れるとき、土壌水分計 C (上層)2010土壌水分計 B (下層)0下流に向かうほど上流側での総浸透量が多いため、ダルシー30飽和度 (%)則によれば上層の透水係数は高くなる。これは下流ほど上層の飽和度や圧力水頭が高いことと同義で、全水頭が下層を超えた点で破過に至る。傾斜角が小さい場合は、動水勾配の寄与が小さい分、破過点は上流側に移動する。傾斜角 5°2010傾斜角 10°00傾斜角を 5°とした場合に、45 時間後の飽和度の測定値と図 3 の水分特性曲線を用いて、全水頭の分布を推定する。土51015土壌水分計 A (下層)2025時間 (h)30354045図 6 下流の土壌水分計の測定結果と浸潤面の到達壌水分計を設置した上・中・下流の三測線上の飽和度と水頭の分布を図 7 に示す。位置水頭は各側線上の土槽底面を40基準とした。なお、層境界位置では、土壌水分計は設置35した。下層側は直下の測定値と等しいと仮定する。上層の飽和度は下流ほど高く想定通りの結果である。また層境界から 5cm の領域では特に高いことから、集積流 2)をなしていると考えられる。全水頭分布は、下流では上層のほうが下層よりも高いが、中・上流では上層のほうが底面からの高さ (cm)していないが、実験終了直後に上層側のみ飽和度を測定上層の初期:-10m上層の初期:-10m初期3025層境界2015 初期破過10低い。したがって、中流から下流の間に破過点が存在す上流中流5る結果となっており、先に示した限界長と整合している。下流初期0ただし、上流の層境界では上層の全水頭を実際よりも低く見積もっていると思われる。上流の下層に見られる浸-0.1 0 0.1 0.2 0.3全水頭 (m)00.1 0.2 0.3圧力水頭 (-m)潤を説明するためには、少なくとも下層の初期の全水頭図 7 層境界付近の水頭と飽和度分布(傾斜角 5°)0 20 40 60 80 100飽和度 (%)よりも高い必要がある。また、図 3 中に層境界の透水係数をプロットしたが、Ross3)が仮定したように交点 P が破過点に相当するとすれば、破過に至っている下流では下層の圧力水頭をやや低く評価している可能性がある。5.おわりに室内模型実験により、キャピラリーバリアの発現および破過を観察し、破過を層境界付近の全水頭分布をもとに説明した。本実験を数値解析で再現することにより、バリアのメカニズムをより精緻に分析する必要がある。さらに、墳丘や保護施設などに適用した場合を想定し、構造物レベルでのバリアの挙動についても検討が必要である。参考文献1)Van Genuchten, M. Th. "A closed-form equation for predicting the hydraulic conductivity of unsaturated soils." Soil sciencesociety of America journal 44.5 (1980): 892-898.2)宮崎毅. "傾斜キャピラリーバリアーの限界長に関する研究." 農業土木学会論文集 1995.179 (1995): 601-608.3)Ross, Benjamin. "The diversion capacity of capillary barriers." Water Resources Research 26.10 (1990): 2625-2629.22
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  • タイトル
  • 古墳墳丘の締固めエネルギーに関する一考察
  • 著者
  • 吉村 貢・三村 衛・澤田茉伊・松浦良信
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 23〜24
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69608
  • 内容
  • 12D - 09第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月古墳墳丘の締固めエネルギーに関する一考察古墳墳丘,締固め,密度京都大学大学院工学研究科同ソイルアンドロックエンジニアリング㈱同国際会員三村学生会員澤田茉伊国際会員○吉村正 会 員衛貢松浦良信はじめに.1500~1400 年前に構築された古墳の多くは墳丘を盛土で構築している。我が国最大とされる仁徳陵(大仙陵)は長さ486m,最大幅 307m,高さ 35.8m の大きさの墳丘を有する前方後円墳である。所在地の大阪府堺市の HP には,仁徳陵の構築に当たって,土の運搬に 1000 人×4 年,構築に 2000 人×15 年 8 か月以上が従事したと試算が紹介されている。古代の人々によって盛土構造物である巨大な墳丘はどの程度のエネルギーで締固められていたか?また終末期の古墳では墳丘に版築様の構造が認められるケースがあり,墳丘は丁寧に締固められたことがうかがえる。そのエネルギーはどの程度であったか?この疑問に対して現場密度測定と採取した墳丘土で実施した室内試験から考察を試みた。1.土の締固め特性一定のエネルギーの下で含水比を変えて土を締固めると,含水比と乾燥密度の関係がユニークな締固め曲線として得られる。締固め試験結果の一例を図-1 に示す。試料は岐阜県最大の前方後円墳とされる昼飯大塚古墳の墳丘発掘調査に伴う掘削面から採取した。この古墳では周壕の掘削土や周辺から墳丘構築に用いる土を調達しており,縄文海進時には湖沼~湿地帯であった堆積環境を反映したと推察できる多種の土が配置されている。図-1 のように締固め曲線の極大値である最大乾燥密度は約 0.85~1.50g/cm3 の範囲にあり,概ね Z.A.V.C.に沿って並ぶ。乾燥密度が大きい領域では曲線の含水比範囲が狭く,曲線の立ち上がり勾配が大きい。乾燥密度が小さい領域では含水比の範囲が広く,曲線の立ち上がり勾配が小さい。図-1 の例では,左上ほど礫分の混入が多くなり右下ほど細粒分含有率が大きくなる傾向がある。これらは昼飯大塚古墳の墳丘材料に限らず,広範囲な地盤材料に普遍的な特徴である。また,締固めエネルギーに関して締固め曲線は粗粒土→細粒度の関係と類似の傾向を示す。つまり,締固めエネルギーが小さい時には幅が大きく背の低い,図-1 の右下の締固め曲線のようになり,締固めエネルギーが大きい時には幅が小さく背が高い,左上の曲線のようになる。曲線の占める位置も Z.A.V.C.に沿って図-1 のような配置になる。古墳墳丘の構築時は盛土の材料について曝気や加水といった特別な含水比調整を行ったとは考えにくい。材料を自然地盤から掘削して採取し,墳丘位置に運搬してそのまま撒き出す,という手順によると考えられる。土構造物として安定化するために空気を追い出して土塊の空隙を小さくする,つまり「締固め効果」を古代人も知っていた。古墳規模が小さくなり墳丘構造が複雑になるのに伴って,足で踏むという行為から,たこで突く,杵で突固めるという具合に墳丘構築工法図-1昼飯大塚古墳墳丘材料の締固め試験結果は進化したと考えられる。2.検討方法古墳墳丘から採取した試料を,自然含水比 wn の状態で,JIS A 1210 に規定される粒径と容器条件に従って,締固め試験を行う。ただし,突固め回数は標準プロクターのエネルギーに対して 0.1 倍,0.2 倍・・・・のように設定する。(ただし,調査時期によって突固めエネルキーの設定が異なり,統一できていない。)他方,試料を採取する前に,同じ位置で表面型 RI 密度・水分計あるいは不攪乱サンプル採取によっての密度を把握しておく。後者の密度を前者の室内試験で得られた締固めエネルギーと乾燥密度の関係を表す曲線を照査して,墳丘の締固めエネルギーを推定した。対象は,前~中期古墳の岐阜県・昼飯大塚古墳(前方後円墳),岡山県・千足古墳(前方後円墳),愛知県・東之宮古墳(前方後方墳),岐阜県・円満寺山1号墳(前方後円墳),および終末期古墳である牽牛子塚古墳(八角形墓)である。之宮古墳と円満寺山古墳,牽牛子塚古墳は小高い山の頂部を利用して構築されている。A Study on the compaction energy of tumulus mounds.Kyoto University: Mamoru Mimura, Mai Sawada,Soil and Rock Eng.Co.Ltd: Mitsugu Yoshimura, Yoshinobu Matsuura23 乾燥密度  ρ d (g/cm 3 )3.測定結果採取状態の含水比(自然含水比)の下で,エネルギーを変えて行った締固め試験の結果と,現場密度の平均値の関係を図-2 に示す。終末期古墳である e)牽牛子塚古墳を別にすれば,古墳墳丘の締固めエネルギーは 0.2×EcJIS 程度である。詳細にみると,c)東之宮古墳と d)円満寺山1号墳は 0.2×EcJIS に達していない。これは現場密度測定を掘乾燥密度  ρ d (g/cm 3 )削部ではなく,表層部で実施したことが原因と考えられる。つまり,曝気や植物の根系の侵入によって緩み領域が生じた可能性がある。遺跡である古墳墳丘の発掘調査の機会を利用して墳丘の工学的な調査を実施しているが,かなり制限されることは否めず,やや過小に評価することもやむを得ない。墳丘の締固め程度が「およそ 0.2×EcJIS 程度」という目安は,墳丘復元の際に有効な指標と考えられる。牽牛子塚古墳は墳丘を突き固めて構築したことが推察でき,締固めエネルギーは約 0.4×EcJIS とやや大きい値が推定される。4.考察構築以来約 1400 年,その形状を残している古墳墳丘は撒き出した掘削土塊間の空気を追い出して安定させる手法が採られていると考えら0.800.750.700.650.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.01.8b) 千足古墳1.7乾燥密度  ρ d (g/cm 3 )れる。足で踏みつける程度から,たこや杵による突き固めに進展していることが発掘調査から推定できる。締固め程度を数値化するために室内でエネルギーを変えた締固め試験を行い,現場密度測定値と比較した。この結果,前方後円墳などの大型の墳丘が構築された前~中期,終末期の版築様の盛土ではそれよ古墳では「およそ 0.2×EcJIS 程度」りも大きなエネルギーで盛土が構築されていると推察される。乾燥密度  ρ d (g/cm 3 )各地の古墳遺跡で保全と文化財活用の一環として墳丘復元が進められている。元々の墳丘材料と同じ材料が入手できれば,既存の墳丘の物性値を参照して復元,あるいは損傷部位の修復が可能であろうが,そのような例は極めて稀である。近隣の土取り場で調整された材料を購入して適用する事例が多い。この際に,既存の墳丘と,新たに付加される墳丘との間に,変形追随性や透水条件の一致など親和性を確保することが重要である。これに対して既存の墳丘と同等の締固めエネa) 昼飯大塚古墳0.85乾燥密度  ρ d (g/cm 3 )墳丘盛土に版築様の構造(写真-1 に示した横縞模様)が認められた0.901.61.51.41.30.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.01.7c) 東之宮古墳1.61.51.41.31.20.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.01.9d) 円満寺山1号墳1.81.71.61.51.40.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.01.7e) 牽牛子塚古墳1.61.51.41.31.20.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0締固めエネルギー  E( × E cJIS )ルギーを適用することが一つの方法 1)として挙げられる。盛土締固め施工を人力で行うのは現代では時間やコストの図-2締固めエネルギー検討試験結果点から難しい。締固めエネルギー0.2×EcJIS が相当する機械規模と,撒き出し厚さや転圧回数の施工条件を決定するためには試験施工が重要であると考えられる。古墳という重要な土構造物の遺跡,埋葬施設や未発掘の石室などがあればなおさら墳丘上の工事は慎重に,また,負荷を最小にするように行われる必要がある。盛土施工機械としてはせいぜい,自重400N,起振力 600N 程度のプレートコンパクターが適用可能と考えられる。試験施工では適用する機械を固定した上で,材料の撒き出し厚さ,転圧回数に関して試験を行うことが考10cmえられる。5.今後の課題10cm古墳墳丘の締固めは現代の盛土締固め施工のエネルギーに比べかなり小さいことが分かった。今後さらにデータを蓄積して,推定値の信頼性を高める必要がある。また締固めエネ写真-1牽牛子塚古墳墳丘の版築様盛土ルギーと締固め機械規模の関係についても比較検討を進め,古墳墳丘の修復や形成に的確な仕様を検討する必要がある。[参考文献]1) 三村衛,渡邊樹,鈴木康高ら,犬山市東之宮古墳墳丘の発掘坑埋戻し工の施工品質管理,第 48 回 地盤工学研究発表会 講演集,pp.28-29,2013.724
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  • タイトル
  • 国史跡名越切通「大切岸」の保存対策
  • 著者
  • 小林 恵・橋本直樹・澤田正昭・橋口 稔・高松 誠
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 25〜26
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69609
  • 内容
  • 13A - 02第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月国史跡名越切通「大切岸」の保存対策亀裂砂岩遺跡応用地質正会員○小林恵,橋口 稔逗子市教育委員会橋本直樹東北芸術工科大学澤田正昭鴻池組高松誠1.はじめに史跡における石造文化財は,古墳の石室や城郭の石垣,磨崖仏など屋外において大地と接した状態にあるものが大半であり,風化の進行により崩壊の危機に瀕しているものも少なくない。石材の風化は,石造文化財が置かれている環境と石材の種類により進行性が異なるが,特に軟岩と呼ばれる砂岩や凝灰岩で造られた石造文化財は風化に弱く,これらの保存が重要な課題となっている1)。一方で,石造文化財の保存対策においては,安定化を図ることはもちろんのこと,景観的価値を損なわずに文化財を保存することが求められる。本発表では,筆者らが関わっている屋外石造文化財における史跡の景観的価値に配慮した保存対策事例について紹介する。2.史跡の概要神奈川県逗子市に所在する国史跡名越切通は,13 世紀から 15 世紀にかけて武家政権の都であった鎌倉の重要な出入り口にあたる遺跡である。市街を見下ろす丘陵上に立地し,鎌倉から三浦半島へ通じる交通路として開削された「切通し」,崖面に穿たれた横穴状の葬送遺構であるやぐらが 100 基以上密集した「まんだら堂やぐら群」,尾根を人為的に断崖状に造成した「大切岸」等で構成され,中世都市鎌倉周縁の歴史的景観を良好に残している(切岸とは山城などで敵の侵入を防ぐ人工的な崖の総称)。本発表の対象である「大切岸」も 800m 以上にわたって高さ 2~10m の断崖が続いており,鎌倉幕府が三浦一族からの攻撃に備えるために築かれた鎌倉時代前期の防衛遺構だと言われてきたが,発掘調査により,現状の断崖は四角い板状の石材を大規模に切り出した結果,最終的に掘り残された石切り場の跡であることが確認されている。3.大切岸の保存対策大切岸は,切り立った崖面と平場が連綿と連なるダイナミックな地形が特徴であることから,名越切通整備事業では,前面平場に園路を新設し,大切岸崖面の壮大さを体感できる空間として活用する計画とした。一方,大切岸崖面の一部には,開口幅 20~40cm 程度の比較的大きな亀裂が垂直に対して 20 度程度の傾斜で発達し,この亀裂が連なって不安定岩塊を形成していた(写真-1)。岩種は池子層砂岩で,表面の一部は風化が進行してやや軟らかくボロボロと崩れやすい状況にあるものの,岩質そのものは硬質で,これ以外に目立つ亀裂は存在しない。この不安定岩塊が崩落した場合,①園路に近接しており,極めて危険であること,②岩塊の規模が大きいため,景観上での変化が大きいこと,から保存対策を実施した。不安定岩塊は,背面の山側にもたれかかるような形状を示しており,亀裂面に作用する摩擦力で現在の形状を保っていると考えられる。このため,モルタルを充填することにより亀裂を閉塞し,地山との一体化を図ることとした(亀裂充填工)。なお,亀裂充填工は,雨水などにより白色の析出物が生じて崖面を汚損する恐れがあるため,モルタル表面に擬岩処理を行い,充填箇所を目立たなくすると共に,析出物の発生を抑えることとした。また,亀裂周囲の岩盤表面の劣化の進行を抑制するため,基質強化処理を行った。(1)亀裂充填工亀裂充填工の材料には DK ボンドモルタルを使用した。幅,奥行きともに規模が大きいため,充填施工では最下から頂部までを連続して施工することは避け,足場(約 2m 未満)を目安に最下から 1 段目,2 段目,3 段目と高さ方向に 3分割し,目地工→注入工を下の段から繰り返すサイクル工程により施工した。目地モルタルの表面は,擬岩材の接着性を考慮し,目粗し状態で仕上げた。注入モルタルは,目地モルタルが硬化してから自然流下により注入施工した。注入に際しては,亀裂奥部まで十分充填させることに留意し,空隙が生じないようにするため,注入管の筒先をできるだけ奥の方に差し込んで行った。注入口において材料がオーバーフローするのを確認するまで行った後,数時間をおいて自重で下がった分を追加注入してから注入口を閉塞し,次の目地施工に移行した。目地工,注入工とも 20~30%の割合で詰石を使用した。The conservation of the national histrical site NagoeKOBAYASHI Megumi, HASHIGUCHI Minoru; Oyo Co.LtdKiridoshi Pass "Okirigishi Wall"HASHIMOTO Naoki; Zushi Board of educationSAWADA Masaaki; Tohoku Univercity of Art And DesignTAKAMATSU Maokoto; Konoike Construction Co.Ltd25 (2)擬岩工擬岩処理工の材料には,バインダー樹脂にサイト FX(Sp),骨材に現地の粉砕岩,川砂,ケイ砂,真砂土,玉砂利等を使用した。施工対象箇所は,上層ほど手前にオーバーハングし,目地幅も広いため,一気に 3cm 厚で施工すると擬岩材が剥がれ落ちることが懸念されたため,擬岩材の盛り付けは 3 層(下塗・中塗・上塗)に分けて行った。また,擬岩材の組成物は下塗,中塗,上塗の順に強度を小さくするように,樹脂と骨材の割合を変えた配合とした。バインダー樹脂は,事前のテストピース作製時において,垂直面で擬岩組成物が剥落する状況が確認されたため,通常よりも濃度を少し高くした。最後に擬岩材が硬化したのち,表面をハンマーやノミなどで小叩き仕上げを行った。(3)基質強化処理工強化処理工の材料には,珪酸エステル系の強化材 Silicatae#3 に防カビ・防藻剤 CRH を添加して使用した。この強化材は,石材中の水分と反応して珪酸ゲル結晶を空隙に生成し,石材そのものの密度を高めて強化するもので,優れた浸透性を有し,吸水・発散を維持するという特徴を持つ。施工は散布器によるかけ流しで,岩盤への薬液の浸透速度を確認しながら 3 回に分けて行い,1m2 あたり 4kg を含浸させた。4.景観への配慮保存対策を行うに当たっては,①現在の景観を極力変えないこと,②色合いや風合い・質感に違和感を生じないこと,に配慮した。本来,安定性を確保するためには亀裂を完全に埋めた方がよいのだ← 注入工が,一方で元の形状に復原が出来ないならば,現在の景観を維持することが史跡保存の原則であり,保存対策工事においてもその兼ね合い母岩の調整が必要である。そこで,亀裂の表面に擦り付けるのではなく,(砂岩)亀裂表面よりも奥まったところで止め,亀裂端部の母岩が見えるよう← 目地工(15~20cm)← 擬岩工(3cm)にすることで,亀裂があることがわかるよう施工した(図-1)。仕上がり位置については,色々な角度から亀裂を詳細に観察し,足場から表面手が届き,安全に施工できる範囲内で決定した。また,仕上がりを考表面慮して,目立つ位置はできるだけ奥まらせることとした。そのため,この面が見えるように仕上げる一律何センチではなく,場所によって仕上がり位置を決定した。色合いや風合い,質感に違和感を生じないためには,亀裂充填工の図-1 仕上がりイメージ(断面図)表面に擬岩処理を行った。亀裂周辺の色や含まれる粒の大きさを確認し,場所によって異なる場合には,骨材の配合や材料を変えることによりいくつかの擬岩材料を調整し,使い分けた。なお,色を合わせるために顔料を混ぜたり,上塗りしたりすることもあるが,時間が経つにつれて色褪せていく恐れがあるため,顔料は使用しなかった。使用した擬岩材は吸放湿性があり,周辺の母岩と同様に雨に濡れれば濡れ色を呈し,乾けば乾燥した色となる。また,強度を上塗ほど小さくすることにより,風雨に当たり摩耗し自然な風体になること,周辺の母岩と同じように風化すること,を期待している。5.おわりに大切岸の保存対策工事は平成 25 年度に完了し,平成 26 年 4 月より前面平場の園路の供用が開始された。1年間経過したが,モルタル材料の析出や擬岩材の肌落ちも認められず,現在のところ良好な状態である(写真-2)。今後も継続的にモニタリングを行っていく予定である。写真-1参考文献亀裂状況(施工前)平成 25 年 6 月写真-2 亀裂状況(施工後 1 年)平成 27 年 3 月1)奈良文化財研究所保存修復科学教室石造文化財の保存研究会:石造文化財の劣化と保存に関する新たな展開,201526
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  • タイトル
  • カッパドキア岩窟教会の風化メカニズムに関する調査研究 -初回調査報告-
  • 著者
  • 小泉圭吾・朴 春澤・渡辺晋生・伊庭千恵美・谷口陽子・佐野勝彦
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 27〜28
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69610
  • 内容
  • 14A - 02第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月カッパドキア岩窟教会の風化メカニズムに関する調査研究-初回調査報告-世界遺産割れ目水分浸透大阪大学国際会員ハイテック非会員○小泉圭吾朴春澤晋生三重大学正会員渡辺京都大学非会員伊庭千恵美筑波大学ディ・アンド・ディ非会員谷口陽子非会員佐野勝彦1.はじめにトルコの中央アナトリアに位置するカッパドキアは 6000万年前の火山噴火で堆積して形成された凝灰岩の地盤が浸食を受け,キノコや煙突のような奇岩として存在すること,またこの奇岩が 4 世紀頃からキリスト教徒の教会洞窟として用いられたことから,自然遺産,文化遺産としての価値が高く,1985 年に複合遺産として世界遺産に登録された。一方,これらの岩窟は雨水による乾湿の繰返し,冬場の積雪による凍結破砕や浸食を受け,年々風化,劣化が進み,その保存に対する対策が喫緊の課題となっている。そこで本研究は,カッ図 1 中央アナトリア地形概況パドキア,Red Valley にある岩窟教会(ウズムル教会)を対象に,上述した風化・劣化現象の発生メカニズムとその特性を理解し,最終的には現地の管理者自らがこの劣化現象を抑制,緩和することができる対策手法を提案することを目的に研究を開始した。本報告では,2014 年 9 月に行った地質調査と観測機器設置に関する概要を報告する。2.対象地の地質概況2.1 周辺地質図 2 ウズムル教会周辺地形状況中央アナトリアの大部分が海抜 1,000m ほどの高地になっている。トロス山脈と平行して,エルジェス山とハッサン山など大きな火山が存在する。これらの火山の噴火により,中央アナトリアに渡って,新第三紀~第四紀の火山岩が東西方向に広く分布している。また,北アナトリア断層と東アナトリア断層に制御され,カッパドキア周囲(図 1)には,NW-SE,EN-WS 方向の断層写真 1 ウズムル教会周辺地形状況(赤破線)が多く存在する。これらの断層の影響を受け,地域内の地盤,同方向を示すリニアメントが多く確認できる。2.2 対象岩窟の風化状況接するこの3つの岩窟は元々岩盤として一体だったものが,割れ目に沿った浸食作用で,分断されたものと考えられる。ウズムル教会(図 2)は観光名所ギョレメの東北に位置する Red Valley にある。このエリアも同様,NW-SE,EN-WSまた,教会岩窟の外壁には割れ目に起因する崩落跡が多数方向のリニアメントが発達している。また Red Valley 自体は残っている。崩落の発生原因については,割れ目に沿った降雨,降雪による水の浸透・浸食,あるいは凍結融解の繰り返東部の隆起に伴う表流水の浸食によって形成された谷筋であしによる要因が考えられる。特に北西面に走っている割れ目る。周辺の地質踏査では,両岸と斜交あるいは平行する割れ(写真 2-左側)が谷筋とほぼ平行,N50°E の角度で教会に目(写真 1)が多く確認された。これらの割れ目付近は,岩貫通していることが内部からも確認できる(写真 2-右側)。盤崩落の発生及び浸食を受けやすい箇所になる。教会を挟んさらに,内部天井部の割れ目に水分の移動によるものと考えで,すぐ上流側に売店岩窟,下流側にワイナリーがある。隣Field Research for understanding the weathering process ofK.Koizumi(Osaka University), K.Watanabe(Mie University),rock-hewn church in Cappadocia –First report of the fieldC.Iba(Kyoto University),C.Piao(Hytec), K.Sano(D&D) andsurvey-Y.Taniguchi(Tsukuba University)27 図 3 気象観測機器の設置概要15写真 2 ウズムル教会割れ目状況10外気温(℃)窟入口(℃)窟奥(℃)深度5cm(℃)深度10cm(℃)深度30cm(℃)温度(℃)5られる石灰質の堆積物が確認された。このことから,外部からの水の浸入が教会内部の環境に影響を与えている可能性が0-5-10示唆された。-15教会岩窟の外壁は表層風化が進んでおり,簡易針貫入試験-202015/1/12 程度であった。日照時間の短い北側では若干高で 4~6kN/m2015/1/32015/1/52015/1/72015/1/9Time2015/1/112015/1/132015/1/15い値を示したが,全体的に風化が進行していることが確認さ図 4 冬期の外気,窟内,地中温度の関係れた。以上のことから,対象岩窟の安定性を維持するためには,割れ目とともに,表層風化に対する対策が必要である。3.観測システムの構築3.1 観測手法本調査では,対象岩窟の乾湿繰返し,および凍結融解に伴う風化,劣化のメカニズム解明を最終目的とし,図 3 に示す図 5 冬期の降雨(降雪)と土壌水分,水分ポテンシャル観測機器を設置した。まず,岩窟教会周辺の気象環境を把握するためのウェザーステーション,対象岩窟と表層地盤間の水分移動を観測するための土壌水分計,水分ポテンシャル計および,岩窟教会内部の温湿度変化,地盤内部の地温変化を把握するための温湿度計および地温計をそれぞれ設置し,2014 年 9 月末より観測を開始した。土壌水分計,水分ポテンシャル計および地温計は,日射の影響を考慮し対象岩窟の北側と南側に,温湿度計は入口付近と奥側にそれぞれ設置した。計測は 10 分間隔とし,データは各計器に接続されたロガーに記録される。記録されたデータはトルコ側の共同研究者によって定期的に収集され,日本側の研究者と共有する体制を構築した。示す窟南側深度 5cm および 30cm に埋設した体積含水率,サクションの関係を示した図である。この図より,9 月 29 日から 11 月 21 日の期間において,深度 5cm では降雨に伴う体積含水率,サクションの変動がみられるものの,深度 30cm においては単調に減少しており,緩やかな重力排水が生じている。一方,11 月 21 日の降雨により,深度 5cm と同様,深度30cm においても体積含水率,サクションの反応がみられ,その後,特にサクションの値がほぼ一定に推移していることがわかる。この原因は 11 月 21 日以降の断続的な降雨あるいは降雪による影響であるものと推測されるが,詳細な考察は今後の課題である。3.2 観測結果(1)冬期の外気, 窟内, 地中温度4.まとめ図 4 は観測期間中の外気温が最低気温を示した 2015 年 1本報告では,対象となるカッパドキア岩窟教会周辺の地質月 9 日を中心に,前後約 1 週間の外気,窟内および地中内のと観測機器設置に関する初回調査概要を纏めた。その結果,温度変化を示した図である。この内,窟入口についてはデー岩窟教会は周辺岩盤と同様,割れ目の発達,風化の進行が進タロガー不良のため,1 月 10 日以降のデータのみを表示してんでいることが確認された。また,今回設置した観測システいる。1 月 6 日夜間から外気温が 0℃を下回り,1 月 9 日にはムより,冬期の一部限定された結果ではあるが,外気,窟内観測期間中最低となる約-16℃を示した。これに対し,窟奥および地中温度の関係,降雨(降雪)と地中内の体積含水率の 1 月 6 日夜間の温度は 4℃程度であり,1 月 9 日には最低およびサクションの関係を把握することができた。今後は,温度となる-6℃を示し,この時点での外気との差は約-10℃観測を継続すると共に,現地試料を用いた乾湿繰返し,凍結であった。窟入口に設置した温度計は窟奥よりも若干低い温破砕に関する室内実験と窟周辺地盤をモデル化することで,度変化を示しており,窟奥と比較して外気の影響を受けてい対象岩窟の劣化メカニズムに関する研究を進める予定である。ることがわかる。一方この間,地中深度 5cm,10cm,30cm謝辞:共同研究先であるトルコ・ネブシェヒール博物館のムの地温が 0℃を下回ることは無かった。ラート氏,修復研究所のファージル氏らには多大なる協力を(2)冬期の体積含水率,サクション図 5 は観測期間である冬期の降雨(降雪を含む)と図 3 に賜った。また,本研究は JSPS 科研費(24101014)の助成を受けたものです。またここに記して謝意を表します。28
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  • タイトル
  • タイ王国アユタヤ遺跡の仏塔の傾斜と地盤との関係についての一考察
  • 著者
  • 藤井幸泰・渡邉邦夫・Uruya Weesakul・Nakhorn Poovarodom・Bhakapong Bhadrakom
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 29〜30
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69611
  • 内容
  • 15C - 07第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月タイ王国アユタヤ遺跡の仏塔の傾斜と地盤との関係についての一考察写真測量地盤沈下煉瓦構造物深田地質研究所正会員○藤井 幸泰埼玉大学正会員渡辺 邦夫Thammasat University WEESAKUL, UruyaThammasat University POOVARODOM, NakhornThammasat University BHADRAKOM, Bhakapong1. はじめにバンコクの北部約 80 km に存在するアユタヤは,1351 年に建国され 400 年以上もタイの王都として発展した都市である。チャオプラヤ-川とその支流に囲まれ,水路は外敵を防ぐ堀と同時に船の通り路となり,港湾都市として交易・外交が栄えた。またアユタヤからバンコクに至る地域は海抜 3 m 以下の低地となっており 1),この水路は度重なる洪水の原因にもなったようである。王都の平和と芸術の繁栄を示すように,煌びやかな王宮や大小の仏塔が設けられたアユタヤであったが,1767 年に陥落してビルマ軍によって破壊をうけた。その後にバンコクに遷都し,アユタヤの遺跡群は1991 年に世界遺産に登録された。アユタヤの地盤となる地質は,バンコクにも続く沖積層であり,不安定で地下水面も高いと考えられている2)。また雨期と乾期における地盤変動が遺跡に及ぼす影響も懸念されている。実際にアユタヤの寺院内には,傾いている仏塔がいくつも存在し,過去には崩壊した仏塔も存在する。この研究ではワット・マハタート寺院の側に孤立する仏塔のワット・ランカー・カーオ(Wat Langkhakhao)を対象に,写真測量を用いた傾斜測量とモニタリングについて報告する。またワット・マハタート寺院内にも傾斜した仏塔が複数存在し,仏塔の傾斜方向と地形についての一考察を述べる.2. ワット・ランカー・カーオの写真測量とモニタリング図-1 に Google による衛星画像を示す。中央やや左手にワット・ランカー・カーオが,また右手にはワット・マハタートが存在する。左下に存在するのは古い運河(水路)である。図 2 にはワット・ランカー・カーオの写真を示す。ワット・ランカー・カーオは土台が八角形で径約 10 m,高さが約 20 m の仏塔である。図 1 ワット・ランカー・カーオとワット・マハタートの位置図図 2 ワット・ランカー・カーオ(画像©2015 CNES / Astrium,地図データ©2015Google)(東側からの写真)図 2 のワット・ランカー・カーオを対象に,東西南北のそれぞれ方向から立体写真を撮影した.また写真測量のための標定点が必要であるが,世界遺産である為,仏塔上に標定点を貼り付けるのは困難である.そこで煉瓦の継ぎ目や,漆喰上の割れ目など目立つ部分を利用して“標定点”と見なし,トータルステーション(TS)を用いて標定点の測量を行った.ところで近くに基準点となるような目印が存在しなかった為,東西南北のそれぞれの位置に釘を置き,それぞれの位置に TS を設置し,測量後は釘の撤去を行った。図 3 に西側から撮影した立体写真を,図 4 には図 3 から作成した三次元モデル(複数の三角形群で構成されている)と,これに写真を貼り付けたテクスチャーマッピングを示す。このような三次元化を東西南北の写真(図 5)を利用して実施し,4つのモデルを組み合わせた全体の三次元モデルを図 6に示す。図 6 に示す三次元モデルや TS の測量成果を用いてワット・ランカー・カーオの傾斜を測定したところ,南南西方向におよそ 2.5 度傾斜していることが分かった。Measurement of leaning stupas and ground condition inFUJII, Yukiyasu Fukada Geological InstituteAyutthaya, ThailandWATANABE, Kunio Saitama University29 図 4 ワット・ランカー・カーオの立体モデル図 3 ワット・ランカー・カーオ東側の立体写真西北東南図 6 ワット・ランカー・カ図 5 ワット・ランカー・カーオの東西南北方向からの写真ーオ全体の三次元モデルところで上述のような測量を,2012 年 1 月,2012 年 7 月,2013 年 11 月の三回実施してモニタリングを試みている。毎回 TS を用いて,図 5 中に緑色の点で示す標定点を測量している。煉瓦の継ぎ目などを標定点とみなし,目視確認しながら測量を行っている為,20~30 mm 程度の誤差を含んでいる。しかしこれまでのモニタリング計測では,この誤差を超すような変形は確認されていない。3. 仏塔の傾斜と水路について図 7 にワット・マハタート寺院内の仏塔群の一部を示す。この写真は南側から撮影されたものであり,二つの仏塔が西側に傾斜していることが確認できる。ワット・マハタートの西側には,古い運河(水路)が存在する。また先程のワット・ランカー・カーオ仏塔は南南西に傾斜しており,その方角にも同様に運河が存在する。今のところアユタヤ遺跡の地盤状況や,仏塔自体の基礎の情報は得られていない.しかし水路が存在する以上,地下水面が地下のかなり高い位置に存在することが推測される。またこの地下水面の高さが,仏塔の傾斜に何らかの影響を及ぼしていることも考えられる。今後は地盤試料採取などを計画しており,仏塔の傾斜との関連性について研究を深めると共に,保存・修復の観点から仏塔の倒壊を防ぐような提案を試みていきたい。参考文献図 7 ワット・マハタート寺院内の仏塔の様子1) 大津康宏:土と基礎,No.60,No.3,pp. 30-33,2012.2)Brand, E. W. & Balasubramaniam, A. S.: SOIL COMPRESSIBILITY AND LAND SUBSIDENCE IN BANGKOK, Publicationof the International Association of Hydrological Sciences, No. 121, pp. 365-374, 1977.30
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  • タイトル
  • 富岡製糸場西置繭所の基礎と建物の変形
  • 著者
  • 正垣孝晴・中川原雄太・藤井幸泰
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 31〜32
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69612
  • 内容
  • 16A - 02第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月富岡製糸場西置繭所の基礎と建物の変形西置繭所基礎の沈下床の不陸柱の傾斜防衛大学校正垣孝晴・中川原雄太深田地質研究所藤井幸泰1.はじめに幕末の黎明期,フランスの建築技術として我が国に導入された木骨煉瓦造の建物と基礎構造の関係を検討する研究の一環として,富岡製糸場の西置繭所の柱の傾斜と床の不陸(沈下)を,地盤構造との関係から検討した 1)。本稿は同西置繭所の礎石の沈下と礎石の間に配置された石材の隙間を測定して,床の不陸や柱の傾斜との関係を検討する。2.礎石の沈下と礎石間の石材の隙間の測定方法礎石は,60cm の正方形断面の高さが 1m の凝灰質砂岩(中新世)である。写真-1 に示すように,この礎石は西置繭所では地表面上に 60cm 程度現れていて,礎石の上部の標高(E)をトータルステーション(TS)で 1mm の読み取り精度で測定した。礎石の間は,最上部に長さと高さが,それぞれ 90 cm と 30cm の礎石と同じ岩質の石が 3 個配置されている。目地材は無く,石同士が直接接している。石材の隙間(C)は,写真-2 に示すノギスを用いて 0.01mm写真-1の読み取り精度で測定した。図-1 は西置繭所の東南端(a)の礎礎石と礎石間の石材(北西端)石を起点にした距離(Df)を示している。東北端(b),西北端(c),南西端(d)を経由した長さは 230m であり,礎石の数は 64 個,礎石間の隙間の測定数は 178 箇所である。なお,Df=50~100 m の礎石の間は,コンクリートが打設されている。3.礎石の沈下と礎石間の石材の隙間の測定結果と考察図-2 は,礎石の E を南壁面の礎石を起点にした距離 Ds に対してプロットしている。西側の礎石は,Ds=21m(No.7 の柱)の Eが最も高く,Ds が大きくなると小さくなり,東側の礎石も Ds=58m(No.17 の柱)の E を最高値として Ds が大きくなると小さくなる傾向がある。これらの礎石の E の差は最大で 3.6cm(=167.149-写真-2礎石間の石材の隙間(西壁面の一例)167.113m)である。柱の傾斜量(I)と建物内の床の沈下量(S)の関係を検討するため,両測定値を図-31)に示した。図の左に I,右に Sの目盛を与えている。I と S は同じ長さの次元であるが,物理的意味は異なる。しかし,この図は両者の関係を概括的に検討するのに有効である。建物北側の柱の傾斜が大きい領域は床の沈下も大きいと解釈できる。建物の北西端(d)には,洪積の粘性土(層厚 90cm)が堆積している 2)。このことから,図-2 で述べた礎石の沈下は,床の沈下や柱の傾斜と同じ傾向であり,これらは粘性土層の沈下に起因していると推察される。図-4 は C と E を Df に対してプロットしている。C=0 mm は礎図-1礎石の標高と礎石間の測定位置石の直横の位置に集中している。西置繭所の東側の C は,Df =0 mmで 8.7 mm であるが,C=0 mm を0167.82で 3 mm 程度である。一方,北の壁面を含む西側の C は,建物の北西端(c)の C=17.5 mm の最大値を除き,(1~10) mm の範Elevation, E (m)さくなる傾向があり,Df≒40 m1囲で南西端(d)に向かう程小さの傾斜が大きくなる(図-3)こ345678910 1113 141516171819202180222310024252627 2829 30+: West side×: Eaet side167.78167.76 1234567208910 111213141516 171819202122 234060Distance from south wall, Ds (m)図-2とと整合している。C と E の挙12167.80くなり,この間の床の沈下と柱280242526 2728 2930100(East)除くプロットは,Df に対して小Distance from south wall, Ds (m)406020礎石の標高(東西の壁面)(West)(West)10Deformation of foundation and West cocoon werehouse,Shogaki,T. & Nakagawara, Y. (NDA), Fujii,Y. (Fukada Geological Institute)①0(West side)-1031(East10 動は,粘性土層の圧密沈2012345678910 11 121314 1516 17 1819 208021 22 231002425 2627 28 2910の傾向(図-3)と整合している。また,この建物図-5 は,建物の南と北面の礎石の E を東柱,中央柱,西柱に対して示している。南面の礎石は東柱で低く,北面は粘性土の圧密沈下に起因(する-2040-40(Center)-2020102000-10(East side)1-20230領域は,明治 5 年の操業4-20(East)柱の E の差は,南側で 1.0西置繭所の北半分の200-10い。8.2m 離れた東柱と西4.おわりに400と推察)して,西柱が低cm,北側で 1.3 cm である。(East)10(West)取れる。: Level 1+: 1st floor Inclination: Level 2×: 2nd floor: Level 3●: floor (1st floor)-40(East)あることが図-2 から読み(West side)-2020-20(West)(=167.152‐167.113m)200-10Inclination(+,×), I (mm)て , 最 大 で 3.9 cm400の礎石の標高差は,建物の南北の長軸方向に対し30(West)した床の不陸と柱の傾斜Distance from south wall, Ds (m)406020Settlement(●), S(mm)下に起因(すると推察)056720891011 1213 1415 1617 1819 2021 22 2324 25 2627406080Distance from south wall, Ds (m)開始から 24 年間石炭貯図-328 29-4030100柱の傾斜と床の沈下 1)蔵所として使われ,北西貯蔵した石炭荷重による粘土の圧密沈下に起因していることが推察される。しかし,総延長 230m の礎石の標高差が 3.9 cm の範囲内に収まっている。Chink, C(×) (mm)は粘性土層が堆積している。この領域の沈下は,(c)(d) (a)(East wall)×: Chink+: Elevation(West wall)10167.82167.8167.78167.76Concrete00100200Distance from foundation, Df (m)建物本体は,幾多の地震被害も受けていない。礎図-4礎石の標高と礎石間の間隙量石下の簡単な基礎形式で143 年の歳月をほぼそのままの形状で残存していることは,167.82明治初頭の地盤工学的技術の水準の高さを示していると解釈0Distance from east wall, De (m)2468East pillarCentral pillar柱の傾斜と床の不陸の測定にご協力頂いた富岡製糸場総合研究センターの岡野雅枝様と森田昭芳様,貴重な報告書と資料の開示にご協力頂いた富岡市教育委員会文化財保護課の片野雄介様に,また礎石の測量に TS をお貸し頂いた埼玉大学の渡邊邦夫先生に深甚の謝意を表します。Elevation, E (m)される。10West pillar+: North side×: South side167.8167.78167.76参考文献East pillar1) 正垣・中川原・藤井:富岡製糸場の地盤構成と西置繭所の変形,土木学会関東支部研究発表会,Ⅲ-23, CDR, 2015.2) (公財)文化財建造物保存技術協会:旧富岡製糸場西置繭場地盤調査報告書,pp.31-45, 2011.320Central pillarWest pillar510Distance from east wall, De (m)図-5礎石の標高(南北の壁面)Elevation,E(+) (m)(b)(South wall)(a)20(North wall)端近傍(図‐1 の C)に
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  • タイトル
  • 国指定史跡名越切通における崖面の保存対策工事の効果検証
  • 著者
  • 橋口 稔・小林 恵・橋本直樹・澤田正昭
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 33〜34
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69613
  • 内容
  • 17A - 02第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月国指定史跡名越切通における崖面の保存対策工事の効果検証亀裂注入工(グラウト工) 風化応用地質正会員○橋口逗子市教育委員会橋本稔,小林直樹東北芸術工科大学澤田正昭恵1.はじめに国指定史跡名越切通は,鎌倉時代に丘陵尾根を掘割して造られた交通遺構である。切通路の両側には,露出した岩盤からなる崖面がほぼ垂直に立ち,名越切通は,鎌倉七切通の中でも中世のたたずまいを最も感じることができる古道である。崖面を構成する岩盤は,新第三系の砂岩と泥岩であり,岩としては軟岩に区分される比較的軟らかい岩質である。崖面は,この軟らかい岩質を背景に,乾湿繰返しによる経年風化や樹根の伸長により,亀裂が発達して小崩壊を繰り返していた。このため平成 15∼16 年度には,景観に配慮しつつ地山を一体化して安定化させる目的で,保存対策工事が施した。施工した対策工は,グラウト工,ロックボルト工,亀裂充填工,強化・撥水処理工であり,施工痕を目立たなくするため表面には擬岩処理工を施した。今回,筆者らは施工後 10 年を経たこれらの各種対策工について,効果が継続しているか検証する機会を得た。本論文では,モニタリング結果を基に保存対策工事の対策効果について考察を行う。2.保存対策工事の内容名越切通の保存対策は,目的に応じて下記の内容を複合的に施工した(図-1 参照)。1)地山の安定性確保・グラウト工による痩せ尾根の一体化・亀裂充填工による岩盤亀裂の閉塞と浮石の固定・ロックボルト工による不安定岩塊の固定a)グラウト工2)表面劣化の抑制b)ロックボルト工・珪酸エステル系基質強化剤の塗布による基質強化処理工・シラン系撥水剤の塗布による撥水処理工3)景観の維持・擬岩処理工による補修痕の目隠し4)湿潤な環境改善・切通路の路面下への暗渠排水の敷設3.対策効果の検証方法各種対策工法の対策効果の検証は,①安定性確保の機能面,②対策工を原因とした崖面の汚損など景観への影響面,の両面に着目し,現地踏査と目視観察によるモニタリングを行った。モニタリングを行う上で,経年劣化により発生が想定される変状項目とその内容を整理し,表-1 に示す。表-1 モニタリングを行う上で想定した変状項目とその内容想定した変状の項目安定性確保の機能面景観への影響面内容(発生時に予想される背景と放置した際に予測される支障)湧水や湿潤箇所の発生湧水や湿潤箇所の発生は,背面の地山内で地下水が滞留していることを示唆する。地下水の滞留は崖面への水圧の作用,乾湿繰返しによる劣化を招き不安定化を招く可能性が高い。亀裂の発達新たな亀裂の発達は,風化の進行や崩落助長の原因となる。岩表面の肌落ちの発生岩盤表面の肌落ちは強化剤の含浸量が不足,あるいは,地山に対する強化の度合いのバランスが悪いことが想定される。浮石・落石の発生新たな浮石や落石の発生は,通行上の課題となるため早急な対策が必要となる。目地の開き目地の開きは岩接着の機能低下の一因となり得る。雑草・苔類の発生根の進入による亀裂の発達,風化の助長につながる可能性がある。壁面の汚損の発生セメント系材料からの水溶性成分の遊離,白華,化学作用による変色などが想定される。擬岩の浮き上がり放置した場合,擬岩が剥がれることによる景観の悪化が予想される。Effect inspection of the preservation measures construction of the cliffside NAGOEKIRIDOSHIHASHIGUCHI Minoru, KOBAYASHI Megumi; Oyo Co.LtdHASHIMOTO Naoki; Zushi Board of educationSAWADA Masaaki; Tohoku Univercity of Art And Design33 4.対策効果の検証結果モニタリングの結果,前出の表-1 に示すような内容の変状は認められなかった。また,工事完了後,経年的に崖面の記録を撮り続けているが,強化・撥水処理を施した崖面は,小さなサイコロ状の泥岩塊の落下を除くと,有意な崩壊は認められない(写真-1 参照)。なお,強化・撥水処理については,一般的に 5∼10 年で効果が弱くなる。当地では平成 21 年度に再処理を施(2007 年 4 月撮影)しており,現在も経過は良好である。亀裂充填に使用した材料はポリマーセメント系の材料であり,長期的には白華現象が生じる可能性を懸念していた。しかし,現時点では白華現象は認められず,表面に施した擬岩材料によって白華が封じ込められていると考えられる。図-2 に示す岩塊は,切通路の狭さをよく表しており,名越切通を代表する風景となっている。一方,かつての切通路は現在よりも広かったと考えられており,大正関東地震によって岩塊が切通路側に動いたものと想定されている。この岩塊を含む亀裂充填箇所は,2011 東北地方太平洋沖地震を経験しているが,(2015 年 3 月撮影)写真-1 切通路南側崖面のモニタリング写真岩塊と亀裂充填の接着面に亀裂やすき間の発生が認められず,健全な状態であった(写真-2 参照)。ロックボルトの施工痕は,施工直後にはわずかに識別することができたが,現在では全く判別できないほど馴染んでいる(写真-3 参照)。以上述べたように,名越切通における保存対策工事は,施工後 10 年が経過した現在でも有効な対策効果をあげていると考えられる。岩塊接着面(2005 年 3 月撮影)亀裂充填岩塊※接着面には隙間などは認められず,地震動で動いた痕跡は認められない(2015 年 2 月撮影)(2015 年 2 月撮影)図-2 岩塊位置のスケッチ図写真-2 岩塊位置のモニタリング写真5.おわりに今回のモニタリングによる検証の結果,各種の保存対策工事は現在でも有効であることが確認された。これは,既存の土木技術と保存科学技術を組み合わせることで,複合的な効果をあげた好事例であると考えられる。なお,史跡の保存対策は,史跡の持つ本質的価値や性格を損なうことのないよう,必要最小限度の対策を的確に適用すること(2005 年 3 月撮影)が重要である。このため,史跡の保存対策※ロックボルト施工位置は,施工直後の 2005 年工事では,施工後の経過観察が重要であり,今後もデータを蓄積し,的確なメンテナンスを検討していけるように役立てたい。3 月ではかろうじて判別できる程度(2015 年 3 月撮影)※2015 年 3 月時点では,ロックボルト施工位置は全く判別できない写真-3 ロックボルト施工位置のモニタリング写真34
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  • タイトル
  • アンコール遺跡基壇盛土材料の選定と締固め特性
  • 著者
  • 福田光治・岩崎好規・本郷隆夫・中川 武・新谷眞人・山田俊亮・石塚充雅・下田一太
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 35〜36
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69614
  • 内容
  • 18D - 02第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月アンコール遺跡基壇盛土材料の選定と締固め特性アンコール遺跡,基壇,盛土,粒度分布、締固め曲線大成ジオテック福田光治地域地盤環境研究所岩崎好規、本郷隆夫早稲田大学中川武,新谷眞人山田俊亮、石塚充雅筑波大学下田一太1.まえがきアンコール遺跡基壇は盛土及びラテライトと砂岩の周壁構造が基本である.このうえに主構造の砂岩とラテライトブロックの塔が積層される.復元する場合は盛土もオーセンティシティを検討する対象になる.盛土を発掘時の状態あるいは改良して発掘時の状態にすることは困難である.従って盛土のオーセンティシティの管理基準が研究されなければならない.JSA および JASA は発掘時に基壇盛土構造を把握するために簡易貫入試験や簡易平板載荷試験を実施し、データの蓄積を図っている.しかし考古発掘時の模様を土質調査で追認することはできない.基壇盛土で管理できるのは締固め材料や締固め密度である.基壇盛土の構築では支持力や耐久性が管理される.この基礎データになるのが締固め曲線と強度の関係である.本論文では締固め曲線と山中式硬度指数で表現した強度関係を議論する.雨期乾期の季節変化するアンコール遺跡では含水の影響も検討しておかねばならない.2.アンコール遺跡基壇盛土発掘状態地下水面からの高さ(cm)考古の発掘調査では写真-1 に示すように模様や色などにより盛土の線が描かれる.厚い幅と薄い幅模様が交互に現れることが多いが、水平方向の広がりは複雑20015010050●褐色△灰色00102030硬度指数で途中で消滅する.また大きな礫が無作為に混写真-1入されている.このよう図-1基壇模様と異物4050地下水面からの模様と強度な模様や異物の混入はアンコール遺跡基壇では一般的であるが、オーセンティシティの対象物として再現することは困難である.図-1 は盛土の色に着目し強度特性を調べたが、地下水の影響を確認しただけであった.00また図-2 のような推定 N 値の深度方向パターンや自己相関係数の評価かEstimated N value510 15 20NWcornerNo.181)ら約 25cm の層厚が得られ 、線模様には対応していないことを確認した.図-3 はアンコール遺跡基壇盛土の代表的な粒度分布曲線である.土質は砂質土である.図には周辺で遭遇する粘性土の粒度分布曲線も付加しているが、自然地盤も含め砂質土中心の材料である.図-4 は発掘土を使0.2Depth(m)3.締固め土粒度分布曲線用した締固め曲線である.ほとんどの材料の最大乾燥密度は 1.8g/cm3 以上である.図中の平坦な締固め曲線は砂あるいは購入砂である.図-5 は締固めデータにより求めた粒度分特性と最大乾燥密度の関係を示している0.40.60.8図-2推定 N 値パターン2).ここに粒度評価径は粒度分布曲線を一つの数値で表したものである.10-2mm 以上の粒度評価径の材料は主として砂の特性を示す.図の最大値は 10-2mm 付近にある.混合土の締固め曲線から参考粒度として基準粒度を設定した.4.締固め曲線と強度締固め試験では締固めと強度の関係調べるために山中式硬度試験を行った.図中の黒塗り記号(■、▲、●)は含水比~締固め密度の関係である.混合土(●、▲)の締固め曲線には明瞭なピークが出現している.発掘土(●)は明瞭なピークは見られず、平坦な締固め曲線である.細粒分含有率が少ない砂である.混合土の最適含水比は 12~14%で、Choice of fill material and change of strength with compaction curve of soils composed of Angkor foundation,FukudaMitsuharu、Taise Geotech., Iwasaki Yoshinori、Hongo Takao、Geo-Research Institute, NakagawaTakeshi, Araya Masato, Yamada Shunsuke, Ishizuka Mitsumasa, WasedaTsukubaUniversity35University, ShimodaIchita, 2.3プラサートスープラN1(点801)バイヨン南経蔵(実線)2)バイヨン北経蔵(鎖線)3)プラサートス-プラN1塔(点線)2.160乾燥密度(g/cm3)通過質量百分率(%)100バイヨン南経蔵(実線)4020バイヨン北経蔵(鎖線)00.0010.010.11101001.91.71.510 含水比(%)200粒径(mm)図-3図-430締固め曲線アンコール基壇盛土粒度分布最大乾燥y密度ρdma(g/cm3)アンコール遺跡基壇盛土の一般的な最適含水比である.図中の点線は山中式硬度指数である.白抜きの記号で、同じ形状が同じ試料に対応する.最適含水比を基準にすると、強度の最大値は乾燥側で発生している.赤井土質力学 3)には締め固め曲線と針貫入試験結果が掲載されており、やはり強度のピークは乾燥側で発生している.平坦な締固め曲線の発掘土の強度にはピークが現れており、含水比約 12%にピークがある.2.22.01.81.61.4最大乾燥密度1.2基準粒度1.00.0001 0.001 0.015.水浸による締固め土強度変化0.11粒度評価径dc(cm)最も密度が大きい最大乾燥密度で最大強度にはなっていない.図-5間隙比と内部摩擦角の関係からは最大乾燥密度が最大強度に対粒度と締固め特性で無く、サクションにより発生する粘着力の影響が推定発掘土混合土(1:1)される.これらのことを明らかにするために、締固め毎混合土(1:0.3)発掘土混合土(1:1)混合土(1:0.3)の強度試験を行った.図-7 の白抜き○が締固め時の含水比に対応する強度を示し、白抜き△は表面に散水し、含水比を上昇させて行った強度試験結果である.散水すると対応する強度は湿潤側に移動し、強度分布のピークは最適含水比付近に発生する.含水比が高くなるとサクシ乾燥密度 (g/cm3)に締固め含水比と表面に散水して含水を高めた状態で2.03025201510501.81.6dry1.41.2点線:山中式硬度指数1.00ョンは減少し、粘着力の効果は低減する.このため内部51015山中式硬度指数応することが類推される.従って強度は内部摩擦角だけ20含水比(%)摩擦角による強度がより明瞭になったと推定される.6.おわりに締固め曲線と強度曲線の関係を調べた.締固め度含水図-6比~強度関係では強度を確保するために乾燥側での締締固め曲線と強度最適含水比付近で高密度に施工することが適切と考えられる.オーセンティシティは材料の選定、締固め方法を基準に、支持力が不足する場合は消石灰添加を考えている.(参考文献)1) 中澤重一・岩崎好規・福田光治・松原啓充・スレン・ソッキアン・赤澤泰・中川武:アンコール遺跡の基壇に関する地盤工学的構造,地盤工学会第 50 回地盤工学シンポジウム、乾燥密度(g/cm3)基壇の強度は減少する.従って基壇盛土の耐久性を考慮すると、2401.9301.8201.7101.600福田光治・宇野尚雄:「粒度評価径」の提案とそれに基づく日Yamanaka hardness number本統一分類法の分析、土木学会論文集 No.582(1948)/Ⅲ-41、pp.125-136、1997.図-73) 赤井浩一:土質力学(訂正版)、朝倉書店、p.121、1996.3620含水比(%)西トップ改良粒度pp.37-42、2006.2)10散水による締固め強度変化山中式硬度指数固めが適切になる.しかし雨水浸透による強度移動を考慮すると
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  • タイトル
  • アンコール遺跡バイヨン中央塔における精密写真測量を用いた塔体・基壇の石積み変状の計測
  • 著者
  • 中西由起・小山倫史・橋本涼太・岩崎好規
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 37〜38
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69615
  • 内容
  • 19C - 04第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月アンコール遺跡バイヨン中央塔における精密写真測量を用いた塔体・基壇の石積み変状の計測精密写真測量アンコール遺跡バイヨン中央塔目地開き関西大学社会安全学部学生会員○中西由起関西大学社会安全学部国際会員小山倫史京都大学大学院工学研究科学生会員橋本涼太地域地盤環境研究所国際会員岩崎好規1. はじめにバイヨン寺院はカンボジアのクメール文明遺跡群の中でもアンコール・ワットと双璧をなしその極点にある遺構である(写真-1).中央塔は高さ 42m におよぶ砂岩による組積造の塔状建築であり,その建設から現在にいたる数百年間に様々な要因と作用によって劣化・変状が進み,現在は突発的な落石が起るなど塔の部分的崩壊の危険性が指摘され早急かつ恒久的な対策が求められている.中央塔の基壇は高さ約 12mの盛土で,周囲は積み石擁壁構造であるが,降雨時には石積みの壁からの漏水が観察されている.1960 年代以前の目地は,モルタル充填されているが,現状では,新たな縦目地(目地開き)が発生し,基礎部の石には,亀裂の発生・進展が見られる(写真-2).これらは塔体および基壇の安定性に大きく影響を及ぼし,構造安定化に向けた修復・対策工法の検討のためには,変状の現状把握・変状要因の特定・変状メカニズムの解明が重要である.そこで,本研究では,石積みの挙動(亀裂進展・目地開きに伴う石積みの動き)を正確に把握するため,精密写真測量(単写真測量)を用いた計測を実施した.2. 精密写真測量を用いた目地開き・亀裂開口幅の計測-理論・方法本計測手法では,図-1に示すコード付きターゲットを目地・ひび割れの左右(または上下)に設置する.1 枚のターゲットには 4 つの白円が印刷されている.一般的にデジタル 画像では,光の信号の強度を 1 画素あたり 256 段階に数値化して画像に表現し,この数値を明度とよぶ.本研究では,円の中心座標をこの明度分布を用いて決定する重心とした.つまり,図-2 に示すように,4 つの円の明度分布において適当な閾値を定め,閾値以下の明度の画素について明度をゼロとし,閾値以上の明度の画素について,明度を重みとして次式を用いて面積重心計算する(Kanazawa et al., 2012).nx  x 0  axm (q(i, j )  xi 1 j 1n m q(i, j )nij)y  y0  a(1)m (q(i, j )  yi 1 j 1yn mi 1 j 1ij) q(i, j )(2)i 1 j 1ここで,(x0, y0) は重心計算範囲の原点,(ax, ay) はそれぞれの画素サイズ,q(i, j) は画素 (i, j) の明度である.図-3 に示すようにある平面 L 上の点 (x, y) が,投影中心 O に関して,他の平面 L’上の 点 (x’, y’) として投影されるような変換を射影変換と呼び,「斜めから撮影された画像を正面から撮影した画像に変換する」ことを指す.射影変換は,写真測量の基本原理である共線条件に基礎をおく(Penna, 1991).共線条件とは,図-4 に示すように,対象空間上の計測点とその画像上の点,およびカメラの原点(レンズ の中心)は一直線上に存在するという原理である.正射影変換には次式を用いる.この射影変換式は,ある平面 L 上の点(x, y)を他の平面 L’上の点(x’, y’)に変換する式であるが,未知係数 b が 8 個存在する.これらの未知係数を決定するために,4 つの円を既知の間隔で正確に印刷する.先述した重心計算により求めた 4 点の基準点の写真座標(x, y)に対して最小二乗法をはめることにより決定する目地開き亀裂図-1 反射ターゲット写真-1 アンコール遺跡バイヨン中央塔写真-2 基壇部の目地開き・亀裂Crack/joint measurement of ancient masonry structures usingNAKANISHI, Yuki: Kansai Univ.photogrammetry, a case study of Bayon Central Tower,KOYAMA, Tomofumi: Kansai Univ.Angkor, CambodiaHASHIMOTO, Ryota: Kyoto Univ.37 図-2 円の明度分布x b1x  b2 y  b3b7 x  b8 y  1図-3 射影変換y' (3)図-4 共線条件b4 x  b5 y  b6b7 x  b8 y  1(4)3. バイヨン寺院中央塔における目地開き・亀裂開口幅の計測本研究では,図-5 に示すように,特に変状が著しいとみられる北テラス西側の基壇(ターゲット名:B1, B2, B3),南テラス西側の基壇(BSW1,BSW2),南テラス東側の基壇(BSE1,BSE2),主塔の南西側(SW1, SW2, SW3)および北西側(NW),北西側の副塔(SubT1, SubT2)に おいて計 13 地点に写真測量用反射ターゲットを設置した(石積み擁壁に接着剤で貼る のみでよい).図-6 に 2015 年 1 月 30 日までの各計測地点におけるターゲット間距離の変動幅を示す(ただし,目地が開口する方向を正とする).本図より,いずれの位置においても目地は±1mm 程度で周期的に開・閉口を繰り返しており,SW2 を除いて,一方的に開口(あるいは閉口)が継続している地点は見られない.BSW2は 12/14 において 3mm 以上閉口しているが,12/30 には元の開口幅に戻っており以降大きな変位が生じていないことから,12/14 の計測において大きな誤差が生じていた可能性がある.ただし,理論上,奥行き方向(z 方向)の成分は考慮していないため,可能な限り正面から写真撮影を行うことが望ましく,奥行き方向の段差がやや大きい箇所ややや見上げる角度で撮影した場合,精度がやや落ちる傾向がある.今後,主塔の南西側において別途実施しているパイ型クラックゲージを用いた計測結果との比較および温度による影響などを詳細に調べる必要がある.また,基壇内部の土壌水分の計測結果と本計測結果より中央塔基壇の変状メカニズムの解明を行う必要がある.4. まとめ本手法では,反射ターゲットを設置した石積みを定期的に写真撮影し,その 3 次元座標を取得し,その変分分析により,開閉口方向のみならず,面内せん断方向の動きを把握することが可能である.また,計測に電源を必要とせず,安価でターゲット設置も容易であり,耐候性・耐久性に優れ,「誰でも簡易に計測できる」という最大の特長がある.subT2B2B321B1’SW3NWSW2目地開き ,mmB1subT1開口0-1-2閉口-3SW1BSW2BSE2BSW1-48/15BSE19/15 10/16 11/16 12/17 1/17時間 月/日2/17B1B2B3subT1subT2NWSW1SW2SW3BSE1BSE2BSW1BSW2図-6 目地開きの経時変化図-5 ターゲットの設置位置参考文献1) Kanazawa et al. Measurement of the crack displacement using digital photogrammetry for evaluation of the soundness of tunnels.In: Proc. of GEOMATE 2012, KL Malaysia, Nov. 14-16, paper ID:250. 2) Penna, M. A. Determining camera parameters from theperspective projection of a quadrilateral. Pattern Recognition, 1991; 24(6): 533-541. 3) Trinder, J.C. Precision of digital targetlocation. Photogrammetric Engineering and Remote Sensing, 1989; 55: 883-886.38
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  • タイトル
  • アンコール・バイヨン寺院中央塔重量積石構造物の直接基礎としての砂質盛土地盤特性
  • 著者
  • 岩崎好規・福田光治・原口 強・下田一太・北村篤実・井出善明・徳永朋祥・茂木勝郎・中川 武
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 39〜40
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69616
  • 内容
  • 20A - 01第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月アンコール・バイヨン寺院中央塔重量積石構造物の直接基礎としての砂質盛土地盤特性地域地盤環境研究所大成ジオテック国際会員○岩崎好規国際会員原口筑波大学大学院下田一太西部試錐工業北村篤実西部試錐工業アンコール1盛土基壇福田光治大阪市立大学強井手善明東京大学徳永朋祥東京大学茂木勝郎早稲田大学中川 武水素結合まえがき日本国政府アンコール遺跡救済チーム(JSA: Japanese Government Team for Safeguarding Angkor)は,1994 年に結成(団長中川武)されたが,遺跡保存活動は,現地への技術移転とともに,バイヨン寺院の保存修復の段階にある。ここでは,バイヨン寺院の中央塔は,寺院のシンボルとして最重要建造物の一つである。砂地盤盛土の上に建つ中央塔の荷重強度は,RC30~40 階相当であり,直接基礎として 600 年間崩壊なしに存続しているのはどのような理由か?2バイヨン寺院中央塔アンコール遺跡の中では,アンコールワットと共に,アンコールトム遺構の中心寺院であるバイヨンは,アンコールを代表する遺跡である。バイヨンは,ジャヤヴァルマン VII 世によって 12 世紀後半に建設されたが,から 13 世紀に至るまで改変されたとされている。バは「美しい」という意味で、ヨンは「塔」の意味を持つともされているが,一説によれば“玉座”を意味し,50 の石塔の四面に 171 の尊顔が彫り込まれている。寺院中央には,高さ 42m の中央塔が建っている。積石構造は,掘込み地業による地表処理とよく締め固められた砂地盤と積石擁壁から構成されている。写真-13バイヨン寺院図-1 バイヨン中央塔断面図中央塔基礎地盤の構造バイヨン中央塔は,約 13m の厚さを有する盛土の上に 30m の高さ,半径約 10m の石積塔である。中央塔自身は,塔外周部に位置する側柱が外方に傾斜するなど,ザクロが開くような変状が見られるが,基礎に起因する変状は見られない。中央塔積石による平均荷重強度は,40ton/m2 に達するもので,通常の RC 構造とすれば,30 階建の建造物に相当するものである。1933 年仏国極東学院(EFFEO)のツルーヴェによる中央塔基壇中央が発掘によって,佛像が発見されている。この発掘によって直径約 2m の立坑が掘削され,その後,埋戻しがされているが,どの程度の密度となっているのかを調査するために,2009 年標準貫入試験によるボーリング調査を実施した。さらに,基壇盛土部のボーリング調査を 2012 年に実施し,それらの結果を図-2 に示した。その結果,中央部の立坑部分では,N<4 の非常に緩い状態の砂質土が 12m 以上の深Characteristic of Sandy Manmade Fill as DirectFoundation for Heavy Masonry Structure ofCentral Tower of Bayon Temple, AngkorYoshinori Iwasaki Geo Research Institute Mitsuharu Fukuda TaiseiGeotech, Tsuyoshi Haraguchi, Osaka City Univ., Ichita Shimoda,University of Tsukuba, Atsumi Kitayama & Yoshiaki Ide, Seibu ShisuiKogyo Inc.Ltd., Masahiko Tomoda, , Tomochika Tomonaga & KatsuroMogi, Univ. of Tokyo, Takeshi Nakagawa, Waseda University39 図 2 バイヨン中央基壇部の標準貫入試験結果度に見られ,立坑の深さは基壇表面から 13m であった。また,立坑中心部に向けての斜めボーリングの結果,立坑の直径は,D=2.7m(NS 方向)であることが判明した。塔基壇外部の第 3 テラス部分からの鉛直ボーリングの結果からは,上部から 6m 部分はラテライトブロックで,それ以深には,N>50 の非常に良く締まった砂質盛土があり, 固結状態にあEquivalent SPT N(blows/30cm)ることが判明した。2001501005005101520Water Contents(%)図-3 バイヨン基壇部のボーリング結果(BYH2012)図-4 バイヨン基壇部の盛土のN値と採取試料含水比の関係ボーリング採取試料の含水比,粒度を求めた。含水比と N 値の関係を図-4 に,粒度分布を図-5 に示した。明らかに,含水比の減少とともに N 値の増大の関係が認められる。粒度分布からは,細粒分を約 10%内外含んでおり,このために,含水比の低下により,細粒土粒子表面に発達する水素結合による表面張力1)によって大きな貫入抵抗値を示しているものと考察できる。4 結論バイヨン主塔は,13m の砂質土による高盛土の上図-5 ボーリング採取試料の粒度分布に直接基礎として建設されている。N 値は 50 以上で,100 にも達して, 固結状態にある。このため参考文献に,40ton/m2 に達する荷重を支持している。しか1)八尾眞太郎・桝井 健・伊藤淳志(2002):カオリン粘土の土し,今後の温暖化による豪雨などで水浸などの状中水の状態と引張強度の関係について, 第 47 回地盤工学シンポ況となれば,崩壊の危険が待ち受けている。ジウム論文集, pp.127-13240
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  • タイトル
  • 「三国志」魏志東夷伝に見る古代東アジアの地盤構造物
  • 著者
  • 鬼塚克忠
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 41〜42
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69617
  • 内容
  • 21A - 02第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月「三国志」魏志東夷伝に見る古代東アジアの地盤構造物キーワード:三国志魏志東夷伝,古代東アジア,地盤構造物1.国際会員鬼塚 克忠まえがき三国志・魏志東夷伝 1)に記載された 3 世紀の東アジアの地盤構造物を取り上げ,古代墓の埋葬様式,墳丘の有無,集落・都市を取り囲む城壁,環濠について考察する.これら地盤構造物は主にその地域の風土(気象・地形・地質),時代などに強く関連するという著者の持論 2)を展開し,さらに加えて,防御地盤構造物はその周辺との民族対立状況に深く関係することを述べる.2.「三国志」魏志東夷伝「三国志」は,魏(A.D.220~256 年)が晋によって滅ぼされた後,陳寿によって書かれた 3 世紀の歴史書であり,魏志 30 巻,呉志 20 巻,蜀志 15 巻の計 65 巻からなる.魏志は,魏,烏丸(うがん),鮮卑,東夷伝を指し,東夷伝は魏の東方周辺国・地域についての記述である.東夷伝ははじめに扶余,続いて高句麗,東沃沮(とうよくそ),挹婁(ゆうろう),濊(わい),辰韓・弁韓・馬韓からなる韓,最後が倭人の伝となる.倭国,邪馬台国や卑弥呼が初めて登場するのがこの倭人伝であり,東夷伝の中で,最も多くの 2013 字が費やされている.これから当時の各国・各地域の風土や人々の生活,文化,生産,技術の様子がわかる.なお,東夷伝には前記のとおり魏,および同国の支配下にあった朝鮮半島の楽浪郡・帯方郡などの記述はない.図-1 に 3 世図-1 3 世紀の東アジア 3)紀の東アジアの地図 3)を示す.図-1 中国,朝鮮半島,日本の年表3.古代の東アジア著者は以前より古代東アジアの盛土構築技術は風土と時代に大きく関連すると主張してきた.東アジアを中国・長江流域,中国・黄河流域,中国東北部,朝鮮半島北部,朝鮮半島南部,北部九州の 6 地域に分けて考察している.本論文においても基本的に,この 6 地域をベースにして記述したい.表-1 に中国,朝鮮半島,日本の年表を示している.4. 地盤構造物表-2 に東夷伝に記載された地域ごとの戸数,構造物,その他風土などを列記した.これは表-2 魏志東夷伝 1)に見る東アジアの構造物,風土など七田 4)の表を参考に,追記したものである.地域以下,東夷伝に記載されたおもな構造物およ4.1 古代墓:埋葬の様式,墳丘の有無墳墓を含む古代墓は住居とともに最古の構造物の一つである.表-2 に示すように,高句麗の伝に,「石を積みて封と為し」の記述があされるようになった土を盛り上げる墳墓と異高句麗中国遼寧・吉林省・北朝鮮北部(3万)石を積みて封と為し,松柏を列べ種う.牢獄無し.大いなる倉庫無し大山深谷多く,原沢無し.良田無し.馬皆小にして,登山に便なり.丸都の下に都す.王在り東沃沮北朝鮮浛鏡北道一体(5千)葬るには大いなる木槨を作る大なる君主無し.土地は肥美.牛馬少なし夫余挹婁(ゆうろう)濊(わい)中国吉林省・ロシア土地は山険多し.山林の間に処り,常に穴居し,大家は深きこと九梯の多きを以て好と為す.土気の寒きこと,夫余より劇し.大なる君主無し.朝鮮半島東半部(2万戸)居む処は雑わりて民間に在り(宮殿無し).大なる君主無し馬韓朝鮮半島南西部(50余国,10余万)居処は草屋土室を造り,形は冢の如し.其の戸は上に在り,家を挙げて共に中に在り.葬は槨有りて棺無し.官家の城郭牛馬に乗るを知らず韓辰韓朝鮮半島南東部12国(弁韓と合わせ4~5万戸)城柵有り韓土地肥美にして,五穀及び稲を種うるに宣し.蚕桑することを暁り,縑布を造り,牛馬に乗駕す.国は鉄を出だし,韓・濊・倭皆随いて之を取る.韓弁韓朝鮮半島南部弁辰,辰韓と雑居し,又城郭有り西日本(使訳通じる30国の内7国で20万戸以上)棺有れども槨無し.土を封じて冢を作る.居処・宮室・楼観・城柵,厳かに設ける.卑弥呼以に死し,大いに冢を作る.径百歩.殉葬する者奴婢百余人なり,川原石を積み上げて作る積石塚である.盛土墳に比べ,構築に高度な技術を必要としない.高句麗の誕生と積石塚の出現は同じB.C.1 百年頃である.これが後の巨大な将軍その他,風土などの記述山陵・広沢多く人を殺して殉葬せしめ・・.名馬・赤玉・貂狖(ちょうゆう)・美珠を出す.君王在りる.これは中国東北地方に由来する積石塚を意味する.中国長江,続いて黄河流域で構築構造物に関する記述夫余は長城の北に在り.宮室・倉庫・牢獄有り.城柵.厚葬にして,槨有れども棺無し.大いなる倉庫無しび関連するものについて,著者の現地調査と各種文献調査を踏まえて,論述する.現在の地域中国吉林省一体(8万戸)倭男子は大小と無く,皆,鯨面文身す.倭の水人んで沈没して魚蛤をとらえ・・.禾稲・紵麻を種え,蚕桑・緝績し,細紵・縑緜を出ださす.牛・馬・虎・豹・羊・鵲無し.倭の地は温暖にして,冬も夏も生菜を食らう.塚(A.D.3 百年後半)へと発展する.扶余の伝に「厚葬にして,槨有れども棺無し」,東沃沮のそれに「大いなる木槨を作る」,馬韓に「槨有りて棺無し」とある.夫余,Ancient East Asia’s geo-structures in the section of Eastern Barbarians, the history of Wei. Katsutada ONITSUKA41 東沃沮,馬韓はいずれも「槨有り」である.「槨」は棺を囲う箱状のものを指す.扶余は高句麗の北の,現在の哈爾濱(ハルピン)あたりであるが,積石塚は作られなかったのだろうか.前記のとおり,楽浪郡(B.C.108~A.D.313)墳墓の記述は東夷伝にはないが,地下に木槨や塼槨(せんかく)を設けている.これらの「槨」は黄河中流域の商・周時代の木槨墓をルーツとする地下埋葬である.元来黄河流域では墳丘がなく,これが出現するのは春秋末期の B.C.5百年頃である.扶余の伝にある「厚葬」については,「ぜいたくな埋葬」1),「槨がある埋葬」5),「墳丘を造営すること」6)と歴史学者によって解釈が異なる.倭人の伝に「其の死には,棺有りて槨無し.土を封じて冢(ちょう,つか)を作る」とある.たしかに北部九州の吉野ヶ里墳丘墓(B.C.150~)は墳丘(27×46×高さ 4-5m)を築き,その中に甕棺を有する地上埋葬である.これは北図-3 中国・戦国時代の長城位置図 8)部九州と同じく温暖湿潤の長江下流域(江南)で構築された地上埋葬の土墩墓の墓制・構築技術を導入したと考える.また卑弥呼の死(A.D.248 頃)後「大いに冢を作る.径百歩なり.殉葬する者奴婢百余人」の記述および上記の吉野ケ里墳丘墓のサイズから,卑弥呼の墓はかなりの規模であったことが推察される.4.2 城壁扶余の伝に「扶余は長城の北にあり」,扶余,辰韓,倭の伝に「城柵」,弁韓の伝に「城郭」の記述がある.土を盛り上げて土塁を築き,これに木柵を設けたものを城柵,まとまった集落や都市を取り囲む盛土壁を城郭と呼んでいる.吉野ケ里遺跡では濠を掘った土を盛り上げて土塁を作り,木柵を設けている.まさにこれが城柵である.しかし城郭は 3 世紀の倭には見られない.図-4 環濠に囲まれる吉野ヶ里遺跡 9)中国では新石器時代(二里頭文化以前)から集落や都市を土の壁(盛土)で取り囲み,外敵を防ぐ防御施設としてきた.例えば最古の版築で構築された西山遺跡や同じく版築の城子崖遺跡など数限りなくある.著者はこれを城壁と名付け,中国では城墻 7)(墻:壁の意味),規模の小さなものを城垣と呼ぶ. 秋戦国時代になると,七雄の国々が国境に防御のため長城を,さらに北竟に異民族侵入防止のための長城を築いた.最も早く長城を築いたのは図-38)の斉(現在の山東省)であり,B.C.3 百年頃である.扶余伝の長城は燕(現在の河北省)の長城である.秦は中国統一後,この燕長城とその西の趙長城(山西省北部・河北省東部)を繋ぎ,さらにその西側に新たに長城を建設し,異民族侵攻に対峙した.これは黄土地帯であり,現在の万里の長城のかなり北に位置する.著者が城壁と呼ぶものを中村 9)は「囲壁」と呼んでいる.彼の研究を考察すると,中国の新石器時代の遺跡はほとんどすべて囲壁を有し,およそ北(遼寧省,内蒙古自治区)は石積み囲壁,長江流域は土築囲壁である.朝鮮半島南部の韓国には城壁はわずかに見られ,日本には城壁都市はないといえる.古代中国は異民族に包囲され,広大な平野の集落や都市を護るためには城壁が必要であった.長大な城壁を築く国力と技術も備えていた.一方北部を除く朝鮮半島と島国の倭国は異民族の侵攻の恐れは少なく,急峻な山岳と多くの河川を利用した自然の防御施設を有し,城壁の必要はなかったのではないかと考える.4.3 環濠東夷伝にはなぜか「環濠」の記述はない.環濠を掘るときに生じる土を盛り上げて城壁を構築すれば,城壁と環濠は併存すると考えたが,必ずしもそうではない.ほとんどの中国の集落遺跡は城壁を有するが,長江流域では環濠を併有する.四川省には環濠はないようである.韓国や日本では多くの遺跡に環濠が存在する.図-4 に吉野ケ里遺跡(弥生後期)の平面図を示す.環濠には一部自然河川を利用するものもある.環濠は防御施設としてだけでなく,地区の区画割りや洪水時の調整施設としても利用されている 10).4.4 その他の構造物倭の邪馬台国は「居処,宮室,楼観,城柵,厳かに設け,常に人有り兵を持ちて守衛す」とある.既述の城柵をふくめ,これらの構造物は北部九州の吉野ケ里遺跡に存在した.5. むすび魏志東夷伝に記述された地盤構造物を取り上げ,これらがその地域の風土に深く関係することを確認した.参考文献:1)藤堂明保・武田晃・影山照國:倭国伝―中国正史に描かれた日本,講談社学術文庫 2010. 2) 鬼塚克忠:東アジアにおける古代盛土の構築方法と風土の関連について,地盤遺跡シンポジウム,地盤工学会,43-50,2014. 3) 森 浩一:倭人伝を読みなおそう,ちくま新書 859,2010.4) 七田忠昭:吉野ケ里遺跡―復元された弥生大集落,日本の遺跡 2,同成社,2005.5) 渡邊義浩:魏志倭人伝の謎を解く―三国志から見る邪馬台国,中公新書,2012. 6) 森 浩一編:前方後円墳の世紀,日本の古代 5,中公文庫,1996. 7) 国家文物局文物保護司・江蘇省文物管理委員会弁公室・南京文物局:中国古城墻保護研究,文物出版社,2001. 8) 渡辺龍策:万里の長城~攻防戦史,秀英書房,1978. 9) 中村慎一:東アジアの囲壁・環濠集落,考古学資料 25,2001. 10) 森 浩一:米と金属の時代―縄文時代晩期~弥生時代,図説日本の古代 3,中央公論社,198942
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  • タイトル
  • 地盤関連 ISO の審議状況と地盤工学会におけるISO 活動-平成26年度-
  • 著者
  • 浅田素之・今村 聡
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 43〜44
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69618
  • 内容
  • 22第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月A - 01地盤関連 ISO の審議状況と地盤工学会における ISO 活動-平成 26 年度-国際規格ISO地盤工学地盤工学会 ISO 国内委員会委員長 今村 聡幹事長 浅田 素之1.ISO とはISO (International Organization for Standardization) とは,国際標準化機構と呼ばれる国際間の貿易が円滑に行われるために設立された国際組織であり,国際規格を統括している機関である.1947 年に設立された非政府組織で,中央事務局はスイスのジュネーブに置かれている.「ISO in figures」によれば,2015 年 2 月末の会員数は 163 ヶ国,ISO 規格の制定数は 19,500 件以上で,年々増加傾向にある.そのうち 3 割弱が Engineering Technologies に関する規格になっている .ISO の会員団体は,「当該国での標準化に関して最も代表的な」国家機関であり,各国あたり1団体のみしか登録できない.わが国では,経済産業省の審議会の一つであり,日本工業規格(JIS)の調査・審議を行っている日本工業標準調査会(JISC,事務局:経産省産業技術環境局基準認証政策課)が 1952 年 4 月 15 日の閣議了解を経て ISO に加入している.JISC には分野別に専門技術委員会が設置されているが,すべての規格案件を詳細にわたって審議するのは不可能であることから,ISO に設置されている TC(技術委員会,Technical Committee)に密接に関連する国内の学協会に実質的な審議および対応を委託しており,担当団体は国内審議団体として経済産業省に登録されている.したがって,国内審議団体における決定事項は直接的に日本の意見となる.土木建設分野としては、現在日本土木工業協会を始めとする約 10 学協会がその審議団体となっている.ISO や ISO 規格が,わが国において特に議論されるようになってきたのは,1995 年に我が国が WTO(世界貿易機構,World Trade Organization)の「TBT 協定」(貿易の技術的障害に関する協定,Agreement of Technical Barriers to Trade)および翌年の「政府調達に関する協定」に批准してからである.TBT 協定では,「加盟国が強制規格又は任意規格を策定するにあたり,国際規格を基礎とすること」が義務づけられている.さらに,政府調達に関する協定では,「政府機関(中央政府,都道府県,政令指定都市および政府系機関等)における技術仕様(例えば,道路橋示方書や鉄道構造物等設計標準など)については,国内規格より国際規格を優先使用すること」が義務づけられている.すなわち,政府機関の発注書や仕様書に指定された規格・基準と該当する ISO 規格との間に整合性がなければ,国際入札の際に,WTO/TBT 協定違反として提訴される可能性がある.このような背景から,1995 年以降,約 8,000 にのぼる JIS(日本工業規格)について,ISO 規格との整合化が図られている.2.地盤工学における ISO地盤工学は,土や岩および流体からなる地盤の工学的諸問題を扱う学問・技術分野であり,土質・基礎工学に加えて,岩盤工学,環境地盤工学,海洋地盤工学,地盤防災工学など地盤に関連する広範囲の学問と技術を対象にしている.したがって,地盤分野に関連する ISO は,土木工学,岩盤工学,地質学,農業土木工学,資源工学,建築学,環境衛生工学,自然災害科学など広範囲の分野にまたがる学際的に取り扱われる国際標準となる.言うまでもなく,地盤工学会は,土木学会,建築学会,農業土木学会,岩の力学連合会,国際ジオシンセティックス学会,地下水学会,廃棄物学会,全国地質業連合会,土壌環境センターなどの学協会,あるいは国・地方自治体の関連機関などに所属している会員から構成されており,広範囲の分野にまたがる学際的な団体である.したがって,地盤工学会が地盤分野の ISO に関する国内審議団体となっていることは,ISO 規格案を審議する際に必要となる国内的に横断的な幅広い意見聴取および意見調整が可能となり,地盤関連 ISO 国際会議の出席者は,日本の意見として公式に提案することが可能となっている地盤工学に関連する ISO/TC としては,TC182(地盤工学,Geotechnics),TC190(地盤環境,Soil quality),TC221(ジオシンセティックス,Geosynthetics)の3つがあり,地盤工学会はこれらの国内審議団体として登録されている.なお,地盤工学会の ISO への参加地位は,新作業項目への投票及び国際規格の照会原案や最終国際規格案に対する投票の義務を負って,業務に積極的に参加し,また可能な限り,会議に参加する義務を有する「P メンバー」として登録されている.3.地盤工学会における ISO 活動の現状地盤工学会 ISO 国内委員会の構成メンバーを表-1に示す.ISO 国内委員会の作業と役割は,国際対応と国内対応に分かれる.国際対応としては,1)ISO・CEN 規格案の検討・審議の取りまとめ,2)コメント提出に対する国内意見の集約,3)ISO・CEN 会議参加者(代表者)の調整および支援,4)提案される国際規格案や日本提案の国際規格策定に関する戦略の企画・立案・実行などが挙げられる.また,国内対応としては,1)日本工業標準調査会や規格協会との協調および配布Action Report of JGS ISO CommitteeIMAMURA, Satoshi & ASADA, MotoyukiJGS ISO Committee43 される各種調査票に対する対応,2)関連学協会,関連機関との調整・情報交換,3)地盤工学会における ISO 活動の基本戦略の立案と基準部会への提案,4)地盤工学関連 JIS および JGS の英訳に対する優先付け,5)会員への迅速な情報提供(地盤工学会誌「ISO だより」の執筆など),6)活動資金となる受託事業の要請などが挙げられる.平成 26 年度の国際会議派遣状況を表-2に示す.参加会議数は 13 回で,のべ 23 名の委員を派遣した.我が国がコンビナー(議長)となっている TC190/SC3(化学的手法と土の特性)/WG10 (予備試験法)では,日本提案の理解と協力を得るために各国へのネゴシエーションとして,重点的に海外派遣を行っている.表-3は,平成 26 年に各 TC で審議された規格案数である.なお,TC182 の規格案は,CEN リードのウィーン協定適用の提案が承認され,すべての案件がCEN/TC341 で審議されていることを付記する.表-1 ISO 国内専門委員会の名簿(50 音順)委員長:今村 聡(大成建設)委 員:粟津誠一(国土交通省),大谷 順(熊本大学),菊池喜昭(東京理科大),岸田 潔(京都大学),木幡行宏(室蘭工大),坂井宏行(鉄道総合技術研究所),豊田浩史(長岡技術科学大),原 隆史(岐阜大学),松井謙二(土木学会),松浦一樹(ダイヤコンサルタント),椋木俊文(熊本大),横山幸也(応用地質)幹 事:浅田素之(清水建設)表-2平成 26 年度の国際会議派遣状況会議名派遣国派遣数CEN/TC 341/WG 6 会議(TC182 関連)スウェーデン・スペイン2TC221 会議米国・英国2TC 190/SC 3 連絡会議チェコ4TC190 年次総会ドイツ7TC190/SC3/WG10 関連会議ポーランド1オランダ・フランス1韓国2英国3セルビア1表-3 平成 26 年度の検討規格案件数(2014.1~2014.12)( )は昨年の数字規格および規格TC182TC190TC221案の審議段階NWI7 (5)9 (10)1 (0)WD4 (0)3 (0)0 (0)CD1 (0)12 (4)0 (0)DIS6 (3)16 (13)2 (4)DTS0 (0)1 (0)6 (0)FDIS2 (2)2 (7)2 (0)SR0 (1)0 (11)9 (7)2 (2)6 (3)6 (1)その他22 (13)49 (48)17 (12)合計NWIP:提案段階,WD:作業原案,CD:委員会原案,DIS:照会原案,FDIS:最終規格案,DTR:技術報告書原案,DTS:技術仕様書原案,SR:IS の見直し4.まとめ“国際化”ということばが言われてかなりの年月が経つが,ISO の活動は正に技術者に不可欠な”国際化”と言える.今後建設産業を輸出産業とし,わが国の技術力を,アジアをはじめとする全世界へ提案していくことは,関連学協会において不可欠であると考える.わが国の建設技術の品質は世界でもトップレベルにあると確信しており,そのような技術を世界に提供することこそ,本当の意味でのわが国の国際貢献ではないだろうか.そのためには技術力に加え,国際的なコミュニケーション能力も不可欠となる.今後そのような人材を産官学が連携して育成することはたいへん重要である.また,ISO は技術者が主役である.今後多くの方にご参画いただくと共に,協働いただけることをお願いしたい.44
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  • タイトル
  • 室内土質試験方法の国際規格審議状況-2014年度-
  • 著者
  • 豊田浩史
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 45〜46
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69619
  • 内容
  • 23A - 08第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月室内土質試験方法の国際規格審議状況-2014 年度-ISO 規格室内試験 土質試験長岡技術科学大学 国際会員 ○豊田 浩史1. はじめにCEN/TC341/WG6(Laboratory tests on soils:室内土質試験)の会議が平成 21 年度からはじまり,平成 26 年度は,第11 回会議が平成 26 年 5 月 21, 22,23 日にリンシェーピング(スウェーデン)にある SGI(スウェーデン地盤工学研究所)において,第 12 回会議が平成 26 年 10 月 27, 28, 29 日にマドリッド(スペイン)にある Cedex(公共工事研究試験センター)において開催された。会議タイトルからわかるように,ここでは CEN(欧州標準化委員会)が国際規格の策定作業を行うことになっている。これは,本件が ISO/TC182/SC1 での投票で CEN リードのウィーン協定適用となったためである。メンバーは,議長国であるイギリス,ベルギー,フィンランド,フランス,ドイツ,ギリシャ,オランダ,ノルウェー,ポルトガル,スイス,スウェーデン,スペインの欧州各国と,日本である.議長国のイギリスからはオブザーバーも含め計 4 名のメンバーが登録されている。USA をはじめとする環太平洋諸国が参加していないので,日本はISO からの正式オブザーバーという立場から積極的に意見を発して,欧州のみの考え方に偏った国際規格にならないよう努力が必要である。ここで議論する規格は,表-1 に示す 12 の ISO/TS(Technical specification)である。表には,対応する JIS 規格および JGS 基準も併せて示してある。この ISO/TS は,2004 年に策定されており,正式な ISO 規格にするための作業を行っている。平成 26 年度は,投票の結果 17892-1 と 17892-2 が ISO 規格となった。その他,17892-6 までの改訂作業が終わり,ISO 規格とするための事務手続きを行っている。2. 会議の進め方現在の ISO/TS 17892-1~12(表-1 参照)に対して,所定の様式による意見の作成が求められている。作業してみるとわかるが,我が国の規格・基準にすべて一致させることは不可能であり,我が国にとって影響が大きい,または,我が国の方法および考え方のほうが優れていると考えられることを中心に,意見書を作成する方針としている。また,どちらが優れているかは不明であっても,できるだけ我が国の記述例を紹介できるように努めている。我が国の規格・基準を紹介するに当たって,口頭で説明するだけでなく,英語版の規格・基準を配布できれば大変有効である。しかしながら,JIS および JGS の英語版のほとんどは,かなり古い時期に作られてから全く改正作業が行われていなかった。そこで基準部会においては,英語版についても最新の規格・基準と対応するよう,整備する作業に取り組んでいるところである。写真-1 に会議の様子を示す。3. 議論の内容各国の基準整備の状況によると,独自の基準を持っていない国も多いようである。日本はここで取り扱うほとんどのISO/TS について独自の基準を持っていることと,現在の案について 8 割方賛成できるものの,強く変更を望むところも数ヶ所あることを説明している。今年度は,投票に出すために確認を行った,段階載荷による圧密試験,一軸圧縮試験,非圧密非排水三軸試験,圧密三軸圧縮試験についての,代表的検討結果を紹介する。(1) 段階載荷による圧密試験・圧密装置の図は,圧密リングが底板に固定されている固定リングと固定されていない floating リングの両方を掲載する(JIS 規格では,固定リングである)。・加圧板と試料との接触をよくするため,Seating pressure として,試料の上に 3kPa を超えない範囲で載荷する。・初期圧密圧の値をどのように決めるか議論された。初期圧密圧はその時々によって違うと考えられるので,土の種類によって初期圧密圧を定めた表は削除することとした。ただし,e-logp 曲線をきれいに描けるように,載荷荷重は 2倍ずつ上げていくこととした。・単位として,サイズは mm,質量は g,密度は Mg/m3 を使うこととした。ISO では,cm は極力使わないことになっているようである。・e-logp 曲線であるが,横軸は対数軸とせず,普通軸でもよいとした(フィンランドは通常,普通軸のようである)。・試験中の温度変化は±3˚C に決めたが,実施温度については規定していない。そこで,圧密係数 cv に温度補正の式を掲載し,20˚C の時の値を報告することとした。(2) 一軸圧縮試験・供試体面積は,1000mm2 以上となっていたが,直径 3.5cm の供試体(面積は,1000mm2 より小さくなる)もよく使うため,直径 3.5cm も認めることとした。・試験可能な試料の最大粒径は,供試体直径の 1/6 とする(日本の規格は粒度がよい場合は,1/5 まで認めている)。Council status for ISO Standardization of Laboratory tests onTOYOTA Hirofumi (Nagaoka University of Technology)soils -2014-45 ・破壊の定義は,軸応力のピークとし,ピークが発生しない場合は,15%の軸ひずみで定義することとした。イギリスとドイツは軸ひずみ 20%,ノルウェーは,UU 試験の場合は,軸ひずみ 10%で定義しているとのことである。・一軸圧縮強さ qu の他に,非排水せん断強さ cu を圧縮強さの半分で定義した。・三軸圧縮試験(UU 試験も含む)では,せん断(shear)という用語を用いるが,一軸圧縮試験では,せん断は用いずに,圧縮(compression)のみ使うとした。・軸圧縮は,軸ひずみ速度 1~2%/min で行うとした(日本は,1%/min)。ノルウェーは 4%/min とのことであったが,BS に 2%/min を超えないという表記があったため,この値となった。・軸応力にピークが出る場合の軸圧縮の終了は,ピーク値が出てからさらに 5%の軸ひずみまで継続するか,軸応力が20%減少したときとした。・報告する値の桁数の確認を行った。日本のこの種の規格・基準ではあまり考慮していない事項である。(3) 非圧密非排水三軸試験・三軸供試体に作用する応力は,鉛直応力v,水平応力h と表記することとした。JGS 基準では,軸方向応力a,側方方向応力r が使われている。ちなみに,有効応力を表すダッシュは,'v のように,直接にかかるようにして,鉛直有効応力と読む。・鉛直応力v,水平応力h は,供試体高さ方向の中心での値とした。・高さは直径の 1.8~2.5 倍とした。これは各国の規定がすべて含まれるように大きめに設定した。・メンブレン補正値が,予想強度の 1 割以上になる場合にはメンブレン補正を行う。鉛直応力のみに補正を行い,水平方向の補正は行わないこととした。BS は,水平方向のみ行っているとのことであった。・ノルウェーの提案により,セル圧は原位置の上載圧より大きな値とするという文言を追加した。・せん断開始前までに,軸変位が発生した場合は,軸ひずみの f(定数)倍の体積ひずみが発生したものとして断面積補正を行う。f は基本的に技術者が決めてよいとして,等方供試体を仮定する場合は,f=3 となる。・軸圧縮の終了は,一軸圧縮試験と記述を合わせることとした。メンブレンの有無で違いをつけるべきとの意見もあった。(4) 圧密三軸圧縮試験・Total vertical stress ではなく,Vertical total stress と表記する。・飽和の方法(バックプレッシャー)で議論が白熱した。飽和度の高い試料に対しては,バックプレッシャーを載荷するのではなく,非排水状態でセル圧を上昇させていく方法も記述した(日本をはじめ,スペインやポルトガルでもあまりなじみがないとのことであった)。この方法のメリットは,非排水で行われるため飽和作業中に体積変化を起こさないことである。・バックプレッシャーは 300 kPa 以上を載荷することとした。・B 値のチェックは,圧密前でも圧密後でもよいとしたが,せん断直前に飽和されていることが保証されていないといけない。・B 値チェックのためにセル圧を上昇させた後,10 分以内に B 値を確認することとした。以上が,今年度に行われた主な議論である。欠席の国の意見は,主張がよくわからないということで,軽くあしらわれるきらいがある。このような会議にはできるだけ出席して,日本にとって齟齬のない規格となるよう主張していくことの重要性を実感している。長年議論してきているが,今年度ようやく,2 つの ISO 規格を誕生させることができて,議長の喜びも一入であった。表-1 CEN/TC341/WG6 で取り扱う規格写真-1 議論の様子46
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  • タイトル
  • ISO/TC190(地盤環境)の審議状況-2014年度-
  • 著者
  • 川端淳一・古川靖英・浅田素之
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 47〜48
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69620
  • 内容
  • 24A - 08第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月ISO/TC190(地盤環境)の審議状況-2014 年度-鹿島建設技術研究所竹中工務店清水建設技術研究所技術研究所正会員○川端淳一正会員古川靖英正会員浅田素之1. はじめにISO/TC190 委員会(地盤環境)は、地盤環境分野における分類、用語の定義、土のサンプリングなどに関する標準化を進めている。地盤工学会は、ISO/TC182 委員会(地盤調査と試験法)、ISO/TC221 委員会(ジオシンセティクス)と並行して、TC190 の国内審議委員会であり、6つの小委員会 Sub Committee(表 1)を取りまとめる各主査を中心に、検討を進めている。本報では 2014 度の審議状況を中心に報告する。技術委員会TC1Technical CommitteeScrew thread (ネジ)・TC190Soil quality (地盤環境)・TC293Feed machinery (給鉱機)TC190 Sub Committee小委員会SC1Terminology 評価基準、用語、コード化SC2Sampling 地盤環境調査用のサンプリングSC3Chemical methods 化学的方法SC4Biological methods 生物学的方法SC5Physical methods 物理学的方法SC7Soil and site assessment 土壌とサイトの評価図1ISO/190 委員会および小委員会の概要国内審議委員会は、図 2 に示すように、多岐にわたる専門・バックグランドを持つ 45 名のエキスパートから構成されており、各小委員会はメール審議やオンラインミーティング、Face to Face のミーティングを元に審議を進めている。文書の審議の進め方(チェック期間や投票、フロー等)は、ISO で決められた手順で進める必要があるが、文書内容の議論の進め方は多様であり、小委員会やその下の作業部会 WorkingGroup によって、異なる。例えば、日本が積極的に議論を進めている SC3WG10 では1年間に数回の Face to Face の打合せを開催しているが、WG によっては年一回の総会でのみ議論をするものもある。また、SC7WG12 では積極的にオンラインミーティングを開催しており、月1回~2回のオンラインミーティングで議論が進められている。地理的に現地での打合せ参加が難しい日本としては、今後、オンラインでの会議参加の機会が増えていくものと思われる。2%7%2014 年の総会は 10 月 20 日から 24 日にかけて,ドイツのベル大学4%4%2.ベルリン総会概要27%リンで開催された.開催場所はドイツ規格協会(DIN)であり、参加国はこれまで同様,仏,英,独,デンマーク,オランダ,フ計量証明機関ィンランド,スウェーデン,スイス,ノルウェー,チェコのヨー韓国,オーストラリアが参加し,日本からは13 名の委員が参加メーカー国立研究所13%ロッパ勢中心であり、総勢 90 名が参加した。非 EU 圏からは日本,ゼネコンコンサルタント20%22%不動産その他した。分科会(SC)としては,SC1,2,3,4,7 の 5 分科会の会議が開催された.以下に、各 SC の主な議論の内容を示す。なお、図 2 国内審議委員会のメンバ―構成(n=45)各 SC とは別に気候変動に関わる会合やバリデーションに関わるワークショップが開催されている。・SC1:ISO 以外の研究機関とのリエゾンを決定し、定義付けに関する業務の簡易化を目指す.・SC2:主にアンブレラスタンダード(アンブレラ構造)についての議論を進めているが、他の SC(SC4 や SC7)と重複する箇所が多々あり、個別の調整が必要となっている 1)。・SC3:シアンや石油系炭化水素の分析についての議論が進められている.2015 年に SR を受ける文書が多数あり、各国からエキスパートを募集している。・SC4:今年は 3 つの Standard を配布、4 つが FDIS ステージ(最終投票中)、4 つの NWIP を検討している.リアルタイム PCR などの案件について、各国がリングテストを実施し、いずれも良好な結果を得ている.2014 report on JGS/ISO/TC190 committee;Junichi Kawabata (Institute of Technology, Kajima Corporation)Yasuhide Furukawa (Research and Development Institute, Takenaka Corporation)Motoyuki Asada (Institute of Technology, Shimizu Corporation)47 ・SC5:SC としての活動はないが、ISO11461,ISO11274,ISO11275,ISO11276,ISO16586 など、過去の規格について、SR が多数あり、レビューや統合化などの検討が必要である。・SC7:TRIAD アプローチやサステイナブルレメディエーション、コンセプトモデル等、各国の政策と関係の深い規格について議論が進められている 2)。3.日本からの提案日本がベルリン総会で行った主な提案・対応内容を以下に列記する。・SC2 のアンブレラスタンダードにおいて、日本の環境省が推奨している土壌ガス調査の手法が認められるように、深度の対象区間を広げてもらえるよう提言している。・SC3WG10 の地盤環境のスクリーニングや Climate Change について、日本から積極的な規格の提案・提言を行っている。・SC7WG6 での活動として、ISO TS21268-3 カラム試験について日本がプロジェクトリーダーとなり、積極的に ISO 化を進めている。4.日本としての課題と今後の展開これまで日本が活発に活動した事例としては、環境省の支援を受け、自ら多くの試験を実施しバッチ溶出試験の ISOに環境省告示 46 号の手法を反映させた事例や経済産業省の支援を受け活動している SC3WG10 等があるが、それ以外はSC4WG4 のリアルタイム PCR に関わる案件など、各国の分析手法や分析結果を示すためのリングテストに一部しか参加できていなかった。しかしながら前記したように、今後カラム溶出試験の ISO 化について日本がプロジェクトリーダとなってリングテストのオーガナイズ等も含め、主導的にすすめることになっており、今後、PCB の分析のように、産業技術総合研究所や計量証明機関などに無償で計測をしてもらっていたものも含めて、日本からもますます積極的に参加していくことが見込まれている。特に、リングテストの分析結果は施設の名称と併せて、ISO に報告されるため、対象となる研究機関とのさらなる連携が、今後ますます重要となる。図 2 に示す通り、現在の国内審議委員会のエキスパートの多くはアカデミックな分野やゼネコン・計測機器メーカーが中心であり、SC4 のような生物学的な手法や SC7 の一部に含まれる政策(アプローチ手法)の審議については、計量証明機関やコンサルタントの更なる参加が望まれる。国内の JIS 規格は、「貿易の技術的障害に関する協定(WTO/TBT 協定)」に基づき、基本的に ISO 国際規格に整合させる、あるいはその努力をする必要がある。この一方、様々な企業が国外へ展開していく中で、日本国内で適用している規格をそのまま適用できることには大きなメリットがある。そこで、国内で使用されている JIS 規格や日本として必要な規格を、逆に ISO 規格に採用させる、あるいは部分的に整合させる努力も重要となってくる。今後も、日本発の ISO規格の提案を行うことも含め,ISO/TC190 国内委員会(地盤工学会)を中心に新たなエキスパートの協力を得て検討・対応していくことが重要であろう。5.謝辞(社)地盤工学会 TC190 国内専門委員会および(社)土壌環境センターTC190 部会の委員の皆様および(社)土木学会ISO 検討委員会,(社)地盤工学会 ISO 検討委員会、地盤工学会事務局の皆様には,これまでの積極的な参加に感謝すると同時に、引き続きご支援をいただきたく,お願い申し上げる.また、経済産業省、土木学会、日本建設業連合会にはISO の意義をご理解いただき、支援いただいているおかげで、本活動が成り立っている。ここに記して、関係各位に謝意を表します。6.参考文献1)平田桂, 王寧, 松村光夫, 石川洋二, 浅田素之, ISO/TC190 部会, ISO/TC190 における土壌中化学物質の分析法の制定現状について, 第 20 回地下水土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集,S4-18(2014)2)肴倉宏史, 古川靖英, 保高徹生, 中島誠, 川端淳一, ISO/TC190 部会,サイト評価に関する地盤環境の ISO について, 第 20 回地下水土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集,S2-12(2014)48
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  • タイトル
  • ISO/TC221国内専門委員会活動報告-ジオシンセティックス関連規格に関する現状と今後の展開-
  • 著者
  • 椋木俊文・宮田喜壽
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 49〜50
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69621
  • 内容
  • 25M - 09第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月ISO/TC221 国内専門委員会活動報告-ジオシンセティックス関連規格に関する現状と今後の展開-国際規格ジオシンセティックス地盤工学会ISO / TC221 国内専門委員会委員長幹 事宮田椋木喜壽俊文ジオシンセティックス技術に関する国際規格の現状と TC221 の現状2004 年におけるジオテキスタイルおよびその関連製品の年間貿易数値は,北米 50 億 m2(輸出 10%),欧州 40 億m2(輸出 50%),アジア 15 億 m2(輸入 30%),その他 20 億 m2(輸入 40%)となっており,全体で既に 100 億 m2 を超えている。すわなち,欧州では生産量の半分が輸出という状況にあり,アジアにおける貿易数値も急速に伸びている。また GCL を含むジオメンブレン製品については、輸出入の割合は把握できていないが、北米 6 千万 m2、欧州 4 千万m2(輸出 50%),アジア 1 千万 m2(輸入 30%),その他 1 千5百万 m2(輸入 40%)となっている。TC221 はジオシンセティック製品の標準化を制定する技術委員会であり,6つのワーキンググループがある.活動は,毎年 1 回の全体会議開催の他,個別の WG が開催されている.JGS では表1に示す委員会を設置し,これに対応している.TC221 で規格済みの試験法,現在改訂審議中の規格をそれぞれ表2,3に、また 2014 年に新規に設立した WG6 の審議案を表4に示す.1表1ISO/TC221 国内専門委員会の名簿(50 音順)委員長:宮田喜壽(防大),委 員:赤井智幸(大阪府産技研),大谷 順(熊大),加納 光(坂井化学工業),熊谷浩二(八戸工大),木幡行宏(室蘭工大),志々目正高(ボルクレイ・ジャパン),篠田昌弘(鉄道総研),島岡隆行(九大),中村 努(苫小牧工専),長束 勇(島根大),鍋島康之(明石高専),平井貴雄(三井化学産資),桝尾孝之(太陽工業),明嵐政司(土研),横田善弘(前田工繊),幹事:椋木俊文(熊大)表2ISO TC/221関連の規格(2015年3月現在, *は2013-2014に改訂)規格番号対象*規格名【和訳】ISO 9862:2005GSSampling and preparation of test specimens【試験供試体のサンプリングと作製】ISO 9864:2005GT&RPTest method for the determination of mass per unit area of geotextiles and geotextile-related products【単位面積当たりの質量の測定】ISO 10320:2012*GT&RPIdentification on site【現場における確認事項】ISO 10321:1992GTXTensile test for joints/seams by wide-width method【継ぎ目/縫い目に対する広幅引張り試験】ISO 10722: 2007GT&RPIndex test procedure for the evaluation of mechanical damage under repeated loading -- Damage caused bygranular material【繰り返し載荷条件下での力学的損傷の評価法に関するインデックス試験:粒状材料による損傷】ISO 10769: 2011*GCBISO 10772: 2012GTXISO 10773: 2011*GCBISO 10776: 2012GT&RPISO 11058:2010GT&RPISO 12236:2006GSStatic puncture test (CBR test)【 静的貫入試験(CBR法)】ISO 12956:2010GT&RPISO 12957-1:2005GSDetermination of the characteristic opening size【見掛けの開口径の測定】Determination of friction characteristics Part 1: Direct shear test【摩擦特性の測定第1部: 直接せん断試験】ISO 12957-2:2005*GSDetermination of friction characteristics Part 2: Inclined plane test【摩擦特性の測定第2部: 傾斜試験】ISO 12958:2010GT&RPDetermination of water flow capacity in their plane【面内方向通水性能の測定】ISO 13426-1:2003GT&RPStrength of internal structural junctions Part1: Geocells【剥離強度 第1部: ジオセル】ISO 13426-2:2005GT&RPStrength of internal structural junctions Part 2: Geocomposites【剥離強度 第2部: ジオコンポジット】ISO 13428:2005GSDetermination of the protection efficiency of a geosynthetic against impact damage【衝撃に対するジオシンセティックスの防護能力の測定】ISO 13431:1999GT&RPDetermination of tensile creep and creep rupture behaviour【引張りクリープ及びクリープ破壊特性の測定】ISO 13433:2006GT&RPDynamic perforation test (cone drop test)【動的貫入試験(コーン落下試験)】ISO/TS 13434:2008*GSGuidelines for the assessment of durability【耐久性評価のためのガイドライン】Determination of water absorption of bentonite【ベントナイトの含水量測定法】Test method for the determination of the filtration behaviour of geotextiles under turbulent water flowconditions【乱流条件下における不織布のフィルター挙動評価のための試験法】Determination of permeability to gases【ガス透過性の評価】Determination of water permeability characteristics normal to the plane under load【拘束圧条件での垂直透水性能の評価】Determination of water permeability characteristics normal to the plane, without load【無載荷での垂直方向透水性能の測定】Action Report of JGS Technical Committee for ISO/TC221MIYATA, Yoshihisa & MUKUNOKI, ToshifumiJGS Technical Committee for ISO/TC22149 ISO 13437:1998GT&RPMethod for installing and extracting samples in soil, and testing specimens in laboratory【土中,室内試験の供試体中への供試体の敷設と取出し方法】ISO 13438:2004*GT&RPScreening test method for determining the resistance to oxidation【酸化抵抗性に対する予備試験方法】Procedure for simulating damage under interlocking-concrete-block pavement by the roller compactormethod【ローラコンパクタ法によるインターロッキングブロック舗装下の損傷試験】Guidelines for the determination of the long-term strength of geosynthetics for soil reinforcement【地盤補ISO/TR 20432:2007GS強材として用いられるジオシンセティックスの長期強度の評価に関するガイドライン】Determination of compression behaviour -- Part 1: Compressive creep properties【圧縮挙動の評価:第1ISO 25619-1:2008GS編 圧縮クリープ挙動の評価】(対象:GS=Geossynthetics, GT&RP=Geosynthetics and related products, GTX=geotextiles, GCB: Geosynthetic clay barriers)ISO/TS 19708:2007GS規格番号ISO/DIS 9863-1ISO/FDIS 10318-1ISO/FDIS 10318-2ISO/FDIS 10319ISO/FDIS 13427ISO/NP TS 13434ISO/AWI 13438ISO/DIS 18325ISO 12956:2010ISO/DIS 25619-2対象*GSGSGSGSGSGSGT&RPGSGT&RPGS規格名Determination of thickness at specified pressures 【所定圧下の厚さの測定第1部: 単層】Part 1: Terms and definitions【用語と定義】Part 2: Symbols and Pictograms【記号と凡例】Wide-width tensile test【広幅引張り試験】Abrasion damage simulation (sliding block test) 【磨耗シミュレーション(ブロックすべり試験)】Guidelines for the assessment of durability 【耐久性評価のためのガイドライン】Screening test method for determining the resistance to oxidation【酸化抵抗性に対する予備試験方法】Test method for the determination of water discharge capacity for prefabricated vertical drainsDetermination of the characteristic opening size【見掛けの開口径の測定】Determination of compression behaviour -- Part 2: Determination of short-term compression behaviour【圧縮挙動の評価:第2編 短期圧縮挙動の評価】規格番号ISO/WD TR18228-118228-218228-318228-418228-518228-618228-718228-818228-918228-10対象*規格名Design of geosynthetics for construction applications 【建設現場におけるジオシンセティックスの設計】Part 1: Design using geosynthetics scope, definitions and notations【定義と表記法】Part 2: Design using geosynthetics for separation【分離】Part 3: Design using geosynthetics for filtration【ろ過】Part 4: Design using geosynthetics for drainage【排水】Part 5: Design using geosynthetics for stabilization【安定化】Part 6: Design using geosynthetics for protection【保護】Part 7: Design using geosynthetics for reinforcement【補強】Part 8: Design using geosynthetics for surface erosion control【表面侵食】Part 9: Design using geosynthetics as a barrier【遮水】Part 10: Design using geosynthetics for stress relief in asphalt overlays【アスファルト舗装における応力低減】表3表4GS現在改訂審議中の主な規格現在WG6で審議中の主な規格2現在の審議状況2014 年 5 月にロンドン(英国)にて、WG4(水理学特性)と WG6(設計)の会議が開催された。WG4 会議では、ジオシンセティックスのガス透過性と面内方向通水性能に関して議論された.ガス透過性評価については、廃棄物処分場や建築基礎,各種エネルギー開発ではガスの地盤内封じ込めが課題になる場合が多く,そのような場面でジオシンセティックスが活用されている.現行の関連規格として,ISO 15105(プラスチック-フィルム及びシート-気体透過速度の測定-第 1 部:差圧法,第 2 部:等圧法)や ASTM D1434(プラスティックフィルム・シートのガス透過性)があるが,ジオシンセティックスに適用可能な規格は存在しないのが現状である.もう1つの新作業項目はジオシンセティックスの面内方向通水性能に関する案件である.現在これに関する規格として ISO 12958(ジオテキスタイル及びその関連製品の面内方向通水性能試験)があり,現場条件を考慮した設計値を得るための試験法を規格化する必要性が従来各方面で指摘されていた.以上の背景のもと英国より,ジオシンセティックスを土で挟み込んだ条件で通水性能試験を行う試験法を規格化する件が提案された.議論の結果,英国が中心になって最初の格案が策定されることになった.WG6(設計法)では,分離,ろ過,排水,安定化,保護,補強,表面浸食保護,封じ込め,アスファルト舗装の応力低減を対象に,現行設計法の基本的考えを総括し,試験の正しい活用法をまとめた技術報告書(TR)の出版を目指した活動が行われている.今回の会議では,上記 2-10 の 9 項目についての最初の案が提示され,その内容調整が行われた.策定しようという国際規格の内容が欧州規格で規定されている場合,ウィーン協定に基づき,欧州標準化委員会(CEN)リードとなる.7.補強については,ユーロコードで既に規定されているで,CEN リードとなった.ユーロコードの影響力が強くなっていることを改めて感じた.あと,いくつかの章で参照するジオシンセティックスのフィルター基準については,Giroud のチャート(Geotextile and Geomembranes, 11(1992), 355-370)が基になりそうである.3我が国と諸外国との連携状況WG3(力学試験)を除く全 WG 会議と総会が本年 3 月に米国・フィラデルフィアで開催予定である.基本的な試験の規格化が終了した TC221 では,それらを活用するガイドラインや持続的社会構築技術のめの試験法整備へとステージを移しつつある.今後もこの分野の動向に注視する必要がある.<参考文献> ISO/TC221(ジオシンセティックス)2014 WG4&6 会議,地盤工学会誌,62-10,pp.36,2014.50
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  • タイトル
  • 樋門の耐震対策詳細設計におけるCIMの試行
  • 著者
  • 水長 徹・高尾 浩・飯田 誠
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 51〜52
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69622
  • 内容
  • 26H - 00第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月樋門の耐震対策詳細設計における CIM の試行耐震設計川崎地質株式会社高尾 浩川崎地質株式会社飯田 誠川崎地質株式会社正会員○水長 徹1.はじめにCIM(Construction Information Modeling)は建設事業全体での生産性の向上を図ることを目的とするものであり,公共事業の計画から調査・設計,施工,維持管理,更新に至る一連の過程において品質の確保,齟齬の排除,効果・効率向上を図り,公共事業の品質確保や環境性能の向上,トータルコストの縮減を目指している。土木分野での CIM の導入に向けて国土交通省では平成 25 年度に道路・河川における設計業務として全国で 19 件のモデル事業が試行された。その中で,平成 25 年度 CIM 試行業務として実施した樋門の耐震対策詳細設計業務について報告する。2.検討内容今回行った設計段階における CIM の適用によって期待される効果や取り組んだ内容等について整理する。【現況地形・支障物件等の把握】検討にあたって,まずベースとなる三次元モデル(図-1)の作成を行った。対象地は,背後に国道が隣接しており,下流側近傍には鉄道橋が迫るなど施工上支障となる要素が多く,また関係機関との協議も多岐に渡ることから現地状況を正確に把握する必要があった。また写真では確認できない定量的な情報(鉄道や堤防との三次元的な離隔)を計測することが可能な情報を入手する必要があった。そこでまず,既往データの活用として地形図や LP データの組合せに航空写真をマッピングして三次元地形情報の作成を行った。しかし,作成した情報は広域に渡るモデル化が作成できたものの,情報量が粗く精度面においても設計作業に使用できるレベルには至らなかった。そこで,三次元レーザースキャンを適用し地形情報の三次元化を行うこととした。三次元レーザースキャンは,地形測量のデータに色情報を重ね合わせることにより,地形情報だけでなく支障物件や架空線,路面のペ国道イントや立入出来ない隣接家屋の離隔の取得が可能となった。また今回の設計では建屋内の機器はすべて流用する計画であったため,建屋内にも三次元レーザースキャンを適用することにより機器の詳鉄道橋細を把握することが可能となり,建屋内の配置計画など設計におい検討対象施設て有効活用することができた。図-1 三次元モデル【構造解析を三次元化】レベル2地震動に対して,地震時の実際の挙動や応力分布を明らかにできる三次元構造モデル(図-2)を組み立て,効率の良い形状や構造を立案した。新設門柱は壁構造で計画していたため,壁を厚さ方向に積層化することによりモデル化を行う壁構造に最適な平板プレートモデルを適用した。当モデルは,断面力やひずみの分布状況,ひび割れの発生過程や規模を予測することができるため,補強対策の効率化を図ることが入力方向入力方向でき,地盤をバネでモデル化することにより安定解析(滑動,転倒,支持力)との同時解析が可能となる。平面要素断面力図-2 三次元解析モデルひび割れひずみA trial of Construction Information Modeling at aseismic designing method.Hiroshi.TAKAO,Makoto.IIDA,Toru.MIZUNAGA(Kawasaki Geological Eegineering Co.,Ltd.)51 【三次元モデルを活用した配置検討】三次元モデル化の利点の一つに,未だ存在しない計画構造物を三次元モデル化することにより,完成後のイメージを明確化することが可能になる。構造物の配置検討を行う上で,管理導線や階段,手摺りや導線や各施設の取り合いドア等の取り合い,堤防との接合形状,量水標CCTV カメラ配置検討における視野の確認や操作室からの見え方を配慮した量水標の配置計画など,図-3 に示したとおり三次元構造を有効に活用することで,打合せ協議においてもその場でデータを調整しながら最適案の絞り込みが可能となる。また図-4 に示したとおり配筋図を三次元化することで,鉄筋の効率的な道路から操作室・堤外への導線の確認操作室から量水標の見え方図-3 導線・視野等の確認配置計画,鉄筋組み立てやコンクリート打設に支障のない配置の確認,鉄筋同士の干渉などを事前に確認することが可能となる。設計時に作成したモデルは施工時においても更新され,その情報を残すことにより将来のメンテナンスや部分的な補修・補強などを行う際に立体的な鉄筋配置が把握でき,適切な現場作業が可能となる。鉄筋配置を修正して干渉を回避図-4 三次元配筋図による干渉チェック【施工計画への活用】鉄道橋近接施工エリア施工計画に際しては,三次元地形モデルと三次元クレーン稼働範囲設計図を統合し,図-5 に示すとおり三次元データで組み上げた重機や足場等を配置した。施工手順,施工要領の立体化を図り,鉄道橋との近接施工で重機を配置する際のクレーンアームなどの軌跡等を立体的に検証することで,施工時の制約条件や対応策の容易な認識を図った。また施工計画における機材配置を三次元座標管理することで,近接施工時の事故防止等を図ることが可能となる。図-5 三次元データによる重機配置計画3.おわりにCIM を活用した業務は,これまでの前例も少なく実務としては初めての取り組みとなったという点で,別途これまで実施してきた通常の二次元データによる確認や補足など重複作業が発生し,結果として効率化が図られていない点があった。また例えば,複数のソフト間でデータをやりとりする場合,三次元配筋図の仕様が統一されていないため,構造体と鉄筋の情報が共有されず,色情報(鉄筋径ごとに整理等)などがエクスポートあるいはインポートされない問題が生じた。加工や現場施工を考慮して鉄筋ごとに色分けをするなどの工夫を施しても,現状では現場で設計時と同一ソフトを使用しなければ情報を共有化できないなどの懸念がある。また今回の業務では良好な支持地盤が表層から確認され,直接基礎構造となったため地盤情報は対象外となったが,今後地中構造物や構造物基礎,地盤改良等の設計業務において地質調査結果から地盤情報を取り入れることが期待される。今後は地質調査業務においてもモデル事業の試行が実施されることが考えられ,地盤解析との連携や問題となる軟弱層・帯水層と構造物との三次元的な取り合いの検討などへ活用していきたい。52
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  • タイトル
  • 斜面防災に関わる社会インフラ維持管理教育
  • 著者
  • 廣田清治・竹田正彦・矢田部龍一
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 53〜54
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69623
  • 内容
  • 27A - 09第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月斜面防災に関わる社会インフラ維持管理教育斜面防災 社会インフラ1維持管理愛媛大学防災情報研究センター 正会員○廣田 清治愛媛大学大学院理工学研究科 国際会員矢田部 龍一愛媛大学防災情報研究センター 非会員竹田 正彦はじめに我が国は、1964年の東京オリンピック、新幹線の開業に向けて社会インフラを急速に整えてきた。それから50年余を経過した現在において、社会インフラで建設された多くの構造物が劣化しつつあり、長寿命化計画が立てられ、橋梁などの構造物では近接目視点検がなされている。このような状況のもと、愛媛大学では文部科学省委託の人材教育を行うため平成26年度「社会基盤メンテナンスエキスパート(ME)養成講座」(以下、ME養成講座)を開催した1),2),3),4)。ME養成講座を10日間、48コマ行ってきたなかで、アセットマネジメントを基本に置いたコアカリキュラムのほか、四国独自のローカルカリキュラムとして防災関連カリキュラムを導入している。本報告は、これら両カリキュラムの中で、防災の視点から維持管理の必要のある斜面(自然斜面及び法面)について、どのように維持管理教育を行ったかを、経過と問題点を踏まえつつ、今後の教育について考察する。2斜面に関わる社会インフラ斜面に関わる社会インフラは、斜面に沿って土砂等が移動する方向の先にある建造物か、斜面そのものの移動を留める構造物かの二つに分けることができる。前者の社会インフラは、その基礎となる地盤の強度と滑動・転倒に対して設計の力点がおかれ、後者の社会インフラは、いわゆる対策工と称され、不安定化した地山を抑制、あるいは抑止することに力点が置かれ、計画、設計、施工がなされる。前者のように、土砂等が移動する方向にある社会インフラは、一般的にその構造物の側方から異なる物質によりダメージを受けることは想定されていない。そのため、一旦、災害が発生した場合、甚大な被害が図1広島土砂災害における土石流軌跡(Google情報に加筆)もたらされる。平成26年8月20日に発生した土砂災害の激甚さは、報道や研究者の発表によって知るところである(図1)。この両者の社会インフラについて、維持管理が必要なことは言うまでもないが、本報告ではとくに斜面に関わる社会インフラである“対策工”の構造物に特定して取り扱う。(1) 自然斜面に関わる対策工斜面は自然斜面と法面とに分けられる(図2)。このうち、自然斜面で起こる現象は、落石、斜面崩壊(表層すべり大規模地すべり)、および土石流などが挙げられる。それらの対策工は、代表的なものでは、「落石防護工」、「表面排水工」、「地下水排除工」、および「補強土工」などがあり、斜面の動きを起こさないようにする工法と、図2動きが顕れた後に効果を発揮する工法がある。斜面区分と対策工の種類(断面)(2) 法面に関わる対策工法面は、切土による斜面と盛土による斜面の二つに分類できる。切土工を行う場合、もともと安定した斜面を不安定にすることが多く、その不安定化を予測して対策工がなされる。代表的な対策工に、「アンカー工」、「杭工」、および「補強土工法」がある。盛土工は、その施工箇所の地耐力が問題となることが多く、構造物の滑動、転倒に対しても予め検Education for the Maintenance of Infrastructures with prevention against natural disasters at slope.K. Hirota (Center for D.M.I.R. Ehime Univ.), R. Yatabe (Ehime Univ.), M. Takeda (Center for D.M.I.R.Ehime Univ.)53 討されるため、安定を保つように構造物が施工される。盛土の対策工は、「擁壁工」等のほか、「表面排水工」、「地下水排除工」などの水回りの処理がなされる。軟弱地盤に対しては地盤改良、補強土工法等がなされる。盛土が一旦不安定化した場合、その対策工は応急的なものとなり、例えば、盛土法面末端には“盛土工”がなされる。根本的に工事のやり直し、あるいは部分的に補強土工法での置き換えがなされる。3ME養成講座の教育経過と今後(1) 愛媛大学ME養成講座:愛媛大学は、平成26年度に10月及び11月の2週間で10日間を要し、48コマ72時間のME養成講座を開講した(図3)。斜面に関わる講義は、「斜面・構造図3平成26年度ME養成講座カリキュラム(囲みの黄色の実線がローカルカリキュラム、点線は斜面関係)物の維持管理」及び演習、「擁壁の設計と維持管理」及び演習、両講義共通のフィールドワークとまとめで7コマ9時間半講義を行った。また防災に関わるテーマでは、「土砂災害の種類と対策」及び演習で3コマ(7コマ中)4.5時間の講義を行った。とくに斜面及び斜面防災に関わる講義で注意した教育方法は、“座学”+“演習”⇒“フィールドワーク”+“まとめ”の一連の講義である。例えば、座学で斜面構造物についての概説を行い、演習では地形図、空中写真(図4)をオープンデータで活用し、フィールドワーク対象となる小集水域での降水の集まりやすさ、土砂の移動しやすさ、地すべりの有無の確認を行い、そののちフィールドでの確認作業ならびに維持管理について実習を行った。図4松山市湯山柳付近の空中写真(立体視用に編集)(2) 斜面防災の考え:斜面防災に関わる構造物の維持管理の煩わしさは、「橋梁」の河川幅、「トンネル」の尾根(または山岳)の幅(厚み)など、主として地形に規制されるものではなく、地質(内的要素)、気象(外的要素)、風化(時間要素)の各現象の組み合わせなど、考慮すべき要素が多く保全すべき範囲を限定しにくいことにある。脆弱化した箇所に構造物が設けられているため、ひとり構造物のみの劣化の点検で維持管理はできない。もちろん、「橋梁」も「トンネル」も、斜面防災の構造物と同様な現象が影響するが、予め施工段階で構造物の安定を確保すべき対策が行われており、施工以前の基礎情報が得られていると云う違いがある。つまり、「斜面防災」の構造物と「橋梁」及び「トンネル」との差は、斜面・地盤の安定を図る構造物(対策工)そのものであるのか、安定対策がなされた後の構造物で図5オープンデータの活用例あるのかの違いである。(3) 今後の維持管理教育:今年度、ME養成講座を本格的に始動したが、今後は次のような構成を模索している。①災害現場の対策事例を学ぶことに基づく、“現象”の理解及び“対策工”の解釈. ②地形解析、空中写真判読、災害履歴などオープンデータ(図4, 図5)を活用しての実習.③災害履歴のある現場、あるいは地形解析を行って不安定化した斜面とその構造物に関するフィールドワーク. これら①③の一連のプログラムを修了したのち、グループディスカッションを行い複数ある考え方の理解、現象の原因の把握などを経験し学習する。4おわりにここで紹介したME養成講座で、斜面防災に関わる時間は非常に短い。今後の教育は、講座で基本的な維持管理の考え方の習得に努め、自ら考える能力を発展させ、自己研鑽ができる仕組としたい。そのためには、現ME養成講座で根幹の考えとなっているアセットマネジメント、LCCの考えがベースとなる講義を引き続き行っていきたい。参考文献1) 廣田ほか(2014):愛媛大学における社会基盤メンテナンス・エキスパート(ME)養成講座のとりくみ,地盤工学会四国支部発表. 2) 廣田ほか(2015):2014年8月20日広島土砂災害と斜面維持管理の仕方-広島市安佐南区の事例,土木学会四国支部発表. 3) 廣田ほか(2015):社会基盤メンテナンスエキスパート養成講座を通した維持管理防災対応技術者養成への取り組み,南海地震四国地域学術シンポジウム発表.4) 森脇ほか(2014):愛媛大学における社会基盤メンテナンスエキスパート養成講座,「四国技報」.54
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  • タイトル
  • 水系フルボ酸の機能を解りやすく可視化する試み(生化学的な鉄イオンとフルボ酸のキレート作用)
  • 著者
  • 奈良崎浩美・吉見 昭・肴倉宏史・乾  徹・勝見 武
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 55〜56
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69624
  • 内容
  • 28第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月A - 09水系フルボ酸の機能を解りやすく可視化する試み(生化学的な鉄イオンとフルボ酸のキレート作用)水系フルボ酸可視化キレート帝人エコサイエンス株式会社正会員○奈良崎浩美日本天寿堂株式会社吉見昭国立環境研究所国際会員肴倉宏史京都大学大学院地球環境学堂国際会員乾徹京都大学大学院地球環境学堂国際会員勝見武1.はじめにヒューミン、腐植酸、フルボ酸などから構成される土壌腐植物質は、土壌の特性や機能を支配している主要成分である。土壌腐植物質から、工業薬品を一切使わないで水系の性質を有するフルボ酸を抽出する技術の研究を行った1)。土壌腐植物質を含む、おおよそ 1~2kg の泥炭から、約 1g の土系フルボ酸が精製・抽出できる。そして、おおよそ 5~10tの河川や湖水から、約 1g の水系フルボ酸が精製・抽出できる。著者らは、土壌腐植物質から、塩酸臭のしない、無味・無臭で pH3.0 以下の水系の性質を有するフルボ酸(以下、水系フルボ酸と呼ぶ)の抽出に成功した。そして、泥炭からフルボ酸を精製・抽出し、それが水系フルボ酸と分類できることを NMR スペクトルと、主成分分析結果で明らかにした。しかし、製品として販売するには「水系フルボ酸」の機能を解りやすく可視化することが求められている。本論では、特にフルボ酸に含まれる鉄イオンとフルボ酸のキレート作用を解りやすく可視化する試みを行ったので報告する。2.試験に使用した水系フルボ酸の概要試験に使用した無味・無臭・水系フルボ酸を Solutuion FA とし、写真 1 に示す。Solutuion FA の原料を Powder FA とする。Powder FA とは、国内の泥炭層から土を掘削・分級・選別・乾燥させた固体状の原料であり褐色の粉末である。そして、その原料からフルボ酸を抽出した褐色の液状の製品が Solutuion FA である。近年、腐植物質の官能基組成は、化学構造特性を決定づける固体 13C 核磁気共鳴(13CNMR)分析でルーチン化されるようになった2)3)4)。図 1 に示すように、藤嶽らが行った主成分分析に、Solutuion FA(図中の after)と Powder FA A(図中の before)の主成分分析結果をプロットすると、Solutuion FA も Powder FA もフルボ酸である同定結果が得られている。原料である Powder FA は土壌系の領域に位置する。しかし、原料である Powder FA から抽出した Solutuion FA は、水系フルボ酸の領域近くに位置する。IHSS 法に従わない(塩酸を使用しない)独自技術が、水系の性質を示していることを図 1 が証明している 1)。写真 1 左の固体が Powder FA 右の液体が Solutuion FA、図1天然土壌系および天然水系フルボ酸の主成分分析に Solutuion FA と Powder FA をプロットした図 1)3.試験結果と、必須常量元素と必須微量元素に分類して示した考察試験に使った水系フルボ酸の色は、写真 1 の右に示すような、玉ねぎ色で薄い褐色であり、pH は 2.8、ORP+600mV、硬度は 1100mg/l である。分析は試料(Solutuion FA)を乾燥させ蛍光 X 線で分析を行った。得られた結果を表 1 に示す一般市民の健康に関わりのある必須常量元素と必須微量元素に分類して示した。結果を図 1 に示す。蛍光 X 線分析結果より、水系フルボ酸には 7 元素の必須常量元素がすべて含まれており、特に硫黄(S)が多く、次にカルシウム(Ca)の順であった。また、9 元素の必須微量元素のうち Si,Mn,Fe,Zn の 4 元素が確実に含まれており、特に鉄(Fe)が多く検出されAttempt to facilitate visualization to understandHiromi Narasaki1,Teijinthe function of water-based fulvic acidEco Science CO., LTD1Akira Yosimi2,Nihon TenjuCO., LTD2Hiroshi Sakanakura3,National Institute for Environmental Studies3Toru Inui4, Takeshi Katsumi4,Kyoto University455 た。必須常量元素と必須微量元素以外には、Al、Sr(ストロンチウム)などが検出された。この結果から『非飲料・酸性ミネラルウォーター』とも言える。表 1 人体に含まれ必須常量元素と必須微量元素図 2 必須常量元素(左)と必須微量元素(右)に分けした図4.フルボ酸に含まれる鉄イオンを解りやすく可視化する試み放射能除染にフルボ酸を使えば放射能濃度の低減が示唆されている難とされている5)5)。しかし、フルボ酸のキレート作用の実証は困。だが、水系フルボ酸に含まれる鉄イオンとフルボ酸のキレート作用を生化学的に解りやすく可視化するのは可能と考え、塩とお茶を使った可視化を試みた。写真 2 と写真 3 に示すように、水系フルボ酸に食塩を 2%添加した①2%食塩水系フルボ酸と②2%食塩水を準備した。写真 2 に示されるように、①2%食塩水系フルボ酸と②2%食塩水に市販の緑茶を混ぜることで、フルボ酸に含まれる鉄イオンが、お茶のタンニンと反応して黒くなった。写真 22%食塩水系フルボ酸(左) 水系フルボ酸+お茶(右)写真 32%食塩水(左)2%食塩水+お茶(右)5.フルボ酸のキレート作用を解りやすく可視化する試み新鮮なキュウリを用意し食べやすい状態に切断し、①2%食塩水系フルボ酸と②2%食塩水にそれぞれ、おおよそ 6 時間浸漬させた。地盤工学会震災対応地盤環境研究委員会(委員長 勝見武)の皆様に、ご協力して頂きキュウリを試食して頂いた。約 31 名試食して頂いた結果、おおむね 9 割の委員の方が、2%食塩水で漬けたキューリと比べ、2%食塩水系フルボ酸で漬けたキューリの方が甘いとの意見であった。これは、水系フルボ酸に含まれるミネラルが食塩をキレートし、塩辛さをマイルドにしたのだと推察される。6.まとめ水系フルボ酸に含まれるミネラルを、一般市民の健康に関わりのある必須常量元素と必須微量元素に分類して示した。あえて、生化学的な視点で示すことで、市民だけでなく、研究・開発する側も次元の異なる俯瞰力が養うことが可能になる。また、水系フルボ酸に含まれる鉄イオンを、お茶を使ったタンニン反応で見えるようにした。また、水系フルボ酸のキレート作用をキューリの浅漬けを使用した食感体験で統計学的に示した。未知なる食感体験に嫌な顔もせずに、果敢に試食して頂いた地盤工学会震災対応地盤環境研究委員会(委員長 勝見武)の有志の皆様による、ご協力に大変感謝いたします。7.参考文献1)水野克己:フミン物質を原料にした製品の同定と評価,地盤工学会,第 10 回環境地盤工学シンポジウム,(2014)2)福嶋正巳:腐植物質と疎水性有害有機物質との相互作用とその土壌浄化への活用,分析化学,60,895-909(2011).3)平舘俊太郎:土壌腐植物質の化学構造とその機能, 土壌物理学会,土壌の物理性,No.105,p.23~30(2007)4)藤嶽暢英:フミン物質の化学特性とその多様性,日本腐植物質学会第 28 回講演会講演要旨集,pp7-8,(2012)5) 大谷浩樹ら:フルボ酸を用いた土壌の放射能濃度低減に関する研究,環境放射能除染学会,2004 年第3回環境放射能除染研究発表会,p030.56
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  • タイトル
  • 名神高速道路多賀地区盛土のり面災害復旧に関する報告
  • 著者
  • 後藤健二
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 57〜58
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69625
  • 内容
  • 29A - 06第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月名神高速道路多賀地区盛土のり面災害復旧に関する報告地盤災害法面崩壊名神高速道路中日本高速道路㈱正会員○後藤 健二1.はじめに中日本高速道路株式会社(NEXCO 中日本)が所管する名神高速道路_彦根インターチェンジ(IC)~八日市 IC 間の上り線 418.5Kp 付近(名神多賀地区)で発生した盛土のり面崩落災害に関する応急復旧作業,災害発生の原因究明および災害復旧対策について報告する.2.災害発生状況2013 年台風 18 号の影響により名神多賀地区では連続雨量 183 ㎜,時間最大雨量 23 ㎜/h(NEXCO 中日本観測データ)を記録,9 月 16 日 8 時 55 分頃に盛土のり面が幅 10m,高さ 6m,延長 30m にわたって崩落した.崩落範囲は本線路肩部からのり尻部にまで及び,多量の水分を含んだ崩土は道路区域外まで流出した(写真 2-1,2).3.応急復旧作業災害発生に伴い名神高速道路_彦根 IC~八日市 IC 間の通行止めを開始するとともに,直ちに応急復旧作業に着手した.被害の及んでいない追越車線側に親杭(H400,L=5m,15 本)を,路肩側に土留め鋼矢板(Ⅳ型,L=7~15m,79 枚)を打設して互いをタイロット(SS400,φ80,15 本)で連結する工法を採用し,後続変位を抑制した.資材,重機などの手配を速やかに実施し,災害発生の同日 20 時から現場着手,5 日間の昼夜連続作業を行い 9 月 21 日早朝に現場作業を完了させた(写真 3-1).これにより 119 時間に及んだ災害による通行止めが解除され,寸断されていた名神高速道路の交通が確保された.胡宮側自然斜面写真 2-1_胡宮側自然斜面(集水地形)写真 2-2_災害発生状況(本線路肩部)写真 3-1_応急復旧作業完了4.災害発生の原因究明応急復旧作業完了後に実施した現地調査結果などから,災害発生の原因について考察する.4-1地質調査結果ボーリング調査結果から得られた名神多賀地区盛土のり面崩落部の地質断面および N 値を図 4-1,2 に示す.地質は湖東流紋岩類を基盤とし,名神多賀地区の下り線山側(胡宮側)から続く傾斜面の裾に位置する平坦部には沖積層が分布している.湖東流紋岩類の新鮮部は硬質(N 値 20~30 以上)である.一方浅部は風化が進行し軟質化(N 値10 未満)している.沖積層の層相は粘土質砂~砂混じり粘土が主体で軟弱(N 値 4~5)である.盛土の層相は円礫混じり砂質土およびシルト主体で良質な材料とは言い難い状況であった.4-2水文調査結果胡宮側自然斜面(写真 2-1)が緩い集水地形となっており,災害箇所は集水地形の末端部に位置している.集水範囲を現地踏査した結果,自然斜面の表面水は水路系統で導かれ災害箇所へは流入しないことが確認された.自然斜面の地下浸透水が災害箇所へ大量に供給されたのではないかとも推察されたが,地下水位観測の結果,上層地下水位は降雨に敏感に反応して上昇・下降を繰り返すものの,胡宮側から続く下層地下水位は降雨による変化があまり見られないことが判明した(図 4-1,3).図 4-1_崩落部地質断面図図 4-2_ボーリングデータ(N 値)Restoration of slope failure of embankment Meishin Expressway Taga area57図 4-3_降雨状況と地下水位変化Central Nippon Expressway Company, Kenzi Goto 4-3災害発生原因の考察現地調査結果から名神多賀地区盛土のり面崩落災害は「豪雨の直接浸透により沖積層内の上層地下水位が上昇,盛土自重量の増加により盛土のり尻部の軟弱な沖積層内で滑りが発生,盛土全体としてのバランスが崩れ盛土のり面崩落に至った.」ものと判断される.なお,検証のため崩落前の盛土断面に対して現地調査により得られた物性値などを用いて安定計算を行ったところ,上層地下水位が上昇※した場合は安全率が Fs<1.0 となり,滑りが発生する結果となった.※:地下水位観測結果から災害発生時(連続雨量 183 ㎜の場合)は,上層地下水位が 2.3m 上昇したものと推定5.本復旧対策工5-1平面図本復旧対策工の検討本復旧対策工法については,次の基本方針を定め設計を行った(図 5-1).① 軟弱な沖積層および湖東流紋岩類の強風化部は地盤改良することで滑りに対する抵抗力(せん断力)の向上を図る.・狭小ヤードで改良深度 7.5m 程度であるため機械撹拌とし,固化材と原位置土を搖動撹拌することで安定した改良体を構築可能な工法を採用.・地盤改良は盛土内の排水を阻害しない配置とする.② 崩土は撤去,良質材による置き換え盛土を実施し,のり尻部には鋼製枠を配置する(写真 5-4).断面図③ 基盤層および既設盛土内には排水対策を実施する(写真 5-1~3).・応急復旧作業で設置した土留め鋼矢板を削孔し,前面に採石排水層を設け,水抜きボーリングと連結する.・水抜きボーリング孔内には高耐食メッキ加工した有孔管を配置する.④ 新設盛土内の排水を促進させるため,地下排水工を施工する.図 5-1_本復旧対策工計画図・地下排水工には施工性を考慮してチューブ状の排水材を透水シートで包んだ排水マットを採用.5-2本復旧対策工事本復旧対策工事は 2013 年 12 月に着手し,周辺住民の皆さまのご理解とご協力のもとで工事を進め 2014 年 8 月 13 日に完了した.写真 5-1_既設鋼矢板削孔写真 5-2_採石排水層写真 5-3_水抜きボーリング(有孔管配置)6.おわりに名神高速道路は開通後 50 年が経過しており,同様の災害発生を未然に防ぐため高速道路の点検管理の重要性を再認識し,今後も引き続き NEXCO 中日本グループが一体となって取り組み,お客様の安全と安心の向上に努めてまいります.なお,名古屋支社管内のり面防災対策検討会(委員長:八嶋厚教授(岐阜大学))の委員におかれましては,現地指導も含め,のり面崩落の原因究明および本復旧対策の検討についてご指導を賜り,ここに感謝の意を表します.写真 5-4_本復旧対策工事完了58
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  • タイトル
  • 硬質地盤対応型ラディッシュアンカー工法の開発
  • 著者
  • 蓮香朋宏・高橋 徳・館山 勝・田村幸彦
  • 出版
  • 第50回地盤工学研究発表会発表講演集
  • ページ
  • 59〜60
  • 発行
  • 2015/06/20
  • 文書ID
  • 69626
  • 内容
  • 30K - 1459第 50 回地盤工学研究発表会(札幌)    2015 年 9 月 60
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