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第13回環境地盤工学シンポジウム

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タイトル 締固め密度が異なる不飽和ベントナイト砕石の膨潤圧と透水性に関する特性の把握
著者 成島 誠一・新井 靖典・佐古田 又規・西村 友良
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 331〜334 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000059
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タイトル 有機系廃棄物を用いた微生物燃料電池の性能に及ぼす混合材料の影響
著者 李 翠・大嶺 聖
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 477〜480 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000087
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タイトル 温度変化を考慮した珪砂混合ベントナイトの力学特性に関する実験的検討
著者 柳井 正樹・金澤 伸一・市川 希・武藤 尚樹・小林 千莉・石山 宏二
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 467〜470 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000085
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タイトル 熱の影響を考慮したベントナイト緩衝材の再冠水挙動に関する解析的検討
著者 市川 希・金澤 伸一・武藤 尚樹・小林 千莉・柳井 正樹・石山 宏二・河原 裕徳
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 449〜454 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000082
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タイトル 熱・流体・応力連成解析による水蒸気が及ぼす再冠水時のバリア性能への影響
著者 佐藤 伸・大野 宏和・棚井 憲治・山本 修一・深谷 正明・志村 友行・丹生屋 純夫
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 441〜448 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000081
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タイトル 泥炭を材料とする固化破砕土の放置時間と土質工学的性質
著者 佐藤 厚子・守田 穫人・畠山 乃・林 宏親・稲澤 豊・渡邊 信明・永多 朋紀
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 437〜440 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000080
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タイトル 感潮河川に堆積する高含水比浚渫土を用いた解砕固化処理土の締固め特性と耐侵食性
著者 井上 徹郎・末次 大輔
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 433〜436 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000079
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タイトル ため池粘土の簡易脱水法と改良効果に及ぼす固化材添加量と含水比の影響
著者 張 子晨・大嶺 聖・フレイミ サムエル オイ
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 429〜432 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000078
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タイトル 短期間の温度履歴を付与したベントナイトの吸水挙動に及ぼす影響に関する推察
著者 白河部 匠・小峯 秀雄・後藤 茂・王 海龍・山本 修一・豊田 淳史
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 455〜460 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000083
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タイトル 固化改良土による堤体改修法(砕・転圧盛土工法)の簡略設計法の提案~環境保護面に優れたフィルダム堤体の耐震補強と漏水防止のための技術~
著者 福島 伸二・北島 明・谷 茂
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 365〜370 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000065
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タイトル クリンカアッシュに対するジオグリッドの土中引抜き特性と同補強土壁の内的安定性の検討
著者 鈴木 素之・松永 崇史・藤田 義成・佃 勝二・及川 隆仁・渡辺 健一
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 359〜364 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000064
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タイトル アスファルト廃材被覆地盤での補強および発電に関する実験的研究
著者 横浜 勝司
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 351〜358 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000063
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タイトル 難透水性覆土に用いられる膨張性材料のサクションを考慮した基礎的性質
著者 西村 友良・本島 貴之・磯 さち恵
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 347〜350 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000062
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タイトル Hydraulic Conductivity of Compacted Soils Made from Aggregate Claystone
著者 Zou Ran・Takemura Jiro・Popang Monika Aprianti
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 341〜346 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000061
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タイトル Potential Hydraulic Barrier Performance of Volcanic Ash Derived-Clayey Soils with Bentonite in Landfill Engineering Application
著者 Ta Thi Hoai・Toshifumi Mukunoki
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 335〜340 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000060
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タイトル 古紙を原料とする微細粉体による粘性土地盤の特性変化
著者 澤村 康生・矢野 隆夫・木村 亮
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 371〜376 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000066
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タイトル Na 型ベントナイトの透水係数に関わる評価指標の調査( 2003 年に報告された試験と、2018 年に試験された結果より考察 )
著者 水野 克己・平野 浩一・岩崎 好規・西垣 誠・嘉門 雅史
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 325〜330 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000058
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タイトル 界面活性剤によるベントナイトの膨潤圧曲線の実験的解釈と締固め密度向上効果
著者 新納 格・井上 俊・掛水 颯太・植田 真也・斉藤 健太
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 319〜324 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000057
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タイトル 2018 年4 月大分県中津市耶馬溪町にて発生した大規模山腹崩壊に関する一考察
著者 山本 健太郎・立石 義孝
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 311〜318 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000056
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タイトル 阿蘇カルデラ内阿蘇谷の表層地盤構造による阿蘇谷層の2 層化提案
著者 福田 光治
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 305〜310 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000055
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タイトル 福島第一原子力発電所における沈降型重泥水を利用した燃料デブリ取出し回収法の検討
著者 氏家 伸介・長江 泰史・成島 誠一
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 301〜304 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000054
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タイトル 落球探査試験による分別土砂地盤の物性評価と品質管理の適用性について
著者 中村 吉男・今山 真治・小島 淳一・小澤 一喜・藤崎 勝利・池尻 健
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 297〜300 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000053
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タイトル 木屑と製鋼スラグを混合した材料のせん断特性
著者 吉川 友孝・押野 滉大・菊池 喜昭・野田 翔兵・柿原 結香
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 291〜296 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000052
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タイトル 地震・津波災害で発生が想定される木片混入分別土の木片腐朽過程を考慮した力学特性の把握
著者 酒井 崇之・中野 正樹・池上 浩樹
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 285〜290 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000051
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タイトル 簡易現場強度試験法の開発と廃棄物地盤への適用
著者 出口 資門・大嶺 聖
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 281〜284 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000050
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タイトル 一般廃棄物焼却残渣固化式処分における振動締固めに関する基礎的研究
著者 三反畑 勇・弘末 文紀・秋田 宏行・青木 貴均・西尾 竜文・島岡 隆行・小宮 哲平・中山 裕文・荒井 進・金松 雅俊
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 275〜280 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000049
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タイトル 産業廃棄物処分場におけるカルシウムスケール抑制を目指したCa 吸着層に用いる材料のCa 吸着特性評価
著者 髙橋 智也・多賀 春生・小峯 秀雄・後藤 茂・王 海龍・鈴木 清彦・杉本 和聡・國弘 彩
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 271〜274 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000048
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タイトル 管理型海面廃棄物処分場に打設する基礎杭の施工性に関する検討
著者 野村 理樹・菊池 喜昭・野田 翔兵・井上 珠希・平尾 隆行・竹本 誠
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 267〜270 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000047
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タイトル 海面廃棄物処分場で発生する埋立ガスの経年変化に関する研究
著者 吉田 英樹
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 263〜266 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000046
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タイトル フライアッシュスラリー埋立地盤の密度に及ぼす材料特性の影響に関する実験的検討
著者 山田 桂吾・角田 紘子・山﨑 智弘・乾 徹
出版 第13回環境地盤工学シンポジウム
ページ 259〜262 発行 2019/08/23 文書ID cs201909000045
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  • タイトル
  • 締固め密度が異なる不飽和ベントナイト砕石の膨潤圧と透水性に関する特性の把握
  • 著者
  • 成島 誠一・新井 靖典・佐古田 又規・西村 友良
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 331〜334
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000059
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)10-3締固め密度が異なる不飽和ベントナイト砕石の膨潤圧と透水性に関する特性の把握〇成島誠一 1・新井靖典 1・佐古田又規 1・西村友良 21 一般社団法人NB 研究所・2 足利大学1. はじめに廃棄物処分施設に関する長期安全性予測は、信頼性の確保の観点から環境地盤領域において重要な課題である。廃棄物処分施設は、可能な限り不確実性を低減させ安心を維持し、社会との共存を提供することが求められている。遮水構造体に利用される膨潤性材料は、一般的な土質力学の理論の中では特殊な特性を示す材料であるがゆえに、検証項目の相互関係の解明に多大な時間と測定技術が求められている。これまで筆者らは、ベントナイト砕石1)を用いた飽和膨潤圧の検証・予測は密度をパラメータとする手法で一定の成果を得ている。しかし不飽和状態から飽和状態への変質解明には膨張性材料の水分保持曲線が必要であるが、データの蓄積は十分ではない。近年、不飽和状態の膨張性土の体積変化や強度定数を得るには土中のサクションの把握が重要視され、同時に構成式にも導入されている 2)。そこで本研究では、乾燥密度が異なる膨張性土質材料として実施工を想定した乾燥密度が異なるベントナイト砕石を対象に膨張性・浸透性・水分保持特性ならびに飽和・不飽和状態の一軸圧縮強さを検討する。得られた結果を基本的な物性評価と施工管理に役立てる。2. 試料と実験方法試料は、筆者らが開発した NB 工法 1)で採用されているベントナイト砕石を用いた。試料は、礫分 47.6%、砂分 52.3%、粘土分 0.1%の粒度組成を有している。供試体作製時の乾燥密度、含水比条件を定めるために突固めによる土の締固め試験(JIS A 1210)をおこない、試料の突固め方法は A-c とし、乾燥密度-含水比曲線からベントナイト砕石の最大乾燥密度は 1.357g/cm3、最適含水比は 27.7%が得られた。供試体作製含水比は最適含水比(27.7%一定)とし、静的締固め時の目標乾燥密度は最大乾燥密度の 100%(1.357g/cm3)、90%(1.221g/cm3)、85%(1.153g/cm3)の 3 条件とした。本実験は蒸気圧法 3)を用いた保水性試験、膨潤圧試験、一軸圧縮試験を実施した。保水性試験および膨潤圧試験用供試体寸法は直径6.0cm、高さ 2.0cm、一軸圧縮試験用供試体は、直径 3.8cm、高さ 7.6cm とし、寸法は比較的小さいが直径と高さの比率は2.0 を確保した。本実験は、過飽和塩溶液を用いた蒸気圧法(JGS 0151-2000)で水分保持曲線を求めた。2.8MPa から 296MPa の範囲でサクション制御を行い、このサクションは湿度範囲に置き換えると 98%から 11%に相当する。7 種類の過飽和塩溶液によって、乾燥過程(サクションが増大・湿度が低下)および湿潤過程(サクションが低下・湿度が増加)のサクション履歴を供試体に与えサクション平衡時の供試体質量、サイズ(直径、高さ)を測定した。次に蒸気圧法における一定サクション(一定湿度環境下)の供試体質量の変化を測定し、サクションとの平衡状態に至る時間を求め、平衡判断指標の一つとして適用する。図-1 のようにアクリル製耐圧容器に供試体を静置し、塩過飽和溶液を入れた容器とチューブで繋ぐ。また簡易ポンプによって空気を循環させることで供試体は継続的に一定の湿度空気と接する。安定した湿度によって供試体は湿度から換算されるサクションが作用され、供試体中の水分量はそのサクションに応じた状態となり、供試体質量は平衡に至る。この質量の経時変化を電子天秤で連続的に計測した。温湿度センサ塩過飽和溶液ー供試体電子天秤計り図-1 循環型湿度環境一定質量計測塩過飽和溶液図-2循環型湿度測定装置さらに図-2 は塩過飽和溶液によって制御された空気循環中の湿度を温湿度センサーで測定した。図-3 には過飽和塩溶液による湿度実現性を検証した結果を示す。湿度測定に温湿度変換器 THT-B を用いた。過飽和塩溶液の種類によって制御湿度値が異なることがわかる。測定された湿度は土の保水性試験(JGS 0151)に示され湿度値に一致している。同時にUnderstanding of swelling pressure and conductivity for an unsaturated crushed bentonite with different densitySeiichi Narushima1, Yasunori Arai1, Yuki Sakoda1, Tomoyoshi Nishimura2 (1Natural Blanket Institute, 2Ashikaga University)KEYWORDS: Unsaturated crushed bentonite, Swelling pressure, Conductivity, SWCC, Suction, Shear strength.- 331 - 短時間で空間内の湿度はほぼ一定に至っている。なおアクリル製容器の体積は 1500cm3 であった。サクション制御による供試体水分量の変化・平衡状態を確認するため、図-4 に過飽和塩溶液としてリン酸二水素アンモニウムと塩化ナトリウムの 2 種類を使用した場合の質量変化から供試体含水比を算出した結果を示す。リン酸二水素アンモニウムは 93%(サクション 9.8MPa)、塩化ナトリウムは 75%(サクション 39MPa)の湿度・サクションを供試体に作用させている。含水比はサクション作用開始とともに低下を示し、数日で含水比は平衡状態に至り安定している。この結果を蒸気圧法におけ10090807060504030硫酸カリウム RH98%含水比 %湿度 %る平衡時間設定の目標値とした。塩化ナトリウム RH75%硝酸マグネシウム RH54%01020304050607035302520151050リン酸二水素アンモニウム RH93%塩化ナトリウム RH75%051015測定時間 h202530測定時間 日数図-4 一定湿度環境下の含水比変化(温度20℃)図-3 湿度測定(温度20℃)100膨潤圧試験は、改良型不飽和土用圧密試験装置を用いて実浸透に伴う膨潤圧を測定した。二重管ビュレットに付属している差圧計によって吸水量の経時変化を電圧で計測した。底盤へ○ 乾燥過程● 湿潤過程80飽和度 %施した。剛性モールドを耐圧セル内に納めて、底盤からの水の6040の供試体設置時に急激な吸水が生じることも考えられたが、慎20重に取り付けを行った。配管内が常時、水で満たされているこ01とを確認し、高さを保持して計測を継続した。101001000サクション MPa透水性試験は、一般的な飽和供試体を用いるのではなく不飽図-5 水分保持曲線 最大乾燥密度和状態から一定の動水勾配を与え浸透させ、供試体下端から排水される水量と動水勾配から透水係数を求めた。100一軸圧縮強さの測定では、静的に締固めた直後の供試体(初を用いた。飽和方法は吸水口を有するモールドに供試体(直径3.8cm、高さ 7.6cm)を納め、脱気作用を与えながら約1か月間○ 乾燥過程● 湿潤過程80飽和度 %期状態・不飽和状態)と定体積で飽和させた供試体(飽和状態)水没させた。脱型後、一軸圧縮試験を行ったが、その圧縮ひず604020み速度は毎分 1%としておこなった。01101001000サクション MPa3. 実験結果図-6 水分保持曲線 最大乾燥密度の90%3.1 高サクション領域のサクションと飽和度の関係(水分保持曲線)蒸気圧法で求めた初期乾燥密度が異なるベントナイト砕石の100乾燥過程および湿潤過程の水分保持曲線(サクションと飽和度大)、記号●は湿潤過程(サクション低下)である。供試体の初期飽和度は、74.6%(最大乾燥密度 100%)、61.1%(最大乾燥飽和度 %の関係)を図-5~7 に示す。記号○は乾燥過程(サクション増6040密度 90%)、55.2%(最大乾燥密度 85%)であった。初期飽和20度の相違の影響も想定され、乾燥過程のサクション 2.8MPa に0平衡した後飽和度に 70.1%、56.9、~49.0%という異なる結果が得られた。サクション増加(湿度低下)を受けた供試体は飽和度を低下させる。対数軸上で見ると飽和度の変化は直線的な○ 乾燥過程● 湿潤過程801101001000サクション MPa図-7 水分保持曲線 最大乾燥密度の85%部分が確認される。サクション 296MPa において初期乾燥密度が高い順に、25.0%、19.9%、10.4%を示した。サクション 2.8MPa から 296MPa の乾燥過程を経て、再び 2.8MPa にサクションを戻している(湿潤過程)。初期乾燥密度の大きさに関わらずヒステリシスは存在している。初期乾燥密度が大きい順にサクション 2.8MPa の飽和度は 58.7%、- 332 - 48.2%、34.3%を示し初期乾燥密度の影響が確認された。3.2 初期乾燥密度が異なるベントナイト砕石の膨潤圧飽和過程における膨潤圧への影響因子は、乾燥密度がその因子として知られている。本研究においてベントナイト砕石の膨潤圧について、初期乾燥密度が異なる供試体を用いた膨潤圧変化を図-8~10 に示す。最大乾燥密度とその 90%供試体は試験開始とともに明確な膨潤圧増加が見られ、最大乾燥密度の場合は最大膨潤圧を示した後、ゆっくりと時間をかけて減少している。90%供試体は経過時間 300 時間以降、増分が小さくなるようにも見える。85%供試体は 250 時間付近で最大膨潤圧を示し、以降は平衡している。吸水による飽和度の増加を最大乾燥密度 100%について図-11 に示す。吸水開始とともにゆるやかな増加し、最終的には飽和していることがわかる。最大乾燥密度の 90%、85%供試体ともに飽和状態に至ったことは確認している。測定された初期乾燥密度と最大膨潤圧の関係を図-12 に示す。一般論として周知されているように最大膨潤圧の乾燥密度依存性はベントナイト砕石においても確認され、本条件においては乾燥密度に対して直線的な増加を最大膨潤圧は発揮している。遮水構造体の施工管理の指標となる乾燥密度と飽和透水係数を図-13 に示す。異なる 3 条件の初期乾燥密度を有する供試体の透水係数は 1×10-11m/秒から 1×10-12m/秒の範囲であった。これにより初期乾燥密度が大きい程飽和透水係数が小さくなり遮水性効果の傾向にあったが、初期乾燥密度 85%供試体でも遮水性は充分に確保された。400400最大膨潤圧 300.2 kPa200供試体下端からの吸水200供試体下端からの吸水100最大膨潤圧 153.6 kPa300膨潤圧 kPa膨潤圧 kPa3001000001002003004005006000700100200300400500600700経過時間 h経過時間 h図-9 膨潤圧の変化 最大乾燥密度の90%図-8 膨潤圧の変化 最大乾燥密度100400最大膨潤圧 109.6 kPa75飽和度 %膨潤圧 kPa300供試体下端からの吸水200供試体下端からの吸水50251000000100200300400500600100200400500600700経過時間 h経過時間 h図-10 膨潤圧の変化 最大乾燥密度の85%図-11 吸水量から算出した飽和度変化 最大乾燥密度5001E-08飽和透水係数 m/秒400最大膨潤圧 kPa3007003002001001E-091E-101E-111E-121E-13011.21.41.61.80.8211.21.41.6乾燥密度 g/cm3乾燥密度 g/cm3図-13 乾燥密度と飽和透水係数の関係図-12 乾燥密度と最大膨潤圧の関係- 333 -1.82 3.3 ベントナイト砕石の一軸圧縮強さに与える不飽和・飽和の影響一軸圧縮強さは、遮水層の施工管理などにおいても重要な指標である。初期状態(不飽和状態)と飽和状態の応力-ひずみ曲線を図-14 と 15 に示す。なお()内数値は乾燥密度である。初期状態は、比較的明瞭なピーク値が見られ、それぞれのピーク値はひずみ量が 3%以内で確認された。吸水し、飽和状態のベントナイト砕石は、サクションが消失し、応力-ひずみ曲線の形状平坦化が確認された。これはひずみ量においても初期状態に比べ圧縮応力が低く、膨潤することでサクション消失、せん断抵抗力減少の現象が見られ、一軸圧縮強さ減少は、最大乾燥密度 100%の場合(1.357g/cm3)に最も大きく 438.3kPa であった。一方図-16 のように飽和状態の一軸圧縮強さは、不飽和状態と同様に乾燥密度が大きいほど、高い値を示す。上述した最大膨潤圧、透水係数ならびに飽和状態の一軸圧縮強さの 3 者の関係をとりまとめたのが図-17 と 18 である。一軸圧縮強さが高いベントナイト砕石は初期乾燥密度が密なため透水係数が小さく遮水性能も高いことがわかる。さらに最大膨潤圧が大きいベントナイト砕石は初期乾燥密度が密なことから高い一軸圧縮強さを発揮するといえる。1250300初期状態最大乾燥密度 100%(1.357g/cm3)最大乾燥密度 90%(1.221g/cm3)圧縮応力 kPa圧縮応力 kPa飽和状態最大乾燥密度 100%(1.357g/cm3)1000750最大乾燥密度 85%(1.153g/cm3)500最大乾燥密度 90%(1.221g/cm3)200最大乾燥密度 85%(1.153g/cm3)100250000246801024810図-15 応力-ひずみ曲線(飽和状態)図-14 応力-ひずみ曲線(初期状態)12501E-11最大乾燥密度 100%最大乾燥密度 90%750飽和透水係数 m/秒△飽和による一軸圧縮強さの低下量〇初期状態●飽和状態1000一軸圧縮強さ kPa6圧縮ひずみ %圧縮ひずみ %最大乾燥密度 85%500最大乾燥密度 85%(1.153g/cm3)最大乾燥密度 90%(1.221g/cm3)1E-12最大乾燥密度 100%(1.357g/cm3)2501E-130011.11.21.31.41002001.5300400500一軸圧縮強さ kPa乾燥密度 g/cm3図-17 一軸圧縮強さと飽和透水係数の関係図-16 乾燥密度と一軸圧縮強さの関係1250一軸圧縮強さ kPa1000数値:乾燥密度〇初期状態●飽和状態7501.153g/cm35001.221g/cm31.357g/cm325000100200300400500最大膨潤圧 kPa図-18 最大膨潤圧と一軸圧縮強さの関係4. おわりに本研究では、廃棄物処分場施設の遮水層に用いられる締固めたベントナイト砕石の水分保持特性、膨張性、浸透性ならびに飽和・不飽和状態の一軸圧縮強さを検討し、締固め時の乾燥密度について水分保持特性、膨張性、浸透性および一軸圧縮強さの関係性が示唆された。よって闇雲に締固めするのではなく、遮水性と膨潤圧の影響について定量的な知見が得られたと考える。今後さらに長期安定性の再現性について取り組み、信頼できる遮水構造体を提示したい。【参考文献】1) NETIS KT-170018-A, ベントナイト砕石 NB 工法新技術情報提供システム,国土交通省,2017.2) Dueck, A., Laboratoryresults from hydro-mechanical tests on a water unsaturated bentonite, Engineering Geology, 97(1-2), pp.15-24, 2008, do:10.1016/j.enggeo.2007.11.001.3) Blatz,L.A., Cui, Y.J. and Oldecop, L., Vapour equilibrium and osmotic technique for suction control, Geotech Geol Eng, Vol.26, pp.661-673, 2008,DOI 10.1007/s10706-008-9196-1.- 334 -
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  • タイトル
  • 有機系廃棄物を用いた微生物燃料電池の性能に及ぼす混合材料の影響
  • 著者
  • 李 翠・大嶺 聖
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 477〜480
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000087
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)14-7有機系廃棄物を用いた微生物燃料電池の性能に及ぼす混合材料の影響○李翠 1 ・大嶺聖 11長崎大学大学院1.はじめに微生物燃料電池は、有機性廃棄物処理と発電を同時に行うことができる優れた技術である。微生物燃料電池は、微生物を使って有機物中の化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換する装置である。より実用的で汎用な微生物燃料電池電池の開発には基礎研究は非常に重要である。本研究では、落ち葉、竹パウダー等を用いて、微生物の堆肥化により電気を発生させる土壌微生物燃料電池を開発して、微生物燃料電池を用いて広く利用可能な技術を開発し、微生物燃料電池の発電システムを明らかにすることを目的とする。土壌微生物燃料電池における混合材料と電極条件の影響を調べ、嫌気性条件下での土壌微生物燃料電池の性能を検討する。すなわち、微生物燃料電池の地盤環境工学分野における活用として、発電効果のある新しい廃棄物処理・利用方法を提案する。2.微生物燃料電池に使用した試料1)竹パウダー 竹パウダーには、乳酸菌が豊富に含まれており、土壌改良や活性化、有用微生物の活動が活発になり、善玉菌を活性化させ、悪玉菌の殺菌や制菌をし、土着菌を増やす。2)腐葉土腐葉土は、植物や作物を育てる土を改善するための堆肥の 1 種である。土壌を通気性・保水性・保肥性に優れたものに改良する、土中の微生物が増えて栄養分が作られる。3)米ぬか 米ぬかとは、玄米を精米するときに出るお米の種皮や胚の部分の粉のことをいう。米ぬかを使うメリットは、肥料としてよりも土壌改良資材としての効果が高く、土壌の微生物を活性化して作物が栄養を吸収しやすい。4)フルボ酸 フルボ酸とは、森林や土壌の中に存在する有機酸の一つで、植物にミネラルを補給する役目を担っている。腐植土壌に存在し、動植物を大きく育てる成長ホルモンのような働きをしてくれる。フルボ酸は生体活動のエネルギー源である。5)電極今回,本研究で用いる負極は竹炭を用いる、正極は粒状炭を用いる。竹炭の基本構造は、小さい炭素結晶が不規則に並んだ無定型炭素であり、炭化温度が上がるにつれて結晶化が進み大きな結晶に成長する。これはグラファイト構造と呼ばれ、層と層の間を電子が動き回り、電気を伝えやすくする。よく炭化した炭は電気をよく通す。粒状炭は長時間・緩慢賦活で生産される為、大きな吸着力を有すると共に、硬度が高いのでリサイクル使用に適した活性炭である。6)混合試料 有機系廃棄物の代用として竹パウダーと落ち葉、嫌気分解を行う微生物群としてフルボ酸、微生物の発酵を促すために米ぬか、微生物の生存を維持するために腐葉土を用いて混合した。使用した試料と電極材料を図-1 に示す。3.実験方法と実験結果図-1.使用した試料と電極材料図-2.実験装置3.1 実験方法図-2 に実験装置の仕組みを示す。本研究では、有機性廃棄物が堆肥化する過程で電気を取り出せることのできる土壌微生物燃料電池を開発する。混合試料を容器の底に置き、市販の竹炭を混合試料の底に負極として置き、残りの混合試料を竹炭の上に置き、そして市販の粒状炭を正極として一番上に置く。負極の竹炭には,鉄線(長さ 450mm)を巻き付けた条件でも実験を行った。鉄は電圧を上昇させる効果があるが、鉄だけでは電流が増加せず、竹炭は電流を増加させる役割がある。実験は温度 25℃の条件で行った。発生する電圧を 5 分間隔にデータロガーで測定する。3.2 実験条件3.2.1 竹パウダーと落ち葉による微生物電池の実験条件厚さ 0.5mm のプラスチック板で作製した容器(120×70×60mm)に混合試料を嫌気状態となるよう密に詰める。竹パウダー、落ち葉および腐葉土を水、光合成細菌(100 倍希釈)、酵素(スクラーゼ RC,0.1%)およびフルボ酸(100 倍希釈)とともに適切に混ぜ合わせ、容器に充填する(参考文献 3)。負極の竹炭の大きさは 50mm*120mm である。いずれも、粒Effect of mixed materials on the performance of microbial fuel cells using organic wasteLi Cui1, Omine Kiyoshi1 (1Nagasaki University)KEYWORDS: Soil Microbial Fuel Cellsl,Bamboo Powder, Organic Resources,Fulvic Acid- 477 - 状炭と竹炭は電気抵抗が低い(5Ω以下)のものを用いた。試料の異なる混合比を表-1 に示す。表-1.竹パウダーと落ち葉による微生物電池の実験条件番号竹パウダー落ち葉腐葉土水フルボ酸酵素鉄線1-1150g00150ml00あり1-2150g000150ml0あり1-3150g00150ml00.15gあり2-10190g0190ml00あり2-20190g00190ml0あり2-30120g120g190ml00あり2-40120g120g190ml00なし3.2.2 竹パウダーと腐葉土による微生物電池の実験条件微生物電池において電圧を測定する際に、電極間の距離の違いによって電圧の大きさが変化するものと推測し、電極間の距離を 15mm、30mm、45mm と離した実験を表-2 の試料(3-1、3-2、3-3)で行った。ここで使用したサンプルは、竹パウダー 120g およびフルボ酸 150ml の混合物である。竹パウダー、腐葉土、米ぬかをフルボ酸(100 倍希釈)とともに適切に混ぜ合わせ、容器に充填する。負極の竹炭の大きさは 36mm*117mm である。またラップで装置を覆い試料を空気に触れにくくし、嫌気状態を保つようにした。試料の異なる混合比における土壌微生物燃料電池の試験条件を表-2 に示す。表-2.竹パウダーと腐葉土による微生物電池の実験条件番号竹パウダー腐葉土米ぬかフルボ酸水酵素電極間距離3-1120g00150ml0015mm3-2120g00150ml0030mm3-3120g00150ml0045mm4-175g75g15g180ml0030mm4-20150g15g100ml0030mm4-3120g012g150ml0030mm4-475g75g0180ml0030mm3.3 実験結果3.3.1 竹パウダーと落ち葉による微生物電池図-3 と図-4 は,外部抵抗を付けていない条件での電圧(起電力)と時間の関係を比較したものである。図-3 および図-4 と比較すると、フルボ酸に加えられる土壌微生物燃料電池の電圧はより高くそして維持時間はより長い。水のみの場合、電圧は徐々に増加してから下がり始める。フルボ酸を添加すると、電圧は最大 820mVに達しそしてより長く持続する。混合酵素の場合、電圧は 730mV に達する。図-3 で示されるように、竹パウダーの電圧値は比較的高い。2-22-31-21-32-11-12-4図-3.竹パウダーを使用した実験結果図-4.落ち葉を使用した実験結果これまで電圧と経時時間の関係について置き述べたが、実際に電池として充電させたり、LED を点灯させたりするには電力量が大きく影響する。図-5 と図-6 は、異なる抵抗を接続して電圧値を測定することによる電流-電圧曲線である。最大発電力は内部抵抗に依存するため電流-電圧直線から求める。この直線は、外部抵抗を変化させた際の電圧と電流をモニターすることにより測定できる。この直線に従って、対応する関数曲線(図-7 と図-8)を描くことができる。曲線の頂点は最大発電力である。表-3 は図-5 と図-6 から得られた起電力、内部抵抗と単位面積の最大発電力である。負極の断面積は 0.006m2 である。表-3 より内部抵抗は小さく、最大発電力は大きな値を示していた。最大発電力は、竹パウダーおよび落ち葉の各ケースで,それぞれ 333mW/m2 と 216mW/m2 が最大であった。- 478 - 1-31-22-41-1図-5.竹パウダーの電流-電圧直線2-12-32-2図-6.落ち葉の電流-電圧直線1-31-22-32-21-12-12-4図-7.竹パウダーの電流-電力曲線図-8.落ち葉の電流-電力曲線表-3. 内部抵抗と単位面積の最大発電力竹パウダー主材料1-11-2落ち葉1-32-12-22-32-4内部抵抗(Ω)1837373188136127355起電力 Vmax (V)0.680.750.730.640.820.810.1183242333912062161単位面積の最大発電力(mW/m2)この研究から、竹パウダーの発電力が最大となったので、これを試料として電極間距離の実験を行った。落ち葉の実験結果から、腐葉土を入れた電池のは発電力は最大となったので、竹パウダーと腐葉土の組み合わせで実験する。3.3.2 電極間距離に着目した実験正極と負極の間の距離は、正極から負極へのプロトンの拡散に影響を与えるため、土壌微生物燃料電池の性能を決定する上で重要な役割を果たす。電極間距離は、正極から負極へのプロトンの拡散に影響を与えるためので、土壌微生物燃料電池の性能に影響を与えることが知られている(参考文献 2)。図-9 より、電極間の距離が大きいほど電圧が大きいことが分かる。これは負極が深い部分にあるので、空気に触れにくく嫌気条件が保たれると考えられるため、嫌気微生物が活発に働く状態になったのではないかと考えられる。4-24-44-14-33-33-23-1図-9.24 時間後の電流-電圧曲線図-10.電圧の経時変化3.3.3 腐葉土と米ぬかによる微生物電池米ぬかは好気的、嫌気的条件下では良好な発酵原料と考えられる。高橋ら(参考文献 1)によって研究されているように、米ぬかは十分な栄養素を含んでいるので、それは微生物が純粋な水とミネラルウォーターの中で電気を発生させることを可能にする。図-10 は電圧の経時変化である。図-11 は 24 時間後の電流-電圧曲線である。図-11 の 4-1 と 4-4- 479 - に示すように、米ぬかの影響特性は、米ぬかの有無を比較することによって研究することができる。図-11 から明らかなように、米ぬかを含むまたは含まない電圧を測定したところ、4-1 および 4-4 の電圧はそれぞれ 700mVおよび 680mVであり、同じ抵抗で試験したときに米ぬかを含む土壌微生物燃料電池の電流がより高いことは明らかである。したがって、記録された結果に基づいて、土壌微生物燃料電池の性能を向上させるために、米ぬかを混合することが有効であることが明らかになった。24 時間後に異なる 4 つの抵抗(10Ω,100Ω,470Ω,1000Ω)で電圧を測定した。図-11 は 24時間後の電流-電圧曲線であり,傾きは内部抵抗,切片は起電力を示している。図-11 から、腐葉土を含む土壌微生物燃料電池の電圧が高いことが分かる。図-12 は図-11 によって作った電力曲線である。4-14-44-24-14-24-34-44-3図-11.24 時間後の電流-電圧曲線図-12.電流-電力曲線4.微生物電池の性能評価微生物電池のシステムの評価に最も多く使われる評価パラメーターは、負極の電極表面積当たりの最大発電力である。最大発電力は内部抵抗に依存するため電流-電圧直線から測定する。本研究では、ある時間の電流-電圧直線を描き、最大発電力を求める。P=I×V をとることによって土壌微生物燃料電池のワット(W)で電力出力Pを計算することが可能である。ここで、オームの法則 I= V / R を使用して計算される。微生物燃料電池の最大電力を得るために、電圧値は 4つの異なる抵抗(10Ω,100Ω,470Ω,1000Ω)を用いて測定する。最大発電力は内部抵抗に依存するため電流-電圧直線から求める。外部抵抗を変化させた際の電圧と電流をモニターすることにより測定できる。表-4 は図-12 から得られた起電力、内部抵抗と単位面積の最大発電力である。負極の断面積は 0.0042m2 である。最大発電力は 1071mW/m2 である。表-4.内部抵抗と単位面積の最大発電力内部抵抗(Ω)起電力 Vmax (V)2単位面積の最大発電力(mW/m )4-14-24-34-433.3349.2349.9637.120.70.670.680.6810714522148335.おわりに本研究では、安価で容易にできる廃棄物の新たな処理、竹パウダーにより発電する土壌微生物燃料電池を開発した。負極は鉄を巻いた竹炭を,正極に粒状炭を用いることで、安価な資材による土壌微生物燃料電池を作製することができた。また、竹パウダーを加えることで発電力の向上につながった。結論は以下の通りである。(1)電極間の距離が大きいほど電圧が大きい。(2)腐葉土と米ぬかを混合した土壌微生物燃料電池の電力は竹パウダーだけの土壌微生物燃料電池の三倍以上であり、最大発電力は 1071mW/m2 である。(3)使用していた試料は、有機物分解が進み堆肥として利用できるため、環境負荷低減と発電効果を持つ有機系廃棄物の有効利用法となり得る。将来の研究は、異なる有機性廃棄物の混合割合ならびに直列および並列に土壌微生物燃料電池を接続することによって電力の最大化を目指す。また、地盤環境や地盤防災に関わるセンサーの電源としての利用を進めていきたい。参考文献1.Takahashi S ・ Miyahara M:Electricity generation from rice bran in microbial fuel cells.Bioresour Bioprocess 3.1-5.20162.Cheng S ・ Liu H ・ Logan BE:Increased power generationthrough the porous anode and3.李翠・大嶺inacontinuousflowMFCwithadvectiveflowreduced electrode spacing.Environ Sci Technol 40.2426-2432.2006聖:竹パウダー等の有機系資源を用いた土壌微生物燃料電池の開発.地盤工学会研究発表会.2019- 480 -
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  • タイトル
  • 温度変化を考慮した珪砂混合ベントナイトの力学特性に関する実験的検討
  • 著者
  • 柳井 正樹・金澤 伸一・市川 希・武藤 尚樹・小林 千莉・石山 宏二
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 467〜470
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000085
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)14-5温度変化を考慮した珪砂混合ベントナイトの力学特性に関する実験的検討〇柳井正樹 1・金澤伸一 1・市川 希 1・武藤尚樹 1・小林千莉 1・石山宏二 21福島工業高等専門学校・2 西松建設(株)技術研究所1.研究背景および目的核燃料サイクルの過程で発生する高レベル放射性廃棄物の処分方法として,地下 300m 以深への地層処分が選定されている.地層処分において,廃棄物と岩盤との間を充填する緩衝材の主原料には著しい吸水膨潤性と難透水性を有するベントナイトが使用される.その緩衝材には施工性や経済性の観点から,第二次取りまとめ 1)によるとベントナイトと珪砂を 7:3 の割合で混合することが選定されているが,試験事例は限られた条件にとどまっており,詳細な仕様の決定に向けて,様々な力学試験が求められている.また,ガラス固化体の発熱によって緩衝材が長期に渡り高温に晒されることが予想される.そこで本研究では,ベントナイトに珪砂の粒径と配合率の組み合わせに変化を与えて,さらに供試体の温度に変化を与えて一軸圧縮試験を行うことで,種々の配合条件および熱の影響を考慮したベントナイト緩衝材の力学特性に及ぼす影響の解明,またベントナイト緩衝材の仕様設計に向けてデータの蓄積を目的とした.表 1 クニゲル V1・珪砂の諸量2.試料および試験方法本研究では,ベントナイト緩衝材の温度・珪砂配合率・珪砂粒径の変化を考慮した力学特性を把握するため,温度・珪砂配合率・珪砂粒径のパラメータの組み合わせに変化を与えて円柱供試体に対して一軸圧縮試験を行った.各パラメータは,土粒子密度(Mg/m3)2.61モンモリロナイト含有率(%)512.691珪砂の3号土粒子密度5号2.62(Mg/m3)8号2.701初期条件として乾燥密度は 1.6Mg/m3,飽和度 30%表 2 初期条件と設定した.温度は 30℃,50℃,70℃,90℃,珪砂配合率はベントナイト(クニゲル V1)と瑞浪珪供試体直径・高さ(mm)35・80砂 5 号, 3 号,8 号に硅砂配合率を 20%,30%,乾燥密度(Mg/m3)1.640%の割合で組み合わせに変化を与えた.クニゲ飽和度(%)30ル V1・珪砂の諸量を表 1 に示す.土粒子密度につ温度(℃)30,50,70,90いては,クニゲル V1 については,クニミネ工業 2)表 3 各試料の諸量(6:4)の土粒子密度を参照した.また瑞浪珪砂 3 号,5号,8 号ついては土粒子密度試験により算出した.珪砂号数3号5号8号また,モンモリロナイト含有率の測定については,混合土粒子密度(Mg/m3)2.6402.6122.644間隙比0.6500.6320.653有効粘土密度(Mg/m3)1.2601.2701.258産総研におけるベントナイトのメチレンブルー吸着量測定方法3)を参考に煮沸法を用いて行った.以下に試験手順を示す.表 4 各試料の諸量(7:3)① 供試体作製方法珪砂号数3号5号8号混合土粒子密度(Mg/m3)2.6322.6102.635間隙比0.6450.6310.647有効粘土密度(Mg/m3)1.3631.3711.362Na 型ベントナイト(クニゲル V1)と珪砂 3 号(粒径 1.2~2.4mm),珪砂 5 号(粒径 0.3~0.8mm),珪砂 8 号(粒径 0.08~0.2mm)を 6:4,7:3 ,8:2 の割合で混合したベントナイト-珪砂混合試料を作表 5 各試料の諸量(8:2)製した.また,実験における初期条件を表 2 に示す.各試料の諸量を表 3,表 4,表 5 に示す.珪砂号数3号5号8号混合土粒子密度(Mg/m3)2.6232.6092.625間隙比0.6390.6310.641有効粘土密度(Mg/m3)1.4531.4581.452有効粘土密度については以下の式を用いた.𝜌𝑑 (100 − 𝑅𝑠 )𝜌𝑒 =𝜌 𝑅(100 − 𝑑 𝑠 )𝜌𝑠(1)Experimental study on mechanical properties of bentonite mixed with silica sand considering temperature changeMasaki Yanai1, Shin-ichi Kanazawa1, Nozomi Ichikawa1, Naoki Muto1, Senri Kobayashi1, Koji Ishiyama2(1National Institute ofTechnology, Fukushima College, 2Nishimatsu Construction CO.,LTD)KEYWORDS: Bentonite,Geological disposal,temperature, Uniaxial compression test- 467 - 80808060403号5号8号2060403号2005号8号6040100粒径(μm)10003号205号8号0010図1通過百分率(%)100通過百分率(%)100通過百分率(%)10010粒径加積曲線(珪砂配合率 20%) 図 2100粒径(μm)101000粒径加積曲線(珪砂配合率 30%) 図 3100粒径(μm)1000粒径加積曲線(珪砂配合率 40%)9080𝜌𝑒 :有効粘土密度,𝜌𝑑 :乾燥密度,𝜌𝑠 :土粒子密度,𝑅𝑠 :珪砂の土粒70子密度である.また,各混合試料の粒径加積曲線について,図 1,図60温度(℃)2,図 3 に示す.② 含水比調整飽和度が 30%になるように混合試料の含水比調整を行った.含水比の測定の際は,炉乾燥法と比べ時間短縮可能であるために,電子レンジ(500W,15 分間)を用いた.50403090℃2070℃1050℃0③ 供試体成形050100150時間(s)モールドに試料を投入後,突き固め棒で五層に分けて突き固めを行図4い,油圧ジャッキを用いて,10 分間,40MPa で加圧し,直径 35mm,試験中の供試体表面温度の経時変化高さ 80mm の円柱供試体を圧縮成形した.測定した諸量から,モールドに投入する混合試料の質量を決定した.諸量の算定時には,供試体の体積一定として,以下の式を用いた.e=𝜌𝑠−1𝜌𝑑(2)S𝑟 =𝑤𝜌𝑠𝑒𝜌𝑤(3)ここで,e:間隙比,𝜌𝑠 :土粒子密度,𝜌𝑑 :乾燥密度,𝑆𝑟 :飽和度,w:含水比,𝜌𝑤 :水の密度(1.00 Mg/m3)である.④ 温度変化供試体を温度一定に保った水槽内で 1 日養生し,温度変化を与えた.養生時,供試体に遮水シートを取り付け,水と供試体の接触を避けるためにジップロックに入れ,水槽内に設置した.養生後,供試体を水槽から取り出し,一軸圧縮試験中の供試体表面の温度の経時変化を放射温度計を用いて測定したところ,図 4 のような結果となった.50℃,70℃,90℃の条件で,一軸圧縮試験中,供試体表面は目標温度から約-8℃低下した状態から,徐々に供試体表面の温度が低下していく図 5 一軸圧縮試験機の概略図傾向が確認することができた.⑤一軸圧縮試験養生後,圧縮試験用器具を取り付け,JIS A 1216 に準じて一軸圧縮試験を行い,応力-ひずみ関係を求めた.載荷速度は0.4(mm/min)一定とした.試験機には,高圧載荷,温度変化に対応できる機構を備えた容量 10kN の電動スクリュージャッキ方式のものを採用した.試験機の概略図を図 5 に示す. また変形係数 4)については以下の式を用いた.E50 =𝑞𝑢 /2 1×𝜀5010(4)ここで,E50 :変形係数,𝑞𝑢 :一軸圧縮強さ,𝜀50 :𝑞𝑢 /2の時の圧縮ひずみである.- 468 - 1200120012001000100010008006004008号5号3号2008006004008号5号3号2000204060806004002000100020温度(℃)図 6 温度-強度関係(配合率 20%)4060温度(℃)80100温度-強度関係(配合率 30%)図71404.58号3.55号3.03号2.01.51.05号0.0204060温度(℃)80100温度-強度関係(配合率 40%)図8806040008010003号200.54060温度(℃)12008号1002.5201400120変形係数(MN/m2 )4.00最大圧縮強度(kN/m2 )5.03号5号8号80000体積変化率(%)最大圧縮強度(kN/m2)1400最大圧縮強度(kN/m2)1400最大圧縮強度(kN/m2)14008006004008号5号3号2000100020406080100010温度(℃)203040珪砂配合率(%)50図 9 温度-体積変化率関係(配合率 40%) 図 10 温度-変形係数(配合率 40%) 図 11 珪砂配合率-強度関係(温度 30℃)14003.試験結果および考察珪砂配合率と珪砂号数及び温度を変化させた実験結果図 6,図 7,図 8 に珪砂配合率(20%,30%,40%)ごとの温度と珪砂号数を変化させた一軸圧縮試験の結果を示す.図 9 に珪砂配合率 40%の温度と珪砂号数に変化を与えた条件の体積変化率を示す.体積変化率については,以下の式を用いた.𝑉′ − 𝑉() × 100𝑉(5)1200最大圧縮強度(kN/m2)3.110008006004008号5号3号200ここで,𝑉′:養生後の供試体体積,𝑉:養生前の供試体体積である.また,図 10 に珪砂配合率 40%の温度と珪砂号数に変化を与えた条件の変形係数について示す.変形係数においても温度の上昇に伴い最大圧縮強度と001020304050珪砂配合率(%)図 12 珪砂配合率-強度関係(温度 90℃)同様な傾向が確認できた.図 5~図 7 より,いずれの条件においても,温度の上昇に伴い最大圧縮強度および変形係数が線形的に減少していく傾向が確認できた.このように最大圧縮強度,変形係数が減少する理由は複数考えられる.一つ目は,供試体体積の膨張である.養生中の温度が高くなるにつれて体積変化率が上昇する傾向が確認された.そのため,温度が高くなるほど乾燥密度が減少し,さらに膨張に伴い微細なクラックが生じることで強度特性を低下させた可能性がある.なお供試体が膨張した理由としては,ベントナイトの低透水・透気性により,熱によって膨張した間隙水・間隙空気が外に排出されにくかったことが可能性として挙げられる.空気の膨張については,シャルルの法則によると,気体の体積は温度に比例するため,温度が 30℃を基準とすると,50℃では約 1.066倍,70℃では約 1.132 倍,90℃では約 1.198 倍の空気の膨張が生じるとされる.また水の膨張について,30℃の水の密度を基準 5)としたときに,50℃では約 1.008 倍,70℃では約 1.018 倍,90℃では約 1.031 倍の体積膨張が生じるとされるため,水と空気の膨張による微細なクラックの発生が強度特性を低下させたと考えられる.二つ目は,供試体表面の乾燥収縮によって生じたクラックの影響である.養生中の温度が高くなることにつれ,供試体表面からの蒸発量も増えることにより,乾燥収縮によるクラックが増加したことで強度特性を低下させた可能性が考えられる.今回は供試体内部のクラックの確認することはできなかったが,特に表面では養生後の乾燥収縮によるひび割れが確認できた.また温度が高いほどこの影響は大きくなるため,温度の上昇に伴い最大圧縮強度が低下したと考えられる.- 469 - 3.2各温度の珪砂配合率と珪砂号数に変化を与えた試験結果図 11,図 12 に温度が 30℃,90℃,珪砂号数が 8 号,5 号,3 号における珪砂配合率と最大圧縮強度の関係について示す.両図ともに,珪砂配合率の増加に伴い,最大圧縮強度が減少していく傾向が確認できた.珪砂配合率の増加に伴い最大圧縮強度が減少していく原因として,供試体の締固め性が考えられる.増田ら 6) 7)によると,モンモリロナイト含有率が高くなるほど締固め性が悪く,珪砂配合率を増加することで供試体の成型圧力が低減することができると報告されている.そのため,珪砂配合率の増加に伴いモンモリロナイト含有率が減少し,供試体作製時に,締固めに有するエネルギーが低減されることから最大圧縮強度が減少したと考えられる.また,両図ともに,珪砂配合率が同じ条件での珪砂の号数の強度については,珪砂の粒径が小さくなるほど最大圧縮強度が増加する傾向が確認できた.珪砂の粒径が小さいほど最大圧縮強度が増加する理由は複数考えられる.一つ目は,粒径が小さいほどベントナイトと珪砂の混合試料の粒度がより均等になるため強度が増加した可能性である.二つ目は,サクション考えられる.サクションとは,乾燥した不飽和土において間隙水が土粒子を引き付ける力のことであり,間隙内の空気圧と水圧の差として算定される.一般に,サクションが大きいほど見かけの粘着力が発揮され,強度・変形特性が向上するとされている.つまり珪砂粒径が小さいほど珪砂と水の接する面積が大きくなることにより,見かけの粘着力が大きくなるため,同珪砂配合率条件下で,珪砂粒径が小さいほど最大圧縮強度が増加したと考えられる.4.まとめ本試験では三軸圧縮試験と比べ,できるだけ簡便に行うことができる一軸圧縮試験を行うことにより,データ数を増やすことで,ベントナイト緩衝材の強度と種々の珪砂の配合条件,温度依存性について,その関係を解明することを目的とした.本研究で得られた知見は以下のとおりである.(1)温度の上昇に伴い,珪砂混合ベントナイト供試体内部で,膨張した間隙水・間隙空気が外に排出されにくかったことにより体積膨張が生じたことによる乾燥密度の低下.また,供試体表面,内部に乾燥収縮によるクラックの発生.以上のことから,最大圧縮強度が減少していくことが考えられる.(2)珪砂配合率の増加に伴い,モンモリロナイト含有率が低下する.これにより砂配合率が低い条件と比べて供試体の圧縮成形に有するエネルギーが低減できることにより,最大圧縮強度が減少していくことが考えられる.(3)珪砂号数の増加 (珪砂粒径が小さくなる) に伴い,珪砂粒子間に作用するサクションが増加する.これにより最大圧縮強度が増加していくこと考えられる.以上のことから,珪砂混合ベントナイト供試体には温度依存性があること,また,サクションやモンモリロナイト含有率が強度特性に影響を及ぼすことが考えられる.今後の展望として,継続的に試験を行うことでデータの高精度化を図りたい.また,強度特性には珪砂の配合率,珪砂号数のみならず,地層処分施設の施工後の再冠水を考慮した飽和度変化なども影響すると考えられる.そのため珪砂配合率と粒径を変化させたベントナイト供試体に飽和度の変化を与えること.また高レベル放射性廃棄物から発せられる熱の影響を考慮して,珪砂混合ベントナイト供試体に温度変化を与えて一軸圧縮試験を行うことで,ベントナイト・珪砂混合緩衝材の配合設計に向けて施工性,経済性,さらに施工後の再冠水を考慮した力学特性の解明を行う予定である.参考文献1)核燃料サイクル開発機構: 我が国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第 2 次とりまとめ, JNC TN1400 99-022, pp.IV-157- IV-194, 1999.2)クニミネ工業:https://www.kunimine.co.jp/bent/basic.html3)堀内悠,高木哲一:産総研におけるベントナイトのメチレンブルー吸着量測定方法,地質調査総合センター研究資料集,no.555,20124)日本工業規格,JIS A 1216, 土の一軸圧縮試験方法.5)理科年表(水の密度):http://www.rikanenpyo.jp/6)増田良一・雨宮清・千々松正和・足立格一郎・小峯秀雄: ベントナイトを用いた緩衝材の材料仕様と締固め特性の関係, 土木学会論文集 No.772/Ⅲ-68, pp.157-171, 2004.7)竹ヶ原竜大・増田良一・高尾肇・上坂文哉・千々松正和:ベントナイト・砂混合材料の力学試験及び力学的安定性検討, 土木学会第 58 回年次学術講演会,2003.- 470 -
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  • タイトル
  • 熱の影響を考慮したベントナイト緩衝材の再冠水挙動に関する解析的検討
  • 著者
  • 市川 希・金澤 伸一・武藤 尚樹・小林 千莉・柳井 正樹・石山 宏二・河原 裕徳
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 449〜454
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000082
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)14-2熱の影響を考慮したベントナイト緩衝材の再冠水挙動に関する解析的検討〇市川希 1・金澤伸一 2・武藤尚樹 1・小林千莉 1・柳井正樹 1・石山宏二 3・河原裕徳 41福島工業高等専門学校専攻科・2 福島工業高等専門学校都市システム工学科3西松建設(株)技術研究所・4(株)地層科学研究所1. はじめに核燃料サイクルに伴い発生する高レベル放射性廃棄物や TRU 廃棄物は,地下 300m 以深へ地層処分されることが決定されており,事業の安全な実施を目指して技術整備が進められている.地層処分では,地下深部の岩盤が有する「隔離」と「閉じ込め」という性質のうち,閉じ込めに工学的な対策(人工バリア)を施すことにより多重バリアシステムを構築し,高レベル放射性廃棄物の放射能が減衰する数万年から数十万年もの期間,人間の生活環境から安全に隔離することを目的としている.1)多重バリアシステムのうち,人工バリアの一つであるベントナイト緩衝材には,高密度に締固められたベントナイトが用いられる.このベントナイト緩衝材には,自身の有する難透水性や吸水による著しい膨潤性から,緩衝材中の水みちのシール,オーバーパックの安定支持,岩盤のクリープにより生じる応力緩和などの機能とそれによる性能が長期にわたり発揮されることが期待されている.このような地層処分の安全性についての要求事項が,処分場の建設から閉鎖後長期にわたり発揮されるかを把握することは重要である.そのためには,図-1 に示すような地層処分施設の建設から操業,閉鎖後長期において,廃棄体(ガラス固化体とオーバーパックを一体化したもの)周囲に予想される熱,力学,水理,化学的擾乱による問題を数値解析により把握することが有効であると考えられる.特に廃棄体の発する熱は徐々に減少するが,緩衝材に対しては,不飽和状態で温度履歴を受けることにより膨潤性が低下する現象や,浸潤する過程の温度環境によって膨潤性が変化する現象などがあり,より実現象に即した解析を行うためには,熱の影響を考慮したモデルの構築が求められる.本論文では,高山ら2)が提案したベントナイトの膨潤挙動の表現を可能にした弾塑性モデルに対し,新たに熱の影響を組み込んだ熱/土/水/空気溶存型連成有限要素解析プログラム(DACSAR-MP for Bentonite Materials)を構築した.そして,構築した解析コードを用いた再冠水シミュレーションを行うことにより,地層処分の長期安全性に関わる知見を得ることを目的とした.2.不飽和ベントナイトの弾塑性構成モデル高山は,飽和した正規圧密状態のベントナイトに対する非排水三軸圧縮せん断試験建設操業閉鎖(再冠水)・建設操業プロセスで作用する荷重・廃棄体の発熱・不飽和から飽和への力学挙動・廃棄体の発熱・塩水環境・地震など再冠水後~超長期3)4)の結果において,軸差応力の増加による平均有効主応力の変化が少ないことから,ベントナイトは飽和するにつれ粒状体としての性質を消失していき,飽和した際に塑性体積ひずみがほとんど生じない材料と考えた.また,飽和状態に至・モンモリロナイトの溶解・変質・オーバーパックの腐食膨張・水素ガス発生・微生物活動・塩水環境・岩盤のクリープ・地震・廃棄体の圧密沈下などった際には通常の土質材料と同様に限界状態が存在することから,弾塑性論の枠組みの中で熱/土/水/空気連成問題定式化を行うことができるとし,構成モデル化を行った.構成モデル化には,大野らの不飽和力学/化学の連成問題図-1 各期間で予想される現象土の弾塑性構成モデルである Se-Hardening モデル 5)を用いている.Se-Hardening モデルは,有効飽和度が剛性を表す状態量としており,構成モデル自体がコラプスを表現できるモデルとなっている.また,ダイレイタンシーによる体積変形は,大野らの EC モデル 6)を適用している.ECモデルでは,パラメータ nE=1.0 の場合にオリジナル Cam-Clay モデルに帰着し,nE が大きくなるほど尖り点が解消され微分可能となる.これらのモデルに加え,高山は式(1)を提案し,ベントナイトの膨潤特性を表現している.κ = κ(𝑆𝑟 ) = 𝜅0 − (𝜅0 − 𝜅𝑠𝑎𝑡 )𝑆𝑒 𝑙(1)ここで,𝜅𝑠𝑎𝑡 :飽和状態における膨潤指数(𝜅𝑠𝑎𝑡 ≈ 𝜆),𝜅0:𝑆𝑒 = 0における膨潤指数,𝑙:粒状性消失を制御するパラメータ,𝑆𝑒:有効飽和度である.なお,通常の土質材料では,𝜅𝑠𝑎𝑡 = 𝜅0 である.Analytical study on re-flooding behavior of bentonite buffer material considering the influence of heatNozomi Ichikawa1, Shin-ichi Kanazawa2, Muto Naoki1, Senri Kobayashi1, Masaki Yanai1, Koji Ishiyama3, Hironori Kawahara4(1 National Institute of Technology Fukushima College Advanced Course, 2National Institute of Technology Fukushima CollegeDepartment of Civil and Environmental Engineering, 3Nishimatsu Construction CO.,LTD, 4Geoscience Research Laboratory,Co., Ltd. )KEYWORDS: Geological disposal, Analysis, Heat, Bentonite buffer- 449 - 3.解析に用いた水分特性曲線モデル不飽和土の力学挙動は自身のもつサクションに支配される.そのため,土中の水分状態を的確に表現するための水分特性曲線(サクション~飽和度関係)が必要となる.本論文では,河井らが提案する水分特性曲線モデル 7)を用いた.このモデルは,吸水と脱水過程での水分特性曲線のヒステリシスを表現することが可能である.また,任意のサクション,飽和度状態から描く脱水,吸水曲線は杉井,宇野のロジスティク曲式 8)を用いる.図-2 に水分特性曲線の例を示す.このモデルは,𝑆𝑟 = 𝑆𝑟𝑎 +(𝑆𝑟𝑓 −𝑆𝑟𝑎 )(2)(1+𝑠 𝐵 𝑒𝑥𝑝𝐴)であり,任意の点(𝑆𝑟 , s) = (𝑆 ∗ 𝑟 , 𝑠 ∗)からの吸水・脱水において,図-2 水分特性曲線モデルの例 7)𝐴 = 𝐴𝑤 ,𝐵 = 𝐵𝑤,𝑆𝑟𝑓 = 1.0,の時,吸水曲線は𝑆𝑟𝑎 =𝑆 ∗ 𝑟 (1+𝑠 ∗𝐵 𝑒𝑥𝑝𝐴)−𝑆𝑟𝑓(3)𝑠 ∗𝐵 𝑒𝑥𝑝𝐴𝐴 = 𝐴𝐷 ,𝐵 = 𝐵𝐷 ,𝑆𝑟𝑎 = 𝑆𝑟0 の時,脱水曲線は𝑆𝑟𝑓 = 𝑆𝑟𝑎 + (𝑆 ∗ 𝑟 − 𝑆𝑟𝑎 )(1 + 𝑆 ∗𝐵 𝑒𝑥𝑝𝐴)となる.ここで𝑆𝑟 :飽和度,𝑆𝑟0 :残留飽和度,s:サクション,A,B:フィッティングパラメータである.4.解析に用いた比透水係数・比透気係数モデルベントナイトのような材料に対して,比透水係数や比透気係数を求めた実験データは極めて少ない.そのため,本研究では,Mualem の不飽和透水係数推定モデル 9)と VanGenuchten の透気係数式 10)を用いた.これらのモデルは,11𝑚 212𝑚(4)𝐾𝑤 = 𝑘𝑤 𝑘𝑟𝑤 = 𝑘𝑤 𝑆𝑒 2 [1 − (1 − 𝑆𝑒 𝑚 ) ]1(5)𝐾𝑎 = 𝑘𝑎 𝑘𝑟𝑎 = 𝑘𝑎 (1 − 𝑆𝑒 )2 (1 − 𝑆𝑒 𝑚)で表される.ここで,𝐾𝑤:不飽和透水係数,𝑘𝑤:透水係数,𝑘𝑟𝑤:比透水係数,𝐾𝑎:不飽和透気係数,𝑘𝑎:透気係数,𝑘𝑟𝑎:比透気係数,𝑚:形状パラメータである.透水・透気係数における,比透水係数と比透気係数は有効飽和度を変数とした関数となっているため,解析時の有効飽和度の変化に対応して決定される.なお,m は 0~1 の値をとり,ベントナイトに対しては実験による取得が困難であることから,本研究では m=1 を用いた.5.支配方程式熱/土/水/空気連成問題における場の支配方程式を増分型でまとめると以下のようになる.ただし,圧縮側を正とし,微小変形を仮定する.・釣合式・空気に関するダルシー則𝑇div𝜎 = 0,𝜎=𝜎𝑇・有効応力式′𝑁𝑁σ = 𝜎 + 𝑃𝑠 1, 𝜎 = σ − 𝑃𝑎 1𝑣̃𝑎 = −k𝑎 ∙ grad𝑝𝑎(6)(7)・不飽和弾塑性構成式・液相に関する連続条件式𝑛𝑆𝑟̇ − 𝑆𝑟 𝜀𝑣̇ + div𝑣̃ = 0(11)(12)・気相に関する連続条件式𝜎̇ ′ = D: 𝜀̇ − 𝐶 𝑠 𝑆𝑒̇(8)1ε = − (∇𝑢)𝑆2(9)・適合条件式(1 − 𝑆𝑟 )𝜀𝑣̇ + 𝑛𝑆𝑟̇ − 𝑛(1 − 𝑆𝑟 )𝑃𝑎̇− div𝑣̃𝑎 = 0𝑃𝑎(13)・熱方程式̅̅̅̅ )𝑇̇ + (𝜌𝐶)𝑤 𝑛 ∙ ∇𝑇 + ∇ ∙ 𝐽 = 0(𝜌𝐶(14)・水に関するダルシー則𝑣̃ = −k ∙ gradℎ(10)𝑁ここで,σ′:有効応力テンソル,σ :ネット応力テンソル,σ:全応力テンソル,𝑝𝑠:サクション応力,𝑝𝑎:間隙空気圧,D:弾性剛性テンソル,𝜀:ひずみテンソル,𝐶 𝑠:係数テンソル,𝑆𝑒 :有効飽和度,𝑢:変位ベクトル,𝑣̃:間隙水の流速ベ̃:間隙空気の流クトル,𝑘:透水係数テンソル,ℎ:全水頭,𝑆𝑟 :飽和度,𝜀𝑣 :体積ひずみ,𝑛:間隙率,𝑃𝑎:空気圧,𝑣𝑎速ベクトル,𝑛:ダルシー流速ベクトル,𝐽:熱流束ベクトルである.上付きの s は( )内のテンソルの対象部分を表す.実際には,上記の各支配方程式を弱形式化し,有限要素法を用いて空間離散化後,オイラー法によって時間離散化を行った.- 450 - 6.熱理論の導入本解析コードでは,熱による温度変化が水の粘性係数を変化させることを利用し,透水係数の温度依存性を表現した.水の粘性係数は,図-3 に示すように温度の上昇に伴い減少する.ここで,20℃に対応する水の粘性係数を基準(𝜇𝑤0 )とした場合の透水係数は,𝜌𝑤 𝑔𝑘02透水係数,𝜌𝑤 :水の密度,𝑔:重力加速度,𝑘0 :固有透1.6粘性係数(mPa・s)で表される.なお,𝐾𝑤0 :水の粘性係数が 20℃の場合の過率,𝜇𝑤0 :20℃の水の粘性係数である.さらに,20℃の水の粘性係数を基準とすると任意の温度での透水係数は,𝐾𝑤 =𝜌𝑤 𝑔𝑘0𝜇𝑤𝜇= ( 𝜇𝑤0 )𝑤𝜌𝑤 𝑔𝑘0𝜇𝑤0𝜇= ( 𝜇𝑤0 ) 𝐾𝑤0(15)𝜇𝑤0(16)4透水係数(m/s)𝐾𝑤0 =1.20.81000数である.これにより,透水係数は図-4 に示すように温20.4𝑤として表される.なお,𝜇𝑤:任意の温度での水の粘性係3204060温度(℃)800100204060温度(℃)80100図-3 粘性係数-温度関係 11) 図-4 透水係数‐温度関係度の上昇に伴って上昇する.表-1 試験条件水質7.膨潤圧試験の要素シミュレーションイオン交換水試験温度(℃)本章では,新たに構築した熱/土/水/空気溶存型連成有限要素解析プ30,9050,600.61ログラム(DACSAR-MP for Bentonite Materials)を用いた膨潤圧試験の初期間隙比要素解析を行い,得られる結果を既往の温度変化を考慮した試験結果含水比(%)7.946.53と比較検討を行った.飽和度(%)33.4127.457.1 温度変化を考慮した膨潤圧試験市川ら12)は温度を 30~90 度に制御した温水中膨潤圧試験を実施しロードセルている.表-1 に試験条件,図-5 に試験機の概略図を示す.試験に用いた試料はクニゲル V1 と東北珪砂 8 号を 7:3 の割合で混合した珪砂混合体である.クニゲル V1 の土粒子密度は 2.60(Mg/m3)であり,供試体は直径 28mm,高さ 10mm,乾燥密度は 1.60(Mg/m3)である.試験は供熱電対変位計ヒーターpp 球試体を図-5 に示す位置に設置後,所定の温度まで温めた水を水槽内に注水した後に開始している.試験中は,水槽内の温度をヒーターと熱電対によって制御し,誤差は所定の温度にから±3 度の範囲であった.なお,初期条件,境界条件として,供試体上部は非排水・排気境界,供試体下部は排水・非排気境界である.試験の結果,図-6 のように,試験中の温度が高くなることにより給図-5 試験機の概略図 12)水開始から短時間で膨潤圧が大きく発生する傾向が確認されている.7.2 解析条件400水/空気溶存型連成有限要素解析プログラム(DACSAR-MP for Bentonite Materials)においてどの程度再現可能であるかを検証するため,膨潤圧試験のシミュレーションを行った.図-7 に解析モデル,図-8 に水分特性曲線,表-2 に解析に用いた材料パラメータをそれぞれ示す.解析モデルは,縦と横が 20mm であり,上端を排水・排気境3界,下端を排水・非排気境界とした.初期飽和度は 20%,乾燥密度を 1.60Mg/mと設定し,透水係数は佛田らの行った高圧圧密試験13)から求めた乾燥密度31.60Mg/m に対応する透水係数を,透気係数は棚井が行ったガス移行試験14)の結果から求められた値をそれぞれ用いた.なお,透水係数,透気係数の異方性は考膨潤圧Ps (kPa)次に,市川らの行った膨潤圧試験から得られた傾向を,新たに構築した熱/土/90℃60℃30020010050℃30℃00 2 4 7 9 12 14 16時間(h)図-6 膨潤圧の継時変化 12)慮していない.モンモリロナイト含有率を示すパラメータ αmon は,ベントナイトと珪砂を 7:3 の割合で混合した場合のおおよその値として 40%とした.水位の上昇は要素下端から行った.水分特性曲線については,本研究で用いた不飽和土の力学モデルがマトリックサクションを用いて構築されていることから,マトリックサクションを用いることが適切である.しかしながら,マトリックサクションの測定は,最大で 1500kPa までしか測定することができず,これまで高含水比の測定に留まっている.そのため,本研究では高山による水分特性曲線を用いた.- 451 - ここで,λ:圧縮指数,κ0:Se=0 における膨潤指数,l:粒状性消失を制御するパラメータ,M=(q/p’):応力比,nE:EC モデルのフィッティングパラメ-タ,a,n:不飽和化による圧密降伏応力の倍率を決定するパラメ-タ, Sr0:残留飽和度,ka:透気係数,kw:透水係数,ν’:ポアソン比,Gs:土粒子比重である.解析では,要素の温度を境界条件として 30℃と90℃にそれぞれ設定した.7.3 解析結果図-9 に解析結果を示す.解析の結果,30℃よりも 90℃の1ほうが,水位の上昇開始から短い時間でより大きな膨潤圧非排水・非排気境界を発生させ,平衡膨潤圧に達するまでの時間が短くなる傾⑤向が確認された.このような傾向は,図-6 のような市川ら④が行った試験中の温度を制御したベントナイトの膨潤圧試③験においても確認されている.しかしながら,市川らの行っ②た試験では,試験温度 30℃の供試体は給水開始から緩やか①に平衡状態に達するのに対して,試験温度の高い 50℃,排水・非排気境界60℃,90℃の膨潤圧は増加後,一度減少しており,膨潤圧の図-7 解析モデル発生経路が温度ごとに異なる傾向が確認されている.これDegree of saturation非排水・排気境界DryingAD=-37,BD=4.20.80.60.40.2WettingAW=-11,BW=1.60050001000015000Suction(kPa)図-8 水分特性曲線表-2 材料パラメータは,試験温度が高い供試体では,透水係数が上昇し,水が早λκ0い時間で流入したため安定した構造を維持し続けることがlnE0.140.01101.8MSr0ⅴ'n0.50.10.451aGska(m/day)kw(m/day)202.790.5184.752×10-8できず,供試体内部の構造が変化したことが原因であると考えられる.モンモリロナイトの膨潤挙動には,マトリックサクションの他にも,土粒子に多数存在する荷電粒子が水を吸水しようとするオスモティックサクションが作用している.そのため,マトリックサクションを用いてモンモリロナイトの膨潤挙動を定式化した場合は,膨潤挙動の再現は困難であり,今後はオスモティックサクションを考慮した1.5果を比較すると,30 度では 10 倍程度,90 度では 3 倍程度の差が確認される.しかしながら,既に本研究で用いた解析コードによる膨潤圧の再現性についての妥当性は,既往の研究結果 15)と比較し,完全ではないものの確認されている 2).そのため,今後は本研究で比較した膨潤圧試験結果とは別の試験結果との比較を行うことで,さらなるモデルの妥当性を検討していく必要がある.また,試験の温度を考慮したベント膨潤圧(MPa)膨潤挙動の定式化を行う必要があると考えられる.また,膨潤圧の試験結果と解析結1.030℃90℃0.50.00ナイトの膨潤圧試験結果は少ないため,試験データベースの拡充を行う必要もある.-0.58.再冠水シミュレーション204060時間(day)図-9 解析結果本章では,DACSAR-MP for Bentonite Materials に新たに熱の影響を考慮したモデルも用いることで,処分坑道断面の再冠水シミュレーションを実施し,再冠水期間中に緩衝材内部で生じる現象の把握を試みた.1.25m8.1 解析条件埋め戻し材図-10 に解析モデルを示す.解析モデルは,第二次取4.5m竪置き方式断面を採用した.材料パラメータは表-1,表0.7mりまとめ 1)で提示されている軟岩系岩盤の横置き方式・要素8池ら16)が非定常面熱源法測定装置を用いて測定した熱0.82m-2 の値を用いた.緩衝材の熱伝導率および比熱は,菊要素38緩衝材た.埋戻し材の熱物性値は,第二次取りまとめ 1)に掲示0.7m子密度,乾燥密度などを考慮し逆算することにより求め4.13m物性値に対し,試験に用いられた供試体の間隙比,土粒されている値を用いた.埋戻し材の透水係数は,原子力発電環境整備機構が公表した包括的技術報告書1.1m17)に掲1.1m示されている値を用いた.埋戻し材の透気係数につい図-10 解析モデル(横置き方式・竪置き方式)は,データの取得が行われていなかったため,緩衝材と埋戻し材の透水係数の比から推定した.なお,埋戻し材の水分特性曲線については,データの取得が行われていないため,図-6 と同様のものを用い,解析モデル全域で初期飽和度を 50%,初期サクションを-200m とした.- 452 - 解析は,処分坑道を埋戻し材で閉塞した時点を初期状態とし,坑道周囲および処分孔周囲を排水・排気境界とした.再冠水は,坑道および処分孔全面から行い,所定の時間で土被りに相当する 300m まで水頭を上昇させることで再現した.なお,なお,初期条件は均一な密度分布,全応力,飽和度,全水頭分布を仮定し,再冠水期間は 10 年と 100 年とした.核種の崩壊熱については,100℃一定とし,処分期間中の減少は本解析上では考慮していない.8.2 解析結果表-2 材料パラメータ図-10 に温度分布の結果を示す.温度分布に関しては再冠水期間緩衝材の違いによる熱伝導の違いが確認されなかったため,図-10 には再59.2688.990.6730.690透水係数(m/day)4.752×10-84.14×10-7透気係数(m/day)0.5184.141.61.80.40.3𝜆𝑠 (𝑘𝐽/𝑚∙𝑑𝑎𝑦∙𝐾)冠水期間 10 年の結果を示す.横置き方式では,解析の開始と同時𝐶𝑠 (𝑘𝐽/𝑘𝑔 ∙ 𝐾)に廃棄体からの熱が徐々に伝わり,30 日後に坑道内部はおおよそ100℃に達することが確認された.竪置き方式では,廃棄体からの埋戻し材熱が緩衝材から埋戻し材の方へと流れ,5 年後に坑道内部はおおよそ 100℃に達することが確認された.図-12,図-13 に横置き方式・再冠水期間 10 年,100 年における乾燥密度(Mg/m3)飽和度の継時変化を示す.同図によると,再冠水期間 10 年,100 年αmontime : 10.010000time : 0.010000time : 20.010000の両者は再冠水の開始と同時に坑道周囲から飽和度が上昇していtime : 30.010000くことが確認された.しかしながら,再冠水期間 10 年で20度は,再冠水終了から 100 年経過後も坑道内部に不飽和領域の存在が確認された.図-14,図-15 に竪置き方式・再冠水期間 10 年,100 年における飽和度の継時変化を示す.同図によると,再冠水開始と同時に緩衝材,埋戻し材の飽和度100度は徐々に上昇していき,再冠水期間 10 年では約 8 年後,0年time : 0.01000010 日20 日time : 1095.010010time : 365.010010再冠水期間 100 年では約 60 年後に埋戻し材がおおよそ飽30 日time : 1825.01001020度和することが確認された.またその際,廃棄体上部の緩衝材は完全には飽和していないことが確認された.再冠水期間 100 年では,この不飽和領域は 100 年後に飽和するが,再冠水期間 10 年では 100 年経過後も飽和しないことが確100度認された.次に,各処分形態および再冠水期間ごとの廃棄体上部0年(図-10 のうち,横置き方式は要素 8,竪置き方式は要素38)の飽和度の継時変化を確認する.図-16 に要1年3年5年図-11 温度分布の継時変化(横置き・竪置き)time : 3650.010010time : 0.010000time : 1825.010010time : 2190.010010time : 36501.01171950%素 8,要素 38 の飽和度の継時変化を示す.図-16によると,再冠水期間 100 年では竪置き方式,横置き方式のいずれも前述のコンター図と同様に飽和していることが確認された.しかしながら,100%再冠水期間 10 年では,竪置き方式,横置き方式0年のいずれも完全には飽和せず,竪置き方式での飽和度は 0.83,横置き方では 0.97 であった.これ5年6年10 年time : 36501.011719100 年図-12 飽和度の継時変化(横置き・再冠水期間 10 年)time : 0.010000time : 10951.009766time : 25551.009766time : 14601.00976650%は,内部に圧縮された空気が溶解せずに飽和化を妨げているためであるからと考えられる.9.まとめ本研究では,弾塑性論に基づいたベントナイトの膨潤特性を表現できる構成モデルに,新たに熱の影響を考慮することで,温度変化によって変化100%0年30 年40 年70 年100 年図-13 飽和度の継時変化(横置き・再冠水期間 100 年)するベントナイトの膨潤性の表現,再冠水に伴う坑道内部の緩衝材,埋戻し材の挙動の把握を試みた.本解析の結果.以下のことが明らかとなった.①構築した解析コードでは,温度環境が変化した場合のベントナイトの平衡膨潤圧に達するまでの時間の違いを表現可能であること.②ベントナイトの挙動を表現するためには,既存の弾塑性論の考え方に加えて拡散電気二重層理論要性も示唆されること.- 453 -18)等を組み込む必 ③再冠水期間が短い場合,坑道内部に局所的な不time : 0.010000time : 1825.010010time : 2555.010010time : 2920.010010time : 3650.010010time : 36501.01171950%飽和状態が存在する可能性があること.④再冠水後の不飽和領域では,空気圧が他の地点よりも高くなること.今後は,再冠水方法や再冠水期間の違いを考慮し100%た解析を行うとともに,温度変化を考慮した膨潤試験を行うことで,得られた結果から解析コードの高度化を図る.また,温度環境の変化を考慮した膨潤0年5年7年8年10 年100 年図-14 飽和度の継時変化(竪置き・再冠水期間 10 年)time : 0.010000圧試験に関するデータベースを拡充し,拡散電気二time : 14600.009766time : 18250.009766time : 21900.009766time : 25550.009766time : 365010.00000050%重層の理論を取り入れた膨潤評価式などを用いた評価を試みる.参考文献1)100%核燃料サイクル開発機構: わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第 2 次取りまとめ, JNC TN14000年40 年50 年60 年70 年100 年図-15 飽和度の継時変化(竪置き・再冠水期間 100 年)99-022, pp.7-12, 1999.2)Takayama Yusuke, Tachibana Shinya, Iizuka Atsushi, Kawai Katsuyuki, KobayashiIchiz: Constitutive modeling for compacted bentonite buffer materials as1.2unsaturated and saturated porous media, SOILS AND FOUNDATIONS,57(1), pp.80-91, 2017.1笹倉剛, 畔柳幹雄, 小林一三, 岡本道考: ベントナイト変遷挙動評価のモデル化のためのデータ取得Ⅱ, 核燃料サイクル機構契約業務報告書, JNCTJ8400, pp.2003-048, 2003.4)笹倉剛, 畔柳幹雄, 岡本道考: ベントナイト変遷挙動評価のモデル化のためのデータ取得Ⅱ, 核燃料サイクル機構契約業務報告書,JNC TJ8400 2002-飽和度(-)3)0.80.40025.7, 2002.5)50100時間(y)大野進太郎, 河井克之, 橘伸也: 有効飽和度を剛性に関する状態量とした不飽和土の弾塑性構成モデル, 土木学会論文集, 63, No.4, pp.1132-1141, 2007.6)竪置き・10年竪置き・100年横置き・10年横置き・100年0.6図-16 飽和度の継時変化大野進太郎, 飯塚敦, 太田秀樹: 非線形コントラクタンシー表現式を用いた土の弾塑性構成モデル, 応用力学論文集, 土木学会, pp.407-414, 2006.7)河井克之, 汪偉川, 飯塚敦: 水分特性曲線ヒステリシスの表現と不飽和土の応力変化, 応用力学論文集, Vol.5, pp.777784, 2002.8)杉井俊夫, 宇野尚雄: 新しい水分特性曲線のモデル化について, 土木学会第 50 回年次学術講演会概要集, pp.130-131,1995.9)Mualem,Y: A new model for predicting the hydraulic conductivity of unsaturated porous media, Water Resources Research 12,No.3, pp.514-522, 1980.10) Van Genuchten: A closed-form equation for predicting hydraulic of unsaturated soils, Soil Science Society American Journal 44,pp.892-898, 1980.11) アズワン: 純水の粘度,動粘度および密度, https://www.as-1.co.jp/academy/24/24-2.html.12) 市川希, 金澤伸一, 林久資, 武藤尚樹, 石山宏二: 温度変化を考慮したベントナイト緩衝材の膨潤特性, 土木学会第73 回年次学術講演会講演概要集 CS7-017, 2018.13) 佛田理, 小峯秀雄, 安原一哉, 村上哲: 高圧圧密試験機を用いたベントナイトの透水係数算出における試験方法の高度化,土木学会論文集 C,Vol62 No.3, pp.573-578, 2006.14) 棚井憲治: 緩衝材中ガス移行試験データベース, JAEA-Data/Code2008-028, 2008.15) 鈴木英明, 藤田朝雄: 緩衝材の膨潤特性, JNC TN8400 99-038, 1999.16) 菊池広人, 棚井憲治: 緩衝材の熱物性測定試験(Ⅲ)-面熱源法による緩衝材熱物性の取得-, JNC TN8430 2003-009, 2003.17) 原子力発電環境整備機構(NUMO)包括的技術報告書: わが国における安全な地層処分の実現‐適切なサイトの選定に向けたセーフティケースの構築‐, NUMO-TR-18-02, 2018.18) 小峯秀雄, 緒方信英: 砂・ベントナイト混合材料および各種ベントナイトの膨潤特性, 土木学会論文集, No.701/Ⅲ58, pp.373-385, 2002.3.- 454 -
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  • 熱・流体・応力連成解析による水蒸気が及ぼす再冠水時のバリア性能への影響
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  • 佐藤 伸・大野 宏和・棚井 憲治・山本 修一・深谷 正明・志村 友行・丹生屋 純夫
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 441〜448
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000081
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)14-1熱・流体・応力連成解析による水蒸気が及ぼす再冠水時のバリア性能への影響〇佐藤伸 1・大野宏和 2・棚井憲治 2・山本修一 1・深谷正明 1・志村友行 1・丹生屋純夫 11(株)大林組・2 日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センター1. はじめに高レベル放射性廃棄物の地層処分施設は,廃棄体からの発熱影響,地下水の浸潤及び粘土系材料である緩衝材の膨潤影響といった熱・流体・応力連成(以降 THM 連成)挙動が生じ,その影響把握を適切に行い,施設の安全評価に反映する必要がある.THM 連成挙動は,発熱による温度上昇により,力学的には体積膨張,水理的には熱源周辺の飽和度の低下と粘性低下による透過性の増大が生じる.また,水蒸気発生により間隙圧力の増大も予想される.このように,THM が連成することにより,各々の現象が相関し合いながら状態が変化する.幌延深地層研究センターでは人工バリア図-1 人工バリア性能確認試験概要の再冠水時の熱・水・応力・化学連成現象に係るデータ取得を目的として,人工バリア性能確認試験が実施されている.本研究では,THM 連成挙動の把握及び解析モデルの検証を目的として,幌延深地層研究センターで実施中の人工バリア性能確認試験を対象に THM 連成挙動解析を実施した.本報では,特に,オーバーパックの発熱に伴い発生する水蒸気が及ぼす再冠水時の緩衝材への影響について詳細に検討した.2. 人工バリア性能確認試験の概要人工バリア性能確認試験は,幌延深地層研究センターの深度 350m の調査坑道で,軟岩系岩盤における竪置き方式を対象として,実規模・実物を基本に実施している.人工バリア性能確認試験概要を図-1 に示す.人工バリア性能確認試験は,ヒーターを内蔵した模擬オーバーパック,その周りに配置されるブロック成型された緩衝材,転圧による締固め及びブロック成型された埋め戻し材で構成されている.緩衝材はクニゲル V1(ナトリウム型ベントナイト)にケイ砂を 30wt%配合し,乾燥密度ρd=1.8Mg/m3 でブロック型に圧縮成型されている.埋め戻し部については,クニゲル V1 に掘削ズリを60wt%配合する混合土を用いており,下部は転圧によってρd=1.2Mg/m3 で締め固め,上部はρd=1.4Mg/m3 で圧縮成型されたブロックベントナイトが設置されている.なお,埋め戻し部の掘削ズリの混合率と乾燥密度は,岩盤と同等以下の透水係数の確保と自己シール性を満足するように設定されている.注水は,緩衝材及び坑道周辺に設置された砂層及び埋め戻し部に設置されている人工注水管から同一深度の地下水を注水している.計測機器は,温度計,土圧計,間隙水圧計,変位計及び水分計等が配置されている.本試験は,2015 年 1 月 15 日から加熱・注水を開始しており,模擬オーバーパック内のヒーターの温度は約 100℃に設定されている.3. 解析概要3.1 解析方針オーバーパックが発熱しているところに地下水が浸潤し,ベントナイト系材料が膨潤する挙動を再現する必要があるた め , THM 連 成 解 析 を 実 施 す る . 用 い る 解 析 コ ー ド は カ タ ル ー ニ ャ 工 科 大 の 地 盤 工 学 研 究 室 で 開 発 さ れ たCODE_BROGHT1)を用いる.本コードの支配方程式は,固体,水,ガスの質量保存則,運動量保存則及び内部エネルギー保存則より記述されている.支配方程式内における各流束は構成式及び平衡則から導かれ,具体的には,水・ガスの移流は Darcy 則,熱伝導は Fourier 則,水蒸気や溶存ガスの拡散は Fick 則を適用している.間隙水の加熱による水蒸気化(液相から気相),間隙空気圧増加による水への溶解(気相から液相)と言った相変換については,前者がサイクロメトリック則を適用し,後者は Henry 則を用いている.力学については,応力速度で記述され,以降に記す,弾塑性構成モデルあInfluence of pore water vaporization on re-saturation process in engineered barrier performance by Thermo–Hydro–Mechanicalcoupled analysisShin Sato1, Hirokazu Oono2, Kenji Tanai2, Shuichi Yamamoto1, Masaaki Fukaya1, Tomoyuki Shimura1, Sumio Nyuunoya1(1ObayashiCorp., 2Japan Atomic Energy Agency)KEYWORDS: Effective stress analysis, Bentonite, THM coupled analysis, Pore water, Vaporization- 441 - qP0dεvpP’図-2dεp*Barcelona Basic Modelにおけるe-logp’サクション関係dεspsSILC図-3Barcelona Basic modelの降伏面るいは線形弾性に基づく変形,流体の間隙圧力の増減による体積変化及び温度変化による体積変化の 3 つの和による.流体影響と温度影響による項については,体積成分のみとなり,偏差応力成分は考慮されない.CODE_BRIGHT では線形弾性はもとより,非線形弾性,弾塑性構成モデル等が考慮されている.弾塑性構成モデルのうち,最も特徴的なのが,膨潤性粘土の飽和・不飽和状態での挙動を考慮できる Barcelona Basic model2)(以降,BB モデル)が考慮されている点である.BB モデルは,修正 Cam – Clay モデル 3)を不飽和土に拡張したモデルであり,以下の挙動が考慮される.なお,BB モデルの e-logp’サクション関係については図-2 に示し,降伏面については図-3 に示す.圧密特性のサクション依存性.サクションの増加による塑性ひずみの発生と圧密降伏応力の増加.サクションの増加による粘着力の増大(内部摩擦角は一定).サクション低下に伴う膨潤変形.不飽和粘土も飽和に至ると,飽和までのサクション・応力経路とは関係なく,圧密に関しては同一の挙動が生じる.不飽和粘土は湿潤により,拘束応力が小さい場合は体積膨張し,高い場合は不飽和粘土の体積変化はサクション変化が同時に生じると経路依存の体積図-4 解析モデル及び境界条件(単位mm)変化挙動を示す.表-1 比熱パラメータ4)体積収縮する.膨潤挙動については,サクション変化によって発生する体積ひずみ増p5p6p7分(拘束応力依存)を後述の式(12)で定義し,これを全体積ひずみ増緩衝材10067.34.18分に加えることで構成則の中で考慮される.なお,E. E. Alonso et al. 2)で埋め戻し材10040.04.18は,上述の挙動や膨潤挙動に対して実験との対比を行いモデルの妥当性検証を行っており,山本ら 4)も小峯の膨潤評価式及び実験結果との整合性を示している.3.2 解析モデル本解析検討では,模擬オーバーパック中心から坑道端部までをモデル化した軸対称モデルを用いた.解析モデルを図4 に示す.人工注水管は緩衝材及び埋め戻し部の外側に設置されており,かつ,岩盤の剛性は緩衝材や埋め戻しよりも十分に大きいことから,緩衝材,埋め戻し部及び模擬オーバーパックをモデル化の対象とした.力学境界条件は法線方向を固定,接線方向を自由としている.水理境界及び温度境界については,図-4 において,赤線は水理境界と温度境界を設定し,緑線については,温度境界のみ設定した.水理境界は,坑道上部及び側部,緩衝材周辺に設定し,飽和条件(間隙水圧 Pl=間隙空気圧 Pg)で注水し,注水圧は Pl=Pg=0.3MPa とした.温度境界は,実験の計測結果より緩衝材外側を 35℃,埋め戻し部の外側を 23℃とした.ヒーター部の温度については,模擬オーバーパック全体が 100 日間で 100℃まで上昇するものとし,100 日以降は定常状態として 7300 日(20 年)まで解析を実施した.3.3 解析パラメータTHM 連成解析を実施する場合,熱物性,気液混合二相流物性,力学物性等を設定する必要がある.そこで,本検討では,日本原子力研究開発機構(以降,JAEA)5)で取得された物性値を基に設定した.ただし,CODE_BRIGHT で必要となるパラメータとは異なる場合は,適切な仮定に基づき設定した.3.3.1 物理物性値- 442 - CODE_BRIGHTで用いた物理パラメータ記埋め戻し材埋め戻し材単位緩衝材号(転圧)(ブロック)土粒子密度kg/m3268025932593𝜌固相の比熱J/kg・K673400400𝐶間隙率n%32.853.445.6線形線膨張係数1.0×10-61.0×10-61.0×10-6K-1α5)表-3 JAEA における各材料の熱物性値熱伝導率p1p2p3p4乾燥飽和[W/mK] [W/mk]緩衝材7.56×10-2-7.00×10-4-2.011.560.7981.94埋め戻し-22.13×100.224000.2241.17転圧埋め戻し0.3392.97×10-2000.3391.31ブロック表-4 CODE_BRIGHTで用いた熱伝導率記埋め戻し材埋め戻し材単位緩衝材号(転圧)(ブロック)𝜆熱伝導率(乾燥)W/mK0.7980.2240.339熱伝導率(飽和)W/mK1.941.171.31𝜆表-5 CODE_BRIGHTで用いた二相流パラメータ記単埋め戻し材 埋め戻し材緩衝材号位(転圧)(ブロック)初期飽和度Sl%50.085.0100.0絶対浸透率Km21.38×10-203.00×10-181.76×10-19水分特性曲線モデル係数MPa1.961.985.65𝑃モデル係数-0.2750.4390.289λ最大飽和度-1.001.001.00𝑆残留間隙水飽和度-0.000.000.00𝑆相対浸透率モデル係数-0.5000.4390.289λ最大飽和度-1.001.001.00𝑆残留間隙水飽和度-0.000.000.00𝑆表-2対象とする物性値は,土粒子密度,固相の比熱,間隙率,線膨張係数である.JAEA5)の報告書によれば,比熱 c については,含水比に依存する式(1)を適用している.C=𝑝 +𝑝 𝜔𝑝 +𝜔(1)ここで,式中に使用されるパラメータωは含水比を示し,その他の𝑝 ,𝑝 ,𝑝 はモデルパラメータであり,表-1 に示すように材料ごとに設定されている.これを飽和度と比熱の関係に整理すると,概ね直線と仮定できる.一方,CODE_BRIGHT における比熱パラメータは,固相,液相及び気相の各相に与える必要がある.そこで,固相の比熱については,飽和度 0 の時の値を適用するものとした.本検討で適用する物理物性値を表-2 に示す.3.3.2 熱物性JAEA5)における熱伝導率λは埋め戻し材を式(2),緩衝材を式(3)で表している.λ = 𝑝 +𝑝 𝜔+𝑝 𝜔 +𝑝 𝜔(2)λ=𝑝 +𝑝 𝜔+𝑝 𝜔 +𝑝 𝜌(3)ここで,𝑝 ,𝑝 ,𝑝 ,𝑝 はモデルパラメータであり,表-3 に示すとおりである.これを飽和度依存の熱伝導率を仮定すると概ね直線と仮定できる.次に,CODE_BRIGHT で用いられる熱伝導率は式(4)による.λ=𝜆𝑆 +𝜆こ こで,𝜆1− 𝑆(4)は飽和状態の熱伝 導率,𝜆は乾燥状態における熱伝導率 及び𝑆 は飽和度を示す. このように ,CODE_BRIGHT で用いる熱伝導率は乾燥状態と飽和状態の熱伝導率を与え,飽和度に依存する値になっている.よって,本検討では,𝜆は飽和度 0 の時の値を用いるものとした(表-4).は飽和時の熱伝導率を用い,𝜆3.3.3 二相流パラメータ絶対浸透率,水分特性曲線については既知であるため,JAEA5)で設定された値を用いる.この他に液相及び気相の相対浸透率を設定する必要がある.水分特性曲線については,van Genuchten モデル 6)を用いていることから,液相の相対浸透率についても同様に van Genuchten モデルを用いるものとした.van Genuchten モデルの水分特性曲線 Pc を式(5),式(6)に示す.𝑃 =𝑃𝑆−1𝑆 = (𝑆 − 𝑆 )⁄(𝑆 − 𝑆 )(5)(6)同モデルの液相の相対浸透率𝐾 を式(7)に示す.𝐾 =𝑆1− 1−𝑆(7)ここで,𝑃 ,λはモデルパラメータ,𝑆 は有効飽和度,𝑆 は残留間隙水飽和度,𝑆 は最大飽和度を示す.なお,モデルパラメータλは式(5)値を液相の相対浸透率にも用いた.気相の相対浸透率𝐾 については,液相を反転させた Grant モデル7)とし,𝐾= 1 − 𝐾 による.本検討で用いた二相流パラメータを表-5 に示す.3.3.4 水蒸気拡散CODE_BRIGHT における水蒸気拡散は Fick の法則を仮定しており,式(8)による.𝑖 = − 𝜏𝜙𝜌 𝑆 𝐷 𝐼 ∇𝜔(8)ここで,𝑖は質量流束,𝜏が屈曲度,𝜙は間隙率,𝜌は𝛼相の質量,𝑆は𝛼相の飽和度,𝜔は質量分率,𝐷は𝛼相の拡散係数を- 443 - 圧縮指数膨潤指数膨潤評価式(小峯, 1999)圧縮指数 λ,膨潤指数 κ飽和時膨潤ひずみ smax (%)0.15Code_Bright40302010 (s)  0 (1  r ) exp(  s)  r0.10(𝜆 = 0.11, 𝛽 = 2.0, 𝛾 = 0.48)0.05(α=-1.81×10-5, αl=-9.78×10-2)0.0000.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.400.20.40.60.81マトリックサクション s (MPa)鉛直拘束応力 σvnet (MPa)図-5 小峯の膨潤評価式9)とBBモデルのフィッティング結果図-6 圧縮指数と膨潤指数のサクション依存性示す.なお,上付きの𝑖は𝛼相中の他の媒体(例えば,液相中の空気あるいは気相中の水)を表す.拡散係数は温度と間隙空気圧に依存する式となっており,式(9)より算出する.𝐷 =𝐷(273.15 + 𝑇)𝑃(9)ここで,𝐷,𝑛はモデルパラメータ,T は温度,𝑃 は間隙空気圧を示す.なお,本解析では屈曲度の飽和度依存性は考慮しない.材料パラメータは全材料共通とし,パラメータ𝐷は5.9 × 10 ,パラメータ𝑛は2.30及び屈曲度𝜏は1.0とした.3.3.5 力学パラメータ緩衝材は BB モデル 2)を適用することから,弾塑性パラメータを設定する必要がある.BB モデルの設定のうち,飽和時のパラメータについては,修正 Cam – Clay3)モデルに従うことから,平成 29 年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業報告書8)を参照し,膨潤指数,圧縮指数及び限界状態応力比を設定する.その他のパラメータについては,フィッティングを行い同定する.モデルパラメータのうち,𝜅 と𝛼 はサクション変化によって生じる体積変化(膨潤変形)を表すためのパラメータである.通常はサクションを制御した不飽和状態での試験結果が必要であるものの,小峯の膨潤評価式 9)に対してフィッティングを行うことにより簡易に設定することができる 4).ここで,膨潤圧𝜎 に関しては,核燃料サイクル開発機構 10)による式(10)を参照した.𝜎= 𝑒𝑥𝑝(4.24𝜌 − 20.04𝜌 + 37.63𝜌 − 26.07)(10)ここで,ρe は有効粘土密度を示す.なお,乾燥密度ρd=1.8Mg/m3,珪砂混合率𝑅粘土密度はρe=1.605Mg/m3 となり飽和膨潤圧はσ= 30𝑤𝑡%の緩衝材の場合,有効=1.262MPa となる.BB モデルにおけるサクション変化に伴う,膨潤指数𝜅 は以下の式による.𝜅 =𝜅1+𝛼ここで,𝜅 と𝛼 ,𝛼 はモデルパラメータ,𝑝𝑝⁄𝑝𝑒𝑥𝑝(𝛼 ∙ 𝑠)は平均基底応力,𝑝(11)は参照応力,s はサクションを示す.𝛼= 0とし,サクション減少による体積ひずみ増分d𝜀 は次式で表される.ds ここに,e0 は初期間隙比,𝑝s01e01sp lnpnetdspref spatm(12)は大気圧である.さらに,平均基底応力 pnet 一定条件下でサクションが s0 から s まで変化したときの膨潤体積ひずみs は次式で表される.s pspatms01sp ln net ∙ ln1e0prefs0 patm(13)ここで,上式を s=0 とすれば,一定有効応力下で飽和膨潤させたときの飽和時の膨潤ひずみ𝜀pps0ssat 1sp ln net ∙ ln atm1e0prefs0 patmが得られる.(14)上式と小峯の膨潤評価式から得られる飽和時の膨潤ひずみと鉛直拘束応力の関係をフィッティングさせることにより,BB モデルのパラメータである𝛼 と𝜅 を同定する.ここで,𝛼 =-0.394,𝜅 =0.143 とすることで図-5 の結果を得る.次に,サクション依存の圧縮指数λ(𝑠)と膨潤指数κ(𝑠)のパラメータを設定する.BB モデルによる,サクション依存の圧縮指数と膨潤指数は以下の式による.λ(𝑠) = 𝜆 {(1 − 𝛾)𝑒𝑥𝑝(−𝛽 ∙ 𝑠) + 𝛾}κ(𝑠) = 𝜅1 + 𝛼 ∙ 𝑠 + 𝛼 𝑙𝑛𝑠 + 0.10.1- 444 -(15)(16) 相対浸透率表-6 CODE_BRIGHTで用いた物理パラメータ項目記号単位設定値初期乾燥密度Mg/m31.80ρd初期間隙比-0.489e0.30ポアソン比ν膨潤指数(飽和時)-0.07κ0圧縮指数(飽和時)-0.125λ0モデルパラメータ-0.1431κs0〃--0.394αsp〃--1.81×10-5𝛼〃--9.78×10-2𝛼〃-2.0𝛽〃-0.48𝛾0.63限界応力比M飽和時引張強度MPa0.0Ps0圧密先行応力(飽和時)MPa8.050P 0*熱に関するパラメータ℃-11.00×10-6𝛼表-7 結果ケースケース相変換KrgC11-krl考慮C2非考慮-Power則C3考慮Van Genuchten1.00.90.80.70.60.50.40.30.20.10.0Slr = 0.00Sgr= 0.00n = 2.00Krg (ケース1)KrwKrg (ケース3)010 20 30 40 50 60 70 80 90 100飽和度(%)図-7 解析に用いた相対浸透率(緩衝材)図-8 結果出力位置(緩衝材)ここで,𝜆 ,𝜅 はそれぞれ飽和時の圧縮指数と膨潤指数を表す.一方,γ, 𝛽 ,𝛼 ,𝛼 はモデルパラメータであり,これらのモデルパラメータを同定する必要がある.そこで,山本ら 4)が実施した試験を参照する.ただし,山本ら 4)の実施した試験は,ケイ砂混合率 30wt%の乾燥密度ρd=1.6Mg/m3 の圧縮ベントナイトであり,本解析で対象とする材料とは異なる.しかしながら,飽和時の圧縮指数と膨潤指数は山本ら4)が行った試験と,本検討で使用するものとで概ね同値であることから,山本ら 4)の検討を採用する.山本ら 4)の試験に対して式(15),式(16)で最小二乗近似法を用いてモデルパラメータを同定させた結果を図-6 に示す.以上から,設定された緩衝材に用いる BB モデルのパラメータを表-6 に示す.埋め戻し部については弾性体でモデル化し,弾性係数は力学試験結果を引用した.この時,弾性係数は埋め戻しブロックが E=7.331MPa,転圧部は E=1.792MPa とし,ポアソン比はそれぞれν=0.40 とした.3.4 解析ケース模擬オーバーパック近傍の間隙水は加熱によって水蒸気となる.CODE_BRIGHT では,間隙水のみならず間隙空気や水蒸気の流れも考慮され,サイクロメトリック則による間隙水の水蒸気への相変換も考慮可能である.また,間隙空気の間隙水への溶解も考慮される.本検討では,気相を考慮し間隙水の水蒸気への相変換も考慮したケースを基本としケース1(C1)とする.比較のため,気相も水蒸気への相変換も考慮しないケースをケース2(C2)とする.さらに,気相の移流の影響を評価するため,図-7 に示すように気相の相対浸透率(Krg)を変化させたケースをケース3(C3)とする.この時,気相に使用する相対浸透率モデルは Power 則 1)とし式(17)による.𝑘(17)= 𝐴𝑆ここで,A 及びλはモデルパラメータである.相対浸透率の倍率を表すパラメータ A は A=1 とした.また,相対浸透率の形状に関するパラメータであるλについては,飽和度 50%で相対浸透率が 0.1 となるようにλ=3.3 とした.すなわち,C1 は図-7 の赤線で示すように間隙空気が流れやすくトラップされにくいパラメータとなっており,反対に C3 は図-7 の青線で示すように飽和の際に間隙空気が流れにくいためにトラップされやすく,水の移行にも影響を及ぼしやすい(間隙空気圧が下がりにくく飽和度が上がりにくいため水も動きにくい)設定となっている.本検討における解析ケースを表-7 にまとめる.4. 解析結果本検討では,図-8 に示す位置における飽和度変化,平均有効応力,変位,間隙空気圧変化及び間隙率変化に着目し再冠水時の緩衝材の THM 連成挙動を考察する.4.1 飽和度変化図-8 に示す位置における飽和度経時変化を図-9 に示す.ここで,岩盤側については,何れのケースも同様の挙動を示すが,気相を考慮しない C2 については,水蒸気の発生や気相の液相への溶解を考慮していないことから,C1 及び C3に比べ飽和が早い.気相及び水蒸気を考慮する C1 と C3 は経時変化に大きな相違はないが,特徴的な挙動として,ヒーター近傍(側部_in)の飽和度が初期飽和度 50%から約 33%程度まで低下する.一方,気相及び水蒸気を考慮しない C2 は- 445 - C1側部_outC2側部_outC3側部_out110C1側部_midC2側部_midC3側部_midC1側部_inC2側部_inC3側部_in100C1側部_midC2側部_midC3側部_midC1側部_inC2側部_inC3側部_in1.0平均有効応力σem(MPa)90807060500.50.0-0.5-1.0-1.540300100020003000400050006000-2.070000時間(日)100020003000400050006000700060007000時間(日)図-9 飽和度の経時変化図-11 平均有効応力の経時変化0.140.120.10変位 δ (m)飽和度 (%)C1側部_outC2側部_outC3側部_out1.50.080.06C10.04C20.02C30.00010002000300040005000時間(日)図-12 変位の経時変化100日後100日後100日後ヒーター付近でも飽和度は低下せず,時間とともに飽和に向かう.C2 は水蒸気の発生,気相の液相への溶解を考慮しておらず相変換が生じない.そのため,ヒーターに熱せられることにより生じる飽和度の低下が表現できないことになる.次に,緩衝材断面内の飽和度分布を図-10 に示す.図から,何れのケースも岩盤側については,浸潤に伴う飽和度の上昇は同様の傾向を示すものの,ヒーター側については,水蒸気の発生を考慮しない C2 のみヒーター周辺の飽和度の低下が表現できていないのが分かる.なお,水蒸気を考慮する C1,C3 を比較すると,それほど大きな差は生じていない.ヒーター近傍で飽和度が低下しているということは,ヒーターによる発熱によって,水蒸気が発生し緩衝材自体が乾燥するこ2000日後2000日後とを表現している.相変換による水蒸気の発生を考慮すると,2000日後間隙空気圧が上昇する.間隙空気圧が上昇すると,間隙水圧との差圧が大きくなり,飽和度が低下する.また,この間隙空気圧の上昇は力学的には体積増加(間隙比増大)と有効応力の低下をもたらすことになる.4.2 平均有効応力図-8 に示す位置における平均有効応力経時変化を図-11 に示す.図から,ヒーター近傍の平均有効応力が C1 及びC3 において低下しているのが分かる.特に,有効応力の低下は温度上昇時の 0 日から 300 日程度までに顕著に表れる.また,間隙圧力の増加の影響は緩衝材中央部まで及び,中間部分の平均有効応力も C2 に比べ低下しているのが分かる.7000日後7000日後7000日後C1C2C3図-10 飽和度分布図(変形倍率:2倍,単位:%)一方,水蒸気の発生を考慮しない C2 は水蒸気による間隙圧力の増加は考慮されていないため,ヒーター近傍であっても平均有効応力は低下せず,外側の飽和に伴い発生する膨潤圧- 446 - による圧密変形と水の浸潤に伴う膨潤による平均有効応力の増加が生じる結果となる.ヒーター近傍の平均有効応3.0力の挙動は,水蒸気が発生することにより,間隙空気圧が難いため,間隙空気圧が上昇しやすくなっているためと考えられる.また,ガスの移行性の影響は岩盤側の有効応力にも若干影響を及ぼしており,間隙空気圧が高く,ヒータ間隙空気圧(MPa)近の平均有効応力の低下が大きい.これは,気相が移行しC1側部_midC3側部_midC1側部_inC3側部_in2.5増加するため体積膨張が生じ,それによって有効応力が低下する.この時,気相が移行しにくい C3 の方が 300 日付C1側部_outC3側部_out2.01.51.00.5ー近傍付近の体積変化量の大きい C3 の方が外側の緩衝材0.0をより圧縮するため,岩盤側の平均有効応力は C1 よりも0若干大きくなる.1000図-134.3 緩衝材の変位200030004000時間(日)500060007000C1及びC3の間隙空気圧の経時変化水蒸気発生による間隙空気圧の上昇は,緩衝材中の平均有効応力の低下と体積膨張によって緩衝材自体の変形量にも影響を与える.そこで,図-8 に示した位置における,緩衝材頂部中央位置における鉛直変位量(膨出量)を図-12 に示す.ここで,C2,C1,C3 の順で膨出量が大きくなっているのが分かる.緩衝材には BB モデルを適用していることから,飽和に伴う膨潤によって,体積膨張が生じる.よって,何れのケースにおいても膨出は生じる.しかし,水蒸気を考慮する C1 及び C3 は水蒸気を考慮しない C2 よりも膨出量が大きくなっているのが分かる.特に,水蒸気が多く発生する 300 日までの変形が顕著である.これは,水蒸気発生に伴う間隙圧力の上昇に伴う体積膨張の影響と言える.さらに,気相の移行性が小さい C3 の方がC1 に比べて変形量が大きくなっている.300 日以降の勾配は概ね両者とも同様であることから,それまでに発生した間隙圧力C1C3図-14 300日後の間隙空気圧分布(変形倍率:2倍,単位:MPa)が C3 の方がより大きかった影響と言える.4.4 間隙空気圧変化と間隙率変化ヒーター近傍から発生した水蒸気は飽和度の低下のみならず,間隙圧力の上昇とともに,平均有効応力及び変形と言った力学変数にも影響を及ぼすことを示した.そ体積変化が生じているのかを述べる.図-13 に図-8 にが発生しないため,C1 及び C3 の結果のみを示す.間隙空気圧は,ヒーター近傍が最も高く,岩盤側になるにつれて低くなる.岩盤側の間隙空気圧の上昇は地下水の浸潤に伴い生じる空気の圧縮である.一方,ヒーター側については,水蒸気の発生に伴い,間隙空気圧が上昇する.C2側部_inC3側部_outC3側部_midC3側部_in45間隙率 (%)なお,C2 は気相及び水蒸気を考慮しておらず間隙空気圧C2側部_mid50こで,実際にどの程度の間隙空気圧が発生しどのように示した出力位置における間隙空気圧の経時変化を示す.C2側部_out40353025300 日後の間隙空気圧は,C1 が 2.18MPa,C3 が 2.53MPaであり,両者で 0.35MPa の相違が生じている.中間位置01000図-15200030004000時間(日)500060007000C2及びC3の間隙率の経時変化については,若干 C3 の方が間隙空気圧は高い結果となっている.C1 と C3 の間隙空気圧の相違は相対浸透率のパラメータの設定影響であり,C3 の方が透過性の低い設定になっているためである.図-14 に C1 及び C3 ケースの 300 日後の間隙空気圧分布を示す.ここで,あきらかにヒーター近傍の間隙空気圧は C1 よりも C3 の方が高い結果となっていることが分かる.間隙空気圧の分布としては,若干,C1 の方が広く分布しており,気相の透過性による影響であることが分かる.よって,THM 連成解析では気相のパラメータの設定が非常に重要である.次に,図-8 に示した出力位置における体積変化として間隙率変化を図-15 に示す.なお,ここでは,体積変化に着目するため,間隙空気圧の高い C3 と気相及び水蒸気を考慮しない C2 との比較を行う.水蒸気の影響をそれほど受けない岩盤側については,C2 の方が若干間隙率は高いものの,概ね同様の傾向を示す.他方,ヒーター近傍と中央部について- 447 - は,水蒸気の考慮非考慮による影響が生じる.水蒸気を考慮するケースについては,ヒーター近傍で水蒸気が発生することにより,間隙圧力が上昇するため間隙が広がる.しかし,水蒸気を考慮しない C2 では加熱による水蒸気発生に伴う間隙圧力の上昇は考慮されないため,ヒーター近傍の体積膨張は生じない.あくまで,岩盤側からの地下水の浸潤に伴う膨潤によって,ヒーター側が圧縮され間隙率が低下するのみである.このように,内側に熱源となるヒーターが存在する場合は,気相及び水蒸気の考慮非考慮によって,緩衝材内の間隙率分布が大きく異なる結果となる.よって,THM 連成挙動では,気相と水蒸気の影響の考慮の有無によって飽和度変化の相違のみならず,変位や応力と言った力学状態に影響を及ぼす.そのため,再冠水時のバリア性能を適切に評価するためには,気相の流れと水蒸気発生等の相変換を共に考慮する必要があると言える.5. おわりに本検討では THM 連成挙動の把握及び解析モデルの検証を目的として,幌延深地層研究センターで実施中の人工バリア性能確認試験を対象に THM 連成挙動解析を実施した.特に,発熱によって生じる水蒸気が及ぼす再冠水時の緩衝材への影響について詳細に検討した解析は,水蒸気の発生や気相の液相への溶解といった相変換を含む気相の考慮非考慮や,気相のパラメータの変更を解析ケースとして実施した.検討結果を以下にまとめる.THM 連成解析において,気相と水蒸気の発生を考慮すると,ヒーター近傍の飽和度の低下が表現できる.これは,ヒーター周辺の液相が過熱されることにより相変換が生じて水蒸気化し,それに伴い,間隙空気圧が上昇することによって飽和度が低下する影響である.ヒーター周辺の間隙圧力の上昇は,その付近の平均有効応力の低下を引き起こす.しかし,気相,水蒸気発生の非考慮ケースではヒーター近傍の間隙圧力は変化しないため平均有効応力の低下を表現できない.よって,適切な緩衝材の応力及び変形の評価を行うためには気相と水蒸気の発生を考慮する必要がある.ヒーター周辺の間隙圧力の増大は体積膨張を引き起こすことから,水蒸気の発生を考慮するケースの方が緩衝材の膨出量が大きくなった.また,体積変化が生じることは密度分布も生じ,水蒸気の発生の有無によって間隙率分布も異なった.よって,緩衝材の適切な膨出量評価及び密度分布の評価を行うには気相の影響と水蒸気の発生等の相変換を考慮する必要がある.水蒸気の発生によるヒーター近傍の間隙空気圧の上昇は,気相のパラメータ(相対浸透率)の影響が比較的大きい結果を示した.よって,THM 連成解析を行う場合は気相のパラメータ(相対浸透率)の設定が非常に重要である.以上から,気相の流れと水蒸気発生等の相変換を考慮すると,緩衝材の飽和進展挙動,変形挙動及び密度分布をより適切に表現できる.また,再冠水挙動は気液二相流パラメータの影響を受けるので,その適切な評価が重要であることが分かった.温度が上昇すると,水蒸気発生に伴い熱源近傍の飽和度が低下し,間隙空気圧が上昇するといった定性的な妥当性検証は行えた.しかし,定量的な解析結果の妥当性検証は今後の課題といえる.そこで,THM 連成挙動の検証用の要素試験の実施や原位置試験の実測値との比較を行い,解析手法やモデル化手法の妥当性検証を行う予定である.参考文献1)UPC: CODE_BRIGHT User’s Guide 2018.2)E. E. Alonso・ A. Gens ・ A. Josa: A Constitutive model for partially saturated soils, Geotechnique, 40, No.3, pp.405-430, 1990.3)Roscoe, K. H.・ Burland, J. B.: On the generalized stress – strain behavior of ‘wet’ clay, Engineering Plasticity, CambridgeUniversity Press, 535-609, 1968.4)山本修一・佐藤伸・志村友行・Enrique Romero・西村友良・大和田仁:サクション制御試験に基づくベントナイト系人工バリア材の不飽和力学特性と保水性,土木学会論文集 C,2019 年.(投稿中)5)国立研究開発法人日本原子力研究開発機構:平成 29 年度 高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業処分システム評価確証技術開発 報告書,平成 30 年 3 月6)van Genuchten, M.Th.: A Closed-Form Equation for Predicting the Hydraulic Conductivity of Unsaturated Soils, Soil Sci. Soc.AM. J., 44, pp.892-898, 1980.7)Grant, M.A.: Permeability Reduction Factors at Wairakei, paper 77-HT-52, presented at AICHE-ASEM Heat Transfer Conference,Salt Lake City, Uta, 1977.8)国立研究開発法人産業技術研究所ほか:平成 29 年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業沿岸部処分システム高度化開発報告書,平成 30 年 3 月9)Komine, H. and Ogata, N.: New equations for swelling characteristics of bentonite-based buffer materials, CanadianGeotechnical Journal, 40, No. 2, pp.460-475, 2003.10)核燃料サイクル開発機構:高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する知識基盤の構築-平成 17 年取りまとめ--分冊 2 工学技術の開発-,2005 年 9 月.- 448 -
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  • タイトル
  • 泥炭を材料とする固化破砕土の放置時間と土質工学的性質
  • 著者
  • 佐藤 厚子・守田 穫人・畠山 乃・林 宏親・稲澤 豊・渡邊 信明・永多 朋紀
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 437〜440
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000080
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)13-6泥炭を材料とする固化破砕土の放置時間と土質工学的性質○佐藤厚子 1・守田穫人 1・畠山乃 1・林宏親 1・稲澤豊 2・渡邊信明 2・永多朋紀 21 土木研究所寒地土木研究所・2 国土交通省北海道開発局札幌開発建設部1. はじめに北海道の平野部に広く分布する泥炭は高含水、高有機質土である 1)ため、固化材による改良を行い盛土材として有効利用できる 2)が、改良のための固化材量が多くなり、固化後の強度が大きくなりすぎるという問題がある。そこで、泥炭を固化材により改良する方法の一つとして、固化材を混合した材料を固化途中で破砕して作製した固化破砕土にすることにより有効利用する方法を試みた。これまでの研究では、固化材を混合することにより時間の経過とともに固化することに着目し、作業可能な状態まで固化した材料を破砕して締固め、土木材料として活用する方法を検討してきた 3) 4)。しかし、固化材を混合してから破砕するまでの時間が短いと、締固めた固化破砕土が時間の経過とともに強度発現しすぎる場合がある。発現強度が大きくなりすぎることにより、中央分離帯やガードレールの設置などのため再掘削が必要な箇所においてはその作業が困難となることや、地盤が長期にわたって変状するような軟弱地盤上への施工では、固化破砕土による土構造物がその変状に追随できず破壊する可能性があるなどの問題がある。そこで、泥炭を原土とする固化破砕土について強度増加に影響する要因である配合量、固化材を混合してから破砕するまでの時間に着目して土質工学的性質を調べた。本報告はこの結果をとりまとめたものである。2. 調査方法2.1 固化破砕土固化破砕土とは、対象土に固化材を混合し、ある程度時間が経過した後、固化反応が完了する前に破砕し締固め可能な材料としたものである。締固めた固化破砕土は破砕するまでの時間の長さにより強度特性が異なる。破砕するまでの時間が短いときは、まだ固化が進んでいない状態で破砕するため、締固め時の強度が低く施工性は劣るが、固化能力が残っているため、締固めた後ある程度養生すると固化反応が進み強度が大きくなる。破砕するまでの時間が長くなるとある程度強度がある状態で破砕するため、施工性が良好になるものの、破砕までの時間が短いときよりも固化能力が残っていないため締固めた後の強度増加は小さい。なお、本文で用いる用語を図-1 の通り定義する。・固化土:固化材と泥炭を混合したもの。・放置時間:固化土を破砕するまでの時間。養生時間固化材と泥炭の混合固化土一軸圧縮試験放置時間・固化破砕土:固化土を放置時間が経過した後破砕破砕したもの。養生時間・養生時間:固化土または固化破砕土について一軸固化破砕土締固め一軸圧縮試験圧縮試験を実施するまでの時間。2.2 締固めた固化破砕土の目標値図-1 用語の定義本検討では、泥炭を固化破砕土とした場合、締固めて使用した後に強度発現しない、または強度発現が少ない材料となることを目的とした。目標強度は、国土交通省北海道開発局の河川工事において、粘性土を盛土材料として施工する場合に広く使用されている機械による盛土の転圧が可能な強度とした。これは、日本工業規格 JIS A 1228 締固めた土のコーン指数試験方法 5)によるコーン指数 qc=400kN/m2 であり、締固めた固化破砕土について時間が経過しても強度増加が極力少なくなることとした。2.3 試験方法あらかじめ行った室内配合試験とこれまでの現場試験など 6) 7)から、締固めた固化破砕土の目標となる強度を確保できる配合を設定した。固化破砕土の作製は現場で行い、現場で施工した試験盛土と室内で作製した供試体を計測した。2.3.1 現場試験現場試験は、固定式の土質改良プラントを用い、高炉 B 種セメント(以降高炉 B 種と称する)または早期に強度発現しその後の強度増加が小さいとされるセメント系固化材(以降 ETR3 と称する)と泥炭を混合した材料を仮置きヤード内Leaving time and geotechnical properties of crushed solidified soil by peatAtsuko Sato1, Kakuto Morita1, Osamu Hatakeyama1, Hirochika Hayashi1, Yutaka Inazawa2 , Nobuaki Watanabe2, Tomonori Nagata2(1Civil Engineering Research Institute for Cold Region , 2 Sapporo Development and Construction Department, Hokkaido RegionalDevelopment Bureau, Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism)KEYWORDS: Crushed solidified soil, Peat, Leaving time, Geotechnical properties- 437 - に運搬し、転圧しないで高さ 1.5m 程度の仮置きの盛土とし、表面をバックホウで軽く押さえ成形した。所定の放置時間で、仮置きの盛土の天端のコーン指数を測定したのち固化破砕土とした。なお、ETR3 はまだ開発途中ではあるが、泥炭の固化破砕土用に開発された固化材である。この固化破砕土を仕上がり厚さ 0.3m となるようにバックホウで敷き均し、ハンドガイド式振動ローラ(600kg 級)により 8 回転圧することを原則とし、幅 5m、長さ 5m、高さ 1.2m 程度の盛土とした。これまでの泥炭を材料とする固化破砕土の研究 8)では、放置時間が 7 日までは強度発現が大きかったことから、放置時間はこれを中心として 0、3、7、10、14、28、56 日とした。それぞれの放置時間で、固化破砕土を材料とした盛土について、転圧直後の含水比、コーン指数を測定した。2.3.2 室内試験表-1 泥炭の基本物性値室内試験は、放置時間を 0、7、28、56 日としたときの固化破砕土を室内に土粒子密度 ρs(g/cm3)運搬し JIS A 1228 によりコーン指数を求めた。このときと同じ密度で一軸圧自然含水比 wn(%)315~672強熱減量 Li(%)41.6~60.3地盤材料の分類記号Pt縮試験用の供試体を作製し、地盤工学会基準の安定処理土の静的締固めによる供試体作製方法 9)により養生した。養生時間を 0、7、28、91、182 日として含水比、一軸圧縮強さを測定した。一軸圧縮試験は 3 供試体で行っ1.821~1.955固化材+泥炭た。試験に用いた泥炭の物性値を表-1 に示す。泥炭の採取は 50m×30m仮置盛土の範囲で行った。泥炭の自然含水比は 315~672%の範囲であり、高含水現場試験用放置時間(日)0、3、7、10、14、28、56破砕前qc比であることから、同じ量の固化材現場試験盛土施工qc、w直後破砕を混合しても発現強度にばらつき室内試験用放置時間(日)が生じるものと考えられる。現場お0、7、28、56供試体作製室内試験qc、qu、w養生時間(日)0、7、28、91、182qc:コーン指数、qu:一軸圧縮強さ、w:含水比よび室内での試験の流れを図-2 に示す。図-2 試験の流れ3. 試験結果と考察3.1 固化土および締固めた固化破砕土のコーン指数現場で試験施工した盛土について、放置時間と固化土および転圧直後の固化破砕土のコーン指数を図-3 に示す。すべての固化土において放置時間が 0 のときのコーン指数は、目標値である 400kN/m2 よりも小さかった。放置時間が長くなると固化土のコーン指数は大きくなり、コーン指数の最大値が最も小さい高炉 B 種 300kg/m3 でも 3 日目のコーン指数は500kN/m2、7 日目には 700kN/m2 を超え、大型のブルドーザの走行が可能な強度10)となった。なお、図中コーン指数が1500kN/m2 としてプロットしているのは、1500kN/m2 よりも大きな値であるため、測定が困難であり1500kN/m2 としている。コーン指数が時間経過によりさらに大きくなるかはこのデータからは読み取ることができないが、少なくとも固化材1500500固化土固化破砕土1000002040放置時間(日)固化土固化破砕土2040放置時間(日)1500コーン指数qc(kN/m2)1000500固化土固化破砕土002040放置時間(日)60ETR3 225kg/m31000500固化土固化破砕土001500コーン指数qc(kN/m2)500060高炉B種 275kg/m3コーン指数qc(kN/m2)10001500ETR3 175kg/m360固化土固化破砕土1000500高炉B種 300kg/m3002040放置時間(日)6002040放置時間(日)1500コーン指数qc(kN/m2)ETR3 150kg/m3コーン指数qc(kN/m2)コーン指数qc(kN/m2)150060固化土固化破砕土1000500高炉B種 350kg/m3002040放置時間(日)60コーン指数 1500kN/m2 は計測不可(qc>1500kN/m2)であることを示す図-3 固化土および転圧直後の固化破砕土による盛土の放置時間とコーン指数- 438 - 混合直後の固化土のコーン指数は 400kN/m2 よりも小さいため、建設機械ン指数が大きくなり、固化破砕土を作製するときには建設機械が走行できるコーン指数となった。泥炭を原土とする固化破砕土による盛土を施工できる可能性がある。すべての配合、すべての放置時間において、締固めた固化破砕土のコーン指数は固化土のコーン指数よりも小さくなった。多少のばらつきはあ1500転圧直後の固化破砕土の盛土のqc (kN/m2)が走行できない状態である。しかし、放置時間が長くなることによりコー放置時間3日14日100010日56日5001:30るものの放置時間が 10 日以上になると締固めた固化破砕土のコーン指数050010001500固化土のqc(kN/m2)は大きくならない傾向にある。これは放置時間が 10 日を過ぎるといつ破砕しても同じコーン指数の固化破砕土を作製できることを示している。7日28日図-4 固化土と転圧直後の固化破砕土の盛固化土のコーン指数から締固めた固化破砕土のコーン指数を推定でき土の qcれば、目的とする固化破砕土を作製する時期を確認できる。そこで、固化土のコーン指数と転圧直後の固化破砕土の盛土のコーン指数を求め図-4 に示す。放置時間にかかわらず、転圧直後の固化も小さく 1/3 程度であった。今回の目標であるコーン指数 400kN/m2 を得るためには、固化土の盛土のコーン指数は 1200kN/m2 程度必要である。室内試験による締固めと現場での締固めでは締固め方法やエネルギーが異なることから、強度に違いが生じると考えた。そこで、転圧直後の固化破砕土の盛土のコーン指数と養生時間 0 の室内で締固めた固化破砕土のコーン指数の関係を図-5 に示す。室内で締固めた固化破砕土のコーン指数は、転圧直後の固化破砕土の盛土のコーン指数よりも小さく 1/3 程度であった。泥炭は自然含水比が高く固化しても含水比が高いままで、締固室内で締固めた固化破砕土のqc(kN/m2)破砕土による盛土のコーン指数は、固化土による盛土のコーン指数より150010005000ら、固化破砕土を締固めたとき、室内試験のモールドによる締固めでは、現場施工機械による締固めよりもエネルギーが高く、オーパーコンパクションとなり、室内で締固めた固化破砕土が締固めた直後の盛土のコーン指数よりも小さくなったものと考えられる。現場の盛土の含水比w(%)依然含水比は 100%以上あり一般の土砂よりは高い。含水比が高いことか固化土と締固めた固化破砕土の養生時間と一軸圧縮強さを図-7 に示す。ETR3 は、早期に強度発現しその後の強度増加が小さいとされたが、今回1500室内で締固めた固化破砕土の qc200150100ETR3 150ETR3 175ETR3 225高炉B 275高炉B 300高炉B 35050003.2 固化土および締固めた固化破砕土の一軸圧縮強さ1000図-5 転圧直後の固化破砕土の盛土の qc と高くなったり、低くなったりしていることから、この含水比の変化は原土種類、放置時間にかかわらず、含水比の大きな変化は見られない。しかし、500転圧直後の固化破砕土の盛土のqc(kN/m2)調べ図-6 に示す。自然含水比は 300%以上あったが、固化材混合により含である泥炭の含水比のばらつきの範囲と考えられ、全体的には固化材の1:30め効果が低いと考えられることから、放置時間と現場の盛土の含水比を水比は 100~170%程度にまで低下した。放置時間が長くなると含水比が0日7日28日56日2040放置時間(日)60図-6 放置時間と現場盛土の含水比の試験では、固化土、締固めた固化破砕土のいずれも早期に強度発現しているものの、養生時間が長くなっても一軸圧縮強さは大きくなる傾向が見られた。高炉 B 種では、どの配合においても一軸圧縮強さは低く、養生時間が長くなってもほとんど大きくならなかった。ただし、泥炭に高炉 B 種を混合した固化土、固化破砕土の一軸圧縮強さは非常に小さく、誤差の範囲であるとも考えられる。全体の傾向として、一軸圧縮強さは締固めた固化破砕土の方が固化土よりも小さく、放置時間が長くなっても一軸圧縮強さに急激な変化はなかった。さらに、放置時間が長くなると養生時間に対する一軸圧縮強さの増加割合も小さくなる傾向が見られた。これより、締固めた固化破砕土による盛土は、固化土による盛土よりも強度発現が小さい改良ができたといえる。なお、固化材の混合量が大きくなると固化土、固化破砕土の一軸圧縮強さは大きくなっており、今回試験を行った泥炭原土の含水比のばらつきは、一軸圧縮強さには影響を与えていないと考えられる。3.3 締固めた固化破砕土の水浸による変状今回検討した固化破砕土は、養生時間が長くなっても強度が著しく増加しないことを目的としていたため、水浸により変状することが考えられた。そこで、締固めた固化破砕土を水浸して状況を確認した。写真-1 は ETR3 を 225kg/m3 混合し放置時間 28 日、養生時間 182 日の固化破砕土について一軸圧縮試験終了後に水浸して 1 か月経過したときの状況である。水浸により崩壊することはなかった。放置時間を 28 日とした他の締固めた固化破砕土でも水浸により崩壊することはなかったことを確認した。このことより、泥炭を原土とする締固めた固化破砕土は、水浸により崩壊しないような粘着- 439 - 600ETR3 150kg/m33002001000050100150500400ETR3 175kg/m33002001000200050養生時間(日)固化土放置時間 7日放置時間 28日放置時間 56日500400高炉B種 275kg/m33002001000050100150500400300200100ETR3 225kg/m30020050100養生時間(日)600一軸圧縮強さqu(kN/m2)一軸圧縮強さqu(kN/m2)600100150固化土放置時間 7日放置時間 28日放置時間 56日500400高炉B種 300kg/m330020010020000養生時間(日)50100150200150200養生時間(日)一軸圧縮強さqu(kN/m2)400固化土放置時間 7日放置時間 28日放置時間 56日600固化土放置時間 7日放置時間 28日放置時間 56日一軸圧縮強さqu(kN/m2)固化土放置時間 7日放置時間 28日放置時間 56日500一軸圧縮強さqu(kN/m2)一軸圧縮強さqu(kN/m2)600150200600固化土放置時間 7日放置時間 28日放置時間 56日500400高炉B種 350kg/m33002001000050養生時間(日)100養生時間(日)図-7 固化土および締固めた固化破砕土の養生時間と一軸圧縮強さ性のある材料である可能性があり今後調べたい。4. まとめ泥炭を原土として、2 種類の固化材により固化破砕土を作製してその土質工学的性質を調べた。その結果、少ないデータではあるが、締固めた固化破砕土は、固化土と比べて発現強度は低く、養生時間が長くなっても強度の増加の程度は小さいことがわかった。さらに、締固めた固化破砕土の放置時間が長いほど強度の発現割合が小さくなることもわかった。また、締固めた盛土のコーン指数は、破砕前の盛土のコーン指数より推定が可能であり、本検討では、破砕前の約 1/3 程度となることがわかった。締固めた固化破砕土は、水浸により崩壊することがないことを確認しており、河川堤防など水と接する箇所への適用も可能であるといえる。今回の試験では、泥炭を原土とした場合の締固めた固化破砕土について、施工可能なコーン指数を満足することを目的としてその性質を確認した。今後、締固めた固化破砕土の強度発現が極めて低くなるような改良を検討したい。このため、固化破砕土の締固め特性、せん断強度特性なども検討したい。配合量:ETR225kg/m3放置時間:28 日養生時間:182 日写真-1 締固めた固化破砕土の水浸状況参考文献1) 土木研究所寒地土木研究所:泥炭性軟弱地盤対策工マニュアル,2017.2) 土木研究所:建設発生土利用技術マニュアル第 4 版,2013.3) 佐藤厚子・西川純一:固化破砕土の強度特性について高含水比土の有効利用に関する実験,第 32 回地盤工学研究発表会,pp.2423-2424,1997.4) 締固めた土のコーン指数試験方法,JIS A 1228 ,2009.5) 佐藤厚子・西川純一,西本聡:改良した泥炭による盛土施工,地盤工学会第 5 回環境地盤シンポジウム,pp.271-276,2003.6) 畠山潔芽・高橋秀彰・蔵谷誠二・中島典昭:回転式破砕混合工法による堤防盛土材料のセメント安定処理事例,第 58号地盤工学会北海道支部技術報告集,2018.17) 佐藤厚子・久慈直之:固化破砕土の放置時間と土質工学的性質,地盤改良シンポジウム,20188)佐藤厚子・西川純一:泥炭を材料とする固化破砕土の強度特性について,地盤工学会北海道支部技術報告集,第 43号,pp.205-208,2003.9) (社)地盤工学会:地盤工学会基準「安定処理土の静的締固めによる供試体作製方法(JGS 0812-2009)」,2009.10)(社)日本道路協会:道路土工要綱,p.287,2009.- 440 -
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  • タイトル
  • 感潮河川に堆積する高含水比浚渫土を用いた解砕固化処理土の締固め特性と耐侵食性
  • 著者
  • 井上 徹郎・末次 大輔
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 433〜436
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000079
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)13-5感潮河川に堆積する高含水比浚渫土を用いた解砕固化処理土の締固め特性と耐侵食性○井上徹郎 1・末次大輔 21佐賀大学工学系研究科・2 宮崎大学工学部1.はじめに近年,記録的な集中豪雨によって河川堤防の決壊が発生している.過去の堤防被災実態調査 1)で破堤原因は越流破堤 74.4%,侵食破堤 19.3%,浸透破堤 6.3%と報告されており,河川堤防は越流破壊に対して極めて脆弱であるといえる.越流破壊は河川水の増水によって河川水が越流し,裏法尻,裏法面を侵食して破堤する.したがって,河川堤防の材料は耐侵食性を有することが望ましい.有明海の潮汐作用を受ける佐賀平野の感潮河川では,有明海の浮泥が河道に堆積する.河川機能を維持するために定期的に浚渫を行う必要があるが,浚渫土は粘土分主体で泥状であることや,有効な利用方法が無いため浚渫が進ま図-1高含水比浚渫土の利用プロセスないのが現状である.本研究では高含水比の浚渫粘性土を,耐侵食性を有する堤体材料として活用することを目的とする.浚渫土は高含水比で泥状であるため,何らかの改良を施さなければ運搬や使用が難しい.そこで,浚渫直後のワーカビリティを確保するため,図-1 に示す改良プロセスを経て浚渫土を使用することを考える.著者らは解砕し締め固めた固化処理土の耐侵食性について開水路を用いた侵食実験を行った 2).解砕した固化処理土の耐侵食性は,解砕した処理土粒子間の粘着力の影響を大きく受けることが分かった.粘着力の大きさは,含水比や養生日数,ならびに締固めエネルギーの影響を受けると考えられる.したがって,締固めた固化処理土の耐侵食性に及ぼすそれらの影響を明らかにする必要がある.本論文は,締固めた解砕処理土の基本的な特性を把握するために,締固め特性に及ぼす含水比の影響と締固めた処理土の透水性について述べる.そして,開水路を用いた侵食実験の結果を示して,含水比,締固めエネルギーならびに養生日数が耐侵食性に与える影響について述べる. 表-12.実験概要2.1 セメント処理土の作製方法と物性実験に使用した高含水比粘性土は,六角川河口付近の河道において,干潮時に干出する地点で採取した堆積土(以後,有明粘土と称する)である.有明粘土の物性を表-1 に示す.固化材には高炉 B 種セメントを用いた.固化処理土の作製方法は次のとおりである.まず,液性限界 wL の 1.5 倍(w=225%)の含水比に調整した有明粘土に 150kg/m³のセメントを添加有明粘土の物性自然含水比 wn(%)175.2密度 ρs(g/cm³)2.580液性限界 wL(%)150塑性限界 wP(%)49.3塑性限界 IP101有機物含有量 Li(%)15.6し,ハンドミキサーで十分に撹拌混合した.その後,気泡を除去しながら型枠(φ150mm,H300mm)に流し込んた.その後,養生中の水分蒸発を防ぐため型枠上端部を高分子フィルムで覆い,温度 20℃,湿度 30%の室内で 28 日間養生した.養生後,型枠から固化した処理土を取り出し,鉄製のヘラを用いて解砕し,19mm ふるいを通過したものを試料として用いた.解砕直後のセメント処理土の含水比は 142%であった.この時点での含水比を初期含水比 wi とする.解砕したセメント処理土と有明粘土の粒径加積曲線を図-2 に示す.本研究で使用する固化処理土は礫質土に分類される粒状土となる. 図-2有明粘土と解砕した固化処理土の粒度分布2.2 締固め試験の方法本研究では,解砕した固化処理土の締固め特性を調べるために,  JIS A 1210・A-b 法(乾燥非繰り返し)および A-c 法Erosion resistance of compacted cement mixed clayey soil.Tetsuro Inoue1, Daisuke Suetsugu2 (1Graduate school of Sci. and Eng., Saga Univ., 2University of Miyazaki)KEYWORDS: Dredged clay, Soil stabilization, Compaction, Erosion- 433 - (湿潤非繰り返し)に準拠して締固め試験を行った.締固め試験の A-b 法では,炉乾燥機で含水比をゼロにした後,所定の含水比となるように加水した.A-c 法では,解砕直後の含水状態(wi=142%)から,60℃に設定した炉乾燥機で水分を徐々に蒸発させて所定の含水比に調整した.2.3 透水試験と一軸圧縮試験の方法透水試験,初期含水比状態(wi=142%)の試料を,標準締固めエネルギーの 30%,60%および 90%のエネルギーで締め固めて作製した.透水試験は JIS A 1218 に従い定水位で行った.一軸圧縮試験の供試体は,透水試験と同じ状態の処理土を型枠(φ=50mm,H=100mm)内で小型ランマー(1.5kg,落下高図-3実験に用いた開水路の寸法さ 20cm)を用いて作製した.試験は JIS A 1216 に従い行った.表-22.3 侵食実験水路条件第1回第2回流量 Q(cm³)45394458示す.開水路河床を底上げし,試料土を締め固める箱を設置し断面平均流速 U(cm/s)75.774.3た.実験試料には解砕固化処理土の他,比較対象としてまさ土摩擦速度 u*(cm/s)4.134.131/1501/150解砕した固化処理土の耐侵食性を検討するため,アクリル製の開水路を用いた模型実験を行った.図-3 に用いた開水路図を河床勾配および未改良の有明粘土を用いた.試料条件と水路条件を表-マニングの粗度係数 n(ms)0.00950.0097態に調整した解砕した固化処理土,有明粘土およびまさ土を準フルード数 Fr1.21.2備し,これらを開水路に設置する箱に表-3 に示す条件で締め固通水時間(分)15152,3 に示す.実験手順は次の通りである.まず,所定の初期状-1/3めて充填した.その後,供試体を開水路に設置し,通水を開始する.水流が所定の条件に達してから 15 分間通水を行った.このとき,供試体表面の侵食状況を水路側面よりデジタルカメラを用いて観察した.通水終了後,侵食された供試体表面に仮表-3CASE想スリットを設定し,その交点 110 点の侵食深さをデジタルポA-1イントゲージで測定した.なお,実験は二回に分けて行ったたA-2め,水路条件に多少の違いが認められるが,実験結果への影響A-3は極めて小さいと考える.A-4試料土固化処理土3.1 締固め試験の結果と考察締固め試験の結果を図-4 に示す.A-c 法(湿潤法)では,含水含水比養生期間Ec/Ec0(%)(day)(%)1311414228906030A-53.結果と考察試料条件551490B有明粘土33-90Cまさ土14-90比が低くなるにしたがって乾燥密度が単調に増加した.一方,A-b 法(乾燥法)では,乾燥密度のピークが現れた.まさ土と未処理の有明粘土の乾燥密度に比べ,セメント改良土のそれは非常に小さい.これは高含水比状態で固化させたために,間隙比が大きいことに起因する.締固め試験における図-4 に示すような非可逆性は,関東ロームやシラス等の特殊土においても認められる.この現象は団粒化した粒子の乾燥収縮によって,加水しても元の含水状態まで復元できないことが原因であると考えられている 3)∼5).乾燥させた固化処理土を蒸留水に浸漬させた後に含水比を測定した結果を図-5 に示す.本研究で用いた試料においても顕著な乾燥収縮が見られ,加水しても乾燥前の含水比状態に戻らないことが確認された.A-c 法による締固め試験において含水比が小さい条件では,図-6 に示すように,含水比が小さなときほど締固図-4各試料の締固め曲線め後に砂分以下が大幅に増加している.このことから,ランマーの落下による衝撃で粒子が破砕し,これが A-c 法の締固めで乾燥密度にピークが現れなかった原因と考えられる.- 434 - 図-6 湿潤法における締固め試験後の試料の粒度分布図-5乾燥収縮による含水比状態の非可逆性図-8図-7締固めエネルギー比毎の一軸圧縮強さ透水性に及ぼす締固めエネルギーの影響3.2 透水試験の結果と考察透水試験および一軸圧縮試験の結果をそれぞれ図-7,8 に示す.初期含水比状態において,乾燥密度は同程度でも締固めエネルギーの大きさによって透水性や一軸圧縮強さに差異があることがわかる.初期含水比状態のセメント処理土はランマーの落下による衝撃によって粒子がつぶれ,それぞれが粘着する状態となる.締固め前の最大粒径は 19mmであったにもかかわらず,締固め後の試料には塊状になり,最大で 65mm ほどの粒子が確認できた(写真-1).この現象写真-1締固めによる粒子粘着の様子は粒子内部の間隙水がランマーの衝撃で粒子破砕することによって溢れ出し,粒子同士を粘着させたものと推察される.したがって高含水比状態かつ締固めエネルギーが大きいときほど,このような現象が顕著に見られることになる.粘着の程度が大きいときほど粒子破砕によって砂分や細粒分が増加するため,透水係数は小さくなる.一方,粒子破砕による細粒化によって粘着力を持つことになるので,一軸圧縮強さは大きくなる.3.3 侵食実験の結果と考察各実験ケースにおける平均侵食深さを図-9 に示す。固化処理土(CASE-A-1∼4)の結果より,締固めエネルギー比が大きいほど侵食量が少ないことがわかる.また CASE-A5 の結果と上述の CASE-A-1,A-2 の結果を比較すると,初図-9各 CASE における侵食量の平均期含水比よりも低い含水比で締め固めた場合より高含水比状態で締め固めた方が高い耐侵食性を有することがわかった.この原因としては,乾燥状態ではランマーの衝撃によって粒子破砕が生じて細粒化するものの,水分量が少ないために,粒子間の粘着の発現度合が小さかったことが考えられる.また,固化処理土の養生日数の影響を CASE-A-1 と CASE-A-2 で比較すると,侵食量に大きな差は無く,耐侵食性に及ぼす固化処理土の養生期間の影響は小さいと考えられる.今回用いた試料では,14 日養生で 131%,28 日養生で 142%- 435 - であり,初期含水比が同程度であったために,粘着力に大きな違いはなく,耐侵食性に大きな差は無かったと考えられる.粘着力と平均侵食量の関係を図-10 に示す.粘着力が大きい時ほど平均侵食量が小さいことがわかる.またエネルギー比 30∼90%の範囲において負の相関関係が確認できる.侵食量の平面分布を図-11 に示す.まさ土(CASE-C-1)の場合、供試体表面の細粒分から徐々に流れ出す.その後供試体の弱部から局所的に侵食が始まり,徐々に侵食部が広がっていく.有明粘土は低含水比状態になると団粒化する.そのため有明粘土は団粒化した粒子が剥がれるように侵食し,凹凸のある侵食面が形成された.高含水比状態の図-10粘着力と平均侵食量の関係固化処理土(CASE-A-1∼4)では,侵食量は大きく異なるものの,水との接触面の全面がほぼ均等に侵食されていることがわかる.実験時侵食の様子を観察したところ,侵食を受けているのは団粒化した見かけの粒子同士がしっかりと密着していなかった粒子であった.粒子の接触部分が観察されず団粒化した粒子同士がしっかり密着していた部分はほとんど侵食されていなかった.一連の侵食実験により,解砕した固化処理土は適切な含水比状態で締め固めると,一般的な土質材料よりも高い耐侵食性を発揮できる.そして,締固めた処理土の耐侵食性は含水比と締固めエネルギーに大きく左右されると考えられる.福島ら6)図-11各実験ケースにおける侵食面形状は,ため池底泥土を用いた破砕した処理土が過転圧になると泥濘化するが,時間経過とともに固結することを報告している.今回実施した一連の実験では,処理土が過転圧状態になることは無かった.粒子間の粘着力の発現が耐侵食性に影響を及ぼすことから,処理土粒子がより細粒化し同時に団粒化した状態における耐侵食性に及ぼす影響についても検討する必要があると考える.4.まとめ本研究では,締固めた解砕処理土の基本的な特性を把握するために,締固め特性に及ぼす含水比の影響と締固めた処理土の透水性について調べた.そして,開水路を用いた侵食実験の結果を示して,含水比,締固めエネルギーならびに養生日数が耐侵食性に与える影響について検討した.得られた知見は次のとおりである.(1)解砕した固化処理土の締固め締固め曲線は乾燥法と湿潤法で異なり,解砕した粒子の乾燥収縮が原因であると考えられる.(2)A-c 法(湿潤法)による締固めでは含水比が小さくなるほど粒子破砕が顕著になり,乾燥密度のピーク値が表れない.(3)初期含水比状態で締め固めた処理土の透水性は,締固めエネルギーが大きいときほど透水係数は小さくなり,一軸圧縮強さは大きくなる.(4)締固めた解砕固化処理土は,低含水比状態より高含水比状態で粘着力を発揮し,締固めエネルギーが大きいほど粒子が破砕して粘着性が増すため高い耐侵食性を発揮する.謝辞:本研究は(株)インバックスとの共同研究の成果の一部である.本研究における室内実験は佐賀大学理工学部卒業生の中野崚人氏の協力を得て実施した.また,本研究の一部は(公財)河川財団の 2018 年度河川基金助成事業による研究助成を受けて実施されたものである.記して謝意を表します.参考文献1) 建設省河川局治水課:河川堤防設計指針(第 3 稿),2000.2) Tetsuro INOUE, et al. (2018), Performance of erosion resistance of compacted cement mixed clayey soil, Proc. of International Symposium on Lowland Technology (ISLT 2018). 3)竹中肇:関東ロームの物理的性質について,第四期研究,第 7 巻,第 3 号  pp109-115,1968.    4)多田敦:関東ロームの締固めと透水係数について 1,農業土木学会論文集第 14 号,1965. 5)三輪晃一・難波直彦・若松千秋:シラス地帯における新期火山灰土の締固め特性について,鹿児島大学農学術報告第 31 号,p.171-178,1981-03. 6)福島伸二・北島明・石黒和男・池田康博・酒巻克之・谷茂:固化処理したため池底泥土の盛土材への適用性の研究,土木学会論文集 No.666,p.99-116,2000.- 436 -
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  • タイトル
  • ため池粘土の簡易脱水法と改良効果に及ぼす固化材添加量と含水比の影響
  • 著者
  • 張 子晨・大嶺 聖・フレイミ サムエル オイ
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 429〜432
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000078
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)13-4ため池粘土の簡易脱水法と改良効果に及ぼす固化材添加量と含水比の影響○張 子晨 1・大嶺 聖 1・フレミイ サムエル オイ 11長崎大学大学院1. はじめに 泥土に分類される高含水比の粘土は,含水比が高いので,そのままでは地盤材料として活用することが難しく,地盤環境問題の一つとなっている。軟弱な地盤の改良方法に合わせ、固化材の量を増やせば、含水比を下げることができる,できるだけ環境負荷の少ない方法を適用することが望まれている。本研究の目的は、ため池から採取した高含水比粘土の改良効果に及ぼす固化材の種類・添加量および含水比の関係を明らかにすることである。改良土のコーン指数と pH 値を測定して改良効果を評価するとともに,低コストで脱水させるために,紐または布を用いて高含水比粘土の含水比を低下させるための方法についても考察を行い,環境負荷の観点から泥土の有効利用法について検討する。 表-1 熊本粘土の粒度組成 2.熊本粘土の物理特性 熊本県のため池から採集した 3 種類の試料(サイト熊本粘土(サイト砂(%) 35 A、B、C)を用いる.この熊本粘土は汚泥として使用A)の粒度組成 シルト(%) 20 粘土(%) 45 するのは難しく、処理コストが高い。熊本粘土の土粒子の密度試験(JIS A 1202)を行った結果、土粒子の熊本粘土(サイト砂(%) 35 密度rs は、熊本粘土(サイト B)で 2.27g/cm3 あつた。B)の粒度組成 シルト(%) 25 粘土(%) 40 液性限界・塑性限界試験(JIS A 1205) から,熊本粘土(サイト A)の液性限界 wL=121.98%、塑性限界 wp熊本粘土(サイト砂(%) 35 =82.12%、塑性指数 Ip=39.86 であった。熊本粘土(サC)の粒度組成 シルト(%) 15 粘土(%) 50 イト B)の液性限界 wL=142%、塑性限界 wp=93.68%、塑性指数 Ip=48.32 であった。粒度試験(JIS A 1204)に表-2 熊本粘土の強熱減量実験結果 よる熊本粘土の試験結果を表-1 に示す。土の強熱減量試験(JIS A 1226)を行った結果、熊本粘土(サイト A)の強熱減量 Li =23.4%、サイト B から採取した粘土の強熱減量 Li =19.2%であり、サイト C から採取した粘試料 サイト A サイト B サイト C Li(%) 23.4 19.2 17.33 表-3 熊本粘土の液性塑性限界 土の強熱減量 Li =17.33%であり、有機分を多く含むことがわかる。 サイト A 121.98 3.粘土の改良方法について 固化材として,普通ポルトランドセメント,消サイト B サイト C 液性限界 wL(%) 塑性限界 wp(%) 塑性指数 Ip 82.12 39.86 142.00 93.68 48.32 222.55 124.26 98.29 石灰,およびリサイクル固化材 1)(DF 材:フライアッシュを主成分に石膏・セメント・重金属不溶出剤で構成)を用いた。これらの固化材と熊本粘土を混合し、コーン指数試験及び pH 測定試験を行う。供試体を作成した後、モールドから出したら、ビニール袋に入れ、温度 25℃、湿度 90%の恒温恒湿槽において養生を行う。異なる条件下での強度を比較するため、試験では、熊本粘土(サイトA とサイト B)の含水比を 160%に調整し、サイト C は液性限界が高いので、サイト C の含水比を 200%に調整し、熊本粘土に 100、200、300 及び 400kg/m3 の固化材図-1 サイト B コーン指数と固化材の添加量の関係(28 日養生) A simple dewatering method of pond clay and influences of hardening agent and water contentZhang ZiChen1, Omine Kiyoshi1, Flemmy1 (1 Nagasaki University)KEYWORDS: Soft clay, improved soil, dewatering method- 429 - (DF 材またはセメント)を添加する。熊本粘土の含水量をそれぞれ 100%、115%、120%、135%、140%、160%に低下させて、100 kg/m3 の固化材(DF 材、消石灰とセメント)を添加する。その後、28 日養生終了後にコーン指数及び pH 値を求めた。 (i)添加量とコーン指数の関係(含水比一定) 図-1 を示す、粘土(サイト B)の含水比を一定とした場合のコーン指数と固化材の添加量の関係を図に示す、固化材混入による強度変化は、2 つの固化材も固化効果が増加した。これは、固化材の添加量が多いほど強度が発現したと考えられる。添加量が多いほど固化効果が良く、セメントの固化効果が DF のそれよりも優れていることが分かる。しかしながら,固化材の添加量が 300kg/m3 を超える条件は,材料コストおよび環境負荷の基準値を満たさないため。(ii)添加量と PH 値の関係(含水比一定) 粘土(サイト B)の含水比を一定とした場合の pH 値と固化材の添加量の関係を図-2 に示図-2 サイト B pH 値と固化材の添加量の関係(28 日養生) す。2 つの材料はいずれも添加量が多くなると pH値は高くなり、反対に添加量が少なくなると pH値は低くなる。(iii)含水比とコーン指数の関係(固化材添加量一定) 固化材添加量を一定(100kg/m3)として,含水比を変えた場合のコーン指数と含水比の関係を図-3 に示す(28 日養生)。比較のため、消石灰を混合した実験も行った。含水比が 115%の条件では,セメントの固化効果は、DF 材や消石灰の固化効果より高いが、含水比を 100%まで低減させると、いずれの添加材でも同程度の強度が得られていることがわかる。135%を超えるような高い含水比で表-4 含水比とコーン指数の実験結果(DF 材添加量一定) qc kN/m2ABC55814240171210242412392428598w %100120140160100115135160120140160図-3 サイト B コーン指数と含水比の関係(28 日養生) /液性限界(w/wL)0.820.981.151.310.70.810.951.130.80.931.07はいずれの固化材でも改良効果が見られない. 固化材(DF 材)の添加量を一定(100kg/m3)とした場合のコーン指数と含水比の関係を図-4 に示す。同じ含水比図-4 コーン指数と含水比の関係 でも、サイトの違いによって、コーン指数の値が異なることがわかる。同じ含水比でサイト C のコーン指数は、サイト A とサイト B より高い。これらの違いは、土質特性、特に液性限界に影響されると考え、コーン指数と含水比を液性限界で除した w/wL の関係を図-5 および表-4 に示す。いずれの試料についても、w/wL が 1 以下になるとコーン指数が増加し始めることがわかる。 - 430 - 図-6 脱水実験の概念図 図-5 コーン指数と w/wLの関係 4.粘土の簡易脱水方法について (i)実験方法 排水材となる紐または布を袋の内部に接続し,その後,初期含水比 185%に調整した粘土(サイト A)を詰め一定期間放置することで脱水させる.脱水の原理は粘土内の排水材に水が吸収され排水材を伝って供試体の外へと運ばれる.排水材が外気に触れ自然乾燥することでまた水を吸収する.これを繰り返し脱水させる.脱水後,供試体を取り出し供試体の中央かつ紐付近の粘土を採取して含水比を測定する.脱水実験の概念図を図-6 に示す.図-6 に示す通り供試体直径:7.6cm,詰める粘土の質量:850g,袋から飛び出す紐および布の長さ:20cm,基本はこの条件で脱水実験を行い,どの排水材が最適か検討する.表-6 供試体を横に紐の先端をほぐす脱水実験の結果 表-5 供試体を横に排水材を変えた脱排水材の種類 水実験の結果 含水比(%) 排水材の先端 先端をほぐさない場合 先端をほぐした場合 パイレン 109.52 113.49 103.89 クレポリ 114.83 109.86 161 110.00 トラック 119.62 116.44 クレポリ 151 114.83 PV 116.25 113.04 パイレン 179 109.52 クレポリ混燃 102.17 106.49 綿 180 109.05 サイザル麻 135 121.63 クレポリ混燃 195 102.17 麻(1 本) 164 115.27 麻(2 本) 164 114.44 麻(3 本) 164 110.14 トラック 159 119.62 PV 167 116.25 排水材 脱水量(g) 含水比(%) エステル 177 ナイロン 表-7 供試体を縦に設置した脱水実験の結果 供試体横縦脱水量(g)206219平均含水比(%)116.10111.74 (ii)排水材の種類を変えた脱水実験 この実験では,粘土の脱水に最適な排水材(紐の種類)を決定する.今回の実験に用いた紐はエステル紐,ナイロン紐,クレポリ紐,パイレン紐,綿,サイザル麻,クレポリ混燃,麻,トラックロープ,PV ロープである.紐の直径は麻:3mm,図-7 排水材を変えた脱水実験の質量推移- 431 - 930果を表-5, 脱水量が多いほど、含水比は低くなり880ます.供試体の重量推移を図-7に示す.最も含水比が低下した紐はクレポリ混燃の 102.17%であった.これより今後の実験で用いる排水材はクレポリ混燃紐とする. (ⅲ)紐の先端をほぐす脱水実験 この実験では,より含水比を低下させるため供試体質量(g)クレポリ混燃紐:9mm,その他:6mm,である.実験結クレポリ混燃紐830横縦780730680に紐の先端をほぐすことで速乾性が向上し脱水に影響するかを実験する. 実験結果を表-6 に示63010月5日 10月6日 10月7日 10月8日 10月9日 10月10日 10月11日 10月12日す.表-6 より大きく値が変化していないことか日付ら特に効果は認められない.図-8 供試体を縦に設置した脱水実験の質量推移 (ⅳ)供試体を縦に設置した脱水実験この実験では,これまで横に設置していた供試体を縦に設置し下から排水させることでより含水比が低下するかを確かめる. 脱水量から求めた供試体全体の平均含水比をまとめた表を表-7,供試体の質量推移を図-8 に示す.表よりクレポリ混燃紐を使用した供試体を横に設置と縦に設置で比較すると脱水量は供試体を縦に設置し下から排水させて方が総合的な脱水量は多かった.このことから供試体を縦に設置し下から排水することでより脱水できることが分かった.また図-8 より供試体を縦に設置した場合と横に設置した場合を比較すると縦に設置したほうがより早く脱水されることが分かった.(ⅴ)供試体の長さを変更しての脱水実験 この実験では,供試体の長さを 100cm まで伸ばし排水距離を長くし供試体を縦に設置して下から排水させる.ここでは供試体の平均含水比を求めるために供試体上部・中部・下部表-8 1 週間経過時の供試体の長さ 1m での脱水実験の結果(クレポリ混燃紐) 測定箇所 上部 中部 下部 含水比(%) 109.16 118.42 122.44 より粘土を採取し含水比を測定する. 実験結果を表-8 に示す.表-8 より平均含水比:116.68%であることが分かる.また上部と下部で含水比を比較すると,下部の方が高い.1 週間では上部と下部に含水比の差が生まれたが,脱水期間が延びればこの差は埋まると考えられる.これよりある程度,排水距離が延びても下から排水させれば脱水は可能である.5.まとめ 本研究では,高含水比の粘性土を紐または布を用いて、粘土に固化材を添加して粘土内の水分を低下する実験を行い,より含水比を低下させる方法を検討した.高含水比の泥土は,通常の固化材の添加量では固まらないため,実際に改良を行う場合にはある程度含水比を低下させる必要がある。 使用した粘土で含水比を 100%程度まで低下させた条件では,セメントおよびリサイクル材のいずれの場合も100kg/m3 の少ない添加量でも十分改良効果があることが示された。また, フライアッシュを原料としたリサイクル材を用いた改良土の pH 値は 8.4 と中性に近い値を示している。 採取場所の異なる試料に対して,改良土のコーン指数は含水比を液性限界で除した w/wL と良い関係がある。w/wL が 1以下になるとコーン指数が増加し始めることが示された。 このように、泥土の含水比を液性限界以下まで下げてから DF 固化材を用いることによって泥土の改良が可能である。含水比を低下させる方法を検討した.まず複数種類の紐を排水材として脱水実験を行ったところ今回検討した範囲では,脱水効果についてはクレポリ混燃紐が最適であることが分かった. 脱水実験の中でより含水比を低下させる脱水方法は供試体を縦に設置し下から排水することである.供試体上部の水頭差が大きく水を引っ張る力が大きいためであると考えられる.また供試体が長くなり排水距離が長くなると脱水に時間がかかるため,より早く脱水させるために紐の入れ方で脱水させるなどの工夫が必要である.その他の方法として,粘土に対する排水材の触れる面積を増やすことで脱水機能が向上すると考えられるため,紐の直径を大きくすることも有効的であると考えられる.参考文献 1)Umezaki,T.,Kawamura, T., Kono, T.& Kawasaki,A.:A New Method for Dewatering Soil with High Water Content Using Gravityand Atmospheric Pressure , Proceedings of the Intemational Symposium on Engineering Practice and Performance of SoftDeposits (IS-Osaka 2004), pp. 281-286, 2004.2)地盤工学会:土質実験-基本と手引き pp.19-21,pp.27-34,pp.39-43 20103)Flemmy S.O., Omine K., Zhang Z.; SOFT CLAY IMPROVEMENT TECHNIQUE BY DEWATERING AND MIXING SANDYSOIL, International Journal of GEOMATE, Vol.17, Issue 63, pp. 9 -16, (2019)- 432 -
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  • タイトル
  • 短期間の温度履歴を付与したベントナイトの吸水挙動に及ぼす影響に関する推察
  • 著者
  • 白河部 匠・小峯 秀雄・後藤 茂・王 海龍・山本 修一・豊田 淳史
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 455〜460
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000083
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)14-3短期間の温度履歴を付与したベントナイトの吸水挙動に及ぼす影響に関する推察〇白河部匠 1・小峯秀雄 2・後藤茂 3・王海龍 4・山本修一 5・豊田淳史 61早稲田大学創造理工学研究科建設工学専攻(地盤工学研究室)・2 早稲田大学理工学術院・31.早稲田大学理工総研・4 早稲田大学持続的未来社会研・5 大林組・6 中部電力背景高レベル放射性廃棄物の地層処分におけるベントナイト系緩衝材の機能低下に,廃棄体からの崩壊熱による熱履歴の影響が懸念されている.廃棄体からの熱は図 1 に示すようにオーバーパック,緩衝材と伝わり,廃棄体埋設後 10 年程度でベントナイト系緩衝材の温度が上昇する 1).現在,緩衝材の制限温度は,イライト化やセメンテーションに関する試験結果から,100℃未満になるよう設計することが求めれている 2).しかし,膨潤特性や水分移動特性に関する崩壊熱の影響を調査した研究はまだ少なく,さらに調査する必要がある.また,100℃未満に処分場を設計するためには,廃棄体の発熱量の低減や廃棄体ピッチの拡大等の必要があるが,経済性および実現可能性を考えれば,制限温度を高くすることが求められる.物理実験から熱的影響が小さいことが明らか図 1 地層処分と緩衝材に及ぼす崩壊熱の影響にすることで,制限温度についての見直しも可能である.既往の研究では,小峯ら 3)によって短期間かつ 160℃以下の温度履歴によるベントナイトの膨潤特性が実験的に調査されており, 365 日以内の温度履歴を付与した Na 型ベントナイトの膨潤特性に関しては,大きな影響がないことを確認している.2.目的本研究では,温度履歴を付与したベントナイトの吸水特性について試験を実施し,温度履歴が与えるベントナイトの水分移動特性への影響を実験的に評価した.また,水分移動特性の中でも,不飽和状態から飽和状態に緩衝材が再冠水するときに及ぼす影響を調査する.不飽和土の水の移動は,水分拡散係数と水分特性曲線によって表すことができるため,温度履歴を付与したベントナイトに関して,以下の 2 つの試験を実施した.1 つはベントナイトを静的に締固めた供試体の体積拘束時における吸水量測定試験である.本試験は,締固めたベントナイトの体積を拘束した時の吸水量を測定し,小峯ら 4)が提案した吸水量測定結果の解釈方法を用いて,水分拡散係数を求めるものである.また,粉体状ベントナイトに関しての保水性試験を実施した.本試験は,ベントナイトが高い化学ポテンシャルを有することから,蒸気圧法およびサイクロメーター法を用いた.蒸気圧法により養生した試料についてサイクロメーター法を用いて水ポテンシャルを測定することで,含水比と水ポテンシャルの関係について整理した.これらの結果から,温度履歴によるベントナイトの水分移動特性に与える影響について考察を行った.3.使用した試料,温度履歴の付与方法および供試体の作製方法3.1 使用した試料高レベル放射性廃棄物処分における緩衝材には,Na 型のベントナイトが使用される予定であることから,ベントナイト中の交換性イオンに Na+イオンを多く保有するクニミネ工業製のクニゲル V1(以後,V1 と記す.)を用いて試験を実施した.ここで,表 1 に V1 の基本的性質を示す.3.2 温度履歴の付与方法および供試体の作製方法表 1 本試験で使用した試料タイプ土粒子密度(Mg⁄m3 )Na 型2.76液性限界(%)塑性限界(%)504.844.8モンモリロナイト含有率(%)54.4本試験では,110℃,200℃,300℃の温度,30 日間の履歴時間の条件のもとで, V1 に温度履歴を付与した.以後,110℃の温度に設定した乾燥炉に 30 日間試料を投入した場合,温度履歴の条件を「110℃-30 日間」の温度履歴と表記する.V1 をステンレス製バットに入れ,乾燥炉に静置することで温度履歴を付与した.温度履歴付与時において,バットは解放されており,乾燥炉内も大気圧環境に保持された状態である.実際の処分場では,崩壊熱による温度上昇は締固められた状態で生じ,地下に閉じ込められているため,完全に乾燥しないと考えられている 2).粉体状で乾燥炉を使用して温度履歴を付与したのは,試料全体に均一に温度履歴を付与することと締固めた供試体に温度履歴を付与するこDiscussion on influence of short term thermal history to water absorption behavior of bentoniteTakumi Shirakawabe1, Hideo Komine1, Shigeru Goto1, Wang Hailong1, Shuichi Yamamoto2, Toyoda Atsushi3 (1Waseda University,2Obayashi Corporation, 3CHUBU Electric Power Co.,Inc.)KEYWORDS: bentonite, unsaturated soil, thermal properties, water retentively, water intake swelling- 455 - とでクラックが生じることを考慮したためである.図 2 に供試体の作製方法の概要を示す.温度履歴を付与した試料は,含水比が 0%程度になるため,静的荷重により締固めることで,供試体を作製することができない.そこで,蒸気圧法を援用して,含水比を V1 の自然含水比である 8%程度まで回復させた.8%程度に含水比が回復するときの飽和水溶液の塩が,臭化ナトリウム NaBr であることを経験的に求めており,NaBr を溶解した塩飽和水溶液を用いた.養生した試料を,図 2 に示した締固め装置を使用して,15 分間試料に対して静的に圧力を与えることで,経験的に取得した乾燥密度と締固め圧力の関係から,目標となる乾燥密度の供試体(直径:28mm,高さ:10mm)を作製した.本試験では,目標乾燥密度図 2 供試体の作製方法ρd を 1.5,1.6,1.7 および 1.8 g/cm3 と設定した.4. 体積拘束したベントナイト供試体の吸水量測定試験結果4.1 試験装置の概要と測定結果の整理方法本試験で使用した試験装置の概略図を図 3 に示す.この装置では,膨潤特性試験装置の下部吸水口と最大容量 25mL,最小目盛 0.1mL の二重管ビュレットをシンフレックスチューブで接続した.これより,二重管ビュレットの水分減少量を計測し,供試体の吸水特性を調査することが可能となる.膨潤特性試験容器のステンレス製リングにより,側方への変形は拘束され,鉛直方向の変形はクランプノブで固定したピストンにより抑制した.しかし,供試体の膨潤圧により,微小な変形が確認されるため,変位計(最大容量:25 mm,最小目盛り:0.002 mm) を用いて供試体の変位を測定した.吸水量は,二重管ビュレットの水分減少量を目視によってその体積変化を測定した.試験は,ロードセルで測定した膨潤圧が定常になるまで実施した.筆者らが行った既往研究 4)で,ロードセルで測定した膨潤圧の測定結果を示している.試験終了時の含水比を測定することで供試体の飽和度を求め,供試体の変位から式(1)に則して乾燥密度を補正した.以後,初期補正乾燥密度ρd0 と呼び,これを用いて試験結果を整理した.𝑚𝑚𝑠𝑠𝜌𝜌𝑑𝑑0 = 𝐴𝐴(𝐻𝐻0 +∆𝑑𝑑)図 3 体積拘束した供試体の吸水量測定試験× 100 ............................................................. (1)ここで,𝜌𝜌𝑑𝑑0 :補正後の初期乾燥密度(g/cm3),𝑚𝑚𝑠𝑠:供試体の乾燥質量(g),A:供試体の断面積(mm2),𝐻𝐻0:供試体の初期高さ(mm),∆𝑑𝑑:供試体の鉛直方向の変位量(mm)である.4.2 吸水量測定結果の理論的解釈ここで,吸水量測定結果の理論的解釈について説明する.詳細については小峯ら 5)および尾崎ら 6)による研究を参照してもらいたい.土中の間隙に水と空気が共存した状態における鉛直一次元浸透流の評価には,式(2)のバッキンガム・ダルシー式を土中水の連続式に代入して得られる支配方程式(3)が用いられる.𝜕𝜕ℎ𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝐹𝐹 = 𝑘𝑘(𝜃𝜃) 𝜕𝜕𝜕𝜕 = 𝑘𝑘(𝜃𝜃) � 𝜕𝜕𝜕𝜕 + 1� ................................. (2)𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕= 𝜕𝜕𝜕𝜕 𝐹𝐹 = 𝜕𝜕𝜕𝜕 �𝑘𝑘(𝜃𝜃)( 𝜕𝜕𝜕𝜕 + 1)� .................... (3)ここで,F:供試体中を移動する水のフラックス,θ:土の体積含水率,𝑘𝑘(𝜃𝜃):不飽和透水係数,ϕ:マトリックポテンシャル,x:供試体底部を基準とし上向きを正としたときの位置,とする.通常,これを解くには不飽和透水係数およびマトリックポテンシャルと体積含水率の関係を示す水分特性曲線が必要である.そこで,式(2)および式(3)を体積含水率θのみの関数で示したものを式(4)に示す 7).𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕 𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕2 𝜃𝜃= 𝜕𝜕𝜕𝜕 �𝑘𝑘(𝜃𝜃) � 𝜕𝜕𝜕𝜕 + 1�� = 𝜕𝜕𝜕𝜕 ��𝑘𝑘(𝜃𝜃) 𝜕𝜕𝜕𝜕 � 𝜕𝜕𝜕𝜕 + 𝑘𝑘(𝜃𝜃)� = 𝜕𝜕𝜕𝜕 �𝐷𝐷(𝜃𝜃) 𝜕𝜕𝜕𝜕 + 𝑘𝑘(𝜃𝜃)� = 𝐷𝐷 𝜕𝜕𝑥𝑥 2 ............................... (4)ここで,𝐷𝐷(𝜃𝜃):水分拡散係数(= 𝑘𝑘(𝜃𝜃) ∙ 𝜕𝜕𝜕𝜕⁄𝜕𝜕𝜕𝜕)である.不飽和透水係数𝑘𝑘(𝜃𝜃)は体積含水率𝜃𝜃の上昇に伴い増加するのに対して,𝜕𝜕𝜕𝜕⁄𝜕𝜕𝜕𝜕は水分特性曲線の形状から分かるように,体積含水率𝜃𝜃の上昇に伴い減少することから,ある体積含水率の範囲において,その積である𝐷𝐷(𝜃𝜃)は変動幅が小さくなる.これを考慮して水分拡散係数𝐷𝐷(𝜃𝜃)を一定として扱うことで,式(4)のように体積含水率変化を示す式は時間に関して 1 階,空間に対して 2 階の微分方程式となり解析解の取得が可能である.また,既往の研究 5)でベントナイトに関しては水分拡散係数𝐷𝐷(𝜃𝜃)を一定としても,吸水量測定結果と一定度整合- 456 - 性が取れていることが分かっており,本論でもこの方法を用いる.さらに,本試験で生じる水分移動が式(2)の一次元拡散方程式に従うとすることで,取得した吸水量の経時変化を用いて水分拡散係数を算出する.そこで,式(4)を式(5)のように置き換え,ラプラス変換を用いてこの式を解くと供試体の吸水に対する有効飽和度𝑆𝑆𝑒𝑒′ は余誤差関数を用いて式(6)のように表すことができる.𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕𝜕2 𝜃𝜃= 𝐷𝐷 𝜕𝜕𝑥𝑥 2 ⇔ 𝑛𝑛𝑒𝑒′𝜕𝜕𝑆𝑆𝑒𝑒′𝜕𝜕𝜕𝜕− 𝑛𝑛𝑒𝑒′ 𝐷𝐷𝜕𝜕2 𝑆𝑆𝑒𝑒′𝜕𝜕𝑥𝑥 2= 0 ................... (5)𝑥𝑥𝑆𝑆𝑒𝑒′ (𝑥𝑥, 𝑡𝑡) = 𝑒𝑒𝑒𝑒𝑒𝑒𝑒𝑒 �2√𝐷𝐷𝐷𝐷 � ................................. (6)ここで,D:水分拡散係数,𝑛𝑛𝑒𝑒′ :供試体の吸水に対する有効間隙体積率(初期含水率と飽和状態の体積含水率の差),𝑆𝑆𝑒𝑒′ :供試体の吸水に対する有効飽和度である.これより,供試体に流入する水のフラックス F は式(7)のように表せるので,本試験で得られる吸水量 Q は式(8)で表すことができる.𝜕𝜕𝜕𝜕𝐹𝐹 = 𝐷𝐷 𝜕𝜕𝜕𝜕 = 𝑛𝑛′𝑒𝑒 𝐷𝐷𝜕𝜕𝜕𝜕′𝑒𝑒𝜕𝜕𝜕𝜕𝐷𝐷�= 𝑛𝑛′𝑒𝑒 �𝜋𝜋𝜋𝜋 ............... (7)𝑥𝑥 = 0𝐷𝐷Q = 2A𝑛𝑛′𝑒𝑒 �𝜋𝜋 √𝑡𝑡 .......................................... (8)4.3 試験結果の補正方法本試験で得られる二重管ビュレットの水分減少分には,供試体への吸水量以外にポーラスメタル,ろ紙,配管系への空気残存部への流入量も含んでいるため,この分を補正する必要がある.本試験で生じる水分移動が式(2)の一次元拡散方程式に従うとすれば,吸水量は経過時間の平方根√𝑡𝑡の一次関数として表すことができ,二重管ビュレットの水分減少量𝑄𝑄0は式(9)で近似できる.これより,供試体の吸水量は二重管ビュレットの水分減少量𝑄𝑄0から b を差し引いた値であるが,今回得られた試験結果には,供試体が飽和後も二重管ビュレットから水分移動が生じ,供試体上部のポーラスメタルへの浸潤量も含まれる.この補正方法を図 4に示す.試験結果から a,b を求めて,式(8)の関係から得られる式(10)により,水分拡散係数 D を算出する.𝑄𝑄0 = 𝑎𝑎√𝑡𝑡 + 𝑏𝑏........................................................ (9)𝑎𝑎図 4 測定した吸水量の補正方法2𝐷𝐷 = 𝜋𝜋 �2𝐴𝐴𝐴𝐴′ � ...................................................... (10)𝑒𝑒ここで,a:単位時間当たりの吸水量(mL⁄√min),b:試験容器空気残存部への流入量(mL)とする.4.4 吸水量測定結果前章の補正方法に則して,補正した二重管ビュレットの水分減少量の経時変化を図 5 に,水分拡散係数を求めるために経過時間の平方根で整理した水分減少量の経時変化を図 6 に示す.本試験で実施した 4 種の目標乾燥密度において同様の挙動を示したため,図 6 には初期補正乾燥密度ρd0 が 1.8 g/cm3 程度の結果のみを記載した.また,図 7 は,供試体の飽和度が 100%に至るときの供試体の吸水量を初期条件から算出し,補正した二重管ビュレットの水分減少量が算出した水分量に至る経過時間 tf を初期補正乾燥密度ρd0 で整理したものである.図 5 から補正した二重管ビュレットの水分減少量の経時変化について,ρd0 が 1.5 g/cm3 程度のときは,温度履歴を付与したベントナイトの方が,温度履歴を付与していないベントナイトよりも吸水量が大きい.一方,ρd0 が 1.8 g/cm3 程度の場合,温度履歴を付与したベントナイト吸水量が小さく,吸水が遅くなった.乾燥密度と吸水挙動の関係を明らかにするため,供試体の飽和度が 100%に至るまでに要する経過時間によって温度履歴の影響を比較する.図 7 より,温度の差異に依らず,温度履歴を付与した時の方が,供試体の飽和度が 100%に至るまでに要する経過時間と乾燥密度との勾配が,小さくなった.温度履歴を付与することで,供試体飽和に要する時間が供試体の乾燥密度の差異に関わらず,同程度に近づくことが確認された.次に, 図 6 において吸水量が吸水初期の近似直線から外れる経過時間 td を初期補正乾燥密度ρd0 で整理したものを図8 に示す.図 6 より,温度履歴の付与に関わらず,吸水初期では吸水量が経過時間の平方根に比例していることが確認された.吸水量が経過時間の平方根に一次関数的に増加している部分について,温度履歴の影響を調査すると,図 8 より「110℃-30 日間」,「200℃-30 日間」温度履歴を付与したすべての条件で td が小さくなった.ρd0 が 1.5g/cm3 程度のとき,の温度履歴よりも,「300℃-30 日間」の温度履歴の時に,td が小さい.また,乾燥密度が高い時の方が,温度履歴の有無によって td の差が明瞭であることが確認できる.この結果は,温度履歴を付与することで,本試験の吸水量測定試験の解釈方法である式(4)に従い,水分拡散係数を一定として扱った理論的解釈に則した吸水挙動を示す部分が短くなり,水分拡散係数を一定値として評価できない部分が長くなることを示唆している.また,吸水初期の近似直線の勾配から式(10)を用いて算出した水分拡散係数を,初期補正乾燥密度ρd0 で整理したものを図 9 に示した.図 9 より,温度履歴の有無に関わらず水分拡散係数 D が,4.0×10-10~2.0×10-9 m2/s であることと乾燥密度が高くなるほど, V1 の水分拡散係数が大きくなった.温度履歴を付与したベントナイトでは,温度履歴を付与していないベントナイトほど乾燥密度に依存しないことが確認された.- 457 - (a)ρd0:1.50 g/cm3 程度(b)ρd0:1.60 g/cm3 程度(c)ρd0:1.70 g/cm3 程度(d)ρd0:1.80 g/cm3 程度図 5 補正した二重管ビュレットの水分減少量の経時変化(a)温度履歴なし(b)110℃-30 日間図 6 初期補正乾燥密度ρd0 1.80図 75.(c)200℃-30 日間(d)300℃-30 日間g/cm3程度の供試体における経過時間の平方根で整理した吸水量の経時変化ρd0 で整理した供試体が飽和に至る経過時間 tf図 8 ρd0で整理した吸水量が吸水初期の近似直線から外れるに至る経過時間 td温度履歴を付与したベントナイトの吸水過程における保水性試験本章では,蒸気圧法により養生した試料の含水比とサイクロメーターで測定した試料の水ポテンシャルから,保水性を評価した.4.1 試験方法および保水性試験結果の解釈方法蒸気圧法による試料の養生には約 2 ヵ月間要し,試料の質量が一定になるまで密閉容器内に粉体状のベントナイトをシャーレ,水ポテンシャル測定装置専用容器および蒸発皿に入れて図 10 のように静置させた.蒸気圧法に用いた水溶液の塩は,表 2 に示す 10 種類である.養生した試料を,図 11 に示すデカゴン製の水分ポテンシャル測定装置 WP4C によって測定した.この試験装置で測定した値は,マトリックポテンシャルと浸透ポテンシャルの和の水ポテンシャルであり,測定範囲は-0.1~-300MPa,最小目盛 0.01MPa である.一般に不飽7)和透水に関しては,マトリックポテンシャル勾配が駆動力となるが,- 458 -図 9 ρd0で整理した水分拡散係数 D ベントナイトのような膨潤性粘土では,浸透ポテンシャルも土中水の移動に影響を与える.また,ベントナイトの保水性試験については,多くの研究が進められている.そのうち,蒸気圧法,サイクロメーター法で測定したベントナイトの浸透ポテンシャルについては,解釈が異なる.竹内ら ,千々松ら および西村ら9)2)図 11 使用したサイクロメーターの研究10)では,高ポテンシャル領域においては,浸透ポテンシャルは十分に小さいため,影響が無視できるとしているが,図 10 試料の養生方法表 2佐藤ら 11)の研究では飽和状態のベント塩の種類と飽和溶液の蒸気圧 8)塩相対化学湿度ポテンシャル(%)ψ(kPa)ナイト供試体の水ポテンシャルを測定し,これを浸透ポテンシャルとしている.本研究では,マトリックポテンシャルと浸透ポテンシャルの合計値を含水比で整理することで,ベントナイトK2SO498-2830KNO395-694093.1-9800NH4H2PO4の保水性を評価した.KCL85-219005.2 粉体状 V1 の保水性に及ぼす温度NaCL75-39000Mg(NO3)・6H2O54-83400図 12 は同じポテンシャルを有するNaCr2O72H2O52-87300塩飽和溶液で養生した試料について含K2CO3・2H2O43-115000水比の変化を,履歴温度で整理したもMgCL2・6H2O33-148000のである.図 13 には蒸気圧法を用いLiCL11-296000履歴の影響図 12 履歴温度と養生時の含水比の関係て養生した試料の含水比とそれらをサイクロメーターで測定した水ポテンシャルの関係について示す.図 12 から温度履歴を付与することで,同等の水ポテンシャルの時に,含水比が 0%~13%の低含水比の試料において,履歴温度が高いほど含水比が低下していることが確認できる,これらの結果は,ベントナイトが低含水比の時は,高温の温度履歴ほど,吸水過程における保水性が低下することを示唆した.特に,水ポテンシャルが高い時に大きく含水比が低下し,「300℃-30 日間」の温度履歴を付与したとき,最も保水性が低下する.しかし,現段階ではマトリックポテンシャル,浸透ポテンシャルのどちらが起因して保水性低下にいたるのか,明らかにな図 13 含水比と水ポテンシャルの関係っておらず,今後の課題である.6.ベントナイトの水分移動特性に及ぼす温度履歴の影響に関する考察と今後の課題体積拘束したベントナイト供試体の吸水量測定試験および保水性試験の試験結果から温度履歴によるベントナイトの水分移動について考察を行う.吸水量測定試験結果からは,温度履歴を付与することで経過時間の平方根で整理した時に,吸水初期の近似直線から外れるまでの経過時間が短くなることと,供試体飽和に要する時間が乾燥密度の差異に依らなくなる傾向があることが分かった.前者については,温度履歴を付与することで吸水挙動に変化が生じることが考えられる.本研究では,水分拡散係数を一定値として扱い,試験結果を整理したが,温度履歴を付与した場合,その部分が短くなる.これより,供試体を一定時間で取り出し,含水比の分布を調べることで水分拡散係数を取得し,本試験結果と整合するか調査する必要がある.一方,後者に関しては以下のようなことが考えられる.供試体の乾燥密度が高い時,ベントナイト中の主要鉱物モンモリロナイトの乾燥密度も高くなる.モンモリロナイト密度が高い場合,吸水能力は高くなり,早く飽和に至ると考えられる.実際,温度履歴を付与していないベントナイトでは,乾燥密度を高くすることで,供試体飽和に要する時間は大きく減少している.しかし,温度履歴を付与した場合,温度履歴を付与していないときに比べて,乾燥密度を高くしても供試体飽和に至る時間が短くならない.これは,モンモリロナイトの吸水能力の低下に起因して,乾燥密度が高くなっても飽和時間の減少分が小さくなったと考えられる.- 459 - 吸水能力の低下については,保水性試験の結果からも確認された.吸水能力はベントナイトの保有するポテンシャルとして評価すれば,温度履歴を付与することで水ポテンシャルの低下したことが,ベントナイトの吸水能力が低下したことと考える.以上から,図 14 のように,ベントナイトの水分移動特性に温度履歴が影響を及ぼすと考えられる.図 14ベントナイトの吸水挙動に及ぼす温度履歴の影響図 15 ρd0で整理した試験後の飽和度また,本研究における 3 つの課題について列挙する.1 点目は,吸水量測定試験後の飽和度についてである.図 15 に初期補正乾燥密度ρd0 で整理した試験後の飽和度を示す.これより,温度履歴の有無に関わらず試験後の飽和度が 100%を超過していることが確認された.これは,既往の研究 4)でも確認されている.しかし,飽和度が 100%を超過する理由については,飽和度算出の際に用いる含水比(%),乾燥密度(g/cm3),土粒子密度(g/cm3)について再度精度の確認を行う必要がある.その上で,飽和度が 100%を超過する理由について明らかにする必要がある.2 点目は保水性試験において,温度履歴を付与した時に,マトリックポテンシャルと浸透ポテンシャルのどちらが起因して保水性が低下したか明らかにしたい.これらについて,調査することで,温度履歴の影響をさらに明確にすることができると考える.3 点目は,温度履歴を付与した時の低乾燥密度における吸水能力の低下の理由についてである.陽イオン交換容量測定試験やメチレンブルー吸着量測定試験を実施することで,モンモリロナイト層間中のイオンについて調査し,明らかにしていく.7. まとめ本研究で得られた結論を以下に示す.1)体積拘束した供試体の吸水量測定試験によって得られた吸水量測定結果から,温度履歴を付与した時の方が供試体飽和に要する経過時間および水分拡散係数が,乾燥密度の差異に依らなくなることが確認された.また,経過時間の平方根で整理した吸水量の経時変化から,V1 の吸水挙動が変化することが分かった.2)温度履歴を付与した粉体状の V1 について,保水性が低下することが分かった.特に「300℃-30 日間」の温度履歴を付与した時に最も保水性が低下する.3)ベントナイトの水分移動特性に及ぼす温度履歴の影響について,本試験で実施した 2 つの試験結果から考察を行った.温度履歴を付与した時の方が,ベントナイトの吸水に必要な水ポテンシャルが低下し,供試体飽和に要する経過時間が乾燥密度の差異に依らなくなり,吸水挙動にも変化を及ぼしたと考えられる.謝辞:本研究の一部は,2018 年度中部電力原子力安全技術研究所公募研究の成果の一部である。また、JSPS 科研費 18H01534および早稲田大学・理工学術院総合研究所重点領域・持続的未来社会研究所の支援も得た。ここに、感謝申し上げます。参考文献核燃料サイクル開発機構:わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性,―地層処分研究開発第 2 次取りまとめ―分冊 2 地層処分の工学技術,JNC TN1400 99-022,1999.2) 千々松 正和・谷口 航・鈴木 英明・西垣 誠 : 熱-水-応力連成モデルを用いた高レベル放射性廃棄物の地層処分におけるニアフィールド評価, 土木学会論文集, Vol.687, pp. 9-25, 2001.3) 小峯秀雄,大橋良哉,安原一哉,村上哲:ベントナイトの膨潤:ベントナイトの膨潤圧・膨潤変形特性に及ぼす温度履歴の影響とその要因,土木学会論文集 C, Vol. 63, No. 3, pp. 731-741, 2007.4) 小峯秀雄・小山田拓郎・尾崎匠・磯さち恵:締固めた粉体状ベントナイト各種の水分移動特性と膨潤圧挙動に関する考察,土木学会論文集 C(地圏工学),Vol.74,No.1,pp.63-75,2018.5) 白河部匠・小峯秀雄・後藤茂・王海龍・山本修一・豊田淳史:30 日間の温度履歴を付与したベントナイトの膨潤圧および吸水挙動の実験的調査,第 54 回地盤工学研究発表論文集,2019.(投稿予定)6) 尾崎匠・小峯秀雄・山本修一・浦田智仁:砂層をベントナイト層で挟み込む三相遮水構造における吸水メカニズムおよび吸水量の水分拡散係数を用いた評価,第 12 回環境地盤工学シンポジウム発表論文集,2017.7) 地盤工学会:不飽和地盤の挙動と評価,丸善,11-84,2004.8) 地盤工学会:地盤材料試験の方法と解説-二分冊の 1-,丸善出版,pp162-176,2009.9) 竹内真司・原啓二・中野政司:圧縮ベントナイトの水分特性曲線および水分拡散係数と水の移動形態,地盤工学会論文報告集,Vol. 35, No. 3, pp. 129-137, 1995.10) 西村友良,古関 潤一:蒸気圧法を用いたベントナイトの水分特性曲線の測定,土木学会第 64 回年次学術講演会,2011.11) 佐藤 伸,山本 修一,西村 友良,Endique Romero:ベントナイト・砂混合土のヒステリシス水分特性の取得と適用性検証 ,第 52回地盤工学研究発表会論文集,2017.1)- 460 -
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  • タイトル
  • 固化改良土による堤体改修法(砕・転圧盛土工法)の簡略設計法の提案~環境保護面に優れたフィルダム堤体の耐震補強と漏水防止のための技術~
  • 著者
  • 福島 伸二・北島 明・谷 茂
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 365〜370
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000065
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)11-3固化改良土による堤体改修法(砕・転圧盛土工法)の簡略設計法の提案~環境保護面に優れたフィルダム堤体の耐震補強と漏水防止のための技術~○福島伸二 1・北島明 2・谷茂31 株式会社フジタ土木本部・2 株式会社フジタ技術センター・3(国研)農研機構フェロー1. はじめにフィルダムやため池の多くは,老朽化して堤体改修(耐震補強や漏水防止)が求められているものの,近年周辺の市街化が進むなど堤体改修に必要な築堤土を入手しにくくなっている。一方,貯水池に堆積した底泥土は貯水容量の減少や水質悪化の原因となり除去処分が必要となっているものの,土捨て場の確保が難しく産廃処分とせざるを得ない問題を抱えている。砕・転圧盛土工法は,築堤土の入手難と底泥土の除去処分を同時に解決し,築堤土と土捨て場の確保に伴う環境破壊を不要とした堤体改修技術であり,図-1 に概念的に示すように,原料泥土となる底泥土を,あるいは底泥土に工事に伴う掘削土を加えた混合泥土をセメント系固化材により所要の強度と遮水性を有するように準備した固化改良土を既設堤体の上流側の一部掘削した部分に腹付けて行うことを基本としている。砕・転圧盛土工法が対象とする固化改良土は,図-2 に示すように,原料泥土を単に固化させただけの初期固化土と,これを固化途上中に解砕して通常の盛土材料の場合と同様に一定層厚毎に転圧する砕・転圧土を扱うが,築堤土には砕・転圧土を用いる。砕・転圧土の目標強度は,砕・転圧土盛土工法により堤体改修を施す堤体全体が安定であるために砕・転圧土ゾーンに必要な粘着力として逆算される。一方,実施工における固化改良土の強度管理は,試験実施が簡単な一軸圧縮試験による一軸圧縮強さを指標とするので,室内配合試験は,2 種類の固化改良土の相互の強度関係,砕・転圧土の粘着力と一軸圧縮強さの関係,目標強度を達成できる固化材添加量を調べるための一軸圧縮試験と三軸圧縮試験による体系的な各種の試験を大量に実施しなければならない。室内配合試験は規模の大きいフィルダムでは工事費用も大きく必須のものとして実施できるのに対して,小規模な堤体改修では費用対効果面からすべての試験を実施することは難しいため,簡略化されたものが求められる。そこで,本稿は砕・転圧盛土工法を小規模な堤体改修だけでなく,大規模な堤体改修における予備的検討にも適用底泥土貯水池 FWLできるように,室内配合試験の実施数量を可能な限既設堤体(老朽化)り省略できる簡略設計法を提案するものである。基礎地盤2. 砕・転圧盛土工法における固化改良土の強度関係砕・転圧盛土工法は,原料泥土をセメント系固化材固化改良土(強度+遮水性)により一定の初期固化期間 tS(tS=3 日を標準とする)底泥土だけ固化させた初期固化土を,さらに規定の最大粒既設堤体径 Dmax で解砕してから通常土と同様に一定層厚で両者の強度は図-3 に概念的に示すような関係にあ基礎地盤コアゾーン堤泥土除去転圧する砕・転圧土の 2 種類の固化改良土を扱うが,図-1 築堤土入手難と底泥土除去を両立させた堤体改修法る。そして,堤体改修は既設堤体の一部掘削するなどした部分に砕・転圧土により腹付け盛土や押え盛含水比・粒度補正(w-Fcモデル)土を一層毎に築造して行うものである。すなわち,砕・転圧土は原料泥土をセメント系固化材の添加により固化させた初期固化土を,さらに解砕・転圧して 2 段階に分けて準備される。なお,初期固化土を解砕する際の粒径の大きさは強度と遮水性に影響し,粒径が大きいほど強度が高くなり,遮水性が低くな固化材混合泥土(含水比・粒度変化)初期固化日数(tS)初期固化土解砕(Dmax)築堤(撒出し・敷均し・転圧)砕・転圧土既設堤体等掘 削底泥土掘削強度主体遮水性主体強度主体シェルゾーンシェルゾーンる性質にあるので,目的に応じて変えるものとして法先ドレーン既設堤体おり,Dmax=200mm を標準としている。底泥土砕・転圧土の目標強度は,砕・転圧土盛土工法にコアゾーンコアトレンチより堤体改修を施した堤体全体の安定計算により,基礎地盤図-2 砕・転圧盛土工法の基本的概念所要の安全率を満足して安定性が確保できる砕・転Simplified Design Method for Fill-type Dam Embankment Rehabilitation Technique Using Cement-mixed SoilShinji Fukushima1, Akira Kitajima1, Shigeru Tani2 (1Fujita Corporation, 2Fellow of National Institute for Rural Engineering)KEYWORDS: Cement-mixed Soil, Cohesion, Unconfined Compressive Strength, Fill-type Dam, Embankment Rehabilitation- 365 - 圧土ゾーンに必要となる粘着力(c’)CCStability として逆算される。一方,実施工での強度管理は試験実施が容易(qu)IS , (qu)CC(qu)IS10=(qu)IS*≒(qu)CC*/R3な一軸圧縮試験による一軸圧縮強さが指標に用いられるので,粘着力と一軸圧縮強さの関係が必要になる。(qu)IS10解砕・転圧による強度低下R3=(qu)CC25/(qu)IS28砕・転圧盛土工法における固化改良土の強度は,図-3に示したように,原料泥土に固化材を添加してから強(qu)IS28(qu)IS3(qu) CC25度発現が緩やかになり始める t=10 日目の強度,すなわ(qu)CC7=(qu)CC*ち初期固化土では(qu)IS10=(qu)IS*により,砕・転圧土で(qu) CC0は tS=3 日とした場合にはt=3+25=28日tS=3日 tCC=7日tCC=t-tS=10-3=7日目までに発現する強度(qu)CC7=(qu)CC*によりそれぞt=tS+tCCれ設定される。(qu)IS10 の下添字 IS は Initial Stabilized解砕・転圧日tS=3日(標準)の頭文字から初期固化土であること,下添数字 10 は図-3 初期固化土と砕・転圧土の強度発現特性(tS=3 日)目標強度設定日t=tS+tCC=3+7=10日t=10 日目の強度であることを示す。(qu)CC7 の下添字 CCは Crushed and Compacted の頭文字から砕・転圧土であ堤沢ダム 混合泥土A(底泥土+堤体土, nV=2.0, (wMix)O=49.1%)初期固化土:t=tS=10日固化材:セメント系(高有機質土用GS225)スラリー添加:w/c=1.03000初期固化土の一軸圧縮強さ (qu)IS10 (kN/m2)ること,下添数字 7 は tCC=7 日目の強度であることを示す。また,(qu)IS*などの上添記号*は目標強度に関連したものであることを示す。指針 1), 2)では,室内配合試験は初期固化土と砕・転圧土の両方について実施することが規定されており,基本となるのは一軸圧縮試験による初期固化土の強度(qu)IS に及ぼす固化材添加量 ΔMC,養生日数,原料泥土の含水比や粒度の影響を調べる試験,初期固化土をある一定期間 tS だけ固化させてから固化途上中に解砕・転圧した砕・転圧土の再固化強度特性を調べる試験などを実施する必要がある。加えて,砕・転圧土の強度250020001500ΔMC=28+0.0659・(qu)IS101000パラメータ((c’)CC , (φ’)CC)と ΔMC の関係を求めるた500一軸圧縮試験:D/H=50mm/100mmめの三軸圧縮試験も実施しなければならない。そして,室内配合試験の結果をもとに,砕・転圧土のを現場で00達成できる固化材添加量 ΔMC=ΔMC*,施工管理指標になる 一軸圧縮強さ 表示の 目標強 度, 初期固化 土の50100150200固化材添加量 ΔMC (kg/m3)250図-4 初期固化土の(qu)IS~ΔMC 関係(qu)IS*と砕・転圧土の(qu)CC*がそれぞれ求められる。固化改良土の(c’)CCStability と(qu)IS*,(qu)CC*の相互関係堤沢ダム混合泥土A〔底泥土+堤体土,nV=2.0, (wMix)O=49.1%〕砕・転圧土:t=tS+tCC=3+7=10日固化材:セメント系(高有機質土用GS225)スラリー添加:w/c=1.0は,堤沢ダムの室内配合試験結果を例として説明する350験により,初期固化土の (qu)IS10 が ΔMC に対して比例しやすいように直線近似したΔMC=A+B・(qu)IS10(1)を求める。また,三軸圧縮試験により,砕・転圧土の強度パラメータのうちの(c’)CC7 が ΔMC に対して比例的に増加する関係を図-5 に示すような直線近似したΔMC=A’+B’・(c’)CC7(2)を求める。砕・転圧土の強度パラメータは三軸圧縮試験(圧密・非排水試験)による破壊時の Mohr の応力砕・転圧土の粘着力 (c')CC7 (kN/m2)的に増加する関係を,図-4 に示すように ΔMC を算定300504540(c')CC7~ΔMC2503530ΔMC=11+0.635・(c')CC7200251502015100(φ')CC7~ΔMC1050円の包絡線を近似した直線の切片(c’)CC と傾き(φ’)CC5から得られるものであり,図-5 からわかるように,ΔMC三軸圧縮試験:D/H=50mm/100mm0の増加に対して (c’)CC のみが直線的に増加するので,00(φ’)CC は一定値として取り扱う。(c’)CC7 と(qu)IS10 の関係は,図-6 に概念的に示すよう50100150固化材添加量 ΔMC (kg/m3)図-5 砕・転圧土の(c’)CC~ΔMC 関係に,図-4 と図-5 の関係から ΔMC を介在させて関係づ- 366 -200内部摩擦角 (φ')CC7 (deg.)と,以下のような手順により求められる。一軸圧縮試 A法けられる。先ず,図-6 の左側に示した流れで,砕・(c’)CC7場と室内との間の配合条件の相違を補正するための現場/室内強度比 αFL により強度割増しをした配合強(qu)IS10(c’)CC7 から(qu)IS10への変換(tS=3日)転圧土の(c’)CCStability を現場で達成できる ΔMC*が,現砕・転圧土 (wO , FCO)度(c’)CCStability/αFL を式(2)に代入して初期固化土 (wO , FCO)室内配合強度(qu)IS*/αFL室内配合強度(c’)CCStability/αFLΔMC*=A’+B’・(c’)CCStability/αFLから得られる。次に,初期固化土の(qu)IS*は,図-6の右側に示した流れにより,式(1)に ΔMC*を代入し(qu)IS*(c’)CCStabilityて得られる配合強度(qu)IS*/αFL から(qu)CC*=R3・(qu)IS*(qu)IS*=(ΔMC*-A)・αFL/Bにより求められる((c’)CCStability→ΔMC*→(qu)IS*)。最後に,(qu)IS*を(qu)CC*に変換するには,初期固化ΔMCΔMC*ΔMC* ΔMC土を解砕・転圧した砕・転圧土の再固化強度特性を表示する指標として定義されている t=28 日目に相図-6 砕・転圧土の ΔMC を介した(c’)CC~(qu)IS 関係当する初期固化土の強度(qu)IS28 に対応する砕・転圧土の強度比である強度低下比R=(qu)CC/(qu)IS28 at t=28 日の関係を示すが,R は tS を長く取ると砕・転圧土の再発現強度が小さくなるので,tS とともに減少する傾向を示す。したがって,R~tS 関係は初期固化土の強度発現特性を示す(qu)IS~t(=tS)関係と砕・転圧土の強度発現特性を示す(qu)IC~t(=tS+tCC)関係を対応させて求められ,標準の tS=3 日に対する R 値R3=(qu)CC25/(qu)IS28を用いれば図-7 に曲線で示したような累乗式強度低下比 R=(qu)CC/(qu)IS at t=28日を用いる。図-7 に室内配合試験から得られた R と tS堤沢ダム 混合泥土A(底泥土+堤体土, nV=2.0, (wMix)O=49.1%)固化材:セメント系(高有機質土用GS225)スラリー添加:w/c=1.01.0(3)0.8ΔMC=100kg/m30.6R3=0.380.40.2R=R3・(tS/3)-0.232tS=3日一軸圧縮試験:D/H=50mm/100mmR= R3・(tS/3)-0.232(R3=0.38)0.00により近似することができる。(qu)CC25 は tS=3 日に設定した砕・転圧土の tCC=t-tS=28-3=25 日目までに246初期固化日数 tS (日)810図-7 砕・転圧土の初期固化土に対する強度低下比 R発現される強度である。そして,(qu)CC*は tS=3 日に対応する R3 を用いることで,(qu)IS*からこれまでの実績 1) 2)をもとに近似的にR3≒(qu)CC7/(qu)IS10=(qu)CC*/(qu)IS*堤沢ダム 混合泥土A(底泥土+堤体土, nV=2.0, (wMix)O=49.1%)砕・転圧土:t=tS+tCC=3+7=10日固化材:セメント系(高有機質土用GS225)スラリー添加:w/c=1.0400(3’)3. 砕・転圧盛土工法の簡略化設計法以上みてきたように,(c’)CCStability から ΔMC*,(qu)IS*や(qu)CC*を求めるには,体系的な初期固化土の一軸圧縮試験,砕・転圧土の一軸圧縮試験と三軸圧縮試験からなる室内配合試験を実施しなければならない。そこで,この作業を初期固化土の基本的な一軸圧縮試験の実施のみで簡略化できる設計法を提案する。砕・転圧土の粘着力 (c')CC7 (kN/m2)として変換することができる。300200(c')CC7=α+β・(qu)CC7(c')CC7=27+0.26・(qu)CC71003.1 砕・転圧土の粘着力と一軸圧縮強さの関係先ず,砕・転圧土の(c’)CC と(qu)CC の関係について検討してみたい。図-8 は同一の配合条件で準備した一軸・三軸圧縮試験:D/H=50mm/100mm00砕・転圧土の三軸圧縮試験による(c’)CC7 と一軸圧縮試 験 に よ る (qu)CC7 の 関 係 を 示 す2004006008001000砕・転圧土の一軸圧縮強さ (qu)CC7 (kg/m3)3) 。 図 中 に は図-8 砕・転圧土の(c’)CC と(qu)CC の関係(c’)CC7/(qu)CC7= 一 定 線 と し て (c’)CC7/(qu)CC7=1/2.0 ~1/3.5 の範囲で 4 種類を示してある。(c’)CC~(qu)CC 関係は,物理的意味のあるものではなく単なる比較であるものの,図から(c’)CC の増加に対応して(qu)CC が増加する傾向を示していることがわかる。図-8 の図中の赤色の直線は式(1)と式(2)から ΔMC を消去して得られる(c’)CC~(qu)IS10 関係を求め,(qu)IS10 を(qu)CC7=R3・(qu)IS10 を用いて変換して得られる関係式- 367 - (c’)CC7=α+β・(qu)CC7(4)堤沢ダム 混合泥土A(底泥土+堤体土, nV=2.0, (wMix)O=49.1%)砕・転圧土:t=tS+tCC=3+7=10日固化材:セメント系(高有機質土用GS225)スラリー添加:w/c=1.0を示したものである。ここで,係数 α と β はそれぞれ5.0α=(A-A’)/B’,β=B/(R3・B’)砕・転圧土の強度比 C=(qu)CC7/(c')CC7である。式(4)は(c’)CC7~(qu)CC7 関係を直線で近似したものに相当する。また,(qu)CC7/(c’)CC7 は式(4)から(qu)CC7/(c’)CC7=(qu)CC7/(α+β・(qu)CC7)とおけることから,(qu)CC7/(c’)CC7~(qu)CC7 関係を図-9のように双曲線により近似したものと同じである。以上から,(c’)CC7/(qu)CC7 は一定値ではなく(qu)CC7 の増加に対して一定値に収束する傾向にあることがわかる。地盤改良分野では,固化改良土の粘着力 c と一軸圧4.01/β=3.6623.0C=(qu)CC7/(c')CC7=(qu)CC7/{α+β・(qu)CC7}2.0(qu)CC7/(c')CC71.0縮強さ qu の関係は図-10 に示すような粘性土の非圧一軸・三軸圧縮試験:D/H=50mm/100mm密・非排水強度問題と同じ0.00c=(1/2)・quとした関係式がそのまま採用されている3)。しかし,200400600800砕・転圧土の一軸圧縮強さ (qu)CC7 (kg/m3)1000図-9 砕・転圧土の(qu)CC7/(c’)CC7 と(qu)CC7 の関係(c’)CC7/(qu)CC7 は,図-8 や図-9 からわかるように,上式の関係と相違し,一定値とならずに(qu)CC7 の大きさにσ1=qu依存している。そこで,(c’)CC7~(qu)CC7 関係に及ぼすτ(qu)CC7 の影響を調べるために,砕・転圧盛土工法によτf=c (φuu=0)り堤体改修を実施した,あるいは実施中の 5 個所のフィルダムで調べられた室内配合試験結果から読み取っσ3=0cた砕・転圧土の(c’)CC7/(qu)CC7 と(qu)CC7 の関係を図-11(c’)CC/(qu)CC7=α/(qu)CC7+βσquに示す。図中には,式(4)を考慮した関係式c/qu=1/2(6)により,データの上・下限線,平均線をうまく近似で図-10 地盤改良工学分野での粘着力と一軸圧縮強さの関係きるように係数 α と β の値を決定した曲線をそれぞれ示す。図から,(c’)CC7/(qu)CC7 は(qu)CC7 に依存し,(c’)CC7と(qu)CC7 の関係は一定値ではなく強度レベル(qu)CC7 に砕・転圧土の粘着力と一軸圧縮強さの関係砕・転圧土:t=tS+tCC=3+7=10日固化材:セメント系スラリー添加:w/c=1.01.0より変化し,(qu)CC7 が増加すると(c’)CC7/(qu)CC7 が減少0.9に強度レベルが低い(qu)CC7<300kN/m2 において顕著であるものの,(qu)CC7 が増加すると一定値に収束することもわかる。以上から,(c’)CC7 と(qu)CC7 の変換式として,これまでの事例実績の平均的な関係をうまく近似できるものとして(c’)CC7=27+0.26・(qu)CC7(7)が提案されている 。ただし,(c’)CC7/(qu)CC7≦1/2.0 と4)している 5)。図-8 には上式の関係を破線で示してあるが,試験データの傾向をうまく表現できていることがわかる。そこで,上式は(c’)CCStability を(qu)CC*に変換す粘着力・一軸圧縮強さ比 (c')CC7/(qu)CC7する傾向にあることがわかる。しかし,この傾向は特◇ ◆:西大谷ダム〇 :大原ダム□ :谷田大池△ :堤沢ダム+ :SKダム0.80.70.6(c')CC7/(qu)CC7=0.50.5(c')CC7/(qu)CC7=α/(qu)CC7+β((c')CC7/(qu)CC7≦0.5)α/β=35/0.350.4α/β=27/0.260.3α/β=10/0.250.2tS=3日0.1一軸・三軸圧縮試験:D/H=50mm/100mmるための基本式として使用する。0.03.2 初期固化土と砕・転圧土の間の強度変換0以上の手続きの中で,(c’)CCStability が(qu)CC*に変換されたので,次に必要になるのが(qu)CC*を(qu)IS*に変換す2004006008001000砕・転圧土の一軸圧縮強さ (qu)CC7 (kg/m2)1200図-11 砕・転圧土の強度比(qu)CC/(c’)CC と強度レベルの関係ることであり,これには上述した式(3’)の R3 を用いて(qu)IS*=(qu)CC*/ R3により行うことができる。R3 は原料泥土の種類や強度レベルなどの影響を受けることが知られている。そこで,R3 を推定するために上述の 5 個所のダムにおける室内配合試験から調べられた R3 と(qu)CC7 の関係を整理したのが図-12 である。図から,R3 は R3=0.5 に近い値にあるものの(qu)CC7 の増加に対して減少傾向にあり,図中の曲線で示したように累乗式R3=0.805・[(qu)CC7]-0.102(8)による近似が提案されている 6)。- 368 - 3.3 簡略化した設計法の提案図-13 は簡略設計法の概要を示し,破線枠内に示解砕・転圧による強度低下比初期固化土:t=10日砕・転圧土:t=tS+tCC=3+7=10日固化材:セメント系スラリー添加:w/c=1.01.0した関係式はこれまでのフィルダム堤体の改修事例実績における室内配合試験結果から得られた線枠内の図-4 に示したような初期固化土の(qu)IS10~ΔMC 関係から算定できるものである。すなわち,(c’)CCStability は,式(7)を(qu)CC7 について整理した(qu)CC7={(c’)CC7-27}/0.26(7’)における(c’)CC7 に(c’)CCStability を代入すれば(qu)CC*に変換できる。さらに,(qu)IS*は式(8)に(qu)CC*を代入強度低下比 R3=(qu)CC25/(qu)IS28(c’)CCStability から(qu)CC*と(qu)IS*を推定し,ΔMC*は実0.8tS=3日R3=0.500.4◇ ◆ :西大谷ダム〇 :大原ダム□ :谷田大池△ :堤沢ダム+ :SKダム0.2して強度レベルの影響を考慮して推定できる R3 を用いてR3=0.805・[(qu)CC7]-0.1020.6三軸圧縮試験:D/H=50mm/100mm0.00(qu)IS*=(qu)CC*/R3により変換できる。現場で(c’)CCStability を達成するこ2004006008001000砕・転圧土の一軸圧縮強さ (qu)CC7 (kg/m3)1200簡略化設計法図-12 強度低下比 R3 と強度レベル(qu)CC7 の関係とができる ΔMC*は,(qu)IS*に αFL=1/1.5 を考慮して強度割増しをした配合強度(qu)IS*/αFL を,初期固化土室内配合試験初期固化土(一軸):ΔMC=A+B・(qu)IS10[wO , FCO , t=10日]の室内配合試験で得られた図-4 に示したような(qu)IS10~ΔMC 関係を近似した式(1)に代入すればΔMC*=A+B・(qu)IS*/αFL(c’)CC7=27+0.26・(qu)CC7(c’)CCStabilityるだけで事足りるものである。(qu)IS*=(qu)CC*/R3ΔMC*R3=0.805・[(qu)CC]-0.102図-13 における実線枠内の一軸圧縮試験,すなわち図-4 に示した初期固化土の(qu)IS10~ΔMC 関係を求めR3(qu)CC*のように算定できる。簡略設計での室内配合試験は詳細化設計法 図-13 簡略化した設計法の手順(指針法)詳細設計法は式(7),あるいは式(8)は,図-14 に示すように,初期固化土の一軸圧縮試験,砕・転圧土の一軸圧縮試験,三軸圧縮試験を実施して,改修事例ごとに求めて行うものである。これに対して,簡略化した設計法では,(c’)CCStability の(qu)IS*への変換が室内配合試験初期固化土(一軸):ΔMC=A+B・(qu)IS10 [wO+FCO , t=10日]初期固化土(一軸)★1:(qu)IS~[t , w , FC]~ΔMC(t=1, 3, 10, 28日)砕・転圧土(三軸) ★2: ΔMC=A’+B’・(c’)CC7[wO+FCO , t=tS+tCC=3+7=10日]式(7)を用いれば可能なので砕・転圧土の三軸圧縮試(c’)CCStability験★2 が省略でき,また(qu)IS*の(qu)CC*への変換がΔMC*(qu)IS*R3(qu)CC*=R3・(qu)IS*R3 値を式(8)により推定してできるので砕・転圧土のtS や ΔMC を変えた一軸圧縮試験★3 が省略できる。室内配合試験砕・転圧土(一軸) ★3:R3 (R~tS)(qu)CC~t (=tS+tCC)~ΔMC[tS=1, 2, 3, 4日➝tCC=0, 1, 9(8, 7, 6), 10, 28日]その他,小規模な堤体改修では原料泥土の含水比 wや粒度変化 FC の影響が少ないことから,初期固化土の w や FC を変えた一軸圧縮試験★1 も省略できる。図-14 詳細設計法(指針法)の手順以上から,簡略設計での室内配合試験は,詳細設計に比較すると 2 割程度の試験数で足りることになる。表-1 簡略設計法と詳細設計法の比較((c’)CCStability=100kN/m2)以下に簡略設計の例を示す。簡略設計は小規模な堤体改修が対象となるので,堤高も低く堤体安定に必要とされる砕・転圧土ゾーンの強度レベルも高くないことから,目標強度として(c’)CCStability=100kN/m2を設定した場合の簡略設計による(qu)IS*,(qu)CC*,そして ΔMC*を求めると以下のようになる。(qu)CC*は(c’)CCStability と式(7)からΔMC*(qu)CC*(qu)IS*(kN/m2)(kN/m2)簡略設計法2816200.453―西大谷ダム3467070.49195/176大原ダム2244480.50122/153谷田大池3206530.49223/216堤沢ダム3007890.38106/89SK ダム3195910.5491/944.簡略設計法と詳細設計法の比較(qu)CC*=(100-27)/0.26=281 kN/m2となり,(qu)IS*は式(8)に(qu)CC*を代入して推定される R3 と式(3’)からR3=0.805×281-0.102=0.453,(qu)IS*=(qu)CC*/R3=281/0.453=620kN/m2- 369 -R3(kg/m3) となる。簡略設計による(qu)IS*,(qu)CC*と R3 は表-1 の 2 行目にボールド数字により示した。ΔMC*は各事例における室内配合試験から得られた式(1)に相当する(qu)IS10~ΔMC 関係を用いて算定でき,堤沢ダムを例にすると図-5 の図中の式よりΔMC*=28+0.0659・(qu)IS*/αFL=28+0.0659×620×1.5=89kg/m3となる。前述したフィルダム 5 事例において調べられた室内配合試験により得られた式(1)に相当する(qu)IS10~ΔMC 関係に(qu)IS*/αFL を代入して求めた ΔMC*を表-1 の 5 列目にボールド数字で示した。また,各事例において(c’)CCStability=100kN/m2に対して詳細設計をした結果から得られた設計数値も表-1 にそれぞれ示してある。表から,簡略設計の結果は,詳細設計による場合に比較して,大小どちらにもばらつき平均的な値となっていること,(qu)CC*では最大 2 割程度,(qu)IS*では最大 3 割程度,ΔMC*では最大 2 割程度の相違があることがわかる。正確な設計数値は室内配合試験を実施することが基本ではあるが,簡略設計法はこの程度の相違のあることに留意して使用する必要があろう。5.あ と が き本稿は,砕・転圧盛土工法を費用対効果的に指針に規定された室内配合試験を実施しにくい小規模な堤体改修に適用する場合を対象に,室内配合試験を可能な限り省略できる簡略設計法を提案した。簡略設計法は,砕・転圧盛土工法を採用して堤体改修を実施した,あるいは実施中の 5 例のフィルダムで調べられた室内配合試験結果をもとに,砕・転圧土の(c’)CC7~(qu)CC7 関係,初期固化土と砕・転圧土の強度変換式 R3≒(qu)CC7/(qu)IS10の平均的関係を導入したもので,詳細設計法による場合に比較して,(qu)CC*では最大 2 割程度,(qu)IS*では 3 割程度,ΔMC*では最大 2 割程度の相違があることがわかった。正確な設計数値は室内配合試験を実施することが基本ではあるが,簡略設計法はこの程度の相違のあることに留意して使用する必要があろう。参考文献1) (社)農業農村整備情報総合センター:ため池改修工事の効率化-砕・転圧盛土工法によるため池堤体改修- 設計・施工・積算指針(案), 2006.2) (社)農業農村整備情報総合センター:砕・転圧盛土工法によるフィルダム堤体改修,-堆積土・発生土を有効利用したフィルダムのリニューアル技術-, 設計・施工・積算指針(案), 2009.3) (社)セメント協会編:セメント系固化材による地盤改良マニュアル第 4 版, 技報堂出版, 2012.4) 福島伸二, 北島明, 谷茂:フィルダム堤体改修用固化改良土の粘着力と一軸圧縮強さの関係, 第 61 回地盤工学シンポジウム, 2018.5) 北島 明, 福島伸二, 谷茂:固化改良底泥土(砕・転圧盛土工法)の粘着力と一軸圧縮強さの関係, 第 54 回地盤工学研究発表会, 2019.(投稿中)6) 福島伸二, 北島 明, 谷茂:固化改良底泥土(砕・転圧盛土工法)における砕・転圧土と初期固化土の強度変換法について, 第 15 回地盤工学会関東支部研究発表会 Geo-Kanto2018, pp.127-130, 2018.- 370 -
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  • タイトル
  • クリンカアッシュに対するジオグリッドの土中引抜き特性と同補強土壁の内的安定性の検討
  • 著者
  • 鈴木 素之・松永 崇史・藤田 義成・佃 勝二・及川 隆仁・渡辺 健一
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 359〜364
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000064
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)11-2クリンカアッシュに対するジオグリッドの土中引抜き特性と同補強土壁の内的安定性の検討鈴木素之 1・○松永崇史 2・藤田義成 1・佃勝二 3・及川隆二 3・渡辺健一 31 山口大学大学院創成科学研究科・2 山口大学工学部社会建設工学科・3 中国電力株式会社エネルギア総合研究所1. はじめに10090活用されている.その特徴として,単位体積重量が小さ80く,高いせん断強さを発揮するため,クリンカアッシュの盛土や補強土壁工法への適用性について検討されてきた1), 2).補強土壁工法は補強土工法の1 つであり,壁面工に作用する土圧合力に対して盛土材内に敷設した補強材の引抜き抵抗力によって釣り合いを保ち,土留め壁の効果を発揮するものである.代表的なものに帯鋼補強土通過質量百分率 (%)クリンカアッシュは火力発電所から産出される石炭灰の一種であり,土工材を含め石炭灰製品として有効に壁工法,ジオテキスタイル補強土壁工法,アンカー補強土壁工法が挙げられる.ジオテキスタイルは合成高分子70調整土6050C.MAC.TC.OC.MIC.HC.D40302010材を素材とする補強材で,鋼材系補強材と比べ,比較的00.010.1110100粒径 (mm)安価であり,腐食にも強い.また,面状に敷設されるので,摩擦抵抗も得られやすく,その場合には細粒分含有図-1 試料土の粒径加積曲線率が 50%未満の盛土材料が適用する必要がある.しかし,最近ではこの適用範囲内の良質な砂質土の入手が困難になっており,適用範囲を満たし高いせん断強さを発揮するクリンカアッシュの利用が期待されている.本研究で単位:mmは,クリンカアッシュに対するジオグリッド補強材の引抜き抵抗特性を明らかにするため,粒度特性の異なる 6種類のクリンカアッシュに対して,上載圧 100kPa までの圧力域でジオグリッドの土中引抜き試験を実施した.まず,クリンカアッシュの基本的な強度定数(粘着力 cd,内部摩擦角d)を求めるため,圧密定圧一面せん断試験図-2 本研究で使用したジオグリッドの形状を実施した.さらに,土中引抜き試験を実施し,一面せん断試験から得られた強度定数の比較・検討を行った.最後に,ジオテキスタイル補強土壁工法の盛土材にクリンカアッシュを用いた内的安定性の検討を行ない,クリンカアッシュの優位性を確認した.本文では,その結果と考察について述べる.2. 試料土および補強材2.1 クリンカアッシュの物理特性クリンカアッシュはボイラー内で燃焼によって生じた石炭灰を破砕機で砂状に砕いたものである.また,物理特性として,クリンカアッシュの粒子はほとんどが粗礫と粗砂であり,一般的な砂試料に近い粒度分布となっている.図-1 に本研究で用いたクリンカアッシュの粒径加積曲線を示す.透水係数は砂と同程度で高い透水性をもっているうえ,表面に多数の細孔があり,水分保持率が一般土に比べて高いなどの特徴がある.さらに,単位体積重量は砂よりも小さく,高いせん断強度を持っている 1).クリンカアッシュの化学組成は SiO2:55%,Al2O3:25%,CaO:3%,Fe2O2:5%,その他:12%である 3) .試料土は 6 種類のクリンカアッシュ(以下,C.MA,C.T, C.O,C.MI,C.H,C.D と略記)である.表-1 に試料土の物理特性を示す.細粒分含有率 Fc は 5.5~26.8%であるため,試料土はいずれもジオテキスタイル補強土壁工法の適用範囲内 4)にある.2.2 ジオグリッド補強材 補強材はジオグリッドであり,高強度ポリエステル繊維を芯材,ポリプロピレンを被覆材としている.補強材の引張破断強度は 187kN/m,補強材寸法は図-2 のとおりである.なお,引張り力が作用した場合に補強材自身の伸張や破断する場合があること,施工時の耐衝撃性が鋼製補強材に劣ることが挙げられる.Pullout Resistance Characteristics of Geogrids using Clinker Ashs by Laboratory Pullout Test and Internal Stability of ReinforcedSoil WallMotoyuki Suzuki1, Takafumi Matsunaga1, Yoshinari Fujita1, Katsuji Tsukuda2, Takahito Oikawa2, Kenichi Watanabe2 (1YamaguchiUniversity, 2The Chugoku Electric Power Co., Ltd.)KEYWORDS: Reinforced Soil, pull-out test, geotextile, coal ash- 359 - 表-1 試料土の物理特性と工学的性質土粒子の密度細粒分砂分礫分最大粒径最大乾燥密度最適含水比(g/cm3)(%)(%)(%)(mm)(g/cm3)(%)C.T2.12626.853.519.71.01438.5C.MA2.1857.562.929.61.08534.7C.O2.1608.342.349.41.14029.6C.MI2.10414.160.125.81.01937.7C.H2.2245.562.931.61.10234.1C.D2.22222.954.123.00.94840.2試料土3. 圧密定圧一面せん断試験200一面せん断試験で用いた試料土は最大粒径Dmax=4.75mmになるようにふるいにかけ,せん断箱に所定量の試料を投入後,最上面を均した.ノギスで供試体を入れたせん断箱の上部高さを4か所測定し,誤差1mm以内になるように平滑化し,供試体上面にろ紙およびポーラスストーンを設置した.ベロフラムシリンダーにより所定の圧密応力でせん断応力τ (kPa)3.1 試験方法4.75015010050一次元的に圧密し,圧密終了を確認した後(圧密の打ち切り時間を3t法により決定),直ちにせん断を開0-1.0断試験を行い,せん断変位Dが7.0mmに達したら試験を終了することとした.3.2 試験結果 ここでは代表して C.MA の試験結果を図-3 に示す.せん断応力-D の関係では,せん断の進行に伴って,は単調に増加し,定常状態に移行するものと増加し続けるものがあった.垂直応力 v垂直変位ΔH (mm)始した.試験時の垂直応力は一定とした条件でせんC.MAσv0=20 kPaσv0=40 kPa-0.6σv0=60 kPaσv0=80 kPa-0.4σv0=100 kPa-0.8-0.20.0が高いほど -D 関係が上位にくる傾向が認められ0.2た.垂直変位H と D の関係からは,各試料におい0.4 012て,全体的には収縮あるいは収縮後膨張の挙動が見34567せん断変位D (mm)て取れる.各試料とも垂直応力の低い条件では,せん断開始直後は収縮の挙動をとり,その後,膨張の図-3 異なる垂直応力のせん断挙動(C.MA)挙動へと転じている.垂直応力の高い条件では,C.Hを除くすべての試料で収縮を示した後に定常状態に移行した.この挙動は緩い砂が示す一般的なせん断力経路をもとに破壊線を引いたものを図-4,各試料の強度定数(cd,d)を図-5 に示す.クリンカアッシュの内部摩擦角d は 40°以上となり,一般的な砂質土の値5)よりも高い値を示した.一面せん断試験から得られた強度定数は後述する土中引抜き試験の結果整理に適用する.4. ジオグリッド補強材の土中引抜き試験4.1 土中引抜き試験装置 図-6 に引抜き試験装置の模式図を示す.土層表面でのエアバッグが膨らむことにより上載圧 v が載荷される仕組みになっている.一定のv の下で圧密した土槽(長さ 700mm,高せん断応力 (kPa)挙動と類似した傾向を示している. -v 関係と応240220200180160140120100806040200C.MAσv=20kPaσv=40kPaσv=60kPaσv=80kPaσv=100kPad=45°cd=20kPa020406080100 120 140 160 180 200垂直応力v (kPa)さ 200mm,幅 200mm)内の試料土から所定の長さで敷設した補強材を 0.12~1.20mm/min の範囲の引抜き図-4 応力経路と破壊線(C.MA)速度で一方向に引き抜くことが可能である.- 360 - 4.2 試験手順試料土はバットで含水比が均一になるように十分に混合した.各層の密度を管理するため,試料土を1層ごとに300C.TC.MAC.O小分けした.調整した試料土を1層ずつ投入し,1層ごとに4kgラ250応力集中低減カバーの下蓋を設置した.補強材を全面に敷設した後,応力集中低減カバーの上蓋を設置し,残りの3層を同様に締固めた.なお,応力集中低減カバーは,補強材の引抜きに伴って,供試体引抜き方向側の土の密度の上昇による引抜き口付近のジオグリッドに作用する応力の増加を抑制し,引抜き抵抗力の過大測定を防ぐためのものである.試料土の最上面を均し,ろ紙と不せん断応力τ (kPa)ンマーで1層42回の突固めによる締固めを行った.1層目充填後,織布を敷いた.その後,所定のvを20分間載荷した.供試体にはd=45°d=45°200cd=16kPa150cd=20kPa100d=40°50cd=16kPa十分な締固めを施しているが,一面せん断試験と同じ圧密時間を0とって即時沈下を確認した.圧密終了後に引抜き速度1mm/minで050100150200垂直応力σv (kPa)引抜き変位が100mmに達するまで定圧条件で引抜きを行った.4.3 試験条件 ジオグリッドは土槽に対して全面敷設し,長手方(a) C.T, C.MA, C.O向に入るストランドは 5 本,補強材長さは 630mm とした.試料土は,Dmax=4.75mm となるようふるいに通過させている.試料土の目標締固め度 Dc は 90%,σv は 20,30,40,60,80,100kPa の300後方水平変位である.補強材が引抜き中に伸長破断を起こすケースがあったため,試験後に補強材が引抜き抵抗を発揮した引抜き抵抗長を測定した結果,補強材の破断形状が一様でなかった.今回用いた補強材は交点溶着型のものであり,既往の研究では破断を起こしても引抜き力に大きな差が出ていないことが実験的に示されている 6).本研究においても同手法で計算した場合,同じ250せん断応力τ (kPa)4.4 引抜き抵抗算定法 測定項目は引抜き荷重,前方水平変位,ように最大引抜き力に大きな差が生まれないケースがみられた.200cd=19kPa150cd=8kPad=46°100d=48°50cd=2kPa図-7 に代表的な結果として C.MA のケースを示している.引抜き力 T は前方引抜き変位の増加とともに増加し,上載圧の大きd=49°C.MIC.HC.Dように変化させた.0050100150200垂直応力σv (kPa)さの違いが引抜き力と前方引抜き変位の関係に現れていない.そのため,補強材が破断する場合,上載圧を考慮した最大引抜き抵(b) C.MI, C.H, C.D抗長の算定式が必要であると考え,ジオシンセティックスの土中図-5 各試料土の粘着力と内部摩擦角引抜き試験方法 5)の引抜き抵抗長の算定式を参考にして,前述の一面せん断試験の結果を利用して,ジオグリッドの最大引抜抵抗長 LT(m)を次の式(1)より算出した.𝐿T = 𝐹U /(2(𝑐d + σv tan𝜙d ))(m)700mmモーター(1)200mmここに,FU:ジオグリッドの破断強度,σv:上載圧,cd:一面せん断試験から得られた見かけの粘着力,d:一面せん断試験から得られた内部摩擦角である.これより,引抜き抵抗は補強材引抜有効面積AとTを応力集中低減カバー(70mm×200mm)前方水平変位計固定部用いて式(2)および式(3)から求める.ただし,補ジオグリッドエアバック後方水平変位計強材の破断が起きない場合については,土層内部の初200mm期敷設長を最大引抜き抵抗長とする全面積法により求めることとし,式(2)においてLT を初期敷設長0.63mとする.𝜏 = 𝑇/(2 ∙ 𝐴)𝐴 = 𝐵 ∙ (𝐿T − ∆𝐿)(kN/m2)(2)(m2)(3)図-6 本研究で使用した土中引抜き試験機(模式図ここに,L:後方水平変位,B:補強材幅である.- 361 - 4.5. 土中引抜き試験結果4.5.1 引抜き挙動109を図-8(a)~(f)に示す.いずれのケースも引抜き抵抗τは徐々に8増加しピークを示し,その後減少しているのがわかる.一方,補強材が破断しないケースでは単調増加し,ピーク値を明確に示さないものがあり,土中での補強材の伸長状態あるいは破断状態が引抜き抵抗と引抜き変位の関係に影響を及ぼしている引抜き力T (kN)各試料の引抜き抵抗と前方水平変位の関係のが明らかとなった.また,どの試料でもv が高いほど高い引3引抜き抵抗 (kPa)引抜き抵抗τ (kPa)4050607080010203090 10012011010090807060504030201001020引抜き抵抗 (kPa)引抜き抵抗 (kPa)304050607001020308090 10012011010090807060504030201001020引抜き抵抗 (kPa)引抜き抵抗 (kPa)304050608090100405060708090 1000102030704050608090 1008090 10070前方水平変位 (mm)(d)C.MIC.D (Dc=90%)σv=20kPaσv=30kPaσv=40kPaσv=60kPaσv=80kPaσv=100kPa070C.MI (Dc=90%)σv=20kPaσv=30kPaσv=40kPaσv=60kPaσv=80kPaσv=100kPa前方水平変位 (mm)(c)C.O120110100908070605040302010060前方水平変位 (mm)(b)C.TC.O (Dc=90%)σv=20kPaσv=30kPaσv=40kPaσv=60kPaσv=80kPaσv=100kPa050C.T (Dc=90%)σv=20kPaσv=30kPaσv=40kPaσv=60kPaσv=80kPaσv=100kPa前方水平変位 (mm)(a)C.MA120110100908070605040302010040前方水平変位 (mm)図-7 引抜き力と前方水平変位の関係(C.MA)とがわかった.前方水平変位と後方水平変位の関係に関して30v=100kPa2の引抜き抵抗の算定法では拘束圧依存性が表現されているこ20v=80kPa4010v=60kPa510v=40kPa6ように,図-7 において拘束圧依存性は明瞭ではなかったが,こC.MA (Dc=90%)σv=20kPaσv=30kPaσv=40kPaσv=60kPaσv=80kPaσv=100kPaC.MA:Dc=90%ストランド5本(全面)Dmax=4.75mm補強材長 630mmv=30kPa7抜き抵抗を発揮しており,拘束圧依存性が認められた.前述の1201101009080706050403020100C.MAv=20kPa8090 1001201101009080706050403020100C.H (Dc=90%)σv=20kPaσv=30kPaσv=40kPaσv=60kPaσv=80kPaσv=100kPa010203040506070前方水平変位 (mm)前方水平変位 (mm)(e)C.D(f)C.H図-8 各試料の引抜き抵抗と前方水平変位の関係- 362 - C.TC.MAC.O100Dmax=4.75mm120p=45°引抜き摩擦強さτpmax (kPa)引抜き摩擦強さτpmax (kPa)120p=44°80cp=4.6kPa60cp=8.5kPap=39°402010080C.MIC.HC.DDmax=4.75mmcp=4.0kPa60p=46°cp=0.4kPap=46°4020cp=0kPacp=2.3kPa002040p=48°608000100垂直応力v (kPa)20(a) C.T,C.MA,C.O406080100垂直応力v (kPa)(b)C.MI,C.H,C.D図-9 各クリンカアッシュの引抜き摩擦強さと垂直応力の関係は,先行研究 8), 9)で低い上載圧領域(0~10kPa)では,後方水平変位は前方水平変位の増分とほぼ同じ分生じ,高い圧力領域では後方水平変位は全く生じ土中引抜き試験C.MAC.TC.OC.MIC.HC.D一面せん断試験C.MAC.TC.OC.MIC.HC.D50ず,補強材が土中で伸長していることがわかっている.48図-9(a),(b)に各クリンカアッシュの引抜き摩擦強さ pmax と上載圧v の関係を示す.いずれの試料においても高い引抜き抵抗を発揮している.各試料に対して破壊線を引き,それぞれ強度定数(引抜き摩擦角 p,粘着力 cp)を決定した.土中引抜き試験から得られた内部摩擦角 (° )4.5.2 引抜き摩擦強さと垂直応力の関係p および一面せん断試験から得られた d と細粒分46444240含有率との関係を図-10 に示す.細粒分が少ない試料は高い内部摩擦角を示す傾向がみられた.また,38一面せん断試験の方と土中引抜き試験の内部摩擦051015202530細粒分含有率 (%)角はほぼ同程度の結果になった.両試験から得られ図-10 細粒分含有率と内部摩擦角の関係たクリンカアッシュの内部摩擦角(p =39~47°)は一般的な砂質土の値(=35°前後)5)より高い値を示した.5. クリンカアッシュを用いたジオテキスタイル補強土壁工法の内的安定性の基礎的検討5.1 検討ケースクリンカアッシュと補強材との摩擦特性を現行設計法において考慮し,その有効性を検討した.クリンカアッシュの補強効果が確認できるよう一般的に設計で使用する砂質土(一般土)の定数と比較した.検討ケースでは,補強土壁における盛土高 H を 5,10,15m の 3 通りで変化させて検討した.このほか,内部摩擦角はクリン表-2 ジオテキスタイルの敷設幅盛土高(m)クリンカアッシュ砂質土53.84.3106.17.5159.111.3カアッシュでは 35°,砂質土では 30°とした.また,湿潤単位体積重量t はクリンカアッシュでは,9.0~12.0kN/m3,砂質土の場合,14.7 kN/m3 とした.ここで,ジオテキスタイル補強土壁の壁面は,1:0.3 程度の勾配とすることが一般的であり,本検討においても同様とした. 補強土壁の検討は内的および外的検討が行われる。内的安定に関しては,極限つり合いにより,円弧すべりと補強材の引抜けに対する検討を常時および地震時で行い,補強材長等を算定した.5.2 検討結果表-2 に各ケースで必要となる補強材の敷設幅を示す.盛土高でクリンカアッシュの方が敷設幅は短くてすむ結果となっており,砂と比べて補強土壁工法での使用において有用であることが明らかになった.- 363 - 6. 結論本研究で得られた結果をまとめると次の通りである.(1)土中引抜き試験では,全試料において引抜き抵抗はピーク値を迎えた後に減少する挙動を示した.一方,補強材が破断しないケースではピークが発現しないものがあり,土中での補強材の伸長状態あるいは破断状態が引抜き抵抗と引抜き変位の関係に影響を及ぼしていることが明らかとなった.(2)土中引抜き試験において,上載圧が高い領域においても,クリンカアッシュは高い引抜き抵抗を発揮した.また,土中引抜き試験の内部摩擦角は一面せん断試験のものとほぼ同程度であった.(3)ジオテキスタイル補強土壁の盛土材にクリンカアッシュを用いることで,ジオグリッド補強材敷設幅を一般の砂質土と比べ短くすることが可能であることが分かり,クリンカアッシュの有用性を確認できた.これは,砂質土に比べてクリンカアッシュの単位体積重量が小さいことと内部摩擦角が高いことが要因である.謝辞:本研究で用いた補強材は岡三リビック(株)から提供いただいたものである.ここに記して謝意を表す次第である.参考文献1) 若槻好孝,田中 等,内田裕二,入江功四郎,兵動正幸,吉本憲正:クリンカアッシュの材料特性と適用性の検討,地盤工学ジャーナル,2 巻,4 号,pp.271-285,2007.2) Suzuki, M., Nakashita, A., Tsukuda, K., Wakatsuki, Y.: Applicability of Clinker Ash as Fill Material in Steel Strip-ReinforcedSoil Wall, Soils and Foundations, Volume 58, Issue 1, pp. 16-33, 2018.3) 日本フライアッシュ協会:石炭灰の発生量と生産過程,http://www.japan-flyash.com/process.html(2019 年 5 月 22 日閲覧).4) (一財)土木研究センター:ジオテキスタイルを用いた補強土の設計・施工マニュアル,2000.5) (公社)地盤工学会:地盤材料試験の方法と解説, ジオシンセティックスの土中引抜き試験方法(JGS0942-2009),pp.1058-1068, 2009.6) 澁谷 啓, 片岡沙都紀, 植松尚大:格子交点溶着型および一体型ジオグリッドの土中引抜き抵抗特性の比較,ジオシンセティックス論文集,第 29 巻,pp.19-26,2014.7) 井沢 淳, 木村博憲, 桑野二郎, 高橋章浩, 石濱吉郎:ジオグリッド形状が引き抜き特性に及ぼす影響,ジオシンセティックス論文集,第 15 巻,pp.28-37,2000.8) 野村和樹,鈴木素之,内川浩樹,及川隆二,中本健二,松尾 暢:補強土壁の盛土材に用いるクリンカアッシュに対するジオグリッド補強材の引抜き抵抗特性,第 52 回地盤工学研究発表会発表講演集,pp.1477-1478,2017.9) 内川浩樹,鈴木素之,野村和樹,及川隆二,中本健二,松尾暢:ジオグリッド補強土壁に対するクリンカアッシュの適用性に関する実験的検討,第 12 回環境地盤シンポジウム,pp.183-188,2017.- 364 -
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  • タイトル
  • アスファルト廃材被覆地盤での補強および発電に関する実験的研究
  • 著者
  • 横浜 勝司
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 351〜358
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000063
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)11-1アスファルト廃材被覆地盤での地盤補強および発電に関する実験的研究横浜勝司 11 北海道大学大学院工学研究院1. はじめに2018 年北海道胆振東部地震では,強い地震動による社会基盤および住宅等施設のダメージが発生しただけでなく,広域にわたる停電が発生し,生活に多大な影響が出た。この例を鑑みても,現在の社会生活を適切なレベルに維持するには,適切な地盤の補強の実施,多種多様で環境に配慮した発電手法の開発が重要であることが認識できる。さらに,持続可能な社会生活の仕組みを維持するためには,建設副産物を含む資源のリユースを一層推進することが必須となる。次世代のための良好な社会生活環境の構築に向けた技術貢献を図るには,地盤補強,発電および資源リユースに関する総合的成果の創出を目指すことも一つの有用な手法であると考えられる。本研究では,地中に補強部材を挿入し,その地表面をアスファルト廃材で被覆した地盤の支持特性に関する室内試験および地盤温度を利用した発電に関する屋外計測の 2 つを主に実施し,地盤補強-発電-資源リユースのトータルシステム具現化に関する基礎的検討を行った。2. アスファルト廃材を用いた屋外施工事例建設副産物のリユースの推進がより一層必要とされている現在,アスファルト舗装廃材(以降,アスファルト廃材または RAP と称する)に関しても地盤材料として活用を図るべく,その力学的特性が調べられている 1),2)。本章では,アスファルト廃材を舗装補修以外に活用した屋外施工事例の一つを紹介する。写真−1 は北海道内で実施したアスファルト廃材による法面および地表面保護状況を示す。この保護工は敷地内の地盤の泥濘化を防ぎ,人員および車両通行を容易にするために 2009 年 6 月に雨竜町オシラリカ地区で施工された。アスファルト廃材を地盤上にまき出し,ブルドーザの排土板またはバックホウのバケットで敷き均した施工であり,一般的な締固め管理は行われていない。アスファルト廃材の被覆厚さは約 100 mm であった。施工完了から 2019 年 4 月までの 10 年近くの期間,降雨および融雪水の供給があっても法面侵食および地表面の泥濘化は見られない。次に,当該箇所でのアスファルト廃材敷設地盤の表面硬度の推移を調べる。図-1 は当該箇所で計測した土壌硬度値を示す。土壌硬度値は山中式土壌硬度計を用いて計測しており,土壌硬度計の先端コーンの貫入量を土壌硬度値の指標とした。計測箇所近傍の 10 点の計測結果の平均値,最大値および最小値を得た。図より,春季(2016 年 4 月 27 日,2017 年 3 月 23 日,2018 年 4 月 25 日,2019 年 4 月 22 日の計測値)の土壌硬度値が他に比べて若干低いものの,計測を実施した 3 年間では土壌硬度値が 30 mm 前後で推移していることがわかる。この施工事例は,アスファルト廃材を活用することで長期的に地盤表面を保護可能であることを示している。3. アスファルト廃材の特徴を活かした地盤補強―発電―資源リユースのトータルシステムの構想アスファルト廃材を用いた屋外施工事例より,アスファルト廃材の粒子同士の剥離等が見られず長期的な地盤保護の実現可能性が示された。一方,アスファルト廃材は黒色の粒子であることから 3),日中の日光照射によってアスファルト被覆地盤の表面温度が上昇することが想定される。そこで,日光照射を受けて高まったアスファルト廃材被覆地盤の温度写真-1 アスファルト廃材による地盤保護状況(2019 年 4 月 22 日,雨竜町オシラリカ)図-1 アスファルト廃材被覆地盤の土壌硬度Experimental study on protection and power generation on the ground covered by recycled asphalt pavement materialShoji Yokohama1 (1Faculty of Engineering, Hokkaido University)KEYWORDS: Recycled asphalt pavement material, ground protection, power generation, ground temperature- 351 - 図-2 地盤補強-発電-廃材リユースのトータルシステム図-3 単調載荷および繰返し鉛直載荷試験装置を活用しながら地盤補強を行う手法を検討する。まず,これまでに示されたアスファルト廃材の力学的特徴 3),4)を列挙する。・ アスファルト廃材は圧密およびせん断時に顕著な収縮挙動を示す。・ 低い拘束圧条件下においてもアスファルト廃材粒子間のボンディング挙動が顕著である。・ アスファルト廃材と砂質土を混合した試料で実施した非排水繰返し三軸試験結果では,プレーンな砂質土に比べて繰返し強度が向上する。・ アスファルト廃材と砂質土の混合材料の排水強度はプレーンな砂質土の排水強度より若干低い。列記事項より,アスファルト廃材の性質として,その単独使用または他の地盤材料との混合による強度向上を期待できないものの,大ひずみ発生時での変形抵抗を期待できることが考えられる。その材質を活用した地盤補強と発電方法の両立を目指す概念を図-2 に示す。まず,板と棒を連結した補強部材を地盤内に挿入し,補強部材と周辺地盤との摩擦力発揮または応力分散を期待する。補強部材には高い剛性,強度および熱伝導性を有する素材(例えば金属等)を用いることを想定している。補強部材を挿入した地表面をアスファルト廃材で被覆することで地表面の土粒子の流失や飛散を防ぎ,補強部材と周辺地盤との密着度向上を図る。次に,地盤内に挿入する補強部材の上部板表面に熱電素子(例えばペルチェ素子)を設置する。補強部材の上部(表面)では日光照射を受けたアスファルト廃材の存在により高温となる。一方,補強部材の下部(裏面)では地盤内に挿入した棒部分がヒートシンクの役割を果たし補強部材の排熱を行う。このような仕組みで熱電素子の表裏面での温度差を確保し発電を行う。この一連を地盤補強-発電-資源リユースのトータルシステムと称し,その具現化に関する検討を行った。本研究では,アスファルト廃材と補強部材による地盤補強効果を室内試験により,アスファルト廃材被覆地盤の温度による発電挙動に関しては屋外計測によってそれぞれ調べた。4. 地盤の鉛直抵抗力に及ぼす補強部材挿入およびアスファルト廃材被覆の影響4.1 試験装置アスファルト廃材敷設と補強部材挿入による地盤の支持特性変化を見る試験方法を説明する。図-3 は使用した試験装置の模式図を示す。試験装置は内径 200 mm のアクリル性の円筒セル,載荷板および載荷フレームで構成される。載荷フレーム上に設置した空圧式シリンダーに載荷ロッドが接続されている。載荷ロッド先端には直径 54 mm の載荷板が接続されている。ファンクションジェネレーターから電空変換器に電気信号を発信して空気圧シリンダーで載荷外力を制御し,地盤表面に載荷する試験を実施した。載荷ロッドに設置したロードセルおよび変位計により荷重および鉛直変位を計測した。4.2 単調載荷試験補強部材挿入とアスファルト廃材被覆を施した地盤の基本的な支持特性を見るために単調載荷試験を実施した。図-4は試験パターンの一覧を示す。試験用地盤は豊浦砂(T sand)を自由落下させて堆積することで作製した。地盤の初期厚さは約 200 mm とした。まず,T sand だけで地盤を作製したケース(T sand (plain)と称する)は,補強部材を地盤表面から深さ 50 mm に挿入したケース(Full と称する),深さ 50 mm に補強部材の棒部分のみを挿入したケース(Pile と称する),深さ 50 mm に補強部材の円盤部分のみを設置したケース(Disc と称する)および無対策(None と称する)の 4 ケースで試験を実施した。挿入した補強部材は上部が直径 50 mm の円盤,下部が長さ 35 mm,直径 4 mm の棒部材である。用いた補強部材の材質は円盤,棒ともに鉄である。- 352 - 図-4 単調載荷試験での試験条件表-1 試料の物性値rsr dmaxr dmin(g/cm3 )(g/cm3 )(g/cm3 )Recycled asphaltpavement material(RAP)2.3661.6071.412Toyoura sand(T sand)2.6491.6361.344図-5 粒度分布(T sand および RAP)ab図-6 単調載荷試験結果(T sand (plain)地盤),(a)低い密度条件,(b)高い密度条件次に,試験用地盤の表面から深さ 50 mm までをアスファルト廃材で置換したケース(地盤条件を T sand (RAP covered)と称する)での載荷試験も実施した。この条件では,補強部材を挿入したケース(Full)と無対策(None)の 2 つのパターンを設定した。全てのケースで鉛直外力を 1 分当り 5 N ずつ増加する外力制御方法で試験を行った。なお,T sand および RAP の粒度分布および物性値は図-5 および表-1 の通りである。図-6 (a),(b)はそれぞれ,T sand(plain)における地盤密度が低い条件および高い条件での鉛直ひずみv-鉛直応力 v の関係を示す。ここで,鉛直ひずみv は載荷板の沈下量H を地盤の初期厚さ H0 で除した値,鉛直応力v は載荷重を載荷板面積で除した値である。(a)より,無対策(None)および棒部分挿入(Pile)ケースでの鉛直応力が他に比べて小さく,円盤挿入(Disc)および補強部材(Full)ケースの値が他ケースより高いことがわかる。(Disc)および(Full)では応力ひずみ曲線の初期部分の勾配が他ケースよりも高いことも見られた。次に,(b)は T sand(plain)の高密度条件での鉛直ひずみv-鉛直応力v 関係を示す。これより,いずれの試験ケースでも鉛直ひずみv が 1.5 %から 2.0 %付近にて鉛直応力の最大値が出現しており,地盤の破壊点が確認できる様相であった。鉛直応力の最大値に着目すると,(Pile)と(None)の差が小さいこと,(Full)と(Disc)の値が他ケースに比べて高いことがわかる。以上のことから,T sand 地盤中に補強部材を挿入すると,地盤の鉛直支持特性の向上を期待できることがわかる。なお,本研究で用いた部材の寸法の条件内で- 353 - ba図-7 単調載荷試験結果(T sand(RAP covered)地盤),(a)低い密度条件,(b)高い密度条件図-8 繰返し鉛直載荷試験の載荷方法図-9 繰返し鉛直載荷試験結果(T sand(RAP covered),ユニット(Full)挿入)あるが,補強部材のうち上部円盤の存在が支持特性向上に貢献していることも明らかとなった。次に,RAP による地盤表面被覆の効果を調べる。図-7(a),(b)はそれぞれ,T sand 地盤の低密度および高密度条件で,且つ地盤を RAP で被覆した場合の鉛直ひずみ v-鉛直応力 v 関係を示す。いずれの図でも T sand(RAP covered)での(None),(Full)ケースおよび T sand(plain)での(None),(Full)ケースの結果を示している。どちらの図からも,T sand(plain)の(Full)ケースで応力ひずみ曲線の曲率が急変する点が見られ,鉛直ひずみv が 2 %前後で地盤が破壊したことが確認できる。一方,T sand(RAP covered)では, 鉛直ひずみv が 4 %以上に達しても応力ひずみ曲線上の明瞭な破壊挙動を確認できず,鉛直応力が増加し続ける様相が見られる。なお,T sand(RAP covered)条件でも補強部材(Full)ケースでの鉛直応力が無対策(None)より高い。以上より RAP で地盤表面を被覆し,且つ地盤内に補強部材を挿入することで,地盤の支持特性向上を期待することが可能と考えられる。4.3 繰返し鉛直載荷試験本研究では繰返し鉛直載荷試験を実施し,繰返し載荷条件下での補強効果を調べた。用いた試験装置,試料および地盤作製方法は前掲の単調載荷試験と同一である。図-8 は載荷方法の説明図である。本試験では 10 秒間に一度,地盤表面に圧縮力を載荷する方法とした。圧縮力の波形は正弦波として設定した。圧縮力の最大値(振幅)を載荷板面積で除した値を繰返し応力v とした。地盤および補強部材の条件は次の通りである。まず,無対策地盤として豊浦砂地盤で補強部材および RAP 敷設なしのT sand (plain),(None)ケースを設定した。次に,補強地盤として豊浦砂地盤の上部に RAP を層厚 50 mm として敷設し,補強部材を挿入した T sand (RAP covered),Full ケースも設定した。図-9 は試験結果の一例として,T sand (RAP covered),(Full)ケース,v=272.8 kN/m2 での鉛直ひずみ v および繰返し応力と繰返し回数との関係を示す。図より,繰返し載荷の初期段階で鉛直ひずみv が 1.5 %程度生じた後,繰返し回数が 1000回を超えるまで鉛直ひずみが少しずつ増加し続ける挙動が見られる。本ケースでは繰返し回数が 800 回付近から鉛直ひずみの増加がほとんど見られず,沈下挙動の収束が見られた。このように,アスファルト廃材で被覆し補強部材を挿入することで,多回数の繰返し載荷に対する沈下の進行を抑制できることがわかる。- 354 - ba図-10 繰返し応力-繰返し回数関係,(a)v=2%,(b) v=3%図-11 発電に関する屋外計測実施箇所図-12 PG ユニットの構成図次に,図-10(a),(b)はそれぞれ鉛直ひずみv が 2 %および 3 %に達した時の繰返し回数と繰返し応力の関係を示す。図10 より,同じ繰返し回数で比較すると,無対策(T sand (plain),None)ケースに比べて補強有り(T sand (RAP covered),Full)ケースの繰返し応力が高いことがわかる。このことから,補強部材の挿入と RAP 敷設により,外力を繰返し受ける条件下での鉛直ひずみ増加挙動を抑制できることが示された。5. 地盤温度を活用した発電に関する検討アスファルト廃材で地表面を被覆した地盤の温度を活用した発電手法を検討するために,一連の屋外計測を実施した。図-11 は屋外計測の実施箇所を示す。計測は雨竜町[Ur],札幌市北区篠路[Sh],札幌市厚別区大谷地[Oy],奥尻町湯浜[Ok]の 4 箇所で実施した。雨竜町[Ur]では深さ 90 m から汲み上げた地下水を活用した手法を試みた。札幌市北区篠路[Sh]では,深さ 3 m のボーリング孔で,地下水位が深さ 1.5 m にある条件下での検討を行った。札幌市厚別区大谷地[Oy]および奥尻町湯浜[Ok]では地下水が無い条件で計測を行った。図-12 は作製した発電ユニット(以降,PG ユニットと称する)の模式図を示す。まず,複数のペルチェ素子を厚さ 0.3mm のアルミ板で挟んで固定したプレートを作製した。プレートの下部中央に直径 38 mm のアルミ管を取り付けた。プレート表面には断熱材とアルミ板で作製した集熱ボックスを取り付けた。ペルチェ素子を挟んだプレートは長さ 300 mm,奥行き 200 mm の長方形である。プレート厚さは[Ok],[Sh],[Ur]で 9 mm,[Oy]で 12 mm である。アルミ板で挟まれたペルチェ素子の周囲を断熱材で覆った。用いたペルチェ素子は一辺 40 mm の正方形,厚さ 4 mm であり,その最大吸熱量は 51 W である。プレート下部中央に接続したアルミ管は[Sh]で 3 m,その他のケースで 0.4 m とした。なお,アルミ板およびアルミ管は加工が容易で且つ安価であることから本研究で採用した。図-13 は各計測箇所での PG ユニットの設置方法を示す。奥尻[Ok]では,PG ユニットを地表面から深さ 200 mm まで挿入した。地表面からプレートまでの空間を RAP 粒子で覆い PG ユニットを固定し,日光照射を受けるプレートの裏面を暴露する手法とした。大谷地[Oy]および篠路[Sh]では PG ユニットのプレート部を地表面に密着させ,プレート表面を RAPで被覆した。被覆厚さは約 50 mm で被覆時に締固め作業は実施していない。大谷地[Oy]では PG ユニットと周辺地盤が接している状態,篠路[Sh]では塩ビ管で保護されたボーリング孔内に PG ユニットを挿入しており,周辺地盤とは接触しな- 355 - 図-13 PG ユニットの設置状況abcd図-14 電圧,電流および温度差の経時変化,(a)奥尻[Ok],(b)大谷地[Oy],(c)篠路[Sh],(d)雨竜[Ur]い状態にある。雨竜[Ur]では深さ 90 m から汲み上げた地下水が地表面を流れている状況であったため,PG ユニット下部に流れている地下水を直接当てる水冷式とした。いずれの箇所でも PG ユニット表面(集熱ボックス内部),PG ユニットプレート部裏面,地盤内に挿入したアルミ菅先端に温度センサーを取り付けている.PG ユニット内部に収納されているペルチェ素子から出ている導線に電流・電圧ロガーを接続した。PG ユニットに内蔵されたペルチェ素子の配列として[Ok],[Sh],[Ur]では 2 枚重ねのペルチェ素子を 5 セット接続した。一方,[Oy]では 3 枚重ねのペルチェ素子を 3 セット接続し- 356 - ab図-15 温度差と出力値の関係(奥尻[Ok]),(a)電圧,(b)電流ba図-16 温度差と出力値の関係(篠路[Sh]),(a)電圧,(b)電流ba図-17 温度差と出力値の関係(大谷地[Oy]),(a)電圧,(b)電流た。重ねたペルチェ素子間には熱伝導用グリスを塗布した。図-14(a)〜(d)はそれぞれ奥尻[Ok],大谷地[Oy],篠路[Sh]および雨竜[Ur]で計測された電圧(電位差),電流および温度差T の時間変化を示す。ここで温度差T は PG ユニットのプレート部での表面温度から裏面温度を引いた値とする。電圧および電流は温度差T が 0 oC 以上での値を正とした。[Ok]では 2018 年 7 月から,[Oy],[Sh],[Ur]では 2018 年 8 月から計測を開始している。これらの図より,PG ユニット表裏面の温度差T に反応して電圧および電流が発生した挙動がみられた。電圧および電流は温度差T の変化と類似した対応を見せていることから,温度差T の発生に応じて電圧および電流が生じていることがわかる。なお,いずれの箇所でも電圧および電流はそれぞれ,最大で 30〜40 mV および 20〜30 mA 程度であった。次に,温度差T と電圧および電流の関係を調べる。図-15〜18 はそれぞれ奥尻[Ok],大谷地[Oy],篠路[Sh]および雨竜[Ur]で計測された電圧および電流と温度差T の関係を示す。まず,図-15(a)では[Ok]での電圧と温度- 357 - 差ab図-18 温度差と出力値の関係(雨竜[Ur]),(a)電圧,(b)電流T との相関が低く,温度差T が発生しても電圧が出力されない状況も多く見られた。次に,図-16(a),(b)より[Sh]の電圧および電流値と温度差T との関係でも明確な相関関係を見ることが難しいと考えられる。一方,図-17 および図-18 に示す[Oy]と[Ur]では,電圧および電流と温度差T に明瞭な比例関係を見ることができる。[Oy]と[Ur]の両者とも,PG ユニットのアルミ管部分と周辺地盤が接しており PG ユニットの排熱を効果的に実施できたと考えられる。このような排熱手法を採用したことにより,電圧および電流と温度差との高い相関性が見られたものと推察される。以上の結果,PG ユニットの設置方法や地下水による冷却の有無の違いは,電圧および電流の発生挙動に影響を及ぼすことが示された。6. おわりに地盤内に補強部材を挿入した際の鉛直載荷試験および屋外での PG ユニット設置による発電挙動に関して,以下の結論を得た。(1) 補強部材を挿入し,さらに地盤表面に RAP を敷設した場合,無対策時に比べて単調載荷および繰返し載荷の両条件下で支持特性向上が見られた。なお,単調載荷試験では RAP 敷設による地盤破壊後の鉛直ひずみの顕著な増加挙動が抑制された。(2) PG ユニットを地盤内に設置することで,屋外環境下における電圧および電流の出力が可能となった。なお,電圧および電流の出力挙動は PG ユニットの設置方法等に依存することも明らかとなった。今後は補強部材の寸法の影響,繰返し載荷時の地盤支持特性,PG ユニット内のペルチェ素子の配列方法の検討を進め,地盤補強-発電-資源リユースのトータルシステム構築に向けたデータ獲得を進めたい。謝辞:PG ユニットの設置に暑寒の森道づくり研究所 畠山寿市氏(北海道指導林家),トキワ地研株式会社,株式会社奥尻ワイナリー,北海道ガス技術開発研究所のご快諾,ご協力を頂きました。本研究は JSPS 科研費 JP18K04341 の助成および平成 29 年度北海道ガス大学研究支援制度による助成を受けました。関係各位に謝意を表します。参考文献1)Wen, H., Warner, J., Edil, T., and Wang, G. : Laboratory comparison of crushed aggregate and recycled pavement material with andwithout high carbon fly ash, Geotechnical and Geological Engineering, Vol.28, pp.405-411, 2010.2)Soleimanbeigi, A., Edil, T.B., and Benson, C.H. : Creep response of recycled asphalt shingles. Can. Geotech. J., Vol.51, pp.103114, 2014.3)Yokohama, S., and Sato, A. : Cyclic mechanical properties of sandy soils by mixing recycled asphalt pavement material, Proc., of8th international conference on Geotechnique, Construction Material and Environment (GEOMATE2018), pp.85-90, 2018.4)横浜勝司・佐藤厚子:アスファルト廃材の長期圧縮挙動と排水強度特性,第 13 回地盤改良シンポジウム論文集,pp.437-442, 2018.- 358 -
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  • タイトル
  • 難透水性覆土に用いられる膨張性材料のサクションを考慮した基礎的性質
  • 著者
  • 西村 友良・本島 貴之・磯 さち恵
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 347〜350
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000062
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)10-6難透水性覆土に用いられる膨張性材料のサクションを考慮した基礎的性質〇西村友良 1・本島貴之 2・磯1 足利大学・2 大成建設株式会社さち恵 2原子力本部1. はじめに放射性廃棄物処分施設の建設・運用・維持管理に際して、将来にわたって生活環境への安全性の確証が高いレベルで求められる。廃棄物処分施設には要求される遮水機能が高い一方で、現場施工時の施工管理の他に不確実性を考慮すると遮水性材料の透水性以外の多様な工学的性質 1)2)3)の検討が求められる。本研究ではカルシウム型 4)5)6)膨張性材料に砂を混合し締固め不飽和状態・飽和状態の供試体について以下の工学的性質について検討を行った。定体積条件の吸水(蒸留水)に伴う膨潤圧の検討。さらに蒸留水に代わり塩水吸水時の膨潤圧の測定を行い、両者の最大膨潤圧の比較。カルシウム型膨張性材料の乾燥過程ならびに湿潤過程の水分保持曲線の把握。さらに不飽和状態から飽和状態に状態変化による一軸圧縮強さの変化について明白にする。また不飽和状態の一軸圧縮強さについては高サクション領域に限りサクションと0.7一軸圧縮強さの関係を乾燥・湿潤過程を含めて示す。2. 試料と実験方法本実験ではカルシウム型膨張性材料のクニボンドに砂質間隙比圧縮指数0.0065垂直応力2.0MPa0.680.66材料の三沢砂を混合した。クニボンドおよび三沢砂を質量0.64比 7:3 で混合し、含水比 20.0%に調整し、目標乾燥密度0.62〇含水比一定(20.0%)●飽和直径 6.0cm 高さ 2.0cm圧縮指数0.02011.650g/cm3、目標飽和度 81.91%として静的に締固めた。0.60.001本研究ではカルシウム型ベントナイト混合土の基本的性質を実験的に明白にするために、一次元圧縮試験(圧密0.11垂直応力 MPa試験)、定体積膨潤圧試験、加圧板法による保水性試験、蒸図-1 圧縮曲線0.7を実施した。蒸気圧法による保水性試験、一軸圧縮試験を0.68除く各種試験には不飽和土用圧密試験装置7)を用い、それぞれの試験項目に対応して底盤および配管などを変更し間隙比気圧法による保水性試験、透水試験ならびに一軸圧縮試験ル内に SUS316 製剛性モールド(内径 6.0cm、高さ 6.5cm)1010010100圧縮指数0.00640.66直径 6.0cm高さ 2.0cm不飽和状態0.64て試験を進めた。改良型不飽和土用圧密試験装置は耐圧セ0.01●サクション100kPa〇サクション300kPa0.62が取り付けられ、セル内に空気圧を作用することでサクシ0.60.001ョン制御が可能。底盤に装着するプレートをポーラススト0.010.11垂直応力 kPaーンからセラミックディスクに置き換えることで加圧板法によるサクション制御の圧縮特性の測定が出来る。また図-2 圧縮曲線(2条件のサクション)底盤には複数の管路が設けられ、フラッシングなどの操作30により拡散空気蓄積による影響を取り除く工夫を実現しそのロッドにはベロフラムシリンダーからの圧縮荷重を載荷する。圧縮荷重または膨潤力はセル外の反力フレームに固定したロードセルで計測した。鉛直方向の変位計はダ含水比 %ている。供試体上面にはロッドに接続した加圧板があり、イヤルゲージで測定した。供試体からまたは供試体への間2520飽和状態からサクション載荷乾燥過程・湿潤過程直径6.0cm 高さ2.0cm15隙水の排水量・吸水量は差圧計付き二重管ビュレットで連続的に計測した。使用した二重管ビュレットの容量は 50mlであった。二重管ビュレット、付随の差圧計、配管各種開閉弁を含め同装置は耐塩水腐食の SUS316 製であるので塩101101001000サクション kPa図-3 水分保持曲線 (サクションと含水比の関係)水を取り扱う長期に及ぶ試験に対しても錆腐食の発生による測定への影響を回避可能である。Properties of fill expansive soil with low permeability with consideration of suction.Tomoyoshi Nishimura1, Takayuki Motoshima2, Sachie Iso2, (1Ashikaga University, 2 Nuclear Facilities Division, Taisei Corporation)KEYWORDS: Ca-bentonite, SWCC, Permeability, Swelling pressure, Suction, Salt water, Shear strength.- 347 - 1.895乾燥密度 g/cm3飽和度 %10090飽和状態からサクション載荷乾燥過程・湿潤過程直径6.0cm 高さ2.0cm85801.71.6○ 乾燥過程● 湿潤過程1.5不飽和状態からサクション載荷乾燥過程・湿潤過程直径6.0cm 高さ2.0cm1.41.3110100サクション kPa10001図-4 水分保持曲線 (サクションと飽和度の関係)10100サクション MPa1000図-5 高サクション領域の水分保持曲線(乾燥密度)1004035302520151050初期状態供試体に最初にサクション制御を施した結果初期状態供試体に最初にサクション制御を施した結果不飽和状態からサクション載荷乾燥過程・湿潤過程直径6.0cm 高さ2.0cm飽和度 %含水比 %初期状態供試体に最初にサクション制御を施した結果○ 乾燥過程● 湿潤過程80○ 乾燥過程● 湿潤過程6040不飽和状態からサクション載荷乾燥過程・湿潤過程直径6.0cm 高さ2.0cm200110100サクション MPa1000110100サクション MPa1000図-7 高サクション領域の水分保持曲線 (飽和度)図-6 高サクション領域の水分保持曲線(含水比)3. 実験結果3.1 圧縮特性直径 6.0cm、高さ 2.0cm の供試体に一次元圧縮状態で垂直応力(圧縮応力)を載荷し間隙比の変化を計測した(図-1)。含水比 20.0%一定(不飽和状態)と飽和状態の2条件とした。不飽和状態の場合、垂直応力が 2.0MPa まで間隙比の低下量が小さく、圧縮指数は 0.0065 であった。一方飽和状態の場合、垂直応力が 2.0MPa までの圧縮指数は 0.0201 となり、3.1 倍に圧縮性が高まっている。不飽和状態から飽和状態ではサクションの消失によって間隙比が小さいことがわかる。含水比 20.0%の供試体に加圧板法でサクション 100kPa、300kPa を作用させて垂直応力を 3.0MPa まで載荷・除荷させた際の圧縮曲線を図-2に示す。いずれも垂直応力 2.0MPa 範囲での圧縮曲線が示す圧縮指数は 0.0064 で、サクションの大きさの違いによる影響は見られなかった。含水比 20.0%の供試体、サクション 100kPa、300kPa を受けた供試体は垂直応力が 2.0MPa を過ぎると間隙比低下が顕著である。3.2 水分保持曲線1.5MPa の空気侵入値を有するセラミックを用いて飽和状態の供試体に加圧板法でサクションを 1.0MPa まで段階的に増加・減少(乾燥過程・湿潤過程)を与えた。図-3と4にサクションと含水比、飽和度の関係を示す。後述するが試料は難透水性材料であるために、高い保水性がありサクション 1.0MPa の範囲における水分量の減少・増加は小さく、2.0%以内の変化にとどまっている。同時にサクション載荷による間隙構造の収縮なども小さいことから飽和度の変化も小さく、サクション 10kPa で 98.49%、サクション 1.0MPa で 90.52%ということから、水分保持曲線モデルの際に必要な空気侵入値、残留サクションなどは図-3と4から評価が困難である。サクションによる水分量、体積ひずみ変化が見られる領域までサクション制御を行うために蒸気圧法によって 2.8MPaから 296MPa の範囲のサクションの増減を与えた。含水比 20.0%の供試体にサクションを与えた結果を図-5から7に示す。最初に 2.8MPa のサクションを与えたところ乾燥密度は 1.650g/cm3 から体積膨張によって 1.458g/cm3 に低下している。含水比は 25.0%となり吸水を起こし、供試体の初期サクションが 2.8MPa より大きな値であったことを意味する。サクションを段階的に増加させると乾燥密度は高まり、間隙構造が密に移行している。含水比は低下し、初期含水比 20.0%を下回り、最大制御サクションの 296MPa では 7.9%まで低下し、乾燥密度は 1.688g/cm3 へと増加している。乾燥密度と含水比の変化から初期飽和度 81.9%の供試体は 34.7%に低下した。図-3と4の水分保持曲線は、初期状態が飽和状態と不飽和状態とで異なるが、サクション 2.8MPa を超える領域では、乾燥密度、含水比、飽和度に明確な変化が確認された。また含水比 20.0%に応じるサクションを見極めると 10MPa から 18MPa が供試体の初期サクションとして評価できる。湿潤過程は増大した乾燥密度がゆるやかに減少し、一方含水比も増加するがヒステリシスを残しながら減少・増加を示している。飽和度に関しては 81.9%(初期状態)から乾燥過程・湿潤過程を経て 52.3%となり、30%程度の減少を引き起こす。さらに乾燥密度は 1.650g/cm3(初期状態)から 1.428g/cm3 へ膨張側に体積ひずみが残留している。- 348 - 1204000最大膨潤圧2924kPa3000100飽和度 %膨潤圧 kPa60時間7時間2000100060直径6.0cm 高さ2.0cm吸水:蒸留水40直径6.0cm 高さ2.0cm吸水:蒸留水20時間60時間802000050100時間 h150020050図-8 膨潤圧の経時変化(蒸留水)150200図-9 飽和度の経時変化(蒸留水)12040001003000飽和度 %300時間膨潤圧 kPa100時間 h60時間2000最大膨潤圧2756kPa80塩濃度35%溶液使用6040直径6.0cm 高さ2.0cm吸水:塩水塩濃度35%溶液使用1000直径6.0cm 高さ2.0cm吸水:塩水20000100200300時間 h4000500100200300時間 h400500図-11 飽和度の経時変化(塩水)図-10 膨潤圧の経時変化(塩水)1.E-053.3 定体積膨潤特性と塩水の影響定体積条件での膨潤圧測定を行い、その経時変化ならび図-8と9に示す。測定時間 7.0 時間までは急激な膨潤圧増加を示しているが、一度、増加が停滞したかのようにほぼ一定となり 20 時間以降、再び膨潤圧の増加を発揮し 60透水係数 ㎝/秒供試体下端から吸水した量から算出した飽和度の変化を●塩水○蒸留水1.E-06塩濃度35%溶液使用1.E-071.E-081.E-09時間には 2800kPa の膨潤圧を示している。その後は平衡状塩水浸透による透水性の向上1.E-10態に近づき 2924kPa の最大膨潤圧を測定した。飽和度増分11.2からもわかるように試験開始段階から大きな吸水が起こ1.41.6乾燥密度 g/cm31.8図-12 透水係数に与える乾燥密度と塩水の影響り、60 時間にはほぼ 100%に至っている。一方、塩濃度 35.0%の塩水を吸水させた場合(図-10 と 11)、膨潤圧は発生するが、蒸留水の場合とは対照的にゆるやかな発生・増加である。蒸留水使用では最大膨潤圧付近であった 60 時間では、塩水を吸水することで膨潤圧増加の途中であり、最大膨潤圧 2756kPa(300 時間)にまでにはさらに 240 時間を要する。よって、塩水を吸水することで最大膨潤圧は低下し、時間的な影響もが見られる。飽和度の増加変化を見ても蒸留水の場合に比べて緩やかな吸水過程である625520飽和によるサクション消失432100.001一軸圧縮強さ MPa一軸圧縮強さ MPaが、最終的には 100%に至り、飽和している。乾燥密度 1.650g/cm3直径3.8cm 高さ7.6cm〇塩水による飽和●蒸留水による飽和▲初期状態〇蒸気圧法でサクション変化を受け乾燥密度、含水比が異なる供試体 図-5から7参照●初期状態 乾燥密度1.650g/cm3 含水比20.0%15サクション296MPaにおいて強度低下10圧縮速度 1%/分500.010.1圧縮速度 %/分1100.1110100サクション MPa1000図-14 一軸圧縮強さに与えるサクションの影響図-13 圧縮速度が異なる一軸圧縮強さ3.4 乾燥密度と透水係数の関係に与える塩水の影響透水係数は緩衝材設計において重要なパラメータである。本研究では、前述の定体積膨潤圧測定を行った後、段階的に- 349 - 供試体の高さを変えて(乾燥密度を 1.650g/cm3 から減少させる方向)、透水係数を測定した。測定方法は、圧密容器内に蒸留水で飽和させた場合は蒸留水、塩水で飽和させた場合は塩水を満たし、セル内に空気圧を作用させた。供試体に動水勾配を与え、二重管ビュレットに浸透水を集積し経時変化から透水係数を求めた。その経時ならび供試体下端から吸水し図-12 に乾燥密度と透水係数の関係を示す。供試体の初期乾燥密度は 1.650g/cm3 であったので、段階的に拘束圧を低下し膨潤による乾燥密度低下を行った。蒸留水を透水した場合 7.502×10-10cm/秒から乾燥密度低下とともに徐々に透水係数が増している。乾燥密度 1.045g/cm3 にまで低下すると透水係数は 1.389×10-8cm/秒まで増加し透水性が高まっている。一方、塩水を透水した場合、初期乾燥密度は 1.650g/cm3 の時から透水係数は蒸留水透水条件よりも透水係数が大きく、7.147×10-9cm/秒が得られ、明らかに透水性が高いことがわかる。乾燥密度 1.314g/cm3 まで低下させると透水係数は 4.331×10-8cm/秒に増加し透水性の向上が確認できる。蒸留水と塩水との条件比較では、明らかに塩水を浸透した際に透水係数は高まりベントナイト内の浸透性が増加している。3.5 一軸圧縮強さ供試体を吸水させ見かけサクションを消失させた後(飽和状態)、圧縮速度 0.01%/分 0.1%/分 1.01%/分の3条件で一軸圧縮試験を実施した。供試体寸法は直径 3.8cm 高さ 7.6cm である。飽和方法は供試体を剛性モールドに納め、上下にポーラスストーン付きの盤を装着し、自由に吸水可能状態とし約 1 か月間水没と合わせて脱気作用を施した。実験後含水比から飽和度 100%に至っていることを確認した。比較対象のため、締固め直後の不飽和状態の一軸圧縮試験、塩水で飽和させた後の一軸圧縮試験さらには、前述の図-5から7の高サクション領域の高いサクションを有し、乾燥密度・含水比が初期状態と異なる場合の一軸圧縮試験も行った。図-13 には圧縮速度と一軸圧縮強さの関係を示す。4.5MPa の一軸圧縮強さを示した初期状態は飽和することで 3.1MPaに低下している。塩水で飽和すると一軸圧縮強さはさらに 2.94MPa まで低下する。蒸留水飽和と塩水飽和を比較すると、3 条件の圧縮速度の範囲では塩水飽和の方が蒸留水飽和よりもさらに一軸圧縮強さが低下する。加えて圧縮速度の増大によって飽和状態の一軸圧縮強さは減少している。図-14 には蒸気圧法によって制御されたサクションと一軸圧縮強さの関係を示す。サクション 296MPa を除くとサクションと一軸圧縮強さの関係は密接である。前述したように供試体の乾燥密度および含水比は個々の供試体によって異なっていることから厳密な比較検討でないことは明白であるが、サクション依存性の高さが伺える結果である。4. まとめ本研究では、カルシウム型膨張性材料に砂を混合した供試体に対して基本的性質を検討した。水分保持曲線では高いサクション領域において乾燥密度、含水比の変化が見られて、特にサクション履歴が乾燥密度の低下を引き起こす。塩水浸透することで膨潤圧は低下する一方、透水係数が増加し透水性が高まる。さらに飽和化することで一軸圧縮強さは低下し塩水による飽和化でさらに一軸圧縮強さは減少する。今後はカルシウム型膨張性材料の安全性検証を目的とした数値解析に必要とされるパラメータの蓄積に務める。参考文献1) T. C. Kenney, W. A. Van Veen, M. A. Swallow and M. A. Sungail. 1992. Hydraulic conductivity of compactedbentonite–sand mixtures, Canadian Geotechnical Journal, 29(3), 364-374. 2)Zhixiong Zeng, Yu-Jun Cui, FengZhang, Nathalie Conil and JeanTalandier, 2019, Investigation of swelling pressure of bentonite/claystonemixture in the full range of bentonite fraction, Applied Clay Science, 178, 15, 105137.3) 小峯 秀雄, 小山田 拓郎, 尾崎 匠, 磯 さち恵. 2018,締固めた粉体状ベントナイト各種の水分移動特性と膨潤圧挙動に関する考察,土木学会論文集 C(地圏工学),74 巻,1 号, 63-75.4)S.L. Barbour andN. Yang. 1993, A review of theinfluence of clay–brine interactions on the geotechnical properties of Ca-montmorillonitic clayey soils fromwestern, Canadian Geotechnical Journal, 30(6): 920-934. 5) Jae Owan Lee, Jin Gyu Lim, Il Mo Kang andSangkiKwon, 2012, Swelling pressures of compacted Ca-bentonite, Engineering Geology, 129–130, 20-26.6) Y.-L.Yanga, Y.-J. DuacKrishn, R.Reddy and R.-D.Fan, 2017, Phosphate-amended sand/Ca-bentonite mixtures as slurrytrench wall backfills: Assessment of workability, compressibility and hydraulic conductivity, Applied ClayScience, 142, 120-127.7) 西村友良.2018,圧縮ベントナイトの工学的性質に与える塩水・高温の影響,土木学会第73 回年次学術講演会(平成 30 年 8 月),25-26.- 350 -
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  • タイトル
  • Hydraulic Conductivity of Compacted Soils Made from Aggregate Claystone
  • 著者
  • Zou Ran・Takemura Jiro・Popang Monika Aprianti
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 341〜346
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000061
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)10-5Hydraulic Conductivity of Compacted Soils Made from Aggregate ClaystoneZou Ran 1, Takemura Jiro 1, Popang Monika Aprianti 21Tokyo2Institute of Technology, JapanWitteveen+Bos, IndonesiaKEY WORDS: claystone, hydraulic conductivity, aggregate size, initial water content, swelling1. INTRODUCTIONThe recent concern against any kind of groundwatercontamination has increased the needs of engineered barrier. Inorder to reduce a risk of groundwater contamination by leachatefrom a landfill, natural clay has been used as one of the mostfeasible barrier materials. Because of its rock appearance, theclaystone contains clay minerals that simply bonded togetherwith very low water content. Therefore the alteration from thestone to the soil or solid to plastic phase could happenespecially for the highly weathered claystone when its watercontent increases. With the shortage of good clay materials, theproperties of the claystone explained above triggered thecuriosity to utilize this material as a barrier.In this study the hydraulic conductivity of compacted soilmade from aggregate claystone was assessed usingconsolidation apparatuses; 150mm diameter column moldsusing aggregated samples and 60mm diameter oedometer moldsusing slurry samples as a reference. The claystone materialswere treated under various conditions such as the initial watercontent and grading of aggregate.Fig. 1 Location of clay stone samplingFig.2 (a) Site conditions and claystone : BL sample2. MATERIALS2.1 Claystones usedSamples of claystone were taken from Kereck Formation, atWonosegoro Sub-district in Boyolali Regency, Central JavaProvince, Indonesia (Fig.1). This clay deposit is a member ofWestern part of Kendeng Zone and deposited in middleMiocene age (N13-N16).There are two clusters of sample which have been collectedupon testing. BL sample was mined from riverbed area thus hasmore exposure to weathering (Fig.2(a)), and GR sample wasmined from cliffside area (Fig.2(b)) therefore has less exposureto weathering. However, there is no specific difference betweenboth samples as it came from the same formation.Intrinsic properties of BL and GR samples were obtainedfrom the slurry-made claystones and presented in Table 1.Representative intact properties of the claystones are alsoincluded in the table to provide general understanding in regardsto the initial field conditions of the materials.Based on petrographycal observation done by Yuliyanti, etal.(2011), claystone from Kerek Formation can be characterizedby a number of volcanic glass that altered to secondary minerals(30-40%), calcite (10-25%), ortoclase (1-10%), quartz (5-20%),plagioclase (0-15%), opaque minerals (5-15%), and lithic(0-5%). As for the clay fraction, XRD measurement revealedthat claystone material contains Ca-montmorillonite, kaolinite,and illite (Fig.3). Ca-montmorillonite has relatively higherintensity compare to other clay minerals. Montmorillonitefraction contained in this claystone induced swell ability, whichvaries from 50% to 100% or 65% in average. Initial CEC(Cation Exchange Capacity) of claystone measured byammonium acetate method from this formation is 20.0mgrek.Na2O/100g and may increase upon activation bytemperature up until 28.0 mgrek.Na2O/100g at 300°C (Yuliyanti,et al., 2011).Fig.2 (b) Site conditions and claystone : GR sample- 341 -Fig.3 X-Ray diffraction plot Table 1 Intrinsic and intact properties of claystonesPropertiesBLGRIntrinsic properties obtained from the slurry clayLiquid limit, wL (eL)*56.5% (1.54)57.8% (1.55)Plastic limit, wP (eP)*33.6% (0.91)28.3% (0.76)Shrinkage limit, wS (eS)*24.2% (0.66)19.3% (0.52)Specific gravity, GS2.722.69Intact properties of the claystoneWater content, wc8.4%16.0%Void ratio, e0.360.63Porosity, n0.260.39Degree of saturation, SR62%69%*: void ratio equivalent to the water content with Sr=100%Table 23. EXPERIMENTAL METHODS3.1 Test ApparatusesIn this study, two types of apparatus were used for hydraulicconductivity (K) measurement. First apparatus is a regularoedometer mold (60 mm in diameter and 20 mm in thickness)with attachment of 5 mm diameter standpipe at the bottomdrainage, enabling to conduct falling head permeability test. Inorder to accommodate relatively large-sized aggregates of theclaystones, 150 mm diameter column mold was also used in thistest(Fig.4). The hydraulic conductivity of the sample wasmeasured by seepage via the bottom drainage valve under aconstant head condition.3.2Summary of test conditionsTestsCasesSampleConditionTestingApparatusCaseBLO1CaseGRO2CaseBLO3CaseBLO4CaseGRO5CaseBLO6CaseGRO7CaseBLC1CaseBLC2CaseGRC3CaseGRC4CaseGRC5Slurry-madeSampleSlurry-madeSampleAggregated Dry(graded-size)RemoldedSampleRemoldedSampleAggregated Wet(uniform-size)Aggregated Wet(uniform-size)OedometerMoldOedometerMoldOedometerMoldOedometerMoldOedometerMoldOedometerMoldOedometerMoldColumn Mold(hinitial=7.5cm)Column Mold(hinitial=9 cm)Column Mold(hinitial=13 cm)Column Mold(hinitial=12 cm)Column Mold(hinitial=10 cm)Aggregated DryAggregated WetAggregated DryAggregated WetAggregated WetInitialWaterContent(wi)LiquidityIndex(IL)64 %1.3355 %0.9012 %-0.9440 %0.2843 %0.5032 %-0.0727 %-0.0412 %-0.9429 %-0.2010 %-0.6225 %-0.1135 %0.23Samples preparation and test proceduresSamples were treated under various conditions. Table 2 showsthe conditions of each case in this study. The first two charactersof the test case show the types of claystone used in the test, andthe third character shows the types of mold used in the test, O:(oedometer) and C (column).Slurry sample was made from the crushed claystone.Excessively large gravel-sized claystone was crushed usinghammer. The smaller sized aggregate was put into mortar forfurther crushing by pestle until finer sized aggregate wasformed. Fine-sized aggregates were mixed carefully with tapwater around 1.5 times the liquid limit then deaired usingvacuum device for a while. Afterwards, slurry-made claystonewas inserted into the oedometer mold for preconsolidation stage.Before that, the inner wall of the oedometer mold was coatedwith silicon grease to impede sidewall leakage. The slurrysample was then preconsolidated with preconsolidation pressureof 20 kPa. Remolded sample was also prepared using samemethod with slurry-made sample, but mixed with less wateruntil it reached cake-like consistency. The remolded samplethen preconsolidated with preconsolidation pressure of 80 kPa.After the preconsolidation stage, the mold is dismantled to trimthe excess soil for water content measurement. Lastly, loadingcap and dial gauge was mounted back to the mold. Theincremental loading consolidation test was conducted undersingle drainage side consolidation from the sample top with theload increment ratio (LIR) of 1 from the pressure of 10 kPa to1280 kPa. Then swelling tests were done by decreasing thepressure with LIR of 2 until 20 kPa. Hydraulic conductivitymeasurement was done by the falling head method after thecompletion of primary consolidation for about 20 hours.Fig.4 Schematic view of column mold test apparatus[2] and testsample.- 342 - 4. RESULTS AND DISCUSSIONS4.1 Compressibility and void ratio of test samplesVariation of void ratio (e) with vertical consolidation pressure(p) relation is shown as e-log p curves in Fig. 7. The void ratioand compressibility of the samples are highly dependent on theinitial conditions (Table 2).Test cases with aggregated samples are more deformablewith wider range of void ratio compared to those of slurry andremolded samples. For dry aggregated samples, the typical e-logp obtained from any test has unsteady change, which could beattributed to particle crushing. This deformability could becaused by large inter-aggregate pore that triggers “instableinterlocking” within aggregates and undergo crushing processuntil it reaches “stable interlocking” condition. Thisprone-to-deform condition might not be observed in theuniform-sized sample (Case BLO6 and GRO7) and gap-gradedsample (Case GRC3).4.2 Hydraulic conductivity of slurry-made and remoldedsamplesWhile for preparing the aggregated sample, excessivelylarge aggregates were eliminated by crushing using hammer inorder to be fit onto the column mold. Afterwards, the samplewas sieved to testing as shown in Fig.5. In this study, the largestsize of aggregate sample used was around 26.5 mm. Theaggregate size distributions of all test cases using aggregatedsamples are as illustrated in Fig. 6. After sieving and measuringits initial water contents (wi), the sieved aggregates were mixedtogether and then carefully placed into the column mold. Toavoid the side wall leakage, large amount of silicone grease wassmeared on the inner surface of the mold (Fig. 4). After placingthe sample in the mold; the filter paper, porous stone disk,perforated loading plate, bellofram cylinder, and dial gaugewere respectively mounted onto the column mold. Upon testing,the vertical load was applied by the bellofram cylinder from 10kPa up to ± 245 kPa. Each load was kept one day and thehydraulic conductivity was determined by measuring thedischarge water rate under a constant head difference (h) ofabout 0.31 m at the beginning of the each loading and the end ofthe loading respectively. After the consolidation at themaximum pressure, the load was then reduced stepwise. Afterthe test using the dry intact aggregates (Cases BLC1 and GRC3)finishes, the samples were extruded out the mold and the finalwater contents were measured. The extruded sample wasdisintegrated to the aggregates and used for the further columntests after carefully disposing the soil that has beencontaminated with the silicone grease.The water contents of dry samples (BLC1, GRC3, BLO3)were much smaller than the shrinkage limits (Table 1) about ahalf of SL.K values obtained from the slurry made sample were taken as areference of minimum hydraulic conductivity achievable forthis type of materials. Fig. 8 shows a time-variation of observedK values in the falling head permeameter (FHP) test for aslurry-made sample. The K values varied with time toapproach a constant value, which was taken as therepresentative value for each loading condition. The K valuesare plotted against void ratio in Fig. 9. The results of unloadingstages are not included in the figure, because of errors due to theside-wall leakage.The range of K values obtained from two slurry-madesamples (GRO2 and BLO1) are almost the same, the order of10-9 m/s to 10-11 m/s. A slight discrepancy between e – K valuerelations of two samples can be attributed to the relatively smallvoid ratio for GR02 than BL01 (Fig.6), reflecting the effects ofweathering level of the two claystones. K values of remoldedsamples with relatively high initial water contents (wi ~ 40%)are very similar to those of slurry made samples.3Case O:Case O:Case O:Case O:Case C:2.5Slurry-madeRemoldedAggregated DryAggregated WetAggregated DryCase C: Aggregated WetCase BLO6Case BLO32Void Ratio, eFig. 5 Sieved dry clay stone aggregatesCase GRO7Case GRC3Case GRC51.5Case BLC1Case BLC2Case GRC4Case BLO41Case BLO10.5Case GRO2Case GRO510 010 110 210 3Vertical Pressure, p [kPa]Fig. 7 e-log p relationship of test samplesFig. 6 Aggregate size distribution of aggregated samples- 343 -10 4 10 -31*10-9Case GRC310 -4Case BLO1p=80kPa9*10-10Case BLO6ww=10%iww=32%i8*10-10Case GRO710 -5Hydraulic Conductivity, K [m/s]7*10-106*10-105*10-104*10-103*10-10020406080Time of measurement [min]100120Fig. 8 Typical K value variation observed in FHP test.4.3 Hydraulic conductivity of aggregated samplesThe K values obtained from the aggregated samples are alsoshown in Fig. 9. Overall range of K values of the aggregatesamples is from the order of 10-4 m/s to 10-10 m/s showing thewide variation.The cases tested at dry condition and higher fraction oflarge-sized aggregates give higher K values (BLC1 and GRC3)compared to those with higher water content and less gravel sizefraction at the same void ratio (BLC2, GRC4, and GRC5).Cases of BLC1, BLC2, GRC4, and GRC5 show linear trends inlog K – e relation. While, cases of GRC3, BLO3, BLO6, andGRO7 shows convex curve trends. The latter cases have leastrange of K values compared to the others, despite the widerange of compression. The relatively large K values can beattributed to relatively large void sizes remained under theapplied pressure. In the dry samples (wi~10%) or relatively lowwi (~30%~wL), disintegration and deformation of largeaggregate continuously takes place as the load was applied andthese changes reduce the pore size of the aggregate. In GR03,the change of large pore structure was prominent over p=80kPa(Fig.7) and hence K value seems to have unsteady change. Thiseffect, as illustrated in Fig.9, could yield different resultsespecially at early loading stage.The results obtained from this section suggest the importanceof initial water content and initial aggregate size gradationamong other mechanisms that also were observed throughoutthe experiment. On top of these effects, it should be note thatthe difference of observed behavior between BLC1 and GRC3could imply the effect of fragility and soaking behavior of theclaystones.w=27%wiCase BLO310ww=12%i-6Case BLC1ww=12%iCase GRC510 -710 -8ww=35%iCase BLC2ww=29%iCase GRC4w=25%wiCase BLO1ww=64%i10 -9Case GRO5ww=43%iCase BLO4ww=40%iCase O: Slurry-madeCase O: RemoldedCase O: Aggregated DryCase O: Aggregated Wet10 -1010 -11Case C: Aggregated DryCase GRO210 -12Case C: Aggregated Wetw=55%wi123Void Ratio, eFig. 9Hydraulic conductivity measurement vs void ratio.4.4 Effect of swelling and initial water contentIn order to discuss the effect of swelling, the results of hydraulicconductivity measurement of Case BLC1 during unloadingstage are used (Fig. 10). The sample was kept and observedunder low pressure of ± 2 kPa for 1 month. Measured K valuesgradually decreasing and shows clear trend despite slightincrease of void ratio (e). Although this lowering of K value issmall, this might be vital mechanism in order to secure and evenpredict the long term performance of K value.Above results could indicate the effect of swellingmechanism. Due to water absorption into the aggregate, voidwithin the aggregate expanded in which indicated by theincrease of final water content (Table 3). As water imbibes tothe clay minerals within the aggregate, spacing in-between clayparticles began to shrink due to expansion of dielectric doublelayer (DDL) which makes water less mobile hence decreasesthe K values.1.151.1410 -71.131.12HCVoid ratio10 -810 310 4Immersion Time, t [min]1.1110 5Fig. 10 Decrease of Hydraulic Conductivity in Case BLC1.- 344 -Void Ratio, eHydraulic Conductivity, K [m/s]10 -6 Tests CasesCase BLC1Case BLC2Case GRC3Case GRC4Case GRC5Water Content Measurement ResultsInitial WaterFinal WaterContent, wilContent, wf12 %36-43 %29 %40 %10 %29-37 %25 %36-37 %35 %40 %The effect of initial water content can be discussed fromoverall results, which are compiled in Fig. 11. The results ofslurry-made and remolded sample results are also plotted in thesame figure as a reference. It can be said from the figure that asinitial water content increases, lower K can be achieved. Aftertesting, the extruded sample always experienced higher watercontent as shown in Table 3, and those with higher initial watercontent have lower K values. This suggests that the alterationmechanism of the claystone from solid consolidated phase tomore deformable plastic phase attributes to the lower K value.Apparently, as each aggregate transmits forces and interlockswith each other under the increasing vertical pressure. Whilethe water imbibes into the aggregates and softens them, whichallows them to bend or deform within contact area, and hencereduces the sizes of adjacent inter-aggregate pores. Water thenless mobile, and that causes the decrease of K values.This mechanism can be observed from comparing results ofBLC1 with BLC2 or GRC3 with GRC4 andGRC5 (Fig. 9). Atthe same void ratio, the cases with higher initial water contentable to generate lower K values. It is appears that plastic pimit(wP) to be useful indicator in order to achieve low hydraulicconductivity. K values of BLC2 and GRC5 are proven toachieve relatively small K values about 10-9m/s, if the sampleswater content are close or over wp, with which the plasticdeformation can be achieved. However to achieve much smallerK value, the initial water contents equivalent to IL ~ 0.3 – 0.5are required as shown from the results of BLO4 and GRO5.10 -5SLPLCase GRO7Case BLO3p=80 kPa; Slurry-made Samplep=80 kPa; Remolded SampleCase BLC1p=245 kPa; Aggregated Sample10 -7Case GRC5Case GRC4p=245 kPa; Slurry-made Samplep=245 kPa; Remolded Sample10 -8Case GRO510 -9Case BLO1Case BLC210 -10Case BLO410 -110204010-7HC observation at unloading stage of 2 kPa(Case BLC1)103104105Immersion Time,t [min]Fig. 12 Long term K value variation for BLO3 and BLC1.Fig. 13 compiles all the variation of K values obtained with thegravel size fraction. In this study, the gravel size fraction isdefined as the aggregates retained in 4.75 mm sieve (USCSStandard) adopting previous studies [3], [4]. From the overallresults of column test samples show that if the samples aproperly pretreated and given proper compaction effort; gravelfraction will not affect K values to some extent.10-4p=80 kPa; Aggregated Sample10 -6HC observation at unloading stage of 40 kPa(Case BLO3)10-610-8LLCase BLO6Case GRC310-5Hydraulic Conductivity, K [m/s]Hydraulic Conductivity, K [m/s]10 -4tested by the oedometer mold with relatively small applied maxconsolidation pressure 160kPA, while that of BLC1 was 245kPa.This significant difference in K values might suggest theimportance of initial aggregate gradation. BLC1 has widergradation sizes than BLO3 which has less gradation with onlythe largest aggregate ≥2.36 mm and the smallest ≥0.6 mm. Eventhough D10 of BLO3 is smaller than BLC1, due to this lack ofgradation, BLO3 could have higher K value than BLC1 becausethe gradation was not enough to fill in the inter-aggregate poresat the initial state which is indicated by the large void ratio (e)of Case BLO3 (Fig. 6).Hydraulic Conductivity, K [m/s]Table 3Case GRO260Case BLO6Case GRO710-510(initial water content)Case GRC3 (10%)Case BLO3-6CaseGRC4CaseBLC1(12%)10-7CaseGRC5CaseGRC4(25%)10-8p=80 kPa; Dry ConditionCase BLC210-9(29%)CaseGRC5BLC1CaseGRC5Case(35%)p=80 kPa; Wet Conditionp=245 kPa; Dry Conditionp=245 kPa; Wet Condition10-10800100InitialwaterContent,content,wcwi [%]WaterFig. 13Fig. 11 Effects of initial water contents on K values.4.5 Effect of initial aggregate size gradation and gravel sizefractionLong term variation of K values after unloading are comparedbetween two aggregated dry samples made from BL claystone,BLO3 and BLC1 in Fig. 12. As shown in Fig.9, the hydraulicconductivity had decreasing trend during unloading stage forboth cases being affected by swelling. Effective size is used todiscuss the effect of initial aggregate gradation. The effectivesize in this study is characterized by aggregate diameter at 10%passing (D10). Case BLC1 yields lower K values compared toCase BLO3 despite of larger D10 (Fig.6). Though BLO3 was20406080100Aggregate Fraction above 4.75 mm [%]Hydraulic Conductivity Measurements based onInitial Gravel Size FractionTo achieve low K values, the most important consideration isthat the coarse fraction needs to be secured within the finefraction, not in reverse, in order to prevent any migration of thefine fraction that might increase the K value. Previous studiesshowed that coarse fraction does not significantly affect the Kvalue if not exceeds 50-60% [3], [4] and fine fraction not less than30% [5].Mechanical characteristics of the material also affect the Kvalues. The K value is dependent by the largest inter-aggregatepore which is highly dependent on not only aggregate size, butalso rigidity and deformability of the aggregate. Rigidity willhave direct impact to the ability of the aggregate crushing, so- 345 - that it will able to increase fine fraction and improve theaggregate size distribution. As this particular claystone,especially highly weathered ones (BL samples), will more easilybreak upon the increase of load, and increase the water contentby soaking than the less weathered one (GR sample). So degreeof weathering is one of favorable factors in the application ofclaystone as the barrier material. It should be also noted that thesmall particles can be soften by absorbing water easier than thelarge particles.Fig. 15 Effect of aggregate size gradationAcknowledgement5. CONCLUSIONTo discuss the feasibility of weathered claystone as linermaterials of landfill, hydraulic conductivities of compacted soilsmade by natural claystones collected from geological formationwere measured by using an oedometer mold and a column testapparatus. The following conclusions are derived,(1) Hydraulic conductivity property of claystone under varioustreatments has been investigated through laboratoryexperiments. The effects of (1) swelling and initial watercontent, and (2) initial aggregate size distribution and largeparticle fraction have been observed and discussed.Aforementioned effects associated with the microlevelmechanism of the claystone which may explain the factorsthat contributed to the reduction of hydraulic conductivity.(2) Actually, in order to reduce hydraulic conductivity byswelling, it is important to properly pretreat the material.Increasing the water content and maintaining the wetcondition is necessary. Under wet condition, clayaggregates are able to soften the form and phase thatenables the aggregate to acts like clods. Plastic attributesallows it to deform and decrease the sizes ofinter-aggregate pores enhancing the decrease of the Kvalues(Fig.14). The plastic limit of remolded claystone asan intrinsic property of clay minerals could be a convenientindex to examine the optimum water content to obtain thelow K value with relatively small effort.The authors would like to show sincere appreciation to Dr.Wawan Budianta, University of Gadjah Mada, Indonesia, for hisvaluable support in doing this research.References[1] A. Yuliyanti, I. W. Warmada. & A. D. Titisari,“Characteristics and Genesis of Montmorilonitic Claystonefrom Bandung Area, Wonosegoro, Boyolali, Central Java”,Indonesia. Journal of Southeast Asian Applied Geology, 3(1),pp. 64-71, 2011.[2] M. A. Tanchuling, J. Takemura, M. R. A. Khan and O.Kusakabe, "Determination of Partitioning and DispersionCoefficient Using Column Test," Journal of the SoutheastAsian Geotechnical Society, pp. 103-110, 2006.[3] T. L. Shelley and D. E. Daniel, "Effect of Gravel onHydraulic Conductivity of Compacted Soil Liners," Journalof Geotechnical Engineering, vol. 119, no. 1, pp. 54-68, 1993.[4] N. C. Thai, A. Shigeyasu, K. Shoichi and H. Takashi,"Compaction and Permeability of Soil Containing LargeParticles," Transactions of Japanese Society of Irrigation,Drainage, and Rural Engineering, vol. 208, no. 1, pp.107-117, 2000.[5] D. E. Daniel, "Clay Liners," Geotechnical Practice forWaste Disposal, London, Chapman & Hall, 1993, pp.137-163.Fig. 14 Water imbibitions(3) In the same fashion, fine fraction of the utilized claystoneis also important. The fine fraction needs to be larger thanthe coarse fraction so that the coarser fraction is confinedsecurely within fines. Either by mechanically working theclaystone or reducing the amount of coarse fraction isimportant to minimize the size of the inter-aggregate largepores, which lowers the mobility of the water, and henceyields lower K values. (Fig.15)- 346 -
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  • タイトル
  • Potential Hydraulic Barrier Performance of Volcanic Ash Derived-Clayey Soils with Bentonite in Landfill Engineering Application
  • 著者
  • Ta Thi Hoai・Toshifumi Mukunoki
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 335〜340
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000060
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)10-4Potential Hydraulic Barrier Performance of Volcanic Ash Derived-Clayey Soils with Bentonite in LandfillEngineering ApplicationTa Thi Hoai 1, and Toshifumi Mukunoki 21Graduate2X-EarthSchool of Science and Technology, Kumamoto University, JapanCenter, Faculty of Advanced Science and Technology, Kumamoto University, JapanKEY WORDS: Volcanic soils, Bentonite, Permeability, Diffusion, Sorption1. INTRODUCTIONPerformance of bottom liner subjected to leachate infiltration isconsidered as one of the primary concerns for a well-designedlandfill. Compacted soil liners have been widely used as bottomliners in landfill to weaken hydraulic conductivity of leachate forrecent years. They are generally constituted from clay-richgeological materials due to their fine grain size, micro-pores, andhigh specific surface area, leading to low permeability and highsorption capacity (Du et al., 2004). Clayey soils formed involcanic areas (referred as volcanic soils herein) are commonlyknown to possess high bonding capacity when exposure to manycontaminants because of their abundance of amorphous minerals(Floor et al., 2011, D’Alessandro et al., 2012). Several researcheshighlighted that volcanic soils show the uptake capacity withanionic species such as Flourine (D’Alessandro et al., 2012),SO42- (Delfosse et al., 2005) as well as cation species includingheavy metals: Cr, Cu, Pb, Zn (Navia et al., 2005a,b; Toscano etal., 2008), and even organic pollutants as Diuron (DI) (CáceresJensen et al., 2013). Hence, it is likely to make appropriate use ofvolcanic soils to produce barriers which play an important role inslowing the breakthrough of contaminant fluids in landfills.Navia et al.(2005a,b) concluded that volcanic soils in SouthernChile became reasonable raw materials for basal liners of landfillcompared with studied zeolites due to its well pollutant retentioncapacity including Cr, Cu, Pb, Zn. However, application ofvolcanic clayey soils as liner materials is less studied.Kyushu region, where located most western part of Japan hasexperienced a range of volcanic activities and therefore soilsoriginated from volcanic ash are densely distributed (Harada andYoshinaka, 2014). Akaboku soil which belongs to Aso area,Kumamoto prefecture is one of these deposited volcanic ashcontained-soils formed in the Pleistocene to Alluvial epoch but isless decomposed by organic matters (Mukunoki et al., 2016).These soils are called as problematic soils due to high watercontent relatively close to liquid limit, leading to cohesive soilsand easy softness under any disturbance (Hayashi et al., 2005).Some researchers have studied the application of these soils forconstructing embankment so physical and mechanical propertiesof volcanic soil were studied (e.g. Moroto, 1991).Usually, the landfill is constructed not near urban area butalso remote area. In this case, the valley topology could be usedso some slopes are cut and sometimes engineers foundproblematic soils. Reasonable utilization such problematic soilsin both engineering and environmental fields as liner materialsinstead of disposal have recently drawn great attention especiallyin the context of land shortage for waste containment as well asdemand for long-term environmental protection. It should benoted that the major mission in the design and construction ofbottom liners in landfill is to limit the flow of pollutants andminimize their exposure to the subsoil and groundwater(Shariatmadari et al., 2011). Bentonite originated from smectitemineral group is known to have low hydraulic conductivity atleast less than 10-8 m/s, the addition of a reasonable quantity ofbentonite to such volcanic soils would help to meet the specificrequirements of impermeable barriers. In essence, many attemptshave been conducted to examine the performance of bentonitemixed with non-cohesive soils like sandy soils (Mukherjee andAnil, 2018). Probably, few researchers concentrate on thehydraulic behavior of liners consisting of bentonite blendedcohesive soils. Volcanic cohesive soils are marketed to berelatively immune to many harmful compounds (Floor et al.,2011, D’Alessandro et al., 2012) whereas bentonite may be easilyprone to double layer contraction when exposure to chemicalsolution (Rowe et al., 2004). These two soils are likely to supporttogether to create a potentially well-performed bottom liner inlandfill. Calcium ion is one of common contaminants in landfillleachate and is classified as multivalent cation with the ability tohigh exchange, hence reduce swelling capacity of Na-bentoniteand result in higher hydraulic conductivity (Razakamanantsoa etal., 2016). For these issues, the objective of the paper is toevaluate the feasibility of mixture constituting volcanic cohesivesoils and bentonite as landfill bottom liner under the effect ofCaCl2 inorganic salt solution. This study is to focus on evaluatinghydraulic performance including adsorbed cation regime,diffusion coefficients and leachate compatibility of this mixtureat various bentonite content.2. METHOD AND MATERIALS2.1 Material PropertiesLiner materials for landfill used in the study comprise ofAkaboku volcanic ash soils and bentonite (granular sodium type).The different mass ratio of dry bentonite (MRB) with 0%, 5%,10%, 15%, and 30% of wet volcanic soils was selected to mixtogether. For example, MRB10% means the mixture includes 1kgof natural Akaboku soil and 100g of dry bentonite. The naturalsoil was chosen in order to ensure its physical properties not tobe changed. In order to get the homogenous mixture, a paddlemixer was used and water content of nearly 3 times thecorresponding liquid limit was added to the mixture. After that,samples of each case were subjected to one-dimensional preconsolidation under a loading pressure of 60 kPa for a few daysuntil the samples obtain a stable state and achieve full saturation.These specimens’ physical properties after this test determinedusing fundamental soil laboratory tests are shown in Table 1. Itcan be seen that dry density tends to decrease while water content,liquid limit and apparent porosity increase with the increment ofbentonite content.To simulate Ca2+ ion migration through these mixtures usinga series of hydraulic tests including batch adsorption, diffusionand permeability tests, distilled water (DI water) and CaCl2solutions at various concentration were prepared. The initialtarget concentration of CaCl2 (C0 = 10 mg/L, 100mg/L, 500 mg/L,1000 mg/L, 2000 mg/L) were created by dissolving a knownmass of CaCl2 powder (chemical analytic reagent) in a knownvolume of DI water.Figure 1 indicates an X-ray diffraction (XRD) spectrum forvolcanic soils and bentonite with major mineralogy were marked- 335 - Table 1. Properties of volcanic soil-bentonite mixturesPropertiesBentonite content (%)010152030Specific gravity, Gs2.672.662.662.662.65Water content, w (%)143161169172174Liquid limit, WL (%)1442282782633160.570.50.480.470.470.790.820.820.820.83Dry density, ρd(g/cm3)Apparent porosity, n50000Akaboku volcanic soilIntensity30000200002734224014.517130.412665.113413.41257513264.911261.711525.311395.9𝐾𝑑𝑒𝑞 =11926.31000001020304050Diffraction angle (o)607080150000IntensityBentoniteQuartzMontmorilloniteOthers108367100000As mentioned previously, the batch sorption test gives values ofKd for volcanic soil and bentonite. Hence, the values ofequilibrium partitioning coefficient (Kdeq) for all cases of MRBwere deduced based on the following equation:QuartzAllophaneOthers140000replaced with equal volume of DI water. Concentration of Ca2+in batch adsorption and diffusion tests was analyzed byinductively coupled plasma spectrometry (ICP-MS). Beforeanalyzing concentration, dilution of these samples with DI waterand their filtration using 0.2 μm filter papers were performed.2.3 Deduction of Equivalent Partitioning and DiffusionCoefficients𝜕𝑐=𝜕𝑡140366.72892516916.724691.725766.7 15183.30102030405060Diffraction angle (o)7080Figure 1. X-ray diffraction spectrum results of Akabokuvolcanic soil and bentoniteat peaks using the Ultima IV machine belonging to RigakuCorporation, Japan. It is noted that these crystals in the sample,at certain specific wavelengths and incident angles, producedintense peaks of reflected radiation. It can be deduced from thesepeaks corresponding to diffraction angles in Figure 1a and b thatallophane and montmorillonite are recognized as main clayminerals of volcanic soil and bentonite, respectively.Allophane1is categorized as an amorphous clay mineral whose adsorptioncapacity of cation is much lower than smectite group includingmontmorillonite. Hence, addition of bentonite with volcanic soilmust enhance Ca2+ adsorption capacity of this soil.2.2 Batch Adsorption and Diffusion TestsBatch adsorption test was conducted to evaluate adsorptioncapacity of volcanic ash soil and bentonite with Ca2+ ion, as theresult, the partitioning coefficient (Kd) will be defined.Meanwhile, diffusion test can provide the deduced effectivediffusion coefficient De of volcanic soils and bentonite whenpermeated with CaCl2 solution using Kd as the input. The batchadsorption tests on volcanic soil and bentonite were doneutilizing plastic tubes 50 ml filled with prepared soil samples andsolution CaCl2 at each initial target concentration (C0) of 10 mg/L,100mg/L, 500 mg/L, 1000 mg/L with the ratio 1:20. The tubeswere equilibrated by shaking at a speed of 200 rpm for at least 24hours and then centrifuged at 4000 rpm for 30 min. The sampleswere taken 0.5ml from the supernatant by using pipette.The diffusion test has been implemented based on the testprocedure by Rowe et al. (2000). An acrylic cell of 90 x 50 mmin height and diameter composes of a 10 mm thickness of middlecompacted soil between 42-mm-thick upper (source) and 38mm-thick lower (receptor) rings. The prepared solutions of 1000mg/L CaCl2 and DI water were filled in source and receptorsreservoirs, respectively. A stress of about 15 kPa from a springwas applied into the compacted soils in the source reservoir. 0.5ml samples of both the source and receptor was taken daily and1(1)where Kdv and Kdb are the partitioning coefficient of volcanic soiland bentonite, respectively; mv and mb represent a dry mass ofvolcanic soil and bentonite in the mixture, respectively.Similarly, De was deduced based on a theoretical model usingthe values of Kdeq as well as dry density (ρd) for each case of MRBas input data. One-dimensional finite-layer method inferred fromrunning the program POLLUTE (Rowe and Booker, 1998) wasutilized in this paper. The one-dimensional partitioning anddiffusion equation can be written as:6570050000𝑚𝑏 𝐾𝑑𝑏 + 𝑚𝑣 𝐾𝑑𝑣𝑚𝑏 + 𝑚𝑣𝐷𝑒𝜌𝑑 𝐾𝑑𝑒𝑞1+ 𝑛(2)where c is a concentration at depth x and time t [ML-3]; n =porosity [-].POLLUTE v7 using the various deduced De generates theoutput charts of concentration of chemical solution vs time atsource and receptor reservoir. Of which, the concentrationdecreases at source and increase at receptor. These data werecompared with the results from experimental data to determinethe reasonable De from fitting degree. Typically, the value ofdeduced De was verified for fitting based on not only visual fit tothe data but also method of square summation error (SSE) forselecting De using the equation:𝑁(𝑥𝑖 − 𝑥 ′ 𝑖 )2𝑆𝑆𝐸 =(3)𝑖where {xi} is the experimental data series; {x'i}is the POLLUTEdata series.As the result, the minimum SSE value and visual fit wereselected to determine the final deduced De value.2.4 Constant Flow Permeability TestHydraulic conductivity (k) was determined by the constant flowpermeability test which was developed by Mukunoki and Maeda(2014). The system generates a minimum and maximum constantflow rate of fluid at 3.18cc/day and 318 cc/day, respectively.There are 4 different samples using acrylic cells of 90 x 50 mmin height and diameter. Soil specimens which is in the range of45-48 mm in thickness was placed in the middle of the cell underthe stress from a spring of around 15 kPa. In this study, theminimum flow rate was used and the pressure head at the inletend of the specimen was measured using the pressure gauges of500 kPa while the outlet end was kept atmosphere pressure.There were total 4 cases of MRB10; 15; 20 and 30% appliedfor this test and two samples for each case were tested to ensurethe accuracy of the test. In this test, these samples werepermeated by DI water, then switching to CaCl2 1000 mg/L andCaCl2 2000 mg/L. Hydraulic conductivity (k) of each case wascalculated using Darcy’s law based on the recorded pressure onabove samples and it can be shown:- 336 -𝑘=𝑄ℎ𝜌𝑤 𝑔𝐴 𝛥𝑃(4) where Q is constant inflow volume per time (m3/s), h is thethickness of sample (m), ρw is density of fluid (kg/m3), g isgravitational acceleration from gravity (m/s2), A is cross sectionof specimen (m2), P is the pressure difference across thespecimen (Pa).It was noted that in case of MRB0% which possesseshydraulic conductively less than 10-9m/s, the falling headpermeability test using triaxial confining type was applied toobtain the value of k.3. RESULTS AND DISCUSSION3.1 Partitioning Coefficients (Kd)For modelling adsorption isotherm, concentration of Ca2+ atequilibrium and its mass removed from solution calculated frombatch sorption test were used. Of which, the Ca2+ uptake byvolcanic soils and bentonite can be expressed as𝑆=𝐶0 − 𝐶𝑒 𝑉𝑚(5)where S is the mass of contaminant removed from solution(mg/kg); C0 and Ce are initial and equilibrium concentration ofadsorbate, respectively (mg/L); V is the volume of solution (L);and m is the mass of adsorbent (g).Figure 2 indicates the linear adsorption isotherms for bothvolcanic soil and bentonite. These linear isopleths established byplotting a graph of S and Ce gives the values of partitioningcoefficient Kd as the formula:𝑆 = 𝐾𝑑 𝐶𝑒Figure 3 shows predicted and observed change of calciumconcentration with time during diffusion test in 3 cases ofMRB0%, MRB15% and MRB30%. Noted that, the estimateddiffusion coefficient for MRB0% is 4.8 x 10-10 m2/s whichcorresponds to the minimum SSE shown in Table 2 and a good fitto both the source and receptor experimental data represented inthe chart of the case MRB0%. De for MRB15% and MRB30%deduced based on both visual fit and lower SSE are 4.0 x 10-10m2/s and 3.2 x 10-10 m2/s, respectively. In these cases, theminimum SSE was not chosen because of the bad visual fitbetween experimental data points and modelling curves shownby dotted lines.Table 2. Values of SSE for 3 cases of MRB (0%, 15%, 30%)MRB0%MRB15%MRB30%De*SSEDe *SSEDe*SSE6.200.02635.00.3113.81.4746.00.02324.50.2853.51.4345.90.02174.00.2593.21.3915.70.01913.50.2313.01.3615.50.01703.00.2022.51.2765.00.01382.50.1732.01.1784.80.01362.00.1441.51.0614.70.54081.00.1081.00.917* De is equal the values in the table multiples with 10-10m2/s(6)Kd of volcanic soil and bentonite to Ca2+ are 1.36 mL/g and234.71 mL/g, respectively, which shows the much higher Ca 2+removal capacity of bentonite. Therefore, the values of maximumequilibrium partitioning coefficient of MRB10%, MRB15%,MRB20%, MRB30% are specified to be 20.4; 31.79; 38.4; and55.21mL/g, respectively.3.2 Diffusion Coefficients (De)Table 2 indicates the values of SSE for different cases of MRBwhich play an essential role in figuring out the fitting degree oftheoretical prediction from POLLUTE v7 and obtainedexperimental data. Hence, the lowest SSE and visual fit wereconcerned to determine final De.Figure 3. Predicted and observed change of normalized calciumconcentration with time during diffusion testsFigure 2. Sorption of Ca2+ ion of volcanic soil and bentonite- 337 - Referring to these deduced De, the normalized calciumconcentration in the receptor in cases of MRB15% and MRB30%is almost zero even nearly 10 days of diffusion, hence muchlower than that of MRB0%. Whereas, this concentration in thesource decreases considerably with the increase in bentonitecontent from 0% to 15% and 30%. Indeed, the higher Ca2+sorption capacity of bentonite (higher Kd) might enhance sorptionperformance of volcanic soils and cause the decrement ofcalcium concentration in both source and receptor with theaddition of bentonite. It is also observed that the more bentonitewas added, the lower the value of De was obtained.3.3 Hydraulic Conductivity (k)Figure 4 shows the pressure profile of 4 cases of MRB10-to30% under the constant flow rate of 3.18cc/day. It is recorded forall of these cases that the initial pressure will increase graduallyand then reach the stable state. The pressure behaved anincrement tend from 27 to around 200 kPa under DI water flowwhen 10% and 30% respectively was added into the volcanic soil.If the fluid was changed from DI water to CaCl2 solution 1000and 2000 mg/L, the pressure decreased in the increase ofconcentration of CaCl2. The considerable decrement of pressure(approximately 2.6 times) was observed for the case of MRB30%when switching from DI water to CaCl2 2000 mg/L.Hydraulic conductivity of different cases of MRB (MRB10%,MRB15%, MRB20%, and MRB30%) were presented in Figure5. It should be noted that hydraulic conductivity of each case istaken by average value from that of two tested samples. It can beseen from Figure 5 that the addition of at least 10% bentonite canmaintain a sufficient hydraulic conductivity less than 10-9 m/s.Additionally, the hydraulic conductivity experiences a muchslightly gradual increase when switching from DI water to lowto-high concentration CaCl2 solution for all cases of MRB. Thehydraulic conductivity in term of CaCl2 2000 mg/L permeationwas found to be 1.49; 1.56; 1.60 and 2.29 times greater than thatof DI water for MRB10%; 15%; 20% and 30%, respectively.Here, this result indicates that bentonite is affected by calciumions more significantly than volcanic soils. It can be explainedthat monovalent sodium from bentonite was replaced by divalentcalcium from CaCl2 solution, hence this replacement caused tothe double layers shrinkage and increase hydraulic conductivity.Figure 5. Hydraulic conductivity of cases of MRB10%, 15%,20%, and 30%Figure 6 illustrates the relationship between hydraulicconductivity and liquid limit using DI water. Liquid limit whichis one of the typical properties for clay-size soils was indicated tohave relation to hydraulic conductivity (Terzaghi, 1925). In thisstudy, the smallest liquid limit is around 150% characterized byMRB0%. It was found that the hydraulic conductivity generallydeclines with the increment of the liquid limit. It was noted thatthe higher liquid limit, the more clay particles, thus leading to thestronger surface activities and lower hydraulic conductivity(Mitchell, 1976). This result has not yet mentioned about theinfluence of chemical solution, which is the limitation of thisresearch. Further work for chemical solution (CaCl2) should beexamined to detect the complex interaction between soil particlesand chemical fluid.3.4 Relationship between Hydraulic Parameters and BentoniteMass RatioTable 3 and Figure 7 show the data and trend of hydraulicparameters (k, P, De, and Kd) with various bentonite mass ratio.Permittivity (P) in this study refers to the hydraulic conductivitydivided the thickness of sample after termination of the test.Hydraulic conductivity and permittivity and diffusion coefficientsee a decrement trend while the increasing tendency ofpartitioning coefficient is recorded in term of more and morebentonite added.Figure 4. Pressure behavior of cases of MRB10%, 15%, 20%,and 30%- 338 -Figure 6. Relationship between hydraulic conductivity andliquid limit It can be seen that hydraulic conductivity decreases with theincrease of bentonite mass regardless of hydration with DI wateror CaCl2 solution. In particular, a 33-fold and 244-fold decreaseof k was observed for MRB10% and MRB30%, respectivelycompared with natural volcanic soils under DI water permeation.Diffusion coefficient decreases gradually whereas partitioningcoefficient increases from MRB0% to MRB30%, which arerepresented by linear isopleths. Hence, De values of MRB10%and MRB20% were also deduced from the equations obtainedfrom these diffusion linear isopleths presented in Table 3.3.5 Breakthrough Time SimulationFrom experimental results, a finite layer model using thePOLLUTE software was simulated to investigate the migrationof calcium into the aquifer through the barrier constituting ofvolcanic ash derived-clayey soils with different mass ratio ofbentonite (MRB10%, 15%, 20%; and 30%). In this study, thelandfill site was assumed to consist of a silty clay overlying agravel and sandy aquifer. The parameters of each component inlandfill site were illustrated in Figure 8. Under the perfectoperation of leachate collection system 0.3m thick, the leachatemound was maintained at an average height of 0.3m. Thepotentiometric head in the landfill is about 4m above the top ofthe aquifer and the infiltration through landfill cover is about 0.15m/a. Assuming that the initial concentration and reference heightof calcium were assumed to be 1000 mg/L and 15m.Table 3. Values of hydraulic parameters of all cases of MRBFluidParametersDIwaterk (m/s)P (/s)LL (%)K (m/s)P (/s)De(m2/s)Kdeq (mL/g)k(m/s)P(/s)CaCl21000mg/L011728701444.81.36-MRB (%)10153.551.297762872282783.931.438631.84.24.020.431.75.292.0211644.9201.122362631.2726.83.738.41.7937.7304.188833160.479.933.255.21.0722.6In practical, the failure of leachate collection system wouldlead to raise the height of leachate mound and change the Darcyvelocity of both aquitard and aquifer. Hence, the one-dimensional(1-D) calcium transport through the aquitard into the aquifercould be examined. Five cases were simulated as: (1) 6m of siltyclay between landfill base and aquifer; (2) the upper 0.5m of clayis removed and replaced with 0.5m MRB10%; (3) the upper 0.5mof clay is removed and replaced with 0.5m MRB15%, (4) theupper 0.5m of clay is removed and replaced with 0.5m MRB20%,(5) the upper 0.5m of clay is removed and replaced with 0.5mMRB30%.Figure 9 shows the concentration of Ca2+ in the aquifer thatresults from landfill simulation in POLLUTE. As a consequence,the time for contaminants to reach the aquifer at the 1% level isincreased from about 16 years (no liner) to about 66 years (linerMRB10%), 125 years (liner MRB15%), 145 years (linerMRB20%), and up to about 290 years (liner MRB30%). The peakimpact is also declined from 647 mg/L at 40 years without a linerto 239 mg/L at 180 years with liner MRB10%, 101 mg/L at 300years with liner MRB15%, 80 mg/L at 330 years with linerMRB20%, 24 mg/L at 520 years with MRB 30%.According to Drinking Water Quality Standard in Japan since2015 specified by Japanese Ministry of Health, Labour andWelfare, the limitation concentration of calcium of 300 mg/L,hence the landfill design without liner in case 1 would not beacceptable. Whereas, the utilization of the liners MRB10%-to30% with the thickness of 0.5m enhanced the attenuation ofcontaminants as well as reduce their impacts on the aquifer. Thus,that the addition of 10% bentonite to volcanic ash soil exhibitsthe peak calcium concentration in aquifer about 239mg/L couldbe well below the maximum concentration. Indeed, volcanic ashderived-clayey soils with 10% bentonite may become effectiveliner in landfill engineering.CaCl22000mg/Lk, De, P are equal the values in the table multiples with 10-10CoverH = 10 mLeachatecollectionsystem (0.3 m)4m3m5.5 mq0= 0.15 m/aWaste ρ = 750 kg/m3dLiner (0.5 m)vaNatural aquitardk = 10-8 m/sn = 0.4De = 0.02 m2/aAquifer(n = 0.35)vbFigure 8. Schematic showing landfill site with clay linerFigure 9. Calcium concentration in AquiferFigure 7. Trends of k, De, and Kd with bentonite mass ratio- 339 - 4. CONCLUSIONHydraulic performance of volcanic soil-bentonite mixturepermeated with DI water and inorganic solution CaCl2 waspresented. The addition of bentonite to volcanic soil is beneficialto reduction of Ca2+ ion transport. The more bentonite, the higherliquid limit, thus, it was found that hydraulic conductivitygenerally declines with the increment of the liquid limit.Particularly, a 33-fold and 244-fold decrease of hydraulicconductivity was observed for MRB10% and MRB30%,respectively compared with natural volcanic soils under the DIwater permeation.Under the effect of CaCl2 solution, a drop trend of hydraulicconductivity (k) and diffusion coefficient (De) but a rising trendof partitioning coefficient (Kd) in the increase of MRB wasobtained. The presence of at least 10% bentonite can maintain asufficient hydraulic conductivity less than 10-9 m/s. In addition, anegligible increment of k was observed for all cases of naturaland bentonite-modified volcanic soils in permeation with CaCl2solution (1000 - 2000 mg/L), which may demonstrate thatbentonite content has more considerable influence on hydraulicbarrier performance than leachate solution.Simulation of landfill design suggested the considerableeffectiveness of using volcanic ash derived-clayey soils with 10%bentonite as clay liner with 0.5 m thickness.ACKNOWLEDGEMENTThe authors are grateful for the financial support of Ministry ofEducation, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT) –Japan. We also appreciate technical support of Mr. RikuMiyauchi and Mr. Masayuki Tsushida and Mr. Kenji Shidabelonging to Kumamoto University for the constant flowpermeability test and Ca2+ ion concentration analysis and XRDanalysis, respectively.REFERENCESCáceres-Jensena, L., Rodríguez-Becerraa, J., Parra-Riveroa, J.,Escudey, M., Barrientos, L. and Castro-Castilloa, V. 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  • タイトル
  • 古紙を原料とする微細粉体による粘性土地盤の特性変化
  • 著者
  • 澤村 康生・矢野 隆夫・木村 亮
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 371〜376
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000066
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)11-4古紙を原料とする微細粉体による粘性土地盤の特性変化○澤村康生 1・矢野隆夫 1・木村亮11 京都大学大学院1. はじめに建設工事に伴い発生する建設汚泥や,浚渫土砂,軟弱土,ため池底泥などの高含水泥土は,多量の水を含んでいるためにそのままでは搬出・積載・運搬することができず,処理・処分にかかる経済的・社会的コストが大きい.これまでは,乾燥処理,脱水処理,セメントや石灰等の固化材による安定化処理により流動性の低下が図られてきたが,乾燥処理には大規模な用地が必要になること,脱水処理には大型の機械が必要となること,固化材による安定化処理では自然地盤との強度差により用途が限られ1),環境への負荷が大きいなどの問題が挙げられる2).さらに,上記の処理を行うためには専用のトラックを用いて隣接する施設へ運搬することになり,多くのコストを要する.以上の観点から,現場において即座に流動性を低下させることが可能である工法が望まれている.近年では,故紙破砕物と高分子系改良剤(ポリマー)を用いて余分な水分を吸水させた後にセメント系固化材を添加する工法土処理技術3)や,チップ化した竹を用いた泥4)が検討されているが,低環境負荷性,即時性を兼ね備えた泥土処理方法は未だ少ない.そこで筆者らは,古紙を微細化加工した微細粉体(以下,古紙微細粉体,Fine Shredded Paper: FSP)が有する高い吸水性能に着目し,高含水泥土処理の考え方を根本的に変える新技術の開発に取り組んでいる(図-1)5).そもそも紙の原料である木材は,50~55%がセルロースで構成されている.セルロースは強固な結晶構造を持っているため水に溶けず,親水性の水酸基を有しているため高い吸水性を有することが知られている.さらに,紙は繊維と繊維が絡み合い結合して層を成していることから,絡み合った繊維の間には微細な間隙があり,多孔質構造となっている.つまり,この多孔質構造に起因する毛細管現象により紙は水をさらによく吸収する.本工法による吸水作用は,主にセルロースによる吸水であると考えられ,対象泥土の化学組成を問わず,即座に流動性を低下させることが可能である.さらに,セメントなどの固化材を一切使用しないことから可逆的な吸排水作用が期待でき,環境負荷が小さい.これまで筆者らの研究により,FSP の基本的な特性や,高含水泥土に FSP を添加した際の効果について,強度特性および運搬性に着目して検討を進めてきた 5), 6).その結果,高含水泥土に FSP を添加することによりみかけの含水比が低下し,せん断剛性が増加するとともに,運搬性が著しく向上することを確認した.このように,実務面での有用性については一定の検証が行われているのに対し,処理原理に関する詳細なメカニズムの解明には至っていない.本研究では,粘性土地盤に FSP を添加した際の材料特性の変化に着目し,FSP の添加量により,粘性土地盤の物理特性および力学特性(せん断・圧密)がどのように変化するのかついて検討を行った.2. 粘性土地盤に古紙微細粉体を添加した際のコンシステンシーの変化2.1 実験条件本研究では,母材となる粘性土地盤として藤森粘土を用いて,FSP 添加量の異なる複数の試料について検討を行った.表-1,図-2 に藤森粘土の物性値と粒径加積曲線,図-3 に本実験で用いた FSP の SEM 画像,嵩密度と吸水量の関係 5)をそれぞれ示す.既往の研究 5)により,FSP の吸水性能はその嵩密度と相関があり,1g 当たりの吸水量は原料となる紙の種類や加工方法により異なり約 4.5~7 g であることがわかっている(図-3).これは,比表面積が大きく,吸水性能が高い FSP ほど嵩密度が小さくなるためである.本研究で使用した FSP は,1g 当たりの吸水量が約 5.5 g でこれまで用いたFSP の中では中間的な吸水性能を示す.Fine Shredded PaperBeforeAdding FSP and agitatingAfter図-1 古紙微細粉体を用いた高含水泥土処理 5)Characteristic change of clayey soil by the addition of fine shredded paperYasuo Sawamura1, Takao Yano1, Makoto Kimura1 (1Kyoto University)KEYWORDS: Used paper, High water content sludge, Consistency, Strength and consolidation characteristic- 371 - Percentage passing by weight [%]表-1 藤森粘土の物理特性Specific gravity of soil particle Gs2.68Fine fraction content Fc [%]98.7Liquid limit wL [%]48.5Plastic limit wP [%]28.0Plasticity index IP = wL - wP20.51008060402000.0010.010.1Particle size [mm]110図-2 藤森粘土の粒径加積曲線Water absorption [g]876540.1(a) SEM 画像 (50 倍)0.120.140.160.180.23Minimum bulk density [g/cm]0.22(b) 嵩密度と吸水量の関係図-3 実験に使用した古紙微細粉体の SEM 画像と嵩密度-吸水量の関係 5)8070Plasticity index Ip6050403020100020406080Liquid index w [%]100120L図-4 古紙微細粉体を添加したことによるコンシステンシー特性の変化(塑性図による評価)実験で用いる試料は,藤森粘土そのもの,藤森粘土の乾燥重量に対して,気乾状態の FSP を 5%, 10%,20%,30%添加した計 5 ケースとした.実験は,後述する 3 章のせん断試験を実施した後の試料を用いた.コンシステンシー特性は,「JIS A 1205 土の液性限界・塑性限界試験方法」に基づいて求め,試料の保管および実験は全て恒温恒湿の実験室(温度 20 度,湿度 60%)で行った.2.2 実験結果図-4 に FSP 添加に伴うコンシステンシー特性の変化を示す.なお,FSP を含む試料については,土粒子と FSP の総重量に対する水の重量を含水比として定義している.図より,FSP の添加量が大きくなるにつれて,液性指数,液性限界ともに増加し,低液性限界粘土(CL)から高液性限界シルト(MH)へと推移していくことが確認できる.一般的に,A 線より上に位置するほど,①乾燥時に固結する,②透水性が低い,等の粘性土としての特徴に富むこと,逆に A 線より下に位置するほど,①乾燥に伴ってボロボロになる,②間隙径が大きいため透水性が高くなる,等の粗粒的性質を持- 372 - 図-5 遠心力載荷装置を用いた実験手順の概略図 5)つことが知られている.FSP を含まない藤森粘土そのもののが,ほぼ A 線の直上に位置しているのに対して,FSP を添加した試料ではその添加量に応じて A 線よりも下方に位置する傾向を示していることから,粗粒的な性質が強くなっていることがわかる.一方,B 線については,左に行くほど圧縮性が小さく,右に行くほど圧縮性が大きくなる性質を示すことが知られている.FSP を添加した試料では,添加量が増大するにつれて右方向に推移しており,圧縮性が大きくなっていることがわかる.乾燥に伴う固結性,透水性,圧縮性の変化について,粘性土地盤に微細化加工した紙を添加するとどのような変化が起こるのか考察する.まず固結性について考えると,粘土は微細な鉱物により構成されており,乾燥や加熱により脱水が起こると,粘土同士の化学的な結合が静電引力による結合から酸化物による強固な結合へと変化する7).しかし,粘土に FSP を添加すると,相対的に粘土鉱物同士の結合箇所が少なくなることで,乾燥時の固結性が低下することが予想される.また,繊維質を添加したことにより,乾燥収縮に対する改質効果が発揮された可能性もあり,今後検討すべき課題のひとつである.一方,透水性,および圧縮性については,FSP そのものが高い透水性と圧縮性を有している材料であるため,FSP を添加した粘性土地盤についても,その添加量に応じてこれらの特性が変化したものと考えられる.透水性および圧縮性については,4 章で実施した圧密試験の結果も含めて後述する.3. 粘性土地盤に古紙微細粉体を添加した際のせん断特性の変化3.1 実験条件 5)高含水泥土に FSP を添加することによる処理メカニズムは,①FSP による吸水が主たる要因であると考えられるが,その他には,②FSP そのものの繊維質による補強,③FSP を添加したことによる飽和度の低下(不飽和化)が考えられる 5).特に②については,地盤中にセルロースを主成分とする FSP を添加することにより,短繊維を用いた地盤改良8)に類似する補強効果を期待することが出来ると考えられる.一方,③については,一定の効果があると考えられるが,検証するためには実験条件が複雑になるため,本報では検討項目から除外する.そこで本研究では,飽和正規圧密状態の藤森粘土および藤森粘土に FSP を添加した供試体を対象として,含水比(間隙比)を種々に変化させた条件でベーンせん断試験を実施した.実験に用いる試料は前章と同じく,藤森粘土そのもの,藤森粘土の乾燥重量に対して,気乾状態の FSP を 5%, 10%,20%,30%添加した計 5 ケースとした.飽和粘土の含水比(間隙比)を種々に変化させた供試体を作製するためには,所定の含水比になるように荷重を載荷し,圧密させる必要がある.しかし,低含水比の供試体を作製するには,非常に大きな荷重を載荷させた状態で長時間圧密する必要があり,供試体の作製に多大な時間を要する.そこで本研究では,京都大学防災研究所の遠心力載荷装置を用いて,異なる遠心力場で圧密させることにより含水比の異なる供試体を作製することとした.図-5 に遠心力載荷装置を用いた実験手順の概略図 5)を示す.藤森粘土のみを用いた実験における手順は以下の通りである.①乾燥状態の藤森粘土に水を加え,含水比が液性限界の 1.5 倍である粘土スラリーを作製する.②真空ポンプと撹拌機を用いて 2 時間以上脱気・撹拌し,粘土スラリーを飽和させる.③内径 195.4 mm,高さ 300 mm の塩ビ管に粘土スラリーを静かに流し込む.④5 つの供試体に対して,それぞれ 10G, 20G, 30G, 40G, 50G の遠心力を載荷し,遠心力場において自重圧密させる.⑤それぞれの遠心力場において荷重を載荷し,圧密させることで間隙比の異なる供試体と作製する.⑥供試体を温度 20 oC,湿度 60%の恒温恒湿室に移し 24 時間以上静置した後,ベーンせん断試験を行う.なお,実験時の供試体の温度は 19 oC であった.⑦試験後,供試体の含水比を計測する.- 373 - 2Strength in shear S [kN/m ]100fv1010.120406080100 120Water content [%]140160図-6 ベーンせん断強さと含水比の関係 5)の結果に加筆一方,FSP を添加するケースの手順は以下の通りである.①乾燥状態の藤森粘土に対して,重量比で 5%,10%,20%,30%の FSP を添加し,乾燥状態でよく混合する.②藤森粘土と FSP の混合物に水を加え,FSP を含む粘土スラリーを作製する.なお添加する水の量および粘土スラリーの初期含水比は,粘土スラリーを脱気・撹拌する際に使用する撹拌機のトルクの関係から FSP の添加量により異なり,FSP の添加率が小さい順に,初期含水比が 92.4%,110.1%,147.7%,188.4%になる量の水を加えた.③上記の②~⑦と同様の手順で供試体を作製した後,ベーンせん断試験と含水比測定を行う.ただし,FSP 添加量 5%,20%,30%の 3 種類については,3 供試体のみ用意し,遠心力 10G, 30G, 50G において圧密を行った.ベーンせん断試験より得られる測定最大トルクを用いて,式(1)によりベーンせん断強さ sfv [kN/m2]を算出した.Tmax  T s fv  D2H ここで,2D36(1)Tmax : 測定最大トルク [kN・m]T'DH: 試験機の摩擦トルク [kN・m](= 0): ベーンブレードの幅 [m](= ): ベーンブレードの高さ [m]なお,上述した通り,実験後の試料を用いて,2 章に示すコンシステンシー特性の変化を調べた.3.2 実験結果図-6 に,ベーンせん断試験の結果 5)を示す.図より,いずれのケースにおいても,含水比とせん断強さはよい相関があることが確認できる.いずれの試料についても,含水比の増加とともにせん断強さが小さくなる傾向を示すが,FSPを添加した試料では,同一せん断強さにおける含水比が大きくなっており,高含水状態においても高いせん断強さを有することがわかる.一方,同一含水比で比較した場合においても,FSP を添加した試料では高いせん断強さを有していることから,繊維質による補強効果を確認することが出来る.また,比較のために実施した FSP だけを用いた試料では,藤森粘土と FSP を混合した試料に比べてはるかに高い含水比において同一のせん断強さを有しており(sfv = 1 kN/m2:w≒550%,sfv = 10 kN/m2:w≒300%),特にベーンせん断試験によるせん断特性の評価では繊維質による補強効果が顕著に表れた.4. 粘性土地盤に古紙微細粉体を添加した際の圧密特性の変化4.1 実験条件粘性土地盤に FSP を添加した際の圧密特性の変化を調べるため,藤森粘土に FSP を添加した試料を用いて圧密試験を実施した.実験ケースは,藤森粘土そのもの,藤森粘土の乾燥重量に対して,気乾状態の FSP を 10%,30%添加した計- 374 - Fujinomori Clay3Clay with FSP 10%Void ratio e2.5Clay with FSP 30%21.510.500.120.60.10.50.080.40.060.30.040510152025Content percentage of FSP [%]1001000Vertical stress p [kPa]1000030-7100.02Permeability [m/s]0.70.210図-8 圧密試験から得られた e-logP 曲線Swelling index CsCompression index Cc図-7 サンプリング時の様子1-810-910-1010-1110 1図-9 圧縮指数と膨潤指数の関係101001000Vertical stress p [kPa]10000図-10 圧密試験から得られた k-logP 曲線3 ケースとした.実験試料は前章と同様,十分に脱気・撹拌した粘土スラリーを遠心場において圧密させることで作製した.ただし,圧密後の地盤から,シンウォールサンプラーを用いて供試体をサンプリングできる最小限の強度となることを目標とし,3 章の結果を踏まえて,遠心力 35G で圧密させることとした.初期含水比の設定や試料作製時の手順については 3 章と同様である.図-7 には,シンウォールサンプラーを用いたサンプリング時の様子を示す.圧密試験は「JIS A 1217 段階載荷による圧密試験」に準じて実施し,1 段階の圧密時間は 24 時間とした.また,膨潤特性についても調べるため,圧密過程と膨潤過程をそれぞれ 1 サイクル行った.4.2 実験結果図-8 に,圧密試験から得られた e-logP 曲線を示す.なお,FSP を含む試料の間隙比については,含水比と同様,土粒子と FSP の体積に対する間隙の体積として定義している.また,その際に用いる土粒子密度 Gs は,藤森粘土と FSPそれぞれの密度(藤森粘土:2.672, FSP:1.747)を基に,藤森粘土と FSP の混合割合に応じて算定している.実験で得られた e-logP 曲線より,FSP を含む試料では,初期状態の間隙比が大きく,その後の載荷により間隙比が大きく変化することが確認できる.しかし,載荷重が大きくなると,FSP の添加量によらず同様の間隙比に収束していることから,FSP を用いて高含水泥土を処理した場合にも,加圧により減容化を図ることができ,さらに,FSP を添加したことによる処理済み泥土の体積増加はわずかであるといえる.図-8 の圧密過程および膨潤過程の曲線の傾きから,それぞれ圧縮指数と膨潤指数を求め,FSP の添加量との関係をまとめた結果を図-9 に示す.図-9 より,FSP の添加量が多くなるにつれて圧縮指数,膨潤指数ともに大きくなり,両者はほぼ線形関係にあることがわかる.図-8, 9 の結果から,母材となる粘土が同じであれば,任意の FSP 添加量について e-logP 曲線を推定することができ,処理泥土の減容化に関する方策を立てるのに役立つものと考えられる.図-10 に,圧密試験から得られた k-logP 曲線(透水係数と載荷重の関係)を示す.同図より,いずれの試料についても載荷重の増加に伴って透水係数が低下することが確認できる.FSP の添加量に着目すると,FSP を 10%添加した試料では,FSP を含まない場合と同様の結果となったのに対し,FSP を 30%添加した試料では,載荷重が小さい条件において透水係数が大きくなる傾向を示した.藤森粘土と FSP の透水性を比較した場合,FSP の透水性がはるかに大きいことが考えられるが,FSP の添加による透水係数の増加は限定的であった.これは,FSP を添加して透水係数が劇的に大きくなるためには,間隙水を排水するために FSP が地盤中に連続して存在し水道を形成する必要があるが,FSP 添加率10%程度では,FSP が連続して水道を形成するまでには至らなかったためであると考えられる.しかしながら,一定量- 375 - の FSP を地盤に添加した際には透水性の向上が期待できる結果となった.以上,圧密試験から得られた圧縮性と透水性に関する結果をコンシステンシー特性の変化と併せて考えると,図-4 に示した組成図より得られた傾向と合致しており,信頼性の高いデータが得らえたといえる.5. おわりに本研究では,粘性土地盤に古紙を微細化加工した微細粉体(Fine Shredded Paper: FSP)を添加した際の材料特性の変化を求めることを目的に,物理試験および力学特性(せん断・圧密)を実施した.本研究により得られた知見は以下の通りである.1)粘性土地盤に FSP を添加することによりコンシステンシー特性が大きく変化する.FSP の添加量が大きくなるにつれて液性指数,液性限界ともに大きくなり,透水性および圧縮性が大きくなる傾向を示す.2)粘性土地盤に FSP を添加することで,高含水状態においても高いせん断強さを有する.また,FSP だけを用いた試料では,粘土と FSP を混合した試料に比べてはるかに高い含水比において同一のせん断強さを発揮しており,特にベーンせん断試験によるせん断特性の評価では FSP の繊維質による補強効果が顕著に表れた.3)粘性土地盤に FSP を添加した試料では,圧密試験の載荷重が小さい場合に大きな間隙比を示すが,載荷重が大きくなると,FSP の添加量によらず同様の間隙比に収束する.したがって,FSP を用いて高含水泥土を処理した場合にも,加圧により減容化を図ることができ,さらに,FSP を添加したことによる処理済み泥土の体積増加はわずかであるといえる.謝辞:本研究の一部は,JSPS 科研費 19H02235 の助成を受けて実施した.また,本研究の実施にあたり,京都大学防災研究所 技術職員の波岸彩子氏,元京都大学大学院修士課程柴田尚紀氏,長谷川元輝氏,Benjamin Lewis 氏,Bonggab Kim氏の協力を得た.ここに記して謝意を表す.参考文献1)福島伸二・北島2)小澤一喜・大橋麻衣子・リン ブーン ケン・越川義功・田中真弓・小野明・石黒和男・池田康博・酒巻克之・谷茂:固化処理したため池底泥土の盛土材への適用性の研究,土木学会論文集 No.666/III-53, 116, pp.99-116, 2000.満・石川典男・川端淳一・吉田健一・鈴木英彰:生態系に配慮した河床堆積物(軟弱地盤)の地盤改良に関する検討,第 12 回環境地盤工学シンポジウム発表論文集,No.9-6, pp.313-316, 2017.3)森雅人・高橋弘・逢坂昭治・堀井清之・片岡勲・石井知征・小谷謙二:故紙破砕物と高分子系改良剤を用いた新しい高含水比泥土リサイクル工法の提案と繊維質固化処理土の強度特性,資源と素材,Vol. 119, pp.155-160,2003.4)古賀千佳嗣・佐藤研一・藤川拓朗:軟弱地盤改良における竹の有効利用法の検討,材料,Vol.65, No.9, pp.18-21, 2017.5)澤村康生・矢野隆夫・相原恵一・西村正幸・木村亮:セルロースを主成分とする微細粉体による高含水泥土の力学特性変化,第 12 回環境地盤工学シンポジウム発表論文集,地盤工学会,No.15-4, pp.505-510, 2017.6)木田翔平・澤村康生・矢野隆夫・木村亮:古紙を原料とする微細粉体を用いた高含水泥土処理における強度と運搬性の変化,第 13 回地盤改良シンポジウム論文集,No.9-3, pp.443-450, 東京都,2018.7)一國雅巳:粘土はなぜ固まるか,化学と教育,43(9), pp. 558-561, 1995.8)Heineck, K. S., Coop, M. R. & Consoli, N. C.: Effect of microrenforement of soils from very small to large shear strains,Journal of Geotechnical and Geoenvironmental Engineering, 131(8), pp.1024-1033, 2005.- 376 -
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  • タイトル
  • Na 型ベントナイトの透水係数に関わる評価指標の調査( 2003 年に報告された試験と、2018 年に試験された結果より考察 )
  • 著者
  • 水野 克己・平野 浩一・岩崎 好規・西垣 誠・嘉門 雅史
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 325〜330
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000058
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)10-2Na 型ベントナイトの透水係数に関わる評価指標の調査( 2003 年に報告された試験と、2018 年に試験された結果より考察 )水野克己 1・○平野浩一 1・岩崎好規 1・西垣誠 2・嘉門 雅史 31 地域地盤環境研究所・2 岡山大学大学院・3 環境地盤工学研究所1. はじめにJIS 規格の無い工業製品のベントナイトは、鉱床ごとの品質の変化や各国の試験方法に違いがある。他国のベントナイト原鉱で日本国内鉱床の代わりとなる利用可能性を判断する基準が現時点で無いことから、統一試験による評価方法と規格化に向けた品質確保につながる方策の確立が急がれている1)2)。水野らは、十数年の歳月をかけて各種ベントナイト3)のコンシステンシー特性およびその他の基礎的特性に関する研究 を行っていることから(以下、2003 年に報告された試験と呼ぶ)、GRI ベントナイト問題研究会(会長 水野克己)では、一次性質の基本的特性である液性限界や塑性限界、一次性質の基本的要素である 1μm 以下のコロイド分含有率などで Na 型ベントナイトの透水係数に関わる評価指標や、利用可能性の調査を行ったので報告する。2. 2003 年に報告された試験試料2003 年に報告された試験試料を説明すると、表-1 に示される S1~S20 のデータは、日本国内産および米国産の Na 型ベントナイトと Ca 型ベントナイト 18 点と、高密度ポリエチレン・ジオメンブレン並びに、粒状ベントナイト層から構成されているジオシンセティッククレイライナー(GM/GCL と略記)から機械的に分離採取したベントナイト 2 点である 3)。GM/GCL ベントナイトについては、約 10%の水溶性有機高分子系接着剤が付着しているが、除去することなくそのまま試料とした。これは、有機物混入の影響を調査するためのものである。2003 年の報告より、収縮比 R と収縮限界における体積比 f0 との関係から、ベントナイト粒子が水溶性有機高分子系接着剤で表面処理されたことによって緻密な粘土集合構造を形成するため、収縮比が大きく収縮限界における体積比が小さいという知見が得られており、2018 年 H1~H17 データでは、有機物質を含む試料は除外している 3)。なお、S-2,S-4~S-6,S-9,S-10,S-14,S-15,S-17 は、遊離シリカとして何れも石英が少なく α-クリストバライトを夾雑しているベントナイトであり、S-1,S-3,S-7,S-8,S-11~S-13,S-16,S-18~S-20 は石英が多く α-クリストバライトが少ない(または不含)ベントナイトであると報告されており、本論では α-クリストバライトなどを夾雑物と定義する。さらに、図-1 に示すように、2μm 以下粘土分および 1μm 以下コロイド分の X 線回折結果からブロードで明瞭なαクリストバライトの反射が認められ、結晶子の小さいアモルファスに近いα-クリストバライトが可溶性の遊離シリカとしてモンモリロナイトとともにコロイド成分となって存在しているものと考えられると報告3)されているが、2018 年の試験ではα-クリストバライトの評価は除外した。3. 2003 年に報告された試験と 2018 年に実施した試験に関する試験方法2003 年に報告された試験では、コンシステンシー限界と基礎的特性の測定を行っている。各試験方法について、2003年に報告された試験(以下、2003 年 S1~S20 データと呼ぶ)および 2018 年に実施した試験(以下、2018 年 H1~H17 データと呼ぶ)における要点を解説する。3.1 コンシステンシー限界コンシステンシー限界は、JIS A 1205 および JIS A 1209 により液性限界,塑性限界,収縮限界における含水比 wL(%),wP(%) , wS(%)を測定した。これらの測定値から定法に従い、塑性指数 IP(%を付記せずに表記)および塑性指数を 2μm 粒径区分含有率(%)で除した比率で表される活性度 A を求めた。なお、液性限界および塑性限界は土の液性限界・塑性限界試験方法 JIS A 1205 に準じたが、液性限界が 200%を越えるような試料で、磨りガラスと透明ガラスのデータを比較すると、試料の粘着力が高く磨りガラスではらつきが大きくなる。このため、値のばらつきが少ない透明ガラスを採用した。3.2 基礎的特性2003 年では、土粒子の密度は溶媒にケロシンを用いたピクノメーター法で実施している。2018 年も同様にケロシンを用いて実施したが値のばらつきが大きかったため、ケロシンではなく蒸留水で泥水化した試料をピクノメーターに投入し測定を行った。土粒子密度の精度は粒度分布に影響するため、密度試験は JIS A 1202 に準じて行ったが、煮沸(脱気)した場合としなかった場合のばらつきを比較した結果、ばらつきが少なかったことから煮沸しなかった値を採用した。また、膨潤性において 2003 年では、日本薬局方ベントナイト試験法 JBAS-104-77 に準じて膨潤力を測定していたが、試験Investigation of evaluation index relating to permeability coefficient of Na type bentoniteMizuno Katsumi1.Hirano Koichi1.Iwasaki Yoshinori1.Nishigaki Makoto2.Kamon Masashi3.Geo Research Institute1.OkayamaUniversity2.Research Institute for Environmental Geotechnics3KEYWORDS: Bentonite, permeability coefficient- 325 - 法に記載の水分 4~10%の範囲では計量する試料の絶対量にばらつきが生じるため、2018 年では 110±5℃で 12 時間炉乾燥後、デシケーターで常温に戻した後計量し試験を開始した。目盛りは 0. 5ml 単位で計測した。粒度分布は、2003 年ではアンドレアゼンピペット(Andreasen Pipette)による粒度測定を行い、粒子の沈降速度は Stokesの式を適用した。水中に粒子を分散させ、その沈降速度の差を利用して粒子の分別をするアンドレアゼンピペットによる粒度測定と、ベントナイト精製工程の湿式分級は同じ原理である。また、アンドレアゼンピペットによる粒度測定と比較するために、2018 年ではイオン交換水分散液と分散剤投入分散液の 2 種類でレーザー回折法による粒度測定を行った。しかし、レーザー回折法による粒度測定では全く相関性が得られなかったため、本論では省略した。アンドレアゼンピペットの各粒度における測定時間は、土粒子の密度 2.58(g/cm3)、水温 25℃とした場合、5μm:1h9min17s、2μm:6h51min23s,1μm:25h58min54s で測定を行った。陽イオン交換容量 (CEC) 及び浸出陽イオンは、2003 年では最も標準的な酢酸アンモニウムを用いるショーレンベルジャー法 8)により CEC を測定した。また、その分析過程で得られる最初の酢酸アンモニウム浸出液中の陽イオンを原子吸光分析法により定量した。従って、浸出陽イオンは試料中に含まれる交換性陽イオンおよび水溶性塩由来の陽イオンの全てを含むが、定量は Na+,K+,Mg2+,Ca2+の 4 元素とした。可溶性シリカ切片値は、還流冷却器を付した三口フラスコ中で 90℃の 1 N-水酸化ナトリウム水溶液 500 ml に試料 5.00 g を投入し、攪拌しながら所定時間間隔で内容液を取り、直ちに遠心分離して上澄液を採取し、モリブデンイエロー法により溶出シリカ(いわゆる比色シリカ)を比色定量した。また、S-10 と S-2 の試料に関しては、図-1 に示すように 2μm 以下粘土分及び 1μm 以下コロイド分の X 線回折を行った。なお、2018 年では陽イオン交換容量 (CEC)については実施せず、新たにメチレンブルー(MB)吸着量を測定し、測定方法は日本ベントナイト工業会標準試験法(スポット法)に準じて行った 4)。表-1ベントナイト試料 20 種のコンシステンシー限界と並びにその他の基礎的特性の測定結果 1〜33)から、土粒子密度、膨潤力、コンシステンシー(液性限界、塑性限界、塑性指数)と、活性度、5μm 以下粘土分含有率,2μm 以下粘土分含有率、並びに 1μm 以下コロイド分含有率と CEC を抜粋(2003 年 S1~S20)3.3 2003 年に報告された試験結果から特定の項目を抜粋した理由表-1 に示す項目は、Na 型ベントナイトの透水係数に関わる評価指標や、利用可能性の調査で重要と考えられる項目を2003 年に報告された試験結果から、恣意的に抜粋したものである。その理由は、ベントナイトによるバリア機能はベントナイトと水のポテンシャルな相互作用に基づいているため、ベントナイトの品質と性能を知るには、ベントナイトの水- 326 - に対する膨潤能を評価することによって達成できる 3)。しかしながら、膨潤能はベントナイトのポテンシャルな特性であることから、その評価方法は絶対的ではなく恣意的であり相対的である 3)4)。また三笠は、「一次性質とはその土に固有な性質である。二次性質とは与えられた条件における性質である。三次性質とは工学的挙動を表す性質」と定義している 5)。「土の力学的性質=F(土の種類;密度,含水量,骨格構造)の式から、コンシステンシー=φ(土の種類;密度,含水量,骨格構造) と書き換えると、(中略)含水量=φ’(土の種類;コンシステンシー) となり、コンシステンシーを一定にするときの含水比は土の種類の関数として一義的に決まり、液性限界(LL)と塑性限界(PL)は一次性質として扱うことができる」と述べている 5)。そこで、表-1 に示すように、土粒子密度、膨潤力、液性限界、塑性限界、塑性指数、活性度、5μm 以下粘土分含有率、2μm 以下粘土分含有率、1μm 以下コロイド分含有率と陽イオン交換容量 (CEC) を評価した。表-2土粒子密度、膨潤力、コンシステンシー(液性限界、塑性限界、塑性指数)と、活性度、5μm,2μm 以下粘土分含有率、並びに 1μm 以下コロイド分含有率(2018 年 H1~H17)3.4 2003 年に報告された試験結果から表-1 に示す項目を抜粋した理由水野らは、2003 年に報告された試験結果から 1μm 以下コロイド分含有率と活性度との関係を図-2 に示している 3)。活性度は、塑性指数 Ip/2μm 以下粘土分含有率として定義されていることから、それは試料粘土中の非粘土質による希釈効果を排除した粘土粒子の水に対する拘束能の尺度となる 5)。表-1 に示す通り、試料ベントナイト S-1~S-20 全範囲の活性度は 2.07(S-18)~8.53(S-11)まで広がっている。GM/GCL ベントナイト S-19(A=5.42)および S-20(A=5.26)と、活性度が異常に高い S-11(A=8.53)を除く回帰直線を 1μm 以下コロイド分含有率について 100%に外挿した活性度は 8.83 であり、ほぼ 9に近い値を示している。このことは、ベントナイト中のコロイド分の 1 質量部が約 9 質量部の水を拘束することを示唆している 3)。ナトリウムイオンに富んだベントナイトでは、モンモリロナイト結晶層間の Na+が周囲の水と結合して水分子層を何重にも発達させ、結晶層間を広げて巨視的な体積膨張すなわちオスモチック膨潤を発現する。モンモリロナイトと水との相互作用によって生成した複合体の水は自由水でなく、その移動は強く拘束される。この作用を水インピーダンス(WaterImpedance)と云い、これがベントナイトの遮水性の源泉である 3)4)。このため、図-3 2003 年 S1~S20 の 1μm 以下コロイド分含有率と塑性指数の関係(S-11 に活性度の値を添付)と、図-4 2018 年 H1~H17 の 1μm 以下コロイド分含有率と塑性指数の関係(H-4~H-9 に活性度の値を添付)の比較を行うことで、Na 型ベントナイトの透水係数に関わる評価指標や、利用可能性の調査に繋がるのではないかと考えた。なお、各試料における活性度の回帰直線からの乖離は、個々のベントナイトの性格として捉え、本論の評価で述べる異常値とはベントナイトの性格による乖離した値を示している。- 327 - 4. 2018 年に試験された評価概要本論では、新たに国内外のベントナイト原鉱、製品ベントナイト、精製ベントナイト(おおよそ 2μm 以下湿式分級)、酸性白土(製品)、カオリン(製品)、笠岡粘土(製品)を入手しデータを整理・評価した。表-2 に 2018 年 H1~H17 データを示す。2018 年では、同一ベントナイト原鉱から製造された製品ベントナイト、精製ベントナイトを比較した。なお、ベントナイトをバリアとして利用する場合、ベントナイト中のモンモリロナイト含有量が重要となる。ベントナイト中のモンモリロナイト含有量は一般的に、モンモリロナイトがメチレンブルーを吸着することを利用し、ベントナイトのメチレンブルー吸着量を測定して見積もる 7)。メチレンブルー吸着量測定は、岩石や土壌中の粘土鉱物の割合を求める方法、あるいは粘土鉱物の比表面積や陽イオン交換容量を評価する手法として古くから行われてきた 7)。このため、2018 年 H1~H17に関しては新たにメチレンブルー吸着量を測定した。図-12μm 粘土分及び 1μm コロイド分の X 線回折結果 3) より引用図-2表-31μm 以下コロイド分含有率と活性度との関係 3) より引用2003 年 S1~S20 データと 2018 年 H1~H17 データより直線回帰計算を行った結果(但し、n=18 は GCL Bentonite を除く S1~S20 までのデータと、n=16 はカオリン(製品) を除く H1~H17 のデータ)- 328 - 図-32003 年 S1~S203)の 1μm 以下コロイド分含有率と塑性指数の関係(S-11 に活性度の値を添付)図-42018 年 H1~H17 の 1μm 以下コロイド分含有率と塑性指数の関係(H-4~H-9 に活性度の値を添付)表-42018 年 H1~H17 の MB 吸着量の測定結果- 329 - 5. 2003 年に報告された試験結果と 2018 年に試験された結果による評価表-3 に 2003 年 S1~S20 データと 2018 年 H1~H17 データより直線回帰計算を行った結果を示す。2003 年 S1~S20 では IP=1.01wL-57.8、2018 年 H1~H17 では IP=0.98wL-24.5 であった。膨潤力および塑性指数では、粒子径が小さくなるに従って相関係数は高くなり 1 に近づいていることから、1μm 以下コロイド分含有率で透水係数に関わる評価方法の一つになる。図-3 と図-4 に 2003 年 S1~S20 と 2018 年 H1~H17 の 1μm 以下コロイド分含有率と塑性指数の関係を示す。この関係図より、1μm 以下コロイド分含有率の増加に伴い活性度も高くなる傾向が見られたが、図-3 2003 年 S1~S20 では S11 クニゲル V1(製品)、図-4 2018 年 H1~H17 では H-7 クニゲル V1(製品)と H-8 クニゲル V1(製品)、H-4 GRI 中国産(原鉱)と H-5 GRI 中国産(製品)の 1μm 以下コロイド分含有率に対する活性度が異常に高い値を示す。しかし、H-6 GRI 中国産(精製品)と H-9 クニピア-F(精製品)に示す様に、1μm 以下コロイド分含有率に対する活性度が他と同様な値を示す(表-2 参照)。前述したように、精製ベントナイトの製造は水中にベントナイト粒子を分散させ、その沈降速度の差を利用してモンモリロナイトと夾雑物などを分別する。このため、夾雑物などが取り除かれたことで活性度が他の試料と同じような値になったことから、活性度に寄与する物質(パイライトなどの夾雑物や有機物)が含まれていた可能性がある。このように、同じ原鉱と製品および精製品を比較することで夾雑物や有機物などの存在の可能性が推察できるようになった。表-4 にメチレンブルー吸着量の結果を示す。メチレンブルー吸着量と膨潤力、液性限界、塑性限界、塑性指数、活性度、これらとの相関性が強い。例として、メチレンブルー吸着量と液性限界の相関性は R2=0.6377 であるが、H-15 酸性白土(製品)を除くと R2=0.919 と強くなる。酸性白土(製品)は、モンモリロナイトと骨格は同じだがナトリウムイオンを持たないため、より顕著に相関性が強くなったと考えられる。このことから、メチレンブルー吸着量も Na 型ベントナイトのモンモリロナイト含有量に関わる評価指標となる。6. まとめ一次性質の基本特性である液性限界および塑性限界、一次性質の基本的要素である 1μm 以下コロイド分含有率で Na 型ベントナイトの透水係数に関わる評価や、利用可能性の判断ができないか調査を行った。その結果、透水係数に関係する塑性指数や膨潤力が 1μm 以下コロイド分含有率と大きく関わる知見が得られた。また、新たにメチレンブルー吸着量もNa 型ベントナイトのモンモリロナイト含有量に関わる評価指標となる知見が得られた。三好らは、ベントナイトのメチレンブルー吸着量試験で、試験方法による結果の相違(ばらつき)について述べており、人為的なばらつきを解決する方法としてメチレンブルー吸着量試験の JIS 法(比色法)を提案している 7)。今後メチレンブルー吸着量試験においては、スポット法だけではなく比色法に準じた評価を検討する予定である。また、2003 年 S1~S20 データと 2018 年 H1~H17 データにおいて、一部のベントナイト原鉱や製品ベントナイトでは特異な活性度を示すものが存在したことから、今後も引き続きメチレンブルー吸着量とともに活性度を注視し、一次性質を基準とした調査を継続して行っていく予定である。ベントナイトなどの非金属鉱床の調査や試料収集や評価の試験は、1980 年代から故 近藤三二氏ら有志のボランティア活動によって調査や試験が行われてきた。特に、膨潤力やコンシステンシー限界、アンドレアゼンピペット(AndreasenPipette)による粒度測定など、高価な装置を用いずに実施できる評価法は世界各地で試験が可能である。GRI ベントナイト問題研究会(会長 水野克己)では、故人の遺志を継承し、また将来にわたり安全・安心の信頼性を担保するために、利害関係者に異存しない運営を目指し、ボランティア活動でこのような調査や試験が可能な有志を募集している。参考文献1)水野克己:JIS 規格がない製品ベントナイトに対する相対的な品質評価(モンモリロナイト含有量による絶対的な品質評価から派生するリスク),地盤工学会,第 12 回環境地盤工学シンポジウム,pp.529-536,20172)関根一郎・雨宮 清・伊藤雅和・寺田賢二:放射性廃棄物処分施設への中国産ベントナイトの利用可能性について,原子力バックエンド研究,Vol.18,No.2,20113)水野克己・近藤三二・嘉門雅史:各種ベントナイトのコンシステンシー特性およびその他の基礎的特性に関する研究,粘土科学,43 巻 1 号,pp.1-13,20034)水野克己・近藤三二:ベントナイトの特性と環境汚染防止分野への応用,土と基礎,Vol.49,No.2,pp.29-32,20015)三笠正人:土の工学的性質の分類とその意義,地盤工学会,土と基礎,Vol.12,No.4,pp.17-34,19646)嘉門雅史・浅川美利:土木学会編・新体系土木工学 16 土の力学(Ⅰ) ~土の分類・物理化学的性質~,技報堂出版,p.43,19887)三好陽子・宮腰久美子・高木哲一:ベントナイトのメチレンブルー吸着量試験,試験方法による結果の相違について,粘土科学,54 巻 2 号,pp.65-73,2016- 330 -
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  • タイトル
  • 界面活性剤によるベントナイトの膨潤圧曲線の実験的解釈と締固め密度向上効果
  • 著者
  • 新納 格・井上 俊・掛水 颯太・植田 真也・斉藤 健太
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 319〜324
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000057
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)10-1界面活性剤によるベントナイトの膨潤圧曲線の実験的解釈と締固め密度向上効果〇新納格・井上俊・掛水颯太・植田真也・斉藤健太(公立大学法人大阪)大阪府立大学工業高等専門学校1.はじめに図-1の上部の膨潤圧曲線モデルに示すように,ベントナイトの膨潤圧曲線には第一ピークと降下点を経由し,再上昇して平衡膨潤圧に至る形状がよく観察される。著者らはこの形状が生じる原因について,単調に増加して平衡状態に至る水和イオンと浸透ポテンシャルによる膨潤圧曲線と,コラプスによる膨潤圧低下を考えてピークを与えたマトリックポテンシャルによる膨潤圧曲線の組合せから検討してきた1)。本研究ではこれを見直し,図に示すようにマトリックポテンシャルが関わる膨潤圧から,コラプスによる膨潤圧低下を分離してピークを取り除き,さらに浸透ポテンシャルでもコラプスによる膨潤圧の低下が生じるとしてこれを独立させる案を示した2)。この案について,界面活性剤水溶液を吸水させた膨潤圧試験から実験的解釈を行い,浸透ポテンシャルによってもコラプスが生じることを示した。さらにこの研究で得られたアニオン性界面活性剤水溶液がコラプスを促す作用に着目し,締固めの補助工法として応用することを考え,ベントナイト・珪砂の混合土の締固め密度の向上効果を検討した結果,最適含水比の乾燥側で締固め密度が向上して一軸圧縮強さが低下することを確認した3)。第一ピーク本研究で考える膨潤圧曲線における膨潤およびコラプスのメカニズムと,実験的解釈のた平衡膨潤圧膨潤圧2.膨潤とコラプスに対する界面活性剤の作用降下点+膨潤圧曲線モデル=+コラプスめの手段とした界面活性剤の作用を述べる。1)膨潤とコラプスのメカニズム図-2に示すように,圧縮したベントナイトマトリックポテンシャルが関わる膨潤圧水和イオンと浸透ポテンシャルによる膨潤圧0経過時間は,積層体およびマクロ粒子と外部水および空コラプスによる膨潤圧の低下気から骨格構造を形成している4)。本研究におけるベントナイトの膨潤には,わずかながら式(1)の負のマトリックポテンシャルがゼロとなって生じるものが含まれるが,大部分はモンモリロナイト単位層間に取り込まれた層間陽イ不飽和領域オン(本研究の場合は主にNa+)が水和して膨飽和領域図-1膨潤圧曲線モデル潤し,式(2)の単位層間と表面電荷の作用の及ばないバルク層のイオン濃度差による浸透ポテンシャルで与えられると考えている5)。𝑃 = −𝜎マクロ粒子(石英等)外部水11 𝜋−𝑑 sin 𝛽 − 𝜎 𝜋𝑑sin𝛽 sin(𝛽 + 𝜃)𝑅𝑅 4(1)ここに,𝑃 :マトリックポテンシャル(式の前半はLaplace圧力,後半積層体空気は線張力,付着力が弱いほど大きく,飽和状態でゼロとなる),𝜎 :液空気体表面張力,𝑅 , 𝑅 :曲率半径,𝑑:粒子直径,𝛽:粒子間の液量に対する角度,𝜃:固液間の接触角。𝑃 = 𝜅T𝜒𝜌 ( )−2𝜌 (∞)モンモリロナイト単位層層間水(2)ここに,𝑃 :浸透ポテンシャル(水和イオンの膨潤自体は含まない。固 体 表 面 間 の 付 着 力 が 弱 い ほ ど 大 き い ), 𝜅 : ボ ル ツ マ ン 定 数図-2ベントナイトの構造The experimental interpretation of the swelling pressure curve of bentonite by surfactant and its effect on compaction densityimprovement・Tadashi Niiro, Shun Inoue, Souta Kakemizu, Shinya Ueda, kenta Saitou( Osaka Prefecture University College)・KEYWORDS: swelling pressure curve, bentonite, surfactant, compaction density- 319 - =1.38066×10-23(J K),T:絶対温度(K),χ:固体表面間距離,∑ 𝜌 (𝜒/2):固体表面間中央部(χ/2)の全イオン濃度(M),∑ 𝜌 (∞):バルク層の全イオン濃度(M), 𝑖:イオン種別。一般にコラプスとは,吸水などで式(1)の負のマトリックポテンシャルがゼロとなり,保たれていた骨格構造が崩れて間隙が収縮し,体積圧縮を生じる現象とされている。本研究のコラプスはこれに加えて,モンモリロナイト単位層表面は化学結合を作らないために剥離が生じやすいことに着目し,式(2)の水和イオンや浸透ポテンシャルによる膨潤圧の上昇が骨格構造の崩壊を促してコラプスを生じ易くしていると考えている6)。2)界面活性剤の作用表-1に蒸留水の場合と比較した界面活性剤の作用を示す7)。図-3に示すように界面活性剤は電荷を有する親水基と疎水基からなる。本研究では圧縮したベントナイトに対する作用として,①表面張力低下,②固体表面への吸着,③固体表面間のイオン濃度上昇および④水和イオンへの吸着を考えている。この中の①表面張力低下は,界面活性剤のイオン性に関わらず,式(1)から表-1のマトリックポテンシャルを大きくして,膨潤を促してコラプスを生じ易くする。②固体表面への吸着は,負電荷の固体表面にカチオン性界面活性剤が吸着し,親水性のベントナイトを疎水性へと変化させる。この疎水化が膨潤に与える作用は不明な点が多いため考慮していない。③固体表面間のイオン濃度上昇は,式(2)から表-1の浸透ポテンシャルを大きくして膨潤を促し,コラプスを生じ易くする。ただし,固体表面積は十分に広いため,カチオン性界面活性剤は固体表面に吸着されて,固体表面間のイオン濃度の上昇量は少ないとした。④水和イオンへの吸着は,表-1の水和イオンの拡大を生じる。Na+などにアニオン性界面活性剤が吸着するとしている5)。図-3にモンモリロナイト単位層などへの界面活性剤の吸着モデルを示す。左側のカチオン性界面活性剤水溶液を吸水させた場合,単位層表面に電気的引力で親水基が吸着して親水性のベントナイトを疎水性に変える。吸着面は十分に広いために単位層間のイオン濃度の上昇量は少なく,バルク層とのイオン濃度差は大きくは変わらないため,式(2)の浸透ポテンシャルへの影響は小さい。蒸留水の場合との比較は,表面張力低下でマトリックポテンシャルが大きくなり膨潤とコラプスが表-1生じ易くなった影響をベントナイトに対する界面活性剤の作用不飽和界面活性剤マトリックポテンシャル水溶液膨潤コラプス与える。同様に中央の非イオン性の不飽和・飽和浸透ポテンシャル膨潤水和イオンの拡大コラプスカチオン性なしなし表 面張 力が 表 面 張 力 が非イオン性 小 さ い ほ ど 小 さ い ほ ど 固体表面間のイ 固体表面 間のし易くなる 発生し易い オン濃度が高い イオン濃 度がアニオン性ほど大きい高いほど発生場合,イオン性を有しないために層間水や外部膨潤コラプスなしなしなしなしあり生じる備考:蒸留水の場合をゼロ基準としてその影響を比較した。「なし」は小さいを含む。水に界面活性剤は分散-+Na+固体表 面+Na+カチオン性界面活性剤ーーーーNa+-非イオン性界面活性剤図-3固体表 面-Na++-界面活性剤の吸着モデル- 320 --Na+ー水和イオンNa+-ーー固体表 面+Na+ー-ーーーーNa+ー--ーー水分子+ー-拡大した水和イオン負の電荷ー親水基 疎水基 界面活性剤アニオン性界面活性剤 し,単位層間のイオン濃度が上昇する。そのためバルク層とのイオン濃度差が拡がり,浸透ポテンシャルが大きくなる。同程度の表面張力のカチオン性界面活性剤水溶液の場合との比較は,浸透ポテンシャルが大きくなって膨潤とコラプスが生じ易くなった影響を与えることになる。同様に右側のアニオン性の場合,層間イオンのNa+などに電気的引力で親水基が付着し,水和イオンが拡大して膨潤そのものを大きくする。単位層間のイオン濃度上昇量が非イオン性と同程度とすれば,同程度の表面張力の非イオン性界面活性剤水溶液の場合との比較から,単位層の剥離が促されコラプスを生じ易くなった影響について考察することができる。3.実験方法1)土質試料および水溶液の性質表-2に実験ケース一覧を示す。各実験ケースの供試体名称はその性状から規則的に名称を与えている。膨潤圧試験で使用した土質試料は,Na型ベントナイトのクニゲルV1-RW(Lot.324) である。実験条件を統一するために110℃で20時間程度炉乾燥した後で含水比調整を行った。締固め試験および一軸圧縮試験の土質試料は膨潤圧試験と同じベントナイト70%と珪砂7号30%の混合土である。現在想定されている高レベル放射性廃棄物処分における緩衝材仕様から1),一軸圧縮試験供試体の目標乾燥密度は1.6Mg/m3(含水比15%)に設定した。水溶液は蒸留水(電気伝導率0.01~0.1 mS/m)と花王製の生分解性が高い界面活性剤を使用した。非イオン性界面活性剤はエマルゲンLS-106(液体表面張力29.5mN/m)とエマルゲン150(同50.0mN/m)、カチオン性はコータミン24P,アニオン性はぺレックスOT-Pである。水溶液濃度は0.5質量%表-2検討項目実験ケース一覧吸水前または実験前供試体名称 注1)1.6Non[29.5]0.5P1.6Non[50.0]0.5P1.6Ani[27.0]0.5P膨潤圧曲線 1.6Cat[36.7]0.5P1.6W( w =0%)[72.5]Pの形状1.6W(w =11.1%)P1.6W(w =16.1%)P1.6W(w =23.0%)P1.6WP(960分)1.6WP(1740分)1.6WP(2940分)飽和度の変1.6WP(5520分)化1.6WP(6120分)1.6WP(8520分)1.6WP(10800分)第一ピーク 降下点膨潤圧膨潤圧(kPa)(kPa)含水比乾燥密度ρ d(Mg/m 3) w (%) 注2)1.5250.0950.3660.31.5360.0766.4569.41.5390.0518.5419.51.5720.01042.3754.41.6160.01170.3780.61.58711.1(47.0)1033.8927.71.61816.1(66.8)1.60923.0(94.2)1.5970.01.5840.0供 試 体 名 称 の( )は1.5930.0吸 水 開 始 か ら飽 和度1.5750.0測 定 ま で の 経過 時間1.5640.0を示す。1.5610.01.5840.0平衡状態 注3)膨潤圧(kPa)800.4722.6553.9918.5934.81090.41040.5870.01058.2825.1781.6940.8842.8947.9927.7飽和度S r(%)101.5109.8123.0106.7108.5108.4103.5105.561.773.693.4105.1103.4107.5106.6注1:名称は圧縮成型時の目標乾燥密度(Mg/m3),吸水液体の種類(Non=非イオン性界面活性剤水溶液,Ani=アニオン性界面活性剤,Cat=カチオン性界面活性剤,W=蒸留水),(吸水前の含水比),[水 温25℃付 近の 表面 張力値(mN/m)],水溶液濃度(質量%),P=プラス チッ クフ ィル ター 使用 の順 で, 選択 して 記載 して いる 。注2:( )は飽和度(%)を示す。注3:飽和度変化の膨潤圧は,その経過時間における膨潤圧を示す。S5kBe7-W[72.5]S5kBe7-NaCl0.3締 固 め効 S5kBe7-Na 2S 2O 30.3S5kBe7-Non[29.5]0.5果注4)S5kBe7-Ani[27.0]0.5S5kBe7-Cat[36.7]0.5U1.6Be7-W[72.5]U1.6Be7-NaCl0.3一 軸 圧 縮 U1.6Be7-Na S O 0.32 2 3強さqu注5) U1.6Be7-Non[29.5]0.5U1.6Be7-Ani[27.0]0.5U1.6Be7-Cat[36.7]0.5注4:S5kは締固め荷重5kN,Be7はベントナイト70%と珪砂 7号 30%の混合土,NaCl0.3は塩化ナトリウム水溶液 (濃 度0.3M) ,Na2S 2O 30.3はチオ硫酸ナトリウム水溶液(濃度0.3M)を示す。注 5:U1.6は 一軸圧縮試験,供試体成型時の目標乾燥 密度 1.6Mg/m 3を 示す 。含 水比は実験後の値。q uは一軸圧縮強さ,E 50は変数係数を示す。1.5901.6201.6401.6901.7101.61014.915.214.814.915.114.2- 321 -E 50=6.58MN/m 23.864.224.183.755.42q u=743.22kN/m 2495.15529.15584.16449.57638.53 である。また,比較参考として,過去の研究1)で蒸留水に比べて平衡膨潤圧が低下したNaClと無機アニオンのNa2S2O3を濃度0.3Mの水溶液で使用した。2)膨潤圧試験の方法使用した図-4の膨潤圧試験器は供試体リングが固定された拘束型である。変形性が小さいため正確な膨潤圧が測定できるとされている。上面加圧型の圧縮成型器を用いて,粉状または粒状のベントナイトを圧縮速度1mm/分程度で供試体リング内に圧縮して作製した。下部排水経路から約15kPaの背圧で脱気した蒸留水や水溶液を吸水させ上部排水経路は大気開放し,膨潤圧の時間変化を測定した。平衡膨潤圧は式(3)の条件を満足する場合の式(4)の移動平均MSiと定義している8)。|(𝑀𝑆 − 𝑀𝑆𝑀𝑆𝑀𝑆 =)|× 100 < 0.212𝐾 + 1(3)𝑆(4)ここに,𝑀𝑆 :𝑖番目の膨潤圧の移動平均(kPa),𝑆 : 𝑖番目の膨潤圧図-4膨潤圧試験器の概要(kPa),𝐾:𝑖番目前後のデータ数で2を採用した。荷重計3)締固め試験および一軸圧縮試験の方法図-5に締固め試験器を示す。非繰返し法で行い,110℃で20時間程度炉乾燥したピストン試料100gを噴霧器で加水し,2mmふるいで裏ごしして粒状化し,自由落下法で内径50mmの鋼鉄製モールドに入れて,速度2mm/min最大荷重5kNで静的に締固めた。一軸圧縮試験の供試体は締固め試験と同様な方法で含水比15%に調整した土質試料を用いて,内径50mm高さ10cmの鋼鉄製モールドを用いて目標乾燥密度1.6Mg/m3で圧縮し140mmて作製した。載荷試験の圧縮載荷速度は0.2mm/minである9)。モールド50mm土質試料4.実験結果と考察圧縮方向1)膨潤圧曲線の実験的解釈について図-6に乾燥密度約1.6Mg/m3で吸水前の初期含水比が異なる場合の膨潤圧と飽和図-5締固め試験器の概要下点付近で飽和度100%に到達していることがわかる。このことから飽和状態でゼロとなる式(1)のマトリックポテンシャルの変化は,降下点付近までで終了していることになる。さらに,初期含水比0%と11.1%の膨潤圧曲線には1.5飽和度降下点飽和度Sr=100%第一ピークと降下点が認められるが,16.1%れがない。初期含水比23%は飽和度が高いた0.5100801(飽和度66.8%)と23.0%(飽和度94.2%)にこ1201.6W(w=0%)P1.6W(w=11.1%)P6040め,マトリックポテンシャルはゼロに近い状態から吸水しており,コラプスを促す作用は小さいと考えれば,第一ピークと降下点の発生にはマトリックポテンシャルとこれによる膨潤とコラプスが大きく影響していると推察00.0できる。さらに,図-7は界面活性剤水溶液を吸水させた場合の膨潤圧曲線で全ての初期含水図-6- 322 -1.6W(w=16.1%)P1.6W(w=23.0%)P5.020010.0経過時間 t(千分)初期含水比が異なる膨潤圧曲線と飽和度の関係飽和度Sr(%)の膨潤圧曲線と飽和度変化を比較すると,降膨潤圧(MPa)度変化を示す。同じ供試体仕様の1.6W(w=0%)P 比は0%である。図より水溶液種類に関わらず第一ピークと降下点が現れており,この結果は上記の考察を補強している。図 -7 に つ い て , 第 2 章 の 2) の 界 面 活 性 剤 の 作 用 に 基 づ い て 考 察 す る 。 ま ず , カ チ オ ン 性 界 面 活 性 剤 水 溶 液(1.6Cat[36.7]0.5P)と蒸留水(1.6W(w=0%)[72.5]P)を比較する。全体に曲線の形状は似ており,降下点付近までの不飽和領域でカチオン性の膨潤圧は蒸留水のそれを下回るが,平衡膨潤圧の大きさは同程度である。これは表面張力72.5mN/mの蒸留水に比べて水溶液の表面張力は36.7mN/mと低いことから,式(1)のマトリックポテンシャルが大きくなって膨潤とコラプスを生じ易くなった影響を示している。次に表面張力が異なる非イオン性界面活性剤2種類の水溶液(1.6Non[29.5]0.5Pと[50.0])と蒸留水を比較する。曲線全体にわたって非イオン性は蒸留水を下回るが,式(1)の液体表面張力が小さいほどマトリックポテンシャルは大きくなって膨潤とコラプスを生じ易くするという考えにおいて,水溶液の表面張力29.5mN/mと50.0mN/mの膨潤圧の大小関係は逆転している。このことはこの程度の液体表面張力差ではマトリックポテンシャルが大きくなって膨潤とコラプスを生じ易くなる作用よりも,固体表面間のイオン濃度上昇で浸透ポテンシャルが大きくなって同様な作用が生じ易くなるバラツキの影響が大きいことを示している。次にカチオン性と同程度の表面張力29.5mN/mの非イオン性を比べると,マトリックポテンシャルの変化が終了した蒸留水の降下点付近以降から,両者の差は広がる傾向が確認できる。これは浸透ポテンシャルが大きくなって膨潤とコラプスが生じていることを示している。アニオン性(Ani[27.0])と同程度の表面張力29.5mN/mの非イオン性を比べると,全体にアニオン性の膨潤圧が低いことがわかる。マトリックポテ程度とすれば,水和イオンにアニオン性界面活性剤が吸着して大きくなり,膨潤圧が大きくなって単位層の剥離が促されて大きなコラプスを生じたと考える。2)締固め密度向上効果について膨潤圧(MPa)ンシャルおよぶ浸透ポテンシャルの作用が同1.6W(w=0%)[72.5]P1.6Cat[36.7]0.5P1.51.6Non[29.5]0.5P1.0わが国で計画されている高レベル放射性廃Non[50.0]棄物処分の緩衝材は,乾燥密度1.6Mg/m3のベ0.5ントナイト・珪砂の混合土が予定されているAni[27.0]3が,標準プロクター仕事量550kJ/m ではこのデータラベルの一部は表-2の供試体名称の共通項目を省略して記載している乾燥密度には到達できない9)。図-7の膨潤圧0.0曲線から,アニオン性界面活性剤水溶液を添0.0加すると水和イオンが拡大して単位層の剥離5.0を促し,大きなコラプスを生じる可能性が示10.0経過時間 t(千分)されたが,これを締固めの補助工法として応用できればベントナイトの締固め密度の向上図-7界面活性剤水溶液を吸水させた膨潤圧曲線が期待できる。験結果を示す。比較参考として過去の研究1)で膨潤圧低下が確認されたNaCl水溶液と無機アニオンのNa2S2O3水溶液を加えている。アニオン 性 界 面 活 性 剤 水 溶 液 ( S5kBe7Ani[27.0]0.5)は,他と比べて最適含水比の乾燥側で乾燥密度が高いことがわかる。アニオン性界面活性剤が水和イオンに吸着してその乾燥密度ρd(Mg/m3)そこで,図-8に土質試料や締固め荷重は同じで,水溶液の種類を変えた場合の締固め試1.8S5kBe7-Ani[27.0]0.51.7Cat[36.7]1.6S5kBe7-W[72.5]Non[29.5]NaCl1.5大きさを拡大して単位層の剥離を促すため,土粒子の再配列が容易となったためと考察する 。 NaCl 水 溶 液 と Na2S2O3 水 溶 液 は 蒸 留 水1.4(S5kBe7-W[72.5])と同傾向の締固め曲線となったが,図-9の供試体と同じ含水比15&付近では蒸留水の乾燥密度を上回っている。Na2S2O31.30単位層の剥離を促すという作用は,土粒子間の付着力が低下していることを示している10)図-8。図-9に目標含水比15%・乾燥密度1.6Mg/m3- 323 -データラベルの一部は表-2の供試体名称の共通項目を省略して記載している102030含水比w(%)加水した水溶液が異なる締固め試験結果の比較 す。図に示すように,蒸留水に比べてカチオン性,非イオン性およびアニオン性の順で一軸圧縮強さが低下した。この順序は図-7の膨潤圧曲線の膨潤圧の大小関係と一致している。また,図-8の含水比15%付近において,蒸留水の場合に比べて締固め密度が大きい傾向が認められたNaCl水溶液とNa2S2O3水溶液も同様に低下している。なお,本研究で使用した界面活性剤は生分解性が高いため,地表部では時間経過とともに生分解して消滅し,土の圧縮応力σ(kN/m2)で圧縮成形した場合の一軸圧縮試験結果を示800W[72.5]700U1.6Be7-Non[29.5]0.5600NaClNa2S2O3500400300200U1.6Be7-Ani[27.0]0.5100強度は回復することを付記する10)。データラベルの一部は表-2の供試体名称の共通項目を省略して記載している05.おわりに膨潤圧曲線の実験的解釈を行い,浸透ポテU1.6Be7-Cat[36.7]0.50.01.02.0ンシャルでもコラプスが生じていることを示した。さらに,アニオン性界面活性剤水溶液図-93.04.05.0鉛直ひずみε(%)水溶液が異なる一軸圧縮試験結果の比較によるベントナイト・珪砂混合土の締固め密度向上効果を検討し,最適含水比の乾燥側で締固め密度が向上し,一軸圧縮強さが低下することを確認した。一般に粘性土は不飽和状態での式(1)と式(2)を合わせた化学ポテンシャルが強いことなどから,砂質土と比較して締固め難い土とされているが,粘土分が多い土の締固め性が改善されれば,未利用土の有効利用の点から意義あることから,このような粘性土の締固め性を改善する補助工法としての可能性を検討したいと考えている。参考文献1)新納格・井上博之・吉田武・井上俊・掛水颯太・福井克也・平山政義:塩化鉄水溶液および塩化銅水溶液がベントナイトの膨潤圧特性に与える影響,第12回環境地盤工学シンポジウム発表論文集,p.561-566,平成29年9月25日.2)崔紅斌・孫徳安・松岡元・徐永福:ベントナイトと砂との混合材の一次元的な浸水変形特性,土木学会論文集,No.764/Ⅲ-67,pp.275-285,2004.3)新納格・正田要一・蒋建群・栗林栄一:非イオン性界面活性剤による表面張力低下の不飽和土の締固めに与える影響,土木学会論文集,No.582/Ⅲ-41,pp.265-274,1997.4)藤井直樹・市川康明:圧縮ベントナイト中の表面拡散現象に関する均質化解析,応用力学論文集,Vol.9,pp.323332,2006年8月.5)J.N.イスラエルアチヴィリ(近藤 保,大島広行訳):分子間力と表面力第二版,朝倉書店,pp.205-325,1997.6)植田晃平・新枦雄介・名和豊春:分子間力を考慮したモンモリロナイトの膨潤モデルの構築,セメント・コンクリート論文集,Vol.68,pp.537-544,2014.7)阿部幸子・妹尾学:陰イオン界面活性剤の粘土への吸着性,日本化学会誌,No.5,pp.820-825,1985.8)田中幸久:ベントナイトの吸水膨潤モデルによる膨潤圧試験における試験条件の影響評価,土木学会論文集C(地圏工学),Vol.67,No.4,pp.513-531,2011.9)増田良一・雨宮清・千々松正和・足立格一郎・小峰秀雄:ベントナイトを用いた緩衝材の材料仕様と締固め特性の関係,土木学会論文集,No.771/Ⅲ-68,pp.157-171,2004.10)新納格・蒋建群・栗林栄一:非塑性の細粒分を含む土の締固め法,土木学会論文集,No.631/Ⅲ-48,pp.33-48,1999.- 324 -
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  • タイトル
  • 2018 年4 月大分県中津市耶馬溪町にて発生した大規模山腹崩壊に関する一考察
  • 著者
  • 山本 健太郎・立石 義孝
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 311〜318
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000056
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)9-62018 年 4 月大分県中津市耶馬溪町にて発生した大規模山腹崩壊に関する一考察○山本健太郎 1・立石1義孝 2西日本工業大学工学部・2 西日本工業大学地盤工学研究所1. はじめに2018 年 4 月 11 日午前 3 時 40 分頃,大分県中津市耶馬溪町金吉で住宅の裏山がおよそ幅 200m,高さ 100m にわたって突然崩落し,民家 4 棟が巻き込まれ 3 世帯 6 名が犠牲になった。今回の崩壊現象の特徴は,崩落直前の一般的な誘因である先行降雨や大きな地震等がない中で発生しており崩壊誘因等が不明である。このような崩壊のプロセスやメカニズムについての究明が求められている1), 2)。本論文の構成は最初に崩壊状況と崩壊した凝灰質地盤の特徴について,続いて耶馬溪町金吉地区大規模山腹崩壊原因に関して各報告書の見解を踏まえて,問題点等の考察を加えた。次に,今回の大規模山腹崩壊は山頂部の溶結凝灰岩盤の剥離崩落に起因する凝灰質土石地盤による崖錐性堆積物の大規模崩壊として捉え,我々が提唱する素因と誘因の複合における持続的・加速的要因の複合説を解説する。また,本地域における凝灰質角礫岩や未固結の凝灰質土石からなる崖錐性堆積物は,通常の粘性土や砂質土の地盤と性状が大きく異なる特殊性を理解することが,今回の崩壊要因(素因と誘因)を解明する上で重要と考えられる。2. 崩壊状況と凝灰質地盤の特徴写真-1 は予兆もなく崩壊した山腹の状況であり,杉の植林が密集し急斜面が深くえぐれ,斜面が長さ約 200m,幅約 200m,高さ約 100m,崩落層の深さは約 20m にわたっている。写真-2 は溶結凝灰岩の露頭一部に開口性の亀裂や節理が発達しており,経年変化による劣化を生じている。溶結凝灰岩は地層の累重条件と,岩盤中に溶結構造(ガラス質)の違いにより固結度が異なる。一般に崖錐性堆積物の岩塊類は,山頂斜面からの移動距離が短いので,角張った岩塊や風化転石類で形成される。そのため空隙が多くルーズな状態が特徴で透水性が高く,堆積し写真-1 耶馬渓町金吉の山崩れた層厚などの状況により宙水が形成される。このように凝灰(2018 年 4 月 11 日 11 時撮影)質地盤や未固結の凝灰質土石の崖錐性堆積物は,通常の粘性土や砂質土とは性状が大きく異なる特殊性を有する。写真-3 では,落石した土石堆積物の中に転石や倒木を巻き込んでおり,岩塊の大きさは 3m 四方から幅 10m を超えるものが見られる。写真-4 の崩壊先端部には,岩塊破断面の鮮度が高い多量の巨岩を含む土石が近くを流れる金吉川まで達しており,崩落した巨岩・転石を含む土石量は約 10 万 m3 以上と推定されている 3)。写真-2 溶結凝灰岩層の累重状況写真-3 崩壊部先端の巨大溶結凝灰岩の転石写真-4 金吉川に達した崩壊部先端の巨岩A discussion on the process of a large-scale rock fall in Kanayoshi, Yabakeimachi, Nakatsu, Oita on April in 2018Kentaro Yamamoto1, Yoshitaka Tateishi2(1Nishinippon Institute of Technology, 2Nishinippon Institute of Technology, Geotechnical Engineering Research Institute)KEY WORDS: Hillside rock fall, Tuffaceous ground, Volcanic and sedimentary complex, Slope disaster Prevention- 311 - 3. 凝灰質岩盤等における岩盤崩壊の適用一般的に,岩盤等における斜面崩壊の原因とみなされる因子に「素因」と「誘因」がある。素因は斜面を構成する物質の性質およびその状態であり,地質的要因と地形的要因に大別され,植生条件なども含められる。誘因はこれら地質的要因や地形的要因に影響を及ぼす外的条件に関する降雨・地震・融雪・火山活動・地形改変などである。これらは経年的影響による劣化と捉えることもでき,崩壊直前に作用した外的因子のみを取り上げると,崩壊メカニズムの多面性を見落とすことになる。このため崩壊を引き起こす要因を「持続的要因」と「加速的要因」とし,図-1にそのフロー例 4)を示す。持続的要因とは,岩盤等に対して常に作用している要因で,斜面内に生じている引張力,せん断力,圧縮力や物理的・化学的風化などが該当し,不連続図-1 岩盤崩壊例のフロー面を開口させたり岩盤等を劣化させたりする作用力である。加速的要因は,崩壊の引き金となる要因であるが,基本的には持続的要因と同様の作用力であり,地震や降水・融雪水に起因する間隙水圧の増加などで,さらに人為(人工)的要因による土木工事などである。このような考えに基づき凝灰質岩盤の崩壊も,岩盤等に対する各種作用力が崩壊の素因を醸成し,経年変化とともに変形や崩壊を始める直前の状態に達し,同様な作用力がさらに働いて,力学的バランスを保つための変位・変形量の閾値を超えたときに発生する。4. 耶馬溪町金吉地区大規模山腹崩壊の諸説崩壊した地域の大分県中津市耶馬溪町では 4 月に入ってから,まとまった雨は降っていない。大分地方気象台によると崩壊があった中津市耶馬溪町のアメダスの観測地点で,降雨があったのは約 3 週間前の 3 月 19~21 日で,計約 70mmを観測して以後降雨はなく,4 月 10 日までの 1 週間は 6 日に 4.5mm,7 日に 1.5mm の降雨が観測されたものの,8~10日までの 3 日間は 0.5mm の降雨しか観測されていない。このような降雨状況,地下水の影響や火山性の固い地盤の風化など複数の崩壊要因が指摘された。これらは以下の 4.1 地下水(間隙水圧)上昇説,4.2 地質体脆弱化説,4.3 地盤劣化説のようにまとめられる。4.1 耶馬溪町金吉地区山地崩壊原因究明等検討委員会 3),5)【地下水(間隙水圧)上昇説】下部地山の凝灰角礫岩の上に,数千年前に大規模崩落した堆積土砂層との境界付近がすべり面となり,堆積土砂層の付近の層は水が広範囲から豊富に集まる仕組みで大きな水圧が発生し,地下水の上昇などで滑り落ちた。崩壊現場は地下水が集中する場所で,岩盤の粘土化も重なって崩壊した。すべり面となった凝灰角礫岩の岩盤の表層部付近はスメクタイトを有する劣化した粘土で滑り易くなっていたとの見解を示した。図-2 には耶馬溪山崩れの発生状況のイメージ図を示す。なお,本委員会の最終報告書である大分県森林保全課:H30 森保第 1 号梶ヶ原地区調査測量設計委託業務(大分県中津市耶馬溪町大字金吉字梶ヶ原)報告書 5) では,崩壊現象のメカニズムを図-3 のように総括している。4.2 地盤工学会調査報告 6)【地質体脆弱化説】本報告書は,上記の耶馬溪町金吉地区山地崩壊原因究明等検討委員会の中間報告の基になっており,多岐にわたり綿密に地盤工学的調査・試験等がなされている。溶結凝灰岩がキャップロック構造を持っていて雨水を貯留し,下位の地層を風化変質させる役割を果たし,強度がある閾値より弱図-2 耶馬溪山崩れの発生状況 3)くなると下位層が破壊し,それに引きずられて溶- 312 - 斜面上方より深層地下水が流入↓変質凝灰角礫岩上面の凹部に地下水が集中↓すべり面直下の変質凝灰角礫岩のスメクタイト化が進行↓すべり面の土質強度の低下(斜面の安定性が極限状態へ)↓土質強度の更なる低下もしくは末端の侵食・小崩壊↓斜面上方の地下水位上昇に伴う地下水供給量の増加等が複合して,先行降雨が無い状態で突発的なすべりが発生図-3 崩壊発生機構のフロー結凝灰岩急崖が崩落するという現象である。今回の場合は下位の耶馬渓層と呼ばれる堆積岩類が何らかの条件で脆弱化して深いすべりを発生させ,斜面に堆積していた溶結凝灰岩の岩塊を主体とする落石堆を崩落させたものである。その何らかの条件の中に溶結凝灰岩のキャップロック構造と,その雨水の貯留が関係しているものと考えている。また,火砕流台地縁辺部が抱える問題として,溶結凝灰岩の侵食によって下位層が除荷作用によって風化変質が助長されるということを挙げている。今回の崩壊でも斜面表面に近い耶馬渓層全体が脆弱化していた可能性も考えている。発災時の変状状態からは比較的深い地すべりが上部斜面で図-4 崩壊地の模式断面図 6)発生したとしている。図-4 に崩壊地の模式断面図を示す。4.3 大分県中津市耶馬溪町金吉大規模斜面崩壊調査報告 7)(国土交通省九州地方整備局)【地盤劣化説】崩壊斜面途中から湧水が見られることから,この付近に凝灰岩と安山岩等の地質境界が存在する可能性があるとしている。また崩壊地周辺の斜面に見られる露岩部は亀裂が発達しており,透水性が高いと考えられることから,地中への雨水の浸透を容易にし,風化を促進したと考えている。このような風化の進行や節理などが発達した脆弱な地質構造が崩壊発生の主たる要因になっている。 崩壊発生要因の推測として,①斜面内部において,節理の発達や風化の進行により,強度が低下した溶結凝灰岩および安山岩などが崩壊した考えである。この事は崩土堆積中に大きな岩塊が大量に含まれることから推察される。さらに,斜面上の厚い風化層や崖錐堆積物を伴うことにより,崩壊の規模を大きくした可能性が高いとしている。なお,基岩と崖錐堆積物の境界を不透水層として崖錐堆積物のみが崩壊したケースについては,このような崩壊を引き起こすほど地下水位が高い状態で図-5 崩壊のイメージ 7)あったとは考えられず,可能性は低いと考えられている。- 313 - ②基岩中から湧水を確認しているが,直近の降雨 4 月 6~7 日の総雨量は約 6mm 程度であり,直近の降雨が崩壊を引き起こすほどの地下水の上昇は考えられず,誘因としての影響は小さいと考えている。地下水の影響としては,風化を促進させるなど,崩壊を助長する素因として作用したと考えられ,図-5 に崩壊のイメージ図を示す。5. 素因と誘因の複合型による山腹崩壊5. 1 各報告書の考察等について地下水(間隙水圧)上昇説では数千年前に大規模崩落した堆積土砂層が,地下水の上昇(間隙水圧)と風化による劣化等が要因であるとしているが,今回,地下水が上昇した原因は解明されていない。地下水(間隙水圧)上昇説が指摘するような地質体および地盤構造であれば,過去直近での二度の記録的な豪雨に見舞われながら崩壊に至らなったのか自然科学的にも疑問の余地がある。図-6 に平成 24 年(2012 年)7 月 3 日と同年 7 月 14 日の雨量レーダーと線状降水帯の状況を示す。図-7 は 7 月 3~4 日に大分県西部,福岡県筑後地方,熊本県阿蘇地方における九州北部を中心とした集中豪雨時のアメダス降水量時系列図である。特に,7 月 3 日(6:00 ~ 9:00)は,耶馬溪町金吉に累計 3 時間最大雨量205mm の観測史上最大の記録である 8)。また,平成 29 年(2017 年)7 月 5~6 日の大分県と福岡県を中心とする九州北部で発生した集中豪雨にも見舞われている。ここ数年において局地的降雨量が多く,地下水上昇に伴う間隙水圧の上昇が最も高い時期と考えられるが,崩壊地では当時,斜面変動の兆候は現れてない。これらのことから,自然科学的見地からも地下水(間隙水圧)上昇説には妥当性が欠けると考えられる。図-6 2012 年 7 月 3 日と 7 月 14 日の雨量レーダー図-7 2012 年 7 月 3~4 日のアメダス降水量時系列図さらに,本報告書の地層図に水中堆積物との表記がなされているが,これは水性堆積物と考えられる。本地域の地質年代の層序から湖沼等の存在は不明確である。地質体脆弱化説での調査報告書では地質学的に下記の問題点が指摘される。1) 20 万分の 1 地質図幅「中津」産業技術総合研究所地質総合センター(2009 年 10 月 2 日発行)の新版でなく,旧版の「大分県の地質図の層序」(1972 年)を用いて説明がなされている。その結果,写真-5 の耶馬渓層を火山休止期の堆積層(凝灰質砂,シルト,軽石)である湖沼堆積物とする層として説明されている。現在,地質学上位置づけられていない。湖沼等の存在は不明確であり,湖沼堆積物が存在すると累重条件により固結度が異なる。- 314 - 2) 耶馬渓層は噴火供給源が不明で,宇佐層群と耶馬渓層が互いに類似した岩相変化を繰り返していること,変質の違いは時代区分を反映していないことから地質用語としては使われていない。耶馬渓層というのは,大分県北部の耶馬渓地域を中心とする地域に広がるやや成層した火山砕屑岩類に対して命名された地層名で,これらは複数の異なる時代に堆積した地層群である9)ことが判明したため現在では使用されていない 。非溶結部古期崖錐堆積物3) 条件付であるが耶馬渓層全体を「すべり粘土」と仮定した円弧滑りで試算をしているが,巨岩・巨礫等を含む崖錐堆積物に耶馬溪層適応することの妥当性に疑問(強度定数や滑り面の仮定)が残る。地盤劣化説では崩壊前に地下水が急増するほどの降雨はなく,直接的な原因とは考え難い。現場では写真-6 の崩壊中腹部付近に地下水も僅かに 1 箇所のみ流れ出ているが,今回のような大写真-5 崩壊上部の耶馬渓層 6)規模山腹崩壊を起因させるほどの地下水量とは考え難い。また,地下水が原因の場合は崖錐性堆積物が長い距離に到達し,ぬかるみ状況を呈するが,その傾向は見受けられない状態である(写真-7,8 参照)。大雨で地下水が上昇し土石の強度が低下することがあるが,凝灰質地盤や凝灰質土石の崖錐性堆積物は,通常の粘性土等とはその性状が大きく異なり,何日か前に降った雨で大崩壊を引き起こすことはない。写真-7 崩壊土石類の堆積状況を上流側より撮影 (1)写真-6 崩壊中腹部付近の僅かな地下水湧出状況(2018 年 4 月 11 日 11 時撮影)写真-8 崩壊土石類の堆積状況 を下流側より撮影(2)5. 2 直近での耶馬渓地域の崩壊現象ここ数年,耶馬溪の周辺地域では先行降雨や大きな地震等がない状況下にて,耶馬渓溶結凝灰岩による相次ぐ崩壊が生じている。2016 年 4 月頃に耶馬溪町深耶馬の道路沿いの約 100m 離れた山腹より突然に巨岩の崩落が発生している。また,同年 6 月 30 日午前 1 時地半ごろには,写真-9 のように耶馬溪町の深瀬川対岸の奇岩・奇峰が連なる深耶馬の一目八景の溶結凝灰岩よりなる崖が約幅 30m,高さ 50m にわたって剥離崩落(フォール)している。山腹の柱状節理のある石柱盤は横約 20m,縦約 25m の耶馬渓溶結凝灰岩である。この時も降雨も地震もなく突然に崩壊している。このように近年では相次ぐ崩落や崖崩れが生じており,これらも「持続的要因と加速的要因の複合型」による崩壊現象と推定され,加速的要因の 1 つとして 2016 年 4 月発生の熊本・大分地震による巨大岩盤の平衡不安定化の影響と考えられている。- 315 - 5.3 持続的・加速的要因の複合説以上の考察から,今回の崩壊因子の持続的要因としては,溶結凝灰岩に対して常に作用している樹木による節理や不連続面の開口および溶結凝灰角礫岩の風化作用による劣化等の経年的影響(写真-10)にて,斜面強度(引張力,せん断力,圧縮力等)の閾値の変動が挙げられる。いわゆる斜面内部において節理の発達や風化の進行により強度が低下した溶結凝灰岩および安山岩類が崩壊する。強度差が明瞭な火砕流堆積物や崖錐堆積物の硬軟互層では,凹凸のある急崖を形成し易くなる。一方,加速的要因は,崩壊の引き金となる要因であるが基本的には持続的要因と同様の作用力で,降水や融雪水,地震,乾湿や凍結融解の繰返し等による経年変化にて斜面の強度低下をもたらしている。また,斜面の切土や掘削の土木工事など人為(人工)的要因も加速的要因に考えられる。今回の崩壊現場は 平成 3 年(1991 年)の台風で風倒木被害を受けた経緯がある山腹であり,民家裏に落石防止用柵(高さ 3m)が段違いで 1 列設置している。この工事は治山事業(写真-11)で平成 4 年に落石防止柵工,平成 5 年は落石防止柵工,岩盤線並びに山腹工の変更,崩土除去との記録があり,今回の大規模山腹崩壊の加速的要因の一つに掲げられる重要な要因になり得る。写真-9 耶馬溪町深耶馬(一目八景)の剥離火砕流堆積物や崖錐堆積物の崩壊特性として,特に凝灰質地盤崩壊(2016 年 6 月)と未固結の凝灰質土石の特殊性からも,これら持続的要因と加速的要因の複合型よる崩壊現象であると考える。樹木による節理や不連続面の開口5.4 崩壊プロセスのシナリオ溶結凝灰岩からなる地山と,経年変化による溶結凝灰岩の崩落により形成された古期錐堆積物(転石地山群)と新期崖錐堆積物(転石土砂層)があり,地山の溶結凝灰岩と凝灰質崖錐堆積物は急傾斜で接している 10)。今回の地山と崖錐性堆積物との崩壊プロセスを図-8 に示す。直接誘因として風化を受け不安定化(凝灰質岩盤の強度低下等)した巨大岩盤が平衡バランスを失い,第一次の剥離崩落を起こす。そ写真-10 経年的影響による崩壊頭部の劣化状況の崩落衝撃で崖錐性堆積物中の地下水に変動を与写真-11 大規模崩壊前に治山事業により設置されていた λ 型落石防止柵工- 316 -11) え,杉などの植林されている保水力の高い新期崖錐堆積物と,地山と接し第一次滑落:巨岩・巨石剥落ている古期崖錐堆積物と新期崖錐堆積物の間で複合滑りが発生し,第二次風化溶結凝灰岩第二次崩壊:巨岩等の崖錐崩落or 弱溶結凝灰岩崩壊を起こし大規模な山地下水位腹崩壊に至ったと推定する。新期崖錐堆積物(崩落堆積物)中溶結凝灰岩凝灰岩質からなる崖錐堆積物は一般的に透水性古期崖錐堆積物(砕屑)強溶結凝灰岩が高い。九州北部豪雨(2012 年 7 月 11 日~14金吉川安山岩質凝灰角礫岩日および 2017 年 7 月 5日~6 日)により,地下水位の上昇等などで露頭部の風化岩盤が平衡バラ図-8 大規模山腹崩壊のプロセス10)ンスを失くしたり,崖錐性堆積部が緩んだりして崩壊リスクを高めた可能性も予想される。また,大規模山腹崩壊の 2 日前に 4 月 9 日に島根県西部地震があり,2016 年 4 月発生の熊本・大分地震と共に岩盤の平衡不安定化をもたらし閾値を超えたと考えられる。6. おわりに耶馬渓一帯の地質は,主に耶馬渓火山岩類および耶馬渓溶結凝灰岩により形成されており,火砕流堆積物による火砕台地である。特に溶結凝灰岩は 90~100 万年前の火砕流物の結晶構造による溶結力に強弱の差異があり,露頭部は風化作用等を受け経年変化の劣化による強度低下から岩盤の力学的バランスの悪い斜面を形成している。このため平衡不安定化等の危険リスクが高まっている。耶馬渓地域一帯の地質・層序・地史学的見地から大規模山腹崩壊の原因について記述した。経年変化により各作用力が崩壊の素因を醸成しながら地質体の劣化を促進し,経年的影響の変形により崩壊を始める直前の状態に達し,同様な作用力がさらに働いて力学的バランスを保つための閾値を超えて崩壊する。すなわち,持続的・加速的要因の複合型である。このような複合型の場合,地下水を安易に低下させると,経年的影響により劣化しつつある溶結凝灰岩からなる地山や,それらの崖錐性堆積物内に新たな水道(みずみち)が形成され,より風化作用が促進し力学的バランスを保つための変位・変形量の閾値へと一層加速させることにもなり得る。崩壊原因を曖昧にした復旧工事は数年後ないし数十年後にさらに高頻度災害を招きかねない。その一例として,当崩壊箇所も平成 4~5 年にかけての治山工事による切土・盛土・崩土除去等がなされ,特に岩盤線の変更がなされたとの記録がある。このような岩盤線変更等が加速的要因を増進させた可能性を否定できない。合理的な防災・減災対策工法を施すには,崩壊のプロセスやメカニズムを的確に把握することが肝要である。さらなる原因を明確するためにも多角的・多面的な側面からの解明が必要であり,現地のボーリングデーターや過去における治山事業工事等の詳細な記録公開が強く望まれる。本論文作成に当たり大分県北部振興局・森林保全課・県政情報課および中津土木事務所,大分県中津市,松本技術コンサルタント株式会社より資料や映像等の提供ご協力を頂き感謝します。また地球科学的側面より地質・層序等のご指導を頂いている京都大学 竹村 恵二 名誉教授に深謝申し上げます。【参考文献】1)山本健太郎,立石義孝:中津市耶馬溪町金吉の大規模山腹崩壊について,平成 30 年度土木学会西部支部研究発表会講演概要集 Ⅲ-28, pp.333-334, 2019.32)山本健太郎,立石義孝:大分県中津市耶馬溪町金吉の大規模山腹崩壊に関する考察,第 54 回地盤工学研究発表会pp.1941-1942, 2019.73)耶馬溪町金吉地区山地崩壊原因究明等検討委員会: 平成 30 年 4 月に中津市耶馬溪町で発生した山地崩壊について(中間報告), 2018.4)土木学会岩盤力学委員会岩盤崩落問題研究小委員会: 岩盤崩壊の考え方(第 3 章岩盤崩壊のメカニズム), 2004.- 317 - 5)大分県森林保全課:H30 森保第 1 号梶ヶ原地区調査測量設計委託業務(大分県中津市耶馬溪町大字金吉字梶ヶ原)報告書,2018 年 12 月6)地盤工学会: 平成 30 年 4 月中津市耶馬溪町金吉梶ケ原地区における斜面崩壊と今後の問題点, 2018.7)国土交通省九州地方整備局: 大分県中津市耶馬溪町金吉 大規模斜面崩壊調査報告, 2018.8)大分県中津市: 平成 24 年九州北部豪雨災害9)立石義孝・竹村恵二:最新の地質学体系に基づく大分県北部地域の地質~山国川流域を中心とした層序学~,九州中津市災害記録誌 pp.1-4, 2015.応用地質学会会報 No.36, pp.2~21, 2015.10) 立石 義孝:地質・層序・地史学的見地からの耶馬渓町金吉地区の大規模山腹崩壊 について(未発表), 2018.11) 大分合同新聞:2018 年 4 月 16 日付け朝刊耶馬溪の山崩れに関する報道記事より抜粋- 318 -
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  • タイトル
  • 阿蘇カルデラ内阿蘇谷の表層地盤構造による阿蘇谷層の2 層化提案
  • 著者
  • 福田 光治
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 305〜310
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000055
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)9-5阿蘇カルデラ内阿蘇谷の表層地盤構造による阿蘇谷層の 2 層化提案福田光治大成ジオテック1. はじめに阿蘇カルデラ内の阿蘇谷における鉛直方向の表層地盤構造について 2011 年第 9 回環境地盤工学シンポジウムに投稿 1)した.ボーリング結果による粒度分布や N 値などの深度方向分布を根拠として表層の土質特性を発表した.2016 年熊本地震により阿蘇谷は特異な表層流動化が発生し,線条の隆起と沈下に焦点が当てられ地盤情報が追加された2),3).本論文では,2011 年著者の論文で言及した地盤構造と追加情報の地層断面図を比較することによって,渡邊の示す阿蘇山カルデラ発達史の研究成果 4)における阿蘇谷層を 2 層化する試みを示した.2011 年論文は点としての阿蘇谷表層地盤の鉛直方向構造を対象にしている.追加情報により 2011 年論文の結果を水平方向に展開できる可能性を確認した.点から面に展開することにより,渡邊が阿蘇谷層として示した 1 層の湖成層は 2 層に区分することができることを示した.2. 参考文献による熊本地震による阿蘇谷流動機構2016 年熊本地震で阿蘇山カルデラ内阿蘇谷の狩尾付近で北東―南西方向に伸びる多数の線状亀裂が発生した.そして JR 内牧駅と内牧温泉を結ぶ県道 175 号線を横断するように写真-1 に示す大きな陥没が発生した 5).分断されたアスファルト道路の 1 条の明確な落差と道路面の平坦性が維持されていることから,引っ張りによって滑落したことをうかがわせる.断層,液状化など地盤変状原因としていくつかの見解が示されたが,著者は温泉揚水鋼管の変状を基礎データとする辻の地表面約 50m 厚さの土塊流動 2)が説得的であると考えている.地盤変状の原写真-1 2016 年熊本地震阿蘇山カルデラ内の地盤変状 5)因として,論文では流動土塊下部における液状化あるいは間隙水圧が示されている.しかし,流動土塊の力学的機構に関しては今後の研究課題と考えている.図-1 に示す辻の流動土塊モデルでは表層厚さ約50m の流動土塊が左方向に圧縮引張水平移動し,流動土塊右縁辺に大きな引張り陥没体が現れる.本研究では厚さ50m の流動土塊を,湖成層堆積環境による表層地盤構造に位置付けて解釈し崩壊た.~50m曲げ開口地盤工学の分野からも,この阿蘇谷の亀裂と陥没を対象とした地層モデルが示された 3).図-2 で示された表層地盤は 4 層構造で,表層から未固結土砂,カルデラ底堆積物,遷移層を挟在して 2 番目のカルデラ底堆積物が区分図-1 辻の土塊流動モデル 2)に加筆標高(m)標高(m)され示されている.2 層のカルデラ底490490堆積物の伏在深度は未固結砂底の標480480高が約 460m,カルデラ底堆積物挟在未固結土砂470遷移層の標高は約 430m 付近にある.下層のカルデラ底堆積物の下端深度扇状地堆積物460470460カルデラ底堆積物450450た地盤構造に調和的である.従って440440面的な広がりという視点からは,〇430で囲んだ領域の,図の右から左方向420は不明であるが,2011 年論文で示し430カルデラ底堆積物420に斜めに走る地層の描き方を検討しておかねばならない.阿蘇谷の地表図-2 阿蘇谷表層断面図 3)に加筆面は概略的には写真-2 のように平坦Proposal of two-layer segmentation of Asotani lake deposit on the geological profile of the surface groundin Mt.Aso calderaMitsuharu Fukuda (Taise Geotec. Co. Ltd.)KEY WORDS: caldera, lake deposit, geological stratum, soil profile- 305 - 写真-2 阿蘇谷の平坦性写真-3 役犬原湧水群で,役犬原では写真-3 のような湧水箇所が点在している.阿蘇谷の堆積形成環境を考えると水平方向が卓越した湖成層の堆積環境が予想される.その概念からすると斜めに地層を描くことの適切性の検討が必要である.湖成層という堆積環境を前提にすると,堆積形態として水平性の卓越性を考えるからである.図-1,2 は阿蘇谷の堆積環境を研究する上では面的な広がりを検討する重要な追加地盤情報になる.このため流動土塊底面の深度,及び 2 層のカルデラ底堆積物の深度を 2011 年論文 1)に位置付けて,阿蘇谷の堆積環境を分析・再検討しなければならない.3. 阿蘇山カルデラ内発達史の整理阿蘇山カルデラの発達史は渡邊の研究成果 4)に凝縮されている.これを著者が整理したのが図-3 と表-1 である.阿蘇カルデラ内は中央火口丘を中央にして,北側領域を阿蘇谷,南側領域を南郷谷と呼称している.いずれの谷も湖成層堆積物で充填されているが,表層は湖成層消滅後に周囲のカルデラ壁や中央火口丘から供給された堆積土が被覆している.当初から阿蘇谷と南郷谷が分断されて湖成層が堆積していた訳ではない.二つの谷が形成される端緒は中央火口丘が発達しない時期での古阿蘇湖の形成である.カルデラ内の湖からの出口は,熊本平野に向かうカルデラ西側の立野一か所で,ここが堰き止められると湖が発達する.古阿蘇湖は中央火口丘が発達する前に形成された湖であるため,古阿蘇湖堆積物は阿蘇谷と南郷谷に連続して分布すると考えられている.そのあと中央火口丘が発達するが,久木野湖は阿蘇谷と南郷谷に連続して形成されていた.久木野湖消滅後に阿蘇谷が分断され,湖が形成され阿蘇谷層が堆積する.標高(m)2500南北約25km(東西約18km)2000高岳火山新規山体標高1592m大観峰標高936m(標高600~800m)約4.5万年前本塚火山(標高約570m)高千穂野標高1101m(標高900~1200m)15001000阿蘇谷 K-Ah前頃消滅約3万年前沢津野溶岩,赤瀬溶岩阿蘇谷湖 隠れ火山丘約5万年高野尾羽火山500南郷谷標高約350m立野溶岩深度-186m(推定標高約340m)久木野湖約4万年前消滅約7万年前栃ノ木溶岩鮎返ノ滝溶岩久木野湖? 中央火口丘初期岩体古阿蘇湖約9万年前阿蘇4図-3 阿蘇山カルデラ内概略変遷図文献4)を整理- 306 -00標高-300~-600m-500-1000 表-1 阿蘇山カルデラ内形成史の整理文献4)を整理阿蘇火山中岳火山新規山体往生岳火山杵島岳火山赤水溶岩K-Ah蛇ン尾火山AT火山灰赤瀬溶岩沢津野溶岩樽尾岳火山白水火山夜峰火山地質年代湖堆積物深度土質阿蘇谷層186m以浅火山灰質砂層,砂礫層,シルト,粘土186m以深久木野層相当0.73万年前阿蘇谷湖消滅2.5万年前2.7±0.6万年前3.0±0.6万年前阿蘇谷湖高野尾羽根火山立野溶岩栃の木溶岩地層名4万年前5.1±0.5万年前久木野湖消滅7.3±1万年前久木野湖中央火口丘初期古火口瀬形成久木野層古阿蘇湖消滅古阿蘇湖阿蘇-4火砕流8.9±0.7万年前阿蘇-3火砕流阿蘇-2火砕流阿蘇-1火災流12.3±0.6万年前14.1±0.5万年前26.6±1.4万年前古阿蘇湖堆積物カルデラ形成南阿蘇村一関656 礫岩や砂礫層~800m(海抜- を挟むシルト,200m以深)凝灰質砂一宮町手野(482m),宮地(710m付近),阿基盤花崗岩類蘇町内牧(200m付近),高森町色見(200m付近)図-4 は白川と黒川が分岐する立野周辺の地質図 6)で,図中の Kn が久木野層である.北側が阿蘇谷,南側が南郷谷の入り口に当たる.写真-5 は標高約 320m 付近の久木野層の露頭,写真-6 は標高約 360m 付近の久木野層の露頭である.久木野層は阿蘇谷,南郷谷に広がっていると考えられているが,渡邊の文献 4)では深度 200m~300m 付近に(?)を付して久木野層を明示した阿蘇谷における柱状図が掲載されている.この柱状図には,久木野層の上端深度 186m が明示されている.深度から標高を推定すると,図-3 に示すように阿蘇谷で標高約 340m になる. 久木野層は阿蘇谷と南郷谷に連続して分布していると考えられるので南湖谷でも類似した標高に久木野層が分布している.写真-5,6 に示すは南郷谷で観察した久木野層の露頭の標高は文献 4)に対応している.久木野湖の消滅後,阿蘇谷ではさらに湖水面が上昇し,阿蘇谷湖が広がり,阿蘇谷層が堆積する.しかし南郷谷では阿蘇谷層は見られず,南郷谷の湖成層の最上位は久木野層になる.阿蘇谷には黒川が流れ,南郷谷には白川が流れる.二つの河川は,立野付近阿蘇山図-4 南郷谷の露頭久木野層 6)カルデラ内で合流し,立野から白川と命名され,熊本平野に向かう.阿蘇山カルデラ内湖成層は立野付近の溶岩によるせき止めと中央火口丘の発達の関係から説明される.図-3 に概略整理したように,古阿蘇湖消滅後,鮎帰り溶岩あるいは栃木溶岩・立野溶岩でせき止められて湖水面が上昇し,久木野湖が形成される.そのあと高野尾羽溶岩などにより湖水面が上昇し,久木野写真-5 久木野層(標高約 320m)写真-6 久木野層(標高約 360m)湖が消滅し,阿蘇谷湖の- 307 - 発達に連なる.渡邊の研究 4)では古阿蘇湖,久木野湖,阿蘇谷湖の形成と消滅が説明されている.しかし阿蘇谷表層の地盤調査結果からは,阿蘇谷湖の湖面レベルは上昇しており,阿蘇湖は少なくとも 2 段の湖水面上昇を設定する必要がある.本論文で展開する阿蘇谷の表層地盤構造は阿蘇谷湖形成後の地盤構造の分析結果である.4.阿蘇谷表層地盤鉛直構造2011 年第 12 回環境地盤工学研究発表会 1)の基本データを再録する.この論文では狭い調査範囲のボーリング結果を整理し,調査地点における鉛直方向の表層地盤構造を分析した.深度方向分布形態に着目して堆積環境を推定している.N 値と粒度分布の深度方向分布の形態は対応しており,標高 425m と 460m で区分することができる.表層地盤標高は約 480m であるから標高約 425m までの厚さは約 55m である.つまり図-1 の流動土塊基礎深度に対応する.また図-2 の未固結土砂の下位の標高は約 460m で,図-5,6 の深度方向分布形態に対応している.図-2 のカルデラ底堆積物の下端標高は約 420m 以上になり,標高約 425m 付近に考えられる基盤には達していない.図-7 は圧密降伏応力の鉛直方向分布で,標高約 425m 以深のデータはないが,N 値の分布形態から標高約 425m 以深の圧密降伏応力は大きいことが予想される.N 値の深度方向分布に着目すると,標高約 425m 以深とその上の標高約 425m~460m の層には粒度評価径dc(mm)N値0103040501.E-05490480470440標高425m4204001.E-041.E-031.E-021.E-01 1.E+00標高約460m450標高460m標高(m)460標高(m)20500430標高約425m410390380370360350図-6 阿蘇谷表層地盤の粒度分布 1)図-5 阿蘇谷表層地盤の N 値深度方向分布 1)堆積環境の違いがある.図-6 に示すように堆積材料としては連続しているが,上方に向かって形態的には粗粒化している.概略的には標高約 425m 以土被圧(kN/m2)深の粒度評価径は 10-3mm 以下,標高約 425m~460m の粒度評価径は 10-3~10-2mm の間に分布している.0図-1,図-2 の深度や層厚は図-5~7 は調和的であり,類似した堆積深度490が抽出できる.このため 2011 年論文の研究成果を点から面に展開できる480と考えることができる.5001000●×1500双曲線法データシート5.水平方向地盤構造と地形ボーリング位置を確認すると図-2 は大観望谷周辺の西部突端の前面付近で実施されている.一方,図-5~7 は東部突端付近前面付近になる.図1 の場所は特定できないが内牧温泉に着目した広域的な概念図である.従標高(m)470450440って,2011 年論文地盤構造と追加地盤情報の伏在深度の類似性から,阿蘇430谷湖成層は平坦に堆積していると考えると,それぞれの文献に含まれる深420度や標高及び厚さは調和的に把握することができる.図-8 は微地形の等高線形態から阿蘇谷でA~H ゾーンを抽出したものである 1).この図では,図-2 の調査位置はゾーン E の内牧地区南西側境界付近,図-5~7 の調査位置はゾーン D の小倉地区になる.図-1 の内牧温泉揚- 308 -約460m460410全応力土被圧約425m圧密降伏応力有効応力土被圧400図-7 圧密降伏応力の鉛直分布 1) 水管の曲がりを根拠とする流動土塊モデルはゾーン D 付近になる.図-8 における図-1,図-2 と図-5~7 の調査位置の水平距離,および鉛直方向土質特性の類似性から,地層の水EDCBA平外延化が期待される.この場合,この外延性を制約しているのは阿蘇カルデラからの河川水の流出口になる黒川と白川合流点立野付近の溶岩の堆積環境である.図-5 の N 値深F度方向分布形態から得られた標高約 425m,460m に対応するG標高は阿蘇谷黒川沿い断面の図-9 の数鹿流滝,九州東海大学及び赤瀬橋周辺の標高が抽出される.図-4 の地質図ではH高野尾羽溶岩(Tob),沢津野溶岩(Sts)及び赤瀬溶岩(Ss)の分布域に対応している.それぞれ表-1 に示すように地質年代は約 5.1 万年前,約 2.7 万年前である.渡邊 4)も「赤瀬溶岩や沢津野溶岩が次々に高い位置までせき止めて湖が維図-8 阿蘇谷のゾーニング持された」と解釈している.図-5 の N 値では標高約 425m を図-9 阿蘇谷立野周辺断面図境界に上下層の続成作用には明らかな違いがある.地質図では数鹿流滝は高野尾羽溶岩,九州東海大学周辺が沢津尾羽溶岩の分布域になるので,標高約 425m 以深の堆積は約 5 万年前から約 2.7万年前に形成されたと考えることができる.渡邊 4)は,阿蘇谷湖は K-Ah 前に消滅しているとしているので標高約 425m~460m の堆積層は約 2.7 万年前から 0.73 万年前に形成されたことが推定される.標高約 425m を境界とする図-10 南湖谷立野周辺断面図上下層の N 値の大きな乖離は地質年代に関係している.一方南郷谷ではボーリング調査データは入手していないが,久木野層の堆積上限標高は約 350m 付近である.図-10 の阿蘇山カルデラ内白川沿いの断面では鮎帰りの滝周辺で地形の変換点があるが,標高は約 300m である.鮎帰り溶岩が対応している.南郷谷久木野層の堆積上限標高は約 350m であるから,南郷谷の湖面を上昇させるような明瞭な地形変換点は確認できない.渡邊 4)も指摘している高津野尾羽溶岩と南郷谷の堆積環境の関係については今後の課題である.- 309 - 6. 表層堆積層に刻印される地盤災害阿蘇谷湖成層の堆積環境は深度方向物性分布の均質性からみると静表-2 阿蘇災害頻度穏な堆積環境が推定される.図-6 の粒度特性深度方向の分布形態からは表層の乱れに対し,標高約 460m 以深の堆積物のばらつきは小さく,均質で静穏な環境で堆積したことは明確である.10-2mm 以上の粒度評価径は礫質土・砂質土に,10-2~10-3mm は中間土とされるシルト質土に,103mm 以下は粘性土に相当する 1).したがって標高 460m 以浅の粒度評価径は 10-3~10-1mm の間でばらついており,それに対応するように図-5 のN値もばらつく.これに対し,標高約 460m以深の粒度評価径,N値は均質な分布をしている.N値には大きな不整合面が存在するが,粒度評価径から考えると標高約 460m以深は連続的な堆積環境が予想される.このばらつきが小さい安定的な土性分布を形成する環境を静穏性という言葉で評価した.阿蘇地方は古くから多くの災害が発生し,町史など 7),8)を整理すると表-2 に示すように約 7 年に一回災害が発生している.洪水は約 18 年,地震は約 70 年に一回発生している.表層の堆積物の乱れは阿蘇山外輪山や中央火口丘からの土石流などによって供給される堆積環境を刻印していると考えられる.これに対し,標高 460m 以深は均質であり,静穏な堆積環境が予想される.日本のカルデラは,理科年表 9)で,「日本の主な火山」,「日本の主な湖沼」を対比すると,57 か所のカルデラが記載され,そのうちいまなおカルデラ湖として残っているのは 11 か所である.多くのカルデラ湖は埋没しており,阿蘇カルデラもその埋没例である.そのような激しい土砂供給環境では,表層のように粗粒土と細粒土の細かいランダムな互層環境が予想される.激しい土砂供給と安定した土性からなる静穏な堆積環境の関係については今後の研究課題である.7.おわりに阿蘇谷の堆積環境は渡邊の研究で概略確定していると考えられる.この研究では阿蘇カルデラ内阿蘇谷層は一層として扱われている.2011 年環境地盤工学会で示した論文 1)の指摘は,2016 年熊本地震に関係する流動土塊の文献や調査結果等で裏付けられた.近年の阿蘇谷層を対象とする地盤調査などを踏まえると,阿蘇谷層を 2 層区分する考えは,物性の深度方向分布形態や地形変換点の分析などから根拠づけられることを示した.そして阿蘇谷層を 2 層区分することは渡邊の研究レベル 4)に調和的であるとともに,さらに詳細化することによって今後の研究の方向性を示した.阿蘇谷層を対象とする建物の明確な支持層は深い.このため阿蘇谷の開発では,阿蘇谷表層の地層特性を踏まえた柔軟な対応が望まれている.(参考文献)1) 福田光治・宇野誠・西浦譲二・西英典・山崎智寛・西本直次郎:カルデラ内阿蘇谷表層土の地盤構造,第 9 回環境地盤シンポジウム,pp.1-1,2011.2) Takeshi Tsuji・Junichirou Ishibashi・Kazuya Ishitsuka・Ryuichi Kamata: Horizontal sliding of kilometer-scale hotspringareaduringthe2016Kumamotoearthquake,SCIENTIFICREPORTS|7:42947|DOI:10.1038/srep42947,www.mature.com/scientificreports, 2017.3) 石川敬裕・安田進・伊東周作・永瀬英生・村上哲・野村勇斗:熊本地震により阿蘇で発生した帯状陥没に関する地盤調査(その5)-ボーリング調査による浅部の地質構造の特徴―,地盤工学会,第 53 回地盤工学研究発表会,pp.111-112,2018.4) 渡辺一徳:自然と文化 阿蘇選書 7 一の宮町史 阿蘇火山の生い立ち 地質が語る大地の鼓動,編集 一の宮町史編纂委員会,熊本日日新聞情報文化センター,pp.10-122,2007.5) 阿蘇市:画像提供6) 熊本県地質図編纂委員会:熊本県地質図(10 万分の1)(県北版),社団法人熊本県地質調査業協会発行,2008.7) 阿蘇町史編纂委員会:阿蘇町史,pp.971-1044,2004.8) 白水村史編纂委員会:白水村史,pp.1073-1161,2007.9) 国立天文台編:理科年表 平成 24 年 第 85 冊,pp.606-696,2012.- 310 -
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  • タイトル
  • 福島第一原子力発電所における沈降型重泥水を利用した燃料デブリ取出し回収法の検討
  • 著者
  • 氏家 伸介・長江 泰史・成島 誠一
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 301〜304
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000054
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)9-4福島第一原子力発電所における沈降型重泥水を利用した燃料デブリ取出し回収法の検討○氏家伸介 1・長江泰史 1・成島誠一 11NB研究所1. はじめに福島第一原子力発電所 1~3 号機内部には,核燃料や被覆管などが冷えて固まった燃料デブリが存在し,その取出し方法の確立が大きな課題となっている.特に気中工法で燃料デブリを取り出す場合,作業員の被爆リスクの増加に加え放射性核種の飛散が予想されるため,これらを防止することが非常に重要である.そこで筆者らはこれら課題解決のため,沈降型重泥水(以下 NBC)を開発した.NBC は,図-1 に示すように燃料デブリを被覆してこれを回収する環境を提供するものであり,以下の要求機能・性能を念頭に開発したものである.・PCV 打設時に,ポンプ圧送可能な流動性を保持・PCV 打設後に,一定以上の密度と強度を有する沈降層を形成・燃料デブリ切削時に,放射性核種の飛散を防止する密閉性を発揮・燃料デブリ取出し後に,回収および水分除去による減容化が可能図-1 福島第一原子力発電所における本論では,これらの要求仕様を念頭に NBC の特性について言及するととNBC 適用概念図もに燃料デブリ取出しにおける補助材料としての有用性について論ずる.2. NBC の概要本論における NBC は既存の超重泥水 1)2)3)4)5)6)をもとに考案し開発し表-1 基本配合および性状たものである.ただし既存の超重泥水は材料分離を防ぐため時間の経ベース流体 配合組成過とともに粘度が増加する経時増粘性を有するのに対し,NBC は材料材料名配合量 (g)分離によって沈降層を形成させるため逆に経時で粘度を低下させるこ水100とが必要である.そのため,粘度調整剤にはベントナイトではなく半CMC0.5~0.7合成高分子化合物(以下 CMC)を使用し,これに適用できるセルローNBウェイト400NBC 配合組成ス分解酵素を添加することで経時で粘度を低下させることを考えた.しかし,PCV 内へ打設する際,CMC と分解酵素をあらかじめ混合し材料名た状態でポンプ圧送すると,ポンプや配管内で材料分離が生じて圧送ベース流体できない可能性がある.そこでまず溶媒である水とバライト粉末(以セルロース分解酵素下 NB ウェイト),CMC を混合させたベース流体をポンプ圧送し,途中 PCV 手前の流体移送管内においてセルロース分解酵素を注入混合して沈降性を有する NBC へと変化させることを考えた.このような配合量(g)100-5-37.0×10 ~2.8×10NBC 性状初期流体密度 (g/cm3)2.5±0.1初期フロー値 (mm)450±50打設方法によって,配管内で目詰まりすることなく NBC を PCV 内へ打設し,燃料デブリを被覆する NB ウェイト沈降層の形成が可能になると考えられる.NBC の基本配合および性状を表-1 に示す.なお,CMC については,ベース流体作製時に NB ウェイトが沈降しないよう比較的高粘性の CMC を使用した.3. CMC 水溶液の粘度特性NBC を打設する際,NB ウェイトの沈降が早すぎると PCV 内に均等な厚さの図 中 の 数 値 は 対 CMC比での分解酵素添加量NB ウェイト沈降層を形成させることができず,燃料デブリを十分に被覆でき144ppmない可能性がある.したがってベース流体にセルロース分解酵素を添加した後432ppm720ppmも一定時間均一性を維持した状態で流動させることが必要である.NB ウェイ1,439ppmトの沈降はセルロース分解酵素が CMC と反応し NBC の粘度を低下させること5,328ppmで生じるため,NB ウェイトの沈降速度を制御するためには,まず CMC 水溶液にセルロース分解酵素を添加した後の経時的な粘性挙動を把握しておかなければならない.そこでまず 0.7%CMC 水溶液に対してセルロース分解酵素水溶液を所定の濃度で添加し,時間と粘度の関係を調査した.なお,セルロース分解酵素の添加量は,対 CMC 比で 144ppm,432ppm,720ppm,1,439ppm,5,328ppmとした.試験の結果,図-2 に示すようにすべての条件で水溶液の粘度は時間経過時間 (分)(cp)図-2 0.7%CMC 水溶液の時間と粘度の関係Debris recovery method by settling heavy mud water in Fukushima Daiichi Nuclear Power StationShinsuke Ujiie1, Yasushi Nagae2, Seiichi Narushima1 (1NBI)KEYWORDS: Heavy mud water, Debris, Recovery- 301 - とともに低下する傾向が確認され,さらに各経過時間における粘度はセルロース分解酵素の添加量によって異なることが確認された.これにより,NB ウェイトの経時的な沈降速度はセルロース分解酵素の添加量を調整することで制御可能であることが予測された.4. NBC の特性4.1 NBC の沈降挙動NBC は CMC に対するセルロース分解酵素添加量を調整することにより NB ウェイト沈降層を形成するまでの時間を制御できる可能性が示唆されたため,次に NBC の沈降試験を図-3 に示す構成で行った.試験手順は,まず表-1 に示した NBC のベース流体と 0.01g/ml セルロース分解酵素水溶液を作製する.次にベース流体中の CMC に対して図-3 NBC の沈降試験概念図セルロース分解酵素の濃度がそれぞれ 5,005ppm,10,010ppm,30,030ppm となるようにセルロース分解酵素水溶液を添加し,2 分間攪拌して 3 種類の NBC を作製する.次に 1,000ml のガラスメスシリンダーに NBC を 2,000g 入れ,37℃に設定した恒温槽内で静置し,時間と NB ウェイト沈降率の関係を評価した.その結果,図-4 に示すように酵素添加量が少ないほど NB ウェイトの容積沈降率の増加は緩やかである傾向が確認された.一方で,いずれの酵素添加量においても容積沈降率はほぼ一定の値に収束していることから,十分に時間が経過すれば酵素添加量が異なっても同様の性状の NB ウェイト沈降層が得られると推察される.本試験の結果より,NBC はベース流体に対するセルロース分解酵素添加量を調整することで NBウェイトの沈降速度を調整することができ,NB ウェイト沈降層形図-4 分解酵素添加後の NB ウェイト沈降率の推移成までの時間を制御できることが確認された.また,NB ウェイトの沈降が遅いほどポンプ吐出口付近での沈降量が少なく勾配の緩やかな沈降層が形成されることから,PCV 内への打設の際には,セルロース分解酵素の添加量を調整することでセルフレベリング性を考慮した NB ウェイト沈降層形成が可能であると考えられる.4.2 NB ウェイト沈降層の強度特性と γ 線遮蔽性次に NB ウェイト沈降層の強度特性と γ 線遮蔽性を評価するため,コーンペネトロメーター試験(GS1431 準拠)と密度測定を実施した.試験手順は,まず NBC を作製し,写真-1 に示すとおりコーン貫入試験用モールドにポリ塩化ビニル製の円筒を取り付けた状態で注ぎ込む.次に 7 日間静置して NB ウェイトを十分沈降させた後,上部の円筒を取り外す.そして,上澄み液を除去し平滑にならしてからモールド内に形成されている NB ウェイト沈降層に対して写真-2 に示すようにコーンぺネトロメーター試験を実施した.その後,モールドの下部と上部の2 箇所で試料を採取して水分と密度を測定した.写真-1 NBC 充填状況写真-2 コーンペネトロメーター試験各測定結果を表-2 に示す.まず密度については,NBC の密度が約 2.5g/cm3 であるのに対して,NB ウェイト沈降層は3.0g/cm3 以上と高比重側に移行しており,さらにモールド上部よりも下部の試料のほう表-2水分 (%)が高密度になっていることを確認した.また水分はモールド下部よりも上部のほうが高くなっているこ密度 (g/cm3)とから,モールド下部ほど NB ウェイト沈降量が多くなっていることが確認された.コーン指数 qc につコーン指数いては,貫入深さ 5cm~10cm のいずれにおいてもqc (kN/m2)1,200kNN/m2 以上であり,一般にトラフィカビリテ- 302 -NB ウェイト沈降層の性状とコーン指数モールド上部12.4モールド下部9.6モールド上部3.01モールド下部3.21貫入量5.0cm1278貫入量7.5cm1894貫入量10.0cm2210 ィが確保できるとされている強度が認められた.これらの結果から,NB ウェイト沈降層は例えば一般的に比重が 2.3~2.5g/cm3 程度とされているコンクリートよりも γ 線遮蔽性に優れ,さらに飽和状態でありながら高い基盤強度を示すことが確認された.4.3 NB ウェイト沈降層のロッド貫入挙動次に,NB ウェイト沈降層形成後の掘削ロッド掘進工法による燃料デブリ取出し回収について検討するため,写真-3 に示すように,コーン貫入試験用モールド内に形成した NB ウェイト沈降層に対して貫入挙動を確認した.その結果,上述のコーンペネトロメーター試験のように静的にコーンロッド挿入した場合には,NB ウェイト沈降層はコーンロッドとともに下方向へ引っ張られ掘進に対する抵抗を示したが,継続的にロッド振動を与えるとコーンロッドの自沈掘進現象が確認され,さらに NB ウェイト沈降層は即時的に平滑な状態へと復元した.この現象は,ロッド振動によって飽和状態の NB ウェイト沈降層がダイレイタンシーの影響で間隙水圧が上昇し,せん断抵抗が減少することで液状化現象を生じたものと考えられる.したがって PCV 内へ NBウェイト沈降層を形成させた後に燃料デブリ取出し回収を行う場合,図-5 に示すように継続的な振動を与えて掘削ロッドの自沈現象を促進させれば PCV に対して大きな力を与えることなく燃料デブリまで密閉掘進が可能であると考えられる.さらに燃料デブリを切削後取り出し回収する際にもロッド振動を与えることで NB ウェイト沈降層を掘削ロッドへ密着させた状態で容易に引き上げられると考えられる.このように写真-3 NB ウェイト沈降層の貫入挙動確認試験掘削ロッドに対して NB ウェイト沈降層を常に密着させた状態で作業を行えば,放射性核種を飛散させることなく燃料デブリを取出し回収できると考えられる.図-5 燃料デブリ取出し回収モデル概念図4.4 NBC の長期安定性次に NBC の PCV 内における長期安定性を評価するため,主材料である NB ウェイトの高線量環境下における物質的な劣化について調査を行った.本調査では,まず放射線の照射線源にコバルト 60 を適用し,線量率 10kGy/h(10kSv/h)の γ 線を NBウェイトに対して 2,550 時間照射した.したがって放射線照射総量は 25,500kSv である.その後放射線を照射していない試料放射線照射後とともに XRD 分析を行い比較した結果,図-6 に示すように両試料は回折角 2θ が 24.9°,25.9°,28.7°の 3 強線において,位置と強度に大きな違いは見られなかった.このことから,NB放射線照射前ウェイトは放射線照射によってほとんど構造変化していないと推察され,NB ウェイト沈降層は高い放射線環境下でも長期的図-6に安定した性状を示す可能性が示唆された.NB ウェイトの XRD 分析結果4.5 NB ウェイト沈降層回収モデルの検討PCV 内から燃料デブリを取り出した後,原子炉建屋を解体する際には NB ウェイト沈降層自体を回収しなければならない. NB ウェイト沈降層は,NBC 流体が CMC の分解によって粘度が低下し NB ウェイトが分離沈降して形成されたものであるから,CMC 溶液と混合すれば再び流動性を有する NBC へと再生する.そこで NB ウェイト沈降層に CMC水溶液を高圧噴射しながらロッド注入し,NBC 流体に再生させた上で回収するモデルを検討した.これは,既存のウォ- 303 - ータージェット技術や土質改良体の深層撹拌混合工法などを適用すれば充分に適用可能であると考えられる.具体的な NB ウェイト沈降層回収モデルを図-7 に示す.まず,NB ウェイト沈降層に対して,二重管ロッドの内管から CMC水溶液を高圧噴射し流動性を有する NBC へ再生させた後,二重管ロッドの外管から NBC を回収する.このとき回収した NBC は高濃度で放射性核種を含有した状態になっていると推察されるため,最終的には水分を除去して減容化を図ることが望ましい.よって回収した NBCはスクリーン工程を経て回収タンクへ圧送し沈降分離によって上澄み水を除去した後,乾燥に図-7NB ウェイト沈降層回収モデル概要図よって水分を除去することを考えた.そこで今回 NB ウェイト沈降層の乾燥による重量減少についても確認した.試験体作製にあたり,まず表-1に示した基本配合の NBC を作製し φ50mm のブリージング袋に入れる.次に写真-4 に示す様にシリンダーにセットした状態で 40℃ に設定した恒温槽内で 7 日間静置し NB写真-4 NBC 静置状況写真-5 NB ウェイト沈降層乾燥状況ウェイト沈降層を形成させる.そして φ50 ㎜×h23 ㎜の寸法に切り出し成形した NB ウェイト沈降層試料を写真-5 に示すように恒温槽に入れ,110℃で恒量になるまで乾燥させ重量の変化を確認した.その結果,NB ウェイト沈降層は 9~10%程度の重量減少が確認され,NB ウェイトの比重が 4.3 程度であることを考慮すると,NB ウェイト沈降層は PCV 内から回収後に体積あたりでおよそ 30%程度減容化できる可能性が示唆された.5. おわりに本論は,福島第一原子力発電所建屋からの燃料デブリ取出しにおける補助材料として開発した NBC について,PCV内への圧送充填方法,燃料デブリ取出し時のロッド掘進方法,NBC 回収および減容化方法までを基礎的な試験や既往の技術をもとにモデル化しまとめたものである.福島第一原子力発電所廃炉に伴う燃料デブリ取出しは,国家プロジェクトであり,その一助として寄与できれば技術者としてこの上ない喜びである.筆者らは,次代へより良い国を引き継いでいきたいとの思いから材料開発に取り組んでいるが,このような筆者らを受け入れ日頃からご指導下さっている早稲田大学小峯秀雄先生に対してここに謝意を表します.参考文献1) 稲元裕二・成島誠一・長江泰史・水野正之・氏家伸介:高比重変形追従材を用いた放射能汚染貯蔵技術の開発,地盤工学会特別シンポジウム―東日本大震災を乗り越えて―,pp.55-59,2014.2) 氏家伸介・長江泰史・成島誠一ら:変形追従型放射線遮蔽材の開発,第 11 回環境地盤工学シンポジウム発表論文集,pp.471-478,2015.3) 氏家伸介・成島誠一・小峯秀雄・吉川絵麻:福島第一原子力発電所廃炉への適用に向けた放射線遮蔽材のレオロジー特性評価,第 51 回地盤工学研究発表会,pp.581-582,2016.4) 氏家伸介・小峯秀雄・吉川絵麻・成島誠一・長江泰史:超重泥水を構成する固形材料の配合組成と亀裂閉塞性・遮水性との関係,第 53 回地盤工学研究発表会,高松,pp.389-390,2018 年 7 月.5) Shinsuke Ujiie・Hideo Komine・Shigeru Goto・Ema Yoshikawa・Seiichi Narushima・Yasushi Nagae : Water-proof Property ofSuper Heavy Bentonite Slurry for Decommissioning of Fukushima Daiichi NPS, WM2019, 089a-a4, Phoenix, (March 2019).6) 氏家伸介・成島誠一・長江泰史・小峯秀雄:福島第一原子力発電所廃止措置に向け開発された超重泥水の遮水特性,NDEC-4,2019 年 3 月 23 日,2015.- 304 -
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  • タイトル
  • 落球探査試験による分別土砂地盤の物性評価と品質管理の適用性について
  • 著者
  • 中村 吉男・今山 真治・小島 淳一・小澤 一喜・藤崎 勝利・池尻 健
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 297〜300
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000053
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)9-3落球探査試験による分別土砂地盤の物性評価と品質管理の適用性について中村吉男 1・今山真治 2・○小島淳一 2・小澤一喜 3・藤崎勝利 3・池尻健 41 愛知工業大学工学部・2 アイコ・3 鹿島建設・4 セントラル技研1. はじめに盛土地盤の品質管理は、一般に含水比と乾燥密度に着目した締固め度に基づき行われる。この方法は、せん断強度、透水性、圧縮性等、地盤の力学特性を直接求め、設計数値との関連を照査して品質を吟味するものではないが、含水比を測り土の状態を調べ、締固めによって得られる乾燥密度を測って施工の良否や盛土の機能を評価する方法として広く用いられている。一方、廃棄物層や災害廃棄物由来の分別土砂の力学物性については、研究途上にあり十分な知見が得られておらず、これらの材料を用いた盛土工事においては、せん断強度(c,φ)や変形係数などの力学定数を迅速かつ簡便に測定し、設計数値を満たすことを確認して施工を進める管理手法が求められることが少なくない。本研究は、木片の混入した模擬分別土砂を作成し、室内試験と原位置試験法(落球探査試験)で得られる変形係数を比較することにより、落球探査試験を用いた分別土砂地盤の物性評価と品質管理の適用性について議論するものである。2. 落球探査試験における応力伝播特性について2.1 落球探査法の概要 1)落球探査試験は、加速度センサーを内蔵した半球状の金属製重錘(直径 20cm、重さ 19.1kg)を用いるサウンディングである。機器構成は図-1 に示す通りであり、球体を高さ50cm の位置から自由落下させ加速度と接触時間の関係を観測するものである。重錘の着地時に加速度センサーで捉えた衝撃波の継続時間(接触時間)は地盤が軟らかい(=E が小さい)ほど長く、硬いほど短くなるため、接触時間と加速度の関係から地盤の硬軟を表す変形係数(E)と密接に関係しているものと考えられる。落球探査試験では、Hertz(ヘルツ)が提案した弾性球体の接触理論図-1落球探査の機器構成 2)1)に基づき、重錘の着地を半径無限大の球体とみなされる地球(地盤)と、もう一つの球体である重錘との接触事象ととらえ、その挙動から地盤の変形係数 E を推定することができ、経験的な相関式を用いるのではなく式(1)による Hertz の理論式に接触時間を代入して E を算出する。ただし、式(1)は理想弾性体を対象としたものであり、地盤に適用する際は探査結果をもとに上式による推定値を補正する必要がある。ここでは、既往研究 2)による補正方法を適用した。12120.4(1)0ここに、T:接触時間、m:落球の重さ、r:落球の半径、Es、Ef:落球と地盤の変形係数、νs、νf:落球と地盤のポアソン比、V0:着地速度=(2gH)0.5、g:重力加速度、H:落下高さ、a:定数(≒4.53)2.2 落球探査試験における応力伝播特性について 3)落球探査試験法の工学的意義を究明するため、落球探査試験の特徴である衝撃荷重の応力伝播特性を評価する目的で室内実験を行った。具体的には、土層厚さと側方の拘束効果に着目し変形係数(地盤変形を線形弾性論で評価する際のヤング率に等しい次元;ML-1T-2)の変化を把握し、半無限地盤として適用しうる土層規模と探査深度について考察した。(1)土層規模半無限弾性地盤の応力分布はブシネスクにより理論的に求められている。ただし、ブシネスク解は集中荷重を想定していることから均等な円荷重が作用した場合の応力解 4)については、その荷重範囲で積分し式(2)として与えられる。Applicability of Falling Ball Inspection Test on the Quality Control for Separate Waste Soils containing Wood ChipsNakamura Y.1, Imayama S.2,Kojima J.2, Ozawa K.3, Fujisaki K.3, Ikejiri K.4 (1Aichi Institute of Technology, 2 AICO Co., Ltd,3Kajima Corporation, 4 Central Giken Co., Ltd)KEYWORDS: Disaster debris, Quality Control, Fall Ball Inspection, Modulus of Deformation- 297 - zp=(2)zここに、B:基礎幅、σz:荷重中心軸上の鉛直応力、p0:等分布荷重、z:鉛直深度土層規模を設定するにあたり、基礎幅 B に相当する載荷幅を、落球探査試験において生じる落球の載荷痕から B=10cmと想定すると、(2)式においてσz が 0.1p0 または 0.05p0 となる z はそれぞれ 1.5B (15 cm)、2.0B(20 cm)程度と試算される。基礎の設計において応力の伝播状況伝達範囲として 0.1p0 程度の範囲を対象としていることを考慮すると、土層の深さは D=20 cm 程度あればよいことになる。また、弾性半無限地盤を想定した場合、落球探査試験における荷重伝達は球状であり、側方の拘束効果についても同程度の範囲を考えればよいものと思考されるが、球体の直径 20 cm であることから試験時における球体とモールドの接触等を考慮して直径 30 cm と 50 cm のモールドを使用することとした。(2)E50 と Ef の比較60実験に使用した材料は、日本統一分類の細粒分質砂質礫(GFS)に属し、試料の最大粒径 37.5 ㎜、自然含水比め密度となるように試料調整を行い同一粒度で三軸試験と落球探査試験を行った。三軸圧縮試験は非圧密非排水条件(UU)にて、JGS 0521 に準じ、供試体寸法φ15 cm×H30cm で行った。応力~ひずみ曲線から求めた変形係数 E50 と側圧σ3 の関係は、図-2 に示すとおりであり、σ3=50~150変形係数 E50 (MPa)50wf=30.8%で JIS×1Ec の突固めエネルギーで得られる締固kPa における E50 は、20~40 MPa の範囲にあることが分か4030201000った。また、落球探査試験において、試験土層は 1 層 5cm50図-2め、土層厚 5cm(1 層)、10cm(2 層)、15cm(3 層)、20cm(4 層)の 4 つの土層を作製し実験を行った。図-3 は土層た載荷荷重の影響が表れて変形係数が大きくなっているものと考えられる。3 層目から 4 層目で締め固めた土層の試験結果は値が収束し、三軸圧縮試験の E50 とほぼ一致し側圧と E50 の関係50変形係数Ef (Mpa)変形係数は試験土層直下の鉄板とコンクリートに伝播し20060厚(層数)に対して得られた変形係数の関係を示したものって変形係数は低下する傾向にあり、D=5 cm で得られた150側圧σ3 (kPa)として所定の密度になるようにランマ―で均一に締め固である。土層モールドの径に関わらず層厚が増すにしたが100ていることから、深さ 15~20 cm が落球探査における土層内の応力伝播域での値であるものと考えられる。なお、403020φ=30cm10φ=50cm001345土層総数 (層)D=20 cm における落球探査試験において生じた落球の載荷痕は B=9.0 cm 程度であり、(1)項で示したブシネスク解に2図-3土層厚と Ef の関係よる応力伝播域とも整合性のとれた結果となっている。以上、室内試験結果から、半無限地盤を想定した原地盤での探査試験を室内試験で再現するためには、試験の容易さ(手間)を考慮しφ=30 cm とし、D=20 cm の土層を使用することとした。なお、本節では土層規模の選定に着目して礫質土(GFS)を用いた実験結果を示したが、後述する模擬分別土砂においても同様に E50 と Ef の相関性を確認しており、土層寸法の適用条件は満足するものと思考される。3. 分別土砂の品質管理における落球探査試験の適用性3.1 実験試料木片などの夾雑物が混入した分別土砂を用いた盛土工事において、落球探査試験により物性を評価して品質の管理を行うことの有効性を吟味するため、砂(5 号珪砂:K と表記)と粘土(岐阜県土岐市産、クレイサンド:Cs と表記)を混合した土砂に木片を混入させた模擬分別土砂を用いた土層実験を行った。ここで、模擬分別土砂の粒度組成は、気仙沼処理区 5)における津波堆積物由来の分別土砂の粒度分布を参考として砂(K)と粘土(Cs)を乾燥重量比で 1:1.5 の- 298 - 割合で混合した。模擬分別土砂の物理特性と粒度分布表-1をそれぞれ表-1 および図-4 に示す。また、分別土砂模擬分別土砂の物理特性KCs:K=1:4Cs:K=1:1.5Cs:K=1:0.25Cs2.6472.6522.6572.6662.671最大粒径(mm)2.02.02.02.02.0礫分(%)0.00.00.00.00.0見なし得る土層(φ=30cm、 D=20cm)に、模擬分別砂分(%)100.082.462.623.46.4土砂を締固めエネルギー一定の条件で含水比を変化シルト分(%)0.08.918.637.244.4させて突き固めて試験体を作成し、変形特性を調べる粘土分(%)0.08.718.839.449.2ことにより分別土砂の品質管理における落球探査試工学的分類名SSFSFCCL中に混入する木片は最大径 10~30 ㎜の園芸用のバーク材を使用して、乾燥重量比で Pw=0,2,4,8%加え項目3土粒子密度 ρs(g/cm )て模擬分別土砂とした。そして、前章で検討した落球探査試験の応力伝播特性を参考として半無限地盤と験の適用性を検討した。3.2 実験結果0.005各試験体の変形係数は表-2 に示すとおりであり、80している。図-5 は、加速度と接触時間の関係について木片混入量毎に整理したものである。図中のインデックスはピークの加速度を記入したものであり、含水比(w)の増加に伴って加速度のピーク値は低下し接触時間が増加していることが分かる。ただし、通過質量百分率 p %90w-wopt は試験含水比と最適含水比の差を表し、D 値は工事の品質管理において規定される締固め度に対応シルト0.250細砂0.850中砂2粗砂4.75細礫19中礫75粗礫100試験の締固め条件と対比して整理した。同表に示す試験体の乾燥密度を最大乾燥密度で除した値で、土0.075粘土70津波堆積土砂の粒度範囲6050405号珪砂(K)30クレーサンド(CS)CS:K=1:420CS:K=1:1.510CS:K=1:0.250この関係は、Pw=0~4%の試験においては明瞭である0.0010.010.1粒径 d mmが、Pw=8%は 2 つのグループに大別されていることが特徴的であり、少なからず木片の混入の影響が分別図-4110100模擬分別土砂の粒度組成土砂地盤の変形性影響を及ぼすことが考えられる。そこで、木片の混入が変形特性に与える影響を調べるため、(w-wopt)の差を±1%で区分し Pw と Ef の関係を図-6 のように整理した。w-wopt<-1 の乾燥側の締固めでは Pw の増加に伴い指数的に変形係数が低下するが、1≦w-wopt の締固め状態では Pw=0~9%の間でほぼ一定値を取ることが分かった。また、図-7 は、w-wopt と Ef の関係を示したものであり wopt-1%より湿潤側において、変形係数は木片の混入量の影響はほとんど受けず、変形係数は含水比状態に支配されることが分かる。分別土砂の変形係数を支配する要因として土粒子の摩擦に着目すると、土が乾燥しているときは、粒子相互の摩擦が高く、また木片の混入に伴い締固め密度は低下するので土粒子間の接触点は少なくなり木片の混入が分別土砂の変形係数に与える影響は大きい。一方、含水比が Wopt-1%より湿潤側に移行するにしたがって土粒子相互の摩擦は低下する。よって、木片は土粒子の移動が容易になったマトリックス部で存在することになり、変形係数に与える木片の影響は徐々に緩和され、木片の重量比率が増えても分別土砂の変形係数は大きく変化しなくなるものと推定される。表-2Pw(%)3ρdmax(g/cm )wopt(%)模擬分別土砂における落球探査試験結果呼称D95dry02.0239.6D100optD95wetwopt -3.121.84611.4wopt -1.4wopt +0.6wopt +2.6wopt -4.8wopt -2.141.74814.8wopt -0.7wopt +1.9wopt +4.3wopt -4.5wopt -1.181.49817.6wopt +0.6wopt +1.3wopt +2.2wopt +5.2w(%)7.09.612.58.310.012.014.010.012.714.116.719.113.116.518.218.919.822.8- 299 -ρd(g/cm3)1.9222.0231.9221.6751.8261.8421.7971.5451.6661.7391.7031.6371.3481.3441.4931.4351.3751.327w-wopt(%)-2.60.02.9-3.1-1.40.62.6-4.8-2.1-0.71.94.3-4.5-1.10.61.32.25.2D値(%)95.0100.095.090.798.999.897.388.495.399.597.493.690.089.799.795.891.888.6Ef(Mpa)41.5811.922.3728.0928.977.143.0121.4935.8710.684.131.6613.8116.309.595.062.882.24 1414Pw=0%108D95dry7.289D100opt6D95wet43.189 8wopt‐3.1wopt‐1.4wopt+0.6wopt+2.67.09764.07840051012.1312152025303514計測時間 (10⁻³ s)Pw=4%10wopt‐4.87.8158wopt‐2.16wopt‐0.74.7494wopt+1.93.06305101520wopt+4.322530Pw=8%108.5558wopt‐4.58.458wopt‐1.17.9455.6926wopt+0.6wopt+1.34.3584wopt+2.24.158wopt+5.22035計測時間(10⁻³ s)1210.18加速度(10² m/s²)加速度(10² m/s²)10200051015202530計測時間(10⁻³ s)35図-50510加速度と接触時間の関係501520253035計測時間(10⁻³ s)50Pw=0%Pw=2%Pw=4%Pw=8%w‐wopt<‐1y = 39.973e‐0.119xR² = 0.80344040—1≦w‐wopt<11≦w‐wopt30Ef(Mpa)Ef(MPa)10.352.516214Pw=2%1211.72加速度(102 m/S²)加速度 (10² m/s²)1220103020100y = 8.5846e‐0.342xR² = 0.803400246810‐6‐4‐2Pw(%)図-60246w‐wopt(%)図-7Pw と Ef の関係w-wopt と Ef の関係4. おわりに災害廃棄物由来の分別土砂を用いた盛土の物性についてはいまだ十分な知見が得られておらず、今後とも原位置での力学定数を迅速かつ、簡便に把握できる品質管理を行って施工することが求められる。この観点から、落球探査試験による品質管理の適用性を吟味した結果、木片を含む模擬分別土を対象としても wopt-1%より湿潤側において、分別土砂地盤の変形係数は、木片の混入量の影響はほとんど受けず含水比状態に支配されることが分かった。フィルダム等 6)の土工管理において許容される含水比は wopt±α とされることがあり、試験に供した模擬土と同等の性状を有する分別土砂を対象とした場合、例えば、wopt -2≦w≦wopt +1 で得られる変形係数を品質管理基準値として、落球探査による管理を行えば、Pw≦8%の分別土砂を利用した盛土工事において均質な地盤の構築が可能であるものと思考される。謝辞:本研究は、環境省の環境研究総合推進費(3K163011)により実施された。記して謝意を表する。参考文献1)Goldsmith W.: Impact the Theory and Physical Behavior of Colliding Solid, Richard Clay and Company, Ltd., pp.83-91, 19602)吉田・北本・川野・池尻:落球探査による地盤の諸特性の評価,第 46 回地盤工学研究発表会, pp.113-114,20113)中村吉男・小島淳一・小澤一喜・藤崎勝利・池尻健:落球探査試験における締固め土の応力伝播特性について(その1),第 53 回地盤工学研究発表会, pp.297-298,20184)日下部治:土質力学,コロナ社,pp.133-134,20045)宇野浩樹・根岸昌範・高畑陽・池田千博:気仙沼処理区における津波堆積物由来の再生資材と盛土材への適用,地盤工学会誌,Vol.63 No.11/12,No.694/695,pp.20-23,20156)土質工学会編:フィルダムの調査・設計から施工まで,p.304,1983- 300 -
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  • タイトル
  • 木屑と製鋼スラグを混合した材料のせん断特性
  • 著者
  • 吉川 友孝・押野 滉大・菊池 喜昭・野田 翔兵・柿原 結香
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 291〜296
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000052
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)9-2木屑と製鋼スラグを混合した材料のせん断特性〇吉川友孝 1・押野滉大 1・菊池喜昭 2・野田翔兵 2・柿原結香 11:東京理科大学大学院,2:東京理科大学1. はじめに2011 年東北地方太平洋沖地震では,津波堆積物を含め多くの災害廃棄物が発生した.その中でも特に木屑を多く含むふるい下残渣と呼ばれる災害廃棄物は,支持力不足や木屑の腐朽影響・過程が不明であるといった理由から,再利用がされなかった 1).また,ふるい下残渣は,回転ふるい機や振動ふるい機を用いて,20mm 以下に調整された土砂分であるが,ふるい下残渣に含まれる木屑の形状や大きさが処分場によって大きく異なるといった問題がある.一方,粗鋼生産の際に産業副産物として,転炉系製鋼スラグが年間約 1400 万トン生成される.この製鋼スラグは水硬性を有する 2)ことや,耐摩耗性に優れる 3)といった特徴がある.製鋼スラグの水硬性によってふるい下残渣を固化することで,地盤材料として有効・高度利用することが可能となれば,ふるい下残渣の処分量を低減するだけでなく,災害後の復旧・復興に向け,迅速な対応を可能にする.また,現在地盤材料採取のために行われている環境破壊を抑制することもできると考えている.これまでも複合地盤材料に関して様々な研究4,5)が行われてきている.著者らは,ふるい下残渣中の木屑がふるい下残渣と製鋼スラグを混合した材料の力学特性に大きな影響を及ぼすと考え,木屑と製鋼スラグを混合した材料のせん断特性について実験的に検討してきた6,7).その結果,木屑の変形に起因すると思われる残留せん断強度の増加を確認した.また本混合材料は,木屑の混合割合の増加に伴いせん断強度が低くなり,強度の発現時期が遅くなるものの地盤材料としては十分な強度が確保できるという結論を得た.しかし,これらの結果には,ばらつきが多く,再現性の確保という意味では不十分であった.このばらつきについて,製鋼スラグの水硬性の発現が一様でないことが要因であると考えている.本研究では,木屑と製鋼スラグ,さらに高炉スラグ微粉末を混合した材料を用いて,木屑の形状や混合割合,養生期間などの違いがせん断特性に与える影響を把握することを目的に,一軸圧縮試験を行った.なお,高炉スラグ微粉末は,製鋼スラグの固化反応の促進・補助を目的として混合し,配合割合に関しては既往の研究 8)から決定した.2. 実験に使用した試料使用した試料は,二種類の木屑,エージング処理をしていない転炉系製鋼スラグ(ρs = 3.3 5g/cm3, D50 = 0.75 mm, 以下,製鋼スラグ),固化系補助材として高炉スラグ微粉末 4000(ρs = 2.89 g/cm3),イオン交換水である.木屑は,繊維状のココヤシ (ρs = 0.53 g/cm3,以下,ココピート),粒状のヒノキ(ρs = 0.41 g/cm3)である.図 1a,b にココピートとヒノキの外観を示す.形状の違いが混合材料の一軸圧縮特性に及ぼす影響を比較するため,本来同じ種類の木屑を用いることが望ましいが,適当な粉砕機を用意できなかったため,異なる種類の木屑を使用した.ココピートは,ココナッツ果実の殻を構成する繊維状の有機物で,地盤改良材として多く利用されている.本研究では図 1aのように,直径 0.1~0.4 mm,最大長さ 40 mm のココピートを使用した.ヒノキは,日本と台湾に生息する針葉樹で,本研究では図 1b のように,粒状体(縦横長が最大 5 mm 程度)に粉砕されたものを使用した.なお,寸法は任意に取り出した木屑 50 個を計測したものである.図 2 に製鋼スラグの外観を示す.図 2 の写真から分かるように,製鋼スラグは,稜角を帯びた形状をしており,主に,CaO,SiO2,FeO+Fe2O3,MgO,Al2O3 で構成されている.このように,製鋼スラグには Fe や Mg が含まれていることかa.b. ヒノキ(粒状)ココピート(繊維状)図 1 木屑の外観図 2 製鋼スラグの外観Shear characteristics of materials mixed wood chips with steelmaking slagTomotaka Yoshikawa1, Akihiro Oshino1, Yoshiaki Kikuchi1, Shohei Noda1, Yuka Kakihara1, (1Tokyo University of Science)KEYWORDS : Under-sieve residue, Wood chips, Steelmaking slag, Unconfined compression strength- 291 - 100Passing mass percentage (%)ら,粒子密度(ρs = 3.35 g/cm3)は,一般的な土粒子密度 9)( ρs = 2.6~ 2.8 g/cm3)よりも高い。図 3 に製鋼スラグの粒径加積曲線を示す.この製鋼スラグの均等係数 Uc = 18.42,曲率係数 U’c = 0.679 である.図 4 に A-b 法で実施した各種配合条件での締固め試験(JIS A1210)の結果を示す.これまでの研究から,いずれの条件でも締め固めにくく,含水比によらず乾燥密度がほぼ一定となることが分かっている 11)ため,各条件で 1, 2 点しか試験を実施していない.また,以降のスラグとは,製鋼スラグと高炉スラグ微粉8060402001E-30.001末を質量比 96 : 4 で配合したものである.表 1 に供試体作製条件を示す.表 1 中の目標乾燥密度 ρd は,0.010.1Particle size (mm)相当するd である.それぞれの含水比は,オーバーコンパクシ2.43Dry density d (g/cm )め試験を実施していないココピート混合割合 15, 20, 27 vol%の目標乾燥密度および含水比は,ココピート混合割合 0, 5, 10, 33vol%の試験結果から線形補完して算出した.供試体は,プラスチックモールド(直径 50 mm×高さ 100 mm)を用い,5 層突固め法で作製した.表 2 に各種配合条件での各試料の質量を示す.作製した供試体は,所定の期間恒温室(20 ℃)で養生し,軸ひずみ速度 = 1 %/min で一軸圧縮試験を行った.Wood chip typesSquare No wood chips(=Only slag)Circle CocopeatTriangle Hinoki2.01.6Wood chipsmixing ratio (vol%)Black0(=Only slag)Blue5Red10Green 20Orange 33Pink671.20.80.4試験は基本的に各条件で 3 本行っているが,ココピート混合割10図 3 製鋼スラグの粒径加積曲線図 4 より求まる最大乾燥密度に基づく目標締固め度 Dc = 95%にョンを起こす直前の含水比とした.また,試料の都合上,締固1合 10, 15, 20 vol%は 1 本しか行っていない.010203040Water content w (%)50図 4 各試料の締固め曲線3. 一軸圧縮試験結果と考察表 1 供試体作製条件3.1. スラグのみの一軸圧縮特性図 5 にスラグのみの応力ひずみ曲線を示す.図中のプロットは各試験でのピーク強度,すなわち木屑の種類- (スラグのみ)一軸圧縮強さ qu を示している.図 5 よりばらつきはあるものの,養生期間の増加に伴って, qu がココピート増加することが分かる.また,養生期間によらず,破壊ひずみf =0.5 ~ 1.0 %程度であり,養生に伴うf の変化は確認できない.ヒノキ図 5 の試験結果を基に,図6に一軸圧縮強さ qu と変形係数 E50の関係を示す.変形係数 E50 は,木屑の内割混合体積割合 (vol%)05101520273310203367目標乾燥密度 d (g/cm3)1.921.821.691.561.431.241.071.821.631.450.81含水比w (%)12.013.015.117.319.422.425.014.321.125.030.0養生期間(days)0, 7, 28, 8477, 28, 847, 28表 2 各配合条件での試料質量E50 = (qu / 2) / ε50 (MPa)より算出した.ここで,ε50 は qu / 2 時の軸ひずみ εa (%)である.図 6 より本試験条件では,qu と E50 の間にやや非線形関係がある.この関係式から qu の増加に伴い, E50 が増加することが分かる.つまり,養生期間の増加とともに,ε50 が減少することが分かる.図 5 の試験結果を基に,図7に一軸圧縮強さ qu と破壊ひずみfの関係を示す.図 7 よりf にばら木屑の内割混合 木屑質量 製鋼スラグ質量体積割合 (vol%)m 木(g)m 製(g)00.00361.72- (スラグのみ)52.96340.98105.74313.24158.31285.70ココピート2010.65258.392713.41219.923315.24187.72104.81339.38204.30298.34ヒノキ3.83258.40332.13122.2967木屑の種類- 292 -高炉スラグ質量m 高(g)15.0714.2113.0511.9010.779.167.8214.1412.4310.775.10 1500ない.図 6, 7 を併せて考えると,養生期間の増加とともに ε50は減少する傾向が見られたが,f の減少は見られなかった.つまり,養生期間の増加に伴い,E50 は大きくなるが,f はあまり変化しない靭性を備えた材料となる可能性がある.図 8 にスラグのみの養生期間と乾燥密度d の関係を示す.図 8 より,ばらつきはあるものの,養生なしよりも 7 日養生のd が高く,さらに 28 日養生よりも 84 日養生のd がやや低Axial stress  (kPa)つきはあるものの,養生期間の増加に伴うf の変化は大きくCuring periods (days)0728841200900600300いことが分かる.0図 9 にスラグのみの養生期間と含水比 w の関係を示す.図09 より 28 日養生までは養生期間の増加とともに w が減少すの増加に伴い水和反応が進むことで,含水比の低下および乾燥密度の増加が確認できると著者らは考えた.しかし,図 5より 28 日養生から 84 日養生にかけて qu が増加しているのに対し,図 8, 9 ではd の増加や w の減少を確認できなかった.この要因については不明であるが,第 1 に,28 日養生以降の強度増加は水和物の結晶構造の変化によるものであり,そもそも含水比は変化しない可能性がある.第 2 に,本研究では 80 ℃の炉乾燥試料を使用して含水比の計測しているこDeformation modulus E50 (MPa)の水和反応による強度増加に期待している.そこで養生期間23Axial strain a (%)45図 5 スラグのみの応力と軸ひずみの関係る傾向見られた.一方で 84 日養生では 28 日養生よりも w が高くなった.本研究材料は,製鋼スラグと高炉スラグ微粉末1500Curing periods (days)207 E50=0.000122qu +0.07508qu24002884 R =0.9153002001000とから,自由水だけでなく結合水の蒸発や,加熱による水和反応が乾燥中に起こる可能性があり精度の良い計測が出来050010001500Unconfined compression strength qu (kPa)図 6 スラグのみの一軸圧縮強さと変形係数の関係ていなかった.そこで,真空乾燥機を使用して含水比変化の再検証を行うとともに,化学分析や画像解析を行うことで,2.0Failure strain f (%)この要因を解明したいと考えている.3.2. 木屑の形状と混合割合の違いが混合材料の一軸圧縮特性に及ぼす影響図 10a, b に繊維状のココピートおよび粒状のヒノキ混合材料の 7 日養生の応力ひずみ曲線を示す.各図中のプロットは各試験でのピーク強度,すなわち一軸圧縮強さ qu を示している.図中には比較の為にスラグのみの 7 日養生の結果も示している.なお,3 本の試験を行った条件に関しても,試験Curing periods (days)0728841.51.00.50.0結果に大きなばらつきはないと判断し,代表的な 1 本の結果を示している.また,図中の数値はそれぞれ,木屑の混合割050010001500Unconfined compression strength qu (kPa)図 7 スラグのみの一軸圧縮強さと破壊ひずみの関係合を示している.図 10a より繊維状のココピートを 5~20vol%混合した場合とスラグのみ(図 10a 中の 0 vol%)とを比2.00ラグのみと比較して,ピーク強度後の応力低下が緩やかで,破壊ひずみf も大きくなることが分かる.図 10b よりヒノキを 10 vol%混合した場合,スラグのみと比較して,qu が大きくなることが分かる.しかし,ヒノキの混合割合が 20 vol%を超えると qu が減少することが分かる.また,図 10a のココピートの応力ひずみ曲線に比べて,ピーク強度後の応力低Curing periods (days)0728843認できる.また,ココピートを 10~20 vol%混合した場合,スDry density d (g/cm )較すると,E50 は小さくなるものの,qu は増加することが確1.951.90下が顕著であることが分かる.図 11a, b, c に 7 日養生のスラグのみ,繊維状のココピート 10 vol%混合材料,粒状のヒノキ 10 vol%混合材料の試験後の外観を示す.ピーク強度時の外観ではなく,試験終了時1.8503060Curing periods (days)図 8 スラグのみの養生期間と乾燥密度の関係- 293 -90 ラグのみとヒノキ 10 vol%混合では,せん断層が鉛直方向に延びており,破壊形態に大きな違いは見られなかった.なお,ココピート 10vol%混合した材料でa = 1.2%(=スラグのみのf)時の外観は載荷前の外観とほとんど変わらず,せん断層は確認できなかった.また,図 11b のココピートを 10 vol%混合した場合には,せん断層が厚く斜めに入っていることがWater content ratio w (%)(q=2/3qu)の外観であることに留意されたい.図 11a, c よりス1412108Curing periods (days)0728846090分かる.ここで一般的に不均質な供試体である場合,弱いと6ころから崩壊するために,せん断層がくさび型ではなく,斜030Curing periods (days)めに入ることがある.ココピート 10 vol%混合の場合も最終が高い.図 10 の試験結果を基に,図 12 に木屑混合割合と一軸圧縮強さ qu の関係を示す.なお,試験を複数本行った(ココピート 10, 15, 20 vol%混合以外) ものについては平均値を示している.図 12 よりココピートとヒノキで全体として同様の傾向を示している.木屑の形状によらず,混合割合が 10 vol%程度ではスラグのみよりも大きな強度を発揮する.また,混合割合が 27 vol%まではココピートを混合した場合のほうがヒノキを混合した場合よりも qu が大きいことが分かる.一図 9 スラグのみの養生期間と含水比の関係1000Axial stress (kPa)的には供試体の弱い部分にせん断層ができ,崩壊した可能性Cocopeat mixing ratio (vol%)10155200600800332000方で 33 vol%混合するとその関係は逆転し,ヒノキを混合し2740003た場合のほうが大きい qu を示す.このことから,木屑形状の6違いが混合材料の qu に及ぼす影響は,混合割合によっても混合割合が等しい時,粒状のヒノキを混合した場合のほうが繊維状のココピートを混合した場合よりも大きな E50 を示している.また,ココピートを混合した場合,混合割合の増加に伴い,非線形的に E50 が低下することが分かる.一方で,ヒノキを混合する場合,10 vol%混合では,スラグのみよりも大きな E50 を示し,20 vol%以上混合した場合ではスラグのみが大きくなった要因として,物理的要因と化学的要因が考え化学的要因として,ヒノ1518Hinoki mixing ratio (vol%)1006002040033200660036912Axial strain a (%)られる.まず物理的要因として,ヒノキ粒子とスラグ粒子のかみ合わせが良く,骨格構造が安定した可能性がある.次に18800よりも小さく,混合割合の増加に伴い E50 も低下することが分かる.ヒノキ 10 vol%混合の場合に,スラグのみよりも E50151000Axial stress (kPa)図 10 の試験結果を基に,図 13 に木屑混合割合と変形係12a).ココピート異なることが分かる.数 E50 の関係を示す.図 13 より全体の傾向として,木屑の9Axial strain a (%)b).ヒノキ図 10 ココピート・ヒノキの応力ひずみ関係(7 日養生)キからの溶出物がスラグの固化反応を促進した可能性と,ヒノキ 10vol%混合の含水比がスラグの固化反応に最適な含水比であった可能性がある.図 14 に木屑混合割合と破壊ひずみ f の関係を示す.図 14 より木屑の混合割合が等しい場合,ココピート混合のほうが,ヒノキ混合よりもa.スラグのみ(a = 1.2%)b.ココピート 10vol%( a = 6.3%)c.ヒノキ 10vol%( a = 1.9%)図 11 供試体破壊時の外観(7 日養生スラグのみ・ココピート 10vol%混合・ヒノキ 10vol%混合, 一部のクラックを白線で強調)- 294 - 加率はココピートのほうが大きく,20 vol%混合では,ヒノキを混合した場合のf = 2 %程度であるのに対し,ココピートを混合した場合にはf = 11 %程度となる.以上より,繊維状のココピートを 5 ~ 20 vol%混合した場合はスラグのみよりもf が大きく,qu も大きくなることから,靭性を備えた材料となる可能性がある.ただし, ココピートを 15 vol%以上混合すると剛性が著しく低下するため,大変形を許容する場合での使用を検討することや,固化材をさらに添加するなどの対策が必要である.図 15 にスラグのみ・養生なしの一軸圧縮強さ(qu,slag7 = 511kPa)で正規化した qu / qu,slag7 と木屑混合割合の関係を示す.なUnconfined compression strength qu (kPa)大きなf を示している.また,混合割合の増加に伴うf の増1000る強度増加に及ぼす影響について,ココピートの混合割合が10 ~ 27 vol%では,7 日養生の結果しかない為,5, 33 vol%混合の結果からの推察であるが,混合割合の増加に伴う 7 日養生以降の強度増加はあまりないと考えられる.これは 33 vol%混合した場合では 84 日養生を行っても 27 vol%混合した 7 日養生よりも qu が低いことから上述のように推察できる.次に,ヒノキの混合割合が養生による強度増加に及ぼす影響にDeformation modulus E50 (MPa)いない.図 15 よりココピートの混合割合の違いが養生によ8006004002000020070Wood chip typesSquare Nothing(=Only slag)CircleCocopeatTriangle Hinoki150100500ついて,スラグのみの 7 日養生から 28 日養生にかけての強0度増加率よりも,ヒノキを 10 vol%混合した場合の 7 日養生から 28 日養生にかけての強度増加率のほうが大きいことが102030405060Wood chips content ratio (vol%)図 12 木屑混合割合と一軸圧縮強さの関係(7 日養生)お,複数回試験を行った条件については平均値を示している.また縮尺の都合上,ヒノキ 67 vol%混合の結果は示してWood chip typesSquare Nothing(=Only slag)CircleCocopeatTriangle Hinoki102030405060Wood chips content ratio (vol%)70図 13 木屑混合割合と変形係数の関係(7 日養生)分かる.また,ヒノキを 20 vol%混合した場合でもスラグの15みと同等の強度増加率である.一方で,33 vol%混合した場合Wood chip typesSquare Nothing(=Only slag)CircleCocopeatTriangle Hinoki図に示していないが,67 vol%混合した場合でも強度増加はほとんど確認できなかった.このことから,ヒノキの混合割合の増加に伴う強度増加率の低下は,線形的ではなく,一定の混合割合を超えると,急激に養生による強度増加が期待できなくなると考えられる.図 16 にスラグのみの 7 日養生の変形係数 (E50,slag7 = 85.2Failure strain f (%)では 84 日養生でもほとんど強度増加が見られない.また,12963MPa)で正規化した E50 / E50,slag7 と木屑混合割合の関係を示す.0ここでも複数回試験を行った条件については平均値を示し0ている.図 16 よりココピート混合の 7 日養生と 84 日養生について,ココピートを 5 vol%混合しただけで養生による E50102030405060Wood chips content ratio (vol%)70図 14 木屑混合割合と破壊ひずみの関係(7 日養生)の増加率は大きく低下することが分かる,また,ココピート4を 33 vol%混合した場合には 84 日養生でも 7 日養生のスラCuring periods (Days)Black 7Red28Blue 84グのみの E50 の 1 割にも満たないことが分かる.次に,ヒノ3E50 の増加に期待でき,その増加率はスラグのみの場合と同程度である.そして,20 vol%のヒノキを混合した場合でも28 日養生することで,スラグのみ 7 日養生の E50, slag7 とほぼ同等の E50 を示すことが分かる.一方,ヒノキを 33 vol%混合した場合,84 日養生を行っても E50 はほとんど増加せず,スラグのみ 7 日養生の E50, slag7 の 4 割程度しか期待できないことが分かる.qu / qu,slag7キを 20 vol%混合した場合,7 日養生から 28 日養生までのWood chip typesSquare Nothing(=Only slag)CircleCocopeatTriangle Hinoki210051015202530Wood chips mixing ratio (%)図 15 木屑混合割合と qu / qu,slag7 の関係- 295 -35 44. まとめ及び今後の課題Curing periods (days)Black7Red28Blue 84本研究は,木屑(繊維状のココピートまたは粒状のヒノキ)いて木屑の形状の違いが一軸圧縮特性に及ぼす影響の検討を実験的に行った.本研究で得られた知見を以下に示す.1)同体積の木屑を混合した場合でも木屑の形状が異なると応力ひずみ関係は大きく異なり,特に繊維状のココピ3E50 / E50,slag7と製鋼スラグおよび高炉スラグ微粉末を混合した材料におWood chip typesSquare Nothing(=Only slag)CircleCocopeatTriangle Hinoki21ートを混合した場合には,ピーク強度後の応力低下が非常に緩やかになる.2)繊維状のココピートの混合割合が 20 vol%以下であれ00ば,スラグのみよりも大きな強度を発現し,破壊ひずみも大きな靭性を備えた材料となる.ただし,混合割合が15 vol%以上になると,剛性が極端に低下するため,使51015202530Wood chips mixing ratio (%)35図 16 木屑混合割合と E50 / E50,slag7 の関係用用途によっては固化材をより添加するなどの対策が必要である.3)粒状のヒノキを 10 vol%混合した場合,スラグのみよりも大きな強度・剛性を発揮する材料となる.ただし,混合割合が 20 vol%以上になると,強度も剛性も著しく低下することから,使用時には木屑の混合体積を正確に把握する必要がある.4)木屑の形状によらず,混合割合が 33 vol%を超えると,養生による強度および変形係数の増加には期待できない可能性が高い.ただし,固化材の添加量をさらに増やした場合については検討する必要がある.今後の課題は,木屑を少量混合した材料において,スラグのみの材料よりも大きな強度および剛性を発揮する要因を明らかにすることである.そのため,木屑と砂を混合した材料でも本研究と同様の試験を行う予定である.また,木屑の腐朽が混合材料の力学特性に及ぼす影響を把握するため,アルカリ環境下の木屑の腐朽進行について検討する必要がある.謝辞:本研究は,鐵鋼スラグ協会から支援を受けて実施したものである.また,用いた製鋼スラグは,JFE スチールから提供していただいたものである.ここに記して謝意を表します.参考文献1)Inui, T.・Yasutaka, T.・ Endo, K.・Katsumi, T.:Geo-environmental issues induced by the 2011 off the Pacific Coast of TohokuEarthquake and tsunami, Soils and Foundations, Vol. 52, No. 5, pp. 856-871, 2012.2)坪井龍明・君島健之・小出儀治・転炉滓の水硬性, セメント技術年報, Vol. 28, pp. 98-103. 1974.3)M.R.カルマチャリヤ・内田一郎・出光隆・高山俊一:転炉スラグの路盤材への利用について, 土木学会論文報告集,Vol.282, pp.101-113, 1979.4)落合英俊・安福規之・大嶺望:混合地盤材料の開発とその力学的性能, 軽量地盤材料の開発と適用に関するシンポジウム発表論文集, pp.137-148, 2000.5)Otani, J.・Mukunoki, T.・Kikuchi, Y.:Visualization for engineering property of in-site light weight soils with air foams, Soilsand Foundations, Vol.42, No.3, pp.93-105, 2002.6)吉川友孝・菊池喜昭・兵動太一・黒岩祐介・田中志和:製鋼スラグを混合した木屑の地盤材料としての特性, 第 12回環境地盤工学シンポジウム発表論文集, pp.199-204, 2017.7)Yoshikawa, T.・Kikuchi, Y.・Hyodo, T.・Obayashi, S.・Kakihara, Y.・Iwai, D.・Kaneda, T.:The effect of aging treatment onthe mechanical properties of steelmaking slag mixed with crushed slag, New Advances in Geotechnical Engineering, pp.410-415,2018.8)吉川友孝・菊池喜昭・野田翔兵・柿原結香・押川玲香・押野滉大:固化系材料を混合した転炉系製鋼スラグの一軸圧縮特性, 第 15 回地盤工学会関東支部発表会, pp.298-301, 2018.9)土質試験の方法と解説 第一回改訂版, 社団法人地盤工学会, p.58, 2000.10) 吉川友孝・菊池喜昭・兵動太一・黒岩祐介:破砕した製鋼スラグを添加した製鋼スラグと木くずの混合材料の力学特性, 第 52 回地盤工学研究発表会, pp.471-472, 2017.- 296 -
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  • タイトル
  • 地震・津波災害で発生が想定される木片混入分別土の木片腐朽過程を考慮した力学特性の把握
  • 著者
  • 酒井 崇之・中野 正樹・池上 浩樹
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 285〜290
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000051
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)9-1地震・津波災害で発生が想定される木片混入分別土の木片腐朽過程を考慮した力学特性の把握酒井崇之 1・中野正樹 1・池上浩樹 21 名古屋大学大学院工学研究科・2 大成建設株式会社1. はじめに東日本大震災では約 3100 万トンという災害廃棄物・津波堆積物(以後,災害廃棄物等)が発生し,被災地の復旧・復興の妨げとなった。発生した災害廃棄物等は,処理処分・利活用のため,破砕・選別といった高度処理がなされた。選別されたものの中で分別土は,分別土の中に含まれる木片が土構造物へ与える影響が明らかになっておらず,特に木片腐朽に伴う長期的な安定性の低下が懸念されているために,有効利用のボトルネックとなり,早期復興の妨げとなった。将来起こるとされている南海トラフ巨大地震において発生する災害廃棄物等は約 3 億 1000 万トンと推定されており 1),東日本大震災の 10 倍であり,早期復興のためには,分別土の力学挙動を把握し,有効利用を積極的に行うことが不可欠である。著者らは,既往の研究において,四日市市で採取した土砂を混合し想定津波堆積物を作製し,その物性・力学特性を把握した2)。また,長期力学特性を把握するために,水に溶出し空隙を作る尿素肥料を土に混入することで木片が完全に腐朽した状態を表現し,木片の腐朽が地盤材料の力学特性に与える影響を調べた2)。本研究では,供試体内に木片を混入し,木片腐朽を促進するファンガスセラーに埋めて約 1年経過した混合土砂に対し,三軸圧縮試験を実施し,木片混入の影響を調べるとともに,木片腐朽の観察をおこなった。図-1粒径加積曲線(文献 3)に加筆)2)2. 供試体作製条件試験に用いた試料は S100C0,S75C25,S50C50,S25C75 である.浚渫された粗粒土と細粒土とを乾燥重量比を変えて混合したもので,例えば S75C25 は,重量比で粗粒土砂:細粒土=75:25 を表す。図-1 はその粒径加積曲線を示す。この混合土砂の物性や力学特性の詳細については文献 2)を参照されたい。調整した試料に,4.75mm のふるいを通過した裁断木片を混入し,模擬的に木片混入分別土を作製した。木片の大きさは,供試体の要素性を失わない程度の大きさとした。S50C50 の供試体の写真を図-2 に示す。大小様々な木片が混入していることがわかる。木片混入率は土砂に対する木片の乾燥重量比として,混合土砂の粒度に応じて変化させ S75C25 は 0.5%,S50C50 は 1.5%,S25C75 は 3.5%,S0C100 は 4.0%と設定した。設定値は文献 2)の肥料を用いて得られた許容木片混入量である。供試体作製後,肥料は完全に溶けるため,その部分が空隙となる。木片が完全に腐朽したら,その部分が空隙となると考え,肥料を用いて完全に腐朽した状態を模擬した。肥料で模擬した完全に腐朽した状態において,一軸圧縮強さが 50kPa 以下になった時の,木片混入量が許容木片混入量である。木片混じり土砂に対し,それぞれ最適含水比において突き固めにより供試体を作製した。図-3 は供試体の示相図を示す。例として木片 0.5%と 2.0%ものを示す。木片以外の部分図-2 供試体の写真木片 0.5%空隙水木片 2.0%土粒子(混合土砂)土粒子(混合土砂)空隙水(図-3 の赤枠)の締固め度が 95%になるように供試体を作製した。供試体寸法は直径 5cm,高さ 10cm とした。作製した供試体を,木片腐朽を促進するファンガスセラーに埋めて放置し,19 ヶ月後に取出し,三軸圧縮試験を実施した。なお,比較のため,木片を混入していない供試体に対しても同様の試験を行った。赤枠部分の締固め度が95%図-3 示相図Mechanical Properties considering wood decay process of assumed Wood-Mixed Recovered Soil from tsunami disasterTakayuki Sakai1, Masaki Nakano2, Hiroki Ikegami1 (1Nagoya University, 2 TAISEI Corporation)KEYWORDS: Disaster debris, Recovered soil, Wood decay, Compaction, Triaxial compression test- 285 - 3.木片混入,埋設放置,木片腐朽がせん断挙動に与える影響(三軸圧縮試験結果)混合土砂 S75C25,S50C50,S25C75 の 3 種類に対し,三軸圧縮試験を実施した。それぞれの試料に対し,木片無/放置無,木片有/放置無,木片無/放置有,木片有放置有,肥料の 5 ケースを設定した.各ケースについては,後述の試験結果とともに説明する。これら供試体を試験機にセットし,二重負圧法や背圧法を用いて飽和化させ,その後,拘束圧100kPa で 24 時間圧密放置した後に,20%/day のせん断速度で,単調せん断を行った。これらの試験ケースを互いに比較することで,①木片混入,②埋設放置,③木片腐朽がせん断挙動に与える影響をそれぞれ考察する。図-4(a)~(c)は,S75C25,S50C50,S25C75 のそれぞれに対し,木片無/放置有と木片有/放置有の試験結果を示す。木片無/放置有とは,木片を混入せずにファンガスセラーに供試体を埋設し,19 ヶ月放置したもの,木片有/放置有は,木片を混入して 19 ヶ月放置したものである。両者を比較することで,①木片混入と③木片腐朽の影響を調べることになる。木片がない場合,平均有効応力 p’の上昇に伴う軸差応力 q の上昇がいずれのケースも見られた。一方,木片がある場合には,混入している木片の量が多い方が,腐朽の影響を大きく受けている。S75C25 では,木片が腐朽したケースにおいても,平均有効応力 p’の上昇に伴う軸差応力 q の上昇が見られるが,S50C50 では,ほとんど見られず,S25C75 では,p’の減少に伴う q の上昇から,p’の減少に伴う q の減少に転じており,その結果,腐朽したケースの方が,最大軸差応力が大幅に減少したと考えられる。図-4(a) S75C25 木片無/放置有,木片有/放置有の比較図-4(b) S50C50 木片無/放置有,木片有/放置有の比較図-4(c) S25C75 木片無/放置有,木片有/放置有の比較図-5(a)~(c)は,別途,一軸圧縮試験を実施した後,供試体から木片を取り出し,マイクロスコープにより撮影した木片断面の拡大観察画像である。どの粒度も木片の腐朽が進行しており,特に S75C25,S50C50 に比べ,S25C75 の方が- 286 - より腐朽が進んでいる。粘土分が多いほど含水比が多くなり,土中の水分により木片腐朽は進むと考えられる。図-5(a) 木片の拡大写真(S75C25)図-5(b)木片の拡大写真(S50C50)図-5(c) 木片の拡大写真(S25C75)図-6(a)~(c)は,木片無/放置無と木片有/放置無の試験結果を示す。両者ともに,ファンガスセラーに埋設することなく,供試体作製後,せん断試験を行った。両者の違いは,木片が混入しているか,していないかである。つまり,①木片混入の影響が力学挙動に及ぼす影響のみ調べたことになる。木片を混入させることにより,S50C50 と S25C75 はせん断初期の硬化しやすくなり,若干最大軸差応力が大きくなる。木片が補強材のような役目を果たしていると考えられる。一方,S75C25 は硬化しにくく,最大軸差応力が低下し,木片が弱部になったと考えられる。図-6(a) S75C25 木片無/放置無,木片有/放置無の比較図-6(b) S50C50 木片無/放置無,木片有/放置無の比較図-6(c) S25C75 木片無/放置無,木片有/放置無の比較- 287 - 図-7(a)~(c)は木片無/放置無と木片無/放置有の試験結果を示す。木片を混入していない供試体に対し,ファンガスセラーに埋設し 19 ヶ月放置したか,ファンガスセラーに埋設していないか,の違いである.つまり,木片腐朽ではなく,②埋設放置がせん断挙動に及ぼす影響を調べた。いずれのケースも放置によって,塑性膨張を伴う硬化挙動が顕著となり,最大軸差応力が大きくなった。ファンガスセラーに土供試体を埋設し,放置することで,土の骨格構造の高位化が起こったことが示唆された。図-7(a) S75C25 木片無/放置有,木片無/放置無の比較図-7(b) S50C50 木片無/放置有,木片無/放置無の比較図-7(c) S25C75 木片無/放置有,木片無/放置無の比較以上のことから,木片が混入することで,木片が腐朽しなければ最大軸差応力は増加する(①木片混入)が,ファンガスセラー内での腐朽進行により,最大軸差応力の低下を引き起こす(③木片腐朽)。ただし,ファンガスセラーに埋設放置することによって土自身の構造高位化が起こり(②埋設放置),せん断挙動に影響を与える。②埋設放置の影響を受けずに木片腐朽を模擬する方法として,文献 2)と同様に肥料を供試体に混入し,試験を実施した。肥料は土中の水に溶け空隙をつくるので,木片の完全腐朽を模擬している。図-8(a)~(c)に試験結果を示す。比較のため木片有/放置無の試験結果も併せて示す。S50C50,S25C75 については,せん断初期における塑性圧縮挙動(p’の減少)が顕著に見られた。また最大軸差応力については,腐朽を模擬した方が小さくなっており,木片腐朽が強度低下を引き起こすことがわかった。一方,S75C25 については,ほとんど同じ挙動になった。- 288 - 図-8(a) S75C25 木片有/放置有,肥料の比較図-8(b) S50C50 木片有/放置有,肥料の比較図-8(c) S25C75 木片有/放置有,肥料の比較4. まとめ本研究では,分別土の長期力学特性を把握するため,供試体内に木片を混入し,木片腐朽を促進するファンガスセラーに埋めて約 1 年経過した混合土砂に対し,三軸圧縮試験を実施した。そして,①木片混入,②埋設放置,③木片腐朽がせん断挙動に与える影響をそれぞれ考察した。①木片混入については,S75C25 では,木片が弱部となり,強度が低下した。一方,S50C50,S25C75 では,補強材となり,強度が増加した。②埋設放置をすることにより,塑性膨張を伴う硬化挙動が顕著となり,最大軸差応力が大きくなった。③木片腐朽については,実際にファンガスセラーに放置することで,供試体内の木片を腐朽させるケースと,肥料を用いて木片腐朽を模擬したケースについて,検討を行った。試験結果より,木片混入量が多い方が,腐朽の影響を大きく受けている傾向あり,腐朽により最大軸差応力の低下が引き起こされることがわかった。また,埋設放置した後の供試体から取り出した木片を観察すると,含水比が高い方がより腐朽が進行していることが明らかになった。今後の課題としては,埋設放置による強度増加がどのようなメカニズムに起きるのか,埋設が土供試体に及ぼす影響について,さらに研究を進める。また,弾塑性構成式 SYS Cam-clay model4)により実験結果の再現を行うことで,地震応答解析に必要な材料定数を得るとともに,試験結果を骨格構造概念に基づき考察を行う。さらに,地震応答解析を行うことで,分別土で作製された土構造物の耐震性について評価を行っていく。謝辞本研究は,(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(3K163011)により実施された。また京都大学生存圏研究所全国- 289 - 共同利用研究による助成を受け,国土交通省中部地方整備局四日市港湾事務所には多大なるご協力を頂いた。ここに深く感謝の意を表す。参考文献1) 内 閣 府 , 南 海 ト ラ フ 巨 大 地 震 の 被 害 想 定 ( 第二次報告)のポイント~施設等の被害及び経済的な被害~,http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taisaku_wg/pdf/20130318_kisha.pdf,2013.2) 中野正樹他:災害廃棄物・津波堆積物を想定した砂・粘土混合土砂の物性把握と有効利用への提案,第 12 回環境地盤工学シンポジウム発表論文集,pp.65-70, 2017.3) 高井敦史他,東日本大震災における津波堆積物の分布特性と物理化学特性,地盤工学ジャーナル,vol.8,No.3,pp.391-402,2013.4) Asaoka, A., Nakano, M. and Noda, T.: Superloading yield surface concept for highly structured soil behavior, Soils andFoundations, No.40, Vol.2, pp.99-110, 2000.- 290 -
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  • タイトル
  • 簡易現場強度試験法の開発と廃棄物地盤への適用
  • 著者
  • 出口 資門・大嶺 聖
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 281〜284
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000050
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)8-6簡易現場強度試験法の開発と廃棄物地盤への適用出口資門 1・大嶺聖 11 長崎大学大学院1.はじめに近年,頻発する台風や集中豪雨によって土砂災害が発生し,斜面崩壊のおそれがある場所が多数存在している.また,廃棄物最終処分場においても崩壊する危険性がある場所が存在している.このような状況において,地盤の強度を推定するには,従来の方法では原位置にて短時間で220mm行えないことや,試験自体が複雑なこと,粘着力と内部摩擦角を同時に推定することはできていないことなどがある.そこで本研究では,簡易的に強度推定を行うために改良したコーン貫入試験及びスパイラル杭の引抜試験を開発した.そして,室内にて様々な地盤材料を対象に試験を行い,既存の一面せん断試験の結果と比較する.その後,実際に原位置での廃棄物地盤にも試験を25mm行い,適用できるか調査した.2.写真 1 スパイラル杭の寸法試験方法2.1 スパイラル杭引抜試験引抜試験に用いるスパイラル杭の寸法を写真1に示す.通常の金属杭だと引き抜きの際に杭と土との間に摩擦抵抗が生じてしまうことが考えられるが,スパイラル杭では金属部分と接する面積が400mm小さいことから土のみの摩擦を推定することが可能である.試験方法はまず,深さを 3 ケース(5,10,15 cm) 設定しスパイラル杭を,モールドに 3 層に分けて,ランマーを 1 層 25 回で打って作った供試体にハンマーでスパイラル杭を貫入し電子荷重計を用いて手動で引き抜き,得られた最大値を円柱の表面積で除して引抜力を算定する.3 ケースの杭の深さと各引抜力の関係から,引き抜きの長さがゼロに相当する部分が土のみの粘着力cとした.直径:20mm先端角:30°2.2 コーン貫入試験コーン貫入試験に用いるポータブルコーンの寸法を写真 2 に示す.これはスパイラル杭と同様に写真 2 ポータブルコーン簡易動的コーンを改良したもので電子荷重計と接続することができる.の寸法500る.5 回以上試験して平均値qcをとる.400各支持力係数の値荷重計に接続したものを手動で 5 cm貫入しピーク値から貫入力を算定す2.3 強度推定方法上記の二つの試験を簡易現場強度試験法とし,スパイラル杭引抜試験から算定した粘着力cとコーン貫入試験から得られたqcを用いて内部摩擦角Φを算定した.その際に,下記のテルツァーギによる浅い基礎の支持力NcNrNq300200100公式(式 1)を利用し,cとqcの値を代入し支持力係数は図 1 のグラフを利用001020し支持力係数の逆算から求めることができる.𝑞 = 𝛼𝑐𝑁𝑐 + 𝛽𝛾𝑡 𝐵𝑁𝑟 + 𝛾𝑡 𝐷𝑓 𝑁𝑞30405060内部摩擦角(°)(1)図 1 内部摩擦角と支持力係数の関係ここで,q:全般せん断の極限支持力度 B:基礎底面の最小幅 Df:基礎根入れ深さ c:粘着力 γt:土の単位体積重量 Nc,Nr,Nq:全般せん断破壊の支持力係数 α,β:形状係数(α=1.3,β=0.3)2.4 一面せん断試験簡易現場強度推定試験法から得られた値と比較するために今回は一面せん断試験を行った.室内試験機と原位置試験機をそれぞれ使用した.原位置試験機を写真 3に示す.原位置一面せん断試験機は,原位置で使用することを目的としたものだ写真 3 原位置一面せん断試験機が,通常の室内一面せん断機試験機としても利用可能である.各試料をせん断箱(幅300 mm,奥行 300 mm,高さ 150 mm)の内部に表 1 廃棄物の組成分析結果(質量%)敷き詰め,ランマーを用いて 3 層に分け締固めをプラスチック行い,原位置の密度に調整して供試体を作製しその他繊維ガラス・陶器れき木くず金属20mm篩い下合計(%)た.現場ではせん断箱と同じ大きさの供試体を成千葉2.662.9410.870076.6100形する.せん断はモーターを用いて自動で行い,仙台3.122.8810.77.30076100Development of simplified field strength test method and application to waste groundShimon Ideguchi1, Kiyoshi Omine1 (1Nagasaki University)KEYWORDS: Spiral pile In-situ test Penetration test pull out test- 281 - 20A1216:2009 に準拠し,せん断変位 35 mmのせん断強度とする.163.引抜力(kN/㎡)せん断速さは約 0.88 mm/minとする.せん断応力がピークを示さない場合は,JIS対象地盤材料室内試験で使用した地盤材料はまさ土,豊浦砂,砂質土,粘性土,改良土,廃棄物とした.改良土に関しては砂質土の乾燥質量に対して 0.75 %のポルトランドセメ128y = 48.408x + 9.469240ントをミキサーで粉体混合させ塩化ビニルの容器に詰めて約 1 週間,養生させたも0の,廃棄物に関しては千葉と仙台の廃棄物最終処分場で取ってきたものを使用し30例を図 2 に示す.バラツキは少し見られたものの杭の深さと引抜力には線形的な関係p=19.2(kN/㎡)1p=9.6(kN/㎡)25垂直応力(cm)4.せん断応力(kN/m2)35まず,スパイラル杭引抜試験の結果の一0.151.2行った.廃棄物の組成分析を表1に示す.4.1 結果0.1杭の深さ(m)図 2 引抜試験結果(砂質土)た.廃棄物以外は室内一面せん断試験機で室内試験結果・考察0.05p=3.66(kN/㎡)201510にあることがわかる.この関係から近似線p=19.2(kN/㎡)0.6p=9.6(kN/㎡)0.4p=3.66(kN/㎡)0.2500-0.2-50010203040せん断変位(mm)をつくることができ,深さが 0 cmの位置,つまり近似式の切片を粘着力と推定し0.8102030せん断変位(mm)-0.4図 4 せん断変位―垂直応力図 3 せん断変位―せん断応力(廃棄物・千葉)た.他の材料に関しても同じような結果が(廃棄物千葉)見られた.表 2 一面せん断試験と簡易現場強度推定試験法の試験結果一面せん断試験コーン貫入試験については地盤材料によって様々な値が得られた.試験から得られた粘着力と次に,一面せん断試験について廃棄物(千葉)の一例を図 3,4 に示す.せん断応力はピーク値を示さず増加傾向になっている.また垂直変位が初めに増加し後に減少することがわかる.このことから,廃棄物は初期に膨張しその後体積変化が減少するゆるい砂の負のダイレイタンシーのような変化が見られた.貫入・引抜試験湿潤密度材料名粘着力(g/cm3)貫入力を用いてテルツァーギの浅い基礎の支持力公式に代入して逆算から内部摩擦角を求めた.40(kN/m2)内部摩擦角(°)粘着力(kN/m2)内部貫入力摩擦角(°)(kN/m2)まさ土1.909.7139.55.5242.8663.5豊浦砂1.252.0633.91.2421.828.3砂質土1.625.8137.09.4733.5511.7粘性土1.565.3930.88.6227.8288.0改良土1.6832.4334.823.4638.31990.5廃棄物(千葉)1.464.5546.523.3743.30403.04廃棄物(仙台)1.197.0738.253.5444.30476.434.2 考察簡易現場強度推定試験法の結果と一面せん断試験の結果を表 2 に示す.この結果から,粘着力と内部摩擦角のどちらもが完全に一致した材料はなかったが,二つの強度定数のうちどちらかには相関が見られるものがあった.精度としては完全なものではないが一面せん断試験の結果に比べて,値が小さいものが多いため斜面安全評価をする際に過大評価をすることがないと考えられる.このことから,簡易現場強度試験法は斜面安定性に必要な地盤強度定数を推定できると考えられる.5.原位置試験表 3 廃棄物の組成分析結果(質量%)5.1 概要プラスチック室内試験の結果を受けて,原位置でも本試験がその他ガラス繊維陶器れき木くず金属20mm合計(%)篩い下千葉①10.376.906.296.502.860.2966.79100千葉②2.683.0415.0114.790.060.1964.24100千葉③0.30.30.43.20.40.195.30100仙台①13.6817.649.146.850.050.6352.01100を行った.従来の試験と比べ簡易に行えるかどう仙台②13.4713.687.387.540.160.1057.67100かも同時に検討した.仙台③2.41.40.00.10.00.895.40100スリランカ20.018.03.03.00.03.048.0100適用可能と考えたため,実際に原位置で試験した.原位置でも室内試験と同様にスパイラル杭引抜試験とコーン貫入試験,原位置一面せん断試験5.2 試験場所今回対象となった現場は主に産業廃棄物最終処分場の廃棄物地盤とした.国内では,千葉の 3 箇所,仙台の 3 箇所の安定型の最終処分場で国外ではスリランカで試験を行った.それぞれの地盤の組成分析を表3に示す.国内の現場は産業廃棄物のため比較的プラスチック類が多く含まれていたところや大きな廃棄物は少なく 20 mm 以下ふるい下がほとんどという場所もあった.20 mm 以下ふるい- 282 - 下の内容は大半が土砂であとはプラスチックとガラス・陶器だった.仙台①,②に関しては大きなプラスチックやその他繊維が多く 20 mm以下ふるい下が国内の他の現場に比べて少なくなった.スリランカでは主に生ゴミが埋め立てられている.国内の現場と比べて 20 mm 以下ふるい下が全体の 2 分の 1 以下になっていた.写真 4 引抜試験の様子(千葉③)写真 5 貫入試験の様子(仙台③)5.3 試験結果・考察40原位置での試験の様子を写真 4,5 に示す.引抜試験では場所によって内容物が変わy = 76.728x + 10.183引抜力(kN/m2)35っているため,スパイラル杭が刺さらないことがあった.貫入試験は 5cm だけ貫入するため,あまり場所を選ぶことなく試験することができた.両方の試験を原位置でするのにかかった時間は約 30 分で時間をかけずに強度定数を推定することができた.一方,一面せん断試験は引抜・貫入試験に比べて必要な供試体を一つ作成するのに約 1 時302520151050間かかり,試験が完了し強度定数を推定するまでに約 1 日かかった.試験時間に関して0は引抜・貫入試験の方が優れていると考えられる.0.050.1深さ(m)0.150.2図 5 引抜試験結果(千葉①)次に,それぞれの試験結果について考える.千葉①での引抜試験の結果を図 5 に示す.室内試験表 4 コーン貫入試験結果(KN/m2)で引抜力のバラツキがあったため,それを抑える現場ために同じ深さを複数回行うことで,杭の深さと引抜力の関係を明確にした.線形的な関係から近1 回目2 回目3 回目4 回目5 回目千葉①659.2923.6千葉②1051.0509.6828.0732.51019.1582.81200.6415.3似線を引くことができた.杭の深さが 0 のとこ千葉③1273.9ろ,つまり近似式の切片を粘着力と推定した.907.61398.11108.31082.86 回目7 回目1238.99841仙台①1089.2971.3598.7961.8939.5コーン貫入試験については表 4 に示す.それぞ仙台②484.11006.41340.81070.1707.0786.6れの場所で複数回計測した.一番大きな値になっ仙台③672.0828.0200.6391.7869.4302.5たのは千葉③となった.これは,20 mm 以下ふるスリランカ633.8668.8589.2939.5512.7605.1い下が多い中で廃棄物が礫状の大きな塊として残表 5 一面せん断試験と簡易現場強度推定試験法の試験結果っていたためと考えられる.仙台③も 20 mm 以下一面せん断試験ふるい下がほとんどだったが,プラスチックやその他繊維などが多かったため一番小さい値が出たと考えら貫入・引抜試験湿潤密度材料名粘着力内部粘着力内部貫入力(g/cm3)れる.多少のばらつきは見られたものの複数回試験(kN/m2)摩擦角(°)(kN/m2)摩擦角(°)(kN/m2)し,平均をとっているため,貫入力を推定できている千葉①1.4620.9121.719.3830.9832.5と考えられる.原位置一面せん断試験は室内試験同様千葉②1.3516.4824.210.1836.7731.8に廃棄物地盤ではせん断応力はピーク値を示さず増加千葉③1.4617.4361.085.1156.51138.9傾向になって,また垂直変位が初めに増加し後に減少仙台①1.0815.5246.98.8739.2912.1仙台②1.1911.8554.18.2939.8809.8仙台③0.753.6631.523.6047.1544.1スリランカ10.89.735.77.140.0658.0した.原位置の廃棄物でも初期に膨張しその後体積変化が減少するゆるい砂の負のダイレイタンシーのような変化が見られた.簡易現場強度推定試験法と一面せん断試験から算定した粘着力と内部摩擦角を表 5 に示す.また,室内試験と原位置試験からそれぞれ得られた強度定数を比較したものを図6,7 に示す.原位置での廃棄物地盤では毎回の試験を内容物が全く同じの場所ではできないため,それぞれの試験結果にバラつきが生じてしまう.しかし,粘着力に関しては千葉③と改良土,内部摩擦角に関しては仙台②と仙台③の結果を除けばおおよその相関があると考えられる.従来の原位置試験と比べると短時間図 6 両試験の粘着力の比較かつ簡易的にできる強度推定試験法であると考える.- 283 -図 7 両試験の内部摩擦角の比較 6.無限斜面法による強度定数の比較50引抜貫入試験の結果から推定されるせん断強度(kN/㎡)各試験から得られた強度定数の比較より強度定数に相関が見られた地盤材料もあれば,粘着力または内部摩擦角のどちらかに差が見られた材料もあった.そこで,強度定数を個別に比較した際には相関がみられないとしても実際の斜面の安定計算の際には相関を見ることができると考え,本研究の各試験から得られた強度定数を用いて斜面の安定計算を行った.本研究では各地盤材料の無限斜面を仮定し,斜面傾斜角を 30°,斜面高さを 4 つのケース(3,5,10,15 m)をプロットし比較した.これは,斜面崩壊が円弧すべりの一部分であることを仮定しており実際の安定計算では多くの斜面高さを考えて計算するため複数の斜面高さでせん断強度の推定を行った.今回,せん断強度を推定するために使用した無限斜面法のせん断強度(式 2)を以下に示す.2𝜏 = 𝑐 + 𝛾𝑡 𝐻 𝑐𝑜𝑠 𝛼 𝑡𝑎𝑛 𝜙40まさ土豊浦砂砂質土粘性土改良土廃棄物(千葉)廃棄物(仙台)廃棄物(千葉①)廃棄物(千葉②)廃棄物(千葉③)廃棄物(仙台①)廃棄物(仙台②)廃棄物(仙台③)廃棄物(スリランカ)y=x30201000(2)1020304050一面せん断試験の結果から推定されるせん断強度(kN/㎡)ここで,𝜏:せん断強度 c:粘着力 γt:土の単位体積重量 H:図 8 無限長の直線斜面を仮定した場合の各試験の結果から斜面高さ 𝛼:斜面傾斜角 𝜙:内部摩擦角推定されるせん断強度の比較図 8 に各試験結果からせん断強度を推定し,比較したものを示す.直接強度定数を比較したものに比べ,相関関係が見られていると考えられる.また,廃棄物に関しては大小の廃棄物が混在しており測定地点毎の強度に影響を受けたため,差が生じたと考える.7.原位置での適用に関する考察スリランカの現場では廃棄物を盛っただけのような最大高さ 48 m の斜面があり,すべての地点で原位置一面せん断試験を行うことが出来なかった.そこで本研究の簡易現場強度試験法を用いて,斜面の上部写真 6 調査場所から下部にかけて標高差 10 m 間隔で 4 箇所(GL20,30,40,50 m)の強度定数を算定した.調査した場所を写真 6 に示す.30GL20 のスパイラル杭引抜試験の結果を一例として図 9 に示す.また,それ場試験で GL.20 m 地盤での一面せん断試験による c,Φ と,簡易現場強度試験法による同推定値が近いことから,GL.30 m~50 m の c,Φ の値はこれらの試験による推定値で概ね判断できると考えられる.8.25引抜力(kN/m2 )ぞれの地点での簡易現場強度試験法による c,Φ の推定結果を表 6 に示す.現201510y = 48.577x + 7.1338500終わりに0.05今回は,まず様々な地盤で室内試験を行い,本試験が概ね強度定数を推定することが出来ていると判断した.次に廃棄物地盤の原位置で試験を行い,原位置一0.10.150.20.25杭の深さ(m)図 9 引抜試験結果(スリランカ)面せん断試験と簡易現場強度推定試験法と比較した.その中で,強度定数だけで見ると値にばらつきがあったが,斜面安定計算で考えると相関関係があると分かっ表 6 簡易現場強度定数推定試験法の結果た.つまり,斜面安定評価で必要な強度定数を原位置で迅速に求めるための簡易現試験場所コーン貫入・スパイラル杭引抜試験場強度推定試験法として有効であると考えられる.そして,スリランカの廃棄物斜GL20 mC = 7.1 kN/m2 Φ = 40°面において本試験を用いて斜面のそれぞれの地点の強度定数を推定し,斜面の安定GL30 mC = 10.2 kN/m2 Φ = 37°性を評価することが出来たと考えられる.これからは,引抜試験に関して測定するGL40 mC = 8.3 kN/m2 Φ = 38°場所や深さ,対象とする地盤の貫入力の大きさにより引抜力が急激に増加することGL50 mC = 2.2 kN/m2 Φ = 45°があるため,スパイラル杭の深さを設定する際に間隔を狭くすることやスパイラル杭の金属部分と土との間の摩擦抵抗を更に減らすことが必要だと考える.今後も試験を行い,検討を進めていく.謝辞 :本研究を行うにあたり、平成 30 年度「環境研究総合推進費 」(課題番号 3-1707)の支援を頂いた.参考文献Shimon Ideguchi,・Kiyoshi Omine,・Satoshi Sugimoto:Estimation of Strength Parameters of Solid Waste Matrials by Cone Penetration and Spiral Pile Pull Out Tests,Proceedings of the 8th International Congress on Environmental Geotechnics Volume 2,pp248-254,2018山脇敦:スリランカ国 ミートタムッラ処分場廃棄物斜面安全性評価のための現地調査団に参加して,産廃振興財団NEWS,No88,vol.25,pp11-14,2017- 284 -
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  • タイトル
  • 一般廃棄物焼却残渣固化式処分における振動締固めに関する基礎的研究
  • 著者
  • 三反畑 勇・弘末 文紀・秋田 宏行・青木 貴均・西尾 竜文・島岡 隆行・小宮 哲平・中山 裕文・荒井 進・金松 雅俊
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 275〜280
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000049
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)8-5一般廃棄物焼却残渣固化式処分における振動締固めに関する基礎的研究○三反畑勇 1・弘末文紀 1・秋田宏行 1・青木貴均 1・西尾竜文 1・島岡隆行 2・小宮哲平 2・中山裕文 2・荒井進 3・金松雅俊 31 安藤ハザマ技術研究所・2 九州大学大学院工学研究院・3 三友プラントサービス1. はじめに著者らは、近年、一般廃棄物最終処分場の埋立廃棄物の大半は焼却残渣であることを踏まえ、石炭灰固化技術(超流体工法1))を応用して焼却残渣をセメント固化しながら処分することで、処分場の延命化、環境安全性の向上及び早期安定化を図り、さらには巨大地震時に被災することなく災害廃棄物の仮置き場や仮設処理施設の用地としても活用が可能な「一般廃棄物焼却残渣固化式処分システム」の構築を目指し、焼却残渣固化体の配合、性状、耐久性、施工性、及び固化地盤の耐震性について検討を行っている 2)~6)。本システムの実用化にあたっては、石炭灰固化技術では石炭の産地等によって締固め性状等が大きく異なる7)のと同様に、焼却残渣も採取日や焼却施設により組成や含水比等が異なるため、最適な配合を適切に決定できる指標等を明らかにすることが不可欠となる。本稿では焼却残渣を確実に固化する配合選定手順を検討するために実施した振動締固め実験の結果(振動周波数や締固め時間や上載圧の影響、突固めによる締固めとの比較、最適な水粉体比の選定方法等)について報告する。2. 固化式処分システムの概要廃棄物固化式処分システムは、石炭灰の有効利用技術の一つである超流体工法 1)を焼却残渣の埋立処分に適用し、焼却残渣にセメント、水を添加し混合撹拌してから、適切な厚さで敷均し高周波振動を与えて超流体化させながら固化地盤を形成するものである(図 1)。なお、超流体工法とは、少量の水とセメントで練り混ぜた灰類に高周波の外部振動を加え、パサパサの粉体状からプリン状に変化させて締固める特殊工法である(図 2)。この処理システムによって、①最終処分場の耐震性を向上させ、②埋立容量の消費を抑制し、③雨水浸透を排除し、汚濁物質や有害物質の溶出量を低減させ、その結果として④埋立地を延命化させるとともに、⑤閉鎖から廃止までの期間の短縮により、維持管理費用を低減させ、⑥跡地を早期図 1 廃棄物固化式処分システムの施工概念図かつ高度に利用できる。このシステムで構築した固化式処分場と従来型処分場(準好気性方式)との比較を図 3 に示す。従来型処分場では準好気性による処理の特性上、ガス抜き管、遮水工、排水処理施設、灰の飛散防止を目的とした覆土(即日、中間)といった付帯施設が必要となる。しかし、固化式処分場では、図 4 に示すように、これらの付帯施設を省図 2 外部振動で超流体化する石炭灰略するか、その仕様を軽減することが可能となる。基盤砂層砕⽯層処分場底⾯および法⾯の遮⽔シートの保護と排⽔効率を⾼めることを⽬的とした砕⽯層を設ける。図 3 従来型処分場(準好気性方式)と固化式処分場の比較遮⽔⼯(遮⽔シート)埋⽴中の⾬⽔排⽔等を処理プラントに送⽔するための底部集排⽔管を設置する。図 4 固化式処分場の施工方法Study on vibration compaction and specified mix proportion of cement-solidification style final disposal of municipal solid wasteincineration residues:Isamu Sandambata1,Fuminori Hirosue1,Hiroyuki Akita1,Takahiro Aoki1,Nishio Tatsufumi1(1 Hazama AndoCorporation),Takayuki Shimaoka2,Teppei Komiya2, Hirofum Nakayama2 (2 Kyusyu University), Susumu Arai3, MasatoshiKanematsu3 (3 Sanyu Plant Service)KEY WORDS : Waste Incineration Residues,Landfill, Cement Treatment, Vibration Compaction, Mix Proportion- 275 - 3. 実験方法3.1 実験概要表 1 に示す一連の実験には、F市の焼却施設から 2018 年 7 月と 10 月に採取した一般廃棄物焼却残渣の焼却灰(写真1)と飛灰(写真 2)を用いた。そして、焼却灰と飛灰をそれぞれ単独で振動締固めを行った場合と、焼却灰と飛灰を混合した「混合灰」を締固めた場合、混合灰にセメント(高炉セメント B 種)を加えた「混合粉体」を締固めた場合の締固め曲線を求めて、最適水粉体比等について比較考察した。最適水粉体比とは、土の締固めにおける最適含水比と同様の指標で、締固め後の供試体の乾燥密度が最大値を示すときの水重量と混合粉体の乾燥重量の比である。なお、一部の実験ケースでは突固めによる締固めも実施して振動締固めとの比較も行った。次に、セメントを添加して締固めたケースでは、所定の期間養生した供試体(焼却残渣固化体)の一軸圧縮強度試験を実施し、締固め直後の状態(混合粉体の乾燥密度等)との相関性を分析し、最適な配合を適切に決定できる指標等について考察した。なお、表 1 の最下段には埋立模型槽を用いた施工実証実験 3)~6)の仕様等も参考として示した。表 1 締固め実験ケースの一覧混練ミキサー(空練り:30秒)(本練り:2分30秒)15L ミキサーMS-15(愛工舎製作所)締固め方法小型テーブルバイブレータTV500×500(エクセン)振動板の寸法 振動数500×500 mm 60Hz焼却残渣の粒径<10mmプレートコンパクタMVC-40GB(三笠産業)<40mm<10mm<40mm<40mm<40mm<40mm420×290 mm 103Hz<40mm振動板アタッチメントHKM75LFS(エクセン)750×750 mm 120Hz <40mm突固め(JCAS L-01:2006)-50Hz振動板アタッチメント30L ミキサーHKM75LFS(エクゼン)+フレーム等 750×750 mm 85HzMS-30/50(愛工舎製作所)(テーブルバイブレータとして利用)120Hz50L 縦型二軸ミキサーHFN-50(大平洋機工)100L 水平二軸ミキサーSD100(大平洋機工)-(2017年度の実証施工実験)締固めた供試体の寸法粉体(P)の混合比(乾燥重量%)焼却灰B100-φ5×H10cm75.068.2φ10×H約13cm68.2φ5×H10cm68.2φ10×H約13cm100φ10×H約13cm100φ10×H約13cm100□30×60×H10cm68.2□30×60×H20cm68.2φ5×H10cm水粉体比W/P(%)飛灰F セメントC-- 23, 25, 27, 29, 31, 33100- 32, 34, 36, 38, 40, 4225.0 - 24, 26, 28, 30, 32, 3422.7 9.1 24, 26, 28, 30, 32, 3422.7 9.1 24.7, 26, 27, 28, 29, 3022.7 9.1 24.2, 26, 27, 28, 29, 30-- 27, 29, 31-- 27, 29, 31-- 25, 27, 2922.7 9.1 24.5, 26, 27, 28, 29, 3022.7 9.1 27, 2822.768.2振動締固め時の上載荷重2.5kg2.5, 5.0kg2.5, 5.0kg---備 考焼却灰の採取時含水比:約26%飛灰の採取時含水比:約28%焼却灰3:飛灰1焼却灰3:飛灰1セメント添加率:外割10%セメント協会の試験方法振動数の違いによる締固め特性の確認機械質量 焼却灰3:飛灰146kg セメント添加率:外割10%9.1 28適宜φ5cmコアボーリング焼却灰の施工時含水比:約21%飛灰の施工時含水比:約13%コア採取材齢28,98,207,468日3.2 使用材料焼却灰は 10 mm ふるい通過試料(写真 1)と 40 mm ふるい通過試料の 2 種類を使用した。図 2 には焼却灰の粒度測定結果を示す。飛灰(写真 2)は細粒分で構成されるが、自硬性があり採写真 1 焼却灰(10mm 下)混合灰は、焼却灰と飛灰を乾燥重量比 3:1 で混合したものを使用した。混合粉体のセメント添加量は、過年度の研究成果も踏まえて混合灰に対する乾燥重量比(外割)で 10 %とした。3.3 混練通過質量百分率 (%)取後の日数や保管状態によっては大きな塊等が含まれるため、焼却灰と同様に採取時にふるいで塊を除去した。写真 2 飛灰(10mm 下)100表 1 に示すように、試料の練混ぜには実験条件に応じて 15L 練りミキサー(MT-15,愛工舎製作所)、30 L 練りミキサー(MT-30/50,愛工舎製作所)または 50 L 練りミキサー(HFN-50,80焼却灰40mm下(7/30採取)焼却灰40mm下(10/19採取)60402000.010.1粒径1(mm)10図 5 焼却灰の粒度(採取日の異なる 2 回の測定)大平洋機工)のいずれかを使用し、練混ぜ時間は加水前の空練り 30 秒、加水後の練混ぜ 2 分 30 秒で統一した。写真 3 は15 L 練りミキサーによる混合粉体の練混ぜ状況である。3.4 振動締固め振動締固めは、図 6 に示す締固め装置(表 1 参照)を用いて実施し、モールド等に投入した試料の質量と締固め後の試料高さから締固め密度を算出した。なお、一軸圧縮強度試験を実施するモールド供試体は上面をラップして、約 20 ℃一定温度の室内で気中養生した。- 276 -100写真 3 混合粉体の練混ぜ状況 小型テーブルバイブレータを使用したケースでは、所定の配合の混合粉体等をモールドφ5 cm×h10 cm(10 mm アンダー試料)またはφ10 cm×h20 cm(40 mm アンダー試料)に適量投入し、振動数 60 Hz の振動を 3 分間加えた。φ5 cmモールド(サミット缶)の上部にはカラーを付け、試料上面に円筒形の重り(モールド内径よりも少し小さな径で 2.5 kgまたは 5 kg、沈下測定用の目盛付き)を載せ、締固め中の沈下量を目視で測定した。φ10 cm モールドでは、試料は高さ約 17 cm 程度まで投入し、図 2 と同様に試料上面に目盛付きの円筒容器(重さ約 0.2 kg)を載せ、締固め中の沈下量を目視で測定した。なお、表 1 に示すように突固めによる締固め試験 8)も実施して振動締固めとの比較も行った。振動板アタッチメント(振動数 50~120 Hz)をテーブルバイブレータとして利用したケースでは、振動数や締固め時間の違いによる影響を確認するために、振動数を 3 種類に変化させて実験を行った。試料はφ10 cm モールドに高さ 12 cm程度まで入れ、試料上面を軽く押さえて平坦にしてから、重り等は載せずに振動を加え、振動中の沈下量はスケールを用いて手動で加振後 1 分、3 分、6 分、9 分の 4 回測定した。なお、沈下量は、2 本の試料を同時に加振して各試料で 1箇所測定し、密度の算出には 2 試料の平均値を用いた。プレートコンパクタを使用したケースは、実際の施工機械に近いレベルでの振動締固め性状等を確認するため、鋼製型枠内(w30 cm×d60 cm×h30 cm)に、締固め層厚が概ね 10 cm または 20 cm となるように試料の投入質量を計量して軽く敷均し、その上に厚さ 12 mm のべニア板(29.5 cm×59.5 cm)を置き、その上にプレートコンパクタを載せて 15秒間加振し、さらに締固め後の平坦性も確保するためプレートコンパクタの向きを入れ替えて 15 秒間加振した(図 6、図 7 参照)。締固め密度は、型枠内の試料上面の高さをメジャーで 8 箇所測定し体積を求めて算出した。50~120 Hz,1 分 3 分 6 分 9 分施工実証実験 120 Hz,約 30 秒モールドΦ5cm orΦ10cm46kg103Hz30秒上下反転30×60cm鋼性型枠内層厚10cm、20cm60Hz, 3分(a)小型テーブルバイブレータ(b)振動板アタッチメントのテーブルバイブレータ利用(c)プレートコンパクタ図 6 振動締固め装置(a)締固め状況鋼製型枠 30×60 cm(b)締固め直後の試料表面(c)脱型直後の混合粉体水粉体比 28 %、層厚約 10 cm(d)脱型直後の混合粉体水粉体比 27 %、層厚約 10 cm水粉体比 27 %、層厚約 20 cm図 7 プレートコンパクタによる締固め表 1 最下段の施工実証実験 5, 6)では、図 8 に示すように、バックホウのアーム強制二軸ミキサーで混合撹拌した「混合粉体」を埋立模型槽(4 m×1.7 m×高さ 1.7 m)の中に厚さ 12 cm 程度で最終締固め層厚90 cm敷き均して、ミニバックホウに搭載した振動板アタッチメントを用いて順次締め固めている(図 6(b)の左 参照)。この施工実証実験では、焼却残渣固化体の品質等を確認するために、施工中に振動板アタッチメントの振動を遮水利用してモールド供試体を採取するとともに、所定の材単粒砕石C40工縁石敷均し厚さ12cm程度振動板700×7003バッチ目 2バッチ目 1バッチ目固化体(締固め 第2層目)固化体(締固め 第1層目)300    底面保護土齢において固化体のコアボーリング調査等も継続的に実施している。本報告ではこれらのφ5 cm コア供試体の一軸圧縮強度試験結果も参考値として示した。なお、埋立模型槽に投入した「混合粉体」の重量と締固め後の体積から算出した乾燥密度は 1.41 g/cm3 であった。- 277 -300 基礎地盤(セメント改良土)断面図図 8 施工実証実験での振動締固め手順 4. 実験結果と考察4.1 締固め密度小型テーブルバイブレータによる締固めは、図 9 に示すように 30 秒程度でほぼ収束しているが、その後も少しずつ沈下が継続している。これは、加振 30 秒までにかなり密に締め固まった試料から、その後も徐々に間隙空気が抜けていっているからだと考えられる。10 mm アンダー試料の混合灰および混合粉体の締固め曲線は、図 10 に示すように焼却灰と飛灰の間にあり、乾燥密度が最大となる最適水粉体比は 32 %程度であり、最大乾燥密度は 1.3 g/cm3 程度である。これらの値は焼却灰図 9 モールド試料表面の時間-沈下曲線および飛灰の最適水粉体比と両者の混合比から概ね推定できると考えられる。なお、試料の上に載せた重りの大きさ(2.5 kg と 5 kg)による違いは認められない。また、混合粉体の突固め(JCAS L- 01:2006)7)による締固め曲線は、振動締固めの曲線よりも左上にあり、最適水粉体比は 30 %程度で最大乾燥密度は 1.4 g/cm3 であった。40 mm アンダー試料の混合粉体の締固め曲線は、図 11に示すように 10 mm アンダー試料の曲線より左上にあり、この結果は粗粒分を含んだ土の締固め曲線における礫補正 8)の考え方とも概ね整合する。また、テーブルバイブレータとプレートコンパクタの締固め曲線はほぼ一致し、最適水粉体比は 27 %で、施工実証実験 5, 6)における最適水粉体比 28 %とほぼ同等であった。また、層厚 10 cm と 20図 10 振動締固め曲線(焼却残渣と混合粉体)cm で乾燥密度の差はほとんどなかった(図 11 の◆と▲)。振動板アタッチメントをテーブルバイブレータとして利用して焼却灰を締固めた結果を図 12 に示す。本装置の振動数の最大値である 120 Hz では、水粉体比 27 %で明確な乾燥密度のピークを示し 3 分程度で超流体化が確認できた。なお、120 Hz で水粉体比 29 %のケースでは、約 1分で超流体化が認められたが、乾燥密度は水粉体比 27 %より低下した。振動数 85 Hz では今回の試験ケースの範囲で超流体化が生じたのは水粉体比 31 %で 9 分加振した場合のみであった。なお、振動数 50 Hz はいずれのケースも超流体化には至らず、締固め乾燥密度は 1.2 g/cm3 未満であった。図 11 振動締固め曲線(混合粉体)4.2 一軸圧縮強度小型テーブルバイブレータで締固めた混合粉体(10 mmふるい下試料)のモールド供試体は、材齢 28 日および 91日で一軸圧縮強度試験を実施した。なお、40 mm ふるい下試料について材齢 28 日での強度試験のみを実施した。図 13 に 28 日強度と締固め時の水粉体比との関係を示す。40 mm ふるい下試料では、水粉体比が最適水粉体比の 27~28 %を超えると強度が低下するが、その低下傾向は比較的緩やかで、最適+2 %でもほぼ目標値(セメント添加 10 %で 5 N/mm2)に達した。したがって、焼却残渣の物性のばらつきを考慮すれば、低含水比での急激な強度低下を避けるためにも、現場施工では最適水粉体比+2 %程度の配合が適当であると考えられる。なお、10 mmふるい下試料は、今回の締固め実験での最適含水比 32 %- 278 -図 12 振動締固め曲線(焼却灰) での一軸圧縮強度は 3 N/mm2 未満であり、目標値には達しなかった。これは、振動締固めが不十分で密度も低かったためと考えられる。図 14 は材齢と一軸圧縮強度と関係を示したグラフで、参考までに施工実証実験でのモールド試料の試験結果6)も併記した。いずれも最適水粉体比付近で締固めた場合は、91 日強度が 20 日強度と比べて 3 N/mm2 程度増加している。ただし、締固めが不十分なケースでは、材齢 91 日でも強度がほとんど増加していない。なお、図 15 は固化体の乾燥密度と一軸圧縮強度の関係であるが、両者の間には良好な線形関係が認められる。図 16、図 17 は、材齢 28 日後のモールド試料の写真で図 13 焼却残渣固化体の水粉体比と 28 日強度の関係あるが、最適含水比よりも少し水量が多い方が表面が滑らかに仕上がっていることが確認できる。図 14 焼却残渣固化体の材齢と強度の関係(a) 締固め状況図 15 焼却残渣固化体の密度と強度の関係(b) 水粉体比 30%(c) 水粉体比 32%(d) 水粉体比 34%図 16 小型テーブルバイブレータで締固めた混合粉体φ5cm モールド供試体(材齢 28 日後)(a)水粉体比 24.7% (b)水粉体比 26% (c)水粉体比 27%(d)水粉体比 28%(d)水粉体比 29%(d)水粉体比 30%図 17 小型テーブルバイブレータで締固めた混合粉体φ10cm モールド供試体(材齢 28 日後)- 279 - 5. まとめ焼却残渣および混合粉体(乾燥重量比で焼却灰 68.2 %,飛灰 22.7 %,セメント 9.1 %)の振動締固め実験等から以下のことが確認できた。① 小型テーブルバイブレータで 3 分間の振動締固めを行った混合粉体は、加振後 30 秒程度でほぼ密実な状態になるが、その後も少しずつ間隙空気が抜けて密度が上昇する傾向が確認された。② 小型テーブルバイブレータで締固めた混合粉体の最適水粉体比は、10 mm ふるい下試料では約 32 %、40 mm ふるい下試料では 27~28 %であった。なお、この値はプレートコンパクタによる締固め実験結果、既往の実証施工実験(埋立模型槽)の実績と同等であった。③ 振動締固めによる混合粉体の最適水粉体比は、混合する焼却灰および飛灰の最適水粉体比と混合比率から概ね推定することができる。④ 振動締固め直後の混合粉体(40 mm ふるい下試料)の最大乾燥密度は、小型テーブルバイブレータ 3 分間で 1.53 g/cm3に達した。この値はプレートコンパクタによる締固め実験結果とほぼ同等であるが、既往の実証施工実験での実績1.41 g/cm3 よりも 0.1 g/cm3 程度大きかった。⑤ 振動数可変のテーブルバイブレータ(振動板アタッチメント)で焼却灰を締固めた結果から、振動周波数が高い方(120 Hz)が、周波数の低い場合(85 Hz)よりも短時間で超流体化が起こるため、効率的な締固めが行えることが確認された。⑥ 小型テーブルバイブレータで作成した混合粉体のモールド供試体の一軸圧縮強度は、最適水粉体比付近でピーク値を示し、それよりも水粉体比が増えると強度が低下するが、その低下傾向は水粉体比が低い場合に比べると比較的緩やかで、最適水粉体比+2 %でも目標値(28 日強度 5 N/mm2)をほぼ満足した。なお、一軸圧縮強度と乾燥密度(強度試験時)の間には良好な線形関係が認められる。6. おわりに上記の試験結果より、40 mm ふるい通過試料を用いてテーブルバイブレータによるφ10 cm モールドの振動締め試験を実施すれば、現場施工に適した示方配合を合理的に選定できることが示唆された。今後は、固化体強度、環境安全性、良好な施工性が確保できる最適な設計施工手法を確立するとともに、稼動中の廃棄物処分場内などにおいて実規模レベルの実証実験を行うことで本システムの早期実現を目指したい。謝辞:本研究は(独)環境再生保全機構の平成 29,30 年度環境研究総合推進費補助金「震災からの迅速復旧のためのレジリエントな最終処分場の実用化」(3J173001、研究代表者:島岡隆行)の助成を受けて実施した。記して謝意を表する。参考文献1) 超流体工法:http://www.ad-hzm.co.jp/service/ashcrete/tech/2) 島岡隆行:焼却残渣を埋め立てる固化式処分システムの開発について,都市清掃,Vol.69、 No.333, pp.419-425, 20163) 小宮哲平, 他:焼却残渣を埋立処分する固化式処分システムの開発(その 1)-焼却残渣固化体の耐久性および施工性-,第 39 回全国都市清掃研究・事例発表会講演論文集,pp.250-252,20184) 秋田宏行, 他:焼却残渣を埋立処分する固化式処分システムの開発(その 2)-焼却残渣固化体の耐久性および施工性-,第 39 回全国都市清掃研究・事例発表会講演論文集,pp.253-255,20185) 三反畑勇, 他:一般廃棄物焼却残渣固化式処分の実証実験(その 1:施工性),第 53 回地盤工学研究発表会,pp.2273-2274,20186) 青木貴均, 他:一般廃棄物焼却残渣固化式処分の実証実験(その 2:固化体の性状),第 53 回地盤工学研究発表会,pp.2275-2276,20187) 福留和人, 他:最適含水比付近での練混ぜたフライアッシュ・セメント混合物の振動締固め特性,超硬練りコンクリート技術に関するシンポジウム,1998.68) セメント協会:標準試験方法「セメント系固化材による安定処理土の試験. 方法」(JCAS L- 01:2006)9) 地盤工学会:地盤材料試験の方法と解説第 2 章 突固めによる締固め試験,pp. 376,2009.1- 280 -
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  • タイトル
  • 産業廃棄物処分場におけるカルシウムスケール抑制を目指したCa 吸着層に用いる材料のCa 吸着特性評価
  • 著者
  • 髙橋 智也・多賀 春生・小峯 秀雄・後藤 茂・王 海龍・鈴木 清彦・杉本 和聡・國弘 彩
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 271〜274
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000048
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)8-4産業廃棄物処分場におけるカルシウムスケール抑制を目指した Ca 吸着層に用いる材料の Ca 吸着特性評価〇高橋智也 1・多賀春生 1・小峯秀雄 1・後藤茂 1・王海龍 1・鈴木清彦 2・杉本和聡 2・國弘彩 21早稲田大学・2 株式会社ミダック1. 背景産業廃棄物処分場において,廃棄物由来の遊離カルシウムが浸出水に溶出し,その影響でカルシウムスケールが配管やポンプに生成されることが問題となっている 1)(図1 参照)。生成される物質がカルシウムであるため,環境上の問題が小さく注目されにくいものの,操業上の支障となっている。現状の対策は,配管,ポンプの取り換えや浸出水からの Ca 除去処理 2)などが考えられているが,繰り返しのメンテナンスが必要となり維持管理費用の増大へとつながる。そこで,遊離 Ca が集水管をはじめとする浸出水処理設備に到達する前に対策を施す抜本的な解決策を検討する必要がある。図 1 カルシウムスケール事例2. 目的本研究では,カルシウムスケールの抜本的解決方法として,物質の吸着現象に着目し,図 2 に示すような処分場内にCa を吸着するための吸着層を敷設する方法を提案する。Ca 吸着層を敷設することで,浸出水処理施設と埋立部を結ぶ集水管をはじめ,施設全体での Ca のスケール化抑制に貢献することができる。すると,施工時点で対策が完了し,メンテナンスフリーに近い対策を講じることが可能となる。本研究では,吸着層に用いる材料の選定に係わる Ca 吸着特性評価を行う。また,幅広い視点で材料を選出し,それぞれの材料のカルシウム吸着特性を評価することで, Ca を対象とする吸着特性を把握し,有効かつ最適な材料の選定に資する。図 2 Ca 吸着層敷設の概念図3. 使用した試料本研究では試料としてハロイサイト,関東ローム,活性炭,コーヒー抽出残渣,タイヤチップおよびゴム系廃棄物の 6種類を用意した。図 3 は,各試料の外観を示した写真である。表 1 は,試料の含水比および密度を示したもので,地盤工学会が定める土の含水比試験および土粒子の密度試験の方法に準拠した。以下に各試料の詳細について述べる。ハロイサイトは,カオリン鉱物の 1 種で,層間水を有することが特徴の 1 つである。しかし,層間水は容易に脱水し,底面間隔が 1.0 nm から 0.7 nm へと非可逆的に変化することが知られている 3)。なお,ハロイサイトの吸着の特徴として,底面間隔が 1.0nm のハロイサイトを用いた小野・和田の研究で,pH の上昇に伴いCa 吸着量も増加することが知られている4)。本研究では,主成分がハロイサイトで底面間隔が 0.7 nm のニュージーランド産カオリンを使用した。関東ロームは,埼玉県所沢駅東口駅周辺の標高 67-68 m(G.L-5~6m)より採取されたものである。活性炭は,約 4~6 メッシュ(約 3.76~4.76 mm)の造粒活性炭であ表 1 各材料の基本的性質含水比密度(%)(g/cm3)ハロイサイト1.442.54関東ローム109.672.71活性炭4.071.92コーヒー抽出残渣41.801.40タイヤチップ0.801.12ゴム系廃棄物1.021.50試料図 3 使用した材料(左から:ハロイサイト,関東ローム,活性炭,コーヒー抽出残渣,タイヤチップ,ゴム系廃棄物)Materials evaluation for Ca ion absorbent layer to be applied to the industrial waste disposal site for suppression of calcium scaleformationTomoya Takahashi1, Haruo Taga1, Hideo Komine1, Shigeru Goto1, Wang Hailong1, Kiyohiko Suzuki2, Kazutoshi Sugimoto, Aya2Kunihiro2 (1Waseda University, 2MIDAC Corporation)KEYWORDS: absorbent, calcium scale, porous, filtration- 271 - る。この活性炭は,実際の処分場で覆土材の 1 種としてブレンドし使用された実績がある。その際には,主に硫化水素,ベンゼンおよび塩化ビニルを吸着する用途で使用された。吸着の対象とする物質は異なるものの,本研究の目的と同現場での使用実績を有するため,本試料を使用して研究を進める。コーヒー抽出残渣は,市販のコーヒーを淹れたときに生じる残り粕を乾燥させ,カビの発生を抑制したものである。市川らの研究5)では,コーヒー粕を発酵・乾燥させたものが,敷料材料としてアンモニアの高い吸着能が確認されている。加えて,モミガラ,オガクズや稲わらに比べて pH 緩衝能が高いことが確認されている。そのため,性質が安定的かつ高い吸着効果が見込まれるため,試料として選出した。タイヤチップは,自動車タイヤを 100%原料とするリサイクル品である。1~3 mm に調製された市販のものである。ゴム系廃棄物は,工業用ゴム製品(自動車部品)の製造,ゴム生地の製造会社で発生した端材や不用製品である。試験装置への投入を可能にするために,1 cm 角程度のサイズに裁断して使用した。4. 試験方法4.1 バッチ式吸着試験バッチ式吸着試験を用いて材料の基礎的な Ca 吸着能力の評価を行った。図4,5 は,バッチ式吸着試験の概要図,実際のバッチ式吸着試験装置を示したものである。以下に,詳細な試験手順を示す。容量 500 mL のビーカーに濃度 1000 mg/L の CaCl2 水溶液を作製した。その図 4 バッチ式吸着試験概要図後,容量 100 mL のポリプロピレン製容器に作製した溶液 100 mL と試料を 10 g入れ,液固比 10 mL/g とした。その後,振とう機を用いて,振とう回数 200 回/分,振とう幅 40 mm で 2 時間振とうさせた。試験後の上澄み液を遠心分離機を用いて,回転数 3000 回/分で 20 分間遠心分離させた。その後,0.45 m のメンブレンフィルターを用いてろ過して検液を作製し,検液の Ca 濃度は 0.01 g 単位まで測定できる ICP 発光分光分析装置(アジレント・テクノロジー株式会社製 Agilent 5100)を用いて測定した。なお。測定に際し検液を検量線に内挿させるため,適宜希釈を行った。この試験は,液固比を一定にして試験を行っているため,試験前後の溶液内の Ca 濃度を比較することで,Ca 吸着能力の有無と大きさを調べることが可能となる。図 5 バッチ式吸着試験装置4.2 カラム式通水試験カラム式通水試験では,カラム内の供試体に溶液を通水させ,通水前後のCa 濃度を測定することで,液固比の変化に伴う Ca 吸着特性の変化を把握した。図 6,7 は,カラム式通水試験の概要図,実際のカラム式通水試験装置を示したもので,以下に詳細な試験手順を示す。アクリル製のカラムの中に,試料を充填し供試体を作製した。本試験では,高さ 30 mm,直径 75 mm のカラムを使用した。そこに濃度 1000 mg/L の CaCl2水溶液を定量ポンプを用いて,通水速度 250 mL/h で上向きに通水させた。供試体の上下には,金網とフィルターを設けることで試料の流出を防いだ。図 6 カラム式通水試験概要図通水にはノープレンチューブを用い,通水コックおよび上蓋に接続した。供試体通過後の溶液をプロピレン製の容器に採水し,0.45 m 孔径のメンブレンフィルターでろ過したのち,ICP-OES を用いて Ca 濃度を測定した。採水した検液は ICPOES での測定にあたり,バッチ式吸着試験と同様に適宜任意の倍率で希釈を行った。1000 mg/L の CaCl2 水溶液/試料の充填量を液固比と定め,液固比 0, 0.5, 1.0,1.5, 2.0, 3.0, 5.0, 10.0 の頻度で採水した。なお液固比 0 は,排水開始時に採水したものと定義する。図 7 カラム式通水試験装置5. バッチ式吸着試験およびカラム式通水試験の結果5.1 バッチ式吸着試験の結果各材料で行った試験後の Ca 濃度と CaCl2 水溶液の初期 Ca 濃度を比較することで,Ca 吸着能力の評価を行う。図 8 は,バッチ式吸着試験の結果を示したもので,表 2 は,バッチ式吸着試験における単位質量当たりの Ca 吸着量を示したものである。活性炭およびコーヒー抽出残渣の場合,初期 Ca 濃度である 350 mg/L からの Ca 濃度の減少が,それぞれ 240 mg/L,120 mg/L と比較的大きいため,高い吸着能力を有することが分かる。一方,ハロイサイトと関東ロームの場合,濃度の減- 272 - 少はそれぞれ 24 mg/L,46mg/L と比較的小さいため,先の 2 種の材料よりも吸着CaCl2水溶液のCa濃度(350mg/L)400能力が低いと判断できる。また,タイヤチップとゴム系廃棄物の場合は,試験後の350カルシウム濃度 (mg/L)液相 Ca 濃度がそれぞれ 348 mg/L,346 mg/L であるため,初期 Ca 濃度である 350mg/L に対する変動が小さい。そのため,Ca 吸着が行われていない。すなわち,Ca吸着能力を有していない材料であると認められる。表 2 に示す単位質量当たりのCa 吸着量で見ると,活性炭とコーヒー抽出残渣はそれぞれ Ca 吸着量が 2.40 mg,1.42 mg で,ハロイサイトや関東ロームの Ca 吸着量の 0.24 mg,0.56 mg と比べる300250200150100と 2 倍以上の Ca 吸着能力を持つことが定量的に評価できる。ゴム系廃棄物液固比の増加に伴う Ca 濃度の推移から,各材料の Ca 吸着特性を評価する。図9 は,カラム式通水試験の結果を示したものである。タイヤチップ5.2 カラム式通水試験の結果コーヒー抽出残渣関東ロームハロイサイト0活性炭50図 8 バッチ式吸着試験後の液相流入溶液の Ca 濃度は 350 mg/L で,タイヤチップとゴム系廃棄物は液固比に関Ca 濃度着能力は確認できなかった。ハロイサイト,関東ロームおよび活性炭は, 表 2 バッチ式吸着試験における単位質量当たりの Ca 吸着量破過曲線を示すことが確認された。この 3 つの材料を比較すると,ハロわらず,Ca 濃度の大きな変化が見られず,バッチ式吸着試験と同様に吸イサイト,関東ローム,活性炭の順で高い濃度で推移している。コーヒ試験後の液相 Ca Ca 吸着量試料ー抽出残渣は,液固比 0 の濃度から減少した後,破過していく結果が得濃度(mg/L)(mg/g)られた。他の材料と比較すると特異的な変化を示したため,より詳細なハロイサイト3260.24検討が必要である。また,どの材料も液固比が 10 の時点では,初期濃度関東ローム3040.56活性炭1102.40コーヒー抽出残渣2301.42タイヤチップ3480.02ゴム系廃棄物3460.04に近い Ca 濃度を示していることが確認できる。以上のカラム式通水試験結果を基に,各材料の Ca 吸着能力を定量的に評価するため,液固比 10 まで通水させたときの材料 1 g 当たりの Ca吸着量の算出および比較を行う。なお,ハロイサイトと活性炭においては液固比 0 のときに採水ができなかったため,そのときの Ca 濃度を 0mg/L として Ca 吸着量を求める。カラム式通水試験による Ca 吸着量ハロイサイト関東ローム活性炭コーヒー抽出残渣タイヤチップゴム系廃棄物塩化カルシウム水溶液(初期Ca濃度:350mg/L)は,流入させた CaCl2 溶液に含まれる Ca 全量と排水された溶液に含まれるCa 全量の差分により求められる。本研究では,各液固比間の Ca 濃度変化を直線的と仮定し,液固比間毎に排水溶液中のカルシウム濃度を算出し,その総和を排水された溶液の Ca 全量とする。400表 3 は,カラム式通水試験結果における Ca 吸着量の算出結果である。図ー抽出残渣は,材料 1 g 当たりの Ca 吸着量が,2.815 mg/g で他の材料よりも大きい値となった。図 9 において,液固比に関わらず初期濃度に近い濃度で推移したタイヤチップとゴム系廃棄物の Ca 吸着量は,それぞれ-0.049mg/g,0.055 mg/g で他の材料と比べて小さく,この 2 種の材料は Ca 吸着能350カルシウム濃度 mg/L9 に示したカラム式通水試験結果において,特異的な挙動を示したコーヒ300250200150100力をほとんど有しないという知見が得られた。破過曲線を示したハロイサイト,関東ローム,活性炭の Ca 吸着量は,それぞれ 0.276 mg/g,0.931 mg/g,5000240.560 mg/g で,この 3 種の材料の中では,関東ロームの材料 1 g 当たりのCa 吸着量が最も大きかった。そのため,表 2 のバッチ式吸着試験で Ca 吸6液固比81012図 9 カラム式通水試験結果着量の大きかった活性炭よりも,関東ロームの Ca 吸着量が大 表 3 カラム式通水試験結果による Ca 吸着量算出結果きいことが確認された。充填量 Ca 吸着量 材料 1g 当たりの Ca試料(g)(mg)吸着量 (mg/g)6. 各種材料の Ca 吸着特性評価ハロイサイト 131.7836.40.276以上の試験結果から材料の Ca 吸着特性を評価する。関東ローム52.8449.20.931まず,吸着のメカニズムを整理する。吸着現象は,化学吸着活性炭65.0036.40.560と物理吸着の 2 つの要因が知られている 6)。図 10 に示すとおり,それぞれの吸着の特徴として吸着力の違いがある。具体的コーヒー抽出には,物理吸着の吸着力としてファン・デル・ワールス力や毛残渣管凝縮あり,化学吸着の吸着力としては静電気力やイオン交換作用がある。さらに,化学吸着は吸着場所に選択性があり比較- 273 -33.6494.72.815タイヤチップ68.7394.7-0.049ゴム系廃棄物77.964.30.055 的吸着速度が遅く,対して,物理吸着は吸着場所に選択性が無く比較的吸着速度が速いといった特徴を持つ。ここで上記の吸着現象から試験結果を評価する。吸着は物質表面で生じるため,表面積が大きくなると吸着量が増す。そのためには,多孔質が重要である。すると,活性炭やコーヒー抽出残渣といった多孔質材料は,吸着能力が高くなると考えられる。そして,バッチ式吸着試験において,活性炭とコーヒー抽出残渣の Ca 吸着能力がハロイサイトと関東ロームに比べて高いことから,多孔質を有することが重要であることが確認された。図 10 吸着メカニズム図一方で,カラム式通水試験結果とバッチ式吸着試験を比較した場合に,異なる Ca 吸着特性が認められた。コーヒー抽出残渣は特異的に Ca 吸着量が大きかったものの,活性炭は関東ロームよりも Ca 吸着量が小さいという結果が得られた。すると,先に述べた多孔質性のほかの要因を検討する必要がある。7.カルシウムろ過の可能性の検討バッチ式吸着試験とカラム式通水試験で Ca 吸着特性に違いが生じた要因として,試験方法の違いによる影響が考えられる。バッチ式吸着試験は,容器内で振とうさせた場合の Ca 吸着特性を評価しており,閉じた系で行われる。一方で,カラム式通水試験は,カラム内に溶液を通水させる流動的な状況下における Ca 吸着特性を評価している。この通水の流動性が Ca 吸着特性に影図 11Ca ろ過に関する模式図響をもたらすと考えられる。具体的には,図 11 に示すような Ca ろ過が生じると推測される 7)。ろ過の場合,吸着現象のような物質に作用する力ではなく,物質の粒子径とろ材の孔径によって決まる。そのため,Ca イオンがコロイド物質に吸着したり,試料から溶出する他の元素を伴って粒子態となり,粒子表面の凹凸や粒子間隙の接触部で捕らえられると推察される。ろ過に伴い粒子間隙を選択的に通水しているとすると,材料の粒径と供試体の乾燥密度の影響が考えらえる。よって,本研究の主旨である吸着層のような用途で材料選定をする場合は,吸着特性だけでなく,ろ過による影響も含めて評価する必要があると考える。7. 結論(1)材料の Ca 吸着能力の有無および大きさを把握するために行ったバッチ式吸着試験より,活性炭とコーヒー抽出残渣の Ca 吸着能力が高く,関東ロームとハロイサイトの Ca 吸着能力は低いという結果が得られた。そして,タイヤチップとゴム系廃棄物は Ca 吸着能力が見られないという知見が得られた。(2)液固比の増加に伴う Ca 吸着特性の変化を把握するために行ったカラム式通水試験において,コーヒー抽出残渣は特異的な挙動を示し,タイヤチップとゴム系廃棄物は液固比に関わらず Ca 吸着効果が見られなかった。ハロイサイト,関東ロームおよび活性炭は,破過曲線を示し,3 種の中では関東ロームの Ca 吸着量が 1 番大きかった。(3)2 種類の試験によって,材料の Ca 吸着能力を比較したときに異なる結果を示した。その要因として,カラム式通水試験が流動的な試験であり,ろ過による試験後の Ca 濃度の減少が吸着と共に生じている可能性が考えらえる。すると,材料が流動性状況下における用途の場合は,吸着特性だけでなくろ過性能を加味した材料評価が材料選定の際に必要となると考えられる。謝辞:本研究の一部は,早稲田大学・理工学術院総合研究所重点領域・持続的未来社会研究所の支援を得た。ここに,感謝申し上げます。参考文献1)小峯秀雄・高橋浩市朗・鈴木清彦・杉本清彦・國弘彩:一般・産業廃棄物処分場におけるカルシウム・スケール生成抑制のための中間覆土の可能性調査, 土木学会全国大会第 73 回年次学術振興会(北海道), Ⅶ-010, pp.19-20, 2018.2)田村典敏・岩川博章・石田泰之:最終処分場浸出水カルシウムスケールトラブル対策技術の開発, 廃棄物資源循環学会研究発表会講演論文集, Vol.24, pp.521-522, 2013.3)岡田清・小坂丈子:ハロイサイト鉱物の層間水の脱水機構, 釜業協會誌, Vol.91, No.1055, pp.329-334, 1983.4)小野裕之・和田信一郎:ハロイサイトのカルシウムおよび銅イオンの吸着の特異性, 粘土科学, Vol.46, No.3, pp.169-175, 2007.5)市川あゆみ・日置雅之・柳澤淳二:敷料用資材のアンモニア吸着能力, 愛知県農業総合試験場研究報告, No.46, pp.73-79, 2014.6)竹内節:吸着の化学-表面・界面制御のキーテクノロジー, 産業図書, pp.60-63, 1955.7)杉本泰治:沪過-メカニズムと沪材・沪過助剤, 地人書館, pp.13-16, 1992.- 274 -
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  • タイトル
  • 管理型海面廃棄物処分場に打設する基礎杭の施工性に関する検討
  • 著者
  • 野村 理樹・菊池 喜昭・野田 翔兵・井上 珠希・平尾 隆行・竹本 誠
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 267〜270
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000047
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)8-3管理型海面廃棄物処分場に打設する基礎杭の施工性に関する検討野村理樹 1・菊池喜昭 2・野田翔兵 2・井上珠希 3・平尾隆行 4・竹本誠 41 首都高速道路(株)(前東京理科大大学院)・2 東京理科大学理工学部・3 東京工業大学大学院(前東京理科大学)・4 中電技術コンサルタント(株)1. はじめにわが国では,東京湾や大阪湾などの大都市近郊を中心として大規模な管理型海面廃棄物処分場(以降,海面処分場とする)が数多く建設されている.これらの海面処分場は,建設時には沖合の処分場として整備されるが埋立が完了する頃には周辺地域の開発により,比較的都市部に近い土地になることが多い.そのため,これらの海面処分場跡地を都市機能用地等として高度利用することに対する期待が高まっている.海面処分場跡地を高度利用する際には,立地する構造物を支持する基礎工が必要になると考えられる.しかし,海面処分場の多くは海底に存在する在来粘性土層を遮水基盤として利用することを前提としているため,サンドドレーン,サンドコンパクションなどの地盤改良を施さないで埋立が行われている.海面処分場跡地となった時でも,遮水基盤に対して事後の地盤改良を施工することは困難であることから,海面処分場跡地に重量構造物を立地させるためには杭基礎等の利用が不可欠であると考えられる.しかし,杭を施工する際,在来粘性土層の上にある廃棄物を遮水基盤やさらに支持層まで連込むことが懸念されている.これまで,あらかじめ圧密した粘性土基盤を作製し,この圧密圧力を除去した状態で,上部に廃棄物を模した砂層を作製して,杭を貫入させた際の上部の砂層に含まれる小粒径の廃棄物,大粒径の廃棄物,ひも状の廃棄物等の粘性土地盤への連込について検討を行ってきた.しかし,室内の小型実験では,粘性土地盤の剛性やせん断強度のほうが,砂地盤のそれよりも大きくなりがちであり,現実的でない状態での実験となってしまう.そこで,ここでは,粘性土地盤の圧密圧力を変化させて,粘性土の剛性やせん断強度をできるだけ抑えた状態で,それらの違いが,小粒径廃棄物の連込挙動にどのように影響するかを検討した.2. 既往の研究海面処分場に杭を打設することに関する実験は,2000 年ころから活発に行われている 1).当初は,杭を打設した時の遮水性の確保が問題ではないかと考えられていた 2),3)が,遮水性の確保は比較的確実に達成できることがわかった上,海面処分場は陸上処分場に比べて動水勾配が極めて小さいことからも,遮水性の確保の問題があまり大きな問題ではないと考えられる.その後,現場で試験施工 4),5)が行われた.現場施工の結果からは,廃棄物の連れ込みの問題が大きいことがわかった.特に,ひも状の廃棄物の連れ込みや,大型廃棄物を杭内に取り込むことによる閉塞現象が問題となることがあることがわかった.筆者らの研究室では杭の施工に伴う問題を,室内小型模型実験を通して検討してきた 6)~9).その結果,ひも状の廃棄物の連れ込みメカニズム 6),先端補強等による杭先端外径の出っ張りに伴う杭側面への連れ込み 6)が問題であることがわかった. また,礫状の大粒径の廃棄物の連れ込み現象についても現象を観察する 7),8)とともに,問題を簡略化してその原理について検討をしてきている 9).3. 実験概要ここでは,2 つのシリーズの実験を実施した.いずれのシリーズとも,土槽に模型BC粘性土層を作製し,その上に飽和砂層を作製し,そこに杭を静的に貫入するものであった.第 1 シリーズの実験の杭貫入時のイメージを図-1 に示した.この土槽は円筒形であり,内径は 15cm である.この実験では,粘性土には表-1 に示す物性の青粘土を用い,砂層には,表-2 に物性を示す硅砂 5 号を用いた.青粘土はあらかじめ所定の圧密圧力(10,20,30,50,100 kPa)で圧密し,ほぼ 9cm の層厚になるように表面を成型し砂層5cm杭貫入8cm粘土層9cmた.その上に,水を張り,硅砂 5 号を飽和状態で 5 cm の層厚となるように敷き詰めた.ここに図-2 に示す軸径 19mm のステンレス製の杭を粘性土層に 8 cm 貫入するように静的に貫入した.図-2 に示す通り,これらの杭は杭先端形状を変化させること図-1 実験装置のイメージ(杭貫入時)Performance of Pile Installation Through The Offshore Waste LandfillRiki Nomura1, Yoshiaki Kikuchi2, Shohei Noda2, Tamaki Inoue3, Takayuki Hirao4, Makoto Takemoto4 (1Metropolitan ExpresswayCompany Limited, 2Tokyo University of Science, 3Graduate School of Tokyo Institute of Technology, 4Chuden EngineeringConsultants)KEYWORDS: Controlled Waste Landfill, Pile Foundation, Waste dragging, Xray CT- 267 - で,杭先端形状の違いによる砂の連込量の違いを見ようとしたものである.杭貫入後は図-1 に示した装置をさかさまにし,杭と地盤を徐々に押し出しながら,杭周辺の粘性土を 8mm ごとに切り出し,杭の先端以下と杭の周辺に連れ込まれた砂の量を測表-1 青粘土の物性値2.79 (g/cm3)40.1 (%)液性限界24.2 (%)15.9塑性指数表-2 珪砂 5 号の物性値2.68(g/cm3)0.58(mm)平均粒径 D501.0720.680最小間隙比 emin土粒子密度 ρs塑性限界土粒子密度 ρs最大間隙比 emax定した.第 2 シリーズの実験は,杭が貫入するときの様子を X 線 CT で観察しながら行ったものである.ここでの土槽も円筒形であり,内径は 10.4cm で19mmある.この実験では,粘性土には青粘土(表-1)を用い,砂質土には表-3 に2mm物性を示す硅砂 3 号を用いた.用いた砂の粒径をシリーズ 1 より大きくし3mmたのは,X 線 CT で砂の挙動を観察しやすくしようとしたためである.この実験では青粘土は所定の圧密圧力(10 kPa)で圧密し,ほぼ 20cm の層厚になるように表面を成型した.その上に,水を張り,硅砂 3 号を飽和状態で 5 cm の層厚となるように敷き詰めた.ここに軸径 30mm のアルミニウ5mm2mm①開端ム製の閉端杭を粘性土層に 13 cm 貫入するように静的に貫入した.4. 実験結果4.1 X 線 CT を用いた杭貫入中の挙動の観察喜古10)は,X 線 CT 装置を用いて,この実験4mm②閉端③外細④エッジ付図-2 模型杭の概要土粒子密度 ρs最大間隙比 emax表-3 珪砂 3 号の物性値2.67(g/cm3)平均粒径 D500.800最小間隙比 emin1.28(mm)0.571の第 2 シリーズとほぼ同じ実験を実施した.ただし,喜古の実験では,粘性土の圧密圧力は 100kPa とした.用いた杭は閉端杭である.図-3~図-5 に喜古の実験結果(圧密圧力100kPa)と,ここでの実験結果(圧密圧力 10kPa)の比較を示す.なお,これらの図では,貫入量は地表面からの貫入量としており,杭が粘性土上面に達した時の貫入量が 50mm である.図-3 は杭先端がちょうど粘性土層の上面に到達した時のものである.図から明らかなように,粘性土の圧密圧力が小さいほうが,杭を粘性土中まで貫入した時に砂がより広く深くまで貫(a) 圧密圧力 10 kPa(b) 圧密圧力 100 kPa図-3 杭貫入量 50mm入されている.また,図-4 を見ると,さらに杭を押し込んだ時に,圧密圧力が小さいほうが杭先端以下に連れ込まれる砂の量が多いだけでなく,杭先端より上方に連れ込まれている砂の量も多いことがわかる.図-5 では貫入量は少し異なるが,杭先端も杭周面も圧密圧力が小さいほうがより多く砂が連れ込まれていることがわかる.なお,図-5 を見ると,杭先端にくさび上に押し込まれた砂は,杭の外側には広がっておらず,おわん型をしており,杭先端からの深さが圧密圧力によって異なっているようである.(a) 圧密圧力 10 kPa(b) 圧密圧力 100 kPa図-4 杭貫入量 80mm以上のほか,杭先端に連れ込まれる量は粘性土層に貫入する深さが深くなるにつれて少しずつ少なくなるようではあるが,あまり大きくは変わらないことがわかる.また,杭周面に連れ込まれる砂の量は上方ほど多く,杭先端に近づくにつれて少なくなる傾向にあることもわかる.杭先端におわん型に押し込まれた砂の量について考察するため,図-6 のような楔の径 D と楔の高さD を計測した.その結果を図-7 に示す.これによると,楔の径は粘性土層への貫入量の増加に伴い小さくなり,貫入量が小さい範囲では,圧密圧力(a) 圧密圧力 10 kPa(b) 圧密圧力 100 kPa図-5 杭貫入量 (a)130mm (b)150mmが小さいほうが径が大きく,圧密圧力の違いによる径の差があったが,十分に貫入するとその径はほぼ杭径に等しくなり,圧密圧力の違いも影響がなくなる.その一方で,楔の高さは貫入量によらずほぼ一定であり,圧密圧力が小さいほうが高くなる傾向にあった.なお,ここでは二次元断面しか示していないが,X 線 CT ではこの楔の 3 次元画像を得ており,そのデータをもとに,杭先端の楔のおおよその体積を計算した.その結果を図-8 に示す.また,3 次元画像から判断すると杭先端の楔はほぼ楕- 268 - 円体の半断面と仮定できそうであることがわかった.そこで,圧密圧力 100kPa で,50貫入量が 150mm の時の体積計算結果と楕6070(2⁄3)𝜋(𝐷⁄2)2 (𝛼𝐷⁄2))と比較したところ,測定値が 6350 mm3 であるのに対し,楕円D体の半断面の体積は 6470 mm3 であった.このことから,杭先端の楔は楕円体の半80貫入深さ(mm)円 体 の 半 断 面 の 体 積 (=αD90100110120断面と近似して計算できると考えられ高さ(10kPa)直径(10kPa)高さ(100kPa)直径(100kPa)130図-6 杭先端の楔のイメージ140150る.0123456楔の高さ,直径(mm)4.2 粘性土地盤の圧密圧力と杭先端形状の違いが砂の連れ込み量の違いに及ぼす影響図-7 楔の高さと直径の杭貫入深さによる変化図-9 に第 1 シリーズでの粘性土地盤の圧密圧力と杭先端形状50粘性土層に 8cm 貫入させた後で,調べたものである.また,図中60の深度 8cm より上は杭側面に連れ込まれていた砂の量を表し,70貫入深さ(mm)の違いによる砂の連れ込み量の深度分布を示す.この実験は杭を深度 8cm より下は杭先端によって連込まれた砂の量を表している.いずれの杭においても杭側面では杭の上部ほど砂が多く連れ込まれており,先端に近づくにつれて連れ込み量が少なくなる傾90100110120向にあるが,エッジ付杭では杭先端付近にも多く砂が連れ込まれ130ているのが特徴的である.また,閉端杭に比べると,開端杭と外140150細杭で杭側面に連れ込まれた砂の量が少なくなっていることが10kPa100kPa800500010000 15000 20000 25000 30000杭先端の砂の体積(mm2)わかる.さらに,杭先端以下の砂の量についてみてみると,閉端杭では多くの砂が連れ込まれているのに対し,開端杭,外細杭,図-8 杭先端の砂の体積の杭貫入深さによる変化エッジ杭では先端以下に連れ込まれた砂の量が非常に少なくなっている.また,圧密圧力の違いによる連れ込み量の違いについてみると,第 2 シリーズの傾向と同じように,圧密圧力が小さいほど多くの砂が連れ込まれる傾向にあることがわかる.図-10 には,図-9 の結果をもとに,杭側面への砂の連込み量が圧密圧力によってどう変化したかを示した.全体として,圧密圧力が小さくなると杭側面への連込み量が多くなる.また,連込量は,杭の先端形式によって異なり,開端杭と外細杭でほぼ同等,閉端杭がやや多く,エッジ付杭が最も多いことが分かる.閉端杭と開端杭,外細杭の間の違いは,先端閉塞面積の影響が多いのではないかと思われる.すなわち,粘性土層に杭が入る時に閉端杭のほうが断面積が大きいため,余計多くに砂を粘土層に押し込む傾向となり,その結果,多くの砂が粘性土層に連れ込まれるものと考えられる.一方,エッジ付き杭の場合には,エッジの上に砂が多く乗ることが原因で側面に連れ込む砂の量が増えたものと考えられる.砂の連込み量 (g)12砂の連込み量 (g)030.20.40.6砂の連込み量 (g)砂の連込み量 (g)0.800.20.40.60.80100111122223334550kPa30kPa20kPa10kPa34550kPa30kPa20kPa10kPa深度 (cm)0深度 (cm)0深度 (cm)深度 (cm)04550kPa20kPa566677778888999910101010(b)開端杭(c)外細杭図-9 杭ごとの砂の連込み量の深度分布- 269 -2346(a)閉端杭150kPa20kPa(d)エッジ付杭4 図-11 に3端以下に連れ込まれる砂の量が圧密圧力によ杭側面の砂の質量(g)して,杭先閉端杭開端杭外細杭エッジ杭1284杭先端の砂の質量(g)16は,同様に閉端杭開端杭外細杭エッジ杭21ってどう変わるかを示した.圧密圧力00204060801000020406080100圧密圧力(kPa)圧密圧力(kPa)図-10 杭側面の砂の連込み量図-11杭先端の砂の連込み量が小さくなるとわずかながら連れ込み量が増える.しかし,ここで顕著なのは,閉端杭の場合がほかの開端杭の場合に比べて圧倒的に連れ込み量が多いことである.さらに,図-9 からも分かるが,外細杭やエッジ付杭のように杭の先端を尖らせた場合には,先端に連れ込まれる砂の量が極めて少なくなることが分かる.閉端杭の結果からのアナロジーで,杭先端の閉端部分の面積に対して断面的に図-6 のように砂が連れ込まれると考えると,開端杭については,楕円環状に杭先端に砂が押し込まれると考えることができる.その時の体積は杭の外径が D,肉厚が t,楔の高さがt であるとすると,(1/8)𝜋 2 (𝐷 − 𝑡)𝑡 2 𝛼となる.鋼管杭を考えると𝐷 ≫ 𝑡なので,D が一定であれば体積はほぼ𝑡 2 に比例する.このことからすると,先端をとがらせることで杭先端以下に連れ込む量を大きく減らすことが可能となる.その結果が,図-11 に表れている.5. おわりにここでは,粘性土の圧密圧力と杭先端形状を変えて,杭施工時の小粒径廃棄物の連れ込み挙動がどのように変化するかを見てきた.圧密圧力が小さくなる(相対的に粘土の剛性が砂の剛性より小さくなる)と多少連込み量が増加する傾向にある.また,杭先端形状については,開端杭で先端をとがらせることで杭先端以下への連れ込み量を大幅に低減できることが明らかとなった.また,杭外側にエッジがあると杭周面への連れ込み量が多くなることも明らかにした.謝辞:X 線 CT を用いた実験では,港湾空港技術研究所松村聡研究官にご指導賜った.ここに謝意を表します.参考文献1) 菊池喜昭・森脇武夫・勝見武・平尾隆行・蔦川徹・服部晃・ 岡本功一・山田耕一・佐々木広輝:管理型海面廃棄物処分場に打設する杭基礎が底面遮水基盤に与える影響,港湾空港技術研究所資料,No. 1252,pp.13-24,2012.2) 菊池喜昭・橋爪秀夫:杭周辺地盤の透水性に関する室内透水試験,第 6 回環境地盤工学シンポジウム,pp.217-224,2005.3) 嘉門雅史・勝見武・乾徹・濱田悟:鋼管杭打設粘土地盤と杭境界面における漏水量とその評価,材料別冊,第 54 巻,第 11 号,pp.1100-1104,2005.4) 渡部要一・水谷崇亮・金子崇・増門孝一:海面処分場における杭基礎の適用性-未処理廃棄物地盤における打設実験と杭周面透水試験-,港湾空港技術研究所資料,No.1321,34p.,2016.5) 水谷崇亮・森川嘉之・渡部要一・津田行男・宮原祐二・松本貴之・松尾淳・市川雅・松本伸春・高木悌二・上中一弘:海面処分場における杭基礎の適用性(その 2)―焼却灰を主とする廃棄物地盤における打設実験と杭周面透水試験―,港湾空港技術研究所資料,No.1344,23p.,2018.6)喜古真次・菊池喜昭・兵動太一・神戸泉慧・引地宏陽・平尾隆行・竹本誠:廃棄物処分場の遮水基盤を貫通する杭の施工性に関する研究,土木学会論文集 B3(海洋開発),Vol. 72,No. 2,I_384-I_389, 2016.7)平尾隆行・菊池喜昭・兵動太一・喜古真次・片岸鴻太・並木翔平・松村聡・竹本誠:管理型海面廃棄物処分場の遮水基盤を貫通する杭の廃棄物連れ込み挙動,土木学会論文集 B3(海洋開発),Vol. 73,No. 2,I_300-I_305, 2017.8) 野村理樹・菊池喜昭・兵動太一・野畑俊介・平尾隆行・竹本誠・松村聡:海面廃棄物処分場に貫入する粒状廃棄物連込み挙動,土木学会論文集 B3(海洋開発),Vol. 74,No. 2,I_922-I_927, 2018.9) 野村理樹・菊池喜昭・野田翔兵・井上珠希・平尾隆行・竹本誠:海面廃棄物処分場に打設する基礎杭の大粒径廃棄物の連込み挙動,土木学会論文集 B3(海洋開発).(投稿中)10) 喜古真次:廃棄物処分場の遮水基盤を貫通する杭の廃棄物連込み挙動,東京理科大学大学院修士論文,2017.- 270 -
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  • タイトル
  • 海面廃棄物処分場で発生する埋立ガスの経年変化に関する研究
  • 著者
  • 吉田 英樹
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 263〜266
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000046
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)8-2海面廃棄物処分場で発生する埋立ガスの経年変化に関する研究○吉田英樹 11 室蘭工業大学大学院1.はじめに海面廃棄物処分場は陸上廃棄物処分場と異なり、保有水を貯留する構造を有することから、保有水が停滞しやすく、内部が嫌気性雰囲気になりやすい傾向にあると思われる。そのため、埋立終了後に閉鎖・廃止する際に、廃止までに要する期間が長引くと言われている。閉鎖から廃止までの期間は埋立の受け入れが終了しているのにもかかわらず、水処理施設の維持管理コストがかかることになるので、この期間をいかに短縮できるかが重要となる。このため、早期安定化(特に内部の生物化学的反応促進)ための様々な技術の適用が必要であるとされている1,2,3)。本研究で調査対象とした海面廃棄物処分場では、陸上埋立と同様に、内部の埋立ガスの排除と空気の導入、そして滞留しやすい保有水を速やかに排除するために集水暗渠を導入した4,5)。さらに、一般の海面廃棄物処分場には設置されていないガス抜き管を設けている。また、内部水位観測孔が複数設けられているが、上部を開口している場合、結果的にガス抜き管と同様の機能を有している可能性がある。前報6)ではこのような水位観測孔、集水暗渠及びガス抜き管で、廃止基準指標及び跡地の安全管理上で重要である処分場内部の埋立ガス成分の計測を行い、複数の観測孔でメタンガス濃度の顕著な上昇が見られたことを示した。本調査研究では海面最終処分場において、約 10 年にわたって調査した結果により、安定化の長期的な進行状況を把握するとともに、集水暗渠やガス抜き管による安定化促進効果を検討した。2. 調査方法集水暗渠調査対象は、大阪湾内に位置する海面廃棄マンホール連結管物最終処分場(以下,処分場)である6)。廃水位観測孔(●蓋あり)△ ▲ ガス観測孔(▲蓋あり)棄物の埋め立て期間は 1990 年 1 月から 2002年 3 月までの 12 年間で埋立面積 28ha,埋立北3容量 478 万 m3,主な埋立廃棄物は一般廃棄物北1として、2001 年に海水面位置に相当する深さと排水し、保有水の早期排除及び埋立ガスの北6北708G‐2 ▲I‐3eI‐1中2西2△11G‐5II‐2△中3中4△△II‐1H18‐108G‐3 ▲中5中6△III‐2東2中8中711G‐9△11G‐7III‐1中9B‐16△△11G‐6中10△11G‐4中12中13中11△11G‐2H25‐2H25‐1南1南2排除と空気の導入による安定化促進を図って11G‐311G‐811G‐10西311G‐1II‐3I‐2中1東1III‐3舗装実証試験西1北8No.510G‐1I‐4(地表から 5~6m 付近)に集水暗渠を設置し,処分場内保有水を集水暗渠から内水ポンドへ北508G‐1 ▲H27‐1焼却灰、汚泥焼却灰、陸上残土、浚渫土砂などである。この処分場では安定化促進を目的北4北2南3南4いる。図-1 に概略図を示した。一定区間ごと南5南6にマンホール連結管(図-2 左端)があるため、内部で発生したガスが排出され、かつ空気が図-1調査対象処分場平面図とガス抜き管設置状況流入するようになっている。従来海面廃棄物処分場には陸上処分場のようなガス抜き管は設置されていない。この処分場では上記のマンホール連結管に加えて、図-2 に示したように水位測定用観測孔、ガス測定用観測孔さらに 2011 年度にガス抜き管が新たに設置されている。水位測定用観測孔図-2観測孔(マンホール連結管、水位測定用、ガス測定用、ガス抜き管)は上部は開放されているものと閉鎖されているものがある。例えば、観測孔 H18-1 や H25-1(2013 年に新設)の上部は蓋で閉鎖されている。ガス測定用観測孔は 3箇所(08G1~3)あり、すべての上部には蓋があり埋立ガスの流出及び空気の流入はないことから、廃棄物層内部の埋立ガス成分特性を把握できる。図-2 に写真(右端)を示した。本研究では、これらの観測孔でガス測定用チューブを用いて、ポータブル埋立ガス測定器(GEOTECH 社製 GA5000)で酸素、窒素、メタンガス、炭酸ガスを測定した。Study on Temporal Variation of Landfill Gas Concentration in a Closed Offshore Sanitary LandfillHideki Yoshida1 (1Department of Civil Engineering and Architecture, Muroran Institute of Technology )KEY WORDS: Landfill, Gas, Methane, Stabilization- 263 - 酸素集水暗渠メタンマンホール連結管二酸化炭素水位観測孔(●蓋あり)窒素△ ▲ ガス観測孔(▲蓋あり)北3北4北2北1北5北6北708G‐1 ▲H27‐1No.510G‐1I‐408G‐2 ▲I‐3eI‐1II‐311G‐311G‐5△△△III‐211G‐8△中3中2西211G‐1II‐2I‐2中1東1III‐3舗装実証試験西1北8中4△08G‐3 ▲中5II‐1H18‐1中611G‐10東2中8中7中9B‐16△11G‐9西3△III‐1△11G‐711G‐6中10中12中13中11△11G‐4△11G‐2H25‐2H25‐1南1南2南3南4南5南6図-3観測孔出口のガス成分(2018 年 12 月)3. 調査結果と考察3.1 観測孔出口埋立ガス成分の最新調査結果観測孔出口(地表面高さ)での埋立ガス成分の観測結果を図-3 に示した。ここ数年でメタンガス濃度が高かったものが減少傾向にある。ただし、蓋のついたガス測定用観測孔の 08G3 ではメタンガス濃度が 14%を示している。また、水位測定用観測孔 H25-1 と H25-2 では 24-29%を示している。これは蓋で閉鎖されているため内部にメタンガスが滞留しやすくなっているためである。同様に蓋で閉鎖されている水位測定用観測孔 H18-1 でも 14%を示している。また、ガス抜き管の 11G-9 でも 12%を示している。このように一部の観測孔出口でメタンガス濃度が高いものの、全体としてメタンガス濃度は極めて低くなっている。観測孔出口のメンタンガス濃度が爆発限界である 5%を超えているのは調査 28 カ所中で 8 カ所(約 3 割)である。3.2 観測孔出口埋立ガス成分の経年変化次に、前報6)で特にメタンガス濃度が高かった水位測定用観測孔 H18-1 及びⅢ-3 について、観測孔出口のメタンガス濃度の経年変化を図-4 に示した。いずれも変動があるものの、減少傾向にあることがわかる。蓋で閉鎖されている水位測定用観測孔 H18-1 は最高でメタンガス濃度が 80%を超えていたが、ここ数年は顕著に減少している。さらに、メタンガス濃度が高かったガス測定用観測孔 08G-2 及び 08G-3 について図-5 に示した。図-4 に比べてメタンガス濃度が非常に高く、さらに変動が極めて大きい。特にほぼゼロになっている時期もある。ガス測定用観測孔では地表面から 2m~6m 付近にストレーナーがあり、海水に水没していない廃棄物層から埋立ガスが流入する構造になっている。一般に焼却灰を主体として埋立を行った海面廃棄物処分場では内部滞留水の pH が高く、嫌気性微生物反応によるメタン発酵の最適 pH 領域を超えている可能性があり、内部滞留水の水面以下でのメタンガス発生が困難になっている可能性が1009010090Ⅲ‐3y = ‐0.0023x + 101.12R² = 0.168070メタンガス濃度[%]メタンガス濃度[%]8060504030605040302010102014/12図-42019/12y = ‐0.0121x + 534.67R² = 0.44702002009/12H18‐102004/12水位測定用観測孔におけるガス成分の経年変化- 264 -2009/12左:Ⅲ-32014/12右:H18-12019/12 1009008G‐2908070メタンガス濃度[%]メタンガス濃度[%]80100y = ‐0.0077x + 360.1R² = 0.086050403070605040302020101002004/122009/12図-52014/1202004/122019/12y = ‐0.011x + 491.52R² = 0.1808G‐32009/12ガス測定用観測孔におけるガス成分の経年変化左:08G-22014/122019/12右:08G-3ある。この点で、ガス測定用観測孔が集ガス対象としている地表面から 2m~6m 付近では内部滞留水で水没せず、かつ地表面からの空気流入によるエージングによって間隙水の pH が低下し、メタン発酵可能な pH 領域になる可能性がある。たとえば、地表面からの空気が深部まで拡散侵入して、酸素濃度が上昇した場合にはメタン発酵の阻害にもなりうるため、メタン発酵が停止して、メタンガス濃度が急減することも考えられる。したがって、このような条件にある廃棄物層からの埋立ガスが流入するガス測定用観測孔では特にメタンガス濃度が高くなっていると思われる。しかしながら、このような推定を検証するには、実際の地表面付近の間隙水の pH の確認やメタンガス濃度の連続測定などの調査が必要と思われる。3.3 観測孔出口埋立ガス成分の経年変化の統計的評価前節で示したような観測孔出口埋立ガス成分の経年変化について、統計的な評価を行った。観測孔出口のメタンガス濃度が経過時間に対して増加または減少傾向にあるかどうかを最小二乗による近似式を求め、回帰分析を行った結果を表-1 に示した。表中には各観測孔での測定回数、蓋の有無、近似式(y をメタンガス濃度、x を時間とする)、相関係数、決定係数、そして測定回数によって決まる 95%有意水準で有意となる決定係数を示し、メタンガス濃度の経年的に増加または減少している傾向が有意かどうかを示した。調査した 30 カ所の観測孔で減少傾向が有意だったのは 14 カ所(47%)であり、全体に観測孔出口のメタンガス濃度表-1 観測孔出口メタンガス成分の経年変化の統計的評価No123456789101112131415161718192021222324252627282930観測孔08G-108G-208G-310G-111G-111G-211G-311G-411G-511G-611G-711G-811G-911G-10Ⅰ-1Ⅰ-2Ⅰ-3Ⅰ-4Ⅱ-1Ⅱ-2Ⅱ-3Ⅲ-1Ⅲ-2Ⅲ-3acH18-1H25-1H25-2H27-1上部蓋 観測回数ありありありありありありあり48504838293230323834323333301014911131410141619161123887傾向負負負負負負負負負負負負正正負正負正負負正正負負負正負負負負- 265 -有意性検定RR2有意R295%相関係数 決定係数決定係数-0.570.320.08あり-0.290.080.08あり-0.430.180.06あり-0.540.290.07あり-0.230.050.10-0.270.070.09-0.330.110.09あり-0.240.060.09-0.210.050.07-0.340.120.08あり-0.350.120.09あり-0.210.040.080.200.040.080.340.120.09あり-0.470.220.300.770.590.21あり-0.680.460.34あり0.460.210.27-0.110.010.23-0.480.230.21あり0.370.140.300.410.170.21-0.520.270.18あり-0.400.160.15あり-0.350.120.180.210.050.27-0.660.440.17あり-0.640.410.39あり-0.330.110.39-0.810.660.45あり が減少傾向にあることが確認できた。前節まで示したように観測孔の上部が蓋で閉鎖されてメタンガス濃度が高くなる傾向があるガス測定用観測孔 08G-1,2,3 や H18-1 でも減少傾向が統計的に確認できた。また、2011 年に設置されたガス抜き管についても、10 カ所中 4 カ所で低下傾向が確認できており、逆に 2 カ所では増加傾向にあった。このことから廃棄物層内からの埋立ガス排除の効果があることが確認できた。処分場全体で 10 カ所に過ぎないが、ガス抜き管を設置することで、廃棄物層内部の埋立ガスの発生状況をより正確に確認でき、かつ空気の流入や埋立ガスの排除が可能であることから海面廃棄物処分場でも有効な手法であると考えられる。このように、10 年程度の複数の観測地点での観測を通じて、処分場全体でのメタンガス濃度の低下、つまり安定化は確実に進行していると判断できた。しかしながら、メタンガス濃度の絶対値が爆発限界である 5%を超えて推移していたり、突然急上昇する事例も見られており、跡地管理における安全管理の面ではメタンガス濃度の推移について長期的かつ継続的にその特性を確認することが重要である。4.まとめ本報告で紹介した海面廃棄物処分場のガス成分変化の長期的な傾向についてまとめると、1)水位測定用観測孔、ガス測定用観測孔及びガス抜き管観測孔の出口での埋立ガス成分の測定により、処分場全体で爆発性のあるメタンガス濃度の空間的分布を把握できた。特に、観測孔出口に蓋による閉鎖がされている場合にメタンガス濃度が高い傾向があった。内部滞留水で水没していない廃棄物層の埋立ガス測定が可能なガス測定用観測孔で効果的に内部の埋立ガス成分を把握できていると思われた。海面廃棄物処分場内部でのメタンガス発生への pHによる影響についての示唆が得られた。2)2018 年 12 月の観測結果では、観測孔出口のメンタンガス濃度が爆発限界である 5%を超えているのは調査 28 カ所中で 8 カ所(約 3 割)であった。最高ではメタンガス濃度は 29%に達するものもあったが、ごく一部の観測孔に限られていた。3)観測孔内出口のガス成分の経年変化(約 10 年)について、統計的評価によって、処分場全体でメタンガス濃度が低下傾向にあることを定量的に確認できた。ガス抜き管による埋立ガス排除が有効であることについても確認できた。跡地管理における安全管理の面ではメタンガス濃度の推移については長期的かつ継続的な観測が重要である。本論文で調査対象とした海面廃棄物処分場では、集水暗渠、多数の観測孔、そしてガス抜き管の設置などの先進的な事例であることから、ガス成分の変化に限らず、内水の水質変化を含めて、本処分場で顕著な安定化促進が確認できれば、今後の海面廃棄物処分場の稼働から跡地利用にいたるまでの有用な知見が得られると思われる。今後は埋立ガス成分の連続測定を含めたさらなる調査が必要であると考えている。参考文献1)財団法人日本環境衛生センター:平成 26 年度海面最終処分場閉鎖・廃止適用マニュアル(案)検討調査業務報告書,20142)管理型海面廃棄物処分場の早期安定化及び利用高度化技術に関する委員会:港湾における管理型海面最終処分場の早期安定化に関する技術情報集報告書,20173)大野博之ら:海面最終処分場の閉鎖・廃止の現状と課題,第 22 回廃棄物資源循環学会研究発表会講演論文集,CD-ROM,20114)石森洋行ら:廃棄物海面埋立処分場内のガス挙動解析と酸素供給量の評価,第 22 回廃棄物資源循環学会研究発表会講演論文集,CD-ROM,20115)樋口進ら:海面最終処分場の集水暗渠モデルによる pH 等挙動調査,第 23 回廃棄物資源循環学会研究発表会講演論文集,CD-ROM,20126)吉田英樹:安定化促進を行った海面廃棄物処分場内部の埋立ガス分布特性に関する研究,第 10 回環境地盤工学シンポジウム発表論文集,pp.337-342,2013- 266 -
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  • タイトル
  • フライアッシュスラリー埋立地盤の密度に及ぼす材料特性の影響に関する実験的検討
  • 著者
  • 山田 桂吾・角田 紘子・山﨑 智弘・乾 徹
  • 出版
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム
  • ページ
  • 259〜262
  • 発行
  • 2019/08/23
  • 文書ID
  • cs201909000045
  • 内容
  • 第13回環境地盤工学シンポジウム(2019年9月 札幌)8-1フライアッシュスラリー埋立地盤の密度に及ぼす材料特性の影響に関する実験的検討○山田桂吾 1・角田紘子 2・山﨑智弘 2・乾1徹1大阪大学・2 東洋建設1. はじめに石炭火力発電所で,発電時に石炭を燃焼した際に,石炭灰(フライアッシュ)が発生するが,その大部分は,セメント原料や土木資材等として有効利用されている.しかし一部は有効利用できず,発電所に隣接して建設された管理型海面処分場に埋立処分されている.我が国では,今後も石炭火力発電所の新設が計画されており,フライアッシュ発生量は依然として一定の水準を維持すると予想される.したがって,大量処分が可能であり,処分場の埋立完了後に造成された港湾域の土地の跡地利用が可能になる事を背景として,今後も海面埋立処分場の果たす役割は大きいと考えられる.海面埋立処分場の設計・建設から跡地利用に至るまでに,処分場の外郭となるケーソンや鋼板セルなどの遮水性護岸の安定性の確保や,埋立管理などを適切に行う必要があり,護岸に作用する土圧や,埋立地盤の支持力や沈下特性に,大きな影響を及ぼすフライアッシュ埋立地盤の密度や強度特性を把握・管理することが重要になる.しかし,フライアッシュ埋立地盤の密度や強度特性は,処分場の緒元や埋立管理,試料をサンプリングする地点・深さなどによってばらつきがある.そのため埋立地盤の密度や強度特性を事前に推定することは難しい.フライアッシュは,石炭の産地や燃焼方法,発生時期によって,粒度分布や粒子密度,化学成分組成などの材料物性が異なり,これらの差異が投入後の沈降・堆積挙動や自硬性の発現などに違いを引き起こし,埋立密度や地盤強度に影響を及ぼすと考えられる.一方,海面処分場へのフライアッシュの投入方法として,湿灰埋立工法や高濃度スラリー埋立工法などが主に用いられている.湿灰埋立工法はフライアッシュを含水比 10~20 %の状態に加湿して投入する工法である.高濃度スラリー埋立工法は含水比 40~60 %の状態で練混ぜ,ポンプ圧送により高密度な状態で埋め立てる工法である.これらの投入方法の違いによっても埋立密度や地盤強度に差異が生じると考えられる.既往の研究 1) では,フライアッシュを水面から投入して堆積層を作成した際に,密度の小さい部分が発生した.これはフライアッシュが沈降する時に,海水を巻き込んだことが要因の一つと考えられる.また堆積層に実際の土被り厚に相当する応力を作用させた時に,圧密による密度の向上は見られなかった.このように,埋立地盤の密度が投入方法の影響を受けることは明らかである.したがって,フライアッシュの投入方法や材料物性が埋立密度や強度特性に及ぼす影響を詳細に把握しておくことは,管理型海面処分場における適切な埋立管理,早期の跡地利用を実現する上で非常に重要である.本研究では,石炭灰の材料物性や投入方法が埋立地盤の密度や強度特性に及ぼす影響を検討することを目的として,①海水中に堆積した石炭灰地盤の密度に及ぼす投入方法と石炭灰の材料物性の影響,②石炭灰埋立地盤の密度が長期的な強度特性に及ぼす影響,について実験的に評価を行っている.特に本稿では,①について検討を行うために実施した2 つの実験結果を報告する.はじめに,フライアッシュと海水を混合して,フライアッシュスラリーを作成し,海水を入れたアクリルカラム( = 10 cm,H = 100 cm)に,現場の工法を模擬した複数の方法でスラリーを投入して堆積層を作成した.そして自重圧密による堆積層の含水比変化とその収束値を計測することで,投入方法による埋立地盤の密度への影響を評価した.続く実験では,材料物性の異なる 4 種類のフライアッシュを用いて様々な含水比で作成したスラリーをモールド( = 5 cm,H = 10 cm)に充填し,フライアッシュの物性やスラリー作成時の含水比が堆積密度に及ぼす影響を評価した.2. 実験に用いたフライアッシュの基本的な材料物性本研究では A 灰,B 灰,C 灰,D 灰,E 灰の 5 種類のフライアッシュを用いた.B 灰と C 灰は同じ石炭火力発電所から採取しているが,採取した時期が異なっている.また,A 灰,D 灰,E 灰はそれぞれさらに異なる発電所から採取している.材料の粒度分布を図-1 に,基本的な物性を表-1 に示す.5 種類のフライアッシュはいずれも主としてシルトに相当する粒径であり,D 灰は比較的大きい粒子を含み,E 灰は比較的小さい粒子の割合が高い.また C 灰の粒度分布は曲線の傾きが大きい.均等係数 UC と曲率係数 UC’ は E 灰において最も小さい値を示している.粒子密度 ρs は,1.93~2.24 g/cm3 となっており,一般的なフ図-1 5 種類のフライアッシュの粒径加積曲線Experimental study on the effects of physical properties on the density of fly ash landfillKeigo YAMADA1, Hiroko SUMIDA2, Tomohiro YAMASAKI2 and Toru INUI1(1Osaka University, 2Toyo Construction Co., Ltd.)KEYWORDS: Fly ash slurry, Laboratory casting test, Density ,Settlement- 259 - ライアッシュの ρs の範囲内であるが, B 灰と C 灰の ρs は比較的大きく,E 灰の ρs はフライアッシュの平均的な値である.また,D 灰の ρs はフライアッシュとしては比較的小さな値である.液性限界 wL は A 灰のみ計測できたが,塑性限界 wp と大きな差はなく塑性指数 IP は非常に小さな値となり,塑性はほとんど呈さないことがわかる.また灰の種類によって塑性限界 wp は異なり,含水量に対する試料の挙動が灰種によって大きく異なる.pH は Ca 含有率が比較的高い B 灰が強いアルカリ性を示したが,C 灰は中性に近い性質を示しており,採取した火力発電所が同じでも,原料である石炭の差異などにより化学特性が異なると考えられる.用いた材料の化学成分表-1灰種粒子密度 ρ s (g/cm3)液性限界 w L (%)塑性限界 w P (%)電気伝導率(S/m)pH砂分(%)シルト分(%)粘土分(%)60% 粒径(mm)50% 粒径(mm)30% 粒径(mm)10% 粒径(mm)均等係数 U C曲率係数 U C 'フライアッシュの基本物性A灰2.2000.13310.738.7775.3915.840.0220.0170.0090.0038.601.50B灰2.23924.3223.150.64812.6811.2072.2016.600.0240.0190.0100.0038.571.40C灰2.242NP24.410.2078.567.7582.559.700.0270.0240.0190.0055.192.60D灰1.932NP43.640.0649.6014.9078.206.900.0340.0270.0160.0065.361.15E灰2.131NP35.830.10110.756.4080.6013.000.0180.0140.0080.0044.390.96組成と強熱減量を表-2 に示す.化学成分組成は灰種の違いにより多少の差異はあるものの,いずれの灰種においてもシリ表-2 フライアッシュの化学成分組成と強熱減量カ(SiO2)とアルミナ(Al2O3)で 80~90 %を占めていて,その他の元素が微量含まれている.また CaO 含有率は,前述したとおり B 灰が他のフライアッシュと比較して高い.3. 投入方法が埋立密度に及ぼす影響3.1 実験方法A 灰を使用してスラリーの投入方法が埋立地盤の密度に及酸化物(%)ぼす影響を評価するためのスラリー投入実験を実施した.本研究では兵庫県鳴尾浜で採取した天然海水(ρw = 1.023 g/cm3)を用いた.試料は含水比 45%の配合で A 灰(ρs = 2.200 g/cm3)と海水を混合し,ミキサーで十分に攪拌してフライアッシュスラリーを作成した.アクリルカラム( = 10 cm,H = 100 cm)にあらかじめ水深が 30 cm になるように海水を入れておき,スラリー作成後速やかに,アクリルカラム上端に設置したロ強熱減量(%)A灰B灰C灰D灰E灰Al2O3BrCaOMgOClCr2O3CuOFe2O3K2ONa2OMnOP2O5PbOSiO2SO3TiO2ZnO600℃22.692.161.020.020.025.811.260.930.050.4262.821.201.140.025.429.485.081.310.010.036.500.860.720.071.7851.541.111.260.0222.492.120.980.010.025.221.240.900.040.4263.811.181.080.0327.362.210.580.030.045.171.280.290.030.1659.580.362.520.0321.061.110.830.010.022.891.330.830.030.2570.040.460.90.011200℃6.11.74.53.24.80.81.11.54.3-:検出限界以下ートを介して,ロート下端に接続したトレミー管(内径 20 mm)からスラリーを投入した.スラリー投入実験は表-3 に示すP-1~P-4 の 4 ケースで行った.いずれのケースにおいても,アクリルカラムの高さ 60 cm 分の体積のスラリーを投入した.P-1~P-3 では,投入中にトレミー管先端が堆積層に少し埋まった状態を保ち,スラリーと海水の接触が小さい状態で投入を行った(底面投入).また投入を 1,2,4 回に等分することで,同じ量のスラリーを投入した際の,投入分割数の影響を評価した.P-4 も同様にアクリルカラム上端のロートを介して,トレミー管から投入を行うが,トレミー管先端を水面に表-3 実験条件と沈下終了後の含水比の比較実験ケース工法投入位置投入回数スラリー含水比w (%)最終堆積高さh f (cm)沈下後の含水比w f (%)P-11P-2P-3P-4高濃度スラリー埋立底面水面2424557.0058.0057.0560.4043.4844.2544.4048.14合わせた状態を保ち(水面投入),2 回に等分してスラリーを投入した.P-2~P-4 では,2 回目以降の投入は,前回の投入から 1 週間以上経過して,沈下が完了し堆積高さが変化していないことを確認した上で行った.投入後,ロートとトレミー管に残留したスラリーの質量を計測し,実投入量とその中のフライアッシュの乾燥質量を計算した.投入直後から自重圧密による堆積層全体の高さの時間変化を計測し,堆積層が飽和していると仮定して,堆積層の平均含水比の時間変化を推定した.3.2 実験結果と考察スラリー投入後,自重圧密が終了した時点の堆積層の高さhf と,全体を平均した沈下後の含水比 wf を表-3 に示す.底面投入を行ったケース P-1~P-3 では P-4 よりも,沈下後の堆積- 260 -図-2 P-2 と P-4 における w の変化 層の平均含水比 wf が 4%程度低く,水面投入よりも底面投入の方が密な堆積層が形成される結果となった.また,P-1~P-3 はいずれのケースにおいても,wf がスラリー作成時の含水比に近い値であるため,底面投入によって,アクリルカラム内の海水とスラリーとの混合が抑えられたことにより,投入時のスラリーの初期状態が保たれたと考えられる.さらに投入回数の影響を比較すると,投入回数が少ないケースの方が,わずかに wf が小さい傾向が確認できた.以上より底面投入によって密な埋立地盤が造成でき,施工時には一度に高く埋め立てることが有効であると考えられる.図-2 に,P-2 と P-4 の 1,2 層目の堆積層の平均含水比 w の時間変化と,2 層目を投入した時の 2 層分を合わせた平均含水比 w の時間変化を示す.P-2 では,いずれの堆積層の w も変化が小さく,自重圧密による w の変化は数時間以内に収束した.そのため底面投入時の場合は,密な状態を保ち堆積したと考えられる.一方で,P-4 では w の変化量が大きく,1,2 層目それぞれの w の収束値,図-3 P-2 と P-4 の堆積層の含水比分布および全体での w の収束値が同等であり,自重圧密による w の変化は 1 日以内に収束した.P-2 と P-4 において,2 層目を投入して沈下が完了した後に,アクリルカラム内の堆積層を取り出し,深さ方向に 6 等分して試料をサンプリングして,含水比を測定した.図-3 に深さ方向の含水比分布を示す.P-4 は沈下が完了しても,P-2 と比較して,高い含水比に収束した.また P-2 では堆積層全体の含水比がほぼ一定であるのに対し,P-4 では 1,2 層目それぞれの底層では,比較的含水比が低く密度が大きくなった一方で,表層部分は含水比が高く緩い状態で堆積していることがわかる.これは底層では自重圧密によって含水比が低下するが,表層では自重圧密が発生していないと考えられた.そのため投入方法の違いが,自重圧密の状況や沈下完了後の密度に影響していると考え図-4 投入実験の状況(P-4,右は層境界の拡大)られる.表-3 に示す P-2 の wf は全体の堆積高さから求めた推定値であるが,取り出した試料を用いて実測した含水比とほぼ一致していた.一方で P-4 の wf が高いのは,主に 1,2 層目それぞれの表層部分の含水比が高かったことに起因したと考えられる.また P-2~P-4 では,図-4 に示すように上下の堆積層の間に,境界に炭酸カルシウムもしくは炭酸マグネシウムによる白色沈殿物の層が確認できたが,上層の荷重による下層の圧密沈下は発生していなかった.そのため P-4 のように緩い状態で堆積した部分が発生すると,上層の荷重による密度の向上は見込めないことが推察された.4 フライアッシュの材料物性が埋立密度に及ぼす影響4.1 実験方法本実験では,材料物性の異なる B 灰,C 灰,D 灰,E 灰の 4 種類のフライアッシュを用いた.4 種類のフライアッシュをそれぞれ海水(ρw = 1.023 g/cm3)と混合し,十分に攪拌してフライアッシュスラリーを作成した.スラリー作成時は,フライアッシュと海水の配合を変えることで,様々な初期含水比 wa のスラリーを準備した.図-5 左に示すように,スラリー作成後速やかに,スラリーをモールド( = 5 cm,H = 10cm)に詰めて供試体を作成した.供試体作成後は,自重圧密が発生して,フライアッシュ粒子が沈降し,表層に上澄み水が発生した.そこで沈下終了後,十分に時間が経ち,図-5 右に示すように,上澄み水が乾燥により完全に消失した後に供試体の沈下量を測定した.測定した沈下量から,沈下後の供試体体積を計算した.そして,供試体が飽和していると仮定し,供試体体積とスラリー作成時に配合したフライアッシュの乾燥質量から,沈下後における供試体の平均の最終含水比 wf を算定した.そして wf とスラリー作成時の初期含水比 wa を比較して,フライアッシュの材料物性とスラリー作成時の初期状態が堆積層の含水図-5 供試体の概観(左:作成直後,右:沈下終了後)比の収束値に及ぼす影響を評価した.- 261 - 4.2 実験結果と考察フライアッシュは水と混合する際に吸水するため,混合時の wa が一定値より小さくなると,スラリー作成時に攪拌できなくなるため,均一な状態にすることが難しくなる.よって,攪拌によりスラリー作成が可能な最小の wa を wa の下限値とした.その値は灰によって異なり,B 灰が 34.2 %で,C 灰が33.1 %,D 灰が 47.3 %,E 灰が 48.5 %であり,wP の値が大きいと,wa の下限値が大きくなる傾向があった.図-6 に wa とwf の関係を,材料ごとに示す.wa と wf の関係は,E 灰とそれ以外の灰で傾向が異なっていた.E 灰は wa が低い場合にはwa の上昇に伴い,wf も高くなるが,wa が 120 %以上の範囲では,wf は 80 %付近に収束した.一方で,B 灰,C 灰,D 灰は,wa が 80 %より低い範囲では E 灰と同様に wa の上昇に伴い wf図-6 各フライアッシュの wa と wf の関係は高くなった.しかし wa が 80 %付近の場合において,wf は最大値を示し,wa が 80 %より高くなると,wf が小さくなり,それぞれ 45 %~55 %に収束した.灰の種類によって,wa が高い時の wf の収束値に相違が生じた理由については,E 灰が他の灰と比較して平均粒径が小さいことや,曲率係数が小さく,粒径が狭い範囲に集中していることが要因の一つとして考えられるが,明確な理由については今後の検討が必要である.ただし,いずれの灰で作成した供試体においても,wa が低い領域はそれよりやや低い wf に,wa が高い領域においては,wf は一定値に収束することから,スラリー埋立を行った場合の堆積層の含水比はスラリー初期含水比が大きく異なる場合にもある一定の範囲になることが明らかとなった.図-7 に供試体作成時の初期間隙比 ea と沈下後の最終間隙比 ef の関係を,灰種ごとに示している.表-1 に示すように粒子密度が灰種に図-7 各フライアッシュの ea と ef の関係よって大きく異なることから,図-7 の含水比よりも間隙比を指標とした比較の方が堆積状況をより反映していると考えられるが,含水比による比較と同様に,E 灰とそれ以外の灰種では沈下の挙動が異なっている.本実験では,現場で想定される上載荷重は考慮されていないが,前章の実験結果,および既往の研究 1)に加え,埋立処分場から採取した試料を調査した結果 2)より,上層の荷重が想定される際も,圧密による密度の向上は見込めないことが明らかになっているため,埋立状況や方法などによって,wf の上限値で堆積することも十分に考えられる.また初期状態の密度が小さく waが大きい時に,E 灰とそれ以外の灰種の間で,沈下による含水比変化に違いが現れ,wf の上限値が異なるのは,E 灰は平均粒径,曲率係数が小さく,粒径が狭い範囲に集中しており,充填性が悪いことが要因の一つと考えられる.5. おわりに本実験では,フライアッシュスラリーの投入方法と材料となるフライアッシュの物性の違いが埋立地盤の含水比に及ぼす影響を評価した.その結果,投入位置を堆積層内にしたトレミー打設を行い,さらに一回の投入高を大きくすることで,最も含水比が小さく,密な堆積層が形成された.一方で投入位置を水面にすることで,堆積層の含水比が大きく,埋立密度が小さくなり,上層の荷重が作用しても埋立密度の向上は見られなかった.またスラリーの作成に用いるフライアッシュの種類によっても,堆積層の含水比は異なる.最大密度は塑性限界と関連があり,下限の wa で埋立造成することが望ましい.また沈下による堆積層の含水比変化の差異は,粒径分布が要因の一つになっていると考えられる.今後は,本研究で得られた石炭灰の特性や投入方法が埋立地盤の密度に及ぼす影響を考慮した供試体の作成を行い,石炭灰埋立地盤の強度特性について詳細に検討を行う予定である.参考文献1)鶴ケ崎和博,山崎智弘:トレミー管を用いたフライアッシュスラリーの室内投入実験,第 52 回地盤工学研究発表会発表講演集, pp.639-640, 2017.2)久保新,堀一裕:石炭灰埋立地における動圧密工法の試験施工について,西日本技術開発株式会社社内報,平成 11年4月- 262 -
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