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地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702

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タイトル 表紙
著者
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 発行 2016/07/01 文書ID 71917
内容
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タイトル 【英訳化版】室内試験・地盤調査に関する規格・基準(Vol.1)の発刊
著者
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 発行 2016/07/01 文書ID 71918
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タイトル 本号の編集にあたって(<特集>港湾で用いられている耐震技術)
著者 石岡 賢治
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ i〜i 発行 2016/07/01 文書ID 71919
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タイトル 目次
著者
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 発行 2016/07/01 文書ID 71920
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タイトル CONTENTS
著者
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 発行 2016/07/01 文書ID 71921
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タイトル 港湾の耐震におけるいくつかの地盤工学的知見(<特集>港湾で用いられている耐震技術)
著者 井合 進
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 1〜3 発行 2016/07/01 文書ID 71922
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タイトル 地震に強い港湾を低コストで実現するための港湾計画上の工夫について(<特集>港湾で用いられている耐震技術)
著者 野津 厚
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 4〜7 発行 2016/07/01 文書ID 71923
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タイトル 既設港湾構造物の耐震性向上を目的とした地盤改良(<特集>港湾で用いられている耐震技術)
著者 田中 俊行・笹倉 剛・見坊 東光・鎌田 敏幸
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 8〜11 発行 2016/07/01 文書ID 71924
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タイトル グラウンドアンカーによるケーソン式岸壁の耐震補強(<特集>港湾で用いられている耐震技術)
著者 吉田 誠・清宮 理・三藤 正明
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 12〜15 発行 2016/07/01 文書ID 71925
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タイトル 強震計観測情報を用いた係留施設の供用可否判定システムの開発(<特集>港湾で用いられている耐震技術)
著者 曽根 照人・宇野 健司・淵ノ上 篤史・山本 芳生
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 16〜19 発行 2016/07/01 文書ID 71926
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タイトル 高密度臨時地震観測に基づく田老漁港におけるレベル2 地震動の設定(<特集>港湾で用いられている耐震技術)
著者 秦 吉弥・野津 厚・山田 雅行・常田 賢一・青木 伸一・植田 裕也
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 20〜23 発行 2016/07/01 文書ID 71927
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タイトル 南海トラフ地震を想定した地震動による防波堤の沈下被害と耐津波構造の沈下抑制効果(<特集>港湾で用いられている耐震技術)
著者 大矢 陽介・小濱 英司・野津 厚
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 24〜27 発行 2016/07/01 文書ID 71928
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タイトル 岸壁の存在が常時微動観測結果に及ぼす影響に関する-検討-焼津漁港の事例-(<特集>港湾で用いられている耐震技術)
著者 鈴木 晴彦・眞鍋 俊平・永田 伸也・山田 能弘・長坂 陽介・野津 厚
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 28〜31 発行 2016/07/01 文書ID 71929
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タイトル 破砕性堆積軟岩を母材に用いたベントナイト混合土による遮水層の効率的施工方法の実証実験(報告)
著者 磯 さち恵・木ノ村 幸士・森川 義人
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 32〜35 発行 2016/07/01 文書ID 71930
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タイトル 土層強度検査棒の調査方法と活用例(技術紹介)
著者 稲垣 秀輝・佐々木 靖人・太田 英将・谷川 正志
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 36〜37 発行 2016/07/01 文書ID 71931
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タイトル 地盤工学と土壌学(寄稿)
著者 和田 信一郎
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 38〜39 発行 2016/07/01 文書ID 71932
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タイトル 箕面森町における大規模盛土工事の施工及び管理
著者 友部 遼
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 40〜41 発行 2016/07/01 文書ID 71933
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タイトル 第1回次世代イニシアティブ廃炉技術カンファレンス(NDEC-1)開催報告(学会の動き)
著者 後藤 茂
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 42〜42 発行 2016/07/01 文書ID 71934
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タイトル 北海道支部創立60周年記念行事開催される(学会の動き)
著者 林 憲裕・川口 貴之
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 43〜44 発行 2016/07/01 文書ID 71935
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タイトル 第6回日台地盤工学における自然災害に関する国際ワークショップの開催報告(国際活動から)
著者 国際地盤工学会アジア地域技術委員会ATC3 (Geotechnology for Natural Hazard)
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 45〜46 発行 2016/07/01 文書ID 71936
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タイトル 橋口公一会員「平成28年度科学技術分野の文部科学大臣表彰研究部門」を受賞(国内の動き)
著者
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 47〜47 発行 2016/07/01 文書ID 71937
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タイトル 秦吉弥会員「平成28年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞」を受賞(国内の動き)
著者
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 47〜47 発行 2016/07/01 文書ID 71938
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タイトル 水分特性曲線(技術手帳)
著者 西村 友良
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 48〜49 発行 2016/07/01 文書ID 71939
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タイトル 5. 三重地域の災害の実態(平成23年度紀伊半島大水害の実態と教訓-「想定外」豪雨による地盤災害の軽減に向けた提言-)
著者 酒井 俊典・岡島 賢治・古根川 竜夫・石川 昌幹・片岡 泰・阪口 和之
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 50〜57 発行 2016/07/01 文書ID 71940
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タイトル 5. 火山観測・監視体制と火山噴火予測(火山による災害特性と防災技術)
著者 森田 裕一
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 58〜65 発行 2016/07/01 文書ID 71941
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タイトル 新入会員
著者
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 66〜66 発行 2016/07/01 文書ID 71942
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タイトル 編集後記
著者
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 67〜67 発行 2016/07/01 文書ID 71943
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タイトル 平成28年度役員等
著者
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 67〜67 発行 2016/07/01 文書ID 71944
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タイトル 奥付
著者
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 67〜67 発行 2016/07/01 文書ID 71945
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タイトル 新・関東の地盤-増補地盤情報データベースと地盤モデル付-(2014年版)
著者
出版 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
ページ 発行 2016/07/01 文書ID 71946
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  • タイトル
  • 表紙
  • 著者
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71917
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  • タイトル
  • 【英訳化版】室内試験・地盤調査に関する規格・基準(Vol.1)の発刊
  • 著者
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71918
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  • 本号の編集にあたって(<特集>港湾で用いられている耐震技術)
  • 著者
  • 石岡 賢治
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • i〜i
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71919
  • 内容
  • 本号の編集にあたって我が国は島国であり,海上輸送の拠点として港湾施設は重要な役割を担っています。しかしながら,阪神・淡路大震災,東日本大震災では多くの港湾施設が地震や津波によって一時はその機能が全面的に停止し,甚大な被害を受けました。平成28年 4 月14日から熊本地方を震源とした強い地震が発生しており,巨大地震に対して,どのように地盤工学分野の技術が活用され,港湾施設の機能強化に役立てられようとしているのか社会的な関心は高まるところだと思います。このような背景を踏まえて本号では,港湾分野の耐震技術について特集しました。総説では,巨大地震に対する取り組みの現状の課題や展望を,港湾の地盤や岸壁を対象とした具体的な事例に即して解説されています。論説では,地震に強い港湾を低コストで実現するための建設的な提案がなされ,さらに報告として 6 編の論文をいただくことができました。報告は,既設港湾構造物の耐震性向上を目的とした地盤改良や耐震補強の事例紹介,係留施設の供用可否判定システムの紹介,港湾施設の耐震設計に用いる地盤振動特性を反映した地震動設定手法の提案,長継続時間地震動を対象とした模型振動実験による防波堤の沈下特性と対策効果の報告,岸壁付近で観測した常時微動データに関する報告という多彩な構成となりました。本号の特集が,会員の皆様にとって有益なものとなり,港湾施設に限らず防災・減災を目的とした技術開発の一助となることを期待しています。石 岡 賢 治(いしおか けんじ)地盤工学会のホームページ URLhttps://www.jiban.or.jp/国際地盤工学会ホームページ http://www.issmge.org/編集兼発行者公益社団法人地盤工学会
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  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
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  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71920
  • 内容
  • 特集テーマ港湾で用いられている耐震技術総説港湾の耐震におけるいくつかの地盤工学的知見 …………………………………………………… 1●井合論(公説募)報告進地震に強い港湾を低コストで実現するための港湾計画上の工夫について ……………………… 4●野津厚既設港湾構造物の耐震性向上を目的とした地盤改良 ……………………………………………… 8●田中俊行/笹倉剛/見坊東光/鎌田敏幸グラウンドアンカーによるケーソン式岸壁の耐震補強 ……………………………………………12●吉田(公募)誠/清宮募)照人/宇野募)吉弥/野津募)陽介/小濱告稿)晴彦/眞鍋さち恵/木ノ村稿雅行/常田賢一/青木伸一/植田裕也英司/野津厚俊平/永田伸也/山田能弘/長坂陽介/野津厚幸士/森川義人土層強度検査棒の調査方法と活用例 …………………………………………………………………36●稲垣寄厚/山田破砕性堆積軟岩を母材に用いたベントナイト混合土による遮水層の効率的施工方法の実証実験 …………………………………………………………………………………………………32●磯技術紹介芳生岸壁の存在が常時微動観測結果に及ぼす影響に関する一検討―焼津漁港の事例― ……………28●鈴木報(投篤史/山本南海トラフ地震を想定した地震動による防波堤の沈下被害と耐津波構造の沈下抑制効果 ……24●大矢(公健司/淵ノ上高密度臨時地震観測に基づく田老漁港におけるレベル 2 地震動の設定 …………………………20●秦(公正明強震計観測情報を用いた係留施設の供用可否判定システムの開発 ………………………………16●曽根(公理/三藤秀輝/佐々木靖人/太田英将/谷川正志地盤工学と土壌学 ………………………………………………………………………………………38●和田信一郎寄稿(学生編集委員)箕面森町における大規模盛土工事の施工及び管理 …………………………………………………40学会の動き第 1 回次世代イニシアティブ廃炉技術カンファレンス(NDEC1)開催報告 …………………42●友部●後藤遼茂北海道支部創立60周年記念行事開催される …………………………………………………………43●林憲裕/川口貴之 学会の動き(国際活動から)第 6 回日台地盤工学における自然災害に関する国際ワークショップの開催報告 ………………45国内の動き橋口公一会員「平成28年度科学技術分野の文部科学大臣表彰研究部門」を受賞 ………………47●国際地盤工学会アジア地域技術委員会 ATC3 (Geotechnology for Natural Hazard)秦技術手帳吉弥会員「平成28年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞」を受賞 …………47水分特性曲線 ……………………………………………………………………………………………48●西村講座友良平成23年度紀伊半島大水害の実態と教訓―「想定外」豪雨による地盤災害の軽減に向けた提言―5. 三重地域の災害の実態 ……………………………………………………………………………50●酒井俊典/岡島賢治/古根川竜夫/石川昌幹/片岡泰/阪口和之火山による災害特性と防災技術5. 火山観測・監視体制と火山噴火予測 ……………………………………………………………58●森田裕一新入会員 ………………………………………………………………………………………………………66編集後記 ………………………………………………………………………………………………………67
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  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71921
  • 内容
  • Theme: Seismic Technologies for Port FacilitiesGeotechnical Aspects of Port Structures during Earthquakes ……………………………………………………………… 1● Susumu IaiMeasures to be Taken during Port Planning for Reducing Seismic Risk ………………………………………………… 4● Atsushi NozuSoil Improvement for Existing Harbor Structures for Seismic Ground Reinforcements ………………………………… 8● Toshiyuki Tanaka, Takeshi Sasakura, Harumitsu Kenbo and Toshiyuki KamataSeismic Reinforcement of Quay Wall Using Ground Anchor…………………………………………………………………12● Makoto Yoshida, Osamu Kiyomiya and Masaaki MitouDevelopment of Judging System using Strong-motion Seismograph for Mooring Facility ………………………………16● Akito Sone, Kenji Uno, Atsushi Fuchinoue and Yoshiwo YamamotoEstimation of Strong Motion at Fishing Port Site in Tarou, Miyako City, during the 2011 oŠ the Paciˆc Coast ofTohoku Earthquake based on Temporary Seismic Observation with High Density ………………………………………20● Yoshiya Hata, Atsushi Nozu, Masayuki Yamada, Ken-ichi Tokida, Shinichi Aoki and Yuya UedaSubsidence Damage of Breakwater due to Earthquake Motion Caused by the Nankai Trough Earthquake andSubsidence Reducing EŠect of Tsunami Resistance Structure ………………………………………………………………24● Yousuke Ohya, Eiji Kohama and Atsushi NozuCharacteristics of Microtremor Observed near Quay Walls―Example of Observation Records at Yaizu ˆshingport― …………………………………………………………………………………………………………………………………28● Haruhiko Suzuki, Shunpei Manabe, Shinya Nagata, Takahiro Yamada, Yosuke Nagasaka and Atsushi Nozu
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  • 港湾の耐震におけるいくつかの地盤工学的知見(<特集>港湾で用いられている耐震技術)
  • 著者
  • 井合 進
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 1〜3
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71922
  • 内容
  • 港湾の耐震におけるいくつかの地盤工学的知見Geotechnical Aspects of Port Structures during Earthquakes井合 進(いあい京都大学防災研究所. は じ め にすすむ)教授有効応力解析を実施した3)。この結果,地表での記録波形の特徴と整合する結果が得られ(図―(上)),スパ岸壁をはじめとする港湾の構造物の地盤工学的な特徴イク状の波形はサイクリックモビリティーに起因するこは,間隙水で飽和した土の力学挙動が支配的な点にある。とが明らかにされた。液状化した地盤が,地震動による地震時の飽和土の挙動は,地震動による過剰間隙水圧のせん断を受けると,非排水せん断に伴う膨張的ダイレイ変動に要する時間が,比較的(間隙水圧の消散に要するタンシーが発生するためで, dilation pulse とも言われ時間に比べ)短い場合には,非排水的な挙動を示す1)。る。しかし,切迫する南海トラフ地震のような巨大地震の際このような飽和砂地盤の地震時挙動は,有効応力解析には,地震動が長時間継続し,余震も頻発することが予において,ダイレイタンシーが適切にモデル化されてい想される。したがって,飽和土の非排水的な挙動に加え,るか否かを見極めるための基礎的なテストとなる。この過剰間隙水圧の消散や地盤内での再分配の影響を適切にテストは,学術上のみならず実際上の有用性もあり,種評価することが求められる。々の有効応力解析モデルの比較検討に用いられている4)。本稿では,これらの課題について,港湾の地盤や岸壁などの具体的な事例に即して,地盤工学的視点から概観.地盤深部の液状化し,本特集号の序論としたい。なお,本稿で示す事例の岸壁をはじめとする港湾の構造物に地盤深部の液状化有効応力解析はひずみ空間多重せん断モデルによるものが与える影響を示す例として, 1995 年兵庫県南部地震であり,そのうち非排水的な挙動の解析ではマルチスプの際に,神戸港で発生したケーソン式岸壁の被害例があリングモデル,過剰間隙水圧の消散などを考慮した解析る(図―)。同図に示すように,ケーソンが海側に変ではカクテルグラスのモデルに基づく2)。位・傾斜し,基礎地盤にめり込む形で沈下している。図.飽和砂地盤の地震時挙動―は,この被害事例の有効応力解析結果を示す。地震時の飽和砂の挙動に特有の非線形挙動を示す例として, 1993 年釧路沖地震の際に,釧路港の強震計で記録された地表での地震波形がある(図―(下))。同図に示すように,地盤の液状化に伴ってスパイク状の波形が現われるのが特徴である。釧路港では,深さ 77 m の基盤において,同時観測に成功しており,この記録を用いて,原位置凍結サンプリングをはじめとする高精度の地盤調査結果に基づいて,図―ケーソン式岸壁の被災状況(神戸港六甲アイランド―14 m 岸壁,1995年兵庫県南部地震)図―水平成層地盤の地震応答( 1993 年釧路沖地震,釧路港強震計設置地点)(上解析結果,下観測記録)July, 2016図―ケーソン式岸壁の有効応力解析結果1 総説この解析は,同岸壁の近傍のポートアイランドでの鉛直アレーの同時地震動観測をもって,ケーソン式岸壁の基盤に相当する深さでの入力地震動波形とし,原位置凍結サンプリング(直径30 cm の大口径サンプリング)をはじめとする高精度の地盤調査結果に基づいて,実施している5)。解析結果は,ケーソン式岸壁の被害の特徴を的確にとらえたものとなっている。さらなる解析の結果,ケーソン直下に広がる地表から深さ 23~ 40 m の置換砂の液状化(過剰間隙水圧の上昇に伴う地盤の軟化)が,ケーソン式岸壁に著しい被害をもたらしたことが明らかにされた。土構造物の安定解析において,地盤深部の弱層を通過する円弧すべりに対する安定性が不足する状況と類似した状況が,地盤深部の液状化に伴って発生するといえる。.重力による静的な地盤内応力図―矢板式岸壁の被災状況(相馬港 2 号埠頭― 12 m岸壁,2011年東北地方太平洋沖地震)重力による静的な地盤内応力は,地震時の地盤・構造物系の変形の原動力ともいうべき役割を果たし,地震時挙動に支配的な影響を与える。したがって,地震応答解析に先立って,静的な地盤内応力を的確に解析する必要がある。この地盤内応力は,水平成層地盤やケーソン式岸壁,盛土などでは,重力を単調載荷する静的な有効応力解析により解析できる。これに対して,矢板式岸壁のように,図―入力地震動(2011年東北地方太平洋沖地震)矢板本体,控え工,タイロッドなどの複数の構造部材で構成され,建設過程での地盤・構造物の相互作用が複雑な構造物では,その施工過程を考慮した多段階の静的解析6)を行うことが極めて重要である。この重要な知見は,港湾分野の耐震実務においては,広く活用されている。.過剰間隙水圧の消散と再分配の影響岸壁などの地震時挙動に過剰間隙水圧の消散が与える影響を示す例として, 2011 年東北地方太平洋沖地震における相馬港の矢板式岸壁の被災状況と解析結果を図―~に示す7)。同岸壁は,図―に示すような最大加速度0.28 g の長継続時間の地震動を受け,岸壁法線が海図―側に20 cm 変位した。同岸壁の有効応力解析では,施工矢板式岸壁の有効応力解析結果(変形倍率 5 倍,過剰間隙水圧比コンター)過程を考慮した多段階の静的解析を行った後,過剰間隙水圧の消散や地盤内での再分配を考慮した解析(case1)と,非排水条件で実施した解析(case5, 6)を行った。この結果,水平変位はいずれの解析条件でも概ね被災状況と整合するが,地表面沈下は case1 の解析結果が,実際の矢板式岸壁の被災状況を的確に捉えることが明らかになった。このように長継続時間の地震動に対する挙動には,過剰間隙水圧の消散や再分配の影響を的確に評価することにより,より精度の高い耐震性評価が可能となる。.複合地盤災害への備えはじめに述べたとおり,切迫する南海トラフ地震のような巨大地震の際には,地震動が長時間継続し,余震も頻発することが予想される。さらに,港湾分野では,巨2図―矢板式岸壁の解析結果(右矢板変位,左矢板背後の地表面沈下)地盤工学会誌,―() 総説とが分かる。ここでは,圧密沈下完了後の地震応答解析例を示したが,圧密沈下途中に地震動を受ける場合の解析も可能である。既往の耐震実務においては,粘土地盤の圧密沈下解析と地震時の変形挙動の解析とを切り離して評価していたが,前に例示したとおり,両者を一貫した解析が可能となってきている。図―解析対象断面.おわりに本稿では,巨大地震に対する取り組みを,港湾の事例に即して,地盤工学的視点から概観した。地震動の設定や地盤改良にも,港湾地域に適した最先端の技術が用いられており,本特集号関連論文を参照されたい。参1)図―地震前の圧密沈下解析結果2)3)4)図― 地震による沈下及び過剰間隙水圧5)大津波と地震動や液状化の影響が複合する地盤災害,港湾地域に広がる粘土地盤の圧密沈下の影響と地震動や液状化の影響が複合する地盤災害のように,複合的な要因6)による地盤災害が発生することが予想される。これらの新たな地盤工学的課題について,速やかに調査・研究を進めていくことが求められている8)。7)一例として,粘土地盤の圧密沈下の影響が地震時に複合的に作用する際の解析例を図―~に示す。この解析は,ひずみ空間多重せん断モデルの枠組みで,粘性土の力学挙動を表現するために必要となる過圧密,初期応力誘導異方性, Isotach 型のひずみ速度依存性,を考慮して構築した Cookie model (Cohesive Soil with andwithout Overconsolidation, K0, and Isotach EŠects)9)に8)9)基づいている。解析対象は,図―に示すとおり,港湾・海岸地域の堤防に準じた盛土断面で,地盤工学会主催の関口・太田モデルを用いた一斉解析で用いられてい10)11)る10) 。地震前の圧密沈下解析による盛土中央の沈下は,図―で FLIP と表示した結果のとおりとなった。同図には,比較のため,コンピュータープログラムDACSAR11) を用い,関口・太田モデル( 1977 )12) により解析した結果も示している。圧密沈下終了後(約 50年後)に地震が襲来した場合の結果は図―に示すとおりとなり,地震動の影響で,さらなる沈下が発生するこJuly, 201612)考文献Zienkiewicz, O. C. and Bettess, P.: Soils and other saturated media under transient, dynamic conditions. In:Pande, Zienkiewicz (Eds.), Soil Mechanics Transientand Cyclic Loads, John Wiley and Sons, pp. 116, 1982.一井康二・上田恭平・溜 幸生・中原知洋 FLIP を用いた地盤地震応答解析の最前線,地盤工学会誌, Vol.63, No. 10, pp. 8~11, 2015.Iai, S., Morita, T., Kameoka, T., Matsunaga, Y. andAbiko, K.: Response of a dense sand deposit during 1993KushiroOki earthquake, Soils and Foundations. Vol. 35,No. 1, pp. 115131, 1995.Kramer, S. L., Astaneh Asl, B., Ozener, P. and Sideras,S. S.: EŠects of Liquefaction on Ground Surface Motions. In: Ansal A, Sakr M (Eds.), Perspectives on Earthquake Geotechnical Engineering, Springer, pp. 285309, 2015.Iai, S., Ichii, K., Liu, H. and Morita, T.: EŠective stressanalyses of port structures. Soils and Foundations, Special Issue on Geotechnical Aspects of the January 171995 HyogokenNambu earthquake No. 2, pp. 97114,1998.井合 進・龍田昌毅・小堤 治・溜 幸生・山本裕司・森 浩章地盤の初期応力条件が矢板式岸壁の地震時挙動に与える影響の解析的検討,第26回地震工学研究発表会講演論文集,pp. 809~812,2001.Tashiro, S., Sakakibara, T., Kohama, E., Murakami, K.,Mori, A. and Shibata, D.: Numerical simulations for theport structures damaged due to ground motion during the2011 OŠ the Paciˆc Coast of Tohoku Earthquake, Prof.6th International Conference on Earthquake Geotechnical Engineering, CDROM, 2015.井合 進巨大地震における沿岸域の広域複合地盤災害,総説,地盤工学会誌,Vo. 62, No. 1, pp. 3~5, 2014.井合 進ひずみ空間多重せん断モデルによる粘土地盤の圧密解析,京都大学防災研究所年報, No. 55 B, pp.183~194, 2012.地盤工学会地盤工学における FEM の設計への適用に関する研究委員会成果報告書,2005.Iizuka A, and Ohta H.: A determination procedure of input parameters in elastoviscoplastic ˆnite element analysis, Soils and Foundations, Vol. 27, No. 3, pp. 7187,1987.Sekiguchi, H. and Ohta, H.: Induced anisotropy and timedependency in clays, Constitutive equation of soils, Proc.Of the specialty session 9, 9th ICSMFE, Tokyo, pp. 306315, 1977.(原稿受理2016.3.10)3
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  • タイトル
  • 地震に強い港湾を低コストで実現するための港湾計画上の工夫について(<特集>港湾で用いられている耐震技術)
  • 著者
  • 野津 厚
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 4〜7
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71923
  • 内容
  • 地震に強い港湾を低コストで実現するための港湾計画上の工夫についてMeasures to be Taken during Port Planning for Reducing Seismic Risk野津海上・港湾・航空技術研究所厚(のづあつし)港湾空港技術研究所地震防災研究領域長. は じ め に阪神・淡路大震災による神戸港の甚大な被害はいまだに記憶に新しいところである。神戸港ではすべてのコンテナバースが利用できなくなり,我が国の経済活動にも大きな影響を及ぼすことになってしまった。近い将来の発生が懸念される巨大地震においても,地震後の早い段階から,必要最小限の幹線貨物輸送機能の確保を図ることが必要である。また,神戸港が地震後において大きな損傷を受けながらも緊急物資や避難民の輸送に活用されたように(写真―),周囲を海に囲まれる日本におい写真―震災直後の神戸港における緊急物資の荷揚げて,大地震後の港湾には人・物資の輸送拠点としての機能も求められる。今後数十年間には,南海トラフ等の巨大地震の発生が懸念されており,港湾の地震対策は喫緊の課題であるが,一方で,我が国の厳しい財政事情を考えれば,地震に強い港湾をいかに小さいコストで実現するかが重要な課題である。これまで,港湾における地震対策は,計画―設計―施工―維持管理という一連のプロセスのうち,主に設計段階の工夫によって行われてきている。例えば地盤改良を行うことにより係留施設の地震時の変形を適切な範囲に図―震源特性・伝播経路特性・サイト特性抑えるといった対策である。これらの対策は有効ではあるものの,コスト縮減という観点からは,設計段階でとれに近い岩盤が露出している場所では,揺れは小さい。りうる対策に限界があることも事実である。岩盤上に薄い堆積層がある場所では,堆積層の固有周期今後は,設計段階の工夫に加えて,計画段階においてが短いので,周期の短い地震動が卓越しやすい。岩盤上種々の工夫を行うことで,地震に強い港湾をより小さいに厚い堆積層がある場所では,堆積層の固有周期が長いコストで実現することに寄与できるものと考えられる。ので,周期の長い地震動が卓越しやすい。本稿ではこのような観点からのいくつかの提案を行う。.港湾計画における常時微動観測の活用堆積層が地震の揺れに大きな影響を与えた事例は数多く知られている。その一例として 2000 年鳥取県西部地震の例1)を図―と図―に示す。鳥取県境港市の気象. サイト特性とは何か庁観測点と港湾の観測点(境港G )は弓ヶ浜半島の堆一般に,地震による地盤の揺れ(地震動)は震源断層積層の上に位置しており,一方,防災科学技術研究所のの破壊過程の影響(震源特性)と震源から地震基盤に至観測点(SMN001 と SMNH10)は島根半島の山麓に位る伝播経路の影響(伝播経路特性),それに地震基盤か置している(図―)。2000年鳥取県西部地震の最大速ら地表に至る堆積層の影響(サイト特性)の三者によっ度は前者が後者の 4 倍程度となっており(図―),堆て決まる(図―)。ここで地震基盤とは S 波速度が積層の有無による影響が大きいことを示している。被害3 000 m/s を超えるような非常に堅い岩盤のことである。も境港市内に集中している。地震基盤内では,S 波速度コントラストが大きくないの. 東日本大震災の地震動とサイト特性で,地震波は距離とともに減衰する。しかし,地震基盤このようなサイト特性の違いは同一港湾内でも見られ上面から地表にかけては S 波速度コントラストが大きる。東日本大震災においては,同一港湾内におけるサイいので,そこで地震波は増幅する。地震基盤あるいはそト特性の違いが港湾施設の被害程度を左右していると見4地盤工学会誌,―() 論説境港周辺の地形(第八管区海上保安本部提供)1)図―図―小名浜港湾事務所, 3 号埠頭,5 号埠頭,藤原埠頭,大剣埠頭におけるサイト増幅特性2)表―小名浜港地震観測点付近の 4 施設の比較3)したもの)が求められている。その結果を図―に示す。図―鳥取県西部地震の際に観測された速度波形1)港湾構造物に被害をもたらしやすい0.3~1 Hz 程度の周波数帯域では,3 号埠頭のサイト増幅特性が群を抜いて大きいことが分かる。これらと被害との対応について見るため,各観測点の最寄りの係留施設の被害を整理したものを表―3)に示す。3 号埠頭の岸壁(-10 m)(矢板式,設計震度0.15)にでは顕著な被害が生じており,最大せり出し量は 1.6m であった。また岸壁背後には 1 m を超える段差も生じた(写真―)。それに対し,他の岸壁(ケーソン式,設計震度0.10~0.20)では,被害は生じているものの,3 号埠頭ほどの顕著な被害ではなかった。 5 号埠頭岸壁図―小名浜港平面図と余震観測位置2)(-12 m)の被災状況を写真―に示す。構造形式や設計震度が異なるため単純な比較はできないが,1 m を超られる事例があった。える水平変位が生じたのは 3 号埠頭岸壁(- 10 m )の福島県の小名浜港では,港湾内におけるサイト特性のみである。また,岸壁背後に 1 m を超える段差が生じ面的な分布を把握する目的で,本震の約 2 ヶ月後の 5たのも 3 号埠頭岸壁(- 10 m )のみである(ただし 5月 2 日~5 月 5 日にかけて,図―に示す 4 地点(小名号埠頭岸壁(-12 m)南端の護岸との接続部を除く)。浜港湾事務所,5 号埠頭,藤原埠頭,大剣埠頭)におい以上の比較から,場所毎の地震動の大小が係留施設の被て余震観測が行われた2)。また,平成20年度には小名浜害程度の違いをもたらしていると考えられる。港湾事務所により 3 号埠頭において臨時の地震観測がこのように,東日本大震災においては,同一港湾内に実施されている(観測点位置を同じく図―に示す)。おいても地震動が場所毎に大きく異なる場合があり,そ文献 2)ではこれらのデータを総合することにより各地のことが港湾施設の被害程度の大小を左右している実態点における経験的なサイト増幅特性(地震基盤~地表まが明らかになってきたと言える。したがって,今後の地での地震動の増幅特性をフーリエスペクトルの倍率で示震対策においては,港湾内におけるサイト増幅特性の分July, 20165 論説く対応することが分かっている。例えば図―は高知港とその周辺の強震観測地点において常時微動観測を実施し,その結果得られた常時微動H / V スペクトルを,強震観測記録から評価されたサイト増幅特性1)と比較したもの2)である。高知G では常時微動 H/V スペクトルが1.3 Hz 付近に明瞭なピークを有しているが,サイト増幅特性もほぼ同じ周波数にピークを有している。 K NET 高知では常時微動 H / V スペクトルが 1.6 Hz 付近に明瞭なピークを有しているが,サイト増幅特性もほぼ同じ周波数にピークを有している。K NET 土佐山田では,常時微動 H / V スペクトルが明瞭なピークを有していないが,サイト増幅特性も同様に写真―小名浜港 3 号埠頭 32 岸壁における被災状況3)明瞭なピークを有していない。このように常時微動 H/V スペクトルとサイト増幅特性との間には良好な対応関係が認められる。常時微動観測を利用することで,「対象地点は地震波が増幅されやすい場所か,されにくい場所か」「増幅されやすいとすれば,どのような周波数の地震波が増幅されやすいか」といった情報を得ることができる。例えば,港湾構造物に被害をもたらしやすい0.3~1 Hz 程度の周波数帯域に H/V スペクトルのピークがあれば,耐震性の観点から不利なゾーンであると判断することができる。以上を踏まえると,港湾計画における常時微動観測の活用の手順は次のようになると考えられる。STEP1常時微動観測を実施する(ただし,新たに観測を実施しなくても,設計地震動の策定のために既に写真―小名浜港 5 号埠頭岸壁(-12 m)の被災状況3)データの得られている港湾もある)。STEP2常時微動観測データをもとに,港湾内を揺布を詳細に調べ,サイト増幅特性の大きい場所に立地すれやすい場所と揺れにくい場所にゾーニングする(ただる施設に対して特に入念に対策を行うことが必要であるし,既に設計地震動の策定に関連してゾーニング実施済が,これをもう一歩進めて考えると,港湾計画の段階での港湾もある)。あらかじめサイト増幅特性が小さいと考えられる場所に優先的に施設を立地させるようにすれば,地震に強い港湾をより小さいコストで実現することに大いに寄与すると考えられる。一例として,既存施設を改良して耐震STEP3係留施設等の立地においてこの情報を活用する。その際,他の要因と併せた総合的判断を行う。.土留めとの距離を十分にとった桟橋の活用バースに格上げするといった場合に,サイト増幅特性が過去の地震において,桟橋の被害は,土留めの海側へ小さい,揺れにくい場所にある施設を選択して改良すれの移動に伴い,渡版を介して上部工が土留めに押されるば,より小さいコストで改良できるものと考えられる。か,又は,土留めの移動に伴い捨石が海側に変位し杭を. 常時微動観測押すか,そのいずれかで生じている(図―)。例えば対象地点におけるサイト特性を評価する上で最も信頼阪神・淡路大震災における神戸港高浜桟橋の被害5) や性の高い方法は中小地震観測を行う方法であるが,港湾2005 年福岡県西方沖の地震における博多港須崎埠頭桟内のあらゆる地点において中小地震観測を実施すること橋の被害6)はこのようなメカニズムで生じている。桟橋はかなり困難である。そこで,より簡便な手法として常単独の振動による被害は少ない。よって,土留めとの距時微動観測の活用が考えられる。離を十分にとった桟橋は地震に対して著しく有利な構造地盤は地震でない時も人には感じられないような微小形式であると考えられる。このような構造形式が可能とな振幅で常に揺れており,これを感度の良い計器で計測なるように計画しておけば,所要の耐震性能を有する施するのが常時微動観測である。常時微動観測はコストパ設をかなり小さなコストで実現できるものと考えられる。フォーマンスが良く,一人でも一日あれば港湾内の十数このような桟橋の一例として那覇港の旅客船ターミナ点で観測することは十分に可能である。常時微動観測のル7)がある。データは,水平動と上下動のスペクトル比をとって整理することが一般的であり4) ,こうして得られた H / V スペクトルは,地震観測から得られたサイト増幅特性と良6.活断層地震の走向への配慮阪神・淡路大震災の際,神戸港工事事務所で観測され地盤工学会誌,―() 論図―説高知港とその周辺の強震観測地点における常時微動 H/V スペクトルとサイト増幅特性1)の関係2)ならず他の社会基盤施設に対しても応用できる考え方である。謝辞気象庁及び防災科学技術研究所の強震記録を利用しました。記して謝意を表します。参1)図―桟橋の典型的な被害形態た揺れは,震源である六甲―淡路断層系に対して直交す2)3)る向きに卓越していた。その影響はポートアイランド及び六甲アイランドの岸壁の残留変位の分布にも明瞭に表れており,東西方向の法線を有する岸壁の方が,それと直交する岸壁よりも,より大きな被害を受けている8)。4)5)岸壁は法線直交方向の揺れに弱いため,このような現象が生じたと考えられる。内陸活断層で発生する大地震の6)震源近傍では,横ずれ断層や逆断層といった断層の種類に関わらず,特に強い揺れは断層直交方向に生じる傾向7)がある9)。この性質を利用して,想定される強い揺れの向きに対して最も有利となるように岸壁を配置すれば,岸壁の地震時の被害を軽減することができる10)。. まと8)め本稿では地震に強い港湾をより小さいコストで実現す9)るための港湾計画上の工夫として以下の 3 つの提案を 港湾計画における常時微動観測の活用,◯土行った。◯ 活断層留めとの距離を十分にとった桟橋構造の活用,◯地震の走向への配慮。このうち汎用性の観点から最も重10)考文献野津 厚・長尾 毅スペクトルインバージョンに基づく全国の港湾等の強震観測地点におけるサイト増幅特性,港湾空港技術研究所資料,No. 1112, 2005.野津 厚・若井 淳東日本大震災で被災した港湾における地震動特性,港湾空港技術研究所資料, No. 1244,2011.宮島正悟ほか 32 名平成 23 年( 2011 年)東北地方太平洋沖地震による港湾施設等被害報告,港湾空港技術研究所資料,No. 1291, 2015.中村 豊常時微動計測に基づく表層地盤の地震動特性の推定,鉄道総研報告,Vol. 2, No. 4, pp. 18~27, 1998.及川 研・菅野高弘・三藤正明・中原知洋兵庫県南部地震により被災した杭式桟橋に関する実験的研究,第10回日本地震工学シンポジウム,1998.菅野高弘ほか 2005 年福岡県西方沖の地震による港湾施設被害 報告,港湾空港技術 研究所資料, No. 1165,2007.那覇港湾・空港整備事務所事業概要,入手先〈http://www.dc.ogb.go.jp / nahakou / kouji / 08.html 〉( 参 照2016.3.27)Inagaki, H., Iai, S., Sugano, T., Yamazaki, H. and Inatomi, T.: Performance of caisson type quay walls at KobePort, Special Issue of Soils and Foundations, pp. 119136, 1996.野津 厚・井合 進・W.D. Iwan震源近傍の地震動の方向性に関する研究とその応用,港湾技術研究所報告,Vol. 40, No. 1, pp. 107~167. 2001.野津 厚・池田 薫直下型地震の揺れの向きを考慮した耐震強化岸壁の配置計画,港湾,Vol. 78, No. 9, pp.48~51, 2001.(原稿受理2016.3.28) である。また,◯ は港湾施設のみ要と考えられるのは◯July, 20167
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  • タイトル
  • 既設港湾構造物の耐震性向上を目的とした地盤改良(<特集>港湾で用いられている耐震技術)
  • 著者
  • 田中 俊行・笹倉 剛・見坊 東光・鎌田 敏幸
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 8〜11
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71924
  • 内容
  • 報告既設港湾構造物の耐震性向上を目的とした地盤改良Soil Improvement for Existing Harbor Structures for Seismic Ground Reinforcements田中俊株鹿島建設見坊行(たなか技術研究所東笹上席研究員光(けんぼう株ケミカルグラウトとしゆき)はるみつ)剛(ささくら株鹿島建設鎌技術本部長. は じ め に倉田敏技術研究所グループ長幸(かまた株ケミカルグラウトたけし)としゆき)技術本部主任することが求められる。. 岩ずり地盤における地盤改良発生が危惧される首都圏直下地震や東海・東南海・南想定する地震規模の変更に伴って,大地震に対応でき海地震等の被害を防止,低減するために,既設構造物のる高い液状化強度を有する対策が必要になる可能性があ耐震性を評価し,防災対策を促進することが緊急の課題る。高圧噴射撹拌工法では,設計基準強度(材齢28日)となっている。特に,エネルギー供給という側面から重が,砂質土で3 000 kN/m2 程度,粘性土で 1 000 kN/m2要である石油・化学等のタンク,また緊急物資等輸送機とされており,比較的高い強度を得ることができる。こ能を確保するための岸壁及び海上コンテナターミナルやの工法の特徴は,所要の強度が確実に得られる機械撹拌広範囲に渡って活用される臨港道路等の港湾構造物を対式の深層混合処理工法に比べて,小型の施工機械で任意象に,効率的かつ経済的な耐震補強や液状化対策が求めの深度で地盤改良できることである。られている。これらの構造物は,狭隘部にあり地下埋設一方,既設の港湾構造物周囲の埋戻し地盤や護岸背面物が多く,稼働中に対策をする必要があることを勘案しの埋立て材料には,岩ずりが使用されていることが多く,て,施工条件に適合する地盤改良工法の高圧噴射撹拌工これまで困難とされていた岩ずり地盤での高圧噴射撹拌法と薬液注入工法が多くの実績を有している。ここでは,既設港湾構造物の耐震補強や液状化対策に工法による改良が必要とされている。. 構造物直下における地盤改良適用できる地盤改良の課題及びこれらの解決を目指して既設の港湾構造物直下では,従来,構造物近傍の所定新しく開発した地盤改良技術の特徴,稼働中の既設港湾深度まで立坑を掘削して,水平方向の薬液注入工法によ構造物や港湾横断道路トンネルの液状化対策へ適用したって地盤改良を行うことが多く,大規模な仮設工事によ事例1),2)について述べる。る工期の遅延や工事費の増加が問題とされている。その.既設港湾構造物の耐震補強や液状化対策に適用できる地盤改良の課題. 高透水地盤における地盤改良場合,施設の稼働を中断することになるため,社会的影響が大きい港湾構造物では,施設を供用しながら対策できる地盤改良工法が必要とされている。また,軟弱地盤中に建設された沈埋トンネル等の港湾港湾施設に多く存在する透水性が高い砂礫・玉石層等構造物では,その直下を地盤改良すると浮き上がることに対する地盤改良は,一般的に固化時間が短い注入材でが懸念されるため,変位抑制を目的とした十分な施工管漏洩を防ぐ領域を造成してから,その内側を薬液注入工理が求められている。法若しくは高圧噴射撹拌工法で行う。しかし,これらの注入材が適用できる粒度分布の範囲を超えた比較的大きな間隙のある地盤や地盤内の流速が大きい場合では,注.新しい地盤改良技術の特徴. 可塑状グラウト注入工法入材の逸散や流出により,改良範囲が確保されずに所定薬液注入工法や高圧噴射撹拌工法に用いる注入材の漏の品質が確保できなかったり,海域環境に有害な影響を洩が懸念される高透水性地盤には,液体と固体の中間の及ぼしたりする恐れがある。性質を示す可塑状グラウトを補助工法として用いること薬液注入工法は,主に砂質土を対象に注入材を地盤のが有効である。水中不分離性を有するこのグラウトは,間隙に浸透させて間隙水と置換して,止水や強度増加を静置状態では自立するが加圧すると容易に流動する充填図るものであり,主に水ガラス系溶液型注入材が用いら性を有しており,決められた箇所への注入ができる。れる。この材料は,従来,水ガラス成分中のナトリウム砕石に流速約 0.3 cm / sec の流速を与えた高透水性を分( Na2O )によってシリカ分が溶脱し,水ガラス系溶模擬した地盤に,注入材による充填性の違いを比較した液型注入材の耐久性に悪影響を及ぼすとされており,仮結果(写真―参照)から,水ガラス系溶液型注入材は,設工事用として多く使用されている。今後,長期的に安全体的に拡散し固化していないのに対して,可塑状グラ定した注入材によって,液状化対策等の本設工事へ適用ウトは,放射状に流動し良好な固化状況を呈することが8地盤工学会誌,―() 報写真―告注入材による充填性の違い分かる。この材料は,地下水流や潮汐がある流水環境下でも,従来の注入材の漏洩を防ぐ役割を果たすことがで図―水ガラス系溶液型注入材の劣化促進試験きるので,港湾施設や護岸への適用が増加している3)。. 耐久グラウト注入工法水ガラス系溶液型の無機系注入材は,アルカリ性,中性・酸性,特殊中性・酸性,特殊シリカの 4 つに区分される。そのうち特殊中性・酸性系注入材及び特殊シリカ系注入材は,原位置長期耐久試験や室内試験によって固結したグラウトの止水性や強度が長期的に安定する材料であることが確認されており,耐久グラウトとして液状化対策に多くの施工実績を有している。そのうち特殊水中性・酸性系注入材は,以下の特徴を有している。◯ガラス中の劣化成分である Na2O を減らし,シリカの溶図―二重管ストレーナ工法(地山パッカ方式) 注入材を砂に浸透させて硬化した脱を抑制している。◯供試体を用いて,劣化促進試験を実施した結果,特殊シリカ系注入材に比べて,同等以上の強度を有することを 港湾部への適用に関確認している(図―参照)4) 。◯して,海産生物に対する安全性を検討し,いずれの生物に対して悪影響を与えないことを確認している5)。耐久グラウトを用いる注入工法は,均質な注入効果を得るため砂質土地盤への浸透性を重視した工法とされている。その一つである二重管ストレーナ工法の地山パッカ方式(図―参照)6) は,浸透面積の拡大によって浸透性の向上を図る注入方式であり,注入材が地盤と接触図―改良対象地盤と地盤改良体直径の比較係する面積を拡大し,単位面積当たりの注入速度を小さくすることで浸透性を向上できる。また,高品質な特殊パッカを採用することで,軟弱地盤の削孔と注入の両工程が実施可能であり,注入管を地中内に残置しない環境面に配慮した工法である。. オーダメイド型高圧噴射撹拌工法これまでの課題であった岩ずり地盤への改良に対して,オーダメイド型高圧噴射撹拌工法7)が実績を挙げている。図―にオーダメイド型高圧噴射撹拌工法と A~E の従来工法による改良対象地盤と地盤改良体直径との比較を写真―岩ずり地盤における改良出来形示す。本工法は,従来よりもエネルギー効率を高めたジェットが噴射できるモニター管等を新たに開発し,ジェ等の様々なニーズに対応できる地盤改良工法と位置付けットによる地盤切削距離を長くすることで,砂質土地盤ることができる。で最大直径約 8 m の地盤改良体を造成できるようにな耐震補強を目的とする場合,設計段階で補強効果を検った。また,従来工法 D で達成が困難であった最大粒証する指標として,改良地盤の S 波速度が動的解析で径 500 mm 程度の岩ずり地盤でも,目標改良直径( 3.2用いられる場合が多くなっている。オーダメイド型高圧m)どおりの改良体を造成できることを確認した(写真噴射撹拌工法による最近の施工実績では,改良地盤の S―参照)。現在では,岩ずり地盤で直径約 4.5 m の改波速度は概ね700 m/s 以上であることが確認できており,良体を造成した実績を挙げており,地盤種別や改良直径土質別では砂地盤で 800 ~ 1 200 m / s 程度,砂礫地盤でJuly, 20169 報告図―図―自在ボーリングの概要表―既設港湾構造物の液状化対策断面図高圧噴射撹拌工法による改良体の配置検討地震の発生後,多少の沈下が生じてもオーバレイで復旧できる。地中構造物に対して,復旧可能な損傷に抑える。写真―自在ボーリングを用いたダブルパッカ工法による薬液注入過剰間隙水圧の上昇や伝播を抑え,側方流動等の周辺地盤の被害を最小限にする。700~ 1 200 m /s 程度,岩ずり地盤で 900~ 1 200 m /s 程度となっている。薬液注入工法による液状化対策玉石・礫混じり砂からなる高透水性地盤(1× 100~ 1×10-1 cm/sec)の桟橋部,ケーソン部に対して,水ガ. 自在ボーリングを用いた薬液注入工法ラス溶液型注入材の漏洩が懸念されたため,同等以上の既設の港湾構造物直下の液状化対策には,自在ボーリ強度と耐久性を有する可塑状グラウトで改良地盤の外周ングを用いることで,施設の稼働を止めることなく,遠部と表層部を注入し,グラウト自体の流出及び後施工す隔地からの薬液注入による施工が可能である。立坑等のるグラウトの漏洩を防止した。大規模な仮設備が不要であるため,コスト縮減や工期短縮に貢献できる。その後,桟橋部の内部及びケーソン部に耐久グラウトである特殊中性・酸性系注入材を二重管ストレーナ工法自在ボーリングを用いた薬液注入工法(図―,写真の地山パッカ方式で注入した。事後のボーリングによっ―参照)2) では,特殊ロッドの採用によって急曲径て,特殊中性・酸性系注入材の一軸圧縮強さは平均約(最小曲率半径30 m)と三次元の削孔が可能である。ま200 kN / m2 ,可塑状グラウトは平均約 400 kN / m2 が得た,高精度な位置検知及び姿勢制御システムを装備し,られ,いずれも目標である 100 kN / m2 を十分満足した。位置計測と位置修正を繰り返しながら削孔することで,改良後地盤内の流速は,注入前の最大6.9 cm/sec からほ障害物を避けたボーリングが可能となる。最大削孔長はぼ 0 にまで低減され,注入材の漏洩を効果的に防止す150 m 程度であり,遠方であっても,計画位置に対してることができた。±30 cm 以内の削孔精度を有している。さらに,浸透性を重視した注入工法であるダブルパッカ工法のシールグ一般部の地盤において,カルシウム濃度が高く,強アラウト方式等により砂質土等に低速度でグラウトを注入ルカリ性を呈し,薬液注入工法では所定の強度が確保ですることで,高い品質を得ることができる。きないことが判明した。その後の検討結果から,セメン.既設港湾構造物における地盤改良. 稼働中の既設港湾構造物における地盤改良桟橋下の海底地盤部(桟橋部),護岸ケーソン直下部及び背面部(ケーソン部),一般部からなる稼動中である港湾構造物の液状化対策工事が行われた(図―参高圧噴射撹拌工法による液状化対策ト系固化工法であり,地下埋設物周辺の狭隘部での施工が可能である高圧噴射撹拌工法に変更した。高圧噴射撹拌工法による改良体の配置(表―参照)には,以下のような特徴がある。全面改良(改良率 100 )改良効果は十分であるがラップ部分が多く経済性に劣る。照)1) 。これらの目標性能は,以下のとおりであり,当接円改良(改良率 78.5 )改良体で閉ざされた領域初設計では,全ての対策箇所に水ガラス系溶液型注入材に未改良部が残存するが,実質的には改良される可による薬液注入を行う計画であった。能性が高い。10地盤工学会誌,―() 報告杭状(千鳥)改良接円改良と比較して,開いた未改良部が残存するため,改良杭の間隔によって,間隙水圧の上昇や局所的な沈下の発生が懸念される。ただし,遠心模型実験8)によると,58程度の改良率があれば,間隙水圧は若干上昇するものの,改良体に起因したせん断変形抑制や周面摩擦抵抗によって沈下量が抑制されることを確認している。本工事の目標性能は,過剰間隙水圧の上昇や伝播の抑図―自在ボーリングによる港湾部海底道路トンネル直下の液状化対策制であり,接円改良が杭状改良に比べて間隙水圧の伝播速度や発生水圧が小さかったという実規模実験結果9)やた地盤改良技術について述べた。さらに,これらを既設経済性を考慮して,接円配置が採用された。施工方法は,港湾構造物の耐震補強や液状化対策に適用した事例を示最少量の固化材を地盤中で混合撹拌して短い時間で改良した。今後発生が危惧される首都圏直下地震や東海・東体を造成できる液状化防止用高圧噴射撹拌工法(工法南海・南海地震等に向けて,港湾部における要求性能やA,図―)を選定し,埋設物と干渉しないように改良地盤・現場条件に相応した地盤改良技術を提供する必要径 3.2 m と 4.5 m の 2 タイプを併用した。コアサンプリがある。ング試料から求めた一軸圧縮強さは平均約5 000 kN/m2であり,目標の 100 kN / m2 以上を十分満足する結果が得られた。参1). 供用中の海底道路トンネルにおける地盤改良港湾部を横断する供用中の海底道路トンネルでは,躯体直下に N 値20以下の細砂からなる液状化層が厚さ2.92)~ 4.5 m ,延長約 130 m の範囲に存在していた。そこで,海底道路トンネルに近接した駐車場から自在ボーリング3)を用いたダブルパッカ工法による液状化対策工事を実施した(図―参照)2)。この工法は,特殊ロッドを用いて,離れた位置から目的の地点まで計画線に沿わせて,既設構造物直下を削孔4)するものであり,挿入式の位置計測装置を用いて制御した結果,掘削線と計画線の精度を±30 cm 以内に確保で5)きた。全削孔完了後,注入用外管を挿入し削孔ロッドを回収した。シールグラウトで外管と地山間を充填した後,ダブルパッカ工法で耐久グラウトの特殊中性・酸性系注6)入材を 12 ~ 16/ min の速度で 1 ステップ当たりの計画量に達するまで注入した。施工時の注入速度や注入圧を監視してトンネル躯体変状をモニタリングし,必要に応7)じてドレーン孔を設置し過剰間隙水圧の消散を図った結果,懸念された注入に伴う地盤の隆起を抑制できた。震8)度 5 強を観測した東北地方太平洋沖地震でも,本トンネルにおける被害はなく,地震直後も車両の通行が可能であり,液状化対策の効果が十分発揮された。. お わ り に既設の港湾構造物の耐震性向上を目的として,高圧噴射撹拌工法並びに薬液注入工法を対象に,新しく開発しJuly, 20169)考文献田中俊行・藤崎勝利・北本幸義・齋藤 潤・山田岳峰・見坊東光既設構造物の耐震補強,液状化対策を目的とした地盤改良工法,鹿島技術研究所年報,Vol. 45, pp. 9~14, 2012.深澤哲也・鎗田哲也・加納義晴供用中の沈埋トンネル直下地盤を対象とした液状化対策 カーベックス工法の施工実績,建設の施工企画,No. 750, pp. 26~30, 2012.吉田 浩・木岡浩一・下口裕一郎・吉迫和生耐震性向上を目的とした岸壁背面の地盤改良(その 2 )~可塑性グラウトによる遮蔽壁構築工~,第47回地盤工学研究発表会,No. 623, 2012.齋藤 潤・李 済宇・山田岳峰・渡邊陽介・高橋正光厳しい養生条件下での薬液改良土の長期耐久性に関する検討,土木学会65回年次学術講演会,489, 2010.林 文慶・中村華子・鈴木伸康・横尾 充・赤木寛一・小河久朗地盤改良薬液注入材( Ecoryon)の海産生物に対する環境評価試験,鹿島技術研究所年報, Vol. 55,pp. 113~118, 2007.小林正志三次元削孔と直線削孔を組み合わせた耐震補強・液状化対策― CurveX 工法と PneumaX 工法併用の提案で目的を達成―,建設機械,Vol. 47. No. 11, pp. 17~21, 2011.鎗田哲也・田中博之従来の高圧噴射撹拌工法にはなかった品質を提供できる JETCRETE 工法の概要,土木施工,Vol. 53, No. 9, pp. 124~125, 2012.川野健一・藤崎勝利・吉迫和生・小原隆志・北本幸義・山田岳峰杭式固化地盤の液状化対策効果―動的遠心模型 実 験 , 鹿 島 技 術 研 究 所 年 報 , Vol. 59, pp. 7 ~ 14,2011.高橋正光・舘下和行・粂川政則・菅野高弘・中澤博志ジオパスタ工法(GEOPASTA 工法)を用いた液状化対策の効果確認,第 8 回空港技術報告会,国土交通省航空局,2007.(原稿受理2016.4.5)11
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  • タイトル
  • グラウンドアンカーによるケーソン式岸壁の耐震補強(<特集>港湾で用いられている耐震技術)
  • 著者
  • 吉田 誠・清宮 理・三藤 正明
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 12〜15
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71925
  • 内容
  • 報告グラウンドアンカーによるケーソン式岸壁の耐震補強Seismic Reinforcement of Quay Wall Using Ground Anchor吉田株五洋建設誠(よしだ東京土木支店まこと)清担当課長三藤正株五洋建設宮理(きよみや早稲田大学明(みとう技術研究所教授おさむ)創造理工学部まさあき)副所長. は じ め に1995 年兵庫県南部地震や 2011 年東北地方太平洋沖地震では,被災直後の港湾機能喪失で生活物資などの輸送が一時的に困難になったことから,岸壁の重要性が再認識された。一方,港湾分野では約 10 年に 1 度,港湾基準が改訂されているが,特に 2007 年には設計体系が性能規定型へ完全に移行したことにより,既存施設の多くについて耐震性能の再評価が行われた。また,近年では国際的な貨物船の大型化に対応するため,岸壁の増深化が進められている。このような背景のもと,既存岸壁の耐震補強が順次行われている。岸壁の耐震補強として様々な工法が提案されているが,グラウンドアンカー(以後,アンカーと称す)による補強は本体の抵抗力を補強する工法の一つであり,経済性,施工性に優れた工法と図―アンカーによるケーソン式岸壁の補強概念して近年注目されている。本稿では,ケーソン式岸壁のアンカーによる補強工法の概要について示すとともに,その地震時挙動に関する研究や施工事例について紹介すは港湾技術基準1)と地盤工学会の基準2) に準拠し,レベる。ル 1 地震動に関する変動状態及びレベル 2 地震動に関.アンカーによるケーソン式岸壁の補強工法. 工法の概要する偶発状態について照査することが標準とされている。レベル 1 地震動の照査は,図―に示すように地震時に堤体に作用する外力から,堤体の滑動,転倒及び支ケーソン式岸壁をアンカーで補強する場合,施工性や持力に対する作用 F 及び耐力 R をそれぞれ評価し,耐アンカー定着地盤の位置を考慮し,図―に示すように力作用比が全て 1 以上であることを確認するものであアンカーを堤体天端から斜めに配置するのが一般的であり,いわゆる震度法に基づく評価法である。照査に用いる。アンカー頭部(上端部)はケーソン堤体天端に構築るアンカー力は,事前に選定したアンカーの規格に基づされた補強コンクリートに固定し,下端部は堅固な地盤き決定する。レベル 2 地震動については,有効応力法内にグラウトでアンカー体を造成することにより定着すに基づく二次元地震応答解析を実施して岸壁変形量やアる。地震時に堤体が変位しようとするときにアンカーにンカー張力などの断面力の照査を行うことが標準とされ張力(アンカー力)が発生し堤体変位を抑制するものでている。ある。本工法の特徴は,従来の他の補強工法と比べて施工範囲が小さいことから既存施設への施工時の影響を最小限.地震時挙動の確認. 模型振動実験3)に抑えられることと,経済性に優れていることである。アンカーで補強されたケーソン式岸壁の地震時挙動を一方でアンカーの長期耐久性が課題とされていたが,設確認するため,大型水中振動台による 1 g 場での模型振計法の整備,防食法の開発により,横浜港,神戸港及び動台実験を実施した。実験対象モデルは, 1995 年兵庫四日市港など多数の岸壁に適用されるようになった。近県南部地震で被災した岸壁(計画水深- 12 m ,設計震年では漁港施設への適用例も増加している。. 設計法アンカーで補強されたケーソン式岸壁の耐震性評価法12度0.10)を参考とし,ケーソン背後は液状化地盤,原地盤は堅固な地盤を想定した。実験模型断面を図―に,実験の様子を写真―に示地盤工学会誌,―() 報図―図―ケーソン及び地表面の残留変形形状(変位倍率 3倍)実験模型断面図―写真―表―告ケーソンの残留変位及び傾斜角実験の様子実験ケースす。模型の縮尺はモデル化の範囲と土槽の大きさを考慮図―アンカーの張力と伸びの関係して 1/17とし,1 g 場における相似則4)を適用した。実験土槽は長さ 2.5 m,高さ1.5 m,奥行き1.3 m の箱型の同図によるとアンカーなしのケース 1 と 3 では,ケー鋼製枠とした。ケーソン模型には箱型の鋼殻を用い,中ソンが前面側へ傾斜しながら変位し前趾が基礎捨石に貫に中詰砂(相馬珪砂 5 号)を投入して比重( 2.1 )を調入しながら沈下する変位モードを示している。この傾向整した。ケーソン背後の埋土(水中)は相馬珪砂 5 号は基礎捨石層厚が大きいケース 3 で顕著である。ケー(土粒子密度 rs = 2.644g / cm3 ,最大間隙比emax = 1.097,ソンの残留変位及び傾斜角を図―に示す。基礎捨石層最小間隙比 emin = 0.654 )による相対密度 60 の中密地厚が小さいケースに着目すると,アンカーありのケース盤とし,液状化地盤を想定した。2 はアンカーなしのケース 1 と比較して,水平変位と傾実物のアンカーとして,F270TA(公称径 55.5 mm,斜角が約 60 低減しており,アンカーによる補強が有引張荷重 2 622 kN ,降伏点荷重 2 242 kN )を 2 m 間隔効である結果が示された。基礎捨石層厚が大きいケースで設置することを想定し,実験では軸剛性の相似則を考では,アンカーなしのケース 3 と比較して,アンカー慮して直径 1.5 mm の鋼製ワイヤーを使用した。アンありのケース 4 では水平変位が 70 ,傾斜角が 81 低カーの配置は既往の耐震補強事例にならい,アンカー傾減しており,基礎捨石層厚が大きいほどアンカーによるとし,上端をケーソン上部に固定し,下端を土角を 45°ケーソンの変位抑制効果が大きくなった。これらの結果槽底面に固定した。は,アンカーによる補強によって基礎捨石の変形が抑え加振波は,周波数 10 Hz ,波数 50 波,最大加速度 200Gal の正弦波を使用した。加振波を相似則に従い実物換算すると,周波数は約 1 Hz ,継続時間は約 40 秒となる。られることでケーソンの変位が抑制されることを示すものである。アンカーの張力と伸びの関係を図―に示す。同図に加振時にケーソンの変位・加速度,地盤の変位・加速よると,張力と伸びの関係は加振 1 波ごとにループを度・過剰間隙水圧,アンカー張力の時系列データを計測描いており,非線形的な挙動を示すことが分かる。このした。地表面の残留変形形状は実験前後におけるターゲ履歴ループの傾き(傾き A )は,事前に実施した引張ット座標の計測結果から求めた。試験による傾き( 329 kN/m)と概ね同じである。一方,アンカーの有無,基礎捨石層厚の違いが岸壁の地震時張力と伸びの関係の静的成分(傾き B)は引張試験によ挙動に及ぼす影響について調べるため,実験ケースを表る傾きの 4~ 5 割程度であり,アンカーのばね定数が低―に示す 4 ケースとした。下しているようにみえる。これは,アンカー設置時にそケーソン及び地表面の残留変形形状を図―に示す。July, 2016の自重などによって曲線形状になり,加振時にアンカー13 報告表―図―表―解析ケース解析メッシュ解析パラメータ図―ケーソン残留変位の実験と解析の比較の見かけの伸びが大きくなったためと推測される。このことは,施工時のアンカーの非直線性に起因して地震時のケーソン変位が大きくなる可能性があることを示唆している。図―変形図(変位倍率 5 倍)及び最大せん断ひずみ分布. 地震応答解析3)アンカーで補強されたケーソン式岸壁の模型振動実験を対象として再現解析を実施し,アンカーのモデル化方法や解析手法について検討を行った。再現解析には液状化現象を考慮できる解析コード FLIP5)を使用した。解析メッシュを図―に,解析パラメータを表―に,す従来の方法より,ケーソン変位の再現性が向上することを示すものである。岸壁の変形図(変形倍率 5 倍)及び最大せん断ひずみ分布を図―に示す。アンカーなしの場合,解析による変形は実験結果(図―)とよく一致しており,ケー解析ケースを表―に示す。アンカーはばね要素でモデソン直下から前面側にかけて 20 程度の大きなせん断ル化し,それ以外は平面ひずみ要素でモデル化した。なひずみが発生している。これはケーソンの支配的な変位おアンカーのモデル化の違いについて検討するため,ばモードが基礎捨石の変形によるものであることを示してね定数を線形(引張試験のばね定数)でモデル化したケーいる。アンカーありの場合,ケーソンの傾斜が抑制されスと,実験結果を詳細に反映するため引張試験のばね定水平変位が低減している様子が伺える。ケーソン直下の数を初期勾配とし実験での張力―伸び関係の静的成分を基礎捨石の最大せん断ひずみも 10 程度に低減してい第 2 勾配としたバイリニアでモデル化したケースの 2ることから,アンカーによる補強で基礎捨石の変形が抑つについて解析を実施した。えられた結果,ケーソンの変位が抑制されたと考えられケーソン残留変位の実験と解析の比較を図―に示す。同図によると,アンカーなしのケース 1, 3 では,本解析により実験結果を良好に再現できていることが分かる。る。.施工事例アンカーありのケースに着目すると,アンカーを線形でアンカーによるケーソン式岸壁の補強事例として神戸モデル化したケースよりバイリニアでモデル化した方が港の事例6) を紹介する。本工事は前面水深を- 16 m に実験結果に近い値を示している。このことは,アンカー増深化しかつアンカーで耐震補強を行うものである。ア張力の非線形特性を反映した解析法が,線形材料とみなンカーによる補強断面を図―に,施工フローを図―14地盤工学会誌,―() 報告図― アンカー工の施工フロー図―神戸港でのアンカーによる補強断面に示す。削孔長は 80 m 以上と非常に長く,定着層が深くかつ薄層であり,巨礫が点在する裏込石層を削孔する必要があったため,削孔には回転と打撃及び推力を備えたロータリーパーカッション方式の削孔機が採用された。削孔状況を写真―に示す。グラウトはテンドンの腐食からの保護,アンカー体の確実な定着を目的としており,その品質管理が重要である。そこで,プラントで作製したグラウト及び孔口より溢流したグラウトについて,比重測定,フロー試験及び写真―アンカー削孔状況圧縮強度試験を行い,良質なグラウトに置換されたことを確認している。グラウトの硬化を確認後,アンカー試験(品質保証試験)が実施されている。アンカー試験は,が期待される。株 ,東洋最後に,本工法の技術的検討は東亜建設工業アンカー頭部にジャッキをセットし,1 サイクルあるい株 と共同で実施した成果の一部を取りまとめたもの建設は多サイクルの荷重を与えてアンカー体が定着層に確実である。神戸港の施工事例は近畿地方整備局神戸港湾事に定着されていることを確認するものである。本事例で務所のご指導を頂いた。ここに記して,深甚なる感謝のはアンカー全本数について試験が行われ,アンカーの定意を表す。着が十分であることを確認している。本事例では設計段階で維持管理に向けた工夫がなされている。アンカー張力の確認や再緊張を容易にするため,新たな試みとして上部工に RC 版を設ける断面が採用された。また,維持管理の参考とするため,アンカー張力測定用の油圧ディスク式荷重計を設置している。一方,参1)2)3)長期耐久性向上策として,アンカー頭部に耐塩性塗装や高耐久性コーキングが施され,その上部に水切り部材が4)設置されている。. お わ り にアンカーによる耐震補強は,経済性に優れ,供用しな5)がら急速施工が求められる工事に対して有効であることから多くの岸壁に適用されてきた。近年では,維持管理への取り組み7)も積極的に進められている。一方,模型6)実験や数値解析を通して,アンカーで補強された岸壁の地震時挙動が明らかになってきており,その有効性が確認されている。今後,地震時挙動の解明を進めるとともに,より合理的な技術の開発・改良を継続することで,安全・安心な社会基盤の構築にさらに貢献していくことJuly, 20167)考文献社 日本港湾協会港湾の施設の技術上の基準・同解説,2007.地盤工学会地盤工学会基準グラウンドアンカー設計・施工基準,同解説(JGS41012012), 2012.吉田 誠・清宮 理グラウンドアンカーによる重力式岸壁の耐震補強に関する研究,土木学会論文集 A1 (構造・地震工学),Vol. 69, No. 1, pp. 69~88, 2013.Iai, S.: Similitude for shaking table tests on soilstructure‰uid model in 1 g gravitational ˆeld, Report of thePort and Harbour Research Institute, Vol. 27, No. 3,1988.Iai, S., Matsunaga, Y. and Kameoka, T.: Analysis of undrained cyclic behavior of sand under anisotropic consolidation, Soils and Foundations, Vol. 32, No. 2, pp. 1620,1992.津田行男・中官利之・西口松男・吉田 誠長尺アンカーによる岸壁の耐震補強工事について,Marine Voice21, Vol. 275, pp. 18~21, 2011.早川道洋・清宮 理・岩波光保・加藤絵万・竹家宏治海洋環境下におけるグランドアンカーの耐久性試験,土木学会第69回年次学術講演会,460, pp. 919~920,2014.(原稿受理2016.3.25)15
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  • タイトル
  • 強震計観測情報を用いた係留施設の供用可否判定システムの開発(<特集>港湾で用いられている耐震技術)
  • 著者
  • 曽根 照人・宇野 健司・淵ノ上 篤史・山本 芳生
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 16〜19
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71926
  • 内容
  • 報告強震計観測情報を用いた係留施設の供用可否判定システムの開発Development of Judging System using Strongmotion Seismograph for Mooring Facility曽根株 ニュージェック照人(そね港湾・海岸グループ淵ノ上篤宇あきと)グループマネジャー史(ふちのうえ健司(うの港湾空港技術研究所構造研究領域主任研究官山あつし)国土交通省中部地方整備局名古屋港湾空港技術調査事務所野係長. は じ め に中部地方では,今後 30 年以内の発生確率が極めて高本芳けんじ)構造研究グループ生(やまもと(一財)沿岸技術研究センター調査部よしを)主任研究員高い地震動指標である。∞速度の PSI 値=fv2(t )dt ………………………(1)0い南海トラフを震源とする地震による甚大な被害が懸念開発した係留施設被害度診断システムは,津波警報等されている。このような大規模な地震が発生した場合,の発令中や夜間等で現地確認が困難な状況でも係留施設港湾施設は,緊急物資輸送や復旧工事の拠点として重要の供用可否を早期に判定できるものとし,その時間的なな役割が期待されている。さらに,港湾背後圏の経済活動をいち早く回復させることを目的として,港湾 BCPの作成が進められ,港湾機能を早期に復旧させる気運も高まっている。そのため,地震発生後の港湾施設,特に係留施設の供用可否の判定が非常に重要と考えられる。重力式係船岸は,地震(直)後に水平変位等の変状を簡易調査することで供用可否の判定が可能となる。一方,桟橋式及び矢板式等の鋼部材からなる係留施設は杭や矢板等が地中部にあるため,外観で確認できる変状等の簡易調査から部材の応力状況までの把握が困難である。そこで,地震発生後に強震計で観測された地震動情報を活用することにより短時間で鋼部材の応力状態を推定し,係留施設の供用可否判定を行うシステム(係留施設被害図―係留施設被害度診断システムによる供用可否判定の流れ度診断システム)を構築した。本稿では,本システムの主な開発項目とシステムの稼働状況について報告する。.係留施設被害度診断システムの概要. 係留施設被害度診断システムの地震後の時間的位置づけと構成港湾空港技術研究所(以下,港空研)では,港湾地域強震観測網で観測された地震動の情報をメール配信する「地震動情報即時伝達システム」を構築している。この即時伝達システムから地震発生後約 15 分以内に配信されるメールには,地震動指標(最大加速度,速度の PSI値等)と港空研サーバーにおける地震動波形データの在処が記載されている。地震後にメールを受信でき,港空研サーバーにアクセスできる環境であれば,地震動波形データを地震直後に入手することができる。そこで,中部地方整備局名古屋港湾空港技術調査事務所は,地震動情報即時伝達システムと連携することで,短時間に係留施設の供用可否判定を行う係留施設被害度診断システムの開発を実施した。なお,速度の PSI 値とは,野津ら1)により式(1)で定義され,港湾構造物の変形量と相関が16図―係留施設被害度診断システム構成の概要地盤工学会誌,―() 報流れの関係を地震発生後の経過時間と対比して図―に示す。また,システム構成の概要を図―に示している。告地震後の船舶接岸時の応力状態も把握する。設計では船舶接岸時(作業時)に,発生断面力が設計港空研サーバーから入手する地震動波形は,地表若し耐力以下(発生する応力が降伏以下)であることを照査くは地中で観測されたものである。係留施設供用可否判する。そこで地震後の接岸時の応力状態を示す指標に設定では,工学的基盤上の露頭波( 2E 成分)を利用する計耐力比(発生応力/降伏応力)を用い,速度の PSI 値ため,観測波形データを工学的基盤上への地震動波形にとの関係を整理すると,図―に示すように地震後の船変換する必要がある。しかし波形変換に用いる地震応答舶接岸時の設計耐力比が速度の PSI 値と比較的高い相解析に一般的な等価線形化法を用いると,地表から工学関性を示すことが明らかとなった。的基盤に引き戻した場合に,短周期成分が大きく増幅さ以上に示したとおり,速度の PSI 値と残留水平変位,れ,最大加速度が非常に大きくなることがある。このた最大曲率比及び設計耐力比の関係を示す評価線(図―め,吉田2)が提案する周波数依存性を考慮できる等価線~図―)を用いることで,供用可否判定を実施する。形化法を採用している。図―にフローを示しているが,速度の PSI 値が算係留施設被害度診断システムは,この工学的基盤の地出されると瞬時に係留施設の供用可否を判定することが震動波形を用いて,簡易判定手法と詳細判定手法により可能となった。なお通信網が不通になった時の対応とし係留施設の供用可否判定を行い,被害推定マップの作成て,震度階に対する供用可否判定も用意している。までをすべて自動で行うものである。なお詳細判定法に評価線が,図―~図―の係留施設では,図―及びは,兵庫県南部地震等における係留施設の被災事例を再図―より速度の PSI 値が61 cm/s1/2 未満で供用可能と現できている多重せん断機構モデルを用いた二次元有効なり,図―より速度の PSI 値が57 cm/s1/2 未満では暫応力解析FLIP3)を用いるものとした。. 対象の強震計と対象施設定供用(長期)と区分される。これをまとめると表―に示す供用可否区分となる。本システムで対象とする強震計は,中部地整管内 7港湾の 9 強震計である。また対象施設は,矢板式係船岸,桟橋式係船岸及び重力式係船岸(主に耐震強化施設)とし,簡易判定手法では 50 施設,詳細判定手法では 48施設とした。.係留施設供用可否判定手法の構築. 簡易判定手法簡易判定手法は主に係留施設の被害と相関性が高い速度の PSI 値をパラメータとして,鋼材の応力を推定する手法を用いる。このため,桟橋式及び矢板式等の対象図―速度の PSI 値と残留水平変位の関係施設に対し,FLIP による解析を行った。入力地震動は,震源特性,伝播経路特性及びサイト特性を考慮した地震動とし,対象施設に対し被害が想定される海溝型地震や内陸活断層型地震等のレベル 2 地震動及び再現期間を考慮した確率波を10波程度設定した。対象施設の FLIPによる解析の結果を用いて,速度の PSI 値と残留水平変位や式(2)で定義する鋼部材の最大曲率比との関係から図―及び図―に示す評価線を設定した。最大曲率比=発生最大曲率……(2)全塑性モーメント発生時の曲率図―速度の PSI 値と最大曲率比の関係残留水平変位が2.0 m 以下であれば,船舶が接岸できるため,速度の PSI 値が 188 cm / s1/2 以下であれば接岸可となる。最大曲率比は,地震中の鋼部材の状態を表す指標である。例えば矢板式係船岸は,港湾の施設の技術上の基準・同解説4) によると,最大曲率比が 1.0 未満であれば,構造的な安定が保たれており,残存耐力有りと判定できる。しかし,地震後に係留施設に船舶が接岸した際に作用する接岸力や牽引力に対して鋼部材に発生する応力状態も評価する必要がある。このため FLIP による解析では,地震後の 10 秒間に岸壁天端節点に設計対象船舶の接岸力や牽引力相当の節点集中荷重を作用させ,July, 2016図―速度の PSI 値と接岸時の設計耐力比の関係17 報告図―図―岸壁の残留水平変位と接岸時の設計耐力比の関係供用可否判定フロー表―供用判定区分注)暫定供用可(長期)構造上の問題が無く,施設変状が軽微で,数年程度の供用に支障を来さない施設(ただし,暴風時を除く)。暫定供用可(短期)構造上に問題があるが,水平変位の進展が無いことを確認しながら供用できる施設(緊急物資輸送を想定)。. 詳細判定手法詳細判定手法はまず,予め作成しておいた解析モデルに,観測された地震動波形データから工学的基盤上の露頭波( 2E 成分)に変換した地震動波形を入力して,FLIP による解析を行う。続いて解析結果(結果一覧,残留変形図,応答時刻歴波形,曲げモーメント図等)を出力し,供用可否の判定までを自動で行う。なお.で記載した方法の通り観測された地震動の入力後に,船舶接岸時の検討を FLIP による解析で実施するのは,煩雑であり解析が発散する可能性がある。そこで,簡易判定手法作成時に実施した FLIP による解析結果より,残留水平変位と船舶接岸時の設計耐力比の関係から相関性を把握し,図―に示す評価線を設定した。観測地震動を図―用いた FLIP による解析から得られる残留水平変位と図―を用いることで,船舶接岸時の鋼材の応力状態を考慮した供用可否判定を行うこととした。評価線が図―の施設では,残留水平変位が 0.41 m 未満であれば,接.詳細判定結果の一例(結果一覧)システムの稼働状況と結果係留施設被害度診断システムの稼働状況の一例を図―岸時の設計耐力比が1.0未満となり,暫定供用可(長期)に示す。係留施設被害度診断システムでは,1 台のパの判定となる。また,コンテナクレーンが搭載されていソコンで同時に実行できる FLIP による解析数は,パソる岸壁については,コンテナクレーンを固有周期,重心コンの負荷を考慮して 6 ケースと設定した。観測され位置及び減衰定数を考慮したはり要素と質点要素を用い,た地震動が大きい港湾を優先的に,また施設の位置づけ岸壁上部工に搭載したモデル化を行っている。このため(耐震強化岸壁等)と取扱貨物量より設定した優先度をFLIP による解析により,クレーン重心質点における応考慮して,優先度が高い施設から順次 FLIP による解析答最大加速度が得られる。この応答最大加速度を用いて,が実行されていく。クレーンの浮き上がり限界加速度及び設計震度に対する照査を可能とした。結果一覧の一例を図―に示す。18簡易判定手法及び詳細判定手法の結果を被害推定マップとして出力した例を図―に示す。地盤工学会誌,―() 報図―告システムの稼働状況図― 被害推定マップの一例. お わ り に参総合的な供用可否判定は,現地の被災状況を確認の後に行う必要があるが,係留施設被害度診断システムを用いることで,多くの施設の中から供用の可能性が高い施設を絞り込める利点がある。出力結果の被害推定マップは,現地の被災状況調査箇所の優先度を検討する際の判断材料を与え,発災後の初動体制を支援する非常に有効なシステムを開発できたものと考えている。本システムの開発に当たっては,広島大学大学院京都大学防災研究所合研究所究所野津一井康二准教授,飛田哲男准教授,国土技術政策総宮田正史港湾施設研究室長,港湾空港技術研厚地震防災研究領域長及び小濱英司耐震構造研究チームリーダーを委員とした検討委員会において考文献1)野津 厚・井合 進岸壁の即時被害推定に用いる地震動指標に関する一考察,第28回関東支部技術研究発表会講演概要集,土木学会関東支部,pp. 18~19, 2001.2) 吉田 望DYNEQ, A computer program for DYNamicresponse analysis of level ground by EQuivalent linearmethod,東北学院大学工学部,http://www.civil.tohoku gakuin.ac.jp / yoshida / computercodes / index.html3) Iai, S., Matsunaga, Y. and Kameoka, T.: Strain spaceplasticity model for cyclic mobility, Report of the Portand Harbour Research Institute, Vol. 29, No. 4, pp. 2756, 1990.社 日本港湾協会港湾の施設の技術上の基準・同解説,4) 2007.(原稿受理2016.3.25)指導を頂いた。ここに記して謝意を表すものである。July, 201619
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  • タイトル
  • 高密度臨時地震観測に基づく田老漁港におけるレベル2 地震動の設定(<特集>港湾で用いられている耐震技術)
  • 著者
  • 秦 吉弥・野津 厚・山田 雅行・常田 賢一・青木 伸一・植田 裕也
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 20〜23
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71927
  • 内容
  • 報告高密度臨時地震観測に基づく田老漁港におけるレベル地震動の設定Estimation of Strong Motion at Fishing Port Site in Tarou, Miyako City, during the 2011 oŠ the PaciˆcCoast of Tohoku Earthquake based on Temporary Seismic Observation with High Density秦 吉弥(はた助教大学院工学研究科雅行(やまだ大阪大学山田株 ニュージェック青木伸大阪大学まさゆき)野しんいち)大学院工学研究科津 厚(のづあつし)国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所 領域長常マネージャー一(あおき教授よしや)田賢大阪大学植田大阪大学教授裕一(ときだけんいち)大学院工学研究科也(うえだ大学院工学研究科ゆうや)博士課程前期. は じ め に我が国では,東日本大震災により岸壁や防波堤などの漁港施設が甚大な被害を受け1),水産業の早期再開に大きな支障をきたした。大規模地震による強震動の作用に起因した漁港施設の被害をなくす必要(若しくは被害を最小限に抑える必要)があり,そのため現在,岸壁や防波堤などに代表される漁港施設の耐震性能の強化が図られている。効果的な強化のためには,対象漁港での地盤震動特性が適切に考慮された地震動を用いた耐震設計・耐震性能照査の実施が必要不可欠である。本稿では,特集号のテーマ「港湾で用いられている耐震技術」を考える上での参考とするため,港湾施設を対象としたレベル 2 地震動の設定手法2)を,漁港施設におけるレベル 2 地震動の設定手法として仮に援用した一つの事例について紹介する。具体的には,岩手県宮古市の田老漁港を対象とした場合のレベル 2 地震動の一つの候補として, 2011 年東北地方太平洋沖地震(以後,本震と呼ぶ)によって田老漁港(図―参照)に作用した強震動を評価した結果について述べる。.図―田老漁港と周辺の本震観測記録(枠内)及び震源モデルサイト増幅特性の評価図―の枠内は,田老漁港周辺の本震観測記録の分布KNET 田老,MLIT 真崎大橋,KiKnet 田老におけるである。主に平地で構成される津波来襲地域(以後,田サイト増幅特性(地震基盤~地表)7) を比較したもので老街区と呼ぶ図―及び図―参照)では,田老総合ある。図―に示すように,周辺観測点( MLIT 真崎事務所の敷地に設置されていた地震計(旧・KNET 田大橋及び KiK net 田老)に対して旧・ K NET 田老で老)3) により気象庁計測震度の値が得られているのみでは,サイト増幅特性が大きく異なることから,周辺観測あり,津波の影響により,詳細な耐震検討に必要な強震点で得られた本震記録を田老街区に作用した強震動と見波形は残されていない4)。さらに,田老の沿岸域は比較なすことは適当ではないと考えられる。的広域であることから5),沿岸域におけるサイト特性の次に,田老街区内における地震動の特性について検討空間的な変化により,旧・KNET 田老における本震時を行った。そのため本検討では,図―及び図―に示の強震動の特性が田老漁港に転用できない可能性もある。すように,旧・KNET 田老(STA0観測点跡地)及そこで,まず始めに,MLIT 真崎大橋6)及び KiKnetび沿岸域( STA 1 ~ STA 5防潮堤の堤体法尻付近)田老3)での本震観測記録(図―参照)を,田老街区ににおいて地震計を設置し,余震観測を実施した。さらに作用した地震動と見なすことが可能かどうかを検討する。本検討では,観測記録の公開が一定規模以上の地震に限図―は,本震前の地震記録に基づいて評価された旧・られている6)ことを考慮して,MLIT 真崎大橋の極近傍20地盤工学会誌,―() 報図―2005年地形図と余震観測地点(文献 5)に一部加筆)図―告サイト増幅特性(地震基盤~地表)の比較と旧・KNET 田老のサイト増幅特性が類似していることから,旧・KNET 田老における本震時の地震動を推定すれば,田老街区の沿岸域西部(図―参照)に作用した本震時の地震動として転用可能であると考えられる。一方で,図―に示すように,臨時観測点( STA3,STA4, STA5)と臨時観測点(STA1, STA2)のサイト増幅特性は大きく異なっている。すなわちこれは,田老漁港の岸壁などの施設が集中しており(図―参照),なおかつ旧河道沿い5)にある(図―参照)沿岸域東部では,沿岸域西部よりも本震時に大きな地震動が作用していたことを示唆するものである。.強震動の推定本検討では,野津8),9)による2011年東北地方太平洋沖地震の SPGA モデルと経験的サイト増幅・位相特性を図―1916年地形図と余震観測地点(文献 5)に一部加筆)考慮した強震波形計算手法2),10)の組合せを採用した。ただし,田老漁港周辺の強震観測点のうち MLIT 真崎大橋は既往の研究8),9)において評価対象となっていないこにおいても余震観測を実施した。観測条件は,計 7 地と,田老漁港の地震動再現に用いるフーリエ位相の選択点で共通であり,サンプリング周波数は 100 Hz とし,(本検討では,図―に示すように,SPGA_1・SPGA_トリガーレベルは設定せず常時観測を継続するシステム2・SPGA_4 に対しては2013年11月 1 日の余震 MJ5.2,とした。観測期間は 2013年 10月 27日~ 12月 7 日の約 40SPGA _ 3 に対しては 2013 年 11 月 12 日の余震 MJ4.5 を各日間である。得られた余震観測記録に基づき評価したサ々割り当てた)の妥当性については十分な議論が行われイト増幅特性(地震基盤~地表)の比較を図―に示す。ていないことを考慮して,強震動の再現性について確認臨時観測点( MLIT 真崎大橋近傍を除く計 6 地点)にを行った。おけるサイト増幅特性は, KiK net 田老との同時観測図―(a )~( d )に MLIT 真崎大橋における本震時の記録を用いたスペクトル比に基づく方法2)により評価し速度波形と加速度波形を,観測波と推定波(強震動推定た。結果)で比較したものを N S 及び E W 成分について図―に示すように,スペクトルインバージョンに基示す。なお,速度波形については,観測波並びに推定波づく既存の旧・ K NET 田老におけるサイト増幅特性7)ともに,先行研究11) などを参考に,構造物の被災に大と,上述した余震観測記録に基づき評価した旧・ K きな影響を及ぼすやや短周期帯域12)を含む0.2~4 Hz のNET 田老(STA0)におけるサイト増幅特性が良い一バンドパス・フィルタを施した波形となっている。図―致を示しており,余震観測によるサイト増幅特性の適用( a )~( d )に示すとおり,推定波は,速度パルスの振性が示唆される。さらに,臨時観測点(STA1, STA2)幅や周期などの点で,観測波を比較的良好に再現するもJuly, 201621 報告図―地震動推定手法の適用性確認(MLIT 真崎大橋及び旧・KNET 田老),本震時における田老漁港での推定地震動のとなっていることから,同様の手法を用いて,田老街図―( e )~( h )に田老街区の沿岸域西部( STA 1,区の沿岸域(西部並びに東部)における本震時の地震動STA 2 の代表地点である旧・ K NET 田老)におけるを推定できるものと考えられる。推定速度波形( 0.2~ 4 Hz)及び推定加速度波形(フィ22地盤工学会誌,―() 報告ルタ処理なし)を N S 及び E W 成分について示す。田老漁港やその他の地域における漁港施設の耐震性能ここに,推定加速度波形による気象庁計測震度は 4.7との評価において,本稿で紹介した地震動の推定結果やそ算定され,残されている震度記録4)と一致することから,のアプローチが参考になれば幸いである。地震動推定手法の適用性をあらためて確認することができる。また,図―(e )~( h)と図―( a)~(d )を比較謝辞す る と , 沿 岸 域 西 部 ( 旧 ・ K NET 田 老 ) の ほ う が国土交通省 MLIT 及び国立研究開発法人防災科学技MLIT 真崎大橋よりも速度振幅や加速度振幅が明らか術研究所 K NET / KiK net による地震観測記録を利用に大きくなっている。しました。また,余震観測の実施にあたっては,宮古市図―( i )~( l )に田老街区の沿岸域東部( STA 3,STA4, STA5 の代表地点である STA4)における推田老の皆様に大変お世話になりました。記して謝意を表します。定速度波形( 0.2~ 4 Hz)及び推定加速度波形(フィルタ処理なし)を N S 及び E W 成分について示す。ここに,推定加速度波形による気象庁計測震度は 5.2(震参1)度 5 強)と算定され,前述した沿岸域西部での観測値4.7 (震度 5 弱)を大幅に上回る結果が得られた。これは,同じ田老街区内においても沿岸域の西部と東部では地盤震動特性の差異に起因して本震時に作用した地震動の特性に大きな違いがあり,田老漁港の岸壁などの施設2)3)が集中している東部では西部に比べ比較的大きな地震動が作用した可能性を示唆するものである。ただし,本稿において臨時地震観測並びに地震動推定を実施した地点は田老漁港及び田老街区の全域をカバーしているわけではないため,今後は,田老漁港を含めた田老街区全体に4)5)おいて高密度常時微動計測13) を実施していく必要があると考えている。. まと6)め本稿では,宮古市田老の沿岸域において高密度余震観測を実施し,得られた記録に基づき, 2011 年東北地方7)太平洋沖地震時に作用した強震動(いわゆるレベル 2地震動の候補の一つ)を推定した。得られた知見を以下に示す。8)MLIT 真崎大橋及び KiK net 田老で得られた本震時の観測地震動を,田老街区及び沿岸域に作用した地震動と見なすことは適切でない。9)沿岸域において余震観測を高密度に実施した結果,沿岸域西部でのサイト特性は,旧・ K NET 田老(街区内)のサイト特性と類似している。一方で,10)旧河道沿いにある沿岸域東部でのサイト特性は,旧・ K NET 田老のサイト特性とは異なり, 1 ~ 3Hz 付近にかけて顕著なピーク周波数を有する。11)2011 年東北地方太平洋沖地震の SPGA モデルと,経験的サイト増幅・位相特性を考慮した強震波形計算手法の組合せを用いれば, MLIT 真崎大橋における本震時の観測地震動,及び旧・KNET 田老に12)おける本震時の観測震度を良好に再現することができる。沿岸域東部における推定地震動は,気象庁計測震度が 5.2 と な り , 沿 岸 域 西 部 に お け る 計 測 震 度 4.7(旧・KNET 田老での観測値)を大きく上回る。July, 201613)考文献例えば,八木 宏・杉松宏一・中山哲嚴・三上信雄・大村智宏・佐野朝昭・奥野正洋・五十嵐雄介東北地方太平洋沖地震津波による田老漁港の漁港施設における被災メカニズムの検討,土木学会論文集 B2,Vol. 68, No. 2,pp. I_1351~1365, 2012.社 日本港湾協会港湾の施設の技術上の基準・同解説(上巻),国土交通省港湾局監修,pp. 336~341, 2007.Aoi, S., Kunugi, T., and Fujiwara, H.: Strongmotionseismograph network operated by NIED: KNET andKiKnet, Journal of Japan Association for EarthquakeEngineering, Vol. 4, No. 3, pp. 6574, 2004.気象庁東日本大震災による岩手県各地の震度,地震・火山月報(防災編),平成23年 4 月,2011.栗栖晋二・伊藤理彩・茅根 創津波被災地域の土地利用変遷,東京大学海洋アライアンス震災復興調査報告書,総合研究博物館地理部門,28p., 2011.Uehara, H. and Kusakabe, T.: Observation of strong earthquake motion by National Institute for Land and Infrastructure Management, Journal of Japan Associationfor Earthquake Engineering, Vol. 4, No. 3, pp. 9096,2004.野津 厚・長尾 毅・山田雅行スペクトルインバージョンに基づく全国の強震観測地点におけるサイト増幅特性とこれを利用した強震動評価事例,日本地震工学会論文集,Vol. 7, No. 2, pp. 215~234, 2007.野津 厚 2011 年東北地方太平洋沖地震を対象としたスーパーアスペリティモデルの提案,日本地震工学会論文集,Vol. 12, No. 2, pp. 21~40, 2012.野津 厚・山田雅行・長尾 毅・入倉孝次郎海溝型巨大地震における強震動パルスの生成とその生成域のスケーリング,日本地震工学会論文集, Vol. 12, No. 4,pp. 209~228, 2012.野津 厚・長尾 毅・山田雅行経験的サイト増幅・位相特性を考慮した強震動評価手法の改良―因果性を満足する地震波の生成―,土木学会論文集 A, Vol. 65, No. 3,pp. 808~813, 2009.秦 吉弥・秋山充良・高橋良和・後藤浩之・野津 厚,幸左賢二スーパーアスペリティモデルと経験的サイト増幅・位相特性を考慮した 2011 年東北地方太平洋沖地震による南三陸町志津川での強震動の評価,土木学会論文集 B3,Vol. 69, No. 2, pp. I_161~166, 2013.川瀬 博震源近傍強震動の地下構造による増幅プロセスと構造物破壊能― 1995 年兵庫県南部地震での震災帯の成因に学ぶ―,第10回日本地震工学シンポジウムパネルディスカッション資料集,pp. 29~34, 1998.例えば,秦 吉弥・湊 文博・山田雅行・常田賢一・魚谷真基和歌山県串本町における高密度常時微動計測,物理探査,Vol. 68, No. 2, pp. 83~90, 2015.(原稿受理2016.3.18)23
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  • タイトル
  • 南海トラフ地震を想定した地震動による防波堤の沈下被害と耐津波構造の沈下抑制効果(<特集>港湾で用いられている耐震技術)
  • 著者
  • 大矢 陽介・小濱 英司・野津 厚
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 24〜27
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71928
  • 内容
  • 報告南海トラフ地震を想定した地震動による防波堤の沈下被害と耐津波構造の沈下抑制効果Subsidence Damage of Breakwater due to Earthquake Motion Caused by the Nankai TroughEarthquake and Subsidence Reducing EŠect of Tsunami Resistance Structure大矢陽介(おおやようすけ)国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所 主任研究官野津小濱英司(こはまえいじ)国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所 グループ長厚(のづあつし)国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所 領域長. は じ め にであることから,南海トラフ地震で想定されている継続時間が長い地震動に対する被害の程度は分かってない。2011 年東北地方太平洋沖地震の際,東北地方の防波本稿では,南海トラフ地震の特徴である長継続時間地堤の多くが津波による甚大な被害を受けた。想定を上回震動に対する防波堤の沈下挙動を明らかにするため,過る津波力や越流による基礎マウンドの洗掘によってケー去に被害経験がある直下型地震と比較した模型振動実験ソンが倒壊したことが主な被害の原因である。このうちについて紹介する。また,防波堤の沈下対策工として,越流を回避するには,津波高よりも防波堤の天端高を高矢板工法及び固結工法に加えて,津波越流に対する洗掘くする必要があるが,津波高が防波堤の天端高より高く対策として適用される腹付工について沈下抑制効果を比なり津波が越流しても,背後地での津波高さの低減や津較した実験について紹介する。波到達時間を遅らせる減災効果が発揮されることが確認された1)。このように,津波来襲時の津波高と天端高の.防波堤の沈下被害における地震動の影響関係は防波堤の津波対策の検討において重要であり,性. 入力地震動の設定能照査にあたっては,津波に先行する地震動及び地殻変振動実験の入力地震動には,防波堤の沈下被害が発生動を適切に設定し,影響を評価する必要がある2)。地震した兵庫県南部地震の際の神戸港ポートアイランドの鉛動の影響の一つとして,津波来襲の前に地震動による防直アレーサイトの記録5)(以下,PI 波)と南海トラフ地波堤の沈下が想定される。東北地方太平洋沖地震では地震を想定した地震動(以下,シナリオ波)の 2 つの地震後の調査で天端高が低くなった防波堤が確認されたが,震動を用いた。後者は, SPGA モデルを用いて評価し津波による基礎マウンドの洗掘等の影響も含まれているた地震動6)である。図―に工学基盤における 2 つの波ため,地震動単独での沈下程度は明らかになっていない。形の比較を示す。図中の注釈には,最大加速度と PSI地震動による防波堤の沈下被害の数少ない事例の 1値を示した。 PI 波と比べてシナリオ波の方が最大加速つとして, 1995 年兵庫県南部地震の際の神戸港の被害度は小さいが,継続時間が長く PSI 値が大きいのが特がある。神戸港の防波堤の施設総延長は10 km 以上であ徴である。なお,PSI 値は港湾構造物の被害程度と良いり,そのうちの多くが地震時に 2 m 以上沈下した3)。当相関を示す7)ことから,地震動の強さを表す指標として時の神戸港の多くの港湾施設で軟弱地盤対策として床掘置換工法が実施され,基礎地盤が砂地盤に置き換えられていた。この置換砂層における過剰間隙水圧の上昇による軟化とせん断変形が,防波堤の沈下の原因であることが模型実験等による検討から明らかになっている例えば4)。近い将来発生が予測されている南海トラフ地震の際に,基礎の置換砂層が地震時に液状化すると防波堤は沈下し,後続の津波に対して必要な天端高を確保できない可能性がある。また,この時津波は大きく越流するため,基礎マウンドの洗掘等の進行により防波堤の安定性が大きく低下する可能性もある。そのため,沈下量を精度良く予測することが重要となるが,防波堤の沈下被害の経験がある地震動は,兵庫県南部地震のような直下型地震のみ24図―実験に用いた地震動(工学基盤での 2E 波で,図中の数値は最大加速度と PSI 値)地盤工学会誌,―() 報用いられている。シナリオ波については,ポートアイランドの地層モデルを対象とした有効応力解析より,模型底面の設定深度告場における相似則10) を適用し,以後,特に断りがない場合は,実験結果等の物理量は実物スケールに換算した値とする。まで地震動を引き上げ,その後,加速度振幅の調整を行置換砂層は飯豊珪砂 6 号(rmax=1.706 g/cm3, rmin=った波形を振動台の入力地震動として設定した。 PI 波1.417 g/ cm3)を用い水中落下法により相対密度50をについては,模型底面の設定深度相当での鉛直アレー記目標に製作した。その後,捨石マウンドを気中落下法で録を振幅調整した波形を用いた。実験に用いた入力地震製作後,表面を均した後に鋼製のケーソンを設置した。動の設定方法については,文献8)を参照されたい。. 模型断面の設定. 実験結果図―に計測された振動台の加速度時刻歴と代表的な模型振動実験の対象断面は, 1995 年兵庫県南部地震計測結果を示す。なお,過剰間隙水圧比は一次元地層をの際に地震動により 1.4~ 2.6 m 沈下した厚さ 25 m の置仮定し,層厚と密度から求めた上載荷重で計測した過剰換砂を基礎地盤とする神戸港第 7 防波堤の断面9)とした。間隙水圧を除した値である。また,沈下速度はケーソン図―に模型寸法と計測センサーの配置図を示す。実験天端の変位センサーで計測した沈下量を時間増分で除し,は水中振動台に設置した長さ 4 m ,高さ 1.5 m ,奥行き計測ノイズの影響がなくなるようローパスフィルターに1.5 m の鋼製土槽を用いた。土槽と対象断面の置換砂層通して求めた。厚さを考慮して長さの縮尺比(実物スケール/模型スケーシナリオ波のケースにおける振動台上( A 01)の加ル)を 20 とした。液状化を想定した置換砂層の厚さは,速度時刻歴は, PI 波のケースに対しておおよそ継続時実物25 m に対して模型は1.25 m である。相似則は,1 g間は 10 倍,最大加速度は 0.5 倍, PSI 値は 2 倍となった。シナリオ波は, PI 波と比べて加速度振幅が大きくないため突発的な液状化は発生しないが,時間とともに地盤が繰返しせん断を受けることで徐々に過剰間隙水圧は高くなり,液状化が発生した。ケーソンの沈下は,マウンド法尻直下(P24)の過剰間隙水圧比が0.5程度に上昇してから発生し,過剰間隙水圧比が 1 に至り液状化が発生すると急激に増加した。図―に時刻歴図(図―)の破線で示した時刻における置換砂層の過剰間隙水圧比の分布図を示す。過剰間図―模型断面(寸法は模型スケール,単位は mm)図―各種時刻歴(上からケーソン天端の沈下速度,沈下量,マウンド法尻直下の過剰間隙水圧比,ケーソン直下の過剰間隙隙水圧比はケーソン直下では 1 まで上昇せず,ケーソ水圧比,振動台の水平加速度。図中のセンサー番号は図―に対応)July, 201625 報告図―過剰間隙水圧比の分布(上段PI 波,下段シナリオ波。出力時刻は図―の破線位置に対応。ケーソン中央から西側の計測値を東側に鏡面コピーし,補間計算により分布図を作成した)写真―模型の残留変形(シナリオ波の振幅を段階的に大きく調整した 4 回の加振実験後に排水して撮影)ン直下から離れたところで 1 まで上昇した。 PI 波では,図―極めて短い時間で置換砂層の深いところまで過剰間隙水圧比は 1 まで上昇し,液状化範囲が広がった。一方,PSI 値と沈下量の関係て PSI 値と沈下量は正の相関関係となった。シナリオ波では,過剰間隙水圧比は先ず捨石マウンドの被災事例も含めて評価すると,PSI 値は最大加速度よ法尻直下で局所的に大きくなり,液状化の範囲は置換砂りも沈下量に対する相関が高く,防波堤の被害を推定す層の浅層から深層まで広がった。このように,過剰間隙る際の地震動の強さを表す指標となりうる可能性が示唆水圧比の最大値の分布は地震動によらずほぼ同じであるされた。また,発生が予測されている継続時間が長い巨が,上昇タイミングに違いがある。また,過剰間隙水圧大地震に対して,防波堤の基礎地盤が液状化すれば,防が上昇した後の継続時間には大きな違いがあり,ケーソ波堤が大きく沈下する可能性を示した。ンの沈下量が PI 波の3.6 m と比べて,シナリオ波で7.1m と約 2 倍の沈下量の違いとなった。写真―に示す.耐津波構造の沈下抑制効果ように,ケーソンの沈下に引き込まれるように捨石マウ. 実験概要ンドは沈下し,捨石マウンド法尻より離れた海底面はや海溝型地震動によって発生した 7 m を超える沈下をや隆起した。軽減する対策工として,既設防波堤を想定した防波堤直図―に PSI 値とケーソン天端の沈下量の関係を示下地盤を改良しない矢板工法及び固結工法に加えて,津す。同図には 2 つの地震動を用いた実験結果と,神戸波越流に対する洗掘対策として適用される腹付工につい港第 7 防波堤の沈下量の実測最大値を示した。 PI 波のて,沈下抑制効果を模型振動実験で確認した。図―に実験ケースは,兵庫県南部地震の際の観測波形を用いた対策工を実施した 3 ケースの模型断面を示す。再現実験であるが,ケーソン天端の沈下量は3.6 m とな腹付工は,津波が防波堤を越流する場合,洗掘に対すり,第 7 防波堤の実測最大値の2.6 m よりも 4 割程度大る対策の 1 つとして,ケーソン背後の湾内側に腹付工きくなった。これは実験の入力地震動が観測値よりも大を設置した断面2)である。腹付工の高さを直立部高さのきくなったこと,模型の置換砂層が実物と材料が異なる1/2 とし,腹付工表面に被覆工等は設けていない。こと,密度が小さかったことが原因と考えられる。シナ矢板工法及び固結工法は,防波堤と同様に地震時に沈リオ波の PSI 値が PI 波の約 2 倍になったことと対応し下被害が発生する河川堤防に適用実績がある工法である。て,沈下量も約 2 倍になったように,被災事例も含め堤防法尻付近に矢板又は固化体を設置することにより連26地盤工学会誌,―() 報図―告沈下抑制工の模型断面(寸法は模型スケール)ため,腹付工の適用断面においては,地震動による沈下は抑制されるものの,地震時にケーソン間の目地の開きや法線のずれの発生が示唆される結果が得られた。なお,実験結果の詳細は文献11)を参照されたい。.おわりに本稿では,南海トラフ地震の特徴である長継続時間地震動を対象とした模型振動実験より,防波堤の沈下特性と沈下対策工の効果について述べた。防波堤の地震動による被災事例は少ないため,地震動,地盤条件及び沈下図―ケーソン天端での沈下量と水平変位量の比較量の関係には未解明の部分も多く,今後も様々な条件における検討が望まれる。続壁を設け,基礎地盤の液状化による側方流動量を抑制することで盛土の沈下量を抑制することができる。本研究では,既設防波堤を想定し,基礎マウンド法尻付近を参1)改良した。矢板工法は,実物では板厚 10.5 mm と薄い鋼矢板型に相当する曲げ剛性を有する鋼板を用い,下2)端はピン支持として振動台に固定した。一方,固結工法は,変形しない構造を想定し,鋼函を振動台に固定した。3)地震動は前章と同じシナリオ波を用いた。. 実験結果4)図―に各対策工のケーソン天端での沈下量と水平変位量の比較を無対策のケースの結果と合わせて示す。地盤改良しない腹付工であっても,無対策と比べて 45 沈下量を抑制できることが分かった。固結工法でもケー5)6)ソン直下を改良しないため,沈下を完全に防ぐことは難しいが1.2 m 程度の沈下量に軽減できた。腹付工直下の置換砂層の浅層では,過剰間隙水圧比が7)無対策と比べて減少した。そのため,地盤の有効上載圧の増加による液状化抵抗の増加によって,過剰間隙水圧が上昇し始める時刻の遅延,過剰間隙水圧が高い状態の8)継続時間の短縮が生じたことが腹付工の沈下抑制メカニズムとして考えられる。ただし,本実験条件は,加速度振幅が小さく継続時間が長い海溝型地震動を対象とした9)ため,腹付工の沈下抑制効果が大きく現れたと考えられる。また,沈下抑制の要因として,腹付工によりケーソ10)ンの振動が抑制されたこと,ケーソンが沈下する際に周辺地盤の盛上がりが腹付工によって押さえられたこと,といった要因も挙げられる。防波堤の地震被害は水平変位が小さいことが特徴であるが,腹付工により岸壁被害に類似した水平変位が無対策よりも大きくなることが分かった。既往の岸壁被11)考文献高橋重雄ほか 33 名 2011 年東日本大震災による港湾・海岸・空港の地震・津波被害に関する調査速報,港湾空港技術研究所資料,No. 1231, 200p., 2011.国土交通省港湾局防波堤の耐津波設計ガイドライン(一部改訂),p. 31, 2015.第三港湾建設局,神戸港湾震災復興事務所阪神・淡路大震災により被災した神戸港港湾施設の復旧設計,第27回管内工事施行技術研究会資料,174p., 1996.菅野高弘・宮田正史・三藤正明・稲垣紘史・及川 研・飯塚栄寿平成 7 年兵庫県南部地震時の港湾・海岸施設の挙動に関する研究,海岸工学論文集,第 43 巻, pp.1311~1315, 1996.震災予防協会強震動アレー観測,No. 3, 1998.野津 厚南海トラフの地震( Mw9.0 )を対象としたSPGA モデルによる強震動評価事例,土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol. 69, No. 4, pp. I_872~I_888, 2013.野津 厚・井合 進岸壁の即時被害推定に用いる地震動指標に関する一考察,第28回土木学会関東支部技術研究発表会講演概要集,pp. 18~19, 2001.大矢陽介・小濱英司・野津 厚・菅野高弘海溝型長継続時間地震動に対する砂質地盤上の防波堤沈下挙動に関する模型実験,港湾空港技術研究所資料, No. 1275,18p., 2013.稲富隆昌ほか 24 名 1995 年兵庫県南部地震による港湾施設等被害報告,港湾技研資料,No. 857, pp. 1208~1223, 1997.Iai, S.: Similitude for Shaking Table Tests on SoilStructureFluid Model in 1 g Gravitational Field, Report of thePort and Harbour Research Institute, Vol. 27, No. 3, pp.324, 1988.大矢陽介・小濱英司・菅野高弘・瀬戸口修造海溝型地震動に対する防波堤の沈下抑制に関する実験的研究,土,Vol. 70, No. 2, pp. I_930木学会論文集 B3(海洋開発)~I_935, 2014.(原稿受理2016.3.28)害例えば 9)では,水平変位はケーソン毎にばらつきがあるJuly, 201627
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  • 岸壁の存在が常時微動観測結果に及ぼす影響に関する-検討-焼津漁港の事例-(<特集>港湾で用いられている耐震技術)
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  • 鈴木 晴彦・眞鍋 俊平・永田 伸也・山田 能弘・長坂 陽介・野津 厚
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 28〜31
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71929
  • 内容
  • 報告岸壁の存在が常時微動観測結果に及ぼす影響に関する一検討―焼津漁港の事例―Characteristics of Microtremor Observed near Quay Walls―Example of Observation Records at Yaizu ˆshing port―鈴永木晴彦(すずきはるひこ)株応用地質地震工学センター田也(ながた伸しんや)眞坂陽介(ながさか港湾空港技術研究所ようすけ)地震動研究グループ. は じ め に地震動は,サイト増幅特性の影響で比較的狭い範囲で俊平(まなべ株応用地質山静岡県庁 交通基盤部都市局地域交通課(前所属 交通基盤部港湾局漁港整備課)長鍋田能静岡県庁野しゅんぺい)地震工学センター弘(やまだたかひろ)危機管理部危機対策課津港湾空港技術研究所厚(のづあつし)地震防災研究領域長ては岸壁等の法線から0.5~30 m 地点で測定を行った。図―に Yz7 における測定位置図を示す。また表―に設置状況を示す。も大きく変化することがある1)。サイト増幅特性を精度測定には,白山工業製の JU210 を用い,測定はサン良く評価するためには,中小地震の観測を行い,スペクプリング周波数 100 Hz で約 20分間行った。フーリエストルインバージョン法例えば 2))等経験的手法によって推ペクトルは,観測データをデータ長(163.84秒)の半分定することが有効である。しかし,広範囲の地域においの重複を許して分割し,区間ごとに 2 乗振幅の平均値て地震観測を面的に行うことは現実的には難しい。を求め,平均値の小さい 5 つの区間のデータを用いて一方,比較的安価に測定可能な常時微動データを用い算出した。スペクトルの平滑化には,バンド幅 0.05 Hzたサイト増幅特性の推定に関する研究は数多く行われての Parzen Window5) を用いた。区間ごとに水平動と上いる例えば 3) 。文献4) では,サイト増幅特性が既知である下動のスペクトル比を求め,5 つの区間のスペクトル比地点と未知である地点で常時微動測定を行い,微動 H/の相乗平均を求めた。V スペクトルを介してサイト増幅特性を推定している。港湾地域では,構造物の照査用地震動の評価に資する目的で,常時微動測定が積極的に行われている。その際,対象構造物が立地する地点のサイト増幅特性を正確に把握するためには,測定位置はできるだけ対象構造物に近いことが望ましい。しかしながら,一方で,岸壁等の構造物の極近傍で計測を行えば,取得されたデータに構造物の影響が表れる恐れがある。なお,ここで言う構造物の影響には,前面と背後の標高差に起因する地形効果や,堤体に作用する水圧の周期的な変動の影響等が考えられる。港湾地域での常時微動測定では,これまでも,岸壁等の構造物のごく近傍を避けて計測が行われてきているが,岸壁等からどの程度離れれば構造物の影響を無視できるのか等の検討はあまり行われていないのが現状である。このため,本稿では,静岡県焼津漁港において常時微動を測定し,岸壁付近で観測される常時微動の基本特性についての考察を行った。.焼津漁港における常時微動測定図―調査位置図国土地理院 HP測定は静岡県焼津漁港の 11 か所で行った。図―に観測点位置図を示す。このうち,Yz3, 4, 5, 6, 7 におい28( http: // maps.gsi.go.jp/# 15/ 34.861461 /138.328943)より作成地盤工学会誌,―() 報図―表―.告Yz7 における測定位置各観測点の設置状況岸壁付近で観測される常時微動の特徴. 低周波微動の卓越方向図―に Yz 4 及び Yz 7 における H / V スペクトルを示す(いずれも岸壁法線から30 m)。図の点線,黒実線及び灰色線は,それぞれ NS 成分と UD 成分のスペクトル比, EW 成分と UD 成分のスペクトル比及びスペクトル比の低周波数側( 0.2 ~ 0.5 Hz )における平均値図― Yz4 及び Yz7 における H/V スペクトル破線 NS / UD 実線 EW / UD 灰色線スペクトルが最大となる方向に直交する方向の水平動と上下動のス比の低周波数側における平均値の最大方向に直交する方向ペクトル比である。 Yz4 についてはどのスペクトル比の水平動と上下動のスペクトル比も概ね同じ形状を示しているが, Yz7 では周波数 0.25Hz における NS 方向と UD 方向の H / V スペクトルは,津漁港の地下構造を反映したピークであると考えられる。最大方向に直交する方向の H/V スペクトルの 2 倍程度しかしながら,これとは別に多くの地点で低周波数側にとなっており,振動方向によりスペクトル比の値が大きもピークが見られる。こちらのピークは,地点ごとにそく異なっていることが確認された。の傾向が全く異なっていることから地下構造を反映したすべての観測点の微動データについて,水平成分を 1°ものとは考えられず,図―に示した通りその卓越方向ごとに回転させてフーリエスペクトルを求め, H / V スが概ね岸壁直交方向となっていることから,構造物の影ペクトルの低周波数側( 0.2 ~ 0.5 Hz )における平均値響によるものと考えられる。すなわち,サイト増幅特性が最も大きくなる方向を求めた。図―にその頻度分布に対応するピークを抽出するという立場に立てば,低周としている。を示している。角度は岸壁直交方向を 0 °波数側のピークはノイズと判断される。多くの観測点において,岸壁直交方向のスペクトル比のここで, H / V スペクトルからサイト増幅特性に対応値が大きくなる傾向が現れている。このことは,常時微するピーク(この場合0.7 Hz)を抽出できるかという視動が構造物の影響を受けていることを示唆している。点で図―のデータを見ていくと,岸壁法線から 10 m図―には, Yz 4 及び Yz 6 における水平動のスペ程度以下のデータはノイズが多く,サイト増幅特性に対クトルの低周波数側における平均値が最大値を示す方向応するピークを抽出できない可能性が高い。これは,を示す。線の長さは,最大を示す方向とその直交方向の10 m 程度以下の観測点は堤体の直上が多いので(表―スペクトル(低周波数側における平均値)の比を表して),当然とも言える。しかしながら,それだけでなく,いる。最大値を示す方向は, Yz 4, Yz 6 ともに概ね岸岸壁法線から 20~30 m 程度離れた地盤上のデータであ壁直交方向となっていることが分かる。っても,岸壁直交方向の H/V スペクトルにはノイズが図―には,Yz3, 4, 5, 6, 7 における岸壁直交方向と多く含まれ,サイト増幅特性に対応するピークの抽出に平行方向の H/V スペクトルを示す。ここで,構造物のは不向きである。今回得られたデータからは,サイト増影響が最も小さいと考えられる 30 m のデータに着目す幅特性に対応するピークを抽出するためには,岸壁法線ると, 0.7 Hz 付近に共通のピークが見られ,これが焼から 30 m 程度離れ,かつ,岸壁平行方向成分に着目すJuly, 201629 報告図―H / V スペクトルの低周波数側における平均値が最大となる方向の頻度分布図―Yz4 及び Yz6 における H/V スペクトルの低周波数側における振幅が最大値を示す方向。図―岸壁直交方向と平行方向の H/V スペクトル線の長さは,各地点において水平動の低周波数側のスペクトルが最大を示す方向とその直交方向のスペクトル振幅の比を表しているる必要があると言える。. 岸壁法線からの距離と低周波微動の振幅の関係図―には,岸壁直交方向と岸壁平行方向のフーリエ振幅の低周波数側( 0.2 ~ 0.5 Hz )の平均値の岸壁法線30地盤工学会誌,―() 報告からの距離の関係を示す。岸壁平行方向のフーリエ振幅の平均値は,岸壁から離れるほど振幅が小さくなるが,岸壁直交方向については,必ずしも岸壁から離れるほど振幅が小さくはなっていない。岸壁直交方向の微動には岸壁法線から 30 m 離れても構造物の影響は残っているが,岸壁平行方向の微動にはその影響が小さくなっていると言える。すなわち,先に述べたように,サイト増幅特性に対応するピークを抽出するためには,岸壁法線から 30 m 程度離れるだけでなく,岸壁平行方向成分に着目する必要がある。図―は,岸壁法線から 30 m 離れた地点における岸壁平行方向の H/V スペクトルを重ね書きしたものである。これらのスペクトルからはサイト増幅特性に対応する0.7 Hz 付近のピークを検出できる。. まとめ静岡県焼津漁港において常時微動の測定を行い,岸壁付近で観測される常時微動の特徴について整理した。以下に,本測定で確認された事項を示す。サイト増幅特性に対応すると考えられる 0.7 Hz 付近図―岸壁平行方向と直交方向の岸壁法線からの距離の関係のピークのほかに,多くの地点で低周波数側( 0.2~0.5 Hz)にもピークが見られた。後者は地点ごとにその傾向が全く異なっており,その卓越方向が概ね岸壁直交方向となっていることから,構造物の影響によるものと考えられる。サイト増幅特性に対応するピークを抽出するためには,岸壁法線から 30 m 程度離れ,かつ,岸壁平行方向成分に着目すればいい。漁港等の岸壁付近で微動を測定し, H / V スペクトルの形状やピーク周波数を評価する場合には,水平成分のスペクトル形状の違いについて留意する必要がある。従来のように水平 2 成分の合成による H/V スペクトルに着目するだけでなく,座標回転を行い,岸壁平行方向成分に着目する必要がある。なお,本研究で対象とした岸壁においては前面と背後の標高差は概ね 10 m 程度であるため,今回得られた結果は「標高差の 3 倍程度離れ,図―かつ,岸壁平行方向成分に着目すれば良い」とも解釈で岸壁平行方向の H/V スペクトルきる。この解釈の妥当性については今後さらに検討する必要がある。また,今後は二次元振動解析等により岸壁等の構造物が微動に与える影響について定量的に把握する必要があると考えられる。. 謝辞2)3)測定の際には,焼津漁業協同組合及び小川漁業協同組4)合の方々にご協力いただきました。関係各位に感謝申し上げます。5)参1)野津July, 2016厚・長尾考文献く全国の港湾等の強震観測地点におけるサイト増幅特性,港湾空港技術研究所資料,No. 1112, 2005.岩田知孝・入倉孝次郎観測された地震波から震源特性,伝播経路特性及び観測点近傍の地盤特性を分離する試み,地震 2, Vol. 39, pp. 579~593, 1986.中村 豊常時微動計測に基づく表層地盤の地震動特性の推定,鉄道総研報告,Vol. 2, No. 4, pp. 18~27, 1988.長尾 毅・平松和也・平井俊之,野津 厚高松港における被害地震の震度再現に関する研究,海洋開発論文集,Vol. 22, pp. 505~510, 2006.大崎順彦新・地震動のスペクトル解析入門,鹿島出版会,pp. 95~102, 1994.(原稿受理2016.3.25)毅スペクトルインバージョンに基づ31
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  • タイトル
  • 破砕性堆積軟岩を母材に用いたベントナイト混合土による遮水層の効率的施工方法の実証実験(報告)
  • 著者
  • 磯 さち恵・木ノ村 幸士・森川 義人
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 32〜35
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71930
  • 内容
  • 報告破砕性堆積軟岩を母材に用いたベントナイト混合土による遮水層の効率的施工方法の実証実験EŠective Construction Method for Low Permeability Layer by Soilbentonite Mixture withFriable Sedimentary Soft Rock磯さち恵(いそ株大成建設木ノ村さちえ)原子力本部森川幸士(きのむら株大成建設義人(もりかわ株大成建設こうじ)技術センターよしと)原子力本部. は じ め に管理型廃棄物処分場等の遮水工は,厚さ0.5 m 以上かつ透水係数 10-8 m / sec 以下の粘土層や遮水シートの敷設 が 定 め ら れ て お り , 設 計 上 重要 な 構 造 体 要素 で ある1),2)。一般的に粘土層にはベントナイトの膨潤による遮水性を期待し,ベントナイト混合率 10 ~ 20 程度のベントナイト混合土が適用される場合が多い3),4)。ベントナイト混合土は,良質な現地発生土や購入砂を母材と図―従来法と本技術の施工プロセスの比較して使用することが品質確保の上で重要とされている。筆者らは,処分場建設時に大量発生する現地発生土の処理問題解決策の 1 つとして,破砕性堆積軟岩の特性を活かしたベントナイト混合土による遮水層の効率的施工技術について研究を進めており,堆積軟岩の破砕性を利用することによりベントナイト混合率 5でも要求性能を満足することを確認した5)。本稿では本技術の特徴及び施工プロセスについて述べ,実施工模擬試験の施工フロー及び施工性,品質確認試験の結果について報告する。図―.従来法と本技術の締固めメカニズム本技術の特徴本技術は図―の施工プロセスに示すように,脆弱なず,ある程度のベントナイトの量が必要となる。一方,破砕性堆積軟岩の破砕性を利用して,簡易破砕(一次破本技術は転圧締固め過程における現地発生土の破砕効果砕)のみを行った母材を用いてベントナイト混合土を製によって間隙を充填し密な骨格構造が形成されるため,造し,転圧締固めによる破砕(二次破砕)からなる 3ベントナイトで充填する間隙が減少し,少量のベントナ工程の施工プロセスによって密実な骨格構造を有する遮イトでも十分な間隙充填効果が得られると推察している。水層を構築できる特徴を有する。従来,ベントナイト混これは,本稿で報告する効率的施工技術における締固め合土の母材に現地発生土を使用する場合には,良好な締メカニズムのポイントとなっている。固め密度を得るために現地発生土を粒度調整プラントにて粒度調整した後,ベントナイト混合土の製造を経て転圧締固めを行う 4 工程となる。本技術では,混合土の.使用した材料の基本物性本研究で使用した材料の基本的性質を表―に,粒径製造から転圧締固めまでの施工プロセスを通して母材の加積曲線を図―に示す。ベントナイトは Na 型(クニ粒度改善を行うため,粒度調整プラントが不要となり従ゲル V1)を使用し,母材には脆弱な破砕性堆積軟岩で来の施工法よりも手順が省略され効率的に遮水層を構築ある新第三系鮮新統の仙台層群向山層(以下,泥岩と記することができる。図―に破砕性を活かした本技術のす)及び比較対象として山砂を使用した。密度試験では,締固めメカニズムを示す。従来法では,転圧締固めによ土 粒 子の 密 度 ( JIS A 1202 )と , 岩 塊 とし て の 密 度り形成された間隙をベントナイトが充填するため,ベン( JIS A 1225 パラフィン法)6) を調べた。泥岩の土粒トナイトの量が少ないと間隙を十分に埋めることができ子密度 2.59 g / cm3 に対し,岩塊としての密度は 1.44 g /32地盤工学会誌,―() 報告cm3 と非常に小さな値であり,含水比も高いことから本に新第三系鮮新統の泥岩は膨潤性粘土鉱物を多く含有す泥岩は内部に空隙を有していると想定される。また,メる場合が多く,乾湿繰返しにより細粒化する特徴を有しチレンブルー吸着量は 36 mmol /100 g であり,山砂( 8ており7),本研究で使用した泥岩も同様の傾向を示した。mmol / 100 g )と比較して非常に大きい値である。一般表―使用した材料の基本的性質.実施工模擬試験の概要実施工模擬試験の試験ヤードは,図―に示すように幅 3.1 m ×長さ 4.5 m の試験ゾーンが 2 面,試験ゾーンに振動ローラがアプローチするための砕石斜路及び振動ローラが試験中に一時退避可能な退避ゾーンを設置した。. 試験施工の手順図―に施工フローと試験の様子を示す。試験施工の 掘削ずりの破砕(一次破砕) ベントナイ,◯手順は,◯ まき出し・転圧締固め(二次破砕)ト混合土の製造,◯, 試料のサンプリングの手順で実施した。◯簡易破砕(一次破砕)泥岩の一次破砕には, 0.7 m3 バケットアタッチメント式の破砕機を使用した。バケット内に泥岩を入れた後,底部の破砕ドラムの回転により泥岩を所定の粒径以下に破砕する。一次破砕の最大粒径は40 mm 以下とした。ベントナイト混合土の製造ベントナイト混合土の製造では,投入から排出を一連図―の作業で行う移動式ユニットプラントを使用した。ベン粒径加積曲線図―図―July, 2016試験ヤード実施工模擬試験の施工フロー及び試験状況33 報告写真―転圧締固め前後の様子図―高さ測定より算出した乾燥密度図―一次破砕後と混合土製造後の粒度分布トナイト混合土はユニットプラント内のミキサで混練造粒するため,造粒時に母材同士の衝撃により混合過程においても破砕が進む。製造したベントナイト混合土は粒状体であり,まき出し時のハンドリング性が良く,均質性が確保される。転圧締固め(二次破砕)製造したベントナイト混合土を試験ヤードに所定量まき出し,レベル計測によりまき出し厚を確認した後, 4t 級振動ローラを使用して転圧締固めを行った。写真―より,転圧締固めにより泥岩が破砕され締固まっていることが確認できる。締固め管理は転圧締固め 1 往復ごとに高さをレベル計測し,目標乾燥密度が達成されるまで転圧を繰り返した。試験終了後はブロックサンプリングした試料を用いて施工後の品質確認を行った。.施工性及び品質確認試験の結果実施工模擬試験では,一次破砕の最大粒径及びベント図―転圧締固め前後の粒度分布ナイト混合率をパラメータとして実施した。なお 1 層の仕上り層厚は12.5 cm とした。本稿ではその中の一部. 品質確認試験の結果として最大粒径 40 mm の泥岩単体,同粒径の泥岩を母材としたベントナイト混合率 5及び10の泥岩混合土破砕性の評価一次破砕後と混合土製造後の粒度分布を図―に示す。(以下,泥岩混合土 5及び10と記す),比較としてベ混合土製造前後では粗礫分(粒径 19 mm 超)が 46 かントナイト混合率 10 の山砂混合土の結果について記ら 19 に減少し,中礫分(粒径 4.75 ~ 19 mm )が 32 述する。から 68 に増加している。これは,混合土製造過程に. 施工性の確認おいても泥岩が破砕されていることを示している。また図―に高さ測定により算出した乾燥密度の変化を示混合土製造後の粒径 2 mm 以下の減少が見られるが,ベす。目標乾燥密度は事前に締固め試験を実施し,泥岩混ントナイトを含むことによる小径土粒子の団粒化の影響合土は 1.2g /cm3,山砂混合土は 1.65g /cm3と設定した。が考えられる。次に,混合土製造後と転圧締固め後の粒泥岩混合土は各層で密度変化に大差はなく,ベントナイ度分布を図―に示す。泥岩単体では,転圧前後で粒度ト混合率によらず,いずれも転圧回数 2 回で目標乾燥分布が大きく変化していることが確認でき,層の上部が密度に達した。一方で泥岩単体は,転圧回数が 5 回でより顕著に破砕されていることが分かる。泥岩混合土 5目標乾燥密度に達したが,層の下部までは締固まってお及び 10 においても粒度分布が変化しており,締固らずブロックサンプリング時の自立性が乏しい状態であめによる泥岩の破砕効果が確認できた。また転圧によるった。また山砂混合土は,1 層目のみプレートコンパク破砕効果は,ベントナイト混合率が低いほど大きくなるタで転圧し, 2 層目及び 3 層目は 4 t 振動ローラで転圧傾向であった。なお山砂混合土は,転圧締固め後も粒度した。山砂を用いた場合,初期転圧時の転圧方法や転圧分布はほぼ一致しており,破砕性は確認されなかった。遮水性の評価速度の違いがその後の密度変化に多く影響を及ぼしたと考えられるが,いずれの層も転圧回数は 2~3 回で目標サンプリングした試料を用いて変水位透水試験6)を実乾燥密度まで達している。以上より,転圧締固め回数な施した。層内の透水係数の差を確認するために採取箇所どの施工性の観点から,本技術は従来法と遜色なく施工の上部と下部 2 種類の供試体で比較した。図―に透が可能であることが確認できた。水係数と有効粘土密度の関係を示す。ここで有効粘土密度とは,母材の体積を除いてベントナイトの乾燥密度を計算した値であり,ベントナイトの配合率に関わらず,34地盤工学会誌,―() 報図―透水係数と有効粘土密度の告図― 応力―ひずみ曲線関係単位体積当たりのベントナイトの量を統一的に評価できる指標である。泥岩単体は透水係数k = 10-7m / sec で用することを目的とした施工技術である。本研究で得られた知見を以下に示す。あり,泥岩混合土と比べ非常に大きい値であった。これ現地掘削土の破砕性を利用することにより,粒度調整はベントナイトを混合していないため層内の粘着力がなプラントで粒度調整をしない簡易な破砕のみで,転圧締くサンプリングしたブロックの自立が難しかったこと,固め時の破砕効果を利用することにより,低いベントナ締固めの均質性が得られなかったこと等が要因と考えらイト混合率でも良質な遮水層の施工が可能であることがれる。泥岩混合土 5 は k = 10-11 m / sec オーダー,泥分かった。本技術で使用した泥岩の場合には,破砕によk=10-11~10-12m/sec オーダーであっり構築された密実な骨格構造により,ベントナイト混合た。この結果より,ベントナイト混合率が 5であって率 5の低配合でも遮水層に要求される透水係数を十分も,ベントナイトの遮水性のみならず泥岩の破砕効果に満足する10-11 m/sec オーダーを確認できた。また粘着よる密な骨格構造の形成によってさらに遮水性が確保さ力 c′= 25 kN / m2 ,せん断抵抗角 q ′= 23 °以上を示してれ,山砂混合土 10 と同等な透水係数を有することがおり,山砂を用いた場合と遜色ない値の力学安定性と変できたと考えられる。以上より,本施工方法により要求形追随性が得られることが分かった。なお,本結果は母性能を満足する遮水層を構築できることが確認できた。材に新第三系鮮新統の仙台層群向山層を用いて実施した岩混合土10は変形追随性及び強度特性の評価地下水の回復による飽和状態における強度特性を調べ結果であり,今後は泥岩の種類や特徴に応じたベントナイト混合土の特性について検証する予定である。るため,ブロックサンプリングした試料を,直径 5 cm×高さ 10 cm にトリミングし,有効拘束圧 50, 200, 400謝辞にて圧密非排水三軸圧縮試験( CUb)6)を実施し本稿は,「環境省平成26年度除染技術実証事業」によた。なお泥岩単体は,試料の自立性が著しく欠如し三軸り実施した成果の一部です。ここに記して感謝の意を表圧縮試験用に採取できなかったため試験を実施していなします。kN /m2い。図―に各条件の応力―ひずみ曲線を示す。泥岩混合土はいずれも軸差応力が軸ひずみ 15 を超えた段階でも急激なひずみ軟化が見られず,ピーク値を示すこと参1)がなく応力がやや上昇する軽度なひずみ硬化型を示し残留応力が維持される変形追随性が確認された。また山砂2)混合土も,軸ひずみ 15 を超えた段階でも軸差応力がピーク値を示さず,応力が上昇するひずみ硬化型を呈しており,残留応力が維持される特徴を示した。強度定数3)= 25 kN / m2 ,せについて,泥岩混合土 5 は粘着力 c ′ん断抵抗角 q ′= 27 °,泥岩混合土 10 は c ′= 36 kN / m2,4)= 23°であり,ベントナイト混合率が大きいほど粘着q′力がやや大きく,せん断抵抗角はやや小さくなる傾向を5)=38 kN/m2,q′=35°で,泥岩示した。山砂混合土は c′混合土よりせん断抵抗力が大きい値を示した。. まと6)め7)本技術は,現地掘削土として発生した破砕性堆積軟岩の有効利用を目指しベントナイト混合土の母材として使July, 2016考文献総理府・厚生省令一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分に係る技術上の基準を定める命令,環境省令第三号2013. 2. 21.土木学会建設技術研究委員会 建設技術体系化小委員会遮水工ワーキンググループ管理型最終処分場の構造基準に適合した「遮水工の体系化」,2014.水野克巳最終処分場における 3 層構造しゃ水工システムの開発及び施工例,第 8 回廃棄物学会研究発表会講演論文集,pp. 824~827, 1997.小峯秀雄・緒方信英ベントナイト緩衝材・埋戻し材の透水特性と簡易評価法の提案,土木学会論文集, No.708/59,pp. 133~144, 2002.遠藤さち恵・森川義人・木ノ村幸士・藤原斉郁破砕性堆積軟岩のベントナイト混合土への合理的適用法の研究,大成建設技術センター報,Vol. 47, 2014.地盤工学会地盤材料試験の方法と解説―二分冊の 1―,2009.山口晴幸・黒島一郎・福田 誠スレーキングで破砕した泥岩の締固め特性,土木学会論文集, Vol. 418, 13, pp. 75~84, 1990.(原稿受理2016.1.12)35
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  • タイトル
  • 土層強度検査棒の調査方法と活用例(技術紹介)
  • 著者
  • 稲垣 秀輝・佐々木 靖人・太田 英将・谷川 正志
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 36〜37
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71931
  • 内容
  • 技術紹介土層強度検査棒の調査方法と活用例Investigation Method and Usage Examples of Soil Strength Probe稲垣秀輝(いながき株 環境地質太田英代表取締役将(おおた有 太田ジオリサーチ  佐々木ひでき)靖国立研究開発法人土木研究所ひでまさ)代表取締役  . は じ め に谷株応用地質川正人(ささきやすひと)地質・地盤研究グループ志(たにがわエンジニアリング本部上席研究員まさし)GMC センター長図―に示した崩壊地の右岸側で,崩壊斜面全体にわたる土層深を調査した。簡易動的コーン貫入試験の結果斜面表層崩壊は斜面崩壊の約 8 割を占めている。こによれば,深度 0.5 ~ 2.5 m から風化岩盤が分布し, Ndの表層地盤の深度や強度を簡易に調べる方法として土木値が 10 を超える。土層強度検査棒の貫入深度は,この研究所を中心に土層強度検査棒(Soil Strength Probe風化岩盤の上限分布域まであり,崩壊面の深さ, Nd 値( SSP))が開発された。その調査法( SSPT )と活用事>10とよく一致する(図―)。このことから,スコリ例を紹介し,多発する表層崩壊の予測や環境に配慮したア層直下の旧表土で表層崩壊が発生したと考えられる。対策工案について現状と今後の課題について報告する。ここに分布する崩積土,スコリア及び旧表土の C・q を.土層強度検査棒(土検棒)土層強度検査棒で求めると表―のとおりになり,スコ土層強度検査棒は,図―に示したとおり,先端がコーン形状で土層の貫入抵抗を直接計測できる他,先端をベーンコーンにすると土層や表土の力学強度(C・q)を同時に求めることができ(Vane Cone Shear Test( VCST )),斜面表土の安定性を評価することができる。また,機器は約4.5 kg と軽量で持ち運びが便利であるので,土層深を多点で設定して測定できる。図―には,土層強度検査棒で測定した土層深の分布例を示した。土層深と微地形がよく対応していることが分かる。.調査事例と対策工案. 調査事例2010 年 9 月 8 日に神奈川県北部で発生した土砂災害図―土層強度検査棒による土層深と微地形の関係1)の崩壊地について,土層強度検査棒により土層深を 24地点,土層強度は宝永スコリア層及び崩積土,旧表土を代表する C, D の 2 地点で調査を行った。また,土層強度検査棒による測定値と Nd 値との関係を確かめるために,両地点で簡易動的コーン貫入試験を行った。図―36土層強度検査棒の構成1)と試験の様子図―崩壊地の地質平面図3)地盤工学会誌,―() 技術紹介図―写真―鉄根打設工法の概念図と施工状況3)写真―鋼製有孔パイプによる盛土対策例4)土層強度検査棒による土層深と地質の関係3)表―土層強度の測定結果例(C 地点)3)リア層直下の旧表土の土層強度が最も小さく,ここですべりが発生した事実とよく一致する。盛土の安定性の確認調査においても,土層強度検査棒法である(写真―)。鉄根打設工法施工後,台風 8 号が利用されている。盛土の強度は,安定性評価のための等時間雨量 50 mm 以上の豪雨があったが,今のところ安定計算の最重要項目である。評価のための常時の安定表層崩壊はなく,効果を発揮している。計算は,順計算で行わねばならず,崩壊後対応時に用いまた,盛土では崩壊深度がやや深くなり,湧水によりる逆算法を用いることはできない。順計算のためには,繰返し崩壊する箇所がある。ここでは,鋼製有孔パイプ直接現地地盤から,粘着力と内部摩擦角の値を得ることを法面に打ち込む工法が用いられることが多い。この工が必要となる。法は,東海道新幹線が開通した直後に盛土の降雨時崩壊従来の土質調査法では,ボーリング調査を行い,不撹防止工法として開発されたものであり,低コストの工法乱試料を採取し,三軸圧縮試験等の土質試験により強度で,長い実績がある。近年は,鉄道のみならず道路の盛を計測する方法が一般的だったが,現状評価のための土土にも利用されてきている(写真―)。盛土表層部が,質調査では,そこまでコストをかけることは,難しいと施工後の風化等により細粒化し盛土本体と比べて相対的思われる。そこで土層強度検査棒を利用すると,短時に難透水層となっている場合に発生しやすい局部的な崩間・低コストで C・q の計測が可能となる。現在,土層壊防止にも,この鋼製有孔パイプは有効である。強度検査棒に間隙水圧測定装置等をオプションで装着する開発が予定されており,さらに,土層強度検査棒による盛土の安定性評価の精度が上がると期待している。.おわりに土層強度検査棒の技術普及並びに関連技術の開発を通. 対策工法じて,複雑な土質・地質に対する共通理解と調査精度の神奈川県北部豪雨災害後,隣接する箱根町の植林斜面向上を図り,信頼性の高い国土建設・管理に資すること)で,宝永スコリア層を主(幅 8 m,比高 4 m,勾配40°を目的として, 2016 年 3 月から著者らを中心として土体とした表層崩壊防止のために,土層強度を調査した。層強度検査棒研究会が発足予定であり,活動を始めていこの調査でも,土層強度検査棒の貫入深度は簡易動的る。この活動を通じて,さらなる土層強度検査棒の普及コーン貫入試験の Nd 値が10以上となる地点とよく一致や関連する技術開発に努めたい。している。また,宝永スコリア層の土層強度は,先述した神奈川県北部の崩壊地のものと近い値を示し,崩壊しやすい条件下にあると考えられた。このような結果から,当該斜面は表層を安定させる必要が高いと判断され,ここで,植林を残したまま斜面の表層崩壊防止工法を施工した。この工法は,森林の根系がもつ国土保全機能を維持したまま斜面の表土層を補強する工法である。細長い鉄製の有孔管を木の根のように配置することで,表土層の杭効果,緊迫効果を期待し,有孔ストレーナ加工をすることで吸水効果(間隙水圧の低減)を期待するもので,簡便で環境負荷も少ない。いわば,鉄製の擬似根系を作参考文献1)独 土木研究所 地質・地盤研究グループ土層強度検査棒による斜面の土層調査マニュアル(案),土木研究所資料第4176号,40p, 2010.2) 地盤工学会地盤調査の方法と解説,p. 1161, 2013.3) 下河敏彦・稲垣秀輝・小坂英輝・鵜沢貴文斜面表層の簡便な土層強度調査と対策工の提案―平成22年 9 月神奈川県北部豪雨災害の調査事例―,砂防学会誌,Vol. 65,No. 5, pp. 41~44, 20134) 地盤工学会防災・環境・維持管理と地形地質,p. 102,215, 2015.(原稿受理2016.3.17)るともいうべき工法で,「鉄根打設工法」と称される工July, 201637
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  • タイトル
  • 地盤工学と土壌学(寄稿)
  • 著者
  • 和田 信一郎
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 38〜39
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71932
  • 内容
  • 地盤工学と土壌学Geotechnical Engineering and Soil Science和田信一郎(わだ九州大学教授. は じ め にしんいちろう)大学院農学研究院野(昔の大学では講座)もまた,理学部ではなく農学部に設置されている。そして当然のことながら,農学部に私は大学の農学部を卒業,同じ大学の農学研究院を修おける土壌学という科目及び研究分野に期待される役割了して,農学部の教員を務めてきた。その間,何度も改は,第一に農業生産の基盤としての土壌についての教育組や改称があったが,基本的にはずっと農学系の学部,と研究を行うことである。大学院に所属した。専門は,一応土壌学である。一応,その期待に応えて,日本の土壌学は日本の農業(特にというのは,学部や大学院の組織の中では「土壌学」と水稲作)に大きな貢献をしてきたことは言うまでもない。いう研究分野を担当しているので,そのように自己紹介例えば窒素,リンなどの養分の動態の解明とそれに基づすることが多いというような意味である。実際の専門は,く合理的な施肥技術の開発などである。しかし土壌学で「鉱物学と地球化学と土壌学と地盤工学のミックス」とは,そのような農業技術志向の研究にも増して,非常にいう感じであり,研究のステージによって,日本の学会基礎的な理学志向の研究が精力的に行われてきた。例えでは,日本化学会,地球化学会,日本水環境学会,日本ば,土の構成物質の性質,構造,生成機構などに関する土壌肥料学会,日本粘土学会,地盤工学会,土木学会,研究,土壌微生物生態系の構造に関する研究などである。日本鉄鋼協会などに参加し,発表などを行ってきた。そしてそれは現在も進行中である。その時々の研究の性格に応じて発表の場を変えてきたこれらの研究の発表の場となっている日本土壌肥料学ので,学会運営に深くかかわったことはない。ただ,日会も,上述のような性格を反映している。同学会は 9本土壌肥料学会,日本粘土学会,そして地盤工学会ではの部門から構成されているが,第 1 部門は「土壌物理」,委員会の委員などを務めるなどしたことがある。最も会第 2 部門は「土壌化学」,第 3 部門は「土壌生物」であ員期間が長く,関わりが深かったのは日本土壌肥料学会る。農業技術志向の部門はわずかに,第 6 部門の「土であるが,心情的にはどの学会とも等距離である。この壌肥沃度」,第 7 部門の「肥料・土壌改良資材」があるようなバックグラウンドを持つ者からみると,地盤工学のみである。理学としての土壌学( Soil Science )の学と土壌学は,いずれも土を扱いながら,ずいぶん大きな会に,農業技術志向の部門が付置されている,といった性格の違いがあるように見える。だからどうなの,とい趣である。このような雰囲気は,アメリカ土壌学会でもうほどの重要事ではないかもしれないが,寄稿の機会を同様である。いただいたので,このことについての私見を地盤工学会一方,地盤工学に関する研究発表の場である地盤工学の方にお伝えしたい。ひょっとしたら,地盤工学(地盤会では,部門制に相当するものはないが,研究発表会の工学会)の今後の発展のために何か参考になるかもしれないと思われるからである。.土壌学という学問分野の妙な性格本題に入る前に一つお断りしておきたいことがある。セッションは,「調査・分類」,「地盤材料」,「地盤挙動」,「物質移動」,「地盤と構造物」などであり,明らかに工学志向である。もちろん地盤工学会でのこれらのセッションの中では理学的な研究成果の発表も行われるが,基本は工学であることが明確である。本稿の表題は「地盤工学と土壌学」と大きなものになっ土壌学において理学的な研究が相対的に多くなった理ているが,実際には,「主として日本の地盤工学と土壌由は,地質学や地球科学などの理学分野では,歴史的に学のうち,土関連部分の比較」という性格が強い。この土が研究対象とされることがほとんどなかったことが原ことを念頭においてお読みいただきたい。因の 1 つであると考えらえる。例えば,植物養分の土さて土壌学であるが,「土壌学」という学問分野の名中での挙動を理解しようとすると,土の構成成分の性質称は,それが「工学」というより「純粋科学」であるこを理解することが必要であるが,その情報を地質学や地とを暗示する。土壌学に対応する英語は Soil Science で球科学のような理学分野の研究から横流しすることはであるが,それは文字通り Science であり, Engineeringきず,土壌分野の研究者が自らそのような研究も行う必とは明確に区別された名称になっている。しかし日本の要があったのではないかと思われる。そしてその勢いが大学においては,土壌学という科目は例外なく理学部で余って,農業の基盤としての土壌の理解には必ずしも必はなく,農学部で開講されている。土壌学という研究分要でない,土の構成物質の分子,原子レベルでの構造や,38地盤工学会誌,―() 寄それらの生成機構などもカバーするように発展したのではないかと思われる。理由は前述したほど単純ではないかもしれないが,土稿たように思えるのである。.地盤工学(マインド)の出番壌学は工学的な性格が薄く,理学的な性格が驚くほど濃現在の日本農業は大きな変革期にある。以前は,農業い。そしてそれが応用科学である農学の 1 分野としての環境負荷というようなことは考える必要もなかったが,存在している,という妙な性格を持っているように思え今では農地からの二酸化炭素,一酸化二窒素,メタンなる。どの温室効果ガスの排出などは大きな問題と認識され,.地盤工学と土壌学の違いそれらの排出量を減らすような農地管理技術が求められている。養液栽培においては,膨大な量の「廃液」が生地盤工学の土関連分野では,主として土の力学的性質まれる可能性があり,その処理及びリサイクル技術も必が研究課題であった。その研究において,土の構成物質要である。そして何よりも,(国際的な)競争に耐えうの性質や構造に関する詳細な知識を,理学分野から横流る品質,価格の達成が以前よりも強く求められるようにしできなかった点については土壌学と同じである。しかなっている。これらを達成するためには,適切な計測技し,地盤工学では,そのような基礎的,理学的な研究に術と,それに基づいた農地などの管理技術が必要である。は深入りせず,一貫して工学的なアプローチに重きを置また,農地を,様々な産業で生み出される各種有機,無いてきたように思える。地盤工学研究発表会のセッショ機副産物のリサイクルの場として活用することも必要でンの構成にもそのことがうかがえる。ある。地盤工学の工学志向を示す好例として思い浮かぶのは,不幸にして,土の構成物質や土壌微生物の全貌は理解粘性土の液性限界や塑性限界の試験法である。私は,大されていない。それを明らかにする理学的な研究も必要学院生の時に他学部で土質力学の講義を受けた。既に土であろうが,取り敢えず,現在理解されていることのみ壌学を学び,土の構成物質の構造や性質に基づいて土のに基づいて,土壌を管理していくための技術を改良して巨視的な性質を理解する,という土壌学のアプローチにいく必要があり,そしてそのためには計測技術とその規親しんでいた私には,あのカサグランデの装置を用いた格化が重要である。そしてこれらは地盤工学の得意分野試験や,ガラス板状でのヒモ試験によって操作的に定義である。地盤工学,少なくとも地盤工学マインドの出番される液性限界や塑性限界という概念に驚いた。また,であるように思われる。その測定値が土質構造物の設計に利用されているということには,それにもまして驚いた覚えがある。平成 21 年度には農地法が改正され,企業や法人が,日本全国どこでも参入することが可能になった。建設会地盤工学のこのようなアプローチは好ましいものであ社が農業に参入する事例も珍しくない。農業と,農業のったように思われる。地盤工学の研究者や技術者は,土基盤である農地の管理は,地盤工学マインドとの相性がの微粒子がどのような物質から成っており,それぞれがいい。地盤工学研究発表会のセッションに,「農地土壌どのような構造をもっているかについてはよく知らない管理技術」というようなものを設けるということも,あけれども,土の巨視的な性質を定量的に把握するためのながち突拍子もないことではないような気がするのであ規格化された試験法をもっており,それに基づいてどのる。ような地盤上にも高層ビルを建てることができるように日本には,日本土壌肥料学会や農業農村工学会(旧農なった。一方土壌学者は土の構成物質や微生物について業土木学会)など,農業,農地管理と密接に関係した学かなり詳細な知識を有し,さらにそれを深化させようと会が既に存在する。しかし,土壌学分野の研究者は技術しているが,農地の(化学,生物学的)管理のための試志向が(私の偏見かもしれないが)弱い。農業土木分野験の規格化や,それに基づいた土壌管理のための技術パの研究者はそうではないが,対象が農業土木構造物中心ッケージの構築には成功していないように思える。である。土そのものを対象にした,技術志向の研究者やもちろんそれには,農業の主たる担い手が,究極の零その団体は,意外にも存在しないように思える。細企業である農家であった,というような事情も大きくやはりここは地盤工学の出番ではなかろうか。影響してきたであろう。しかし,土壌学の性格も影響しJuly, 2016(原稿受理2016.4.18)39
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  • タイトル
  • 箕面森町における大規模盛土工事の施工及び管理
  • 著者
  • 友部 遼
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 40〜41
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71933
  • 内容
  • 箕面森町における大規模盛土工事の施工及び管理Geohazard Countermeasures for the LargeScale Embankment in MinohShinmachi City友部遼(ともべはるか)学生編集委員(京都大学農学研究科). は じ め に箕面森町は,箕面市の北部丘陵に建設中のニュータウンです。箕面市は大阪府北部に位置し,大阪市中心部への通学・通勤圏内でありながら箕面滝に代表される豊かな自然景観を有しています。箕面森町は,そうした緑豊かな箕面市の北部丘陵に建設中のニュータウンであり,施行地区面積は 313.5 ha ,計画人口・戸数はそれぞれ9 600 人・ 2 900 戸に及ぶ大規模な土地区画整理事業です 1) 。箕面森町の建設は,大阪府を事業主体とした特定土地区画整理事業として進行中です。事業施工期間は平成 8図―年度から平成 35 年度(清算期間を含む)となります。箕面森町第三区域の平面図平成 27 年度現在までには,既に「まちびらき」が行わとどろみれ,止々呂美東西線などの主要幹線道路の開通,路線バスの運行開始,小中一貫校や幼・保一体型こども園の開園が完了しています1)。.大規模造成に伴う防災計画の策定箕面森町は箕面市北部の丘陵に位置するため,その造成にあたっては山地地形の造成を伴う大規模な切盛土が必要とされたため,地盤災害を防止するための対策が必要となりました。特に,箕面森町第三区域(図―)の地盤造成において,谷地では 40 m を超える,国内でも例の少ない大規模な盛土を行う必要が生じました。こうした大規模な盛土にあたり,地盤沈下,液状化や地すべりを防ぐために平成 6 年に地盤や地質の専門家を擁する「防災検討委員会」が発足され,施工方法や地盤品質など徹底した専門技術的な検討を行い,「防災計画書」が策定されました2)。. 解 決 方 法「防災計画書」に基づき,以下の徹底した地盤防災対策が講じられています。図―箕面森町第三区域南西部に位置する盛土法面の縦断図. 安定した盛土法面形状最新の「宅地防災マニュアル」に基づき盛土法面を造成し,将来ダムが設置された際の水の影響や大規模地震動(震度 6弱)にも対応可能な設計がなされています2)。. 恒久防災対策大規模な盛土工においては,谷筋に滞留した地下水の水圧により盛土が不安定化する危険性があります。そこまた,盛土法面は盛土のゾーニング(図―)を行うとで,地下水を速やかに排水するため種々の対策がなされともに,締固めを適切に行い,かつ勾配を緩やかにするています。具体的には,地中に吸水暗渠工,支線暗渠工,ことにより,法面の崩壊を防いでいます2)。幹線暗渠工,防災配水管を張り巡らし(図―),谷地に集まる地下水や雨水を迅速に排水することで,地盤沈40地盤工学会誌,―() 寄写真―稿動態観測点の設置状況。観測点の保護のため,周囲に土を盛っている図―盛土底部に張り巡らされた吸水暗渠工,支線暗渠工,幹線暗渠工及び防災配水管写真―第一区域中央部に位置する近隣公園より俯瞰した箕面森町測データから,盛土はその完成から,概ね 2~3 年で変写真―盛土施工現場及び振動ローラーによる盛土の転圧状況。右前方に見えるのは竪排水管位が収束し,安定すると予測されています。.おわりに下や液状化,地すべりを防いでいます2)。また,基礎地箕面森町では,新たな町で多くの方々が暮らしはじめ盤表面を改良し階段状とすることで,基礎地盤表面でのていました。また,分譲にあたっては,多様な世代の住すべりを抑制しています。む町としての発展を目指した計画的な分譲が進められて. 高品質な盛土施工います。箕面森町の周囲にはオオタカの営巣や国蝶であ均質で高品質な盛土地盤を造成するため,盛土材の区るオオムラサキの生息が確認されるなど,豊かな自然に分を行い,試験により締固め回数の検討や密度管理を行囲まれており,まさに「森町」の名に相応しい景観を有うことで,適切な盛土施工と品質管理が行われています。しています(写真―)。盛土に使用される材料は,箕面森町周辺で採取される切最後に,本稿の執筆にあたり,年度末のご多忙の中,土が使用されており,土質に応じた適切な転圧が行われ大阪府箕面整備事務所の早坂毅様をはじめとする関係ることで(写真―),均質で高品質な盛土地盤を造成者の皆様には,資料のご提供や現地のご案内など,多大しています2)。なるご協力を賜りました。ここに感謝の意を表します。. 長期にわたる盛土の動態観測大規模な盛土工にあたり,施工時から継続的に動態観測が実施されています(写真―)。施工中や施工後の盛土の動態を把握するため,長期にわたる沈下計測,水位計測,傾斜計測を実施し,データを基に災害に対する安全性が確認されています2)。また,これまでの動態観July, 2016参考文献1)大阪府箕面整備事務所箕面森町(水と緑の健康年特定土地区画整理事業)事業の概要,pp. 1~4, 2015.2) 大阪府箕面整備事務所箕面森町第 3 区域の地盤造成,pp. 1~6, 2014.(原稿受理2016.4.28)41
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  • タイトル
  • 第1回次世代イニシアティブ廃炉技術カンファレンス(NDEC-1)開催報告(学会の動き)
  • 著者
  • 後藤 茂
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 42〜42
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71934
  • 内容
  • 第回次世代イニシアティブ廃炉技術カンファレンス(NDEC1)開催報告Report of The 1st Conference for R&D Initiative on Nuclear Decommissioning Technologyby the Next Generation後藤廃炉地盤工学委員会幹事長茂(ごとう早稲田大学しげる)理工学研究所招聘研究員. は じ め に本カンファレンスは,文科省委託事業「英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業廃止措置研究・人材育成等強化プログラム」に採択された東北大学,東京工業大学,東京大学,福島大学,福島工業高等専門学校,福井大学,地盤工学会の 7 機関が人材育成を目的として共同開催した学生を主体とした廃炉関連技術に関する研究発表の場である。地盤工学会は 2014 年度から「福島第一原子力発電所汚染水問題に関する会長特別懇談会(委員長東畑郁写真―カンファレンスの風景生・地盤工学会会長)」が主体となり,事故を起こした福島第一原子力発電所の廃止措置に対する地盤工学的技デブリの性状把握・計測に向けた研究状況」が行われた。術の貢献方法等を検討してきたが, 2015 年度に上記事続いて採択 7 機関の学生により,オーラルセッショ業に正式採択されるに当たり,会長特別懇談会を発展的ン 31 件,ポスターセッション 21 件,合計 52 件の発表がに解消し,新たに「福島第一原子力発電所廃止措置に向あり,地盤工学会関連では,早稲田大学地盤工学研究室けた地盤工学的新技術と人材育成に関する検討委員会から 2 件の研究発表「粗粒材と粘性土で構成される覆(略称廃炉地盤工学委員会)」を組織し,本格的な検討土式遮水構造の設計に向けた層構造試料の吸水・膨潤特を行ってきた。.廃炉地盤工学とは性評価尾崎匠」,「放射線遮蔽性能を有する超重泥水の透過厚さによる線量低減効果の評価吉川絵麻」が行われた。地盤工学会における検討の主意は,福島第一原子力発これらのセッションと並行し,採択 7 機関及び電電所の廃止措置における地盤工学的技術の活用促進とそ力・重工・エネルギー・建設関連企業など,産業界かられを担う人材の育成であり,そのための「廃炉地盤工学」23 件のポスター展示が行われた。発表終了後は,優秀創設を目指している。「廃炉地盤工学」とは原子力発電発表の表彰式を兼ねた懇親会が開催され,学生及び社会所における廃止措置の過程毎に,活用が期待できる地盤人約120名の参加があり,産業界と学生の賑やかな交流工学的技術を「学問単元」を軸として整理することで,風景がみられた。各過程での地盤工学的技術の位置付けや要求性能等を明確にしようとするものである。これにより,人材育成になお,次回は 2017 年 3 月上旬に東京工業大学で開催される予定である。おいて,実効的な教育の基盤になることが期待される。福島第一原子力発電所の廃炉事業は,電力・エネル 地盤力学,◯ 地盤ただし,ここでいう学問単元とは,◯ギー・重工分野の機関・企業が主体となり,進められて 地盤材料学,◯ 地盤施工学である。環境学,◯いる印象が強かったが,汚染水処理問題などに見られる.カンファレンス開催報告とおり,地盤工学的技術が貢献可能な場も数多くあることが認識されつつある。そのためには,地盤工学関連技第 1 回のカンファレンスは, 2016 年 3 月 16 日に東北術者が専門の土木・建設関連分野のみならず,原子力な大学の青葉山記念会館他で開催され,参加者は 226 名どの他分野と情報や認識の共有を図る必要があり,この(うち,学生91名)であった。同会議では,実行委員会ような異分野との交流が期待できる今回のようなカンフ代表や来賓の文科省大臣官房審議官の挨拶の後,山名元ァレンスに積極的に参加することの重要性が強く認識さプログラムディレクター(NDF)の基調講演「原子炉れた。廃止措置人材育成の重要性と今後の展望」と 2 件の招(原稿受理2016.4.27)待講演「 IRID における廃炉技術研究の現状」,「燃料42地盤工学会誌,―()
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  • タイトル
  • 北海道支部創立60周年記念行事開催される(学会の動き)
  • 著者
  • 林 憲裕・川口 貴之
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 43〜44
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71935
  • 内容
  • 『北海道支部創立周年記念行事』開催される林憲裕(はやしとしひろ)実行委員会 記念式典・記念講演 WG 主査国立研究開発法人土木研究所寒地土木研究所.川口貴之(かわぐちたかゆき)地盤工学会北海道支部平成27年度幹事長北見工業大学工学部北海道支部の記念事業について北海道支部は, 2016 年 1 月 23 日に創立 60 周年を迎えた。当支部は 1956 年(昭和 29 年) 1 月 23 日に土質工学会(当時)北海道支部として発足したが,これは 2015年に 60 周年を迎えた東北支部に次いで 2 番目の早さである。創立60周年を記念し,4 月22日(金)にホテル札幌ガーデンパレスにて記念式典及び記念祝賀会を開催した。.記念式典及び記念祝賀会記念式典には,来賓として,東畑郁生会長(執筆当時),西本俊晴北陸支部事務局長,伊東佳彦日本応用地質学会北海道支部長の参加があり,他にも歴代支部長の方々を写真―記念式典会場の様子写真―60周年記念特別表彰はじめ,多くの会員の参加があった。田中洋行記念事業実行委員長の挨拶に引き続き,東畑会長より来賓としての挨拶をいただいて記念式典が始まった(写真―)。続いて,支部の活動や北海道における地盤工学の発展に功績のあった 10 名の方に支部創立 60 周年記念特別表彰が授与された(写真―)。山下聡記念事業実行委員会副委員長より特別表彰の趣旨と表彰者の略歴を紹介した。表彰されたのは,池田晃一氏,神谷光彦氏,鈴木輝之氏,武田覚氏,谷藤和三氏,西川純一氏,能登繁幸氏,八戸裕氏,三浦清一氏,三田地利之氏の 10 氏(五十音順)で,お一人ずつ受賞後に挨拶をいただいた(写真―)。特別表彰に引き続き,東畑会長による「会長としての二年間の業務」と題する記念講演が行われた(写真―)。講演では,大きく分けて 2 つの話題についてご講演いただいた。1 つめは,学会の運営に関することで,近年の会員数の増減やその年齢構成,また,それに大きく関係する危機的な学会の財政状況について,その要因分析とこれまでに取り組んできた対応策について詳しく説明があった。なお,この話の締めくくりには,学会として収益の期待できることを優先するのは当然ではあるが,収益が期待できなくても,やらなくてはならない事柄は確実に存在し,社会に貢献することが重要である,そして,建設の社会に閉じこもっているのではなく,学会から直接一般社会に情報を発信していくべき,とのご発言があった。また, 2 つ目は,4 月に起こった熊本地方の写真―特別表彰者の挨拶地震に関連して,東畑会長ご自身が現地調査を実施された内容について,被災状況の概要と,ご自身の見解を含めながら今後の課題についてご説明いただいた。July, 201643 学会の動き写真―東畑会長による記念講演写真―記念祝賀会の開会の様子記念式典の後には記念祝賀会が行われた(写真―)。来賓として,西本北陸支部事務局長からご挨拶(写真―)をいただいた後,山下実行副委員長の乾杯により,写真―西本北陸支部事務局長による来賓挨拶写真―歴代支部長の挨拶三唱によりお開きとなった。.おわりに祝賀会が始まった。西本北陸支部事務局長からは,北陸記念事業の重要な業務に記念誌の編集・発行がある。支部の現状と活動内容について,特に,ダイバーシティ記念誌は,過去 10 年間の活動の記録や特別寄稿などのの実現と女性会員の技術力向上を目指して結成されたほか,今回の記念式典・祝賀会の概要も併せて編集し,「雪割り草の会」のご紹介や,立山砂防に関連して災害地盤工学会北海道支部ホームページにて掲載している。協定を締結したことなどについてお話しいただいた。まご興味のある方は是非 HP をご覧いただきたい。た,祝賀会の途中には,歴代支部長である坂上孝幸北海以上のように,無事に創立 60 周年記念事業を終える学園大学名誉教授,土岐祥介北海道大学名誉教授よりスことができた。これもお忙しい中ご出席いただいた来賓ピーチをいただき,東畑会長をはじめ参加者全員が懇親の方々をはじめ,支部会員の絶大なる支援の賜であり,を深めた(写真―)。ここに深謝の念を表したい。 60 年の歴史の重みを感じ記念式典には 90 名,記念祝賀会には 68 名の出席があった。会員相互の交流を深めるとともに,今後の支部活動の活性化などを語り合ううちに時間が瞬く間に過ぎ,つつ,今後の支部活動がより一層社会への貢献を果たせるよう,これからも努力して参りたい。(原稿受理2016.5.13)廣長周治平成 28 年度地盤工学会北海道副支部長の万歳44地盤工学会誌,―()
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  • タイトル
  • 第6回日台地盤工学における自然災害に関する国際ワークショップの開催報告(国際活動から)
  • 著者
  • 国際地盤工学会アジア地域技術委員会ATC3 (Geotechnology for Natural Hazard)
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 45〜46
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71936
  • 内容
  • 第回日台地盤工学における自然災害に関する国際ワークショップの開催報告国際地盤工学会アジア地域技術委員会 ATC3 (Geotechnology for Natural Hazard)2014 年 7 月 12 ~ 15 日に日台ジョイントワークショップ(自然災害に関する国際ワークショップ)が北九州市が多い国からの参加もあり,合計101名の参加者があった(写真―)。の北九州国際会議場で開催された。日本の地盤工学会と今回のワークショップは,多くの海外参加者が北九州台湾の地盤工学会の共催で開催された本ワークショップ市で 7 月 15 日~ 17 日に開催された第 49 回地盤工学研究は第 6 回大地震と豪雨による地盤災害に関する合同発表会に参加できるように,大会前日を開催日とした。ワークショップで,ワークショップの主催は国際地盤工また,研究発表会の初日( 15 日)にワークショップの学会アジア地域技術委員会 No. 3 (ATC3)である。二日目の特別セッションが同じ会場で実施された。ATC3 は,地盤工学における自然災害を対象としてATC3 の委員長である風間基樹教授の挨拶で始まっいる国際地盤工学会( ISSMGE )のアジア地域の技術たワークショップの開会式では,石原研而教授(ATC3委員会で,アジア地域の自然災害における防災・減災にの初代委員長),國生剛治教授(元 ATC3 委員長),安関する技術的な情報収集等の共有を目的として活動を行田進教授(元 ATC3 委員長), Chen 教授(台湾国立大っている。学),Lin 教授(台湾国立海洋大学),安福規之教授(九日本と台湾は地震や台風の多さや急峻な地形・地質な州大学)が挨拶した(写真―)。ど自然条件がよく似ており,地盤災害の多さも共通してワークショップの一般発表及び特別セッションでは合いる。このような背景から, ATC3 の主催で日本と台計88編の論文が発表された(写真―)。それ以外,以湾が 2 年に 1 度国際ワークショップを実施し,これら下に示す基調講演と特別講演が行われた(写真―)。の地盤災害の減少に向けて技術・研究情報の交流を行ってきた。第 6 回合同国際ワークショップでは日本と台基調講演湾以外に中国,韓国,マレーシア,インド,ネパール,若井明彦教授(群馬大学)カザフスタン,インドネシアなどアジア地域で自然災害Initial trigger for slope failures in volcanic ash layer of写真―写真―July, 2016ワークショップ参加者風間基樹教授(左)と石原研而教授(右)による開会の挨拶写真―セッションの様子45 学会の動き若井明彦教授(左)と T. S. Ueng 教授(右)の基調講演写真―写真―Students and Young Researcher Interaction セッションDr. Wei F. Lee(台湾)A case study on silty sandliquefaction本ワークショップで学生と若い研究者の交流を深める目的で,``Student and YoungResearcher Interaction Ses写真―東畑郁生教授(左)と Y. S. Fang 教授(右)の閉会の挨拶sion'' が実施された(写真―)。 2 分間の口頭発表後にランチブレイクの時間を利用してポスター発表を行うことにより充実した研究討論ができたと感じた。ワークショップの閉会式では台湾地盤工学会の会長Y. S. Fang 教授,地盤工学会会長東畑郁生教授より閉会の挨拶があった(写真―)。ワークショップの懇親会が14日に北九州市の門司港で行われた(写真―)。若い研究者をエンカレージするため,ベスト発表者賞を設 け る こ と に な り , 台 湾 国 立 大 学 の Ms. Zih Fang写真―懇親会の様子(北九州市門司港)Wang が選ばれた。ワークショップの前々日( 12 日)に 2012 年九州北部豪雨災害の復旧工事の視察があった。熊本県坂梨地区で砂防ダムによる土石流対策と国道 57 号の斜面災害復旧状 況の見 学に 国内 ・外 から 38 名 の見 学者 が参 加し た(写真―)。本現場見学について地元の新聞(西日本新聞)でも大きく取り上げられ,地盤工学会の社会貢献を国民にアピールできたと思われる。本ワークショップの運営に当たり,北九州市からご支援をいただいた。実行委員会を代表して深く感謝の意を表したい。Post workshop proceedings は ``Geotechnical Hazards写真―現場見学(坂梨砂防ダムの前)from Large Earthquakes and Heavy Rainfalls'' という名前 で 2016 年 の 秋 に Springer 社 か ら 出 版 さ れ る 。hillside surface in IzuOshima Island in Japan due to aProceedings のすべての論文が国内・外から選ばれた 2typhoon rainfall in 2013名の査読者により査読された。Prof. TzouShin Ueng(台湾)本ワークショップは,研究発表や情報交換により自然Some observations in experiments on liquefaction of災害に関する研究・実務の質向上と防災・減災への貢献sandを目指したものであり,継続が必要不可欠である。次回特別講演高橋英紀氏(港湾空港技術研究所)Bearing capacity of breakwater mound under tsunamiinduced seepage ‰ow46のワークショップは2016年の 9 月に台湾の Pingtung 技術科学大学で開催される予定で準備が進んでいる。(文責ハザリカヘマンタ九州大学)(原稿受理2016.3.30)地盤工学会誌,―()
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  • 橋口公一会員「平成28年度科学技術分野の文部科学大臣表彰研究部門」を受賞(国内の動き)
  • 著者
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 47〜47
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71937
  • 内容
  • 橋口公一会員「平成年度科学技術分野の文部科学大臣表彰研究部門」を受賞橋口公一(はしぐちこういち)株 技術顧問(九州大学名誉教授)MSC ソフトウェアこ の 度 , 平 成 28 年 度 科 学こで,現応力点を通って降伏面に相似な下負荷面を導入技術分野の文部科学大臣表彰し,下負荷面が降伏面に近づくにつれて塑性ひずみ速度「研究部門」を受賞致しましが発達する自然な仮定に基づいて,降伏面の内部の応力た。受賞対象業績は「固体の変化による塑性変形を合理的に表現する“下負荷面モデ非可逆力学現象の支配法則のル”を提案しました。定式化に関する研究」です。下負荷面モデルによれば,金属,土を含む広範な固体前世紀中葉に機械振動や地の繰返し負荷,非比例負荷を含む多様な変形現象を高精震動に対する機械・土木・建度で表現でき,加えて高効率な数値計算が可能です。な築構造物の変形予測を目指しお,本モデルは,弾塑性変形に加えて,粘塑性,損傷,て,繰返し塑性モデルの究明疲労・破壊,相変態現象,さらには摩擦現象や結晶塑性の火蓋が切られて以降,半世解析へも広範に活用されており,本モデルは固体の非可紀に亘って熾烈な戦いが繰り返され,移動硬化の概念に逆力学現象の支配法則とみなされます。基づいて多面,二面,重合せ移動硬化モデル等,多くの先述の移動硬化の概念に基づくモデルは,早晩淘汰さモデルが提案されて来ました。しかし,これらは,弾性れる運命にあり,下負荷面モデルにより,今後,弾塑性域を囲む降伏面を仮定するので,降伏面の内部の応力変力学をはじめ非可逆固体力学は,盤石な発展に向かうと化による塑性変形を表現できず,また,降伏判定や応力確信されます。本モデルの創出により,固体力学の歴史の降伏面への引き戻しの煩雑な作業が求められます。そに足跡を残せたことに大きな誇りを感じています。秦吉弥会員「平成年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞」を受賞秦大阪大学吉弥(はた大学院工学研究科よしや)助教こ の た び , 平 成 28 年 度 科し,地震動波形の事後推定を簡便かつ高精度で実施する学技術分野の文部科学大臣表ための全く新しい方法論(サイト特性置換手法など)の彰若手科学者賞を受賞いたし開発及び検証・適用を,様々なタイプの地震(内陸地殻内ました。このような栄えある地震・海溝型地震・スラブ内地震)に対して行いました。賞を頂き,大変光栄に存じま今日,大規模地震による被災地では,ボーリング調査す。受賞対象業績は,「大規などのいわゆる静的な地盤調査が実施されるのが一般的模地震時に被災地点に作用しです。このような調査の実施を全く否定するものではあた地震動の評価に関する研りませんが,大規模地震時に被災地に作用した地震動の究」です。推定が重要であることが本研究成果により正しく理解さ大地震発生後の早い段階にれ,臨時余震観測や常時微動計測などのいわゆる動的なおいて,被災の生じた地点で地盤調査についても被災地で当たり前のように実施されの地震動を推定することは,被災メカニズムの解明や設る日が近いうちに来ることを望んでいます。計手法の検証などを行う上で大変重要です。その際,地最後に,紙面の都合により一人一人のお名前を記載す震動は著しいサイト依存性を示すことから,地盤の震動ることはできませんが,これまでの研究遂行にあたって特性を適切に考慮することが肝要です。そこで,非常にご指導・ご支援いただいた数多くの共同研究者の皆様に困難な状況下で得た被災地点での余震観測記録等を活用対して,ここに記して深く謝意を表したいと思います。July, 201647
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  • タイトル
  • 秦吉弥会員「平成28年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞」を受賞(国内の動き)
  • 著者
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 47〜47
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71938
  • 内容
  • 橋口公一会員「平成年度科学技術分野の文部科学大臣表彰研究部門」を受賞橋口公一(はしぐちこういち)株 技術顧問(九州大学名誉教授)MSC ソフトウェアこ の 度 , 平 成 28 年 度 科 学こで,現応力点を通って降伏面に相似な下負荷面を導入技術分野の文部科学大臣表彰し,下負荷面が降伏面に近づくにつれて塑性ひずみ速度「研究部門」を受賞致しましが発達する自然な仮定に基づいて,降伏面の内部の応力た。受賞対象業績は「固体の変化による塑性変形を合理的に表現する“下負荷面モデ非可逆力学現象の支配法則のル”を提案しました。定式化に関する研究」です。下負荷面モデルによれば,金属,土を含む広範な固体前世紀中葉に機械振動や地の繰返し負荷,非比例負荷を含む多様な変形現象を高精震動に対する機械・土木・建度で表現でき,加えて高効率な数値計算が可能です。な築構造物の変形予測を目指しお,本モデルは,弾塑性変形に加えて,粘塑性,損傷,て,繰返し塑性モデルの究明疲労・破壊,相変態現象,さらには摩擦現象や結晶塑性の火蓋が切られて以降,半世解析へも広範に活用されており,本モデルは固体の非可紀に亘って熾烈な戦いが繰り返され,移動硬化の概念に逆力学現象の支配法則とみなされます。基づいて多面,二面,重合せ移動硬化モデル等,多くの先述の移動硬化の概念に基づくモデルは,早晩淘汰さモデルが提案されて来ました。しかし,これらは,弾性れる運命にあり,下負荷面モデルにより,今後,弾塑性域を囲む降伏面を仮定するので,降伏面の内部の応力変力学をはじめ非可逆固体力学は,盤石な発展に向かうと化による塑性変形を表現できず,また,降伏判定や応力確信されます。本モデルの創出により,固体力学の歴史の降伏面への引き戻しの煩雑な作業が求められます。そに足跡を残せたことに大きな誇りを感じています。秦吉弥会員「平成年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞」を受賞秦大阪大学吉弥(はた大学院工学研究科よしや)助教こ の た び , 平 成 28 年 度 科し,地震動波形の事後推定を簡便かつ高精度で実施する学技術分野の文部科学大臣表ための全く新しい方法論(サイト特性置換手法など)の彰若手科学者賞を受賞いたし開発及び検証・適用を,様々なタイプの地震(内陸地殻内ました。このような栄えある地震・海溝型地震・スラブ内地震)に対して行いました。賞を頂き,大変光栄に存じま今日,大規模地震による被災地では,ボーリング調査す。受賞対象業績は,「大規などのいわゆる静的な地盤調査が実施されるのが一般的模地震時に被災地点に作用しです。このような調査の実施を全く否定するものではあた地震動の評価に関する研りませんが,大規模地震時に被災地に作用した地震動の究」です。推定が重要であることが本研究成果により正しく理解さ大地震発生後の早い段階にれ,臨時余震観測や常時微動計測などのいわゆる動的なおいて,被災の生じた地点で地盤調査についても被災地で当たり前のように実施されの地震動を推定することは,被災メカニズムの解明や設る日が近いうちに来ることを望んでいます。計手法の検証などを行う上で大変重要です。その際,地最後に,紙面の都合により一人一人のお名前を記載す震動は著しいサイト依存性を示すことから,地盤の震動ることはできませんが,これまでの研究遂行にあたって特性を適切に考慮することが肝要です。そこで,非常にご指導・ご支援いただいた数多くの共同研究者の皆様に困難な状況下で得た被災地点での余震観測記録等を活用対して,ここに記して深く謝意を表したいと思います。July, 201647
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  • 水分特性曲線(技術手帳)
  • 著者
  • 西村 友良
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 48〜49
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71939
  • 内容
  • 技術手帳水分特性曲線SoilWater Characteristic Curve西村友良(にしむら足利工業大学.ともよし)創生工学科水分特性曲線とは水 分 特 性 曲 線 は 土 の 保 水 性 試 験 方 法 ( JGS 0151 2009 )1) に基準化された方法で測定する含水比と土中水のポテンシャルの関係である。土中水のポテンシャルとは単位体積(又は質量)当たりの土中水のポテンシャルエネルギーで,単位は Pa である。水分特性曲線は土質工学,地盤工学,環境地盤工学,農業土木学などの分野で取り扱われる土の物理的性質である。飽和・不飽和浸透問題,飽和・不飽和力学問題に関係している。土中水図―のポテンシャルよりもマトリックサクションが広く用い水分特性曲線られ,本稿は以下,サクションとする。また,土の保水性をはじめとする不飽和地盤の浸透・力学基礎理論並びにモデル化などの詳細は参考文献2)にまとめられている。.サクションとは土中の間隙内に水と空気が存在する不飽和土は,不均一な粒径の土粒子同士の接触点付近を間隙水が包み,間隙空気の境界面にメニスカスが存在する。メニスカスは図―サクション増加進行に伴う間隙内変化(イメージ)滑らかな凹面をしている。メニスカス内部の水圧は水の表面張力の働きで,周りの空気圧よりも低い。例えば大比又は飽和度の水分特性曲線(図―)を用いる。気圧下の自由水面に極めて細い管を垂直に立てると毛管 はサクションゼロである。サクションゼロ図―中◯作用で管内に水が上昇する。管内の水面にメニスカスがは土が必ずしも飽和度 Sr=100とは限らない。不飽和形成され,内部の水圧は負圧である。同様の現象が大気土を水浸状態又は水を浸透した後も微細な間隙空気が不圧下の不飽和土に見られ,間隙水圧は負圧である。間隙均一に残留することがある。この状態でもサクションゼ空気圧が大気圧より大きくとも,間隙空気圧から間隙水 から大気圧以上の空気圧が土に作用すロとする。始点◯圧を差し引いた値をサクションと定義する。ると,間隙空気圧は作用した空気圧に等しい。間隙空気土のサクションの作用・測定を伴う保水性試験から水圧の大きさに応じて土中水がフィルター(例えばセラミ分特性曲線が得られる。保水性試験には,吸引法,加圧ック板)を浸透して排水される。排水した間隙水が大気法,遠心法,蒸気圧法,サイクロメーター法があり,試圧であれば,間隙空気圧はサクションに等しい。排水の験の種類・方法によってサクションの測定範囲が異なる。進行状況から平衡状態を判断しサクションに対する含水全ての試験の種類から,サクション測定範囲は 0.1から比,飽和度を座標上にプロットする。土の保水性試験方300 000 kPa である。法( JGS 0151 2009 )の測定装置の例や試験方法には.水分特性曲線に沿った間隙内の変化大気圧以上の間隙空気圧が作用する加圧法の測定原理供試体の体積変化測定を示唆する記載は見られないが,飽和度を算定するには何らかの方法で土の体積変化を測定する必要がある。に沿ってサクション変化と水分量,体積変化の関係を説段階的にサクションを加えながら上述の操作・手順を明する。土の保水性試験方法(JGS 01512009)のデー進め,乾燥過程(排水過程)の水分特性曲線が得られる。タシートの水分特性曲線の横軸は含水比又は体積含水率,サクション載荷段階の増分比は定まっておらず,目標値縦軸は土中水のポテンシャルC が表記されている。本も提案されていない。稿は,サクションを段階的に与え高める過程で変化する を見る。土の密度が高く,透水性が次に図―領域◯水分量,体積を示すので横軸はサクション,縦軸は含水低い粘性土などに加えるサクションが小さいと,間隙空48地盤工学会誌,―() 技術手帳気圧が引き起こす水の移動が極めて小さいか,又は排水 の間隙内のイメージを図―されないことがある。領域◯ア に示す。◯ア は見かけ上飽和状態である。この状態で◯はサクションと含水比の関係がサクション軸に対してほ を過ぎぼ平行線を示す。サクション増加を進め,領域◯にると排水量が顕著に測定され,曲線が下向きの領域◯移行する。サクションを高める(間隙空気圧増加)ことで,土粒子接点近傍のメニスカス面に作用する間隙空気圧が増し,図―形状が異なる水分特性曲線間隙空気圧と間隙水圧の差が大きくなる。同時にメニスカス凹面の曲率半径が小さくなることで,くぼみが鋭くなる。メニスカスの変状はメニスカス水量の減少となる。イ になる。サクション増加で土粒子同士間隙は図―の◯の結合力が増加し,土のせん断抵抗力が増す。ただし,粒子間力の増加過程で,間隙が密となり土の体積変化が と◯起きる場合と見られない場合がある。ただし領域◯の境界を土の空気侵入値と呼ぶ。土の空気侵入値の算定は図―のように両領域の延長線の交点である。図― から◯ ,さらには◯ へとサクション増加を継続領域◯水分特性曲線に与える応力条件の影響イ →◯ウ →◯エ のようにメニスカスすると間隙内は図―の◯エ はわずかな間隙水が粒水量が非常に少なくなる。特に◯ はサクション増分に子接点付近に残存している。領域◯対する含水比の減少割合も小さくなり,曲線の勾配が領な減少が続く。.水分特性曲線と力学試験との関連性 ,◯ よりも小さい。さて,領域◯ と◯ の境界に相当域◯土の保水性試験方法( JGS 0151 2009 )の加圧法やするサクションを残留サクションと呼ぶ。残留サクショ吸引法の測定装置の例と,一般的な土の変形・強度の室 と◯ の異なる勾配を持つ 2 直線の交点かンは,領域◯内試験を比較する。保水性試験は圧力室内に土をモールら算定する。残留サクションの大小は土の密度,粒度組ド内に納め,軸方向力,側方向力を載荷することなく試成などに依存し,保水性が高い土ほど大きいと考えられ験が行われることが多い。一方不飽和三軸圧縮試験,不る。加圧法のサクション測定範囲内で明確な残留サクシ飽和繰返し三軸試験は,供試体をゴムスリーブで覆い,ョンが定まらない場合は,さらに高いサクション値の作等方応力状態を経て試験が進行する。図―のように載用・測定が可能な試験方法を選定し,測定結果を追加し荷応力条件が水分特性曲線の形状や関数モデルのパラた曲線上から算定する。メータ(空気侵入値,残留サクション)に影響を与える土が有するサクションに比べ,小さなサクションを加と考えられる。したがって,土の保水性試験の応力条件え続けることで,排水した水が逆に吸水され,メニスカと変形・強度試験の応力条件の一致性を考慮する必要が の乾ス水量が増す。この過程を湿潤過程という。領域◯ある。 から◯ のよ燥過程と同じ過程を戻る曲線部分や,領域◯うに同じサクションでありながら曲線の位置が異なるヒ.今後の課題ステリシスを示す領域がある。よって,サクション履歴水分特性曲線は不飽和地盤の安定性評価に必要な物理は同じサクション値でも異なる含水比,飽和度の状態と的性質である。今後は不飽和土の力学特性予測手法のたする。またサクションがゼロに近づくとメニスカス曲面めには,力学試験と同じ応力条件の水分保持曲線を把握が平坦となり,粒子間力は低下することで,コラプス現することが重要である。サクション履歴の繰返しに合わ象と呼ばれる有効応力低下による体積収縮が生じることせて体積変化測定結果を組み込んだ水分保持曲線は長期もある。の土構造物安定性評価に必要である。図―の典型的な S 字カーブに近い関数モデルが多数報告2)されている。全ての水分特性曲線が S 字カーブを示すと限らない。図―(a)のように例えば緩詰めの砂質土は小さなサクション作用で排水が一挙に進行することがある。この特性では土の空気侵入値の算定は困難である。また湿潤過程で急激な吸水が起こりやすい。一方,密度が高く,細粒分含有率が高い粘性土は,図―(b)のように,サクション増加の中でも水分量の緩やかJuly, 2016参考文献1)地盤工学会編第 3 編物理試験,第 7 章土の保水性試験,土の保水性試験方法( JGS 01512009 ),地盤材料試験の方法と解説(第 1 刷),二分冊の 1 , pp. 162 ~ 169 ,2009.2) 地盤工学会第 2 章保水性および透水性,不飽和地盤の挙動と評価,pp. 11~84, 2004.(原稿受理2016.3.12)49
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  • タイトル
  • 5. 三重地域の災害の実態(平成23年度紀伊半島大水害の実態と教訓-「想定外」豪雨による地盤災害の軽減に向けた提言-)
  • 著者
  • 酒井 俊典・岡島 賢治・古根川 竜夫・石川 昌幹・片岡 泰・阪口 和之
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 50〜57
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71940
  • 内容
  • 平成年紀伊半島大水害の実態と教訓―「想定外」豪雨による地盤災害の軽減に向けた提言―.酒井俊典(さかい三重大学大学院古根川竜片岡岡島教授夫(こねがわ御浜町役場としのり)三重地域の災害の実態たつお)石川主査治(おかじま昌やすし)支店長. は じ め に平成 23 年 8 月末から 9 月はじめにかけて来襲した台阪口和けんじ)准教授幹(いしかわ株東邦地水泰(かたおか株 キンキ地質センター賢三重大学大学院まさき)部次長之(さかぐち株アジア航測かずゆき)理事東又谷は秩父帯付加複合体のチャート,混在岩を含む破断した砂岩泥岩互層が分布する地域に該当する.現地調査結果を基にした現地状況図と航空レーザー測量成果か風 12 号により,三重県内では死者 2 名,行方不明者 1名,住宅の全壊 55棟,床上浸水 1 683棟,公共土木施設被害 972 箇所などの被害が見られた1) 。またこの豪雨により松阪市,多気郡大台町,北牟婁郡紀北町において大規模な斜面崩壊の発生が見られるとともに,尾鷲市から紀宝町にかけての東紀州地域においては,河川の氾濫による洪水被害とあわせて,多数の表層崩壊並びにそれに伴う土石流被害が見られた。本稿では,この台風 12 号による三重県内の災害のうち,土砂災害として多気郡大台町東又谷及び北牟婁郡紀北町鍛冶屋又谷で発生した大規模崩壊,尾鷲市から紀宝町にかけての東紀州地域において多数の発生が見られた表層崩壊,御浜町横垣峠の地すべりによる熊野古道の被害とあわせ,河川災害として相野谷川の輪中堤の決壊,及び熊野市大又川,井戸川,紀宝町熊野川の河川堤防の決壊・越流被害について報告する。. 大規模崩壊.. 東又谷の大規模崩壊の状況多気郡大台町東又谷の崩壊状況を写真―.に示す。図―. 平面図と LP 図(東又谷)写真―. 東又谷の崩壊状況50図―. 断面図(東又谷)地盤工学会誌,―() 講  座ら作成した立体図(以下 LP 図と記述)の対比を図―を伴い,泥質混在岩には多数のスラストが形成されてい.に,主測線方向の断面図を図―.に示す。崩壊地頭る。現地調査結果を基にした現地状況図と航空レーザー部の標高は 750 ~ 760 m で,規模は現地踏査並びに LP測量成果から作成した LP 図の対比図を図―.に,主図で確認できる崩壊地頭部上方の滑落崖を含む背面の不測線方向の断面図を図―.に示す。崩壊地頭部の標高安定箇所まで含めると,崩壊長(水平距離)が約700 m,は620 m 付近で,崩壊は斜面中腹の標高410 m 付近から高さ約350 m,幅約300 m,厚さ約50 m の大規模なもの上方斜面で発生したと考えられ,崩壊長(水平距離)約となっている。現地調査より,崩壊地底面には斜面に対420 m ,高さ約 220 m ,幅約 150 m ,厚さ約 30 m となっの流れ盤を呈する層理面断層し見かけ上勾配 20 ~ 30 °ている。現地調査により確認した崩壊地東側の栃古谷を(スラスト)が存在し,斜面上方を構成する砂岩優勢の含む地質構造は,図―.に示すように崩壊地周辺で屈の流れ盤を呈する砂岩泥岩互層においては勾配35~50°曲構造を呈し地形と調和的であった。崩壊地において確層理面,節理面が発達していた。崩壊地周辺における崩認された地層の層理面及び断層の走向は,斜面に対し平壊前の地形は,頭部緩斜面や二重山稜など過去に変形を行な流れ盤構造を呈する東西~北東方向から南西方向のおこした兆候を確認することができ,岩盤クリープが進行していることが考えられる。また,北西側の斜面末端部においては,今回の大規模崩壊が発生する以前からの旧崩壊地形が確認でき,沢による侵食によって崩壊が拡大し不安定化していた可能性が考えられる。崩壊地下方沢沿の標高415 m 付近の右岸及び標高440 m 付近の左岸においては,水成堆積物と推定される未固結の泥,砂,玉石混じり砂礫の互層が確認でき,その性状から過去の河道閉塞に伴う湛水域内の堆積物である土石流堆積物並びに静的環境下で堆積した湛水域内の堆積物であると考えられる。この互層内に取り込まれていた炭化木に対して 年 代 測 定 を 行 っ た 結 果 ,14 C 年 代 は BC16880 ~写真―. 鍛冶屋又谷の崩壊状況BC16608 と最終氷期時代に堆積した木片であると判定された。また,この地点より上位から採取した木片の14C 年代測定ではAD1700 ~ 1800を示し,本地点は湛水域内の堆積層と思われる層が何層か存在し,過去から土砂移動が繰り返し生じている地点であることが推定される。また,この地域では図―.に示す下流の沢筋両岸に「地すべり地形」が確認できるとともに,図中の黒丸で示した標高付近では地形とは不自然な同一標高の平坦面が見られ,過去にこの地すべり箇所付近において天然ダムが形成され,河道閉塞によってその上流域に大規模な湖沼が存在していた可能性が考えられる。.. 鍛冶屋又谷の状況北牟婁郡紀北町紀伊長島区鍛冶屋又谷の崩壊状況を写真―.に示す。鍛冶屋又谷は四万十帯付加複合体の的矢層群中部ユニットの分布地域に該当し,成層又は破断した砂岩泥岩互層や砂岩を主体とした中に泥質混在岩等図―. 崩壊地周辺の状況(東又谷)July, 2016図―. 平面図と LP 図(鍛冶屋又谷)51 講  座図―. 断面図(鍛冶屋又谷)図―. 降雨状況(宮川雨量観測点)図―. 崩壊地周辺の状況(鍛冶屋又谷)の傾斜を呈していた。本地点では, LP 図から35 ~ 45 °も崩壊地頭部西側の稜線において二重山稜が確認でき,以前から岩盤クリープが進行していたことが考えられる。.. 大規模崩壊地周辺の降雨状況写真―. スラスト境界付近の湧水(東又谷)今回大規模崩壊が発生した周辺の旧宮川村において平成 16 年 9 月の台風 21 号により多数の斜面崩壊が発生しとを述べている。ところで,平成 16 年台風 21 号は表層た。図―.は崩壊地周辺の宮川雨量観測点における平付近で発生した崩壊が多かったのに対し,平成 23 年台成 16 年台風 21 号と平成 23年台風 12号の降水量である。風 12 号では深層まで至る大規模な崩壊となっており崩両者を比較すると,累積降水量は平成 16 年台風 21 号で壊の形態が異なっている。平成 23 年の台風 12 号によるは800 mm 程度であるのに対し,平成23年台風12号では大規模崩壊が発生した東又谷並びに鍛冶屋又谷における1 600 mm に達している。降水状況を見ると,平成23年現地調査において,写真―.に示す湧水が崩壊面と考台風 12 号による降雨は 4 日間にわたり,時間降水量がえられるスラスト境界付近において流出している箇所が30 mm / h 程度の降雨が長時間継続しているのに対し,確認でき,地盤内に水みちの存在があることが考えられ最大時間降水量は 80 mm / h 程度であった。これに対し,る。また,崩壊面で見られる湧水の電気伝導度を測定し平成16年台風21号の累積降水量が800 mm 程度であるもた結果 4 ~ 5 mS / m 程度と低く,湧水は雨水が地盤内ののの,時間降水量の最大は119 mm/h と多くなっている。水みちを伝って時間をかけずに流出している可能性が考相澤ら2)は平成16年台風21号による斜面崩壊の発生に対えられる。これらのことから,今回の大規模崩壊は継続し,累積降水量と時間降水量との関係について検討を行的な降雨が長期間続いたことにより雨水が地盤内の水みい,斜面崩壊箇所と累積降水量には明瞭な関係が見られちを伝って多量に地下に供給され,これにより地盤内のないものの,最大時間降水量が 110~ 120 mm /h の領域地下水位を大きく上昇させ大規模な崩壊に至ったと推定にお いて 斜面 崩壊 が多 数発 生し, 最大 時 間降水 量 80される。mm / h 程度では斜面崩壊の発生は顕著に見られないこ52地盤工学会誌,―() 講  座表―. 地質別の崩壊発生箇所数図―. 地質と崩壊箇所3),4)図―. 地質別崩壊頭部の斜面勾配. 表層崩壊.. 東紀州地域における表層崩壊の状況三重県の東紀州地域では尾鷲市から紀宝町にかけ表層崩壊が多数発生した。図―.は三重県デジタル地図を基に災害の発生前(平成 18 年)と発生後(平成 23 年)の空中写真を比較することで崩壊地の判読を行い,この結果をシームレス地質図3)上に示したものである。尾鷲市から紀宝町にかけての地質は,主に新第三紀の火山・深成複合岩体である熊野酸性火成岩類の花崗斑岩,流紋岩,及び第三紀の堆積物である熊野層群から構成さ図―. 地質別の崩壊斜面の向きれる。このうち熊野酸性火成岩類花崗斑岩は,尾鷲から熊野市周辺の北岩体と紀宝町周辺の南岩体に区分され表―. 地質別の崩壊斜面の水平断面形状る4)。崩壊発生箇所数を地質別に見てみると,熊野酸性火成岩類花崗斑岩の分布域において崩壊が多数見られる。これに対し流紋岩類や熊野層群分布域では発生数が非常に少ない。表―.は地質ごとの崩壊箇所数及び 1 km2あたりの崩壊発生数を示したものである。崩壊は熊野酸性火成岩類において全体の 90 が集中し,そのうち花崗斑岩では80以上の発生となっている。また,1 km2表―.は鈴木5) に基づき崩壊斜面の水平断面形状をあたりの崩壊発生密度は,熊野層群で 0.1 箇所程度,次谷型斜面,尾根型斜面,直線斜面に分類し整理したものいで熊野酸性火成岩類のうち流紋岩類及び花崗斑岩北岩である。この結果,いずれの地質においても,谷型斜面体で 0.4 箇所程度を示すのに対し,花崗斑岩南岩体では及び直線型斜面での発生頻度が高く,尾根型斜面では 51.06箇所と発生頻度の高い傾向が見られる。と少ない。図―.は崩壊頭部付近の崩壊前における斜面勾配に崩壊の発生数が多かった熊野酸性火成岩類花崗斑岩をついて,災害発生前(平成 18 年)の三重県デジタル地対象に現地調査を実施し,地質状況,節理構造,勾配,図 DEM データを基に判読・整理したものである。崩壊規模等を確認した。崩壊規模は,南岩体において最大幅前の斜面勾配は,熊野層群,熊野酸性火成岩類のうち流60 m ,最大深度15 m 程度のやや規模の大きなものも見で発生頻度が高紋岩類及び花崗斑岩南岩体では 30~40°受けられたが,総じて写真―.に示すように比較的小と前者より 5いのに対し,花崗斑岩北岩体では 35 ~ 45 °規模であり,平均的には幅 20 m 以下,深度 5 m 以浅で~ 10 °程度急な斜面での発生が多い傾向を示す。図―あった。.は崩壊が発生した斜面の向きを地質別に示したものすべり面の位置は,崖錐堆積物と岩盤,又は強風化岩である。崩壊は南東から南西にかけての南向き斜面にお盤と中風化岩盤の境界付近にあると考えられる。崩壊しいて集中しており,熊野層群で 61 ,熊野酸性火成岩た地質は,北岩体では崖錐堆積物及び表土が 75 を占類の流紋岩類で 74 ,花崗斑岩南岩体で 87 ,北岩体めるのに対し,南岩体では 57 が強風化岩盤であった。で80を示す。これより南岩体では風化作用が北岩体よりも深部まで進July, 201653 講  座図―. 降水量の推移(大峪観測点)写真―. 代表的な表層崩壊箇所(写真は北岩体)写真―. 頭部滑落崖に見られるパイピング跡行している可能性が考えられる。節理面の走向傾斜は北岩体では南を中心に南西から南 (9/4 AM 3~4 時)図―. 等降水量線図東に向く節理面が主体をなしているのに対し,南岩体では東南東から南東,及び西南西から南西に向く節理面の方向が多い傾向が見られ,これは現地調査結果による崩壊発生斜面の向きと一致する傾向であった。現地では崩壊地頭部の滑落崖において,写真―.に示すような径が数 cm から最大 1 m 程度のパイピング跡と思われる空洞が確認された。これより崩壊の発生した斜面では以前より水みちが形成されていたものと考えられる。周辺の湧水及び渓流水の電気伝導度を測定した結果,北岩体,南岩体ともに 3~ 4 mS / m 程度と低い値を示す。これより,地盤内を通った雨水が直接時間をかけずに湧水として流出している可能性が考えられた。.. 東紀州地域における降雨と崩壊の関係図―.は,熊野酸性火成岩類花崗斑岩分布域に属し多数の崩壊が発生した熊野市大峪観測点における 9 月 1~4 日までの降水量を示したものである。9 月 3 日夜から降水量が急激に増加し,9 月 4 日 AM 3 時~ 5 時頃に (9/4 AM 4~5 時)図―. 等降水量線図かけ最大135 mm/h の時間降水量を記録する後期集中型次に,最大時間降水量を記録し災害報告が集中した 9の降雨パターンを示す。最大時間降水量が観測された時月 4 日 AM 3 時から AM 5 時を対象に崩壊発生箇所と間帯である 9 月 4 日 AM 3 時 10分に,NTT の通信サー降水量との関係を見てみる。図―.,図―.は地質ビスにおいて「熊野市,御浜町並びに紀宝町全域においと崩壊発生箇所に,AM 4 時まで及び AM 5 時までの時て固定電話及びインターネットが利用できない状況にな間降水量と累積降水量の等降水量線図を重ねたものであっている」との報告があり,また紀宝町周辺における各る。同図より累積降水量がおおむね800 mm ,及び時間方面の聞き取りにおいても,災害報告は最大時間降水量降水量が 80 mm / h を超える熊野酸性火成岩類花崗斑岩を記録した時間帯に集中していた。分布域において崩壊発生箇所数が多い傾向が見られる。54地盤工学会誌,―() 講  座図―. 各観測点における累積・時間降水量の変化写真―. 横垣峠と被災箇所(三重県提供空中写真に加筆)ここで,三木里・銀杏観測点は時間降水量 80 mm / h,累積降水量800 mm を超える雨量を記録していたが,周辺での崩壊はほぼ見られなかった。図―.は崩壊が多数見られた大峪・大又観測点,及び崩壊のあまり見られなかった三木里・銀杏観測点について, 9 月 1 ~ 4 日までの累積降水量と時間降水量の変化を示したものである。大峪・大又観測点においては累積降水量が800 mm を超えて時間降水量 80 mm / h の降雨が見られるのに対し,三木里・銀杏観測点では,最大時間降水量 97 mm / h を写真―. 南側崩落頭部・北側滑落崖(1 号箇所)観測した 9 月 4 日 AM 5 時及び AM 6 時における累積降水量はそれぞれ 502 mm, 564 mm で,時間降水量 80mm / h を超える降雨が見られた時間において累積降水量800 mm には達していなかった。これらの結果より,東紀州地域のうち熊野酸性火成岩類花崗斑岩に属する地域においては,累積降水量800 mm に加え,時間降水量80 mm / h を超える後期集中型の降雨により表層崩壊が多発発生する可能性が考えられる。. 世界遺産.. 熊野古道伊勢路「横垣峠」熊野古道「紀伊山地の霊場と参詣道」は,平成16年 7月 7 日に世界文化遺産に登録されている。登録範囲は三重・奈良・和歌山の 3 県 29 市町にまたがっており,写真―. 周辺公共施設の復旧(1 号箇所)面積は495.3 ha に及ぶ6)。このうち横垣峠は,紀伊半島の東側を通る「伊勢路」のルートにあり,伊勢神宮からで滑落による欠損や土砂流出による埋没被害が生じた。熊野三山へ向かう峠を越える丘陵の地形に,美しい石畳また,区間中央付近の 2 号,3 号箇所の 2 箇所では,崩道が存在する見どころのあるルートであった。熊野古道壊及び土石流により古道の欠損が生じる等,横垣峠全体の特徴となっている石畳は,全国でも有数の多雨地帯ので流出した古道の延長は約250 m,被災率は14に上り,この地域において,先人が豪雨による道路の流出防止を崩落・流失した箇所の復旧は事実上不可能な状況であっ目的とした防災対策として設置されたと考えられている。た。現在応急対策として,管理団体は可能な箇所に迂回横垣峠では ,平成 23年台風 12号により各所で,古道や隣路を設置し一部で通行を開始している。接する林道において斜面崩壊による滑落,欠損や土砂流.. 文化遺産の災害復旧における現状出による埋没被害が発生した。横垣峠では,文化遺産にとって重要な景観である「道」.. 横垣峠の被害状況の基盤が崩壊・流失し,元の形状に復元することが不可台風12号による豪雨を誘因として,写真―.に示す能な状況となった。古道の復旧方針は,被災後 5 年経ように複数の箇所で斜面崩壊が発生した。神木観測所に過した現在も検討中である。これに対し地域住民にとっおける降水量は, 9 月 3 日 PM 2 時から 9 月 4 日 PM 2て重要な併走する林道の復旧は先行して行われた。復旧時までの最大24時間降水量は716 mm,最大時間降水量にあたっては,写真―.のようにモルタル吹付等によは 9 月 4 日 AM 4 時~ 5 時に 98 mm / h であった。被害る工法によって世界遺産の周辺施設が復旧され,再崩落状況は,写真―.および写真―.の 1 号箇所に示すを防止するための堰堤も築造された。住民生活にとって阪本側において比較的規模の大きい崩壊(崩壊幅 95 m,重要な周辺公共施設は迅速な復旧が望まれるが,文化遺古道流出延長150 m)が発生し,古道及び隣接する林道産保全を考える上では周辺の復旧においてその形状・機July, 201655 講  座写真―. 井戸川浄水場付近の被災状況写真―. 国土地理院撮影空中写真8)の調査箇所周辺図写真―. JR 橋梁の被災状況写真―. 左岸側の被災状況工の流失及び護岸の侵食,氾濫した洪水による浄水場基礎の侵食,洪水運搬土砂,ガレキによる水田の埋塞の被能・配置に配慮することも必要ではないかと考える。. 河川災害7)害が発生した。写真―.に示すように,井戸浄水場の調査箇所で頭首工が流失した。この頭首工は,河川直前線部において左岸から取水するために,左岸側に 30 °.. 大又川ほど傾斜して横断した固定堰とブロックによる護床工か写真―.に調査箇所の空中写真を示す。写真中の橋らなる構造であった。頭首工は右岸側の固定堰が流失す梁左岸側の太線で囲まれた領域が浸水箇所となる。大又るとともに護岸が大きく侵食され,左岸側固定堰は残存川の河川災害は,橋梁の橋脚へ流木がかかることで河道しているものの下流側に 2 m ほど移動するとともに右が閉塞し,滞留した洪水流が橋梁上流側の左岸堤防を越岸側にかけて落ち込んでいた。この頭首工の変状により流することで発生したと考えられる。越流した洪水流は水位が上昇し頭首工上流部の両岸において洪水流が越流しばらく橋梁上流側左岸の農地を侵食しながら越流範囲したと考えられる。また写真―.に示すように,最下を広げ,その後橋梁の左岸橋台背後の道路を越えて,橋流部においては JR 橋梁へ流木がかかることで橋梁の一梁下流側左岸の農地へと越流範囲を拡大した。さらに,部が破損した。越流下洪水流は,200 m ほど下流から再び本川へと戻っ.. 熊野川及び相野谷川たものの,越流範囲の農地の侵食は水位が低下するまで熊野川の増水により紀宝町浅里地区では,洪水土砂に継続したと考えられる。農地の水田表土は,作土層だけよる水田埋塞と氾濫による家屋 2 階屋根付近までの浸でなく,耕盤層や心土層に至る表土から 3 m 程度の深水が見られた。また,平成 13 年より輪中堤や宅地かささまで侵食を受けていたところもあった。写真―.に上げ等による対策が実施されていた(土地利用一体型水河道閉塞した橋梁上流左岸側の農地侵食箇所から閉塞し防災事業)相野谷川流域では,想定された相野谷川の洪た橋梁へ向けて撮影した写真を示す。橋梁の左岸側橋台水土砂による水田の埋塞だけでなく,計画高水位を超え背後の地盤が流失している様子がよく分かる。た洪水の輪中堤への流入による宅地浸水被害がみられた。.. 井戸川井戸川では,増水により熊野市井戸浄水場付近で頭首56紀宝町高岡地区では,相野谷川の増水により写真―.に示すように輪中堤が決壊し堤内が浸水した。最高地盤工学会誌,―() 講  座おいては幅,高さが300 m を超える大規模崩壊の発生が見られた。大規模崩壊の発生原因としては,継続的な降雨が長期間続いたことによる雨水が地盤内の水みちを伝って多量に地下に供給され,これによる地盤内の地下水位上昇が原因と考えられた。また,熊野市から紀宝町にかけての東紀州地域では表層崩壊が多数発生し,その発生箇所は熊野酸性火成岩類花崗斑岩の南向き斜面に集中していた。熊野酸性火成岩類花崗斑岩における表層崩壊発生箇所と降雨との関係を調べた結果,累積降水量800mm に加え時間降水量 80 mm / h を超える後期集中型の降雨により崩壊発生が多発する可能性が考えられた。これらに加え世界遺産である熊野古道の被害や,東紀州地写真―. 輪中堤の決壊状況域における豪雨による河川の氾濫及び浸水による大きな被害が見られ,特に相野谷川においては輪中堤転倒による被害が発生した。本調査研究の一部は,三重県・三重大学みえ防災・減災センター調査研究事業,和歌山大学平成 24 ~ 25 年度独創的研究支援プロジェクト,(一財)レントオール奨学株 ,及び地盤工学会関西支部,地財団,西日本旅客鉄道盤工学会中部支部,関西地質調査業協会,中部地質調査業協会の支援を受けて行われました。また,現地調査及びデータ整理では,三重大学大学院生物資源学研究科土資源工学研究室の学生にお世話になりました。記して感謝申し上げます。参写真―. 最高水位の位置1)水位は写真―.に示す屋根瓦移動位置付近まで上昇したと考えられる。ここで,写真―.は 9 月 4 日,写2)真―.は 9 月 5 日に同じ地区が撮影されている。写 ,◯ ,◯ の家屋はそれぞれ同じ家屋を示してい真中の◯3)る。両者を比較すると 9 月 4 日では輪中堤は残存しているのに対し,9 月 5 日には輪中堤が転倒していた。この結果より,輪中堤の転倒破壊は,堤外水位減少時に堤4)内から堤外へ大量の水が流れる圧力により堤外側へ転倒した可能性が示唆される。この輪中堤の転倒破壊により,堤内側の家屋基礎が侵食されるとともに家屋に大きな変状をもたらした。今後輪中堤の転倒破壊の原因を十分精5)6)査した上で,輪中防災地域では想定外の浸水が生じた場合,堤内水位の効率的な排水も課題となると考えられる。7). お わ り に台風 12 号による豪雨災害により,三重県内では中・南勢,東紀州地域を中心に土砂災害,河川災害が多数発生した。その中で,大台町東又谷,紀北町鍛冶屋又谷にJuly, 20168)考文献三重県災害対策本部平成 23 年台風 12 号による被害と対応状況について(47号),平成23年10月14日,入手先〈 http: // www.pref.mie.lg.jp / KOHO / talas / NO47.pdf 〉(参照2015.1.5)相澤泰造・酒井俊典ほか 2004 年台風 21 号による三重県宮川村の土砂災害,日本地すべり学会誌, Vol. 47,No. 1, pp. 26~33, 2010.独 産業技術総合研究所/地質調査総合センター地質図表示システム地質図 Navi ,入手先〈 https: // gbank.gsj.jp/geonavi/〉(参照2014.6.18)川上 裕・星 博幸火山―深成複合岩体にみられる環状岩脈とシート状貫入岩紀伊半島,尾鷲―熊野地域の熊野酸性火成岩類の地質,地質学雑誌,Vol. 113, No. 7,pp. 296~309, 2007.鈴木隆介建設技術者のための地形読図入門,第 1 巻読図の基礎,古今書院,p. 122, 1997.世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」三県協議会(三重県,奈良県,和歌山県)世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」保存管理計画,2005.岡島賢治・伊藤良栄・加治佐隆光・安田健二・成岡市平成 23 年台風 12 号による三重県農地・農業用施設の被害,農業農村工学会誌 Vol. 80, No. 4, pp. 40~46,2012.国土地理院撮影空中写真整理番号 CKK20113X,撮影年月日2011年 9 月 6 日57
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  • タイトル
  • 5. 火山観測・監視体制と火山噴火予測(火山による災害特性と防災技術)
  • 著者
  • 森田 裕一
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 58〜65
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71941
  • 内容
  • 火山における災害特性と防災技術.森火山観測・監視体制と火山噴火予測田裕一(もりた東京大学地震研究所. は じ め にゆういち)教授はよく分かっていない。噴火に先立って,マグマ中の揮発性成分が高温の火山ガスとなって上昇し,地下浅部に前章までに火山噴火のメカニズムや様々な火山噴火のある地下水を沸騰させて高圧の水蒸気が発生する。それ様式,噴火に起因する様々な火山災害について説明がなが山頂直下に集まり,熱水溜まりを形成する。熱水溜まされた。極めて簡単に言えば,マグマ噴火は火山の地下りが更に高圧になると,周辺の岩石を破壊し,岩片を伴深さ 3~10 km にあるマグマ溜まりに蓄積していたマグい水蒸気が噴出する。この時も周辺岩体に加わる応力にマが色々な理由で上昇し,地表に達して火山灰,噴石,より地震や地盤変動が生じる。また,熱水溜まりの発達溶岩などを噴出する現象である。一方,水蒸気噴火は,に伴い,地下では局所的な温度上昇が起こる。マグマそのものは地表まで上昇しないが,高温のマグマこのように,噴火の準備段階で地震の多発,地盤変動,により地下のごく浅部にある地下水が急激に熱せられて地中温度の上昇などの現象が起こる。各種の観測からこ多量の熱水(水蒸気)を生み出し,それが噴出することれらの現象を捉え,噴火の準備が整っていることから噴により起こる。このような噴火現象を各種の観測から捉火が近づいていることを知るのが,現在の噴火予測であえ,地下で起こっていることを推測して,火山噴火の予る。測を行っている。この章では,最初に噴火に至るまでに観測される諸現. 火山性地震と火山噴火象の背景を概説し,次に具体的な地震,地盤変動,その火山噴火の前に火山周辺で地震活動が高まると同時に,他の観測される現象を説明する。最後に火山監視体制と火山性微動と呼ばれる特徴のある振動が発生することは,火山噴火予測の現状について説明する。約100年前から知られていた。1910年の有珠山噴火の際. 火山噴火に至るまでのプロセスに,東京帝国大学大森房吉教授が地震計(可搬型微動計)を有珠山北麓に設置し,地震観測を実施した。これは世.. マグマの生成,上昇,蓄積界で最初の科学的な手法による火山観測であると言われマグマの発生と火山の生成については,第章で既にている。この観測により火山活動と火山性地震や微動の説明されている。地下深部で生成されたマグマが浮力で関連が見つけられた1)。火山性地震は火山噴火を予測す上昇して,周りの岩石と同じ密度になる深さで蓄積し,る上で,最も重要な観測項目であることは現在でも変わマグマ溜まりを形成する。らない。これ以降,火山性地震の研究を続けてきたことマグマ溜まりは,それぞれの火山によりその位置や蓄で,観測事例が増えて火山噴火に関する色々な知見が得積率に違いがあるが,活動的な火山では次の噴火に向けられることになった。その結果,火山噴火には色々な様てマグマは徐々に蓄積される。それが地表での地盤変動式があり,噴火のタイプによって噴火に至るまでの過程として観測される。が異なることが明らかになり,有珠山のように地震活動.. 噴火の発生の高まりからだけでは噴火発生の予測ができない例もあマグマ溜まりにあるマグマが,どのようなきっかけでることが明らかになってきた。最終的なマグマ噴火に至る上昇を開始するかは,それほここでは,火山性地震,火山性微動の特徴とそれらがどよく分かっていない。概念的には,マグマに含まれる持つ情報について述べ,火山性地震や火山性微動の観測H2O, CO2, SO2 などの揮発性成分が発泡し,マグマ全体がどのように噴火予測に役立つかについて述べる。の体積が増えてマグマ溜まり内の圧力が増加することや,.. 火山性地震の種類マグマの密度が低下することにより浮力を得て上昇する火山活動に関連があり,火山周辺で発生する地震を特ため,噴火が発生すると考えられている。マグマ上昇時に「火山性地震」と総称し,通常の地震と区別することには,その経路(火道)近傍に大きな力が働き,地震やが多い。また,火山周辺では地震以外にも波形の特徴が地盤変動が発生する。また,一旦噴火が始まった後も,異なる火山性微動と呼ばれる震動も発生する。火口に溜まったマグマが固化し,それが破砕される時にも地震や地盤変動が発生する。水蒸気噴火の発生についても同様で,発生のきっかけ58火山性地震は,色々な原因で励起され,それによって様々な特徴の波形を持つ。震動の励起過程も重要な情報なので,どこでどのような地震が発生しているかだけで地盤工学会誌,―() 講  座なく,その波形の特徴から励起機構を知ることも重要で較的振幅が大きい。また,同じ観測点で観測すると,同ある。火山噴火予測には,火山性地震の震源,その移動,じ波形が繰り返し観測される。活動度の時間変化の情報を利用する場合と,地震動の励火山性微動(図―.(d))は,P 波,S 波振動の開始起機構から地下で起こっている現象を理解して予測に利が不明瞭であり,震動が長時間にわたって継続する。高用する場合がある。前者はこれまでの研究の発展により周波のものから低周波のものまで色々な波形を持つ。まある程度までその手法が確立してきたが,後者は科学的た,ピーク周波数が時間と共に変動する場合もある。微な洞察が必要なので,現在も研究的色彩が大きい。西動は様々な機構で発生していると考えられているが,噴村・井口2) は過去の分類も参考にしながら,図―.の火発生前後でよく観測される。噴火直後には振幅の大きように地震の波形の特徴から火山性地震,微動を分類しな微動が発生し,特にそれを「噴火微動」と呼ぶ。N 型地震は,図―.( e )のように地震計の制動装置ている。高周波( A 型)地震(図―.( a ))は P 波と S 波のが故障したような時定数の長い減衰振動を描く。この振初動が明瞭で,火山地域以外の場所でも見られる地震と動は,岩石中の割れ目にマグマや高温の地下水などが溜ほぼ同じ波形の特徴を持っている。岩石の断層運動(せまり,その中で振動し,共鳴することにより発生していん断破壊)により発生するもので,「火山構造性地震」ると考えられている。振動の卓越周波数,減衰の仕方にとも呼ばれる。同じような断層運動で発生する地震であより,割れ目内の物質の物性の変化を見積もる研究も行っても,通常は脆性破壊が起こらない極めて浅い場所われている4)。(低封圧下)で発生する地震は,破壊の際の応力降下量この他にも周期が数秒~数十秒の地震動もあり,これが小さく,破壊伝播速度が低いため,同じ規模の A 型を超長周期地震,超長周期微動と分類している。通常の地震に比べて卓越周期が長くなる。また,P 波の初動が地震はマグマの周辺にある岩石のせん断破壊により発生小さく,S 波の初動も明瞭でない。このような地震を低するのに対して,超長周期地震や微動はマグマや火山ガ周波( B 型)地震(図―.( b ))と呼ぶ。低周波地震スの振動や移動によって生成されるために励起時間は長でも比較的高周波のものを BH 型,より低周波のものく,地震動の周期も極めて長くなると考えられている。を BL 型と区別することもある。噴火を繰り返す活動的このような超長期振動の解析から,周辺岩体にどのような火山では,このような高周波地震と低周波地震が,火な力が働いたかの情報が得られ,それによりマグマや火口から下に延びるように分布して発生し,より低周波の山ガスの流路の形状,浅部でのマグマの物性などを推定地震ほど,より浅い場所で発生している(図―.)。こすることができる。超長周期振動については,..でのような震源分布は,マグマの上昇経路(火道)に沿っ述べる。て地震が発生していることを示している。.. 火山構造性地震と火山活動爆発地震(図―.(c))は,ブルカノ式噴火のように火山監視や火山噴火予測のために最も利用されている噴石を間歇的に飛ばす噴火の際に観測される。噴石を飛のは,高周波地震と低周波地震の震源とその活動度であばす時の反作用力が地面に加わって発生する振動で,比る。地殻内の岩石はせん断応力が一定の値を越えたときに破壊し,地震が発生する。地震学では式( 5.1)で示されるクーロンの破壊規準を用い,せん断応力( t)が有効法線応力( seŠ )の m 倍を超えた時(その時の値を t0図―. 波形の特徴に基づく火山性地震の分類(西村・井口(2006)2)より引用)July, 2016図―. 各種火山性地震の発生場所( Iguchi( 1994 )を一部改変)59 講  座図―. 地震活動の推移の模式図 McNutt( 1996)5)を一部改変高周波地震の発生後しばらくして活動を開始する。ここで示したように,地震活動がピークを迎え,その後活動が低下した後,噴火が発生するケースが他の火山でもよく見られ,これらの地震活動の時間変化を McNutt5) は図―.のようにまとめた。図-. 有珠山 1910 年噴火と 2000 年噴火前の地震活動このような活動のパターンが生じる理由は,定性的に( 1 時間あたりの地震数)。 1910 年の地震数はは地震を起こしやすい場所と起こしにくい場所があるこOhmori ( 1911 )1) より, 2000 年の地震数は気象庁一元化震源カタログより作図とに起因すると考えられている。つまり,地震活動のピークに前後して低周波地震や火山性微動も発生することから,マグマの上昇は続いている。一方で,火山周辺とする)に地震が発生すると考える。断層面にかかる法の地下浅部では圧力が低いことや岩石の固結度が低いこ線応力(s)が増加する方向を正とし,そこでの間隙流とから,岩石は脆性破壊を起こしにくく,延性的な変形体圧を DP とすると,地震はが支配的になる。そのため,地震の発生数が減少する。t-mseŠ=t-m(s-DP)>t0 ………………………(5.1)つまり,地震活動の低下は,マグマの移動により応力のとなるときに発生する。この式から地震が発生しやすく集中域が地震を発生しにくい浅部に移動したためと考えなるのは, 1 )マグマが上昇し,周辺の応力場が変化すられている。地震の発生は,その原因となる応力の集中る( t の増加,及び s の低下), 2)マグマの蓄積によりだけでなく,応力集中域にある岩石の物性にも影響を受マグマ溜まりが増圧して浅部で張力場が卓越して法線応けている。力が小さくなる( s の低下), 3)マグマの上昇に先駆し図―.で示した地震活動度の時間変化が,どの火山てマグマより軽い揮発性成分(火山ガス)が上昇し,既噴火の場合でも現れるわけではない。例えば,桜島のよ存の断層面の間隙流体圧を大きくする( DP の増加),うな噴火を常に繰り返している活動的な火山では,明瞭と言う 3 つの場合が考えられる。いずれの場合も,火な地震活動の高まりなしに小規模な噴火を引き起こす場山活動が高まるときに現れる現象なので,火山活動の高合が多い。このような火山では繰り返し上昇してくるマまりは地震活動の高まりとなって現れる。しかし,地震グマにより地温が高くなるため,岩石は脆性破壊をせず発 生 は 火 山 活 動 に よ る も の だ けで は な い 。 例え ば ,に延性変形を行うことや7),既にマグマの通り道である2011 年 3 月に発生した東北地方太平洋地震の直後には,火道が形成されていると地震を引き起こすほど大きな応全国で約 20 の火山の周辺で一時的に地震活動が上昇し力集中が起こらないことにより,地震が多く発生しないた。大きな地震により周辺の応力場が変化した場合も地と考えられている。つまり,地震活動度だけでは,マグ震活動は上昇する。そのため,地震活動の増加の原因をマの動きを正確に捉えることはできない。そのため,上記 3 つの理由のいずれかであるか,その他の原因で.で述べる地盤変動や.のその他の観測量と併せて,あるかを判定した上で,震源の位置や深さを考慮して地総合的な観点から噴火予測を行うのが常道である。震活動を火山活動の評価に用いる必要がある。一方で,観測網がよく整備された火山では,地震活動しかし,実際には地震活動の上昇の原因を厳密に判定の推移がマグマの動きに対応している例もある。特に,することは難しく,また原因が少々あいまいであっても,火山周辺のテクトニックな応力場が最大主応力と最小主火山性地震の活動度が火山監視や火山噴火予測の判断に応力がほぼ水平面に存在する場合には,マグマはほぼ鉛最重な役割を果たしていることは,これまでの様々な火直の板状に貫入する。このような板状のマグマ貫入をダ山活動で実証されている。例えば,図―.は有珠山イクと呼ぶ。ダイクの先端では応力の集中が起こり,周1910 年と 2000 年噴火前の地震活動度の時間変化を示し辺の岩石を破壊して割れ目が進展してマグマが広がる。たものである。両噴火はともに山腹噴火であったが,そそのとき地震が多発する。例えば, 1970 年代後半かられぞれの噴火時刻( 1910 年 7 月 25 日 22  30 , 2000 年 31998 年まで毎年のように繰り返した静岡県伊東市沖の月 31 日 13  10 )を合わせて 1 時間ごとの地震数を示す群発地震活動は,マグマが深部から浮力で上昇し,浮力と,その変化のパターンは極めて類似している。噴火のを失う深さ約 5 km 付近でほぼ鉛直の板状(薄い円盤状)3 日前から地震活動が高まり,約 1 日前に活動のピークに広がる。図―.は,1998年 4 月に発生した伊東沖群を迎え,その後活動は低下する。また,低周波地震は,発地震活動の高精度の震源を示した図である7)。震源は60地盤工学会誌,―() 講  座図―. 火山活動に関連する振動励起源のモーメントテンソル表現図―. 1998年伊東沖群発地震の震源移動火による噴出物の堆積により,地震波速度構造が複雑で1 つの面上に並び,その面の正面( N110E の方向)かある。また,地形の険しさから道路の整備が行われておら水平に見た震源分布の移動を,当日の震源を黒,そのらず,山頂から見て限られた方位にしか観測点を設置で日以前の震源を灰色で示した。深部からのマグマの上昇きないことがある。火山島では山頂が島となり,山体のを示す鉛直線状の地震活動が発生した後,深さ 5 km をほとんどが海底にあるため,言わば山頂の一部でしか観中心に震源が日々同心円状に広がって行く活動が見られ測できない。このように火山における地震観測では,構た。これと同期して地盤変動が捉えられたことから,マ造の複雑さに加え,理想的な地震観測点の配置ができなグマが深部から上昇し,ダイクを形成しほぼ鉛直の面内い場合があるなど,色々な困難がつきまとう。を外側に向かって広がったと考えられている。このよう火山性地震は図―.で示したように地下浅部,特ににしてマグマの動きが時々刻々見えれば噴火予測は簡単火口直下で発生することが多いので,火口周辺に多数のであるが,このような現象がどの火山ででも見られるわ地震観測点を配置し,稠密な地震観測網を構築することけではなく,むしろ稀な事例であると言える。が重要である。それにより,精度の高い震源が推定でき.. 火山活動が引き起こす超長周期地震と微動る。この時,火山構造性地震や低周波地震の卓越周期はこれまで述べた構造性地震の場合には,近似的には断1 秒より短いことが多いので,通常の地震観測で利用す層運動(せん断破壊)とすることができ,力学的には直る電磁式地震計を利用することが多い。交する 2 つの偶力( double couple )で表現できる。し超長周期地震や微動の観測には,周期数秒から数十秒かし,色々な方位にある観測点で火山性地震を解析するの震動を記録する必要があるので,広帯域地震計を利用と,各観測点での振幅が断層運動で励起された振動ではする。広帯域地震計は負帰還回路を内蔵しており,電磁説明できないことがある。このような場合,図―.で式地震計よりも消費電力が大きい。また,超長周期振動示す色々な偶力や,偶力とある方向の力(シングルフの解析は,地中でどの方向に力が働いたかを知ることがォース)をあわせた力源を仮定し,観測値と比較する。重要なので,広い範囲で震源を取り囲むように観測点をこのような解析により,震源において球状のマグマ溜配列するのが望ましい。商用電力のない火山周辺で広帯まりの体積増加,マグマの経路である円筒状パイプの径の拡大,薄い板状のマグマが厚みを増加などのいずれの域地震観測を継続・維持するのは容易ではない。上記のように,火山の地震観測においては,観測対象現象により地震波が励起されたのかを知ることができる。により,地震観測点の配置,設置する地震計の種類を選地下でのマグマの移動や振動による地震動は,移動に択する必要がある。また,観測点へのアクセスが困難な要する時間が長いことやマグマの体積弾性率が大きいこ場合が多く,理想的な配置で地震計を設置することも,とから,長周期に卓越することが多い。そのため,超長それを永続的に維持してゆくのも容易ではない。周期振動となって観測される。例えば,阿蘇山で観測される周期 30 秒程度の超長周期微動は,多数の観測点で. 地盤変動と火山噴火の振幅比から,地下の岩盤の中に火口列方向に走行を持火山性地震と並んで火山監視や噴火予測に有効なものつほぼ鉛直に広がる板状のマグマが振動していることには地盤変動である。例えば,マグマが深部から上昇し,より励起されていることが明らかになっている8)。このマグマ溜まりに蓄積すれば,マグマが地下の岩盤を押しような振動はどの火山でも見られるわけではないが,振広げ,地表面が変形する。色々な場所で地面の変形を計動の励起機構からマグマの供給系やマグマの物性につい測すれば,地下のマグマの位置とその増加量が推定できての重要な情報を提供し,火山活動の中期的な推移を知る。火山噴火の前には,マグマや火山ガスが地下浅部まるために利用される。阿蘇山では 2014年 11月 25 日に 25で上昇してくるので,連続的に地盤変動を計測していて,年ぶりにマグマ噴火が発生したが,噴火前にこのような地盤変動が大きくなれば噴火が近づいていると判断でき長周期微動の活動が活発になり,大量のマグマ又は熱水る。が板状の隙間を通り上昇してきたと考えられている。.. 火山における地震観測火山周辺は,過去に活動した古い火山体や,過去の噴July, 2016.. マグマの蓄積による地盤変動地表での地盤変動から地下の岩石(弾性体)を変形させた力を推定することができる。これは厳密に言えばマ61 講  座グマ溜まりの変形そのものではないが,これをマグマ溜まりの体積増加と近似して考える。多くの場合,単純なモデルを仮定して観測量からモデルのパラメータであるマグマ溜まりの位置,その体積変化量や形状を推定する。火山における地盤変動のモデルとしては,一般的には半無限完全弾性体における等価力源による地面の変形の理論式9)を用いる。最も良く用いられるのは,等方圧力源で,茂木モデルと呼ばれている10) 。これは,球形のマグマ溜まりの体積が DV だけ増加したことに相当するもので,圧力源直上を原点とした場合,半径方向(ur)図―. 原点の地下 1 km で, 1 km 四方の矩形領域に厚さ 1 m のマグマが板状に貫入した時の変位分布。傾斜した貫入。左鉛直貫入,右鉛直から 20 °と鉛直方向(uz)の変位は,それぞれ以下のように表現できる。水平変位は矢印,鉛直変位は等高線で示す。単hm(l+2m)・DV, C0=…………(5.2)u r= C 0 2(d +h2)3/22pm(l+m)uz=C0d(d 2+h2)3/2・DV ……………………………(5.3)位は cm。実線は隆起を,点線は沈降を示す圧力源が深い場合には,地下構造の不均質12) や地形13)の影響をほとんど考慮する必要はない。一方,変位の微この時 h は原点から観測点までの水平距離,d は圧力源分量であるひずみや傾斜の場合には,これらの影響を無の深さ,l と m はマグマ周辺の岩石の弾性定数(ラメの視できないことがある。このようなことから,逆問題で定数)である。この式から,水平変位は体積増加時には圧力源を推定する時には変位を,地盤変動の微弱な時間常に正であり,いずれの場所でも原点から外向きに変位変動を推定する場合には傾斜やひずみを利用することがし,原点(圧力源直上)ではゼロとなる。原点からの距多い。離 h=d/ 2 のときに ur=2 3 C0/ 9d 2と最大値を取る。圧力源が浅い場合には,不均質や地形の影響に加え,また,鉛直変位は,原点で最大値 uz= C0 DV / d 2 となり,断層が形成されるなどの永久変位の効果も考慮する必要遠方になるほど小さくなる。非常に単純なモデルであるがある。火山学ではこのような問題をあまり扱わないが,が,火山で観測される地盤変動は,このモデルでうまく浅所でのマグマの振る舞いを知るには重要な点である。説明できる場合が多い。しかも,推定すべきパラメータ地盤工学会の諸兄と協力し,今後浅部でマグマが貫入しは,圧力源(マグマ溜まり)の位置(3 成分)と体積増た時の地盤変形についての研究が進むことを期待したい。分の 4 つであり,上記の解析解があるため,少ない観.. 火山における地盤変動観測測点のデータからでも逆問題でパラメータを推定しやす火山における地殻変動観測は, 1990 年頃まで,水準い。回転楕円体の圧力源11) の方が観測量と良く一致す測量,光波測距儀による 2 点間の距離変化に加え,傾る場合もあるが,この場合には上記に加え,長軸の方位,斜計,ひずみ計による観測が主力であった。 1990 年代傾斜角,長軸と短軸の比がパラメータに加わり,推定す頃より,火山体全体に観測点を配置することが容易なべきパラメータが 7 つになる。逆問題でそれぞれのパGPS(現在は,GPS 衛星以外の衛星も利用する GNSS)ラメータを推定するには,観測点が相当多くないと有意受信機による変位観測が大きな割合を占めるようになっな解は得られない。マグマが浅部でダイク状に貫入した場合には,変位のてきた。GNSS による変位観測は,信号を発する人工衛星が上空である程度移動しなければ,精度のよい解析結パターンは茂木モデルとは大きく異なる。水平変位は,果が得られない。そのため,時間分解能は低い。しかし,方位により変化する。水平変位は総体的にはダイク直上設置が容易で火山を取り囲むように観測網を作りやすいから遠ざかる方向を向くが,ダイク直上近傍の走向方向ことや,逆問題を解くのに適している変位を直接観測ででは,ダイク直上に向かう方向に変位する。鉛直変位をきることから観測の主力となっている。一方で,次々刻みると隆起のピークはダイク直上から少し離れた場所に々変化する地盤変動を計測する際には,分解能が高い傾あり,直上では沈降する(図―.)。ダイクが鉛直から斜計やひずみ計が利用される。地盤変動観測では,それ傾くと,水平方向,鉛直方向の両方向とも変位のパターぞれの観測項目の特性を考え,色々な観測項目から地下ンが非対称に変わる。多数の観測点で観測することによの状態を推定する。最近では,衛星や航空機に搭載したり,ダイクの水平位置,深さ,走行,傾斜,マグマ貫入合成開口レーダー( SAR )による干渉測位が普及し,量が推定できる。これが大きな威力を発揮するようになってきた。これに地盤変動の計算には,逆問題で圧力源の情報を推定する際の利便性から,ほとんどの場合は前述のように半無限均質完全弾性体を仮定して行われる。不均質な地下構ついては第章で説明するため,ここではこれ以上立ち入らない。.. 火山噴火時における地盤変動の例造,地表面の凹凸などの形状を考慮するには,有限要素火山噴火前には地下にマグマが蓄積するため,適切な法などの数値解法を用いる必要があり,逆問題を解く際観測網で地盤変動を観測すれば,マグマ溜まりの体積がには大変面倒になる。しかし,変位を解析する限りは,増加する様子が捉えられる。例えば, 2011 年 1 月に噴62地盤工学会誌,―() 講  座火した霧島火山周辺では,GNSS,傾斜,ひずみなどでした膜の下に新たなマグマが上昇してきて徐々に火山ガ噴火前後の地盤変動が観測された。GNSS 観測では,噴スが溜まる。火山ガスが高圧になって固化した表面を破火前のマグマ蓄積,噴火時のマグマの放出に伴うマグマり,火山ガスがマグマと共に噴き出す。このような現象溜まりの収縮,その後のマグマの再蓄積が捉えられたが繰り返し発生していたことを示している。(図―.)。水平変位の空間分布から,この時の地盤変動が..で示した茂木モデルでよく説明できることが. その他の観測量と火山噴火分かる。 2011 年 1 月 26 日から 28 日の期間に 3 回の噴火火山噴火の前には,マグマの上昇に前駆して,高温のが続けて発生し,マグマ溜まりから大量のマグマが放出火山ガスが上昇して地表に達すると考えられている。そされたことに対応して,マグマ溜まりが収縮した(図―の証拠に,マグマ噴火の前に水蒸気噴火が発生する事例.左図)。その後,約半年間の地盤変動を見ると,マグが多い。上昇してきた火山ガスは,熱も同時に運んでくマ溜まりにマグマが再蓄積したことが分かった(図―るため,噴火前には噴気も増加し,地下の温度が上昇す.右図)。なお,再蓄積はその後停止した。る。これらを捉えるものとして,全磁力観測,比抵抗観短時間で起こる地盤変動では,時間分解能が高い傾斜測がある。このほかにも,火山ガス観測,地温観測などやひずみの測定が有効である。例えば, 2011 年 3 月かも有力な手段であり,噴火予測に活用されているが,誌らは新燃岳では小規模な噴火が約 1 週間の間隔で断続面の都合で本章では触れない。的に発生した。この時期の火口に近い観測点での傾斜変.. 全磁力観測動,地震活動,噴火発生を図―.に示した。傾斜変動マグマには鉄,マグネシウムなどの強磁性物質を含むは,火口に最も近い傾斜計のみ明瞭な変化が捉えられたので,火山の地下でマグマが冷え固まるときには,地球ので,その圧力源は山頂直下の浅部であると推定されて磁場の方向に帯磁する。一方,地下の温度が上昇すると,いる。火口上がりの傾斜が起こり,その速度が少し減じ岩石は磁気を失い,あたかも地球磁場と反対方向の双極たときに噴火(白矢印)が発生し,傾斜が元に戻るとい磁場が生じたように磁場が変化する。このようにして火う現象が繰り返し発生した。また,傾斜変動に同期して山の活発化による地下の温度変化を磁場の変化として検地震活動が高まる。このような噴火では,山頂近傍での出できる。傾斜変動と地震活動を見ていれば,噴火の発生が予測で地下の温度が上昇すると,高温となった場所の直上のきる。類似の地盤変動と噴火の関係は,以前から桜島火南側では磁場が小さくなり,北側では大きくなる。地球山で発生するブルカノ式噴火時に見られることが知られ磁場は,地球中心にある双極子磁場と近似できるので,ていた。これは,噴火の勢いが低下しながら継続してい北半球では磁力線は北方向に傾斜しているので,磁場はる場合に,火口でマグマ表面が冷やされて固化し,固化北側では小さな正の変化,南側で大きな負の変化となる。つまり,地下の温度上昇によって,正の磁場変化と負の変化が必ず対となって現れ,変化量の絶対値は南側の方が大きい。 2014 年 11 月 25 日にマグマ噴火(白矢印)をした阿蘇山では,噴火の約 1 ヶ月前の 2014 年 10 月末頃(黒矢印)から,第一火口北東方約 300 m にある観測点では磁場が増加し(図―.左),南西約 300 m にある観測点では低下すると言う典型的な熱消磁現象が見られた(図―.右)。磁場の測定には,いくつかの種類のセンサーが用いら図-. 霧島新燃岳2011年噴火時の水平成分地盤変動左噴火時のマグマ溜まり収縮時の変動,右噴火後マグマ再蓄積時の変動れる。核磁気共鳴の原理を用いたセンサーとしては,プロトン磁力計とオーバーハウザー磁力計がある。これらはともに,磁場の大きさ(全磁力)を計測するものである。この他に,高透磁率のコアに励磁用と測定用のコイルを巻いて磁場を測定するフラックスゲート磁力計があり,これは X, Y, Z の 3 成分の磁場が測定できる。これらの磁力計は観測点の環境や,調査・研究対象により使い分けられている。.. 電気伝導度観測金属に比べるとはるかに小さいが,岩石にはわずかに電気を通す性質がある。実際の地下では,個々の岩石の結晶の隙間に地下水や空気が入り込んでいる。岩石の空隙に水が入り込めば電気を通しやすく,更に,火山ガス図-. 霧島新燃岳2011年 1 月噴火後の小規模噴火前後の地震活動と傾斜July, 2016成分が水に溶け込めば電解液となるため一層電気を通しやすくなる。また,一般に岩石では温度が高くなると電63 講  座図―. 阿蘇第一火口周辺の全磁力変化(京都大学理学研究科火山研究センター提出第133回噴火予知連絡会資料を編集改変)気を通しやすくなる。このように,火山噴火の際に大きな役割を果たす地下水の分布,火山ガスの混入,温度の変化により地下の電気伝導度は変化する。地下の電気伝導度を測定する方法は資源探査の分野で図-. 色々な時間スケールで見た 2014 年御嶽山噴火までの時系列(気象庁提出第131回噴火予知連絡会資料を編集改変)発展してきた。火山地域では,地球磁場の変化によって生じる地電流を測定する方法( Magneto Telluric 法)になった。一方で低周波地震は 15 日頃から増加し始めと人工電流源を用いる方法がある。 1986 年に噴火したた。これは図―.で示した地震活動と同じパターンで伊豆大島では,人工電流源による電気伝導度の観測が実ある。更に時間を拡大して噴火直前を見ると,噴火の約施されており,約 1 年前から変動が現れ,噴火の約半10 分前から,これまでにないほど急激に地震活動が高年前からその変動が顕著になった。これは,噴火の約 2まり,震源が浅い場所へと急激に移動した。同時期に山年前より,深部から浅部に徐々に電気伝導度の高い物質頂直下での体積膨張と考えられる急激で極めて大きな地が上昇してきたと解釈されている14)。盤変動(傾斜変動)も観測された15)。. 火山噴火予測火山災害の軽減のためには,事前に噴火の場所,時期,これを踏まえ,それぞれの段階でどれ位確実な予測ができるかを考えてみる。10年単位の中長期的には,「そのうちに噴火するかも知れない」程度の情報しか得られ様式(噴火のタイプ),規模,推移を知り,その対策をていない。1 ヶ月程度の短期的には,これまでの他の火立てることが要望されている。この節では,火山噴火予山での噴火事例を考慮すると,噴火の切迫性が確実に高測の現状,火山監視体制,今後の課題について述べる。まったことは分かる。しかし,地震活動は一時的に高ま.. 火山噴火予測の現状ったが,明瞭な地盤変動は捉えられていなかったことかこれまで述べてきたように,地震,地盤変動,磁場なら,誰もが噴火の可能性を確信するまでには至らないとどの観測により,マグマが火山の地下に蓄積すること,思われる。一方,噴火の約 10 分前からは,明らかに異マグマや火山ガスが移動(上昇)してきたことを観測か常な観測データが捉えられ,水蒸気が地表に噴出していら知ることはできるようになり,噴火場所と時期の予測なくても,この時には既に一連の噴火現象が始まっていはある程度可能となった。しかし,どのようなタイプのたと考えるのが妥当であろう。つまり,噴火直前の異常噴火になるか,噴火の規模,噴火後の推移を予測するたな観測データは,熱水が急激に沸騰し,体積膨張して水めの火山学の知見は十分でない。これらの予測は,それ蒸気噴火が発生した過程を捉えたと考えることができる。ぞれの火山の過去の噴火事例,過去に噴出したマグマのこの時点では,確実な予測ができると考えられる。しか物性などから予測する取り組みがなされているが,観測し,噴火前 10 分間でどれだけ有効な対策が取れたかはデータに基づいた予測の実現までには至っていない。疑問である。このように確度の異なる噴火予測があり,噴火時期の予測について少し詳しく見ると,長期的な予測から直前予測まで,様々な段階の予測がある。例えそれをどのように社会に還元するかについては,今後も議論を重ねる必要がある。ば, 2014 年御嶽山噴火について,噴火発生までの過程現実的には,噴火までの猶予時間が重要であるため,を考えると図―.のようになる。御嶽山では 1979 年確度がいくら高くても噴火の直前予測だけでは限界があ10 月 28 日早朝に,史上初となる中規模の水蒸気噴火がる。そのため,当面,研究として目指すべきは短期予測発生した。その後, 1991 年 5 月と 2007 年 3 月下旬にごや中長期予測の確度を上げることである。この観点から,く小規模な水蒸気噴火が発生した。このことから,御嶽噴火現象やそれに前駆するマグマの蓄積や移動について山は長い眠りから目覚め,中・長期的には火山活動が上の科学的研究を推進することの重要性は高い。昇していたと判断できる。時間軸を拡大して,2014年 9.. 火山監視体制月の噴火の 1 ヶ月前からの短期間で見ると,8 月末から地震活動,地盤変動,電磁気観測などの観測を総合的山頂直下の深さ 3 km 程度の場所で地震活動が始まり,に判断し,火山災害の軽減のために火山監視が行われて9 月11日に活動のピークを迎え,その後地震活動は低調いる。そのため,火口周辺に各種観測装置を設置し,前64地盤工学会誌,―() 講  座節までに述べたような火山活動に関連のあると思われるた複雑な過程である。しかも,発生頻度が低く,それぞ諸現象を毎日24時間休みなく監視し続けている。れの事象を精度よく捉える機会も多くない。今後も火山火山監視の根拠は科学的な観測データに基づいて行われている。観測網の整備の進んでいる火山では,火山周噴火予測の研究を進め,予測の高度化を進めることを続ける必要がある。辺に 10 ~ 20 の地震観測点,地殻変動観測点を持ち,合わせて約 10 程度の全磁力や電気伝導度などの電磁気観測機器が設置されている(個々の火山における観測体制参1)は,気象庁の発行する「日本活火山総覧」16)にまとめられている)。一方で,観測網の整備が遅れている火山も2)ある。しかし, 2014 年御嶽山噴火を受けて,気象庁が山頂近傍に観測点の整備を進めることになり,状況はか3)なり改善したと言える。これにより,噴火直前の現象を見逃すことは,ほとんどの火山でなくなると思われる。.. 今後の課題4)上記のように,確度の高い直前予測については,火山監視体制が整備されてきたことから,かなり手厚くなってきている。しかし,対策を具体化するための猶予時間のある短期予測に関しては,現時点で十分に確度が高い5)とは言えない。また,噴火規模,様式,推移の予測については,確実な予測までの道のりは遠い。観測網がある程度まで整備された過去 20 年間に発生した火山噴火では,この章で述べた前駆現象が観測されている。一方で, 1998 年の岩手山の火山活動のような6)7)例がある。岩手山では他の火山の噴火の前兆として現れる低周波地震の活動,地震活動度の上昇,マグマ貫入を示す地盤変動などの様々な現象が見られたが,最終的に8)は噴火に至らなかった。つまり,噴火に至る準備は整えられたが,最終的に噴火の引き金が引かれなかったと言える。このような「噴火未遂」がなぜ起こるか,逆の言9)い方をすれば噴火の引き金はどのようにして起こるのかと言う問題は依然として未解明であり,噴火予測のため10)解決すべき課題である。噴火時期や場所の短期予測の精度を上げることや噴火規模,様式,推移予測の見通しをつけるためには,極めて複雑な現象である噴火現象を,実験研究,マグマ物性11)に基づく理論研究,観測研究の協働で明らかにし,噴火前に現れた現象を正しく理解する必要がある。このためには,より多くの噴火事例を,より精度の高い観測デー12)タを蓄積し,実験や数値モデルと併せて理解を深めるなど,地道な研究の積重ねが重要であることは論を俟たないであろう。13). あ と が きこの章では,火山噴火予測の科学的な根拠となる地震,14)地盤変動,全磁力などのその他の観測について述べ,噴火に前駆する現象がどの様に現れるかについて説明した。現在行われている火山噴火予測は,観測された現象の科15)学的な理解を進めながら,依然として未解明な部分は過去の観測事象を参考にして推定する未完成なものである。火山現象は,粘性流体であるマグマが浮力で上昇し,周辺の岩体を破壊すると言う力学過程と,脱ガスや化学反応によりマグマ物性が変化すると言う化学過程の混ざっJuly, 201616 )考文献Omori, F.: The Ususan eruption and earthquakes andelevation phenomena. 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  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 66〜66
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71942
  • 内容
  • 新正岡長奥山甲持平松藤村沢村口斐田野本井正 樹友 宏恭毅雅 博祐 輔優正一郎愛 彦粟 津 進葉 山 祥山 口 健仲 山 貴市 川 幸中 原 大宮 岡 修三 田上 野 慎山 名 真関昌村 上 豊LIU Yujian田 内 裕橋 田 弘山 下 勝木 村 博66吾多治司司磯二淳也広則和人之司規会入会株 オリエンタルコンサルタンツ西 浦 清 貴 株 オリエンタルコンサルタンツ内 田 晶 夫 株 野 晶 子 復建調査設計鈴 木徹 国土交通省中国地方整備局奥 名 孝 行 国土交通省中国地方整備局吉 田 敏 晴 国土交通省中国地方整備局板 橋薫 国土交通省中国地方整備局岡 本 永 治前 田 竜 一 (一財)熊本県建設技術センターDUNGCA JONATHAN RIVERA De La Salle University員株 イーエス総合研究所株基礎地盤コンサルタンツ株中部地質株中部地質株 ダイヤコンサルタント株新日鐵住金川崎市役所株五洋建設国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所空港技術研究所株JFE スチール株 不動テトラ株大成建設(公財)鉄道総合技術研究所株東電設計株日本道路株 大林組群馬県藤岡土木事務所株ジェイアール東海コンサルタンツ株基礎地盤コンサルタンツ株三信建設工業株西日本高速道路株 地域地盤環境研究所和歌山大学株 エステック株 不動テトラ株西松建設員(5 月理事会承認)港湾学泉 谷百 間神 馬大和田那 須篠 崎伊 藤江 原陸中 尾野 山安 田斎 藤末 吉横 山肥 前聡幸光志晴建繁郁 香由 梨大 知佳 奈續通 孝優 一賢 吾愛拳 一功 基大 樹生会員東北大学東北大学東北大学茨城大学大学院早稲田大学早稲田大学早稲田大学早稲田大学早稲田大学名古屋工業大学大阪市立大学大阪市立大学大阪市立大学大阪市立大学大阪市立大学地盤工学会誌,―()
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  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 67〜67
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71943
  • 内容
  •     ◆編集後記◆がら社会に貢献することがますます期待されていると感じて本号では,「港湾で用いられている耐震技術」をテーマに,います。先人達の英知を受け継ぎながら後世にどのようなか港湾構造物における巨大地震への対策技術の現状などについたちで引き継ぐか,あらためて考えさせられました。て特集いたしました。地震による被災を幾度と経験してきた最後になりましたが,本号の発刊にあたり,ご多用の折に中で,港湾構造物などの耐震性をより高めることは社会的にご執筆いただいた方々やご尽力いただいた方々に心よりお礼も注目されています。減災・防災のため,地盤工学という学申し上げます。(神谷浩二記)問が果たすべき役割を明示しつつ,多くの異分野と融合しな※印は公益出版部会構成員平 成年 度 役 員会理長 村 上章事 (事業企画戦略室)(総務部)(会員 ・ 支部部)(国際部)(公 益 出 版 部)(調査 ・ 研究部)(基準部)事松 下 克 也監副 会 長大 谷順本 多眞(*)宮 田 喜 壽(*)浜田 中 耕太郎(*)田勝 見武(*)渦 岡 良 介(*)※ 山 下聡(*)西松 本 樹 典(*)仙西 田 耕 一古屋弘田 英中 真治弓橋村頭浩※一明章伸紀古小廣関潤高 猛岡 明司彦一中村裕昭(*)室長,部長平 成  年 度 公 益 出 版 部 会理事・部長理事部員渦鈴越岡 良 介橋 章 浩木 健一郎村 賢 司理事・副会長野 田古利 弘関菊潤池一喜昭伊藤和也渡邉康司杉本映湖平成年度「地盤工学会誌」編集委員会委員長企画・編集グループ 橋 章 浩※副委員長 鈴 木 健一郎※主査 福 永 勇 介委員 浅 野 将 人石 川 敬 祐木 内田 中 大 司西 村聡松 澤主査 正 田 大 輔委員 大 竹雄小 宮 隆 之阪 田主査 長 澤 正 明委員 大 塚 隆 人金 子 賢 治木 元主査 野 村 英 雄委員 柏尚 稔北 出 圭 介清 水主査 野 原 慎太郎委員 鎌 田 敏 幸倉 田 大 輔酒 井委員長 野 田 利 弘委員兼幹事 谷 川 友 浩小 林 浩 二委員 秋 本 哲 平飯 島 功一郎稲 積島 田篤戸 邉 勇 人中 村松 丸 貴 樹森 下 智 貴山 崎第 1 グループ第 2 グループ第 3 グループ第 4 グループ講座委員会大介真京松川村裕之聡久森保田 年博一田 久渡 邉勉諭野々村敦 子澤藤康 生和 謙暁高橋寛行竹内秀克小百合小林孝彰富樫陽太智明原弘行森友宏崇之山口健治真邦貴哉彦之金畠子崇郎一俊成健酒福匂田村澤平成年度「Soils and Foundations」編集委員会委員長菊池委員長三村喜昭副委員長衛副委員長小高猛司渦岡良介※宮田喜壽平成年度「地盤工学ジャーナル」編集委員会名誉会員特別会員伊藤和也※岸田潔会員現在数(平成28年 4 月末現在)148名(国際会員113名含む) 正会員 7,323名(国際会員1,005名含む) 学生会員 691名870団体(国際会員45団体含む) 合計 9,032名・団体会費(年額)正会員 9,600円 学生会員 3,000円 国際会員(特別もしくは正会員に限る)2,000円 特別会員特級 300,000円,1 級 240,000円,2 級 160,000円,3 級 100,000円,4 級 60,000円Soils and Foundations 購読料(会員に限る)12,000円(Online 版ライセンス+冊子版)または8,000円(Online 版ライセンスのみ)地盤工学会誌平成28年 7 月 1 日発行編集発行所公益社団法人2016 地盤工学会July, 2016定価1,728円(本体価格1,600円) 無断転載2016年 7 月号 Vol.64, No.7 通巻702号株「地盤工学会誌」編集委員会印刷所 小宮山印刷工業編集業務代行地盤工学会有 新日本編集企画を禁ずる郵便番号  東京都文京区千石丁目番号電話 (代表)郵便振替 FAX ホームページ URL https://www.jiban.or.jp/Email jgs@jiban. or. jp広告一手取扱株廣業社〒 東京都中央区銀座丁目番号電話 67
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  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 67〜67
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71944
  • 内容
  •     ◆編集後記◆がら社会に貢献することがますます期待されていると感じて本号では,「港湾で用いられている耐震技術」をテーマに,います。先人達の英知を受け継ぎながら後世にどのようなか港湾構造物における巨大地震への対策技術の現状などについたちで引き継ぐか,あらためて考えさせられました。て特集いたしました。地震による被災を幾度と経験してきた最後になりましたが,本号の発刊にあたり,ご多用の折に中で,港湾構造物などの耐震性をより高めることは社会的にご執筆いただいた方々やご尽力いただいた方々に心よりお礼も注目されています。減災・防災のため,地盤工学という学申し上げます。(神谷浩二記)問が果たすべき役割を明示しつつ,多くの異分野と融合しな※印は公益出版部会構成員平 成年 度 役 員会理長 村 上章事 (事業企画戦略室)(総務部)(会員 ・ 支部部)(国際部)(公 益 出 版 部)(調査 ・ 研究部)(基準部)事松 下 克 也監副 会 長大 谷順本 多眞(*)宮 田 喜 壽(*)浜田 中 耕太郎(*)田勝 見武(*)渦 岡 良 介(*)※ 山 下聡(*)西松 本 樹 典(*)仙西 田 耕 一古屋弘田 英中 真治弓橋村頭浩※一明章伸紀古小廣関潤高 猛岡 明司彦一中村裕昭(*)室長,部長平 成  年 度 公 益 出 版 部 会理事・部長理事部員渦鈴越岡 良 介橋 章 浩木 健一郎村 賢 司理事・副会長野 田古利 弘関菊潤池一喜昭伊藤和也渡邉康司杉本映湖平成年度「地盤工学会誌」編集委員会委員長企画・編集グループ 橋 章 浩※副委員長 鈴 木 健一郎※主査 福 永 勇 介委員 浅 野 将 人石 川 敬 祐木 内田 中 大 司西 村聡松 澤主査 正 田 大 輔委員 大 竹雄小 宮 隆 之阪 田主査 長 澤 正 明委員 大 塚 隆 人金 子 賢 治木 元主査 野 村 英 雄委員 柏尚 稔北 出 圭 介清 水主査 野 原 慎太郎委員 鎌 田 敏 幸倉 田 大 輔酒 井委員長 野 田 利 弘委員兼幹事 谷 川 友 浩小 林 浩 二委員 秋 本 哲 平飯 島 功一郎稲 積島 田篤戸 邉 勇 人中 村松 丸 貴 樹森 下 智 貴山 崎第 1 グループ第 2 グループ第 3 グループ第 4 グループ講座委員会大介真京松川村裕之聡久森保田 年博一田 久渡 邉勉諭野々村敦 子澤藤康 生和 謙暁高橋寛行竹内秀克小百合小林孝彰富樫陽太智明原弘行森友宏崇之山口健治真邦貴哉彦之金畠子崇郎一俊成健酒福匂田村澤平成年度「Soils and Foundations」編集委員会委員長菊池委員長三村喜昭副委員長衛副委員長小高猛司渦岡良介※宮田喜壽平成年度「地盤工学ジャーナル」編集委員会名誉会員特別会員伊藤和也※岸田潔会員現在数(平成28年 4 月末現在)148名(国際会員113名含む) 正会員 7,323名(国際会員1,005名含む) 学生会員 691名870団体(国際会員45団体含む) 合計 9,032名・団体会費(年額)正会員 9,600円 学生会員 3,000円 国際会員(特別もしくは正会員に限る)2,000円 特別会員特級 300,000円,1 級 240,000円,2 級 160,000円,3 級 100,000円,4 級 60,000円Soils and Foundations 購読料(会員に限る)12,000円(Online 版ライセンス+冊子版)または8,000円(Online 版ライセンスのみ)地盤工学会誌平成28年 7 月 1 日発行編集発行所公益社団法人2016 地盤工学会July, 2016定価1,728円(本体価格1,600円) 無断転載2016年 7 月号 Vol.64, No.7 通巻702号株「地盤工学会誌」編集委員会印刷所 小宮山印刷工業編集業務代行地盤工学会有 新日本編集企画を禁ずる郵便番号  東京都文京区千石丁目番号電話 (代表)郵便振替 FAX ホームページ URL https://www.jiban.or.jp/Email jgs@jiban. or. jp広告一手取扱株廣業社〒 東京都中央区銀座丁目番号電話 67
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  • 奥付
  • 著者
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 67〜67
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71945
  • 内容
  •     ◆編集後記◆がら社会に貢献することがますます期待されていると感じて本号では,「港湾で用いられている耐震技術」をテーマに,います。先人達の英知を受け継ぎながら後世にどのようなか港湾構造物における巨大地震への対策技術の現状などについたちで引き継ぐか,あらためて考えさせられました。て特集いたしました。地震による被災を幾度と経験してきた最後になりましたが,本号の発刊にあたり,ご多用の折に中で,港湾構造物などの耐震性をより高めることは社会的にご執筆いただいた方々やご尽力いただいた方々に心よりお礼も注目されています。減災・防災のため,地盤工学という学申し上げます。(神谷浩二記)問が果たすべき役割を明示しつつ,多くの異分野と融合しな※印は公益出版部会構成員平 成年 度 役 員会理長 村 上章事 (事業企画戦略室)(総務部)(会員 ・ 支部部)(国際部)(公 益 出 版 部)(調査 ・ 研究部)(基準部)事松 下 克 也監副 会 長大 谷順本 多眞(*)宮 田 喜 壽(*)浜田 中 耕太郎(*)田勝 見武(*)渦 岡 良 介(*)※ 山 下聡(*)西松 本 樹 典(*)仙西 田 耕 一古屋弘田 英中 真治弓橋村頭浩※一明章伸紀古小廣関潤高 猛岡 明司彦一中村裕昭(*)室長,部長平 成  年 度 公 益 出 版 部 会理事・部長理事部員渦鈴越岡 良 介橋 章 浩木 健一郎村 賢 司理事・副会長野 田古利 弘関菊潤池一喜昭伊藤和也渡邉康司杉本映湖平成年度「地盤工学会誌」編集委員会委員長企画・編集グループ 橋 章 浩※副委員長 鈴 木 健一郎※主査 福 永 勇 介委員 浅 野 将 人石 川 敬 祐木 内田 中 大 司西 村聡松 澤主査 正 田 大 輔委員 大 竹雄小 宮 隆 之阪 田主査 長 澤 正 明委員 大 塚 隆 人金 子 賢 治木 元主査 野 村 英 雄委員 柏尚 稔北 出 圭 介清 水主査 野 原 慎太郎委員 鎌 田 敏 幸倉 田 大 輔酒 井委員長 野 田 利 弘委員兼幹事 谷 川 友 浩小 林 浩 二委員 秋 本 哲 平飯 島 功一郎稲 積島 田篤戸 邉 勇 人中 村松 丸 貴 樹森 下 智 貴山 崎第 1 グループ第 2 グループ第 3 グループ第 4 グループ講座委員会大介真京松川村裕之聡久森保田 年博一田 久渡 邉勉諭野々村敦 子澤藤康 生和 謙暁高橋寛行竹内秀克小百合小林孝彰富樫陽太智明原弘行森友宏崇之山口健治真邦貴哉彦之金畠子崇郎一俊成健酒福匂田村澤平成年度「Soils and Foundations」編集委員会委員長菊池委員長三村喜昭副委員長衛副委員長小高猛司渦岡良介※宮田喜壽平成年度「地盤工学ジャーナル」編集委員会名誉会員特別会員伊藤和也※岸田潔会員現在数(平成28年 4 月末現在)148名(国際会員113名含む) 正会員 7,323名(国際会員1,005名含む) 学生会員 691名870団体(国際会員45団体含む) 合計 9,032名・団体会費(年額)正会員 9,600円 学生会員 3,000円 国際会員(特別もしくは正会員に限る)2,000円 特別会員特級 300,000円,1 級 240,000円,2 級 160,000円,3 級 100,000円,4 級 60,000円Soils and Foundations 購読料(会員に限る)12,000円(Online 版ライセンス+冊子版)または8,000円(Online 版ライセンスのみ)地盤工学会誌平成28年 7 月 1 日発行編集発行所公益社団法人2016 地盤工学会July, 2016定価1,728円(本体価格1,600円) 無断転載2016年 7 月号 Vol.64, No.7 通巻702号株「地盤工学会誌」編集委員会印刷所 小宮山印刷工業編集業務代行地盤工学会有 新日本編集企画を禁ずる郵便番号  東京都文京区千石丁目番号電話 (代表)郵便振替 FAX ホームページ URL https://www.jiban.or.jp/Email jgs@jiban. or. jp広告一手取扱株廣業社〒 東京都中央区銀座丁目番号電話 67
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  • タイトル
  • 新・関東の地盤-増補地盤情報データベースと地盤モデル付-(2014年版)
  • 著者
  • 出版
  • 地盤工学会誌 Vol.64 No.7 No.702
  • ページ
  • 発行
  • 2016/07/01
  • 文書ID
  • 71946
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