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出版

全国電子地盤図の作成と利用に関する研究報告書

タイトル まえがき、委員・協力者名簿
著者 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会
出版 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究報告書
ページ 発行 2014/07/25 文書ID 69480
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タイトル 1.研究の概要
著者 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会
出版 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究報告書
ページ 1〜14 発行 2014/07/25 文書ID 69481
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タイトル 2.地域の地盤情報と全国電子地盤図
著者 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会
出版 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究報告書
ページ 15〜23 発行 2014/07/25 文書ID 69482
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タイトル 3.全国電子地盤図システム
著者 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会
出版 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究報告書
ページ 24〜31 発行 2014/07/25 文書ID 69483
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タイトル 4.全国電子地盤図の作成と利用
著者 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会
出版 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究報告書
ページ 32〜36 発行 2014/07/25 文書ID 69484
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タイトル 5.まとめ -今後の展開について-
著者 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会
出版 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究報告書
ページ 37〜39 発行 2014/07/25 文書ID 69485
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タイトル 解 説:各地域の全国電子地盤図
著者 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会
出版 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究報告書
ページ A-1〜A-123 発行 2014/07/25 文書ID 69486
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タイトル 付 録
著者 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会
出版 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究報告書
ページ B-1〜B-11 発行 2014/07/25 文書ID 69487
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  • タイトル
  • まえがき、委員・協力者名簿
  • 著者
  • 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会
  • 出版
  • 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究報告書
  • ページ
  • 発行
  • 2014/07/25
  • 文書ID
  • 69480
  • 内容
  • まえがき『全国電子地盤図』が起案されてから丸7年が経過した。それは,平成 18~22 年度に実施された科学技術振興調整費 重要課題解決型研究「統合化地下構造データベースの構築」(研究代表:独立行政法人防災科学技術研究所)の中の「サブテーマ2 データベース連携・統合化のための分散管理型システムの開発」に設けられた「表層地盤情報データベース連携に関する研究」を,社団法人地盤工学会(現公益社団法人)が担当したことから始まった。その研究の中で『全国電子地盤図』は創起された。安田進委員長(東京電機大学教授)が先導された「表層地盤情報データベース連携に関する研究委員会」(前委員会)で議論したことは,当時,地域に分散し,地域間で技術的な格差もあった地盤情報データベースを,著作権等の問題も含めて種々の課題を解決し連携することは容易でないこと,むしろ困難であるということだったと記憶する。しかしながら“地盤情報データベース連携”の意図するところは,膨大な地盤情報を一つに束ねることでそこから生み出される地域の地盤特性の実像の詳細な解明をもって,たとえば地域における地震動や液状化の危険性の評価(ハザードマップの詳細化)に役立てることであり,その利活用ための地下構造の詳細な地盤モデル化を行うための基礎データを得るということであった。その目的から逆順に発想すれば,全国を対象に各地域の地盤モデルを一様な基準で作成することができれば,連携の障壁となっている諸問題が解決されるとともに別な観点から地盤情報の連携システムが構築できる。それが『全国電子地盤図』の発想の原点であった。さらに,この活動が促進されれば,各地域において地盤情報データベースの構築が進むだけでなく,副次的に,その地盤情報を基にした地域の地盤特性の抽出・研究も進展し活発化すると考えられた。本委員会は,「全国電子地盤図の作成と利用に関する研究」をテーマに掲げ,前委員会で築かれた全国電子地盤図システムを継承し,各地域における電子地盤図作成の推進と全国電子地盤図の利活用の研究を達成目標として3年間の活動に取り組んだ。それをあえて一言で言うならば,それは“全国電子地盤図のプロジェクト化への取り組み”であった。つまり,①全国的に電子地盤図の拡充を図ること,②全国電子地盤図が利用される環境を整え各方面での利用を支援すること,さらに③全国電子地盤図の運用体制を確立することであった。①については,本委員会の活動期間内に前委員会の 9 都市地区から全 34 都市地区へ電子地盤図が拡充された。②については,利活用に必要なシステムの改善を行うとともに電子地盤図の地盤モデルデータの提供方法等の整備を行った。その結果,広域的な活用事例も生まれている。③については,全国電子地盤図がコンピュータシステムであるためにその維持管理が不可欠なことから将来的な運用体制について議論を始めた。「地盤情報の現状と将来,地盤工学会の役割を語るシンポジウム」を開催し,地盤工学研究発表会ディスカッションセッションの場でも議論を深めた。ただし,その結論にはまだ到達していない。これらの課題は,次期委員会(全国電子地盤図の拡張と運用に関する研究委員会)に解決を委ねたい。最後に,本研究は一般財団法人日本建設情報総合センター様の研究助成を受けた。各地域の電子地盤図の作成においては,地盤工学会北陸支部の北陸電子地盤図作成委員会,同関東支部の関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会ほか各位,および本委員会の委員各位に多大なご尽力を賜った。本プロジェクトにご参加・ご協力いただいた皆様に,心よりお礼申し上げます。平成 26 年 7 月全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会委員長山 本浩 司 委員・協力者名簿委 員 長山本 浩司一般財団法人地域地盤環境研究所副委員長村 上哲茨城大学 工学部都市システム工学科幹事若 林亮株式会社イー・アール・エス委員石原 与四郎福岡大学 理学部地球圏科学科委員市村 浩二一般社団法人北陸地域づくり協会委員犬飼 隆義株式会社フォーラムエイト 名古屋事務所委員荏本 孝久神奈川大学 工学部建築学科委員荻野 俊寛秋田大学 大学院工学資源学研究科委員金子 賢治八戸工業大学 工学部土木建築工学科委員河原 荘一郎松江工業高等専門学校 環境・建設工学科委員工藤 里絵応用地質株式会社委員清木 隆文宇都宮大学 大学院工学研究科委員仙頭 紀明日本大学 工学部土木工学科委員大東 憲二大同大学 工学部都市環境デザイン学科委員中西 典明復建調査設計株式会社 大阪支社委員福島 宏文独立行政法人土木研究所 寒地土木研究所委員矢田部 龍一愛媛大学 大学院理工学研究科委員山 中香川大学 工学部安全システム建設工学科委員山本 春行広島大学 大学院国際協力研究科委員保坂 吉則新潟大学 工学部建設学科顧問委員※1安 田進東京電機大学 理工学部建築・都市環境学系顧問委員※2三 村衛京都大学 大学院工学研究科顧問委員※3藤堂 博明基礎地盤コンサルタンツ株式会社顧問委員※4大井 昌弘独立行政法人防災科学技術研究所顧問委員※4稔木村 克己独立行政法人産業技術総合研究所協 力 者※5大 塚長岡技術科学大学 工学部環境建設系協 力 者※5高原 利幸金沢大学 理工研究域環境デザイン学系協 力 者※5村尾 英彦株式会社村尾地研協 力 者※5鴨井 幸彦株式会社村尾技建協 力 者※5藤島 雅也株式会社ホクコク地水協 力 者※5山岸あき子七尾市役所協 力 者※6後 藤山梨大学 大学院医学工学総合研究部協 力 者※6協 力 者※6協 力 者協 力 者※7協 力 者※8※1 前委員会委員長聡畑中 宗憲千葉工業大学 建築都市環境学科土 倉泰前橋工科大学 工学部社会環境工学科藤 井登奥山ボーリング株式会社橋 詰豊八戸工業大学 防災技術社会システム研究センター近藤 隆義一般財団法人地域地盤環境研究所※2 前委員&ATC10 委員長※5 北陸支部 北陸電子地盤図作成委員会検討委員会悟※3 前委員会幹事長※4 前委員会委員※6 関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の※7 八戸地盤情報データベース※8 電子地盤図 Web 閲覧システム作成・管理
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  • タイトル
  • 1.研究の概要
  • 著者
  • 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会
  • 出版
  • 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究報告書
  • ページ
  • 1〜14
  • 発行
  • 2014/07/25
  • 文書ID
  • 69481
  • 内容
  • 1.研究の概要1.1 研究の目的我が国では,戦後の高度成長期あたりから多くの構造物の建造が行われ,それに伴って多数の地盤調査が行われてきた。その地盤調査データ(以下,「地盤情報」という)は各地域の地盤研究等の活動の中で長い年月をかけて蓄積され,1960 年代には地盤図等により一部がまとめられた。1980 年代からはコンピュータの普及とともに地盤情報を広く再利用する気運が高まり,各地域において地盤情報データベース(デジタルデータベース)の構築が活発化した。そして,現在はそのような地盤情報データベースの構築と利活用のための体制づくりが進んできている。このような背景のもと,地盤工学会では 2006 年度(平成 18 年度)から始まった科学技術振興調整費 重要課題解決型研究「統合化地下構造データベースの構築」の補助を得て,「表層地盤情報データベース連携に関する研究」に取り組んだ。その中で,各地域間の連携の手段として「全国電子地盤図システム」を提起し,その研究開発を行ってきた。この地盤情報システムは,各地域が独自の地盤情報の収集方法や整理方法を有していること等の課題に対し,デジタル化された.地盤情報を利用して同じ方式で,250m メッシュで全国の地盤モデルを作成することにより,地.........域の地盤情報を連携しようとする構想である。この研究期間においては,各支部の地盤を代表して大阪,福岡,札幌,松山,新潟,東京,名古屋,仙台,広島の中心部に全国電子地盤図システムを適用し,各地域の地盤への適用性の検証も行いながら各地域の電子地盤図を試作した。この成果は 2010 年(平成 22 年)10 月より Web 上で公開された(http://www.denshi-jiban.jp/)。振興調整費研究は平成 22 年度をもって 5 年間の活動を終了した。以降は,その第2ステージとしてこの成果を継承し発展させることが求められたが,幸いにも,昨今,全国各地で地盤情報のデジタル化が急速に進展し始めており,全国の各地で電子地盤図が作成できる環境となりつつあった。そのようなことから,「全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会」は 2011 年度(平成 23 年度)からの 3 年間,前委員会の活動を引き継ぎ,各地域における電子地盤図作成の母体として各活動を推進し,その作成された電子地盤図が広く社会で利用されるための方策の検討に取り組むこととなった。達成目標:1.各地域における電子地盤図作成の推進(支部活動や委員による作成と支援)2.全国電子地盤図の利活用の研究(システム改良,ハザードマップなどへの適用)※ 以上,本委員会の社団法人地盤工学会調査・研究部への設置申請書(平成 23 年 2 月)および委員募集会告(平成 23 年 4 月,地盤工学会誌)より抜粋。-1- 1.2前委員会の活動「全国電子地盤図」は,地盤工学会に設置された「表層地盤情報データベース連携に関する研究委員会」(以下「前委員会」という)により提起された。この研究活動は,平成 18~22 年度に実施された科学技術振興調整費 重要課題解決型研究「統合化地下構造データベースの構築」(研究代表:独立行政法人防災科学技術研究所)の中の「サブテーマ2 データベース連携・統合化のための分散管理型システムの開発」に設けられた同テーマを地盤工学会が担ったことによる。以下にその経緯と活動の要旨を記す。1)「統合化地下構造データベースの構築」において,地盤工学会は「表層地盤情報データベース連携に関する研究」を担当し,2006 年(平成 18 年)7 月に地盤工学会の調査研究部内に「表層地盤情報データベース連携に関する研究委員会」(委員長:安田進 東京電機大学教授)を設け,地盤工学会本部および各支部から推薦を受けて参画した委員および地質調査業界と自治体からの委員の参加を得て研究を開始した。同委員会は委員長以下 21 名で構成され(平成 22 年度),幹事会と委員会を開催し,研究に取り組んだ。2)本委員会は平成 18 年 7 月に研究を開始し,連携の道具として「全国電子地盤図システム」の構築を提案した。平成 19~20 年度にはそのシステムの具体化作業を行い,平成 19 年度に「全国電子地盤図作成支援システム」を開発し,2008 年度(平成 20 年度)にシステムの実証試験,機能改良と拡張,「電子地盤図表示システム」の開発,及び「全国電子地盤図」閲覧用ユーザーインターフェースの基本設計を行った。2009 年度(平成 21 年度)は,引き続きシステムの実証試験,機能改良と拡張を行うと共に,「全国電子地盤図」閲覧用ユーザーインターフェースを作成し,Web 上での公開準備を行った。3)全国電子地盤図とは,全国を 250m 区画で分割し,深さ 100m より浅い地盤について各区画の地盤モデルを電子的に作成し保存,追記,表示できるシステムで,そこに含まれている情報はインターネット経由で閲覧・ダウンロードができる。各区画の地盤情報は,既存のデータベースをもとに作成される。「全国電子地盤図システム」は「全国電子地盤図作成支援システム」,「電子地盤図表示システム」,「全国電子地盤図公開システム」,「地域地盤情報クリアリングハウス」から構成される。4)研究の内容は,①表層地盤情報データベース連携手法の研究,②全国電子地盤図システムによる地域間地盤情報連携への適用,③全国電子地盤図閲覧システムのカスタマイズ,④地域地盤情報クリアリングハウスシステムの構築などに取り組んだ。5)本委員会では,全国電子地盤図の実証実験として,札幌,仙台,東京,新潟,名古屋,大阪,広島,松山,福岡の電子地盤図を地盤工学会の各支部に委員会を設けて構築した。この時点における全 9 都市の電子地盤図は 2010 年(平成 22 年)よりインターネット上に公開した。※ 以上,「平成 22 年度『統合化地下構造データベースの構築』サブテーマ2 データベース連携・統合化のための分散管理型システムの開発 表層地盤のデータベース連携に関する研究報告書(平成23 年 6 月 30 日 社団法人地盤工学会 同研究委員会)」より抜粋。-2- 1.3本委員会の活動「全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会」(以下,「本委員会」という)は 2011 年度(平成 23 年度)からの 3 年間,前委員会の活動を引き継ぎ,各地域の電子地盤図作成の母体としてその活動を推進し,作成された電子地盤図が広く社会で利用されるための方策の検討に取り組んだ。なお,本研究は,(一財)日本建設情報総合センターの研究助成「全国電子地盤図による地盤情報の有効活用に関する研究」(平成 24 年度公募)の支援を受けた〔本文,表 4-1 に詳細〕。(1) 活動成果委員会設置時に達成目標としたテーマに対して以下の成果を得た。詳細は第4章に述べる。①各地域における電子地盤図作成の推進本委員会および支部活動,関連活用により,前委員会時の成果も含めて 34 都市地区の電子地盤図を作成した。これらは 2014 年 7 月より学会員および一般を対象に,順次,Web 公開(全国電子地盤図:http://www.denshi-jiban.jp/)を開始した。また,関東支部の成果については,「新・関東の地盤(2014 版)」に地盤モデルデータ(DVD 付録)としても取り込まれた。〔電子地盤図の作成〕いずれも一部または周辺地域を含む前委員会(9 地区)‥札幌市,仙台市,東京都※1,新潟市,名古屋市,大阪市,広島市,松山市,福岡市※1(※1 本委員会で地域を拡張またはモデルを更新)本委員会(6 地区)‥秋田市,横手市,平塚市,滋賀県(東域)※2,松江市※2,高松市※2北陸支部 北陸電子地盤図作成委員会(6 地区)‥長岡市,柏崎市,上越市,富山市,金沢市※2,七尾市関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会(9 地区)‥水戸市,埼玉県※2,千葉市※2,川崎市※2,宇都宮市※2,前橋市※2,甲府市※2,習志野市※2,浦安市※2(※2 日本建設情報総合センター研究助成を受けて作成)関連活動(4 地区)‥京都市(京都大学),八戸市(八戸工業大学),静岡県(東京電機大学),高知市(四国技術事務所 四国管内基礎地盤情報構築検討委員会)② 全国電子地盤図の利活用の研究本委員会では,電子地盤図の利活用の方法について議論し,たとえば液状化判定のための地下水位(孔内水位)データの追加等のシステム改良等を行った。利活用の具体例としては,以下の検討事例を得た(電子地盤図データセットの提供)。また,「新・関東の地盤(2014 版)」においては,各種判定基準による地盤の液状化簡易判定計算法に基づいた液状化判定ソフトウェアの付録,等価線形化法に基づいた一次元地震応答解析ソフトウェアを用いた地震応答解析の手引き,地盤モデルの表示ソフトウェアの活用法が掲載された。■液状化による戸建て住宅の被災危険マップ作成(東京電機大学)■高性能計算による地盤構造を考慮した広域の構造物応答解析システムの開発(東京大学)(文献)藤田航平・市村強・堀宗朗・M. L. L. Wijerathne, 田中聖三:多数の地震シナリオに対する高分解能な都市震災想定のための HPC による基礎検討,土木学会論文集 A2(応用力学), Vol. 69, No. 2, pp. I_415-I_424, 2013. ほか-3- (2) シンポジウム・報告会「全国電子地盤図」プロジェクトの継承方法などをテーマに,地盤工学研究発表会ディスカッションセッション,シンポジウム,本委員会の研究成果の報告会を開催した。① 地盤工学研究発表会ディスカッションセッション2011 年/第 46 回(神戸)地盤情報データベースの整備とその利活用全国各地で地盤情報データベースの構築や公開が進められており,それらを用いた研究や利活用事例も数多く集まりつつある。また,地盤情報は「国民共有の財産である」という認識のもと,地盤や土木,建築等の専門技術者のみならず,広く国民一般が利用できる環境も整備されつつある。また,これらの成果の一端として作成されたハザードマップについての自治体や専門家からの視点とともに,住民を主体とする受け手側の視点も考慮した利活用のあり方についても議論を行い,地盤情報データベースの品質管理や維持管理,運営方法等に関して一般発表と討議を行う。2012 年/第 47 回(八戸)地盤情報データベースとその利活用全国各地で地盤情報データベースの構築や公開が活発である。地盤工学会においても,平成 18 年度からの科学技術振興調整費研究「統合化地下構造データベースの構築」により起案された『全国電子地盤図』が Web 公開を始めた。そのような活動は地盤情報の重要性が認知されてのことであるが,利活用については更に技術の積み重ねが必要である。地震防災や大規模建設プロジェクトさらに個人レベルに至る利活用の技術と方向性について,相互紹介(一般発表)と討議を行う。第 1 部:一般発表「地盤のモデル化と地域特性の抽出など」(9 編)第 2 部:一般発表「地盤情報データベースによる地震ハザード予測など」(8 編)第 3 部:ディスカッション「東日本大震災における地盤情報の活用に学ぶこと」① 話題提供「造成地被害と地盤情報」佐藤信宏(復建技術コンサルタンツ)② 話題提供「八戸地盤情報DBの今後の地震防災への活用)」長谷川明(八戸工大)2013 年/第 48 回(富山)地盤情報の提供とその利活用の将来展開全国で地盤情報データベースの構築や公開が活発である。地盤工学会においても,『全国電子地盤図』の構築と Web 公開を進めている。このように地盤情報に関わる活動が全国的に進展しその環境が急速に整備される中,社会への地盤情報(データベース)の提供とその利活用について,大きな視点からその展開に取り組む段階にある。また,全国電子地盤図については,地盤工学会の社会貢献の一環としての重要性も示唆される。これらの点について,学会内での議論を高める。第 1 部:一般発表(5 編)発表者和文題目山本 浩司全国の地盤情報データベースおよび全国電子地盤図の作成状況大井 昌弘地盤情報に関する最近の動向三村地域地盤の解釈と電子地盤図作成について-近江盆地を例として-衛清木 隆文書籍「関東の地盤」における電子地盤図とその活用例安田地盤データを用いた地震時ハザードマップの作成の現状と課題進第 2 部:ディスカッション「全国電子地盤図の将来に向けた地盤工学会の役割」-4- ②「地盤情報の現状と将来,地盤工学会の役割を語るシンポジウム」地盤情報(データベース)に関わる活動が全国的に進展し,その環境が急速に整備される中にあって,公益社団法人としての地盤工学会が今後,地盤情報に対してどのような役割を果たすべきか,その方向と体制を定める時期にあると考えられる。そのことから,本シンポジウムは学会長をはじめ学会執行部・事務局,関係委員,学会会員および一般の方々の参加を得て,その役割と進む方向を模索し論議する場として開催した。本シンポジウムの開催報告は,巻末付録に示す。【開催内容(会告)】主催:地盤工学会,全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会,ATC10 国内委員会地盤工学会では平成 18~22 年度に科学技術振興調整費〔重要課題解決型研究〕の補助を得て「表層地盤に関する地盤データの連携に関する研究」に取り組み,地域間連携等の手段として「全国電子地盤図システム」を提起し,研究開発を行ってきました(学会ホームページに報告書を掲載)。この地盤情報システムは各地域が独自の地盤データ収集方法や整理方法を有していること等の課題に対して,デジタル化された地盤データを利用して 250m メッシュで全国の地盤モデルを同じ方式で作成することによって地域の地盤情報を連携しようとする構想です。現時点で,各支部の地盤を代表して 9 都市部の電子地盤図を作成し,学会ホームページより Web 上で公開しており,これまでに約6万回ものアクセスを得ています(多くの方が全国で閲覧)。この活動は,2011 年度(平成 23 年度)からは「全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会」に引き継ぎ,更なる全国展開と利活用の拡大に取り組んでいます。また,この活動とも呼応するように,各支部地域においては地盤情報データベースの地域的整備(体制づくり)が組織的に進められています。このように,地盤情報に関わる活動が全国的に進展しその環境が急速に整備される中で,公益社団法人として地盤工学会が今後,地盤情報に対してどのような役割を果たすべきか,その方向と体制を定める時期にあると考えます。本シンポジウムは,学会会長をはじめ学会執行部・事務局,関係委員,学会会員および一般の方々の参加を得て,その役割と進む方向を模索し議論する場として開催するものです。ぜひ多くの皆様方のご参加をお待ちしております。日時:平成 24 年 11 月 14 日(水) 13:00~17:00場所:地盤工学会 大会議室(東京都文京区千石 4-38-2)論文募集:なし定参加費:無料。ただし資料代(1000 円程度)を徴収予定員:80 名プログラム:第1部第2部地盤情報データベースの現状話題提供(1) 全国の地盤情報データベースの整備状況山本浩司(地域地盤環境研究所)話題提供(2) 統合化地下構造データベースの構築大井昌弘(防災科学技術研究所)全国電子地盤図の作成と利用話題提供(3) 全国電子地盤図とその作成状況村上哲(茨城大学)話題提供(4) 全国電子地盤図の活用事例安田進(東京電機大学)第3部 全体ディスカッションテーマ:「地盤情報に地盤工学会が果たすべき役割と将来の体制」討議者:地盤工学会(会長ほか),研究委員会(委員長ほか),会員・一般参加者司 会:三村 衛(京都大学)-5- ③「全国電子地盤図の作成と利用に関する研究報告ワークショップ」(2014 地盤工学研究発表会プレ発表会)本委員会の研究成果を報告する場として,全国電子地盤図の作成と利用に関する研究報告ワークショップを開催した。【開催内容】全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会は,『全国電子地盤図』の拡充と活用に取り組んできました。この地盤情報システムは,平成 18~22 年度科学技術振興調整費課題「統合化地下構造データベースの構築」の中で地盤工学会(表層地盤に関する地盤データの連携に関する研究)が提起・開発したもので,①ボーリングデータを基礎に地盤工学的に適切な解釈を加え,全国統一した方法で浅層の地盤モデル(250m メッシュ毎の工学的基盤以浅の土質と N 値の代表値)を作成し,②個々のデータの著作権,所有権の制約のない地盤情報を社会に還元することを目的としています。本委員会は,平成 23~25 年度の活動を経て,既に Web 公開されていた 8 地区の電子地盤図を約 30 都市域に拡大しました(平成 26 年度に公開)。本ワークショップでは,各地域の電子地盤図(地盤特性)を紹介するとともに,地震防災への利用や地域の標準となる地盤情報など,種々にその活用が期待される全国電子地盤図の今後の展開について議論を深めたいと思います。※ http://www.denshi-jiban.jp/日時7 月 14 日(月)13:00~17:00場所北九州国際会議場3F 32 会議室参加費無料資全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会報告書,その他料プログラム:司会:若林 亮(イー・アール・エス,幹事)13:00~13:15開会挨拶・活動報告13:15~13:30全国電子地盤図の解説13:30~15:40成果報告:各地域の電子地盤図とその地盤特性山本浩司(地域地盤環境研究所,委員長)村上・関東地域(水戸,川崎,千葉,宇都宮など)(埼玉,甲府)・中部地域(名古屋)(静岡)・関西地域(大阪,京都)・中国地域(広島,松江)・四国地域(高松,松山,高知)・北陸地域(長岡,柏崎,上越)(富山,金沢,七尾)・東北地域(八戸)・九州地域(福岡)15:45~16:55哲(茨城大学)清木隆文(宇都宮大)工藤理絵(応用地質)大東憲二(大同大)安田 進(東京電機大)山本浩司(地域地盤研)河原荘一郎(松江高専)山中 稔(香川大)保坂吉則(新潟大)高原利幸(金沢大)橋詰 豊(八戸工大)石原与四郎(福岡大)ディスカッション:全国電子地盤図と地盤情報の今後の展開地盤情報紹介:九州地盤情報データベース瀬崎満弘(宮崎大)全国 77 都市の地盤と災害ハンドブック 安田 進(東京電機大)大井昌弘(防災科研)話題提供(1) 地盤情報に関する社会的動向話題提供(2) 電子地盤図の高精度モデル化の取り組み三村 衛(京都大学)全体ディスカッションコーディネーター:山本浩司(地域地盤環境研究所)16:55~17:00閉会挨拶(新委員会の設置について)-6-村上哲(茨城大学,新委員長) (3) 全国電子地盤図に関するルールづくり「全国電子地盤図」のシステムおよび利用方法に関して,以下の規約等のルールを定めた(一部は,前委員会時に規定)。各規約等は,巻末付録に示す。【規約等要旨】① 全国電子地盤図作成支援システム 利用規約本利用規約は,全国電子地盤図作成支援システムの利用方法を定める。利用者は,公益社団法人地盤工学会に全国電子地盤図作成支援システム利用申請書を提出のうえ,利用許可を受ける。(規約)・定義,・利用手続き,・システムの管理,・利用目的,・システム利用上の責務,・不正使用,第三者への譲渡の禁止,・利用成果の公表(提出書類書式)・全国電子地盤図作成支援システムの利用申込・全国電子地盤図作成支援システムの利用報告(対象地域の地盤解説)② 全国電子地盤図作成支援システムの利用許可に関する審査内規本審査内規は,「全国電子地盤図作成支援システム利用規約」にもとづく,全国電子地盤図作成支援システムの利用申請に対し,公益社団法人地盤工学会が行う利用許可に関する審査方法を定める。(内規)・審査会,・審査基準,・審査の対応手順など③「全国電子地盤図」研究利用(データセット提供)の手引き本手引きは,「全国電子地盤図」のウェブサイト(全国電子地盤図サイト)で公開されている「地盤モデル」のデジタルデータについて,研究利用を目的とした大学研究者等にデータセットとして提供するための利用手順を定めたもの。(内容)・利用の手続き ‥「全国電子地盤図」研究利用の申込書の提出からデータ提供まで・利用のルール ‥「全国電子地盤図の利用規約」の遵守,研究成果の報告義務・提出・連絡先 ‥ 地盤工学会全国電子地盤図担当宛(提出書類書式)・「全国電子地盤図」研究利用(データセット提供)の申込書・「全国電子地盤図」研究利用報告書-7- (4) 委員会・幹事会委員会・幹事会の開催内容は,以下の各一覧表に示すとおりである。2011 年度(平成 24 年度)の活動会議年月日,場所議題第 1 回委員会2011 年 7 月 4 日15:00~17:15地域地盤環境研究所7階会議室1.委員紹介2.全国電子地盤図に関わる研究経緯3.全国電子地盤図の解説4.今後の進め方全国電子地盤図の作成担当エリア第 2 回委員会2011 年 9 月 8 日15:30~17:45愛媛大学工学部2 号館 2 階 214 号室環境建設工学科会議室1.全国電子地盤図作成支援システムの導入について2.震災後の地盤情報に関する最近の動き3.今後の進め方について‥電子地盤図作成分担/プロジェクトの今後のアクション4.その他‥作成支援システムの公開/関東の地盤第 1 回幹事会2011 年 10 月 21 日15:00~17:30地盤工学会館3階会議室1.AICCE'12-GIZ20122.第 47 回研究発表会3.関東の地盤‥当委員会の活動との関係4.作成支援システム‥公開時の取り扱い5.今後の進め方‥シンポジウムの開催6.その他‥建設産業の海外展開支援 WG/社会基盤情報流通推進協議会/日経 BP の件(断り)東北地区電子地盤図システム教習会2011 年 12 月 9 日14:00~17:00秋田大学工学資源部1 号館 4 階 419 室1.データの引渡し‥秋田電子地盤図のセットアップ2.電子地盤図システム説明(導入方法・操作方法)3.ボーリング入力の方法について‥DIG 入力システム第 3 回委員会2012 年 1 月 13 日13:00~17:30地盤工学会館3階会議室◆電子地盤図作成支援システム教習会1.AICCE'12-GIZ20122.第 47 回研究発表会ディスカッション・セッション3.基礎工 論文投稿4.研究助成の申請5.東北地区教習会報告および各地の進捗状況6.電子地盤図作成システムの公開について‥申請書および利用規約(案)7.その他‥シンポジウムの準備第 2 回幹事会2012 年 3 月 7 日13:00~14:20地盤工学会館地下会議室1.関東支部の委員会活動状況および各地域における電子地盤図作成予定2.作成支援システム利用規約3.その他‥電子地盤図のあり方や今後について議論するシンポジウム(公開討論会)全国電子地盤図作成支援システム教習会2012 年 3 月 30 日11:00~17:00地盤工学会館3階会議室1.全国電子地盤図とその作成方法の概要説明2.全国電子地盤図作成支援システムのセットアップ方法等3.演習:全国電子地盤図作成支援システムのセットアップ-8- 2012 年度(平成 24 年度)の活動会議年月日,場所議題第 1 回幹事会2012 年 6 月 12 日15:00~17:00地盤工学会3階小会議室1.H23 年度の活動および前回幹事会の議事録確認等2.学会への活動報告(委員会活動レビュー)3.研究助成金の申請4.電子地盤図作成支援システムの利用規約・申請書5.地盤工学会八戸DS・第1回委員会6.地盤工学会と地盤情報のあり方(シンポジウム)7.各地域の進捗状況第 1 回委員会2012 年 7 月 14 日16:30~18:00八戸工業大学教養棟 3F G3141.新委員紹介 2.H23 年度活動と前回幹事会議事録確認等3.報告事項・学会活動報告(委員会活動レビュー)・研究助成の申請4.電子地盤図作成支援システムの利用規約・申請書5.地盤工学会と地盤情報のあり方(シンポジウム)6.各地域の進捗状況と今後の予定第 2 回幹事会2012 年 10 月 12 日13:00~14:00同下1.JACIC 助成金(関東支部メンバーへの分配)2.電子地盤図(システム利用申請,関東の地盤2の扱い)3.地盤工学会 DS(地盤情報セッションの新設依頼)第 2 回委員会2012 年 10 月 12 日(ATC10 合同) 14:00~17:00地盤工学会地下会議室1.ゲスト紹介,委員自己紹介2.ATC10 からの報告3.全国電子地盤図委員会からの報告・作成支援システムの利用申請(規約一部修正,許可審査内規)・研究利用(データセット提供)の手引き,申請案件4.第 48 回地盤工学研究発表会(富山)DS5.全国電子地盤図の概要と作成状況6.全国電子地盤図の利活用について〔紹介〕公開以後の注目例,地震動予測への適用例7.「地盤情報の現状と将来,地盤工学会の役割を語るシンポジウム」・開催内容の確認,進め方と役割分担など・「地盤情報に地盤工学会が果たすべき役割と将来の体制」意見交換関東支部電子地盤図説明2012 年 11 月 14 日11:00~12:00地盤工学会 小会議室モデル化層の設定方法について〔説明〕全国電子地盤図作成の考え方シンポジウム2012 年 11 月 14 日13:00~17:00地盤工学会地下会議室地盤情報の現状と将来,地盤工学会の役割を語るシンポジウム・第 1 部 地盤情報データベースの現状(話題提供2件)・第 2 部 全国電子地盤図の作成と利用(話題提供2件)・第3部 全体ディスカッション「地盤情報に地盤工学会が果たすべき役割と将来の体制」第 3 回幹事会2013 年 1 月 23 日15:00~17:00地盤工学会3階小会議室1.作成支援システムの利用申請と JACIC 研究助成金の分配2.地盤情報シンポジウムの開催報告3.地盤工学会富山の地盤情報 DB セッションとDSの内容4.「地質地盤情報整備法検討会」からの協力要請第 3 回委員会2013 年 3 月 5 日≪全国電子地盤図委員会≫1.作成支援システムの利用申請と JACIC 研究助成金の分配-9- 2.各地域の電子地盤図の作成状況について(報告・確認)3.全国電子地盤図の利活用について(意見交換;次回へ)≪話題提供≫(1)「神奈川の地盤と電子地盤図の作成(仮)」【荏本委員】(2)「ボーリングデータベースを用いた3次元地盤・地質モデルの構築とその活用」【石原委員】≪& ATC10 合同会議≫4.「地盤情報の現状と将来,地盤工学会の役割を語るシンポジウム」(報告)5.日本学術会議の提言「地質地盤情報の共有化に向けて」などの情報【沖村委員】6.第 48 回地盤工学研究発表会(富山)DS の開催内容7.ATC10 懸案事項2013 年度(平成 25 年度)の活動会議年月日,場所第 1 回委員会2013 年 5 月 15 日(ATC10 合同) 13:00~17:00地盤工学会 会議室議題≪合同会議≫1.全国電子地盤図委員会の議題(1) 前回議事録の確認,委員名簿(所属の変更等)の確認(2) 学会への活動報告(委員会活動レビュー)(3) JACIC 研究助成とスケジュールについて(確認)2.ATC10 の議題(1) 前回議事録の確認,委員名簿(所属の変更等)の確認3.共通議題(1)(仮称)地質・地盤情報活用協議会の設立会議(4/15)(2) 地盤情報シンポジウムの開催報告(3) 第 48 回地盤工学研究発表会(富山)DS4.全国電子地盤図(1) 各地域の電子地盤図の作成状況について(報告・確認)(2) 全国電子地盤図の利活用について(意見交換)≪全国電子地盤図話題提供≫・八戸の地盤と電子地盤図橋詰豊氏(金子委員代理)・秋田市の地盤と電子地盤図の作成-これまでの進捗状況-荻野俊寛委員・電子地盤図作成におけるボーリング空白メッシュ補間に関するアプローチ三村 衛委員第 2 回委員会2013 年 7 月 24 日(ATC10 合同) 13:30~15:00富山県民会館 307 号室≪全国電子地盤図委員会&ATC10 合同会議≫1.全国電子地盤図委員会の議題(1) 前回議事録・委員名簿の確認(2) 各地域の電子地盤図の作成状況について(報告・確認)(3) 今後のスケジュールについて2.共通議題(1) 地質・地盤情報法整備推進協議会について3.地域防災対策支援研究プロジェクト(第 2 次公募)-10- 第 1 回幹事会2013 年 10 月 11 日15:00~17:00地盤工学会 会議室1.本年度の活動状況,議事内容2.電子地盤図の作成状況,報告会(第3回委員会)・本委員会の担当・関東の地盤の担当3.次年度地盤工学会DSの申し込み(ATC10)4.第2回 地質・地盤情報法整備推進協議会5.次年度以降の活動体制について・地域防災対策支援研究プロジェクト(第 2 次公募)・活動継続の方法(新委員会と目標,体制)6.その他・委員会予算,JACIC 助成の収支状況第 3 回委員会2013 年 11 月 25 日地盤工学会 会議室≪報告・審議≫1.本年度の活動状況,議事内容2.報告事項(1)次年度地盤工学会DSの申し込み(ATC10)(2)第2回 地質・地盤情報法整備推進協議会(3)次年度以降の活動体制について(新委員会の申請)3.確認・審議事項(1)電子地盤図の作成状況(本委員会&関東の地盤)(2)委員会報告書および JACIC 助成研究報告書の作成(3)委員会成果報告会の開催4.その他≪電子地盤図の作成報告≫・「関東の地盤」:宇都宮市(清木委員),水戸市(村上委員),埼玉県(和田委員)・電子地盤図委員会:福岡市(石原委員),秋田市(荻野委員),松江市(河原委員),高松市(山中委員),長岡市・柏崎市・上越市(保坂委員),富山市・金沢市・七尾市(村尾様)第 4 回委員会2014 年 3 月 26 日地盤工学会 会議室1.本年度の活動状況,前回議事内容2.全国電子地盤図の利用について(1)研究利用報告(東京大学)(2)研究利用申請(東京電機大学)(3)バナーリンク依頼(ほくりく地盤情報システム)3.次年度以降の活動体制(新委員会の承認)4.地盤工学研究発表会など(1)地盤工学研究発表会DS(ATC10)(2)地盤工学研究発表会・地盤情報セッション(3)その他(GIZ2014)5.全国電子地盤図委員会の研究報告(1)地盤工学研究発表会・プレ発表会(2)委員会報告書(構成,印刷,状況確認)および JACIC 助成研究報告書の作成6.その他(1)GIZ2014(2)次期委員会の外部資金調達に関して-11- 1.4研究関連論文リスト1)安田 進・藤堂博明:表層地盤情報データベース連携に関する研究,シンポジウム 統合化地下構造データベースの構築に向けて 予稿集,防災科学技術研究所,pp.35-40,2007.2)三村 衛・山本浩司・安田 進・藤堂博明:表層地盤の電子地盤図作成について,第2回シンポジウム「統合化地下構造データベースの構築」データベースの連携で築く公共の地盤情報 予稿集,防災科学技術研究所,pp.31-36,2008.3)山本浩司・三村 衛・吉田光宏:全国電子地盤図の作成と地盤防災への適用性に関する研究−電子地盤図作成手法の構築−,京都大学防災研究所年報51号,pp.331-338,2008.4)藤堂博明・安田 進・三村 衛・村上 哲・大井昌弘・山本浩司:表層地盤のデータベース連携に関する研究-全国電子地盤図の構築に向けて-,第43回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.69-70,2008.5)山本浩司・三村 衛・三田村宗樹・大島昭彦・小田和広:大阪平野における電子地盤図の作成-パイロットスタディー-,第43回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.71-72,2008.6)三村 衛・吉田光宏・山本浩司・近藤隆義:地盤情報データベースによる代表的地盤情報の抽出~電子地盤図作成手法について~,第43回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.73-74,2008.7)廣岡明彦・橋村賢次・伊東周作・石原与四郎:電子地盤図作成における福岡地区の課題,第43回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.75-76,2008.8)安田進・藤堂博明・三村衛・山本浩司:表層地盤情報データベース連携に関する研究,第3回シンポジウム「統合化地下構造データベースの構築」研究成果の中間報告 予稿集,防災科学技術研究所,pp.49-58,2009.9)山本浩司・三村 衛・矢田部龍一・近藤隆義:全国電子地盤図の作成と地盤防災への適用性に関す る 研究 -地 域 への 適用 と 閲覧 機能 の 視覚 化- , 京都 大学 防 災研 究所 年 報, 第 51号 B2,pp.371-381,2009.10) 藤堂博明・安田進・三村衛・村上哲・大井昌弘・山本浩司:表層地盤のデータベース連携に関する研究-全国電子地盤図の構築に向けて(その2)-,第44回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.179-180,2009.11) 廣岡明彦・橋村賢次・伊東周作・石原与四郎:福岡地区における電子地盤図の作成,第44回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.181-182,2009.12) 石川達也・福島宏文・遠藤秀博・今泉浩明:札幌地域における電子地盤図の作成,第44回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.183-184,2009.13) 矢田部龍一・長谷川修一・廣田清治・前田裕也・山本浩司:松山平野における全国電子地盤図の作成,第44回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.185-186,2009.14) 藤堂博明・山本浩司:地盤情報データベースの利活用に対する地盤工学会の取り組み,第4回シンポジウム「統合化地下構造データベースの構築」利活用に向けての展望と課題 予稿集,防災科学技術研究所,pp.57-62,2010.15) 安田 進・藤堂博明・三村 衛・山本浩司・近藤隆義:全国電子地盤図のWeb公開と利活用について,第45回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.131-132,2010.16) 三村 衛・吉田光宏・北田奈緒子:京都盆地の電子地盤図作成について,第45回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.125-126,2010.17) 添田祐友・佐藤高央・大塚 悟・保坂吉則・鴨井幸彦・市村浩二:新潟地区における電子地盤図の作成-浅層地盤特性と新潟地震被害-,第45回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.127-128,-12- 2010.18) 佐藤雄太・佐藤 崇・金子賢治・鈴木久美子・熊谷浩二:八戸地域における電子地盤図の作成,第45回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.129-130,2010.19) 安田 進・渡部 博一:電子地盤図を用いた東京中心部の地震時の揺れに関する検討,第13回日本地震工学シンポジウム, pp.2019-2026,2010.20) 安田 進・山本浩司・三村 衛・藤堂博明:表層地盤情報の連携と統合に向けた全国電子地盤図の構築,第5回シンポジウム「統合化地下構造データベースの構築」プロジェクト5カ年の研究盛会報告と地盤情報のさらなる利活用に向けて,防災科学技術研究所,pp.27-34,2011.21) 藤堂博明・安田 進・三村 衛・山本浩司:表層地盤情報の連携に向けた全国電子地盤図の構築と公開,第46回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.199-200,2011.22) 仙頭紀明・菅野友貴・高橋一雄・布原啓史:仙台地域における電子地盤図の作成,第46回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.191-192,2011.23) 大東憲二・犬飼隆義・中野正樹:地盤情報データベースを用いた名古屋市域の地盤構造のモデル化,第46回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.193-194,2011.24) 土田 孝:広島市中心部の電子地盤図の作成とその活用,第46回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.195-196,2011.25) 森田潤也・三村 衛・北田奈緒子:電子地盤図の更新統層への展開~大阪平野を例として~,第46回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.197-198,2011.26) Hiroaki Todo, Mamoru Mimura, Ssusumu Yasuda, Koji Yamamaoto: Development of ‘Nation-wideElectronic Geotechnical Database Systems’ in Japan, International Conference on Geotechnics forSustainable Development (Geotec Hanoi 2011), pp. 697-704, 2011.27) HIROAKI TODO, KOJI YAMAMOTO, MAMORU MIMURA ,SUSUMU YASUDA : NATION-WIDEELECTRONIC GEOTECHNICAL DATABASE SYSTEMS IN JAPAN - 5-YEAR DEVELOPMENTEFFORT BY JAPANESE GEOTECHNICAL SOCIETY -, International Symposium on Advances inGround Technology and Geo-Information (IS-AGTG), 2011.28) 山本浩司・安田 進・藤堂博明・村上 哲・若林 亮:全国電子地盤図の構築と将来構想,第9回地盤工学会関東支部発表会 Geo-Kanto,地盤工学会関東支部,2012.29) 藤井 登・仙頭紀明・三浦健夫・和賀征樹・藤原直哉:橫手地域における電子地盤図の作成,第48回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.213-214,201230) 市川裕一朗・野添重晃・金子賢治:八戸地域の電子地盤図を利用した一次元地震応答解析,第46回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.229-230,2012.31) 安田 進・橋本 尚・石田 将貴:東日本大震災時の東京の揺れと電子地盤図を用いた解析,第48回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.239-240,2012.32) 安田 進・橋本 尚:東京東部の電子地盤図作成と地震応答解析,第9回地盤工学会関東支部発表講演集,OS-4,2012.33) 山本 浩司・三村 衛・村上 哲・若林 亮:全国の地盤情報データベースおよび全国電子地盤図の作成状況,第48回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.117-118,2013.34) 三村 衛・大加戸彩香・北田奈緒子・井上直人:地域地盤の解釈と電子地盤図作成について~近江盆地を例として~,第48回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.121-122,2013.35) 清木隆文・龍岡文夫・安田 進:書籍「関東の地盤」における電子地盤図とその活用例,第48回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.123-124,2013.-13- 36) 工藤 里絵:埼玉地区における電子地盤図の作成,第48回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.239-240,2013.37) 河原荘一郎・土江大輔:全国電子地盤図を用いた松江市橋北地区の表層地盤特性,第48回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.241-242,2013.38) 柳澤雅人,藤堂博明,荏本孝久:ボーリングデータベースによる電子地盤図の作成に関する研究―川崎市における首都高速道路・横浜羽田線に沿う沖積層の地盤モデルを例として―,第48回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.249-250,2013.39) 村尾英彦・高原利幸:富山市における電子地盤図作成,第48回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.251-252,2013.40) 藤島雅也・高原利幸:金沢市周辺の電子地盤図の作成状況と課題,第48回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.253-254,2013.41) 山岸あき子・高原利幸:七尾市周辺の電子地盤図の作成状況と課題,第48回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.255-256,2013.42) 市村浩二・大塚 悟:新潟県中越地域の電子地盤図作成と災害履歴との比較,第48回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.259-260,2013.43) 安田 進・橋本 尚・原田優香:千葉市の地盤モデル作成と液状化簡易判定,第48回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.263-264,2013.44) 村上 哲・山本浩司・若林 亮:全国電子地盤図の構築と利活用,地盤工学会誌,地盤工学会,Vol.61,No.6,pp.12-15,2013.45) 王寺秀介・龍岡文夫・安田 進・清木隆文:「新・関東の地盤」における地盤情報データベースとその活用例,第49回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.107-108,2014.46) 山本浩司・村上 哲・若林 亮・近藤隆義:全国電子地盤図の拡大展開,第49回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.109-110,2014.47) 安田 進・石川敬祐・五十嵐翔太:浦安市における地盤モデルの作成とそれを用いた液状化判定,第49回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.255-256,2014.48) 清木隆文・島田大輔・梅原一輝:栃木県内の地盤情報データと地盤モデル構築の試み,第49回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.259-260,2014.49) 中田裕樹・荏本孝久・藤堂博明:電子地盤図作成支援プログラムによる表層地盤図に関する研究―平塚市への適用―,第49回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.261-263,2014.50) 山中 稔・長谷川修一:高松平野の電子地盤図の作成,第49回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.281-282,2014.51) 河原荘一郎・土江大輔・上杉耕平:全国電子地盤図を用いた松江平野の表層地盤特性,第49回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.283-284,2014.-14-
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  • タイトル
  • 2.地域の地盤情報と全国電子地盤図
  • 著者
  • 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会
  • 出版
  • 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究報告書
  • ページ
  • 15〜23
  • 発行
  • 2014/07/25
  • 文書ID
  • 69482
  • 内容
  • 2.地域の地盤情報と全国電子地盤図2.1 全国に集積された地盤情報 1)(1) 地盤情報データベースの歴史1970 年代初頭に始まった地盤情報データベースの開発は,それ以降のコンピュータ・情報通信技術の発達の歴史とともに大きく進展し,各方面で本格的なデータベースを構築するに至った。これは,一組織が自己の地盤情報を保管・再利用することから,地域のコンソーシアムとしてまたは全国規模で地盤情報データベースを整備・構築することにより,社会が地盤情報という資産を共有化し,様々な用途に地盤情報を再利用する段階(時代)に入ったことを意味している。図 2-1 に地盤情報データベースの歴史的変遷の大きな流れを模式図に示す。ここで「地盤情報データベース」とはデジタル化された地盤情報のことである。それはコンピュータの出現と発達により促された技術と成果であり,あえて言うならば“デジタルデータベース”である。一方で,それ以前の歴史的な地盤情報のことを,ここでは“アナログデータベース”と呼ぶことにする。地盤情報の歴史的な始まりをどこに置くかは明確でないが,この図では大阪市地下鉄工事の調査データをもとに地盤検討が行われた 1930 年2)を源とした。その後 1960~1980 年代に各地域において地域地盤研究が活発化し,地盤図やボーリング柱状図集という形(書籍)で地盤情報の集積が進んだ。これを“アナログ時代”と称す。その後期に電子計算機(コンピュータ)が出現し,データベース(Database)という技術(使用方法)の導入が始まった。そのような時代背景の中で 1970 年前後に幾志ら3)によって「土質柱状図ファイル」と称された地盤情報のデジタルデータベース化の試みが示され,“デジタル時代”へと移行した。そして,コンピュータ技術の急速な発達とともに,現在に続く地盤情報データベースが構築され,2000 年代からは地域のデータベースを統合する動きとして広域的地盤情報データベースの構築と運用体制の組織化が進んだ。そのような時代はさらに進展し,現在はインターネット(Web)・クラウド環境等の情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)の時代となった。これを“デジタル新時代”と称しておきたい。このような新時代の到来は,地盤情報データベースの将来にも大きな変革となる可能性が示唆される。デジタル時代(CP)アナログ時代(紙・地盤図)1930196019701970 土質柱状図ファイル(幾志ら)1976 PC出荷開始198019901985頃 EWSデジタル新時代(ICT)200020102009 クラウド時代1995頃 インターネット図 2-1 地盤情報データベースの歴史的変遷(模式図)-15- (2) 地盤情報データベースの構築と公開表 2-1 に各地域の地盤研究活動の中で書籍(紙上)に整備された主なアナログ地盤情報(地盤図,柱状図集等)の年譜を,表 2-2 に現時点で整備された大規模なデジタル地盤情報(広域的地盤情報データベース)の一覧を示す。表 2-1 には各地域の広域的データベースが公開された年次を◆印で示した。また,図 2-2,2-3 は各表に示した両地盤情報の分布(位置図)である。両図とも発行年と公開年を 10 年毎に区切って配色した。これより半世紀に及ぶアナログ情報からデジタル情報への地盤情報の変遷がうかがえる。これらのデータベースに集積されたボーリング本数は,把握される範囲で,アナログ情報が約17 万本(以上)あり,デジタル情報の内,地域の広域的な地盤情報データベース(以下,「地域DB」という)が約 24 万本,全国を対象とする Kunijiban が約 9 万本,Geo-Station が約 15 万本(メタデータを含む)に達している。アナログ情報は 1950 年代から最近に至るまで都市部を中心に集積されている。デジタル情報は地域 DB 構築の先行地域では 2000 年代に入ってその公開が始まり,その後,他地域でも構築・整備の取り組みが始まった。それらの活動の中でアナログ情報の多くもデジタル情報に変換(入力)されている。このように現在,地域 DB は日本全国を網羅する状況にある。また,地域 DB は①初期の段階より構築されたもの(関西圏地盤情報データベース,四国地盤情報データベースなど)と,②行政等による既存のデータベースを統合またはつないだもの(九州地盤情報共有データベース,「関東の地盤」のデータベースなど)に分かれる。換言すると①は地域における集中管理型,②は分散・統合型のデータベースに分類される。全国規模のデータベースでは Kunijiban が①に Geo-Station が②に相当する。なお,このような広域的な地盤情報データベースの構築の進展は,現在の Web 環境の発達を背景としている。表 2-2 各地域の広域的な地盤情報データベース地域広域的地盤情報データベース北海北海道(道央地区)地盤情報データベース,北海道地盤情報データベース Ver.2003道東北北陸運用組織公開年本数提供方法地盤工学会北海道支部199620031.1 万1.3 万CD-ROM(販売)とうほく地盤情報システム「みちのく GIDAS」東北地盤情報システム運営協議会20100.8 万ほくりく地盤情報システム北陸地盤情報活用協議会2008Web 上(会員制)3.0 万Web 上(会員制)関東「関東の地盤」地盤情報データベースDVD 付(2010 年度版),(2012 年度版)地盤工学会関東支部20102013―Geo-Station(書籍販売)中部「最新 名古屋地盤図(追補版)」データベース地盤工学会中部支部20120.5 万CD-ROM(販売)関西圏地盤情報ネットワ20016.0 万関西関西圏地盤情報データベースーク(KG-NET)中国中国地方地盤情報データベース地盤工学会中国支部Web 配信(会員制)20112.8 万Web 上(会員制)四国四国地盤情報データベース四国地盤情報活用協議会20042.1 万Web 配信(会員制)九州九州地盤共有データベース 2005,2012地盤工学会九州支部・九州20056.3 万CD-ROM(販売)20089.2 万Web 上(無料)200915 万Web 上(無料)地盤情報システム協議会全国国土地盤情報検索サイト KuniJiban統合化地下構造データベース:ジオ・ステーション(Geo-Station)国土交通省防災科学技術研究所※※メタデータを含む-16- 表 2-1 各地域の主なアナログ地盤情報(地盤図,柱状図集等)の集積と広域的な地盤情報データベースの公開年北海道東北北陸1960関東関西中国四国九州○東京都62○富山射水64○仙台湾○常磐66○新潟○金沢681970中部○鹿島◎川崎○八戸三沢○○衣浦●大阪平野一宮名古屋臨海水戸日立◎○○札幌伊勢湾臨海○○一宮○三河○○名古屋○呉○広島 ○徳島臨海◎山口周南 ○愛媛東予○倉敷日向・延岡○○福岡◎中海臨海●北九州○鹿児島他飯塚東京湾周辺●濃尾平野○大竹岩国○呉◎川崎72○◎熊本◎大分○長野○新潟県○金沢74○三多摩●76781980東京低地○函館82○函館○釧路○○苫小牧84浦川・静内他86○札幌札幌881990○○帯広○○釧路岩見沢◎稚内他◎富山県柏崎高田◎○新潟◎石川県○郡山○秋田市○山形県○八戸○西津軽◎宮崎大阪平野○◎神戸◎○川崎 ◎三河部つくば愛知県濃尾部◎◎川崎 ●○静岡県神奈川県○金沢○横浜山の手北多摩●鳥取県●福岡○大阪湾◎滋賀県 ◎岡山臨海●島根県◎京都市 ◎広島県東◎大阪平野 ●広島県南●名古屋●○豊中市◎山口県○沖縄○高知県92●福島県94山陰臨海●◎岡山県●鳥取県●広島県○盛岡96○小牧○四国臨海◎鹿児島●宮崎982000◎福岡南●十勝○小松能美○東京湾◎山口県02○横浜●網走○松山平野○沖縄○熊本0406○札幌○埼玉県0820101214累計(以上)広域的DB収録数1.5 万0.5 万0.9 万4.5 万1.5 万1.5 万4.3 万0.2 万2.1 万2.4 万0.8 万3.0 万―0.5 万6万2.8 万2.1 万6.3 万※ ○‥不明および 1000 本内,◎‥1000 本~3000 本内,●‥3000 本以上※ ◆‥地域の広域的地盤情報 DB の公開年(構築はそれ以前に始る)-17-「累計」には不明を除く。 全国の主なアナログ地盤情報(地盤図,柱状図集)市域都道府県域平野域/区域図 2-2 全国の主なアナログ地盤情報(地盤図,柱状図集)の分布全国の主なデジタル地盤情報(地盤情報データベース)【全国】国土地盤情報検索サイトKuniJiban〔国土交通省,2008~〕統合化地下構造DB ジオ・ステーション〔防災科学技術研究所,2009~〕市域のDBほくりく地盤情報システム(北陸地盤情報活用協議会,2008)都県のDB広域的DB中国地方地盤情報データベース(JGS中国支部,2011)北海道(道央地区)地盤情報データベース1996北海道地盤情報データベースVer.2003 (JGS北海道)とうほく地盤情報システム「みちのくGIDAS」 (東北地盤情報システム運営協議会,2010)「関東の地盤」 地盤情報データベースDVD付 (2010,2012年度版,JGS関東)「最新 名古屋地盤図(追補版)」データベース(JGS中部支部,2012)関西圏地盤情報データベース(KG-NET・関西圏地盤情報協議会,2001)四国地盤情報データベース(四国地盤情報活用協議会,2004)九州地盤情報共有データベース 2005,2012(JGS九州・九州地盤情報システム協議会)図 2-3 全国の主なデジタル地盤情報(地盤情報データベース)の分布-18- 2.2地盤情報に関わる社会的動向2011 年東北地方太平洋沖地震に伴って発生した液状化被害や地震動被害を一つの契機として,地盤に関する情報を公的財産と位置付け,それらの共有化と利活用を促進するための動きが活発化している。例えば,日本学術会議地球惑星科学委員会では「地質地盤情報の共有化に向けて」4)の提言を取りまとめ,その中で,地震災害リスクの軽減のためには,地下の地質地盤に関する情報を国民の共有財産と認識し,国土の基本情報として有効活用することが不可欠としている。国の IT 戦略本部が平成 24 年 7 月 4 日に策定した「電子行政オープンデータ戦略」5) では,公共データは国民共有の財産であるという認識の下,公共データの活用の取組を進めるための基本的な方向性として,①政府自ら積極的に公共データを公開すること,②機械判読可能な形式で公開すること,③営利目的,非営利目的を問わず活用を促進すること,④取組可能な公共データから速やかに公開等の具体的な取組に着手し,成果を確実に蓄積することを基本原則としている。オープンデータ戦略の一環として,総務省では,国や地方自治体の地盤情報の公開と二次利用を促進するためのガイドの策定を行っており,経済産業省では,知的基盤情報の開放と活用のため地質情報の二次利用について検討が行われている。(1) 総務省の取組情報通信技術(ICT)の利活用では,行政,医療,教育などの個別分野ごとの「縦軸」の情報化が促進されていたが,東日本大震災では,情報の横の連携の重要性が顕在化した。企業等が行政の保有する避難所情報や地図データ等を利用して震災関連情報を広く周知しようとしても,データ形式が PDF や JPEG 等で機械判読できる状態になく,行政機関ごとにデータフォーマットが異なったため,二次利用に至るまでの情報の収集や整理に多くの時間を要している。総務省・情報通信審議会の中間答申(平成 23 年 7 月 25 日)6) では,情報・知識やサービスの連携・共有環境の整備のため,汎用性のある技術・運用ルール等が整った環境(情報流通連携基盤)の整備を推進すべきである旨が述べられている。総務省では,急速に進展してきたブロードバンド環境を生かし,組織や業界内で利用されているデータに対して,社会でオープンに利用できるオープンデータの流通環境の整備を推進している。分野を超えたデータの流通・連携・利活用を効率的に行うため,①情報流通連携基盤共通 API(標準データ規格及び標準 API 規格)の確立と国際標準化,②データの二次利用に関するルールの策定,③オープンデータ化のメリットの可視化等のための実証実験が実施されており,新事業やサービスの創出,国民や産業界にとって有益な情報の入手が容易になることを目指している。今後想定される大規模災害に対して,各地域の防災・減災対策のため,デジタル化された地盤情報を活用したハザードマップ(地震,津波,地すべり,液状化など)等の作成を行うことは重要である。平成 24 年度に実施された「情報流通連携基盤の地盤情報における実証」では,国や地方自治体等が保有しているボーリングデータ等の地盤情報を収集した上で,地盤情報をオープンデータとして流通させる情報流通連携基盤を構築して,その有効性を検証するとともに,地盤情報の流通・連携を目指した情報流通連携基盤共通 API 7) に基づき,高知県内の地盤情報を公開する「こうち地盤情報公開システム」8) が構築されている。また,総務省では,ASP・SaaS・クラウドの普及拡大及び適切な利用促進を図ることを目的に,特定非営利活動法人 ASP・SaaS・クラウドコンソーシアム(ASPIC)と合同で設立した「ASP・-19- SaaS・クラウド普及促進協議会」において,国や地方公共団体等が保有する地盤情報(ボーリングデータ)を電子的に公開する際に留意すべき事項や,利用者が公開された地盤情報を二次利用する際に留意すべき事項等をまとめた「地盤情報の公開・二次利用促進のためのガイド」6) が公開されている。(2) 経済産業省の取組経済産業省では,電子行政オープンデータ戦略の基本方針を踏まえ,自らが先行的に保有している公共データの開放を行う「DATA METI 構想」を推進している。「DATA METI 構想」の推進を行うため,IT 融合フォーラムの下に公共データ WG を設置し,経済産業省の保有データを対象にした実践的な観点からの検討が実施されている。平成 23 年 8 月 19 日に閣議決定された第 4 期科学技術基本計画 10) では,新たな知的基盤整備計画の策定が求められており,それを踏まえ,産業構造審議会及び日本工業標準調査会の合同会議である知的基盤整備特別委員会を開催し,今後の新たな整備・利用促進方針及び具体的方策を盛り込んだ中間報告を平成 24 年 8 月に取りまとめている。本報告書で打ち出された方針や方策に沿って,具体的な整備計画と利用促進方策を検討する場として,産業技術環境局内にて大臣官房審議官(基準認証担当)の私的検討会を開催している。地質情報分野においては,「地質情報の整備及び利用促進に関する検討会」が「地質情報に関する新たな整備計画・利用促進方策(案)」11) をまとめている。東日本大震災以降,地盤リスクに対する一般国民の関心が高まっており,より精度の高いハザードマップ作成,地盤リスク評価,地震動評価のために,ボーリングデータの利活用の必要性が指摘されている。また,都市部の地質情報整備のためには,基礎情報としてのボーリングデータの利活用が有効であり,ボーリンクデータの一元化による詳細な地質情報の整備の必要性が指摘されている。(3) 国土交通省の取組液状化の発生は,深さ方向の液状化に対する抵抗率 FL で判断されるが,液状化危険度は液状化指数 PL で表し,これに基づいたハザードマップが作成されている。しかし,液状化指数 PL と構造物の被害とが直接結びつけられていないため,単なる液状化発生の目安程度にしか扱われていなかった。2011 年東日本大震災では,約 27,000 棟の住宅が液状化で被災したため,国土交通省の「宅地の液状化対策の推進に関する研究会」では,東北地方太平洋沖地震における被災実態と既存の各種判定手法における判定結果の指標との比較により,各種判定手法について若干の修正を加えるとともに,複数の既存判定指標を用いることによって,被災実態と判定結果との整合性を検証している。複数の指標による判定図を用いて,宅地の液状化被害可能性のランク付けを行う判定法や留意事項等を「宅地の液状化被害可能性判定に係る技術指針・同解説(案)」12) に取りまとめている。本指針(案)は,宅地の液状化被害可能性を判定するのみでなく,液状化マップの精度向上や新規宅地造成等における液状化対策を検討する際に活用されることが期待される。(4) 民間企業の取組東日本大震災を契機とした地盤情報の利活用に関する動向を踏まえ,一般社団法人全国地質調査業協会連合会や地質・地盤関係学会が設立した「地質・地盤情報活用促進に関する法整備推進-20- 協議会」では,①我が国の地質・地盤データの取得及び整備・活用に関する技術的,社会的システムの調査・研究,②関係機関に対する地質・地盤データ取得の高精度化及び活用促進に関する法整備の提言と推進,③地質調査及び地質・地盤情報の役割と有用性,地質・地盤データについての全国的データベースとその活用を促進するための国家レベルのシステム構築と法整備の必要性に関する国民への PR 活動を主たる活動内容としている。本協議会では,専門委員会「地質・地盤情報活用検討委員会」の下に「利活用検討」「法制度検討」「広報」の ワーキンググループが設置されており,各WGの検討結果を中間報告 13) して取りまとめている。(5) おわりに地下構造に関するデータの円滑な流通は,地下構造データベースの活用において実務的な面からも重要なことである。今後のデータ公開を促進するためには,自治体等のデータベース構築機関に対する技術的,財政的,制度的,人的側面での支援をはじめとして,地下構造データの取得,保持,開示の義務,及び利用に関わる諸権利を踏まえた法的な整備を視野に入れた取り組みが必要である。また,構築されたデータベースを継続的に維持管理できる体制づくりを進めるためには,データベースの利活用の推進とそのための環境整備を進めることが重要である。東日本大震災を踏まえ,自治体等では各地域の防災・減災対策のため,地盤情報を活用した精緻なハザードマップの作成が求められている。このため,全国電子地盤図が果たす役割は大きく,今後は,地質層序に基づいた電子地盤図の高度化やその活用の仕方を検討する必要がある。2.3全国電子地盤図とその役割 14)(1) 全国電子地盤図とは次章に詳述するように,『全国電子地盤図』は全国的に地盤情報(データベース)の“連携”を行うための基本スキル(システム)である。具体的には,全国を 250m 区画に分割し,その地盤を代表する表層地盤をモデル化した代表的地盤情報を空間的に結合して表示する3次元の地盤図(デジタル地盤情報)である。地盤モデルはその区画と周辺に存在するボーリングデータから決定されるが,既存のボーリングデータの地盤情報に地質的解釈,工学的解釈を与え,それを考慮することにより,作成した地盤モデルもその解釈を継承して作成される点に特長がある。また,本システムは各区画の地盤モデル(代表的地盤情報)を電子的に作成し,保存,追記,表示でき,各地盤モデルはインターネット経由で閲覧・ダウンロードが可能なネットワーク化を想定したものである。これもある種の地盤情報データベースであり,従来の地盤調査データを集積したものとの混同を避けるために『全国電子地盤図』と称している。(2) 全国電子地盤図の意義と利点全国電子地盤図が提起されるに至った背景には,次のような地盤情報の実状があった。①既に構築された多数の地盤情報データベースはシステムやデータの内容が多種多様で,それらを連結することは単純には難しく,連結してもデータの利用が容易でない。②利用しやすく全国規模のデータベース連携を行うには調査データ(生データ)の解釈や品質が一定の基準で統一化されている必要がある。③科学技術振興調整費研究は成果の公開が原則なので,地盤工学会の各支部や地-21- 域で構築されたデータベースのネットワーク化を同調整費で行えば,各データベースに含まれるデータは公開が義務付けられる。しかし,既存のデータベースや構築中のデータベースのデータには所有権・著作権の問題があり,公開に対してデータ提供者から制約が指示されるものも多い。このような問題を回避し,一連の調査研究で他機関が作成する深部構造や深層の地盤モデルと連携して補完関係をなすことができるものとして全国電子地盤図が想起された。そして,この活動を介して浅層地盤に対する学術的な解釈(知識)も副次的に集積され,種々に地盤情報活用の裾野が大きく広がることが期待された。つまり,次のような利活用が想定された。①地盤工学の研究者にとっては全国の地盤概況を広域で把握することができ,堆積環境の類似する同時代堆積物の工学的特性を比較することも可能となる。②地盤工学の実務者にとっては全国の地盤概要が即時に検索可能となり,計画構造物に対する地盤工学上の問題点の把握や地盤調査計画立案が容易になる。③一般の人にとっては地盤概況を把握でき土地や家屋の購入等にあたって専門家のアドバイスを受けやすくなる。小中学生が郷土の地形・地質を学習する際にも地盤の知識が容易に得られ,地盤災害に対する啓発(防災教育)にも役立つ。また,全国電子地盤図は地質的解釈・工学的解釈を加えて周辺の地盤状況を検討した上で決定され,代表的な地盤モデルが電子データとして提供されることに大きな利点がある。定性的な地盤構成を表現するだけでなく,層厚(深度),N 値など定量的な情報を提供できるという特長がある。地域の地盤特性を反映した代表的な地盤モデルが定量的に示され,空間情報として電子的に提供される。電子情報という利点から,この地盤情報はインターネットでの情報発信と共有化が容易であり,他の空間情報と高度に連携することも可能となる。(3) 全国電子地盤図による連携システム図 2-4 に表層地盤情報データベース連携のための全国電子地盤図のシステム構成を示す。本システムは「全国電子地盤図作成支援システム」と「全国電子地盤図閲覧システム(Web)」よりなジオ・ステーション(防災科研)・連携表層地盤情報データベース連携システム表層地盤情報データベース連携システム電子地盤図作成支援システム・集約・連携・地盤の解釈・地盤モデル化・一般公開全国電子地盤図システム各支部等の地域内活動A地域電子地盤図D地域B地域E地域全国電子地盤図閲覧システム(Web)C地域F地域地域地盤情報と活用技術データバンク・既存情報登録・アーカイブ化地盤工学会が逐次,登録・編集・管理インハウス的な地盤DBインハウス的な地盤DBオープンな地盤DBオープンな地盤DBK協議会H支部T協議会研究会H市C社A社K市T支部M市B社アナログ情報(紙上)アナログ情報(紙上)A地盤図資料集B地盤図地盤研究レポート資料集地域に蓄積された表層地盤情報(主にボーリングデータ)図 2-4 表層地盤情報データベース連携のための全国電子地盤図のシステム構成-22- る。各システムは表層地盤情報データベース連携の基礎となるもので,地域の電子地盤図を作成し,それをシステム上でつないだものが全国電子地盤図と呼ばれる。繰り返すが,電子地盤図は地域のデータベースから提供されるボーリングデータを利用して作成するので,個別データの所有権や著作権の問題は有しない。しかもデータベースの連結を行ったと同様な成果が得られ,信頼できるデータを基に地層の解釈を行うなど,利用者にとってはより使いやすく,信頼度の高い情報を提供するシステムに発展すると期待される。【第 2 章参考文献】1)山本浩司:地盤情報データベースの進展と利活用,地盤工学会誌,Vol.61,No.6,pp.4~7,2013.2)山本浩司:地盤情報,地盤工学会誌,Vol.57,No.10,pp.14~17,2009.3)幾志新吉・菅原正己・清水良作:電算機による都市地盤土質柱状図資料の一検索法(第一報),土と基礎,Vol.19,No.4,pp.23~30,1971.4)日本学術会議地球惑星科学委員会:地質地盤情報の共有化に向けて,2013.5)IT 戦略本部:電子行政オープンデータ戦略,2012.6)総務省:情報通信審議会の中間答申(平成 23 年 7 月 25 日),2012.7)総務省:情報流通連携基盤 外部仕様書,2013.8)こうち地盤情報公開システム,http://www.geonews.jp/kochi/index.html9)総務省:地盤情報の公開・二次利用促進のためのガイド,2013.10) 閣議決定:第 4 期科学技術基本計画,2011.11) 経済産業省:地質情報に関する新たな整備計画・利用促進方策(案),2013.12) 国土交通省:宅地の液状化被害可能性判定に係る技術指針・同解説(案),2013.13) 地質・地盤情報活用促進に関する法整備推進協議会:地質・地盤情報活用検討委員会中間報告,2014.14) 村上哲・山本浩司・若林 亮:全国電子地盤図の構築と利活用,地盤工学会誌,Vol.61,No.6,pp.12~15,2013.-23-
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  • タイトル
  • 3.全国電子地盤図システム
  • 著者
  • 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会
  • 出版
  • 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究報告書
  • ページ
  • 24〜31
  • 発行
  • 2014/07/25
  • 文書ID
  • 69483
  • 内容
  • 3.全国電子地盤図システム3.1 システムの概要全国電子地盤図システムは,各地のデータベースに蓄積された地盤調査データ(地盤情報)を利用して作成するものであり,個別データの所有権や著作権の問題は発生せず,しかもデータベースの連結を行ったと同様な成果が得られるだけでなく,信頼できるデータを基に地層の解釈を行うなど,利用者にとってはより使いやすく信頼度の高い情報を提供するシステムである。最低限の地盤情報として,250m 区画の位置(座標),地盤標高,柱状図,N値,地下水位,主要な地質時代(沖積層,洪積層など)の情報を含める。土質名は土質試験法「地盤材料の分類名と現場土質名の対応」を参照して,礫質土(G),砂質土(S),粘性土(Cs),有機質土(O),火山灰質粘性土(V),高有機質土(Pt),人工材料(Am)の7種類を基本としている。将来的には,代表的な地層断面図,土質試験データ,原位置試験データ,PS 検層などの情報も随時付加できるシステムを想定し,データの種類に対する制約は設けないとしている。図 3-1 に全国電子地盤図の構築フローを示す。全国電子地盤図システムを作成する手順は,各地域で作られた既存の地盤調査・試験のデータベースから対象となる 250m 区画周辺のデータを抽出し,地質的解釈・工学的解釈を加えて,その 250m 区画を代表する地盤モデルを作成する。ここで重要なのは,区画内の一本のボーリングを選んで代表とするのではなく,周辺の地盤状況を検討した上で代表地盤を決めるということである。この地盤モデルは,区画中の一点の地盤条件ではなく,たとえば脆弱性の情報を優先して区画を代表する地盤条件を示している。この様に各地域において作成された電子地盤図が連携されることによって全国電子地盤図が完成される。本システムの構成は「全国電子地盤図作成支援システム」と「全国電子地盤図閲覧システム(Web)」よりなる。各システムは表層地盤情報データベース連携の基礎となるもので,各地域の電子地盤図を作成し,それをシステム上でつなぐことで全国電子地盤図となる。地盤特性の抽出地盤DB(ボーリング)基礎データ・堆積環境(形成履歴)・全体的な地盤状況・局所的な地盤状況①対象層の設定・ボーリング毎の同定入力・分布範囲の特定②メッシュ内・周辺のデータの選別(判断)地形・地質GIS電子地盤図電子地盤図既往の学術情報【作成支援システム】③モデルへの変換・地層の細分・平均化(地盤モデルDB)(地盤モデルDB)④空白メッシュの補完・周辺モデルからの生成全国電子地盤図(地域間連携)図 3-1 全国電子地盤図の構築フロー-24- 3.2全国電子地盤図作成支援システム全国電子地盤図は地域の電子地盤図を統合することで構成される。各地域において電子地盤図の作成を統一的に支援するために「全国電子地盤図作成支援システム」(以下,「支援システム」という)が準備された。支援システムは,電子地盤図の作成を補助する3つの機能を提供する(下記参照)。作成される地盤モデルの内容は,位置座標と地盤標高,地下水位,そして地表面から深度方向に 1,2m 毎の土質および N 値の情報で構成される。土質名称は,礫質土(G),砂質土(S),粘性土(Cs),有機質土(O),火山灰質粘性土(V),高有機質土(Pt),人工材料(Am)の7種類を基本としている。【支援システムの基本機能】① 対象層の設定‥ 地盤特性を抽出する研究作業とともに,基礎データのボーリング柱状図1本毎にモデル化対象層の設定を行う機能。対象層は,浅層に堆積する軟弱な沖積層(相当層)とする。処理作業は,地質学的解釈にもとづき,地層のつながりを追いながら支援システム上で対象層を同定してその対象範囲(上・下端)を入力する。② データの選別‥ 各メッシュ(250m区画)に対して,その地盤条件を代表するボーリングデータを選別する機能。その際に,全体的・局所的な地盤特性を反映することを念頭に,ボーリングデータ 1 本毎の品質なども吟味して,メッシュ内や周辺のボーリングデータを選別する。③ モデルへの変換‥ この選別したボーリングデータより,地盤モデルに変換する機能。図 3-2 に全国電子地盤図作成支援システムの操作画面上に 250m 区画毎の地盤モデルの作成手順を示す。電子地盤図の作成は,支援システム上で既存の地盤調査・試験のデータベースから対象となる 250m 区画周辺のデータを抽出し,地質的解釈・工学的解釈を加えて,その区画を代表する地盤情報をモデル化する。ここで重要なことは,区画内の1本のボーリングを選んで代表とするのではなく,周辺の地盤状況を検討した上で代表地盤を決めるということである。地盤モデルは区画中の1点の地盤条件を示すのではなく,区画を代表する地盤条件を示すものである。【地盤モデルの基本的な作成手順】① 250m 区画のメッシュ分割は,国土地理院の地域標準4分の1地域メッシュ(約 250m 四方)とする。② 各 250m 区画に対する基礎データの取り出しは,支援ツールを用いてメッシュの枠線とボーリング地点を画面上に表示し,マウス操作で指定する範囲内や1点毎のデータを指定して取り出す。そのボーリングデータは,ボーリング柱状図断面として表示され,モデル化の対象とする地層境界線が併記される。③ このデータ群よりモデル化に適さないデータの削除と対象層の境界(範囲)の補正を行って,地盤モデルを生成する。モデル化は深度方向に地層を 2m に細分して各細分層の代表土質(分布数が多い土質)を抽出し,その土質の N 値や土質試験値を平均してモデルの値とする。④ なお,250m 区画のメッシュに対するボーリングデータの数と分布には粗密と偏りがあり,空白の場所もある。またメッシュ内で地盤条件が大きく変化する場所もある。このような場所のモデル化は,基礎データの選別で補助的に地質図等を参照することや,判断の個人差を抑制するために選別方法にルールを設ける。-25- ①モデル化対象層の①モデル化対象層の同定入力(1本毎)同定入力(1本毎)②メッシュ内・周辺の②メッシュ内・周辺の地盤データの取り出し地盤データの取り出し③モデル化③モデル化(地層細分・平均化)(地層細分・平均化)【モデルの空間的イメージ】yx土質砂粘土z砂試験値12131112134344445512254013図 3-2 全国電子地盤図作成支援システムによる 250m メッシュ地盤モデルの作成手順地盤モデルに変換する対象層は,今のところ浅層の軟弱な堆積層(地層)である沖積相当層または工学的に軟弱な地層部としている。つまり,N 値 50 以上の工学的基盤以浅の地盤を基本としているが,中~低層の建物の支持層として見た場合には N 値 30 以上というのが一つの目安になることから地域によってはN値 30 以上(が連続する層)の上面を“疑似基盤面”としてそれ以浅をモデル化することもある。この地層同定は,地盤研究による地層同定情報(地盤図の地質断面の情報など)を参照し,地盤モデル作成の対象層をボーリングデータ毎に設定する。次に,データの品質などを吟味してモデル化に用いるボーリングを選別し,このデータより支援システムの機能を用いて地盤モデルを作成する。さらに,作成したモデルの空間的な整合性を確認しながら修正・更新を繰り返してデータベースに追記・編集する。なお,全国統一基準の地盤モデルとするために,土質区分は前述のように共通仕様を設けたが,地域に特徴的な地層(特殊土)がある場合は,その土質名も付加した。なお,ボーリング柱状図データから地盤モデル柱状図へ変換(平均化)するシステム上の処理内容(ルール)は図 3-3,3-4 に図解するとおりである。また,支援システムのセットアップ(導入の流れ)は図 3-5,3-6 に示すとおりである。システム内に①デジタル地図データ,②ボーリングデータをコンバートし,③250m メッシュの設定を行えば,上述の地盤モデル化の機能を用いて電子地盤図を作成することができる。併せて④50mDEM データも取り込めば,地形条件を参照することもできる。これらの手順の詳細についてはセットアップマニュアルが提供される。-26- ①指定上端より下端まで,1m/2m毎にスライスする。②1枚毎に,各ボーリングの土質(8種)の層厚を集計し,最大を代表土質とする。(ここで,単層は×1.0, 質・混じりは×0.7, 互層は×0.5とする)③N値は,砂・礫の平均値と粘性土の平均値より,代表土質に該当するものを選ぶ。図 3-3 代表土質と N 値のモデル化処理(自動)のルールこのボーリングは,モデル化の対象とならない図 3-4(1) モデル化の例:地層の上端が不明の場合-27- この部分は,モデル化の対象とならない図 3-4(2) モデル化の例:地表より上端が深い場合図 3-4(3) モデル化の例:マニュアルで修正-28- ①地図データの取り込み②ボーリングデータの取り込み既往DBXML書式[標準処理]③250mメッシュの設定[標準処理]④50mDEMの取り込み既往MAPshp書式図 3-5 電子地盤図作成支援システムのセットアップ(導入の流れ)マニュアル変換既存DB変換(2)独自フォーマット基礎データインポートXMLモデル化処理システム書式(DIGコード)電子地盤図モデル柱状図標準フォーマット変換(1)礫質土(G),砂質土(S),粘性土(Cs),有機質土(O),火山灰質粘性土(V),高有機質土(Pt),人工材料(Am)7種類 & 地域の特徴的な土質図 3-6 柱状図・土質データのコード変換の流れ-29- 3.3全国電子地盤図 Web 公開閲覧システム全国電子地盤図を日本全国に公開し,地盤工学の専門家(技術・研究者)から一般の人々にも簡単に分かりやすく情報提供するために,インターネット経由(Web)で閲覧できる仕組みとして,「全国電子地盤図閲覧システム」が準備されている。内容は以下のとおりである。〔動作環境〕ユーザー側の条件としては,利用者の多い Windows パソコン(OS が 2000,XP 以上)を対象に,標準的な Web ブラウザ(Internet Explorer,Firefox 等)を想定している。動作環境を快適にするため,ブロードバンド接続(ADSL,光ケーブル等)を想定して動作性を確保した。サーバー側の条件としては,WebGIS ソフトはユーザーが無償で利用できるものを条件にMapGuide Open Source を選択している。〔Web サイト〕地盤工学会の Web サイトおよび統合化地下構造データベースポータルサイト(ジオ・ステーション)に,本システムの Web ページを作成(またはリンク)して 2010 年 10 月に全国電子地盤図ポータルサイト(http://www.denshi-jiban.jp/)を開設した。現在までのアクセス数は,約7.5 万件に達している。〔閲覧機能〕サイトに入れば,【トップページ】(全国電子地盤図について,利用できる内容,お知らせ,利用規約)が表示されるので,「規約に同意」を選択して【地域選択ページ】に移行する。次に,地域を選択し,その地域の電子地盤図の【閲覧ページ】に到達する。ここで表示される地盤情報は,モデル分布図(軟弱層厚,5m刻みの深さの土質とN値),モデル柱状図,モデル断面図である(図 3-7 を参照)。さらに,指定したモデル柱状図のデータダウンロードができ,対象地域の地盤概要などの解説文も参照できる。【第 3 章1)安田参考文献】進・山本浩司・三村衛・藤堂博明:表層地盤情報の連携と統合に向けた全国電子地盤図の構築,第5回シンポジウム「統合化地下構造データベースの構築」プロジェクト5カ年の研究盛会報告と地盤情報のさらなる利活用に向けて,防災科学技術研究所,pp.27-34,2011.2)藤堂博明・安田 進・三村 衛・山本浩司:表層地盤情報の連携に向けた全国電子地盤図の構築と公開,第46回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.199-200,2011.3)村上哲・山本浩司・若林 亮:全国電子地盤図の構築と利活用,地盤工学会誌,Vol.61,No.6,pp.12~15,2013.-30- 地域選択トップページ基盤面の分布モデル断面図モデル柱状図図 3-7 全国電子地盤図 Web 公開閲覧システムの参照例-31-
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  • タイトル
  • 4.全国電子地盤図の作成と利用
  • 著者
  • 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会
  • 出版
  • 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究報告書
  • ページ
  • 32〜36
  • 発行
  • 2014/07/25
  • 文書ID
  • 69484
  • 内容
  • 4.全国電子地盤図の作成と利用4.1 各地域の電子地盤図の作成今回の研究期間においては,前委員会時の成果も含めて 34 都市地区の電子地盤図が作成・拡大された。図 4-1 に各電子地盤図の作成地域を,表 4-1 に作成一覧を示す。各地域の電子地盤図の詳細については巻末の紹介文を参照されたい。これらの電子地盤図は 2014 年 7 月より,学会員および一般を対象に順次,Web 公開(全国電子地盤図:http://www.denshi-jiban.jp/)を開始した。また,関東支部の成果は「新・関東の地盤(2014 版)」に地盤モデルデータ(DVD 付録)としても取り込まれた。No123456789101112131415161718192021222324252627282930313233342006-11 委員会関連者作成2012-14 委員会地域札幌市新潟市東京都名古屋市大阪市広島市松山市福岡市仙台市京都市八戸市静岡県高知市秋田市横手市長岡市柏崎市上越市富山市金沢市七尾市水戸市埼玉県千葉市川崎市平塚市宇都宮市前橋市甲府市習志野市浦安市滋賀県(東域)松江市高松市図 4-1 電子地盤図の作成地域-32-作成者JGS北海道支部JGS北陸支部JGS関東支部/東京電機大学JGS中部支部JGS関西支部JGS中国支部JGS四国支部JGS九州支部/福岡大学JGS東北支部京都大学・地域地盤環境研究所八戸工業大学東京電機大学四国技術事務所秋田大学日本大学・奥山ボーリング北陸支部(長岡技科大)北陸支部(長岡技科大)北陸支部(長岡技科大)北陸支部北陸支部(金沢大)北陸支部(金沢大)関東支部(茨城大)関東支部(応用地質)関東支部(東京電機大)関東支部(神奈川大学)神奈川大学・他関東支部(宇都宮大)関東支部(前橋工大)関東支部(山梨大)関東支部(千葉工大)関東支部(東京電機大)京都大学・地域地盤環境研究所松江高専香川大学 表 4-1 全国電子地盤図の作成一覧No地域作成者作成年度1札幌市地盤工学会北海道支部2新潟市3東京都地盤工学会北陸支部 新潟地区電子地盤図作成検討委員会地盤工学会関東支部 東京電子地盤図作成委員会東京電機大学 安田 進2009200920134名古屋市地盤工学会中部支部中部地盤研究会20105大阪市地盤工学会関西支部大阪地域電子地盤図作成委員会20076広島市地盤工学会中国支部中国地方地盤情報DB委員会・電子地盤図WG20107松山市8福岡市地盤工学会四国支部 四国電子地盤図作成検討委員会地盤工学会九州支部 九州電子地盤図作成委員会福岡大学理学部 石原与四郎2008200720139仙台市地盤工学会東北支部201010京都市〔関連活動〕京都大学11八戸市〔関連活動〕八戸工業大学金子賢治・橋詰 豊12静岡県〔関連活動〕東京電機大学安田 進13高知市〔関連活動〕四国技術事務所14秋田市〔本委員会〕秋田大学15横手市〔本委員会〕日本大学工学部,奥山ボーリング(株)201216長岡市地盤工学会北陸支部北陸電子地盤図作成委員会(長岡技科大)201317柏崎市地盤工学会北陸支部北陸電子地盤図作成委員会(長岡技科大)201318上越市地盤工学会北陸支部北陸電子地盤図作成委員会(長岡技科大)201319富山市地盤工学会北陸支部北陸電子地盤図作成委員会201320金沢市地盤工学会北陸支部北陸電子地盤図作成委員会(金沢大)201321七尾市201322水戸市23埼玉県※24千葉市※25川崎市※地盤工学会北陸支部 北陸電子地盤図作成委員会(金沢大)地盤工学会関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会(茨城大学 村上 哲)地盤工学会関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会(応用地質株式会社 工藤理絵)地盤工学会関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会(東京電機大学 安田 進)地盤工学会関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会(神奈川大学 中田裕樹・荏本孝久)26平塚市201327宇都宮市※28前橋市※29甲府市※30習志野市※31浦安市※〔本委員会〕神奈川大学 中田裕樹・荏本孝久地盤工学会関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会(宇都宮大学 清木隆文)地盤工学会関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会(前橋工科大学 土倉 泰)地盤工学会関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会(山梨大学 後藤 聡)地盤工学会関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会(千葉工業大学 畑中宗憲)地盤工学会関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会(東京電機大学 安田 進)32滋賀県※〔本委員会〕京都大学201333※〔本委員会〕松江工業高等専門学校※〔本委員会〕香川大学34※松江市高松市札幌地区電子地盤図作成検討委員会仙台地区電子地盤図作成委員会2010三村 衛2010,20132013四国管内基礎地盤情報構築検討委員会20092013荻野俊寛三村 衛河原 荘一郎山中 稔※平成 24 年度日本建設情報総合センター研究助成のご支援を頂いて作成。-33-200820132013201320132013201320132013201320132013 4.2全国電子地盤図の利用(1) 期待される利活用2010 年(平成 22 年)10 月に行った最初の全国電子地盤図の公開時には,プレス発表を行った効果もあって,多くの方々がこのサイトを訪れている。そのことは一般の方々の HP や個人ブログなどにも全国電子地盤図の記事が数件,掲載されたことからも覗うことができる。今後,全国電子地盤図がどのように利活用されていくかは未知であるが,表 4-2 のような場合に利活用されることが期待される。いずれも地盤モデルがデジタル値で提供されることが,その利活用に効果を発揮することになる。表 4-2 全国電子地盤図の期待される利活用 1)(1) 一般市民の方々にとって・既存住宅の地震時安全性の判断および補強対策の実施・住宅建設用土地購入時の適否の判断・地域の地盤と災害関係の教育・地震保険料率の算定(2) 自治体やライフライン企業,マスコミにとって・地震時危険地区の把握・既存公共構造物の耐震補強を優先する地区の判断・地震時の被災分布の緊急把握・地震後の緊急復旧時に必要な機材・人材の判断・地盤に関係した災害のメカニズムの解釈(3) 地盤関係の技術者や研究者にとって・構造物新設にあたっての基礎や掘削方法の選定・地盤調査計画にあたって深さ,調査間隔の判断・地盤調査結果の解釈・地域の浅層地盤に対する学術的解釈の集約・全国の地盤概況を広域で把握し,堆積環境の類似する同時代堆積物の工学的特性の比較・3 次元メッシュへの変換と 3 次元解析(地震応答,地盤沈下)(2) 利活用の検討と適用事例本委員会では電子地盤図の利活用の方法について議論し,たとえば液状化判定のための地下水位(孔内水位)データの追加等のシステム改良等を行った。一方,現時点での電子地盤図の具体的な利活用としては,以下のような検討事例(電子地盤図データセットの提供事例)を得ている。「新・関東の地盤(2014 版)」においては,各種判定基準による地盤の液状化簡易判定計算法に基づいた液状化判定ソフトウェアの付録,等価線形化法に基づいた一次元地震応答解析ソフトウェアを用いた地震応答解析の手引き,地盤モデルの表示ソフトウェアの活用法が掲載された。■液状化による戸建て住宅の被災危険マップ作成(東京電機大学)■高性能計算による地盤構造を考慮した広域の構造物応答解析システムの開発(東京大学)(文献)藤田航平・市村強・堀宗朗・M. L. L. Wijerathne, 田中聖三:多数の地震シナリオに対する高分解能な都市震災想定のための HPC による基礎検討,土木学会論文集 A2(応用力学), Vol. 69, No. 2, pp. I_415-I_424, 2013. ほか-34- 利用方法の一例として,図 4-2 に東京の電子地盤図を用いて地震時の揺れの分布を解析された事例 2) を示す。この事例では,東京電子地盤図に作成された地盤モデルの全てに対して SHAKEによる 1 次元地震応答解析を行い,加速度や速度の分布などが計算された。浅層地盤モデル(電子地盤図)が出来あがっているとこのような解析が簡単に行え,地下構造(地盤条件)を考慮した検討結果が提示される。このことは,従来,地方自治体等の地震防災検討で多用されてきたような微地形区分(表層地質)から地盤増幅率を推定して地震動を評価する手法よりも,浅層の地下構造が考慮される点において,電子地盤図を用いれば広域に精度を高めた地震ハザード評価が行える可能性を示唆している。そのように,たとえば地震動評価における地盤モデル作成のスタンダードとして,全国電子地盤図は有用な地盤情報システムであるといえる。図 4.2-1 電子地盤図を用いた解析で得られた地表面最大速度分布 2)(3) 利活用にあたっての改善課題 3)前述のような利活用を展開するにあたっては,現在構築されている全国電子地盤図をさらに改善し,種々に品質の向上に努めるとともに,システムの維持管理と継続的運用のための土台となる体制を構築する必要もある。そのような残された課題の幾つかを,以下に列記しておく。①モデル化の地域,範囲の拡大現在,多くの都市域で地盤情報のデータベース化が進められているので,それらを利用して電子地盤図の作成地域を新規に拡大していくこと,既に作成した地域においても対象範囲を広げることが望まれる。そのために必要な費用,人材を集め育成していく必要がある。-35-
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  • 5.まとめ -今後の展開について-
  • 著者
  • 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会
  • 出版
  • 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究報告書
  • ページ
  • 37〜39
  • 発行
  • 2014/07/25
  • 文書ID
  • 69485
  • 内容
  • 5.まとめ-今後の展開について-2006 年(平成 18 年)7 月から 2011 年(平成 23 年)3 月にかけて,科学技術振興調整費重要課題解決型研究「統合化地下構造データベースの構築」1) が行われた。この研究は全国的に関連機関の地盤情報(データベース)をネットワークで結んで統合化し,地下構造に関する情報の公開・利用を促進してその成果を広く社会に還元することを目的とする取り組みであった。その中で地盤工学会は「表層地盤情報データベース連携に関する研究」2),3)を担当し,学会内に委員会(同名)を設置して国内の地盤情報データベースを連携するための研究活動を行い,地盤情報の連携のための技術(手段)として『全国電子地盤図』4), 5) の構築構想を創起した。そして,2010年 10 月より,先行的に作成した 8 都市地区の電子地盤図が Web 上に公開された。本委員会(全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会)は,前委員会の活動を引き継ぎ,2011 年からの 3 年間,各地域における電子地盤図作成の母体として各活動を推進し,そのれらの電子地盤図が広く社会で利用されるための方策の検討に取り組んだ。(1) 得られた成果「各地域における電子地盤図作成の推進」として,前委員会の 9 地区から 34 地区へと電子地盤図の地域を拡大した。これら電子地盤図作成の内訳は,前委員会が 9 地区,本委員会が 6 地区,本委員会と連動して地盤工学会北陸支部 北陸電子地盤図作成委員会が 6 地区,同じく地盤工学会関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会が 9 地区,加えて関連活動より4地区(京都大学,八戸工業大学,東京電機大学,四国技術事務所 四国管内基礎地盤情報構築検討委員会)となった。「全国電子地盤図の利活用の研究」については,電子地盤図の利活用の方法について議論し,たとえば液状化判定のための地下水位(孔内水位)データの追加などのシステム改良を行った。利活用の具体例としては,電子地盤図データセットの提供より幾つかの検討事例を得た。また,「新・関東の地盤(2014 版)」においては,電子地盤図の活用のための液状化判定ソフトウェアの付録,一次元地震応答解析ソフトウェアを用いた地震応答解析の手引き,地盤モデルの表示ソフトウェアの活用法が掲載され,関東圏の電子地盤図の利活用を後押ししていただいた。また,全国電子地盤図の作成と利用の前提となる今後の維持管理体制についても,地盤工学会が公益社団法人として今後どのようにこのプロジェクトを推進するかということについて議論を重ねた。そのため,「地盤情報の現状と将来,地盤工学会の役割を語るシンポジウム」,「地盤工学研究発表会ディスカッションセッション」を開催した。(2) 今後の課題この『全国電子地盤図』と命名された地盤情報システムは,クラウドコンピューティングやユビキタス社会など情報インフラが整備された未来社会においても,地盤工学会が貢献し続けるツールの一つになり得ると期待される。全国電子地盤図の役割は,地盤工学に関わる学際的な地域研究の推進や強い相互連携体制の創造などの専門家サイドの利活用から,一般の人々に向けての分りやすい地盤情報の提示や地震リスクと結びつけた暮らしの安全・安心の提示の基礎データと-37- しての利活用などが幅広く想定される。そのために,これからの時代のニーズにも呼応しながら,地盤工学会から社会へ向けて全国電子地盤図の情報が円滑に発信されるように,現システムをさらに発展・改善する必要がある。今後,改善すべき課題を列記すると,以下のとおりである。【さらに改善すべき課題】1)全国展開・日本全国を網羅するための地域の拡大(たとえば,「全国 77 都市の地盤と災害ハンドブック」相当の地域)2)浅層地盤モデル化技術の改善・データ空白域の補間(他の地盤情報の反映等,補間技術の開発と適用)・深度方向のモデル化領域の拡大(浅層地盤全体のモデル化,深部構造モデルとの融合)・モデル情報の高度化(地質地層モデルの付加,三次元構造モデル化,物性モデルの付加)3)地震ハザードマップ等への活用・ハザードマップの高規格化への寄与(地盤モデル作成からハザード評価までのレシピ化)・全国電子地盤図システムの普及活動(自治体調査等への活用の推進)4)全国電子地盤図システムの運用対応・技術的な管理体制の検討と対応(当面のサーバー・システムの管理,将来的な運用)・持続可能なシステムの利用と運用の検討(予算の捻出・事業化など)(3) 第 3 期の研究へ【第1期の研究】は,2006~2010 年度の振興調整費研究「表層地盤情報データベース連携に関する研究委員会」(前委員会)の活動である。前委員会の活動は,全国電子地盤図プロジェクトの土台を築くものであった。全国電子地盤図を起案し,その作成支援システムと Web 閲覧システムを開発し,8 地区の電子地盤図を検証作成して 2010 年 10 月に Web 上に公開した。【第 2 期の研究】は,2011~2013 年度の「全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会」(本委員会)の活動である。前委員会の活動を引き継ぎ,全国電子地盤図の拡充と利活用(およびその体制づくりの検討)が達成目標であった。その目標に対し,電子地盤図の作成地域は 34都市地区にまで拡大された。それらの活動を引き継ぐ【第 3 期の研究】として,2014 年度から「全国電子地盤図の拡張と運用に関する研究委員会」(新委員会)が設置される。新委員会は全国電地盤図の“成熟と更なる展開,運用体制の確立”が取り組むテーマである。その達成目標と内容は,以下のとおりである。〔新委員会の達成目標〕①普遍性および一般性を有する電子地盤図への展開とそのためのモデル化技術の向上作成された電子地盤図においては,元となった地盤情報の粗密さの違いから,設定されたモデル化対象層が地域ごとに異なること,モデル化した土質名称が地域特有の土質名が存在すること,データ空白域の補間方法など,モデル化作成について大きな成果を上げている一方で,全国展開する上で解決すべき課題および統一すべき事項が存在する。近い将来,データの密度-38- が小さい地域でも電子地盤図を作成できる技術が構築されれば,シームレスな全国電子地盤図となり,広く地域の防災や環境保全などに貢献できると考える。そのためのモデル化技術の向上を図る。②持続可能性を有する全国電子地盤図の作成から公開,管理,活用といった一連のプロセスにおける運用方法の確立電子地盤図は,作成することが最終目的ではなく,地域の防災,環境保全,また,建設時において活用されることが最終目的である。そのためには,今後追加更新されていく電子地盤図をサーバーへインストールする作業やその管理,かつ,ユーザーが利用しやすい環境を継続的に提供することが必要である。すなわち,持続可能な電子地盤図公開システムへの展開が必要不可欠である。そのための運用方法の確立を目指す。『全国電子地盤図』は地盤工学分野に新たな成果をもたらした。しかしながら,通常の地盤工学分野の研究成果(論文・書籍等)とは異なり,その成果である地盤情報システムは今後も継続的に新規の情報と機能の追加・更新がなされなければその価値が急速に減退する。逆に,その拡張と運用が的確に継続されれば,成果(利活用)をさらに拡大することができる。換言すれば,“絶命”か“成長”かの二者択一であり,それは電子情報システムが逃れることのできない宿命である。しかも,システムの規模が増大するほどそのコントロールは難しさを増す。それゆえ,第 3 期の研究が担う役割は極めて重い。新委員会の研究活動により,本システムが次世代の地盤情報システムの中核として社会に貢献することを期待する。【第 5 章参考文献】1) 藤原広行:統合化地下構造データベースの構築に向けて,シンポジウム「統合化地構造データベースの構築に向けて」予稿集,防災科学技術研究所,pp.9~22,2007.2) 安田進・藤堂博明・三村衛・山本浩司:表層地盤情報データベース連携に関する研究,第 3 回シンポジウム「統合化地下構造データベースの構築」研究成果の中間報告 予稿集,防災科学技術研究所,pp.49-58,2009.3) 地盤工学会 表層地盤のデータベース連携に関する研究委員会:平成 22 年度「統合化地下構造データベースの構築」,サブテーマ2データベース連携・統合化のための分散管理型システムの開発,表層地盤のデータベース連携に関する研究 報告書,2011.6.4) 三村衛・山本浩司・安田進・藤堂博明:表層地盤の電子地盤図作成について,第 2 回シンポジウム「統合化地下構造データベースの構築」データベースの連携で築く公共の地盤情報 予稿集,防災科学技術研究所,pp.31-36,2008.5) 防災科学技術研究所:5.1.3 表層地盤情報データベース(地盤工学会),統合化地下構造データベースの構築〈地下構造データベース構築ワーキンググループ報告書〉,防災科学技術研究所研究資料,第 361 号,pp.5-15~5-48,2011.-39-
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  • 解 説:各地域の全国電子地盤図
  • 著者
  • 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会
  • 出版
  • 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究報告書
  • ページ
  • A-1〜A-123
  • 発行
  • 2014/07/25
  • 文書ID
  • 69486
  • 内容
  • 解説:各地域の電子地盤図1札幌市(中心部と新さっぽろ駅周辺)A-12新潟市A-53東京都(中心部と低地部)A-94名古屋市A-125大阪市および周辺A-166広島市(旧広島市内)A-207松山市(松山平野)A-248福岡市(福岡平野)A-289仙台市(仙台平野)A-3210京都市および周辺(京都盆地)A-3411八戸市および周辺A-3812静岡県A-4213高知市および周辺A-4514秋田市A-4915横手市および周辺(横手盆地)A-5316長岡市および周辺A-5517柏崎市および周辺A-5918上越市および周辺A-6319富山市および周辺A-6720金沢市および周辺A-7121七尾市および周辺A-7422水戸市A-7723埼玉県(低地部ならびに台地部)A-8124千葉市A-8525川崎市A-8826平塚市A-9227宇都宮市および周辺A-9528前橋市A-9929甲府市(甲府盆地)A-10330習志野市A-10731浦安市および周辺A-11032滋賀県(東域)A-11233松江市A-11634高松市(高松平野)A-120 01【札幌市】対象地域: 札幌市(中心部と新さっぽろ駅周辺)対象地域の地盤概説:札幌市及びその周辺地域の地形は,山地,丘陵地,台地,低地に大きく区分される。そのうち低地は,石狩川とその支流を中心とする地帯にひろがり,豊平川扇状地,発寒川扇状地などの扇状地群と石狩沖積平野が形成される。札幌市は豊平川扇状地の上に発達した都市で,都市の中心部は扇状地の扇形の中央部分と一致する。その中央部から先端部にかけては湧水がみられ,河道を形作っている。古い地形図からその旧河道を読み取ると,これらの河道の表層部では薄い粘土・シルトが分布している。〔図1参照〕新さっぽろ駅周辺は,火山灰でできた台地から河川の堆積によってできた低地に至る区域である。出口が閉ざされた河川の上流にできあがった湖沼や湿地帯のある深い谷を埋めるように泥炭が形成されている。都市開発によって平坦化され,火山灰台地は低地とほとんど同じ高さに削られている。 この地域の地盤の強さは,火山灰台地の場合強く,泥炭の場合非常に軟弱で,その差が大きい。この地域の泥炭は厚さが 8m にもなり,石狩図1 札幌市中心部における扇状地上の旧河道と細流度分布平野では最も泥炭層の厚い区域の一つとな(札幌表層地盤図(2m 深図),北海道土質コンサルタント,1994)っている。〔図2参照〕図2 新さっぽろ駅周辺部の火山灰台地と泥炭埋積谷(出典:北海道土質コンサルタント, 札幌表層地盤図(2m 深図), 1994)A-1 【札幌市】電子地盤図作成の基礎データ:地盤工学会北海道支部「北海道地盤データベース Ver.2003」(約 13,000 本のボーリングデータを収録)より,当該地域周辺のボーリングデータを使用した。札幌市中心部新さっぽろ駅周辺部図3 検討地域とボーリング位置モデル化の対象層:札幌市中心部は,豊平川扇状地の上に形成された都市であり,構造物の支持層となるN値50前後の砂礫層が厚く堆積している(図4)。当地のモデル化対象層は,構造物の支持地盤となる豊平川扇状地の砂礫地盤をモデル化対象層の境界とした。モデル化対象層の選定に当たっては,北海道土質コンサルタント所有の500mメッシュ地盤モデルより,砂れき層の上面を判読した。新さっぽろ駅周辺部は,札幌市の東部に位置する同駅を中心とした4km四方のエリアである。当該区域の地質は,火山灰が堆積しており,表層付近には泥炭層も厚く分布している。モデル化対象層の選定に当たっては,札幌市中心部と同様に,北海道土質コンサルタント所有の500mメッシュ地盤モデルを参照し,対象層を判読した。火山灰地盤の内,構造物の支持地盤となる軟岩および溶結凝灰岩をモデル化対象層の下端とした。図4 地盤モデル(代表柱状図)A-2 【札幌市】電子地盤図による地域の地盤特性:【札幌中心部の地盤特性】本地域は豊平川扇状地であり,河川の流れの方向である南から北に向かうに従って,対象層厚(支持地盤までの深度)が大きくなる(図5)。表層部の旧河道と思われる凹部に,薄い粘土層が堆積し,それ以深は砂れき層が熱く堆積する(図6,7)。BA図5 モデル化対象層(支持地盤以浅)の層厚分布〔札幌中心部〕AB図6 代表的なモデル柱状図断面〔札幌中心部〕(図5に断面位置を示す)深さ 5m深さ 15m図7 各深さの土質分布〔札幌中心部〕A-3 【札幌市】【新さっぽろ駅周辺部の地盤特性】本地域は,泥炭および火山灰といった北海道特有の特殊土が堆積している。対象層厚(支持地盤までの深度)は,深いところで 15~20m 程度である。DC図8 モデル化対象層(支持地盤以浅)の層厚分布〔新さっぽろ駅周辺部〕CD図9 代表的なモデル柱状図断面〔新さっぽろ駅周辺部〕(図8に断面位置を示す)深さ 5m深さ 10m図 10 各深さの土質分布〔新さっぽろ駅周辺部〕参考文献:北海道土質コンサルタント(1994):札幌表層地盤図(2m 深図),地質調査所(1991):札幌及び周:札幌市地盤モデル(500m メッシュ)辺部地盤地質図,北海道土質コンサルタント(2000)作成者: 地盤工学会北海道支部 札幌地区電子地盤図作成検討委員会(2008 年度)A-4 02【新潟市】対象地域: 新潟市対象地域の地盤概説:越後平野は,最終氷期の後に訪れた温暖化による海水面上昇(縄文海進)によって生じたおぼれ谷(入り江)が埋め立てられて形成された沖積海岸平野である。平野の形成にあたり,入り江の前面に発達したバリアー(砂洲・砂堆)が重要な役割を演じたとされる。約 6,000 年前ころになって海水準がほぼ現在の位置に落ち着くと,このバリアーを母体として 砂洲・砂丘が海側に向かって発達し,砂丘列がつぎつぎに形成され,最終的には 10 列にもなった。 海岸線に並行して砂丘・浜堤列が列状に配列するこうした地形を浜堤列平野とも呼ぶ。 新潟市街地は,この浜堤列平野の上に発達した。このため,新潟市街地の地盤は,鳥屋野潟周辺のように溝状に伸びる堤間凹地に泥炭層や粘性土層が薄く堆積し,一部で潟を形成しているものの,越後平野の海岸部の地下には,厚さ約 40 m の砂層が広く分布している(図 1)。砂丘列は,姥ヶ山,石山,牡丹山,直り山,丸山などの地名に示されるように微高地を形成している。新潟市中心部はほぼこの厚い砂層の上に載っていると見てよく,この砂地盤の存在が 1964 年の新潟地震(M=7.5)の際に見られた液状化現象の遠因となった。厚い砂層の分布範囲厚い砂層の分布範囲← 北南 →沖積層基底図 1 越後平野中央部における南北方向の地質断面図(新潟県地盤図(2002)による)一方,越後平野は,日本海側最大の沖積平野であるとともに,図 2 に示すように沖積層の厚さが最大 150 m 以上に達し,異常に厚いという特徴を持つ。その理由は,この地域が鮮新世(約300 万年前)以降一貫して続く沈降地帯に位置しているためである。このため,沖積層基底にまで到達するボーリング資料は少なく,他地域のように沖積層基底を基盤面に設定する事が難しい状況にある。なお,越後平野の沖積層に関する研究は近年急速に進展し,『新潟県地盤図』によって概要が明らかにされ,平野全体にわたって代表的な地質断面図が作成されている。図 2 越後平野の沖積層基底等高線図(新潟県地盤図(2002)による)A-5 【新潟市】電子地盤図作成の基礎データ:ほくりく地盤情報システムのデータベースを使用した。対象地域のボーリング本数:約 1,600 本。モデル化対象地域は新潟市の中心部で主に中央区及び東区の範囲である。東西は信濃川と関屋分水路から阿賀野川までの間,南北は日本海から鳥屋野潟周辺までで,ほぼ北陸自動車道・日本海東北自動車道以北の範囲とした。海岸部に連なる標高 30m 未満の砂丘部を除いて,市域のほとんどが標高3m 未満となっており,鳥屋野潟周辺を中心にゼロメートル地帯が広がっている。モデル化の対象層:多くの都市では,沖積層の基底を基盤面としている。 しかし,越後平野では沖積層が非常に厚く,とくに新潟市中心部(越後平野臨海部)では,最大で 150 m を超えている。 このため,沖積層基底にまで到達している土木地質調査ボーリングは極端に少なく,これまでに 10 数本程度しか知られていないため,250 m メッシュで沖積層の基底を決めることはきわめて困難な状況にあった。そこで,以下に示すような理由から,「新潟地区電子地盤図」では, 「N値 30 以上(が連続する層)の上面を“疑似基盤面”」として設定した。疑似基盤面を設定した理由:① 中~低層の建物の支持層として見た場合,N 値 30 以上というのが一つの目安になるので, ある意味「基盤面」と見て良いと考えられる(高層ビルなどではN値 50 以上を目安とするが, 中~)低層ビルであれば,ふつうN値 30 以上層厚 5m以上で支持層としている。② N 値 30 以上であればふつう液状化しない。A-6 【新潟市】電子地盤図による地域の地盤特性:【N 値 30 未満の層厚分布】新潟市の中心市街地が立地する信濃川沿いでは N 値 30 未満の軟弱層が概ね 15m を超えており,白山地区や河口部で 20m 以上の区域も見られる。ただし,自然堤防に区分される古町地区は層厚 10m程度である。一方,信濃川の右岸内陸部,新潟駅の南部地域は 10m 未満の層厚が広く分布する。【地域を代表する土質断面】信濃川を横断し白山から鳥屋野潟に至る測線(上図赤線)の土質断面を示す。国道 116 号と信濃川間の白山地区は江戸期の信濃川旧河道であり,標高は 0~2m で深度 5m くらいまでは N 値 10 未満の砂層が堆積してモデル層も厚い。信濃川右岸は,上所の自然堤防より南に行くほど地盤標高が低くなっているが,疑似基盤面は浅く,砂丘間低地の軟弱な粘性土や泥炭等の堆積物は概ね 5m 未満である。A-7 【新潟市】【表層の土質とN値の分布】地表面からの深さ 2m,5m,10m,および 15m の土質と N 値分布を下図に示す。地盤概説でも述べたように,新潟市街地では砂質土が優勢であることがわかる。深度 2~3m の非常に浅い部分においては,鳥屋野潟周辺を中心に有機質土(泥炭)や粘性土が分布するが,深度が 5m くらいになると南部地域も砂が優勢となってくる。全体を概観すると,信濃川沿いでは深度 5m 位まで N 値 10 未満で,10~15m の深さでも N 値が 20未満となるメッシュ区画が多い。一方,信濃川右岸沿いの県道 1 号を境に市街地の南部地域においては,表層の非常に軟弱な泥炭や粘土の下は,深度 5m 前後から N 値 20 を超える比較的よく締まった砂地盤になっており,深さが 10m 以深ではほとんどの区画で N 値 30 を超え,モデル化の対象層から外れている。このように電子地盤図から,古い時期に形成された内陸の砂丘列間の低地に軟弱な粘性土や有機質土が浅く堆積するという特徴のある地盤条件を確認することができる。深さ 2m深さ 5m深さ 10m補深さ 15m足:作成者: 地盤工学会北陸支部 新潟地区電子地盤図作成検討委員会(2009 年度)A-8 03【東京都】対象地域: 東京都(中心部と低地部)対象地域の地盤概説:東京都は地形からみて西から山地,丘陵地,段丘(台地),低地に分かれる。図 1 に久保によって作成された微地形分類図 1)をのうち中心部の微地形分類を示すが,この地区は台地(山の手)と低地(下町)にまたがる境界付近に該当する。その境界は京浜東北線付近になる。低地は厚い軟弱な沖積層で覆われていて,その下端は起伏に富んでいる。一方,台地の表層は更新世に火山灰が積もった関東ロームなどの堆積物が堆積しており,そこに軟弱層を有す谷底低地が台地を樹枝状に切り刻んでいる。また,台地でも深い所には更新世に関東山地から流下した河川の大規模な扇状地性の砂礫層がある。東京地区の電子地盤図は,図 1 に示す中心部とその東側に広がる沖積低地部を対象地区として作成している。参考文献1) 久保純子:東京低地水域環境地形分類図, 1993.図1 東京都中心部の微地形分類図1)電子地盤図作成の基礎データ:東京都土木技術支援・人材育成センターでは長年数多くのボーリングデータが収集され,地盤図として発行される 2)とともに,最近はデジタル化されてきている。そこでこのデジタル化されたデータを利用させてもらった。対象範囲内には多数のボーリングデータがあったが,250m メッシュ内に多く存在するものから一つもないものまで,その数はまちまちであった。したがって,東京都といえどもボーリングデータがなくて,モデル化できていないメッシュが存在する。図 2 に対象範囲内でモデル化ができたメッシュを示す。参考文献2) 東京都土木研究所:東京都総合地盤図,1977.図 2 東京都中心部と低地部でモデル化したメッシュA-9 【東京都】モデル化の対象層:東京の下町では約 2 万年前以降に堆積した七号地地層および有楽町層が厚く堆積している。有楽町層の下部は軟弱な粘性土層で,また,有楽町層の上部は緩い砂質土層であり,大型の構造物を支持できない。七号地層も大型構造物の支持できるかどうか限界の締まり具合である。通常大型構造物を支持するには 50 程度の N 値が必要なので,下町では工学的基盤は七号地層や有楽町層の下部の更新世の層になる。一方,東京の丘陵や台地の表層には更新世の火山灰層が堆積している。この層は家屋程度の荷重だと支持できるが,大型の構造物は支持できない。その下部にはやはり更新世に堆積した粘性土層や砂質土層がある。これも N 値が 10~30 程度と,支持層としては少し不十分である。さらにその下部には N 値が 50 以上の砂礫層が堆積している。そこで,丘陵や台地ではこの層が工学的基盤ということができる。このように,東京中心部の低地と丘陵・台地を統一して定義できる工学的基盤はN値が50以上の層ということができる。そこで,東京の電子地盤図においては,N値が50以上の層が5m以上の厚さあればその上部を基盤と判断し,その基盤より上部の地層をモデル化して示してある。なお,このようN値が50を目安とした工学的基盤は,構造物の支持層の意味以外にも,地震応答解析における基盤としてもよく用いられている。電子地盤図による地域の地盤特性:(1) 断面図からみた特性図 3 に大久保付近の台地から市ヶ谷の谷底低地を通り,再び番町で台地に上がり,皇居を通って,日比谷の谷に下り,銀座付近の低地までの測線に沿った断面を示す。大久保付近の台地では表層に 3~5m 程度の関東ロームが堆積し,その下部に更新統の比較的硬い粘性土層が堆積している。市ヶ谷に下りると表層に 5m 程度の軟弱な粘性土層があり,その下部に比較的締まった砂質土層が堆積している。番町から皇居にかけての台地では表層に関東ロームが堆積し,その下部に更新世の粘性土層,砂質土層が堆積している。日比谷の谷に下りると,一気に様子が変わり,軟弱な粘性土層が 15m 程度と厚く堆積するようになる。ただし,東海道線を横切る付近では比較的締まった砂層が表層に堆積するようになり,さらに銀座側になると,表層に緩い砂層が堆積するようになる。次に図 4 に紀尾井町の台地から赤坂見附に下り,溜池付近の谷底低地を通り,虎ノ門から新橋,築地へと至る測線の断面を示す。赤坂見附から溜池にかけては 15~20m 程度と大変厚い軟弱な粘性土層が堆積している。一部には高有機質土層を挟んでいる。虎ノ門付近では表層に数 m の厚さの砂質土層が堆積しているが,新橋手前になるとその厚さは薄くなる。ただし,下部の軟弱な粘性土層は厚くなる。新橋付近には表層に比較的締まった砂層が厚く堆積しているが,さらに東の築地付近になると表層は緩い砂質土層に変わり,その下部の軟弱粘性土層が厚くなっている。図 3 台地部の大久保から皇居を通って低地部の銀座までの断面A-10 【東京都】図 4 台地部の紀尾井町から谷底低地の溜池を通って低地部の築地までの断面(2) 平面図からみた特徴工学的基盤面の標高の分布を図 5 に示す。東部の沖積低地では工学的基盤面の標高は TP-20m~-40mと深い。これに対し西部の台地に向けて急速に高度を増し,台地部では TP+10m と高くなっている。図 5 工学的基盤面の標高補足:作成者: 地盤工学会関東支部 東京電子地盤図作成委員会(2009 年度)東京電機大学安田 進(2013 年)A-11 04【名古屋市】対象地域: 名古屋市対象地域の地盤概説:名古屋市域の地形は,西から東へ沖積平野,台地,丘陵の三種の地形単元に分けられる(図1参照)。このうちの沖積平野は,熱田台地や東部丘陵を取り巻き,北部では T.P.+10m 前後の高度を示すが,中川区以南では自然堤防を除けば T.P.+1m に達しない場所も多い。特に,17 世紀以降の干拓地でもある臨海部では地盤沈下によってゼロメートル地帯が広がっている。一方,最近の埋立地では地盤沈下問題や 1959 年の伊勢湾台風による高潮災害の経験なども考慮されて,地盤高はむしろ高く造られている。これらの沖積平野をつくる地層が沖積層(南陽層)である。沖積層の基底面は,全体として南および西に深く,北および東に浅くなる傾向にある(図2参照)。沖積層の厚さの分布は,基底面の等深線をも示すものであるが,全体として,南あるいは西に厚く,北あるいは東に薄くなる。名古屋港域南部や港区西部ではかなり厚く,40m を超えている。沖積層の土質は主として砂層と粘性土層からなるが,そのなかで特に砂層の含有率(図3参照)についてみると,全体としては厚く発達する市域南西部で含有率が低くなっている。含有率の高い区域と低い区域がほぼ北東―南西方向にゾーンをなして交互に配列する傾向も認められる。図2 沖積層の基底面等高線図(T.P.m)図1 名古屋市域の地形図3 沖積層の砂層含有率分布(%)引用文献:地盤工学会中部支部,最新名古屋地盤図,名古屋地盤図出版会,1988.A-12 【名古屋市】電子地盤図作成の基礎データ:昭和 63 年に発刊された最新名古屋地盤図に収録されている約 4000 本のボーリングデータを基にした。図4に検討対象地域とボーリング位置を示す。図4 検討地域とボーリング位置モデル化の対象層:名古屋市域地盤の電子地盤図は,N値30以上が3m連続した時,その上面をモデル基盤とし,洪積層の一部を含んだ沖積層相当層の地盤がモデル化してある。これにより,名古屋市西部の沖積層の基盤面をほぼ捉えることができ,名古屋市中央部の熱田層や名古屋東部の丘陵地帯の工学的基盤面も捉えることができる。図5 濃尾平野および周辺地域の層序とその形成史(桑原[1985]を一部改変)引用文献:濃尾平野の地下水盆,東海三県地盤沈下調査会編「濃尾平野の地盤沈下と地下水」,名大出版会,pp.35-74,1985.A-13 【名古屋市】電子地盤図による地域の地盤特性:【沖積相当層の層厚分布】図6に電子地盤図によるモデル化対象層(洪積層の一部を含んだ沖積層相当層)の層厚分布を示す。このモデル化によって、従来の沖積層のモデル化で空白地域であった名古屋地域中央部の熱田台地がモデル化でき、名古屋市域全体の工学的に有効な地盤構造が推定された。AB図6 モデル化対象層(沖積相当層)の層厚分布【地域を代表する土質断面】図7に地域を代表する東西断面を示す。JR名古屋駅を横断している。西側にはN値2未満の軟弱な粘性土層が堆積し、名古屋駅付近の名古屋市中央部では砂質土層が厚く堆積している。東部は熱田台地に近くなる。AB図7 代表的なモデル柱状図断面(図6に断面位置を示す)A-14 【名古屋市】【表層の土質】図8に各深さの土質分布を示す。モデル柱状図断面からうかがえる沖積相当層内の各土質の面的な広がりを見ることができる。各深さの土質分布は,礫質土と砂質土の分布が概ね東西に分離される。深さ 5m深さ 15m図8 各深さの土質分布補足:作成者: 地盤工学会中部支部 中部地盤研究会(2010 年度)A-15 05【大阪市】対象地域: 大阪市および周辺対象地域の地盤概説:対象地域には『大阪平野』が広がっている。大阪平野は,大阪湾を中心に楕円の形をした地域(長軸 60km,短軸 30km:大阪堆積盆地と呼ばれる)の北東側に位置している【図1,図2】の沖積平野は,周辺を山地に囲まれる中に河川(旧淀川や旧大和川など)から供給された土砂が堆積して形成された地盤である。図1 大阪平野から大阪湾の地盤図2 大阪堆積盆地の表層地質(『新関西地盤~大阪平野から大阪湾~』2007,KG-NET・関西圏地盤研究会)大阪平野付近の地形は,ほとんどが平坦である。大阪市や周辺地域には沖積低地が広がり,さらに丘陵地から山地へと変化している。北には千里丘陵,南に泉北丘陵,東に生駒山が分布し,西は大阪湾に面している。低地部の中央には「上町台地」(中位段丘)が南北に突起のように分布している。また,上町台地の西縁には上町断層,生駒山には生駒断層のように,多くの活断層が分布している。大阪平野の地下には,粘土の地層と砂・礫の地層が交互に堆積している【図3】。それは地表付近で軟らかく,深くなるにつれて硬くなっている。その堆積の状況は場所によって異なっている。生駒山上町台地大阪港東大阪西大阪AsUMa13図3 大阪平野の東西断面(『関西地盤』1992,土質工学会関西支部・地下空間の活用と技術に関する研究協議会)A-16 【大阪市】電子地盤図作成の基礎データ:関西圏地盤情報データベース(KG-NET:関西圏地盤情報ネットワーク)を使用した。対象地域のボーリング本数は約 10,000 本である。図4 モデル化対象地域とボーリングデータ位置モデル化の対象層:大阪平野における沖積層と洪積層との境界はN値が急増する付近が目安となる。この沖積層は難波累層とも呼ばれ,地質学的な沖積層(完新世)と洪積層(更新世)との境界である約1万年よりも古く,約2万年前以降の地層と定義される〔図5参照〕。沖積層中には厚い海成粘土層のMa13層が挟まれる。同層は完新世の海進によって大阪平野から東大阪地域まで海域が及んだ時期に堆積した内湾性の粘土層である。当対象地域における電子地盤図のモデル化対象層は,以上の沖積層の区分を目安とした。具体的には,西大阪と東大阪の沖積低地においては,第1洪積砂礫層の上面より浅い部分(沖積相当層)とした。また,両地域の沖積層分布の縁辺部や上町台地上においては沖積層の厳密な区分は難しいが,薄く緩い土層の堆積が見られることから,N値を指標に工学的に基盤となる境界までを対象層とした。以上の判読により,当地域のモデル化対象層として“沖積相当層”を抽出した。A-17図5 大阪平野地下の層序の概要(新関西地盤 2007,KG-NET・関西圏地盤研究会) 【大阪市】電子地盤図による地域の地盤特性:【沖積相当層の層厚分布】図6に沖積相当層(モデル化対象層)の層厚分布を示す。大阪城が北端に位置する上町台地は,沖積層よりも古い地層にあたるが 5~10m の緩い土質が堆積している。図には上町台地よりも西側の大阪平野の一部において,層厚 20m 以上の沖積相当層(第1砂礫層以浅)の分布が示される。EW図6 沖積相当層(モデル化対象層)の層厚分布【地域を代表する土質断面】図7に代表的な断面図を示す。上町台地を挟んで西大阪から東大阪を切り出したこの断面は,大阪市域とその周辺の地盤環境の特徴を示している。西大阪には表層近くに上部沖積砂層が緩く約 5m の層厚で堆積し,その下に Ma13 層(沖積粘土層)が 10~20m の層厚で厚く分布して下部の砂質土層へと遷移する。上町台地の西縁には天満砂堆の砂層が見える。東大阪においては,西大阪の堆積状況に類似するが,上部砂層は薄く,Ma13 層も 10~15m 程度にやや薄くなる。また東大阪の Ma13 層のN値は 0~1 を呈しており,鋭敏粘土としてよく知られている。上町台地WE東大阪西大阪図7 代表的なモデル柱状図断面(図6に断面位置を示す)A-18 【大阪市】【表層の土質とN値の分布】図8に深さ 5m と 10m の土質分布を示す。各土質で,N値に小さいほど淡い配色としてある。各深度の分布状況は,前図の東西断面に見られた土質分布の平面的な広がりを示している。深さ 5m 図には西大阪における第1沖積砂層,東大阪におけるN値 2 未満 Ma13 層の分布が見られる。深さ 10m 図には西大阪における Ma13 層の出現を見ることができる。深さ 5m深さ 10m図8 各深さの土質分布補足:作成者: 地盤工学会関西支部 大阪地域電子地盤図作成委員会(2007 年度)A-19 06【広島市】対象地域: 広島市(旧広島市内)対象地域の地盤概説:対象地域は,広島県西部瀬戸内沿岸の旧広島市『広島市デルタ(太田川三角州)』である。広島県の沿岸地域の他の沖積地も河川河口部に形成されたものであり,広島地域(太田川河口),福山地域(芦田川),三原地域(沼田川)等がある。これらの沖積層の分布形態は,各地域で異なりを示すものの,沿岸線での沖積粘土層の下限深度は,県西部(大竹,広島,呉)ではほぼ 30m 前後であり,県東部(竹原,三原,福山)ではほぼ 20m 程度となっている。いずれの地域においても三角州の要から海岸に向かって緩く傾斜して,徐々に層厚を増していることはいうまでもない。この内,旧広島市の基礎をなす太田川三角州は砂,粘土,礫よりなる沖積層で,下部の砂礫層はよく連続している。また,地表から約 5m の深度あたりにも砂礫層が存在しているが,この砂礫層はそれほど厚くなく連続性は悪い。そして,この沖積層の基盤は花崗岩であるが,旧太田川流域の埋没谷や三角州形成以前の湾内にあった島が地表に露出している部分もあり,相当に複雑である。図1ならびに図3は,広島市デルタの断面を示したものであるが,縦断する A-A’断面より,沖合に向かって粘土層が相当厚く堆積している様子が分かる。また,横断する B-B’断面や C-C’断面から,砂礫層上端面はかなりの落差で凹凸しており,旧太田川の流路が埋没していることが分かる。図2は長尺ボーリング調査(広島市中区国泰寺 1 丁目)の例である。-30m~-60m あたりまで玉石を数多く含んだ砂礫層が堆積しており,この玉石は現在の太田川の中流域で多く見られる 20cm~30cm 程度のかなり大きなものである。図1 広島市デルタ図2 長尺ボーリング調査の例図3 広島市デルタの断面(建築学会中国支部・基礎地盤委員会「広島県西部地盤図」1987 より)A-20 【広島市】電子地盤図作成の基礎データ:中国地方地盤情報データベースを使用した。用いた地盤データは,広島県地盤図と広島県西部地盤図に収録されたボーリングデータ,広島市が実施したボーリングデータなど 5,668 本である。電子地盤図の作成には「全国電子地盤図作成支援ソフト」を用いた。作成手順は以下の通りである。①各ボーリング柱状図に地層境界を設定する。これはボーリングごとに表層の標高,基盤面の標高を設定する作業であり,ボーリング位置を地図と柱状図で確認しながら行った。基盤面は N 値 50 以上の層であり,ほとんどが表 1 の下部砂礫層 LS であるが一部では最下部層 Lm となった。②図4のように 250m の区画を設定した。250m×250m メッシュのそれぞれについてその範囲内のボーリングデータの一覧を確認し,平均化してそのメッシュのモデル地盤を決定した。同一メッシュ内で標高や地層構成が大きく異なるボーリングデータが存在する場合は,周囲の地盤との関係を考慮しそのメッシュの代表的な地層構成として適切なボーリングデータを選択して平均化を行った。含まれるボーリングデータが非常に少ないメッシュに3kmついては,当該メッシュの参照範囲を拡大してボーリングデータを選択し,平均化を行った。図4 ボーリング位置モデル化の対象層:表1 地層区分表地質時代地盤地質区分*完新世更新世第四紀太田川デルタに分布する地質を表1に示す。電子地盤図の作成にあたっては,N値 50 以上の地層をこの地域の工学的基盤面とし,その上面をモデル化対象地盤とした。太田川デルタは完新世および更新世の地層が厚く,電子地盤図作成に利用したボーリングは,N値 50以上を確認しているものは多くはない。全ての区画で,電子地盤図の工学的基盤面がN値 50 を示しているものではない。本地区のN値 50 は,更新世の層,または,基盤岩類にある。第三紀以前最上部層Um上部砂礫層Us上部粘土層Uc下部砂礫層Ls下部粘土層Lc最下部層Lm下部砂礫層Ls´基盤岩類B*中国地方基礎地盤研究会「広島県地盤図」1997 に準拠A-21 【広島市】電子地盤図による地域の地盤特性:【工学基盤面の層厚分布】モデル化対象層の層厚分布図を示す。デルタの中心部の多くはN値 50 未満の層厚が 20m以上を示している。図5 モデル化対象層の土質分布【地域を代表する土質断面南北方向】旧広島市内(デルタ)の地盤の特徴として,層厚の大きい上部砂礫層(完新世)が市内全域に存在することがあげられる。上部砂礫層の N 値はほとんどが 10~20 の範囲にあり,海に近づくにしたがって小さくなる傾向がある。また,広島城の周辺まで上部粘土層(完新世粘土層)がみられないが,それよりも南の海に近い範囲では,上部粘土層が急速に厚みを増して堆積している。図6 南北方向の土質断面図A-22 【広島市】【地域を代表する土質断面東西方向】断面東で粘性土が欠落する部分は,黄金山(222m)の北側にあたる。図7 東西方向の土質断面図【表層の土質とN値の分布】深さ5mの土質は,多くのエリアで砂質土が主体である。深さ 10m付近から粘性土がデルタ中心部に出現しはじめる。以深では,粘性土が多くを占めるようになる。3km深さ5mの土質分布深さ 10mの土質分布図8 深さ 5mおよび 10mの土質分布図補足:作成者: 地盤工学会中国支部 中国地方地盤情報DB委員会・電子地盤図WG(2010 年度)A-23 07【松山市】対象地域: 松山市(松山平野)対象地域の地盤概説:松山市が位置する松山平野は,東から西の伊予灘に向かってアサガオが開いたような地形をしている。これは東西に延びる中央構造線沿いに,山麓から浸食された堆積物が河川によって運ばれて拡がり,形作られたものである。この河成堆積物が作った地形のうち,松山平野の特徴となっているのが扇状地である。図1の松山平野付近の微地形区分図より,扇状地をつくる河川は主に東から重信川,小野川,石手川の三つの河川であり,それぞれ扇状地を形成している。また,図には沖積扇状地のほかに,山地・丘陵,洪積台地,浜堤,自然堤防,沖積低地が区分される。このうち生活面で重要視される箇所は,人口を多く抱える沖積扇状地と沖積低地である。これらの地盤(堆積物)は浸食・運搬・堆積といった河川の営力のほかに海水準変動という海面の上昇および下降する現象により形成された。また,松山平野は四国の北西部にあり,地質構造区分でいう領家帯および和泉層群堀江山地・丘陵浜 堤の分布域にあり,領家帯の花崗岩類および自然堤防洪積台地和泉層群の砂岩が分布している(図2参沖積扇状地沖積低地照)。これらが風化して浸食(削剥)・運搬・三津浜堆積されると砂・礫の多い堆積物になる。領伊家帯と和泉層群の境は,松山城と道後温泉松山予のある箇所を通る東北東-西南西方向の線灘によって区分することができる。境界より手川石北の瀬戸内海沿岸までが領家帯で,風化す横河原重信 川るとマサになる花崗岩類が分布している。境界より南の中央構造線までが砂岩主体の和泉層群の分布する地域である。郡中このように花崗岩類と砂岩からなる基盤砥部岩の上に新しい第四紀の堆積物がたまった結果,松山平野の地形は西方の瀬戸内海側図1 松山平野の地形概略図(文献 1)に加筆)に広がって開くアサガオのようになった。図2 四国の地質構造区分と松山市周辺の地質図(文献2)に加筆)参考文献:1) 平井幸弘:鷹子遺跡および樽味遺跡をとりまく地形環境.愛媛大学埋蔵文化財調査報告, Ⅰ鷹子・樽味遺跡の調査, pp.51-75, 1989.2) 日本の地質『四国地方』編集委員会編:日本の地質8 四国地方.共立出版株式会社, 1991.A-24 【松山市】電子地盤図作成の基礎データ:松山地盤図(愛媛県建設研究所,2003)作成の研究活動が地盤情報のデータベース化の発端となり,その後,愛媛大学においてデータベースの拡張が毎年,継続的に実施され 2008 年までに約 2500 本のボーリングデータベースが構築され,現在は「四国地盤情報データベース(四国地盤情報活用協議会)」に集約されるボーリングデータを使用した。図3に検討地域とボーリング位置を示す。図3 検討地域とボーリング位置モデル化の対象層:図4に松山平野の代表的な東西の断面を示す。ここでの工学的な基盤の区分境界は上部沖積層(完新統)として表した。上図は松山市の北にある堀江地区の東西の断面図で,右図は沿岸部(松山空港)から石手川沿いに東へ進み石手川扇状地へ至る断面である。沿岸部では砂を主とした堆積物が見られる一方で,丘陵部では土石流による礫層の堆積物が見られる。これらの断面で注目に値するのが上図で火山灰層と礫層,下図で砂層~粘土層の堆積物と礫層(土石流堆積物)である。地盤中に重なる地層で時間尺度として利用できる連続性のよい火山灰層があるのは堀江地区である。ここではアカホヤ火山灰としているが,この火山灰層のある位置(層準)を目安に,その下方のN値50以上ある礫層の上面までを地盤モデルの対象層とした。また,アカホヤ火山灰がない箇所も,火山灰のある箇所から隣接地域へと層相(地層の堆積の様子)を比較することで地盤モデルの対象層を決めた。図4 松山平野の代表的な地層断面〔上:堀江地区,下:沿岸部~石手川扇状地〕A-25 【松山市】電子地盤図による地域の地盤特性:【沖積相当層の層厚分布】図5に電子地盤図によるモデル化対象層(工学的基盤以浅)の層厚分布を示す。瀬戸内沿岸域では工学的基盤が深く沖積層闘争は 15~20m の層厚を有し,内陸の扇状地では 5m 未満の層厚となる。NEWS図5 モデル化対象層(工学的基盤以浅)の層厚分布【地域を代表する土質断面】図6に地域を代表する南北断面(N-S)と東西断面(W-E)を示す。N-S は堀江地区の南端付近より南に重信川にかけての断面である。N値 20 を下回る比較的緩い砂層の分布が続き,重信川付近で礫層の堆積が見られる。W-E は重信川河口から内陸の扇状地にかけての断面である。沿岸部の砂質土の堆積が上流・内陸側に向かって地盤高の上昇とともに礫層に変わる様子が見て取れる。SNEW図6 代表的なモデル柱状図断面(図5に断面位置を示す)A-26 【松山市】【表層の土質】図8に深度 5m および 10m の土質分布を示す。前図のモデル柱状図断面からうかがえる沖積相当層内の各土質の面的な広がりを見ることができる。各深さの土質分布は,沿岸域においては砂質土,内陸・扇状地域においては礫質土の分布が特徴的に表現・区分される。深度 5m深度 10m図7 各深度の土質分布補足:作成者: 地盤工学会四国支部 四国電子地盤図作成検討委員会(2008 年度)A-27 08【福岡市】対象地域:福岡市(福岡平野)対象地域の地盤概説:福岡平野は博多湾の南側に分布し,西方,南方から東方にかけて山地や丘陵に囲まれる小規模な低。本平野には,北から時計回りに多々良川,御笠川,那珂川,樋井川,室見川,十地である(図 1)郎川が分布する。沖積層ボーリングに含まれる砂礫の多くはこれらの河川からもたらされる。これらの河川堆積物は,再移動し博多湾を取り巻くように海岸沿いに砂質堆積物を形成している(唐木田ほ。博多湾の北側には,古期砂丘とそれを覆う新期砂丘からなる砂嘴地形(海の中道)が認か,1994)められる。侵食された古砂丘も沖積層に含まれる砂質堆積物を海浜に供給する。湾岸沿いには埋立地や人工島が分布する。福岡平野を構成する基盤は,古第三系と白亜紀深成岩類であり,一部に三郡変成岩類が認められる(唐木田ほか,1994)。これらは平野を取り囲むように分布するが特に古第三系と花崗岩類は福岡平野中心部の地下に広く分布する。これらの基盤を覆う軟弱な地盤を含む第四系は,天神凹地(福岡地。下山(1989)や唐盤図作成グループ,1981)と呼ばれる三角形の「基盤の凹み」を埋める(図 2)木田ほか(1994)は,ボーリングの地盤と地表地質とを組み合わせ,下位より仲原礫層,須崎層,地行泥層,奈多砂層,大坪砂礫層,博多湾シルト層,住吉層,海の中道砂層,箱崎砂層と細分した。福岡平野の地盤を特徴づけるものとして,警固断層(福岡地盤図作成グループ編,1981)がある(図 2)。警固断層を境に基盤の高さや更新統の厚さは著しく変化しており,断層の東側は先に示した天神凹地と呼ばれる三角形の基盤の凹みが顕著である。図 1 福岡平野の地形・地質区分(唐木田ほか,1994)A-28図 2 断面図(唐木田ほか,1994) 【福岡市】電子地盤図作成の基礎データ:モデル化には,九州地盤情報共有データベース(2005,2012)を利用した。対象地域のボーリング本数:約 2,500 本。図 3 ボーリング位置モデル化の対象層:本地域の第四系の分布は,警固断層を含む基盤の凹凸や異なった基盤から流れ込む複数の河川の存在により複雑である。福岡平野において,沖積層の大部分をなす完新統は博多湾シルト層,住吉層,箱崎砂層,海の中道砂層である。これらのうち,住吉層は陸側を中心に分布する粘性土~砂礫質の河川層,海の中道砂層や箱崎砂層は海浜~砂丘砂層,博多湾シルト層は縄文海進時に最も陸側まで分布する海成の軟弱なシルト層である。一般にこれらの沖積層の層厚は 20 m 以下と薄いが,側方への連続性は博多湾シルト層を除いて良くない。ほとんどの地域では,これらの完新統は N 値の低い軟弱な地盤である。一方,下位の更新統は場所に依存して多様な土質からなり,その N 値も土質によって変化する。モデル化は沖積層を対象とすることから主に完新統を対象として行ったが,場所によっては N 値が 50 以下の礫層からなる更新統も含めている。図 4 福岡平野の第四系(唐木田ほか,1994)A-29 【福岡市】電子地盤図による地域の地盤特性:【沖積相当層の層厚分布】モデル化が行われた沖積層相当層は,モデル作成に用いられるボーリングの粗密によって完全に連続的ではないが,概ね福岡平野の地盤を特徴付ける層厚分布を示す。すなわち,モデル作成地域の中央において,北西-南東方向に沖積層層厚の顕著な厚さの違いが認められ,これは警固断層および天神凹地の存在を示唆する。一般には博多湾岸に向かって沖積層層厚が増加するが,天神凹地周辺域では,断層の南西側が急激な層厚の変化を見せるのに対し,東側では海側に開いた三角形の部分が徐々に東側にゆくに連れ層厚を減じる。多くの部分の沖積層の層厚は 10 m 以内であるのに対し,この領域だけは特異な分布を示す。図 5 モデル化対象層(沖積層)の層厚分布【地域を代表する土質断面】前述のような沖積層の層厚分布は,断面図にも反映される。下の断面図の中央部の沖積層の厚い領域は警固断層沿いである。モデル化された土質断面では,最上位が砂質で標高-5 m~-10 m に粘性土を挟むことが多い。この粘性土は,博多湾シルト層に相当する。その下位に認められる N 値 50以下の砂質土は住吉層下部か,一部は須崎層上部であると考えられる。沖積層の下部に認められる礫質土は,西側では最終間氷期以前の扇状地性の礫層と考えられるが,著しい風化を受けており N 値はさほど大きくない。図 6 福岡平野の代表的なモデル断面【表層の土質】対象地域の深さ 5 m の土質分布は,おおよそ平野部の全域にわたって砂質土が分布する。現多々良川や那珂川の分布する地下には,礫層が認められるが,これは深さ 10 m では西側に移動するので,A-30 【福岡市】警固断層の三角形の凹地の基盤面にそって分布すると考えられる。深さ 10 m では,沖積層の分布はほぼ警固断層の東側にのみ認められる。海側には,博多湾シルト層に対応すると考えられるやや粘性土のまとまった分布が認められる。しかしながら陸側では深さ 5 m の例と同様に砂質土が優先する。深さ 5 m深さ 10 m図 7 各深さの土質分布補足:作成されたモデルは,地盤工学会九州支部作成のモデル(2007)に対して,新たに追加されたボーリングデータを考慮して更新したものである。作成者: 地盤工学会九州支部 九州電子地盤図作成委員会(2007 年度)福岡大学理学部石原与四郎(2013 年)A-31 09【仙台市】対象地域: 仙台市(仙台平野)対象地域の地盤概説:仙台平野は図 1 に示すように、多賀城市から山元町にいたる南北約 50km、東西約 10km の太平洋に面する臨海沖積平野である。仙台平野の地下構造について「仙台市史 特別編 1 自然」をもとにその概略を図 2 に示す。海岸線と平行な南西―北東方向の地下構造は七北田川および名取川流域で第三紀岩盤からなる基盤が深くなり、その上に未固結の堆積物が堆積した埋没谷地形となっている。基盤までの深さは 40~60m で,その上には礫層が卓越する埋積下部層(基底礫層)が堆積している。これよりも上層は約 18000 年前以降に堆積した沖積層である。海岸線と直交する方向の地下構造は基盤と基底礫層が海に向かって傾斜していることが見て取れる。図 1 仙台平野の微地形(仙台市史 特別編 1 自然より引用)図 2 仙台平野の地盤堆積構造の例(仙台市史 特別編 1 自然より引用)電子地盤図作成の基礎データ:宮城県内の既存のボーリングデータを元に作成した。その内訳は Kunijiban のデータ 7651 本(東北 6 県の数),宮城県のデータ 5340 本,仙台市のデータ 1322 本の計 14313 本である。モデル化の対象層:地盤図の基盤は表1に示した洪積層の上部砂礫層上面とする。砂礫層があらわれない場合は第四紀層基岩盤上面や,N値50以上が連続して現れる砂層上面とした。表1 仙台平野の埋積谷堆積構造(仙台市史より引用)埋積上部層埋積中部層埋積下部層沖積最上部粘土層沖積風成砂層沖積海成砂層沖積海成粘土層沖積陸成粘土層上部砂礫層腐植混じり粘土層下部砂礫層第四紀層基盤岩A-32沖積層洪積層 【仙台市】電子地盤図による地域の地盤特性:名取川から七北田川に向かう 2 測線を対象として既往の地盤図(上段)と電子地盤図)(下段)を比較したものを図 3 に示す。C-C’測線は長町から岩切に向かう断面,D-D’測線は中田から卸町を通って七北田川に向かう断面である。どちらの断面も広瀬川から七北田川に向かい基盤面が深くなり沖積層が厚くなっていることがわかる。また七北田川付近の沖積層は砂層が卓越し,その下に粘性土が堆積している特徴もよく表している。また,卸町,荒井付近では,既存の地盤図では有機物を含む沖積陸成粘性土と分類されているが,電子地盤図では高有機質土が分布していることを認識できる。設定基盤面(a)C-C’測線(b) D-D’測線図 3 電子地盤図と既往の地盤図の比較図 4 に沖積層厚さの分布を示す。平野西側の標高が高い仙台駅周辺の市街地は沖積層が薄く,東側の平野に向かうにつれて沖積層厚が厚くなっていく傾向が見て取れる。また七北田川,名取川周辺でも沖積層が厚くなる傾向を示している。図 4 沖積層分布図補足: 本報告の内容は,仙頭,菅野,高橋,布原(2011),仙台地域における電子地盤図の作成,第 46 回地盤工学会研究発表会,pp.191~192 をもとに作成したものである。作成者: 地盤工学会東北支部 仙台地区電子地盤図作成委員会(2010 年度)A-33 10【京都市】対象地域: 京都市および周辺(京都盆地)対象地域の地盤概説:京都盆地は東西および北側の山地に囲まれ,山地と盆地の境界の断層活動により,山地側が隆起して盆地が沈降することによって形成されたものである。丘陵部より下位の低地は第四紀層から,段丘や地下の大部分は大阪層群から成っている。河川沿いの低地部分は沖積層が広がっている。盆地の北東部には鴨川,高野川によって周辺の山地から供給された土砂による扇状地が広く発達している。東部の白川流域は白川砂と呼ばれる花崗岩起源の砂質土を局地的に堆積させているという特徴を有している。桂川は市内西部を丹波層群を削りながら流下し,保津峡の狭隘部では激しい水流のために流域に氾濫が多発してきた歴史を持つ。このため,流域の西京区,向日市,長岡京市の一帯は旧河道や氾濫原が広がる複雑な地盤構造を有している。宇治川は琵琶湖から流れ出す瀬田川を源流とし,宇治橋付近から川幅を増し,市内南部を男山と天王山に挟まれた三川合流部に向かって流下する。かつてはこの付近に巨椋池があり,市内の扇状地ではほとんど見られない軟弱粘土が広く堆積する地域である。木津川は三重県鈴鹿山地を源流として領家花崗岩帯を流下する河川で,京都府南部相楽郡を西進し,木津川市からその流れを北に転じ,京田辺市,城陽市,八幡市,綴喜郡久御山町,伏見区南部を経て桂川,宇治川と合流する。花崗岩起源のマサ土を大量に運搬し,その流域には厚い砂質土層が堆積している。このため,盆地北部の砂礫層中心の扇状地とは全く異なる地盤性状を示している。表層の地盤は,京都盆地の大部分が扇状地性の堆積環境であることから,砂や砂礫を主とする堆積物が多く分布し,南部の三川合流部付近で粘性土が卓越する。標高 100m 前後の丘陵部より低地側は,主として第四紀層から構成される。丘陵地や低地地下の大部分は鮮新-更新統の大阪層群から,段丘や台地部分は,中-後期更新統の段丘構成層から,河川沿いの低地部は沖積層からなっている。盆地南部の山城盆地に連続する接続部,盆地東部の深草地賀茂川 高野川域の丘陵,盆地西部の西山丘陵には主として大阪層群相当層が露出する。この地域は,主に半固結の粘土・シルト・砂・礫から構成されるが,沖積層に比べて N 値が高い。中生代より古い花崗岩や丹波帯は基本的に桂川岩盤として区分されている。鴨川参考文献1) 三村 衛・吉田光宏・北田奈緒子:宇治川京都盆地の電子地盤図作成について,第45回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.125-126,2010.2) 関西地盤情報活用協議会:新関西地盤-京都盆地-,196p.,2002.淀川木津川図1 京都盆地の表層地質図(「新関西地盤-京都盆地-」,関西地盤情報活用協議会,2002.)A-34 【京都市】電子地盤図作成の基礎データ:「関西圏地盤情報データベース」(KG-NET・関西圏地盤情報協議会)に集積された京都地域の約8000 本のボーリングデータを使用した。図2に検討地域のボーリングデータ位置を示す。図2 検討地域のボーリングデータモデル化の対象層:京都盆地は粗粒物の多い地盤であることから,比較的N値が高く,建設用のボーリング調査の掘進長も短いものが多い。その中で,遺跡調査などにより,地表から数m程度に平安神宮火山灰(AT火山灰:25000年前)が確認される。この情報とボーリング柱状図を合わせると,盆地内に全体的に分布する礫層の上面がこれに該当し,かつ更新統に対応することから,完新統と更新統の境界は,ほぼこの礫層の上面に該当すると判断される(表1)。よって,図3に示すように京都盆地内のほぼ全域に広がっている顕著な礫層を洪積相当層,その上位に堆積する細粒層を沖積相当層とし,それらの境界を沖積相当層の下限とみなしてモデル化の対象層とした。表1 京都地盤の地質構成と形成時期(新関西地盤-京都盆地-,2002.)NS図3 京都盆地の南北断面図(「新関西地盤-京都盆地-」,2002.)A-35 【京都市】電子地盤図による地域の地盤特性:【沖積相当層の層厚分布】図4に沖積相当層の層厚分布を示す。層厚は東西方向にはほぼ同様で,南北方向に大きく変化する。JR 東海道線の南部より層厚が 10m を越える。三川合流付近では最も層厚が厚くなる。1JR 東海道線2図4 沖積相当層(モデル化対象層)の層厚分布【地域を代表する土質断面】図5に地域を代表する京都市北部の東西断面(1)と南部の東西断面(2)を示す。1 断面は,西側に桂川とその後背地が分布し,後背地は粘性土が卓越する。東側は鴨川の扇状地であり,上流の一部に花崗岩が分布し,その地域から供給されるマサ土による砂層が部分的に卓越する傾向がみられる。2 断面は三川合流地域の低地部の断面で,全体に砂質土と粘性土が卓越する。砂質土は南部花崗岩地域から流れてくる木津川より供給を受け,北部の桂川や鴨川を主体とする粘性土がみられる。12図5 代表的なモデル柱状図断面(図4に断面位置を示す)A-36 【京都市】【表層の土質】図6,7に深さ 5,10m の土質分布を示す。深さ 5m には北部の大部分において礫質土が分布する。盆地の東西端部には断層が分布し,その地域には大阪層群の粘性土や砂質土が分布する。北東部の砂質土の分布は花崗岩で,マサ土起源である。三川合流地域は砂質土と粘性土が卓越する。桂川の流域は粘性土が卓越することが確認できる。これに対して南部から流れ込む木津川流域は砂質土が卓越する。北部地域はほとんどの地域に対象層が分布しない。深さ 10m では,中部 JR 京都駅以南で一部礫質土が分布する。三川合流地域では砂質土が卓越する。図6 深さ 5m の土質分布図図7 深さ 10m の土質分布補足:作成者: 京都大学 三村 衛,地域地盤環境研究所A-37北田 奈緒子(2010 年) 11【八戸市】対象地域: 八戸市および周辺対象地域の地盤概説:八戸市は,南方の陸中海岸から続く屈曲に富む海岸線上の北方に開く八戸湾から,その海岸に面して広がっている。本地域の沖積平野は,主に八戸湾より南西方向に約 12km,幅 3~4km 程度で分布し,これに加え,真南方向に約 5km,幅約 2km 程分布が見られる〔図1,図2〕。この沖積平野は,丘陵や段丘の中を流れる,馬淵川及び新井田川とその支流の松館川から供給された土砂が堆積して形成された地盤である。馬淵川新井田川図1 八戸湾から八戸市の地形図2 八戸地域の地形区分図(松山力:八戸の地質(文化財シリーズ第 24 号))この地域の地形は,南端部を除き丘陵性台地および台地と,これを横切る河川沿岸の低地からなる。丘陵性台地は市の東端部の蒼前平丘陵性台地,南部の天狗沢丘陵性台地の 2 つで,台地は本地域では最も面積が広い。低地は南から新井田川,馬淵川,それに五戸川の各河川沿岸にそれぞれ分布する新井田川低地,馬淵川低地,五戸川低地それに太平洋沿岸に分布する海岸低地の 4 つからなり,この中で馬淵川低地が最も顕著である。地質は市縁辺部に中・古生代岩類及び第三紀層が分布している。第四期層は広大な段丘を構成して発達し,それらの間を流れる河川にそう低地を覆って一面に広がっている。この地域の一大特徴が,我が国一般の臨海地帯に対して異なるのは,沖積世の後期に属する火山灰層が丘陵及び台地の全面を覆っているだけでなく,第四紀層の全体を通じて火山性と非火山性の堆積物が反復し混合しあっていることと言われている。図 3 に馬淵川低地地質断面図を示す。図3 八戸市の地質断面図(佐藤浩,八戸市の沖積層層序とその応用地質的考察)A-38 【八戸市】電子地盤図作成の基礎データ:八戸地域地盤情報データベース(八戸地域地盤情報データベース運営協議会)を使用した。対象地域のボーリング本数:約 2,500 本。図4 ボーリングデータの分布モデル化の対象層:八戸地域における沖積層は,佐藤浩により古順に小中野層,長苗代層,及び類家層の三層に区分され,最深で海抜-45mまで存在していることが確認されている。本地域の沖積層と洪積層との境界は,小中野層基底の砂礫層(約1万7000~1万8000年前の最大海面低下期以降にこの深度から縄文海進開始頃までに堆積した更新世後期から完新世の地層)である。当対象地域における電子地盤図のモデル化対象層は,以上の沖積層最深部の区分を目安とし,同時に上部3層の存在も勘案し決定した。また,それらによる判断が難しい地点では,N値を指標に工学的に基盤となる境界までを対象層とした。以上の判読により,当地域のモデル化対象層として“沖積相当層”を抽出した。図5 八戸市地下の層序の概要(佐藤浩,八戸市の沖積層層序とその応用地質的考察)A-39 【八戸市】電子地盤図による地域の地盤特性:【沖積相当層の層厚分布】ボーリングデータの少なさ,データ深度の不足,地形に対するメッシュサイズの粗さ等の問題より,精度の良いモデル化と言い難いものの,新井田川低地,馬淵川低地と呼ばれる,両 2 河川によって形成されたこの地方を代表する低地部では,層厚が 25mを超える地点やこれに準ずる 21m 以上の地点が多く卓越して見られる。また,台地部縁端部分に 0~9m の浅い層厚の地点が連続して見られる。図6 沖積相当層の層厚分布馬淵川長苗代尻内図7X-X’断面(図 3 と同断面)A-40旧馬淵川【地域を代表する土質断面】馬淵川,旧馬淵川付近の類家層,長苗代層などの発達した級化構造がよく表現できているのが判る。各層の下側に堆積した礫層とその上部に砂層が存在する層序が見られる。また,これら海岸低地より内陸上部に移り,長苗代の辺りでは浅部にまとまった粘性土層(シルト層を含む)が見られるようになり,さらに内陸部へ進むと後背湿地により形成されたと考えられる有機質土が見られるようになる。またこの付近では沖積層の基底礫と考えられる層が見られるようになる。 【八戸市】馬淵川左岸沿いの本断面(Y-Y’断面)は,沼館(海岸低地)の No.37 地点からさかのぼり尻内のNo.15 まではほぼ X-X’断面と同様な層序が見られる。そこからさらに現馬淵川沿いにさかのぼるが標高については海抜約 10m 程度である,また No.15 付近では沖積層の基底礫上部が-25m 以深で見られたのに対し No.1 付近では-15m の深さで見られるようになり,沖積層厚が浅くなっている。図8Y-Y’断面(馬淵川左岸沿い)標高 10m より低い低地部では氾濫原により形成された砂層が卓越している。これより標高が高くなり南部天狗沢丘陵性台地に掛かると地層構成が変わり,深度-10m 以浅で礫層が見られるようになり,その上部に火山灰質土が堆積している層序に移項し,場所によっては火山灰質層厚 10m 超える地点も見られる。図9 Z-Z’断面(馬淵川右岸沿い~南部天狗沢丘陵性台地)補足:作成者: 八戸工業大学 地盤工学研究室 橋詰豊,小山直輝,金子賢治(2010,2013 年)A-41 12【静岡県】対象地域: 静岡県対象地域の地盤概説:静岡県のうち三島市から浜松市にかけての駿河湾から太平洋に面した地帯は,北部に富士山や南アルプス,中央アルプスといった高山が連なっている。この山岳地帯から急勾配で駿河湾や太平洋に流れ下る富士川や大井川,天竜川などでは河口付近まで扇状地が発達し砂礫層が堆積している。そして,これらの大河川に流れを遮られた小河川沿いでは低湿地も形成され,そこでは軟弱な粘土層や腐植土層が堆積している。さらに海岸では砂州や砂丘が形成され,それらによって閉塞された浮島ヶ原などでも軟弱地盤が形成されている。その他,海岸近くに砂礫台地も形成されている。一方,伊豆半島では山地が海岸線まで達し,低地はわずかしか発達していない。火山地帯であるため火山性堆積物が広く堆積している。電子地盤図作成の基礎データ:ボーリングデータは静岡県から提供していただいたデータを利用した。図 1 に今回の検討対象範囲内におけるボーリングデータ位置を示す。静岡県全体ではボーリングデータは 2,5474 本のボーリングデータがある。そのうち今回モデル化を行った地区(図 1 に枠で囲んだ 6 つの地区)におけるボーリングデータは 8,631 本である。図 1 ボーリングデータ位置モデル化の対象層:検討対象範囲内の低地には沖積層の下部に洪積層が存在する。したがって沖積層だけ取り出してモデル化することは可能である。また,一般に沖積層の下部には N 値が 50 程度以上の工学的基盤が存在する。ところが,台地には沖積層は存在しなく,また,表層に堆積している土層は更新世に堆積した層といえども N 値は大きくなく,深部になってやっと N 値が 50 を超える層が出てくる。このように,本検討対象地区では低地と台地の両方を統一してモデル化していくにあたって,沖積層をモデル化するといった単純なことができないため,N値が50以上の層を工学的基盤と考え,その上の層をモデル化することにした。A-42 【静岡県】電子地盤図による地域の地盤特性:(1) 断面図からみた特性図 2 は浜名湖東部に位置する佐鳴湖周辺から天竜川を横断し,磐田方面へ JR の東海道本線に沿って引いた測線の断面である。佐鳴湖周辺の台地部では上部に締まった砂が堆積している。また,狭い範囲で谷底低地が見られ,そこでは軟弱な粘性土,有機質土が砂質土層に薄く挟まれている。東に向かって台地に上がったあと降りると三角州が広がっており,表層 1m~3m に軟弱な砂・粘性土が一様に堆積し,その下部には礫が堆積している。図 3 は袋井から掛川方面へ JR の東海道線に沿って引いた測線の断面である。この測線は谷底低地を通っており軟弱な粘性土が厚く広範囲に堆積している。谷底低地を抜け丘陵・山地に向かうにつれ礫層が表層付近に表れてくる。図 4 は狩野川の河口から駿東郡に向かって御殿場線沿いに北上するように引いた測線の断面である。狩野川の河口付近では表層,あるいは上部に堆積している中程度に締まった砂に挟まれる形で,非常に軟弱な有機質土が薄く堆積している。北上して標高が高くなってくると,表層は粘性土層,火山灰性粘性土層へと変わってくる。図 2 佐鳴湖周辺から天竜川を横断し,磐田方面へ JR の東海道本線に沿って引いた断面図 3 袋井から掛川方面へ JR の東海道線に沿って引いた測線の断面A-43 【静岡県】図 4 狩野川の河口から駿東郡に向かって御殿場線沿いに北上するように引いた断面(2) 平面図から見た特性図 5 に袋井付近の工学的基盤面の標高分布を示す。海岸付近では工学的基盤面は TP-5m~-10m 程度と浅いが,内陸にはいって袋井の谷底低地になると TP-20m~-30m と深くなっている。そしてその北側は台地,丘陵地になると TP+10m 以上と高くなっている。図 5 袋井付近の工学的基盤面の標高の分布補足:作成者: 東京電機大学 安田 進(2013 年)A-44 13【高知市】対象地域: 高知市および周辺対象地域の地盤概説:高知地域の基盤地質は,ほぼ東西方向に走るいわゆる御荷鉾構造線及び仏像構造線によって北から三波川帯・秩父帯及び四万十帯に区分され,大観的には南ほど新しい地層がプレートに付加されて分布する覆瓦状構造をなしている。高知市のある高知平野は,この東西方向に帯状配列した基盤岩の一部が沈降して生じた地溝盆地を,第四紀未固結堆積物が埋積した沖積平野である。図1に高知平野(物部川~仁淀川の間)の沖積低地を示す(河川位置と微地形区分は図2を参照)。沖積平野の地形は,次のように分類できる。2) 自然堤防地帯3) 背後湿地帯4) 三角州地帯1) 扇状地帯6) 小溺れ谷地帯7) 海岸砂州地帯5) 土砂供給の多い河川沿岸地帯8) カタ(潟) 湖埋積地帯広義の高知平野の東部にあたる物部川下流域(香長平野)は,土砂供給の多い大河川扇状地に該当し,砂および細~巨礫で構成される優良な地盤である。南国市十市や香南市香我美町などは,沿岸流によって形成された浜堤によって背後が潟湖跡となり,きわめて軟弱な有機質土が分布する。狭義の高知平野(高知市街地)は,一般河川がつくる扇状地帯-自然堤防・背後湿地帯-三角州といった地形が展開し,下流に行くにしたがって脆弱な地盤となる。また,鏡川扇状地により河口をせき止められた小溺れ谷が認められ,有機質土を含む著しく軟弱な地盤を形成している部分がある。仁淀川流域の沖積平野は,日高低地,伊野低地及び高岡平野からなる。仁淀川の中流域は,多くの部分において第三紀末の穿入河川である。一般的な河川のように中流域において扇状地や大規模な河岸段丘を形成することなく,数 100 万年の間,河川運搬物の一つである砂礫の多くが下流域まで運び出されてきた経緯がある。すなわち,中・上流全域の地盤は隆起傾向にあり,本支流共に下刻作用(下方浸食)が活発であり,砂礫等を堆積するだけのスペースもなく,専ら下流に向けて運搬され続けるのみであった。この仁淀川本流沿いにおいては洪水時等に上流から搬出された大量の砂礫の一部が地形的に突出した下流側の低地に高い自然堤防を形成し,多くの小河川の本流への自然排出を阻止したため,後背湿地が生じた。したがって,日高低地及び伊野低地は後背湿地が主体で,高岡平野は自然堤防及び後背湿地の地盤により構成される。図1 高知平野(物部川~仁淀川の間)の沖積低地の分布A-45 【高知市】電子地盤図作成の基礎データ:「四国地盤情報データベース」(四国地盤情報活用協議会)に,高知地盤図(同編集委員会,1992)のデータや自治体等より 755 本を追加収集し,総数 3,382 本のボーリングデータを使用した。図2に検討地域の微地形区分とボーリング位置を示す。図2 検討地域の微地形区分とボーリング位置モデル化の対象層:図3に高知平野の代表的な地層断面の一つとして鏡川三角州の東西断面を示す。高知平野中央部」に詳しい。この知見に基づいて層序区分を(鏡川三角州付近)の地質特性は「高知地盤図(1992)設定した(図3の一覧表)。高知平野の地盤は,アカホヤ火山灰(S1v)が鍵層として明瞭に分布し,それを挟んで沖積粘土層が2層に分かれ(M1,M2),地表付近には扇状地性や河川供給による礫または砂層が覆い,沖積層の下には洪積の第Ⅱ礫層が広く連続的に分布している。これより,主に沖積層を対象にモデル化対象層を抽出した。なお,高知地盤図の研究領域(狭義の高知平野)を超えて物部川や仁淀川の流域地盤にも,この区分を拡張的に適用した。層序区分表記堆積環境等G1【礫質土】G1s【砂質土】第Ⅰ砂礫層沖積層(完新統)第Ⅰ泥質層M1【海成粘土】S1v【火山灰層】S1b【砂層】M2【海成(汽水)粘土】第Ⅱa砂礫層G2河床砂礫層第Ⅲa泥質層M3第Ⅰ砂層第Ⅱ泥質層洪積層(更新統)第Ⅱb砂礫層G2第Ⅲb泥質層M3埋没谷埋没谷第Ⅱc砂礫層G2扇状地性第Ⅲa砂礫層G3扇状地性※主に仁淀川に見られるチャネル性堆積物は第1砂礫層(GⅠ,GⅠs)として扱う。図3 高知平野の代表的な地層断面〔鏡川三角州の東西断面〕A-46 【高知市】電子地盤図による地域の地盤特性:【沖積相当層の層厚分布】図4にモデル化対象層(沖積層)の層厚分布を示す。高知平野中央部(鏡川三角州付近)の層厚は 30mを超える。物部川扇状地の層厚は 5m 程度と薄く,仁淀川周辺は局所的に厚い箇所が見られる。12図4 モデル化対象層(沖積層)の層厚分布【地域を代表する土質断面】図5に地域を代表する鏡川三角州の東西断面(1)と物部川扇状地の南北断面(2)を示す。1断面は,図3に示した地質断面の中央付近に対応する。G1:第Ⅰ砂礫層,M1:第Ⅰ泥質層,S1v:第Ⅰ砂層内の火山灰層のモデル化状況を見ることができる。2断面は,物部川に沿って北上する断面である。同扇状地の上部でN値がやや 50 を下回る礫層部分がモデル化されている。12図5 代表的なモデル柱状図断面(図5に断面位置を示す)A-47 【高知市】【表層の土質】図6に深さ 5m と 10m の土質分布を示す。それぞれの右図は鏡川三角州の中央付近の拡大図(N値を併記)である。両図からわかるように,この地域には層厚が 20mを超え,N値=0~1 の軟弱な粘土層(M1:第Ⅰ泥質層)が広く分布している。その区域の西側には礫層の分布が見られ,東側の地域にはN値が 15 前後の緩い砂層が堆積している。高知平野中央部(鏡川三角州付近),数値:N値深さ 5m高知平野中央部(鏡川三角州付近),数値:N値深さ 10m図6 各深さの土質分布補足: 本モデルは,以下の調査において作成されたものである。平成 19~21 年度 四国管内基礎地盤情報構築検討業務-高知平野における東南海・南海地震の想定と耐震性検討-参考文献:1) 四国管内基礎地盤情報構築検討委員会・四国地方整備局四技術事務所:同上報告書2) 矢田部龍一ほか:四国地盤情報データベースによる高知平野の浅層地盤特性,第43 回地盤工学研究発表会3) 高知地盤図編纂委員会:高知地盤図,1992.作成者: 四国技術事務所 四国管内基礎地盤情報構築検討委員会(2009)A-48 14【秋田市】対象地域: 秋田市対象地域の地盤概説:秋田市は東側および北側を出羽山地の険しい山々によって隔てられ,西側は日本海に面している。南端は雄物川に沿って伸び,由利本庄市,大仙市と接している。秋田市の市街地は雄物川に沿って南北に広がる秋田平野に立地しており,市の中心部からほど近い位置に河口がある。かつて雄物川は市の中心部を北北西に貫流して秋田市北部の土崎地区より日本海に注いでいたが,治水工事により放水路が造られ,現在は市街地の手前で西へ向きを変えて日本海に注いでいる。旧流路は「旧雄物川」として現在も残っており,河口は秋田港として利用されている。秋田平野周辺の地形区分を図 1 に示している。旧雄物川の東側に南北に長く後背湿地・旧河道が広く分布していることがわかる。これは旧雄物川の流れよりもずっと以前の雄物川の流れの跡であり,そこに川からの土砂の堆積によって沖積平野が形成されて,現在の平坦な平野となったことを示している。大昔,雄物川は現在の秋田市中心部を通って北上し,秋田港北部付近で日本海に注いでいたのである。後述の図 6 は旧河道付近の断面図を示している。A-I~A-III と記された部分が沖積層であり,その下は新第三紀系と呼ばれる沖積層よりも古い年代に堆積した地層である。その境界はちょうど旧河道に当たる部分がくぼんで谷地形になっていて,現在の秋田平野の下にはかつて川が流れていたことを示す痕跡が残っていることがわかる。この埋没した谷地形は「先雄物川谷」と呼ばれている。市中心部にある市役所,県庁や JR 秋田駅は秋田平野の軟弱な沖積層からなる地盤上に立地している。特に秋田駅の東側には「手形(手潟が起源)」,「谷地」など,地盤の軟弱さに由来する地名が現在でも多く残っている。また,2007 年に開通した秋田駅の東西を結ぶ「秋田中央道路」と呼ばれるトンネルはこの軟弱地盤内を東西に貫いている。図1 秋田市周辺の地形区分図(白石・柴田 1))A-49 【秋田市】電子地盤図作成の基礎データ:Kunijiban,みちのく GIDAS に収録されているデータおよび秋田県建設交通部(現:秋田県建設部)から提供されたボーリングデータを使用した。対象地域のボーリング本数は約 1,000 本である。図 2 秋田市周辺のボーリング柱状図の位置モデル化の対象層:秋田市における沖積層と洪積層との境界は更新世後期以前に堆積した河成段丘堆積物よりも上部の層となる。この層はかつての雄物川跡が埋没した谷地形となっており,「先雄物川谷」とよばれている。電子地盤図のモデル化対象層は,以上の沖積層の区分のうち,N値50以下の層を目安とした。沿岸部の砂丘砂層では沖積層の厳密な区分は難しいが,深度とともにN値が増加し,よく締まった砂地盤になっていることから,N値を指標に工学的に基盤となる境界までを対象層とした。以上の判読により,当地域のモデル化対象層として“沖積相当層”を抽出した。図 3 秋田の地層(日本の地質 2 東北地方 2))A-50 【秋田市】電子地盤図による地域の地盤特性:【沖積相当層の層厚分布】図 4,図 5 は秋田市の沖積層の層圧分布図である。内陸部あるいは山沿いでは沖積相当層圧は 10m~15m ほどであるが,特に赤色や紫色の凡例がが多く,市中心部で層圧が 20m 以上のものが点在しており層圧が厚いことがわかる。【代表的な土質断面】図-6 および図-7 は白石・柴田 1)によって報告されている秋田市の地質断面図と作成した地盤モデルの地層断面を比較して示している。図-6 は図-1に示す A-A 断面に,図-7 は B-B 断面に対応している。秋田市は旧雄物川の河道に堆積した比較的軟弱な沖積層の上に位置しており,沖積層の厚さはかつての河床の位置に沿って大きく変化している。 A-A 断面図を比較してみると,中央のおぼれ谷部から右側にかけては,岩盤の位置と標高が合致している。 左側にある砂層の標高が合致していないのは断面図とモデル化地点との座標のずれによるものである。一方,B-B 断面図を比較してみると,全体的に岩盤の位置と標高ともに合致している。一部の層の厚さの違いは N 値 50 までを層との境界にしているため,図の断面図での違いが表れている。【表層の土質とN値の分布】図-8 は各地点の表層土質を示している。沿岸北部には男鹿半島から続く砂州によるものと考えられる砂質土優勢の範囲が確認できる。この一体は砂丘地帯で厚い洪積砂(N 値 50 以上)が堆積しているが,このような砂質土層は沿岸南部にはほとんど分布していない。また,秋田市中心部では軟弱な粘土層が優図 4 沖積相当層の層圧分布図 5 沖積相当層の層圧分布(秋田市中心部)図 6 作成した地盤モデルと過去の報告例の比較(A-A 断面)A-51 【秋田市】勢となっており,粘土層は過去の雄物川の流れに沿って分布していることがわかる。またその分布はちょうど先雄物川谷と合致している。図-9 は高有機質土層の分布を表している。高有機質土は秋田市の中心部の場所である秋田駅の東側から山沿いにかけて多く分布しており,層圧は 3m 未満と大きくないが,中心部は軟弱な地盤構造となっていることが分かる。図 7 作成した地盤モデルと過去の報告例の比較(B-B 断面)図 9 高有機質土層の分布図 8 表層の土層分布補足:【参考文献】1) 白石・柴田:秋田平野南部の沖積層,秋田大学教育学部研究紀要(自然科学),Vol. 36, pp. 203-215,1986.2) 生出慶司ほか:日本の地質 2 東北地方,共立出版.作成者: 秋田大学 荻野俊寛(2013 年)A-52 15【横手市】対象地域: 横手市および周辺(横手盆地)対象地域の地盤概説:橫手盆地は,東は奥羽山脈,西は出羽山地に挟まれた地溝盆地で,東西 12~15km,南北約 50kmの西奥羽最大の平地帯を形成している。盆地東縁部の奥羽山脈との境界には南北約 60km にわたって橫手盆地東縁断層帯が位置する。盆地の比高は南東から北西に向かって漸減し,盆地の大半は沖積低地堆積物および扇状地堆積物からなる。電子地盤図は橫手盆地の旧大曲市,旧横手市,旧大雄村地域を対象に作成した。図 1 横手盆地における扇状地および段丘の分布(小西泰次郎地質調査所報告 551. 49(531. 14)(1966):「秋田県橫手盆地の水理地質学的研究」)に加筆電子地盤図作成の基礎データ:秋田県内の既存のボーリングデータ(Kunijiban のデータ,秋田県のデータ,横手市のデータ等)を元に作成した。モデル化の対象層:橫手盆地は,第四紀層厚が盆地中央部で最大270m にも達する。このため,表-1 に示す当地の基盤である新第三紀層が確認されていない箇所では,第四紀層のN値30 以上が連続する砂礫層上面とした。表1 地質総括表A-53 【横手市】電子地盤図による地域の地盤特性:図 1 の盆地西縁部の雄物川から旧橫手市街地に向かう橫手盆地を東西に横断する測線 E-E’の結果を示す。当測線は,西縁に雄物川,盆地中央部に「ピート(泥炭)」が分布し,盆地東縁部では橫手盆地東縁断層帯と交差する。既往の地盤図 (上段) と電子地盤図(下段)を比較したものを図 2 に示す。電子地盤図は既往の地盤図と異なり新盆地西縁部のデータは,雄物川の現河床のものであり,新第三紀層までは達していないものの当地の疑似基盤面は浅深度で現れる。盆地中央部ではほとんど勾配がないことから雄物川とその支流が乱流したことにより形成されたピート(泥炭)および粘性土の分布が確認され,粘性土下位に疑似基盤面が分布する。盆地中央部から東側に向かい地表面は高度を増し,表層部に粘性土が確認され,粘性土下位に礫質土が分布するものの盆地中央部とは異なり,礫質土層中に疑似基盤面が設定される。これは,盆地中央部は主として雄物川・皆瀬川・成瀬川の営力に起因する堆積物であり,盆地東側は横手川等に起因する扇状地堆積物が優勢するためである。また,盆地東縁部の新第三紀層まで達するデータから,橫手盆地東縁断層帯を境界として盆地側で新第三紀層の急激な傾斜が表現されている。以上より,当地区の電子地盤図は,概ね既往研究結果および地形と表層の地盤構造を反映した結果が得られている。図 2 横手盆地の測線 E-E’の断面図比較図 3 に沖積層厚の分布を示す。データが少なく空白メッシュが目立つものの,図-2 同様に盆地東縁部を走る JR 奥羽本線沿いに沖積層が厚く,西側の盆地中央部に向い沖積層厚が薄くなっていく傾向が見て取れる。図 3 沖積層分布図補足:本報告の内容は,藤井,仙頭,三浦,和賀,藤原(2012),橫手地域における電子地盤図の作成,第 47 回地盤工学会研究発表会,pp.213~214 をもとに作成したものである。作成者: 日本大学工学部,奥山ボーリング(株)(2012 年)A-54 16【長岡市】対象地域: 長岡市および周辺対象地域の地盤概説:長岡市は,北北東-南南西方向に細長く伸びる越後平野の南端部に位置する。越後平野の中~南部は,主に信濃川が運んできた土砂によって形成された沖積低地で,長岡市街地はその右岸側に広がる。信濃川沿いに伸びる低地の東西は丘陵(東山丘陵=魚沼丘陵,西山丘陵=東頸城丘陵)に挟まれ,平野との境界に沿って,東縁に悠久山断層,西縁に鳥越断層,片貝断層などがそれぞれ走っている。山間地を流れてきた信濃川は,小千谷市を過ぎ,長岡市妙見町を越えたところで平地に出て扇状地を形成する。この扇状地は地形上あまり明瞭ではないが長岡市街地の北部まで達し,長岡大橋付近で氾濫原性低地に変わる。このように,長岡市街地は扇状地の上にのっているため,地下には長岡砂礫層と呼ばれる砂礫層が広く分布する(図-1)。雲出町北陸自動車道信濃川長岡市街地上越新幹線蓮潟成願寺川図-1 長岡市街地を通る東西方向の地質断面図(新潟県地盤図(2002)による)一方,信濃川と東西の丘陵地との間には後背湿地が形成され,粘性土が優勢に分布する。とくに,長岡市街地の北東方向の猿橋川流域には皿状のへこんだ地形が形成され,明治時代まで八丁潟(沖)という低湿地が広がっていた。また,丘陵近くでは砂層や砂礫層の分布がしばしば認められる。これは黒川などの支流から洪水時に砂や礫が供給されたためと考えられる。さらに,長岡市街地北方の氾濫原性低地の地下は,主として砂とシルトの不規則な互層から構成されるが,後背湿地が形成されやすい信濃川と丘陵との間の地域では,粘性土(淡水成)が厚めに分布している(図-2)。与板市街地信濃川北陸自動車道上越新幹線見附市街地図-2 与板から見附へ抜ける東西方向の地質断面図(新潟県地盤図(2002)による)沖積層の厚さは,長岡市街地付近では 20~30m と推定されるが,北へ向かって次第に厚くなり,中之島付近では 30~40m である。しかし,東西方向で見ると,東縁の見附市街地で 30m 程度であるのに対して,西縁の与板では 60m を越え,著しく非対象である(図-2)。これは西側の沈降が東に比べて大きいことを示す。このことは,現在の信濃川が,長岡市街地の北側で西方に大きく曲がり,与板から北ではほぼ丘陵の縁に沿って流れていることと関係していると考えられる。A-55 【長岡市】電子地盤図作成の基礎データ:ほくりく地盤情報システムのデータベースを使用した。対象地域のボーリング本数:約 2,400 本。(長岡・柏崎の合計)モデル化対象地域は,長岡市街地を中心とした越後平野南部一帯で,南は小千谷市との境界付近まで,北は見附市街地を含む北陸自動車道中之島見附 IC 付近までを含めた。なお,東西は宅地化された丘陵部を一部含んでいる。全体的にボーリングデータの密度は高くなく,古くからの中心市街地も例外でない。市街地の北側では,N 値 50 に達しないため,モデル化対象層範囲を決める下境界が設定できないボーリングが少なくなかった。モデル化の対象層:大阪や東京のように沖積地盤の地質学的な研究が進んでおり,しかもボーリング資料が多く,沖積層の基底の位置を決めやすい地域では,モデル化対象層は沖積層に設定されている。しかし,長岡市街地は扇状地に位置し,礫層主体の地盤から構成されている。内陸に位置する長岡市は縄文海進の影響を受けず,市街地の地下に分布する礫層は,少なくとも数万年前から現在に至るまで連続して堆積してきたものである。したがって,どこから沖積層が始まるのか,同じ礫層同士の中で,その境界を決めることは非常にむずかしい。そこで,ここでは便宜上,N値 50 以上が連続して出現する層を基盤層と見なし,その上面を境界(工学的基盤面)とし,それ以浅の地層をモデル化対象層とした。したがって,モデル化対象層=沖積層ではない。一方,信濃川から東西に離れた後背地において,比較的厚い粘性土の下位に礫層が分布する場合,この礫層は沖積層の基盤である可能性が高い。したがって,本地区では,モデル化層の基盤面として,沖積層中の礫層と沖積層の基盤の礫層とが混在することになり,地質学的な解釈とは一致しない。A-56 【長岡市】電子地盤図による地域の地盤特性:【N 値 50 未満の層厚分布】長岡市の中心市街地付近の層厚は 10m 前後であり,それより南側は小千谷市との境界に近くなるほど薄くなる。北部ほど沖積層相当層が厚くなり,見附市付近で 30m を超え,旧与板町で 50m を超える箇所もある。また,信濃川近くより丘陵の麓に沿った沖積平野辺縁部で厚い傾向が見られる。【地域を代表する土質断面】上越新幹線にほぼ沿った側線(上図赤線)の土質断面を示す。中心市街地は宮内から北長岡駅付近までの範囲で,主に砂層や礫層が表層部に薄く堆積している。栖吉川右岸から猿橋川にかけての区間は八丁潟と呼ばれたかつての湿地帯に近いが,軟弱な粘土層が 15m 前後堆積している。見附市に近い刈谷田川横断部は層厚が 30m 前後となるが,軟弱層は比較的薄く,深部の N 値は大きい。A-57 【長岡市】【表層の土質とN値の分布】地表面からの深さ 5m,10m,15m,および 20m の土質と N 値分布を下図に示す。長岡市の中心市街地周辺とその南側は,地表面近くの 5~10m までに礫層の分布が確認できる。中心部では砂層の分布も見られるが,長岡市北部から見附市に至る栖吉川,猿橋川,刈谷田川の流域と,信濃川左岸の黒川流域にあたる旧三島町,旧与板町では粘土層の分布が多くなる傾向である。深さ 15m 以深では,信濃川の近傍でほぼ N 値 50 を超えてモデル化対象外となっているが,北部の各支流流域では粘土層と一部で砂層の分布がみられる。刈谷田川と黒川流域では N 値 50 未満の層が深さ 20m を超える。深さ 5m深さ 10m深さ 15m補深さ 20m足:作成者: 地盤工学会北陸支部 北陸電子地盤図作成委員会(2013 年)A-58 17【柏崎市】対象地域: 柏崎市および周辺対象地域の地盤概説:柏崎平野は,北側と東側を東頸城丘陵(西山丘陵),南側を米山山地,西側を荒浜砂丘にそれぞれ囲まれた,北北東-南南西方向に伸びる細長い平野である。柏崎市街地は平野西縁の鵜川下流部に位置している。柏崎平野で特徴的なことは,東側や北側に位置する丘陵地との境界が非常に入り組んで複雑なことであり,一部平野の中に島状に基盤が顔を出している。これは,最終氷期の海水面低下期に樹枝状に谷が刻まれ,それが縄文海進によっておぼれ谷を形成した結果と考えられる。このため,平野の地下にはかつての谷地形が残されており,沖積層の基底面は凸凹していて沖積層の厚さは狭い範囲で約 30mから 70m近くまで大きく変化する(図-1)。JR 信越線JR 西山駅鵜川半田国道 252 号国道 8 号刈羽図-1 柏崎平野における柏崎バイパス沿いの地質断面図(新潟県地盤図(2002)による)また,西山丘陵を構成する刈羽・三島丘陵の南方延長上に荒浜砂丘が位置し,日本海と平野荒浜砂丘をへだてている。このため,縄文海進時には柏安政橋(鯖石川)鯖石川北陸自動車道国道8号崎平野は出入り口の狭い広大な潟となって,そこに鵜川や鯖石川から供給された土砂が堆積し,平野を埋積した。柏崎平野に流入する河川は比較的小規模で,しかも周辺の山地・丘陵は泥岩層が優勢であるため扇状地の発達はきわめて貧弱である。このため,柏崎平野の沖積層は,軟弱な粘性土地盤を主体としている(図-1)。一方,沖積層の基盤は,鮮新統の米山安山岩層(鵜川以西に分布),もしくは同じく鮮新統の西山層あるいは更新統の安田層といったいずれも泥岩層である。なお,荒浜砂丘は,古砂丘(番図-2 柏崎平野における鵜川沿いの地質断面図神砂層)の上に新砂丘が載る2層構造をもち,安田層の上に載る。A-59(新潟県地盤図(2002)による) 【柏崎市】電子地盤図作成の基礎データ:ほくりく地盤情報システムのデータベースを使用した。対象地域のボーリング本数:約 2,400 本。(長岡・柏崎の合計)モデル化の範囲は,柏崎の中心市街地を含む柏崎平野のほぼ全域で,宅地化が進む平野中央の安田丘陵も網羅している。北東部の西山地区は国道 116 号沿い,西部の米山地区は国道 8 号沿いのデータを用いてモデル化を行った。しかし,長岡市や上越市よりさらにデータ密度が低く,平野部は主に北陸自動車道と国道 8 号バイパスに沿いは比較的データが集中しているが,他は鯖石川,鵜川の河川沿いに若干の分布が見られる程度である。中心市街地を含む砂丘部では,データが少ない上に浅いボーリングが多くて基盤面を設定できず,モデル化に至らなかったメッシュも少なくない。モデル化の対象層:柏崎平野における沖積層の基盤は,主に上部更新統の安田層あるいは鮮新統の西山層,もしくは米山層である。このうち安田層は,シルト・粘土,砂,砂質シルト,砂礫からなる河川・後背地~内湾性の堆積物で,粘性土優勢の地層である。N値は 10 前後と比較的低いため,ボーリング柱状図だけでは沖積層との区別がむずかしい。一方,西山層(泥岩層),米山層(安山岩層)はN値が(30~)50 以上と高く,沖積層との区別は容易である。つまり,沖積層の基盤が安田層の場合,沖積層の基底位置を決めることはむずかしい。大阪や東京のように沖積地盤の地質学的な研究が進んでおり,しかもボーリング資料が多く,沖積層の基底の位置を決めやすい地域では,モデル化対象層は沖積層に設定されている。しかし,柏崎平野では,上記理由により,便宜的にN値 50 以上が連続して出現する層(西山層や米山層の上面,あるいは安田層のN値の高い部分)を基盤層と見なし,その上面を境界(工学的基盤面)とし,それ以浅の地層をモデル化対象層とした。したがって,当地区ではモデル化対象層に安田層の一部が含まれ可能性があり,必ずしもモデル化対象層=沖積層ではない。A-60 【柏崎市】電子地盤図による地域の地盤特性:【N 値 50 未満の層厚分布】モデル化されたメッシュが少ない。とくに中心市街地が立地する海岸の砂丘地盤ではほとんどモデル化に至っていない。深いボーリングが多い国道 8 号バイパスと北陸自動車道沿いにおいて,線状に連続したモデル構築を行った成果から,柏崎平野では N 値 50 未満の層が 40m 前後の厚さを有し,部分的に 50m を超えることが判断できる。鵜川左岸の米山地区ではモデル層が薄い。【地域を代表する土質断面】モデルの連続性が確保された北陸自動車道沿いに柱状図を台帳配置で並べた土質断面図を示す。鵜川と鯖石川の横断部では,N 値 10 未満の軟弱な粘土が深くまで存在している。更新統の安田層を含む丘陵地では,N 値 50 未満の層厚が大きいものの,沖積低地部と比べて軟弱層が薄い。A-61 【柏崎市】【表層の土質とN値の分布】海岸の砂丘部はデータが少ないので言及できないが,柏崎平野の大部分は,平野内部に存在する丘陵地も含めて,ほぼ全層にわたって粘性土が優勢な土質であることが層毎の分布図から確認できる。丘陵の谷間となる西山地区北東部の北陸道や国道 116 号沿いでは,深さが 10~20m で岩盤が現れる。柏崎平野中央の鯖石川下流域やその支流の別山川下流域では深さ 50m まで粘土層が続いている箇所が見られるが,平野西縁部の鵜川流域では層厚が 30m 程度である。柏崎平野は沖積層基底面の凸凹の大きいことが知られているが,モデル化にあたって下境界面を沖積層と更新統の安田層との境に設定できなかったことと,モデル化できたメッシュが少なくて面的に連続しなかったことから,その状況を確認することは難しい。深さ 5m深さ 10m深さ 30m補深さ 50m足:作成者: 地盤工学会北陸支部 北陸電子地盤図作成委員会(2013 年)A-62 18【上越市】対象地域: 上越市および周辺対象地域の地盤概説:高田平野は,西側を西頸城丘陵・西頸城山地,東側を東頸城丘陵,北側を潟町砂丘によってそれぞれ囲まれた三角形状の平野で,東西の境界には高田平野西縁断層,高田平野東縁断層がそれぞれ走る。上越市街地は,高田平野の西縁,関川の下流部に位置する。高田平野で特徴的なことは,平野に注ぐ関川,保倉川という二大河川が,海岸に近い直江津で合流し,狭い一か所で日本海に流れ出ているという点である。これは,古砂丘である潟町砂丘が海岸線に沿って防波堤のように張り出し,日本海への出入り口を狭めているためである。この点は,高田平野をつくる地盤の特徴を考える上で重要である。また,関川の上流には妙高山などの火山があって土砂生産が盛んなため,扇状地がよく発達しているのに比べ,保倉川のそれは貧弱であり,対照的である。この点は,保倉川を挟んだ南北の地盤の違いに現れている。保倉川以南の高田平野(関川水系)では,地表面下 50m~60mに礫層が広く分布しており,しかもその上面は起伏に乏しい(図-1)。この礫層は最終氷河時代に堆積した扇状地性の礫層と考えられ,沖積層の基盤を形成する。沖積層は,出入り口の狭い内湾に堆積した軟質な粘性土層を主体とし,自然堤防と推定される砂層をレンズ状にひんぱんに挟む。また,関川沿いでは,表層部に礫層が多く分布する。妙高市街地高田公園直江津市街地北陸自動車道図-1 高田平野における関川沿い(南北方向)の地質断面図(新潟県地盤図(2002)による)一方,保倉川以北では,沖積層の厚さは 30~40mと保倉川以南に比べて薄く,基盤は中~上部更新統(泥岩層)であり,その境界面は凹凸に富んでいる(図-2)。この点は柏崎平野の特徴に似ている。北陸自動車道新井柿崎線潟町砂丘図-2 保倉川以北のほくほく線に沿った地質断面図(新潟県地盤図(2002)による)A-63 【上越市】電子地盤図作成の基礎データ:ほくりく地盤情報システムのデータベースを使用した。対象地域のボーリング本数:約 970 本。高田平野の西寄りに位置する上越市街地をモデル化対象区域としたが,ボーリングの分布密度は十分といえない。関川,保倉川に沿った橋梁と河川施設のボーリングや,高盛土の国道 18 号バイパスに沿ったボーリングデータはある程度の密度で線状に収集されているが,関川左岸に広がる信越線に沿った市街地ではデータが少なく,偏在している。したがって,対象地域の網羅的なモデル化は困難であった。モデル化の対象層:高田平野では,地表面下 40~60mに厚い礫層が広く分布している。この礫層は最終氷期に形成された扇状地性の礫層であると考えられている。したがって,この礫層の上面より上の地層が沖積層と見なされる。高田平野の沖積層は粘性土主体で,比較的薄い砂層をレンズ状にはさむほか,関川沿いの表層部を除き,一般に礫層に乏しい。したがって,地下で厚い礫層が分布する場合,それは沖積層の基盤である可能性が高いと判断される。そこで,高田平野では,N値 50 以上の礫層が出現をもって基盤層と見なし,その上面を境界とし,それ以浅の地層をモデル化対象層とした。したがって,高田平野におけるモデル化対象層は,おおむね沖積層であると見なされる。A-64 【上越市】電子地盤図による地域の地盤特性:【N 値 50 未満の層厚分布】高田平野の広い範囲で,N 値 50 未満の沖積相当層は厚さ 30m を超えていることが確認できる。北部の直江津から春日山地区では層厚 50m を超えるメッシュが主体となっている。平野の南北だけでなく東西でも違いが見られ,関川西側に広がる古くから市街地では層厚 30m 前後のメッシュが多いのに対して,東側では層厚 50m 以上のメッシュが内陸部まで分布する。【地域を代表する土質断面】関川沿いの土質柱状図を台帳配置で並べて示す。空白メッシュを挟むために連続していない部分もあるが,河川に沿った堆積物分布の傾向が確認できる。沖積層相当層は,河口部で 50m を超え,平野南部でも 30m に及んでおり,全体として粘土層が卓越する。一方,10m 以浅の表層部には礫層が見られることが特徴となっている。A-65 【上越市】【表層の土質とN値の分布】地表面からの深さ 5m における土質は,断面図でも確認されたように礫層の分布が多く見られるが,その範囲は主に扇状地の発達した関川沿いとなっていることがわかる。平野の東側や保倉川沿いは浅層部から粘土層が主体である。このように浅層部の土質分布が異なっている要因は,地盤概説で述べたように,平野西部を流れる関川が妙高火山群を源流としているのに対して,高田平野東部は新第三紀層主体の関田山脈を源流とする河川の流域であるためと推定される。深さ 10m を超えると礫層の分布がほとんど無くなり,南部の高田地区を含めて,深さ 30m 付近までは粘土層が同じような分布で続いている。平野の保倉川以南,直江津から春日山地区,およびその東部の旧頸城村や旧三和村では,粘土層が 50m 以深まで続いている状況が確認できる。保倉川以北はモデルがほとんど生成できなかったため,地盤概説で述べた状況の確認は困難であった。補深さ 5m深さ 10m深さ 30m深さ 50m足:作成者: 地盤工学会北陸支部 北陸電子地盤図作成委員会(2013 年)A-66 19【富山市】対象地域: 富山市および周辺対象地域の地盤概説:富山市の平野は,図 1 に示すように,常願寺川と神通川の扇状地が複合して形成された体積平野である。低湿地は,海岸部等の河川に沿った箇所に分布している。また,常願寺川は上流部に多量の砂礫の供給源を抱える急流河川であることから,常願寺川によって形成された扇状地は砂質土優勢となる箇所が多い。平地における,工学的基盤以浅(以下,表層地盤と記す)の地盤は,第四紀の堆積物からなる。海岸部では,常願寺川河口東部において礫浜海岸が存在する。これは,常願寺川が運搬した礫が海岸まで達していることと,扇状地が直接富山湾に達していることによる。常願寺川河口よりも西部では砂浜海岸となり,小規模な砂丘が存在する。富山市周辺の南北方向の地盤断面および,第四系の層序を図 2 に示す。表層地盤は,完新統で,未固結ないし半固結の堆積物からなる。土質は粘性土,砂質土,礫質土の互層で,砂質土層が優勢である。完新統の粘性土層は N 値 0~4 程度の,いわゆる軟弱層であり,載荷によって圧密沈下が生じる可能性の高い層である。砂質土層は N 値 10~30 程度のものが多く,地下水位の高い富山市内の大半の地域では液状化の発生を引き起こす可能性の高い層である。また,粘性土層と砂質土層の薄層が互層状となる箇所も多く,中間土に分類される層も多い。礫質土層は,粒度分布が良く,N 値 30 以上となる層である。完新統の下位には更新統が厚く分布し,完新統が工学的基盤となることが多い。これらの更新統における砂質土層,礫質土層は完新統に比べて良く締まっており,半固結となる。図1 富山平野の地形分類と富山湾の地形(富山県:10 万分の 1 富山地質説明書,p.4,1992)1:砂州・砂丘,2:低湿地,3:沖積扇状地,4:中・低位の開析扇状地,段丘,5:高位の開析扇状地,段丘,6:山地,丘陵A-67 【富山市】富山県は,地下水が非常に豊富な地域である。その原因は,山地と海の距離が非常に短いという地形的特徴にある。標高 3,000m 級の立山連峰への多量の降雪,降雨は,地中へと浸透し,日本海へ向けて流下する。その間に,花崗岩や変成岩,中生代や新第三紀の堆積岩および,それらの岩盤を起源とする透水性,濾過性の良い礫質土層内を通過する。岩盤を抜けて扇頂部に入った地下水は,専横部から発達する粘性土層によって二分され,上部を流れるものは自由地下水に,下部を流れるものは陽圧地下水となる。近年では富山市周辺において甚大な被害が発生するような大地震は発生していない。過去には,富山県~岐阜県にまたがる跡津川断層を震源とした飛越地震(M7.0~7.1)が発生している。その際には,常願寺川源流部において「鳶崩れ」と呼ばれる山体崩壊レベルの大規模崩壊が起こり,河道閉塞後に発生した大土石流が富山市まで流下し,200~300 人もの死者が出たと伝えられている。また,富山市内中央部には,富山県西部から北東~南東方向に伸び,北は神通川河口の東側から富山湾へと向かう,呉羽山断層が存在する。呉羽山断層が活動した際の地震規模は M7.2 程度となると推定されている。図 2 富山市の南北方向地質断面図(北陸地方整備局北陸技術事務所:富山平野部の地盤図集,1979)A-68 【富山市】電子地盤図作成の基礎データ:地盤モデルの作成にあたっては,ほくりく地盤情報データベース(北陸地盤情報活用協議会)のボーリングデータを使用した。一つのメッシュの大きさは,250×250m である。図 3 地盤モデル作成箇所モデル化の対象層:富山市内における表層地盤(完新統)の層厚は,市街地中心部で 25m,海岸部で 45m程度となる。表層地盤以深の工学的基盤(更新統)は,N値が 50 以上となることから,主に,表層地盤のモデル化を行った。電子地盤図による地域の地盤特性:【モデル化層の層厚分布】基本的に表層地盤の層厚は,海岸部に向かって厚くなる傾向がある。呉羽山断層(図 4 中の破線)を挟んで西側では工学的基盤の深度が浅く,東側では深くなる傾向がある。これは,呉羽山断層が,断層西側が東側に対して隆起する逆断層であることに起因すると考えられる。ただし,現段階では,ボーリング本数が少ないことから,結論づけるためには,今後の詳細な検討を要する。呉羽山断層土質断面(図 5)図 4 モデル化層厚分布(N<50)A-69 【富山市】【地域を代表する土質断面】図 4 における N-S 方向の土質断面を図 5 に示す。現段階ではボーリングデータが不足しており,今後の充実が望まれる。図 5 図 4N-S 断面に相当するモデル地盤断面図【表層の土質とN値の分布】図 6 に優勢土質の層厚を,図 7 に優勢土質の平均 N 値を示す。優勢土質としては砂質土優勢の箇所が多く,所々粘性土,礫質土が優勢となる箇所が存在する。また,優勢土質の層厚は海岸部に向かって厚くなる傾向がある。優勢土質の平均 N 値は,礫質土では 30 以上となる箇所が多く,砂質土では 15~30 程度の箇所が多い。粘性土は,場所によってばらつきが見られ,最大でも 10 程度で,大半が 5 以下となる。図 6 優勢土質の層厚補図 7 優勢土質の平均 N 値足:作成者: 地盤工学会北陸支部 北陸電子地盤図作成委員会(2013 年)A-70 20【金沢市】対象地域: 金沢市および周辺対象地域の地盤概説:金沢市周辺の平野は,中心部を通る 2 本の河川,犀川と浅野川によって形成されているが,南部は手取川の堆積物を含んでいると思われる。海岸線は砂丘状となり,特に内灘町を形成する砂丘は周辺に比べて高く,後背湿地である河北潟を形成しており,典型的な日本海側の地形と言える。砂丘標高は南に行くほど低くなり,1950 年に開削された河北潟調整池の排水路によって 4 つに分断されている。(参考文献:全国 77 都市の地盤と災害ハンドブック,地盤工学会)図1 金沢市周辺の土地条件図(国土地理院発行 25,000 の 1 土地条件図より)犀川と浅野川に挟まれた小立野台地の北西端部に金沢城や兼六園が位置するが,この山地丘陵地と平野部の境界付近に図 2 に示すように森本富樫断層が走っている。図 3 の断面図に見られるような断層変位による地層のずれが確認されており,平野部に入ると急激に沖積層厚が厚くなることが分かる。II'図2 森本・富樫断層(平成 15 年図3 石川県地盤図集 I-I'断面地震調査研究推進本部 地震調査委員会資料より)A-71 【金沢市】電子地盤図作成の基礎データ:ほくりく地盤情報データベース(北陸地盤情報活用協議会)を使用した。対象地域のボーリング本数:約 1,800 本。図4 ほくりく地盤情報システムのボーリングデータ図5 地盤モデル作成箇所モデル化の対象層:金沢平野(加賀平野)では沖積層は 100m以上の厚さになるところも多く,ボーリングデータのみで沖積層のモデル化を行うことが難しいため,N値が 50 以上の層を境界として,その上部層に関するモデル化を行った。電子地盤図による地域の地盤特性:【モデル化層の層厚分布】森本・富樫断層の影響で平野部に入ると N 値<50の層厚が急激に厚くなることが確認できる。河北潟周辺で特に厚く,砂礫も運ぶ手取川扇状地に近づく南部では平野部でも比較的浅い位置に境界層があることが分かる。図6 モデル化層厚分布(N<50)A-72 【金沢市】【地域を代表する土質断面】図3に示す断面と同じ箇所について,作成したものが図7である。図7I-I'断面(図3)に相当するモデル地盤断面図【表層の土質とN値の分布】図8に表層 5m の土質と N 値の分布を示す。平野中央部は粘性土が多く,砂丘を含め周辺部は砂層が卓越している。10m の深さでは平野中央部でも砂層が分布し,砂・粘土互層を呈していることが分かる。図8 深さ 5m の土質と N 値補図9 深さ 10m の土質と N 値足:作成者: 地盤工学会北陸支部 北陸電子地盤図作成委員会(2013 年)A-73 21【七尾市】対象地域: 七尾市および周辺対象地域の地盤概説:能登半島は安山岩系の火山性地盤が多く見られ,七尾市周辺の丘陵地では(風化)凝灰岩層や堆積岩層がその上に分布している。図1に示すように市街地は邑地潟地溝帯の北東端に広がっており,海岸付近の表層は粘土層が主体であるが自然堤防や砂礫台地が分布しており互層状になっている。東部の山地は西側が急峻で,東側に向けてなだらかであり,多くの断層が見られる。また,南北で大きく地質が異なっている。西部の山地・丘陵は地質的には東部山地の南半分と連続性がある。(参考文献:紺野義夫 (1993): 新版・石川県地質図( 10 万分の 1 )および石川県地質誌石川県・北陸地質研究所)II'図1 七尾市付近の地形・地質分類(国交省 20 万分の 1 土地保全図より)電子地盤図作成の基礎データ:ほくりく地盤情報データベース(北陸地盤情報活用協議会)を使用した。対象地域のボーリング本数:414 本であるが重複登録もある。図2 七尾市付近のボーリング分布図3 地盤モデル作成箇所A-74 【七尾市】モデル化の対象層:金沢市周辺のモデル化にあわせてN値が 50 以上の層を境界として,その上部層に関するモデル化を行った。電子地盤図による地域の地盤特性:【モデル化層の層厚分布】邑地潟地溝帯に沿った七尾港周辺でモデル化層厚が厚く,東西の丘陵地で薄くなっている。図4 モデル化層厚分布(N<50)【地域を代表する土質断面】図1に示す I-I'断面について,作成したものが図7である。邑地潟地溝帯の中心部でも一部礫層(他の場所では砂層もある)が混じり,砂礫台地での礫層分布などが示されている。図5I-I'断面(図 1)に相当するモデル地盤断面図A-75 【七尾市】【表層の土質とN値の分布】図 6 に表層 5m の土質と N 値の分布を示す。邑地潟地溝帯の平野中央部は砂または粘性土であり,N 値のばらつきが大きい。図 7 に示す 10m の深さでは海岸線付近で粘性土が主体となり平均N 値も著しく低下する。これは港湾の埋め立てによる影響があると思われる。邑地潟地溝帯沿いに内陸に向かうと砂が優勢となり平均 N 値も大きくなっている。図 6 深さ 5m の土質と N 値補図 7 深さ 10m の土質と N 値足:作成者: 地盤工学会北陸支部 北陸電子地盤図作成委員会(2013 年)A-76 22【水戸市】対象地域: 水戸市対象地域の地盤概説:水戸市の電子地盤図の作成対象領域は,図 1 で示した 2 万 5 千分の 1 地形図水戸に該当するメッシュコード5440-43 の地域である。対象地域の地形は,那珂川低地,千羽湖低地,那珂川右岸段丘,赤塚台地,東茨城台地に分類される。図 2,図 3 は図 1 で示した A-A’断面,B-B’断面におけるボーリングデータを示している。各地形と地盤構造は以下のような特徴を有する。那珂川低地は 30 50m の層厚の沖積層を有する軟弱地盤である。沖積層は砂,粘土,シルトの互層構造を呈している。N 値は砂質土で 30 以下,粘性土で 10 以下である。この地域の支持層は,沖積層下の更新統の礫層や砂層,図1 水戸市の地形と地盤情報位置図あるいは,岩盤である。水戸駅南側の低地は,千羽低地と呼ばれ 20 30m の軟弱層が堆積する。さらに、基盤層の不陸が大きい 2)と言われている。このため,構造物の支持力不足や地盤の沈下が問題となりやすい地域である。水戸市駅南地域は,下沼と呼ばれた旧千波湖の一部で,大正 10 年より昭和 7 年の間に行われた千波湖改修事業によって干拓され,水田(湿田)として利用された後,那珂市北部の洪積層の砂を用いて埋め立てた歴史 1)2)がある。駅南の埋立地の西側には千波湖,そして,偕楽園公園が位置する。さらに,谷底低地の桜川緑地,沢渡川緑地へとつながる。沢渡川緑地などの谷低低地や千波湖沿岸部では有機質土層を確認することができる。那珂川右岸段丘は,表層を関東ローム層が覆っている。この関東ローム層は上部と下部に分けられ,それぞれ立川ローム層,武蔵野ローム層に対比されるが,この両者の性質は非常によく似ている 2)ので,ここでは一括して関東ローム層として取り扱うことにするが,両者の間に 10 20cm の鹿沼浮石層を挟む場合もある。関東ローム層の下には常総層の凝灰質粘性土,そして,上市礫層と呼ばれる段丘礫層が堆積する。この上市礫層がこの地域の支持層となる。千羽低地の西に位置する赤塚台地の大部分は岩盤が比較的浅い場所に位置する。その上の土質層は薄く 15m 程度である。那珂川右岸段丘同様,上層部には関東ローム層,凝灰質粘性土の常総層,礫層へと変化する地盤である。この礫層は先の段丘礫層とは異なり,見和層中部の礫層にあたる。見和層の礫層は N 値 50 に満たない層であるが,中~低層の建物の支持層としては十分である。赤塚台地の東縁,すなわち,千波湖,沢渡川へ向かうと岩盤は 10m 程下がる。これは,埋没谷を呈する面であり,埋没谷には礫層と岩盤の間に N 値 10 未満の中位~硬いに位置づけられるシルト層を挟む。軟弱層ではないがこのような沈下の可能性を含んだ層が擬似基盤以深に存在するためこの層より下部の基盤までを考慮する必要がある地盤である。千羽低地の南に位置する東茨城台地は,上層部には関東ローム,常総層の凝灰質粘性土が堆積し,見和層上部に相当する木下層の砂が薄く堆積する。岩盤は先の赤塚台地と比べ深く茨城県庁付近では深度 50~60m(標高-30m)に達する。赤塚台地の埋没谷とは異なる幅広の埋没谷に堆積した地盤であることを物語っている。この埋没谷にも赤塚台地同様,見和層の堆積が確認されるが,その大部分は圧縮性を有する粘性土を含まない特徴を有する。A-77 【水戸市】図 2 水戸市における代表的地盤断面(A―A’断面)図 3 水戸市における代表的地盤断面(B―B’断面)電子地盤図作成の基礎データ:国土情報検索サイト KuniJiban,ジオ・ステーション茨城県土木部および水戸市を使用した。対象地域のボーリング本数:1,411 本。 (地盤情報の位置は図 1 を参照)モデル化の対象層:「水戸市電子地盤図」におけるモデル化対象層は新潟地区電子地盤図を参考に,原則として「N」 として作成を行なった。この擬似基盤面は,値30以上(が連続する層)の上面を“疑似基盤面”中~低層の建物の支持層として見た場合,N値30以上というのが一つの目安になり, ある意味「基盤面」と見て良いと考えられる(高層ビルなどではN値50以上を目安とするが, 中~低層ビルであれば,ふつうN値30以上層厚5m以上で支持層としている)3)。ただし,埋没谷のエリアでは,疑似基盤層の下に圧縮層が存在する場合があり,このような場合はその圧縮層も含めてモデル化対象層としている。表1 各種地形区分における支持層とモデル化対象層地形区分那珂川低地支持層岩盤,更新統層モデル化対象層沖積層千羽湖低地岩盤,更新統層沖積層那珂川右岸段丘赤塚台地赤塚台地(埋没谷部)東茨城台地上市礫層見和層中部関東ローム層,常総層関東ローム層,常総層,木下層岩盤,見和層下部関東ローム層,常総層,木下層,見和層見和層中部関東ローム層,常総層,木下層A-78 【水戸市】電子地盤図による地域の地盤特性:【モデル化層の層厚分布と擬似基盤面の深度】図-4, 5 は,モデル化した 250m 区画の層厚,下端標高をそれぞれ示している。台地や丘陵地の際や桜川緑地,沢渡川緑地のような谷底低地では,メッシュがいくつかの地形を含むことになるが,低地部に地盤情報が存在する場合は,低地部の地盤情報を使ってモデル化を行った。図 4 に示した地盤モデルの層厚,すなわち,地表面から支持層までの深さは,那珂川低地や千羽湖低地では約 20-約 30m程度であり,非常に深い。一方,台地や丘陵地は,赤塚台地の一部の地域を除いて,10m 程度以下と比較的浅く,多くは 5m 以下である。赤塚台地で層厚が厚い地域は埋没谷に堆積した地盤と限られている。図 5 の地盤モデル下端標高を見ると,その地域は周辺と比べて 10m 程低くなっている。図 4 水戸市の電子地盤図作成メッシュ図 5 水戸市の電子地盤図作成メッシュ【地域を代表する土質断面】那珂川低地の例(1-10)では,主として,砂質土,粘性土で構成された地盤であり,N 値が 10 以下の層を多く含む軟弱地盤であることがわかる。那珂川右岸段丘の例(11-20)では,表土の砂質土層,関東ローム層,粘性土層で構成される。粘性土層は常総層と呼ばれる凝灰質粘土層である。電子地盤図ではこのモデル化した地盤の下部は,N値 30 以上の段丘礫で構成される上市礫層の堆積面が擬似基盤面である。なお,赤塚台地と東茨城台地でもこの関東ローム層がモデル化されているが,立川ローム層および武蔵野ローム層間の鹿沼浮石層については層厚が薄いためモデル化されていないことに留意する。また,関東ローム層直下の凝灰質粘性土層は粘性土と表示されている。水戸市の電子地盤図ではこの関東ローム層直下の粘性土層は全て凝灰質粘性土層となる。赤塚台地の例では,21-25 は那珂川右岸段丘や後述する東茨城台地と同様,表土の砂質土層,関東ローム層,凝灰質の粘性土層で構成される。一部のモデルでは,木下層の砂層を含む。モデル化した地盤の下部は擬似基盤面であり見和層中部の礫層の堆積面である。一方,26-29 も地表面から砂質土層,関東ローム層,凝灰質粘性土層と 21-25 と同様の堆積構造を有するが,この地点は埋没谷の部分に当たり,見和層中部の下に堆積している粘性土層を有するこの地域の特徴的な地盤である。埋没谷地盤におけるモデル化された層の下部は岩盤となっている。東茨城台地の例では,31 から 45 まで,見和層中部が擬似基盤面を有する支持層である。なお,34,35 のように一部のメッシュでは見和層中部の礫層の N 値が 30 未満の層が見られたように,東茨城台地の見和層中部は赤塚台地のそれに比べ N 値が小さい。東茨城台地もまた埋没谷を有し,岩盤まで深度 50-60m を有するが赤塚台地の埋没谷部とは異なり砂質土や礫質土が主体である見和層であることからモデル化対象層は見和層中部の堆積面となっている。千羽低地は那珂川低地同様,沖積相当層の軟弱地盤であるが,那珂川低地に比べ層厚は小さい。表層は砂質土であり N 値が極めて小さい。また,那珂川右岸丘陵地,赤塚台地,東茨城台地に接するような低地部では 47, 58, 59, 60 の地盤モデルで見られるように有機質土を含んでいる。粘土層も N値が極めて小さく沈下が生じやすい軟弱地盤である。谷底低地の沢渡川緑地(51 ,52 , 53, 54, 55)は基盤が浅いものの有機質土層を含む。一方,桜川緑地(56, 57)では有機質土層が見られないが,今回利用した地盤情報に限りがあり,今後の地盤情報の追加により有機質土層の存在が確認されることも考えられる。A-79 【水戸市】(A) 下記に表示した地盤モデルの位置図(a) 那珂川低地(b) 那珂川右岸段丘(c) 赤塚台地(d) 東茨城台地(e) 東茨城台地 千羽湖低地(f) 谷底低地および千波湖沿岸凡例 ■粘土■砂■礫■関東ローム■有機質土(B)地盤モデル柱状図図 6 作成した電子地盤図での各種地形区分における地盤モデル柱状図の例補足:参考文献 1)経済企画庁:土地分類基本調査,地形・表層地質・土じょう 水戸 5 万分の 1,1968.2)大槻功:都市の中の湖 千波湖と水戸市の歴史,文眞堂,p.177, 2001. 3)地盤工学会:全国電子地盤図 新潟地域,モデル化対象層 URL http://www.denshi-jiban.jp/index.htm(参照日:2012/11/28)作成者:地盤工学会関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会(2013 年)茨城大学村上 哲(2013 年)A-80 23【埼玉県】対象地域: 埼玉県(低地部ならびに台地部)対象地域の地盤概説:埼玉県の地形は,西部の山地,中央部の丘陵と台地,東部の低地に大別される。対象地域は,このうち台地(大宮台地),低地(中川低地,荒川低地)にかかる約 18km 四方の範囲である(図 1 および図 2の赤枠部分)。図 1 埼玉県の地形区分と名称(関東の地盤 2013 年版より引用)図 2 埼玉県の地質(産総研シームレス地質図 1)より作成)大宮台地の表層は関東ロームで覆われている。下位には,植物片を含む凝灰質粘土(常総粘土),さらにその下には,比較的細粒で固結度の低い砂質土を主体とする,大宮層,木下層をはじめとする中-後期更新世の下総層群が分布している。大宮台地には,樹枝状に入り組んだ無数の谷底低地が存在し,植物などの有機物が分解して土壌とまじりあってできた腐植土が堆積している。腐植土が厚く分布する地域では,宅地造成後の不等沈下や盛土法面のすべりなどの地盤工学的な問題を生じやすく,また,地震防災上は,強い揺れによる被害に注意が必要である。一方,人口密集地である低地(中川低地,荒川低地)の地下には,最終間氷期から最終氷期最盛期(約2 万年前)頃にかけての海水準低下による下刻作用で形成された開析谷(最深部は標高-50m 程度)や埋没河成段丘面群が存在し,それ以後に堆積した「沖積層」とよばれる河川成堆積物(下部),内湾環境の軟弱な海成堆積物(上部)に充填されている。低地部を構成する沖積層は,堆積年代が新しいため,未個結で軟弱な地盤であるとともに,水も多く含んでいるため,地震防災上,強い揺れによる被害や液状化現象などに注意が必要である。A-81 【埼玉県】電子地盤図作成の基礎データ:電子地盤図作成のために収集したボーリングデータの収集元と数量を表 1 に示す。このうち電子地盤図公開範囲に位置するデータは 2553 本である。ボーリングデータを基に電子地盤図を作成したメッシュを図 3 に示す。なお,当該範囲の単位メッシュ(4 分の 1 地域メッシュ)のサイズは,東西約 282m,南北 231m である。※位置情報を公開しないことを前提に貸与されたデータも存在するため,ボーリングデータの位置は示さない。表 1 モデル作成のために収集したボーリングデータ収集元数量(本)さいたま市総務局危機管理部2960埼玉県危機管理防災部6236埼玉県環境科学国際センター国土地盤情報検索サイト「KuniJiban」110522869図3 電子地盤図を作成したメッシュ(ピンク色表示部分.田辺ほか20082)の中川低地における沖積層の基底面標高分布図に重ねて表示)モデル化対象層:地質年代層相区分層相(Dユニット)完新世(Cユニット)沖積層(Bユニット)(Aユニット)後期新期段丘堆積物常総粘土大宮層木下層第四紀A-82砂、泥新泥期ロ 砂泥互層砂礫ム 新期ローム:火山灰土層泥質砂、砂質泥ー埼玉県の電子地盤図では,更新統下総層群の50以上のN値が5m以上連続する砂質土を支持層とみなし,それより上位の地層をモデル化対象層とした。電子地盤図を作成した範囲のうち,低地部の大半(中川低地と荒川低地)では,沖積基底礫層の下位に,砂質土で概ねN値≧50,粘性土でN値≧20の下総層群が層厚5m以上分布し,支持層として十分な地耐力を持つ。一方,大宮台地とその縁辺部の場合,ローム層や沖積層の下位には,更新統下総層群大宮層や木下層が分布する。大宮層や木下層上部の砂質土のN値は40~50を有する場合もあるが,その下位にある木下層下部はN値が5程度の軟弱な粘性土からなっている。つまり,N値の大きな良好な地盤と思われる層の下位に,軟弱な地盤が隠れていることになる。そのため,当範囲では,沖積層と下総層群の境界(沖積基底礫層の下面),あるいは,層準によらずN値50以上の地盤を一概に支持層とみなすのは難しいと判断した。なお,既往の研究成果3),4)に照らし合わせると,支持層とみなした砂質土は,木下層下部の分布域や中川の開析谷中軸部では上泉層ないし藪層相当,その他の範囲では清川層相当と考えられる。凝灰質粘土砂、泥(上部)砂、砂泥互層(下部)泥、砂質泥砂、泥清川層更新世中期下総層 上泉層群薮層地蔵堂層泥質砂、砂質泥礫混じり砂、泥(上部)砂(中部)泥質砂、砂質泥(下部)礫混じり砂、泥(上部)砂(中部)泥質砂、砂質泥(下部)礫混じり砂、泥(上部)砂(中部)砂泥互層(下部)泥質砂、砂質泥上総層群図4 モデル作成地域の層序統括図(野田図幅地域の層序総括図2)をもとに作成) 【埼玉県】電子地盤図による地域の地盤特性:図 5 モデル化層の分布図 7 モデル断面(荒川低地)谷底低地大宮台地中川低地図 6 モデル断面(中川低地)図 8 モデル断面(大宮台地)A-83 【埼玉県】【中川低地】中川沿いの開析谷軸部における支持層上面標高は-50~60m 付近に位置し,モデル化層の層厚は40 ないし 50m以上となる。図 6 に示すように,モデル化層の最下端はN値 50 以上,層厚 1~10mの礫質土からなり既往の文献との対比により沖積基底礫層と考えられる。その上位には,下部に砂層を挟む N 値 5 以下の粘性土が層厚 30~40m と厚く分布している。このようなN値 5 以下の沖積層が厚く分布し支持層上面標高が-45m 以深にある地域は,大正関東地震において深度 6 以上の揺れに見舞われた可能性のある地区 5)と整合しており,地震防災上,強い揺れによる被害に注意が必要である。【荒川低地】荒川低地における支持層上面標高は,標高-30m 付近にあり,モデル化層の層厚は約 30m である。図 7 に示すように,モデル化層の最下端には N 値 50 以上,層厚 1~10m の礫質土もしくは,下総層群と考えられる N 値 20 以上の粘性土が分布する。その上位には N 値 5 以下の粘性土(層厚 20m 程度),さらにその上位には N 値 10 以下の砂質土が分布する。なお,局所的にモデル最下端部の礫質土(沖積基底礫層)の上位に N 値 10 以上の高有機質土あるいは火山灰質粘性土が分布する範囲があり,埋没段丘の存在を反映している可能性がある。【大宮台地】大宮台地のモデル化範囲内においては,支持層上面標高は標高-25~30m 付近に存在し,モデル化層の層厚は,30~40m となる。モデル化層の最下端は N 値 20~50 の砂質土ないしは,N 値概ね20 以上の粘性土からなり,既往の文献と対比すると,下総層群清川層もしくはそれより下位の層準と考えられる。当範囲では,図 8 に示すように,上位から N 値 5 以下の粘性土,N 値 10~40 程度の砂質土が分布するが,より下位の標高-10m~-20m 付近に,N 値 5 程度の粘性土が 5m 以上の層厚で存在する。既往の文献 4)と照らし合わせると,この軟弱地盤は木下層下部に相当すると考えられる。木下層下部は,沖積層の谷を形成した最終氷期のさらにひとつ前の氷期に形成された谷を 15~13 万年前に埋積した,沖積層と同様の層相や分布形態を持つ軟弱地盤 6)であり,土木・建築工事の際や地震防災上は沖積層と同様の注意が必要である。一方,地盤概説に記載したとおり,大宮台地には樹枝状に入り組んだ谷底低地が存在する。図 8に示すように,谷底低地を埋める沖積層の最上部には,N 値がほぼ 0 の高有機質土が 1~6m 程度の厚さで,またその下位には,同様に N 値 5 以下の粘性土が分布していることが多い。このような谷底低地では,地震波の増幅による強い揺れや高有機質土の圧密沈下に注意が必要である。参考文献:1) 産 業 技 術 総 合 研 究 所 地 質 調 査 総 合 セ ン タ ー , 20 万 分 の 1 日 本 シ ー ム レ ス 地 質 図(https://gbank.gsj.jp/seamless/),クリエイティブ・コモンズ・ライセンス表示 - 改変禁止 2.1(http://creativecommons.org/licenses/by-nd/2.1/jp/).2) 田辺 晋・中西利典・木村克己・八戸昭一・中山俊雄:東京低地北部から中川低地にかけた沖積層の基盤地形,地質調査研究報告,Vol.59,No.11/12,pp.497~508,2008.,産総研地質調3) 中澤 努・遠藤秀典:大宮地域の地質,地域地質研究報告(5 万分の 1 地質図幅)査総合センター, 41p, 2002.4) 中澤 努・田辺 晋:野田地域の地質,地域地質研究報告(5 万分の 1 地質図幅),産総研地質調査総合センター, 72p, 2011.5) 武村雅之・諸井孝文:地質調査所データに基づく 1923 年関東地震の詳細震度分布その 2.埼玉県,日本地震工学会論文集,Vol. 2,No.2,pp. 55-73,2002.,地質ニュース,No.584,pp.6) 中澤努・遠藤秀典:最新地質図の紹介,5 万分の 1 地質図幅「大宮」26-27,2003.作成者: 地盤工学会関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会(2013 年)応用地質株式会社 工藤理絵A-84 24【千葉市】対象地域: 千葉市対象地域の地盤概説:図1に千葉市の微地形分類図を示す。千葉市は北東部に下総台地が広がり,南西部には広大な埋立地が造られている。台地は高台となっており主に火山灰が降り積もった関東ロームが表層に堆積している。台地を樹枝状に削られた谷底低地や都川沿いの氾濫平野といった低地も形成されている。台地際の東京湾の海岸線には砂州・砂堆が連なり,かつては干潟があったが,1960代から1980年代中頃までの間に南東側から順に,おもに東京湾沖の海底を掘り出した砂や砂質シルトからなる浚渫土を用いて埋め立てられた。図 1 千葉市の微地形分類図 1)電子地盤図作成の基礎データ:電子地盤図作成にあたって,ボーリングデータは千葉市から提供していただいたデータを使用した。図 2 に今回の検討対象範囲内におけるボーリングデータ位置を示す。千葉市全体ではボーリングデータは 5,658 本ある。そのうち今回は図 3 に示す千葉市中心部をモデル化した。このモデル化に用いたボーリングデータは 2,537 本である。図 3 モデル化したメッシュ図 2 ボーリング位置A-85 【千葉市】モデル化の対象層:東京都の中心部の地盤モデルを作成する際に,低地と丘陵・台地を統一して定義できる工学的基盤として,N値が50以上の層の上面が工学的基盤面として選ばれた。そこで,同じ首都圏に属す千葉市の場合も同様に,地表面から工学的基盤面までの層をモデル化した。具体的にはN値が50以上の層が5m以上の厚さあればその上部を基盤と判断した。なお,このようにN値が50を目安とした工学的基盤は,構造物の支持層の意味以外にも地震応答解析における基盤としてもよく用いられている。電子地盤図による地域の地盤特性:【工学的基盤の深度分布】図 4 に工学的基盤の上面の標高の分布図を示す。埋立地では TP-20~-30m に工学的基盤面があるが,台地部に向かうにつれて高くなり,台地部内では TP+10m 程度になる。基盤の標高(TPm)図 4 工学的基盤の深度分布A-86 【千葉市】【地域を代表する土質断面】図 3 に示す稲毛海浜公園付近から北東方向に引いた A-A’測線に沿った地盤モデルを図 5 に示す。海岸付近には深いところで 10m 程度の厚さの埋立層があり,その下部に沖積粘性土層や砂質土層が堆積している。埋立層は内陸に向かうにつれてだんだんと薄くなる。台地際から地表面標高は次第に高くなっていくが,台地では表層にローム層が堆積している。埋立土図 5 海岸から台地にかけた A-A’測線の地盤モデル補足:参考文献,1980.1) 国土交通省:5 万分の 1 都道府県土地分類基本調査(千葉)作成者: 地盤工学会関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会(2013 年)東京電機大学 安田 進A-87 25【川崎市】対象地域: 川崎市対象地域の地盤概説(引用文献1による):川崎市は神奈川県の東縁部にあり,多摩川沿いに東京湾へ向かってほぼ南東―北西方向に細長く広がる。南西―南東側には丹沢山地と東縁から延びる多摩丘東縁部が分布し,北西―北東部の多摩川沿いには,扇状地,蛇行原,三角州をつくる沖積平野が発達し,東京湾に面した臨海部には埋立地が広がる。本市は,図 1 に示すように北側を流れる多摩川を挟んで東京都と南西側を多摩丘陵と鶴見川の支流河川によって横浜市と境をなしている。過去の災害をみると,関東大震災(1923 年)による地震災害では,その後に発生した地震とは比較にならないほど激甚な建物被害を及ぼした。多摩川や鶴見川の地盤災害の歴史は長く,大正時代から臨海低地の産業都市域では地盤沈下や洪水流に繰り返し襲われた。人口密度の増加や交通網の整備により住宅地の拡大化は,低地から台地や丘陵へ広がり,都市的な土地利用による土地の保水能力の低下を招き,浸水被害,斜面崩壊や土砂流出などの発生を助長させた。本市では震災対策の抜本的な見直しを図り,協働防災社会の形成による地盤災害に関わる被害の軽減化対策を目標にして,震災対策行動計画,再開発をふくめた市街地の環境整備,大規模造成地を対象とした宅地耐震化推進事業などの更なる防災対策の強化を進めている。表 1 川崎市周辺の地質層序表図 1 川崎市の地形概況・川崎市の地形多摩丘陵は,標高 60~200m 程度に緩やかな起伏をもって西から東に低くなる。市内の西側には標高 80~100m 前後の頂部が起伏に富む多摩Ⅱ面と呼ばれる段丘があり,多摩区から宮前区付近,麻生区付近に分布する。東側には標高 40~50m 程度の下末吉台地と呼ばれる下末吉段丘があり,中原区から宮前区付近,横浜方面にかけて広がる,五反田川,平瀬川,矢上川などの南向き斜面の端分には,武蔵野面と呼ばれる段丘がある。丘陵や台地の自然斜面は急傾斜地をつくるが,擁壁などで保護された人工斜面に変わりつつある。低地は,多摩川と多摩川支流および鶴見川支流の河川沿いに沖積平野を広げている。・川崎市の地質川崎市と多摩丘陵東側の地質図を図 3,構成する地質層序表を表 1 に示す。川崎市の丘陵や台地は,基盤岩となる新生代前期更新世(約 120 万年~180 万年前)の上総層群が地表部に露出する。岩相は北西側ほど泥岩を挟む礫混じり砂層,南東側ほど厚い泥岩,砂層,砂・泥岩互層からなる。上総層群の地質構造は,多摩区生田から麻生区百合丘へ北東―南西に延びる鶴川抄撓曲,高津区溝口から横浜市緑区にかけて西南西方向に延びる溝口向斜がある。台地は,相模層群や新規段丘堆積物と関東ローム層が分布する。相模層群は更新世中期に堆積した約 30 万年前の多摩Ⅱ面を構成するオシ沼砂礫層,約 13 万年前の下末吉層などの海浜性や海成の砂礫層や砂泥層からなる。新期段丘堆積物は更新世後期の約 8 万~3 万年前の立川・武蔵野礫層相当のA-88 【川崎市】河成の砂礫層からなる。低地は,更新世後期から完新世(約 2 万~1 万年以降)に堆積した沖積層が分布する。沖積層は下部の七号地層と上部の有楽町層に区分される。七号地層は,かつての多摩川や鶴見川などの谷底に埋積しており,陸成から汽水成の粘土層と砂層の互層状をなし,基底に礫層からなる河床堆積物が堆積する。図 2 多摩丘陵北東部の地質図電子地盤図作成の基礎データ:対象地域のボーリング本数:合計 4021 本表 2 登録したボーリングデータ1.,(旧)下水道建設部下水道管理施設耐震設計1407 本2.川崎市環境地質図集Ⅱ(1972),Ⅲ(1983)2159 本3.庁内各局から収集した公共事業(2008 年まで)602 本4.国土交通省 表層地盤データベース「kunijiban」43 本図 3 ボーリング位置A-89 【川崎市】モデル化の対象層(引用文献2による):検討対象範囲内の低地には沖積層の下部に洪積層が存在する。したがって沖積層だけを取り出してモデル化することは可能である。しかし,今回は柱状図の深さ情報が不十分だったため,具体的に工学的基盤を N 値 50 以上の層が 5m 以上の厚さがあればその上部を基盤とし,また N 値 50 以上の層が完全に連続して 5m はない箇所もあったが,その場合は N 値が 40~50 ほどでも,5m ほど堆積している場合,基盤として判断し,表層地盤の抽出を行った。これは,工学的にこれだけの層厚があれば,杭基礎などの支持基盤になるため,このように判断した。また,一般には沖積層の下部には N値 50 程度以上の工学的基盤が存在する。電子地盤図による地域の地盤特性:図 4 に工学的基盤までの層厚分布を示す。図 4 川崎市の層厚分布図各深度の土質とN値の分布を,図 5~図 8 に示す。GL-5m における土質については,多摩川の上流付近には,礫質土層が卓越し,下流になるにつれ砂質土層が卓越している。また,途中には粘性土。GL-10m における土質については,多摩川下流に見られていた砂質層が多く見られる(図 5 参照)土層が,ほとんどが粘性土層になっている。また,全体的に卓越している。多摩川上流に出ていた礫。GL-15m における土質について質土層も,中間地点でも少し見えるようになってきた(図 6 参照)は,多摩川上流側は工学的基盤になってくるところが多く,多摩川下流側はますます粘性土層が多く卓越している(図 7 参照)。GL-20m における土質については,多摩川下流側しか土質は見られなくなり,ほとんどが粘性土層で変わらず,さらに工学的基盤になるところはまだ少ない状況である(図8 参照)。A-90 【川崎市】図5図7補GL-5m における土質と N 値の分布図図6GL-15m における土質と N 値の分布図図8GL-10m における土質と N 値の分布図GL-20m における土質と N 値の分布図足: 引用文献1)丸善出版 「全国 77 都市の地盤と災害ハンドブック「(社)地盤工学会編]」:2012 年 1 月 30 日2)関東地区における電子地盤図作成支援システムの検討委員会(委員長:安田進),「電子地盤図システムの実証実験―台地縁辺部への適用―」,地盤工学会作成者: 地盤工学会関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会(2013 年)神奈川大学 中田裕樹・荏本孝久A-91 26【平塚市】対象地域: 平塚市対象地域の地盤概説(引用文献1による):平塚市域は相模川下流域に発達し、相模平野の主体をなしている。相模平野は大きく、北部の相模。川・金目川沖積低地(河成平野)と、南部の湘南砂丘地域(海成平野)とに二分される(図 1 参照)これらの河成および海成は、次項で述べるように、さらに複雑な微地形に分類される(図 2 参照)。市域の西部には大磯丘陵、北金目台地、および伊勢原台地が分布し、更新世の関東ロームが厚く堆積するほか、海成および河成堆積物も分布する。地盤はこれらの地形、微地形の形成過程と密接な関係にあり、軟弱地盤層の厚い市北部域では、大正関東地震の際に甚大な被害を受けた。市西部の丘陵地・台地には活断層が知られる。図 2 相模平野の微地形分類図図-1 相模平野の地形・平塚市の地形平塚市西部から北西部には、大磯丘陵、北金目台地、伊勢原台地が分布する。大磯丘陵は、第三系基盤が露出し、起伏のある丘陵をなす。北金目川台地および伊勢原台地は標高の低い下末吉期以降の海成面および河成面からなり、平坦面がよく残る。相模川沖積低地は厚木市以南の相模川下流域に沿って発達した低地である。平塚市域では、平塚市真土以北に、自然堤防地帯が分布する。主に自然堤。西側に広い後背湿地が広がる一方、金目川沖積防、後背湿地、旧河道から構成される(図 2 参照)低地は、大磯丘陵と北金目台地の間に流れる金目川に沿う扇状地性の低地である。沖積低地のこうした地形と土地利用の関係をみると、従来から、自然堤防は集落・果樹園・畑地に、後背湿地や旧河道は水田に利用されてきた。湘南砂丘地帯は相模湾岸に沿って、藤沢から平塚にかけてよく発達する。。平かつての海浜に形成された砂州・砂丘の高まりと、その背後の砂丘間凹地からなる(図 2 参照)塚市域では現海岸線から北へ 5km 内陸側の平塚市豊田や横内まで続き、十数列の高まりと低まりとが、識別できる。起伏に富む砂丘は砂州の上に形成され、豊田・中原~真土などの北部域で、かつて数多く認められていたが、現在では平坦化され社寺などにその面影を残すにすぎない。・平塚市の地質相模平野を形成する沖積層は 1.8 万年前の最終氷期の極相期以降、海面の上昇(縄文海進)に伴って形成されたもので、日本各地の平野をつくる地層と同様である。相模平野の沖積層は、下位より河成礫層、内湾に堆積した泥層、浅海に堆積した砂層、海浜に堆積した砂礫層、表層をなす砂州・砂丘を構成する砂層、相模川・金目川の河成堆積物(礫・砂・泥)からなる。A-92 【平塚市】電子地盤図作成の基礎データ:対象地域のボーリング本数:1020 本表 1 平塚市で使用したボーリングデータ(図 3 参照)1.紙媒体データ(神奈川大学工学部荏本研究室所有)。999 本2.国土交通省表層地盤データベース「kunijiban」21 本図 3 平塚市の地域地盤 DB に登録されたボーリングデータの分布図モデル化の対象層(引用文献2による):検討対象範囲内の低地には沖積層の下部に洪積層が存在する。したがって沖積層だけを取り出してモデル化することは可能である。しかし、今回は柱状図の深さ情報が不十分だったため、具体的に工学的基盤を N 値 50 以上の層が 5m 以上の厚さがあればその上部を基盤とし、また N 値 50 以上の層が完全に連続して 5m はない箇所もあったが、その場合は N 値が 40~50 ほどでも、5m ほど堆積している場合、基盤として判断し、表層地盤の抽出を行った。これは、工学的にこれだけの層厚があれば、杭基礎などの支持基盤になるため、このように判断した。また、一般には沖積層の下部には N値 50 程度以上の工学的基盤が存在する。図 4 に工学的基盤までの層厚分布を示す。電子地盤図による地域の地盤特性:図 4 工学的基盤層厚分布図A-93 【平塚市】GL-2m における土質については、全体形に N 値が小さい砂質土層が卓越し、また軟弱な粘性土層。GL-4m における土質については、ちらほら礫質土層が現れ、北側も北側や西側に多い(図 5 参照)には粘性土層が多くなっている。南側の砂質土層の N 値も大きくなってきている(図 6 参照)。GL-6mにおける土質については、礫質土層がさらに多く見られるようになる。しかし、逆に粘性土層が減り、。GL-8m の土質については、あまり変化砂質土層がまた広く卓越するようになっている(図 7 参照)は見られないが、工学的基盤に該当する土層になってくる所が多くなってきている(図 8 参照)。図5図7補GL-2m の土質と N 値の分布図GL-6m の土質と N 値の分布図図6GL-4m の土質と N 値の分布図図8GL-8m の土質と N 値の分布図足:引用文献1)丸善出版 「全国 77 都市の地盤と災害ハンドブック[(社)地盤工学会編]」:2012 年 1 月 30 日2)関東地区における電子地盤図作成支援システムの検討委員会(委員長:安田進),「電子地盤図システムの実証実験―台地縁辺部への適用―」,地盤工学会作成者: 神奈川大学 中田裕樹・荏本孝久A-94 27【宇都宮市】対象地域: 宇都宮市および周辺対象地域の地盤概説:宇都宮市は栃木県の中南部に位置する県庁所在地で,総面積 416.84 km2 で,東西 23.97 km,南北 29.53km に広がった都市である。人口は 514,868 人(平成 25 年 9 月 1 日現在)の中核都市で,東京から北に約 100km に位置し,東北新幹線で約 50 分の位置にある 1)。宇都宮の市域の地形は,平野,宇都宮市街地から北方および西方に広がる比高数 10m 程度の丘陵,北西部の山地から構成されている。平野部の多くは,台地を形成しており,河川に沿った低地がこれを刻むように存在している 2)【図 1】。標高の最高地点は,宇都宮市西部に位置する古賀志山(標高582.8m)です。平野部の地形は,北から南になだらかに標高が下がり,南東の市境界付では標高が約75m になる。図1栃木県の地形概略図 (国土地理院の基盤地図情報10 mメッシュを利用して作成)電子地盤図作成の基礎データ:宇都宮市の電子地盤図の作成対象領域は,2 万 5 千分の 1 地形図宇都宮に該当している 2 次メッシ【表 1】に地盤モデルを作る際に用いた地盤情報データ数(ボーュコード 5439 と 5539 の地域である。リング本数)を整理した。モデル化は,250m 角のメッシュに地盤情報データ(ボーリングデータ)が入るものを対象にモデル化した。表1地盤モデル作成に用いた地盤情報データの数地盤情報データの提供元栃木県提供ボーリング本数132本宇都宮市提供961本参考文献1) 宇都宮市:市のあらまし(人口など),http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/gaiyo/index.html,(2013年9月確認).2) 吉川敏之,山元孝広,中江 訓:宇都宮の地質,地域地質研究報告,5 万分の 1 地質図幅,新潟(7)第 103 号 NJ-54-30-1, (独)産業技術総合研究所地質調査総合センター,p.27,2010.A-95 【宇都宮市】モデル化の対象層:宇都宮市の支持基盤は,土木構造物の基盤 N 値が 50 以上の地盤が 3m 以上の厚さをもつ層を基本として,個々のボーリング柱状図が基盤とする N 値を反映させて決定した。なお,ボーリングデータに盛土などの人工地盤が含まれる場合,N 値の大きさを優先し,砂層として整理した。宇都宮市域で公開されている地盤情報データの数は極めて少なく,宇都宮市域をカバーする 6670個のメッシュの中で,モデル化ができたのは,わずかに 617 個であった【図 2】。これは全体のメッシュの約 9%に留まっている。宇都宮市域のデータは,社会資本の整備の多さに比例し,市域中央部南部で比較的多い傾向がある。なお,市内北部では,岩盤,中央部から南部に至っては,砂礫層【図 3】を基盤面の目安として,モデル化を行った。対象層は,地盤情報に収められた全ての層を対象として,地盤モデル 1 層の層厚は 1m とした。5 km図 2 宇都宮市電子地盤図を作成したメッシュ(地盤モデルは地図中の枠部分で構築)沖積層段丘堆積物前期~中期更新世の扇状地礫層第四紀の火山性扇状地堆積物第四紀の火山岩類新第三紀後期中新世~鮮新世の火山岩類新第三紀前期~中期中新世の火山岩類白亜紀の火成岩類ジュラ紀の付加コンプレックス図3 栃木県の地質概略図 (産総研地質調査総合センター (2010)A-962)を基に編集) 【宇都宮市】電子地盤図による地域の地盤特性:【沖積相当層の層厚分布】工学基盤として設定した層の深さは【図 2】で紹介する。全体的には、その深さは 5m~10m である。河川に沿った箇所では、10m~15m となる傾向がある。あと、南東部には 20m となるところもみられ、栃木県東部、鬼怒川周辺に河岸段丘があり、その周辺は工学基盤まで層厚が厚いと言われている傾向と一致する。【地域を代表する地盤断面】宇都宮市を代表する地盤の断面を【図 4】,【図 5】に示す。来たから南にかけて標高が低くなるが、その基盤は、砂礫層が主である。北部では、凝灰岩などで主に構成される岩石基盤が見られる。一部風化帯と思われる粘性土層を含む。東西方向についても同様の傾向がある南北図 4 宇都宮市の地域を代表する土質断面(南北方向)東西図 5 宇都宮市の地域を代表する土質断面(東西方向)A-97 【宇都宮市】【表層の土質とN値の分布】地盤モデルの平面的な深さ分布と N 値との関連を【図 6】、【図 7】に示す。深さ 5m の様子は、宇都宮市全域に礫質層が見られ、N 値が 20 以上の箇所も多くみられる【図 6】。それ以外は、粘性土や砂質土の層となっており、南北に連なっているように見える。深さが 10m となるとデータとして存在する場合、N 値が 20 以上の礫質層が主となっている【図 7】。図 6 宇都宮市の地盤モデル(深さ 5m)図 7 宇都宮市の地盤モデル(深さ 10m)補足:作成者: 地盤工学会関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会(2013 年)宇都宮大学 清木隆文A-98 28【前橋市】対象地域: 前橋市対象地域の地盤概説:図1に前橋付近の微地形区分を示す。この地域は,榛名火山山麓,赤城火山山麓,前橋台地,広瀬川低地に 4 区分される。榛名火山山麓と赤城火山山麓の間を利根川が流れる。その堆積物が前橋砂礫層と呼ばれ,この地域の基盤である。利根川は,前橋台地を浸食して南下する。利根川が現在の流路をとるようになったのは 16 世紀前半で,それ以前は広瀬川低地を流れていたと考えられている。前橋台地は,今から 2.1~2.4 万年前に浅間火山の爆発で発生した火山泥流が堆積してできたものである。この堆積物は 15m 程度の厚さを有し前橋泥流と呼ばれている。前橋泥流の N 値は大きくはないが,この層が比較的安定していることは利根川にある崖の状況から推察できる。前橋泥流の下に前橋砂礫層が存在する。広瀬川低地は以前の利根川流路に相当するところである。地表面を掘ると 3m 以内から砂礫層となり,その層厚は 3m を超える。この下に前橋泥流堆積物の層,さらに下に前橋砂礫層が存在する。図1 前橋付近の微地形区分電子地盤図作成の基礎データ:群馬県県土整備部から提供されたデータを利用した。ボーリングの総数は 1012 本である。図2にボーリングデータの分布状況を示す。この図が示している位置は,図1のそれとほぼ対応している。図2 ボーリングデータの分布状況A-99 【前橋市】モデル化の対象層:榛名火山山麓および赤城火山山麓では,N値が50を超える層が3m続く場合にその上面を基盤面とし,それより上の地層をモデル化した。また,前橋台地および広瀬川低地では,基本的には前橋砂礫層の上面を基盤面と考えてそれより上の地層をモデル化した。ただし,広瀬川低地では地表面下3m以内に層厚3mを超える砂礫層が存在するため,この砂礫層中でボーリング調査が打ち切られる場合が多い。したがって,基盤面と考えた前橋砂礫層まで達するボーリングデータ数が限られたものとなり,モデル化できるメッシュ数が非常に少なかった。そこで,調査が前橋砂礫層まで達するデータのないメッシュの中で,N値が50を超える砂礫層が3m以上続くデータがあればその上面を基盤面とみなし,これより上の地層をモデル化した。したがって,広瀬川低地においてはメッシュ内のボーリング長の最大値によって基盤面が異なり,2つの基盤面が混在していることに注意する。電子地盤図による地域の地盤特性:【モデル化した層厚の分布】図3はモデル化した層厚の分布である。前項で述べた通り,広瀬川低地では地表面に近い砂礫層の上面を基盤面としたメッシュが数多く含まれているため,層厚 3m 以下の表示が多い。一方,前橋台地にあるモデル層厚のほとんどが 15m 以上であり,多くは 18m 以上となっている。図3 モデル化した層厚の分布【地域を代表する土質断面】図4に前橋台地・広瀬川低地における地盤モデルを 5 箇所ずつ例示する。(a)が前橋台地のモデルであり,(b)は広瀬川低地のモデルである。(c)は 10 箇所の位置を,図3と同じ図上に示している。(a)と(b)に示す地盤モデルは,縦軸に標高をとって 5 箇所の標高差が分かるように並べられている。小さな数字は N 値である。(a)に示す前橋台地において,火山灰性粘性土と表示されているのは前橋泥流堆積物である。(b)に示す広瀬川低地では地表面下 3m 付近から礫質土と表示された砂礫層があり,その下に火山灰性粘性土と表示された前橋泥流堆積物の層がみられる。なお,No.9 の底部で砂質土とされている層は前橋泥流堆積物である可能性も考えられる。(b)における泥流堆積物の層が(a)のそれより小さいのは,利根川が流れていた時代に浸食されたためであろう。地盤モデルの全層厚を比較した場合にも(b)は(a)より小さくなっている。A-100 【前橋市】No.1No.2No.3No.4No.5砂質土粘性土火山灰性粘性土(a)前橋台地No.6No.7No.8No.9砂質土粘性土礫質土有機質土火山灰性粘性土No.10(b)広瀬川低地No.1No.6No.2No.3No.4No.7No.8No.5No.9No.10(c)位置図図4 前橋台地・広瀬川低地の地盤モデルA-101 【前橋市】【表層の土質と N 値の分布】図5は深度 5m の土質と N 値の分布である。図1で示した微地形区分に分けて整理すると,表層の土質は次のようになっている。榛名火山山麓では主に砂質土・粘性土・礫質土である。また,赤城火山山麓では主に砂質土・粘性土・礫質土・火山灰性粘性土である。上記 2 つの区分と前橋台地・広瀬川低地との境界,すなわち山地と台地との境界付近に有機質土層がみられる。これらは山地裾野の窪地に堆積した腐植土層である。広瀬川低地では主に礫質土,前橋台地では主に火山灰性粘性土(前橋泥流堆積物)となっている。前橋泥流堆積物の N 値には 10 未満のものが散見される。凡例(数字: N 値)砂質土粘性土礫質土有機質土火山灰性粘性土高有機質土人工材料岩盤図5 深度 5m の土質と N 値の分布補足:作成者: 地盤工学会関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会(2013 年)前橋工科大学 土倉 泰A-102 29【甲府市】対象地域: 甲府市(甲府盆地)対象地域の地盤概説:山梨県は本州中央部に位置する内陸県であり,県土の約 80%を占める山地に取り囲まれて,中央部に甲府盆地が位置する。電子地盤図は,数が少ないながらもボーリングデータが存在する甲府市域の甲府盆地について作成している。図 1 に甲府盆地の標高区分図を示す。甲府盆地は,大きく分けると,黄色で示した扇状地や段丘,丘陵からなる部分(標高 290m~500m 程度)と,青色で示した比較的平坦な部分(標高 230m~290m程度)からなっている。甲府盆地には赤石山脈・南八ヶ岳を源流とする釜無川と関東山地を源流とする笛吹川が流れている。釜無川と笛吹川は盆地の南端で合流し,富士川となって駿河湾に注ぐ。この2河川が合流する地点は,盆地の中でも標高が低く(標高 230m),低地湿地が形成されている。甲府盆地西縁には糸魚川-静岡構造線から分岐した市ノ瀬断層群がほぼ南北方向に走り,南東縁に沿っては曽根丘陵断層群が存在し,盆地と山地・丘陵の境をなしている。甲府盆地の地下地質は,下位より順に,基盤岩類とそれらを不整合に覆う水ヶ森火山岩,黒富士火砕流,下部礫層,韮崎岩屑流,上部礫層に区分され 1),後述の支持層とみなしている砂礫層は,上部礫層上部に相当する。図1 甲府盆地の標高区分図 2)(元図は国土地理院基盤地図情報 10m メッシュ DEMから作成)電子地盤図作成の基礎データ:電子地盤図作成のために収集したボーリングデータの収集元と数量を表 1 に示す。山梨県下で入手可能なボーリングデータは少なく,今回収集できたものは,ほとんどが市街化の進んだ甲府盆地北部の建築ボーリングと甲府盆地南東部の笛吹川に沿って建設された新しい道路の橋脚の支持層確認ボーリングのデータである。ボーリングデータを基に電子地盤図を作成したメッシュを図 2 に示す。表 1 モデル作成のために収集したボーリングデータ収集元数量(本)山梨県建築士事務所協会からの提供74国土地盤情報検索サイト「KuniJiban」59図2電子地盤図を作成したメッシュ(ピンク色表示部分.背景図は国土地理院色別標高図に産総研シームレス地質図 3) を重ねて表示.図 5,6,7 も同様))A-103 【甲府市】モデル化対象層:甲府盆地南部の代表的な表層地盤断面図を図3に示す(側線の位置は図1の赤線部)。図からわかるように,地表から概ね7~15mの深さにかけて連続性の良い砂礫層が分布する。甲府盆地においては,50以上のN値を示すこの砂礫層が構造物の支持層となっていることが慣例であり,既往の建築ボーリングでは,砂礫層の出現を確認して堀止めとなっていることも多い。そのため,地盤モデルにおいても,この砂礫層に相当するN値50以上の層が3m以上連続して確認できる層を支持層とし,それより上位をモデル化対象層としている。なお,この砂礫層は盆地の北部や西部ではより浅い深度で出現する傾向がある。また,直下のシルト層にAT(姶良丹沢テフラ,2.9万年前)が挟まれるため,第四紀更新世末から完新世前期に堆積したと考えている2)。図 3 甲府盆地南部の代表的な表層地盤断面図 2)電子地盤図による地域の地盤特性:【モデル化した層厚の分布】モデル化範囲には,4 分の 1 地域メッシュ(山梨県内の単位メッシュサイズは東西約 283m,南北約 231m)が,東西方向 97 メッシュ×南北方向 75 メッシュ存在する。ボーリングデータの数量が少。ないため,地盤モデルを作成できたのは,このうち約 1%にあたる 73 メッシュである(図 4)図 4 モデル化層の層厚分布A-104 【甲府市】【地域を代表する土質断面】甲府市付近の北北西-南南東方向の地盤モデル断面を図 5 に示す。支持層となる砂礫層の上面は,A-A’側線の北北西側では地表付近に分布し,南南東に向けて標高および深度を下げて,盆地の南南東では深度 8m 程度となる。さらに南方では盆地と御坂山地を境とする断層により支持層が隆起している。図 5 中のメッシュ No.11 と No.12 の比高は 70m 程度である。甲府盆地北部の東西断面および甲府盆地南端の笛吹川に沿いの断面を,それぞれ図 6 および図 7に示す.この 2 つの図からも,支持層となる砂礫層が甲府盆地北部では地表面近くに,甲府盆地南部ではより深い深度に表れていることが分かる。なお,図 7 のメッシュ No.6~No.8 で N 値の低い有機質土が観察される.詳細な研究事例がないものの,自然地盤としての沼地があったためと考えられる。図 5 北北西-南南東方向モデル断面図 6 笛吹川沿いのモデル断面A-105 【甲府市】図 7 東西方向モデル断面参考文献:1) 海野芳聖:山梨県甲府盆地の堆積過程 地下地質から見た更新世以後の特徴 ,地団研専報・フォッサマグナの隆起過程,38 号,pp.19 25,1991.2) 新・関東の地盤 増補地盤データベースと地盤モデル付(2013 年度版),(公社)地盤工学会,2014.3) 産業技術総合研究所地質調査総合センター (編): 20 万分の 1 日本シームレス地質図データベース(2012 年 7 月 3 日版). 産業技術総合研究所研究情報公開データベース DB084,産業技術総合研究所地質調査総合センター,2012.作成者: 地盤工学会関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会(2013 年)山梨大学後藤 聡A-106 30【習志野】対象地域: 習志野市対象地域の地盤概説:(a) 地形概要習志野市は千葉県北西部の東京湾岸に位置し, 総面積は 20.99km2 である(図 1 参照)。習志野市は国道 14 号線(図中黄色線)を境に,北部地域は下総台地の一部を構成する自然地盤で,起伏があって最も高い場所は T.P+30.6m となっている。これに対して, 南部は約 15km2 にも及ぶ埋立地域(習志野市の全面積の約 3/4)である。埋立地域の標高は概ね T.P+3m 前後となっている。東北地方太平洋沖地震では, 埋立地域での液状化による戸建て住宅の被害が甚大であった。(b) 埋立地域の地盤の造成経緯と地盤特性写真1は 14 号線以南の埋立地域の造成途中の航空写真である。埋立地域は旧東京湾の北部海岸地域で遠浅な海底地形をしている。この地域での最大水深は 5m 程度である。埋立に用いた地盤材料の詳細な資料は残されていないが,千葉県企業庁の資料から基本的にはポンプ式浚渫船を用いて浚渫および他の地区からきれいな砂をポンプ圧送で吹き付けて造成している。 埋立地盤は 2 期に分かれて造成されている。第 1 期は袖ヶ浦地区(94ha)で 1964 年から 1966 年の間に, 第 2 期は秋津地区, 香澄地区, 芝園地区, 茜浜地区からなり, 1971 年から 1977 年の期間にそれぞれ造成されている。図 1 習志野市の市境と地形概要写真 1 埋立地の埋立状況A-107 【習志野】電子地盤図作成の基礎データ:電子地盤図作成にあたって,ボーリングデータは習志野市および一部千葉県から提供いただいたデ,自然ータを使用した。対象地域のボーリング本数は約 400 本。図 2 に習志野市の市境(図中赤線)地盤と埋め立て地を分ける 14 号線,今回の検討対象範囲内のボーリング位置(図中赤い点)およびモデル化のメッシュを示した。図 2 検討に用いたボーリングの位置およびモデル化のメッシュモデル化の対象層:東京都の中心部の地盤モデルを作成する際に,低地と丘陵・台地を統一して定義できる工学的基盤として,N 値が 50 以上の層の上面が工学的基盤面として選ばれた。そこで,同じ首都圏に属する習志野市の場合も同様に,地表面から工学的基盤面までの層をモデル化した。具体的には N 値が 50 以上の層が 5m 以上の厚さがあればその上部を基盤と判断した。なお,このような N 値が 50 を目安とした工学的基盤は,構造物の支持層の意味以外にも,地震応答解析における基盤としても良く用いられる。電子地盤図による地域の地盤特性:【工学的基盤の深度分布】図 3 に工学的基盤の上面の標高の分布を示す。なお,図中着色していないメッシュは,メッシュお。よびその隣接する周辺のメッシュにもボーリングデータが無いことを示している(図 2 参照)図 3 工学的基盤の深度分布A-108 【習志野】【地域を代表する土質断面】代表的な断面として,図 1 中の A-A’断面と C-C’断面に基づき説明する。A-A’断面は埋立前の東京湾の旧海岸線(ほぼ国道 14 号線に平行)に対してほぼ平行な断面である(図 4)。埋立層は砂あるいはシルトが主体となっており, 場所によって異なっている。これが液状化被害の違いに影響している可能性がある。埋立層は厚いところで 6,7m で,その下部は沖積層である。表層 10m はほぼ N値が 10 以下で, 地下水位は平均で GL-1.5m程度である。C-C’断面は北部自然地盤地域の西―東断。表層地盤は有機質土や火山灰性粘性土が主体となっている。地下水位は場所によっ面である(図 5)て大きく変化している。埋立地域とは違い標高には変化がある。図4A-A’ 断面図図5補C-C’ 断面足:作成者: 地盤工学会関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会(2013 年)千葉工業大学畑中宗憲A-109 31【浦安市】対象地域: 浦安市および周辺対象地域の地盤概説:東京湾岸は江戸時代から埋立てが始まり,特に第 2 次世界大戦以降に多くの埋立てが行われてきた。浦安市はもともと旧江戸川の河口の三角州に発達した町で,昭和 23 年には面積が 4.43km2 しかなかったが,図 1 に示すように昭和 40 年から中町地区,昭和 47 年からは新町地区の埋め立てが始まった。両地区を合わせた埋立地の面積は 14.36 km2 に及び,これは市域の約 85%になっている。埋立地の造成にあたっては,沖合の海底から採取された土砂で埋め立て,その表層に房総半島の山砂や東京の建設残土などが盛られた。出典:浦安市史【生活編、まちづくり編】図 1 浦安市の埋め立ての歴史電子地盤図作成の基礎データ:電子地盤図作成にあたって、浦安市から提供して頂いたボーリングデータと千葉県で公開されているインフォメーションバンクを使用した。これらはアナログデータであったためディジタル化して使用した。ボーリングデータ総数は 396本で,その内訳は、浦安市のものが 191 本、千葉県インフォメーションバンクのものが 205 本である。これらのボーリング地点を,モデル化に使用した 250m メッシュ内とともに図 2 に示す。AA’図 2 ボーリング位置とモデル化したメッシュモデル化の対象層:東京都の中心部の地盤モデルを作成する際に,低地と丘陵・台地を統一して定義できる工学的基盤として,N 値が 50 以上の層の上面が工学的基盤面として選ばれた。そこで,同じ首都圏に属し東京都中心部に近い浦安市の場合も同様に,地表面から工学的基盤面までの層をモデル化した。具体的には N 値が 50 以上の層が 5m 以上の厚さあればその上部を基盤と判断した。なお,このように N 値が50 を目安とした工学的基盤は, 構造物の支持層の意味以外にも地震応答解析における基盤としてもよく用いられている。A-110 【浦安市】電子地盤図による地域の地盤特性:【工学的基盤の深度分布】図 3 に工学的基盤の上面の標高の分布図を示す。一般的に陸側から海側にかけて TP-15m 程度から-60m 程度へと工学的基盤面は深くなっている。ただし,よく見ると中町の中でも場所によってその深さが異なっている。工学的基盤面上面標高(TP m)【地域を代表する土質断面】図 2 中の A-A’測線は三角州の元町から,埋立地の中町,新町を通る北西~南東の測線である。これに沿った地盤モデル列を図 4 に示す。地盤モデルのNo.1~No.11 は元町に位置する。この区間では表層から N 値が 10 を超える沖積砂質土層が 6~9m 程度の厚さで堆積している。その下部には沖積粘性土層が 10~17m 程度の厚さで堆積しており,N 値がゼロの深度も多い軟弱な層である。その厚さは海に図 3 工学的基盤の深度分布向かって厚くなっている。そしてその下部には N値が大きい砂質土層が堆積している。No.12~No.21 までは中町,それより南東側は新町に位置する。これらの地区では表層に盛土層と浚渫土層が 4~8m 程度の厚さで造成されている。なお,この断面では盛土層と浚渫土層を合わせて人工材料の表示にしてある。これらの N 値は 10 以下と緩い状態になっている。その下部には元町から続く沖積砂質土層が 3~10m 程度の厚さで堆積し,さらにその下部には軟弱な沖積粘性土が厚く堆積している。工学的基盤面の上部深度は 30~50m と場所によって大きく異なっている。図 4 元町から新町にかけた地盤モデル補足:作成者: 地盤工学会関東支部 関東地域における地盤情報の社会的・工学的活用法の検討委員会(2013 年)東京電機大学 安田進A-111 32【滋賀県】対象地域: 滋賀県(東域部)対象地域の地盤概説:琵琶湖の湖東地域は湖岸近くに活構造がないために,琵琶湖に流入する河川の流域面積が比較的大きく,河床勾配が緩く,湖西地域とは対象的である(図1参照)。琵琶湖の東側(湖東平野)の近江八幡市や彦根市の沖積低地には,基盤岩から成る大小の孤立丘が点在している。これは,地殻変動により地面が沈降し,かつて山地であった地域が島となり,後背山地からの土砂の供給によって埋積されたことを示している。また,図2に示すように琵琶湖東岸に流入する河川は,姉川や愛知川など流域面積が大きく,河床勾配が緩いものが多く,河道流域に沿って上流から下流にかけて谷底低地,扇状地,自然堤防帯,三角州という地形配列が見られる。また琵琶湖大橋以北の北湖を中心に湖岸に浜堤が発達している。浜堤背後の陸側には琵琶湖と狭い水路で連結する内湖が昭和期まで多数存在していたが,その後干拓・埋め立てが行われ現在残っているのは西の湖などわずかである。沖積平野は,盆地の南東部で最も広く,北西部では狭くなっている。平野を流れる各河川の先端には三角州が発達し,安曇川,姉川,日野川,草津川でその様子が顕著に見られる。野洲川は県内最大の流域面積を持ち,かつて河口部が南流・北流に分かれ,各々が三角州を作って北湖・南湖の最狭部を形成していたが,現在はそれらの中間に直線的な人工河川が作られ,三角州の間の湾入部に流れ込んでいる。愛知川(流域面積が第4位)の河口は,現在の地形は三角洲が目立たないが,大中の湖が干拓される前の地形図を見ると巨大な三角洲が形成されていた。野洲川,日野川,愛知川などの湖東平野の河川と,湖西の安曇川の中流域など琵琶湖周辺の河川中流域には河段段丘が多く見られる。段丘面を形成しているのは,近くの川の河原と同じ種類の礫でできた厚さ数mの礫層である。琵琶湖周辺の河岸段丘は,いずれも土地が隆起したためにできたものであり,これらは更新世の後期よりも新しい時代に形成されている。参考文献1) 三村 衛・大加戸彩香・北田奈緒子・井上直人:地域地盤の解釈と電子地盤図作成について~近江盆地を例として~,第48回地盤工学研究発表会,地盤工学会,pp.121-122,2013.2) 岡田篤正・東郷正美編:近畿の活断層.東京大学出版会,408p,2000.図2 湖東平野7河川の流域界と標高分布(青線:流域界)図1 滋賀県の地形と活断層の分布(文献1を元に作成,緑円:対象地域)A-112 【滋賀県】電子地盤図作成の基礎データ:「関西圏地盤情報データベース」(KG-NET・関西圏地盤情報協議会)に集積された滋賀県東部地域の約 6000 本のボーリングデータを使用した。図3に検討地域のボーリングデータ位置を示す。5km図3 検討地域のボーリングデータモデル化の対象層:琵琶湖湖東域の地盤は,基本的に,標高 90m 以上の丘陵地~山地においては礫層が主体的に分布する。これらの礫層は,低地部においては粘土やシルト層,砂層などよりも下部に連続していること,礫層の上部に地域的には特徴的な有機質層が存在し,その中において AT 火山灰層(25000 年前)を確認したことから,礫層以深を洪積層,上部を沖積層と判断することができる。ただし,このように選択した場合,沖積層の下部には一部洪積層が含まれる可能性が高い。モデル化対象層は,以上の沖積層に関わる知見も参照しながら,それよりも深い工学的基盤(N 値50 以上)に該当する深度を土質とN値を参照しながら設定した。一例として,図4に犬上川に沿った断面のボーリング柱状図示す。図中の黒線が沖積層基底に相当しており,青線がモデル化対象層の下面とした工学的基盤である。ちなみに,この断面には湖東平野の特徴的な地盤構造として湖岸流によって形成された湖岸の浜堤,内陸側の有機質土層,丘陵部の砂礫主体の構造を見ることができる。沖積層基底工学的基盤図4 モデル化対象層(工学的基盤)の抽出例〔犬上川に沿ったボーリング断面〕A-113 【滋賀県】電子地盤図による地域の地盤特性:【沖積相当層の層厚分布】図5にモデル化対象層(工学的基盤以浅)の層厚分布を示す。工学的基盤は,基本的に N 値が 50以上を示すものとしてボーリングデータより抽出した。5km123図5 モデル化対象層(工学的基盤以浅)の層厚分布【地域を代表する土質断面】図6に琵琶湖湖岸から内陸への東西断面を示す。1は犬上川付近である。礫層が主体で,標高が高くなる部分はほとんど洪積層の礫に該当する。礫層は扇状地の末端の湖岸付近まで分布する。2は大中付近である。三角州が発達した時期もあることから砂主体の地盤で,部分的に高有機質土を含む。3は野洲川付近である。右側の丘陵地域には礫層が見られるが,左側の低地部にはほとんど礫層が分布しない。湖岸線部には砂層(礫層)が分布するが,湖岸より少し内陸部には粘性土層が優勢となる。123図6 代表的なモデル柱状図断面(図5に断面位置を示す)A-114 【滋賀県】【表層の土質】図7にモデル化対象層内の土質分布を示す。(1),(2)図の各深度の土質の分布は,全体的に琵琶湖岸側が砂質土,内陸の丘陵地側で礫質土であり,その間に点在するように粘性土の分布が見られる。(3)図より工学的基盤以浅の優勢土質とその平均 N 値を見れば,砂質土は N=15 程度とゆるい箇所が多く,礫質土は N=30 以上,粘性土は N=5 を下回る箇所が多数を占める。5km5km(1) 深度 GL-5m の土質(2) 深度 GL-10m の土質5km(3) 工学的基盤以浅の優勢土質と平均 N 値図7 モデル化対象層内の土質分布補足:作成者: 京都大学 三村 衛,地域地盤環境研究所A-115北田 奈緒子(2013 年) 33【松江市】対象地域: 松江市対象地域の地盤概説:対象地域には,松江平野が広がっている。松江平野の北には島根半島の山地,南には中国山地へ向かう高地が存在し,西には宍道湖,東には中海がある。松江平野は,朝酌川と中海・宍道湖を結ぶ大橋川の堆積作用で形成された東西約 4km,南北約2.5km,標高 1~3m の低湿な三角州平野である。宍道湖に面して小規模な砂州(末次砂州,白潟砂州)が形成されているので後背湿地が広い。また,平野の南側には標高 15~30m の乃木段丘と呼ば【図 1】れる河成段丘が広がり,北側には平野との比高差が 5~10m の断片的な段丘も散在している。図 1 松江平野の微地形(林 正久 1991)松江平野の基岩は,地下 6~20mにある新生代新第三紀中新世の松江層であり,その上位に第四紀層(完新統~更新統)が分布する。松江層は,砂岩・泥岩・玄武岩・凝灰岩の互層からなる。玄武岩や凝灰岩の新鮮なものを除いては,‘岩盤’というよりも‘固結土砂’に近いイメージである。一方,第四紀層の一般的なパターンは,松江層の上に 2.5~3 万年前の最終氷期の海退期に堆積した礫層が存在する。この礫層の上には約 1 万年前の後氷期以降のシルト・粘土を主体とする粘性土層が堆積している。その上位には砂層が堆積しているが,層厚はとくに大橋川より北側において粘性土層に比べかなり薄い。【図 2】図 2 松江市街地の南北地質縦断面(全国 77 都市の地盤と災害ハンドブック)参考文献::松江周辺の沖積平野の地形発達,地理科学,46 巻 2 号,pp.1-201) 林 正久(1991):松江歴史資料館(仮称)敷地地盤調査業務報告書,第2) 協和地建コンサルタント株式会社(2007)3 章 地形・地質調査概要,pp.4-10A-116 【松江市】電子地盤図作成の基礎データ:地盤図または提供先本数中海臨海地帯の地盤図 (1967)39島根県地盤図 (1981)62山陰臨海平野地盤図 (1995)350しまね地盤情報配信サービス19815島根県土木部松江市下水道工務課337松江市教育委員会197KuniJiban合381236計モデル化の対象層:当該地域におけるモデル化対象層の下端は,岩盤(松江層)とした。ただし,岩盤が存在しない場合は,硬い地層の目安である砂質土で N 値 30 以上,粘性土で N 値 15 以上とした。なお,土質が不明な盛土層をモデル化する際,盛土層の土質を設定しなければならないが,砂として設定した。ちなみに,末次砂州の北側にある後背湿地(殿町,母衣町,南田町,内中原町)は江戸時代初期を主として現在に至るまで 2m 弱の盛土がなされていることが最近分かった。電子地盤図による地域の地盤特性:【沖積相当層の層厚分布】(a)図に北部の沖積層厚の分布図を示す。沖積層は 2~18m の厚さで分布している。とくに,松江城から大橋川までの地域では 10m 以上の沖積層が堆積している。また,対象地域の地下水位は地表面から約 2m までの浅い位置にある。(b)図に南部の沖積層厚の分布図を示す。国道 9 号線(東西に延びた赤い線)の付近を境に南北で明確な層厚の差があることがわかる。国道 9 号線以北は沖積層が 12~18m 堆積しているが,それより南は 3 つのメッシュを除いてすべて 12m 以下である.ここが三角州と丘陵地の境界になっていると考えられる。(a) 北部(b) 南部A-117 【松江市】【地域を代表する土質断面】(a)図は,石橋町から末次本町までの土質断面図である。土質断面図は No.1 の北堀町(北端)からNo.7 の東茶町(南端)に向かっている。No.7 の地層は他の断面より砂層が厚く,標高約 2m 高いため砂州である。No.3~No.6 は,後背湿地であると考えられる。(b),(c)図は,白潟砂州と末次砂州の土質断面図である。沖積地盤の厚さ,地盤標高,N 値に大きな違いはみられない。白潟砂州の方が地表面の砂質土層が厚いことがわかる。しかし,末次砂州は 2~8m であるのに対して,白潟砂州は 8~16m と厚い。(a) 石橋町~末次本町(b) 末次砂州(c) 白潟砂州A-118 【松江市】【優勢土質と N 値の分布】(a)図に示す北部の優勢土質は,粘性土と砂で構成され,約 9:1 の比率で粘性土が圧倒的に多い。また,平均 N 値は平地において概ね 7 以下であり,その多くは 4 以下であるので,軟弱地盤である。とくに黒田町には,N 値ゼロの超軟弱地盤が存在する。(b)図に示す南部の優勢土質は,2 メッシュを除き粘性土と砂で構成され,約 8:3 の比率で粘性土が多い。N 値は概ね小さく,国道 9 号以北はより小さい傾向がみられる。白潟砂州,丘陵地を含むほとんどの沖積地盤が軟弱である。(a) 北部補(b) 南部足:作成者: 松江工業高等専門学校 河原 荘一郎 (2013 年)A-119 34【高松市】対象地域: 高松市(高松平野)対象地域の地盤概説:高松市は香川県のほぼ中央に位置する。北部は国立公園の瀬戸内海に面し,中央部は高松平野と丘陵地が広がり,讃岐山脈からの香東川を始めと男木島大槌島大島竹居観音岬小槌島女木島する中小の河川による扇状地形をなしている。高屋島岩清尾山松市域の地盤は全体的に緩やかな勾配で占められ,北側は瀬戸内海に面し,高松港を中心に半円高松城五色台香西五剣山高松市役所本津川状の市街地を形成している。高松平野は,新川,春日川,詰田川,摺鉢谷川,春日川蓮光寺山新川牟礼前田山香東川香東川,本津川の中小 6 河川が形成した沖積平野御坊川国分寺である。現在の香東川は,紫雲山の西側を流下しているが,扇状地の形態から,完新世には主に紫庵治瀬戸内海鷲ノ山香南雲山山地の東側を流下していたと推定される。高高松平野仏生山由良山日山香川長尾断層松平野の南部には,更新世後期~中期の数段の段岩崎丘面が分布している。藤尾神社図 2 に,高松平野沿岸部の東西方向の地質断面鮎滝断層高松空港図を示す。断面線西側の香西本町や郷東町は本津安原高仙山前山丘陵川や郷東川の河口部に位置し沖積層には砂が卓越【 凡 例 】する。扇町付近は砂州の高まりが見られ沖積層の基底部には腐植土層が分布している。この腐植土地形層の上位に鬼界アカホヤ火山灰層(K-Ah)が分布~-7m にかけてシルト質の軟弱層が厚く堆積す田中断層三角州氾濫原樫原断層扇状地内場池段丘する箇所が多い。高松市役所付近の沖積層基底の福岡町付近は T.P.-3標高は T.P.-10m 前後である。塩江町埋立地塩江温泉讃岐山脈三豊層地質讃岐層群和泉層群竜王山最高峰大滝山領家花崗岩類る。図1 高松平野の地形と地質香西本町1郷東町扇町高松市役所福岡町完新統境界( 沖 積 相 当 層)11'04 km図 2 高松平野の東西断面A-120春日町1' 【高松市】電子地盤図作成の基礎データ:四国地盤情報データベース(四国地盤情報活用協議会)を使用した。対象地域のボーリング本数:約 1,500 本図 2 解析対象区域と使用したボーリング分布モデル化の対象層:高松平野の地下地質は,下位より基盤岩,讃岐層群,三豊層群,洪積層,沖積層の順に重なる。高松平野における沖積層に関する研究の進展により,沖積粘土層中の鬼界アカホヤ火山灰(K-Ah,約 7,300 年前)と漠然と考えられて高松低地臨海部本研究の広域火いた火山灰が,姶良-Tn 火山灰(約 地質時代地質区分山灰層26,000 年前)であることが確認さ中部東部れ,高松平野臨海部における沖積層西内町礫部層厚さは 10m 程度である。モ西内町砂質部層図 3 に,高松平野臨海部の地下地完デ沖高新質の層序とモデル化対象層との関係ル西内町泥部層積松世化層層を示す。高松平野臨海部の地下地質春日町砂部層対K-Ahのうち,中部~上部更新統は陸成の象第浜ノ町砂礫部層砂礫層を主体とした下部・中部香東層四川層と上部香東川層に,最上部更新上部紀福岡町泥部層AT香東統~完新統は河川成,のちに主に海番町礫部層基盤層更 川層成となる高松層から構成される。新中モデル化対象層は,概ね N 値 50寿町上部礫部層部世回以上の砂礫層が概ね 3m以上連続香寿町泥部層K-Tz東して分布する工学的支持基盤層(番川寿町上部礫部層町礫部層に相当)よりも上位の層と層した。図 3 高松平野地下地質の層序とモデル化対象層A-121 【高松市】電子地盤図による地域の地盤特性:【支持基盤までの層厚分布】図 4 に,支持基盤より上位のモデル化対象層の層厚分布を示す。解析対象区域の左側は香東川の扇状地形に位置しモデル化対象層の層厚は数m以下でありごく浅層部に支持基盤面が出現している。沿岸部での層厚は 10m以上となり,御坊川や春日川の河口部(福岡町付近)で層厚は最も厚く 24m以上の箇所も分布する。また,解析対象区域右側の春日川や新川の流路沿いでは内陸部でも層厚が比較的厚く 15m以上の箇所も見受けられる。AA’図 4 モデル化対象層の層厚分布【地域を代表する土質断面】図 5 に,モデル化対象層の高松平野沿岸部(A-A’断面)の土質断面を示す(断面線の位置は図4 参照)。A-A’断面の左側(沿岸部西側)は,標高 10m付近に支持基盤面の上面が位置し,N値20~30 程度の礫質土が卓越するとともに下部には粘性土が厚く堆積する。右側(沿岸部東側)になるにしがたい支持基盤面の上面深さは深くなり,礫質土は少なくN値 10~30 の砂質土の割合が多くなる。さらに断面右側になると屋島山麓部に近づき岩盤面が浅くなってくることから,支持基盤面の上面深さは浅くなっている。AA’図 5 モデル化対象層の土質断面(A-A’断面)A-122 【高松市】【表層部の土質とN値の分布】図 6 に,モデル化対象層の深度毎の土質と N 値の分布を示す。(a)図の深度 G.L.-5m においては,沿岸部で N 値 5~15 程度の砂質土が東西方向に広く分布し,内陸の香東川扇状地形で N 値 20~40程度の礫質土が分布する。(b)図の深度 G.L.-10m においては,沿岸部で N 値 10~20 程度の硬質な粘性土が点在している。(a) 深度 G.L.-5m(b) 深度 G.L.-10m図 6 モデル化対象層の深度毎の土質と N 値の分布補足:作成者: 香川大学 山中 稔(2013 年)A-123
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  • タイトル
  • 付 録
  • 著者
  • 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会
  • 出版
  • 全国電子地盤図の作成と利用に関する研究報告書
  • ページ
  • B-1〜B-11
  • 発行
  • 2014/07/25
  • 文書ID
  • 69487
  • 内容
  • 付 録開催報告「地盤情報の現状と将来,地盤工学会の役割を語るシンポジウム」B-1全国電子地盤図作成支援システム 利用規約B-3全国電子地盤図作成支援システムの利用許可に関する審査内規B-6「全国電子地盤図」研究利用(データセット提供)の手引きB-7 B-1 B-2 全国電子地盤図作成支援システム 利用規約公益社団法人地盤工学会(平成 24 年 4 月 1 日)はじめに本システムの利用は,この利用規約に従うものとします。利用者は,公益社団法人地盤工学会(以下,「学会」という。)に全国電子地盤図作成支援システム利用申請書(以下,「利用申請書」という。)を提出のうえ,利用許可を受けてください。1.定義本規約において「本システム」とは,地盤工学会・表層地盤情報データベース連携に関する研究委員会が,科学技術振興調整費重要課題解決型研究「統合化地下構造データベースの構築」(平成18~22 年度)を研究分担する中で提起した「全国電子地盤図」を作成するために開発したソフトウェア「全国電子地盤図作成支援システム」のことをいいます。「全国電子地盤図」とは,本システムにより作成される地域の表層地盤の 250m メッシュ地盤モデル(電子地盤図)の集合体とそれに関わる全てをいいます。また,「地盤モデル」という場合は,電子地盤図を構成する地盤モデル(デジタルデータまたはデータファイル)のことを狭義に指します。「利用者」とは,本システムを利用して電子地盤図を作成する者のことをいいます。個人に限らず,地盤工学会の支部委員会等の組織を指す場合もあります。2.利用手続き本システムの利用にあたっては,利用申請書を学会へ提出し,利用の許可を受けてください〔様式1〕。学会は,利用が許可された申請者を利用者とし,本システムを収録した CD-R を無料で貸与します。利用終了後は,システムをアンインストールの上,学会に CD-R を返却してください。なお,利用期間は年度末とします。年度を越えて利用される場合は,利用期日の 2 週間前までに再度,利用申請書を提出してください。ただし,2 年度を越えての利用は認められません。3.利用目的本システムの利用は,全国電子地盤図の構築と表層地盤情報データベースの連携に寄与するものでなければなりません。4.システム利用上の責務本システムは,日本全国の地域地盤への適用を目指していますが,ローカルな地盤環境には適用が困難な場合もあります。適用に不具合が確認された場合は,システム改良の参考としますので,利用者は学会に情報を提供してください。利用者は,作成した電子地盤図を“全国の電子地盤図を情報提供するためのウェブサイト(全国電子地盤図サイト)”へ登録する義務を負います。成果の発表後に,地盤モデルを学会に提出してください。その際に,対象地域の地盤解説等も併せて提出してください〔様式2〕。5.システムの管理本システムは,利用者の責任において管理してください。適正な管理と利用がなされない場合は,利用権の取り消し(返却)を求める場合があります。6.不正使用,第三者への譲渡の禁止本システムは,いかなる事由によっても,改変または翻訳,複製物の作成をしてはなりません。また,利用者以外の第三者に譲渡してはなりません。7.利用成果の公表本システムにより作成された電子地盤図を利用して得られた成果を公表する場合は,本システムを利用した旨を公表物に明記してください。B-3 様式1号平成年月日公益社団法人地盤工学会 御中(機関・申請者名,印)全国電子地盤図作成支援システムの利用申込下記目的により,全国電子地盤図作成支援システムの利用を申し込みます。システムの利用においては「全国電子地盤図作成支援システム 利用規約」を遵守します。なお,システムは提供を受けた年度末を期日として返却します。年度を越えて利用する場合は,利用期日の 2 週間前までに再度,利用申請書を提出します。記利用目的(名称):※索引となる程度に簡単に記述する具体的な内容:※具体的に記述する対象地域:※例えば“東京都巣鴨周辺”,別途地図を提示利用者・連絡先:※利用者氏名,所属・部署,連絡先,電話番号,e-mail を明記提出先:公益社団法人 地盤工学会 全国電子地盤図担当〒112-0011 東京都文京区千石 4 丁目 38 番 2 号 (E メール:jgs-jibanzu@jiban.or.jp)電話:03-3946-8677 総務担当(代表)FAX:03-3946-8678(代表)B-4 様式2号全国電子地盤図作成支援システムの利用報告-対象地域の地盤解説-提出日:年月日■全国電子地盤図 Web サイトには,⑥と⑦を集録します。項目内容備考(別添資料 No)①利用者氏名②同上連絡先所属・部署:住所:電話番号:E-mail:③利用目的(名称)④対象地域⑤基礎データ※使用された DB の名称や提供者等を記載してください。名称(内容):ボーリング本数:⑥地盤の解説※電子地盤図作成の対象とされた地域の地盤の特徴(地形・地質概要等)について,分かりやすく記載してください。〔全国電子地盤図 Web サイトに掲載された各地域の解説内容を参考としてください。〕※文章と図面などは,電子ファイルで提出してください。⑦モデル化対象層※電子地盤図(地盤モデル)の対象とした地層(または N 値等の条件)を解説してください。⑧転載許可※Web サイトに掲載しますので,「転載許可」が必要なものは学会より申請手続きを行います。申請書類に記載をお願いしますので,その旨お知らせください。転載許可□ 必要□ 不要⑨その他B-5例)データ File「解説.doc」 全国電子地盤図作成支援システムの利用許可に関する審査内規公益社団法人地盤工学会(平成 24 年 4 月 1 日)はじめに本審査内規は,「全国電子地盤図作成支援システム利用規約」(以下,「利用規約」という。)にもとづく,全国電子地盤図作成支援システム(以下,「システム」という。)の利用申請に対し,公益社団法人地盤工学会(以下,「学会」という。)が行う利用許可に関する審査方法を定める。1.審査会システムの利用許可に関する審査を行うための審査会は,学会が設ける全国電子地盤図に関わる委員会が兼務する。審査会の開催は,システム利用申請書が学会に提出された日より2週間以内とし,委員長が委員を招集する。審査会の開催方法は会議を基本とするが,通信(Eメール等)による審議も可とする。審査結果は,審査終了後ただちに議事録(報告書)を作成のうえ,学会担当者に報告する。2.審査基準審査基準は,以下のとおりとする。①申請書の記載内容に不備がないこと②申請された利用目的が,全国電子地盤図の構築と表層地盤情報データベースの連携に寄与するものであること③システムの利用上の責務や管理など,申請者が利用規約の事項に関して違反を行う危惧がないこと④申請者または関係者が,過去に本システムの利用等に関して違反したことがないこと3.審査の対応手順審査対応は,以下の手順により実施する。①学会にシステムの利用申請書が提出されたとき,学会担当者は記載内容に不備のないことを確認のうえ,審査会へ審査を依頼する。②審査会は,審査基準にもとづきシステムの利用許可の可否を決定し,学会担当者へ報告する。③学会担当者は,利用許可の可否を申請者へ回答する。許可された申請者(以下,「利用者」という。)へは利用に関する資料とシステムを提供する。④学会担当者は,利用期日(システム提供の年度末)に達したとき,利用者に利用報告書と電子地盤図(成果)の提出を求め,受理する。年度を越える利用に対しては,利用期日の 2 週間前までに利用申請書の再提出を求める。ただし,2 年度を越えての利用は認めない。⑤学会が作成された電子地盤図を全国電子地盤図閲覧システムに収録・公開することをもって,利用許可の終了とする。4.審査会に関わる旅費・謝金等の支払い学会が設ける全国電子地盤図に関わる委員会が審査会を兼務するかぎりは,審査会に関わる旅費・謝金等の支払いは行わない。B-6 「全国電子地盤図」研究利用(データセット提供)の手引き公益社団法人 地盤工学会表層地盤のデータベース連携に関する研究委員会(平成 18~22 年度)全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会(平成 23~25 年度)2012.9.7本手引きは,「全国電子地盤図」のウェブサイト(全国電子地盤図サイト)で公開されている「地盤モデル」のデジタルデータについて,研究利用を目的とした大学研究者等にデータセットとして提供するための利用手順を定めたものです。下記により対応いたしますので,利用を申し込まれる場合は,利用条件等の内容を十分にご承知のうえ,所定の手続きを行ってください。記■利用の手続き◇ 「全国電子地盤図」研究利用の申込書(様式1)に必要事項を記載の上,研究責任者より地盤工学会に利用申請の手続きを行ってください。◇ 標記研究委員会で内容を確認の上,要望されるデータセット(地域毎)を提供します。利用される目的が研究利用と認められない場合は,提供をお断りすることもありますのでご承知ください。◇ データベースの提供方法は CD-Rとします。データ利用にかかる経費は無料です。■利用のルール◇「全国電子地盤図の利用規約」(ウェブサイトに同様)を遵守してください。◇ 研究者(利用者)は,研究成果を報告する義務を負います(規約第6条転載・引用した場合の義務)。研究終了時に,研究成果報告書(様式2)と研究成果(論文等)を提出してください。※ 研究終了時は,申込書に記載された期日とします。変更される場合は,以下に御連絡ください。■提出・連絡先〒112-0011 東京都文京区千石 4 丁目 38 番 2 号公益社団法人 地盤工学会 全国電子地盤図担当 宛(E メール:jgs-jibanzu@jiban.or.jp)B-7 全国電子地盤図の利用規約公益社団法人 地盤工学会平成 22 年 10 月 15 日はじめに全国電子地盤図の利用者は,以下の全事項に従うものとします。第1条 定義1.本規約において「本サイト」とは,公益社団法人地盤工学会の「表層地盤情報データベース連携に関する研究委員会」および「全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会」(以下,「委員会」という。)が全国電子地盤図を情報提供するためのウェブサイト(全国電子地盤図サイト)のことをいいます。2.「全国電子地盤図」とは,委員会の研究活動に関連して各地域において作成された,表層地盤の 250mメッシュ地盤モデルの集合体および分布図等に表現されたもの全てをいいます。また,「地盤モデル」という場合は,全国電子地盤図を構成する地盤モデル(デジタルデータまたはデータファイル)のことを狭義に指します。3.「作成者」とは,各地域の電子地盤図の作成者のことをいいます。個人に限らず,地盤工学会の支部委員会等の組織を指す場合もあります。4.「利用」とは,本サイトで全国電子地盤図を閲覧およびダウンロードすること,全国電子地盤図の転載・引用することをいいます。また,「利用者」はその行為を行う人のことを指します。第2条 利用上の注意1.全国電子地盤図の地盤モデルは,現時点までに集積された地盤情報(ボーリングデータ等)と作成者の地盤工学的判断にもとづいて作成されています。本来の地盤状況とは明らかに異なると指摘される場合は,その内容と関連情報を第 8 条に記載する連絡先までお寄せ下さい。2.全国電子地盤図は予告なく修正等されることがあります。ご利用の際には,最新の情報を利用するようにして下さい。3.表示している地図が現在の鉄道,道路,県境,市区町村境界と一致しないことがあります。第3条 サービスの内容等1.全国電子地盤図の地盤モデルは無償でダウンロードできます。ただし,ダウンロードのための通信費等の費用は,利用者の負担となります。2.本サイトは,サーバメンテナンス等のシステム保守管理作業のために,一時的に停止することがあります。第4条 権利の帰属と利用の許諾1.全国電子地盤図の知的財産権は,作成者に帰属します。2.全国電子地盤図は,本利用規約に定める条件のもとで,利用することを許諾されます。3.利用者は,第5条において制限される場合を除き,全国電子地盤図をもとに編集・加工した成果物を自由に頒布することができます。ただし,成果物の販売を予定される場合は,許可されない場合B-8 もありますので,第 8 条に記載する連絡先までお問合せ下さい。第5条 利用の制限1.利用者は,本サイトより得た全国電子地盤図に対して,著作権を設定することはできません。2.利用者が全国電子地盤図の地盤モデルをそのまま複製(ファイル形式を変換しての複製を含む)して第三者に頒布,譲渡,貸与することを禁じます。また,法令及び条例等に違反する目的や方法で全国電子地盤図を利用することを一切禁じます。他人の権利を侵害する目的での利用,公序良俗に反するような利用についても一切禁じます。3.本サイトへのリンクについては,特に手続を要しませんが,リンク先を本サイトのトップページに設定してください。本利用規約を表示しないリンクは禁止します。4.上記制限事項に反した場合,全国電子地盤図の利用に制限を加える場合があります。第6条 転載・引用した場合の義務1.利用者は,全国電子地盤図を利用した成果を公表または他の作成資料等に転載・引用する場合は,全国電子地盤図を利用した旨を明記して下さい。2.また,全国電子地盤図の地盤モデルを用いて作成された学術論文・報告書等で,印刷物(CD 等の電子媒体も含む)が出版・作成された場合は,コピーを第 8 条に記載する連絡先に送って下さい。これには,学会講演の予稿集等も含まれます。第7条 免責事項1.全国電子地盤図の利用については,利用者の判断と責任に委ねられているため,事由の如何を問わず,その利用に関して利用者又は第三者に生じた損害については,利用者がその全ての責任を負うものとし,地盤工学会および委員会,作成者は一切の責任を負いません。2.本サイトを使用中,通信回線のトラブル等,利用者に何らかの損害が生じても,地盤工学会および委員会は一切の責任を負いません。第8条 その他1.本サイトは予告なしに,構成する内容等を変更・削除する場合がありますので,御了承下さい。2.本サイトの利用約款に関しては,日本法が適用されるものとします。3.本サイトに関する質問は,連絡先のアドレスまで E メールをお送り下さい。4.地盤工学会および委員会への連絡先は,以下のとおりです。【連絡先】〒112-0011 東京都文京区千石 4 丁目 38 番 2 号公益社団法人 地盤工学会表層地盤のデータベース連携に関する研究委員会(平成 18~22 年度)全国電子地盤図の作成と利用に関する研究委員会(平成 23~25 年度)(E メール:jgs-jibanzu@jiban.or.jp)B-9 様式1平成年月「全国電子地盤図」研究利用(データセット提供)の申込書公益社団法人 地盤工学会 御中研究代表者 氏名印所属研究機関・職下記の研究に全国電子地盤図の研究利用(データセット提供)を申し込みます。データの提供を要望する地域:研究課題:研究内容:(関連する資料等を添付する)研究成果(予定):研究期間(予定): 平成年月~ 平成年月 (1 年間を目安としてください)研究組織(氏名,所属機関・職・Email):(利用条件)・全国電子地盤図の利用に際しては,「全国電子地盤図の利用規約」を遵守してください。・研究利用者は,研究終了時に,研究成果報告書(様式2)と研究成果(論文等)を提出してください。提出先:公益社団法人 地盤工学会全国電子地盤図担当〒112-0011 東京都文京区千石 4 丁目 38 番 2 号B-10日 様式2「全国電子地盤図」研究利用報告書研究課題研 究 者研究期間(所属と氏名)年月 ~年月報告日年月研究目的:研究内容と成果:公開資料(論文等):※研究終了後に,研究利用報告書(本様式)と研究成果(論文等)を提出してください。B-11日
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